JP6830657B2 - 水準器 - Google Patents
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Description
一軸型の水準器は一般に、気泡式または指針式の測定表示部を備えており、気泡式については、気泡分を残して液体が充填された円柱形の気泡管が、指針式については、先端とは逆側に重りが付けられた指針が、勾配を測定して表示する機能を担う。
すなわち、一軸型の水準器において、測定の基準面となる底面を、測定対象面に当接させた際に、気泡管の気泡や指針の先端が、浮力ないし重力の作用により傾斜方向の上流側へと移動するため、これを視認することで勾配が測定できるというものである。
そこで、特許文献1のように、一軸型の水準器2つを、その長手方向が直交するように平面視でL字型に連結して、一方の水準器で測定対象面の前後方向の勾配を、他方の水準器で測定対象面の左右方向の勾配を、同時に測定しようとする試みもなされている。
しかし、測定対象面がほぼ鉛直方向を向く面である場合には、一方の水準器の測定方向が測定対象面の前後方向または左右方向と一致するように、連結した水準器の底面を当接させると、他方の水準器の測定方向が自ずと測定対象面の上下方向、すなわち浮力方向ないし重力方向と一致してしまう。
このため、その他方の水準器の測定表示部は、気泡式の場合はその気泡が上昇しきってしまい、また指針式の場合はその指針が振り切れてしまい、いずれにせよ勾配測定の用をなさなくなってしまう。
したがって、ほぼ鉛直方向を向く測定対象面については、実質的には一方の水準器のみが機能し、一次元方向の勾配を測定することしかできなくなってしまう問題がある。
そして、前記ケーシングは、前記周面から前記タブの突出方向に対して垂直な方向に延伸して前記天面へと貫通し、かつ前記タブと補完形状をなす第1の凹部と、前記底面から前記タブの突出方向および前記第1の凹部の延伸方向のいずれに対しても垂直な方向に延伸して前記周面へと貫通し、かつ前記タブと補完形状をなす第2の凹部と、を有するものとしたのである。
そして、上下方向を向いた水準器の底面を、測定の基準面としてほぼ鉛直方向を向く測定対象面に当接させることで、他の2つの水準器がほぼ水平方向を向くことになる。水準器間の位置関係は互いに直交した状態のまま不変であるため、ほぼ水平方向を向いた2つの水準器に対して、測定対象面の二次元方向の勾配が反映されることになる。
したがって、ほぼ鉛直方向を向く測定対象面の二次元方向の勾配を同時に測定することが可能となる。
特に、ほぼ鉛直方向を向く測定対象面の測定時には、宙に浮いた状態となる、ほぼ水平方向を向く2つの水準器が、重力の作用により傾きそうになると、タブの係合穴の孔の内周に凹部の突起の外周が押し付けられ、自動的に疑似的な締まり嵌め状態となるため、突起と係合穴がない場合に比べて、連結強度が飛躍的に向上する。
また、凹部の各突起とタブの各係合穴とは、一対一に対応して他の突起やタブとはまり合えないようになっているため、ずれた位置で突起とタブがはまり合い、水準器同士の連結状態や勾配の測定状態に支障をきたす事態が防止される。
また、指針式等と比較して、安価で衝撃にも強く、水準器全体の小型化も図ることができる。
図1から図3のように、実施形態の水準器1は、ケーシング10と、タブ20と、測定表示部としての気泡管30とを有する、いわゆる一軸型の水準器であって、この水準器1を3つ連結することで、器物の側面等、ほぼ鉛直方向を向く測定対象面Sの二次元方向の勾配を測定可能なものとなっている。
ケーシング10の寸法は特に限定されないが、たとえば、比較的小型の水準器として、幅が14〜20mm、長さが40〜55mm、高さが17〜23mmであることが例示できる。この程度の大きさであれば、水準器1を複数連結した場合にも、その連結体を手で取り扱いやすい寸法に収まり、また気泡管30として、極端に小さなものではなく視認の容易な寸法のものをケーシング10に搭載することができる。
