JP6851054B1 - マスク - Google Patents

Abstract

【課題】洗浄によっても不織布のフィルタ捕集（ろ過）効率の低下を抑制できるマスクであり、さらには洗浄後においてもＮ９５規格、ＤＳ２規格を満たすことができるマスクを提供する。【解決手段】本体部１が、顔面に対向する内側織布３と、内側織布３と表裏をなす外側織布４と、両織布の間に挟んだ中間材の不織布５を一体に縫製してなる。【選択図】図１

Description

本発明は、マスクに係り、捕集効率の劣化を抑制する技術に関する。

従来、マスクは天然繊維、化学繊維の織編物または不織布等を主な本体材料として作られており、口と鼻を覆う形状をなし、花粉、ほこりなどの粒子が体内に侵入するのを抑制し、咳やくしゃみの飛沫が飛散するのを抑制するものである。

マスクが捕集（ろ過）する粒子には、花粉（３０．０μｍ）、人の細胞（１０．０μｍ）、飛沫（３．０〜５．０μｍ）、ＰＭ２．５（２．５μｍ）、細菌（１．０μｍ）、インフルエンザウイルス（０．１μｍ）がある。

マスクの種類には、防塵規格マスク（呼吸保護具）、医療用マスク、家庭用マスク等がある。防塵規格マスクには、Ｎ９５規格マスク、ＤＳ２規格マスクなどがあり、医療用マスクには、Ｎ９５規格マスク、ＤＳ２規格マスクやサージカルマスク（手術用）などがあり、家庭用マスクには、防寒対策、花粉対策、風邪対策、ウイルス対策、ＰＭ２．５など防塵対策に使用するものがある。

Ｎ９５規格マスクは、アメリカ合衆国労働安全衛生研究所（ＮＩＯＳＨ）が定めたＮ９５規格をクリアし、認可された微粒子用マスクのことである。厚生労働省では、ＳＡＲＳ（重症急性呼吸器症候群）、ＭＥＲＳ（中東呼吸器症候群）、新型インフルエンザや結核菌の対策指定品の一つとしており、ウイルスを含んだ飛沫の侵入を防ぐことができる高性能なマスクである。医療施設等における日常業務での感染の可能性も最小限に抑える。

ＤＳ２規格は日本の厚生労働省が定めた規格で、Ｎ９５規格とＤＳ２規格の性能はほぼ同等である。

サージカルマスクは、手術の時などに医師の口から唾液や雑菌などが患者の手術部位に付着しないように開発されたマスクである。ウイルスや震災対策、粒子状物質（ＰＭ２．５）対策にはＮ９５規格マスク、ＤＳ２規格マスクのどちらも吸入リスク低減に有効である。

マスクのフィルタ捕集（ろ過）性能試験法には、試験粒子（約３０μｍ）を捕集対象として行う花粉粒子の捕集（ろ過）効率試験、黄色ブドウ球菌の懸濁液（約３μｍ）を試験粒子とするバクテリア飛沫捕集（ろ過）効率試験（ＢＦＥ Ｂａｃｔｅｒｉａｌ Ｆｉｌｔｒａｔｉｏｎ Ｅｆｆｉｃｉｅｎｃｙ）、バクテリアオファージ（約１．７μｍ）を試験粒子とするウイルス飛沫捕集（ろ過）効率試験（ＶＦＥ Ｖｉｒｕｓ Ｆｉｌｔｒａｔｉｏｎ Ｅｆｆｉｃｉｅｎｃｙ）、ポリスチレン粒子（０．１μｍ）を試験粒子とする微粒子捕集（ろ過）効率試験（ＰＦＥ Ｐａｒｔｉｃｌｅ Ｆｉｌｔｒａｔｉｏｎ Ｅｆｆｉｃｉｅｎｃｙ）がある。

Ｎ９５規格は、マスク性能として試験粒子（０．３μｍ）以上を９５％捕集できると規定している。

サージカルマスク（医療用マスク）の米国標準規格（ＡＳＴＭ Ｆ２１００−１１ ： Ｓｔａｎｄａｒｄ Ｓｐｅｃｉｆｉｃａｔｉｏｎ ｆｏｒ Ｐｅｒｆｏｒｍａｎｃｅ ｏｆ Ｍａｔｅｒｉａｌｓ Ｕｓｅｄ ｉｎ Ｍｅｄｉｃａｌ Ｆａｃｅ Ｍａｓｋｓ． ２０１１）は、レベル１として細菌濾過率（％）≧９５、微粒子濾過率（％）≧９５を満たすと規定している。

