JP6801954B2 - 抗菌及び抗ウイルス加工剤及びそれによる加工品 - Google Patents

抗菌及び抗ウイルス加工剤及びそれによる加工品 Download PDF

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Description

本発明は、抗菌性及び抗ウイルス性に優れる、物品の加工剤、その加工剤によって処理された、抗菌及び抗ウイルス物品に関する。更に、その加工剤によって処理された、抗菌性及び抗ウイルス性に優れ、好ましくは耐洗濯性に優れる、繊維及びそのような繊維を含む繊維物品に関する。更に好ましくは、そのような性質を有しながら繊維が本来有する色を損なわない、抗菌及び抗ウイルス加工剤に関する。
近年の衛生に関する意識の高まり等から、種々の繊維物品(例えば、布団カバー、ベッドシーツ及び枕カバー等の寝装用品、寝間着(パジャマ)、肌着及びカッターシャツ等の一般衣料用品、カーテン及びテーブルクロス等の室内装飾用繊維物品、ハンドタオル、バスタオル及び足ふきマット等の浴室用繊維物品、感染防止用マスク、ガーゼ及び包帯等の衛生材料用繊維物品)などに、抗菌加工等が施され、そのような繊維物品が研究開発されている。
特許文献1は、繊維素材に対し、第4級アンモニウム塩を抗菌成分として0.1〜3.0重量%、及び特定のエポキシポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンを樹脂バインダーとして0.1〜2.0重量%付与した抗菌白衣用布巾を報告する(特許文献1請求項1、2、3及び5、[0011]〜[0012]、[0014]〜[0015]、[0028]及び[0034]等参照)。特許文献1は、その布巾は、優れた抗菌性と工業洗濯耐久性を有することを報告する(特許文献1[0005]〜[0006]及び[0039]等参照)。特許文献1では樹脂バインダーを使用して抗菌成分である第4級アンモニウム塩を布帛上に固定するので、樹脂バインダーの量及び第4級アンモニウム塩の量に依存して、抗菌性が十分に発揮されなくなりえる。従って、第4級アンモニウム塩が樹脂バインダーに埋没することを想定して、より多くの第4級アンモニウム塩を使用しなければならないので、コストの増加を招きえる。
特許文献2は、カルボキシル基を有する繊維において、そのカルボキシル基の、少なくとも一部が特定の第4級アンモニウム塩(セチルピリジニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩又はドデシルトリメチルアンモニウム塩)を形成し、かつ、少なくとも他の一部が特定の抗菌性金属塩(亜鉛、銅又は銀塩)を形成しており、第4級アンモニウム塩を形成しているカルボキシル基の量と、抗菌性金属塩を形成しているカルボキシル基の量が、各々特定量である、皮膚接触用繊維物品用抗菌繊維物品を報告する(特許文献2請求項1、3、5、[0017]、[0026]及び[0028]参照)。特許文献2は、その繊維物品は、抗菌効果の持続性に優れることを報告するが、評価の際、その繊維を、洗剤を用いて洗濯していないので、抗菌効果が耐洗濯性を有するかについて十分に検証されていない(特許文献2[0007]、[0014]及び[0047]参照)。
特許文献3は、ベンザルコニウム塩及びセチルピリジニウム塩から選択される四級アンモニウム塩と、銀、亜鉛及び銅から選択される金属塩又は金属酸化物を含有する抗菌、防カビ及び防藻組成物を記載する(特許文献3請求項1〜4、[0006]〜[0007]、[0024]〜[0031]参照)。
特許文献4は、特定の化学式で示される第4級アンモニウム塩を有効成分とし、pHを5〜9の範囲に調整した非エンベロープ型ウイルスの不活性化剤を記載する(特許文献4請求項1参照)。特許文献5は、特定の化学式で示される第4級アンモニウム塩(a)とモノエタノールアミン(b)を、(a):(b)の質量比20:1〜1:20の割合で含む殺ウイルス剤を開示する(特許文献5請求項1参照)。特許文献6は、第4級アンモニウム塩から成る医薬組成物を用いて、例えば、RSVウイルス、アデノウイルス、SARSウイルス及び天然痘ウイルス等のウイルス感染を治療する方法を開示する(特許文献6請求項1及び6、[0009]〜[0010]参照)。従って、特許文献4〜6は、抗ウイルス性組成物を報告する。
特開2000−73279号公報 特許第4915530号 特開2013−184906号公報 特開2010−53091号公報 特許第4647912号 特表2008−507583号公報
近年、細菌性の病気の他に、ウイルス性の病気が世界的に注目され、抗菌性に加えて、抗ウイルス性も重要になりつつある。
ところで、抗ウイルス性が求められる繊維物品のうち、口及び鼻の周囲を覆う感染防止用及び唾液飛散防止用のマスク、及び感染防止用の医療用ガウン等の繊維物品は、通常、一度使用したら廃棄されること、即ち、使い捨てられること(ディスポーザブル)が想定されている。このような使い捨てられる繊維物品の高機能化を目的として施される抗ウイルス性に、耐久性、より具体的には洗濯耐久性(水又は洗剤を含む溶液で、繊維物品を洗浄しても、その抗ウイルス性は大きく低下しないこと)は要求されない。
