JP6860904B2 - 太陽光発電モジュール評価方法、評価装置および評価プログラム - Google Patents
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Description
しかしながら、熱イメージを取得する診断では、電気抵抗の増加箇所または漏れ電流が発生している箇所の取得はできるものの、発熱現象の切り分けや、抵抗変化以外の診断は難しいといった問題がある。また、太陽光発電モジュール等のフォトルミネッセンスでは、照射される光の面積は限定的であるため、光が照射された場所の状況が診断されるものの、太陽光発電アレイが広大な面積をもつ場合の診断には、極めて長い時間の測定が必要になるといった問題がある。
一方で、近年、メガソーラーのような大規模な太陽光発電事業における太陽光発電モジュールにおいて、電圧誘起劣化(PID:Potential Induced Degradation)現象が報告されている。太陽光発電事業において、短期間で大幅な出力低下を招くおそれがあり、事前にPIDの可能性を確認することが重要とされている。PID現象は、実際に太陽光発電モジュールとして設置した後の実地使用で初めて現象が確認できるものであり、太陽光発電モジュールの製造時の品質管理では回避することが困難とされている。
しかしながら、PID現象による出力低下が起こらなければ、不良モジュールの検出は困難であるといった課題がある。そこで、太陽光発電モジュールの出力管理において、著しい出力低下が発生する前に、PID現象が進行している太陽光発電モジュールを検知することが要望される。なお、PID現象が進行している太陽光発電モジュールを検知するために、モジュールに注入される電流値は、検査される太陽光発電モジュールの短絡電流値と同等である。これは、太陽光発電セルからの発光原理から、注入電流と発光強度が比例関係にあることを利用しているものである(非特許文献2を参照)。
これまで明確な出力低下が発生してから、太陽光発電モジュールのエレクトロルミネッセンス像を撮像し、非発光部を確認することで、出力低下した太陽光発電モジュールを特定していたのに対して、本発明によれば、明確な出力低下が起こる前に、PID現象が進行している太陽光発電モジュールを特定できるようになる。
本発明の太陽光発電モジュール評価方法は、光照射面にエミッタ層を有するp型Si系太陽光発電セル又はn型Si系太陽光発電セルに対して好適に用いられるが、その他のタイプの太陽光発電セルであっても構わない。
なお、本明細書において、セルは太陽光発電モジュールの基本単位で、太陽光発電素子そのものをいい、モジュールはセルを複数枚配列して屋外で利用できるよう樹脂や強化ガラスでパッケージ化したものをいい、アレイはモジュールを複数枚並べて接続したものをいう。
ここで、セル又はモジュールの短絡電流と略同等の注入電流量は、セル又はモジュールの出力端をショートしたときに流れる電流量、すなわち、負荷がない状態で流れる電流量と同等の電流量である。
そして、0.25I〜Iの範囲内における注入電流量と発光強度とが比例しないものを、電圧誘起劣化(PID)が発生した又は発生しつつある太陽光発電セルとする評価する。理論上は、電流注入とそれによる発光強度は比例関係にあるはずが、PID現象を生じた太陽光発電セルやモジュールでは比例関係からずれるのである。
上記の近似直線は最小二乗法による最小二乗直線を用いることができる。そして、近似直線の決定係数R2に応じて、下記1)〜3)のように太陽光発電セルを評価する。
1)決定係数R2が0.995以上1以下の範囲の場合は、電圧誘起劣化現象が発生していないと評価する。
2)決定係数R2が0.990以上0.995未満の範囲の場合には、電圧誘起劣化現象が発生しつつあると評価する。
3)決定係数R2が0.990未満の場合には、電圧誘起劣化現象が発生したと評価する。
本発明の太陽光発電モジュール評価装置は、下記a)〜d)の構成を備える。下記の構成の装置によれば、明確な出力低下が起こる前に、PID現象が進行している太陽光発電モジュールを特定することが可能である。
a)被評価太陽光発電セル又はモジュールに対して電流を注入する電流供給部
b)太陽光発電セル又はモジュールのエレクトロルミネッセンス像を撮影して画像データを出力する撮像部
c)セル又はモジュールの注入電流量と各セルの発光強度との相関の線形性を判定する判定部
d)判定部からの判定結果に基づいて、各セルの電圧誘起劣化度合いを評価する評価部
