以下、図面を参照して、医用画像診断装置の実施形態について説明する。なお、以下では、医用画像診断装置の一例である磁気共鳴イメージング装置の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。例えば、図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、送信コイル4、送信回路5、受信コイル6、受信回路7、架台8、寝台9、入力回路10、ディスプレイ11、記憶回路12、処理回路13〜16、及び、スピーカ17を備える。
静磁場磁石1は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、内側の空間に一様な静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された真空容器と、当該真空容器内に充填された冷却液(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石や常伝導磁石等の磁石とを有しており、真空容器の内側の空間に静磁場を発生させる。
傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するx軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を発生させる3つのコイルを備える。ここで、x軸、y軸及びz軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、x軸の方向は、水平方向に設定され、y軸の方向は、鉛直方向に設定される。また、z軸の方向は、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束の方向と同じに設定される。
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2が備える3つのコイルそれぞれに個別に電流を供給することで、x軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を内側の空間に発生させる。x軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を適宜に発生させることによって、互いに直交するリードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることができる。
ここで、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
そして、各傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳され、磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号に空間的な位置情報を付与するために用いられる。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向に沿った位置情報を付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向の位置情報を付与する。また、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させることで、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。
送信コイル4は、内側の空間に高周波磁場を印加する。具体的には、送信コイル4は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、傾斜磁場コイル2の内側に配置される。そして、送信コイル4は、送信回路5から出力される高周波(Radio Frequency:RF)パルスに基づいて、内側の空間に高周波磁場を印加する。
送信回路5は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信コイル4に出力する。例えば、送信回路5は、発振回路、位相選択回路、周波数変換回路、振幅変調回路、及び、高周波増幅回路を備える。発振回路は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波パルスを発生する。位相選択回路は、発振回路から出力される高周波パルスの位相を選択する。周波数変換回路は、位相選択回路から出力される高周波パルスの周波数を変換する。振幅変調回路は、周波数変換回路から出力される高周波パルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波増幅回路は、振幅変調回路から出力される高周波パルスを増幅して送信コイル4に出力する。
受信コイル6は、被検体Sから発せられるMR信号を受信するRFコイルである。例えば、受信コイル6は、送信コイル4の内側に配置された被検体Sに装着され、送信コイル4によって印加される高周波磁場の影響で被検体Sから発せられるMR信号を受信する。そして、受信コイル6は、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、受信コイル6には、撮像対象の部位ごとに専用のコイルが用いられる。ここでいう専用のコイルは、例えば、頭部用の受信コイル、頚部用の受信コイル、肩用の受信コイル、胸部用の受信コイル、腹部用の受信コイル、下肢用の受信コイル、脊椎用の受信コイル等である。
受信回路7は、受信コイル6から出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。例えば、受信回路7は、選択回路、前段増幅回路、位相検波回路、及び、アナログデジタル変換回路を備える。選択回路は、受信コイル6から出力されるMR信号を選択的に入力する。前段増幅回路は、選択回路から出力されるMR信号を増幅する。位相検波回路は、前段増幅回路から出力されるMR信号の位相を検波する。アナログデジタル変換回路は、位相検波回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。
なお、ここでは、送信コイル4が高周波磁場を印加し、受信コイル6がMR信号を受信する場合の例を説明するが、各高周波コイルの形態はこれに限られない。例えば、送信コイル4が、MR信号を受信する受信機能をさらに有してもよいし、受信コイル6が、高周波磁場を印加する送信機能をさらに有していてもよい。送信コイル4が受信機能を有している場合は、受信回路7は、送信コイル4によって受信されたMR信号からもMR信号データを生成する。また、受信コイル6が送信機能を有している場合は、送信回路5は、受信コイル6にも高周波パルスを出力する。