一方、寝装用品、室内装飾用繊維物品及び一般衣料用品等の、通常、使い捨てされない繊維物品は、ある程度使用後、洗濯機等を用いて洗浄され、再度使用される。繊維物品を洗浄する場合、種々の汚れ(例えば、付着したハウスダスト、砂、汗、皮脂汚れ、食べこぼし、吐瀉物の残渣、くしゃみ及び咳等で飛散した唾液等)を除去するため、通常、洗剤が使用される。洗剤は、通常、界面活性剤を含み、更に柔軟剤及び漂白剤等を含み得る。従って、使い捨てでない種々の繊維物品に対し、抗菌性及び抗ウイルス性を付与する場合、洗濯耐久性も求められる。
種々の繊維及び繊維物品に、容易に優れた抗菌性及び抗ウイルス性の両方を付与でき、好ましくは、繊維物品を洗濯しても、その抗菌性及び抗ウイルス性の両方が低下しにくい繊維、そのような繊維を含む繊維物品に興味が持たれる。
しかしながら、そのような繊維及び繊維物品は、ほとんど報告されていない。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、第4級アンモニウム塩、好ましくは特定のジアルキルジメチルアンモニウム塩と、特定の金属塩を混合した混合物を含む加工剤(好ましくはその混合物は、特定のジアルキルジメチルアンモニウムイオンと、金属イオンを含む複合物を含む加工剤)を用いて、物品(好ましくは繊維又は繊維物品)を処理すると、抗菌性及び抗ウイルス性の両方に優れ、好ましくは耐洗濯性に優れ、更に好ましくは、機能剤(本願では第4級アンモニウム塩及び金属塩)を繊維表面に固定するために用いるバインダー樹脂(フィックス剤とも呼ばれる)を使用せずに抗菌、抗ウイルス性に対し、複数回洗濯処理を行っても性能が低下しにくくなる洗濯耐久性を発揮し、更により好ましくは処理の前後で処理の対象物となる物品(好ましくは、繊維及び繊維物品)が本来有する色を損なわない、言い換えるならば、加工前の色が損なわれず、かつ加工後に着色することなく抗菌性及び抗ウイルス性の両方を付与できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、一の要旨において、
第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオン及び
第4級アンモニウムイオン
を含む複合物を含む、抗菌及び抗ウイルス加工剤を提供する。
前記抗菌及び抗ウイルス加工剤において、第4級アンモニウムイオンは
式(I):R
[式(I)において、R及びRは、各々独立して、炭素数が8〜18のアルキル基であり、R及びRは、メチル基である]
で示される、ジアルキルジメチルアンモニウムイオン
を含むことが好ましい。
本発明は、一の態様において、抗菌及び抗ウイルス加工剤を含む、抗菌及び抗ウイルス物品(又は加工品)を提供し、物品は、繊維及び繊維物品から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
本発明は、他の要旨において、
(i)第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオン及び
第4級アンモニウムイオン
を混合して、前記金属のイオンと第4級アンモニウムイオンを含む複合物を含む混合物を得ること、
(ii)前記複合物を含む混合物と繊維又は繊維物品を接触させること
を含む、抗菌及び抗ウイルス物品の製造方法を提供する。
前記抗菌及び抗ウイルス物品の製造方法において、第4級アンモニウムイオンは、
式(I):R
[式(I)において、R及びRは、各々独立して、炭素数が8〜18のアルキル基であり、R及びRは、メチル基である]
で示される、ジアルキルジメチルアンモニウムイオン
を含むことが好ましい。
本発明は、好ましい要旨において、
(i)第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオンと、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩及び
第4級アンモニウム塩
を混合すること;及び
(ii)前記混合物と物品を接触させること
を含む、抗菌及び抗ウイルス物品の製造方法を提供する。
前記抗菌及び抗ウイルス物品の製造方法において第4級アンモニウム塩は
式(I):R
[式(I)において、R及びRは、各々独立して、炭素数が8〜18のアルキル基であり、R及びRは、メチル基である]
で示される、ジアルキルジメチルアンモニウムイオンと、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩
を含むことが好ましい。
本発明に係る抗菌及び抗ウイルス加工剤は、
第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオン及び
第4級アンモニウムイオン、好ましくは、
式(I):R
[式(I)において、R及びRは、各々独立して、炭素数が8〜18のアルキル基であり、R及びRは、メチル基である]
で示される、ジアルキルジメチルアンモニウムイオン
