JP6857577B2 - ガスクロマトグラフ質量分析装置、およびガスクロマトグラフ質量分析方法 - Google Patents
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Description
図1は、実施形態に係るガスクロマトグラフ質量分析装置1の概略を示す構成図である。図1に示すガスクロマトグラフ質量分析装置1は、ガスクロマトグラフで分離した試料成分を順次に質量分析するものであって、クロマト分離部10、分岐管20、第1配管21、第2配管22、クロマト検出器30、冷却器40、質量分析計50、および制御部60を備えている。以下、これらの構成要素の詳細を説明する。
クロマト分離部10は、分析対象となる混合物試料を成分毎に分離する部分である。このクロマト分離部10は、分析対象となる混合物試料を導入するための試料導入部11と、導入された試料を成分毎に分離するための分離カラム12と、これらを収容する加熱オーブン13とを備えている。
試料導入部11は、マイクロシリンジ2を用いて混合物試料が導入される部分である。この試料導入部11は、ヒーター(図示せず)によって高温に加熱され、マイクロシリンジ2から導入された混合物試料を加熱する。この際、マイクロシリンジ2から導入される混合物試料が液体であれば、液体の混合物試料が試料導入部11においてガス化され、混合物試料が気体であればそのまま加熱される。
分離カラム12は、試料導入部11から導入されたガス状の混合物試料を成分毎に分離するものである。この分離カラム12は、キャリアガスと共にカラム中を移動する混合物試料中の各成分を、カラム中の固定相との相互作用(吸着、分配)によって選択的に遅延させて時間的に分離し、各成分に固有の保持時間(Retention Time:RT)で分岐管20に供給する。このような分離カラム12は、一例として内径0.25mm、長さ60mである。
加熱オーブン13は、温度制御機能を備えたものであって、試料導入部11から分離カラム12内に導入された混合物試料およびキャリアガスを加熱する。加熱オーブン13による分離カラム12および分離カラム12内の混合物試料およびキャリアガスの加熱は、予め設定された温度プログラムにしたがって加熱温度を変更して実施される。
分岐管20は、分離カラム12の他方の端部である排出端に接続されたもので、分離カラム12で分離された各成分とキャリアガスとを含んで供給されるガス(以下、分離ガスと称する)を、次に説明する第1配管21と第2配管22とに分配して供給するためのものでる。
第1配管21は、分岐管20によって分配された分離ガスを、以降に説明するクロマト検出器30に導入するための配管であって、分岐管20に接続された状態でクロマト分離部10の加熱オーブン13の内部に収容されている。この第1配管21は、分離ガス中に含有される成分を分離する機能を有しておらず、分離カラム12によって各成分が分離された分離ガスを、そのままクロマト検出器30側に流して導入するものである。
第2配管22は、分岐管20によって分配された分離ガスを、以降に説明する質量分析計50に導入するための配管であって、分岐管20に接続された状態でクロマト分離部10の加熱オーブン13の内部に収容されている。この第2配管22は、分離ガス中の成分を分離する機能を有しておらず、分離カラム12によって各成分が分離された分離ガスを、そのまま質量分析計50側に流して導入するものである。
クロマト検出器30は、クロマト分離部10で分離された後に第1配管21から供給される分離ガス中の各成分を検出するための検出器である。クロマト検出器30は、第1配管21の先端に接続された状態で、クロマト分離部10の加熱オーブン13の外側に配置されている。このようなクロマト検出器30は、質量分析計以外の一般的なガスクロマトグラフ用の検出器が適用され、第1配管21から供給される分離ガス中の成分の検出信号を分離カラム12における保持時間[RT]に対して関連付けたクロマトグラムを得る。