測定対象面Sに微小な凹凸が存在する場合、その凸部が溝11aに入り込むことで凸部と底面11との干渉が防止される。したがって、底面11の溝11aが、勾配測定時における微小な凹凸の影響を排除し、水準器1の測定精度を向上させることができる。
ケーシング10の天面14は、アーチ形に湾曲しており、この天面14から左右の側面12にかけて窓15が設けられている。
また、ケーシング10には、図示省略の磁石が窪みへのはめ込み等の適宜手段により内蔵されている。
ケーシング10の材質は特に限定されないが、合成樹脂製、金属製であることが例示できる。ケーシング10は、たとえば射出成形により形成された左右のケーシング半体同士を嵌合させることにより、作製することができる。
タブ20の下面(裏面)とケーシング10の底面11とは、同一平面を構成する。
タブ20の材質は特に限定されないが、合成樹脂製、金属製であることが例示でき、ケーシング10と同じ材質でもよいし、異なる材質でもよい。また、タブ20は、ケーシング10と一体に形成してもよいし、別体に形成したものを連結してもよい。
たとえばタブ20をケーシング10と一体に射出成形することで、水準器1の製造が容易となる。また、タブ20をケーシング10と別体に形成し、そのタブ20を金属製とし、ケーシング10を樹脂製とすることで、水準器1全体の重量増加を防ぎつつ、タブ20の耐摩耗性を向上させることができる。
また、タブ20の幅は、最先端を除いて、ケーシング10との連結端から先端に向けて漸増しており、最先端においては、タブ20が丸みを帯びることでその幅が急減している。
タブ20は、その厚み方向(表裏面方向)に貫通する円形の係合穴21を二つ有している。係合穴21は、タブ20の突出方向に並列しており、かつその径は、タブ20の先端に近い側の穴がケーシング10との連結端に近い側の穴よりも大きくなっている。
タブ20の下面の先端近傍は、係合穴21と連続する切欠き部22となっている。
第1の凹部16は、ケーシング10の端面13の中央部から、上方(ケーシング10の底面11から天面14に向かう方向)に延伸して、天面14へと貫通している。天面14への貫通箇所には、矩形の開口14aが形成されており、開口14aの周縁は面取りが施されている。
第2の凹部17は、底面11上において、前記第1の凹部16が設けられた端面13と逆側の端面13に近接し、かつその端面13と平行に延伸して、左右一対の側面12のうち一方の側面12へと貫通している。側面12への貫通箇所には、矩形の開口12aが形成されており、この開口12aの周縁は面取りが施されている。
底面11の溝11aは、第2の凹部17が延伸する箇所には設けられておらず、第2の凹部17と溝11aとは、連通していない。
第1の凹部16および第2の凹部17は、その窪みの底から突出する円柱形の突起16a、17aをそれぞれ2つ有している。突起16a、17aは、第1の凹部16および第2の凹部17の延伸方向に並列しており、かつその径は、開口12a、14aに近い側の突起が、凹部16,17の開口とは逆側の終端部(突き当り箇所)に近い側の突起よりも小さくなっている。また、突起16a、17aの突出高さと、第1の凹部16および第2の凹部17の窪みの深さとはほぼ等しい、すなわち、第1の凹部16の突起16aの先端部は、端面13と同一平面を構成し、第2の凹部17の突起17aの先端部は、底面11と同一平面を構成する。
第1の凹部16および第2の凹部17は、同形同寸法であって、その幅は、タブ20の幅と等しく、その深さは、タブ20の厚みと等しく、その長さも、タブ20の長さと等しい。また、凹部16、17の突起16a、17aの径は、タブ20の係合穴21の径と等しい。つまり、凹部16、17の形状は、タブ20と凹凸が反転した補完形状となっている。
はめ込み作業の際には、開口12a、14aの周縁は面取りされているため、タブ20が開口縁に干渉することが防止されている。また、凹部16、17は、開口12a、14aに向けて幅が狭まっており、タブ20もこれに対応した形状となっているため、タブ20は、(タブ20の係合穴21や凹部16、17の突起16a、17aが存在しない場合でも)開口12a、14aの側に向けて抜き取り不能となっている。
