<第1の実施の形態>
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図1に基づいて説明する。本実施の形態では、住宅等の建物に適用される給湯システムについて具体化されている。図1は給湯システムを示す概略図である。
建物10は二階建てとなっており、建物一階部分が親世帯用の階層且つ建物二階部分が子世帯用の階層となるように区別されている。具体的には、各階層(世帯毎)にバス、トイレ、キッチン等が各々設けられた所謂完全分離型の二世帯住宅となっている。
給湯システム50は、親世帯側に設けられたバスユニット21、シャワー設備22、洗面台23、キッチン設備24の各吐水口に湯を供給する親世帯側給湯設備51と、子世帯側に設けられたバスユニット31、シャワー設備32、洗面台33、キッチン設備34の各吐水口に湯を供給する子世帯側給湯設備52とを備えており、世帯毎に給湯設備が完備されている。
親世帯側給湯設備51は、貯湯タンク60と、太陽熱によって貯湯タンク60の水を加熱する太陽熱集熱器61と、バックアップ用の電気給湯機62と、貯湯タンク60に蓄えられている湯をバスユニット21の吐水口に導く第1給湯管64と、貯湯タンク60に蓄えられている湯をシャワー設備22の吐水口、洗面台23の吐水口、キッチン設備24の吐水口に導く第2給湯管65とを有している。また、吐水口毎に温度センサ、流量センサ及び操作検知センサを有してなるセンサユニット66,67が設けられており、各吐水口における湯の使用状況等を監視可能となっている。
子世帯側給湯設備52は、貯湯タンク70と、太陽熱によって貯湯タンク70の水を加熱する太陽熱集熱器71と、バックアップ用のガス給湯器72と、貯湯タンク70及びガス給湯器72の間に設けられ貯湯タンク70に蓄えらている湯をガス給湯器72に送る際に湯及び水を混合可能なミキシングユニット73と、貯湯タンク70に蓄えられている湯をバスユニット31の吐水口に導く第1給湯管74と、貯湯タンク70に蓄えられている湯をシャワー設備32の吐水口、洗面台33の吐水口、キッチン設備34の吐水口に導く第2給湯管75とを備えている。また、吐水口毎に温度センサ、流量センサ及び操作検知センサを有してなるセンサユニット76,77が配設されており、各吐水口における湯の使用状況等を監視可能となっている。
親世帯側給湯設備51と子世帯側給湯設備52とは、主たる構成が共通ではあるが、貯湯タンク60,70の容量及びバックアップ用の加熱部の種類が異なっている点で構成が一部相違している。以下、図2の概略図を参照して、各給湯設備51,52の相違点について説明する。
親世帯に設けられたバックアップ用の加熱部は、ヒートポンプ式の電気給湯機62により構成されている。ヒートポンプ式の電気給湯機62については、貯湯タンク60に溜まっている湯又は水を、その温度及び量が予め設定された設定温度及び設定量となるように加熱する。つまり、太陽熱によって貯湯タンク60内の水が温められた場合であっても、その温度や量が設定量に満たない場合には、電気給湯機62を稼働させることにより貯湯タンク60内の湯が加熱されることとなる。
ここで、ヒートポンプ式の電気給湯機62についてはその特性上、ガス給湯器等と比較して加熱時の応答性は低い。その一方では、湯を生成する際のエネルギ(電気)の消費量が少なく、環境面及び経済面に優れている。例えば、比較的電気料金の安い夜間に貯湯タンク60内の湯を温めることにより、ガス給湯器と比べて光熱費(給湯コスト)を好適に削減できる。また、実際に湯が使用されるよりも前に湯を準備することにより、上述した応答性の理由から湯の使い勝手が悪くなることを抑制している。
子世帯に設けられたバックアップ用の加熱部はガス給湯器72により構成されている。ガス給湯器72については、貯湯タンク70から吐水口に向かう湯又は水をユーザの要求温度となるように加熱する。例えば、太陽熱によって貯湯タンク70内の水が温められた場合であっても、その温度がユーザの要求温度に満たない場合に稼働する。ガス給湯器72についてはその特性上、上記電気給湯機と比べて応答性が高い。故に、急遽多くの湯の需要が生じた場合であっても、その要求に素早く対応することができる。
本実施の形態においては、親世帯の家族構成として夫婦を想定しており、子世帯の家族構成として夫婦及び子どもを想定している。子世帯については親世帯と比べて人数が多いため、使用される湯量のばらつきについても親世帯よりも大きいと想定される。そこで、ガス給湯器72を適用することにより、ユーザの利便性の向上に配慮されている。これに対して、親世帯では人数が比較的少ないため、使用される湯量のばらつきについても子世帯よりは小さいと想定される。このように、使用される湯量が少ない側の世帯に、ヒートポンプ式の電気給湯機62を適用することにより、バッファを少なくし、経済面での恩恵を大きくすることが可能となっている。
上述したように、太陽熱集熱器61,71をメインに据え、電気給湯機62やガス給湯器72等のバックアップ加熱部を併用することにより、太陽熱集熱器61,71を単独で用いる場合と比較して、湯の使い勝手を大幅に向上させることができる。しかしながら、バックアップ加熱部の運転が過剰となっては、自然エネルギを利用して、環境面や経済面での恩恵を享受するという本来の目的が上手く達成されなくなると懸念される。本実施の形態においては、このような事情に鑑みて、給湯システム50全体でのエネルギ効率の向上を図る工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、図3の概略図を参照して、当該工夫に係る構成について説明する。
建物10には、両世帯の給湯設備51,52を繋ぐようにして連絡配管80が配設されている。具体的には、連絡配管80は、親世帯における第2給湯管65の中間部分(貯湯タンク60と吐水口との間となる部分)と、子世帯における第2給湯管75の中間部分(貯湯タンク70と吐水口との間となる部分)とに連結されており、給湯設備51,52間(世帯間)での湯の移動を可能としている。
連絡配管80には、当該連絡配管80を通じた湯の移動を阻止する閉状態と湯の移動を許容する開状態とに切替可能な電動弁81が配設されている。電動弁81は給湯システム50を構成する制御装置55に接続されており、制御装置55からの駆動信号に基づいて閉状態/開状態に切り替わる構成となっている。
また、親世帯の第2給湯管65にて連絡配管80の連結部分と貯湯タンク60との間となる部分には第2給湯管65における湯の通過を阻止する閉状態と湯の通過を許容する開状態とに切替可能な電動弁68が配設されており、子世帯の第2給湯管75にて連絡配管80の連結部分とガス給湯器72との間となる部分には第2給湯管75における湯の通過を阻止する閉状態と湯の通過を許容する開状態とに切替可能な電動弁78が配設されている。電動弁68,78は制御装置55に接続されており、制御装置55からの駆動信号に基づいて閉状態/開状態に切り替わる構成となっている。
制御装置55の入力側には上記センサユニット66,76が接続されており、制御装置55ではセンサユニット66,76からの検知情報に基づいて各吐水口における湯の使用状況を把握する。また、制御装置55の入力側には、第2給湯管65にて電動弁68及び貯湯タンク60の間となる部分に配設されたセンサユニット85と、第2給湯管75にて電動弁78及びガス給湯器72の間となる部分に配設されたセンサユニット86が接続されている。センサユニット85,86は温度センサ及び流量センサを有してなり、制御装置55ではそれらセンサユニット85,86からの検知情報に基づいて各給湯設備51,52からの湯の供給状況等を監視可能となっている。更には、制御装置55の入力側には貯湯タンク60,70に付属のセンサユニット69,79(温度センサ及び湯量センサ)が接続されている。ここで、図4の概略図を参照して、貯湯タンク60,70及びそれら貯湯タンク60,70に付属のセンサユニット69,79の配置について補足説明する。
貯湯タンク60,70は縦長であり、その下部に給水管が接続されており、上部に上記給湯管64,65,74,75が接続されている。貯湯タンク60,70においては、比較的温度の高い湯は上部に、比較的温度の低い湯は下部に貯まりやすくなっており、給湯時には比較的温度が高いものから供給される。センサユニット69,79は、貯湯タンク60,70の上端部〜下端部に配列されたセンサユニット69A〜69H,79A〜79Hにより構成されており、制御装置55ではセンサユニット69A〜69H,79A〜79Hからの検知情報に基づいて各貯湯タンク60,70に蓄えられている湯の温度や量を把握する。
本実施の形態においては、これら制御装置55、連絡配管80、電動弁68,78,81、センサユニット66,76,69,79,85,86及び後述するセンサユニット82,83によって温水融通システムが構築されている。