特許文献１に記載するものは、抗ウイルス剤を施した衛生マスクであり、抗ウイルス剤を施したニット布地と、抗ウイルス剤を施さないニット布地との２層以上の布地から成っている。表側に抗ウイルス薬剤を施したニット布地を配し、内側に抗ウイルス薬剤を施さないニット布地を配している。

特開２０１７−１０１３７４

近年、不織布の機能が高まり、マスクの性能が飛躍的に向上している。不織布の製法には、ウェブの形成方法の違いによって、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法がある。

ここでは、メルトブローン法を説明する。メルトブローン法は、溶融した樹脂を紡糸ノズルから押し出して繊維を紡糸しつつ、紡糸ノズルの周囲から噴射する高温エアにより繊維を細く延伸し、紡糸した細い繊維をシート状に集積してウェブを作成する。

メルトブローン法の特長は、樹脂から直接シート化できるので効率が良く、風で延伸するので繊維径を細くできる（１〜１０μｍ）。このため、乾式・湿式法では作れない細い極細繊維だけで構成されるメルトブローン不織布を作ることができ、その緻密な構造により、マスク用をはじめ各種フィルタなどに使用されている。

不織布を主材料とするマスクは、使い捨て用途に作られており、洗浄して繰り返し使用することはできない。特に、メルトブローン不織布で作られるマスクは、洗浄によってメルトブローン不織布のフィルタ捕集（ろ過）効率が低下し、サージカルマスク規格、Ｎ９５規格、ＤＳ２規格を満たすことができない。

本発明は上記した課題を解決するものであり、洗浄によっても不織布のフィルタ捕集（ろ過）効率の低下を抑制できるマスクを提供することを目的とする。

上記した課題を解決するために、本発明に係るマスクは、本体部が、顔面に対向する内側織布と、内側織布と表裏をなす外側織布と、両織布の間に挟んだ中間材を有し、中間材をなすメルトブローン不織布と洗濯時にメルトブローン不織布を保護するそれぞれが綿糸からなる多重ガーゼ織物の内側織布と外側織布を本体部の周縁に沿って縫い合わせて一体に縫製したことを特徴とする。

本発明に係るマスクにおいて、外側織布は、酸化チタン、ハイドロキシアパタイト、銀の混合物質からなる加工剤が塗布されてなることを特徴とする。

本発明の実施の形態におけるマスクの分解斜視図 同実施の形態におけるマスクの断面図 同実施の形態におけるマスクの装着状態を示す模式図

以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図１、２において、本実施の形態に係るマスク１０は、本体部１と本体部１の両側に設けた耳掛け部２からなる。

本体部１は、顔面１１に対向する内側織布３と、内側織布と表裏をなす外側織布４と、内側織布３と外側織布４の両織布の間に挟んだ中間材の不織布５を有しており、通常のマスク１０の縫製仕様によって内側織布３と外側織布４と中間材の不織布５を一体に縫製したものである。縫製の仕様には種々のものがあり、本体部１の周縁にそって内側織布３と外側織布４と中間材の不織布５を縫い合わせることもでき、他に補助的な縫合箇所を設けることも可能である。

内側織布３と外側織布４は、それぞれが多重ガーゼ織物であり、ここでは二重ガーゼ織物であるが、一重であっても三重であってもさらに多重であってもよい。さらには、ガーゼ織物に限らず、種々の織布を採用することが可能である。

この二重ガーゼ織物の一例を以下に記す。二重ガーゼ織物は、例えばドビー織の織布であり、織布３、４は、表側をなす表織組織６と、裏側をなす裏織組織７を備えるものである。表側の織布３は、経糸、緯糸共に３０番手単糸の綿糸からなり、裏側の織布４は、経糸が４０番手双糸の綿糸、緯糸が２０番手単糸の綿糸からなる。一般にガーゼは経密度３０本／インチ、緯密度２２本／インチ程度の極めて粗い平織で、柔らかく仕上げた織物である。本実施の二重ガーゼ織物も同様の密度で製織したものである。

