本発明に係る核医学診断装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
以下に説明する実施形態に係る核医学診断装置は、複数のガンマ線検出器を備えたSPECT装置などの核医学診断装置に適用することができる。以下の説明では、本発明に係る核医学診断装置として3検出器型のガンマ線検出器回転型のSPECT装置を用いる場合の一例について示す。なお、本発明に係る核医学診断装置としてのガンマ線検出器回転型SPECT装置は、ガンマ線検出器が2つまたは4以上備えるものであってもよい。
(1)コリメータの種類および配置の通知
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る核医学診断装置1の一構成例を示す図であり、(b)は(a)のX−X’線に沿う断面図である。また、図2は、核医学診断装置1の内部構成例を概略的に示すブロック図である。
核医学診断装置1は、図1(a)に示すように、架台装置10、寝台装置20、およびコンソール30を有する。
架台装置10は、その内部に円筒状の撮像空間を形成する架台本体11と、ガンマ線検出器群12を有する。本実施形態に係るガンマ線検出器群12は、3つのガンマ線検出器12a、12bおよび12cを有する。また、架台装置10はさらに、3つのガンマ線検出器12a、12bおよび12cのそれぞれに着脱自在に設けられた3つのコリメータ13a、13bおよび13cと、回転駆動装置14とを備える。
架台本体11は、土台と、土台に固定された筐体で構成された固定架台と、固定架台に対して回転可能に支持された回転板を含む回転架台とを備える。固定架台および回転架台は、たとえば架台カバーにより覆われる。固定架台、回転架台、およびこれらを覆う架台カバーの中央部分には、撮像領域を内包する開口が設けられる。
図1(b)に示すように、本実施形態に係る核医学診断装置1は、三角形状に配置された3つのガンマ線検出器12a、12bおよび12cを備えた3検出器型のガンマ線検出器回転型のSPECT装置である。
3つのガンマ線検出器12a、12bおよび12cは、回転架台に保持される。回転架台が回転駆動装置14を介して回転軸の周り(z軸周り)に回転することにより、3つのガンマ線検出器12a、12bおよび12cは一体として回転軸の周りを回転する。
ガンマ線検出器12aは、被検体(たとえば患者)に投与されたテクネシウムなどのRI(放射性同位元素)から放射されるガンマ線を検出する。なお、ガンマ線検出器12bおよび12cはガンマ線検出器12aと同様の構成および作用を有するため、説明を省略する。
ガンマ線検出器12aは、シンチレータ型検出器であってもよいし、半導体型検出器であってもよい。
ガンマ線検出器12aがシンチレータ型検出器である場合は、ガンマ線検出器12aは、ガンマ線の入射角度を規定するためのコリメータ13aと、コリメータ13aによってコリメートされたガンマ線が入射すると瞬間的な閃光を発するシンチレータと、ライトガイドと、シンチレータから射出された光を検出する2次元に配列された複数の光電子増倍管と、シンチレータ用電子回路などを有する。シンチレータは、たとえばタリウム活性化ヨウ化ナトリウムNaI(Tl)により構成される。
シンチレータ用電子回路は、ガンマ線が入射する事象(イベント)が発生するごとに、複数の光電子増倍管の出力にもとづいて複数の光電子増倍管により構成される検出面内におけるガンマ線の入射位置情報(位置情報)、入射強度情報および入射時刻情報を生成しコンソール30の処理回路35に出力する。この位置情報は、検出面内の2次元座標の情報であってもよいし、あらかじめ検出面を複数の分割領域(1次セル)に仮想的に分割しておき(たとえば1024×1024個に分割しておき)、どの1次セルに入射があったかを示す情報であってもよい。
一方、ガンマ線検出器12aが半導体型検出器である場合は、ガンマ線検出器12aは、コリメータ13aと、コリメータ13aによりコリメートされたガンマ線を検出するための2次元に配列された複数のガンマ線検出用半導体素子(以下、半導体素子という)と、半導体用電子回路などを有する。半導体素子は、たとえばCdTeやCdZnTe(CZT)により構成される。
