JP6853558B2 - 加熱処理により特性を改質した低温糊化性でん粉 - Google Patents

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本発明は、加熱処理により特性を改質した低温糊化性でん粉に関するものである。
サツマイモの品種には、低温で糊状になる(低温糊化性)でん粉を有するものがある。例えば、「こなみずき(九州159号)」の塊根より採取したでん粉は、天然でん粉でありながら、でん粉懸濁液の粘度上昇温度が56〜60℃であり、従来のサツマイモでん粉や他の植物種のでん粉よりも15〜20℃低いという低温糊化の特徴を有している。
低温糊化性を有する「こなみずき」でん粉は、わらびもちなどのゲル性食品に使用すると、保水性が高く、長期間冷蔵しても離水や硬化が少ないといった耐老化性を有する。また、でん粉糊の弾力性が高く、ゲル成形性が優れるといった特性も有しており、他の天然でん粉と比較して高い食品利用適性を有している。
さらに、「こなみずき」の塊根より採取したでん粉は、でん粉糊の粘度が高く、付着性が強い特徴も有する。このような特性によって、ゲル性食品を製造する際の撹拌でハンドリングがよくない、ゲル性食品がかみ切りにくくなるといった影響が生じる。このような特性を改質するために、化学的に加工したでん粉(以下、加工でん粉と表記する)が広く用いられている。具体的には、でん粉を構成するグルコースの水酸基に修飾基を付与したり、水酸基同士を分子架橋したりした加工でん粉が一般に用いられ、このような加工でん粉は、少量の化学修飾により、安定した糊化特性を得ることができる。そのため、冷凍食品やレトルト食品などに広く利用されてきている。
一方で、消費者の食品に対する安全性への意識の高まりから、近年、より天然に近い食品素材へのニーズが増加している。こうした背景により、化学薬品を用いない加工でん粉への需要が高まっている。このような例としては、密閉された容器内で、蒸気と接触させることにより得られる湿熱処理でん粉(特許文献1参照)や、油脂を澱粉の表面にコーティングした、油脂コーティングでん粉(特許文献2参照)などが知られている。
また、でん粉を加熱して改質する方法としては、過熱水蒸気で加熱する方法(特許文献3参照)があり、でん粉粒の膨潤が抑制され、耐熱性、耐酸性に優れるでん粉に改質されることが報告されている。
特許第2996707号 特開平11−98969号公報 特許第5599650号
しかしながら、乾熱や湿熱といった上述した方法により加熱処理したでん粉は、でん粉粒子の膨潤抑制により、粘度上昇温度が上昇する、老化性が促進するといった欠点が生じるという問題点があった。また、付着性の低下や弾力性の改質には、従来と同様に化学的な処理を行う必要があるという問題点もあった。
本発明は、上記事実を考慮して、サツマイモから採取したでん粉であって、加熱処理後も低温糊化性を有するでん粉を提供することを目的とする。併せて、耐老化性を維持しつつ、化学的な処理を行わなくとも付着性を低下させ、かつ弾力性(ゲル成形能)を高めることを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するための研究を行い、サツマイモから採取したでん粉を化学的な処理を行わずに、加熱処理することで、低温糊化性を維持しつつ、また耐老化性を維持しつつ、付着性を弱め、弾力性が高まることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1)サツマイモから採取した低温糊化性を有するでん粉であって、加熱処理後、でん粉濃度6%で測定したときの粘度上昇温度が56〜62℃、および/またはでん粉濃度20%で昇温速度2℃/分で測定したときの糊化ピーク温度が48〜60℃、の低温糊化性を有するでん粉。
2)でん粉濃度8%のでん粉ゲルの冷凍解凍後の離水率が、6%以下である耐老化性を有する1)に記載のでん粉。
