JP6854450B2 - スパッタ装置およびスパッタ方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体ウエハなどの基板に対する成膜を行う、スパッタ装置およびスパッタ方法に関する。
半導体デバイスの製造において、基板上に金属や酸化物などの薄膜を形成し、これを所望のパターンに形成して、電極や配線の他、抵抗、キャパシタなどを形成している。近年、例えばデバイスの使用環境がより高温になりデバイスを保護するパッシベーション薄膜に対してより高密度化が求められるなど、高密度あるいは結晶性の高い薄膜の形成技術への必要性が高まっている。
デバイスの薄膜形成において、一般的に、生産速度や生産安定性の観点から、直流スパッタや高周波スパッタなどを用いて製造することが多い。その中で、化合物の薄膜を形成する場合には、原料となるターゲット材料と反応ガスとを反応させて堆積する反応性スパッタを用いる。しかし、ターゲット材料と反応ガスとの組み合わせによっては、十分な反応速度が得られず、特に窒素ガスを用いた窒化膜の形成を行う場合には、一般的なスパッタでは高密度あるいは結晶性の高い薄膜を得ることが困難である。
従来、このような高密度・高配向の薄膜形成をねらった成膜手段の一つとして、パルススパッタがある(例えば、特許文献1参照。)。
そこで、図6を主として参照しながら、従来のパルススパッタ法について説明する。ここに、図6は、従来のパルススパッタ装置の概略断面図である。真空チャンバー1は、バルブ3を介して接続された真空ポンプ2で排気することによって減圧を行って、真空状態にすることができる。ガス供給源4は、スパッタに必要なガスを真空チャンバー1へ一定速度で供給することができる。バルブ3は、その開閉率を変化させることで、真空チャンバー1内の真空度を所望のガス圧力に制御することができる。真空チャンバー1内には、ターゲット材7が配置されている。バッキングプレート8は、ターゲット材7を支持している。電源制御器40は、直流電源30に接続され、電源出力のオン、オフを一定のタイミングに制御することができる。直流電源30の出力はバッキングプレート8に電気的に接続され、バッキングプレート8を介してターゲット材7に電圧を印加することにより、真空チャンバー1内の一部のガスが解離し、プラズマを発生させることができる。真空チャンバー1内には、ターゲット材7に対向して、基板6が配置されている。基板ホルダー5は、基板6の下部に配置され、基板6を支持する。
電圧印加のオンの時間に、真空チャンバー1内に発生させたパルス状のプラズマによってターゲット材7がスパッタリングされて飛び出し、基板6に到達してターゲット材7の薄膜が堆積する。それと同時に、真空チャンバー内のガスおよびプラズマが、基板上に堆積されつつあるターゲット材7と反応する。また、電圧印加のオフの時間にも、真空チャンバー内のガスおよびプラズマが、基板上に堆積したターゲット材7と反応することで、ターゲット材7とガスが反応した緻密な化合物が形成される。これら一連のパルス成膜を所定の回数繰り返すことで、高密度な化合物薄膜を得る。
また、一般的に、ターゲット材7の裏面には、マグネット11とヨーク12とが配置され、ターゲット材7の表面において、ターゲット材7の平面に対する平行磁場が最大となる位置にプラズマを集中させて、成膜速度を向上させている。なお、このプラズマが集中する位置をエロージョンと呼ぶ。また、エロージョンが特定の位置に集中するとターゲット材7の一部だけが消耗し、材料を効率的に利用できないため、図示していないが、マグネット11とヨーク12を、駆動装置によってターゲット材7に対して平行に移動して、エロージョン位置を移動させることがある。
特許第5490368号公報
しかしながら、上述された従来のスパッタ装置(図6参照)については、直流電源30内部の電圧一定制御の周期と、パルスのオン、オフのタイミングの周期とが、同期してしまった場合、電圧のリップルが増大し、放電電流が変動し、安定して成膜することが出来ない。また、マグネット11を回転してエロージョンを移動させる場合、マグネット11の回転周期によっては、ターゲット材7の表面での材料とガスとの反応ムラに伴って、放電が安定しなかったり、形成された薄膜の密度や屈折率などの膜質の基板6の面内での分布が悪化してしまう。さらに、長時間の成膜においては、ターゲット材7の消耗に伴って、ターゲット材7と基板6との位置関係が変化してしまうため、基板6の面内で膜質分布が悪化してしまい、ターゲット材7を使い切る前に交換が必要になってしまうといった問題があった。
