以下、本発明の実施形態について説明する。
〔保護膜形成用フィルム〕
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、ワーク又は前記ワークを加工して得られる加工物に保護膜を形成するためのものである。この保護膜は、保護膜形成用フィルム、好ましくは硬化した保護膜形成用フィルムから構成される。ワークとしては、例えば、半導体ウエハ等が挙げられ、前記ワークを加工して得られる加工物としては、例えば、半導体チップ等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、ワークが半導体ウエハの場合、保護膜は、半導体ウエハの裏面側(バンプ等の電極が形成されていない側)に形成される。
1.材料
保護膜形成用フィルムは、未硬化の硬化性接着剤を含有することが好ましい。この場合、保護膜形成用フィルムに半導体ウエハ等のワークを重ね合わせた後、保護膜形成用フィルムを硬化させることにより、保護膜をワークに強固に接着することができ、耐久性を有する保護膜をチップ等に形成することができる。
保護膜形成用フィルムは、常温で粘着性を有するか、加熱により粘着性を発揮することが好ましい。これにより、上記のように保護膜形成用フィルムに半導体ウエハ等のワークを重ね合わせるときに両者を貼合させることができる。したがって、保護膜形成用フィルムを硬化させる前に位置決めを確実に行うことができる。
上記のような特性を有する保護膜形成用フィルムを構成する硬化性接着剤は、硬化性成分とバインダーポリマー成分とを含有することが好ましい。硬化性成分としては、熱硬化性成分、エネルギー線硬化性成分、又はこれらの混合物を用いることができるが、熱硬化性成分を用いることが特に好ましい。保護膜形成用フィルムは、後述するような光線透過率を有する場合には、紫外線硬化に不適なものとなり、熱硬化性であることが望ましいからである。
熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びこれらの混合物が好ましく用いられる。
熱硬化性成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ樹脂は、加熱を受けると三次元網状化し、強固な被膜を形成する性質を有する。このようなエポキシ樹脂としては、従来より公知の種々のエポキシ樹脂が用いられ、23℃、1atmで液状(高粘稠液体を含む。)のエポキシ樹脂(以下、「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、23℃、1atmで固形(半固形を含む。)のエポキシ樹脂(以下、「固形エポキシ樹脂」ということがある。)とに大別される。液状エポキシ樹脂を具体的に説明すると、25℃、1atmにおける粘度が40Pa・s以下のエポキシ樹脂をいう。本実施形態においては、これらのうちいずれか一方を用いてもよいが、少なくとも液状エポキシ樹脂を用いることが好ましい。この場合、エポキシ樹脂は液状エポキシ樹脂のみからなるものであってもよいし、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とをブレンドして用いてもよい。
23℃、1atmで液状のエポキシ樹脂としては、分子量300〜500のものが好ましく、特に分子量330〜400のものが好ましい。また、液状エポキシ脂のエポキシ当量は、50〜5000g/eqであることが好ましく、特に1002000g/eqであることが好ましい。
一方、23℃、1atmで固形のエポキシ樹脂としては、分子量1000〜6000のものが好ましく、特に分子量1400〜4000のものが好ましい。また、固形エポキシ樹脂の環球法により測定された軟化点は、50〜150℃であることが好ましく、特に65〜130℃であることが好ましい。さらに、固形エポキシ樹脂のエポキシ当量は、50〜5000g/eqであることが好ましく、特に100〜2000g/eqであることが好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェニルノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエーテル;アニリンイソシアヌレート等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジル型もしくはアルキルグリシジル型のエポキシ樹脂;ビニルシクロヘキサンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−ジシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等のように、分子内の炭素−炭素二重結合を例えば酸化することによりエポキシが導入された、いわゆる脂環型エポキシド等を挙げることができる。その他、ビフェニル骨格、ジシクロヘキサジエン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ナフタレン骨格等を有するエポキシ樹脂を用いることもできる。
これらの中でも、ビスフェノール系グリシジル型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。これらエポキシ樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とをブレンドして用いる場合、液状エポキシ樹脂及び固形エポキシ樹脂の合計含有量に対する液状エポキシ樹脂の含有量の割合は、25質量%以上100質量%未満であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましく、35〜80質量%であることが特に好ましい。液状エポキシ樹脂の含有量の割合が25質量%以上であると、保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の鏡面光沢度を高い値に制御することが容易となり、保護膜の印字視認性をより一層高めることができる。なお、本明細書において、保護膜の「印字視認性」とは、印字加工によって保護膜の表面に形成された凹凸に基づく情報の視認のし易さを意味する。また、所定の波長の光線透過率などを後述する好ましい範囲に制御することが容易となる場合もある。この場合には、ワークの分割加工が容易になる、加工物の赤外線検査が容易になるといった、さらなる効果を享受することが可能となる。液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とをブレンドして用いると、後述する保護膜形成用シートにおいて、加工物を保護膜形成用フィルムとともに剥離シートから分離することが容易となる。
エポキシ樹脂を用いる場合には、助剤として、熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤を併用することが好ましい。熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤とは、室温ではエポキシ樹脂と反応せず、ある温度以上の加熱により活性化し、エポキシ樹脂と反応するタイプの硬化剤である。熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の活性化方法には、加熱による化学反応で活性種(アニオン、カチオン)を生成する方法;室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法;モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤で高温で溶出して硬化反応を開始する方法;マイクロカプセルによる方法等が存在する。
熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、各種オニウム塩や、二塩基酸ジヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、アミンアダクト硬化剤、イミダゾール化合物等の高融点活性水素化合物等を挙げることができる。これら熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のような熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.2〜10質量部、さらに好ましくは0.3〜5質量部の割合で用いられる。
フェノール系樹脂としては、アルキルフェノール、多価フェノール、ナフトール等のフェノール類とアルデヒド類との縮合物などが特に制限されることなく用いられる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、o−クレゾールノボラック樹脂、p−クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール樹脂、ポリパラビニルフェノール樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、あるいはこれらの変性物等が用いられる。
