JP6829839B2 - ビレットの誘導加熱装置及び誘導加熱方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献1、2に記載の装置によれば、ビレットを誘導加熱しながらダイバータを直接冷却するため、冷却手段から冷却水が漏れて、誘導加熱中のビレットや誘導加熱装置を構成する部材に冷却水がかかってしまい、操業トラブルに通じる可能性がある。
また、ダイバータは、ビレットの上端面の寸法等に応じて、適切なサイズのダイバータに取り替える場合がある。また、使用を繰り返すことでダイバータが劣化し、新たなダイバータに取り替える場合もある。上記の好ましい構成によれば、ダイバータを取り替える場合に、コイルの上方の位置から退避した位置にダイバータを移動させることができ、取り替え作業を安全に行うことが可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係る誘導加熱装置の概略構成を模式的に且つ部分的に断面で示す正面図である。図1は、本実施形態に係る誘導加熱装置100によってビレットBを誘導加熱している状態を図示している。
図1に示すように、本実施形態に係る誘導加熱装置100は、誘導加熱手段10と、ダイバータ20と、昇降手段30と、冷却ノズル40とを備えている。なお、本実施形態に係る誘導加熱装置100は、上下一対のダイバータ20を備えているため、上側に位置するダイバータ20を上ダイバータ20aと称し、下側に位置するダイバータ20を下ダイバータ20bと称する。特許請求の範囲においてその特徴を規定しているダイバータは、上ダイバータ20aである。また、本実施形態に係る誘導加熱装置100は、冷却ノズル40を上下にそれぞれ一対ずつ備えているため、上側に位置する一対の冷却ノズル40を上冷却ノズル40aと称し、下側に位置する一対の冷却ノズル40を下冷却ノズル40bと称する。特許請求の範囲においてその特徴を規定している冷却ノズルは、上冷却ノズル40aである。
また、本実施形態に係る誘導加熱装置100は、下ダイバータ20bを昇降させるための油圧シリンダ50を備えている。
筒状部材11は、その中心軸Cが上下方向に沿うように配置されている。筒状部材11は、コイル12を固定する役割を有する。また、筒状部材11は、ビレットBがコイル12と接触する等して、ビレットB及びコイル12にきずが発生することを防ぐ役割等も有する。
コイル12は、筒状部材11の中心軸C周りに巻かれている。本実施形態のコイル12は、筒状部材11の外周面に沿って巻かれている。
交流電源13は、コイル12に接続され、コイル12に所定周波数の交流電流を通電する。図1に示すように、筒状部材11内にビレットBが挿通された状態(コイル12内にビレットBが挿通された状態)で、交流電源13によってコイル12に交流電流を通電することで、ビレットBは誘導加熱される。すなわち、コイル12に交流電流を通電することで、筒状部材11の中心軸C(コイル12の中心軸)方向に延びる磁束が生成され、その磁束の時間的変化に応じてビレットB内に生じる渦電流により、ビレットBは加熱される。
下ダイバータ20bも同様に、誘導加熱手段10によるビレットBの誘導加熱の際、ビレットBの下端面に対向(接触)し、コイル12に交流電流を通電することで生成される磁束をビレットの下端面に集束させる機能を有する。
上ダイバータ20a及び下ダイバータ20bとしては、珪素鋼板を積層して形成された公知の構成のダイバータを用いることができる。
本実施形態の昇降手段30は、下端部に上ダイバータ20aが脱着自在に取り付けられ、上下方向に伸縮自在の伸縮フレーム31を具備する。具体的には、本実施形態の伸縮フレーム31は、断面多角形で断面寸法の異なる複数のフレーム片を伸縮自在に組み合わせたテレスコピック構造である。より具体的には、本実施形態の伸縮フレーム31は、断面四角形で断面寸法が順に小さくなる3つのフレーム片31a、31b、31cを伸縮自在に組み合わせたテレスコピック構造である。上ダイバータ20aは、フレーム片31cの下端部に取り付けられている。
例えば、ハンドル33aを用いて、ワイヤ34を回転ドラム33に巻き取る方向に回転ドラム33を回転させることで、ワイヤ34の他端側は上昇し、フレーム片31cも上昇する。これにより、伸縮フレーム31は、ワイヤ34の他端側の上下方向の位置に応じて収縮する。そして、伸縮フレーム31の収縮量(フレーム片31cの上端面の上昇量)に応じて、上ダイバータ20aも上昇することになる。