気泡管30は、その管体31の軸心がケーシング10の長手方向と一致するように、ケーシング10に保持されている。管体31の軸心とケーシング10の底面11とは、平行になっている。気泡管30は、両端部および下部を除く大部分が、ケーシング10の窓15を通じて露出しており、外部から視認可能となっている。
透明の管体31には、その軸心方向に並列する標線31aが付されている。各標線31aは、管体31の全周にわたって円環形をなしている。標線31aは、ケーシング10の一方の端面13の側に偏って2つが近接して、他方の端面13の側に偏って2つが近接して、計4つが設けられている。
管体31の材質は特に限定されないが、ガラス製、透明の合成樹脂製であることが例示できる。管体31は、たとえば円筒体の両端を円板で閉塞することにより作製することができる。液体32は、気泡33の視認性を高めるために、色付けされていてもよい。
この状態で、気泡管30内の気泡33は、浮力の作用により管体31の軸心に沿って、測定基準面Sの傾斜方向の上流側へと移動する。
管体31に付された標線31aと気泡33との相対的な位置関係を視認することで、測定対象面Sの勾配を確認することができる。
気泡管30内の気泡33が、4つの標線31aのうちの、内側の2つの標線31aの間に位置している場合、測定対象面Sはほぼ勾配が存在しないことを意味する。
また、気泡33が、外側の2つの標線31aよりも管体31の端部寄りに位置している場合、測定対象面Sに大きな勾配があることを意味し、ほぼ標線31a上に位置している場合、測定対象面Sに小さな勾配があることを意味する。
これにより、実施形態の水準器1は、測定対象面Sの一次元方向の勾配を測定可能となっている。
この状態で、2つの水準器1の、測定の基準面となるケーシング10の底面11をともに鉄板等からなる測定対象面Sに当接させ、磁石の作用で位置決めすると、一方の水準器1で測定対象面Sの前後方向の勾配を、他方の水準器1で左右方向の勾配を、同時に測定することができる。
3つの水準器1は、それぞれその長手方向が、上下方向、前後方向および左右方向を向いて、互いに直交した状態に連結される。
こうして連結された水準器1のうち、長手方向が上下方向を向く水準器1のケーシング10の底面11を、測定する際の基準面として鉄板等からなる測定対象面Sに当接させる。磁石の作用により、ほぼ鉛直方向を向く測定対象面Sに対して水準器1が位置決めされるため、この水準器1を手で下から受け支える等する必要はない。
このとき、長手方向が前後方向を向く水準器1や左右方向を向く水準器1は、ほぼ水平な状態に維持されることになる。
長手方向が前後方向を向く水準器1には、測定対象面Sの前後方向の勾配が反映される。また、長手方向が上下方向を向く水準器1の気泡管30の気泡33は、端部に昇り切ってしまうため(図4参照)、測定の用をなさないが、この水準器1と直交して長手方向が左右方向を向く水準器1には、測定対象面Sの上下方向の勾配が反映される。
このため、ほぼ鉛直方向を向く測定対象面の、二次元方向の勾配を同時に測定することが可能となる。
なお、図4では、測定対象面Sは上下前後方向に広がる平面となっているが、測定対象面Sが上下左右方向に広がる平面である場合についても、同様に勾配を測定可能である。この場合、長手方向が左右方向を向く水準器1に、測定対象面Sの左右方向の勾配が反映され、長手方向が前後方向を向く水準器1に、測定対象面Sの上下方向の勾配が反映されることになる。
タブ20や凹部16、17の上記のような位置関係に加えて、気泡管30は水準器1の長手方向の中央部に設けられているため、気泡管30に他の水準器1のケーシング10が重なり合うことが防止されている。このため気泡管30を目視で確認する際に、他の水準器1のケーシング10が邪魔になることはない。
水準器同士を連結する際には、タブ20と凹部16、17とがはまり合うことに加えて、タブ20の係合穴21と凹部16、17の突起16a、17aもはまり合うため、連結強度が大きく、意図せずして連結が解除することが防止されている。
