発明の詳細な説明
本教示の範囲は添付の特許請求の範囲によって最も良く定義されるため、本明細書は、限定として解釈されるべきではなく、本教示の一般的な原理を例示する目的のものに過ぎない。
本明細書で使用するとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明確に指示されていない限り複数も含む。
以下の定義が本開示に関連する。これらの定義は、使用の文脈によって変更され得ることを理解されたい。本教示の教示のために以下を定義する。
「神経」という用語は、本明細書では、神経、ニューロン、運動ニューロン、および介在ニューロンなどを含むものとして表されることがあり、本明細書では概して「神経」または「ニューロン」と呼ぶ。
「神経刺激」および「神経性刺激」という用語または概念は、本教示の刺激の印加を表すために自由にかつ交換可能に使用される。
「神経調節」、「調節」、「刺激」、および「調整」という用語は、本開示では均等な表現として交換可能に使用され、本教示の実践において標的に課される効果を示す。
「機能不全」、「障害」、「欠陥」、および「異常」という用語は、本開示では均等な表現として交換可能に使用され、医学的介入に適した医学的に認識される状態の概念を示す。
「効果器」という用語は、神経刺激に応答して効果をもたらす、神経支配を受ける器官を表す。本開示では、筋肉もそのような定義の範囲内に含まれる。効果器または筋肉に対する本教示の刺激の効果は、本教示の包括的な論述において交換可能に論じられ得る。
「刺激」という用語は、本明細書で使用するとき、神経線維の興奮または抑制のいずれかを表し、これらはアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションとも呼ばれる。
「電気刺激」という用語は、本明細書で使用するとき、電圧の印加によるかまたは電流の磁気的な誘導によるかに関わらず、脊髄神経、ニューロン、回路、または経路への電流の生成または導入を表す。
効果器の神経調節および調整のための改良された方法および装置を本明細書で以下に開示する。
本発明の実施形態の実践では、効果器を含む神経系の構成要素を調節するためのベンチトップ、ウェアラブル、または埋込型システムを提供する。tsDCSによる脊髄刺激(単刺激)、tsDCSによる脊髄刺激と末梢刺激または中枢自律神経出力の刺激との組合せ(二重刺激)、ならびにtsDCSによる脊髄刺激と、末梢刺激および皮質(例えば、運動野)の刺激または中枢自律神経出力との組合せ(三重刺激)を提供する戦略を開示する。本明細書における例示的実施形態では、自律神経系を調節し、膀胱などの自律神経支配を受ける効果器を調整するためにこれらの戦略を適用する方法および装置を開示する。これらの戦略は、膀胱失禁および膀胱貯留を含めた神経系の症状を治療する。
本発明の実施形態の実践では、効果器を含めた神経系の構成要素を調節するためのベンチトップ、ウェアラブル、または埋込型システムを提供する。単独でのtsDCS(単刺激)、tsDCS脊髄刺激と末梢刺激との組合せ(二重刺激)、tsDCS脊髄刺激と脳刺激との組合せ(二重刺激)、またはtsDCS脊髄刺激と、末梢刺激および脳刺激を含むことがある2つの他の刺激との組合せ(三重刺激)を印加することによって脊髄刺激を提供する戦略を開示する。本明細書における例示的実施形態では、自律神経系を調節し、限定しないが、膀胱などの自律神経支配を受ける効果器を調整するためにこれらの戦略を適用する方法および装置を開示する。これらの戦略は、膀胱失禁および膀胱貯留を含めた神経系の症状を治療する。
図4Aは、本発明の様々な実践において利用され得る例示的な刺激装置デバイス10、12、14を示す。これらのデバイスはtsDCS刺激デバイス10を含み、tsDCS刺激デバイス10は、本発明のいくつかの実施形態では、単独で使用されてtsDCS単刺激治療を送達することがあり、または追加の刺激デバイス12および/または14と組み合わせて使用されて、様々な二重および三重刺激治療を提供することがある。
tsDCS刺激装置デバイス10は、対象の遠位効果器に神経的に関連する脊髄位置、より具体的には膀胱などの標的効果器の機能に関連する脊髄位置に経脊髄直流電流刺激を送達する。様々な実施形態において、刺激装置デバイス10によって供給される刺激は単極であり、選択された極性を有する本質的にまたは実質的に連続的であり一定であり不変の直流電流刺激を0.5〜5または6mA、典型的には1〜4.5mAの範囲内で提供する。刺激装置デバイス10は、本発明の実施形態ではtsDCS構成要素を示す。この例示では、デバイス10は、システム制御機能を提供するための計算および同期ユニット16を含み、また信号極性および機能制御装置18を含み、またシステムメモリ19を有する。第2の刺激装置デバイス12は、パルスまたは一定の直流電流刺激の既知の経頭蓋直流電流(tDCS)刺激源を皮質領域Cに提供し、常駐メモリ19と一体化された信号計算および同期のため、ならびに信号極性および機能の制御のための回路20を有する。当業者には理解されるように、代替実施形態では、図4Bに示されるように、八の字プローブ22を使用するTMS磁気刺激装置14Aによって反復パルス磁気刺激(rTMS)が皮質領域Cに提供される。
例示的実施形態では、成人における運動野のパルス電気刺激は100〜400mA、典型的には約200mAの範囲であり、パルス幅は100〜300マイクロ秒、典型的には約200msであり、反復速度は0.5〜3Hzであり、動作電圧は400〜800である。子供の場合、100マイクロ秒で70〜100ミリアンペアが目標である。当業者には理解されるように、代替として磁気刺激が印加され、例示的なパルスTMS実施形態では、磁気刺激は、0.5〜3Hzの速度および200マイクロ秒のパルス幅で送達され、電気刺激と均等な刺激電流レベルに達する。本発明の1つのTMS実践では、rTMSは、1.0〜1.5テスラの磁束密度で印加される。
第3の刺激装置デバイス14は、典型的には、膀胱などの対象の標的効果器につながる神経の刺激のために、対象の末梢位置を刺激するための直流電流刺激源であり、これは、不変またはパルス直流電流刺激を含むことがある。この刺激装置デバイス14は、常駐メモリと共に、信号計算および同期のため、ならびに信号極性および機能の制御のための回路23を含む。例示的な末梢の一定の直流電流刺激は、二重刺激に関して1〜5mAのレベルで印加され、三重刺激に関して典型的には5〜40mAの範囲のパルス末梢強度で印加される。本発明の膀胱治療では、連続するtsDCSが脊髄の仙骨領域のオヌフ核に印加され、典型的な強度は1〜4.5mAの範囲内である。
3つのデバイス10、12、14の全ては、それぞれ電極24、26、30、32、および34、36などとの外部信号接続用のI/O構成要素を有するものとして示されており、電極接続用の+/−端子を提供する。各ユニットは通信構成要素40も含み、通信構成要素40は、デバイス間または他の外部デバイスとの有線または無線通信のためのデータリンク42を実現する。この例示では、3つのデバイス10、12、14の全てが、マイクロプロセッサユニット44、および充電式バッテリなどの電源Pとのユーザインターフェースを有する。
tsDCS単刺激が提供されるとき、tsDCS刺激装置デバイス10は単独で採用される。二重刺激の場合、tsDCS刺激装置デバイス10は、例えば1つの実践では皮質刺激装置デバイス12によって提供され、または本発明の別の実践では末梢刺激装置デバイス14によって提供される別の刺激源と共に採用される。1つの実践では、二重刺激は、同一のまたは対になった刺激デバイスを有する2つの独立したまたは絶縁された回路によって提供される。
当業者には理解されるように、一定の電流刺激が患者に送達されるいくつかの実施形態では、デバイス10および14など、2つの協働する刺激源が共通の接地を共有し、割り当てられた信号レベルを患者内の電流経路の抵抗変化の存在下で経時的に維持することを回路が試みるときに、効率的な制御機能を可能にする。