を含む複合物を含むので、抗菌性及び抗ウイルス性の両方に優れ、好ましくは耐洗濯性にも優れ、更にそれらのバランスにも優れる。
本発明に係る抗菌及び抗ウイルス物品は、上述の抗菌及び抗ウイルス加工剤を含むので、抗菌性及び抗ウイルス性の両方に優れ、好ましくは耐洗濯性にも優れ、更にそれらのバランスにも優れる。
更に好ましくは、本発明に係る加工剤を用いる処理の前後で、処理の対象物となる物品(好ましくは、繊維及び繊維物品)が本来有する色を損なわない、言い換えるならば、加工前の色が損なわれず、抗菌性及び抗ウイルス性の両方を付与できる。
以下、本発明に係る抗菌及び抗ウイルス加工剤及び抗菌及び抗ウイルス物品などを詳細に説明する。
本発明に係る抗菌及び抗ウイルス加工剤は、
(i)第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオンと、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩及び
第4級アンモニウム塩、好ましくは、
式(I):R
[式(I)において、R及びRは、各々独立して、炭素数が8〜18のアルキル基であり、R及びRは、メチル基である]
で示される、ジアルキルジメチルアンモニウムイオンと、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩
を混合することで、前記金属のイオン及び第4級アンモニウムイオンを含む複合物として得ることができる。
本発明において、第4級アンモニウムイオンは、金属イオンとの複合物となって含まれる。複合物とは
(1)第4級アンモニウムイオンと金属イオンの混合物
(2)第4級アンモニウムイオンと金属イオンの化合物
(3)第4級アンモニウムイオンと金属イオンの錯体
(4)第4級アンモニウムイオンと金属イオンと他のイオンからなる混合物
(5)第4級アンモニウムイオンと金属イオンと他のイオンからなる化合物
(6)第4級アンモニウムイオンと金属イオンと、他のイオンを含む錯体
から選択される少なくとも一種を含む。
本発明において、第4級アンモニウムイオンは、本発明が目的とする抗菌及び抗ウイルス加工剤等を得られる限り、特に限定されない。第4級アンモニウムイオンは第4級アンモニウム塩を水に溶解することで発生する。第4級アンモニウム塩としてはテトラメチルアンモニウム塩、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、トリアルキルモノメチルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルジメチルエチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩(ベンザルコニウム塩が挙げられる)、アルキルピリジニウム塩(セチルピリジニウム塩)が挙げられる。本発明において、第4級アンモニウム塩は、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジアルキルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩からから選択される少なくとも一種であることが好ましく、ジアルキルジメチルアンモニウム塩を含むことがより好ましく、第4級アンモニウム塩がジアルキルジメチルアンモニウム塩からなることが特に好ましい。
第4級アンモニウム塩は、第4級アンモニウムイオンと各種アニオン(陰イオン)との塩であり、本発明が目的とする抗菌及び抗ウイルス加工剤等を得られる限り特に限定されない。第4級アンモニウムイオンとの塩を形成するアニオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン及び硫酸イオンの他、分子イオン(多原子イオン)であってよい。アニオンは、塩化物イオンであることが好ましい。第4級アンモニウム塩は、塩化第4アンモニウムであることが好ましい。
本発明で好ましく使用されるジアルキルジメチルアンモニウム塩は、式(I):
Figure 0006801954
[式(I)において、R及びRは、各々独立して、炭素数が8〜18のアルキル基であり、R及びRは、メチル基である]で示されるジアルキルジメチルアンモニウムイオンと、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩を含む。
ジアルキルジメチルアンモニウム塩は、式(I)において、R及びRは、各々独立して、炭素数8〜15のアルキル基であることが好ましく、R及びRは、各々独立して、炭素数8〜12のアルキル基であることがより好ましい。
本発明で使用される金属塩は、第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオンと、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩を含む。