特に、ほぼ鉛直方向を向く測定対象面Sの勾配を測定する場合には、前後方向を向く水準器1と左右方向を向く水準器1は宙に浮いた状態となり、重力の作用により、これらの水準器1に他の水準器1との連結箇所を中心に傾斜しようとする力が負荷される。通常であれば、連結が解除されやすくなるところ、実施形態の水準器1の場合、傾斜しようとする力の負荷により、タブ20の係合穴21の孔の内周に凹部16、17の突起16a、17aの外周が強く押し付けられることになるため、疑似的な締まり嵌め状態となって、連結強度が一層高くなる。
また、測定表示部として気泡管30を用いた水準器と、指針を用いた水準器に、それぞれ凹部16、17やタブ20を設けて両者を連結することも可能である。
係合穴21や突起16a、17aの形状や数についても実施形態に限定されず、たとえば角柱形、非貫通の半球形でもよく、並列する突起間で形状を違えてもよい。係合穴21や突起16a、17aを省略することもできる。切欠き部22も省略可能である。
タブ20の形成位置、第1の凹部16のケーシングの端面13上における形成位置、および第2の凹部17のケーシング10の底面11上における形成位置も、水準器同士の連結や測定表示部の視認に支障がない限りにおいて、実施形態のものに限定されない。
ケーシング10には、第1の凹部16、第2の凹部17以外の凹部が形成されていてもよいし、タブ20以外のタブが設けられていてもよい。たとえば、両端面13に凹部を設けたり、底面11に凹部を複数設けたり、側面12や天面14にも凹部を設けたりしてもよい。
実施形態では、ケーシング10に磁石を内蔵させているが、磁石を省略することも可能である。
10 ケーシング
11 底面
11a 溝
12 側面
12a 開口
13 端面
14 天面
14a 開口
15 窓
16 第1の凹部
16a 突起
17 第2の凹部
17a 突起
20 タブ
21 係合穴
22 切欠き部
30 気泡管
31 管体
31a 標線
32 液体
33 気泡
S 測定対象面
Claims (6)
- 測定対象面の一次元方向に対する勾配を測定して表示可能な測定表示部と、
底面、周面および天面を有して、前記測定表示部を保持し、その底面が前記勾配を測定する際の基準面となるケーシングと、
前記ケーシングの周面から突出し、その下面が前記ケーシングの底面と同一平面をなすタブと、を備え、
前記ケーシングは、
前記周面から前記タブの突出方向に対して垂直な方向に延伸して前記天面へと貫通し、かつ前記タブと補完形状をなす第1の凹部と、
前記底面から前記タブの突出方向および前記第1の凹部の延伸方向のいずれに対しても垂直な方向に延伸して前記周面へと貫通し、かつ前記タブと補完形状をなす第2の凹部と、を有する水準器。 - 前記ケーシングは長手方向を有し、
前記測定表示部は、前記ケーシングの長手方向の中央部に保持されており、
前記タブは、前記ケーシングの長手方向の両端部のうち一端部に位置し、かつ前記ケーシングの長手方向に突出し、
前記第1の凹部は、前記ケーシングの長手方向の両端部のうち一端部であって前記タブの上方に位置し、
前記第2の凹部は、前記ケーシングの長手方向の両端部のうち他端部に位置する請求項1に記載の水準器。 - 前記ケーシングの第1の凹部および第2の凹部は、その窪みの底から突出する柱状の突起を有し、
前記タブは、前記突起と補完形状をなす係合穴を有する請求項1または2に記載の水準器。 - 前記ケーシングの第1の凹部および第2の凹部の突起は、それぞれ凹部の延伸方向に形状または寸法の異なるものが並列して複数設けられており、
前記タブの係合穴は、前記複数の突起に一対一に対応して補完形状をなすように、形状または寸法の異なるものがタブの突出方向に並列して複数設けられている請求項3に記載の水準器。 - 前記測定表示部は、
中空円柱形で、その軸心が前記ケーシングの底面と平行な管体と、
前記管体に充填された液体と、
前記液体内を浮遊する気泡と、を有する気泡管である、請求項1から4のいずれかに記載の水準器。 - 前記ケーシングに内蔵される磁石をさらに備え、
前記ケーシングの底面は、前記測定対象面に対し磁力の作用で吸着可能である、請求項1から5のいずれかに記載の水準器。
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