JP6825228B2 - イオンセンサ、イオン濃度の測定方法、および発酵物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、イオンセンサと、それを用いたイオン濃度の測定方法、および発酵物の製造方法に関する。
近年、発酵物の発酵状態を管理する手段として、発酵物の原料に含まれる特定イオンの濃度検出を可能とする、イオンセンサの研究開発が盛んに行われている。特許文献1では、発酵物の製造法として、発酵過程における発酵物を一旦取り出し、発酵タンク外に設けたセンサーを用いて分析する工程を有するものが開示されている。この製造法は、センサーに由来する異物が発酵物中に混入するのを防ぐことを特徴としている。
一方、被測定液中の特定イオンの濃度検出を行うセンサが、特許文献2〜5に開示されている。特許文献2のセンサ(pHセンサ)は、pHに感応するイオン感応部と、比較電極(参照極)と、それらを覆うゲル状のイオン透過物質と、このイオン透過物質を収納するとともに、イオン感応部に近い位置に開口部を有するカバー体と、を備えている。
特許文献3のセンサは、作用極として機能させるpHガラス電極と、参照極として機能させるpNaガラス電極とを有する差動式pH計であり、被測定液中の水素イオン濃度を測定するものである。
特許文献4のセンサ(イオンセンサ)は、MOS型の2つの作用極用FETおよび1つの参照極用FETによって構成されており、内部液を有していない全固体形であることを特徴としている。
特許文献5のセンサ(イオンセンサ)は、2つのpチャネル型の電界効果トランジスタで検出対象を挟持するように構成されており、一方の電界効果トランジスタが作用極として機能し、他方の電界効果トランジスタが参照極として機能するものである。それぞれのチャネル表面には、電位を安定化する目的でダイヤモンド薄膜が設けられている。
特開2011−024530号公報 特開2002−156357号公報 特開2012−233818号公報 特開平06−288971号公報 特開2012−168120号公報 特開2007−089511号公報 特開2010−148473号公報 特開平06−014707号公報
特許文献1で開示されている発酵物の製造法では、発酵タンク外にセンシング用の容器を設ける必要があり、その分、製造装置の構造とその制御が複雑になる。また、測定したpH値は、発酵タンク外でのものであり、発酵タンク内における発酵物の実際のpH値と乖離している虞がある。
特許文献2で開示されているpHセンサでは、参照極がAg/AgCl電極(含液電極)であり、Ag/AgClを内部電極として含み、KClを内部液として含んでおり、KClが被測定液中に拡散する虞がある。また、特許文献3に開示されているセンサでは、作用極、参照極のいずれもガラス電極であり、ガラス製の容器に内部液が収容された構成(含液タイプ)となっている。こうしたガラス電極は、ガラス製容器が破損した場合に、被測定液中にガラスの破片や内部液が拡散することになるため、例えばコンタミリスクを重視する食品の製造工程等において、原料、中間品、製品等の測定にそのまま用いることは難しい。
特許文献4、5で開示されているイオンセンサは、作用極、参照極のいずれも電界効果トランジスタの構造を有しており、それぞれ3因子(ゲート電圧、ドレインソース電圧、ドレインソース電流)での制御が必要となっており、制御回路の構成、駆動方法が複雑化している。特に特許文献4のイオンセンサでは、イオン感応膜の材料として無アルカリガラスが用いられているため、食品の製造工程等の被測定液の測定に、そのまま用いることは難しい。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、全体構成を複雑化することなく、作用極のガラス破損リスクを回避し、参照極の構成材料による被測定液の汚染の問題を回避することが可能な、イオンセンサを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記イオンセンサを用いたイオン濃度の測定方法、および上記イオンセンサを用いた発酵物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のイオンセンサは、イオン感応性を有する固体材料を備え、参照極として機能するイオン電極と、作用極として機能する電界効果トランジスタと、前記電界効果トランジスタのソース電極とドレイン電極との間、および、前記ソース電極と前記イオン電極との間に電圧を印加する駆動回路と、を備えていることを特徴としている。
また、本発明のイオンセンサにおいて、前記固体材料は、発酵物の原料、中間品、製品の何れかの液体に浸漬した際の電位が、前記液体中のイオン濃度に依存しない特性を有していてもよい。
また、本発明のイオンセンサにおいて、前記固体材料は、発酵物の原料、中間品、製品の何れかの液体に浸漬した際の電位が、前記液体中のイオン濃度に対して線形に変化する特性を有していてもよい。
また、本発明のイオンセンサにおいて、前記固体材料は、塩化物イオンに感応性を有する材料からなっていてもよい。
本発明のイオン濃度の測定方法は、前記イオンセンサを用いた、被測定液中のイオン濃度の測定方法であって、前記イオン電極と前記電界効果トランジスタとを被測定液に浸漬するステップと、前記駆動回路を用いて、前記電界効果トランジスタの前記ソース電極と前記イオン電極との間に電圧を印加するステップと、前記駆動回路を用いて、前記電界効果トランジスタの前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に電圧を印加するステップと、前記電圧の印加に伴って前記ソース電極と前記ドレイン電極との間を流れる電流の値に基づいて、前記被測定液中のイオン濃度を測定するステップと、を有することを特徴としている。