これらのフェノール系樹脂に含まれるフェノール性水酸基は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と加熱により容易に付加反応して、耐衝撃性の高い硬化物を形成することができる。このため、エポキシ樹脂とフェノール系樹脂とを併用してもよい。
バインダーポリマー成分は、保護膜形成用フィルムに適度なタックを与え、保護膜形成用シートの操作性を向上させることができる。バインダーポリマーの重量平均分子量は、好ましくは5万〜200万、より好ましくは10万〜150万、特に好ましくは20万〜100万の範囲にある。なお、本明細書におけるバインダーポリマー成分の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値であり、測定方法の詳細は後述する実施例にて示す。
バインダーポリマーの重量平均分子量が低過ぎると、保護膜形成用フィルムのフィルム形成が不十分となり、高過ぎると他の成分との相溶性が悪くなり、結果として均一なフィルム形成が妨げられる。このようなバインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系ポリマー等が用いられ、特にアクリル系ポリマーが好ましく用いられる。
バインダーポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系ポリマーとしては、例えば、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導される構成単位と、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体から誘導される構成単位と、からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。他の類似用語についても同様である。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル基、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル((メタ)アクリル酸イソステアリル)等の、アルキル基が鎖状である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。
上記の中でもメタクリル酸グリシジル等を構成単位として用いてアクリル系ポリマーにグリシジル基を導入すると、前述した熱硬化性成分としてのエポキシ樹脂との相溶性が向上し、保護膜形成用フィルムの硬化後のガラス転移温度(Tg)が高くなり、耐熱性が向上する。また、上記の中でもアクリル酸2−ヒドロキシエチル等を構成単位として用いてアクリル系ポリマーに水酸基を導入すると、ワークへの密着性や粘着物性をコントロールすることができる。
バインダーポリマーとしてアクリル系ポリマーを使用した場合における前記ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10万以上であり、より好ましくは15万〜100万である。アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは−70〜0℃程度であり、常温(23℃)においては粘着性を有する。
前記硬化性接着剤において、熱硬化性成分とバインダーポリマー成分との配合比率は、バインダーポリマー成分100質量部に対して、熱硬化性成分を、好ましくは50〜1500質量部、より好ましくは70〜1000質量部、さらに好ましくは80〜800質量部配合する。このような割合で熱硬化性成分とバインダーポリマー成分とを配合すると、硬化前には適度なタックを示し、貼付作業を安定して行うことができ、また硬化後には、被膜強度に優れた保護膜が得られる。
保護膜形成用フィルムはフィラーを含有し、保護膜形成用フィルムが含有するフィラーの平均粒径は0.2μm以上である。これにより、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用フィルムから形成された保護膜は、波長550nmの光線透過率が10%以下となり、例えば、顔料等の着色剤の使用量が少なくても、又は着色剤を使用しなくても、光線を透過させ難いものとなる。このように、保護膜の光線透過率が低いことで、保護膜を備えた前記ワーク又は加工物を、その保護膜側(裏側)から目視観察したきに、ワーク又は加工物の裏面に残っている研削痕が、保護膜によって隠蔽され、ほとんど視認できなくなる。すなわち、前記保護膜は、これを備えたワーク又は加工物の外観を向上させることができる。
なお、本明細書において、フィラーの1μm未満の平均粒径は、特に断りのない限り、粒度分布測定装置(日機装社製「ナノトラックWave−UT151」)を使用して、動的光散乱法により測定した値である。また、フィラーの1μm以上の平均粒径は、特に断りのない限り、粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックMT3000II」)を使用して、レーザー回折・散乱法により測定した値である。
また、保護膜形成用フィルムがフィラーを含有すると、硬化後の保護膜の硬度を高く維持することができるとともに、耐湿性を向上させることができる。さらには、硬化後の保護膜の熱膨張係数を半導体ウエハの熱膨張係数に近づけることができ、これによって加工途中の半導体ウエハの反りを低減することができる。
上記の平均粒径の条件を満たす限り、フィラーの具体的な種類は限定されない。フィラーとしては、例えば、結晶シリカ、溶融シリカ、合成シリカ等のシリカや、アルミナ、ガラスバルーン等の無機フィラーが挙げられる。これらの中でも、フィラーはシリカが好ましく、合成シリカがより好ましく、特に半導体装置の誤作動の要因となるα線の線源を極力除去したタイプの合成シリカが最適である。フィラーの形状としては、球形、針状、不定形等が挙げられるが、球形であることが好ましく、特に真球形であることが好ましい。フィラーが球形又は真球形であると、光線の乱反射が生じ難く、保護膜形成用フィルムの光線透過率のスペクトルのプロファイルの制御が容易となる。
また、保護膜形成用フィルムに添加するフィラーとしては、上記無機フィラーの他にも、機能性のフィラーも挙げられる。機能性のフィラーとしては、例えば、ダイボンド後の導電性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、セラミック、又はニッケル、アルミニウム等を銀で被覆した導電性フィラーや、熱伝導性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、シリコン、ゲルマニウム等の金属材料やそれらの合金等の熱伝導性フィラーなどが挙げられる。
上記のように、フィラーの平均粒径は、0.2μm以上であり、0.25μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましい。一方、フィラーの平均粒径の上限値は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されないが、例えば、0.7μm、0.65μm、0.6μm及び0.55μm等のいずれかから選択できる。例えば、フィラーの平均粒径が0.4μm以下であると、保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の鏡面光沢度を高めることが容易となり、保護膜の印字視認性を高めることができる。また、所定の波長の光線透過率などを後述する好ましい範囲に制御することが容易となる場合もある。この場合には、ワークの分割加工が容易になる、加工物の赤外線検査が容易になるといった、さらなる効果を享受することが可能となる。
保護膜形成用フィルム中におけるフィラーの配合量(含有量)は、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以上60質量%以下であることが特に好ましく、50質量%以上60質量%以下であることが最も好ましい。フィラーの配合量が10質量%以上であると、ワーク又は加工物の外観を向上させる効果がより高くなる。また、保護膜形成用フィルムの所定の波長の光線透過率を後述する好ましい範囲に制御することが容易となる場合もある。一方、フィラーの配合量が80質量%以下であることにより、保護膜の印字視認性を高めることが容易となったり、保護膜形成用フィルムの所定の波長の光線透過率を後述する好ましい範囲に制御することが容易となったりする。
フィラーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
保護膜形成用フィルムは、着色剤を含有していてもよい。
着色剤としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものを使用することができるが、光線透過率の制御性を高める観点から、着色剤は有機系着色剤を含有することが好ましい。着色剤の化学的安定性(具体的には、溶出しにくさ、色移りの生じにくさ、経時変化の少なさが例示される。)を高める観点から、着色剤は顔料を含むことが好ましく、顔料からなることがより好ましい。したがって、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムが含有する着色剤は、有機系顔料を含むことが好ましく、有機系顔料からなることがより好ましい。