本発明者は、これらの金属イオンと第4級アンモニウムイオンを複合物として繊維表面あるいは繊維物品表面に存在させることによって、優れた抗菌作用及び抗ウイルス作用が両方共発現することを見いだした。更に、両方の作用の洗濯耐久性を向上することができることを見いだした。第4級アンモニウム塩のみが表面に存在する繊維又は繊維物品を、各種界面活性剤を含む洗濯用洗剤を使用して洗浄すると、洗濯処理後に抗菌又は抗ウイルス作用が大幅に低下し得るが、第4級アンモニウム塩と金属イオンを共存させることで洗濯耐久性を向上し得るので、たとえ複数回洗濯しても、優れた抗菌及び抗ウイルス作用を両方共発揮し得る。
本発明で使用される金属塩は、第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオンと、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩であれば特に限定されることはない。
第4周期に属する金属として、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnが好ましく、Fe、Co、Ni、Cu及びZnがより好ましく、Cu、Zn及びFeが特に好ましい。第10族の金属として、Pd及びPtを例示でき、Ptが好ましい。
第11族の金属として、Ag及びAuを例示できる。第12族の金属として、Cd及びHgを例示できる。これらの金属の中で、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pt、Ag、Au、Cd及びHgが好ましく、安全性を考慮するとFe、Co、Ni、Cu、Zn、Pt、Ag及びAuが好ましく、Cu、Zn及びAgが特に好ましい。
金属塩は、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸鉄及び硝酸銀から選択される少なくとも一種の塩がより好ましく、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛及び硝酸銀から選択される少なくとも一種の塩が特に好ましい。
第4級アンモニウムイオン、好ましくはジアルキルジメチルアンモニウム塩と金属塩との混合方法は、通常使用される方法であり、本発明が目的とする加工剤が得られる限り、特に制限されることはない。混合順序等も特に限定されることはない。
更に、第4級アンモニウムイオン、好ましくは式(I)のジアルキルジメチルアンモニウムイオンが存することで、好ましくは水和した金属イオンの着色に変化を生じ得ることから、単に両者は、混合された単なる混合物として存在し得ることに加えて、第4級アンモニウムイオン、好ましくは式(I)のジアルキルジメチルアンモニムイオンが、水和した金属イオンの水和状態に影響を与える状態で存し得ると考えられる。このような状態を、本願明細書では上述したように、複合物といい、本発明が目的とする加工剤を得られる限り、混合物、化合物及び錯体を含むことができる。複合物は、式(I)のジアルキルジメチルアンモニウムイオンと金属イオンを含む分子集合体であってよく、共有結合、配位結合及びイオン結合等の強い結合の他に、分子間相互作用及び疎水性相互作用等の弱い結合で形成されてもよい。複合物は、ジアルキルジメチルアンモニウム塩の対アニオン及び金属塩の対アニオンから選択される少なくとも一種を含むことができる。
従って、本発明に係る加工剤は、
第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオンのイオン及び
第4級アンモニウムイオン
を含む複合物を含むことが好ましい。前記加工剤において、第4級アンモニウムイオンは 式(I):R
[式(I)において、R及びRは、メチル基であり、R及びRは、各々独立して、炭素数8〜18のアルキル基である]
で示される、ジアルキルジメチルアンモニウムイオン
を含むことが好ましい。
第4級アンモニウム塩(好ましくは、式(I)のジアルキルジメチルアンモニウムイオンの塩)に対する金属塩の重量比(金属塩/第4級アンモニウム塩)は、本発明が目的とする加工剤を得ることができる限り特に制限されることはない。重量比は、例えば、1/100〜4/5であることを例示することができ、1/80〜3/5でありえ、1/60〜2/5でありえる。これらの重量比の場合、抗菌性及び抗ウイルス性の発現により好ましく、より性能のバランスに優れ得る。
更に、加工剤に含まれる金属塩の濃度は、本発明が目的とする加工剤を得ることができる限り特に制限されることはない。0.008〜5重量%であることが好ましく、0.01〜3重量%であることがより好ましく、0.01〜1.5重量%であることが特に好ましく、0.02〜0.8重量%が最も好ましい。重量%の上限と下限の間である場合、抗菌性及び抗ウイルス性の発現により好ましく、より性能のバランスに優れる。
加工剤に含まれる第4級アンモニウム塩、好ましくは、式(I)のジアルキルジメチルアンモニウムイオンを含むジアルキルジメチルアンモニウム塩の濃度は、本発明が目的とする加工剤を得ることができる限り特に制限されることはない。0.075〜10重量%であることが好ましく、0.1〜5重量%であることがより好ましく、0.15〜3重量%であることが特に好ましく、0.2〜2重量%であることが最も好ましい。重量%の上限と下限の間である場合、抗菌性及び抗ウイルス性の発現により好ましく、より性能のバランスに優れる。