3)でん粉濃度6%で測定したときの付着性が、300J/m以下の低付着性である1)または2)に記載のでん粉。
4)でん粉濃度6%で測定したときの貯蔵弾性率が、100Pa以上の高弾性率を有する1)から3)のいずれかに記載のでん粉。
5)でん粉の加熱処理が、過熱水蒸気処理である1)から4)のいずれかに記載のでん粉。
6)でん粉の加熱処理が、湿熱処理である1)から4)のいずれかに記載のでん粉。
7)前記加熱処理において、加熱温度が100〜250℃、および加熱時間が2〜180分である1)から6)のいずれかに記載のでん粉。
8)前記サツマイモは、サツマイモ品種「こなみずき(九州159号)」である1)から7)のいずれかに記載のでん粉。
9)1)から8)のいずれかに記載のでん粉を含む食品。
本発明により、サツマイモから採取したでん粉であって、加熱処理後も低温糊化性を有するでん粉を提供できる。併せて、耐老化性を維持しつつ、化学的な処理を行わなくとも、付着性を低下させ、かつ弾力性(ゲル成形能)を高めたでん粉に改質できる。
「こなみずき」でん粉および他のでん粉で未処理および加熱処理後のでん粉のアミロペクチンの構成単位鎖分布を示した図である。 「こなみずき」でん粉および他のでん粉で未処理および加熱処理後のでん粉ゲル(でん粉濃度8%)の冷凍解凍後の離水率を示した図である。 「こなみずき」でん粉および他のでん粉で未処理および加熱処理後のでん粉糊(でん粉濃度6%)の付着性を示した図である。 「こなみずき」でん粉および他のでん粉で未処理および加熱処理後のでん粉糊(でん粉濃度6%)の貯蔵弾性率を示した図である。
本実施形態においては、低温糊化性を有するでん粉は、サツマイモ「こなみずき」の塊根から採取したでん粉である。従来のサツマイモでん粉は、低温糊化性を有しないものであって、例えばサツマイモ品種「シロユタカ」や「ダイチノユメ」の塊根から採取したでん粉である。
本発明で得られる加熱処理したでん粉(以下、改質でん粉)は、低温糊化性を有することが特徴である。改質でん粉は、でん粉濃度6%で調整したでん粉懸濁液として測定した粘度上昇温度が56〜62℃、および/または、でん粉濃度20%で測定した糊化ピーク温度が48〜60℃である。糊化ピーク温度は、好ましくは50〜58℃、さらに好ましくは53〜56℃である。ここで、粘度上昇温度とは、ラピッドビスコアナライザー等の粘度測定器によりでん粉と水との懸濁液を撹拌しながら加熱したとき、でん粉粒が吸水・膨潤して糊化し、粘度の上昇が始まる時の温度をいう。また、糊化ピーク温度とは、示差走査熱量測定による吸熱曲線の頂点を与える温度をいう。
従来のサツマイモでん粉やサツマイモ以外の植物種由来の加工/未加工のでん粉(以下、他のでん粉という)の粘度上昇温度は、63〜75℃であって、この63〜75℃の温度で粘度が急激に上昇する。一方、本発明の改質でん粉の粘度上昇温度は、従来のサツマイモでん粉や他のでん粉に比べて、上述したように56〜62℃と低温であって、この56〜62℃の温度で粘度が従来のサツマイモでん粉や加工でん粉に比べて緩やかに上昇し、加熱による改質後も低温で糊化しやすい特徴、すなわち低温糊化性を有する。
本発明で得られる改質でん粉は、耐老化性が優れていることが特徴である。本発明において、耐老化性は、でん粉と水との懸濁液を加熱撹拌して調製したでん粉糊を冷却してゼリー状に固めて作製したでん粉ゲルについて、冷蔵及び冷凍時の硬化速度や離水率で示し、硬化速度が遅い程、離水率が低い程、耐老化性があると言える。改質でん粉で作製したでん粉濃度8%のでん粉ゲルの冷凍解凍後の離水率は6%以下、好ましくは1〜5%以下である。でん粉ゲル(でん粉濃度8%)の冷凍解凍後の離水率は、未処理の「こなみずき」でん粉では1%前後であり、従来のサツマイモでん粉やバレイショでん粉では10%以上である。一方、本発明の改質でん粉は、でん粉ゲル(でん粉濃度8%)の冷凍解凍後の離水率が6%以下であり、加熱による改質後も耐老化性の特徴を有する。