有機系着色剤である有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色等が挙げられる。
有機系着色剤は、1種類の材料から構成されていてもよいし、複数種類の材料から構成されていてもよい。保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の印字視認性を高めることを容易とする観点や、保護膜形成用フィルムの所定の波長の光線透過率を後述する好ましい範囲に制御することを容易とする観点から、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムが含有する着色剤は複数種類の材料から構成されていることが好ましい。
例えば、黄色系の顔料であるイソインドリノン系色素、青色系の顔料であるフタロシアニン系色素、及び赤色系の顔料であるジケトピロロピロールを適切な比率で配合すれば、保護膜形成用フィルムの所定の波長の光線透過率を後述する好ましい範囲に制御することが容易となる場合もある。
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
本実施形態に係る保護膜形成用フィルム中における着色剤は、有機系着色剤及び無機系着色剤から構成されていてもよい。
保護膜形成用フィルム中における着色剤の配合量(含有量)は、保護膜形成用フィルムの厚さも考慮しつつ、保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の印字視認性を高めることが容易となるように適宜設定されることが好ましく、保護膜形成用フィルムの所定の波長の光線透過率などを後述する好ましい範囲に制御することも容易となるように設定されることがより好ましい。保護膜形成用フィルム中における着色剤の配合量が過度に高い場合には、保護膜形成用フィルムの他の物性、例えばワークへの接着性が低下する傾向がみられる場合もあるため、この点も考慮して、上記の配合量を設定することが好ましい。
本実施形態においては、保護膜形成用フィルム中における着色剤の配合量が、例えば、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.7質量%以下等の少量であっても、後述するように保護膜形成用フィルムの波長550nmの光線透過率が十分に低くなり、半導体ウエハ等のワークや半導体チップ等の加工物の外観が優れたものとなる。
着色剤の平均粒径は限定されない。着色剤の平均粒径は、保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の印字視認性を高めるように設定されることが好ましく、保護膜形成用フィルムの所定の波長の光線透過率を後述する好ましい範囲に制御することも容易になるように設定することがさらに好ましい。着色剤の平均粒径が過度に大きい場合には、波長によらず光線透過率を高めにくくなる傾向がみられることがある。着色剤の平均粒径が過度に小さい場合には、そのような着色剤の入手が困難となったり取扱い性が低下したりするといった副次的な問題が生じる可能性が高まる。したがって、着色剤の平均粒径は、1〜500nmであることが好ましく、3〜100nmであることがより好ましく、5〜50nmであることがさらに好ましい。なお、本明細書における着色剤の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装社製,ナノトラックWave−UT151)を使用して、動的光散乱法により測定した値とする。
着色剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
保護膜形成用フィルムは、カップリング剤を含有してもよい。カップリング剤を含有することにより、保護膜形成用フィルムの硬化後において、保護膜の耐熱性を損なわずに、保護膜とワークとの接着性・密着性を向上させることができるとともに、耐水性(耐湿熱性)を向上させることができる。カップリング剤としては、その汎用性とコストメリットなどからシランカップリング剤が好ましい。
カップリング剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。
シランカップリング剤は、1種を単独で、又は2種以上混合して使用することができる。
保護膜形成用フィルムは、硬化前の凝集力を調節するために、有機多価イソシアナート化合物、有機多価イミン化合物、有機金属キレート化合物等の架橋剤を含有してもよい。また、保護膜形成用フィルムは、静電気を抑制し、チップの信頼性を向上させるために、帯電防止剤を含有してもよい。さらに、保護膜形成用フィルムは、保護膜の難燃性能を高め、パッケージとしての信頼性を向上させるために、リン酸化合物、ブロム化合物、リン系化合物等の難燃剤を含有してもよい。
架橋剤、帯電防止剤及び難燃剤は、いずれも1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
保護膜形成用フィルムの厚さは、保護膜としての機能を効果的に発揮させるために、3〜300μmであることが好ましく、5〜200μmであることがより好ましく、7〜100μmであることがさらに好ましい。
2.物性
(1)透過率
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、波長550nmの光線透過率が10%以下である。本明細書における光線透過率は、いずれの波長(例えば、後述する波長1064nm、1250nm)においても、積分球を使用せずに測定した値とし、測定器具としては分光光度計を使用する。
ワークが半導体チップである場合を例とすれば、半導体チップの裏面には、通常、半導体ウエハに対して施されたバックグラインド加工による研削痕が残っている。可視光領域のほぼ中心である波長550nmの光線透過率が上記のように10%以下であると、保護膜形成用フィルムは、可視光線を透過し難いものとなる。したがって、上記の研削痕は、保護膜形成用フィルム(保護膜)によって隠蔽され、目視によって殆ど見えなくなる。これにより、半導体ウエハ等のワークや半導体チップ等の加工物の外観が優れたものとなる。
上記研削痕隠蔽性の観点から、保護膜形成用フィルムの波長550nmの光線透過率は、9.5%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましく、8.5%以下であることがさらに好ましい。なお、保護膜形成用フィルムの波長550nmの光線透過率の下限値は、研削痕隠蔽性の観点からは特に限定されない。一方で、保護膜形成用フィルムについて、波長550nmの光線透過率を過度に低下させると、例えば、後述する波長1064nmの光線透過率を50%以上とすることが困難となる場合もあるため、通常、波長550nmの光線透過率の下限値は、0.1%程度であることが好ましく、0.5%程度であることがより好ましい。
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、波長1064nmの光線透過率が50%以上であると、次に説明する改質層破壊式引張り分割による分割加工が容易となる。本明細書において、この改質層破壊式引張り分割による加工のし易さを、「改質破壊加工性」ともいう。
半導体ウエハ等のワークから半導体チップ等の片状体からなる加工物を製造する際に、従来は、ワークに洗浄等を目的とした液体を吹き付けながら回転刃でワークを切断して片状体を得るブレードダイシングによる分割加工が行われることが一般的であった。しかしながら、近年は、乾式で片状体への分割が可能な、改質層破壊式引張り分割による分割加工が採用されてきている。このような分割加工では、ワーク内に設定された焦点に集束されるように赤外域のレーザー光を照射して、前記ワーク内部に改質層を形成し、前記改質層が形成されたワークに力を付与して、前記改質層が形成されたワークを分割して複数の片状体を加工物として得る。このような分割加工の方法を具体的に例示すると、ワークの表面近傍が受けるダメージを最小限にしながらワーク内部に予備的に改質層が形成されるように、開口度(NA)の大きなレーザー光を照射し、その後エキスパンド工程等において、ワークに力を加えて片状体を加工物として得る。改質層破壊式引張り分割によるチップの製造方法としては、浜松ホトニクス社が提唱するステルスダイシング(登録商標)法等が挙げられる。
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムの波長1064nmの光線透過率は、改質破壊加工性を高める観点においては、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、65%以上であることが特に好ましい。本実施形態に係る保護膜形成用フィルムの波長1064nmの光線透過率の上限値は、改質破壊加工性を高める観点からは限定されないが、例えば、85%であることが好ましい。