本発明は、上述された従来の問題点を考慮し、高品質の膜を安定して成膜することが可能なスパッタ装置およびスパッタ方法を提供することを目的とする。
本発明に係るスパッタ装置は、内部にターゲット材と基板とを互いに対向して配置可能な真空チャンバーと、
前記ターゲット材と電気的に接続可能な直流電源と、
前記直流電源から前記ターゲット材に流れる電流をパルス化するパルス化ユニットと、を備え、
前記真空チャンバー内でプラズマを生成して前記基板上に薄膜を形成するスパッタ装置であって、
前記直流電源から前記パルス化ユニットに流れる電流を計測する電流計と、
前記電流計で計測した電流値が所定の値となるように前記直流電源をフィードバック制御する電源制御器と、
前記電源制御器による前記直流電源のフィードバック制御の周期とずらしたパルス周期を前記パルス化ユニットに指示するパルス制御器と、
を備える。
本発明に係るスパッタ方法は、真空チャンバー内でプラズマを生成して基板上に薄膜を形成するスパッタ方法であって、真空チャンバー内にターゲット材と基板とを互いに対向して配置するステップと、
前記ターゲット材と直流電源とを電気的に接続するステップと、
前記直流電源から前記ターゲット材に流れる電流をパルス化ユニットを介してパルス化するステップと、
前記直流電源から前記パルス化ユニットに流れる電流を計測するステップと、
計測した電流値が所定の値となるように前記直流電源をフィードバック制御するステップと、
前記直流電源のフィードバック制御の周期とずらしたパルス周期を前記パルス化ユニットに指示するステップと、
を含む。
本発明に係るスパッタ装置及びスパッタ方法によって、電流計で計測した電流値が所定の値となるようにフィードバック制御されるので、放電が安定化する。長時間成膜してターゲット材が消耗しても、エロージョンと基板の位置関係の変化が最小限に抑制されるので、高品質で均一な膜質が維持されることが可能となり、高品質の膜を安定して成膜することが可能となる。
実施の形態1に係るスパッタ装置の構成を示す概略断面図である。 実施の形態1のスパッタ装置の、直流電源の電圧および電流値とパルス電圧および電流との関係を示すタイミング図である。 スパッタ装置において、パルス周期と直流電源の制御周期とが同期している場合の、プラズマの発光強度の変動と、その際の電流値の変動を示す図である。 パルスの周期と直流電源のフィードバック制御の周期とをずらした場合のプラズマの発光強度の変動と、その際の電流値の変動を示す図である。 実施の形態2のスパッタ装置の構成を示す概略断面図である。 実施の形態2のスパッタ装置の、積算パルス数、マグネット回転角、基板位置とパルス数との関係を示すタイミング図である。 従来のパルススパッタ装置の、概略断面図である。
第1の態様に係るスパッタ装置は、内部にターゲット材と基板とを互いに対向して配置可能な真空チャンバーと、
前記ターゲット材と電気的に接続可能な直流電源と、
前記直流電源から前記ターゲット材に流れる電流をパルス化するパルス化ユニットと、を備え、
前記真空チャンバー内でプラズマを生成して前記基板上に薄膜を形成するスパッタ装置であって、
前記直流電源から前記パルス化ユニットに流れる電流を計測する電流計と、
前記電流計で計測した電流値が所定の値となるように前記直流電源をフィードバック制御する電源制御器と、
前記電源制御器による前記直流電源のフィードバック制御の周期とずらしたパルス周期を前記パルス化ユニットに指示するパルス制御器と、
を備える。
第2の態様に係るスパッタ装置は、上記第1の態様において、前記ターゲット材の前記基板と対向する面と反対側である裏面に配置されたマグネットと、
前記ターゲット材の前記裏面と交差する回転軸について、前記マグネットを回転させる回転機構と、
前記回転機構を制御する回転制御器と、
前記基板と前記ターゲット材との間隔を変化させるように前記基板の位置を前記ターゲット材に対して昇降移動させる昇降機構と、
前記昇降機構を制御する昇降制御器と、