本発明で得られる改質でん粉は、でん粉糊の付着性が低下することが特徴である。本発明において、でん粉糊の付着性は、でん粉濃度6%のでん粉懸濁液をラピッドビスコアナライザーででん粉糊に調製し、レオメーターを用いて測定する。改質でん粉の付着性は、でん粉濃度6%のでん粉糊として測定した場合に,300J/m以下、好ましくは200〜300J/mである。付着性は、未処理の「こなみずき」でん粉では400J/m以上であるのに対して、本発明の改質でん粉では300J/m以下であり、加熱による改質後に付着性が低下する特徴を有する。
本発明で得られる改質でん粉は、でん粉糊の弾力性が大きいことが特徴である。でん粉糊の弾力性は、貯蔵弾性率(G′)で示すことができ、貯蔵弾性率が高いほどゲル成形能が高くなる。本実施形態において、でん粉糊の貯蔵弾性率は、でん粉濃度6%のでん粉懸濁液をラピッドビスコアナライザーででん粉糊に調製し、レオメーターを用いて測定する。本発明の改質でん粉では、でん粉濃度6%のでん粉糊の貯蔵弾性率(G′)は、100Pa以上、好ましくは150Pa以上である。貯蔵弾性率が高まると、食品への利用において、優れたゲル成形能と弾力性を付与できるためである。貯蔵弾性率は、未処理の「こなみずき」でん粉が80Pa前後であるのに対して、本発明の改質でん粉は150Pa以上であり、加熱による改質後に貯蔵弾性率が上昇し、ゲル成形能が高まる特徴を有する。
本発明の改質でん粉を得るための加熱方法としては、乾熱、湿熱、過熱水蒸気等があるが、過熱水蒸気を使用することが望ましい。ここで、湿熱とは、相対湿度100%の条件下で約95〜125℃の加熱である。過熱水蒸気は、一次加熱で生じた飽和水蒸気をヒーターなどの二次加熱でさらに加熱した熱効率の高い水蒸気である。乾式で処理したでん粉は熱だけ、湿熱および過熱水蒸気で処理したでん粉は水と熱だけ、を使用して物理的に処理したでん粉として、食品としての扱いが可能である。
本発明の改質でん粉を得るための加熱温度は、100〜250℃の範囲である。また、その際の加熱時間は、2〜180分の範囲である。なお、加熱方法によって加熱温度の範囲および加熱時間の範囲が異なることがあり、さらに上記加熱温度および上記加熱時間の上限を超えることもある。加熱方法が過熱水蒸気である場合には、加熱温度は100〜180℃、好ましくは120〜150℃の範囲であり、加熱時間は2〜30分、好ましくは5〜20分、さらに好ましくは10〜15分である。なお、でん粉が加水分解されて粘度が極端に低くなることを防ぐために、加熱温度が200℃を超えないこと、加熱時間が1時間を超えないことが好ましい。そして、加熱方法が過熱水蒸気である場合には、原料でん粉を薄層の状態で処理するのが望ましい。薄層にすることで、水蒸気で均一に原料でん粉を処理することができるためである。
本発明に使用するでん粉は、水分が10〜30%、好ましくは10〜25%、さらに好ましくは15%前後の状態が望ましい。水分が30%よりも多いと、過熱水蒸気で加熱する際に、でん粉が糊化して、だまが生じるなど粉末化の妨げになるためである。
加熱処理したでん粉は、放冷後に粉砕、篩い、分級を適宜行ってもよい。粉砕方法は機械式粉砕(ピンミル、ボールミル、ハンマーミルなど)、気流式粉砕などが挙げられる。分級は、重力分級、篩い分け分級などが挙げられる。
本発明に使用するでん粉は、特定のサツマイモ系統の塊根から得ることができる。そのようなサツマイモ系統として、例えば、「こなみずき(九州159号)」を挙げることができる。また、このようなサツマイモは、「クイックスイート(関東116号)」と「ダイチノユメ(九州123号)」との交雑による後代植物の中から、塊根でん粉の粘度上昇温度が低い植物個体を選抜することにより、作出されたサツマイモ系統である(片山ら サツマイモ新品種「こなみずき」の育成 九州沖縄農研報告58 P15−36 2012)。