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムの波長1250nmの光線透過率は、40%以上であることが好ましい。保護膜形成用フィルムの波長1250nmの光線透過率が40%以上であることにより、次に説明する赤外線検査が容易となる。
半導体ウエハをダイシングして得られる半導体チップ等においては、加工時に生じた応力によって発生したクラック、回転刃等の加工ツールや半導体ウエハ等のワークにおける他の部分(半導体チップ等を含む。)との衝突等によって発生した欠け等(本明細書において、これらを総称して「クラック等」ということもある。)を有していることがある。しかしながら、形成されている保護膜の光線透過率によっては、半導体チップの保護膜側に発生したクラック等は、目視によって発見することができない。看過できないクラック等が発生した半導体チップは、製品歩留まりを低下させてしまう。半導体チップのサイズが小さくなると、この看過できないクラック等のサイズも小さくなる傾向がある。
これに対して、上記のように保護膜形成用フィルムの波長1250nmの光線透過率が40%以上であると、保護膜形成用フィルムの赤外線の透過性が特に良好になり、保護膜形成用フィルム(又は前記保護膜形成用フィルムによって形成された保護膜)側から赤外線を照射する赤外線検査を行うことができる。これにより、保護膜形成用フィルム(保護膜)を介して半導体チップ等の加工物におけるクラック等を発見することができ、製品歩留まりを向上させることができる。
保護膜形成用フィルムの赤外線の透過性を高めて上記の検査を容易にする観点から、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムの波長1250nmの光線透過率は、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、55%以上であることが特に好ましい。本実施形態に係る保護膜形成用フィルムの波長1250nmの光線透過率の上限値は特に限定されない。保護膜を形成した加工物(半導体チップ等)の使用時には、保護膜形成用フィルムの波長1250nmの光線透過率を90%以下とすることにより、外部からの赤外線の影響を受けやすい加工物の誤作動を防ぐことができる。
ここで、本実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、単層からなるものであってもよいし、複数層からなるものであってもよいが、上記の光線透過率の制御の容易性及び製造コストの面から単層からなることが好ましい。保護膜形成用フィルムが複数層からなる場合には、光線透過率の制御の容易性の面から、前記複数層全体として上記の光線透過率の条件を満たすことが好ましい。
なお、保護膜形成用フィルムが未硬化の硬化性接着剤からなる場合、前記保護膜形成用フィルムの光線透過率は、硬化前であっても硬化後であっても殆ど変化しない。したがって、硬化前の保護膜形成用フィルムが上記のいずれかの波長についての光線透過率の条件を満たせば、その保護膜形成用フィルムが硬化して得られた保護膜も前記波長の光線透過率の条件を満たすことができる。
(2)60度鏡面光沢度Gs(60°)
本実施形態に係る保護膜形成用フィルムから形成された保護膜は、保護膜の印字視認性を高めることが容易となる観点では、JIS Z8741:1997(ISO 2813:1994)で規定される60度鏡面光沢度Gs(60°)が40%以上であることが好ましい。本明細書において、60度鏡面光沢度Gs(60°)は、日本電色工業社製光沢計「VG 2000」を用いて測定された値を意味する。保護膜の印字視認性をより安定的に高める観点から、保護膜の60度鏡面光沢度Gs(60°)は50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。保護膜の印字視認性を高める観点からは、保護膜の60度鏡面光沢度Gs(60°)の上限値は特に限定されないが、例えば、95%であることが好ましい。
〔保護膜形成用シート2〕
図1は本発明の一実施形態に係る保護膜形成用シートの断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る保護膜形成用シート2は、保護膜形成用フィルム1と、保護膜形成用フィルム1の一方の面(図1では下側の面)に積層された剥離シート21とを備えて構成される。ただし、剥離シート21は、保護膜形成用シート2の使用時に剥離されるものである。
剥離シート21は、保護膜形成用シート2が使用されるまでの間、保護膜形成用フィルム1を保護するものであり、必ずしもなくてもよい。
剥離シート21の構成は任意であり、フィルム自体が保護膜形成用フィルム1に対し剥離性を有するプラスチックフィルム、及びプラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、及びポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系のもの等を用いることができるが、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系剥離剤が好ましい。
剥離シート21の厚さについては特に制限はないが、通常、20〜250μm程度である。
上記のような剥離シート21は、保護膜形成用フィルム1の他方の面(図1では上側の面)にも積層されてもよい。この場合は、一方の剥離シート21の剥離力を大きくして重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シート21の剥離力を小さくして軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
本実施形態に係る保護膜形成用シート2を製造するには、剥離シート21の剥離面(剥離性を有する面;通常は剥離処理が施された面であるが、これに限定されない)に、保護膜形成用フィルム1を形成する。具体的には、保護膜形成用フィルム1を構成する硬化性接着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する保護膜形成用フィルム用の塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって剥離シート21の剥離面に塗布して乾燥させて、保護膜形成用フィルム1を形成する。
本実施形態に係る保護膜形成用シート2を用いて、一例としてワークとしての半導体ウエハから保護膜が形成されたチップを製造する方法を以下に説明する。
最初に、表面に回路が形成され、バックグラインド加工された半導体ウエハの裏面に、保護膜形成用シート2の保護膜形成用フィルム1を貼付する。このとき、所望により保護膜形成用フィルム1を加熱して、粘着性を発揮させてもよい。
次いで、保護膜形成用フィルム1から剥離シート21を剥離する。その後、保護膜形成用フィルム1を硬化させて保護膜を形成し、保護膜が形成された半導体ウエハを得る。保護膜形成用フィルム1が熱硬化性接着剤の場合には、保護膜形成用フィルム1を所定温度で適切な時間加熱すればよい。なお、保護膜形成用フィルム1の硬化は、次に説明するレーザー印字及び分割加工のいずれかの後に行ってもよい。
上記のようにして保護膜付き半導体ウエハが得られたら、所望により、その保護膜に対してレーザー光を照射し、レーザー印字を行う。レーザー印字は、次に説明する分割加工の後に行ってもよい。
分割加工はブレードダイシングであっても、改質層破壊式引張り分割であってもよい。後者の場合には、印字された保護膜が形成された半導体ウエハを、分割加工用レーザー照射装置に設置し、保護膜に覆われている半導体ウエハの表面の位置を検出したのち、加工用レーザーを用いて、半導体ウエハ内に改質層を形成する。
こうして得られた改質層がその内部に形成された半導体ウエハ及び保護膜からなる積層体の保護膜側の面にダイシングシートを貼付する。そして、ダイシングシートを伸長させるエキスパンド工程を実施することにより、保護膜付き半導体ウエハに力(主面内方向の引張力)を付与する。その結果、ダイシングシートに貼着する上記の積層体は分割されて、保護膜が形成されたチップが得られる。その後は、ピックアップ装置を用いて、保護膜が形成されたチップをダイシングシートからピックアップする。
上記のようにして得られた保護膜が形成されたチップ等の加工物は、保護膜の構成によっては、印字視認性に優れるものとなり、また、保護膜を介してチップ等の加工物を赤外線検査し易く、クラック等を有する加工物を見出し易いものとなる。さらに、分割加工が行われる前のワークについても、保護膜形成用フィルム又は保護膜を介しての赤外線検査が容易となることもある。
〔保護膜形成用シート3,3A〕