架台8は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び送信コイル4を収容する。具体的には、架台8は、円筒状に形成された中空のボアBを有しており、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び送信コイル4がボアBを囲むように配置された状態で、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び送信コイル4それぞれを支持する。ここで、架台8におけるボアBの内側の空間が、被検体Sの撮像が行われる際に被検体Sが配置される撮像空間となる。
寝台9は、被検体Sが載置される天板9aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、架台8におけるボアBの内側へ天板9aを挿入する。例えば、寝台9は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
入力回路10は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力回路10は、処理回路16に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路16へ出力する。例えば、入力回路10は、トラックボールやスイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。
ディスプレイ11は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ11は、処理回路16に接続されており、処理回路16から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ11は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
記憶回路12は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路12は、MR信号データや画像データを被検体Sごとに記憶する。例えば、記憶回路12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
処理回路13は、寝台制御機能13aを有する。例えば、処理回路13は、プロセッサによって実現される。寝台制御機能13aは、寝台9に接続され、制御用の電気信号を寝台9へ出力することで、寝台9の動作を制御する。例えば、寝台制御機能13aは、入力回路10を介して、天板9aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板9aを移動するように、寝台9が有する天板9aの駆動機構を動作させる。
処理回路14は、実行機能14aを有する。例えば、処理回路14は、プロセッサによって実現される。実行機能14aは、操作者によって設定された撮像条件に基づいて、各種スキャンを実行する。具体的には、処理回路16から出力されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動することで、各種パルスシーケンスを実行することで、各種スキャンを実行する。
ここで、シーケンス実行データは、MR信号データを収集するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給される電流の強さ、送信回路5が送信コイル4に供給する高周波パルスの強さや供給タイミング、受信回路7がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。
また、実行機能14aは、各種パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路7からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路12に格納する。なお、実行機能14aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路12に格納される。
処理回路15は、画像生成機能15aを有する。例えば、処理回路15は、プロセッサによって実現される。画像生成機能15aは、記憶回路12に格納されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能15aは、実行機能14aによって記憶回路12に格納されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像を生成する。また、画像生成機能15aは、生成した画像の画像データを記憶回路12に格納する。
処理回路16は、制御機能16aを有する。例えば、処理回路16は、プロセッサによって実現される。制御機能16aは、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、制御機能16aは、入力回路10を介して操作者から撮像条件(パルスシーケンスに関する各種のパラメータの入力等)を受け付け、受け付けた撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成する。そして、制御機能16aは、生成したシーケンス実行データを処理回路14に送信することで、各種スキャンを実行する。また、例えば、制御機能16aは、操作者から要求された画像の画像データを記憶回路12から読み出し、読み出した画像をディスプレイ11に出力する。
なお、処理回路16は、さらに、測定機能16bと、出力機能16cとを有する。これらの機能については、後に詳細に説明する。
ここで、上述した処理回路13〜16が有する各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路12に記憶される。各処理回路は、各プログラムを記憶回路12から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路13〜16は、図1に示した各処理機能を有することとなる。
また、図1に示す例では、各処理回路が有する処理機能が単一の処理回路によって実現されることとしたが、実施形態はこれに限られない。各処理回路が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
スピーカ17は、処理回路16から送られる電気信号を振動に変換して音声を出力する。例えば、スピーカ17は、処理回路16から送られる電気信号に応じて、呼吸に関する指示を伴う撮像で用いられる指示を音声で出力する。
なお、ここでいう呼吸に関する指示を伴う撮像には、例えば、被検体に息止めをさせた状態で撮像を行う呼吸停止(息止め)撮像や、被検体の呼吸に同期しながら撮像を行う呼吸同期撮像がある。ここで、呼吸同期撮像には、撮像実施中に最初の数回だけ指示を行うものもあれば、スキャン中に最後まで指示を続けるものもある。
