本発明の一実施形態を図1〜図3を参照して以下に説明する。図1を参照して、本実施形態の据置型暖房装置1は、燃焼式の温風暖房装置、例えばガスファンヒータである。この据置型暖房装置1(以降、単に暖房装置1という)は、その筐体2を、家屋の室内等の暖房空間の床面上に載置した状態で使用される。また、暖房装置1のユーザは、該暖房装置1の筐体2を持ち上げて移動させる(方向転換を含む)ことで、該筐体2の載置場所あるいは向きを適宜、変更することが可能である。
暖房装置1は、その筐体2の内部に、熱源としてのバーナ3と、送風ファン4とを備えている。送風ファン4は、その作動により、暖房空間の空気を、筐体2の背面パネルに形成された吸気口(図示省略)から筐体2内に取り込み、さらに、該筐体2内に取り込んだ空気を、筐体2の正面パネルに形成された吹出し口2aから暖房空間に送風するように筐体2内に搭載されている。
また、バーナ3は、その燃焼運転時に、送風ファン4の作動により筐体2内に取り込まれた空気を、燃焼熱により加熱するように筐体2内に搭載されている。なお、バーナ3の燃焼運転時には、筐体2内に取り込まれる空気の一部が燃焼用空気としてバーナ3に供給されると共に、暖房装置1に接続される図示しない配管ホースを介して燃料ガスがバーナ3に供給される。
筐体2の表面部、例えば上面部には、ユーザが暖房装置1の運転に係る操作を行うための操作パネル6が装着されている。
筐体2の内部には、さらに制御装置10が搭載されている。この制御装置10は、電子回路ユニットであり、種々の電子部品が装着された基板11を有する。該基板11は、筐体2に固定されている。
基板11に装着された電子部品には、加速度センサ12及び制御処理部13が含まれる。加速度センサ12は、3軸方向の加速度(並進加速度)、例えば、図1に示すX軸、Y軸及びZ軸の各検出軸方向の加速度を検出可能なセンサである。なお、図示例では、Z軸は、筐体2の高さ方向(筐体2の底面に垂直な方向)の検出軸、X軸は、筐体2の前後方向(紙面に垂直な方向)の検出軸、Y軸は、筐体2の幅方向(左右方向)の検出軸である。
この加速度センサ12が検出する加速度は、より詳しくは、重力加速度と、該加速度センサ12の運動加速度との合成加速度ベクトル(3次元ベクトル)の各検出軸方向の成分である。この場合、加速度センサ12は、基板11を介して筐体2に固定されているので、加速度センサ12の運動加速度は、筐体2の運動加速度に一致する。
詳細な図示は省略するが、制御処理部13は、例えばCPU、MPU、マイコン等により構成される演算処理部、RAM、ROM等により構成されるメモリ、及びインターフェース回路等を含む。この制御処理部13には、前記加速度センサ12等の各種センサの検出信号が入力されると共に、前記操作パネル6の操作信号が入力される。そして、制御処理部13は、そのハードウェア構成と実装されるプログラムとにより実現される機能として、暖房装置1の運転に係る種々の処理を実行する機能を有する。
図2に示すように、本実施形態では、制御処理部13は、バーナ3及び送風ファン4の運転制御を行う運転制御部21としての機能と、筐体2の持ち上げを検知する持ち上げ検知部22としての機能と、持ち上げられた筐体2の移動状態を監視する移動状態監視部23としての機能と、地震の発生の有無を検知する地震検知部24としての機能と、筐体2の転倒の有無を検知する転倒検知部25としての機能とを有する。
なお、制御処理部13の上記の機能は、単一の演算処理部を使用して実現し得ることはもちろんであるが、複数の演算処理部による協働処理もしくは分散処理で実現されてもよい。
また、制御処理部13の一部又は全体と、加速度センサ12とは、各別の基板に実装されていてもよい。
次に、制御処理部13の各機能部の処理の詳細と併せて、暖房装置1の作動を図3を参照して説明する。制御処理部13は、電源電力が投入されると、まず、STEP1において、加速度センサ12の出力に基づいて、重力方向を認識する処理を実行する。STEP1の処理は、より詳しくは、筐体2の現在の載置状態において、加速度センサ12の3つの検出軸を座標軸とするセンサ座標系で見た重力方向の方位を認識する処理である。この処理は、換言すれば、筐体2に対する重力方向の方位を認識する処理、あるいは、重力方向に対する筐体2の傾斜量を認識する処理である。
