JP6813879B2 - 植物病害抵抗性誘導剤及び植物病害防除方法 - Google Patents

植物病害抵抗性誘導剤及び植物病害防除方法 Download PDF

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Description

本発明は、植物病害抵抗性誘導剤及び植物病害防除方法に関する。
植物の病害を防除するための方法論としては、病害の原因となる微生物を殺滅する薬剤に加え、植物が持つ病害抵抗性を活性化する薬剤も有効である。後者は薬剤に対する抵抗性を持つ病原体が出現するリスクが低いために効果が持続的であり、また環境中の病原体以外の微生物への影響が少なく環境負荷が低いという特徴を持つ。
植物は病原体に感染すると植物ホルモンであるサリチル酸を生合成し、それにより防御遺伝子群を誘導して病害抵抗性を発揮する(例えば、非特許文献1参照。)。植物に病害抵抗性応答を誘導する薬剤として、サリチル酸様の作用を持つBTH (benzo(1,2,3)thiadiazole-7-carbothioic acid S-methyl ester)やINA (2,6-dichloroisonicotinic acid)が知られている。
その他の病害抵抗性誘導剤としては、有効成分がプロベナゾールであるオリゼメート(登録商標)、プロベナゾールの活性本体であるBIT(benzisothiazole)、有効成分がチアジニルであるブイゲット(登録商標)、有効成分がイソチアニルであるスタウト(登録商標)などがある。さらにこれに類似する化合物としては、ベンゾイソチアゾリン誘導体、NCI(N-cyanomethyl-2-chloroisonicotinamide)、CMPA (3-chrolo-1-methyl-1H-pyrazole
-5-carboxylic acid)などが存在し、殺菌性農薬に抵抗性誘導効果が見出された例もある。また最近では希少糖の一部に抵抗性誘導活性が見出されている。また各種アミノ酸に抵抗性誘導効果があることも古くから知られている。これらの化合物の薬理作用ははっきりしていない。
上記以外の手法としては、植物が持つ防御物質を利用した手法や植物共生微生物を利用した病原体拮抗技術や病害抵抗性付加技術などがある。また、サリチル酸に拮抗的に作用するアブシジン酸の合成を阻害する薬剤を利用した抵抗性付与技術が報告されている。
市販の抵抗性誘導剤の適応範囲は限られている。これは現段階での新剤開発が既存の化合物の構造改変という手法にとどまっているためである。革新的な進展には新規な構造を持つ化合物群からの網羅的な探索が必須だが、一般的に抵抗性誘導剤は候補薬剤を施した植物体に対して病害を感染させてその発病抑制程度を測定する手法で探索される。これは大量の薬剤と広い試験スペースと長い時間を要するため効率的な処理が困難で、網羅的な探索には不向きである。
サリチル酸に類似した活性を持つ薬剤をハイスループットにスクリーニングするための方法論は複数開発されている(例えば、特許文献1参照。)。これらはサリチル酸応答性遺伝子群のプロモーターを利用したレポーター導入形質転換植物を利用したもので、幼苗に候補薬剤を添加した後のプロモーター活性を指標として探索するものだが、サリチル酸の恒常的な作用は強い発病抑制効果を生み出すものの、生長阻害を誘導するケースが多い。実際、これまでにも多くの抵抗性誘導活性を持つ天然物や合成化合物が単離されてきたが、実用化されたものは限られており、またBTHも日本で農薬登録されたものの現在は取り消されている。その他の方法論としては、病害感染時のシロイヌナズナ幼苗の葉の黄化を指標としたものや活性酸素種生成を指標としたものがある。
特開2007−151492号公報
Metraux et al., (1990) Science, 250:1004-1006.