を備えてもよい。
第3の態様に係るスパッタ装置は、上記第1又は第2の態様において、前記パルス制御器は、前記電源制御器のフィードバック制御の周期をF1、前記パルス周期をF2とし、F1とF2の最小公倍数をF3とした場合、F3÷F1=Nで得られる整数Nが10以上となるように、オン時間とオフ時間とを算出し、前記パルス化ユニットに指示してもよい。
第4の態様に係るスパッタ装置は、上記第1又は第2の態様において、前記パルス制御器は、前記電源制御器のフィードバック制御の整数倍周期に対して、パルス周期が1%以上ずれるように、オン時間とオフ時間とを算出し、前記パルス化ユニットに指示してもよい。
第5の態様に係るスパッタ装置は、上記第2の態様において、前記パルス制御器は、設定されたパルスのオン時間及びオフ時間を基に、前記マグネットの回転の1周期が1000パルス以上となるように回転速度を演算して前記回転制御器に指示し、
前記パルス制御器は、事前に得られたパルス数に対する前記ターゲット材の消耗量の情報を基に、前記基板の位置を前記ターゲット材に近づける移動量を前記昇降制御器に指示してもよい。
第6の態様に係るスパッタ方法は、真空チャンバー内でプラズマを生成して基板上に薄膜を形成するスパッタ方法であって、真空チャンバー内にターゲット材と基板とを互いに対向して配置するステップと、
前記ターゲット材と直流電源とを電気的に接続するステップと、
前記直流電源から前記ターゲット材に流れる電流をパルス化ユニットを介してパルス化するステップと、
前記直流電源から前記パルス化ユニットに流れる電流を計測するステップと、
計測した電流値が所定の値となるように前記直流電源をフィードバック制御するステップと、
前記直流電源のフィードバック制御の周期とずらしたパルス周期を前記パルス化ユニットに指示するステップと、
を含む。
以下、図面を参照しながら、実施の形態に係るスパッタ装置及びスパッタ方法について詳細に説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
(実施の形態1)
まず、図1を主として参照しながら、実施の形態1のスパッタ装置10の構成について説明する。図1は、実施の形態1に係るスパッタ装置10の概略断面図である。
このスパッタ装置10は、真空チャンバー1と、直流電源30と、パルス化ユニット32と、電流計31と、電源制御器40と、パルス制御器41と、を備える。真空チャンバー1には、内部にターゲット材7と基板6とを互いに対向して配置可能である。直流電源30は、ターゲット材7と電気的に接続可能である。パルス化ユニット32によって、直流電源30からターゲット材7に流れる電流をパルス化する。電流計31によって直流電源30からパルス化ユニット32に流れる電流を計測する。電源制御器40によって電流計31で計測した電流値が所定の値となるように直流電源30をフィードバック制御する。パルス制御器41によって、電源制御器40による直流電源30の制御周期とずらしたパルス周期をパルス化ユニット32に指示する。
このスパッタ装置10によれば、直流電源30のフィードバック制御の周期とずらしたパルス周期でパルス化した電流をターゲット材7へ流す。そこで、フィードバック制御において、電流検出の周期が、パルスの周期と一致しないので、直流電源の直流電流値の脈動の特定の位置を検出することはない。これにより、検出した電流値の平均値をとることで、正しい時間平均の電流値を算出することができる。そこで、算出した電流値を元に直流電源をフィードバック制御することで、プラズマ強度の変動を抑制することができる。
以下に、このスパッタ装置10を構成する各構成部材について説明する。
<真空チャンバ>
真空チャンバー1は、バルブ3を介して接続された真空ポンプ2で排気することによって、真空状態への減圧を行うことができる。
<ガス供給源>
ガス供給源4は、スパッタに必要なガスを真空チャンバー1へ一定速度で供給することができる。ガス供給源4で供給するガスは、例えば窒素や酸素など目的の材料と反応性を持ったガスや、反応性を持ったガスとアルゴンなどの希ガスとの混合ガスなどが選択できる。
<バルブ>
バルブ3は、その開閉率を変化させることで、真空チャンバー1内の真空度を所望のガス圧力に制御することができる。