冷却器40は、第2配管22から質量分析計50に供給される分離ガスを、第2配管22における接続端22aにおいて一時的に冷却することによってトラップし、分離ガス中に含まれる成分を凝縮した状態で質量分析計50に供給するためのものである。この冷却器40は、第2配管22における接続端22aを加熱する状態で配置されている。また冷却器40は、駆動制御機能を備えたものであって、クロマト分離部10の加熱オーブン13の内部に収容されている。これにより、冷却器40の駆動を停止した状態では、第2配管22における接続端22aが加熱オーブン13によって加熱され、接続端22a内の分離ガスが加熱された状態で質量分析計50に供給される構成となっている。このような冷却器40の駆動は、以降に説明する制御部60によって制御される。
質量分析計50は、クロマト分離部10において時間的に分離された状態で第2配管22から供給される各成分を順次にイオン化し、イオン化した各成分のイオンをさらに質量電荷比[m/z]に応じて分離して検出する部分である。この質量分析計50は、例えばインターフェース50aを介して第2配管22の接続端22aに接続された状態でクロマト分離部10の加熱オーブン13の外側に配置されている。インターフェース50aは、分離ガスを質量分析計50に供給する部分である。このような質量分析計50は、次のようなイオン化部、質量分離部、および検出部を備えている。
イオン化部は、分離ガス中の成分を順次にイオン化する。このイオン化部では、それぞれの成分の分子イオンと、分子イオンが開裂した複数のフラグメントイオンとが生成される。
質量分離部は、イオン化部から供給された各イオンを質量電荷比[m/z]毎に分離し、特定の質量電荷比[m/z]のイオンのみを通過させて検出部に到達させるためのものである。質量分離部は、SIM(Selected Ion Monitoring)モード、スキャンモード、またはこれらを組み合わせたモードでの質量分離を実施する。
検出部は、質量分離部において質量電荷比[m/z]に応じて分離されたイオンの信号強度を、各保持時間[RT]において検出する。これにより、保持時間[RT]を横軸とし信号強度を縦軸としたクロマトグラムを得る。また特に、質量分離部がスキャンモードでの質量分離を実施する場合、検出部は、質量分離部において質量電荷比[m/z]に応じて分離されたイオンの信号強度を検出し、得られた信号強度を各スキャンに対応させて取り出す。これにより、クロマトグラムの各保持時間[RT]において、質量電荷比[m/z]に応じた質量スペクトルを得る。またこれと共に、質量電荷比[m/z]毎のクロマトグラム(マスクロマトグラム)や、全質量電荷比[m/z]の信号を加算したクロマトグラムを得る。
制御部60は、クロマト検出器30からの信号に基づいて冷却器40の駆動を制御し、また質量分析計50の信号をクロマト検出器30の信号と関連付けしたデータを作成する。このような制御部60は、例えばここでの図示を省略したCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)によって構成され、ピーク検出部61、冷却駆動演算部62、およびクロマトグラム補正部63を備えている。
ピーク検出部61は、クロマト検出器30で検出された信号のピークを検出する。図2(A)に示すように、このピーク検出部61は、例えばクロマト検出器30で検出される信号強度に閾値[Ith]を設定し、信号強度が設定した閾値[Ith]を越えた場合にピークP1〜P4を検出したと判断する。そしてピークP1〜P4を検出し始めた時間T1と検出し終わった時間T2とを、分離カラム12の保持時間[RT]に対応させたピーク幅Wとして検出する。
冷却駆動演算部62は、ピーク検出部61からの情報と、加熱オーブン13の温度制御機能からの情報とに基づいて、冷却器40を駆動させる時間を算出する。図2(B)に示すように、冷却器40を駆動させる時間とは、冷却器40による冷却の開始時間T1’と終了時間T2’とである。ここで算出する冷却の開始時間T1’と終了時間T2’とは、分離カラム12において同一の保持時間[RT]で他の成分と分離されてピーク検出部61においてピーク検出された成分と同一の成分を、第2配管22の接続端22aにトラップするための時間である。