温水融通システムについては、湯の融通モード(給湯モード)として、(1)世帯間で湯の融通を行わない分離モード、(2)各世帯にて余剰となる湯をそれら世帯間で共有する余剰共有モード、(3)余剰モードよりも積極的に湯の融通を行うことにより親世帯及び子世帯トータルでの光熱費を削減する全体共有モードが設けられており、湯使用時には制御装置55にて設定された融通モードに基づいて湯の供給元が決まる構成となっている。
各世帯には制御装置55の操作端末が設置されている。それら操作端末にて融通モードの選択操作が行われることで制御装置55にて設定されている融通モードの切り替えがなされる。ここで、図5のフローチャートを参照して制御装置55にて定期的に実行される融通モード切替処理について説明する。
融通モード切替処理においては先ずステップS101にて何れかの世帯にて湯が使用されている最中であるか否かを判定する。具体的にはセンサユニット66,76からの検知情報に基づいて当該判定を行う。湯が使用されている最中である場合には、ステップS101にて肯定判定をして本融通モード切替処理を終了する。本実施の形態においては、湯の使用中は後述する融通モードの選択画面の表示が規制され、融通モードの変更操作(選択操作)が不可となる。
ステップS101にて否定判定をした場合にはステップS102に進む。ステップS102では何れかの世帯の操作端末にて融通モードの変更操作が行われたか否かを判定する。ステップS102にて否定判定をした場合には、そのまま本融通モード切替処理を終了する。ステップS102にて肯定判定をした場合にはステップS103に進み、融通モード設定処理を行う。制御装置55では各世帯にて選択されている融通モードに基づいて1の融通モードを実行用のモードとして設定する。ここで、図6〜図8の概略図を参照して、融通モードの選択→融通モードの設定の流れについて説明する。
図6に示すように、各世帯の操作端末56(融通モード選択画面)には自世帯にて選択可能な融通モードの種類及び自世帯にて現在選択されている融通モードと、他世帯にて選択可能な融通モードの種類及び他世帯にて現在選択されている融通モードと、現在実行用のモードとして設定されている融通モードとが表示される。なお、操作端末にて選択可能な融通モードは自世帯のものに制限されている。
因みに、ユーザにより余剰共有モードが選択された場合には、余剰判定のレベルをユーザが選択可能となる。具体的には、操作端末56に余剰判定レベルの設定画面が表示され、余剰判定レベルを高低複数の段階(例えば3段階)から選択するように促される。詳細については後述するが、余剰判定に係る処理においては、選択された判定レベルを参照して余剰判定が実行される。なお、ユーザによって高いレベルのものが選択された場合には低いレベルものが選択された場合よりも余裕をもって余剰判定が実行され、余剰判定→融通を行った場合に自世帯にて湯が不足する可能性は低くなる。
両世帯にて同じ融通モードが選択されている場合には選択されている融通モードが実行用のモードとして設定され、選択されている融通モードが世帯間で相違している場合には、予め設定されている優先レベルに応じて融通モードの設定を行う。図7に示すように、優先レベルは、全体共有モード<部分共有モード<分離モードの順に高くなっている。つまり、一方の世帯にて分離モードが選択されている場合には、他方の世帯にて何れの融通モードが選択されている場合であっても分離モードが設定され、一方の世帯にて余剰共有モードが選択されている場合には他方の世帯にて全体共有モードが設定されている場合であっても余剰共有モードが設定されることとなる(図8参照)。
再び図5の説明に戻り、ステップS103の融通モード設定処理を実行した後は、ステップS104に進み、設定されている融通モードが分離モードであるか否かを判定する。ステップS104にて肯定判定をした場合には、ステップS105にて分離モード/余剰共有モード用の電動弁開閉処理を実行した後、本融通モード切替処理を終了する。
分離モード/余剰共有モード用の電動弁開閉処理では、電動弁68,78,81の状態を以下のように切り替える。すなわち、子世帯側の電動弁78を開状態とし、連絡配管80の電動弁81を閉状態とし、親世帯側の電動弁68を開状態とする(図9参照)。この状態では、世帯間での湯の移動(融通)は不可となる。
ステップS104にて否定判定をした場合には、ステップS106に進む。ステップS106では、設定されている融通モードが余剰共有モードであるか否かを判定する。ステップS106にて肯定判定をした場合には、ステップS105にて分離モード/余剰共有モード用の電動弁開閉処理を実行した後、本融通モード切替処理を終了する。
ステップS106にて否定判定をした場合には、ステップS107にて全体共有モード用の電動弁開閉処理を実行した後、本融通モード切替処理を終了する。全体共有モード用の電動弁開閉処理では、電動弁68,78,81の状態を以下のように切り替える。すなわち、子世帯側の電動弁78を開状態とし、連絡配管80の電動弁81を開状態とし、親世帯側の電動弁68を閉状態とする(図9参照)。この状態では、湯の供給元が子世帯側給湯設備52となっている。
融通モード切替処理にて各電動弁68,78,81が所定の状態となった後は、制御装置55にて定期的(例えば毎秒)に実行される電動弁制御処理にてそれら電動弁68,78,81の状態が切り替えられることとなる。電動弁制御処理は、設定されている融通モードが余剰共有モードである場合に実行される余剰共有モード用の電動弁制御処理と、設定されている融通モードが全体共有モードである場合に実行される全体共有モード用の電動弁制御処理とに大別される。なお、分離モードにおいては、電動弁68,78,81が上述した初期の状態に維持される構成であり電動弁制御処理は実行されない。
(余剰共有モードについて)
余剰共有モード用の電動弁制御処理については、一方の世帯にて湯が不足する等した場合であって他方の世帯にて湯が余剰となっている場合に、電動弁81を開状態に切り替える等し、連絡配管80を通じて世帯間での湯の融通を行う処理であり、親世帯から子世帯への湯の融通に係る第1融通処理(図10)と、子世帯から親世帯への湯の融通に係る第2融通処理(図11)とにより構成されている。
図10に示すように、第1融通処理においては先ず、ステップS201にて子世帯から親世帯へ湯を融通している最中であるか否かを判定する。ステップS201にて肯定判定をした場合には、そのまま本第1融通処理を終了する。ステップS201にて否定判定をした場合にはステップS202に進む。ステップS202では親世帯から子世帯へ湯を融通している最中であるか否かを判定する。ステップS202にて否定判定をした場合にはステップS203に進む。ステップS203では吐水口に付属のセンサユニット76(操作検知センサ)から取得した検知情報に基づき子世帯にて湯の使用が開始されたタイミングであるか否かを判定する。
ステップS203にて肯定判定をした場合には、ステップS204にてユーザによる要求温度の確認処理を行う。具体的には、センサユニット76(操作検知センサ)からの検知情報に基づいてユーザが使用しようとしている湯の温度(要求温度)を確認する。一方、ステップS203にて否定判定をした場合には、すなわち子世帯にて湯使用が開始されたタイミングではないと判定した場合にはステップS205に進む。ステップS205では、子世帯の貯湯タンク70から子世帯の吐水口へ湯が供給されている状況であるか否かを判定する。ステップS205にて否定判定をした場合には、そのまま本第1融通用処理を終了する。
ステップS205にて肯定判定をした場合又はステップS204にて確認処理を実行した後は、ステップS206に進む。ステップS206では、子世帯の貯湯タンク70に要求温度以上の湯が確保されているか否かを判定する。すなわち、湯が不足しているか否かを判定する。ステップS206にて湯が確保されていると判定した場合には、そのまま本融通用処理を終了する。この場合、電動弁78が開状態のままとなり、貯湯タンク70に溜まっている湯を吐水口へ供給する。なお、貯湯タンク70に湯が蓄えられている場合であってもその温度が要求温度に満たない場合には湯が不足していると判定される。
ステップS206にて否定判定をした場合、すなわち子世帯にて湯が不足していると判定した場合には、ステップS207に進み余剰判定を行う。ステップS207の余剰判定では親世帯の貯湯タンク60に子世帯へ融通可能な湯(余剰となっている湯)があるか否かを判定する。
余剰判定においては先ず、親世帯における過去数日間の湯の使用実績(例えば一週間分の使用実績)を踏まえて、親世帯における1日の湯の推定使用量(平均値+調整パラメータ)を算出する。詳しくは、親世帯における一週間分の使用実績から湯の使用量の平均値及び標準偏差を算出し、平均値と標準偏差に係る調整パラメータとから親世帯における1日の湯の推定使用量を算出する。調整パラメータは、上記使用実績から算出される標準偏差をユーザによって選択された判定レベルに応じて積算(1倍、2倍又は3倍)したものであり、選択された判定レベルが「1」の場合には推定使用量=平均値+標準偏差×1となり、選択された判定レベルが「2」の場合には推定使用量=平均値+標準偏差×2となり、選択された判定レベルが「3」の場合には推定使用量=平均値+標準偏差×3となる。