本発明の発酵物の製造方法は、発酵タンクにpH値が既知の洗浄液を充填するステップと、pH計を用いて前記洗浄液中のpH値を測定し、測定値が既知の値となるように、前記pH計を校正するステップと、前記洗浄液をpH値が既知の発酵物の原料液で置換するステップと、前記pH計を用いて前記原料液中のpH値を測定し、測定値が既知の値となるように、前記pH計を校正するステップと、前記原料液に種菌を添加するステップと、前記pH計が表示するpH値が基準値αに達するまで、前記種菌が添加された原料液を加熱するステップと、を有し、前記pH計として、前記イオンセンサを用いることを特徴としている。
また、本発明の発酵物の製造方法において、前記基準値αをpH3.5以上pH5.5以下としてもよい。
また、本発明の発酵物の製造方法において、前記イオンセンサのイオン電極に備える前記固体材料として、前記発酵物の原料液およびその発酵後の生成物の中に含まれるイオンであって、かつ水素イオンよりも発酵期間における濃度変化が小さいイオンに対して、感応性を有するものを用いてもよい。前記イオンは塩化物イオンとしてもよく、前記発酵物を、ヨーグルトまたはチーズとしてもよい。
また、本発明の発酵物の製造方法において、前記発酵物をチーズとし、前記加熱するステップを経て得られたチーズ前駆体を、前記pH計が表示するpH値が基準値βに達するまで凝固させるステップを有していてもよい。
また、本発明の発酵物の製造方法において、前記発酵物をヨーグルトとし、前記加熱するステップにおいて、被加熱体のpH値が前記基準値αに達した後、さらに前記被加熱体の酸度が基準値γに達するまで加熱を続けることを特徴とする。
本発明のイオンセンサでは、作用極が電界効果トランジスタであり、参照極として機能する部分が固体材料であるため、作用極にガラスを含み、参照極にAg/AgClの内部電極およびKClの内部液を含む従来の構成(含液タイプの構成)が不要となる。したがって、本発明のイオンセンサによれば、従来方式(含液タイプ)の参照極の構成材料による被測定液の汚染の問題、すなわち、内部液が被測定液中に拡散する問題を回避することができる。そのため、本発明のイオンセンサは、ガラス材料を用いることができない環境や、KClの拡散汚染にシビアな環境、例えば食品の製造工程等における被測定液中のイオン濃度の測定に、そのまま用いることが可能である。
また、本発明における参照極は、イオン感応性を有する固体材料を備えるものであればよく、その電極電位を容易に制御することが可能であるため、特定の形状、積層構造を有している必要がない。したがって、本発明のイオンセンサは、従来のイオンセンサのように、三因子で制御する電界効果トランジスタを参照極として機能させる場合に比べて、構成が大幅に簡略化されたものとなる。
本発明のイオン濃度の測定方法では、上述した構成のイオンセンサを用いることにより、複雑な駆動回路を必要とせず、参照極の構成材料による被測定液の汚染の問題を回避した状態で、被測定液中の特定イオンの濃度を測定することができる。
本発明の発酵物の製造方法では、上述した構成のイオンセンサを用いることにより、複雑な駆動回路を必要とせず、参照極の構成材料による被測定液の汚染の問題を回避した状態で、pH値を管理した工程を経て、発酵物を製造することができる。
(a)本発明におけるイオンセンサの構成の概略図である。(b)本発明の一実施形態に係るイオン濃度測定装置の断面図である。 (a)本発明の一実施形態に係るイオンセンサの参照極の側断面図である。(b)本発明の一実施形態に係るイオンセンサの参照極の底面側から見た平面図である。 本発明の一実施形態に係るイオンセンサの参照極の特性を、模式的に示すグラフである。 本発明の一実施形態に係るイオンセンサの作用極の断面図である。 本発明の一実施形態に係るイオンセンサを構成する駆動回路の図である。 本発明の一実施形態に係るイオンセンサを構成する、作用極の変形例1の断面図である。 本発明の一実施形態に係るイオンセンサを構成する、作用極の変形例2の断面図である。 本発明の適用例1に係る発酵物の製造装置の断面図である。 本発明の適用例1に係る発酵物の製造方法のステップフローである。 本発明の適用例2に係る洗浄液回収システムの構成の概略図である。 本発明の適用例3に係るpH計測システムの構成の概略図である。 本発明の実施例1におけるイオンセンサの特性を示すグラフである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるイオンセンサ、イオン濃度の測定方法、および発酵物の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
(イオンセンサ、イオン濃度測定装置の構成)
図1(a)は、本実施形態に係るイオンセンサ100の構成の概略図である。イオンセンサ100は、イオン感応性を有する固体材料(イオン感応性材料)を備え、参照極として機能するイオン電極101(Ion Selective Electrode(ISE))と、作用極として機能する半導体センサ102を備えている。Ag/AgCl電極との電位差ΔEの絶対値|ΔE|が大きいと、より優れたセンサ特性(再現性など)が得られる。例えば、1.5〜1.9となるように設けられたSi−ISFETを、半導体センサ102として選択してもよい。
図1(b)は、イオンセンサ100を含むイオン濃度測定装置200の断面図である。イオン濃度測定装置200は、主に、イオンセンサ100と、被測定液L(原料、中間品、製品等の液体)を収容する測定容器104とで構成されており、被測定液Lを外気から遮断する必要がある場合には、図1(b)に示しているように、周囲を壁105で覆うようにする。
イオン電極101の一構成例について説明する。図2(a)、(b)は、それぞれ、イオン電極101の側断面図、底面側から見た平面図である。イオン電極101としては、図2に示すように、一端(底面)に開口部101aを有する円筒状の筐体101Aと、その開口部101aに既知の手法で付与された、イオン感応性材料からなる固体膜(固体材料)101Bと、で構成されたものを用いることができる。駆動回路103につながる配線103Wは、筐体101A内を経由して、固体膜101Bに接続されている。