半導体用電子回路は、ガンマ線が入射する事象(イベント)が発生するごとに、半導体素子の出力にもとづいて入射位置情報、入射強度情報および入射時刻情報を生成して処理回路35に出力する。この位置情報は、複数の半導体素子(たとえば1024×1024個)のうちのどの半導体素子に入射したかを示す情報である。
すなわち、ガンマ線検出器12aは、イベントごとに入射位置情報、入射強度情報および入射時刻情報を出力する。また、位置情報は、1次セルのどの位置にガンマ線が入射したかを示す情報および検出面内の2次元座標の情報の少なくとも一方である。
ガンマ線検出器12a、12bおよび12cは、処理回路35に制御されて動作する。
コリメータ13a、13bおよび13cはそれぞれ、鉛やタングステンなどの放射線を透過しづらい物質により構成され、光子が飛来する方向を規制するための開口が設けられる。コリメータ13a、13bおよび13cは、その種類に応じて核医学診断装置1の空間分解能および感度が変化する。
ここで、コリメータの種類とは、開口の形状、開口の配置、コリメータの厚さ、隔壁厚などに応じて異なるものとする。コリメータの種類には、たとえばパラレルホールコリメータ、ピンホールコリメータ、ファンビームコリメータ、ダイバージングコリメータ、コンバージングコリメータ、スラントホールコリメータなど種々のものが知られている。
回転駆動装置14は、回転架台を回転軸(z軸)の周りに回転させるためのモータなどの回転手段、回転手段の回転を制御するための電子部品、および回転手段の回転を回転架台に伝達するローラなどの伝達手段などを有する。回転駆動装置14は、処理回路35に制御されて、回転架台を回転軸(z軸)の周りに回転させる。たとえば、処理回路35は、回転架台を介してガンマ線検出器12a、12bおよび12cを被検体の周りに連続にあるいはステップ的に回転させることにより、複数方向からの被検体の投影データを収集する。
寝台装置20は、天板21と、天板21を垂直方向および水平方向に移動させる寝台本体22と、天板21を移動させる天板駆動装置23と、を有する。
天板21は、z軸方向に長手方向を有し、x軸方向に短手方向を有する板状の部材により構成される。被検体は、天板21上に載置される。
寝台本体22は、床面に設置され、天板21を昇降自在に支持する。たとえば、寝台本体22は、長尺形状を有しX字状に配された2つの支持部材と、2つの支持部材の中央部を軸支する連結ピンとを有し、2つの支持部材の上端部に天板21が支持される。この場合、天板21は、たとえば2つの支持部材の下端部どうしの間隔を狭めることにより上昇し、下端部どうしの間隔を広げることにより下降する。
天板駆動装置23は、天板21を水平方向に移動させる駆動源としてのモータ、およびこのモータを制御するための電子部品などを有する。また、天板駆動装置23は、寝台本体22を介して天板21を昇降させる駆動源としてのモータ、およびこのモータを制御するための電子部品などを有する。天板駆動装置23は、処理回路35により制御されて天板21を移動させる。
一方、核医学診断装置1のコンソール30は、たとえば一般的なパーソナルコンピュータやワークステーションなどにより構成され、入力回路31、ディスプレイ32、記憶回路33、ネットワーク接続回路34および処理回路35を有する。なお、コンソール30は独立して設けられずともよく、たとえばコンソール30の構成31−35の一部が架台装置10に分散して設けられてもよい。
入力回路31は、たとえばトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、テンキーなどの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を処理回路35に出力する。たとえば、ユーザは、入力回路31を介して検査部位や検査プロトコルを設定することができる。
ディスプレイ32は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成される。
記憶回路33は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。記憶回路33は、処理回路35により制御されて、表示画素ごとの計数値や核医学画像を記憶する。また、記憶回路33は、たとえば検査部位および検査プロトコルと、3つのコリメータの種類の組み合わせおよび配置と、を関連付けたルックアップテーブルやデータベースなどの情報をあらかじめ記憶しておいてもよい。これら記録媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介した通信によりダウンロードされるように構成してもよい。