逆に、ハンドル33aを用いて、ワイヤ34を回転ドラム33から巻き出す方向に回転ドラム33を回転させることで、ワイヤ34の他端側は下降し、フレーム片31cも下降する。これにより、伸縮フレーム31は、ワイヤ34の他端側の上下方向の位置に応じて伸長する。そして、伸縮フレーム31の伸長量(フレーム片31cの上端面の下降量)に応じて、上ダイバータ20aも下降することになる。
下冷却ノズル40bは、上冷却ノズル40aよりも下方に位置し、後述のように、下降した下ダイバータ20bに向けて冷却水を略水平方向に噴出する。
本実施形態では、上冷却ノズル40aを一対備えているが、本発明はこれに限るものではなく、1つであっても良いし、3つ以上であってもよい。下冷却ノズル40bについても同様である。
図2は、誘導加熱装置100の動作の概要を示す説明図である。誘導加熱装置100は、図2(a)〜図2(f)の順に動作する。なお、図2では、便宜上、コイル12等の図示を適宜省略しているが、実際には誘導加熱装置100は、図1を用いて説明した各構成要素を有する。
まず、図2(a)に示すように、適宜の搬送手段(図示せず)によってビレットBが矢符の方向から誘導加熱手段10の下方の位置に搬入され、ビレットBの下端面が下ダイバータ20bに接触する状態となる。
次いで、図2(b)に示すように、油圧シリンダ50を伸長させることで、油圧シリンダ50の上端部に取り付けられた下ダイバータ20bが上昇し、下ダイバータ20bに接触するビレットBも上昇する。そして、ビレットBの上端面が上ダイバータ20aにも接触する状態となる。
そして、図2(e)に示すように、上ダイバータ20aは、筒状部材11の下端を超えて(コイル12の下端を超えて)上冷却ノズル40aに水平方向に対向する位置まで下降する。具体的には、本実施形態では、伸縮フレーム31が最も伸長した状態で、上ダイバータ20aが上冷却ノズル40aに対向する位置となる。一方、下ダイバータ20bは、油圧シリンダ50を収縮させることで、下冷却ノズル40bに水平方向に対向する位置まで下降する。そして、ビレットBは、搬送手段によって図2(e)の矢符の方向に搬出され、熱間押出に供される。
また、本実施形態に係る誘導加熱装置100では、昇降手段30に伸縮フレーム31を採用することで、昇降手段30の上下方向寸法を抑制できるため、誘導加熱装置100を構成する他の部材や、誘導加熱装置100以外の他の周辺機器との干渉を回避し易いという利点を有する。
さらに、本実施形態に係る誘導加熱装置100では、伸縮フレーム31が、断面四角形で断面寸法が順に小さくなる3つのフレーム片31a、31b、31cを伸縮自在に組み合わせたテレスコピック構造であるため、各フレーム片31a〜31cの上下方向の中心軸周りの回動が阻止され、ひいては伸縮フレーム31の下端部に取り付けられた上ダイバータ20aの上下方向周りの回動が阻止される。このため、ビレットBの誘導加熱の際に、上ダイバータ20aを安定してビレットBの上端面に接触させることが可能である。
図3は、旋回機構32及び回転ドラム33の動作の概要を示す説明図である。図3(a)は平面図を、図3(b)は図3(a)の矢符Aの方向から見た部分的に断面で示す正面図である。
前述のように、本実施形態の昇降手段30は、伸縮フレーム31を上下方向軸N周りに旋回させる旋回機構32を具備する。具体的には、例えばモータ等を具備する回転駆動手段によって、旋回機構32が有するアーム部32aを上下方向軸N周りに旋回させることで、伸縮フレーム31を上下方向軸N周りに旋回可能である。この際、アーム部32aと連結している回転ドラム33、ひいてはワイヤ34及び滑車35も伸縮フレーム31と同時に旋回することになる。
また、ダイバータ20は、ビレットBの端面の寸法等に応じて、適切なサイズのダイバータ20に取り替える場合がある。また、使用を繰り返すことでダイバータ20が劣化し、新たなダイバータ20に取り替える場合もある。上記の旋回機構32及び回転ドラム33の動作によれば、上ダイバータ20aを取り替える場合に、筒状部材11の上方の位置から退避した位置に上ダイバータ20aを移動させることができる。例えば、退避した位置に作業用デッキを設ければ、作業者はその作業用デッキ上で取り替え作業を安全に行うことが可能である。