以上、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100は、例えば、呼吸に関する指示を伴う撮像として、呼吸停止撮像を実行する機能を有する。
このような呼吸停止撮像が行われる場合に、効率よく、良好な画像を得るためには、被検体の協力(確実な呼吸停止)及び検査技師のオペレーションスキルが求められる。一般的に、被検体に息止めをさせる際には、被検体に呼吸のタイミングを指示(呼吸ガイダンス)することで、被検体に一定のリズムで呼吸をしてもらい、最後に、被検体に息止めを指示する。例えば、被検体への呼吸ガイダンスとしては、「息を吸って、吐いて、止めてください」というような音声が用いられる。被検体は、このような呼吸ガイダンスを聞き、指示に合わせて、息を吸ったり、息を吐いたり、息止めをする。そして、被検体への息止め指示(「止めてください」)の直後から、スキャンが実行される。
ここで、通常、呼吸振幅や呼吸周期等の呼吸の動作には被検体によって個人差がある。例えば、被検体ごとに呼吸の深さは異なり、呼吸が浅い被検体にとっては、「息を吸って」から「吐いて」までの間隔(または、「吐いて」から「止めてください」までの間隔)が長すぎると、息を吸い続けている状態や息を吐き続けている状態が長くなりすぎてしまい、その後の息止めが辛くなる場合がある。また、呼気の途中にもかかわらず、「息を吸って」と吸気の指示があった場合には、被検体は息を吐き切ってから吸い込むことができず、適切な換気及びガス交換ができない場合がある。このような場合には、被検体が息止めを持続できず、その結果、1回の息止め撮影時間が短縮され、その分撮影回数の増加につながり検査時間が延長されることがあり得る。
そこで、例えば、被検体の呼吸位相の検出に応答してガイド情報を提供することによって、被検体の負担を軽減することが考えられる。
しかしながら、一般的に、呼吸に関する指示が被検体に与えられた時の当該指示に応答する被検体の応答特性は、被検体ごとに異なっている。例えば、呼吸に関する指示に対する反応時間は被検体ごとに異なっており、この反応時間によって、被検体が適切なタイミングで呼吸できない場合もあり得る。ここでいう反応時間は、呼吸に関する指示が被検体に与えられてから当該指示に反応して被検体が動作を開始するまでの時間である。例えば、反応時間や随意的な呼吸運動能力は被検体によって異なる。具体的には、被検体の年齢等によって、反応時間(知覚→認知及び判断→動作のプロセスの応答時間)が異なる。
このように、被検体ごとに反応時間が異なることによって被検体が適切なタイミングで呼吸できなくなると、被検体の負担が増加することになる。これにより、被検体が息止めを持続できなくなり、その結果、画質の劣化が生じることがあり得る。さらに、被検体が息止めを持続できなくなることから、1回の息止め撮影時間が短縮され、その分撮影回数の増加につながり検査時間が延長されることもあり得る。
このようなことから、第1の実施形態に係るMRI装置100は、呼吸停止撮像において、被検体の個人差による画質の劣化を抑えることができるように構成されている。
具体的には、本実施形態に係るMRI装置100では、測定機能16bが、呼吸に関する指示が被検体に与えられたときの当該指示に応答する被検体の応答特性を測定する。また、出力機能16cが、被検体から観測された呼吸波形と応答特性とに基づいて、呼吸に関する指示を出力する。なお、本実施形態では、測定機能16bは、例えば、被検体の応答特性として、呼吸に関する指示が被検体に与えられてから当該指示に反応して被検体が動作を開始するまでの時間である反応時間を測定する。
図2は、第1の実施形態に係るMRI装置100によって実行される呼吸停止撮像の処理手順を示す図である。なお、ここでは、プリスキャンにおいて、被検体の呼吸波形及び反応時間の測定を行い、本スキャンにおいて、呼吸停止撮像を行う場合の例を説明する。
例えば、図2に示すように、本実施形態では、測定機能16bが、操作者からプリスキャン開始の指示を受け付けた場合に(ステップS101,Yes)、被検体の呼吸動を表す呼吸信号を収集する(ステップS102)。
具体的には、測定機能16bは、制御機能16aに対してナビゲータスキャンを実行するように指示することで、呼吸信号を収集する。このとき、制御機能16aは、あらかじめ設定された撮像条件に基づいて、被検体から磁気共鳴信号を収集して呼吸動を検出するためのナビゲータスキャンを繰り返し実行する。例えば、制御機能16aは、被検体の横隔膜付近に設定された領域から磁気共鳴信号を収集するナビゲータスキャンを実行することで、被検体の頭尾方向における横隔膜の位置を示す呼吸信号を収集する。
ここで、測定機能16bは、呼吸ガイダンスをせずに呼吸信号を収集した後に、呼吸ガイダンスをしながら呼吸信号を収集する。例えば、呼吸ガイダンスをしながらの呼吸信号の収集は、被検体に対する呼吸停止撮像のトレーニングとして行われる。本実施形態では、呼吸ガイダンスで被検体に与えられる呼吸に関する指示として、「息を吸って」、「吐いて」、及び「止めてください」の3種類の指示が用いられる。なお、測定機能16bは、スピーカ17を介して、これらの指示を音声で出力する。
その後、測定機能16bは、ナビゲータスキャンによって得られた被検体の呼吸信号に基づいて、被検体の呼吸波形を測定する(ステップS103)。具体的には、測定機能16bは、ナビゲータスキャンによって得られた被検体の呼吸信号のうち、呼吸ガイダンスをせずに収集された呼吸信号に基づいて、被検体の呼吸波形を測定する。
図3は、第1の実施形態に係る測定機能16bによって測定される呼吸波形の一例を示す図である。図3において、横軸は時間を示しており、縦軸は呼吸信号の信号値を示している。また、図3において、実線の曲線は、呼吸信号の経時的な変化によって表される呼吸波形を示している。ここで、例えば、呼吸信号は、被検体の頭尾方向における横隔膜の位置を示しており、信号値が大きいほど、横隔膜が頭側に位置していることを示し、信号値が小さいほど、横隔膜が尾側に位置していることを示している。すなわち、呼吸信号は、信号値が極大となった場合に、被検体が息を吐き切った状態を示し、信号値が極小となった場合に、被検体が息を吸い切った状態を示すことになる。
さらに、測定機能16bは、ナビゲータスキャンによって得られた被検体の呼吸信号に基づいて、被検体の反応時間を測定する(ステップS104)。具体的には、測定機能16bは、ナビゲータスキャンによって得られた被検体の呼吸信号のうち、呼吸ガイダンスをしながら収集された呼吸信号に基づいて、被検体の反応時間を測定する。
例えば、測定機能16bは、被検体から観測された呼吸波形における波形の連続性又は不連続性を検出し、連続性又は不連続性が検出された範囲に基づいて、反応時間を測定する。このとき、例えば、測定機能16bは、被検体から観測された呼吸波形の当該呼吸波形から抽出された特徴に基づいて、反応時間を測定する。なお、本実施形態では、測定機能16bは、呼吸波形の変化の特徴を抽出するため、微分波形を用いる。