ネットワーク接続回路34は、たとえば所定のプリント回路基板を有するネットワークカードなどにより構成され、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続回路34は、この各種プロトコルに従って核医学診断装置1と他の機器とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続などを適用することができる。ここで電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹LAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
処理回路35は、記憶回路33に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、検査部位および検査方法と、当該検査部位および検査方法に応じて複数のガンマ線検出器のそれぞれに設置されるコリメータの種類および配置と、に応じて、一連の検査処理手順(プロトコルなど)を含む検査条件を設定するための処理を実行するプロセッサである。本実施形態では、処理回路35が、検査部位および検査方法に応じて3つのガンマ線検出器12a、12bおよび12cのそれぞれに設けられたコリメータ13a、13bおよび13cの種類および配置に応じて、処理手順を含む検査条件を設定する場合の例について説明する。
なお、本実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびFPGA)等の回路を意味するものとする。プロセッサは、記憶媒体に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。
また、本実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶媒体は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶媒体が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
図3は、処理回路35のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図である。図3に示すように、処理回路35のプロセッサは、受付機能41、プロトコル決定機能42、通知機能43および検査制御機能44を実現する。これらの各機能はそれぞれプログラムの形態で記憶回路33に記憶されている。
また、図4は、検査部位および検査方法と、コリメータの種類および配置と、に応じて、検査条件を決定し、検査を実行する際の手順を示すフローチャートである。図4において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
まず、ステップS1において、受付機能41は、ユーザから入力回路31を介して検査部位および検査方法の情報を受け付ける。
次に、ステップS2において、ユーザは、検査部位および検査方法に応じた種類および配置で、複数のガンマ線検出器のそれぞれにコリメータを設置し、天板21に載置された被検体を検査部位および検査方法に応じた位置に位置決めする。
次に、ステップS3において、プロトコル決定機能42は、検査部位および検査方法にもとづいて検査プロトコルを一意に決定する。このとき、プロトコル決定機能42は、決定した検査プロトコルをディスプレイ32に表示し、ユーザによる入力回路31を介した確認指示を受けるとよい。また、このときさらに、ユーザにより入力回路31を介して各種検査条件の設定を受け付けてもよい。プロトコル決定機能42は、決定した検査プロトコルの情報を含む検査条件の情報を、通知機能43および検査制御機能44に与える。