ここで、暖房装置1の電源電力の投入は、通常、筐体2が床面上で静止した状態で行われるので、STEP1において、加速度センサ12により検出される加速度(ベクトル)は、重力加速度(ベクトル)に一致もしくはほぼ一致する。従って、加速度センサ12の出力から、重力方向を認識することができる。
なお、筐体2が載置されている床面が水平面である場合には、重力方向は、筐体2の高さ方向(図1のZ軸方向)に一致もしくはほぼ一致し、床面が水平面に対して傾斜している場合には、重力方向は、筐体2の高さ方向に対して傾いた方向となる。
STEP1の処理を行っておくことで、加速度センサ12により検出される加速度(ベクトル)から、重力加速度(ベクトル)を除いた加速度、すなわち、筐体2の運動加速度を適正に検出することが可能となる。
制御処理部13は、次にSTEP2において、暖房装置1の運転を行うための各種の初期設定を行う。さらに、制御処理部13は、STEP3において、暖房装置1の運転開始指令の有無を判断し、該運転開始指令が与えられるまで待機する。
上記運転開始指令は、ユーザによる前記操作パネル6(もしくは図示しないリモコン等の遠隔操作端末)の所定の操作に応じて、あるいは、暖房装置1のタイマ機能等によりあらかじめ設定された運転スケジュールに従って、制御処理部13に与えられる。
そして、制御処理部13は、運転開始指令を受けると(STEP3の判断結果が肯定的になると)、STEP4からの処理を実行する。STEP4では、制御処理部13は、暖房装置1の暖房運転を開始させる。具体的には、制御処理部13は、送風ファン4を作動させつつ、バーナ3の点火制御を行って、該バーナ3の燃焼運転を開始させる。これにより、暖房装置1の暖房運転が開始される。
なお、STEP4の処理は、制御処理部13の前記運転制御部21としての機能によって実行される制御処理である。
このように暖房装置1の暖房運転を行っている状態で、制御処理部13は、STEP5において、筐体2の持ち上げ(上向きへの移動)が行われたか否かを逐次判断する。このSTEP5の処理(筐体2の持ち上げを検知する処理)は、制御処理部13の前記持ち上げ検知部22としての機能によって実行される処理である。この処理は、加速度センサ12の出力に基づいて、例えば次のように行われる。
すなわち、制御処理部13は、加速度センサ12の出力により示される筐体2の運動加速度のうちの上下方向(重力方向もしくは筐体2の高さ方向)の加速度成分の検出値に対して、2階積分の処理を実行することで、現在時刻から所定時間前までの期間(例えば数百ミリ秒の時間幅の期間)での筐体2の上向きの移動量を逐次推定する。
そして、制御処理部13は、筐体2の上向きの移動量の推定値が所定の閾値(例えば3cm程度の閾値)を超えた場合、すなわち、筐体2の所定の閾値以上の上昇が検知された場合に、筐体2の持ち上げが行われたことを検知する。この検知により、STEP5の判断結果が肯定的になる。
なお、筐体2の持ち上げを検知する手法は上記の手法に限られない。例えば、筐体2の運動加速度のうちの上下方向の加速度成分の検出値を積分することで得られる筐体2の上下方向の移動速度が、所定値以上の上向きの速度となる状態が所定時間以上継続した場合に、筐体2の持ち上げが行われたことを検知することも可能である。
STEP5において、筐体2の持ち上げが検知されず、STEP5の判断結果が否定的になる状況は、筐体2が床面上に載置された状態とみなし得る。この場合には、制御処理部13は、次にSTEP10において、筐体2の転倒の発生の有無を判断する。
このSTEP10の処理(筐体2の転倒の発生を検知する処理)は、制御処理部13の前記転倒検知部25としての機能によって実行される処理である。この処理では、制御処理部13は、例えば、前記STEP1の処理と同様に、加速度センサ12の出力に基づいて、重力方向の方位を認識することで、重力方向に対する筐体2の傾斜量を推定する。そして、制御処理部13は、筐体2の傾斜量が、所定の閾値以上の傾斜量(例えば、重力方向に対して30度以上の傾斜角度)になった場合に、筐体2の転倒を検知する。