<ターゲット材>
図1において、真空チャンバー1内の上部には、ターゲット材7が配置されている。ターゲット材7は、任意のスパッタ材料であるが、例えば金属材料や半導体材料などの無機材料である。
<バッキングプレート>
バッキングプレート8は、ターゲット材7を支持している。
<直流電源>
直流電源30は、電流計31と、パルス化ユニット32と、バッキングプレート8を介して、ターゲット材7に電気的に接続され、ターゲット材7に電圧を印加することができる。
<パルス化ユニット>
パルス化ユニット32は、直流電源30によって発生した直流電流を、内蔵するコンデンサ等に蓄積し、内蔵する半導体スイッチング素子等によりオン、オフして、パルス化することができる。
<電流計>
電流計31は、直流電源30から、パルス化ユニット32へ流れる電流を検出することができる。
<電源制御器>
電源制御器40は、電流計31と直流電源30とに接続され、電流計31が検出した電流値が所定の値で安定するように、直流電源の電圧設定値をフィードバック制御することができる。
<パルス制御器>
パルス制御器41は、電源制御器40とパルス化ユニット32とに接続され、電源制御器40から得た直流電源30の状態に基づいて、パルス化ユニットへ指示するパルスのオン時間、オフ時間を制御する。
<マグネット及びヨーク>
マグネット11およびヨーク12は、バッキングプレート8の裏面に配置され、ターゲット材7の表面に磁場13を発生させることができる。マグネット11は1つ以上であればよい。なお、マグネット11は、永久磁石、電磁石のいずれであってもよい。ヨーク12は、マグネット11の一端と接続されており、磁気回路を構成し、ターゲット材7と反対側への不要な磁場の漏洩を抑制できる。
<基板及び基板ホルダー>
図1において真空チャンバー1内の下部には、ターゲット材7と対向として基板6が配置されている。基板ホルダー5は、基板6の下部に配置され、基板6を支持する。
(スパッタ装置の動作)
次に、本実施の形態1に係るスパッタ装置10の動作について説明するとともに、本実施の形態1に係るスパッタ方法についても説明する(他の実施の形態2についても同様である)。
(1)まず、真空チャンバー1にターゲット材7をセットするとともに、基板6をターゲット材7の下方に略水平にセットする。
(2)次に、真空ポンプ2を作動させて真空チャンバー1内が真空状態になるように減圧を行い、所定の真空度に到達した後、ガス供給源4からガスを導入し、所定のガス圧力となるようにゲートバルブ3の開度を調整する。
(3)次いで、直流電源30により電圧を発生させ、パルス化ユニット32により所定のオン時間、オフ時間でスイッチングすることでパルス化させて、ターゲット材7に印加し、真空チャンバー1内にプラズマを発生させる。
<パルスの発生状態>
パルスの発生状態について、図2のタイミング図を用いて説明する。図2の(a)から(d)は、実施の形態1のスパッタ装置の、直流電源の電圧(図2(a))および電流値(図2(b))とパルス電圧(図2(c))および電流(図2(d))との関係を示すタイミング図である。直流電源30から、パルス化ユニット32に供給されるのは負の直流電圧、直流電流である(図2(c)、(d))。パルス化ユニットが生成するパルス電圧は、所定のオン時間、オフ時間を繰り返す矩形に近いパルス形状をしている(図2(a))。パルス電圧の印加により、パルスオンの時間の間、プラズマが発生しパルス電流は徐々に増大し、パルスオフの時間の間、プラズマが消失する過程でパルス電流は徐々に減少しゼロとなる(図2(b))。その際、直流電源30は、パルス化ユニット32が消費する電流を供給するために、直流電源30の電圧値は正方向に電圧降下して脈動する(図2(c))。一方、直流電源30の電流値は負方向に増加する方向に脈動する(図2(d))すなわち、直流電源30の直流電圧及び直流電流には、パルスの周期と一致した脈動が発生している。電流計31は、脈動する電流値を一定の周期で検出し、電源制御器40は検出した電流値を所定の回数平均し、平均電流値が所定の値となるように直流電源30をフィードバック制御する。