いくつかの実施形態では、tsDCS刺激装置デバイス10は、皮質刺激装置デバイス12および末梢刺激装置デバイス14などの他の2つの刺激源と協働して、三重刺激実施形態でtsDCSを提供するように採用される。例示的実施形態では、tsDCS三重刺激は、皮質でのパルス刺激、脊髄での一定の刺激、および末梢位置でのパルス刺激を含む。
図4Aを参照すると、治療対象の人が背側から示されている。本発明の例示的な三重刺激実践中に使用される3組の電極接続が示されている。電極は、以下に論じる位置に貼付される。
単に例示として、tsDCS三重刺激実施形態では、皮質刺激装置12は、活性皮質電極34および戻り(「参照」とも呼ばれる)電極36を介して、局所皮質領域Cへの直流電流源として経皮直流電流(tDCS)を提供する。刺激経路34〜36が2つの電極間に画定されて、膀胱21(点線で示される)などの対象の標的効果器の所期の刺激に関連する局所皮質領域Cを刺激する。当業者には理解されるように、代替実施形態では、既知のパルス皮質刺激の印加のために、図4Bに示されるTMS磁気刺激装置14Aのプローブ22によって反復パルス磁気刺激(rTMS)が皮質領域Cに供給される。
tsDCS刺激装置10は、膀胱などの標的効果器に関連する神経出力に関連する脊髄位置15に経脊髄直流電流単刺激を送達する。脊髄活性電極24が脊髄位置15に貼付され、戻り電極26が、脊髄領域の遠位に、例えば身体の前面に配置される。この実施形態では、これらの2つの電極間に脊髄刺激回路17が画定され、刺激電流は、対象の刺激経路としてその位置での棘突起を横切る。
第3の刺激装置14は、膀胱21などの標的効果器につながる神経または標的効果器の神経を刺激するために末梢直流電流刺激を提供する。一実施形態では、刺激信号は単極であり、パルスである。別の実施形態では、刺激信号は単極であり、一定である。
本発明の例示的実施形態は、単一のtsDCS刺激回路を有する方法およびシステムを含み、そのtsDCS刺激回路は、脊髄の単刺激のためのものであり、対象の脊髄位置に電極を配置し、身体の前面に戻り電極を配置することによって画定され、それにより、これらの電極間に対象の経路を画定する。本発明の様々な実践において、これらの電極は、陽極または陰極のいずれかとして割り当てられ、それにより、tsDCS刺激回路が、電極間に電流を印加し、脊髄興奮性を調節するように作成される。印加された電流は、所望の信号特性およびレベルを有して送達される。本発明のさらなる実施形態では、これらの教示をウェアラブルおよび埋込型実施形態に適用する。
本発明のさらなる実施形態では、ウェアラブル単刺激デバイスが提供される。この実践では、皮膚表面タイプの2つの電極があり、活性脊髄電極および脊髄回路戻り電極としての役割を果たす。一実施形態では、ウェアラブルデバイスの表面が脊髄電極を提供し、このデバイスはまた、脊髄の反対側にある戻り電極に接続し、戻り電極は、腹部または腸骨稜などの皮膚表面に配置される。別の実施形態では、参照電極が、例えば尿道カテーテル挿入によってまたは外科的に膀胱の内部に配置される。対象の脊髄位置は、標的効果器への脊髄出力に基づいて選択される。本発明の別の埋込型単刺激デバイスでは、2つの電極があり、これらの電極は埋込型電極であり、活性脊髄電極および戻り電極としての役割を果たす。一実施形態では、単刺激デバイスは完全に埋込型であり、デバイスから背側脊髄位置および腹側位置への電極リード線が皮下にトンネルされる。対象の脊髄位置は、標的効果器への脊髄出力に基づいて選択される。
本発明の完全に埋込型の皮下二重刺激実施形態では、2つの回路が、制御装置デバイスから出る4本のリード線によって電力供給される。この実施形態は、標的効果器の神経に印加される2つの同時刺激、すなわち脊髄刺激と末梢刺激とを送達する。これらの2つの回路と共に2つの別個の刺激電流経路がある。しかしまた、これらの回路が相互作用して、脊髄回路の脊髄にある活性電極と、標的効果器の神経に位置決めされた逆極性の電極との間に結果的な刺激電流経路を形成する。これは、上述した2つの電極間の神経経路に沿って下る分極流を提供する。この二重刺激実施形態では、第1の電流経路は、対象の脊髄位置に活性脊髄電極を配置し、非脊髄位置に戻り電極を配置することによって画定されるtsDCS脊髄回路であり、これらの電極間に印加電流が流れる。第2の電流経路は、標的効果器の神経またはその近傍に活性電極および戻り電極を配置することによって画定される末梢回路である。
さらなる実施形態では、二部品の半埋込型刺激デバイスが提供される。第1の構成要素は、皮膚付着によって貼付される活性脊髄電極と、戻り電極とを含むウェアラブル単刺激デバイスである。第2の構成要素は、それ自体の電源を有する2本のリード線を有する埋め込まれた末梢刺激装置または微小刺激装置である。第2の構成要素の両方のリード線が標的効果器の神経に接触するか、または近接している。ウェアラブル構成要素は、埋め込まれた構成要素と無線で通信することができる。ウェアラブル構成要素がオンになり、その刺激信号を発出すると、埋め込まれた刺激装置が応答し、標的効果器に刺激信号を発出し、この刺激信号は、興奮性または抑制性のいずれかであり得る。
ウェアラブル二重刺激デバイスのさらなる実施形態では、2つの回路が、制御装置デバイスから出る4本のリード線によって供給される。この実施形態は、2つの同時刺激を送達する。第1の刺激は、皮膚付着によって貼付された活性脊髄電極と、戻り電極とを介して送達される脊髄刺激である。第2の刺激は、中枢自律神経出力を調節し、経頭蓋直流電流刺激(tDCS)または経皮迷走神経刺激(tVNS)のいずれかであり得る。これらの2つの回路と共に2つの別個の刺激電流経路があるが、それらは互いに電気的に絶縁されている。
さらなる実施形態では、二部品の半埋込型刺激デバイスが提供される。第1の構成要素は、脊髄刺激である第1の刺激と、中枢自律神経出力を調節する第2の刺激とを提供するウェアラブル二重刺激デバイスである。第2の構成要素は、それ自体の電源を有する2本のリード線を有する埋め込まれた末梢刺激装置または微小刺激装置である。第2の構成要素の両方のリード線が標的効果器の神経に接触するか、または近接している。ウェアラブル構成要素は、埋め込まれた構成要素と無線で通信することができる。ウェアラブル構成要素がオンになり、その刺激信号を発出すると、埋め込まれた刺激装置が応答し、標的効果器に刺激信号を発出し、この刺激信号は、興奮性または抑制性のいずれかであり得る。
本発明の例示的実施形態が図5A〜Cに示されており、ウェアラブルおよび埋込型構成要素を特徴とする。
図5Aで、ディスク状のウェアラブルシステム100が開示されている。図5A〜Bに示されるように、システム100は、ウェアラブルtsDCS制御装置102を含み、これは、任意選択で電極表面11を提供するその皮膚側104で患者に付着される。制御装置102との外的対話は、ユーザ介入のためのボタンもしくはタッチスクリーンによるもの、またはポータブルデバイスもしくは携帯電話103との無線対話によるものである。制御装置102は、埋め込まれた制御ユニット106の動作を指示する。
制御装置102は、システム制御の提供のために、小型の計算および同期ユニット16をメモリ19と共に含み、さらに信号極性および機能制御装置18を含む、デバイス10の同種回路(図4A)を組み込み、ロードされた適切な命令が、埋め込まれた制御ユニット106の命令のためにメモリ19にセットされている。制御ユニット106は、充電式電源(図示せず)を含み、制御装置102からの命令に従って、膀胱などの標的効果器を神経支配する局部末梢神経108に電気刺激を印加する。刺激は、必要に応じて調整することができ、本発明の様々な実践では、一定の連続的な不変の直流電流刺激として提供されるか、またはパルス直流電流刺激でもよい。
一実施形態では、埋め込まれた制御ユニット106は、神経108に付着されたカフ電極110として図示される適切な電極に刺激信号を送達するための電気リード線109を提供する。一実施形態では、制御装置102は、患者にデバイスを付着するためのデバイスの皮膚側に電極表面111を提供する。この電極の表面は、患者への付着を補助するために導電性接着剤を含むことがあり、その位置でのtsDCS刺激の印加を可能にする。本発明のさらなる実施形態では、システム100は、埋め込まれた制御ユニット106をさらに含み、埋め込まれた制御ユニット106と協働し、埋め込まれた制御ユニット106は、リード線109を介してカフ電極108などの単一または複数の埋め込まれた電極をさらに駆動する。カフ電極108は、対象の末梢神経または自律神経110の周りに配置され、神経線維を刺激して膀胱などの効果器の興奮または抑制のいずれかを実現する。カフ電極は、シリコーンなどの柔軟な可撓性材料から形成され、これは、電極を可撓性にして、一般的な電極よりも末梢神経を損傷しにくくする。代替として、陽極および陰極となる2つの電極リード線は、神経に接触してまたは神経に近接して位置決めされる。
