以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。便宜上、各図には、適宜、互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。
図1(a)、(b)は、画像表示装置20の使用形態を模式的に示す図である。図1(a)は、乗用車1の側方から乗用車1の内部を透視した模式図、図1(b)は、乗用車1の内部から走行方向前方を見た図である。
本実施の形態は、車載用のヘッドアップディスプレイに本発明を適用したものである。図1(a)に示すように、画像表示装置20は、乗用車1のダッシュボード11の内部に設置される。
図1(a)、(b)に示すように、画像表示装置20は、映像信号により変調されたレーザ光を、ウインドシールド12下側の運転席寄りの投射領域13に投射する。レーザ光は、投射領域13で反射され、運転者2の目の位置周辺の横長の領域(アイボックス領域)に照射される。これにより、運転者2の前方の視界に、虚像として所定の画像30が表示される。運転者2は、ウインドシールド12の前方の景色上に、虚像である画像30を重ね合わせて見ることができる。すなわち、画像表示装置20は、虚像である画像30をウインドシールド12の投射領域13の前方の空間に結像させる。
図1(c)は、画像表示装置20の構成を模式的に示す図である。
画像表示装置20は、照射光生成部21と、ミラー22とを備える。照射光生成部21は、映像信号により変調されたレーザ光を出射する。ミラー22は曲面状の反射面を有し、照射光生成部21から出射されたレーザ光をウインドシールド12に向けて反射する。ウインドシールド12で反射されたレーザ光は、運転者2の目2aに照射される。照射光生成部21の光学系とミラー22は、ウインドシールド12の前方に虚像による画像30が所定の大きさで表示されるように設計されている。
図2は、画像表示装置20の照射光生成部21の構成および照射光生成部21に用いる回路の構成を示す図である。
照射光生成部21は、光源101と、コリメータレンズ102a〜102cと、アパーチャ103a〜103cと、ミラー104と、ダイクロイックミラー105a、105bと、走査部106と、補正レンズ107と、スクリーン108とを備える。
光源101は、3つのレーザ光源101a〜101cを備える。
レーザ光源101aは、600〜700nmの範囲に含まれる赤色波長のレーザ光を出射し、レーザ光源101bは、600〜600nmの範囲に含まれる緑色波長のレーザ光を出射し、レーザ光源101cは、400〜500nmの範囲に含まれる青色波長のレーザ光を出射する。本実施の形態では、画像30としてカラー画像を表示するために、光源101がこれら3つのレーザ光源101a〜101cを備える。画像30として単色の画像を表示する場合、光源101は、画像の色に対応する1つのレーザ光源のみを備えていてもよい。レーザ光源101a〜101cは、たとえば、半導体レーザからなっている。
レーザ光源101a〜101cから出射されたレーザ光は、それぞれ、コリメータレンズ102a〜102cによって平行光に変換される。コリメータレンズ102a〜102c透過したレーザ光は、それぞれ、アパーチャ103a〜103cにより、略同じサイズの円形のビームに整形される。すなわち、アパーチャ103a〜103cは、レーザ光源101a〜101cからそれぞれ出射されたレーザ光のビームサイズおよびビーム形状を揃えるためのビーム整形部を構成する。
なお、コリメータレンズ102a〜102cに代えて、レーザ光を円形のビーム形状に整形し且つ平行光化する整形レンズを用いてもよい。この場合、アパーチャは省略され得る。
その後、レーザ光源101a〜101cから出射された各色のレーザ光は、ミラー104と2つのダイクロイックミラー105a、105bによって光軸が整合される。ミラー104は、コリメータレンズ102aを透過した赤色レーザ光を略全反射する。ダイクロイックミラー105aは、コリメータレンズ102bを透過した緑色レーザ光を反射し、ミラー104で反射された赤色レーザ光を透過する。ダイクロイックミラー105bは、コリメータレンズ102cを透過した青レーザ光を反射し、ダイクロイックミラー105aを経由した赤色レーザ光および緑色レーザ光を透過する。ミラー104と2つのダイクロイックミラー105a、105bは、レーザ光源101a〜101cから出射された各色のレーザ光の光軸を整合させるように配置されている。ミラー104と2つのダイクロイックミラー105a、105bは、レーザ光源101a〜101cからそれぞれ出射されたレーザ光の光軸を整合させる光軸整合部を構成する。
走査部106は、ダイクロイックミラー105bを経由した各色のレーザ光を反射する。走査部106は、たとえば、MEMS(micro electro mechanical system)ミラーからなっており、ダイクロイックミラー105bを経由した各色のレーザ光が入射されるミラー106aを、駆動信号に応じて、Y軸に平行な軸とX軸に平行な軸の周りに回転させる構成を備える。このようにミラー106aを回転することにより、レーザ光の反射方向が、X−Z平面の面内方向およびY−Z平面の面内方向において変化する。これにより、後述のように、各色のレーザ光によってスクリーン108が2次元に走査される。
なお、ここでは、走査部106が、2軸駆動方式のMEMSミラーにより構成されたが、走査部106は、他の構成であってもよい。たとえば、Y軸に平行な軸の周りに回転駆動されるミラーと、X軸に平行な軸の周りに回転駆動されるミラーとを組み合わせて走査部106が構成されてもよい。
補正レンズ107は、走査部106によるレーザ光の振り角に拘わらず、各色のレーザ光をZ軸正方向に向かわせるように設計されている。
スクリーン108は、レーザ光が走査されることにより画像が形成され、入射したレーザ光を運転者2の目2aの位置周辺の領域(アイボックス領域)に拡散させる作用を有する。スクリーン108は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明な樹脂からなっている。スクリーン108の構成は、追って、図3(a)ないし図7(b)を参照して説明する。
画像処理回路201は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理ユニットやメモリを備え、入力された映像信号を処理してレーザ駆動回路202およびミラー駆動回路203を制御する。レーザ駆動回路202は、画像処理回路201からの制御信号に応じて、レーザ光源101a〜101cの出射強度を変化させる。ミラー駆動回路203は、画像処理回路201からの制御信号に応じて、走査部106のミラー106aを駆動する。画像表示動作時における画像処理回路201における制御については、追って、図6(b)および図11(a)を参照して説明する。