本発明に係る加工剤は、悪影響を受けない限り、他の成分を含むことができる。そのような成分として、例えば、繊維及び繊維物品の風合いを改良するために加える柔軟剤、染料固着剤、帯電防止剤及び撥水剤等を例示することができる。
本発明に係る加工剤は、水性組成物の形態を有することが好ましく、水溶液の形態を有することがより好ましい。ここで水性組成物とは、水性媒体中に、成分が存することを意味し、成分は水中に溶解していても、溶解していなくてもよく、分散していてもよい。水性媒体には、純水、蒸留水、イオン交換水及び上水等が含まれる。悪影響を受けない限り、有機溶剤を含むことができる。
本発明に係る加工剤を用いて、種々の物品を加工して、抗菌性及び抗ウイルス性を付与することができ、抗菌及び抗ウイルス物品(又は加工品)を製造することができる。
従って、抗菌及び抗ウイルス物品は、加工剤を含み、好ましくは複合物を含む。
物品は、例えば、繊維及び繊維物品から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
本発明に係る加工剤を用いて、抗菌性及び抗ウイルス性を付与することができる繊維は特に限定されることはない。繊維として、例えば、天然繊維(例えば、木綿、麻、羊毛及び羽毛等)、再生繊維、半合成繊維及び合成繊維等を例示でき、繊維製品として、そのような繊維を含む繊維製品を例示できる。繊維は、セルロース系繊維、動物性繊維及びアニオン性官能基を有する合成繊維から選択される少なくとも一種の繊維を含む繊維であることが好ましく、繊維物品は、それらの繊維を含む繊維製品、好ましくはセルロース系繊維、動物性繊維及びアニオン性官能基を有する合成繊維から選択される少なくとも一種の繊維を20重量%以上含む繊維製品であることが好ましい。
セルロース系繊維、動物性繊維、アニオン性官能基を有する合成繊維は、繊維表面に水酸基などのアニオン性官能基を含むため、第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオン及び第4級アンモニウムイオンをふくむ複合物が固定されやすいと考えられる。
前記セルロース系繊維とは、植物を原料に含む繊維であり、より具体的には、木綿、麻、ジュート及びヘンプ等の天然繊維、ビスコースレーヨン、テンセル、リヨセル及びキュプラ等の精製セルロース繊維、アセテート等の半合成繊維を例示できる。
前記動物性繊維として、羊毛(ウール)、絹繊維、カシミア繊維、アンゴラ繊維、及び布団などの中綿として使用される各種羽毛等を例示できる。
前記アニオン性官能基を有する合成繊維として、元々ヒドロキシル基を含む樹脂、例えば、種々のナイロン及びその共重合体、種々のポリビニルアルコール及びその共重合体等を溶融紡糸して得ることができる繊維を例示できる。更に、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルの繊維及びポリプロピレン等のポリオレフィンの繊維等の本来アニオン性官能基を持たない合成繊維に対し、グラフト重合及びコロナ放電処理等の後加工を行い、カルボキシ基、スルホ基、スルホニル基及びヒドロキシル基等のアニオン性官能基を導入することで、アニオン性官能基を有する合成繊維を得ることができる。本発明が目的とする繊維及び繊維製品を得ることができる限り、繊維及び繊維製品は特に制限されることはなく、上記条件を満たす繊維であれば特に限定されることはない。セルロース系繊維、動物性繊維、及びヒドロキシル基を有する合成繊維から選択される繊維が好ましく、セルロース系繊維がより好ましく、木綿、ビスコースレーヨン、テンセル、リヨセル及びキュプラが特に好ましい。
繊維の長さ等の性質も、本発明が目的とする繊維及び繊維製品を得ることができる限り、特に制限されることはない。例えば、繊維が長繊維の場合、モノフィラメントであってもよいし、マルチフィラメントであってもよい。また繊維が短繊維(ステープル)の場合、その繊維長は限定されない。湿式不織布(パルプを主原料とする紙を含む)の場合、繊維長が0.5〜30mmの短繊維であってよい。紡績糸又は不織布に加工する繊維の場合、繊維長は15〜120mmであってもよい。
繊維物品は、天然繊維、再生繊維、半合成繊維及び合成繊維等を含む物品を例示できる。繊維物品の例は、モノフィラメントを使用したマルチフィラメント糸、短繊維を使用した紡績糸、織物、編物、不織布、繊維を粒状に集合させた粒綿(玉状綿及び粒状綿等ともいう)、織物、編物、不織布等を用いて製造した最終物品(例えば、布団カバー及びシーツ等の寝装用品、カーテン及びテーブルクロス等の室内装飾用繊維物品、シャツ及び肌着等の一般衣料用品)等を例示できる。本発明の抗菌及び抗ウイルス物品はこれらの繊維又は繊維物品を本発明の製造方法で処理することによって得られる。即ち、第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオン及び第4級アンモニウムイオンの複合物の効果が損なわれなければ、前記複合物を用いた処理を繊維の状態で行ってよく、糸、織物、編物及び不織布等の布帛の状態で行ってよく、寝装品、室内装飾用繊維物品及び一般衣料用品において生地の裁断又は縫製が終了した状態で行ってよく、最終的にこれらの繊維物品として完成した後、本発明の加工剤を処理したい繊維物品に噴霧してよい。