本教示の別の実施形態では、埋め込まれた刺激装置を無線で制御するウェアラブルtsDCSユニットが関連の生理学的状態を検出するセンサと組み合わされて、閉ループシステムを形成する。ウェアラブルtsDCSユニットは、埋め込まれるかまたはウェアラブルのいずれかであり得るセンサと無線通信し、センサが関連の状態を検出したとき、埋め込まれた刺激装置を介するtsDCS脊髄刺激および効果器の刺激を活性化する。センサは、血圧、心拍数、体温、呼吸数、皮膚緊張度、皮膚伝導度、酸素化状態、膀胱圧、尿浸透圧、血行動態パラメータ、EKGによる特定の心律動、尿道圧、肛門括約筋圧、EMGによる筋収縮状態、EEGによる特定の脳波、電解質、特定の組織区画内の特定のタンパク質および信号伝達分子、血中グルコース濃度、胃酸pH、消化管運動音、環境因子、例えば特定の視力、音、および信号、ならびに所期の用途に応じた他のパラメータを検出するように構成することができる。したがって、神経調節システムは、特定の状態を感知すると作動され、その状態がなくなると作動停止される。本教示の一実施形態では、システムはまた、本明細書で上に列挙したものなどの所定のパラメータを検出するように構成され、所定のパラメータの感知値を制御装置構成要素に提供するように構成されたセンサも含む。制御装置構成要素は、刺激を開始するようにさらに構成され、刺激の開始は、感知値が特定の状態を示す所定値未満であるか、それとも所定値を超えているかによって決定される。
本発明の閉ループシステム200は、図5Cに示されており、より少ないユーザ対話でバックグラウンドにおいて自律的に動作するように構成される。当業者には理解されるように、システムは、埋め込まれた医療システムに利用可能である図示されるような現代の無線通信を利用する。システム200は、tsDCS制御装置102と、神経110において埋め込まれた電極108を含む、埋め込まれた制御ユニット106とを含み、また埋め込まれたフィードバックデバイス112を含む。フィードバックデバイス112は、制御装置102と無線通信し、制御装置102は、次いでそれに応答して、必要に応じて刺激機能を調整または開始もしくは停止するように制御ユニット106に命令する。埋め込まれた刺激装置の制御ユニット106は、制御装置102からの命令に従って、リード線109および電極108を介して神経110を刺激する。
膀胱管理実施形態では、埋め込まれたフィードバックデバイス112は、膀胱圧センサ112Aである。センサ112Aからの膀胱データは制御装置102に無線で提供され、制御装置102は、埋め込まれた制御ユニット106に無線で命令するか、または制御ユニット106に直接命令して、電極11による膀胱神経108の刺激を制御し、例えば失禁を低減させるかまたは尿閉を低減させる。
制御装置ユニット102は、制御ユニット106へのその制御命令を実行するために、ヒューマンインターフェース、一般的な命令メモリ記憶装置および論理回路、ならびに/またはマイクロプロセッサを有する。さらに、制御ユニットは、それに応じて電極に電力供給する電源を有する。好ましくは、電源は無線充電式である。
埋め込まれたセンサ112Aは、システム200内のデバイス制御装置回路102と共にループを閉じ、それにより、記憶されたプロファイルに従って、ユーザの介入なしでシステムが自動的に調整を行う。膀胱調節の一実施形態では、埋め込まれたセンサ112Aは、膀胱圧センサなどの膀胱機能センサであり、これは、膀胱内の尿量によって及ぼされる膀胱圧を検出し、制御装置102から発出される所要の神経刺激命令を使用可能にして、制御ユニット106に無線で通知して刺激を開始し、排尿の制御などの所望の結果を得る。一実施形態では、膀胱センサ112Aからのデータは、制御ユニット106によって直接作用を及ぼされる。
図5Cの閉ループシステム200のさらなる用途では、中枢自律神経出力を調節する刺激(一次刺激が自律神経系の交感神経枝または副交感神経枝のいずれかを調節する)がループシステム200と組み合わされる。したがって、脳および脊髄刺激は、ウェアラブルtsDCS制御装置の制御下にある埋め込まれた刺激装置と組み合わされる。
本教示の実施形態はtsDCS脊髄刺激を特徴とすることが理解されるであろう。多くの実施形態では、このtsDCS刺激は、標的効果器につながる末梢神経の刺激によって増強される。これらの教示の実践において、末梢直流電流刺激(pDCS)は、連続的であり不変である定常状態の直流電流刺激であり、他の実施形態では、効果器に関連する末梢神経または自律神経線維の刺激は、パルス電気刺激、連続DCS、パルスDCS、または他の交流信号を含むことがある。本教示は、当技術分野で知られているような無線微小刺激装置で実践されることもある。
本発明の実践では、tsDCSを様々な構成で適用する。tsDCS刺激システムはtsDCS刺激を提供し、tsDCS刺激は、様々な実施形態において単独で印加されて、対象の標的神経経路を好ましくは分極する。他の実施形態では、神経軸に沿った他の部位での刺激と共にtsDCS分極刺激を組み込む協調的多点神経刺激が使用される。本発明者らは、tsDCS刺激と、脳刺激および/または末梢刺激を含む少なくとも1つの他の刺激との組合せにより、この多点刺激を提供する。
本教示の一実施形態では、末梢刺激は、連続的な定常状態であり、不変である。本発明の別の実施形態では、刺激される自律神経線維の興奮または抑制は、印加される電気刺激の周波数に応じて決まる。例示的であるが非限定的な本発明の1つの実践では、副交感神経線維の抑制は高周波単極電気刺激で実現され(約50〜100Hzよりも大きい)、副交感神経線維の興奮は低周波単極電気刺激で実現される(約50〜100Hz未満)。同様に、交感神経線維の抑制は高周波電気刺激で実現され(約50〜100Hzよりも大きい)、交感神経線維の興奮は低周波電気刺激で実現される(約50〜100Hz未満)。様々な実施形態において、約1〜6mAまでの範囲内またはより多くの場合には1〜4.5mAで、皮膚表面電極を介して刺激が印加される。
本教示の実施形態では、tsDCSデバイスは完全に埋込型であり、デバイスから背側脊髄位置および腹側位置への電極リード線が皮下にトンネルされている。末梢刺激のために機能するtsDCSデバイスからの電極リード線も皮下にトンネルされ、調節される効果器の適切な神経に電極が埋め込まれる。別の実施形態では、tsDCSデバイスは、体外に留まりウェアラブルであるが、表面に実装されたまたは埋め込まれた末梢刺激のための電極リード線を有する。
例示的な単刺激実施形態
単刺激プロセスは、単一の一定の電流刺激源を適用することを含み、典型的には、tsDCS刺激装置のみによって送達されることを理解されたい。本発明の実践では、tsDCSを採用して脊髄内の神経活性化の増加または減少領域を誘発する。
本発明は、効果器などの身体機能を調節するために経脊髄直流電流刺激を利用する方法およびシステムを教示する。本開示の例示的実施形態は、自律神経系(ANS)の効果器成分を調節するためにそのようなtsDCSを適用することを対象とする。例示的実施形態は、膀胱機能不全を治療するための方法および装置を含む。本開示は、本発明の範囲の例示に過ぎず、限定ではない。
ここで、本発明の様々な実践において、tsDCS刺激が脊髄位置に印加されることが理解されるであろう。末梢部位(または経皮的迷走神経刺激の場合には脳部位)では、刺激は、本発明の範囲内でより多様であり得る。本発明のいくつかの実践では、単極直流電流刺激が神経軸に沿った特定の点に印加される。単極直流電流電気刺激が印加され、陽極性または陰極性として特徴付けられる。本発明の一実施形態では、この特徴付けは、対象の脊髄位置と戻り位置との間に印加される電流源の極性を示す。所望の結果に応じて、回路は、対象の位置では陽極性、正として、戻り位置では陰極性、負として、またはその逆に適用されることがある。