図4は、第1の実施形態における測定機能16bによって測定される反応時間の一例を示す図である。図4において、横軸は時間を示しており、縦軸は呼吸信号の信号値を示している。また、図4において、実線の曲線は、呼吸信号の経時的な変化によって表される呼吸波形を示しており、破線の曲線は、呼吸波形の微分波形を示している。
例えば、図4に示すように、測定機能16bは、呼吸信号の微分波形を算出し、算出した微分波形における波形の連続性が失われている範囲Rを検出する。例えば、測定機能16bは、呼吸信号の微分波形を予め用意されたテンプレートとなる連続性を有する波形と比較することで、波形の連続性が失われている範囲Rを検出する。そして、測定機能16bは、呼吸に関する指示が出力された時点PVから、検出した範囲Rが終了する時点PDまでの時間を、反応時間RTとして測定する。
ここで、測定機能16bは、呼吸に関する指示の種類(「息を吸って」、「吐いて」、及び「止めてください」の3種類)ごとに、反応時間を測定する。具体的には、測定機能16bは、被検体に「息を吸って」と指示したときの反応時間RT1と、被検体に「吐いて」と指示したときの反応時間RT2と、被検体に「止めてください」と指示したときの反応時間RT3とをそれぞれ測定する。なお、このように、呼吸に関する指示の種類ごとに反応時間を測定する理由は、指示の種類によって、被検体の反応時間が異なる場合があり得るからである。
図2に戻って、その後、出力機能16cが、操作者から本スキャンを開始する指示を受け付けた場合に(ステップS105,Yes)、測定機能16bによって測定された呼吸波形及び反応時間に基づいて、呼吸ガイダンスを実施する(ステップS106)。具体的には、出力機能16cは、測定された呼吸波形に基づいて、被検体に動作を開始させるタイミングを推定し、推定したタイミングから反応時間を差し引いたタイミングで、呼吸に関する指示を出力する。ここで、出力機能16cは、呼吸に関する指示の種類に応じた反応時間に基づいて、呼吸に関する指示を出力する。
図5及び6は、第1の実施形態における出力機能16cによって行われる呼吸ガイダンスのタイミングの算出の一例を示す図である。図5及び6において、横軸は時間を示しており、縦軸は呼吸信号の信号値を示している。また、図5及び6において、実線の曲線は、呼吸信号の経時的な変化によって表される呼吸波形を示しており、破線の曲線は、呼吸波形の微分波形を示しており、一点鎖線の曲線は、反応時間を反映した場合の微分波形を示している。
ここで、図5は、被検体に「息を止めて」及び「吐いて」と指示したときの呼吸波形を示しており、図6は、被検体に予め決められた回数だけ「息を吸って」及び「吐いて」の指示をした後に「止めてください」の指示をしたときの呼吸波形を示している。
例えば、図5に示すように、出力機能16cは、被検体に「息を止めて」及び「吐いて」と指示したときの呼吸波形に基づいて、被検体に息を吸わせるタイミングと、被検体に息を吐かせるタイミングとを推定する。
具体的には、出力機能16cは、測定機能16bによって測定された呼吸波形に基づいて、呼吸信号が極小となる時点PIから呼吸信号が極大となる時点PEまでの時間T1と、呼吸信号が極大となる時点PEから呼吸信号が極小となる時点PIまでの時間T2とを測定する。
このとき、例えば、出力機能16cは、呼吸波形の微分波形を算出し、算出した微分波形に基づいて、時点PI及びPEをそれぞれ測定する。具体的には、出力機能16cは、呼吸波形の微分波形において、微分値が減少する過程でゼロになる時点を特定し、特定した時点を、呼吸信号が極小となる時点PIとする。また、出力機能16cは、呼吸波形の微分波形において、微分値が増加する過程でゼロになる時点を特定し、特定した時点を、呼吸信号が極大となる時点PEとする。
その後、出力機能16cは、呼吸波形に基づいて、被検体に息を吸わせるタイミングを推定する。ここで、呼吸信号が極小となる時点PIから極大となる時点PEまでの時間T1は、被検体が息を吸い切ってから息を吐き切るまでに要する時間を表すことになる。したがって、出力機能16cは、呼吸信号が極小となる時点PIから時間T1が経過した時点を、被検体に息を吸わせるタイミングと推定する。
そして、出力機能16cは、被検体に「息を吸って」の指示を出力するタイミングPV1を決めるための時間として、時間T1から反応時間RT1を差し引いた時間TV1を算出する。すなわち、被検体が息を吸い切った時点から時間TV1が経過したタイミングPV1で「息を吸って」の指示を出力することによって、推定したタイミング(すなわち、被検体が息を吐き切ったタイミング)で被検体に息を吸わせることができるようになる。
さらに、出力機能16cは、呼吸波形に基づいて、被検体に息を吐かせるタイミングを推定する。ここで、呼吸信号が極大となる時点PEから極小となる時点PIまでの時間T2は、被検体が息を吐き切ってから息を吸い切るまでに要する時間を表すことになる。したがって、出力機能16cは、呼吸信号が極大となる時点PEから時間T2が経過した時点を、被検体に息を吐かせるタイミングと推定する。
そして、出力機能16cは、被検体に「吐いて」の指示を出力するタイミングPV2を決めるための時間として、時間T2から反応時間RT2を差し引いた時間TV2を算出する。すなわち、被検体が息を吐き切ってから時間TV2が経過したタイミングPV2で「吐いて」の指示を出力することによって、推定されたタイミング(すなわち、被検体が息を吸い切ったタイミング)で、被検体に息を吐かせることができるようになる。
また、例えば、図6に示すように、出力機能16cは、被検体に予め決められた回数だけ「息を吸って」及び「吐いて」の指示をした後に「止めてください」の指示をしたときの呼吸波形に基づいて、被検体に息止めをさせるタイミングを推定する。
具体的には、出力機能16cは、測定機能16bによって測定された呼吸波形に基づいて、予め決められた回数だけ呼吸信号が極小となる時点PIと呼吸信号が極大となる時点PEとを検出した後に、次に呼吸信号が極小となる時点PIから呼吸信号が極大となる時点PEまでの時間T1を測定する。
ここで、前述したように、呼吸信号が極小となる時点PIから極大となる時点PEまでの時間T1は、被検体が息を吸い切ってから息を吐き切るまでに要する時間を表すことになる。したがって、出力機能16cは、予め決められた回数だけ呼吸信号が極小となる時点PIと呼吸信号が極大となる時点PEとを検出した後に、次に呼吸信号が極小となる時点PIから時間T1が経過した時点を、被検体に息止めをさせるタイミングと推定する。
そして、出力機能16cは、被検体に「止めてください」の指示を出力するタイミングPV3を決めるための時間として、時間T1から反応時間RT3を差し引いた時間TV3を算出する。すなわち、被検体が息を吸い切った時点から時間TV3が経過したタイミングPV3で「止めてください」の指示を出力することによって、推定したタイミング(すなわち、被検体が息を吐き切ったタイミング)で被検体に息止めをさせることができるようになる。