固体膜101Bは、筐体の開口部(液絡部)101aにおいて露出するため、イオン電極101を被測定液に浸漬した際の固体膜101Bの接液が可能となっている。この構成例では、固体膜101Bが、参照極としての実質的な機能を担う部分となっている。図2では、安定性の観点から、固体膜101Bの全体が筐体の開口部101aより内側に収容されている例を示しているが、被測定液との接触面積を大きくするために、固体膜101Bの一部または全部が、開口部101aより外側に突出していてもよい。
筐体101Aの材料としては、特に限定されることはないが、例えば、塩化ビニル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。筐体101Aの形状としては、円筒状に限定されることはなく、固体膜を一端に固定できる形状であればよい。
固体膜101Bの材料としては、例えば、塩化物イオン(塩素イオンともいう)Cl感応性材料、臭素イオン(臭化物イオンともいう)Br感応性材料、ヨウ素イオン(ヨウ化物イオンともいう)I感応性材料、シアン化物イオンCN感応性材料、カドミウムイオンCd2+感応性材料、銅イオンCu2+感応性材料、銀イオンAg感応性材料、硫化物イオンS2−感応性材料、フッ化物イオン(フッ素イオンともいう)F感応性材料等が挙げられる。塩化物イオン感応性材料としては、例えば、ハロゲン化銀と硫化銀の組み合わせ、あるいは、エポキシ樹脂に組み込まれた塩化銀と硫化銀の組み合わせからなる膜等が挙げられる。
特に、ヨーグルト、チーズ、酒、醤油、味噌、納豆等の発酵物の製造工程においては、イオンセンサ(pHセンサ)のイオン電極(参照極)に備える固体材料として、発酵物の原料液およびその発酵後の生成物の中に含まれるイオンであって、かつ水素イオンよりも発酵期間における濃度変化が小さいイオン(例えば塩化物イオン)に対して、感応性を有するものを用いるのが好ましい。
測定対象とするイオンの発酵前後での濃度変化と水素イオン濃度との関係は、測定対象から求められるpH値の確度、精度と関係している。例えば、ヨーグルト発酵工程の前後では、水素イオン濃度指数(pH値)がおよそ7から4に変化するので、水素イオン濃度の変化は1/1000以下となる。また、チーズ発酵工程の前後では、水素イオン濃度指数がおよそ7〜6.7に変化し、チーズ凝固工程の前後では、同指数がおよそ6.7〜6.5に変化する。
発酵工程の前後で、水素イオン濃度の変化に対する濃度変化が1/10以下となるイオンに対して、感応性を有する材料で構成された電極を参照極として利用するときに、好適なpH測定値の精度が得られることが、本発明者の実験によって初めて明らかになっている。ヨーグルト発酵工程においては、1/100以下であることが実用上より望ましく、例えば塩化物イオンの濃度変化は1/100以下となるため、塩化物イオン電極を参照極として使用することができる。また、チーズ発酵工程においては、1/50以下であることが実用上より望ましく、例えば塩化物イオンの濃度変化は1/50以下となるため、塩化物イオン電極を参照極として使用することができる。
ここでの固体膜101Bは、被測定液に接しても拡散しない程度に流動性が十分低ければよいため、これを液膜で置き換えてもよい。液膜の材料としては、例えば、カルシウムイオンCa2+感応性材料、カリウムイオンK感応性材料、硝酸イオンNO 感応性材料等が挙げられる。固体膜101Bは隔膜式でもよく、例えば、アンモニウムイオンNH 感応性材料が挙げられる。
図3は、イオン電極101の出力電圧特性を、模式的に示すグラフである。ここでの出力電圧特性は、イオン感応性材料を被測定液に浸漬した際の出力電圧と、被測定液に含まれているイオンのうち、イオン感応性材料が選択性を有する特定イオンの濃度[Aa+]との関係を意味している。イオン電極101の出力電圧特性について、図3を用いて説明する。
図3に示すように、一般的なイオン感応性材料の出力電圧特性は、被測定液中に特定のイオンが低濃度または高濃度で含まれている場合([Aa+]≦δ1または[Aa+]≧δ2)と、中間的な濃度で含まれている場合(δ1<[Aa+]<δ2)とで異なる。各濃度範囲の具体的な上限値および下限値は、材料に依存する。低濃度領域([Aa+]≦δ1)または高濃度領域([Aa+]≧δ2)での出力電圧は、イオン濃度に依存しない特性を有している。これに対し、中間濃度領域(δ1<[Aa+]<δ2)での出力電圧は、イオン濃度に対して線形に変化する特性を有している。ここで、Aa+の表記に含まれるaは、1以上の価数を示している。Aa+は、マイナスイオンBb−(bは価数)であってもよい。
したがって、イオン感応性材料を作用極として用いる場合、特定のイオンの濃度に対する出力電圧の感度や分解能が高い方が好ましいため、通常は、測定対象のイオン濃度を中間濃度領域に含むような材料が選定される。ところが、イオン感応性材料を参照極として用いる場合、その出力電圧を基準電圧とする目的から、特定イオンの濃度に対する出力電圧の分解能は、むしろ低い方が好ましい。そこで、参照極として機能するイオン感応性材料としては、測定対象のイオン濃度を、中間濃度領域でなく、低濃度領域または高濃度領域に含むような材料を選定するのが好ましい。つまり、イオン感応性材料からなる固体材料は、被測定液に浸漬した際の電位が、被測定液中のイオン濃度に依存しない特性を有していることが好ましい。Aイオンのイオン濃度(mol/l)がδ1以下またはδ2以上の領域において、イオン電極の出力電圧εの値が0.01[V/[Aa+](mol/l)]であることが好ましい。または、Aイオンのイオン濃度(mol/l)がδ1以下またはδ2以上の領域において、0.01[V/pH]以下であってもよい。
なお、被測定液に浸漬した際の電位が、被測定液中のイオン濃度に依存して変化する場合であっても、その変化がイオン濃度の関数として規則性を有するものであれば、イオン濃度ごとの電位を算出して特定することができる。したがって、固体材料は、被測定液に浸漬した際の電位が、被測定液中のイオン濃度に対して規則的に変化する特性、例えば、線形に変化する特性を有している場合にも、電位を算出する手段を用いることにより、参照極として機能させることができる。例えば、図3のδ1からδ2の間の領域内での線形領域部分を、参照極として機能させることができる。