STEP10において、筐体2の転倒が検知されない場合には、STEP10の判断結果が否定的となる。この場合には、制御処理部13はさらに、STEP11において、地震(所定震度以上の震度の地震)の発生の有無を判断する。
このSTEP11の処理(地震の発生を検知する処理)は、制御処理部13の前記地震検知部24としての機能によって実行される処理である。この処理では、制御処理部13は、加速度センサ12の出力に基づく公知の手法により、所定震度以上の地震の発生の有無を判断する。例えば、加速度センサ12の出力により示される加速度の検出値(重力加速度を含む加速度の検出値又は筐体2の運動加速度の検出値)の経時変化のパターン等に基づいて、地震の発生を検知し得る。加速度センサ12の出力に基づいて地震の発生を検知する手法としては、任意の公知の手法を採用できる。
なお、STEP11の処理は、STEP10の処理の前に実行してもよい。
STEP10において、筐体2の転倒が検知されず、且つ、STEP11において、地震の発生が検知されない場合には、STEP10,11の両方の判断結果が否定的になる。この場合には、制御処理部13はさらに、STEP12において、暖房装置1の運転停止指令の有無を判断する。
上記運転停止指令は、ユーザによる前記操作パネル6(もしくは図示しないリモコン等の遠隔操作端末)の所定の操作に応じて、あるいは、暖房装置1のタイマ機能等によってあらかじめ設定された運転スケジュールに従って、制御処理部13に与えられる。
そして、制御処理部13は、運転停止指令を受けると(STEP12の判断結果が肯定的になると)、STEP13において、暖房装置1の暖房運転を停止させる。具体的には、制御処理部13は、バーナ3の消火制御を実行し、さらに送風ファン4の作動を停止させる。これにより、暖房装置1の暖房運転が停止される。
STEP13の処理の後は、制御処理部13は、前記STEP3からの処理を再開する。また、STEP12で、運転停止指令が無い場合(STEP12の判断結果が否定的となる場合)には、制御処理部13は、暖房装置1の暖房運転(バーナ3の燃焼運転及び送風ファン4の作動)を継続させたまま、STEP5からの処理を繰り返す。
一方、STEP10で筐体2の転倒が検知された場合、あるいは、STEP11で地震の発生が検知された場合には、STEP10又は11の判断結果が肯定的になる。この場合には、制御処理部13は、STEP14において、暖房装置1の暖房運転を強制停止させる。具体的には、制御処理部13は、STEP13の処理と同様に、バーナ3の消火制御を実行し、さらに送風ファン4の作動を停止させる。
なお、STEP13,14の処理は、制御処理部13の前記運転制御部21としての機能によって実行される制御処理である。
補足すると、STEP14で暖房装置1の暖房運転を強制停止した場合には、ユーザが、筐体2を床面上に正常に載置した状態で、暖房装置1を再起動することで、暖房装置1の暖房運転を再開することができる。
暖房装置1の暖房運転中に、筐体2が床面上に載置された状態に保たれた場合には、以上の如く、制御処理部13の処理が実行される。
一方、暖房装置1の暖房運転中に、ユーザによる筐体2の持ち上げが検知された場合には、前記STEP5の判断結果が肯定的になる。この場合には、制御処理部13は、STEP6〜9の処理を実行する。このSTEP6〜9の処理は、制御処理部13の前記移動状態監視部23としての機能によって実行される処理である。
STEP6では、制御処理部13は、筐体2の持ち上げが検知されてからの経過時間(換言すれば、筐体2の空中移動の継続時間)を計時するタイマtmを起動する。
さらに、制御処理部13は、ユーザにより持ち上げられた筐体2が、床面上に再び載置されたか否かをSTEP7で判断する。このSTEP7の処理は、加速度センサ12の出力に基づいて、例えば次のように行われる。