こうして、呼吸に関する指示を出力するタイミングを決めるための時間を算出した後に、出力機能16cは、制御機能16aに対して、ナビゲータスキャンを実行するよう指示する。このとき、制御機能16aは、プリスキャンで実行されたナビゲータスキャンと同一のナビゲータスキャンを繰り返し実行する。そして、出力機能16cは、ナビゲータスキャンによって連続的に収集される呼吸信号に基づいて、呼吸信号が極大となったタイミングと、呼吸信号が極小となったタイミングとを検出する。
このとき、例えば、出力機能16cは、ナビゲーションスキャンによって呼吸信号が収集されるごとに、呼吸波形の微分波形を算出し、算出した微分波形に基づいて、呼吸信号が極大となったタイミングと、呼吸信号が極小となったタイミングとを検出する。具体的には、出力機能16cは、呼吸波形の微分波形において、微分値が減少する過程でゼロになった時点を検出し、検出した時点を、呼吸信号が極大となったタイミングとする。また、出力機能16cは、呼吸波形の微分波形において、微分値が増加する過程でゼロになった時点を検出し、検出した時点を、呼吸信号が極小となったタイミングとする。
そして、出力機能16cは、呼吸信号が極小となったタイミングを検出した場合には、そのタイミングから時間TV1が経過したタイミングで「息を吸って」の指示を出力する。また、出力機能16cは、呼吸信号が極大となったタイミングを検出した場合には、そのタイミングから時間TV2が経過したタイミングで「吐いて」の指示を出力する。
図7及び8は、第1の実施形態における出力機能16cによって行われる呼吸ガイダンスの実施の一例を示す図である。図7及び8において、横軸は時間を示しており、縦軸は呼吸信号の信号値を示している。また、図7及び8において、実線の曲線は、呼吸信号の経時的な変化によって表される呼吸波形を示しており、破線の曲線は、呼吸波形の微分波形を示している。
例えば、図7に示すように、出力機能16cは、呼吸信号が極小となったタイミングPIを検出した場合には、そのタイミングPIから時間TV1が経過したタイミングPV1で、「息を吸って」の指示を出力する。また、出力機能16cは、呼吸信号が極大となったタイミングPEを検出した場合には、そのタイミングPEから時間TV2が経過したタイミングPV2で、「吐いて」の指示を出力する。
そして、例えば、図8に示すように、出力機能16cは、予め決められた回数だけ「息を吸って」及び「吐いて」の指示を出力した後に、呼吸信号が極小となったタイミングPIを検出した場合に、そのタイミングPIから時間TV3が経過したタイミングPV3で、被検体に「止めてください」の指示を出力する。
この結果、被検体の呼吸波形に基づいて推定されたタイミングで呼吸が行われるように、被検体の反応時間を考慮して、呼吸に関する指示が早めに出力されることになる。これにより、被検体は、自身の呼吸の動作に合わせた自然なタイミングで呼吸を行うことができるようになり、被検体の負担を軽減することができる。
図2に戻って、その後、出力機能16cは、呼吸停止撮像のスキャンを実行する(ステップS107)。具体的には、出力機能16cは、「止めてください」の指示を出力してから、当該指示に対応する反応時間RT3が経過したタイミングで、制御機能16aに対して呼吸停止撮像のスキャンを開始するように指示する。制御機能16aは、出力機能16cからスキャンを開始するように指示されると、あらかじめ設定された撮像条件に基づいて、呼吸停止撮像のスキャンを実行する。
または、例えば、出力機能16cは、「止めてください」の指示を出力してから、当該指示に対応する反応時間RT3が経過したタイミングで、呼吸停止撮像のスキャンを自動的に実行するのではなく、スキャンの開始が可能になったことを示す情報をディスプレイ11に出力してもよい。この場合には、制御機能16aは、操作者からスキャンを開始するように指示された時点で、呼吸停止撮像のスキャンを実行する。
なお、上述した各ステップのうち、ステップS101〜S104は、例えば、処理回路16が測定機能16bに対応する所定のプログラムを記憶回路12から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS105〜S107は、例えば、処理回路16が出力機能16cに対応する所定のプログラムを記憶回路12から呼び出して実行することにより実現される。
上述したように、第1の実施形態では、呼吸に関する指示に対する被検体の反応時間に基づいて、指示が出力されるタイミングが決定されるので、被検体の負担が軽減される結果、被検体が息止めを持続できるようになる。これにより、呼吸停止撮像において、被検体の個人差による画質の劣化を抑えることができるようになる。また、被検体が息止めを持続できるようになる結果、1回の息止め撮影時間が延長され、その分撮影回数の増加を抑えることができ、検査時間の短縮化に寄与することができる。
(第2の実施形態)
なお、上述した実施形態では、出力機能16cが、プリスキャンで測定された呼吸波形に基づいて、被検体に動作を開始させるタイミングを推定し、推定したタイミングから反応時間を差し引いたタイミングで、呼吸に関する指示を出力する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
例えば、出力機能16cは、本スキャン開始後に、ナビゲータスキャンによって収集される呼吸信号に基づいて、随時、呼吸に関する指示を出力するタイミングを予測し、予測したタイミングに達した時点で、当該指示を出力するようにしてもよい。以下では、このような場合の例を第2の実施形態として説明する。なお、第2の実施形態では、上述した実施形態と異なる点を中心に説明することとし、上述した実施形態と重複する内容については説明を省略する。
本実施形態では、出力機能16cは、上述した実施形態と同様に被検体の反応時間(RT1、RT2、RT3)を測定した後に、操作者から本スキャンを開始する指示を受け付けた場合に、制御機能16aに対して、ナビゲータスキャンを実行するよう指示する。
そして、本実施形態では、出力機能16cは、ナビゲータスキャンによって呼吸信号が収集されるごとに、次に呼吸信号が極小又は極大になるまでの呼吸波形を予測し、さらに、予測した呼吸波形の微分波形を算出し、算出した微分波形と、被検体の反応時間とに基づいて、呼吸に関する指示を反応時間の分だけ早めに出力する。
具体的には、本実施形態では、出力機能16cは、上述した実施形態と同様に、ナビゲータスキャンによって収集される呼吸信号に基づいて、呼吸信号が極大となったタイミングと、呼吸信号が極小となったタイミングとを検出する。