図3(a)、(b)は、それぞれ、スクリーン108をレーザ光の入射側および出射側から見た状態を模式的に示す図である。図3(a)の上側に、スクリーン108のX軸正側かつY軸正側の角付近をY軸正側から見た拡大図が模式的に示されている。また、図3(b)の右側に、スクリーン108のX軸負側かつY軸正側の角付近をX軸負側から見た拡大図が模式的に示されている。
図3(a)に示すように、スクリーン108のレーザ光入射側の面(Z軸負側の面)には、レーザ光をX軸方向に発散させるための複数の第1のレンズ部108aが、X軸方向に並ぶように形成されている。Y軸方向に見たときの第1のレンズ部108aの形状は略円弧形状である。第1のレンズ部108aのX軸方向の幅は、たとえば、50μmである。
図3(b)に示すように、スクリーン108のレーザ光出射側の面(Z軸正側の面)には、レーザ光をY軸方向に発散させるための複数の第2のレンズ部108bが、Y軸方向に並ぶように形成されている。X軸方向に見たときの第2のレンズ部108bの形状は略円弧形状である。第2のレンズ部108bのY軸方向の幅は、たとえば、70μmである。第2のレンズ部108bのY軸方向の幅は、第1のレンズ部108aのX軸方向の幅と同じであってもよい。
図4は、スクリーン108の一部を拡大して示す図である。図4には、スクリーン108をレーザ光の入射方向(Z軸正方向)に見たときのスクリーン108の一部が拡大して示されている。図4において、実線は第1のレンズ部108aの境界を示し、破線は第2のレンズ部108bの境界を示している。
図4に示すように、レーザ光の入射方向(Z軸正方向)に見た場合、第1のレンズ部108aと第2のレンズ部108bとが重なる領域(ハッチングが付された領域)が、1つのレンズ領域La1を構成する。レンズ領域La1は、X軸方向およびY軸方向に1列に並んでいる。各レンズ領域La1に入射したレーザ光は、第1のレンズ部108aによってX軸方向に収束された後拡散され、また、第2のレンズ部108bによってY軸方向に収束された後拡散される。こうして、各レンズ領域La1に入射したレーザ光が、運転者2の目2aの位置周辺の横長の領域(アイボックス領域)に導かれる。
ここで、第1のレンズ部108aの曲率半径Rxと第2のレンズ部108bの曲率半径Ryは、互いに異なっている。曲率半径Rxは、曲率半径Ryよりも小さく設定される。従って、第1のレンズ部108aによってレーザ光が収束された後発散される広がり角は、第2のレンズ部108bによってレーザ光が収束された後発散される広がり角よりも大きくなる。このように第1のレンズ部108aおよび第2のレンズ部108bの曲率を設定することにより、スクリーン108を透過するレーザ光を、運転者2の目2aの位置周辺の横長の領域(アイボックス領域)に導くことができる。第1のレンズ部108aおよび第2のレンズ部108bの曲率半径は、アイボックス領域の形状に応じて決定される。
図3(a)に戻って、D10は、スクリーン108の描画領域である。すなわち、スクリーン108は、描画領域D10においてレーザ光により走査され、画像が形成される。描画領域D10よりも上側および下側の位置に、それぞれ、入射した光を発散させることなく通過させる所定サイズの非レンズ領域108c、108dが形成されている。非レンズ領域108c、108dのサイズは、互いに等しく設定される。非レンズ領域108c、108dのX軸方向の幅は、たとえば、50〜100μmであり、Y軸方向の幅は、たとえば、100〜200μmである。
非レンズ領域108c、108dは、それぞれ、スクリーン108のX軸方向の幅の中間位置に配置されている。非レンズ領域108c、108dの配置位置は、スクリーン108のX軸方向の幅の中間位置に限らず、他の位置であってもよい。また、非レンズ領域108c、108dの数は、1つずつでなくともよく、たとえば、非レンズ領域108c、108dの組が描画領域D10を挟んで2つ以上配置されてもよい。
図5(a)〜(c)は、非レンズ領域108cの構成例を示す図である。
図5(a)の構成例では、第1のレンズ部108aおよび第2のレンズ部108bを省略することにより、非レンズ領域108cが構成されている。すなわち、スクリーン108のレーザ光入射側(Z軸負側)の面およびレーザ光出射側(Z軸正側)の面は、非レンズ領域108cにおいて、X−Y平面に平行な平面となっている。
図5(b)の構成例では、スクリーン108のレーザ光入射側(Z軸負側)の面からレーザ光出射側(Z軸正側)の面へと貫通する孔を形成することにより、非レンズ領域108cが構成されている。また、図5(c)の構成例では、スクリーン108のY軸正側の端縁からY軸負方向に凹んだ矩形の凹部を形成することにより、非レンズ領域108cが構成されている。
非レンズ領域108cの構成は、図5(a)〜(c)の構成に限らず、入射した光を発散させることなく通過させる構成であれば、他の構成であってもよい。たとえば、Z軸方向に見たときの非レンズ領域108cの形状は、正方形に限られるものではなく、円形などの他の形状であってもよい。
なお、図5(a)〜(c)には、Y軸正側に配置される非レンズ領域108cの構成例を示したが、Y軸負側に配置される非レンズ領域108dも、図5(a)〜(c)と同様に形成され得る。
図6(a)は、スクリーン108の構成を模式的に示す斜視図である。図6(b)は、スクリーン108に対するレーザ光の走査方法を模式的に示す図である。
上記構成を有するスクリーン108の入射面(Z軸負側の面)が、各色のレーザ光が重ねられたビームB1によって、X軸正方向に走査される。スクリーン108の入射面に対して、予め、ビームB1が通る走査ラインL1〜Lnが、Y軸方向に一定間隔で設定されている。走査ラインL1〜Lnの開始位置と終了位置は、X軸方向において一致している。したがって、走査ラインL1〜Lnを囲む領域は長方形である。ビームB1の径は、第2のレンズ部108bの幅よりも小さく設定される。たとえば、ビームB1の径は、35〜65μm程度に設定される。
映像信号により各色のレーザ光が変調されたビームB1により走査ラインL1〜Lnが高周波で走査されることにより、画像が構成される。こうして構成された画像が、スクリーン108と、ミラー22およびウインドシールド12(図1(c)参照)を介して、運転者2の目2aの位置周辺の領域(アイボックス)に投射される。これにより、運転者2は、ウインドシールド12の前方の空間に、虚像として画像30を視認する。