次に、半導体センサ102が電界効果トランジスタ型センサ(ISFET)である場合を想定し、以下では半導体センサ102のことを電界効果トランジスタ102と呼び、その構成について説明する。図4は、電界効果トランジスタ102の断面図である。電界効果トランジスタ102は、p型シリコン基板1と、その一方の主面1aに形成される積層膜と、で構成されている。
p型シリコン基板1は、その一方の主面1a側に、2つのn層が互いに離間して形成されている。2つのn層は、それぞれソース領域1S、ドレイン領域1Dとして機能するものである。ソース領域1S、ドレイン領域1Dで挟まれた領域は、電界効果トランジスタ102を動作させた際に、チャネルとして機能するチャネル領域1Cである。
チャネル領域1C上には、SiOからなるゲート酸化膜2を介してイオン感応膜3が形成されている。イオン感応膜3の材料としては、例えば、Ta、Si、Al等が挙げられる。
チャネル領域1Cの寸法は、イオンセンサの特性に応じて適宜設定される。例えば、チャネル長は、10〜1000μm程度の値に設定され、チャネル幅は、0.01〜50mm程度の値に設定されている。
p型シリコン基板の一方の主面1aのうち、チャネル領域1C、ソース領域1S、ドレイン領域1Dを除いた不活性領域上には、SiOからなるフィールド酸化膜4が形成されている。
ソース領域1S上、ドレイン領域1D上には、それぞれソース電極5S、ドレイン電極5Dが形成されている。ソース電極5S、ドレイン電極5Dは、それぞれソース領域1S、ドレイン領域1Dに接続されるとともに、フィールド酸化膜4の表面を覆う形状をなしている。ソース電極5S、ドレイン電極5Dの材料としては、例えば、金、チタン等が挙げられる。
ソース電極5S、ドレイン電極5Dの表面のうち露出する部分には、保護膜6が形成されている。保護膜6の材料としては、例えば、窒化物(窒化珪素等)、レジスト、有機物(テフロン(登録商標)のフッ化系樹脂等)、酸化物(ガラス、パイレックス(登録商標)等)が挙げられる。
次に、イオンセンサ100を駆動する駆動回路103の構成について説明する。駆動回路103は、電界効果トランジスタ102のソース電極(S)とドレイン電極(D)との間、および、ソース電極(S)とイオン電極101との間に電圧が制御または計測されるように構成されている。イオンセンサ100の駆動方法としては、ソース接地法、ソースフォロー法などの既知の電界効果トランジスタの駆動方法を使用することができる。駆動回路は既知の回路を使用することができる。図5(a)はソースフォロー法で使用する駆動回路の例、図5(b)はソース接地法で使用する駆動回路の例である。
図5(a)は、ソースフォロー法の駆動回路103の具体例を示している。作用極を構成する電界効果トランジスタのドレイン(D)側に、定電流源とバッファとが接続され、ソース(S)側にバッファが接続されている。出力は、バッファを介してドレイン(D)側に接続され、抵抗とバッファを介して、ソース(S)側に接続されている。図5(a)に示す例では、参照極(ゲート電極)にイオン電極を使用している。ソースフォロー法により、ソース−ドレイン間電圧、ソース−ドレイン間電流を制御し、ゲート−ソース間電圧を測定する。
以上のように、本実施形態に係るイオンセンサ100では、参照極として実質的に機能する部分が固体材料であるため、Ag/AgClを内部電極として含み、KClを内部液として含む従来の構成(含液タイプのAg/AgCl電極)が不要となる。したがって、イオンセンサ100によれば、従来の含液タイプの参照極を含むイオンセンサでの問題、すなわち、ガラス製容器が破損する問題や、内部液が被測定液中に拡散する問題を回避することができる。そのため、イオンセンサ100は、ガラス材料を用いることができない環境、例えば食品の製造工程等における被測定液中のイオン濃度の測定に、そのまま用いることが可能である。
また、イオンセンサ100を構成する参照極は、イオン感応性を有する固体材料からなるものであればよく、特定の形状、積層構造を有している必要がない。したがって、イオンセンサ100は、従来のイオンセンサと比べて、構成が大幅に簡略化されたものとなる。
(イオン濃度の測定方法)
被測定液中のイオン濃度を、上述したイオンセンサ100を用いて測定する方法について説明する。イオンセンサ100の駆動方法としては、ソース接地法、ソースフォロー法などの既知の電界効果トランジスタの駆動方法を使用することができる。以下、ソース接地法による駆動方法を例示する。
まず、イオン電極101と電界効果トランジスタ102とを被測定液Lに浸漬し、被測定液Lを介して両者を電気化学的に接続する(ステップ1)。
次に、駆動回路103として図5(b)を用いて、イオン電極101と電界効果トランジスタのソース領域10Sとの間に電位差が生じるように、イオン電極101、ソース領域10Sの一方または両方に電圧を印加する(ステップ2)。これにより、電界効果トランジスタ102における、チャネル領域1Cの電位が設定される。電位設定のメカニズムは、次の通りである。
チャネル領域1Cの電位は、チャネル表面に付着するイオンの数(イオン濃度)に応じて変化する。これは、チャネル表面の近傍に分布する電荷量に応じて、チャネル領域に誘起されるキャリアの密度が変化するためである。被測定液Lのイオン濃度が高いほど、チャネル表面に付着するイオンの数が多くなる。その結果として、チャネル領域におけるキャリア密度が増加し、その増加分に応じてチャネル領域の電位が高くなる。反対に、被測定液Lのイオン濃度が低いほど、キャリア密度が減少し、その減少分に応じてチャネル領域の電位が低くなる。つまり、チャネル領域1Cの電位は、イオン電極101の電位に、被測定液L中のイオン濃度による電位変動の寄与を加えた電位に固定される。