図2は本発明の他の一実施形態に係る保護膜形成用シートの断面図である。図2に示すように、本実施形態に係る保護膜形成用シート3は、基材41の一方の面側に粘着剤層42が積層されてなる粘着シート4と、粘着シート4の粘着剤層42側に積層された保護膜形成用フィルム1と、保護膜形成用フィルム1における粘着シート4とは反対側の周縁部に積層された治具用粘着剤層5とを備えて構成される。治具用粘着剤層5は、保護膜形成用シート3をリングフレーム等の治具に接着するための層である。
保護膜形成用シート3は、ワークを加工するときに、前記ワークに貼付されて前記ワークを保持するとともに、前記ワーク又は前記ワークを加工して得られる加工物に保護膜を形成するために用いられる。この保護膜は、保護膜形成用フィルム1、好ましくは硬化した保護膜形成用フィルム1から構成される。
保護膜形成用シート3は、一例として、ワークとしての半導体ウエハのダイシング加工時に半導体ウエハを保持するとともに、ダイシングによって得られる半導体チップに保護膜を形成するために用いられるが、これに限定されるものではない。この場合における保護膜形成用シート3の粘着シート4は、通常、ダイシングシートと称される。
1.粘着シート
本実施形態に係る保護膜形成用シート3の粘着シート4は、基材41と、基材41の一方の面に積層された粘着剤層42とを備えて構成される。
1−1.基材
粘着シート4の基材41は、ワークの加工、例えば半導体ウエハのダイシング及びエキスパンディングに適するものであれば、その構成材料は特に限定されず、通常は樹脂系の材料を主材とするフィルム(以下「樹脂フィルム」という。)から構成される。
樹脂フィルムの具体例として、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルム等が挙げられる。またこれらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムのような変性フィルムも用いられる。上記の基材41はこれらの1種からなるフィルムでもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた積層フィルムであってもよい。
上記の中でも、環境安全性、コスト等の観点から、前記樹脂フィルムは、ポリオレフィン系フィルムが好ましく、その中でも耐熱性に優れるポリプロピレンフィルムが好ましい。ポリプロピレンフィルムであれば、粘着シート4のエキスパンド適性やチップのピックアップ適性を損なうことなく、基材41に耐熱性を付与することができる。基材41がかかる耐熱性を有することにより、保護膜形成用シート3をワークに貼付した状態で保護膜形成用フィルム1を熱硬化させた場合にも、粘着シート4の弛みの発生を抑制することができる。
基材41は、その表面に積層される粘着剤層42との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等による表面処理、又はプライマー処理を施すことができる。前記酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理等が挙げられ、前記凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶射処理法等が挙げられる。
基材41は、上記樹脂フィルム中に、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤を含有したものでもよい。
基材41の厚さは、保護膜形成用シート3が使用される各工程において適切に機能できる限り、特に限定されない。好ましくは20〜450μm、より好ましくは25〜400μm、特に好ましくは50〜350μmの範囲である。
本実施形態における粘着シート4の基材41の破断伸度は、23℃、相対湿度50%のときに測定した値として100%以上であることが好ましく、200〜1000%であることが特に好ましい。ここで、破断伸度はJIS K7161:1994(ISO 527−1 1993)に準拠した引張り試験における、試験片破壊時の試験片の長さの元の長さに対する伸び率である。上記の破断伸度が100%以上である基材41は、エキスパンド工程の際に破断し難く、ワークを切断して形成したチップを離間し易いものとなる。
本実施形態における粘着シート4の基材41の25%ひずみ時引張応力は5〜15N/10mmであることが好ましく、最大引張応力は15〜50MPaであることが好ましい。ここで25%ひずみ時引張応力及び最大引張応力はJIS K7161:1994に準拠した試験により測定される。25%ひずみ時引張応力が5N/10mm以上、最大引張応力が15MPa以上であると、保護膜形成用フィルム1にワークを貼着した後、リングフレーム等の枠体に固定した際、基材2に弛みが発生することが抑制され、搬送エラーが生じることを防止することができる。一方、25%ひずみ時引張応力が15N/10mm以下、最大引張応力が50MPa以下であると、エキスパンド工程時にリングフレームから保護膜形成用フィルム1自体が剥がれたりすることが抑制される。なお、上記の破断伸度、25%ひずみ時引張応力、最大引張応力は基材41における原反の長尺方向について測定した値を指す。
1−2.粘着剤層
本実施形態に係る保護膜形成用シート3の粘着シート4が備える粘着剤層42は、非エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよいし、エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよい。非エネルギー線硬化性粘着剤としては、所望の粘着力及び再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、保護膜形成用フィルム1との密着性が高く、ダイシング工程等にてワーク又は加工物の脱落を効果的に抑制することのできるアクリル系粘着剤が好ましい。
一方、エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線照射により粘着力が低下するため、ワーク又は加工物と粘着シート4とを分離させたいときに、エネルギー線照射することにより、これらを容易に分離させることができる。
粘着剤層42がエネルギー線硬化性粘着剤からなる場合、保護膜形成用シート3における粘着剤層42は硬化していることが好ましい。エネルギー線硬化性粘着剤を硬化した材料は、通常、弾性率が高く、かつ表面の平滑性が高いため、かかる材料からなる硬化部分に接触している保護膜形成用フィルム3を硬化させて保護膜を形成すると、保護膜の前記硬化部分と接触している表面は、平滑性(グロス)が高くなり、チップの保護膜として美観に優れたものとなる。また、表面平滑性の高い保護膜にレーザー印字が施されると、その印字の視認性が向上する。
粘着剤層42を構成するエネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、エネルギー線硬化性を有しないポリマーとエネルギー線硬化性の多官能モノマー及び/又はオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合について、以下説明する。
エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(a)(以下「エネルギー線硬化型重合体(a)」という場合がある。)であることが好ましい。このエネルギー線硬化型重合体(a)は、官能基含有モノマー単位を有する(メタ)アクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものが好ましい。
アクリル系共重合体(a1)は、例えば、官能基含有モノマーから誘導される構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマー又はその誘導体から誘導される構成単位と、からなるものが好ましい。
アクリル系共重合体(a1)の構成単位となる前記官能基含有モノマーは、例えば、重合性の二重結合と、水酸基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基と、を分子内に有するモノマーであることが好ましい。
前記官能基含有モノマーのさらに具体的な例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
アクリル系共重合体(a1)を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が用いられる。これらの中でも、より好ましくは、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレートであり、そのさらに具体的な例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであれば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル基、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル((メタ)アクリル酸イソステアリル)等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系共重合体(a1)は、前記官能基含有モノマーから誘導される構成単位を好ましくは3〜100質量%、より好ましくは5〜40質量%の割合で含有し、(メタ)アクリル酸エステルモノマー又はその誘導体から誘導される構成単位を好ましくは0〜97質量%、より好ましくは60〜95質量%の割合で含有してなる。