本発明の太陽光発電モジュール評価プログラムは、下記の入力ステップ、判定ステップ、評価ステップおよび出力ステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムである。
・入力ステップは、被評価太陽光発電セル又はモジュールに対して電流を注入しながら、セル又はモジュールのエレクトロルミネッセンス像を撮影した画像データを入力する。
・判定ステップは、入力した画像データから、セル又はモジュールの注入電流量と各セルの発光強度との相関の線形性を判定する。
・評価ステップは、判定ステップにおける判定結果に基づいて、各セルの電圧誘起劣化度合いを評価する。
・出力ステップは、評価ステップにおける評価結果を出力する。
本発明のサーバコンピュータによれば、クライアント・サーバシステムを用いて、電圧誘起劣化(PID)現象が発生しつつある太陽光発電モジュールを一早く検知できる評価サービスを提供することができる。
図4と図5では、横軸は注入電流密度(mA/cm2)、縦軸はEL強度を示している。横軸の目盛の右端の40(mA/cm2)は、評価対象の太陽光発電モジュールにおける短絡電流相当の電流密度である。また、横軸の目盛の左端の10(mA/cm2)は、短絡電流相当の1/4(=0.25)倍の電流密度である。
PID現象が発生していないセルでは、短絡電流をIとすると、0.25I〜Iの範囲内における注入電流量と発光強度とが比例しているのに対して、PID現象が発生しているセルでは、0.25I〜Iの範囲内における注入電流量と発光強度とが比例していない。
図5では、図4のグラフにおいて、プロット毎に10(mA/cm2)と40(mA/cm2)のEL強度を結ぶ直線(点線で表記)を加えたものである。PID現象が発生していないセルでは、0.25I〜Iの範囲内における注入電流量と発光強度とが比例しているのに対して、PID現象が発生しているセルでは、0.25I〜Iの範囲内における注入電流量と発光強度とが比例していないということが明確に確認できる。
評価対象の太陽光発電モジュールの仕様は、実施例1と同じである。PID現象の加速試験の条件は、実施例1と同様、85℃、85RH%、−1000Vである。図6と図7では、横軸は注入電流密度(mA/cm2)、縦軸はEL強度を示している。横軸の目盛の40(mA/cm2)は、評価対象の太陽光発電モジュールにおける短絡電流相当の電流密度である。また、横軸の目盛の左端は、実施例1と異なり0(mA/cm2)から始めている。横軸の目盛の10(mA/cm2)は、短絡電流相当の1/4(=0.25)倍の電流密度である。図6と図7のグラフにおいて、y=ax+b(但し、a,bは係数)の表記があるが、これは近似直線である最小2乗直線を表す式であり、R2は最小2乗直線の決定係数である。
一方、EL強度は、変換効率低下率が増加するに従って、単調に低下し、特に、変換効率低下が進むに従って、EL強度低下の度合が弱くなり、検出感度が低くなる。EL強度は、電極抵抗の増加や、セル割れなど、急激な特性劣化に繋がらない劣化現象によっても低下し、PID現象を直接的に検知・判断することは困難である。
PID現象が発生したセルが含まれている割合が20%未満において、比較例と実施例とを比べると、比較例では出力保持率が75%以下に下がっているのに対して、実施例では出力保持率が95%程度を維持していることが確認できる。これから、本実施例の太陽光発電モジュール評価方法が早い段階で劣化検知できる技術であることがわかる。
なお、実施例ではPID現象が発生したセルが含まれている割合が50%を超えたとしても、出力保持率が75%以上を維持できている。
図10に示す例では、評価対象である太陽光発電モジュール6(太陽光発電セル6aが複数枚配列されている)に対して、図示しない電流供給部から電流が注入されて、エレクトロルミネッセンス(EL)現象が生じ、モジュール6のEL像をカメラ12で撮影している。撮影した画像データは、クライアント端末9aが通信ケーブル10を介して取り込む。クライアント端末9aは、撮影した画像データをサーバ8にネットワーク7を介して送信する。サーバ8は、撮影した画像データを受信し、クライアント端末9aの要求に応じて、取得した画像データを用いて、実施例1又は実施例2の太陽光発電モジュール評価方法によって、モジュール6の評価を行い、評価結果をクライアント端末9aに応答する。
クライアント端末9bは、サーバ8に対して画像データを送らないものの、サーバ8に保管されている太陽光発電モジュールの評価結果を閲覧できる。また、クライアント端末9cは、カメラ12からモジュール6のEL像の画像データを無線通信11で取り込んでいる。