本発明に関する抗菌及び抗ウイルス物品は、
(i)第4周期に属する金属、第10族の金属、第11族の金属及び第12族の金属から選択される少なくとも一種の金属のイオンと、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩及び
式(I):R
[式(I)において、R及びRは、各々独立して、炭素数が8〜18のアルキル基であり、R及びRは、メチル基である]
で示される、ジアルキルジメチルアンモニウムイオンと、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩
を混合すること;及び
(ii)混合物と物品を接触させること
を含む、方法で製造することができる。
金属塩と第4級アンモニウムイオン、好ましくは式(I)のジアルキルジメチルアンモニウム塩の混合物と、物品の接触は、通常の種々の方法を用いて行うことが可能であり、本発明が目的とする抗菌及び抗ウイルス物品(又は加工品)を得られる限り、特に制限されることはない。
接触させる方法として、例えば、加工剤に物品を浸漬する方法及び物品に加工剤を塗布(又は塗工)又は噴霧等する方法を例示することができる。塗布方法として、種々の方法を例示することができ、本発明が目的とする抗菌及び抗ウイルス物品(又は加工品)を得られる限り、特に制限されることはない。
更に、本発明は、上述の方法で得られる物品を提供することができる。
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
(A)ジアルキルジメチル第4級アンモニウム塩
(A1)ジアルキルジメチルアンモニウム塩水溶液(三木理研工業株式会社製のリケンレヂンDPC−27(商品名):これは、2つのアルキル基(ジアルキル)が、いずれも炭素数8〜炭素数18のアルキル基から各々独立して選択されるジアルキルジメチルアンモニウムイオンと、塩化物イオンとの塩を含有する水溶液である。)
(B)金属塩
(B1)硫酸銅(CuSO・5HO)水溶液:硫酸銅5水和物を20質量%含む水溶液(圓商産業株式会社 製)を用意した。
(試験布)
白色の木綿100%の織布(経糸、緯糸共に40番手の綿糸を使用し、経糸密度 120本/inch、緯糸密度100本/inch の平織り)を用意した。この織布を、縦30cm×横60cmの大きさの布に裁断し、抗菌(制菌)及び抗ウイルス加工用試験布として使用した。なお、試験布は、それぞれ質量を測定した。
(実施例1の加工剤及びその加工剤を含む繊維物品の製造)
蒸留水、(A1)ジアルキルジメチルアンモニウム塩水溶液、硫酸銅5水和物水溶液を用意し、各成分の濃度が表1の実施例1の加工剤に示す濃度になるように秤量する。
なお、表1に記載の濃度において、硫酸銅の濃度は硫酸銅5水和物の濃度である。秤量した蒸留水に、秤量したジアルキルジメチルアンモニウム塩水溶液、硫酸銅5水和物水溶液を入れてよく撹拌し、300mlの加工剤とした。このとき、硫酸銅とジアルキルジメチルアンモニウム塩が水中で接触すると、硫酸銅の青色が薄く白くなり、屈折率の変化が認められるとともに、実質的に無色になったので、硫酸銅の水和に変化が生じていると考えられ、両者を含む複合物が形成されていると考えられる。この水性混合物を実施例1の加工剤として使用して、用意した試験布に抗ウイルス加工を行った。
試験布に、抗菌及び抗ウイルス加工を、以下の手順で行った。
まず、上述の試験布を、上述の実施例1の加工剤に入れ、試験布に加工剤を十分に浸漬させる。その後、試験布を加工剤から取り出し、余分な加工剤を除去した。
その後、試験布を150℃に調整した恒温乾燥機で、2分間乾燥して水分を蒸発させ、繊維表面上にジアルキルジメチルアンモニウム塩と金属塩(硫酸銅)の複合物を含む混合物を付着させることで、抗ウイルス加工を行い実施例1の試験布を得た。ここでは、未だ、洗濯していないので、この試験布をW0で示す。
(実施例2〜3及び比較例1〜2の加工剤及びその加工剤を含む繊維物品の製造)
蒸留水、(A1)ジアルキルジメチルアンモニウム塩水溶液、硫酸銅5水和物水溶液を用意し、各成分の濃度が表1の実施例2、3、及び比較例1、2の加工剤に示す濃度になるように秤量する。秤量した蒸留水に、秤量したジアルキルジメチルアンモニウム塩水溶液、硫酸銅5水和物水溶液を入れてよく撹拌し、それぞれ300mlの加工剤(実施例2、3、比較例1、2)とした。各々の加工剤を用いて、試験布に抗ウイルス加工を行った。
実施例2〜3及び比較例1〜2の加工剤を使用したことを除いて、上述の実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、試験布に抗ウイルス加工を行い実施例2〜3及び比較例1〜2の各々の試験布を得た。ここでは、未だ、洗濯していないので、これらの試験布をW0で示す。