太陽熱集熱器61による当日の予測集熱量が推定使用量以下となっている場合には、余剰は無いと判定する。また、当日の予測集熱量が推定使用量を上回っている場合であっても、当日の予測集熱量と調整パラメータとの和から平均値を引いたものが当日の子世帯への融通量以下の場合には余剰無しと判定する。これに対して、当日の予測集熱量が平均値と調整パラメータとの和を上回っており、且つ当日の予測集熱量と調整パラメータとの和から平均値を引いたものが当日の子世帯への融通量を上回っている場合には、余剰ありと判定する。
ステップS207にて否定判定をした場合、すなわち親世帯において余剰となる湯がない場合には、そのまま本第1融通用処理を終了する。子世帯にて湯が不足している場合であって且つ親世帯にて湯が余剰となっていない場合には、子世帯のガス給湯器72の運転を開始させる。これにより、ガス給湯器72にて加熱された湯が子世帯の吐水口に供給されることとなる。なお、この場合には、子世帯の電動弁78が開状態、連絡配管80に付属の電動弁81が閉状態のままとなる。
ステップS207にて肯定判定をした場合、すなわち親世帯において余剰となる湯がある場合には、ステップS208に進み、融通開始対応の電動弁開閉処理を行う。融通開始対応の電動弁開閉処理においては、子世帯の電動弁78を開状態から閉状態に切り替える。これにより、子世帯の貯湯タンク70から吐水口へ向けた湯の供給が規制され、親世帯の貯湯タンク60から吐水口へ向けた湯の供給が開始される。
ここで、図12の概略図を参照して、湯の融通の流れについて例示する。図12(a1)に示すように、子世帯側の吐水口にてユーザによる給湯操作が行われると、その要求温度(例えば40℃)の湯が子世帯の貯湯タンク70に蓄えられているか否かを確認する。湯が蓄えられていない場合には、親世帯の貯湯タンク60に蓄えられている湯の温度及び量を確認し、親世帯にて湯が余っているかを特定する。
子世帯の貯湯タンク70にて湯が不足し且つ親世帯の貯湯タンク60にて湯が余っている場合には、図12(a1)→図12(a2)に示すように、子世帯の電動弁78を閉状態、連絡配管80の電動弁81を開状態に各々切り替えることにより、親世帯から子世帯へ湯が融通されることとなる。このような湯の融通は、子世帯にて湯の使用が終了した場合、親世帯における湯の余剰分を使いきった場合、親世帯にて湯の使用が開始された場合の何れかの条件が成立した場合に終了する。なお、子世帯にて湯の使用が続いている最中に融通が終了する場合には、供給元が親世帯から子世帯に切り替わりバックアップ加熱部であるガス給湯器72の運転が開始される。
また、図12(b1)に示すように、子世帯の貯湯タンク70に蓄えられている湯が子世帯の吐水口に供給されている場合には、電動弁68,78が開状態、電動弁81が閉状態となっている。湯が使用されることで貯湯タンク70における湯量が減り吐水口へ供給すべき湯を確保できなくなった場合、すなわち湯が不足する状況となった場合には、親世帯の貯湯タンク60に蓄えられている湯の温度及び量を確認し、親世帯にて湯が余っているか否かを特定する。
子世帯にて湯が足りなくなり且つ親世帯にて湯が余っている場合には、図12(b1)→図12(b2)に示すように、電動弁81を開状態に切り替えるとともに電動弁78を閉状態に切り替える。これにより、親世帯から子世帯へ湯が融通されることとなる。このような湯の融通は、子世帯にて湯の使用が終了した場合、親世帯における湯の余剰分を使いきった場合、親世帯にて湯の使用が開始された場合の何れかの条件が成立した場合に終了する。なお、子世帯にて湯の使用が続いている最中に融通が終了する場合には、供給元が親世帯から子世帯に切り替わりバックアップ加熱部であるガス給湯器72の運転が開始される。
図10に示す第1融通用処理の説明に戻り、ステップS208にて融通開始対応の電動弁開閉処理を行った後は、ステップS209にて融通量記憶開始処理を実行した後、本第1融通用処理を終了する。連絡配管80には温度センサ及び流量センサからなるセンサユニット82,83が配設され、これらセンサユニット82,83は制御装置55に接続されている(図3参照)。制御装置55ではセンサユニット82,83からの情報に基づいて世帯間で融通された湯の融通量(熱量)を特定し、融通量を記憶保持する構成となっている。融通量に関する情報はユーザに提供される。この情報を参照して世帯毎で負担する光熱費を決めることにより、世帯間の公平性を好適に担保できる。つまり、融通量を記憶する構成は、世帯間での光熱費の格差を是正する上で有益となる。なお、例えば融通量を光熱費(領域)に換算した情報をユーザに提供する構成とすることも可能である。
ステップS202の説明に戻り、当該ステップS202にて肯定判定をした場合、すなわち親世帯から子世帯へ湯が融通されている最中であると判定した場合には、ステップS210に進む。ステップS210ではユーザからの要求温度が変更されたか否かを判定する。ステップS210にて肯定判定をした場合には、ステップS211に進む。ステップS211では温度条件再確認処理を行う。具体的には、子世帯の貯湯タンク70に蓄えられている湯の温度が変更された要求温度よりも高いか否かの確認を行う。
ステップS211の確認処理を実行した後、又はステップS210にて否定判定をした場合にはステップS212に進む。ステップS212では親世帯における余剰分の再確認処理を行う。具体的には、親世帯の貯湯タンク60に蓄えられている湯の余剰分がなくなったか否かを確認する。
ステップS212の確認処理を実行した後は、ステップS213に進む。ステップS213では融通終了条件が成立しているか否かを判定する。具体的には、子世帯の吐水口における湯の使用が終了している場合、親世帯における湯の余剰分を使い果たした場合、子世帯の貯湯タンク70に蓄えられている湯によりユーザの要求に対応可能となった場合には、融通終了条件が成立する。なお、少なくとも子世帯における湯の使用が終了した場合に融通が終了する構成となっているのであれば足り、他の条件を終了条件として設定するか否かについて任意である。
融通終了条件が成立した場合には、ステップS214にて融通終了処理を実行する。これにより、少なくとも電動弁81が開状態から閉状態に切り替わり、親世帯から子世帯への湯の融通が終了する。例えば、図13(c1)に示すように、親世帯から子世帯に湯が融通されている状況下にておいては、電動弁68及び81が開状態となっており、電動弁78が閉状態となっている。親世帯からの湯の融通が続くことにより、親世帯の貯湯タンク60に溜まっている湯の量が減少する。図13(c2)に示すように、親世帯の貯湯タンク60に溜まっている湯の量が想定使用量に達して余剰分が無くなると、親世帯から子世帯への湯の融通が終了する。具体的には、電動弁68,81が開状態から閉状態に切り替わり、閉状態となっていた電動弁78が開状態に切り替わる。これに併せて子世帯のガス給湯器72が運転を開始し、ガス給湯器72にて温められた湯が子世帯の吐水口へ供給されることとなる。
図10の説明に戻り、ステップS214の終了処理を実行した後は、ステップS215にて融通量記憶終了処理を実行した後、本第1融通用処理を終了する。融通量記憶終了処理を実行することにより、今回融通された湯の総量(融通量)を算出し、過去の融通の実績とともに、当該融通量を記憶保持する。この記憶されている情報については、要求に応じて適宜ユーザに提供される。
また、上述したように本実施の形態に示す電気給湯機62においては過去の使用実績に基づいて湯温や湯量の設定を行う。この際、記憶された融通量(詳しくは親世帯から子世帯への融通量)が当該設定にフィードバックされる構成となっている。これにより、親世帯での湯の消費予測が過剰となり、翌日以降にて電気給湯機62によって生成される湯が無駄になることを抑制できる。このように、融通量のフィードバックによって親世帯内のみの消費量を把握することは、親世帯における最適量の湯を生成し、親世帯における光熱費を削減する上で好ましい。
次に、図11を参照して、上記第2融通処理については説明する。なお、第2融通処理については、基本的な流れが第1融通処理と同様となっている。
第2融通処理においては先ず、ステップS301にて親世帯から子世帯へ湯を融通している最中であるか否かを判定する。ステップS301にて肯定判定をした場合には、そのまま本第1融通処理を終了する。ステップS301にて否定判定をした場合にはステップS302に進む。ステップS302では子世帯から親世帯へ湯を融通している最中であるか否かを判定する。ステップS302にて否定判定をした場合にはステップS303に進む。ステップS303では吐水口に付属のセンサユニット66(操作検知センサ)から取得した検知情報に基づき親世帯にて湯の使用が開始されたタイミングであるか否かを判定する。