本発明者らは、斑葉細菌病菌感染によってシロイヌナズナ培養細胞に誘導される病害抵抗性応答の一つである過敏感細胞死を指標とすることにより、網羅的かつ迅速に植物病害抵抗性誘導剤をスクリーニングできることを見出すとともに、そのスクリーニング条件を最適化して植物病害抵抗性誘導剤のためのスクリーニング方法を確立した。
そして今回新たな探索源として環状ペプチドを利用し、当該スクリーニング方法を用いて探索することにより、新たな植物病害抵抗性誘導剤を取得することに成功し、かかる知見により本発明は完成されたものである。
本発明の植物病害抵抗性誘導剤は下記式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、または(X)で示される化合物の少なくともいずれか一つを有効成分として含有する植物病害抵抗性誘導剤である。
また、本発明の植物病害防除方法では、上記植物病害抵抗性誘導剤を用いるものである。
本発明によれば、斑葉細菌病、いもち病に加え、紋枯病を抑制する活性を示す環状ペプチドである化合物を見出し、植物病害抵抗性誘導剤として用いることで、植物自体の病害抵抗性を活性化できる。特に、紋枯病菌に対して効果を示す植物病害抵抗性誘導剤は、今のところ知られておらず、紋枯病に対する新たな防除戦略として利用できる。
本発明に係る化合物のシロイヌナズナ培養細胞の病原細菌誘導性細胞死に対する濃度依存的活性化能のグラフである。 本発明に係る化合物がシロイヌナズナの斑葉細菌病菌抵抗性に及ぼす効果のグラフである。 本発明に係る化合物がミナトカモジグサのいもち病菌抵抗性に及ぼす効果のグラフである。 本発明に係る化合物がミナトカモジグサの紋枯病菌抵抗性に及ぼす効果のグラフである。 本発明に係る化合物がシロイヌナズナ植物体の発芽および生長に及ぼす影響を示した写真である。 本発明に係る化合物が斑葉細菌病菌の液体培地での増殖に及ぼす影響のグラフである。 本発明に係る化合物が紋枯病菌のPDA培地上での増殖に及ぼす影響を示した写真である。 本発明に係る化合物がシロイヌナズナのサリチル酸配糖化酵素(UGT76B1)の活性に及ぼす影響のグラフである。
本発明の化合物は、
Ser-Gly-Pro-Xaa1-Xaa2-Xaa3-Gln (XI)
(式(XI)中、Xaa1はAsn、Pro、またはArgを示し、Xaa2はPro、Arg、His、Leu、またはAsnを示し、Xaa3はHis、Ile、Ser、Arg、Cys、Trp、Gln、Asn、またはLeu を示す)
で表されるアミノ酸配列からなり、該アミノ酸配列のアミノ末端のα−アミノ基とカルボキシル末端のカルボキシル基がペプチド結合で連結された環状ペプチドである化合物であって、より具体的には、下記式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、または(X)で示される化合物であり、本発明の植物病害抵抗性誘導剤は、これらの化合物の少なくともいずれか一つを有効成分として含有するものであり、本発明の植物病害防除方法は、この植物病害抵抗性誘導剤を植物体に投与または圃場に散布するものである。
なお、本発明において「植物病害抵抗性誘導剤」とは、植物の病害に対する抵抗性を誘導し、植物の病害を防除するための薬剤をいう。
本発明の植物病害抵抗性誘導剤は、上記化合物をそのまま使用してもよいが、上記化合物に一般の農薬の製剤化に使用される固体担体、液体担体、界面活性剤、その他の製剤用補助剤を混合して、各種の剤型の製剤を調製してもよい。薬剤の剤型の種類としては、例えば、粒剤、粉剤、液剤、乳剤、水和剤、水溶剤、油剤、エアゾール、フロアブル剤等のいずれの形態であってもよい。製剤化に際して用いられる担体としては、例えばタルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、ホワイトカーボン、バーミキュライト、炭酸カルシウム、消石灰、珪砂、硫安、尿素等の固体担体、イソプロピルアルコール、キシレン、シクロヘキサン、メチルナフタレン等の液体担体等があげられる。
本発明の植物病害抵抗性誘導剤における有効成分である上記化合物の含有量は、必要に応じ適宜設定できるが、粉剤や粒剤とする場合は0.1〜50%(重量)、また、乳剤や水和剤とする場合は5〜80%(重量)が例示できる。
本発明の植物病害抵抗性誘導剤は、病害の予防を目的としているため、病害が発生する時期前に施用することが好ましい。本発明の植物病害抵抗性誘導剤の使用方法としては、散布、散粉、浸漬、粉衣、塗布、くん蒸、くん煙、灌注等のいずれであってもよい。具体的な使用態様としては、植物体へ薬剤を散布・塗布する方法、薬剤を含む液に植物の種子を浸漬する方法、病害が発生している圃場又は発生するおそれのある圃場に薬剤を散布する方法、土壌へ薬剤を混合する方法、などが挙げられる。