本発明に使用するでん粉は、例えば以下の方法によって特定のサツマイモ系統の塊根から採取することができる。塊根に水を加えながら高速磨砕機で磨砕後、篩い機ででん粉乳とでん粉粕に分ける。でん粉乳から、遠心分離によって微粕を取り除いて精製後、脱水機で濃縮して水分35%前後の脱水でん粉を調製する。脱水でん粉を気流式乾燥機によって水分18%前後の乾燥でん粉とする。この方法は、でん粉工場で一般的に行われているでん粉採取法である。
以上、説明したように、本発明の改質でん粉は、サツマイモから採取したでん粉を加熱処理後に、でん粉濃度6%で測定したときの粘度上昇温度が56〜62℃、および/またはでん粉濃度20%で測定した糊化ピーク温度が48〜60℃の低温糊化性を有する。なお、糊化ピーク温度は、好ましくは50〜58℃、さらに好ましくは53〜56℃である。また、本発明の改質でん粉は、加熱処理による改質後もでん粉濃度8%のでん粉ゲルの冷凍解凍後の離水率が6%以下の耐老化性を有する。さらに、本発明の改質でん粉は、加熱処理による改質後に付着性が300J/m以下に低下し、かつ貯蔵弾性率が100Pa以上の高い弾力性とゲル成形能を有する。加熱処理による改質には、過熱水蒸気による効率的な加熱処理が望ましい。
上述したように、本発明の改質でん粉は、低温糊化性を有し、わらびもちなどのゲル性食品の離水が少なく硬化しにくい耐老化性を有し、保水性も高く、高い弾力性と優れたゲル成形能をも有する。それにより、麺類や水産練り製品及びベーカリー類に利用すると、歯切れがよい、のどごしがよいといった食感改良効果がある。
また、本発明の改質でん粉は、化学的な処理を行っていないことから食品としての扱いが可能である。本発明の改質でん粉を含む食品としては、他のでん粉を含む食品はもちろん、その他どのようなものでもよく、例えば、介護食や離乳食の他、クリーム、フライ製品のバッター、麺類、水産練り製品及び菓子類、特にゼリー、グミ製品など多様な加工食品を挙げることができる。
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
後述する実施例に使用するでん粉の加熱処理について説明する。
加熱処理を行うでん粉は、市販の「こなみずき」でん粉(JA南さつま)を使用した。試料でん粉の水分は16%前後であり、でん粉に対する加水は行わずに加熱処理を行った。過熱水蒸気による加熱処理は、過熱水蒸気処理装置(新熱工業(株))を使用し、水蒸気量25kg/h、加熱温度は120℃および150℃、加熱時間は10分の条件で処理した。
比較例として、実施例1のでん粉の代わりに市販の従来サツマイモでん粉(品種は主に「シロユタカ」、JA南さつま)、バレイショでん粉(JA清里)、キャッサバでん粉((株)サナス)、トウモロコシでん粉((株)サナス)を用いて、上述と同様の加熱処理を行った。
[実施例1]でん粉の特性解析
過熱水蒸気処理は、でん粉を20cm平方のオーブンシートに薄層状に拡げて加熱処理を行った。加熱処理後のでん粉は、放冷後に目開き325μmの篩いを通して、微量な糊化でん粉を除去し、常温で保管して分析に供試した。
(粘度上昇温度の測定)
上記でん粉を用い、でん粉濃度6%(乾物重換算)のでん粉と水とのでん粉懸濁液について、ラピッドビスコアナライザー(RVA;RVA4500、Newport Scientific社)で粘度特性を測定し、粘度上昇温度を解析した。RVAの条件設定は、35℃から昇温速度5℃/分で95℃まで加熱し、5分保持後に降温速度5℃/分で35℃まで冷却とした。表1に「こなみずき」でん粉および他のでん粉の加熱未処理(以後、未処理)および加熱処理(120℃10分、150℃10分)後の粘度上昇温度を示す。
Figure 0006853558
表1の結果から、未処理の「こなみずき」でん粉は粘度上昇温度が58℃前後で低温糊化性を示しており、加熱処理後も60〜62℃の粘度上昇温度であり、他のでん粉よりも低い温度で糊化する特徴を有していることが明らかになった。