クロマトグラム補正部63は、第1配管21および第2配管22の設計値と、冷却駆動演算部62からの情報とに基づいて、質量分析計50の検出部で得られたクロマトグラムの保持時間[RT]を補正する。
図4は、実施形態に係るガスクロマトグラフ質量分析方法を示すフローチャートであって、図1〜図3を用いて説明したガスクロマトグラフ質量分析装置1の制御部60において実施されるガスクロマトグラフ質量分析方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示す手順は、制御部60を構成するCPUが、ROMやRAMに記録されたプログラムを実行することにより実現される手順であって、質量分析計50による質量分析を実施する手順を示している。
先ずステップS101において、ピーク検出部61は、クロマト検出器30からの信号にピークがあるか否かを判断し、ピーク検出がある(YES)と判断されるまで、判断を繰り返す。ここでピーク検出部61は、例えばクロマト検出器30で検出される信号強度に閾値[Ith]を設定し、信号強度が設定した閾値[Ith]を越えた場合にピークを検出したと判断する。そしてピーク検出がある(YES)と判断された場合に、ステップS102に進む。
次にステップS102において、ピーク検出部61は、図2(A)に示すように、クロマト検出器30で検出したピークP1のピーク幅Wを検出する。ここでピーク検出部61は、ピークP1を検出し始めた時間T1と、信号強度が設定した閾値[Ith]Ithを下回ることによってピークP1を検出し終わった時間T2とを、分離カラムの保持時間[RT]に対応させたピーク幅Wとして検出する。
その後ステップS103において、冷却駆動演算部62は、ステップS102でピーク検出部61が検出したピーク幅W(T1,T2)と加熱オーブン13の温度とに基づいて、冷却器40による冷却の開始時間T1’と終了時間T2’とを算出する。ここで算出する冷却の開始時間T1’と終了時間T2’は、クロマト検出器30で検出したピークP1の成分と同一の成分を、第2配管22の接続端22aにトラップするための時間である。
次にステップS104において、冷却駆動演算部62は、算出した冷却の開始時間T1’と終了時間T2’にしたがって、冷却器40に対して冷却の開始と終了の指令を送信する。
ステップS105において、ピーク検出部61は、全保持時間についてのピーク検出が終了したか否かを判断する。ここで全保持時間とは、分離カラム12で分離した全成分の保持時間[RT]の範囲である。そして、終了した(YES)と判断された場合にはステップS106に進む。終了していない(NO)と判断した場合には、ステップS101に戻り、図2(A)に示した全ての保持時間[RT]の範囲について、ピークP2〜P4が検出される毎に、ステップS101〜ステップS104の処理を繰り返す。
ステップS106において、クロマトグラム補正部63は、クロマトグラムの保持時間[RT]の補正を実施する。ここでクロマトグラム補正部63は、第1配管21および第2配管22の設計値と、冷却駆動演算部62からの情報とに基づいて、質量分析計50の検出部で得られたクロマトグラムの保持時間[RT]を補正する。ここでは、図3に示す質量分析計50で得られた各成分のピークP1’〜P4’の保持時間[RT]を、図2(A)に示したクロマト検出器30で検出されたピークP1〜P4の保持時間[RT]と一致させる。そして、クロマト検出器30と質量分析計50とにおいて同一の保持時間[RT]で検出されたことを示すデータを作成する。これにより、質量分析計50の検出部で得られたピークP1’〜P4’の保持時間[RT]を、クロマト検出器30で検出されたピークP1〜P4の保持時間[RT]と一致させたピークP1”〜P4”を得る。
以上説明した実施形態によれば、クロマト検出器30でピーク検出された後に、ピーク検出された成分を冷却によって凝縮して質量分析計50で検出するため、1回の成分分離でありながらも質量分析計においての感度の向上を図ることが可能である。
10…クロマト分離部
12…分離カラム
13…加熱オーブン
20…分岐管
21…第1配管
22…第2配管
22a…第2配管における前記質量分析計との接続端
30…クロマト検出器
40…冷却器
50…質量分析計