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマー又はその誘導体とを、常法で共重合させることにより得られるが、これらモノマーの他にも、ジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等の他のモノマーが共重合されてもよい。
前記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、エネルギー線硬化型重合体(a)が得られる。
不飽和基含有化合物(a2)が有する前記基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、前記官能基が水酸基、アミノ基又は置換アミノ基の場合、前記基としてはイソシアネート基又はエポキシ基が好ましく、前記官能基がエポキシ基の場合、前記基としてはアミノ基、カルボキシル基又はアジリジニル基が好ましい。
また、不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合が、1分子毎に好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜2個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
不飽和基含有化合物(a2)は、前記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマー100当量当たり、通常10〜100当量、好ましくは20〜95当量の割合で用いられる。
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、前記基と前記官能基との組合せに応じて、反応温度、反応時の圧力、溶媒、反応時間、触媒の使用の有無、触媒を使用する場合にはその種類等を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する前記官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の前記基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
エネルギー線硬化型重合体(a)の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましく、15万〜150万であることがより好ましく、20万〜100万であることがさらに好ましい。なお、本明細書におけるエネルギー線硬化型重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合であっても、エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー(b)をさらに含有してもよい。
エネルギー線硬化性のモノマー及びオリゴマーは、いずれも1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー(b)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
上記のエネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー(b)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類;ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー(b)を配合する場合、エネルギー線硬化性粘着剤中におけるエネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー(b)の含有量は、5〜80質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。
ここで、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤(c)を添加することが好ましく、この光重合開始剤(c)の使用により、重合硬化時間及び光線照射量を少なくすることができる。
光重合開始剤(c)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤(c)は、エネルギー線硬化型共重合体(a)100質量部(エネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー(b)を配合する場合には、エネルギー線硬化型共重合体(a)並びにエネルギー線硬化性のモノマー及び/又はオリゴマー(b)の合計量100質量部)に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜6質量部の範囲の量で用いられる。
エネルギー線硬化性粘着剤においては、上記成分以外にも、適宜他の成分を配合してもよい。前記他の成分としては、例えば、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分又はオリゴマー成分(d)、架橋剤(e)等が挙げられる。
前記他の成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分又はオリゴマー成分(d)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3000〜250万のポリマー又はオリゴマーが好ましい。
架橋剤(e)としては、エネルギー線硬化型共重合体(a)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアナート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等が挙げられる。
これらのエネルギー線硬化性を有しないポリマー成分又はオリゴマー成分(d)、架橋剤(e)をエネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、粘着剤層42について、硬化前における粘着性及び剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性等を改善し得る。これら他の成分の配合量は特に限定されず、エネルギー線硬化型共重合体(a)100質量部に対して、好ましくは0〜40質量部の範囲で適宜決定される。
次に、エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマー及び/又はオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分を使用できる。エネルギー線硬化性樹脂組成物中におけるエネルギー線硬化性を有しないポリマー成分の含有量は、20〜99.9質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。
エネルギー線硬化性の多官能モノマー及び/又はオリゴマーとしては、前述の成分(b)と同じものが選択される。
エネルギー線硬化性粘着剤において、エネルギー線硬化性の多官能モノマー及びオリゴマーの総配合量は、前記ポリマー成分の配合量100質量部に対して、10〜150質量部であること好ましく、25〜100質量部であることがより好ましい。
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマー及び/又はオリゴマーとの混合物を主成分とする場合においても、上記と同様に、光重合開始剤(c)や架橋剤(e)を適宜配合することができる。
粘着剤層42の厚さは、保護膜形成用シート3が使用される各工程において適切に機能できる限り、特に限定されない。具体的には、粘着剤層42の厚さは、1〜50μmであることが好ましく、2〜30μmであることがより好ましく、3〜20μmであることがさらに好ましい。
治具用粘着剤層5を構成する粘着剤としては、所望の粘着力及び再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、治具用粘着剤層5を構成する粘着剤としては、リングフレーム等の治具との密着性が高く、ダイシング工程等において、リングフレーム等から保護膜形成用シート3が剥がれることを効果的に抑制することのできるアクリル系粘着剤が好ましい。なお、治具用粘着剤層5の厚さ方向の途中には、芯材としての基材が介在していてもよい。
治具用粘着剤層5の厚さは、リングフレーム等の治具に対する接着性の観点から、5〜200μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。
2.保護膜形成用シート3の製造方法