ステップS303にて肯定判定をした場合には、ステップS304にてユーザによる要求温度の確認処理を行う。具体的には、センサユニット66(操作検知センサ)からの検知情報に基づいてユーザが使用しようとしている湯の温度を確認する。一方、ステップS303にて否定判定をした場合には、すなわち親世帯にて湯使用が開始されたタイミングではないと判定した場合にはステップS305に進む。ステップS305では、親世帯の貯湯タンク60から親世帯の吐水口へ湯が供給されている状況であるか否かを判定する。ステップS305にて否定判定をした場合には、そのまま本第2融通用処理を終了する。
ステップS305にて肯定判定をした場合又はステップS304にて確認処理を実行した後は、ステップS306に進む。ステップS306では、親世帯の貯湯タンク60に要求温度以上の湯が確保されているか否かを判定する。すなわち、湯が不足しているか否かを判定する。ステップS306にて湯が確保されていると判定した場合には、そのまま本融通用処理を終了する。この場合、電動弁68が開状態のままとなり、貯湯タンク60に溜まっている湯を吐水口へ供給する。なお、貯湯タンク60に湯が蓄えられている場合であってもその温度が要求温度に満たない場合には湯が不足していると判定される。
ステップS306にて否定判定をした場合、すなわち親世帯にて湯が不足していると判定した場合には、ステップS307に進む。ステップS307では子世帯の貯湯タンク70に親世帯へ融通可能な湯(余剰となっている湯)があるか否かを判定する。
余剰判定においては先ず、子世帯における過去数日間の湯の使用実績(例えば一週間分の使用実績)を踏まえて、子世帯における1日の湯の推定使用量(平均値+調整パラメータ)を算出する。詳しくは、子世帯における一週間分の使用実績から湯の使用量の平均値及び標準偏差を算出し、平均値と標準偏差に係る調整パラメータとから子世帯における1日の湯の推定使用量を算出する。調整パラメータは、上記使用実績から算出される標準偏差をユーザによって選択された判定レベルに応じて積算(1倍、2倍又は3倍)したものであり、選択された判定レベルが「1」の場合には推定使用量=平均値+標準偏差×1となり、選択された判定レベルが「2」の場合には推定使用量=平均値+標準偏差×2となり、選択された判定レベルが「3」の場合には推定使用量=平均値+標準偏差×3となる。
太陽熱集熱器61による当日の予測集熱量が推定使用量以下となっている場合には、余剰は無いと判定する。また、当日の予測集熱量が推定使用量を上回っている場合であっても、当日の予測集熱量と調整パラメータとの和から平均値を引いたものが当日の親世帯への融通量以下の場合には余剰無しと判定する。これに対して、当日の予測集熱量が平均値と調整パラメータとの和を上回っており、且つ当日の予測集熱量と調整パラメータとの和から平均値を引いたものが当日の親世帯への融通量を上回っている場合には、余剰ありと判定する。
本実施の形態においては、融通可能な湯の量(余剰分)が「融通上限」に相当する。なお、融通上限については必ずしも余剰分と一致している必要はなく、少なくとも余剰分の範囲内で定められたものであればよい。また、「融通上限」については融通可能な最大湯量として定めているが、湯量と湯温との積算により融通可能な最大熱エネルギ量(最大熱量)として定めたり、融通可能な回数によって定めたりすることも可能である。
ステップS307にて否定判定をした場合、すなわち子世帯において余剰となる湯がない場合には、そのまま本第2融通用処理を終了する。親世帯にて湯が不足している場合であって且つ子世帯にて湯が余剰となっていない場合には、親世帯の電気給湯機62の運転を開始させる。これにより、電気給湯機62にて加熱された湯が親世帯の吐水口に供給されることとなる。なお、この場合には、親世帯の電動弁68が開状態、連絡配管80に付属の電動弁81については閉状態に維持される。
ステップS307にて肯定判定をした場合、すなわち子世帯において余剰となる湯が存在している場合には、ステップS308に進み、融通開始対応の電動弁開閉処理を行う。融通開始対応の電動弁開閉処理においては、連絡配管80に付属の電動弁78を閉状態から開状態に切り替えるとともに、親世帯の電動弁68を閉状態に切り替える。これにより、親世帯の貯湯タンク60から吐水口へ向けた湯の供給が規制され、子世帯の貯湯タンク70から吐水口へ向けた湯の供給が開始される。
ステップS308にて融通開始対応の電動弁開閉処理を行った後は、ステップS309にて融通量記憶開始処理を実行した後、本第2融通用処理を終了する。融通量記憶開始処理については上記ステップS209と同様であるが、融通方向が違っているため、融通量はその方向毎に区別して記憶されることとなる。
ステップS302の説明に戻り、当該ステップS302にて肯定判定をした場合、すなわち子世帯から親世帯へ湯が融通されている最中であると判定した場合には、ステップS310に進む。ステップS310ではユーザからの要求温度が変更されたか否かを判定する。ステップS310にて肯定判定をした場合には、ステップS311に進む。ステップS311では温度条件再確認処理を行う。具体的には、親世帯の貯湯タンク60に蓄えられている湯の温度が変更された要求温度よりも高いか否かの確認を行う。
ステップS311の確認処理を実行した後、又はステップS310にて否定判定をした場合にはステップS312に進む。ステップS312では子世帯における余剰分の再確認処理を行う。具体的には、子世帯の貯湯タンク70に蓄えられている湯の余剰分がなくなったか否かを確認する。
ステップS312の確認処理を実行した後は、ステップS313に進む。ステップS313では融通終了条件が成立しているか否かを判定する。具体的には、親世帯の吐水口における湯の使用が終了している場合、子世帯における湯の余剰分を使い果たした場合、親世帯の貯湯タンク60に蓄えられている湯によりユーザの要求に対応可能となった場合には、融通終了条件が成立する。なお、少なくとも親世帯における湯の使用が終了した場合に融通が終了する構成となっているのであれば足り、他の条件を終了条件として設定するか否かについて任意である。
融通終了条件が成立した場合には、ステップS314にて融通終了対応の電動弁開閉処理を実行する。これにより、電動弁81が開状態から閉状態に切り替わり、子世帯から親世帯への湯の融通が終了する。ステップS314の終了処理を実行した後は、ステップS315にて融通量記憶終了処理を実行した後、本第2融通用処理を終了する。
太陽熱集熱器61,71については、ガス給湯器や電気給湯機と比べて天候の影響を受けやすく、生成できる湯の量にばらつきが生じる。また、日々の生活にて各世帯で使用される湯の量については必ずしも一定ではなく、湯の使用量が嵩む日があれば、湯の使用量が少ない日もある。ここで、本実施の形態に示したように、複数の世帯間で湯の融通が可能な給湯システム50を構築すれば、例えば湯が不足している場合に湯が余剰となっている他の世帯から湯を都合することができる。これにより、給湯時の電気やガス等のエネルギ消費を抑えることができる。故に、湯の使い勝手が低下することを抑制しつつ、複数世帯全体でのエネルギ効率を好適に向上させることができる。
世帯間で湯を融通する上では、湯の融通を湯の使用に先立って行うことも可能である。しかしながら、上述したように、実際にどの程度の湯が使用されるかは不確定である。故に、融通した湯が活用されず、更には融通した側の世帯にて湯が不足するといった事態が発生し得る。この際、融通された湯を戻すといった動きは熱エネルギのロス(熱損失)の要因になる。故に、湯が使用される際に融通を行う構成にはシステム全体での熱損失を少なくできるという技術的意義がある。
連絡配管80は、給湯管65,75にて貯湯タンク60,70と吐水口との間となる部分に接続されている。このように連絡配管80の接続先を貯湯タンク60,70ではなく給湯管65,75とすることにより湯を融通する際の応答性を向上できる。また、このような接続とすることは、給湯経路が融通/非融通で切り替わる際に、吐水口からの湯の出方(湯温や水圧)の変化を緩和する上でも好ましい。
湯が不足し且つ他の世帯からの湯の融通が期待できない場合にバックアップ加熱部による加熱を行う構成、すなわちバックアップ加熱部の稼働よりも太陽熱によって温められた湯の融通を優先させる構成とすることには、バックアップ加熱部にて使用されるエネルギ量を減らす上で有利であり、システム全体でのエネルギ効率の向上に寄与できる。
他世帯への湯の融通が余剰分を超えた場合には、自世帯にて湯を使用する場合にバックアップ加熱部を稼働させて湯を生成する必要が生じ得る。これは、自世帯単独での光熱費が嵩む要因となる。この点、余剰共有モードにおいては、各世帯が余剰分を割り込まないようにして(無理のない範囲で)湯の融通を行う構成とすることで、自世帯の光熱費が嵩むことを抑制しつつ、他世帯の光熱費の削減に寄与することが可能となっている。
(完全共有モードについて)