60…制御部
Claims (13)
- 分離カラムと、
前記分離カラムの排出端に接続された二股の分岐管と、
前記分岐管を介して前記分離カラムに接続された第1配管と、
前記第1配管を介して前記分離カラムに接続されたクロマト検出器と、
前記分岐管を介して前記分離カラムに接続され、前記分離カラムによって分離された成分を含む分離ガスを前記第1配管よりも遅れて排出する第2配管と、
前記第2配管を介して前記分離カラムに接続された質量分析計と、
前記第2配管における前記質量分析計との接続端を冷却するための冷却器と、
前記分離カラムにおいて分離された成分が前記クロマト検出器において検出された場合に、前記検出された成分が前記第2配管の接続端に達するタイミングで前記冷却器を駆動させる制御部とを備えた
ガスクロマトグラフ質量分析装置。 - 前記制御部は、前記クロマト検出器で検出された前記成分のピーク幅に合わせて前記冷却器の駆動を停止させる
請求項1に記載のガスクロマトグラフ質量分析装置。 - 前記第2配管は、前記第1配管よりも内径が大きい
請求項1または2に記載のガスクロマトグラフ質量分析装置。 - 前記第2配管は、前記第1配管よりも長い
請求項1〜3の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ質量分析装置。 - 前記制御部は、前記クロマト検出器での検出によって得られたクロマトグラムに合わせて、前記質量分析計で得られたマスクロマトグラムの保持時間を補正する
請求項1〜4の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ質量分析装置。 - 前記分離カラムを収容し前記分離カラムと共にクロマト分離部を構成する加熱オーブンを備え、
前記分岐管、前記第1配管、および前記第2配管が、前記分離カラムと共に前記加熱オーブン内に収容されている
請求項1〜5の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ質量分析装置。 - 前記冷却器は、前記加熱オーブン内に配置され、駆動を停止した状態において前記第2配管の接続端が前記加熱オーブンによって加熱されるように設けられている
請求項6に記載のガスクロマトグラフ質量分析装置。 - 分離カラムに接続された分岐管が、前記分離カラムによって分離された成分を含む分離ガスを第1配管と第2配管とに分配し、
前記第1配管に接続されたクロマト検出器が、前記分離カラムにおいて分離された成分を検出し、
前記第2配管に接続された質量分析計が、前記クロマト検出器で検出された成分を前記クロマト検出器よりも遅いタイミングで検出し、
前記第1配管に接続されたクロマト検出器が前記分離カラムにおいて分離された成分を検出した場合に、制御部が、前記第2配管における前記質量分析計との接続端に前記検出された成分が達するタイミングで前記第2配管の接続端に設けた冷却器を駆動させる
ガスクロマトグラフ質量分析方法。 - 前記制御部は、前記クロマト検出器で検出された前記成分のピーク幅に合わせて前記冷却器の駆動を停止させる
請求項8に記載のガスクロマトグラフ質量分析方法。 - 前記第2配管は、前記分離カラムによって分離された成分を含む分離ガスを前記第1配管よりも遅れて排出する
請求項8または9に記載のガスクロマトグラフ質量分析方法。 - 前記制御部は、前記クロマト検出器での検出によって得られたクロマトグラムに合わせて、前記質量分析計で得られたマスクロマトグラムの保持時間を補正する
請求項8〜10の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ質量分析方法。 - 前記分離カラムと共にクロマト分離部を構成する加熱オーブンが、前記分岐管、前記第1配管、および前記第2配管を加熱する
請求項8〜11の何れか1項に記載のガスクロマトグラフ質量分析方法。 - 前記加熱オーブンは、前記冷却器の駆動を停止した状態において前記第2配管の接続端を加熱する
請求項12に記載のガスクロマトグラフ質量分析方法。
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