図4に示すように、上ダイバータ20aは、取付用治具60に固着されており、この取付用治具60を介して伸縮フレーム31のフレーム片31cの下端部に取り付けられている。具体的には、取付用治具60とフレーム片31cとがボルト61及びナット62で締結されることにより、上ダイバータ20aは、フレーム片31cに脱着自在に取り付けられている。取付用治具60には、ボルト61の軸H方向に直交する水平方向に延びる長穴63が形成されており、ボルト61は、この長穴63を貫通し、更にフレーム片31cを貫通した状態でナット62と螺合している。長穴63の長手方向(図4(a)の左右方向)の寸法のみならず、長穴63の幅方向(図4(a)の上下方向)の寸法も、ボルト61の軸径よりも大きく形成されている。これにより、取付用治具60は、伸縮フレーム31のフレーム片31cに対して、ボルト61の軸H周りに傾動自在であり、取付用治具60に固着された上ダイバータ20aもボルト61の軸H周りに傾動自在となる。
上記の上ダイバータ20aの取り付け構造によれば、上ダイバータ20が所定の水平方向軸(本実施形態ではボルト61の軸H)周りに傾動自在であるため、ビレットBの誘導加熱の際に、上ダイバータ20aをビレットBの上端面に密着させ易いという利点が得られる。
図5に示すように、誘導加熱手段10は、ビレットBの誘導加熱の際にコイル12(図5には図示せず)の上端開口を閉塞するための閉塞部材14を具備する。本実施形態では、コイル12が筒状部材11の外周面に沿って巻かれているため、閉塞部材14は、筒状部材11の上端開口11aを閉塞する構成とされている。具体的には、本実施形態では、筒状部材11の上端開口11aが円形であり、これに応じて本実施形態の閉塞部材14は、2分割された半円状の閉塞部材片14a、14bから構成されている。そして、各閉塞部材片14a、14bを組み合わせた状態(図5(b)に示す状態)で、閉塞部材14の外径が筒状部材11の上端開口11aの径よりも大きくなっている。また、各閉塞部材片14a、14bを組み合わせた状態で、閉塞部材14の内側に、フレーム片31bと略同等以上の寸法である開口部が形成されている。以上の構成により、閉塞部材14は、各閉塞部材片14a、14bを組み合わせた場合に、伸縮フレーム31(フレーム片31b、31c)を挿通した状態で、筒状部材11の上端開口11aを閉塞することが可能である。すなわち、図1に示すようなビレットBの誘導加熱の際に筒状部材11の上端開口11aを閉塞することが可能である。これにより、ビレットBの誘導加熱の際に、放熱によるビレットBの上端部の温度低下を抑制可能である。
ビレットBの誘導加熱終了後には、図5(c)に示すように、各閉塞部材片14a、14bを互いに離反させて組み合わせを解除すればよい。これにより、上ダイバータ20aを取り替える際等において、上ダイバータ20aを筒状部材11の上端開口11aより上方に移動させても、閉塞部材14が干渉するおそれがない。
筒状部材11の上端開口11aへの閉塞部材14の着脱(各閉塞部材片14a、14bの組み合わせ・解除)は作業者が手動で行っても良いし、各閉塞部材片14a、14bの駆動機構を設けて自動で行うことも可能である。
図6に示すように、本実施形態に係る誘導加熱装置100は、好ましい構成として、回転ドラム33を回転駆動する回転駆動手段70を備えることも可能である。回転駆動手段70は、上ダイバータ20aの上下方向の目標位置(例えば、上冷却ノズル40aに対向する位置や、図3(b)に示す筒状部材11の上端を超えて上昇した位置など)に応じた伸縮フレーム31の伸縮量が得られるように回転ドラム33の回転量を制御する。
具体的には、例えば、回転駆動手段70は、以下に述べる所定の演算を行うためのプログラムがインストールされた汎用のコンピュータから構成された制御手段71と、モータ等の駆動手段72とを具備する。制御手段71には、作業者の手入力によって又は上位のプロセスコンピュータからの送信によって、上ダイバータ20aの上下方向の目標位置が入力される。制御手段71は、入力された上ダイバータ20aの目標位置に応じた伸縮フレーム31の伸縮量(換言すれば、ワイヤ34の巻き取り量又は巻き出し量)を算出し、この伸縮量(巻き取り量又は巻き出し量)を得るために必要な回転ドラム33の回転量(回転角度)を算出する。そして、制御手段71は、この算出結果を回転指示信号として駆動手段72に送信する。駆動手段72は、送信された回転指示信号に応じて回転ドラム33を回転させる。回転ドラム33には、エンコーダ等の回転量検出センサ(図示せず)が取り付けられており、この回転量検出センサで検出した回転ドラム33の回転量検出値が制御手段71に逐次入力される。制御手段71は、入力された回転量検出値が、上記算出された回転量に到達した時点で、回転ドラム33の回転を停止するように、回転停止指示信号を駆動手段72に送信する。なお、エンコーダ等の回転量検出センサを駆動手段72に取り付けて、駆動手段72の回転量検出値を制御手段71に入力するように構成してもよい。