光熱費については、給湯設備51,52の稼働により消費されるのガスや電気等の購買エネルギの消費量(特に熱に変換されるエネルギの消費量)及び購買エネルギの単価に左右される。各給湯設備51,52においては設備の仕様等の違いから給湯コスト(生成コスト)に差がある。ここで、図14を参照して給湯コストについて補足説明する。子世帯の貯湯タンク70に蓄えられる湯についてはその熱源が太陽光に限定されており、ガス給湯器72による加熱がなされていない。故に、この貯湯タンク70に蓄えられている湯によって給湯需要を満足できる場合の給湯コストは極めて低くなる。これに対して、親世帯の貯湯タンク60に蓄えられる湯についてはその熱源が太陽光及び電気給湯機62にて消費される電気となっている。既に説明したように、電気給湯機62はヒートポンプ式であり、予め設定された時刻になった場合に稼働して湯を事前に準備する構成となっている。電気料金については日中と比べて夜間の方が安くなっていることが一般的であり、夜間の電気を利用して湯を生成することにより、光熱費の削減が図られる。
子世帯にはバックアップ加熱部としてガス給湯器72が配設されており、貯湯タンク70の湯が不足した際には、ガス給湯器72が稼働して湯を生成することができる。ガス給湯器72については上述した電気給湯機62と比較して光熱費が高くなる。つまり、本実施の形態に示すガス給湯器72については応答性の面では電気給湯機62よりも優れているものの、給湯コストについては電気給湯機62と比べて高くなる。
このように、同じ加熱量で比較した場合の給湯コスト(単位量の湯を生成する場合の生成コスト)については、子世帯側の貯湯タンク70(太陽熱集熱器71)<親世帯側の貯湯タンク60(太陽熱集熱器61及び電気給湯機62)<親世帯側の電気給湯機62<子世帯側のガス給湯器72の順に高くなる。
上述した全体共有モードにおいては、両世帯トータルでの光熱費を最小限に抑えるべく、一部の例外を除き給湯コストが低い順に湯の供給元を切り替えるべく各電動弁68,78,81の開閉状態の切り替えがなされる。以下、図15を参照して全体共有モード用の電動弁制御処理について説明する。なお、本実施の形態においては、給湯コストに基づいた供給元の切替順序が予め定められており(図14参照)、全体共有モードにおいてはこの定められた順序に従って湯の供給元を切り替える構成となっている。
全体共有モード用の電動弁制御処理においては先ず、ステップS401にて親世帯及び子世帯の何れかにて湯の使用が開始されたか否かを判定する。具体的には、吐水口に付属のセンサユニット66,76(操作検知センサ)から取得した検知情報に基づき湯の使用が開始されたタイミングであるか否かを判定する。
ステップS401にて肯定判定をした場合には、ステップS402にて要求温度の確認処理を行う。具体的には、センサユニット66,76(操作検知センサ)からの検知情報に基づいてユーザが使用しようとしている湯の温度(要求温度)を確認する。続くステップS403では、子世帯の貯湯タンク70に要求温度以上の湯が確保されているか否かを判定する。ステップS403にて湯が確保されていると判定した場合には、ステップS404に進む。
ステップS404では、親世帯側の電動弁68が閉状態、子世帯側の電動弁78が開状態、連絡配管80に付属の電動弁81が開状態となるように開閉処理を行う。これにより、両世帯への湯の供給元が子世帯側給湯設備52となる(図16(a)参照)。以下、説明の便宜上、親世帯側の電動弁68が閉状態、子世帯側の電動弁78が開状態、連絡配管80に付属の電動弁81が開状態の組み合わせを「パターンA」と称する。
ステップS403の説明に戻り、当該ステップS403にて否定判定をした場合、すなわち子世帯の貯湯タンク70に要求温度以上の湯が確保されていない場合には、ステップS405に進む。ステップS405では親世帯の貯湯タンク60に要求温度以上の湯が確保されているか否かを判定する。ステップS405にて肯定判定をした場合にはステップS406に進む。
ステップS406では、親世帯側の電動弁68が開状態、子世帯側の電動弁78が閉状態、連絡配管80に付属の電動弁81が開状態となるように開閉処理を行う。これにより、両世帯への湯の供給元が親世帯側給湯設備51となる(図16(b)参照)。以下、説明の便宜上、親世帯側の電動弁68が開状態、子世帯側の電動弁78が閉状態、連絡配管80に付属の電動弁81が開状態の組み合わせを「パターンB」と称する。
ステップS405にて否定判定をした場合、すなわち貯湯タンク60に要求温度以上の湯が確保されていないと判定した場合には、ステップS407に進む。ステップS407では貯湯タンク60に確保されている湯の温度と要求温度との差が所定範囲内であるか否かを判定する。本実施の形態においては電気給湯機62及び貯湯タンク60の仕様から、上記所定範囲を設定しており、ステップS407ではこの所定範囲を参照して電気給湯機62及びガス給湯器72の何れを稼働させて湯を供給するかを決定する。
上述したように、親世帯側給湯設備51についてはバックアップ加熱部としてヒートポンプ式の電気給湯機62が設けられている。この電気給湯機62についてはその特性上、給湯の応答性が低い。つまり、上記差が大きい場合には、要求温度の湯を生成するまでの所要時間が長くなり、ユーザの利便性が低下し得る。そこで、本実施の形態においては、親世帯の貯湯タンク60の湯温を勘案して、所要時間が所定時間を超えると推定される場合には、子世帯のガス給湯器72を運転させて子世帯から親世帯への湯の融通を行う。つまり、例えば子世帯にて余剰となっている湯を使い切った後であっても、状況に応じて子世帯から親世帯への湯の融通が行われる。太陽熱で足りない分をヒートポンプ式の電気給湯機62によって補い、電気給湯機62によって補いきれ無い分をガス給湯器72で補う構成とすることにより、ヒートポンプ式の電気給湯機62による高効率の恩恵を享受しつつ、それに起因した使い勝手の悪化を回避することが可能となっている。
ステップS407にて肯定判定をした場合、すなわち電気給湯機62を稼働させる場合には、ステップS406の開閉処理を実行した後、本電動弁制御処理を終了する。これにより、各電動弁68,78,81の開閉状態が上記パターンBとなり、湯の供給元が子世帯側給湯設備52となる。
ステップS407にて否定判定をした場合、すなわちガス給湯器72を稼働させる場合には、ステップS407の開閉処理を実行した後、本電動弁制御処理を終了する。これにより、各電動弁68,78,81の開閉状態が上記パターンAとなり、湯の供給元が親世帯側給湯設備51となる。
ステップS401の説明に戻り、当該ステップS401にて否定判定をした場合、すなわち湯の使用が開始されたタイミングではないと判定した場合には、ステップS408に進む。ステップS408では給湯中であるか否かを判定する。ステップS408にて否定判定をした場合にはそのまま本全体共有モード用電動弁制御処理を終了する。ステップS408にて肯定判定をした場合には、ステップS409にて更新処理を実行した後、本全体共有モード用電動弁制御処理を終了する。
ステップS409の更新処理においては、要求温度の再確認を行い、供給元となっている貯湯タンクにて湯切れが発生しているか否かを判定する。そして、特定した要求温度と湯の残り状況とに基づいて供給元となる給湯設備の切り替えを行う。具体的には、図14に示した給湯コストの順に供給元となる給湯設備を切り替えるように電動弁68,78,81の開閉状態を上記パターンA,パターンBに切り替える。
ここで、図17及び図18の概略図を参照して、湯の供給元の切り替わりの流れについて例示する。
図17(a)に示すように、子世帯側の吐水口にてユーザによる給湯操作が行われると、要求温度(例えば40℃)の湯が子世帯側の貯湯タンク70に蓄えられているか否かを確認する。湯が蓄えられている場合には、各電動弁68,78,81の開閉状態をパターンAとし、子世帯側給湯設備52(詳しくは貯湯タンク70)から湯の供給を開始する。
図17(a)→図17(b)に示すように、子世帯側の貯湯タンク70の湯が不足すると、次に給湯コストの低い親世帯側の貯湯タンク60へ供給元が切り替わる。具体的には、先ず貯湯タンク60に要求温度の湯が蓄えらているか否かを確認する。湯が蓄えられている場合には、各電動弁68,78,81の開閉状態をパターンBとし、親世帯側給湯設備51(詳しくは貯湯タンク60)から湯を供給する。
図17(b)→図17(c)に示すように、親世帯の貯湯タンク60の湯が不足すると、要求温度と貯湯タンク60の湯の温度とを比較する。要求温度との差が所定範囲内を外れている場合には、子世帯側給湯設備52(詳しくはガス給湯器72)に供給元を切り替える。具体的には、各電動弁68,78,81の開閉状態をパターンAとし、子世帯側給湯設備52(詳しくはガス給湯器72)から湯を供給する。