本発明の植物病害抵抗性誘導剤の使用量は植物の種類、対象植物、対象植物の生育段階、剤型の種類、施用方法、施用時期などにより適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、10000m2あたり、有効成分として通常1〜5000g、好ましくは5〜1000gである。乳剤や水和剤のように液状で使用する場合には、有効成分の濃度が0.1〜10,000ppm、好ましくは10〜3,000ppmである。
本発明の植物病害抵抗性誘導剤の対象となる植物は、栽培植物すべてが挙げられ、単子葉植物または双子葉植物のいずれであってもよい。例えば、アブラナ科(シロイヌナズナ、キャベツ、ナタネ等)、イネ科(イネ、トウモロコシ、オオムギ、コムギ、等)、ナス科(トマト、ナス、ジャガイモ、タバコ等)、ウリ科植物(キュウリ、メロン、カボチャなど)、マメ科(ダイズ、エンドウ、インゲンマメ、アルファルファ、ラッカセイ等)、アブラナ科植物(ダイコン、ハクサイ、キャベツなど)、バラ科植物(イチゴ、リンゴ、ナシなど)、クワ科(クワなど)、アオイ科(ワタなど)、セリ科(ニンジン、パセリ、セロリーなど)、キク科(ゴボウ、ヒマワリ、キク、レタスなど)、ブドウ科(ブドウなど)等に属する植物が挙げられるが、これらの植物に限定はされない。
本発明の植物病害抵抗性誘導剤は、上記の施用形態により、糸状菌、細菌及びウィルスに起因する植物の病害を防除できる。例えば、イネいもち病菌(Magnaporthe oryzae)、イネ苗立枯細菌病菌(Burkholderia plantarii)、イネごま葉枯病菌(Cochliobolus miyabeanus)、イネ紋枯病菌(Rhizoctonia solani)、イネ白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae)、ジャガイモ粉状そうか病菌(Spongospora subterranea)、ジャガイモ疫病菌(Phytophthorainfestans)、ジャガイモ黒あざ病菌(Rhizoctonia solani)、ジャガイモそうか病菌(Streptomycesscabies)、オオムギうどんこ病菌(Eryshiphe graminis f. sp. hordei)、ムギ類赤かび病菌(Gibberella zeae)、ムギ類雪腐大粒菌核病菌(Sclerotinia borealis)、コムギ赤さび病菌(Puccinia recondita)、コムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis)、コムギ根腐れ病菌(Rhizoctonia solani)、ダイズべと病菌(Peronospora manshurica)、ダイズ紫斑病菌(Cercospora kikuchii)、エンドウ褐紋病菌(Mycosphaerellapinodes)、トウモロコシ黒穂病菌(Ustilago maydis)、サツマイモつる割病菌(Fusarium oxysporum f. sp. batatas)、メロンつる割病菌(Fusarium oxysporum f. sp. melonis)、レタス根腐病菌(Fusarium oxysporum f. sp. lactucae)、トマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici)、トマト半身萎凋病菌(Verticillium dahliae)、トマト炭そ病菌(Colletotrichumphomoides)、ホウレンソウ萎凋病菌(Fusarium oxysporum f. sp. spinaciae)、アブラナ科根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)、キュウリ苗立枯病菌(Pythium debaryanum)、イチゴ灰色かび病菌(Botrytis cinerea)による病害などが挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明の植物病害抵抗性誘導剤は、他の除草剤、殺菌剤、殺虫剤等の農薬や、肥料、植物生長調節剤、土壌改良剤等と混合して利用することも可能である。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
<実施例1:植物病害抵抗性誘導剤の候補化合物の探索と同定>
(1)過敏感細胞死を亢進する化合物の探索と同定
パラレルペプチド合成機で有機合成した7残基の環状ペプチド8,000化合物(20mM DMSO溶解)のうち1,600化合物を使用した。
まず、シロイヌナズナ培養細胞を用い、非親和性病原細菌であるPseudomonas syringae pv. tomato DC3000 avrRpm1 (以下、「Pst-avrRpm1」という。)の感染に対して示す病害抵抗性反応の1つである過敏感細胞死を増強する活性を指標としたスクリーニングを行った。