なお、処理回路35は、通知機能43を実現せずともよい。処理回路35が通知機能43を実現する場合は、次に、ステップS4において、通知機能43は、検査プロトコルにもとづいて、複数のコリメータのそれぞれの種類および配置を通知する。通知方法としては、たとえば複数のコリメータのそれぞれの種類および配置の情報を示す画像をディスプレイ32に表示させる方法や、複数のコリメータのそれぞれの種類および配置の情報を示す音声をスピーカ等の音声出力手段から出力する方法などが挙げられる。
また、たとえば核医学診断装置1が3検出器型である場合には、3つのコリメータの種類および配置ごとに、すなわち3つのコリメータの1つの組み合わせ(セット)ごとに、あらかじめ識別番号や識別名称などの識別情報を割り当てておいてもよく、この場合は、通知機能43は識別情報を通知してもよい。たとえば識別番号を割り当てる場合は、3つのコリメータのすべてがパラレルホールコリメータのセットを1番、2つのコリメータがパラレルホールコリメータで1つがマルチピンホールコリメータのセットを2番、1つのコリメータがパラレルホールコリメータで2つがマルチピンホールコリメータのセットを3番、1つのコリメータがパラレルホールコリメータで2つがファンビームコリメータのセットを4番、などと割り当てた情報を、あらかじめ記憶回路33が記憶しておき、通知機能43がこの識別番号を利用するとよい。
処理回路35が通知機能43を実現する場合は、ユーザは、ステップS4で通知された種類および配置のコリメータが正しく複数のガンマ線検出器に設けられているかを確認する。
そして、ステップS5において、検査制御機能44は、検査プロトコルを含む検査条件に沿った検査の実行を支援するよう、核医学診断装置1を制御する。たとえば、検査制御機能44は、検査プロトコルに沿ってガンマ線検出器12a、12bおよび12cのそれぞれの出力をたとえばフレームモードまたはリストモードで収集する。
以上の手順により、検査部位および検査方法と、コリメータの種類および配置と、に応じて、検査プロトコルを決定し、検査を実行することができる。
上述のとおり、コリメータの種類に応じて核医学診断装置1の空間分解能および感度が変化する。このため、コリメータの種類は、検査部位や検出する核種(エネルギー)、検査の目的や検査プロトコルに応じて適切に使い分けることが好ましい。
本実施形態に係る核医学診断装置1は、3検出器型であるという特長を生かすため、検査部位および検査方法に応じて、従来の全てのコリメータが同一種類である場合とは全く異なる特別な種類と配置の組み合わせで、各検出器にコリメータが設置される。そして、検査部位および検査方法と、コリメータの種類および配置と、に応じて、検査プロトコルを決定し、この検査プロトコルに沿って検査を実行することができる。このため、核医学診断装置1によれば、検査部位および検査方法に応じた好適なコリメータを利用でき、この好適なコリメータを利用した検査プロトコルで検査を実行することができる。したがって、たとえば核医学診断装置1が小視野の3検出器型のSPECT装置であっても、核医学診断装置1を様々な検査部位に対して適用することができる。
よって、たとえば2検出器型のSPECT装置が故障したときであっても、検査部位および検査プロトコルによっては、本実施形態に係る3検出器型の核医学診断装置1で代用することができる。
次に、本実施形態に係る3検出器型の核医学診断装置1による検査の具体例について説明する。
(2)第1の検査例(腎臓)
第1の検査例は、検査部位が腎臓である場合の例である。
図5は、検査部位が腎臓であり、検査プロトコルが腎臓のダイナミックプラナー像と断面像とを同時に撮影する検査プロトコルと決定される場合のコリメータの種類および配置の一例を示す説明図である。
本実施形態に係る3検出器型の核医学診断装置1は、3つのガンマ線検出器12a、12bおよび12cが三角形状に配置されているため、1つの検出器で全体を撮像し、他の2つの検出器で個々の検査対象を撮像する検査が可能である。この種の検査が有効な検査部位は、たとえば腎臓や乳房などの体軸に対して線対称な部位である。また、腎臓や乳房は、左右同時に検査することが重要である。この点も、核医学診断装置1の3つのガンマ線検出器のうちの1つの検出器で全体を撮像し、他の2つの検出器で個々の検査対象を撮像する検査が有効である理由の1つである。