図18(a)に示すように、親世帯側の吐水口にてユーザによる給湯操作が行われると、要求温度(例えば40℃)の湯が子世帯側の貯湯タンク70に蓄えられているか否かを確認する。湯が蓄えられている場合には、各電動弁68,78,81の開閉状態をパターンAとし、子世帯側給湯設備52(詳しくは貯湯タンク70)から湯を供給する。既に説明したように、子世帯側の貯湯タンク70については、湯を加熱する際にガス給湯器72が稼働するわけではなく、その熱源が太陽光となっている。このようにして、給湯コストが最も低い貯湯タンク70の湯を親世帯側へ融通することにより、両世帯トータルでの光熱費の削減が実現される。
図18(a)→図18(b)に示すように、貯湯タンク70の湯が不足すると、次に給湯コストの低い親世帯側給湯設備51(詳しくは貯湯タンク60)へ供給元を切り替える。具体的には、先ず貯湯タンク60に要求温度の湯が蓄えられているか否かを確認する。湯が蓄えられている場合には、各電動弁68,78,81の開閉状態をパターンBとし、親世帯側給湯設備51(詳しくは貯湯タンク60)から湯を供給する。
図18(b)→図18(c)に示すように、親世帯側の貯湯タンク60の湯が不足すると、要求温度と貯湯タンク60の湯の温度とを比較する。要求温度との差が所定範囲内を外れている場合には、子世帯側給湯設備52(詳しくはガス給湯器72)に供給元を切り替える。具体的には、各電動弁68,78,81の開閉状態をパターンAとし、子世帯側給湯設備52(詳しくはガス給湯器72)から親世帯に湯を供給する。
以上詳述したように、全体共有モードにおいては、先ず子世帯側の貯湯タンク70に蓄えられた湯が消費され、当該貯湯タンク70の湯がなくなった場合には、親世帯側の貯湯タンク60に蓄えられた湯が消費され、両貯湯タンク60,70にて湯が不足した場合には電気給湯機62によって対応可能な範囲であれば電気給湯機62が稼働する一方、電気給湯機62による対応が困難な場合には子世帯のガス給湯器72が稼働する。このように、各世帯の給湯設備51,52を両世帯で共用とすることにより、両世帯トータルでの光熱費を好適に削減できる。
各世帯の貯湯タンク60,70に蓄えられた湯は両世帯で共有となり、何れの世帯にて湯が使用される場合であっても、先ずはこれら貯湯タンク60,70の湯が供給されることとなる。太陽熱を利用して加熱された湯については給湯コストが低いため、給湯コストの低い湯を優先的に消費することにより、ガスや電気等のエネルギ消費を抑えることができる。これにより、両世帯トータルで見た光熱費の削減に寄与できる。
ここで、親世帯側の貯湯タンク60についてはヒートポンプ式の電気給湯機62が併設されており、電気給湯機62が比較的電気料金の安い時間帯(夜間)に稼働することで湯が事前に準備される構成となっている。本実施の形態においては、貯湯タンク60,70のうち子世帯の貯湯タンク70の湯を親世帯の貯湯タンク60の湯よりも優先して消費する構成となっている。ヒートポンプ式の電気給湯機62については湯温が低い状態から加熱をスタートする場合と比べて湯温がある程度高い状態から加熱をスタートする方が加熱効率が良い。つまり、電気給湯機62が稼働する前の湯温の低下を抑えることは、給湯コストを引き下げて光熱費の削減を図る上で好ましい。そこで、貯湯タンク60の湯の使用優先順を貯湯タンク70の湯よりも低く設定することにより、貯湯タンク70の湯の翌日への持ち越し機会を増やすことができる。これは、電気給湯機62の負荷を軽減し、電気給湯機62にて消費される電気を少なくする上で(光熱費を削減する上で)有利である。
また、子世帯側の貯湯タンク70にて湯が不足した場合には、ガス給湯器72にて新たに購買エネルギ(ガス)を消費して生成される湯ではなく、電気給湯機62にて事前に購買エネルギ(電気)を消費して生成された湯が優先して使用される。つまり、既に費用を投じて生成している湯を優先して消費することにより、光熱費(投資)が無駄に嵩むことを抑制できる。
世帯毎に特性の異なるバックアップ加熱部を設け、システム中に複数種のバックアップ加熱部を組み込む構成とすれば、バックアップ加熱部同士が互いの弱点を好適に補完することが可能となる。例えば、急速な加熱が必要な場合には応答性に優れたガス給湯器72を使用し、余裕のある状況下ではエネルギ効率の高い電気給湯機62を使用することによりシステム全体でのエネルギ効率を好適に向上させることができる。
ヒートポンプ式の電気給湯機62においては余剰量を少なくすることがエネルギ消費を抑える上で好ましい。故に、特性の異なるバックアップ加熱部を併用する上では、想定される湯の使用量が少ない世帯(本実施の形態においては親世帯)にヒートポンプ式の電気給湯機62を設定することに技術的意義がある。
(電気給湯機62における湯の設定温度及び設定量)
本実施の形態においては、設定された融通モードに応じて親世帯の電気給湯機62により夜間等に準備される湯の設定温度及び設定量(以下、準備量という)の設定パターンが変更されることとなる。
図19の概略図に示すように分離モードが設定されている場合には、親世帯における過去の湯の使用実績(平均値及び調整パラメータ)に基づいて準備量が設定される。つまり、分離モードにおいては親世帯の過去の使用湯量が多ければ準備量が多くなり、使用湯量が少なければ準備量が少なくなる。
余剰共有モードが設定されている場合には、親世帯における過去の湯の使用実績及び子世帯の貯湯タンク70の貯湯量に基づいて準備量が設定される。具体的には、親世帯の過去の使用湯量が多ければ準備量が多くなり、使用湯量が少なければ準備量が少なくなる点では分離モードと同様であるが、準備量の設定においては、子世帯における翌日の使用量を推定し、この推定量に応じて準備量が調整される。詳しくは、子世帯にて余剰となる湯量が発生すると推定される場合には、子世帯の余剰分に合せて準備量が少なくなるように調整される。
本実施の形態においては特に、子世帯の操作端末56に不在ボタンが設けられている。制御装置55においては、不在ボタンの操作に基づいて翌日は子世帯が不在となる予定であるか否かを特定する。このように、子世帯が不在となる場合(子世帯における必要湯量が少なくなる場合)には、貯湯タンク60の準備量が減少する。この場合、準備量の不足分については子世帯からの融通によって賄われることとなる。
完全共有モードが設定されている場合には、親世帯における過去の湯の使用実績、子世帯の貯湯タンク70の貯湯量、子世帯への湯の融通実績に基づいて準備量が設定される。具体的には、親世帯の過去の使用湯量が多ければ準備量が多くなり且つ使用湯量が少なければ準備量が少なくなる点では、分離モード及び余剰共有モードと同様であり、子世帯における翌日の使用量を推定し、この推定量に応じて準備量が調整される点でも余剰共有モードと同様である。但し、余剰共有モードでは子世帯の余剰分についてのみ考慮していたのに対して、完全共有モードでは子世帯の不足分についも考慮され、この不足分を加味して準備量が増える。また、分離モード及び余剰共有モードにおいては、子世帯側へ融通した湯については準備量の設定に反映されない構成となっており、親世帯における光熱費が嵩むことを抑制することが重視されているが、完全共有モードにおいては子世帯へ融通した湯量に配慮して準備量が増えることとなる。これにより、供給元が最も給湯コストの高い対象(ガス給湯器72)になる機会を減らす構成となっている。
世帯間の関係については様々な条件によって変化する。例えば、1階部分及び2階部分の何れかが空きになったり、空きになった部分を別の家族等に貸したりすることで、世帯間の関係が変化し得る。この点、本実施の形態に示したように融通モードを切替可能とすれば、そのような世帯間の関係の変化に好適に対応できる。例えば、一方の世帯が空きになる場合には、融通モードを完全共有モードとすることで空きになる世帯側の給湯設備を有効利用できる。また、上述した貸出を行う場合には、融通モードを分離モードとすることで別家族等と共存を好適に実現できる。
<第2の実施の形態>
上記第1の実施の形態においては融通モードとして全体共有モードが設定されている場合には、予め定められた優先順にて湯の供給元の切り替えを行う構成とした。ここで、電気給湯機62及びガス給湯器72(「バックアップ加熱部」に相当)にて消費されるエネルギ(電気やガス)の単価については様々な要因によって変化し得る。本実施の形態においてはそのようなコスト変動に配慮した工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、図20を参照して、上記第1の実施の形態との相違点を中心に、本実施の形態における特徴的な構成について説明する。図20は本実施の形態における全体共有モード用の電動弁開閉処理を示すフローチャートである。なお、全体共有モード用の電動弁開閉処理については、融通モードとして全体共有モードが設定されている場合に制御装置55により定期処理の一環として実行される処理である。