すなわち、制御処理部13は、加速度センサ12の出力により示される筐体2の運動加速度(検出値)の、3つの検出軸方向のそれぞれの成分の大きさ(絶対値)が、いずれも所定の閾値以下となる状態(各検出軸方向の成分の大きさがゼロもしくは十分に微小なものとなる状態)が所定時間、継続した場合、あるいは、3次元のベクトル量としての筐体2の運動加速度ベクトル(検出値)の大きさ(絶対値)が所定の閾値以下となる状態(3つの検出軸方向のそれぞれの加速度成分から算出される当該運動加速度ベクトルの大きさがゼロもしくは十分に微小なものとなる状態)が所定時間、継続した場合に、筐体2が載置されたことを検知する。
換言すれば、制御処理部13は、加速度センサ12の出力に基づいて、筐体2がほぼ静止状態に保たれていると判断し得る場合に、筐体2が載置されたことを検知する。この場合、上記所定の閾値としては、例えば0.1G(=0.1×重力加速度定数)の加速度値等を採用し得る。
なお、筐体2の載置を検知する手法は上記の手法に限られない。例えば、筐体2の運動加速度(検出値)の、各検出軸方向の成分の検出値を積分することで得られる筐体2の移動速度の大きさ(各検出軸方向の移動速度の大きさ、又は移動速度ベクトルの大きさ)が所定の閾値以下となる状態が所定時間、継続した場合に、筐体2が載置されたことを検知してもよい。また、例えば、加速度センサ12の出力に基づいて、筐体2の下向きへの移動が検知された後に、筐体2がほぼ静止状態に保たれたことが検知された場合に、筐体2が載置されたことを検知してもよい。
ユーザによって筐体2が空中に持ち上げられている状態(筐体2の空中移動中の状態)では、筐体2の載置が検知されず、STEP7の判断結果が否定的になる。この場合には、制御処理部13は、さらに、STEP8において、筐体2の空中移動状態が適正であるか否かを判断する。このSTEP8では、制御処理部13は、例えば、筐体2の運動加速度の過剰な変動が発生した場合、あるいは、筐体2の傾きが大きくなり過ぎた場合に、筐体2の空中移動状態が適正でないと判断する。
より具体的には、制御処理部13は、例えば、加速度センサ12の出力に示される筐体2の運動加速度のいずれかの検出軸方向の成分が、所定の単位時間当たりに所定量以上、変化した場合(すなわち、当該成分が急激に変化した場合)、あるいは、3次元ベクトルとしての筐体2の運動加速度ベクトルの大きさ(絶対値)が、所定の単位時間当たりに所定量以上、変化した場合(すなわち、当該運動加速度ベクトルの大きさが急激に変化した場合)に、筐体2の空中移動状態が適正でない(不適切である)と判断する。なお、上記所定量の加速度変化量としては、例えば、1G(=1×重力加速度定数)の変化量等を採用し得る。
さらに、制御処理部13は、加速度センサ12の出力に基づいて、前記STEP1と同様の処理により、重力方向に対する筐体2の傾斜量を推定し、該傾斜量の推定値が、所定の閾値以上の傾斜量(例えば、重力方向に対して20度以上の傾斜角度)になった場合に、筐体2の空中移動状態が適正でない(不適切である)と判断する。
これにより、筐体2の空中移動中に、筐体2が周囲の壁もしくは設置物等に衝突した場合、あるいは、ユーザによる筐体2の運搬が比較的乱暴に行われた場合、あるいは、暖房装置1の電源コードあるいは配管ホースが伸びきることによって、筐体2の移動が阻害された場合等に、筐体2の空中移動状態が不適切であるとして、STEP8の判断結果が否定的となる。さらに、筐体2の空中移動中の傾きが過大になった場合にも、筐体2の空中移動状態が不適切であるとして、STEP8の判断結果が否定的となる。
一方、筐体2が、重力方向に対する該筐体2の傾きが小さなものとなっている状態(筐体2の高さ方向が概ね上下方向に向けられている状態)で、揺れの少ない安定した移動速度で移動されている状態では、筐体2の空中移動状態が適正であるとして、STEP8の判断結果が肯定的になる。
なお、STEP8で筐体2の空中移動状態が適正であるか否かを判断する手法は、上記の手法に限られない。例えば、筐体2の運動加速度のいずれかの検出軸方向の成分の大きさ、あるいは、ベクトル量としての筐体2の運動加速度ベクトルの大きさが、所定の閾値を超えた場合に、筐体2の空中移動が適正になされていないと判断してもよい。
また、例えば、ベクトル量としての筐体2の運動加速度ベクトルの向きが、所定時間内に所定角度以上、変化した場合に、筐体2の空中移動が適正になされていないと判断してもよい。