(糊化開始温度の測定)
上記でん粉を用い、でん粉濃度20%(乾物重換算)のでん粉と水とのでん粉懸濁液について、示差走査熱量計(DSC:SIIDSC6100、セイコーインスツルメンツ社)で糊化特性を測定し、糊化ピーク温度を解析した。DSCの条件設定は、室温から昇温速度2℃/分で100℃まで加熱し、吸熱曲線から、糊化ピーク温度を求めた。表2に「こなみずき」でん粉および他のでん粉の未処理および加熱処理(120℃10分、150℃10分)後の糊化ピーク温度を示す。
Figure 0006853558
表2の結果から、未処理の「こなみずき」でん粉は糊化ピーク温度が55℃前後で低温糊化性を示しており、加熱処理後も55〜57℃の糊化ピーク温度であり、他のでん粉よりも低い温度で糊化することが示された。
(でん粉の構成単位鎖分布の解析)
でん粉の糊化温度は、そのアミロペクチンの構造と関係があり、「こなみずき」でん粉などの低温糊化性を有するでん粉は、そのアミロペクチンにグルコースの重合度が6〜10の短鎖が多いことが明らかになっている(Kitaharaら Physicochemica Properties of Starches from Recently Bred Sweetpotatoes in Japan J.Appl.Glycosci. 58 P53−59 2014)。
そこで、「こなみずき」でん粉、従来サツマイモでん粉、キャッサバでん粉およびバレイショでん粉の未処理および加熱処理(150℃10分)後のでん粉を用い、アミロペクチンの構成単位鎖分布を解析した。解析は、イソアミラーゼでα−1,4結合を加水分解して直鎖グルカンとした分解物を試料とし、パルス電流検出器(PED)とCarbopac−PA200カラムを用いた高性能アニオン交換クロマトグラフィー(HPAEC DX−500、Dionex社)で行った。HPAECにより解析したアミロペクチンの構成単位鎖分布を図1に、表3に重合度6〜10の短鎖の割合を示す。
Figure 0006853558
図1および表3の結果から、未処理の「こなみずき」でん粉は他のでん粉に比べて重合度6〜10の短鎖が多く、加熱処理後も同様であることから、加熱処理後もアミロペクチンの構造が比較でん粉とは明確に異なっていることが明らかになった。
(でん粉ゲルの耐老化性の解析)
でん粉に水を加えて、加熱すると粘度が上昇して糊状になる。このでん粉糊を冷却してゼリー状に固めることででん粉ゲルを作製できる。作製直後のでん粉ゲルは、保水性があり軟らかく弾力性を有しているが、冷蔵もしくは冷凍すると、経時的にアミロース等が再配列することによって、でん粉に結合していた水が離水し、かたくもろい状態となる。この状態は、でん粉が老化した状態であるが、「こなみずき」でん粉は、でん粉の分子構造の特徴から、保水性が高く、長時間老化しない耐老化性を有する。
上記でん粉を用い、でん粉濃度8%のでん粉ゲルの冷凍解凍後の離水率を測定した。でん粉ゲルの冷凍解凍後の離水率は、以下の計算式によって求めることができる。
でん粉ゲルの離水率(%)=(冷凍解凍後の離水量/でん粉ゲルの重量)×100
図2にでん粉ゲルの冷凍解凍後の離水率を示す。
図2の結果から、未処理の「こなみずき」でん粉は離水率が1%前後と少なく、加熱処理後も離水率は2〜6%前後となった。「こなみずき」でん粉と同様に耐老化性を有するキャッサバでん粉については、未処理および加熱処理後も離水率は1%前後と離水が抑制されていた。一方、加熱処理した従来サツマイモでん粉やバレイショでん粉およびトウモロコシでん粉の離水率は18〜30%前後であり、離水率が2〜6%前後となった加熱処理後の「こなみずき」でん粉は、これらのでん粉よりも大幅に離水が抑制されていた。これらのことから、加熱処理した「こなみずき」でん粉は、未処理の「こなみずき」でん粉と同等の耐老化性を有することを確認した。