様々な実施形態で単一および/または複数の単極直流電流刺激回路が採用される。これらの単極刺激は、陽極性または陰極性として特徴付けられ、刺激された経路にわたる分極効果を有する。この分極は、対象の神経経路にわたって流れる神経信号の伝達効率に対する有意な好ましい調節効果を有する。神経経路に印加される単極刺激は、分極および調節効果の可能性を有する。本発明の様々な実践において、本発明者らは、それに従ってこれらの効果に関与しかつそれらを利用する。
覚醒している健常マウスにおける本発明の例示的実施形態では、腰仙脊髄(L6〜S3)にある活性陰極電極と腹部にある戻り陽極電極とを用いた刺激装置を採用して、tsDCSの二電極単刺激構成を利用した。膀胱機能の測定を可能にするために、膀胱内に膀胱瘻チューブ(PE50チューブ)を外科的に配置して、膀胱圧および尿排出量の測定を可能にした(図6)。膀胱圧、ならびに排尿および非排尿収縮の頻度を、陰極性tsDCSで刺激する前にベースラインで測定した(図7A)。刺激を提供する陰極性tsDCSを用いたそのような実施形態では、基底圧の低下、膀胱収縮の振幅の増加、排尿収縮間の間隔の増加、および非排尿収縮の回数および振幅の増加がある。一連の実験において、20分の陰極性tsDCS後、これらの効果は依然として明瞭であった。そのような刺激により、膀胱はより完全に収縮することができる。
また、同じ刺激パラダイムを、刺激試験の30日前にT10レベルで脊髄病変を生じさせた、慢性脊髄損傷がある覚醒しているマウスでも評価した。これらの対象では、過剰な膀胱活動および非排尿収縮があり、健康な対象と比較して膀胱圧が高く、排尿筋反射亢進の症状である。これらの対象でベースライン測定を行い、続いて、陰極性tsDCS中および20分の陰極性tsDCSの2時間後に測定を行った。慢性脊髄損傷を有する覚醒している対象では、基底圧が低下し、非排尿収縮が大きくなり、排尿収縮の頻度が減少する。覚醒している健常対象と同様に、陰極性tsDCSは、慢性脊髄損傷がある対象の膀胱がより完全に収縮できるようにする。
マウスでの慢性的な脊髄損傷の治療に関する別の実施形態では、腰仙脊髄(L6〜S3)にある陽極性電極と、一実施形態では対象の腹部の前面にある戻り電極、別の実施形態では経尿道的挿入によって膀胱壁にある戻り電極とを用いて、tsDCSの二電極構成を利用した。図7Bは、重度の慢性脊髄損傷がある脊椎動物における膀胱貯留および排尿反射を開始した脊髄−膀胱tsDCS刺激を示す。対象は、尿を貯留できないことにより過剰な排尿によって引き起こされた皮膚炎を示した。上のトレースは、脊髄にある陽極と膀胱内にある陽極とを用いた刺激前、刺激中および刺激後の膀胱内圧を示す膀胱内圧トレースを提供する。刺激前または刺激後に反射がなかったことに留意されたい。右側のトレースは、反射の構造を示すために時間スケールを拡大したものである。下のトレースは、刺激1(膀胱内の陽極)および刺激2(膀胱内の陰極)の前、その間およびその後を示す、同じ対象からの膀胱内圧トレースを示す。刺激がオフにされた後でさえ、尿を貯留する機能の改善が見られる。
急性脊髄損傷があるマウスのさらなる研究では、tsDCSの同じ二電極構成を利用した。急性脊髄損傷では、脊髄ショックおよび排尿筋無反射があり、その期間中、高い、場合により危険な圧力まで膀胱が満たされ、健常な対象または慢性脊髄損傷がある対象よりも排尿圧が有意に高くなる。これは、膀胱への伸展損傷、および上部尿路の合併症を引き起こす可能性があるため、重大な健康上の問題である。
図7Cは、急性完全脊髄損傷がある対象での膀胱反射およびtsDCSの効果を示す。ベースライン反射は非常に高い排尿圧を示し、この排尿圧は、膀胱配置での脊髄陽極/陰極によってさらに増加された。この効果は、電流がオフにされてから少なくとも10分間維持された。膀胱内の脊髄陰極および陽極を用いて極性が切り替えられると、この構成は排尿圧を直ちに低下させ、排尿収縮間の間隔を減少させ、急性脊髄損傷後に排尿筋無反射となった対象にこの構成が療法的に有用な効果を有することを示す。
これらの結果は、健常な哺乳動物および脊髄損傷した哺乳動物のいずれにも当てはまる。小サイズまたは中サイズの脊髄ニューロンの興奮性は、陰極性tsDCSによって増加され、陽極性のtsDCSによって低減する。自律神経節前ニューロンはサイズがより小さいため、この原理に従う。本発明者らは、腰仙領域での陰極性tsDCSが脊髄副交感神経節前ニューロンの興奮性を高め、したがって蓄尿反射を減少させ、排尿反射を増加させることを見出した。極性の反転は、逆の調節を誘発し、すなわち尿貯蔵反射を増加させ、排尿反射を減少させる。そのような実践では、本発明者らは、膀胱の内部または周囲への戻り電極の配置が調節効果を高めることを見出した。
上記の陽極性脊髄/陰極性膀胱配置は、充填時間をより長くできるように膀胱排尿反射を遅延させるのに有効である。さらに、同じ構成が効率的な排尿をもたらし、これは、各排尿サイクル後の基底圧の低下で明らかになる。本発明の例示的実施形態では、この陽極性脊髄/陰極性膀胱配置は、膀胱への副交感神経入力に対する抑制効果を有する。副交感神経入力の抑制は、膀胱排尿筋の弛緩および膀胱括約筋の収縮を引き起こす。これは、排尿収縮間の間隔をより長くする。さらに、この構成は、副交感神経よりも交感神経の影響を増大させることができる。この治療は、低圧貯蔵および効率的な膀胱排尿の条件を実現するために有益である。本発明のさらなる実践では、脊髄位置および膀胱位置に貼付される電極の極性を切り替えることにより、排尿筋無反射の症状が治療される。
本発明の実践では、排尿筋反射亢進を伴う尿失禁の症状がある患者は、副交感神経性緊張を低下させる構成でのtsDCSの適用によって治療される(図8)。副交感神経性緊張のそのような低下は、排尿筋収縮の弛緩および膀胱括約筋の収縮の増大をもたらす。一実施形態では、これは、S2〜S4のレベルでの陽極性tsDCSによって非侵襲性で実現され、陰極性戻り電極は、腸骨よりも上の皮膚などの腹部位置で前側に位置決めされる。別の実施形態では、戻り電極は、経尿道的に膀胱内に位置決めされる(図9)。本発明のさらなる実践では、これらの極性(すなわち、陽極性および陰極性の割当て)は、閉尿の症状の治療のために逆にされる。この実施形態では、この構成は、副交感神経性緊張の亢進をもたらす。
本発明のさらなる実施形態では、尿失禁の症状がある対象は、交感神経性緊張を亢進する構成でのtsDCSの印加によって治療される(図10)。交感神経性緊張のそのような亢進は、排尿筋の弛緩および膨張、膀胱括約筋の収縮、ならびに膀胱収縮を引き起こす副交感神経の抑制をもたらす。これは、T11〜L2脊髄レベルでの陰極性tsDCSによって非侵襲性で実現され、陽極性戻り電極が腹部位置で前側に位置決めされる。この実施形態の変形形態(図11)では、戻り電極は、経尿道的に膀胱内に位置決めされる。本発明のさらなる実践では、これらの極性(すなわち、陽極性および陰極性の割当て)は、尿閉の症状の治療のために逆にされ、交感神経性緊張の低下を実現する。
本発明の実施形態は、単一のtsDCS刺激回路を有する方法およびシステムを含み、このtsDCS刺激回路は、脊髄の単刺激のためのものであり、対象の脊髄位置に電極を配置し、身体の前面に戻り電極を配置することによって画定され、それにより、これらの電極間に対象の経路を画定する。本発明の様々な実践において、これらの電極は、陽極または陰極のいずれかとして割り当てられ、それにより、tsDCS刺激回路が、電極間に電流を印加し、脊髄興奮性を調節するように作成される。印加された電流は、所望の信号特性およびレベルを有して送達される。
本発明のウェアラブル単刺激デバイス実施形態では、皮膚表面タイプの2つの電極があり、活性脊髄電極および戻り電極としての役割を果たす。一実施形態では、ウェアラブルデバイスの表面が脊髄電極を提供し、このデバイスはまた、脊髄の反対側にある戻り電極に接続し、戻り電極は、腹部または腸骨稜などの皮膚表面に配置される。別の実施形態では、参照電極が、例えば尿道カテーテル挿入によってまたは外科的に膀胱の内部に配置される。対象の脊髄位置は、標的効果器への脊髄出力に基づいて選択される。