全体共有モード用の電動弁制御処理においては先ず、ステップS501にて親世帯及び子世帯の何れかにて湯の使用が開始されたか否かを判定する。ステップS501にて肯定判定をした場合には、ステップS502にて湯の要求温度の確認処理を行う。続くステップS503では、子世帯側の貯湯タンク70に要求温度以上の湯が確保されているか否かを判定する。ステップS503にて湯が確保されていると判定した場合にはステップS504に進む。ステップS504では、電動弁68,78,81の開閉状態を上記パターンAとなるように切り替える。これにより、湯の供給元が子世帯側の貯湯タンク70となる。ステップS503にて否定判定をした場合にはステップS505に進む。ステップS505では、親世帯側の貯湯タンク60に要求温度以上の湯が確保されているか否かを判定する。なお、これらステップS501〜S505の各処理については、上記第1の実施の形態に示したステップS401〜S405の各処理と同様であるため詳細な説明を省略する。
ステップS505にて肯定判定をした場合にはステップS506に進む。ステップS506では、親世帯側の貯湯タンク60に蓄えられている湯が電気給湯機62によって加熱されたものであるか否かを判定する。詳しくは、本実施の形態に示す制御装置55においては、電気給湯機62の過去の稼働状況が記憶されており、この記憶された情報に基づいて前日又は当日に電気給湯機62による加熱がなされた湯であるか否かを判定する。
ステップS506にて肯定判定をした場合には、ステップS507にて電動弁68,78,81の開閉状態を上記パターンBとなるように切り替える。これにより、湯の供給元が親世帯側の貯湯タンク60となる。つまり、貯湯タンク60の湯が電気給湯機62によって加熱されたものである場合、すなわち既に給湯コストが発生している場合には、親世帯側の貯湯タンク60が供給元として設定されることとなる。
ステップS506にて否定判定をした場合には、ステップS508に進む。ステップS508では給湯コストの算出及び比較を行う。具体的には、電気給湯機62を稼働させて要求温度を満たす湯を生成した場合の給湯コストと、ガス給湯器72を稼働させて要求温度を満たす湯を生成した場合の給湯コストとを算出し、それら給湯コストを比較する。より詳細には、電気給湯機62においては貯湯タンク60の湯を加熱する構成であるため貯湯タンク60の湯の温度に配慮して給湯コストを算出し、ガス給湯器72においては貯湯タンク70の湯を加熱する構成であるため貯湯タンク70の湯の温度に基づいて給湯コストを算出し、いずれの給湯コストが低いかを特定する。
因みに、本実施の形態においては、制御装置55が電気の単価及びガスの単価を記憶可能となっている。具体的には、上記操作端末56においてはこれらの情報を入力可能となっており、入力された最新の情報を記憶する。そして、これら記憶している情報に基づいて上記給湯コストが算出される。なお、電気の単価及びガスの単価については、最新の情報のみを記憶するのではなく、過去の価格変動の履歴についても記憶する構成としてもよい。
親世帯側給湯設備51(電気給湯機62)における給湯コストが子世帯側給湯設備52(ガス給湯器72)における給湯コストを下回っている場合には、ステップS509にて肯定判定をしてステップS507に進み、電動弁68,78,81の開閉状態を上記パターンBとなるように切り替える。これにより、湯の供給元が親世帯側給湯設備51(電気給湯機62)となる。これに対して、親世帯側給湯設備51における給湯コストが子世帯側給湯設備52における給湯コストと一致している場合又は上回っている場合には、ステップS509にて否定判定をしてステップS504に進み、電動弁68,78,81の開閉状態を上記パターンAとなるように切り替える。これにより、湯の供給元が子世帯側給湯設備52(ガス給湯器72)となる。
ステップS501の説明に戻り、当該ステップS501にて否定判定をした場合には、ステップS510に進む。ステップS501では給湯中であるか否かを判定する。ステップS501にて否定判定をした場合には、そのまま本電動弁制御処理を終了する。ステップS501にて肯定判定をした場合には、ステップS511にて更新処理を実行した後、本電動弁制御処理を終了する。
ステップS511の更新処理においては、親世帯側の貯湯タンク70にて湯切れが発生した場合には子世帯側の貯湯タンク60に要求温度を満たす湯が蓄えられていることを条件に供給元を子世帯側の貯湯タンク60に切り替える。また、要求温度を満たさない場合であって電気給湯機62によるバックアップが可能な範囲であり且つ給湯コストがガス給湯器72よりも低い場合には電気給湯機62を稼働させるとともに供給元を親世帯側給湯設備51に切り替える一方、それ以外の場合にはガス給湯器72を稼働させるとともに供給元を子世帯側給湯設備52に切り替える。
本実施の形態に示すように、給湯開始時に給湯コストの比較→優先順の決定を行う構成とすれば、コスト変動への対応が可能となり、光熱費の削減効果を好適に発揮させることができる。
<第3の実施の形態>
上記第1の実施の形態に示した完全共有モードによれば、給湯コストが低い順となるようにして湯の供給元を順次切り替える構成とすることにより、両世帯トータルでの高熱費の削減に寄与できる。給湯中に湯切れ等が発生した場合には、次に供給コストが低い供給元への切り替えがなされることで電気やガス等の消費が抑制される。本実施の形態においては、融通モードとして完全共有モードが設定されている場合に、給湯中に湯の供給元が切り替わる機会を減らす工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、図21のフローチャートを参照して、本実施の形態における完全共有モード用の電動弁開閉処理について説明する。
完全共有モード用の電動弁開閉処理においては先ず、ステップS601にて親世帯及び子世帯の何れかにて湯の使用が開始されたか否かを判定する。ステップS601にて否定判定をした場合には、そのまま本電動弁制御処理を終了する。ステップS601にて肯定判定をした場合には、ステップS602にて要求温度の確認処理を行う。続くステップS603では、子世帯の貯湯タンク70に要求温度以上の湯が確保されているか否かを判定する。ステップS603にて湯が確保されていないと判定した場合には、ステップS604に進む。ステップS604では親世帯の貯湯タンク60に要求温度以上の湯が確保されているか否かを判定する。ステップS604にて否定判定をした場合にはステップS605に進む。ステップS605では、電動弁68,78,81の開閉状態を上記パターンAとなるように切り替える。これにより、湯の供給元が子世帯の貯湯タンク70となる。ステップS604にて否定判定をした場合にはステップS606に進む。ステップS606では、電動弁68,78,81の開閉状態を上記パターンBとなるように切り替える。これにより、湯の供給元が親世帯の貯湯タンク60となる。
ステップS603の説明に戻り、当該ステップS603にて肯定判定をした場合、子世帯の貯湯タンク70に要求温度以上の湯が確保されていると判定した場合には、ステップS607に進む。ステップS607では今回の湯の需要が子世帯にて発生したか否か(湯の使用が開始されたかのが子世帯であるか否か)を判定する。ステップS607にて肯定判定をした場合にはステップS605に進み、電動弁68,78,81の開閉状態を上記パターンAとなるように切り替える。これにより、湯の供給元が子世帯の貯湯タンク70となる。
ステップS607にて否定判定をした場合、湯の使用が開始されたのが親世帯である場合には、ステップS608に進む。ステップS608では親世帯の貯湯タンク70から親世帯へ湯を供給している最中であるか否かを判定する。ステップS608にて否定判定をした場合には、ステップS605の電動弁開閉処理を実行した後、本電動弁制御処理を終了する。これにより、親世帯への湯の供給元が子世帯の貯湯タンク70となる。
ステップS608にて肯定判定をした場合、すなわち子世帯への供給中であると判定した場合には、ステップS609に進む。ステップS609では子世帯の貯湯タンク70における湯の残量が所定量以上であるか否かを判定する。ステップS609にて肯定判定をした場合には、ステップS605の電動弁開閉処理を実行した後、本電動弁制御処理を終了する。これにより、親世帯への湯の供給元が子世帯の貯湯タンク70となる。
これに対して、ステップS609にて否定判定をした場合、すなわち子世帯の貯湯タンク70における湯の残量が所定量を下回っていると判定した場合には、ステップS610に進む。ステップS610では、電動弁68,78,81の開閉状態をパターンCとなるように切り替える。パターンCでは、親世帯側の電動弁68が開状態、子世帯側の電動弁78が開状態、連絡配管80に付属の電動弁81が閉状態となり、世帯間での湯の融通が不可となる。