また、筐体2の空中移動が適正になされていると判断する筐体2の傾斜量の閾値は、筐体2の転倒を検知する場合の閾値と同じでもよい。
また、例えば暖房装置1が比較的重い場合等、筐体2の空中移動中に、該筐体2が大きく傾く可能性が十分に低いと考えられる場合には、筐体2の空中移動中の傾斜量に関する判断を省略してもよい。
STEP8で筐体2の空中移動状態が適正でないと判断した場合(STEP8の判断結果が否定的になった場合)には、制御処理部13は、前記STEP10で筐体2の転倒が検知された場合、あるいは、前記STEP11で地震の発生が検知された場合と同様に、前記STEP14において、暖房装置1の暖房運転を強制的に停止させる。これにより、バーナ3の燃焼運転及び送風ファン4の作動が停止される。従って、筐体2の空中移動状態が不適正なものとなっている状態で、バーナ3の燃焼運転(熱源の作動)が継続的に行われるのを防止できる。
一方、STEP8で筐体2の空中移動状態が適正であると判断した場合(STEP8の判断結果が肯定的になった場合)には、制御処理部13は、次にSTEP9において、筐体2の空中移動の継続時間の計測値としてのタイマtmの計時時間が、所定時間tm0に達したか否かを判断する。
上記所定時間tm0は、バーナ3の燃焼運転状態(熱源の作動状態)での筐体2の空中移動の継続時間が過剰に長くなるのを制限するためにあらかじめ定められた上限時間(当該空中移動の継続時間の上限値)である。
ここで、バーナ3の燃焼運転状態(熱源の作動状態)での筐体2の空中移動中は、該筐体2の移動経路の近辺に存在する種々様々な物体がバーナ3から発せられる熱の影響を受ける。この場合、筐体2の空中移動の継続時間が長くなると、本来の加熱対象でない物体、あるいは、加熱対象とすべきでない物体がバーナ3から発せられる熱の影響を受けるという状況が発生する可能性が高まる虞がある。
また、特に、本実施形態では、暖房装置1の暖房運転中における筐体2の空中移動中は、地震の発生の検知処理(前記STEP11の判断処理)が実行されないので、筐体2の空中移動の継続時間は、地震の発生の検知処理が実行されない状態の継続時間に相当する。
このようなことから、バーナ3の燃焼運転状態(熱源の作動状態)での筐体2の空中移動の継続時間はあまり長くならないことが好ましいと考えられる。
また、本実施形態の暖房装置1としてのガスファンヒータの如く、燃料ガスの配管ホースが接続される暖房装置1、あるいは、電源コードを有する暖房装置1では、該配管ホースあるいは電源コードによって、筐体2の移動可能範囲が制約を受ける。そして、筐体2の空中移動の継続時間が長くなると、配管ホースあるいは電源コードの伸びきりが生じ易い。
本実施形態では、これらのことを考慮して、上記所定時間tm0があらかじめ設定されている。該所定時間tm0としては、例えば10秒程度の時間を採用し得る。ただし、所定時間tm0は、暖房装置の種類、仕様等に応じて種々様々な時間に設定し得る。
例えば、配管ホース及び電源コードを使用しない暖房装置では、配管ホース又は電源コードを有する暖房装置よりも上記所定時間tm0を長めに設定してもよい。また、例えば、比較的重い暖房装置では、比較的軽い暖房装置よりも、上記所定時間tm0を長めに設定してもよい。また、上記所定時間tm0を、例えば、ユーザの要求に応じて、所定の範囲内で可変的に調整し得るようにすることも可能である。また、例えば、バーナ3の燃焼量(熱源の発熱量)に応じて上記所定時間tm0が自動的に切換わるようにする(例えば、バーナ3の燃焼量(熱源の発熱量)が大きい場合には、小さい場合よりも上記所定時間tm0を短くする)ことも可能である。
タイマtmの計時時間が、所定時間tm0に達していない場合には、STEP9の判断結果が否定的になる。この場合には、制御処理部13は、STEP7からの処理(ループ処理)を繰り返す。
一方、タイマtmの計時時間が、所定時間tm0に達することによって、STEP9の判断結果が肯定的になると、制御処理部13は、前記STEP10で筐体2の転倒が検知された場合、あるいは、前記STEP11で地震の発生が検知された場合と同様に、前記STEP14において、暖房装置1の暖房運転が強制的に停止させる。これにより、バーナ3の燃焼運転状態での筐体2の空中移動の継続時間が長くなり過ぎるのが防止される。