本発明の埋込型単刺激デバイスでは、2つの電極があり、これらの電極は埋込型電極であり、活性脊髄電極および戻り電極としての役割を果たす。一実施形態では、単刺激デバイスは完全に埋込型であり、デバイスから背側脊髄位置および腹側位置への電極リード線が皮下にトンネルされる。対象の脊髄位置は、標的効果器への脊髄出力に基づいて選択される。
例示的な二重刺激実施形態
単独でのtsDCSによる脊髄刺激を利用する戦略の他に、tsDCSによる脊髄刺激と追加の刺激とを組み合わせる戦略も開示する。
様々な実施形態において二重刺激を教示する。例示的実施形態は、重大な神経経路を分極するためのシステムとして電気的につながれた2つの刺激装置;埋め込まれた微小刺激装置と無線で通信するウェアラブル単刺激デバイス;およびtsDCSを使用する脊髄刺激と組み合わされたtDCSを使用する皮質刺激があるときなどには、電気的に隔離された2つの別個の刺激装置を含む。本開示に従ってさらに他の構成が生じ、それらも本発明の範囲内にある。
本発明の1つの二重刺激実施形態では、標的の効果器につながる神経のパルス末梢直流電流刺激(pDCS)と共に、同時のtsDCS脊髄刺激が提供される。1つの特定の実施形態では、得られる分極回路は、活性脊髄tsDCS刺激回路と活性パルスpDCS末梢刺激回路との間に画定される。
本発明の一実施形態では、膀胱への副交感神経出力を増加させる上述の脊髄刺激が骨盤神経における副交感神経節前線維の電気刺激と組み合わされ(図12)、陰極性tsDCSはS2〜S4に印加される。骨盤内臓神経の刺激は、膀胱排尿筋の収縮および膀胱括約筋の弛緩をもたらし、それにより閉尿の症状をさらに治療する。本発明のさらなる実践では、これらの極性(すなわち、陽極性および陰極性の割当て)は、尿失禁の症状の治療のために逆にされ、副交感神経性緊張の低下をもたらす。
外尿道括約筋(EUS)の横紋筋を神経支配する体性遠心性神経の過活動は、括約筋の収縮をもたらす。本発明の別の実施形態では、膀胱への副交感神経出力を増加させる上述の脊髄刺激は、埋め込まれた電極を使用したEUSを神経支配する陰部神経の電気的抑制と組み合わされ(図13)、陰極性tsDCSはS2〜S4に印加される。この組合せは、膀胱排尿筋の収縮、膀胱括約筋の弛緩およびEUSの弛緩をもたらし、それにより閉尿の症状をさらに治療する。本発明のさらなる実践では、これらの極性(すなわち、陽極性および陰極性の割当て)は、尿失禁の症状の治療のために逆にされ、EUSを神経支配する陰部神経が、埋め込まれた電極を使用して電気的に刺激される。
尿道を通る尿の流れに応答して発火する感覚求心性神経の刺激は、膀胱収縮の強さおよび排尿効率を高める。本発明の別の実施形態では、膀胱への副交感神経出力を増加させる上述の脊髄刺激は、埋め込まれた電極を使用した陰部神経の電気的刺激と組み合わされ(図14)、陰極性tsDCSはS2〜S4に印加される。
さらなる実施形態では、膀胱への交感神経出力を増加させる陰極性脊髄刺激が、陰部神経を刺激する埋め込まれた微小刺激装置電極と組み合わされ(図15)、陰極性脊髄刺激がT11〜L2に印加される。交感神経性緊張の亢進は、膀胱排尿筋の弛緩および膀胱括約筋の収縮をもたらし、陰部神経の刺激は、外尿道括約筋の収縮をもたらし、それにより尿失禁の症状をさらに治療する。本発明のさらなる実践では、これらの極性(すなわち、陽極性および陰極性の割当て)は、閉尿の症状の治療のために逆にされ、EUSを神経支配する陰部神経が、埋め込まれた電極を使用して電気的に抑制される。そのような実施形態では、埋め込まれた微小刺激装置はtsDCS制御装置と通信し、tsDCS制御装置によって制御され、このtsDCS制御装置は脊髄刺激を提供し、ウェアラブルデバイスでも埋め込まれた皮下デバイスでもよい。
さらなる実施形態では、膀胱への交感神経出力を増加させる陰極性脊髄刺激が、骨盤内臓神経の副交感神経節前線維を抑制するために適用される埋め込まれた電極と組み合わされ(図16)、陰極性脊髄刺激がT11〜L2でのものである。交感神経性緊張の亢進は、膀胱排尿筋の弛緩および膀胱括約筋の収縮をもたらし、骨盤内臓神経の抑制は、膀胱排尿筋のさらなる弛緩をもたらし、それにより尿失禁の症状をさらに治療する。本発明のさらなる実践では、これらの極性(すなわち、陽極性および陰極性の割当て)は、閉尿の症状の治療のために逆転される。
本発明の完全に埋込型の皮下二重刺激実施形態では、2つの回路が、制御装置デバイスから出る4本のリード線によって電力供給される。この実施形態は、標的効果器の神経に印加される2つの同時刺激、すなわち脊髄刺激と末梢刺激とを送達する。これらの2つの回路と共に2つの別個の刺激電流経路がある。しかしまた、これらの回路が相互作用して、1つの回路の陽極(すなわち、脊髄回路の脊髄における活性電極)と神経回路の神経での活性陰極との間に結果的な刺激電流経路を形成する。これは、上述した2つの活性電極間の神経経路に沿って下る分極流を提供する。この二重刺激実施形態では、第1の電流経路は、対象の脊髄位置に活性脊髄電極を配置し、非脊髄位置に戻り電極を配置することによって画定されるtsDCS脊髄回路であり、これらの電極間の組織にわたって印加電流が流れる。第2の電流経路は、標的効果器の神経またはその近傍に活性陰極および陽極電極を配置することによって画定される末梢回路である。
さらなる実施形態では、二部品の半埋込型刺激デバイスが提供される。第1の構成要素は、皮膚付着によって貼付される活性脊髄電極と、戻り電極とを含むウェアラブル単刺激デバイスである。第2の構成要素は、それ自体の電源を有する2本のリード線を有する埋め込まれた末梢刺激装置または微小刺激装置である。第2の構成要素の両方のリード線が標的効果器の神経に接触するか、または近接している。ウェアラブル構成要素は、埋め込まれた構成要素と無線で通信することができる。ウェアラブル構成要素がオンになり、その刺激信号を発出すると、埋め込まれた刺激装置が応答し、標的効果器に刺激信号を発出し、この刺激信号は、興奮性または抑制性のいずれかであり得る。
ウェアラブル二重刺激デバイスのさらなる実施形態では、2つの回路が、制御装置デバイスから出る4本のリード線によって供給される。この実施形態は、2つの同時刺激を送達する。第1の刺激は、皮膚付着によって貼付された活性脊髄電極と、戻り電極とを介して送達される脊髄刺激である。第2の刺激は、中枢自律神経出力を調節し、経頭蓋直流電流刺激(tDCS)または経皮迷走神経刺激(tVNS)のいずれかであり得る。これらの2つの回路と共に2つの別個の刺激電流経路があり、それらは互いに電気的に絶縁されている。
三重刺激の実施形態
本明細書ではまた、脊髄刺激、末梢刺激、および中枢自律神経出力の刺激を組み合わせて自律機能を調節する戦略を述べる。いくつかの用途では、前に開示した単刺激および二重刺激に基づく戦略で十分であり得る。他の用途では、tsDCSおよび場合により末梢刺激による脊髄レベル調節前に中枢自律神経出力を直接調節することが必要または有益であろう。中枢自律神経出力を調節するための非侵襲性の方法は、様々な手法を使用して他の刺激部位と組み合わされる。
経頭蓋直流電流刺激(tDCS) − いくつかの異なるtDCSモンタージュが自律神経系を調節するために利用されている。一次運動野上の陽極性tDCSと、対側性眼窩上野領域上の陰極戻り電極とが交感神経活動を増加させることが報告されている(Clancy et al., Brain Stim., 2014, 7:97-104)。左背外側前頭前野(DLPFC)の陽極性刺激は副交感神経活動を増加させると報告されており、右DLPFCの陽極性刺激は交感神経活動を増加させると報告されている(Brunoni et al., Psychoneuroendocrinology, 2012)。他の研究では、側頭葉上の陽極性tDCSが副交感神経活動の増加をもたらすことが報告されている。したがって、自律神経出力を調節するために、非侵襲性のtDCSを関連の脊髄レベルでのtsDCSと結合させることができる。一実施形態では、脳からの交感神経出力は、一次運動野上の陽極性tDCSによって増加され、高い胸部レベルでの陰極性tsDCSによって標的の効果器の脊髄レベルでさらに増加される。この実施形態は図17に示されており、皮質電極がウェアラブルtsDCS制御装置と組み合わされて示されている。別の実施形態では、脳からの交感神経出力は、右DLPFCの陽極性tDCSによって増加され、陰極性tsDCSによって標的の効果器の脊髄レベルでさらに増加される。さらに別の実施形態では、脳からの副交感神経出力は、側頭葉上の陽極性tDCSによって増加され、陰極性tsDCSにより、標的の効果器のS2〜S4脊髄レベルまたはDMVの脳幹レベルのいずれかでさらに増加される。