次に、駆動回路103を用いて、電界効果トランジスタのソース領域1Sとドレイン領域1Dとの間(ソース−ドレイン間)に電位差が生じるように、ソース電極5S、ドレイン電極5Dの一方または両方に電圧を印加する(ステップ3)。ソース−ドレイン間に設ける電位差の絶対値|Vds|(V)は、0V以上1V以下とすることが好ましい。なお、ソース電極5S、ドレイン電極5Dへの電圧印加は、電界効果トランジスタ102を被測定液Lに浸漬する前に行ってもよい。
チャネルが形成された状態で、ソース−ドレイン間に電位差を生じさせることにより、チャネル内を電流が流れる。この電流は、通常の電界効果トランジスタで得られるようなIV特性を有するものである。
チャネル内のキャリア密度は、被測定液中のイオン濃度に応じて変化する。特定の電圧を印加した際に流れる電流(チャネル電流)は、このキャリア密度に依存するため、被測定液中のイオン濃度を大きくしたときに増大し、小さくしたときに減少する傾向がある。また、キャリア密度が大きいほどチャネルの形成が促進されるため、特定のチャネル電流を得るために必要なゲート電圧は、被測定液L中のイオン濃度を大きくしたときに減少し、小さくしたときに増加する傾向がある。このように、被測定液L中のイオン濃度は、チャネル電流、ゲート電圧との間に相関があるため、電界効果トランジスタ102のIV特性に基づいて測定することができる(ステップ4)。
以上のように、本実施形態に係るイオン濃度の測定方法では、上述した構成のイオンセンサ100を用いることにより、複雑な駆動回路を必要とせず、参照極の構成材料による被測定液Lの汚染の問題を回避した状態で、被測定液L中の特定イオンの濃度を測定することができる。
(変形例1)
図6は、上記実施形態の変形例1に係るイオンセンサ110の断面図である。イオンセンサ110は、電界効果オランジスタ112のゲート酸化膜の構成、および駆動回路との接点の構成において、図1、4を用いて説明したイオンセンサ100と異なっている。具体的には、電界効果トランジスタ112を構成する酸化膜12、イオン感応膜13が、チャネル領域11C上だけでなくソース領域11S上、ドレイン領域11D上も覆っている。また、電界効果トランジスタ112の駆動回路113との電気的な接点が、基板11の側面側に設けられている。その他の部分(イオン電極、駆動回路)の構成については、イオンセンサ100と同様である。したがって、イオンセンサ110でも、上述したイオンセンサ100と同等の効果を得ることができる。
(変形例2)
図7は、上記実施形態の変形例2に係る電界効果トランジスタ122の断面図である。電界効果トランジスタ122は、ダイヤモンドISFETと呼ばれるものであり、基板21の一方の主面21aにダイヤモンド薄膜27を有している点、フィールド酸化膜を有していない点において、図4に示した電界効果トランジスタ102と異なっている。なお、電界効果トランジスタ122は、ダイヤモンド薄膜27の接液部に酸化膜を有していないことから、ダイヤモンドSGFET(electrolyte Solution Field−Effect Transistor)と呼ばれることもある。
ソース電極25S、ドレイン電極25Dの長さは、0.01〜50mm程度の値に設定され、ソース電極25S、ドレイン電極25Dの幅は、0.01〜100mmの程度の値に設定される。作用極に用いるダイヤモンドSGFETとしては、水素終端の一部を酸素化して、部分酸素終端を行ったISFETを用いることができる。
上記実施形態に係るダイヤモンドISFETを構成するダイヤ半導体としては、上述したダイヤ薄膜Si基板に限定されることはなく、例えば、ダイヤ基板、ダイヤ薄膜セラミック基板、多結晶ダイヤ基板、単結晶ダイヤ基板、高配向多結晶ダイヤ基板、ノンドープダイヤ基板、ボロンによるドープダイヤ基板等が挙げられる。また、pH感応性を有する部分酸素終端ダイヤ、部分アミノ終端ダイヤ等も挙げることができる。
イオンセンサ100を構成する、電界効果トランジスタ型のセンサ素子としては、上述したSi−ISFET(図6)、ダイヤモンドISFET(図7)の他に、有機半導体ISFET、炭素系材料(グラフェン、カーボンナノチューブCNT、ダイヤモンドライクカーボンDLC等)を用いた炭素系ISFET等も挙げることができる。また、電界効果トランジスタ型のセンサ素子としては、SGFET構造を有するものであってもよく、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)を用いたSGFETセンサ、グラフェンを用いたSGFETセンサが挙げられる。
(適用例1:発酵物の製造方法)
特許文献6等に開示されているように、発酵食品のpHと発酵の進捗とは相関があるため、発酵タンク内に発酵物を収容し、イオンセンサ100を用いてそのpHを測定することにより、発酵工程の進捗管理を行うことができる。発酵食品としては、種類による限定がなく、例えば、ヨーグルト、チーズ、酒、醤油、味噌、納豆等が挙げられる。
図8は、このような発酵工程の進捗管理を可能とする、発酵物の製造装置300の断面図である。発酵物の製造装置300は、発酵物を収容して発酵させるための発酵タンクTと図1のイオンセンサ100と、内部温度を管理するための測温器Iとを備えている。発酵タンクTには、内部温度を発酵に適した温度となるように制御する温度制御手段(不図示)が付設されている。
イオンセンサ100(ここではpHセンサ)を構成するイオン電極101と電界効果トランジスタ102は、測温器Iとともに、発酵タンクT内の所定の位置に配置されている。イオンセンサ100を構成する駆動回路103は、発酵タンクT外に配されている。図8でのイオンセンサ100は、1箇所のみに設置されているが、複数個所に設置されていてもよい。また、ここでの測温器Iは、イオンセンサの駆動回路103に接続され、駆動回路103で制御するように構成されているが、別の駆動回路で制御するように構成されていてもよい。
図9は、発酵物の製造方法のステップフローである。発酵物の製造方法は、主に次の6つのステップS1〜S6を有している。
[ステップS1]
まず、発酵タンクTに、適用例2として後述する、pH値が既知のCIP(Clean−in−Place)洗浄液を充填する。