検査部位が腎臓である場合、本実施形態に係る3検出器型の核医学診断装置1の検査制御機能44は、通常の回転撮像による断層像撮像を行なう検査プロトコル(以下、通常腎臓プロトコルという)のほか、たとえば腎臓のダイナミックプラナー像と断面像とを同時に撮影する工程を含む検査プロトコル(以下、パラレルー断面腎臓プロトコルという)を実行することができる。パラレルー断面腎臓プロトコルは、ダイナミックプラナー像と断面像とを同時に撮像する工程を含む検査プロトコルである。
たとえば、プロトコル決定機能42が、実行すべき検査プロトコルをパラレルー断面腎臓プロトコルに決定すると、通知機能43は、パラレルー断面腎臓プロトコルで利用される3つのコリメータ13a、13bおよび13cが、2つのマルチピンホールコリメータまたは2つのファンビームコリメータと、1つのパラレルホールコリメータと、である旨の情報を通知するのでユーザは確認する。なお、パラレルー断面腎臓プロトコルで利用されるファンビームコリメータとしては、たとえば短焦点ファンビームコリメータを用いることができる。
ダイナミックプラナー像は、天板21に載置された被検体の上面に対向する位置に配置されたパラレルホールコリメータを設けられたガンマ線検出器によるダイナミック収集により、左右の腎臓が含まれる全体を、時系列的に連続して取得した全体画像である。
断面像は、被検体の左下および右下に配置された2つのマルチピンホールコリメータまたは2つのファンビームコリメータが設けられた2つのガンマ線検出器による、左腎および右腎のそれぞれの同時連続SPECT収集にもとづく再構成処理により取得される。すなわち、この断面像は、左腎および右腎のそれぞれの時系列的に連続した断層像である。検査制御機能44は、ダイナミックプラナー像と断面像とを同時並行的に生成する。
なお、マルチピンホールもしくはファンビームコリメータを用いたSPECT収集では、検査制御機能44は、ガンマ線検出器12a、12bおよび12cの出力をフレームモードまたはリストモードで収集する。リストモードでは、ガンマ線の検出位置情報、強度情報、ガンマ線検出器12a、12bおよび12cと被検体との相対位置を示す情報(ガンマ線検出器12a、12bおよび12cの位置や角度など)、およびガンマ線の検出時刻が、ガンマ線の入射イベントごとに収集される。
ファンビームコリメータ(たとえば短焦点ファンビームコリメータなど)を用いて断面像を生成するための連続SPECT収集を行う場合は、検査制御機能44は、たとえば左右に少しステップ的に回転架台を全体回転させることによって、たとえば3箇所などの複数箇所から投影データ収集を行ない、これらの複数箇所の投影データにもとづいてトモシンセシスにより断層像を生成する。
一方、マルチピンホールを用いて断面像を生成するための連続SPECT収集を行う場合は、検査制御機能44は、1箇所で取得した投影データであっても複数のピンホール画像にもとづく断層像生成が可能なため、回転架台を回転させずともよいし、左右に少しステップ的に回転架台を全体回転させることによって複数箇所から投影データ収集を行ない、投影データの数を増やしてもよい。
検査制御機能44は、断層像生成のための連続SPECT収集のあいだ、上述のとおり並行してダイナミック収集を行なう。
図6は、腎臓のタイムアクティビティカーブの一例を示す説明図である。図6に示す各相の分割方法は一例であってこれに限られず、たとえば排泄相を2つに分けてもよい。
検査制御機能44は、左腎および右腎のそれぞれの関心領域のタイムアクティビティカーブを、ダイナミックプラナー像もとづいて作成する。左腎および右腎のそれぞれの関心領域の情報は、ユーザにより入力回路31を介して設定されて検査制御機能44に与えられる。
回転架台が左右に少し全体回転する場合であっても、関心領域を大きめに設定すれば、この回転がタイムアクティビティカーブの作成に与える影響を低減することができる。このため、検査制御機能44は、回転架台を左右に少し全体回転させる場合には、ユーザが設定した関心領域を自動的に所定の割合または所定の幅だけ大きくした領域をタイムアクティビティカーブ作成用の関心領域として用いてもよいし、関心領域の設定時に大きめに取るようユーザに促すコメント表示や音声ガイダンスを行ってもよい。