経皮迷走神経刺激(tVNS) − 迷走神経の耳介枝は、耳介、外耳道、および鼓膜の後側部分に感覚を供給する(図18A)。神経細胞体が迷走神経の上(頸静脈)神経節に位置し、脳幹内の孤束核(NTS)の核に投射する。耳甲介の電気刺激(tVNS)は、NTSの活性化およびその既知の投射(腕傍核、側坐核、視床下部、扁桃)を引き起こす。脳幹内の迷走神経の背側運動核(DMV)は、節前遠心性線維として迷走神経を下って投射する副交感神経ニューロンの細胞体を含む。NTSとDMVとの直接の関連性が述べられており、NTSがDMVに投射を送ることが確認されている。電気刺激(10〜50mA、30Hzパルス周波数、200マイクロ秒パルス幅)を使用する外耳の耳珠の刺激は、交感神経放電の減少をもたらす(Clancy et al., Brain Stim., 2014, 7:817-877)。本発明の実践では、交感神経性緊張を低下させ、それを脊髄レベルでの陽極性tsDCSと組み合わせるためにこの非侵襲性の方法を利用する。脳からの交感神経出力は、tVNSによって減少され、印加される陽極性tsDCSによって標的の効果器の脊髄レベルでさらに減少される。この実施形態は図18Bに示されており、耳介刺激がウェアラブルtsDCS制御装置と組み合わされている。
経頭蓋磁気刺激(TMS) − TMS(反復および一回パルスの両方)は、自律神経系を調節する研究で利用されている。標的の部位には左頭側頭頂皮質(Lai et al., 2010)および一次運動野Ml(Vernieri et al., 2009およびYozbatiran et al, 2009)が含まれる。これらおよび他の研究において、TMSは、自律神経制御に対する変化を及ぼすことが判明した。それに従って、さらなる実施形態ではTMSを脊髄レベルでのtsDCSと組み合わせる。図17は、tDCSによる皮質刺激を示すものとして例示されているが、TMSが本発明の実践における皮質刺激の代替源となることが理解されるであろう。
寒冷/温熱昇圧 − 氷水のバケツに対象の手を浸けると、心拍数および脈圧が増加することが知られており、感覚求心性神経によって活性化される交感神経性緊張の亢進に起因すると考えられている。したがって、本発明の実践では、この手法を、自律神経出力の調節を開始するための方法として利用する。氷水のバケツは実用的ではないため、この効果を実現するための代替法を利用する。より具体的には、一実施形態では、この効果は、上背などの皮膚の感熱性領域に付着された冷却/加熱パッドとして送達されるか、または別の実施形態では、冷却/加熱要素を含むベストまたは手袋として提供される。このデバイスは、「冷刺激」または「温刺激」に切り替えられて、その感覚を皮膚に提供する。特定の効果器への交感神経性緊張を亢進するために、対象の皮膚に対する「冷刺激」の活性化を関連の脊髄レベルでの陰極性tsDCSと組み合わせる。特定の効果器への副交感神経性緊張を亢進するために、対象の皮膚に対する「温刺激」の活性化をS2〜S4レベル(またはDMV脳幹レベル)での陰極性tsDCSと組み合わせる。このようにして、使用される温度「設定」に応じて、交感神経系または副交感神経系のいずれかを通る遠心性神経出力が活性化され、陰極性tsDCSは、脊髄の自律神経ニューロンに向かう信号を増幅する。
薬理学的自律神経調節剤 − いくつかの薬理剤は、自律神経系に対する調節効果を有する。交感神経興奮薬は、交感神経性緊張を亢進し、アンフェタミンおよびフェニレフリンが挙げられる。交感神経遮断薬は、交感神経性緊張を低下させ、プラゾシンおよびヨヒンビンが挙げられる。副交感神経興奮薬は、副交感神経性緊張を亢進し、ムスカリン、ピロカルピンおよびコリンエステルが挙げられる。副交感神経遮断薬は、交感神経性緊張を低下させ、スコパラミンおよびアトロピンが挙げられる。交感神経興奮薬は、副交感神経遮断薬と併用して投与することができ、副交感神経興奮薬は、交感神経遮断薬と併用して投与することができる。特定の分子特性に応じて、これらの薬理剤は、経口で、皮下に、筋肉内に、経皮的に、静脈内に、または蓄積注射として投与することができる。薬理学的自律神経調節剤が図19に示されている。
当業者には理解されるように、本発明の実践では、自律神経出力を調節し、効果を監視するための様々な戦略を使用する。例えば、様々な実施形態において、心拍数、心拍変動、筋交感神経活動を記録する微小神経電図、血圧、脈圧、瞳孔サイズ、皮膚コンダクタンス、交感神経皮膚反応、呼吸数、脳血管反応性、および体温を含む読取値を監視し、それらの有用性は当業者には理解されるであろう。
別の実施形態では、中枢自律神経出力を調節する上述した様々な手法は、脊髄刺激と組み合わせられ、標的効果器につながる神経のレベルで送達される第3の末梢刺激とさらに組み合わせられて、有用な療法効果をもたらす。この三重刺激手法が図20に示されている。
さらなる実施形態では、二部品の半埋込型刺激デバイスが提供される。第1の構成要素は、脊髄刺激である第1の刺激と、中枢自律神経出力を調節する第2の刺激とを提供するウェアラブル二重刺激デバイスである。第2の構成要素は、それ自体の電源を有する2本のリード線を有する埋め込まれた末梢刺激装置または微小刺激装置である。第2の構成要素の両方のリード線が標的効果器の神経に接触するか、または近接している。ウェアラブル構成要素は、埋め込まれた構成要素と無線で通信することができる。ウェアラブル構成要素がオンになり、その刺激信号を発出すると、埋め込まれた刺激装置が応答し、標的効果器に刺激信号を発出し、この刺激信号は、興奮性または抑制性のいずれかであり得る。
様々な実施形態では、効果器につながる神経を介する効果器刺激は、電気刺激、磁気刺激、および音響刺激などを含めたエネルギーモダリティを使用して実現される。いくつかの場合、電気刺激を使用してそのような神経を直接刺激することが望ましい。本発明のいくつかの実施形態では、電気刺激は、平滑筋もしくは骨格筋につながる神経に印加されるか、または標的の効果器に関連する神経節もしくは神経叢に印加される。自律神経系に適用されるいくつかの実施形態では、刺激は、交感神経幹もしくは神経節、腹腔神経節、上腸間膜神経節、下腸間膜神経節に直接印加されるか、または節後神経で刺激される。副交感神経系は、神経支配を受ける器官に近接した、またはその器官内に配置される神経節を有し、いくつかの実施形態では、電極は、これらの副交感神経節に近接して配置されて標的効果器で所望の模擬効果を実現する。
末梢パルス強度は、典型的には5〜40mAの範囲である。1つの三重刺激膀胱実施形態では、連続的なtsDCSが脊髄の仙骨領域内のオヌフ核に印加される。tsDCSは、2〜5mAの範囲内の典型的な強度で印加される。
末梢パルス強度は、典型的には5〜40mAの範囲である。1つの三重刺激膀胱実施形態では、連続的なtsDCSが脊髄の仙骨領域内のオヌフ核に印加される。tsDCSは、2〜5mAの範囲内の典型的な強度で印加される。
膀胱機能不全の治療において、所望の閾値以下の脊髄tSDCSおよび閾値以下のpDCSは、効果器が電気刺激に応答するレベルを考慮して確立され、このレベルは、閾値インジケータおよびメリット値としての役割を果たす。一実施形態では、このレベルは2〜5mAの範囲内である。例示的実施形態では、脊髄での3〜4.5mAの刺激と、カテーテル式の活性末梢電極を介する2〜3mAの刺激、または腹側表面電極を介して印加されるときには2.5〜3.5mAの刺激とは、戻り電極が骨の位置に配置されると仮定して所望の閾値以下の末梢刺激を送達する。末梢戻り電極が、例えば膀胱の近くまたは膀胱内への配置によって膀胱と密接に関連して配置される場合、閾値は、それに従って典型的には同じ範囲内で検出および調整される。