[ステップS2]
次に、充填した洗浄液中のpH値を、pH計を用いて測定し、測定値が既知の値となるように、pH計を校正する。
[ステップS3]
次に、発酵タンクT内の洗浄液を、pH値が既知の発酵物の原料液で置換する。発酵物としてヨーグルトを製造する場合には、牛乳、脱脂(粉)乳、生クリーム等の一種類または複数種類を原料液として用いる。
[ステップS4]
次に、pH計を用いて牛乳のpH値を測定し、測定値が既知の値となるように、pH計を校正する。
[ステップS5]
次に、原料液に乳酸菌(スターター)等の種菌を添加する。
[ステップS6]
次に、種菌が添加された原料液を、所定の温度で加熱して発酵させる。
[ステップS7]
pH計が表示する加熱中の原料液のpH値を随時確認し、発酵完了の状態に対応するpHの基準値αが検出された時点で、加熱を停止し、発酵物を得る。なお、発酵物としてヨーグルトを製造する場合、pHの基準値αは3.5以上5.5以下であればよいが、4以上5以下である方が好ましい。
適用例1によれば、上述した構成のイオンセンサ100を用いることにより、複雑な駆動回路を必要とせず、参照極や作用極の構成材料による被測定液の汚染の問題を回避した状態で、pH値を管理した工程を経て、発酵物を製造することができる。
(適用例2:CIP洗浄システム)
食品・飲料品・薬品の製造ラインでは、製造が終了する毎に、製造に用いたタンクや配管等の洗浄・殺菌が行われる。洗浄・殺菌に用いた薬品は、再利用によるコスト削減のために回収される。このような洗浄液の回収を実施するCIP(Clean−in−Place)システム(洗浄液回収システム)では、洗浄剤と洗浄水の入れ替えにおける識別等のために、センサが必要とされている。通常の場合、このセンサとして導電率計が用いられるが、導電率の変化量は洗浄液(CIP洗浄液)ごとに異なるものであり、導電率の変化量が小さい洗浄液の識別を、導電率計の出力値に基づいて行うことは難しい。
これに対し、本実施形態に係るイオンセンサ100によれば、導電率の変化が小さい洗浄液に対しても、イオン感応性材料を参照極として用いてpHを測定することにより、洗浄液を識別することが可能となる。そのため、イオンセンサ100は、このCIPシステムに好適なセンサとして用いることができる。
イオンセンサ100を用いる場合のCIPシステムについて説明する。図10は、イオンセンサ100を用いたCIPプロセスの構成の概略図である。なお、図10に示すCIPシステムの構成は一例であり、使用する洗浄剤(薬品)とともに、食料、飲料品、薬品等の製品の各製造プロセスによって異なる。
図10のCIPシステムによる洗浄シーケンスについて説明する。まず、タンク、配管の内部を、真水等の洗浄水(4〜20℃、1MPa以下)で洗浄する。次に、タンク、配管の内部を、アルカリ溶液(例えば、1.5%NaOH、20〜30%次亜塩素酸ソーダ、10〜30%苛性ソーダ、80〜90℃、1MPa以下)で洗浄する。次に、タンク、配管の内部を、酸溶液(例えば、1.5%HNO、80〜90℃、1MPa以下)で洗浄する。
次に、タンク、配管の内部に残存する洗浄剤を、真水等の洗浄水(4〜20℃、1MPa以下)で洗い落とす。このとき洗浄剤を回収するが、回収される洗浄剤は、洗浄水が加わることによって次第に希釈されるので、その濃度をpH値で監視する。pH値が基準値まで達したところで洗浄剤の回収をやめ、残りは排水ラインに放出する。
同様にして、種類の異なる洗浄液での洗浄、真水による洗浄、洗浄液の回収・放出のサイクルを繰り返す。(サイクルは1回だけの場合もある。)なお、最後の工程で、蒸気(130〜140℃、1MPa以下)による殺菌、蒸留水または脱イオン水での洗浄を行うこともある。この場合、さらに、タンク、配管の内部を、20℃、1MPaで乾燥させ、真水等の洗浄水(4〜20℃、1MPa以下)で洗浄する。
(適用例3:配管内の流体のイオンセンシング)
本実施形態に係るイオンセンサ100は、配管P内を流れる流体Fのイオンセンシングに適用することができる。図11は、配管Pと配管Pに付設したイオンセンサ100とを備えた、pH計測システムの構成の概略図である。配管P内の所望の位置に、イオン電極101および電界効果トランジスタ102が配置され、配管P内を流れる流体Fに浸漬される状態となっている。配管Pの材料としては、例えばステンレス、銅等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
このように、上記実施形態に係るpH計測システムによれば、配管Pの加工を行うことなく、配管P内の流体Fのイオン濃度を容易に計測することができる。なお、ここでは、配管P内に配置する電界効果トランジスタ102として、上記実施形態に係る電界効果トランジスタ102を用いる例を示しているが、これを、変形例1、2に係る電界効果トランジスタ112、122に置き換えてもよい。
(適用例4:チーズの製造)
例えば特許文献7等に開示されているように、チーズの製造工程において、チーズの原料・中間体・生成物の品質とpH値には相関があり、発酵工程中に、常時pH管理を行うことが有効である。具体的には、発酵タンク(パットともいう)内にチーズの原料を収容し、加熱しながら、イオンセンサを用いてそのpHを測定することにより、発酵工程の進捗管理を行うことができる。
チーズの種類が制限されることはなく、例えばナチュラルチーズ、プロセスチーズ等を適用することができる。ここでは、一例として、ナチュラルチーズの製造方法のステップフローを示す。ただし、製造手順、工程内容(条件など)については、下記で制限されるものではない。ナチュラルチーズの製造方法は、主に次の11のステップS11〜S21を有している。
[ステップS11]
まず、洗浄工程として、チーズ発酵工程に使用する発酵タンクを含む発酵装置(パットともいう、撹拌はねなどを含む場合がある;以下、チーズ発酵容器と呼ぶ)に、例えば適用例2として挙げたような、pH値が既知のCIP(Clean−in−Place)洗浄液を充填する。
[ステップS12]