そして、本実施形態では、出力機能16cは、呼吸信号が極小となったタイミング(すなわち、被検体が息を吸い切ったタイミング)を検出した場合には、そのタイミングから次に呼吸信号が極大となるタイミングまでの間、ナビゲータスキャンによって呼吸信号が収集されるたびに、次に呼吸信号が極大となるタイミング(すなわち、次に被検体が息を吐き切るタイミング)までの呼吸波形を予測する。また、出力機能16cは、予測した呼吸波形の微分波形を算出し、さらに、算出した微分波形を反応時間RT1の分だけマイナス方向にシフトした微分波形を算出し、当該微分波形の信号値がゼロとなるタイミングで、「息を吸って」の指示を出力する。これにより、呼吸波形の信号値が極大となると予測されるタイミング(すなわち、被検体が息を吐き切ると予測されるタイミング)より反応時間RT1だけ早めに、「息を吸って」の指示が出力されることになる。
図9は、第2の実施形態における出力機能によって行われる呼吸ガイダンスの実施の一例を示す図である。図9において、横軸は時間を示しており、縦軸は呼吸信号の信号値を示している。また、図9において、実線の曲線は、呼吸信号の経時的な変化によって表される呼吸波形を示しており、破線の曲線は、呼吸波形の微分波形を示しており、一点鎖線の曲線は、反応時間を反映した微分波形を示している。なお、図9に示す時刻t=t1、t2、t3は、それぞれ、ナビゲータスキャンによって呼吸波形が収集されたタイミングを示している(t1<t2<t3)。
例えば、図9の(a)に示すように、本実施形態では、出力機能16cは、呼吸信号が極小となったタイミングPIを検出した場合に(t=t1)、ナビゲータスキャンによって収集された呼吸信号に基づいて、次に呼吸信号が極大となるタイミングPEまでの呼吸波形を予測する(図9に実線で示す波形のうち細い線で示す部分の波形)。ここで、出力機能16cは、プリスキャンで測定された呼吸波形に基づいて呼吸波形を予測してもよいし、本スキャンで直前までに収集された呼吸信号に基づいて呼吸波形を予測してもよい。その後、出力機能16cは、予測した呼吸波形の微分波形を算出する(図9に破線で示す波形のうち細い線で示す部分の波形)。そして、出力機能16cは、算出した微分波形の位相を反応時間RT1だけマイナス方向にシフトすることで、反応時間RT1を反映した微分波形を算出し(図9に一点鎖線で示す波形のうち細い線で示す部分の波形)、当該微分波形の信号値がゼロとなるタイミングPV1を特定する。
その後、例えば、図9の(b)に示すように、出力機能16cは、呼吸信号が極小となったタイミングPIから次に呼吸信号が極大となるタイミングPEまでの間は、ナビゲータスキャンによって呼吸信号が収集されるたびに(t=t2)、次に呼吸信号が極大となるタイミングPEまでの呼吸波形の予測、微分波形の算出、反応時間RT1を反映した微分波形の算出、及び当該微分波形の信号値がゼロとなるタイミングPV1の特定を行う。
そして、例えば、図9の(c)に示すように、出力機能16cは、反応時間RT1を反映した微分波形の信号値がゼロとなるタイミングPV1と、当該微分波形のもとになった呼吸信号が収集された時点とが一致した場合に(t=t3)、「息を吸って」の指示を出力する。これにより、例えば、図9の(c)に示すように、呼吸波形の信号値が極大となると予測されるタイミング(すなわち、被検体が息を吐き切ると予測されるタイミング)より反応時間RT1だけ早めに、「息を吸って」の指示が出力されることになる。
一方、本実施形態では、出力機能16cは、呼吸信号が極大となったタイミング(すなわち、被検体が息を吐き切ったタイミング)を検出した場合には、そのタイミングから次に呼吸信号が極小となるタイミングまでの間、ナビゲータスキャンによって呼吸信号が収集されるたびに、次に呼吸信号が極小となるタイミング(すなわち、次に被検体が息を吸い切るタイミング)までの呼吸波形を予測する。また、出力機能16cは、予測した呼吸波形の微分波形を算出し、さらに、算出した微分波形を反応時間RT2の分だけマイナス方向にシフトした微分波形を算出し、当該微分波形の信号値がゼロとなるタイミングで、「吐いて」の指示を出力する。これにより、呼吸波形の信号値が極小となると予測されるタイミング(すなわち、被検体が息を吸い切ると予測されるタイミング)より反応時間RT2だけ早めに、「吐いて」の指示が出力されることになる。
また、本実施形態では、出力機能16cは、呼吸信号が極小となったタイミング(すなわち、被検体が息を吸い切ったタイミング)を検出した際に、その時点で、既に、予め決められた回数だけ「息を吸って」及び「吐いて」の指示を出力していた場合には、微分波形を反応時間RT1の分だけマイナス方向にシフトした微分波形の信号値がゼロとなるタイミングで、「息を吸って」の指示ではなく、「止めてください」の指示を出力する。これにより、呼吸波形の信号値が極大となると予測されるタイミング(すなわち、被検体が息を吐き切ると予測されるタイミング)より反応時間RT3だけ早めに、「止めてください」の指示が出力されることになる。そして、出力機能16cは、上述した実施形態と同様に、「止めてください」の指示を出力してから、当該指示に対応する反応時間RT3が経過したタイミングで、制御機能16aに対して呼吸停止撮像のスキャンを開始するように指示する。
上述したように、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、被検体の呼吸波形に基づいて推定されたタイミングで呼吸が行われるように、被検体の反応時間を考慮して、呼吸に関する指示が早めに出力されることになる。したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、被検体が自身の呼吸の動作に合わせた自然なタイミングで呼吸を行うことができるようになり、被検体の負担を軽減することができる。
なお、上述した実施形態は、適宜に変形して実施することも可能である。
まず、上述した実施形態では、出力機能16cが、予め決められた回数だけ「息を吸って」及び「吐いて」の指示をした後に「止めてください」の指示を出力する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、出力機能16cは、本スキャン中に、被検体の呼吸が安定した後に、「止めてください」の指示を出力するようにしてもよい。
この変形例では、出力機能16cは、本スキャン中に、ナビゲータスキャンによって収集される呼吸信号に基づいて、被検体の呼吸が安定しているか否かを判定する。例えば、出力機能16cは、予め同じ被検体の呼吸信号に基づいて作成された所定数の周期分の呼吸波形のテンプレートと、ナビゲータスキャンによって収集された呼吸信号に基づく所定数の周期分の呼吸波形とを比較し、それぞれの類似度が閾値を超えている場合に、被検体の呼吸が安定していると判定する。または、出力機能16cは、ナビゲータスキャンによって収集された呼吸信号に基づく所定数の周期分の呼吸波形について、周期ごとの呼吸波形のばらつきを算出し、算出したばらつきの差が閾値以下となっている場合に、被検体の呼吸が安定していると判定する。この場合に、例えば、出力機能16cは、呼気の周期に関するばらつきと吸気の周期に関するばらつきとをそれぞれ算出し、それらを複合的に判断することで、被検体の呼吸が安定しているか否かを判定してもよい。そして、出力機能16cは、被検体の呼吸が安定していると判定した場合に、次に「吐いて」の指示をした後で、上述した実施形態と同様に、「止めてください」の指示を出力する。