本明細書で述べる実施形態は、上記の刺激を送達する外部デバイス、ウェアラブルデバイス、または埋め込まれたデバイスを用いて排尿筋反射亢進または排尿筋無反射をもたらす神経原性膀胱状態を治療するための基礎となる。本明細書で述べられ、tsDCSベースの手法を使用した膀胱調節のための実践につながる知見は、腎臓、肺、心臓、膵臓、胃腸系、胃、肛門括約筋、および他の自律神経制御される効果器を制御するのに直接適用可能であり、それに従って本明細書に開示される原理の下で実践され得ることを当業者は理解するであろう。ここで、本発明の実施形態の実践における単刺激、二重刺激、および三重刺激の構成および方法を図示してきたことを理解されたい。
上記の手法のいくつかは、自律神経系の交感神経枝または副交感神経枝のいずれかを調節する一次刺激と、誘発反応を増幅する脊髄刺激とを組み合わせる。いくつかの状況では、標的効果器に影響を及ぼす単一の一定のtsDCS刺激が有用であり、成功している。他の状況では、二重刺激手法は、脊髄レベルでの自律神経出力の増幅が療法効果に十分なものとなる状況において有用である。他の状況では、一次刺激および脊髄刺激は、第3の刺激と組み合わせられ、第3の刺激は、標的の効果器につながる神経のレベルで送達されて、有用な療法効果をもたらす。効果器につながる神経を介する効果器刺激は、電気刺激、磁気刺激、および音響刺激などを含めた選択されたエネルギーモダリティを使用して実現される。いくつかの場合、電気刺激を使用してそのような神経を直接刺激することが望ましい。電気刺激は、平滑筋もしくは骨格筋につながる神経を対象とするか、またはANSに関連する神経節もしくは神経叢に印加される。これは、交感神経幹もしくは神経節、腹腔神経節、上腸間膜神経節、下腸間膜神経節に直接印加されるか、または節後神経で刺激される。副交感神経系は、神経支配を受ける器官に近接した、またはその器官内に配置される神経節を有し、いくつかの例では、電極は、これらの副交感神経節に近接して配置され得る。
別の実施形態では、TMSまたはtDCSを使用する運動野の刺激は、tsDCSを使用する脊髄刺激、および随意制御下にある横紋筋につながる神経の末梢刺激と組み合わされる。それが膀胱機能不全に関係するため、この手法は、随意制御下にある横紋筋である外尿道括約筋(EUS)を強化するために利用することができる。好ましい実施形態では、TMSは、EUSに関連する運動野領域に印加され、陰極性tsDCSは、EUSに対応する脊髄レベルで印加され、末梢刺激は、埋め込まれた電極を使用してEUSにつながる陰部神経に印加される。遠位効果器(例えば、尿括約筋)の神経機能不全が治療対象であるこの実施形態の1つの実践では、tsDCS脊髄刺激は、脊髄位置での脊髄への治療期間(「セッション」)にわたって印加され、その効果器の神経制御に関連する神経経路に影響を及ぼし、末梢刺激および皮質刺激は、その効果器に関連する位置に印加されて、その標的効果器への神経連絡を改良する。別の実施形態では、この手法は、外肛門括約筋に適用される。
本発明の例示的な三重刺激実施形態では、パルス刺激および皮質刺激が、対象の脊髄位置(神経脊髄接合部)での(すなわち、膀胱などの対象の標的末梢器官の皮質制御に関連する神経脊髄接合部での)tsDCSの存在下で印加される。皮質、脊髄、および末梢刺激部位は、共通の神経経路によって接続される。神経経路に印加されるとき、末梢刺激装置デバイス(例えば、デバイス14)からの印加された末梢刺激パルスは、皮質刺激装置12または12Aからの印加された皮質刺激パルスと同期され、それにより、任意の1サイクルでタイミング的に末梢パルスが皮質パルスに先行する。典型的な刺激サイクルでは、対象の末梢位置、例えば膀胱括約筋制御に関連する神経に印加される少なくとも1つの末梢パルス、好ましくは2つの末梢パルスが後続の皮質パルスに先行し、そのような皮質電気または磁気刺激パルスが、対象の皮質位置、例えば標的器官の制御(例えば、膀胱括約筋の制御)に関連する皮質部位に印加される。誘発された末梢および皮質パルスの潜時が最大誘発反応(MEP)を与えるように同期され、ここで、潜時は典型的には20〜45msの範囲であり、したがって、当業者には理解されるように、印加されるパルスのタイミングは、これらの潜時に鑑みて調整されて、対象の神経経路での皮質およびパルス神経信号を誘発し、それらの信号は、脊髄接合部に流れ、印加されたtsDCS刺激の存在下において脊髄接合部で重畳して、所望の三重刺激を実現する。末梢パルス強度は、典型的には5〜40mAの範囲である。1つの三重刺激膀胱実施形態では、tsDCSが脊髄の仙骨領域内のオヌフ核に印加される。tsDCSは、2〜5mAの範囲内の典型的な強度で印加される。
本発明の実施形態の実践では、脊髄刺激位置と末梢刺激位置との両方について、2つの同時の皮膚表面DC刺激を用いた二重刺激に関する最大電流出力が5mAまたは約5mAに制限されることが理解されるであろう。一実施形態では、例示的なスポンジゴム電極は9cm2の皮膚接触面積を有し、0.56mA/cm2の最大電流密度をもたらす。当業者には理解されるように、これは、以下の文献で引用されている14.29mA/cm2の電流密度に関する安全上の上限を十分に下回る:Nitsche MA, Liebetanz D, Lang N, Tergau F, Paulus W., in Safety Criteria For Transcranial Direct Current Stimulation (TDCS) In Humans. Clin Neurophysiol 2003; 114(11):2220e2。
TMSにおけるような皮質刺激(直接的な電気的直流電流刺激または磁気的刺激)を利用する本発明の刺激ルーチンは、現在付与されている米国特許第9,011,310号の継続出願である2015年3月23日出願の「Method and System for Treatment of Neuromotor Dysfunction」という名称の本願と同時係属中の米国特許出願第14/665,220号の三重刺激の教示に従うことを理解されたい。上記の特許文献は全て発明者が共通であり、共通の所有者に譲渡されており、全てあらゆる目的で参照により本明細書に援用される。
二重刺激を利用する本発明の刺激の教示は、現在付与されている米国特許第9,283,391号の継続出願である2016年2月18日出願の「Trans-Spinal Direct Current Modulation Systems」という名称の本願と同時係属中の米国特許出願第15/046,797号の教示の適応であることが理解されるであろう。上記の特許文献は全て発明者が共通であり、共通の所有者に譲渡されており、全てあらゆる目的で参照により本明細書に援用される。本発明のさらなる代替の例示的実施形態では、他のパルス末梢用途に関する技術分野で知られているように、パルス注入刺激が提供される。そのような刺激は、14Hz、0.3%のデューティサイクルで240マイクロ秒までのパルスに関して最大10.5Vの出力に設定することができ、設定された電圧振幅を提供し、設定された振幅を維持するように電流を調整し、パルス電流は最大で10mAである。当業者には理解されるように、電圧設定は、患者が許容できる程度に応じて設定される。電流は、電極抵抗、(おそらく感知可能である)電極組織界面、および組織自体のインピーダンス(例示的には約1kΩ)に依存する。
本発明のさらなる実施形態では、脊髄を横切る下行性自律信号を調節するウェアラブルtsDCS制御装置が組み込まれる。いくつかの実施形態では、これは、標的の効果器への神経を直接刺激する埋め込まれた電極と組み合わされる。この刺激は、興奮性または抑制性のいずれかとして選択され、さらなる実施形態では、刺激周波数ならびにパルス振幅および持続時間に依存する。埋め込まれた電極は、ウェアラブルtsDCS制御装置と無線通信する。