ところで、上記のように、MEMSを用いた走査部106によりレーザ光がスクリーン108を走査する構成では、スクリーン108の中央からX軸方向の両端に向かうに従ってレーザ光の走査速度が低下する。このため、スクリーン108上の画像は、中央よりも走査方向の両端の領域が明るくなる。このように画像の明るさが不均一であると、画像を見た観察者に違和感を与えかねない。観察者が視認する画像は、なるべく全体の明るさが均一であることが好ましい。
そこで、本実施の形態では、画像が描画される描画領域D10のうち、走査方向(X軸方向)中央の所定範囲において、X軸方向の発散角が一定で、且つ、当該所定範囲を除いた両側の範囲において、X軸方向の発散角が、X軸方向の端に向かって徐々に大きくなるよう、スクリーン108が構成されている。
図7(a)は、スクリーン108の領域設定方法を示す図、図7(b)は、スクリーン108の発散角の設定方法を示す図である。図7(b)のグラフにおいて、横軸は、スクリーン108のX軸方向の位置、縦軸は、X軸方向の発散角(度)である。横軸は、スクリーン108(描画領域D10)のX軸方向の幅の中間位置が0に設定されている。
図7(b)に示すように、スクリーン108は、描画領域D10のうち、走査方向(X軸方向)中央の所定範囲W0において、X軸方向の発散角が一定に設定されている。所定範囲W0は、描画領域D10のX軸方向の中間位置からX軸正負方向にそれぞれ幅Δwの範囲である。所定範囲W0は、走査方向(X軸方向)における描画領域D10の全範囲の40%以上50%以下の範囲に設定される。
また、スクリーン108は、所定範囲W0を除いた両側の範囲W1において、X軸方向の発散角が、X軸正負の端に向かって徐々に大きくなるように設定されている。より詳細には、両側の範囲W1に含まれる第1のレンズ部108aの曲率を変化させることにより、X軸方向の発散角が、両側の範囲W1の端に向かって徐々に大きくなるよう構成されている。
図7(b)に示す発散角の分布が得られるように、両側の範囲W1において、第1のレンズ部108aの曲率が、端に向かって段階的に変化している。具体的には、両側の範囲W1において、第1のレンズ部108aの曲率半径Rxが、端に向かって段階的に小さくなっている。これにより、両側の範囲W1において、X軸方向の発散角が、20度程度から50度程度まで段階的に変化している。
なお、両側の範囲W1において、第1のレンズ部108aの曲率は、X軸方向に隣り合う複数の第1のレンズ部108aを1つのグループとした場合に、グループ内では同一で、隣り合うグループ間において段階的に変化するように設定される。この他、隣り合う第1のレンズ部108a間で曲率が異なっていてもよい。
所定範囲W0における第1のレンズ部108aの曲率半径Rxは、X軸方向の発散角が20度程度になるように設定されている。所定範囲W0における第1のレンズ部108aの曲率半径Rxは、たとえば、50μmである。所定範囲W0における第1のレンズ部108aの曲率半径Rxと第2のレンズ部108bの曲率半径Ryは、たとえば、Rx:Ry=1:2に設定される。
図8(a)は、比較例1に係るアイボックス内の光量分布を示すグラフ、図8(b)は、実施の形態に係るアイボックス内の光量分布を示すグラフである。
比較例1では、第1のレンズ部108aの発散角が、描画領域D10の全ての範囲において一定に設定されている。比較例1では、全ての第1のレンズ部108aの発散角が、図7(b)の所定範囲W0と同様、20度程度に設定されている。比較例1において、第1のレンズ部108aの曲率半径Rxは、描画領域D10の全ての範囲において一定である。
図8(a)、(b)には、それぞれ、比較例1に係るスクリーン108と、実施の形態に係るスクリーン108とを用いた場合のアイボックス内の光量分布(シミュレーション結果)が示されている。実施の形態に係るスクリーン108は、図7(b)に示すように発散角が調整されている。
図8(a)、(b)のグラフにおいて、横軸は、アイボックスの横方向の位置、縦軸は、単位時間当たりの光量である。横軸は、アイボックスの横方向の中間位置が0に設定されている。なお、アイボックスの横方向は、スクリーン108のX軸方向に対応する。縦軸は、X軸方向におけるアイボックスの横方向の中間位置における光量を1として規格化されている。図8(b)には、便宜上、図7(b)に示す所定範囲W0および両側の範囲W1に対応する範囲が、それぞれ、W0およびW1として示されている。
図8(a)に示すように、比較例1では、アイボックス内における光量がアイボックスの両端に向かうに伴い大きくなっている。これは、走査部106によるレーザ光の走査速度が、描画領域D10のX軸方向の両端に向かうに伴い遅くなるためである。比較例1では、このように、アイボックス内における光量がアイボックスの両端に向かうに伴い大きくなるため、観察者が視認する画像30の明るさが不均一となる。
図8(b)に示すように、実施の形態では、上記のように、走査方向(X軸方向)中央の所定範囲W0を除いた両側の範囲W1において、X軸方向の発散角が、端に向かって徐々に大きくなるよう、スクリーン108が構成されている。このため、アイボックス内における両側部分の光の光量が、端に向かうほど、中央部分に比べて弱められる。これにより、アイボックス内における画像全体の明るさが均一に近づけられている。その結果、実施の形態では、観察者が視認する画像の明るさが、アイボックス内の全領域において略均一となる。
なお、図8(a)、(b)に付記した破線は、光量が、アイボックスの横方向の中間位置の光量の1.2倍となるレベルを示している。光量が1.2倍程度である範囲においては、画像の輝度ムラが小さいため、人の目により明るさの変化が視認されにくい。よって、この範囲においては、特に、アイボックス内の光量を調節せずとも、観察者に違和感を与えることなく画像を表示できる。
所定範囲W0は、アイボックス内において、光量が、アイボックスの横方向の中間位置の光量の1.2倍以下となる範囲に対応している。具体的には、所定範囲W0は、スクリーン108を走査するレーザ光の強度が一定である場合に、単位時間当たりにスクリーン108を透過するレーザ光の光量が、走査方向(X軸方向)における描画領域D10の中間位置の1.2倍以下となる範囲に設定される。所定範囲W0は、この条件を満たすように設定されることが好ましい。
なお、所定範囲W0を、走査方向(X軸方向)における描画領域D10の全範囲の40%以上50%以下の範囲に設定した場合、所定範囲W0は、上述の条件を略満たし得る。したがって、所定範囲W0を、走査方向(X軸方向)における描画領域D10の全範囲の40%以上50%以下の範囲に設定することにより、観察者は、所定範囲W0において形成された画像を、輝度ムラによる違和感を持つことなく視認できる。