このスパッタ装置では、上記直流電源30のフィードバック制御の際、直流電源30のフィードバック制御の周期とパルスの周期とが同期しないように、フィードバック制御の周期に対してパルスの周期をずらした値に設定する。パルスの周期をずらすために、例えば、パルスオンの時間又はパルスオフの時間をわずかに長くすればよい。なお、オン時間を変更するとパルス電流の立ち上がりが変わるので、望ましくはパルスオフの時間を変更することが好ましい。フィードバック制御の周期をF1、パルス周期をF2とし、F1とF2の最小公倍数をF3とした場合、N=F3÷F1で得られる整数Nは、N回に1回の割合でフィードバック制御がパルス周期と一致することを表す。Nは10以上が望ましく、すなわち周期が一致する割合が10回に1回以下とすることが望ましい。スパッタ材料の違いや、高速成膜する場合など、パルスが大電流となり電流の変動が大きい場合には、さらに変動を抑制するためにNを20以上とするのが良い。前記Nを満たす周期となるように、ずらす時間として具体的には、パルス周期を1%以上ずらすのが望ましく、さらに変動を抑制する効果として5%以上が望ましい。なお、パルス周期を100%、200%と区切りよくずらすと、パルス周期は整数倍となるため、周期が一致する割合がずらす前と同じとなるため、これを避けるのが良い。
<フィードバック制御>
パルスの周波数をずらした、直流電源30のフィードバック制御について図3A及び図3Bを用いて説明する。
図3Aは、仮に、パルス周期10kHzと直流電源のフィードバック制御の周期10kHzとが同期している場合の、プラズマ発光強度の変動を示す図である。図3Aにおいて、プラズマ発光強度の観測間隔は、パルス周期に比べ100倍以上長いため、100以上のパルスの平均強度の変動を観測していることになる。また、吹き出しA、B、Cの中は、図2(d)における直流電流値の変動を示す図である。吹き出しA,B、Cは、それぞれ同じ検出周期であるが、検出のタイミングがそれぞれずれている。このため、同じ電流波形であっても、吹き出しA、B、Cのそれぞれで検出される電流値は異なる。この場合、電流計31での検出周期は、パルスの周期と同一ではないがほぼ同期しているので、吹き出しA、B、Cの図に示す通り、電流値の脈動のそれぞれ異なる特定の位置を検出することとなる。これを元に電流値をフィードバック制御すると、検出している電流値の平均値と、実際の電流値の平均値とでずれが生じる。また、このずれはパルス周期とフィードバック制御の周期との差分周期で、別の吹き出し図に示すように、徐々に時間変化することとなる。したがって、フィードバック制御で脈動が増長されてプラズマを安定させることができず、プラズマ発光強度は図の通り、大きく変動してしまう。
図3Bは、パルスの周期と直流電源のフィードバック制御の周期とを5%ずらした場合のプラズマ発光強度の変動を示す図である。この場合、フィードバック制御において、電流検出の周期が、パルスの周期と21回に1回しか一致しないので、直流電源の直流電流値の脈動の特定の位置を検出する割合が小さくなり、検出した電流値の平均値をとることで、より正しい時間平均の電流値を算出することができる。上記のように、パルス周期としてフィードバック制御の周期に対して1%以上ずらすことによって、算出した電流値を元に直流電源をフィードバック制御することで、図3Bのように、プラズマ強度の変動を抑制することができる。
以上のように、真空チャンバー1内に発生させたパルス状のプラズマによってターゲット材7がスパッタリングされて飛び出し、基板6に到達してターゲット材料の薄膜が堆積すると同時に、真空チャンバー1内のガスおよびプラズマが、基板6上に堆積されつつあるターゲット材料と、反応する。また、電圧印加のオフの時間に、真空チャンバー1内のガスおよびプラズマが、基板6上に堆積したターゲット材料と、反応することで、緻密なターゲット材料とガスが反応した化合物が形成される。これら一連のパルス成膜を所定の回数繰り返すことで、高密度な化合物薄膜を得る。
以上によれば、このパルススパッタ装置10において、電流計で計測した電流値をフィードバックする制御が安定化されるので、プラズマ放電の電圧および電流の変動を抑制することが可能である。これにより、プラズマによるターゲット材7のスパッタリング速度、つまりターゲット材料の基板6への堆積速度を変動なく一定とすることができる。そこで、ガスおよびプラズマと基板6上に堆積したターゲット材料との反応についても変動なく一定とすることができるので、高品質の膜を安定して成膜することが可能となる。