つまり、図22(a)の概略図に示すように、子世帯側給湯設備52から子世帯へ湯が供給されている状況下にて親世帯側にて湯の需要が発生した場合には、その時点で子世帯の貯湯タンク70に溜まっている湯の量によって親世帯側へ湯を融通するか否かが分かれることとなる。図22(b)の例では所定量が20Lとなっており、湯の残り量がこの所定量を超えている。このため、電動弁68,78,81の開閉状態はパターンAとなり、貯湯タンク70から子世帯及び親世帯の両方に湯が供給されることとなる。これに対して、図22(c)の例では貯湯タンク70の湯の残り量が所定量を下回っている。この場合には、電動弁68,78,81の開閉状態がパターンCに切り替わり、親世帯においては親世帯側の貯湯タンク60から湯が供給されることとなる。
ステップS601の説明に戻り、当該ステップS601にて否定判定をした場合には、ステップS611に進み、給湯中であるか否かを判定する。ステップS611にて否定判定をした場合にはそのまま本電動弁制御処理を終了し、ステップS611にて肯定判定をした場合にはステップS612にて更新処理を実行した後、本電動弁制御処理を終了する。ステップS611の更新処理においては、湯切れが発生するまで現在の供給元を維持し、湯切れが発生した場合には次に給湯コストの低い給湯設備へと湯の供給元を切り替える。
本実施の形態に示す構成においては、子世帯への湯の供給中に親世帯にて湯の需要が発生した場合には、子世帯の貯湯タンク70における湯の残り量に応じて親世帯へ湯を融通するか否かが決定される。つまり、湯の残り量が十分に多い場合には、親世帯へ湯を融通する一方で、湯の残り量が僅かである場合には親世帯への湯の融通を回避する。親世帯及び子世帯の両方にて湯が使用される場合には、一方の世帯のみの場合と比較して、湯の消費速度が高くなる。つまり、湯が不足して湯の供給元が切り替わるといった事象が生じやすくなる。この点、本実施の形態に示す構成によれば、残り量が少ない場合には、親世帯側には給湯コストが次に貯湯タンク60の湯が供給されることとなり、給湯中に湯の供給元が切り替わる機会を少なくすることができる。これにより、供給先の変化に基づいて給湯中の湯温等が変化することを好適に抑制できる。
なお、上述した実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。因みに、以下の別形態の構成を、上記実施の形態における構成に対して、個別に適用してもよく、相互に組み合わせて適用してもよい。
(1)上記各実施の形態では、吐水口と貯湯タンク70とを繋ぐ第2給湯管75の途中位置に連絡配管80が接続され、連絡配管80にて連絡配管80との接続箇所と貯湯タンク70との間にバックアップ用のガス給湯器72を配置した。バックアップ用のガス給湯器72の配置についてはこれに限定されるものではない。例えば、連絡配管80との接続箇所と吐水口との間に配置することも可能である。
また、連絡配管80を通じて世帯間での湯の融通が可能であれば足り、連絡配管80の接続先を貯湯タンク60,70とすることも可能である。
(2)上記各実施の形態では、親世帯20のバックアップ熱源の加熱方式と子世帯30のバックアップ熱源の加熱方式とを相違させる構成としたが、各バックアップ熱源の加熱方式を揃える構成とすることも可能である。
また、親世帯20のバックアップ熱源をガス給湯器72とし、子世帯30のバックアップ熱源を電気給湯機62としたが、これを逆にすることも可能である。
(3)融通モードとして余剰共有モードが設定されている場合には、融通中に余剰量がなくなった場合には当該融通を中断し、給湯元を切り替える構成とした。開始された融通は余剰量を下回った場合であっても継続される構成とすることも可能である。突然給湯元を切り替えようとした場合には、湯温が急激に変化するが、湯の融通を続けることにより、そのような温度変化を回避することができる。
(4)上記各実施の形態では、湯が融通されている最中は融通されている側のバックアップ加熱部を非稼働とする構成としたが、これを変更し、湯の融通が行われている最中に融通されている側のバックアップ加熱部を稼働させる構成としてもよい。特に、応答性の劣るヒートポンプ式の電気給湯機においては融通中に当該給湯器を稼働させて湯を蓄えることにより、融通が受けられなくなった後の湯の使い勝手を向上することができる。
(5)上記各実施の形態では、キッチン設備、洗面台、シャワー設備にて湯が使用される状況下にて湯が不足している場合又は湯が不足した場合に他の世帯から湯を融通する構成としたが、同様の機能をバスユニットへの給湯(湯張り)に適用してもよい。すなわち、バスユニットにて湯張りが行われる状況下にて湯が不足している場合又は湯が不足した場合に他の世帯からの湯を融通する構成としてもよい。
(6)上記各実施の形態では、過去の実績データ基づいて制御装置55が各家庭における湯の推定使用量を設定する構成としたが、これを変更し、ユーザによって予想使用量が設定される構成とすることも可能である。また、制御装置55によって基準使用量を設定する構成とする場合にはメーカ等による設計値を参照する構成とすることも可能であり、過去の実績データを参照する必要は必ずしもない。
(7)上記各実施の形態では二世帯住宅に融通機能を有する給湯システム50を適用した場合について例示したが、これに限定されるものではない。三世帯住宅に融通機能を有する給湯システムを適用してもよい。またマンション等の集合住宅に融通機能を有する給湯システムを適用してもよい。この場合、同じ融通モードが選択されている世帯間で湯や給湯設備を共有化するとよい。例えば、余剰共有モードが選択されている世帯が複数存在する場合にはそれらの世帯間にて湯の余剰となっている湯の融通を行う構成とし、完全共有モードが選択されている世帯が複数存在する場合にはそれらの世帯にて給湯設備を共用化し給湯コスト順に湯の供給元を切り替える構成とすることも可能である。
(8)上記各実施の形態では、湯の使用中は融通モードの切り替えが規制される構成としたが、これに限定されるものではない。湯の使用中であっても融通モードの切り替えがなされる構成としてもよし、湯の使用中に融通モードの選択操作が行われた場合には、湯の使用が終了したことに基づいて設定されている融通モードの切り替えがなされる構成としてもよい。
(9)完全共有モードでは、少なくとも事前に費用を投じて加熱を行うことにより湯を生成している給湯設備が存在する場合には、他の給湯設備との給湯コストの高低に関係なく、加熱済みの湯を優先して供給する構成をする構成としてもよい。
(10)上記第2の実施の形態における完全共有モードでは、親世帯側の貯湯タンク60及び子世帯側の貯湯タンク70の両方に要求温度を満たす湯が確保されている場合には、貯湯タンク70の湯を優先的に使用する構成としたが、これを変更し、貯湯タンク60の湯を優先的に使用する構成とすることも可能である。
(11)上記第3の実施の形態では、子世帯の貯湯タンク70から子世帯に湯の供給が行われている最中に親世帯にて湯の需要が発生した場合に貯湯タンク70における残り湯量に応じて湯の供給元を子世帯側給湯設備52(貯湯タンク70)とするか親世帯側給湯設備51(貯湯タンク60)とするかを決める構成としたが、これに代えて又はこれに加えて以下の構成とすることも可能である。すなわち、親世帯の貯湯タンク60から親世帯に湯の供給が行われている最中に子世帯にて湯の需要が発生した場合に貯湯タンク60における残り湯量に応じて湯の供給元を親世帯側給湯設備51(貯湯タンク60)とするか子世帯側給湯設備52(ガス給湯器72)とするかを決める構成としてもよい。
(12)上記第3の実施の形態に示した供給元の切り替えを、余剰共有モードにて行うことも可能である。すなわち、余剰となる湯が確保されている場合であっても、残りの湯量に応じて融通を行うか否かを決定することも可能である。
(13)融通モードの変更によって、余剰共有モード又は全体共有モードへ移行する場合には、各モードへの移行時に各貯湯タンクの湯量を特定し、その結果に応じて電動弁68,78,81の開閉状態を決める構成とすることも可能である。この構成によれば、湯の使用開始時の応答性の向上に寄与できる。
(14)上記核実施の形態では、湯の供給が終了した後は、各電動弁68,78,81を設定されている融通モードに対応した初期状態に復帰させる構成としたが、これに限定されるものではない。湯の供給が終了した後は各電動弁68,78,81をそのままの状態に維持する構成としてもよい。
(15)上記各実施の形態においては、子世帯の貯湯タンク70にミキシングユニット73を併設したが、親世帯の貯湯タンク60にミキシングユニットを併設することも可能である。
(16)上記各実施の形態では、親世帯及び子世帯の各世帯に太陽熱給湯器を配設したが、これに限定されるものではない。少なくとも一方の世帯に太陽熱給湯器が設けられており、太陽熱給湯器を有する世帯の湯を他の世帯に融通することができるのであればよい。
(17)上記各実施の形態では、ガスや電力(「購買エネルギ」に相当)の単価を給湯コスト(「生成コスト」に相当)とした場合について例示したが、これに限定されるものではない。例えば、給湯設備のメンテナンス費用等のランニングコストを上記給湯コストに加味したものを「生成コスト」とすることも可能である。