(でん粉糊の付着性の解析)
でん粉糊の付着性は、でん粉懸濁液(でん粉濃度6%)をラピッドビスコアナライザーででん粉糊に調製し、レオメーター(RE30005、(株)山電)を用い、テクスチャー測定を実施して求めることができる。調製したでん粉糊をステンレスシャーレ(40mm径、高さ15mm)に入れ、丸平型プランジャー(20mm径)で2回圧縮(圧縮速度10mm/秒、圧縮率30%)し、1回目にプランジャーを引き上げた際の負荷面積を付着性とした。図3にでん粉糊の付着性を示す。
図3の結果から、未処理の「こなみずき」でん粉のでん粉糊の付着性は400J/m以上であるのに対して、加熱処理後の「こなみずき」でん粉は、でん粉糊の付着性が300J/m以下に低下した。加熱処理後の従来サツマイモでん粉のでん粉糊の付着性は、300J/m以下を示したが、未処理のでん粉でも320J/m前後であり、改質効果は「こなみずき」でん粉よりも小さかった。また、バレイショでん粉については、加熱処理による付着性の低下は認められず、キャッサバでん粉およびトウモロコシでん粉についても加熱処理による付着性低下の改質効果は小さかった。これらのことから、「こなみずき」でん粉は、他のでん粉よりも加熱処理によって付着性が大きく低下する特徴を有することを確認した。
(でん粉糊の弾力性の解析)
でん粉糊の弾力性は、でん粉糊の貯蔵弾性率を測定することで解析できる。貯蔵弾性率が高いでん粉糊は、でん粉糊の分子間結合が強固であり、弾力性およびゲル成形能が高いと考えられる。でん粉糊の貯蔵弾性率は、でん粉懸濁液(でん粉濃度6%)をラピッドビスコアナライザーででん粉糊に調製し、レオメーター(RheostressRS1、HAKKE社)を用いて求めることができる。測定用のセンサーにはコーンプレート(35mm径、ギャップ0.05mm)を使用し、20℃で貯蔵弾性率の応力依存性(ひずみ応力0.1〜10Pa、周波数1Hz)を測定した。図4にでん粉糊の貯蔵弾性率を示す。
図4の結果から、「こなみずき」でん粉とバレイショでん粉は、加熱処理によって未処理時よりも貯蔵弾性率が150Pa以上と大幅に上昇した。従来サツマイモでん粉とトウモロコシでん粉は、加熱処理によって貯蔵弾性率が上昇したが、その値は150Pa以下であった。キャッサバでん粉は、加熱処理による貯蔵弾性率の上昇は認められなかった。これらのことから、「こなみずき」でん粉は、加熱処理によって貯蔵弾性率が高くなることが確認され、より優れたゲル成形能を有することが明らかになった。

Claims (5)

  1. サツマイモから採取した低温糊化性を有するでん粉を、120〜180℃で2〜30分の過熱水蒸気による加熱処理、または、前記過熱水蒸気による加熱処理での熱量を前記でん粉に与えられる100〜125℃で2〜60分の湿熱による加熱処理により改質した改質でん粉であって、
    でん粉濃度6%で測定したときの粘度上昇温度が、56〜62℃、および/またはでん粉濃度20%で測定した糊化ピーク温度が48〜60℃、で低温糊化性を維持し、および、
    でん粉濃度8%のでん粉ゲルの冷凍解凍後の離水率が、6%以下で耐老化性を有する、
    改質でん粉。
  2. でん粉濃度6%のでん粉糊の付着性が、300J/m以下の低付着性である請求項1に記載の改質でん粉。
  3. でん粉濃度6%のでん粉糊の貯蔵弾性率が、貯蔵弾性率100Pa以上の高弾性率を有する請求項1または請求項2に記載の改質でん粉。
  4. 前記サツマイモは、サツマイモ品種「こなみずき(九州159号)」である請求項1から請求項のいずれか一項に記載の改質でん粉。
  5. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の改質でん粉を含む食品。
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