いくつかの用途では、この手法で十分である。他の用途では、tsDCSによる脊髄レベル調節前に中枢自律神経出力を直接調節することが有益である。本発明の実践では、当業者には理解されるように、交感神経出力を増加もしくは減少させるか、または副交感神経出力を増加もしくは減少させる。さらに、特定の実施形態では、自律神経に関連する機能および障害の制御および治療のための自律神経出力の非侵襲性および非薬理学的調節を提供する。
コンピュータ
本開示は、本明細書で開示される主題と共に使用され得る機能を実行するように構成されたデバイス(本明細書では以後、コンピューティングデバイスと呼ぶ)の例示的な記載を含む。コンピューティングデバイスの様々な構成要素の説明は、構成要素を相互接続する任意の特定のアーキテクチャまたは様式を表すことを意図するものではない。より少数またはより多数の構成要素を有する他のシステムが、開示される主題と共に使用されることもある。通信デバイスは、コンピューティングデバイスの一形態を構成することがあり、少なくともコンピューティングデバイスを含むことがある。コンピューティングデバイスは、コンピューティングデバイスのそのような構成要素を、例えば、プロセッサもしくはマイクロプロセッサ、または他の形態の部分的もしくは完全にプログラム可能なもしくは予めプログラムされたデバイス(例えば、ハードワイヤド)、および/または特定用途向け集積回路(ASIC)カスタマイズ論理回路、例えば制御装置もしくはマイクロコントローラ、デジタル信号処理装置、または任意の他の形態のデバイスであって、命令をフェッチし、予めロード/予めプログラミングされた命令を操作し、および/またはハードワイヤドもしくはカスタマイズされた回路内で見出される命令に従って本開示で述べられるプロセスおよび機能のステップおよび全体を一体となって行う論理操作を実施することができるデバイスなどのデータ処理デバイスに相互接続することができる相互接続要素(例えば、バスおよびシステムコア論理)を含むことがある。
本明細書では、説明を単純化するために、ソフトウェアプログラムコードによって実施されるか、またはソフトウェアプログラムコードによって引き起こされるものとして様々な機能、機能性、および/または動作を述べることがある。しかし、そのような表現が、例えばマイクロプロセッサなどのプロセッサ、マイクロコントローラ、または論理回路などを含めた上述したようなコンピューティングデバイスによるプログラムコード/命令の実行から機能が得られることを意味していることを当業者は理解するであろう。代替としてまたは組み合わせて、ソフトウェア命令を伴うことも伴わないこともある専用回路を使用して、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)(プログラマブル、一部プログラマブル、またはハードワイヤドであり得る)を使用して機能および動作を実装することができる。特定用途向け集積回路(ASIC)論理は、ベースゲートアレイASICアーキテクチャのメタライゼーション相互接続によってカスタマイズされた論理を実装するか、または製造業者の機能ブロックライブラリに含まれる標準セル機能ブロック間のメタライゼーション相互接続を選択して提供するゲートアレイまたは標準のセルなどであり得る。したがって、実施形態は、プログラムソフトウェアコード/命令を有さないハードワイヤド回路を使用して、またはプログラムされたソフトウェアコード/命令を使用する回路と組み合わせて実装することができる。
したがって、この技法は、ハードウェア回路とソフトウェアとの任意の特定の組合せにも、コンピューティングデバイス内のデータプロセッサによって実行される命令に関する任意の特定の有形の提供源にも限定されない。いくつかの実施形態は、完全に機能するコンピュータおよびコンピュータシステムで実装することができるが、様々な実施形態は、例えば様々な形態を含むコンピューティングデバイスとして分散することができ、機能および動作の実施、および/または機能、機能性、および/または動作の実施の分散を実際に行うために使用される特定のタイプの機械もしくは有形のコンピュータ可読媒体によらずに適用することができる。
相互接続部は、メモリを含む論理回路を定義するためにデータ処理デバイスを接続することがある。相互接続部は、データ処理デバイスの内部にあってよく、例えば、マイクロプロセッサをオンボードのキャッシュメモリ、もしくはメインメモリなどの(マイクロプロセッサに対して)外部メモリ、またはディスクドライブ、もしくはコンピューティングデバイスの外部、例えば遠隔メモリ、ディスクファーム、または他のマスストレージデバイスなどに結合する。市販されているマイクロプロセッサ(それらの1つまたは複数は、コンピューティングデバイスまたはコンピューティングデバイスの一部であり得る)は、例として、Hewlett-Packard CompanyのPA-RISCシリーズマイクロプロセッサ、Intel Corporationの80x86もしくはPentiumシリーズマイクロプロセッサ、IBMのPowerPCマイクロプロセッサ、Sun Microsystems,IncのSparcマイクロプロセッサ、またはMotorola Corporationの68xxxシリーズマイクロプロセッサを含む。
相互接続部は、マイクロプロセッサおよびメモリなどを相互接続することに加えて、そのような要素をディスプレイ制御装置およびディスプレイデバイス、および/または入力/出力(I/O)デバイスなどの他の周辺デバイスに、例えば入力/出力制御装置を介して相互接続することもある。典型的なI/Oデバイスは、マウス、キーボード、モデム、ネットワークインターフェース、プリンタ、スキャナ、ビデオカメラ、および当技術分野でよく知られている他のデバイスを含むことができる。相互接続部は、様々なブリッジ、制御装置、および/またはアダプタを介して互いに接続された1つまたは複数のバスを含むこともある。一実施形態では、I/O制御装置は、USB(ユニバーサルシリアルバス)周辺機器を制御するためのUSBアダプタ、および/またはIEEE−1394周辺機器を制御するためのIEEE−1394バスアダプタを含む。
メモリは、任意の有形のコンピュータ可読媒体を含むことがある。そのようなコンピュータ可読媒体は、限定しないが、揮発性および不揮発性メモリデバイスなどの記録可能および非記録可能タイプの媒体、例えば、典型的にはメモリ内のデータをリフレッシュまたは維持するために連続的に電力を必要とするダイナミックRAM(DRAM)として実装される揮発性RAM(ランダムアクセスメモリ)、および不揮発性RAM(読み出し専用メモリ)、ならびに他のタイプの不揮発性メモリ、例えばハードドライブ、フラッシュメモリ、着脱可能なメモリスティックなどを含むことがある。不揮発性メモリは、典型的には、磁気ハードドライブ、磁気光ドライブ、もしくは光ドライブ(例えば、DVD RAM、CD RAM、DVD、もしくはCD)、またはシステムから電力が除去された後でさえデータを維持する他のタイプのメモリシステムを含むことがある。
本教示を説明および定義する目的で、「実質的に」という用語は、本明細書では、任意の定量的な比較、値、測定、または他の表現に起因することがある固有の不確かさの度合いを表すために利用されることに留意されたい。また、「実質的に」という用語は、本明細書では、対象の主題の基本的な機能を変えることなく、定量的表現が記載の基準から変動し得る度合いを表すためにも利用される。
これらの教示を特定の実施形態に関して述べてきたが、前述の説明に鑑みて、多くの代替形態、変更形態および変形形態が当業者に明らかになることが明白である。したがって、これらの教示は、本教示ならびに添付の特許請求の範囲および趣旨に含まれるそのような代替形態、変更形態および変形形態の全てを包含するものとして意図されている。前述の説明は、本発明の例示的な実証である。ここで、本発明の実施形態によるtsDCS刺激は、脊髄ニューロンを調節するために直流電流刺激を使用して非侵襲性または侵襲性で実践することができることが明らかであろう。これらの教示を特定の実施形態に関して述べてきたが、前述の説明に鑑みて、多くの代替形態、変更形態および変形形態が当業者に明らかになることが明白である。したがって、これらの教示は、本教示ならびに添付の特許請求の範囲および趣旨に含まれるそのような代替形態、変更形態および変形形態の全てを包含するものとして意図されている。