検査制御機能44は、腎臓のタイムアクティビティカーブの相(図6参照)ごとに、左腎および右腎のそれぞれの断層像を再構成する。具体的には、検査制御機能44は、左腎および右腎のそれぞれのタイムアクティビティカーブを作成し、断層像を再構成する時間範囲を設定する。検査制御機能44は、再構成を行う時間帯を複数設定してもよい。検査制御機能44は、設定した各時間範囲の左右両腎臓の投影データを取り出して、左右それぞれに再構成を行って断層像を生成する。なお、2つのマルチピンホールコリメータまたは2つのファンビームコリメータが設けられたガンマ線検出器の出力データをリストモードで収集する場合は、検査制御機能44は、再構成を行う時間帯に属するリストモードデータを取り出し、フレームデータにフォーマットしてから再構成を行う。
この第1の検査例によれば、核医学診断装置1の検査制御機能44は、ダイナミックプラナー像にもとづいてタイムアクティビティカーブを生成しつつ、タイムアクティビティカーブにもとづいて設定された時間範囲ごとに断層像を再構成することができる。さらにこのとき、検査制御機能44は、左腎および右腎の投影データを同時に収集することができる。このため、ユーザは、左腎および右腎のそれぞれのイムアクティビティカーブと、それぞれの相の断層像とを非常に容易に比較することができるため、大変精度のよい腎臓検査を行なうことができる。
また、腎臓は比較的小さな臓器であるため、一般的な2検出器型のガンマ線検出器のような500−600mmなどの大視野のガンマ線検出器を用いずとも、3検出器型の小視野のガンマ線検出器であっても検査に十分なデータ収集が可能である。
また、腎臓は、3つのコリメータ13a、13bおよび13cの全てをパラレルホールコリメータとする通常腎臓プロトコルでも検査が可能であるが、この第1の検査例によれば、核医学診断装置1は、ガンマ線検出器が3つあることを活用し、全体画像と左右の腎臓の断層像とを同時に短時間で得ることができる。たとえ検査制御機能44が回転架台を左右に少し全体回転させる場合であっても、回転架台はトモシンセシスによる断層像再構成に必要な小さな角度だけ回転すればよいため、短時間に投影データ収集が可能である。したがって、第1の検査例は、腎臓のダイナミック画像の検査に好適である。
(3)第2の検査例(乳房)
第2の検査例は、検査部位が乳房である場合の例である。
図7は、検査部位が乳房であり、検査プロトコルが乳房の正面スタティック画像と断面像とを別々に撮影する検査プロトコルと決定される場合のコリメータの種類および配置の一例を示す説明図である。
検査部位が乳房である場合、本実施形態に係る3検出器型の核医学診断装置1の検査制御機能44は、通常の回転撮像による断層像撮像を行なう検査プロトコル(以下、通常乳房プロトコルという)のほか、たとえば乳房の正面スタティック画像と断面像とを別々に撮影する工程を含む検査プロトコル(以下、パラレルー断面乳房プロトコルという)を実行することができる。パラレルー断面乳房プロトコルは、正面スタティック画像と断面像とを別々に撮像する工程を含む検査プロトコルである。
たとえば、プロトコル決定機能42が、実行すべき検査プロトコルをパラレルー断面乳房プロトコルに決定すると、通知機能43は、パラレルー断面乳房プロトコルで利用される3つのコリメータ13a、13bおよび13cが、2つのマルチピンホールコリメータまたは2つのファンビームコリメータと、1つのパラレルホールコリメータと、である旨の情報を通知するのでユーザは確認する。なお、パラレルー断面乳房プロトコルで利用されるファンビームコリメータとしては、たとえば短焦点ファンビームコリメータを用いることができる。
正面スタティック画像は、天板21に載置された被検体の上面に対向する位置に配置されたパラレルホールコリメータを設けられたガンマ線検出器(図7の上側参照)によるスタティック収集により、左右の乳房が含まれる全体を撮像した静止全体画像である。
一方、断面像は、被検体の左上および右上に配置された2つのマルチピンホールコリメータまたは2つのファンビームコリメータが設けられた2つのガンマ線検出器(図7の下側参照)による、左乳房および右乳房のそれぞれの同時SPECT収集にもとづく再構成処理により取得される。
2つのマルチピンホールコリメータまたは2つのファンビームコリメータは、スタティック収集時の位置から回転架台が180度回転したあとで、左乳房および右乳房のそれぞれの撮像に好適な位置に位置決めされることによって、被検体の左上および右上に配置される。したがって、検査制御機能44は、ダイナミックプラナー像と断面像とを同時には生成せず、別々に生成する。