次に、センサ校正工程として、必要に応じて、充填した洗浄液中のpH値を、pH計を用いて測定し、測定値が既知の値となるようにpH計を校正する。
[ステップS13]
次に、置換工程として、チーズ発酵容器内の洗浄液を、pH値が既知のチーズ原料乳で置換する。
[ステップS14]
次に、センサ校正工程として、必要に応じて、置換した原料乳のpH値をpH計を用いて測定し、測定値が既知の値となるようにpH計を校正する。
[ステップS15]
次に、加熱殺菌工程として、低温殺菌(例えば、65℃で約30分間)を行う。具体的には、チーズ発酵容器内の温度を65℃程度とし、約30分間の熱処理を行う。
[ステップS16]
次に、発酵工程として、原料乳または殺菌乳が、チーズ製造のための乳酸醗酵に適した温度(例えば33℃)となるように、チーズ発酵容器内の温度を調整する。
[ステップS17]
次に、原料乳または殺菌乳に、乳酸菌(スターターともいう;1種類もしくは複数種類)等の種菌を添加する。
[ステップS18]
pH計が表示する加熱中の原料乳のpH値を随時確認し、所定のpHの基準値αが検出された時点で、所望の発酵状態に至ったと判断し、乳酸発酵工程を終了して、次の工程に移行する。pHの基準値αは、凡そ6.7とするのが好ましい。
[ステップS19]
次に、凝固工程として、醗酵乳を凝固させ、レンネット(酵素)を添加してカード(チーズの固形物)を得る。必要に応じて撹拌を行い、攪拌後に静止させる。pH値を随時確認し、所定のpHの基準値βが検出された時点で、所望の発酵状態に至ったと判断し、凝固工程を終了して次の工程に移行する。pHの基準値βは、凡そ6.5以下とするのが好ましい。
[ステップS20]
次に、カード切断工程として、カードを切断することで表面積を大きくして、カードから水分(ホエー)が出やすくする。
[ステップS21]
次に、撹拌加熱工程として、静かに撹拌し、徐々に温度を上げる。これにより、カードが収縮して弾力性が得られる。その後、カードからのホエイ抜きを行い、加塩し、カードを熟成させる。
適用例3によれば、上述した構成のイオンセンサを用いることにより、複雑な駆動回路を必要とせず、参照極や作用極の構成材料による被測定液の汚染の問題を回避した状態で、pH値を管理した工程を経て、チーズを製造することができる。
(適用例5:pH値と酸度の併用)
例えば特許文献6に開示されているように、発酵食品のpHと発酵の進捗とは相関がある。また、例えば特許文献8に開示されているように、発酵食品の酸度と発酵の進捗とも相関がある。イオンセンサは導電率計を備えていてもよく、pH値とともに導電率値を測定し、予め得ている導電率と酸度との関係式から酸度に換算し、pH値と酸度により発酵工程の管理を行ってもよい。測定の対象となる発酵食品としては、特に限定されないが、例えばヨーグルト、チーズ、酒、醤油、味噌等が挙げられる。
原料乳に種菌(乳酸菌)を添加してヨーグルトを製造する、ヨーグルト発酵工程において、発酵初期段階では時間に対するpH値の変化が酸度の変化よりも大きく、発酵終期段階では時間に対するpH値の変化が酸度の変化よりも小さいという特徴がある。
そこで、pH値と酸度を併用する工程管理法として、発酵初期においてはpH値を重点指針として用いるとともに酸度も併用して工程管理を行い、発酵終期においてはpH値に加えて酸度も併用して工程管理を行う方法を適用することができる。具体的には、適用例1の加熱するステップにおいて、被加熱体のpH値が基準値αに達した後、さらに、その被加熱体の酸度が基準値γに達するまで加熱を続ける。酸度の基準値γ(%)は、0.5%以上1.5%以下であることが好ましい。
これにより、pH値のみ、乃至は酸度のみによる工程管理方法と比較して、生成物の生産性向上が期待できる。なお、CIP洗浄の管理において、イオンセンサは導電率計を備えていてもよく、イオンセンサによるpH値測定と同時に導電率値も測定し、CIP工程管理を行ってもよい。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
<実施例1>
(発酵物の製造方法)
発酵食品(発酵物)であるヨーグルトの製造過程において、図8の発酵物の製造装置300を用いて、発酵工程の進捗管理を行う方法(発酵物の製造方法)を実施した。
イオン電極101を構成するイオン感応性材料としては、塩化物イオンに感応性を有する材料を用いた。電界効果トランジスタ102としては、Si基板を有するSi−ISFETを用いた。
ヨーグルトの製造を、図8に示す発酵物の製造装置300を用い、図9に示すステップフローに沿って次のように行った。2種類の洗浄液(アルカリ洗浄液、酸性洗浄液)による洗浄に伴い、図9のステップフローのうち、ステップS1、S2を2回ずつ繰り返して行った。
[ステップS1−1]
まず、発酵タンクTに、アルカリ性のCIP(Clean−in−Place)洗浄液として、NaOHを充填した。
[ステップS2−1]
次に、充填したアルカリ性CIP洗浄液中のpH値を、pH計を用いて測定し、測定値が既知の値13となるように、pH計を校正した。
[ステップS1−2]
次に、発酵タンクT内のアルカリ性CIP洗浄液を、酸性のCIP洗浄液として、HNOで置換した。
[ステップS2−2]
次に、この酸性CIP洗浄液中のpH値を、pH計を用いて測定し、測定値が既知の値0.5となるように、pH計を校正した。
[ステップS3]
次に、発酵タンクT内の酸性CIP洗浄液を、ヨーグルトの原料である牛乳で置換した。
[ステップS4]
次に、pH計を用いて牛乳のpH値を測定し、測定値が既知の値6.7となるように、pH計を校正した。
[ステップS5]
次に、牛乳にABCT種菌を添加した。
[ステップS6]
次に、種菌が添加された牛乳を、42℃で加熱して発酵させた。
[ステップS7]
pH計が表示する加熱中の原料液のpH値を随時確認し、発酵完了の状態に対応するpHの基準値4.2が検出された時点で、加熱を停止し、ヨーグルトを得た。