2 電流供給部
3 撮像部
4 判定部
5 評価部
6 太陽光発電モジュール
6a 太陽光発電セル
7 ネットワーク
8 太陽光発電モジュール評価サーバ
9a,9b,9c クライアント端末
10 通信ケーブル
11 無線通信
12 カメラ
Claims (5)
- 被評価太陽光発電セル又はモジュールに対して電流を注入し、エレクトロルミネッセンスを検知することにより太陽光発電セル又はモジュールの品質を評価する方法において、
被評価太陽光発電セル又はモジュールの注入電流量と各セルの発光強度との相関の線形性を判定する判定ステップと、各セルの電圧誘起劣化度合いを評価する評価ステップ、
を備え、
前記判定ステップは、被評価太陽光発電セル又はモジュールの短絡電流と同等の注入電流量をIとした場合に、0.25I〜Iの範囲内において、注入電流量と発光強度との相関を最小二乗直線で表し、該最小二乗直線の決定係数R 2 に対して閾値を設定して、設定された閾値に応じて線形性を判定し、
前記評価ステップは、前記決定係数R 2 が0.995以上1以下の範囲の場合には、電圧誘起劣化現象が発生していない太陽光発電セル、前記決定係数R 2 が0.990以上0.995未満の範囲の場合には、電圧誘起劣化現象が発生しつつある太陽光発電セル、又は前記決定係数R 2 が0.990未満の場合には、電圧誘起劣化現象が発生した太陽光発電セル、として評価することを特徴とする太陽光発電モジュール評価方法。 - 被評価太陽光発電モジュールに対して電流を注入し、モジュール内に存在する電圧誘起劣化が発生した太陽光発電セル数が全体のセル数に占める割合が予め設定した値に達した場合に、被評価太陽光発電モジュールを電圧誘起劣化したと評価することを特徴とする請求項1の太陽光発電モジュール評価方法。
- 被評価太陽光発電セル又はモジュールに対して電流を注入する電流供給部と、
被評価太陽光発電セル又はモジュールのエレクトロルミネッセンス像を撮影して画像データを出力する撮像部と、
被評価太陽光発電セル又はモジュールの注入電流量と各セルの発光強度との相関の線形性を判定する判定部と、
前記判定部からの判定結果に基づいて、各セルの電圧誘起劣化度合いを評価する評価部、
を備え、
前記判定部は、
被評価太陽光発電セル又はモジュールの短絡電流と同等の注入電流量をIとした場合に、0.25I〜Iの範囲内において、注入電流量と発光強度との相関を最小二乗直線で表し、該最小二乗直線の決定係数R 2 に閾値を設定して、設定された閾値に応じて線形性を判定し、
前記評価部は、
前記決定係数R 2 が0.995以上1以下の範囲の場合には、電圧誘起劣化現象が発生していない太陽光発電セル、前記決定係数R 2 が0.990以上0.995未満の範囲の場合には、電圧誘起劣化現象が発生しつつある太陽光発電セル、又は前記決定係数R 2 が0.990未満の場合には、電圧誘起劣化現象が発生した太陽光発電セル、として評価することを特徴とする太陽光発電モジュール評価装置。 - 被評価太陽光発電セル又はモジュールに対して電流を注入しながら、被評価太陽光発電セル又はモジュールのエレクトロルミネッセンス像を撮影した画像データを入力する入力ステップと、
前記画像データから、被評価太陽光発電セル又はモジュールの注入電流量と各セルの発光強度との相関の線形性を判定する判定ステップと、
上記判定の結果に基づいて、各セルの電圧誘起劣化度合いを評価する評価ステップと、
上記評価結果を出力する出力ステップ、
を、コンピュータに実行させるためのプログラムであり、
前記判定ステップは、
被評価太陽光発電セル又はモジュールの短絡電流と同等の注入電流量をIとした場合に、0.25I〜Iの範囲内において、注入電流量と発光強度との相関を最小二乗直線で表し、該最小二乗直線の決定係数R 2 に閾値を設定して、設定された閾値に応じて線形性を判定し、
前記評価ステップは、
前記決定係数R 2 が0.995以上1以下の範囲の場合には、電圧誘起劣化現象が発生していない太陽光発電セル、前記決定係数R 2 が0.990以上0.995未満の範囲の場合には、電圧誘起劣化現象が発生しつつある太陽光発電セル、又は前記決定係数R 2 が0.990未満の場合には、電圧誘起劣化現象が発生した太陽光発電セル、として評価することを特徴とする太陽光発電モジュール評価プログラム。 - 請求項4の太陽光発電モジュール評価プログラムが搭載されたサーバコンピュータ。
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