(実施の形態2)
次に、図4を主として参照しながら、実施の形態2のスパッタ装置10aの構成について説明する。
ここに、図4は、実施の形態2に係るスパッタ装置10aの構成を示す概略断面図である。図4に関しては、図1に示されている部分と同じまたは相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図4においては、バッキングプレート8の裏面側にマグネット11およびヨーク12が配置されている。このスパッタ装置10aでは、実施の形態1に係るスパッタ装置と対比すると、ヨーク12には、偏心位置に回転機構20が接続され、マグネット11およびヨーク12を偏心回転させることができる点で相違する。また、回転機構20には、回転制御器42が接続され、回転機構20の回転を設定に基づいて制御することができる。また、回転制御器42にはパルス制御器41が接続され、回転の指示値を受けて所定の回転速度に設定することができる。
さらに、このスパッタ装置10aでは、実施の形態1に係るスパッタ装置と対比すると、基板ホルダー5には、昇降機構21が接続され、ターゲット材7と基板6との対向距離を変更することができる点で相違する。昇降機構21には、昇降制御器43が接続され、昇降機構21の昇降位置を設定値に基づいて制御することができる。また、昇降制御器43には、パルス制御器41が接続され、昇降の指示値を受けて所定の昇降速度に設定することができる。
マグネット11を偏心回転させることで、エロージョンもターゲット表面で移動するので、ターゲット材7の消耗量が、ターゲット材7の表面の一部に集中しなくなる。基板6上に連続して長時間成膜する場合や、基板6上に繰り返し成膜する場合など、パルスの積算数が増大してくると、ターゲット材7の表面が消耗量は大きくなる。例えば、ターゲット材7の厚みが5mmに対して、消耗量が4mmに達することもある。その場合、ターゲット材7の表面のエロージョン位置から、対向する基板6までの距離は、ターゲット材7が消耗する前に比べて消耗分だけ離れてしまうことになり、ターゲット材7の表面から飛び出すスパッタ粒子14が基板に到達する際のエネルギーが減少し、高品質な膜が得られないことがある。
本実施の形態2における、パルスとマグネット回転と基板6の昇降の制御ステップについて、図5を用いて説明する。図5は、実施の形態2のスパッタ装置10aの、パルスとマグネット11の回転と基板6の昇降との関係を示すタイミング図である。図5(a)は、積算パルス数とパルス数との関係を示すタイミング図である。図5(b)は、マグネットの回転角とパルス数との関係を示すタイミング図である。図5(c)は、基板昇降による基板位置とパルス数との関係を示すタイミング図である。
パルス制御器41は、パルス化ユニット32にパルスのオン時間、オフ時間を設定するとともに、実行されたパルス数を積算する(図5(a))。パルス制御器41は、パルスのオン時間、オフ時間の設定値を基に、マグネット11の回転の1周期が1000パルス以上の時間となるように回転速度を演算し、演算した回転速度を回転制御器42に指示する(図5(b))。これにより、パルス状のプラズマでターゲット材7をスパッタする際に、ターゲット材7の表面を均等にスパッタさせることができる。そこで、長時間の成膜においても、ターゲット材7の表面が、パルスによって不均一に消耗することなく、安定してスパッタ成膜することができる。
また、さらに成膜を長時間継続する際に、パルス制御器41は、事前に実験的に得られたパルス数に対するターゲット材7の消耗量の情報を基に、基板6の位置をターゲット材7に近づける移動量を演算し、演算した値を昇降制御器43に指示する(図5(c))。これにより、マグネット11の回転によりターゲット材7の表面を均等にスパッタしながら、さらに長時間の成膜においても、ターゲット材7の表面のエロージョンと対向する基板6の位置関係が維持されて、安定して均質な薄膜を成膜することが可能となる。