(繰り返し洗濯処理)
上述の抗ウイルス加工を行った各々の試験布(W0)について、JIS L 0217に規定する家庭洗濯103法に準ずる洗濯処理を行って、擬似的に洗濯を10回行った試験布を得た。
具体的には、まず、上述の抗ウイルス加工を施した試験布の質量を測定する。次に、試験布の質量との和が1kgになるように負荷布(木綿100%の織布)を用意する。試験布と負荷布を洗濯用ネットに入れ、家庭用洗濯機に投入し、水30リットルの条件でJAFET標準洗剤(アニオン系界面活性剤を含む)を使用して洗浄処理を25分間行う。洗浄処理後、脱水し、再度30リットルの水で水洗し、脱水する。再び30リットルの水で水洗した後4分間脱水する。この処理(25分間の洗浄処理、脱水後水洗2回、4分間の脱水)を2回行った後、試験布を室内で吊干し乾燥させる。この洗濯処理を行った試験布をW10で示す。洗濯処理前の試験布(W0)と洗濯処理後の試験布(W10)について、下記の抗ウイルス試験を行った。
(抗ウイルス試験)
試験布(W0及びW10)の抗ウイルス性能をISO18184(Textiles - Determination of antiviral activity of textile products)に基づき、A型インフルエンザウイルス及びネコカリシウイルスを用いて評価した。
(インフルエンザウイルスを用いた抗ウイルス試験)
インフルエンザウイルスを用いた抗ウイルス試験を以下の条件下、以下の手順で行った。
・試験ウイルス:A型インフルエンザウイルス(H3N2)
・宿主細胞:MDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)
・試験サンプル:0.4g
・洗い出し液:SCDLP培地
・放置条件:25℃ 2時間
・感染価測定法:プラーク試験
(抗ウイルス性 試験手順)
まず、用意した宿主細胞に試験ウイルスを感染させる。感染させた後ウイルスを培養し、培養後、遠心分離機によって細胞残渣を分離、除去し、ウイルス懸濁液を得る。
得られたウイルス懸濁液に滅菌蒸留水を加えて10倍に希釈し、2±1×10PFU/mLに調整したものを試験ウイルス懸濁液とする。
用意した各試験布に前記試験ウイルス懸濁液を0.2mL接種する。
試験ウイルス懸濁液を接種した後、試験布を25℃にて2時間放置する。所定時間放置した後洗い出し液を20mL加え、ボルテックスミキサーで撹拌し、試験布からウイルスを洗い出す。
ウイルスを洗い出した液をプラーク測定法にてウイルス感染価を測定する。この試験方法では、ウイルス感染価(ウイルス活性値)が大きいほど抗ウイルス作用が高いと評価される。評価基準は、抗ウイルス活性値を用いて、以下の通りである。
・抗ウイルス活性値3.6以上:++
・抗ウイルス活性値3.0以上3.6未満:+
・抗ウイルス活性値3.0未満:−
(ネコカリシウイルスを用いた抗ウイルス試験)
ネコカリシウイルスを用いた抗ウイルス試験を以下の条件下、以下の手順で行った。
・試験ウイルス:ネコカリシウイルス(F−9)
・宿主細胞:CRFK細胞(ネコ腎臓由来細胞)
・試験サンプル:0.4g
・洗い出し液:SCDLP培地
・放置条件:25℃ 2時間
・感染価測定法:プラーク試験
(抗ウイルス性 試験手順)
まず、用意した宿主細胞に試験ウイルスを感染させる。感染させた後ウイルスを培養し、培養後、遠心分離機によって細胞残渣を分離、除去し、ウイルス懸濁液を得る。
得られたウイルス懸濁液に滅菌蒸留水を加えて10倍に希釈し、2±1×10PFU/mLに調整したものを試験ウイルス懸濁液とする。
用意した各試験布に前記試験ウイルス懸濁液を0.2mL接種する。
試験ウイルス懸濁液を接種した後、検体を25℃にて2時間放置する。所定時間放置した後洗い出し液を20mL加え、ボルテックスミキサーで撹拌し、試験布からウイルスを洗い出す。
ウイルスを洗い出した液をプラーク測定法にてウイルス感染価を測定する。この試験方法では、ウイルス感染価(ウイルス活性値)が大きいほど抗ウイルス作用が高いと評価される。評価基準は、抗ウイルス活性値を用いて、以下の通りである。
・抗ウイルス活性値3.6以上:++
・抗ウイルス活性値3.0以上3.6未満:+
・抗ウイルス活性値3.0未満:−
(抗菌性の評価)
試験布(WO及びW10)の抗菌性をJIS L 1902(2008年) 菌液吸収法 によって評価した。抗菌性の評価には黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus NBRC 12732)及び肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae NBRC 13277)を用い、混釈平板培養法によって生菌数を測定し、抗菌性能を評価した。抗菌性能は未処理の木綿100%の試験布との比較にて行い、黄色ぶどう球菌に対する抗菌性は以下の式で示される静菌活性値で、肺炎桿菌に対する抗菌性能は以下の式で表される殺菌活性値にて評価した。
・殺菌活性値= Ma−Mc
・静菌活性値= (Mb− Ma)−(Mc−Mo)
ただし
・Ma:未処理の木綿100%の試験布に菌を接種した直後(の菌数)