図12は、pHが4〜7の範囲に含まれる複数の原料液のサンプルに対し、チャネル領域に印加される電圧(チャネル電位、ゲート電圧Vgs)を測定した結果をプロットしたグラフである。このグラフにおいて、横軸はpHを示し、縦軸はゲート電圧Vgsを示している。
この測定結果から、発酵物の原料液に電界効果トランジスタ102を浸漬した場合において、チャネル領域に印加される電圧、すなわちチャネル電位が、原料液のpHに対して線形に変化する特性を有していることが分かる。つまり、原料液のpHとチャネル領域に印加されるゲート電圧とは、1対1で対応するものであり、ゲート電圧が分かればpHも分かることになる。したがって、ゲート電圧が、目的とするpHに対応する所定の電圧となるまで、発酵(加熱)を行う方法により、原料液の発酵状態、すなわち、pHを正確に制御することが可能となる。
1・・・p型シリコン基板、1C・・・チャネル領域、1D・・・ドレイン領域、
1S・・・ソース領域、1a・・・一方の主面、2・・・ゲート酸化膜、
3・・・イオン感応膜、4・・・フィールド酸化膜、5S・・・ソース電極、
5D・・・ドレイン電極、6・・・保護膜、11・・・基板、
11C・・・チャネル領域、11D・・・ドレイン領域、11S・・・ソース領域、
12・・・酸化膜、13・・・イオン感応膜、21・・・基板、
25D・・・ドレイン電極、25S・・・ソース電極、26・・・保護膜、
27・・・ダイヤモンド薄膜、27a・・・表面、100・・・イオンセンサ、
101・・・イオン電極、101A・・・筐体、101B・・・固体膜、
101a・・・開口部、102・・・電界効果トランジスタ、103・・・駆動回路、
103W・・・配線104・・・測定容器、105・・・壁、
110・・・イオンセンサ、111・・・イオン電極、
112・・・電界効果トランジスタ、113・・・駆動回路、
122・・・電界効果トランジスタ、200・・・イオン濃度測定装置、
300・・・発酵物の製造装置、D・・・ドレイン電極、F・・・流体、
I・・・測温器、L・・・被測定液、M・・・発酵物、P・・・配管、
S・・・ソース電極S1〜S7・・・ステップ、T・・・発酵タンク。

Claims (9)

  1. イオン感応性を有する固体材料を備え、参照極として機能するイオン電極と、
    作用極として機能する電界効果トランジスタと、
    前記電界効果トランジスタのソース電極とドレイン電極との間、および、前記ソース電極と前記イオン電極との間に電圧を印加する駆動回路と、を備え、
    前記固体材料は、発酵物の原料、中間品、製品の何れかの液体に浸漬した際の電位が、前記液体中のイオン濃度に依存しない特性、または、前記液体中のイオン濃度に対して線形に変化する特性を有しており、
    前記固体材料は、前記イオン電極を被測定液に浸漬した際に、前記被測定液の接液が可能とされている、
    ことを特徴とするイオンセンサ。
  2. 前記固体材料は、塩化物イオンに感応性を有する材料からなることを特徴とする請求項1に記載のイオンセンサ。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載のイオンセンサを用いた、被測定液中のイオン濃度の測定方法であって、
    前記イオン電極と前記電界効果トランジスタとを被測定液に浸漬するステップと、
    前記駆動回路を用いて、前記電界効果トランジスタの前記ソース電極と前記イオン電極との間に電圧を印加するステップと、
    前記駆動回路を用いて、前記電界効果トランジスタの前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に電圧を印加するステップと、
    前記電圧の印加に伴って前記ソース電極と前記ドレイン電極との間を流れる電流の値に基づいて、前記被測定液中のイオン濃度を測定するステップと、を有することを特徴とするイオン濃度の測定方法。
  4. 発酵タンクにpH値が既知の洗浄液を充填するステップと、
    pH計を用いて前記洗浄液中のpH値を測定し、測定値が既知の値となるように、前記pH計を校正するステップと、
    前記洗浄液をpH値が既知の発酵物の原料液で置換するステップと、
    前記pH計を用いて前記原料液中のpH値を測定し、測定値が既知の値となるように、前記pH計を校正するステップと、
    前記原料液に種菌を添加するステップと、
    前記pH計が表示するpH値が基準値αに達するまで、前記種菌が添加された原料液を加熱するステップと、を有し、
    前記pH計として、請求項1または2のいずれかに記載のイオンセンサを用いることを特徴とする発酵物の製造方法。
  5. 前記基準値αを3.5以上5.5以下とすることを特徴とする請求項4に記載の発酵物の製造方法。
  6. 前記イオンセンサのイオン電極に備える前記固体材料として、前記発酵物の原料液およびその発酵後の生成物の中に含まれるイオンであって、かつ水素イオンよりも発酵期間における濃度変化が小さいイオンに対して、感応性を有するものを用い、
    前記発酵物を、ヨーグルトまたはチーズとすることを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の発酵物の製造方法。
  7. 前記イオンが塩化物イオンであることを特徴とする請求項6に記載の発酵物の製造方法。
  8. 前記発酵物をチーズとし、
    前記加熱するステップを経て得られたチーズ前駆体を、前記pH計が表示するpH値が基準値βに達するまで凝固させるステップを有することを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の発酵物の製造方法。
  9. 前記発酵物をヨーグルトとし、
    前記加熱するステップにおいて、被加熱体のpH値が前記基準値αに達した後、さらに前記被加熱体の酸度が基準値γに達するまで加熱を続けることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の発酵物の製造方法。
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