この外側織布４には、酸化チタン、ハイドロキシアパタイト、銀の混合物質からなる加工剤が塗布されている。この加工剤は、光触媒を進化させたものであり、光がなくても作用するハイブリッド触媒で、花粉、ハウスダスト、カビ等のタンパク質や、汗、ニオイ、不衛生タンパク質を分解して水に変える機能を有している。

１．「酸化チタン」（ＴｉＯ２）＝代表的な光触媒の物質で、花粉・ハウスダスト・カビ・汗・ニオイ等のタンパク質、不衛生タンパク質を分解する。酸化チタンは、安全性の高い物質で、女性のファンデーションの主成分として使用されており、食品添加物としてホワイトチョコレートなどにも使われている。

２．「ハイドロキシアパタイト」（ＨＡｐ ： Ｃａ１０（Ｐｏ４）６（ＯＨ）２）＝カルシウムの一種で、花粉・ハウスダスト・カビ・汗・ニオイ等のタンパク質、不衛生タンパク質を繊維の中で吸着する。

３．「銀」（Ａｇ）＝酸化チタンの電極となり、分解活動を促進する。この微量の銀が光に変わってエネルギー源となるため、光がない状態でも分解が進む。以上３つの働きで、タンパク質を分解する。

中間材の不織布５は、ここではメルトブローン不織布からなる。メルトブローン不織布の製法は先に説明した通りであり、ここでは説明を省略する。本発明において不織布５はメルトブローン不織布に限らず、目的のフィルタ捕集（ろ過）効率に応じて前述した種々の不織布を採用できる。

以上のように、本実施の形態に係るマスク１０は、内側織布３と外側織布４と中間材の不織布５を一体に縫製して本体部１を形成することにより、マスク１０の洗浄、いわゆる洗濯によって不織布５のフィルタ捕集（ろ過）効率の低下を抑制できる。

以下に本実施の形態に係るメルトブローン不織布を使用したマスク１０のフィルタ特性試験結果を示す。この試験はサージカルマスク規格に対するものである。

測定装置は、米国ＴＳＩ社製のフィルタ効率自動検出装置 ＡＦＴ８１３０Ａであり、Ｎ＝５（試料数）で同日測定した。アメリカ国立労働安全衛生研究所（ＮＩＯＳＨ）がＴＳＩ社製フィルタテスター（ＡＦＴ）を認証試験に使用している。

以上の試験結果より、ポリスチレン粒子（０．１μｍ）を試験粒子とする微粒子捕集（ろ過）効率試験（ＰＦＥ）において、本実施の形態に係るマスク１０の全ての試料１−５は、捕集効率９７％以上を満たしている。この結果は、サージカルマスク規格のレベル１を満たすものである。

これは、内側織布３と外側織布４と中間材の不織布５を一体に縫製して本体部１を形成することにより、不織布５のフィルタ捕集効率の低下を抑制できることを示している。

すなわち、洗濯時に内側織布３と外側織布４が不織布５を保護する機能を果たしている。本実施の形態では、織布として二重ガーゼ織物を使用したが、前述したように、一般にガーゼは経密度３０本／インチ、緯密度２２本／インチ程度の極めて粗い平織で、柔らかく仕上げた織物である。よって、より密度の高い織布を使用しても同様の効果を奏することは明らかである。

なお、本実施の形態ではメルトブローン不織布を使用したが、他のウェブの形成方法、つまり乾式法、湿式法、スパンボンド法、エアレイド法により形成される不織布においてもフィルタ捕集効率の低下を抑制できることは明らかである。すなわち、メルトブローン不織布が他のものに比べて最も細い極細繊維（１〜１０μｍ）で構成されたものであるからである。

１ 本体部
２ 耳掛け部
３ 内側織布
４ 外側織布
５ 不織布
６ 表織組織
７ 裏織組織
１０ マスク
１１ 顔面

Claims (2)

1. 本体部が、顔面に対向する内側織布と、内側織布と表裏をなす外側織布と、両織布の間に挟んだ中間材を有し、
   中間材をなすメルトブローン不織布と洗濯時にメルトブローン不織布を保護するそれぞれが綿糸からなる多重ガーゼ織物の内側織布と外側織布を本体部の周縁に沿って縫い合わせて一体に縫製したことを特徴とするマスク。
2. 外側織布は、酸化チタン、ハイドロキシアパタイト、銀の混合物質からなる加工剤が塗布されてなることを特徴とする請求項１に記載のマスク。

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