・Mb:未処理の木綿100%の試験布に菌を接種後18時間経過後(の菌数)
・Mo:抗ウイルス加工を施した試験布に菌を接種した直後(の菌数)
・Mc:抗ウイルス加工を施した試験布に菌を接種後18時間経過後(の菌数)
評価基準は、以下の通りである。
・静菌活性値3.9以上:++
・静菌活性値2.2以上3.9未満:+
・静菌活性値2.2未満:−
・殺菌活性値3.0以上:++
・殺菌活性値0.5以上3.0未満:+
・殺菌活性値0.5未満:−
結果は、表1に示した。
Figure 0006801954
実施例1〜3の抗ウイルス試験の結果から、これらの試験布には十分な抗ウイルス性が付与され、JAFET標準洗剤(アニオン系界面活性剤を含む)を用いた洗濯処理後(W10)であっても抗ウイルス性がほとんど低下しないことがわかる。
更に、硫酸銅の濃度が最も低い実施例3について、優れた抗菌性を示すこと及び耐洗濯性に優れることも認められる。
従って、実施例は、優れた抗菌性及び抗ウイルス性を両方共付与し得る加工剤であり、更に、優れた耐洗濯性も示すことが確認された。
尚、実施例1〜3は、いずれも銅イオンが加工剤に含まれるが、第4級アンモニウムイオンと共存させ、複合させることで、銅イオンの青色は、実質的に無色に変化した。従って、実施例1〜3の試験布の色は、いずれも、銅イオンの影響を受けることなく、白色である。
実施例と同じ第4級アンモニウム塩を繊維に担持させた比較例1〜2の試験布は、洗濯処理前(W0)は抗ウイルス性を有するが、洗濯処理後(W10)は抗ウイルス性が大きく低下する。
更に、第4級アンモニウム塩の濃度がより高い比較例2について、抗菌性は、必ずしも十分でない。
従って、比較例は、抗菌性と抗ウイルス性の両方共優れることはない。
本発明に係る加工剤を用いて、繊維及び繊維物品等の物品を処理すると、抗菌性及び抗ウイルス性の両方に優れ、好ましくは耐洗濯性にも優れ、更にそれらのバランスにも優れる物品を得ることができる。

Claims (4)

  1. Cu、Zn及びAgから選択される少なくとも一種の金属のイオンと、硫酸イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩を含む金属塩、及び
    第4級アンモニウムイオンを含む第4級アンモニウム塩
    を含む複合物を含み、
    前記第4級アンモニウムイオンが、
    式(I):
    Figure 0006801954
    [式(I)において、R及びRは、各々独立して、炭素数が8〜18のアルキル基であり、R及びRは、メチル基である]
    で示される、ジアルキルジメチルアンモニウムイオン
    を含み、
    前記第4級アンモニウム塩に対する金属塩の重量比(金属塩/第4級アンモニウム塩)が、1/100〜4/5である、抗菌及び抗ウイルス加工剤。
  2. 請求項1に記載の加工剤を含む、抗菌及び抗ウイルス物品。
  3. (i)Cu、Zn及びAgから選択される少なくとも一種の金属のイオンと、硫酸イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩を含む金属塩、及び
    第4級アンモニウムイオンを含む第4級アンモニウム塩
    を混合して、金属イオンと第4級アンモニウムイオンの複合物を含む混合物を得ること、
    (ii)前記複合物を含む混合物と物品を接触させること
    を含み、
    前記第4級アンモニウムイオンが、
    式(I):
    Figure 0006801954
    [式(I)において、R及びRは、各々独立して、炭素数が8〜18のアルキル基であり、R及びRは、メチル基である]
    で示される、ジアルキルジメチルアンモニウムイオン
    を含み、
    前記第4級アンモニウム塩に対する金属塩の重量比(金属塩/第4級アンモニウム塩)が、1/100〜4/5である、抗菌及び抗ウイルス物品の製造方法。
  4. (i)Cu、Zn及びAgから選択される少なくとも一種の金属のイオンと、硫酸イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩を含む金属塩及び
    式(I):
    Figure 0006801954
    [式(I)において、R及びRは、各々独立して、炭素数が8〜18のアルキル基であり、R及びRは、メチル基である]
    で示される、ジアルキルジメチルアンモニウムイオンと、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン及び酢酸イオンから選択される少なくとも一種の陰イオンとの塩
    を混合すること;及び
    (ii)前記混合物と物品を接触させること
    を含み、
    前記第4級アンモニウム塩に対する金属塩の重量比(金属塩/第4級アンモニウム塩)が、1/100〜4/5である、
    請求項3に記載の抗菌及び抗ウイルス物品の製造方法。
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