また、左乳房の断面像は、左乳房に対応するガンマ線検出器が取得した時間軸的な全ての投影データを用いて(たとえば、全ての投影データを足し合わせたデータあるいは平均化したデータを用いて)にもとづいて1つの断層像に再構成されたものである。右乳房の断面像も同様である。なお、SPECT収集におけるフレームモードデータまたはリストモードデータに係る説明と、回転架台の左右少しの回転を用いたトモシンセシスによる断層像生成に係る説明は、第1の検査例の説明と同様であるため省略する。
ユーザは、乳房全体のスタティック画像と、左乳房および右乳房のそれぞれの断層像と、を用いて、乳房全体の腫瘍検査やリンパ節転移などを調べることができる。
第2の検査例によれば、核医学診断装置1は、正面スタティック画像生成のための投影データ収集と断面像生成のための投影データ収集とを別のタイミングで行うものの、3つのコリメータを交換する必要が無いため、被検体とガンマ線検出器との位置関係を維持したまま正面スタティック画像と断面像とを収集することができる。このため、核医学診断装置1は、被検体の同一の位置における正面スタティック画像と断面像とを非常に容易かつ正確に生成することができる。さらにこのとき、検査制御機能44は、左乳房および右乳房の投影データを同時に収集することができる。
また、乳房は比較的小さな臓器であるため、一般的な2検出器型のガンマ線検出器のような500−600mmなどの大視野のガンマ線検出器を用いずとも、3検出器型の小視野のガンマ線検出器であっても検査に十分なデータ収集が可能である。
また、乳房は、3つのコリメータ13a、13bおよび13cの全てをパラレルホールコリメータとする通常乳房プロトコルでも検査は可能であるが、第2の検査例によれば、第1の検査例と同様に、核医学診断装置1は、ガンマ線検出器が3つあることを活用し、全体画像と左右の乳房の断層像とを同時に短時間で得ることができる。
(4)第3の検査例(心臓)
第3の検査例は、検査部位が心臓である場合の例である。
図8は、検査部位が心臓であり、検査プロトコルが心臓の断面像を撮影する検査プロトコルと決定される場合のコリメータの種類および配置の一例を示す説明図である。
たとえば、検査部位が心臓であり、プロトコル決定機能42が実行すべき検査プロトコルとして心臓の断面像を撮影する検査プロトコルを決定すると、通知機能43は、たとえば3つのコリメータ13a、13bおよび13cの少なくとも1つがマルチピンホールコリメータまたはファンビームコリメータ(たとえば短焦点ファンビームコリメータなど)である旨の情報を通知するのでユーザは確認する。なお、このとき、他の2つのコリメータの種類はどの種類でもよいため、他の2つのコリメータの種類は通知せずともよい。
そして、検査制御機能44は、被検体の左上に配置された1つのマルチピンホールコリメータまたはファンビームコリメータが設けられたガンマ線検出器による(図8参照)SPECT収集データにもとづいて、再構成処理によって心臓の断層像を生成する。なお、SPECT収集におけるフレームモードデータまたはリストモードデータに係る説明と、回転架台の左右少しの回転を用いたトモシンセシスによる断層像生成に係る説明は、第1の検査例の説明と同様であるため省略する。
本実施形態に係る核医学診断装置1は、第1の検査例および第2の検査例でそれぞれ示した腎臓および乳房のような、体軸に対して線対称な部位の検査に好適であるとともに、第3の検査例に示すように、頭部や心臓などの、3検出器型のSPECT装置が一般に適用される検査部位の撮像にも、もちろん適用することが可能である。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、検査部位および検査方法と、コリメータの種類および配置と、に応じて、検査プロトコルを決定し、検査を実行することができる。
なお、本実施形態における処理回路35の受付機能41、プロトコル決定機能42および通知機能43は、それぞれ特許請求の範囲における受付部、決定部および通知部の一例である。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。