図9(a)〜(c)は、それぞれ、スクリーン108の位置調整の方法を示す図である。この位置調整は、画像表示装置20の製造工程において、所定の位置調製装置を用いて行われる。
図9(a)〜(c)には、それぞれ、左側にスクリーン108の状態が示され、右側に位置調整装置における撮像素子301の状態が示されている。位置調整装置は、X−Y平面に平行な方向におけるスクリーン108の位置調整を行うための機構部と、スクリーン108から出射された光を受光するための撮像素子301とを備えている。
位置調整工程において、図2に示す画像処理回路201は、Y軸方向に延びる直線画像R10がスクリーン108上に描画されるように、レーザ駆動回路202とミラー駆動回路203を制御する。直線画像R10のY軸方向の長さは、描画領域D10のY軸方向の長さよりも長く設定され、たとえば、スクリーン108のY軸方向の長さと略同じに設定される。直線画像R10のX軸方向の幅は、非レンズ領域108c、108dのX軸方向の幅と略同じに設定される。
図9(a)は、スクリーン108が、X−Y平面に平行な平面上の正規の位置に位置付けられた状態を示している。この場合、直線画像R10の上端部および下端部は、それぞれ、非レンズ領域108c、108dに位置づけられ、発散されることなく非レンズ領域108c、108dを通過する。これにより、撮像素子301には、直線画像R10の上端部および下端部に基づく光線部分R21、R22が投影される。直線画像R10の上端部および下端部以外の中央部分は、描画領域D10に配置された第1のレンズ部108a(図3(a)参照)によって、X軸方向に拡散される。これにより、撮像素子301には、直線画像R10の中央部分に基づく拡散光R23が投影される。
この場合、位置調整装置は、撮像素子301上に、光線部分R21、R22が同じ量だけ投影されていることを検出することにより、スクリーン108が、X−Y平面に平行な平面上の正規の位置に位置付けられていると判定する。
図9(b)は、スクリーン108が、X−Y平面に平行な平面上において、正規の位置から反時計方向に回転した位置にある状態を示している。この場合、直線画像R10の上端のみが非レンズ領域108cに位置づけられている。このため、撮像素子301上には、直線画像R10の上端部に基づく光線部分R21は投影されるが、直線画像R10の下端部に基づく光線部分R22は投影されない。位置調整装置は、光線部分R21、R22のうち光線部分R21のみが撮像素子301上に投影されていることに基づき、スクリーン108を、上側の非レンズ領域108cを中心に、図8(b)に矢印で示すように時計方向に回転させる。これにより、図9(c)に示すように、直線画像R10の下端部が非レンズ領域108dに位置づけられ、下端部に基づく光線部分R22が撮像素子301に投影される。
この場合、位置調整装置は、撮像素子301上において、光線部分R21の方が、光線部分R22よりも多く投影されているため、光線部分R21、R22が互いに同じ量だけ投影されるように、スクリーン108を、図9(c)に矢印で示すようにY軸正方向に移動させる。これにより、スクリーン108に対して直線画像R10が図8(a)のように位置付けられる。位置調整装置は、撮像素子301上において、光線部分R21、R22が互いに同じ投影量となることにより、X−Y平面に平行な平面上の正規の位置に位置付けられていると判定する。こうして、位置調整が行われた後、スクリーン108が、接着剤等の固着手段によって、画像表示装置20内に固定される。
なお、図9(b)の例では、直線画像R10の上端部が非レンズ領域108cに位置付けられたが、直線画像R10の上端部および下端部の両方が、それぞれ、非レンズ領域108c、108dに位置付けられない場合も起こり得る。この場合、位置調整装置は、撮像素子301の撮像画像を参照しつつ、所定の調整ステップによりスクリーン108をX−Y平面に平行な方向に回転および移動させて、図9(a)に示すように、直線画像R10の上端部および下端部が、それぞれ、非レンズ領域108c、108dに等しく位置づけられるように、スクリーン108に対する位置調整を実行する。
ところで、上記のように、スクリーン108上におけるレーザ光のスポット径が各レンズの幅以下に設定される場合、スクリーン108に対するレーザ光の走査方法として、たとえば、レーザ光の走査方向(X軸方向)に1列に並ぶレンズ領域La1(図4参照)の中央をビームB1が通るようにレーザ光を走査させる方法を用いることができる。
図10(a)は、この場合の走査方法(比較例2)を示す図である。便宜上、図10(a)では、スクリーン108の入射面側に形成された第1のレンズ部108aの図示が省略されている。図10(a)の破線は、スクリーン108の出射面側に形成された第2のレンズ部108bの境界を示している。
比較例2の走査方法では、走査ラインL1〜Lnが、第2のレンズ部108bの幅方向(Y軸方向)の中央位置に設定される。したがって、第2のレンズ部108bのピッチP1と、走査ラインL1〜LnのピッチP2とが互いに同一である。なお、ピッチP1は、図4に示したレンズ領域La1のY軸方向のピッチに対応する。
しかし、この走査方法では、レーザ光の走査位置とスクリーン108との位置関係が走査方向に垂直な方向(Y軸方向)にずれた場合に、表示画像に干渉縞が生じることが、発明者らによって確認された。
図10(b)〜(e)は、それぞれ、比較例2に係る走査方法において、レーザ光の走査位置と第2のレンズ部108bとの位置関係を走査方向に垂直な方向(Y軸方向)に変化させた場合に、画像30に生じる干渉縞を模式的に示す図である。
図10(b)は、レーザ光の走査位置が第2のレンズ部108bの中央位置に位置付けられている場合、すなわち、レーザ光の走査位置とスクリーン108との位置関係が適正である場合の状態を示している。この場合、図10(b)に示すように、画像30に干渉縞は生じない。
図10(c)〜(e)は、それぞれ、レーザ光の走査位置が第2のレンズ部108bの中央位置からY軸方向にずれた場合の干渉縞の状態を示している。図10(d)では、図10(c)の場合よりも走査位置のずれ量が大きく、図10(e)では、図10(d)の場合よりも走査位置のずれ量が大きい。
図10(c)〜(e)に示すように、比較例2の走査方法では、レーザ光の走査位置が第2のレンズ部108bの中央の位置からY軸方向にずれた場合に画像30に干渉縞が生じ、ずれ量が大きくなるに伴い、干渉縞の数が増加する。このように、比較例2の走査方法では、画像30に生じる干渉縞のために、画像30の視認性が低下する。