すなわち、96wellのフィルタープレートウェルの各ウェルにシロイヌナズナ培養細胞を分配し、2つのウェルを1組として1種類の化合物を終濃度50μMとしてそれぞれ加えた後、一方のウェルにPst-avrRpm1を加えて21時間培養した。ここで、各ウェルの最終容量は100μLとした。培養後、エバンスブルー色素(0.05%)でインキュベートして吸引ろ過し、150μlの水で5回洗浄した後に色素を抽出し、波長595nmの光による吸光度を測定することで評価した。陰性対照実験としては0.5%のDMSOを用い、陽性対照実験としては100μMのサリチル酸を用いた。
上記のスクリーニングを3回繰り返し行って、再現性をもって過敏感細胞死を増強する候補化合物として、下記の10種の化合物を見出した。この10種の化合物を、説明の便宜上、それぞれCP7_01、CP7_02、CP7_03、CP7_04、CP7_05、CP7_06、CP7_07、CP7_08、CP7_09、CP7_10と、ラベリングした。
下表は、上記10種の化合物の物質名の一覧表である。
これらの化合物について各50, 25, 10, 2.5μMの濃度におけるPst-avrRpm1誘導過敏感細胞死への影響を調べたところ、図1に示すように、濃度依存性が観察された。なお、Mockは病原菌を加えていない対照実験である。化合物を投与していない場合の細胞死の割合を100%として各処理における細胞死の割合を算出している。
<実施例2:候補化合物の植物病害抵抗性誘導能の実証>
各候補化合物が、実際に植物体への投与により病害抵抗性を誘導しうるかどうかを下記の方法によって検討した。
(1)シロイヌナズナにおける斑葉細菌病に対する防除効果の検討
シロイヌナズナを3週間栽培し(短日条件(8時間light/16時間dark))、100μMの各化合物を含むOD600=0.00015の濃度の親和性Peudomonas syringae pv. tomato DC3000 (Pst)の懸濁液(10mM MgCl2)懸濁溶液を葉の裏側から針のない1mLシリンジを用いてアポプラスト内に注入した。陰性対照実験として化合物の溶媒であるDMSO、陽性対照実験としてサリチル酸(100μM)を加えた菌懸濁液を使用した。3日後に直径6mmのコルクボーラーにて葉をくり抜き、3枚を2mlチューブに移し、ジルコニアボール(φ3mm)4粒を加えて液体窒素で凍結した。その後、破砕機(バイオメディカルサイエンス シェイクマスターネオ)で葉を3分間粉砕した。このサンプルからRNAを抽出し (Invitrogen PureLink RNA purification kit)、各RNAを元にcDNAを合成した(Takara PrimeScriptTM RT reagent Kit with gDNA Eraser)。シロイヌナズナのCBP20遺伝子、およびPstのrpoD遺伝子の特異的プライマーを用いてRT-PCR実験を行った。
CBP20に対するrpoD遺伝子発現量の相対値で葉内における菌の増殖数を評価した結果、図2に示すように、CP7_01、CP7_03、CP7_05、CP7_06、CP7_07、CP7_08、CP7_09の添加によってシロイヌナズナ葉内におけるPstの増殖が抑制されていることが明らかとなった。特に、接種と同時期での薬剤処理、およびインフィルトレーション接種という強制的な感染法においても効果を示していることから、事前処理や自然感染に近い噴霧接種ではさらに強い効果が示す可能性がある。
(2)ミナトカモジグサにおけるいもち病菌に対する防除効果の検討
次に、ミナトカモジグサ(Brachypodium distachyon)を3週間栽培し(長日条件(20時間light/4時間dark))、葉身を切葉にして水で湿らせた濾紙を敷いたシャーレに置き、100μMの各化合物を含む溶液を噴霧処理した。陰性対照実験として化合物の溶媒であるDMSO、陽性対照実験としてサリチル酸(100μM)を加えた菌懸濁液を使用した。24時間後にいもち病菌(Magnaporthe oryzae strain Guy11)の胞子懸濁液を滴下接種した。
5日後の病斑面積を測定した結果、図3に示すように、CP7_03、CP7_05、CP7_06、CP7_08、CP7_9、CP7_10の添加によってミナトカモジグサにおけるいもち病菌の感染度合いが抑制されていることが明らかとなった。
(3)ミナトカモジグサにおける紋枯病菌に対する防除効果の検討
ミナトカモジグサ(Brachypodium distachyon)を3週間栽培し(長日条件(20時間light/4時間dark))、葉身を切葉にして水で湿らせた濾紙を敷いたシャーレに置き、100μMの各化合物を含む溶液を噴霧処理した。陰性対照実験として化合物の溶媒であるDMSO、対照実験としてサリチル酸(100μM)を加えた菌懸濁液を使用した。24時間後に紋枯病菌(Rhizoctonia solani AG-1)の菌糸プラグを接種した。接種3日後に切葉の葉身を2mLチューブに移し、ジルコニアボール(φ3mm)4粒を加えて液体窒素で凍結した。その後、破砕機(バイオメディカルサイエンス シェイクマスターネオ)で葉を3分間粉砕した。このサンプルからゲノムDNAを抽出した (Takara NucleoSpin PlantII kit)。ミナトカモジグサのFIM遺伝子、および紋枯病菌のribosomal DNA (rDNA)遺伝子の特異的プライマーを用いてPCR実験を行った。