上記のように、回転駆動手段70によって回転ドラム33の回転量が制御されることで、上ダイバータ20aを上下方向の目標位置に自動的に位置決め可能である。このため、誘導加熱の際に、上ダイバータ20aをビレットBの上端面に接触させる図1に示す実施形態に加え、上ダイバータ20aをビレットBの上端面に所定距離だけ隔てて配置(近接させて配置)する実施形態も可能となる。また、作業者がハンドル33aを操作する必要もなく、作業が簡便になるという利点が得られる。
11・・・筒状部材
12・・・コイル
14・・・閉塞部材
20a・・・上ダイバータ(ダイバータ)
30・・・昇降手段
31・・・伸縮フレーム
32・・・旋回機構
33・・・回転ドラム
34・・・ワイヤ
40a・・・上冷却ノズル(冷却ノズル)
60・・・取付用治具
100・・・誘導加熱装置
B・・・ビレット
Claims (8)
- 上下方向軸周りに巻かれたコイルを具備し、前記コイルに交流電流を通電することで前記コイル内に挿通されるビレットを誘導加熱する誘導加熱手段と、
前記誘導加熱手段による前記ビレットの誘導加熱の際、前記ビレットの上端面に対向し、前記コイルに交流電流を通電することで生成される磁束を前記ビレットの上端面に集束させるダイバータと、
前記ダイバータの上下方向の昇降を案内する昇降手段と、
前記コイルの下端よりも下方に位置し、冷却水を噴出する冷却ノズルとを備え、
前記昇降手段は、前記冷却ノズルに対向する位置まで前記ダイバータを案内可能である、
ことを特徴とするビレットの誘導加熱装置。 - 前記昇降手段は、下端部に前記ダイバータが脱着自在に取り付けられ、上下方向に伸縮自在の伸縮フレームを具備する、
ことを特徴とする請求項1に記載のビレットの誘導加熱装置。 - 前記伸縮フレームは、断面多角形で断面寸法の異なる複数のフレーム片を伸縮自在に組み合わせたテレスコピック構造である、
ことを特徴とする請求項2に記載のビレットの誘導加熱装置。 - 前記昇降手段は、前記伸縮フレームを所定の上下方向軸周りに旋回させる旋回機構を具備し、
前記ダイバータは、前記伸縮フレームが収縮することによって前記コイルの上端を超えて上昇可能であり、前記旋回機構によって前記伸縮フレームが旋回することで前記コイルの上方の位置から退避した位置に移動可能である、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のビレットの誘導加熱装置。 - 前記ダイバータは、前記伸縮フレームに対して所定の水平方向軸周りに傾動自在に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項2から4の何れかに記載のビレットの誘導加熱装置。 - 前記昇降手段は、回転ドラムと、一端側が前記回転ドラムに取り付けられて前記回転ドラムに巻かれ、他端側が前記伸縮フレームに取り付けられたワイヤと、前記回転ドラムを回転駆動する回転駆動手段とを具備し、
前記伸縮フレームは、前記ワイヤの他端側の上下方向の位置に応じて伸縮し、
前記回転駆動手段は、前記ダイバータを上下方向の目標位置に位置決めするために、前記ダイバータの前記目標位置に応じた前記伸縮フレームの伸縮量が得られるように、前記回転ドラムの回転量を制御する、
ことを特徴とする請求項2から5の何れかに記載のビレットの誘導加熱装置。 - 前記誘導加熱手段は、前記ビレットの誘導加熱の際に前記コイルの上端開口を閉塞するための閉塞部材を具備する、
ことを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のビレットの誘導加熱装置。 - 請求項1から7の何れかに記載のビレットの誘導加熱装置を用いてビレットを誘導加熱する方法であって、
前記誘導加熱手段によって前記ビレットを誘導加熱する工程と、
前記ビレットの誘導加熱終了後に、前記ダイバータを前記昇降手段で案内することで、前記ダイバータを前記コイルの下端を超えて前記冷却ノズルに対向する位置まで下降させる工程と、
前記下降した位置において前記冷却ノズルから噴出する冷却水によって前記ダイバータを冷却する工程と、
を含むことを特徴とするビレットの誘導加熱方法。
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