保護膜形成用シート3は、好ましくは、保護膜形成用フィルム1を含む第1の積層体と、粘着シート4を含む第2の積層体とを別々に作製した後、第1の積層体及び第2の積層体を使用して、保護膜形成用フィルム1と粘着シート4とを積層することにより製造することができるが、これに限定されるものではない。
第1の積層体を製造するには、第1の剥離シートの剥離面に、保護膜形成用フィルム1を形成する。具体的には、保護膜形成用フィルム1を構成する硬化性接着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する保護膜形成用フィルム用の塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって第1の剥離シートの剥離面に塗布して乾燥させて、保護膜形成用フィルム1を形成する。次に、保護膜形成用フィルム1の露出面に第2の剥離シートの剥離面を重ねて圧着し、2枚の剥離シートに保護膜形成用フィルム1が挟持されてなる積層体(第1の積層体)を得る。
この第1の積層体においては、所望によりハーフカットを施し、保護膜形成用フィルム1(及び第2の剥離シート)を所望の形状、例えば、円形等にしてもよい。この場合、ハーフカットにより生じた保護膜形成用フィルム1及び第2の剥離シートの余分な部分は、適宜除去すればよい。
一方、第2の積層体を製造するには、第3の剥離シートの剥離面に、粘着剤層42を構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する粘着剤層用の塗布剤を塗布し乾燥させて粘着剤層42を形成する。その後、粘着剤層42の露出面に基材41を圧着し、基材41及び粘着剤層42からなる粘着シート4と、第3の剥離シートとからなる積層体(第2の積層体)を得る。
ここで、粘着剤層42がエネルギー線硬化性粘着剤からなる場合には、この段階で粘着剤層42に対してエネルギー線を照射して、粘着剤層42を硬化させてもよいし、保護膜形成用フィルム1と積層した後に粘着剤層42を硬化させてもよい。また、保護膜形成用フィルム1と積層した後に粘着剤層42を硬化させる場合、ダイシング工程前に粘着剤層42を硬化させてもよいし、ダイシング工程後に粘着剤層42を硬化させてもよい。
エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば、紫外線の場合には、光量が50〜1000mJ/cm2であることが好ましく、100〜500mJ/cm2であることがより好ましい。また、電子線の場合には、10〜1000krad程度であることが好ましい。
以上のようにして第1の積層体及び第2の積層体が得られたら、第1の積層体における第2の剥離シートを剥離するとともに、第2の積層体における第3の剥離シートを剥離し、第1の積層体にて露出した保護膜形成用フィルム1と、第2の積層体にて露出した粘着シート4の粘着剤層42と、を重ね合わせて圧着する。粘着シート4は、所望によりハーフカットし、所望の形状、例えば、保護膜形成用フィルム1よりも大きい径を有する円形等にしてもよい。この場合、ハーフカットにより生じた粘着シート4の余分な部分は、適宜除去すればよい。
このようにして、基材41の上に粘着剤層42が積層されてなる粘着シート4と、粘着シート4の粘着剤層42側に積層された保護膜形成用フィルム1と、保護膜形成用フィルム1における粘着シート4とは反対側に積層された第1の剥離シートとからなる保護膜形成用シート3が得られる。最後に、第1の剥離シートを剥離した後、保護膜形成用フィルム1における粘着シート4とは反対側の周縁部に、治具用粘着剤層5を形成する。治具用粘着剤層5も、上記粘着剤層42と同様の方法により形成することができる。
3.保護膜形成用シート3の使用方法
本実施形態に係る保護膜形成用シート3を用いて、一例としてワークとしての半導体ウエハから、保護膜が形成されたチップ(加工物)を、改質層破壊式引張り分割による分割加工を含む製造方法により製造する方法を以下に説明する。
図4に示すように、保護膜形成用シート3の保護膜形成用フィルム1を半導体ウエハ6に貼付するとともに、治具用粘着剤層5をリングフレーム7に貼付する。保護膜形成用フィルム1を半導体ウエハ6に貼付するにあたり、所望により保護膜形成用フィルム1を加熱して、粘着性を発揮させてもよい。
その後、保護膜形成用フィルム1を硬化させて保護膜を形成する。
以上により、伸長可能なダイシングシートとして機能する粘着シート4の粘着剤層42側の面に保護膜が形成され、この保護膜の粘着剤層42側の面とは反対側の面に半導体ウエハ6が積層された構成を備える積層構造体(本明細書において、前記積層構造体を「第1の積層構造体」ともいう。)を得る。図4に示される第1の積層構造体は、治具用粘着剤層5及びリングフレーム7をさらに備える。保護膜形成用フィルム1が熱硬化性接着剤の場合には、保護膜形成用フィルム1を所定温度で適切な時間加熱することで、保護膜を形成すればよい。なお、保護膜形成用フィルム1の硬化は、次に説明するレーザー印字及び分割加工のいずれかの後に行ってもよい。
上記のようにして保護膜が形成された半導体ウエハ6を備える第1の積層構造体が得られたら、所望により、その保護膜に対して、粘着シート4を介してレーザー光を照射し、レーザー印字を行う。こうして、保護膜形成用シートを使用してワークに保護膜を形成し、この保護膜が形成されたワークの保護膜側の面にレーザー光を照射して、印字された保護膜が形成されたワークを製造することができる。なお、レーザー印字は、次に説明する分割加工の後に行ってもよい。
次いで、第1の積層構造体を、分割加工用レーザー照射装置に設置し、保護膜1に覆われている半導体ウエハ6の表面の位置を検出したのち、加工用レーザーを用いて、半導体ウエハ6内に改質層を形成する。その後、ダイシングシートとして機能する粘着シート4を伸長させるエキスパンド工程を実施することにより、保護膜付き半導体ウエハ6に力(主面内方向の引張力)を付与する。その結果、粘着シート4に貼着する保護膜付き半導体ウエハ6は分割されて、保護膜を有するチップ(保護膜付きチップ)が得られる。その後は、ピックアップ装置を用いて、粘着シート4から保護膜付きチップをピックアップする。
ここで、印字のためのレーザー照射は保護膜が形成された半導体ウエハ6ではなく、保護膜が形成されたチップに対して行ってもよい。すなわち、保護膜形成用シートを使用してワーク(半導体ウエハ6)に保護膜を形成し、保護膜が形成されたワーク(半導体ウエハ6)を加工して保護膜が形成された加工物(チップ)を得て、保護膜が形成された加工物(チップ)の保護膜側の面にレーザー光を照射して、印字された保護膜が形成された加工物(チップ)を製造してもよい。
本発明の一実施形態に係る保護膜の被着体がワーク(半導体ウエハ6)であっても加工物(チップ)であっても、前記保護膜は、これが含有するフィラーの平均粒径が0.2μm以上であるため、波長550nmの光線透過率が10%以下となり、被着体であるワーク(半導体ウエハ6)又は加工物(チップ)の外観を向上させることができる。
4.保護膜形成用シートの他の実施形態
図3は本発明のさらに他の一実施形態に係る保護膜形成用シートの断面図である。図3に示すように、本実施形態に係る保護膜形成用シート3Aは、基材41の一方の面側に粘着剤層42が積層されてなる粘着シート4と、粘着シート4の粘着剤層42側に積層された保護膜形成用フィルム1とを備えて構成される。本実施形態における保護膜形成用フィルム1は、面方向にてワークとほぼ同じか、ワークよりも少し大きく形成されており、かつ粘着シート4よりも面方向に小さく形成されている。保護膜形成用フィルム1が積層されていない部分の粘着剤層42は、リングフレーム等の治具に貼付することが可能となっている。
本実施形態に係る保護膜形成用シート3Aの各部材の材料及び厚さ等は、上述の保護膜形成用シート3の各部材の材料及び厚さ等と同様である。ただし、粘着剤層42がエネルギー線硬化性粘着剤からなる場合、粘着剤層42における保護膜形成用フィルム1と接触する部分は、エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させ、それ以外の部分は、エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させないことが好ましい。これにより、保護膜形成用フィルム1を硬化させた保護膜の平滑性(グロス)を高くすることができるとともに、リングフレーム等の治具に対する接着力を高く維持することができる。
なお、保護膜形成用シート3Aの粘着剤層42における基材41とは反対側の周縁部には、上述の保護膜形成用シート3における治具用粘着剤層5と同様の治具用粘着剤層が別途設けられていてもよい。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、保護膜形成用シート3,3Aの保護膜形成用フィルム1における粘着シート4とは反対側には、剥離シートが積層されてもよい。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
<保護膜形成用シートの製造>
[実施例1]