このような問題を避けるため、比較例2の走査方法では、スクリーン108の設置時において、レーザ光が第2のレンズ部108bの中央を通るように、スクリーン108の設置位置を厳格に調整する作業が必要となる。ところが、こうして設置時にスクリーン108の位置を適正に調整した場合も、その後の温度変化等によってスクリーン108に変形等が生じると、レーザ光の走査位置と第2のレンズ部108bとの位置関係が崩れて、画像30に干渉縞が生じてしまう。このため、比較例2の走査方法では、干渉縞を抑制して画像30の視認性を良好に維持することが極めて困難である。
このような不都合を解消するため、本実施の形態では、画像30に生じる干渉縞を目立たなくさせるために、以下のように、スクリーン108に対するレーザ光の走査方法が調整されている。
図11(a)は、実施の形態におけるレーザ光の走査方法を模式的に示す図である。図11(a)においても、便宜上、スクリーン108の入射面側に形成された第1のレンズ部108aの図示が省略されている。図11(a)の破線は、スクリーン108の出射面側に形成された第2のレンズ部108bの境界を示している。
図11(a)に示すように、実施の形態の走査方法では、第2のレンズ部108bのピッチP1に比べて、走査ラインL1〜LnのピッチP2が小さく設定されている。したがって、所定の走査ラインにおいては、レーザ光の走査位置が第2のレンズ部108bの中央位置に対してY軸方向にずれる。また、これらの走査ラインでは、走査ラインごとに、第2のレンズ部108bの中央位置に対するレーザ光(ビームB1)の走査位置のずれ量が相違するようになる。さらに、所定の走査ラインにおいては、レーザ光(ビームB1)が、互いに隣り合う2つの第2のレンズ部108bに跨がることが起こり得る。
実施の形態の走査方法によれば、このように、走査ラインL1〜LnのピッチP2を調整することにより、追って実験結果で示すように、画像30に生じる干渉縞を目立たなくすることができる。
図11(b)〜(e)は、それぞれ、実施の形態に係る走査方法において、レーザ光の走査位置と第2のレンズ部108bとの位置関係を走査方向に垂直な方向(Y軸方向)に変化させた場合に、画像30に生じる干渉縞を模式的に示す図である。
図11(b)は、レーザ光の走査位置とスクリーン108との位置関係が適正である場合の干渉縞の状態を示している。また、図11(c)〜(e)は、レーザ光の走査位置がスクリーン108に対して相対的にY軸方向にずれた場合の干渉縞の状態を示している。図11(d)では、図11(c)の場合よりも走査位置のずれ量が大きく、図11(e)では、図11(d)の場合よりも走査位置のずれ量が大きい。
図11(b)に示すように、実施の形態の走査方法では、レーザ光の走査位置とスクリーン108との位置関係が適正である場合も、画像30に干渉縞が生じ得る。しかし、ここで生じる干渉縞は、微細、且つ、濃淡の差が小さいため、画像30において極めて目立ちにくいものとなる。特に、画像30の背景色が黒である場合、干渉縞は略視認され得ないものとなる。
また、図11(c)〜(e)に示すように、実施の形態の走査方法では、レーザ光の走査位置が正規の位置からY軸方向にずれた場合も、図11(b)の場合と同様の干渉縞が生じる。なお、ここでは、レーザ光の走査位置のずれ量に応じて、干渉縞が上下方向に移動する。しかし、これらの場合も、画像30に生じた干渉縞は、図11(b)の場合と同様、微細、且つ、濃淡の差が小さいため、画像30において極めて目立ちにくいものとなる。
このように、本実施の形態の走査方法によれば、画像30に生じる干渉縞が、微細、且つ、濃淡の差が小さいものとなるため、画像30において極めて目立ちにくくできる。よって、画像30の視認性を良好に維持できる。また、レーザ光の走査位置が正規の位置からY軸方向にずれても、干渉縞の生じ方が略変わらない。このため、温度変化等によってスクリーン108に変形等が生じて、スクリーン108に対するレーザ光の走査位置がY軸方向に相対的にずれたとしても、画像30の視認性を良好に維持することができる。
<実験>
発明者らは、第2のレンズ部108bのピッチP1(図4に示すレンズ領域La1の走査方向に垂直な方向のピッチ)に対する走査ラインのピッチP2の割合を変化させた場合に画像30に生じる干渉縞を実験により確認した。
実験では、上記実施の形態と同様、入射面と出射面にそれぞれ第1のレンズ部108aと第2のレンズ部108bが形成されたスクリーン108を用いた。なお、第2のレンズ部108bについては、図7(b)に示した発散角の調整を行わず、第2のレンズ部108bの全てにおいて発散角を同一とした。
実験の条件は、以下のように設定した。
・第1のレンズ部108aの幅 … 50μm
・第2のレンズ部108bの幅 … 50μm
・第1のレンズ部108aによるレーザ光の広がり角 … ±22度
・第2のレンズ部108bによるレーザ光の広がり角 … ±10度
・第1のレンズ部108aと第2のレンズ部108bとの距離 … 0.3mm
・スクリーン108の入射面におけるビーム径(FWHMの場合) … 45μm
上記条件のうち、レーザ光の広がり角は、レーザ光の光軸を中心として互いに離れる方向をそれぞれ正負として示した。また、スクリーン108は、第1のレンズ部108aと第2のレンズ部108bが、それぞれ、厚み0.3mmのシートの表裏面に形成されたものを用いた。したがって、第1のレンズ部108aと第2のレンズ部108bとの距離は0.3mmであった。
実験では、上記実施の形態と同様の光学系を備えた画像表示装置20で白色無地の画像30を表示させ、アイボックスの位置で画像30を撮像した。
図12(a)〜図14(b)は、それぞれ、本実験において撮像された画像の写真である。各写真の右上の隅には、第2のレンズ部108bのピッチP1に対する走査ラインのピッチP2の割合(P2/P1)が付記されている。
図12(a)〜図14(b)を参照すると、実施の形態の走査方法によれば、画像30に生じた干渉縞の濃淡の差が小さく、干渉縞が目立ちにくいことが分かる。特に、図13(a)〜図14(a)を参照すると、第2のレンズ部108bのピッチP1に対する走査ラインのピッチP2の割合が0.5〜0.7の範囲では、画像30に生じる干渉縞が、微細、且つ、濃淡の差が小さいため、画像30において干渉縞が極めて目立ちにくくなることが分かる。とりわけ、第2のレンズ部108bのピッチP1に対する走査ラインのピッチP2の割合が0.6である場合は、図13(b)に示すように、画像30に殆ど干渉縞が視認され得ないことが分かる。