ミナトカモジグサのFIM遺伝子に対する紋枯病菌のrDNA遺伝子量のコントロールに対する相対値で葉内における菌の増殖量を評価した結果、図4に示すように、コントロールとして用いたサリチル酸に加え、CP7_01、CP7_03、CP7_04、CP7_05、CP7_06、CP7_09の添加によってミナトカモジグサにおける紋枯病菌の増殖が抑制されていることが明らかとなった。加えて、今回サリチル酸によって紋枯病菌抵抗性が付与されることが新たに発見された。
紋枯病菌は多くの植物種に感染する殺生菌として知られている。同じ殺生菌である灰色かび病菌では、植物ホルモンであるジャスモン酸やエチレンによって病害抵抗性が誘導されることが知られており、紋枯病菌抵抗性についても同様の研究が進められてきた。しかしながら、今回サリチル酸によって紋枯病菌抵抗性が付与されることが発見され、紋枯病に対する抵抗性誘導手法の適用の有効性が示された。ただ興味深いことに、サリチル酸経路を活性化すると考えられている市販の各種抵抗性誘導剤はイネ紋枯病に対して効果がなく適用範囲外となっている。従って、本発明で見出した環状ペプチド剤はサリチル酸経路の一部を活性化することで紋枯病抵抗性を発揮しているものの、その作用は既存の抵抗性誘導剤のそれらとは異なると考えられる。
<実施例3:候補化合物が植物の生育に与える影響の確認>
各候補化合物が植物の生育に与える影響を調べた。方法としては、滅菌したシロイヌナズナ種子を96穴プレート数粒ずつ分注し、50μMの化合物を溶解した1/2×MS液体培地を添加して、長日光条件下で培養してその生育を観察した。その結果、図5に示すように、いずれの化合物もシロイヌナズナの発芽及び緑化を抑制しなかった。
<実施例4:候補化合物が斑葉細菌病菌の生育に与える影響の確認>
各候補化合物が斑葉細菌病菌の生育に与える影響、すなわち、各候補化合物が斑葉細菌病菌に対して抗菌活性等を有しているかを調べた。方法としては、4μLのPst懸濁液を96穴プレートに分注し、終濃度100μMになるように化合物を溶解した96μLのKing's B培地を添加して、28℃・100rpmで振盪培養した。対照実験として化合物の溶媒であるDMSO を添加したKing's B培地を使用した。21時間の振盪培養の後に培養液の吸光度(OD600)を測定した。その結果、図6に示すように、いずれの化合物も斑葉細菌病菌の生育を阻害しなかった。
<実施例5:候補化合物が紋枯病菌の生育に与える影響の確認>
各候補化合物が紋枯病菌の生育に与える影響すなわち、各候補化合物が紋枯病菌に対して抗菌活性等を有しているかを調べた。方法としては、終濃度100μMになるように化合物を溶解したPDA培地に紋枯病菌の菌糸プラグを接種して、25℃・暗所で24時間静置培養してその生育を観察した。対照実験として化合物の溶媒であるDMSO、真菌に対する抗生物質であるハイグロマイシンを添加したPDA培地を使用した。その結果、図7に示すように、いずれの化合物も紋枯病菌の生育を阻害しなかった。
<実施例6:候補化合物がサリチル酸配糖化酵素の活性に与える影響の確認>
本発明者らは以前に植物免疫活性化剤の作用の1つとしてサリチル酸に糖分子を付加して不活性化する酵素を発見した。そこで本発明に係る化合物がシロイヌナズナのサリチル酸配糖化酵素であるUGT76B1の酵素活性に与える影響を調べた。方法としては、終濃度10μM の阻害剤、または対照実験として化合物の溶媒であるDMSOを含む基質を除いた酵素反応液(0.2mM SA, 10mM MES, 40μM, 2mM MgCl2, 0.01% BSA, 0.3μg/mL UGT76B1)を混合し、室温で15分間静置した。基質となるUDP-glucoseを終濃度0.1mM となるように添加することで反応を開始し、37℃で2時間反応させた後、95℃で5分間熱処理して酵素反応を停止させた。SAGの生成量はHPLCによって測定した。その結果、図8に示すように、本発明に係る化合物はいずれもUGT76B1のサリチル酸配糖化活性を抑制しなかった。この結果から、今回得られた候補化合物はサリチル酸代謝抑制とは異なる機構で植物免疫を活性化していると考えられる。

Claims (3)

  1. 下記式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、または(X)で示される化合物。
  2. 請求項に記載の少なくともいずれか1つの化合物を有効成分として含有する植物病害抵抗性誘導剤。
  3. 請求項に記載の植物病害抵抗性誘導剤を植物体に投与または圃場に散布する植物病害防除方法。
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