また、上述した実施形態では、MRI装置100によって呼吸停止撮像が行われる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置100によって呼吸同期撮像が行われる場合でも、同様に、被検体の応答特性に基づいて呼吸ガイダンスを実施することが可能である。
呼吸同期撮像では、被検体に対して、息を吸わせるための指示(例えば、「息を吸って」という音声による指示)と、息を吐かせるための指示(例えば、「吐いて」という音声による指示)とを交互に与えながら、被検体の動きが少ないタイミングで、繰り返し、画像生成用のデータ収集が行われる。例えば、被検体の呼吸周期ごとに、被検体が息を吐き切ったタイミング、又は被検体が息を吸い切ったタイミングで、データ収集が行われる。
このような呼吸同期撮像が行われる場合に、例えば、測定機能16bは、上述した実施形態と同様に、プリスキャンにおいて、被検体の呼吸信号を収集し、収集した呼吸信号に基づいて、被検体の反応時間を測定する。そして、出力機能16cは、呼吸同期撮像の実行中に、測定機能16bによって測定された呼吸波形及び反応時間に基づいて、呼吸ガイダンスを実施する。
具体的には、測定機能16bは、上述した実施形態と同様に、被検体に「息を吸って」と指示したときの反応時間RT1と、被検体に「吐いて」と指示したときの反応時間RT2とをそれぞれ測定する。そして、出力機能16cは、呼吸同期撮像の実行中に、被検体の呼吸波形に基づいて、被検体に息を吸わせるタイミングを推定し、推定したタイミングから反応時間RT1を差し引いたタイミングで、「息を吸って」の指示を出力する。また、出力機能16cは、呼吸同期撮像の実行中に、被検体の呼吸波形に基づいて、被検体に息を吐かせるタイミングを推定し、推定したタイミングから反応時間RT2を差し引いたタイミングで、「吐いて」の指示を出力する。ここで、出力機能16cは、呼吸同期撮像を開始した後に、最初の数回だけ指示を行ってもよいし、最後まで指示を続けてもよい。
一般的に、呼吸同期撮像では、被検体の呼吸が不安定な状態となった場合に、画質が劣化することがあり得る。そこで、例えば、出力機能16cは、呼吸同期撮像の実行中に、被検体の呼吸波形に基づいて、呼吸周期ごとに、被検体の呼吸が不安定な状態となっているか否かを判定し、不安定であると判定される間は、呼吸ガイダンスを継続するようにしてもよい。また、例えば、出力機能16cは、被検体の呼吸が不安定な状態となっていると判定した場合には、その呼吸周期で収集されたデータを棄却し、次の呼吸周期で、又は、予定されている繰り返し回数だけデータ収集を行った後に、棄却したデータを収集し直すようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、被検体の応答特性として反応時間が用いられる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、被検体には、強い刺激が与えられないと指示に反応しない人や、弱い刺激でも反応する人がいると考えられる。そこで、応答特性として、このような、被検体が反応可能な刺激の強さが用いられてもよい。
例えば、測定機能16bは、被検体の応答特性として、当該被検体が反応可能な指示の大きさを測定する。そして、出力機能16cは、測定機能16bによって測定された指示の大きさに応じて、呼吸ガイダンスの音量を調整する。具体的には、出力機能16cは、測定機能16bによって測定された指示の強さが大きい場合には、呼吸に関する指示の音量を大きくし、測定機能16bによって測定された指示の強さが小さい場合には、呼吸に関する指示の音量を小さくする。
また、上述した実施形態では、呼吸停止撮像が行われる際に、「止めてください」の指示を出力してから当該指示に対応する反応時間が経過したタイミングで撮像のスキャンを開始する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、撮像において実行されるイベントのうち、被検体の動きの影響が少ないものについては、反応時間の間に実行するようにしてもよい。
例えば、k空間の高周波成分に対応するデータの収集や、プリパルスの印加、プリスキャンは、被検体の動きの影響が比較的少ないと考えられる。ここでいうプリパルスは、例えば、データ収集用のパルスシーケンスとしてSSFPのパルスシーケンスが用いられる場合に各組織の信号を定常状態にするために印加されるダミーパルス等である。そこで、例えば、出力機能16cは、呼吸停止撮像が行われる際に、「止めてください」の指示を出力してから当該指示に対応する反応時間が経過するまでの間に、k空間の高周波成分に対応するデータの収集、プリパルスの印加、又は、プリスキャンを行うように撮像を制御してもよい。
例えば、出力機能16cは、撮像条件に基づいて、プリパルスの印加やプリスキャンの実行にかかる時間を予め算出し、算出した時間が反応時間より短い場合に、反応時間の間に、プリパルスの印加やプリスキャンの実行を行うように制御する。
また、例えば、出力機能16cは、k空間の高周波成分に対応するデータの収集を低周波成分に対応するデータの収集より前に行うように、データを収集する順序を制御する。そして、出力機能16cは、高周波成分に対応するデータの収集については、「止めてください」の指示を出力してから反応時間が経過する前に行い、低周波成分に対応するデータの収集については、「止めてください」の指示を出力してから反応時間が経過した後に行うように、データ収集のタイミングを制御する。
また、上述した実施形態では、呼吸に関する指示を音声で行う場合の例を説明したが、指示のための音声の周波数は、撮像において実行されるデータ収集用のパルスシーケンスで印加される傾斜磁場パルスの周波数とは異なる周波数とするのが望ましい。例えば、出力機能16cは、呼吸に関する指示を行う際に、撮像条件に基づいて、データ収集用のパルスシーケンスで印加される傾斜磁場パルスの周波数とは異なる周波数で音声を出力するように、スピーカ17を制御する。
また、呼吸に関する指示は、必ずしも音声でなくてもよい。例えば、出力機能16cは、音声による指示の代わりに、又は、音声による指示と同時に、視覚的な指示を行ってもよい。例えば、出力機能16cは、視覚的な指示として、指示の内容を示す文字情報やグラフィック、画像等を、ディスプレイ11を出力する。
また、例えば、上述した実施形態において、心拍変動解析に基づいて、被検体のリラックス度を判定し、被検体ができるだけリラックスした状態で、呼吸波形及び反応時間の測定、及び、呼吸停止撮像が行われるようにしてもよい。なお、ここでいう心拍変動解析としては、被検体の心拍情報から被検体のリラックス度を判定することが可能な各種の公知の技術を用いることが可能である。