以上の実験結果から、第2のレンズ部108bのピッチP1(図4に示したレンズ領域La1の走査方向に垂直な方向のピッチ)よりも走査ラインのピッチP2を小さく設定することにより、画像30に生じた干渉縞を目立たなくできることが確認できた。特に、第2のレンズ部108bのピッチP1に対する走査ラインのピッチP2の割合を0.5〜0.7の範囲に設定することにより、画像30に生じた干渉縞を目立たなくでき、とりわけ、第2のレンズ部108bのピッチP1に対する走査ラインのピッチP2の割合を0.6付近に設定することにより、画像30に殆ど干渉縞が視認され得ない状態にできることが確認できた。このことから、第2のレンズ部108bのピッチP1に対する走査ラインのピッチP2の割合は、0.5〜0.7の範囲に設定することが好ましく、とりわけ、この割合は、0.6付近に設定することが好ましいと言える。
なお、発明者らは、上記実験において、スクリーン108に対するレーザ光の走査位置を走査方向に垂直な方向にずらしながら、干渉縞の状態を目視で確認した。その結果、それぞれのピッチP1に対するピッチP2の割合において、スクリーン108に対するレーザ光の走査位置を上記のようにずらしても、干渉縞が上下方向に移動するのみで、干渉縞のパターン自体は略変化しなかった。このことから、温度変化等によってスクリーン108に変形等が生じ、これにより、スクリーン108に対するレーザ光の走査位置が走査方向に垂直な方向(Y軸方向)に相対的にずれたとしても、干渉縞による画像30の劣化を抑制でき、画像30の視認性を良好に維持できることが確認できた。
なお、実施の形態の走査方法において、上記のように干渉縞が微細、且つ、濃淡差が小さくなるのは、以下の理由によるものと考えられる。
図15(a)は、実施の形態の走査方法を示し、図15(b)は、比較例2の走査方法を示している。図15(a)、(b)には、それぞれ、第2のレンズ部108bとレーザビームの強度分布との関係が示されている。図15(a)の下段には、第2のレンズ部108b2に設定された2つの走査ラインをレーザビームが走査したときの強度分布が示されている。
図15(a)に示すように、実施の形態では、走査ラインのピッチP2が第2のレンズ部108bのピッチP1よりも小さく設定されている。このため、ビームB1は、2つないし3つの第2のレンズ部108b(108b−1、108b−2、108b−3)を跨っており、それぞれ異なる強度分布で3つの第2のレンズ部108bから光が出射される。1本のレーザビームが複数の第2のレンズ部108bを通過して出射されることで、複数の開口から同位相の光が出力されるのと同じ効果となり、画像30に干渉縞が生じる。
実施の形態では、1つの第2のレンズ部108bに対し複数の走査ラインで走査を行うことにより、1ラインごとに、3つの第2のレンズ部108bを通過する光強度が異なるため、生じる干渉縞のパターンが互いに異なるようになる。したがって、スクリーン108の全範囲が走査される間に、互いにパターンが異なる数種の干渉縞が生じることになる。このとき、上記のようにスクリーン108に対する走査周波数が高いため、これら数種の干渉縞が短時間の間に重畳的に視認される。このため、これら数種の干渉縞が視覚的に平均化され(撮像の場合は電気的に平均化され)、画像全体として視認される干渉縞が薄くなり、全体的に目立たなくなる。比較例2の走査方法では、1つの第2のレンズ部108bに対して走査ラインが1つだけ設定されているため、実施の形態の走査方法のように、互いにパターンが異なる数種の干渉縞が生じることがなく、生じた干渉縞が視覚的に平均化されることもない。
したがって、上記実験の条件に拘わらず、ビームB1の径がレンズ領域La1のY軸方向の幅(第2のレンズ部108bの幅)よりも小さく、且つ、ピッチP1よりもピッチP2が小さく設定されれば、レンズ領域La1のサイズ等が上記条件と相違しても、上記実験と同様の効果が奏され得ると想定される。
<実施形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
図11(a)に示したように、第2のレンズ部108bのピッチP1(図4に示したレンズ領域La1の走査方向に垂直な方向のピッチ)よりも走査ラインのピッチP2が小さく設定されるため、上記実験で検証したとおり、画像30に生じる干渉縞を目立たなくすることができる。また、このようにピッチP2を設定することにより、温度変化等によりスクリーン108に変形等が生じてスクリーン108に対するレーザ光の走査位置が相対的に変化したとしても、画像30に生じる干渉縞を目立たない状態に維持できる。よって、画像30の視認性を良好に保つことができる。
なお、上記実験で検証したとおり、第2のレンズ部108bのピッチP1(レンズ領域La1の走査方向に垂直な方向のピッチ)に対する走査ラインのピッチP2の割合(P2/P1)が、0.5以上0.7以下の範囲に設定されることが好ましい。これにより、図13(a)〜図14(a)に示したとおり、干渉縞を顕著に目立たなくすることができる。
特に、第2のレンズ部108bのピッチP1(レンズ領域La1の走査方向に垂直な方向のピッチ)に対する走査ラインのピッチP2の割合(P2/P1)は、0.6付近に設定されることが好ましい。これにより、図13(b)に示したとおり、干渉縞が殆ど視認され得ない状態とすることができる。
図2に示したとおり、光源101とスクリーン108との間に、3つのレーザ光源101a〜101cからそれぞれ出射されたレーザ光の光軸を整合させるためのミラー104および2つのダイクロイックミラー105a、105b(光軸整合部)が配置されている。これにより、干渉縞に色割れが生じることを抑制することができる。すなわち、各波長のレーザ光の光軸が互いにずれていると、スクリーン108上における各波長のレーザ光の走査位置にずれが生じ、各波長のレーザ光に基づく干渉縞にずれが生じる。これにより、干渉縞の縁部分に、各波長に基づく色の線状の領域が互いに分離した状態で現れる。これに対し、本実施の形態では、各波長のレーザ光の光軸が互いに整合した状態で、各波長のレーザ光がスクリーン108に導かれるため、各波長のレーザ光に基づく干渉縞にずれが生じることがない。よって、干渉縞の縁部分に各波長の色の線状の領域が生じること、すなわち、干渉縞の色割れが抑制され得る。
図2に示したとおり、光源101とスクリーン108との間に、レーザ光源101a〜101cからそれぞれ出射されたレーザ光のビームサイズおよびビーム形状を揃えるためのコリメータレンズ102a〜102cおよびアパーチャ103a〜103c(ビーム整形部)が配置されている。これにより、所定波長のビームB1の周りに他の波長のビームB1が大きくはみ出すことが抑制される。よって、各波長のレーザ光に基づく干渉縞を略同様の状態にでき、干渉縞に色割れが生じることを抑制できる。
なお、レーザ光源101a〜101cのうち、赤色波長のレーザ光を出射するレーザ光源101aは、他の2つのレーザ光源101bに比べてレーザ光の放射角が大きいため、アパーチャ103aを透過した後の赤色波長のレーザ光のビームサイズが、青色波長のレーザ光と緑色波長のレーザ光に比べてやや大きくなり得る。しかし、この場合も、上記のように、各波長のレーザ光の光軸を整合させることにより、干渉縞に色割れが生じることを抑制することができる。