また、前記STEP7において、筐体2が載置されたことを検知された場合には、STEP7の判断結果が肯定的になる。この場合には、制御処理部13は、STEP7〜9のループ処理を終了し、筐体2が持ち上げられる前の状況と同様に、STEP10からの処理を実行する。
なお、この場合、載置された筐体2に対する重力方向を認識する処理(STEP1と同じ処理)が改めて実行され、その重力方向を用いて、筐体2の傾斜量の推定処理や、筐体2の運動加速度の検出処理(加速度センサ12の出力により示される運動加速度から重力加速度成分を除去する処理)が実行される。
本実施形態では、以上の如く制御処理部13により暖房装置1の運転制御が行われる。ここで、本実施形態と本発明との対応関係について補足しておく。本実施形態では、STEP5の処理が本発明における第1処理に相当し、STEP7〜9の処理が本発明における第2処理に相当する。この場合、STEP8の判断結果が否定的になる状況、あるいは、STEP9の判断結果が肯定的になる状況が、本発明における第2処理の判断結果が否定的となる状況に相当し、STEP8の判断結果が肯定的になり、且つ、STEP9の判断結果が否定的になる状況が、本発明における第2処理の判断結果が肯定的となる状況に相当する。
以上説明した実施形態によれば、暖房装置1の暖房運転中(バーナ3の燃焼運転中)に、地震の発生の検知、筐体2の転倒の検知、及びユーザによる筐体2の移動の検知(筐体2の持ち上げの検知)と、筐体2の空中移動中における移動状態の適否の判断とを加速度センサ12を使用した小型な構成で適切に行うことができる。
そして、筐体2の空中移動中は、地震の発生の有無の判断処理(STEP11の処理)が実行されないので、筐体2の空中移動が適正に行われているのに(詳しくは、STEP8の判断結果が肯定的となり、且つ、STEP9の判断結果が否定的となっているのに)、地震の発生の誤検知によって、暖房装置1の暖房運転が強制的に停止されてしまうのを防止することができる。
さらに、筐体2の空中移動中は、筐体2の空中移動が適正に行われているか否かの判断処理(特に、STEP8の判断処理)を、地震の発生の有無の検知処理、あるいは、筐体2の転倒の発生の有無の検知処理と無関係に実行できるので、当該判断処理を最適な手法で行うことができる。このため、筐体2の空中移動が適正に行われているか否かの判断結果の信頼性を高めることができる。
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものでないことはもちろんである。以下に、本発明の他の実施形態をいくつか説明する。前記実施形態では、筐体2の転倒の発生を検知する処理と、地震の発生を検知する処理とを筐体2が持ち上げられていない状態(STEP5の判断結果が否定的になる状態)で行うものを示した。
ただし、例えば地震の発生を検知する処理は、暖房装置1の暖房運転中に、筐体2の持ち上げの有無によらずに逐次、実行してもよい。この場合であっても、筐体2が持ち上げられた状態では、地震の発生を検知する処理の検知結果によらずに、前記STEP11の判断処理を実行しないことによって、結果的に、筐体2の空中移動中は、地震の発生の検知結果の影響を受けないようにすることができる。
また、本実施形態では、加速度センサ12の出力に基づいて筐体2の転倒を検知するようにしたが、筐体2の転倒の検知は、加速度センサ12の出力を用いない手法で行ってもよい。
また、本発明の据置型暖房装置は、前記暖房装置1としてのガスファンヒータに限らず、例えば、灯油等の液体燃料を燃焼させる温風暖房装置(石油ファンヒータ等)であってもよい。さらに、本発明の据置型暖房装置は、例えば電気ストーブ、あるいは、石油ストーブ、あるいは、ガスストーブ、あるいは、燃焼式の熱源と電気式の熱源との両方を備える暖房装置等であってもよい。
また、本発明の据置型暖房装置は、例えば、筐体の転倒の検知機能を持たないものであってもよい。