この場合には、例えば、測定機能16bは、心電計等から取得した被検体の心拍情報に基づいて、当該被検体のリラックス度を判定し、当該リラックス度が所定の閾値を超えていた場合に、呼吸波形及び反応時間を測定する。例えば、測定機能16bは、操作者からプリスキャン開始の指示を受け付けた場合に、リラックス度を判定する。そして、例えば、測定機能16bは、リラックス度が所定の閾値以下の場合には、少し待ってから測定することを促すメッセージをディスプレイ11に出力する。
また、例えば、出力機能16cは、心電計等から取得した被検体の心拍情報に基づいて、当該被検体のリラックス度を判定し、当該リラックス度が所定の閾値を超えていた場合に、呼吸停止撮像を行う。例えば、出力機能16cは、操作者から本スキャンを開始する指示を受け付けた場合に、リラックス度を判定する。そして、例えば、出力機能16cは、リラックス度が所定の閾値以下の場合には、少し待ってから本スキャンを行うことを促すメッセージをディスプレイ11に出力する。
また、上述した実施形態では、測定機能16bが、被検体から観測された呼吸波形の微分波形に基づいて、反応時間を測定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、測定機能16bは、被検体から観測された呼吸波形と当該呼吸波形の微分波形との複合情報に基づいて、反応時間を測定してもよい。
この場合には、例えば、測定機能16bは、呼吸波形及び微分波形それぞれにおいて、波形の連続性が失われている範囲を検出し、両方が重複する範囲を用いて、反応時間を測定する。または、例えば、測定機能16bは、呼吸波形及び微分波形それぞれにおいて、波形の連続性が失われている範囲を検出し、両方が重複する範囲と一方のみを含む範囲とを合わせた範囲を用いて、反応時間を測定する。また、例えば、測定機能16bは、呼吸波形に基づく3つ以上の異なる波形を用いて反応時間を測定する場合には、それぞれの波形から検出した範囲のうち、同一となった範囲が最も多い範囲を採用して、反応時間を測定する。
また、上述した実施形態では、プリスキャンにおいて測定された反応時間に基づいて決められた指示のタイミングが本スキャンで継続して用いられる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、呼吸停止撮像が複数回行われるような場合には、時間が経つにつれて、被検体の反応時間が変化する場合もあり得る。そこで、例えば、測定機能16bは、被検体の反応時間を再測定してもよい。
この場合には、出力機能16cは、再測定された反応時間に基づいて、呼吸に関する指示を出力するタイミングを調整する。例えば、時間が経つにつれて、被検体が慣れてきたため反応時間が短くなってきたような場合には、出力機能16cは、反応時間が短くなった分だけ、指示を出力するタイミングを遅くする。また、例えば、時間が経つにつれて、被検体が疲れてきて反応時間が長くなってきたような場合には、出力機能16cは、反応時間が長くなった分だけ、指示を出力するタイミングを早くする。
また、上述した実施形態では、プリスキャンにおいて、測定機能16bが被検体の呼吸波形及び反応時間の測定を行う場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、測定機能16bによる呼吸波形及び反応時間の測定は、本スキャンの一部として、呼吸停止撮像を行う前に行われてもよい。また、例えば、心臓等の検査では、一回の検査において、それぞれが呼吸停止撮像のスキャンを含む複数のプロトコルが実行される場合もあり得る。その場合には、測定機能16bによる呼吸波形及び反応時間の測定は、プロトコルごとに行われてもよいし、検査の最初に行われてもよい。
また、上述した実施形態では、出力機能16cが、スピーカ17を介して、呼吸に関する指示を音声で出力する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、出力機能16cは、呼吸に関する指示を文字やグラフィック等で表した情報をディスプレイ11に出力してもよい。これにより、例えば、被検体の耳が不自由である場合のように、音声によって指示を伝えることが難しい場合であっても、被検体が呼吸に関する指示を視覚的に認識できるようになる。
また、上述した実施形態では、制御機能16aによって実行されるナビゲータスキャンとして、被検体の横隔膜付近に設定された領域から磁気共鳴信号を収集するナビゲータスキャンが用いられる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、制御機能16aは、ナビゲータスキャンとして、ラジアルスキャンやPROPELLER(Periodically Rotated Overlapping Parallel Lines with Enhanced Reconstruction)スキャン等のように、k空間の中心付近のデータを繰り返し収集することによって被検体の動きを検出可能なスキャンを実行してもよい。
また、上述した実施形態では、測定機能16b及び出力機能16cが、ナビゲータスキャンによって収集された呼吸信号を用いる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、測定機能16b及び出力機能16cは、被検体の腹部等に装着された呼吸センサによって検出された呼吸信号を用いてもよい。この場合に、呼吸センサは、呼吸による被検体の周期的な動きを検出する。例えば、呼吸センサ17は、呼吸による動きを空気圧として検出し、検出した空気圧を電気信号に変換して呼吸信号として出力する。
また、上述した実施形態では、MRI装置について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、X線CT(Computed Tomography)装置のように、呼吸停止撮像を行うことが可能な他の医用画像診断装置でも、同様の実施形態が実施可能である。その場合には、例えば、医用画像診断装置が有するコンソール等の処理回路が、上述した測定機能16b及び出力機能16cを有するように構成される。なお、例えば、X線CT装置において実施される場合には、上述した呼吸センサを用いて呼吸信号の収集が行われる。
なお、上述した実施形態において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路12にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、呼吸停止撮像又は呼吸同期撮像において、被検体の個人差による画質の劣化を抑え、かつ被検体への負担が少ない医用画像診断装置を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。