この他、スクリーン108が、図3(a)、(b)および図5(a)〜図7(b)の構成を備える場合は、以下の効果が奏され得る。
画像が描画される描画領域D10のうち、走査方向(X軸方向)中央の所定範囲W0を除いた両側の範囲W1において、X軸方向の発散角が、端に向かって徐々に大きくなるよう、スクリーン108が構成されているため、アイボックス内における両側部分の光の光量が、端に向かうほど、中央部分に比べて弱められる。このため、アイボックス内における画像全体の明るさを均一に近づけることができる。また、スクリーン108は、走査方向(X軸方向)中央の所定範囲W0において発散角が一定であるため、走査方向全範囲において発散角を精緻に調整する必要がない。よって、スクリーン108を容易に構成することができる。
また、所定範囲W0は、走査方向(X軸方向)における描画領域D10の全範囲の40%以上50%以下の範囲に設定される。あるいは、所定範囲W0は、スクリーン108を走査するレーザ光の強度が一定である場合に、単位時間当たりにスクリーン108を透過するレーザ光の光量が、走査方向(X軸方向)における描画領域D10の中間位置の1.2倍以下となる範囲に設定される。このように所定範囲W0を設定することにより、特に、所定範囲W0においてX軸方向の発散角を調整せずとも、観察者に輝度ムラによる違和感なく、画像を視認させることができる。
また、本実施の形態では、スクリーン108の入射面と出射面に、それぞれ、第1のレンズ部108aと第2のレンズ部108bとが配置されているため、入射面側の第1のレンズ部108aに対してのみ、発散角の調整を施せばよい。よって、スクリーン108に対する発散角の調整を容易に行い得る。
さらに、本実施の形態では、描画領域D10よりも上側および下側の位置に、それぞれ、入射した光を発散させることなく通過させる所定サイズの非レンズ領域108c、108dが配置されている。これにより、図9(a)〜(c)を参照して説明したとおり、簡便な作業により、スクリーン108をX−Y平面に平行な平面上の所定の位置に位置付けることができる。
<変更例1>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、また、本発明の適用例も、上記実施の形態の他に、種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施の形態では、スクリーン108の入射面と出射面に、それぞれ、第1のレンズ部108aと第2のレンズ部108bとを配置したが、スクリーン108の入射面と出射面の何れか一方に、レーザ光をX軸方向およびY軸方向に発散させるためのレンズ群を配置する構成であってもよい。
図16(a)は、スクリーン108の入射面に、レーザ光を走査方向(X軸方向)および走査方向に垂直な方向(Y軸方向)に発散させるための複数のレンズ部108e(マイクロレンズアレイ)を配置した構成例を示す図である。図16(b)は、図16(a)の一部の領域をZ軸正側から見た拡大図である。
なお、この構成では、1つのレンズ部108eが、図4に示した1つのレンズ領域La1に対応する。
図16(a)、(b)に示すように、スクリーン108の入射面には、平面視において矩形のレンズ部108eが、X軸に平行な横方向とY軸に平行な縦方向に所定数ずつ並ぶように形成されている。各レンズ部108eの横方向の幅Wxは互いに同一であり、また、各レンズ部108eの縦方向の幅Wyも互いに同一である。幅Wx、Wyは、数50μm程度である。図16(b)の例では、幅Wxと幅Wyが互いに同一の寸法に設定されているが、幅Wxと幅Wyの寸法が異なっていてもよい。
各レンズ部108eは、X軸方向の曲率半径RxとY軸方向の曲率半径Ryが互いに異なっている。ここで、曲率半径Rxは曲率半径Ryよりも小さく設定される。従って、レンズ部108eは、X軸方向の曲率がY軸方向の曲率よりも大きくなっている。このようにレンズ部108eの曲率を設定することにより、上記実施の形態と同様、各レンズ部108eを透過するレーザ光を、効率良く、運転者2の目2aの位置周辺の横長の領域(アイボックス領域)に導くことができる。レンズ部108eの曲率は、アイボックス領域の形状に応じて決定される。
この変更例では、図7(a)に示す所定範囲W0において、各レンズ部108eの曲率半径Rxが一定であり、且つ、両側の範囲W1において、各レンズ部108eの曲率半径RxがX軸正負の両端に向かうに伴い小さくなるように設定され得る。これにより、図7(b)に示すX軸方向の発散角の分布が実現される。なお、各レンズ部108eの曲率半径Ryは、全てのレンズ部108eにおいて同一である。所定範囲W0における曲率半径Rxと、曲率半径Ryとの関係は、たとえば、Rx:Ry=1:2に設定される。
このように、レンズ部108eの曲率半径Rx、Ryを設定することにより、本変更例においても、図7(b)に示す光量分布を実現できる。これにより、アイボックス内における画像全体の明るさを均一に近づけることができる。
なお、本変更例においても、描画領域D10よりも上側および下側の位置に、非レンズ領域108c、108dが設けられている。これにより、図9(a)〜(c)を参照して説明した簡便な作業により、スクリーン108を、X−Y平面の所定の位置に位置付けることができる。
また、上記実験で用いたレンズと同様、全てのレンズ部108eの曲率半径Rxが同一に設定され、全てのレンズ部108eにおけるX軸方向の発散角が同一であってもよい。
なお、発明者らは、上記実施の形態の走査方法により、変更例1に係るスクリーン108と上記実施の形態のスクリーン108を走査した場合とで、画像30において生じる干渉縞の状態が相違するかを目視により確認した。その結果、変更例1のスクリーン108を用いた場合にも、上記実施の形態のスクリーン108を用いた場合と同様、画像30において干渉縞を目立たなくできるとの効果が確認できた。
ただし、変更例1のスクリーン108を用いた場合に比べて、上記実施の形態のスクリーン108を用いた場合は、干渉縞の色割れが抑制された。これは、上記実施の形態のスクリーン108では、第1のレンズ部108aと第2のレンズ部108bとが光軸方向に離間しているため、この離間距離によって、第1のレンズ部108aによって発散されたレーザ光のアイボックス付近の焦点位置と、第2のレンズ部108bによって発散されたレーザ光のアイボックス付近の焦点位置との間に、僅かなずれ(視差)が生じるためであると考えられる。