これらによれば、パルススパッタ装置10aにおいて、電流計で計測した電流値の時間平均値が所定の値となるようにフィードバック制御されるので、放電が安定化する。また、長時間成膜してターゲット材7が消耗しても、エロージョンと基板6の位置関係の変化が最小限に抑制されるので、高品質で均一な膜質が維持されることが可能となり、高品質の膜を長期間安定して成膜することが可能となる。
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
本発明に係るスパッタ装置およびスパッタ方法は、たとえば、高密度な窒化シリコン薄膜を安定して形成することが可能であり、薄膜デバイスの製造において、高品質パッシベーション薄膜の形成などに、有用である。
1 真空チャンバー
2 ポンプ
3 ゲートバルブ
4 ガス供給源
5 基板ホルダー
6 基板
7 ターゲット材
8 バッキングプレート
10、10a スパッタ装置
11 マグネット
12 ヨーク
13 磁場(磁力線)
14 スパッタ粒子
20 回転機構
21 昇降機構
30 直流電源
31 電流計
32 パルス化ユニット
40 電源制御器
41 パルス制御器
42 回転制御器
43 昇降制御器
PP パルス周期

Claims (6)

  1. 内部にターゲット材と基板とを互いに対向して配置可能な真空チャンバーと、
    前記ターゲット材と電気的に接続可能な直流電源と、
    前記直流電源から前記ターゲット材に流れる電流をパルス化するパルス化ユニットと、
    を備え、
    前記真空チャンバー内でプラズマを生成して前記基板上に薄膜を形成するスパッタ装置であって、
    前記直流電源から前記パルス化ユニットに流れる電流を計測する電流計と、
    前記電流計で計測した電流値が所定の値となるように前記直流電源をフィードバック制御する電源制御器と、
    前記電源制御器による前記直流電源の制御周期とずらしたパルス周期を前記パルス化ユニットに指示するパルス制御器と、
    を備える、スパッタ装置。
  2. 前記ターゲット材の前記基板と対向する面と反対側である裏面に配置されたマグネットと、
    前記ターゲット材の前記裏面と交差する回転軸について、前記マグネットを回転させる回転機構と、
    前記回転機構を制御する回転制御器と、
    前記基板と前記ターゲット材との間隔を変化させるように前記基板の位置を前記ターゲット材に対して昇降移動させる昇降機構と、
    前記昇降機構を制御する昇降制御器と、
    を備える、請求項1に記載のスパッタ装置。
  3. 前記パルス制御器は、前記電源制御器のフィードバック制御の周期をF1、前記パルス周期をF2とし、F1とF2の最小公倍数をF3とした場合、F3÷F1=Nで得られる整数Nが10以上となるように、オン時間とオフ時間とを算出し、前記パルス化ユニットに指示する、請求項1又は2に記載のスパッタ装置。
  4. 前記パルス制御器は、前記電源制御器のフィードバック制御の整数倍周期に対して、パルス周期が1%以上ずれるように、オン時間とオフ時間とを算出し、前記パルス化ユニットに指示する、請求項1又は2に記載のスパッタ装置。
  5. 前記パルス制御器は、設定されたパルスのオン時間及びオフ時間を基に、前記マグネットの回転の1周期が1000パルス以上となるように回転速度を演算して前記回転制御器に指示し、
    前記パルス制御器は、事前に得られたパルス数に対する前記ターゲット材の消耗量の情報を基に、前記基板の位置を前記ターゲット材に近づける移動量を前記昇降制御器に指示する、
    請求項2に記載のスパッタ装置。
  6. 真空チャンバー内にターゲット材と基板とを互いに対向して配置するステップと、
    前記ターゲット材と直流電源とを電気的に接続するステップと、
    前記直流電源から前記ターゲット材に流れる電流をパルス化ユニットを介してパルス化するステップと、
    前記直流電源から前記パルス化ユニットに流れる電流を計測するステップと、
    計測した電流値が所定の値となるように前記直流電源をフィードバック制御するステップと、
    前記直流電源の制御周期とずらしたパルス周期を前記パルス化ユニットに指示するステップと、
    を含む、前記真空チャンバー内でプラズマを生成して前記基板上に薄膜を形成するスパッタ方法。
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