次の各成分を表1に示す配合比(固形分換算)で混合し、固形分濃度が61質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、保護膜形成用フィルム用塗布剤を調製した。
(A)重合体成分:n−ブチルアクリレート10質量部、メチルアクリレート70質量部、グリシジルメタクリレート5質量部、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量:40万、ガラス転移温度:−1℃)
(B−1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」、23℃・1atmで液状、分子量370、軟化点93℃、エポキシ当量183〜194g/eq)
(B−2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER1055」、23℃・1atmで固形、分子量1600、エポキシ当量800〜900g/eq)
(B−3)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP−7200HH」、23℃・1atmで固形、軟化点88〜98℃、エポキシ当量255〜260g/eq)
(C−1)熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤(ジシアンジアミド、ADEKA社製「アデカハードナーEH−3636AS」、活性水素量21g/eq)
(C−2)熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤(ジシアンジアミド、三菱化学社製「DICY7」)
(D)硬化促進剤:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ」)
(E−1)シリカフィラー(アドマテックス社製「YA050CMJA」、平均粒子径0.05μm)
(E−2)シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MA」、平均粒子径0.5μm)
(E−3)シリカフィラー(アドマテックス社製「YC100CMLA」、平均粒子径0.1μm)
(E−4)シリカフィラー(アドマテックス社製「SC1050」をシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM1003」)でビニル基表面修飾したもの、平均粒子径0.3μm)
(F)シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM403」)
(G−1)着色剤(青色顔料):フタロシアニン系青色色素(Pigment Blue 15:3)を、色素成分のスチレン−アクリル樹脂に対する質量比が1/3となる量だけ用いて顔料化したもの。
(G−2)着色剤(黄色顔料):イソインドリノン系黄色色素(Pigment Yellow 139)を、色素成分のスチレン−アクリル樹脂に対する質量比が1/3となる量だけ用いて顔料化したもの。
(G−3)着色剤(赤色顔料):ジケトピロロピロール系赤色色素(Pigment Red264)を、色素成分のスチレン−アクリル樹脂に対する質量比が1/3となる量だけ用いて顔料化したもの。
(H)着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製「MA600B」、平均粒径28nm)
ここで、重合体成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下の条件にて測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(GPC測定条件)
・カラム:TSKgel GMHXL(2本)、TSKgel 2000HXLをこの順に連結したもの
・溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
・流速:1ml/分
・検出器:示差屈折計
・標準試料:ポリスチレン
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1の剥離シート(リンテック社製「SP−PET382150」、厚さ38μm)と、PETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第2の剥離シート(リンテック社製「SP−PET381031」、厚さ38μm)とを用意した。
第1の剥離シートの剥離面上に、上述の保護膜形成用フィルム用塗布剤を、最終的に得られる保護膜形成用フィルムの厚さが23μmとなるように、ナイフコーターにて塗布した後、オーブンを用いて120℃で2分間乾燥させて、保護膜形成用フィルムを形成した。次いで、保護膜形成用フィルムに第2の剥離シートの剥離面を重ねて両者を貼り合わせ、第1の剥離シート(図1における剥離シート21)と、保護膜形成用フィルム(図1における保護膜形成用フィルム1)(厚さ:25μm)と、第2の剥離シートと、からなる保護膜形成用シートを得た。
[実施例2〜3(参考例)、参考例1〜7]
保護膜形成用フィルムを構成する各成分の種類及び配合量を表1に示すように変更した点以外は、実施例1と同じ方法で保護膜形成用シートを製造した。
<保護膜形成用シートの評価>
(光線透過率)
上記の実施例及び参考例で得られた保護膜形成用シートから第2の剥離シートを剥離し、オーブン内において、大気雰囲気下、130℃で2時間加熱し、保護膜形成用フィルムを熱硬化させて保護膜とした。その後、第1の剥離シートを剥離した。
分光光度計(SHIMADZU社製「UV−VIS−NIR SPECTROPHOTOMETER UV−3600」)を用いて、前記保護膜の光線透過率を測定し、波長550nm、1064nm及び波長1250nmの光線透過率(%)を抽出した。測定には、付属の大形試料室MPC−3100を用い、内蔵の積分球を使用せずに測定を行った。結果を表1に示す。
(外観)
上記の実施例及び参考例で得られた保護膜形成用シートから第2の剥離シートを剥離し、保護膜形成用フィルムをシリコンウエハ(#200研磨、直径200mm、厚さ280μm)の研磨面に貼付した。貼付にはテープマウンター(リンテック社製「Adwill RAD−3600」)を用いた。保護膜形成用フィルムから第1の剥離シートを剥離した後、シリコンウエハ及び保護膜形成用フィルムを、オーブン内において、大気雰囲気下、130℃で2時間加熱し、保護膜形成用フィルムを熱硬化させて保護膜とした。得られた保護膜付きシリコンウエハを、その保護膜側から目視観察し、シリコンウエハの研磨面が保護膜を介して視認されるか否かを、下記基準に従って確認し、外観を評価した。結果を表1に示す。
A:研磨面が全く視認されない。
B:研磨面が僅かに視認される。
C:研磨面が明確に視認される。
(60度鏡面光沢度の測定)
上記の実施例及び参考例で得られた保護膜形成用シートから第2の剥離シートを剥離し、保護膜形成用フィルムをシリコンウエハ(#200研磨、直径200mm、厚さ280μm)の研磨面に貼付した。貼付にはテープマウンター(リンテック社製「Adwill RAD−3600」)を用いた。保護膜形成用フィルムから第1の剥離シートを剥離した後、シリコンウエハ及び保護膜形成用フィルムを、オーブン内において、大気雰囲気下、130℃で2時間加熱し、保護膜形成用フィルムを熱硬化させて保護膜とした。得られた保護膜付きシリコンウエハの保護膜側の面について、日本電色工業社製光沢計「VG 2000」を使用し、JIS Z8741:1997(ISO 2813:1994)に従って、60度鏡面光沢度(Gs(60°)、単位:%)を測定した。結果を表1に示す。
(印字視認性)
上記の60度鏡面光沢度の測定時に得られた保護膜付きシリコンウエハに対して、グリーンレーザーマーカー(キーエンス社製「MD-S9910A」)を用いて、下記条件でレーザー印字を行った。
波長:532nm
出力:3.0W
周波数:60kHz
スキャンスピード:500mm/s
印字文字:ABCD
文字サイズ:300μm(高さ)×250μm(幅)
文字間隔:50μm
次いで、得られた印字を、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製「VHS−1000」)を用いて100倍の倍率で観察し、下記3段階(A〜C)で評価した。結果を表1に示す。また、印字された保護膜の撮像データを、実施例1については図5に、参考例1については図6に、参考例3については図7に、それぞれ示す。
A:印字の認識が容易であり、かつ、印字が鮮明に見える。
B:印字の認識が容易である。
C:印字の認識が困難である。
表1から明らかなように、含有するフィラーの平均粒径が0.3μm以上であり、波長550nmの光線透過率が8%以下である実施例1〜3の保護膜形成用フィルムは、これから形成した保護膜によって、シリコンウエハの研磨面を全く視認できないようにしており、保護膜付きウエハの外観を顕著に向上させていた。これら実施例の保護膜形成用フィルムは、例えば、参考例5〜6の保護膜形成用フィルムとは異なり、顔料を含有しなくても又は顔料の含有量が低くても、波長550nmの光線透過率が十分に低かった。