したがって、干渉縞の色割れを抑制して、干渉縞をより目立たなくするためには、上記実施の形態のように、レーザ光の入射面にレーザ光をX軸方向(第1の方向)のみに発散させる複数の第1のレンズ部108aを備え、レーザ光の出射面にレーザ光をY軸方向(第2の方向)に垂直な方向のみに発散させる複数の第2のレンズ部108bを備えたスクリーン108を用いることが好ましいと言える。
なお、上記実施の形態では、スクリーン108の入射面に第1のレンズ部108aが形成され、スクリーン108の出射面に第2のレンズ部108bが形成されたが、スクリーン108の入射面にレーザ光をY軸方向(第2の方向)に発散させる複数の第2のレンズ部108bが形成され、スクリーン108の出射面にレーザ光をX軸方向(第1の方向)に発散させる複数の第1のレンズ部108aが形成されてもよい。
<変更例2>
上記実施の形態では、スクリーン108の位置が固定であったが、画像の表示動作において、スクリーン108がZ軸方向に移動されてもよい。
図17は、変更例2に係る画像表示装置20の照射光生成部21および照射光生成部21に用いる回路の構成を示す図である。
図17に示すように、本変更例では、図2の構成に比べて、駆動部109と、スクリーン駆動回路204が追加されている。駆動部109は、スクリーン108をレーザ光の進行方向に平行な方向(Z軸方向)に往復移動させる。駆動部109は、たとえば、コイルと磁石を用いたアクチュエータにより構成される。たとえば、スクリーン108を保持するホルダが、板バネを介して、レーザ光の進行方向に平行な方向(Z軸方向)に移動可能に、ベースに支持される。コイルは、ホルダ側に設置され、磁石はベース側に設置される。スクリーン駆動回路204は、画像処理回路201からの制御信号に応じて、スクリーン108を駆動する。
図18(a)は、変更例2に係るスクリーン108の移動工程の一例を示す図であり、図18(b)は、変更例2に係る画像表示装置20においてスクリーン108を移動させることにより表示される画像の一例を示す図である。
図18(a)に示すように、スクリーン108は、時刻t0〜t4を1サイクルとして移動が繰り返される。時刻t0〜t1の間に、スクリーン108は、初期位置Ps0から最遠位置Ps1へと移動され、時刻t1〜t4の間に、スクリーン108は、最遠位置Ps1から初期位置Ps0へと戻される。スクリーン108の移動周期、すなわち、時刻t0〜t4の時間は、たとえば、1/60秒である。
時刻t0〜t1は、図18(b)において、奥行き方向に広がる奥行き画像M1を表示するための期間であり、時刻t1〜t4は、図18(b)において、鉛直方向に広がる鉛直画像M2を表示するための期間である。図18(b)の例において、奥行き画像M1は、ナビゲーション機能により乗用車1が道路R1を曲がるべき方向を運転者2に示唆するための矢印であり、鉛直画像M2は、歩行者H1が居ることを運転者2に注意喚起するためのマーキングである。たとえば、奥行き画像M1と鉛直画像M2は、互いに異なる色で表示される。
時刻t0〜t1において、スクリーン108は、初期位置Ps0から最遠位置Ps1まで線形に移動される。スクリーン108が移動すると、これに伴い、ウインドシールド12前方の虚像が結像する位置が奥行き方向に移動する。したがって、奥行き画像M1の奥行き方向の各位置にスクリーン108が在るときに、奥行き画像M1に対応する走査ライン上の、奥行き画像M1に対応するタイミングにおいて、レーザ光源101a〜101cを発光させることにより、ウインドシールド12の投射領域13の前方に、図18(b)に示すような奥行き画像M1を虚像として表示させることができる。
一方、鉛直画像M2は、奥行き方向には変化せず、鉛直方向のみに広がっているため、スクリーン108を、鉛直画像M2に対応する位置に固定して、虚像の生成を行う必要がある。図18(a)の停止位置Ps2は、鉛直画像M2の奥行き位置に対応するスクリーン108の位置である。スクリーン108は、最遠位置Ps1から初期位置Ps0に戻る間に、停止位置Ps2において、時刻t2〜時刻t3の間、停止される。この間に、鉛直画像M2に対応する走査ライン上の、鉛直画像M2に対応するタイミングにおいて、レーザ光源101a〜101cを発光させることにより、ウインドシールド12の投射領域13の前方に、図18(b)に示すような鉛直画像M2を虚像として表示させることができる。
以上の制御は、図17に示す画像処理回路201によって行われる。この制御により、時刻t0〜時刻t4の間に、奥行き画像M1と鉛直画像M2が虚像として表示される。上記の制御では、奥行き画像M1の表示タイミングと鉛直画像M2の表示タイミングにずれが生じるが、このずれは極めて短時間であるため、運転者2は、奥行き画像M1と鉛直画像M2を重ねた画像を認識する。こうして、運転者2は、投射領域13の前方に、映像信号に基づく画像(奥行き画像M1、鉛直画像M2)を、道路R1および歩行者H1を含む風景に重ねて見ることができる。
なお、図18(b)では、鉛直画像M2が1つであったため、図18(a)の工程において、スクリーン108の停止位置Ps2が1つに設定されたが、鉛直画像M2が複数あれば、それに応じて、図18(a)の工程において、停止位置が複数設定される。ただし、図18(a)の工程において、時刻t0〜t4の時間は一定であり、時刻t4は不変であるため、停止位置の数の増減に応じて、停止位置前後のスクリーン108の移動速度(図18(a)の波形の傾き)が変更されることになる。
この変更例2においても、上記実施の形態の走査方法を用いることにより、画像30に生じる干渉縞を抑制できる。
<その他の変更例>
上記実施の形態では、光源101が3つのレーザ光源101a〜101cを備える構成であったが、1つのレーザ光源の基板に出射波長が異なる複数の発光素子がマウントされたマルチ発光のレーザ光源が、光源101として用いられてもよい。この場合、各発光素子から出射されたレーザ光は、たとえば、波長選択性の回折格子によって光軸が整合される。
また、上記実施の形態では、本発明を乗用車1に搭載されるヘッドアップディスプレイに適用した例を示したが、本発明は、車載用に限らず、他の種類の画像表示装置にも適用可能である。
また、画像表示装置20および照射光生成部21の構成は、図1(c)および図2、図17に記載された構成に限られるものではなく、適宜、変更可能である。さらに、第1のレンズ部108aや第2のレンズ部108b、レンズ部108eは、スクリーン108に一体形成されてもよく、あるいは、これらレンズ部を有する透明なシートをスクリーン108の基材に貼りつける構成であってもよい。
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。