以下に、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び特定のポリエーテル誘導体(B)を含み、必要に応じて、リン系酸化防止剤(C)、エポキシ化合物(D)、特定の芳香族化合物(E)又はその他の成分等を含むことができる。
本発明の実施形態において、「芳香族ポリカーボネート樹脂(A)」は、芳香族化合物を構成単位として有するポリカーボネート樹脂であって、本発明が目的とする芳香族ポリ
カーボネート樹脂組成物を得ることができる限り特に制限されることはない。そのような芳香族ポリカーボネート樹脂として、例えば、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体を例示できる。代表例は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂を含む。
ジヒドロキシジアリール化合物として、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類を例示できる。これらは単独で又は組み合わせて使用できる。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等を組み合わせて使用することができる。
更に、ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上の芳香族化合物とを組み合わせて使用してもよい。
3価以上のフェノール化合物として、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4´−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等を例示できる。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、10000〜100000であることが好ましく、12000〜30000であることがより好ましい。なお、このような芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
本発明において用いられるポリエーテル誘導体(B)は、下記式(1)で表される化合物である。
式(1):
(式中、X
aは、水素、メチル基、エチル基、フェニル基のいずれかであり、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基である。mはオキシテトラメチレン基の平均付加モル数を表し、2〜60である。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2〜60である。オキシテトラメチレン基とオキシアルキレン基の付加形態は、ランダムである。)
式(1)で表されるポリエーテル誘導体は、概ね耐熱性が高く、該ポリエーテル誘導体を配合した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を高温で成形した成形品は、輝度や光線透過率が高い。また、本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)は、適度な親油性を有することから、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性にも優れるので、該ポリエーテル誘導体(B)を配合した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品の透明性を低下させることがなく透明性を維持できる。
式(1)で表されるポリエーテル誘導体として、例えば、式(1)におけるXaがメチル基である、ポリセリン60DB−2000H(日油(株)製)を例示することができる。
式(1)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、1000〜4000であることがより好ましい。
更に、本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)のCPR(単位:無次元)(Controlled Polymerization Rate:ポリエーテル誘導体中の塩基性物質の量を示す指標:JIS K1557−4に準拠して測定される)は、2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。CPRが2.0以下である場合、ポリエーテル誘導体(B)は、ポリカーボネート樹脂との相溶性に優れるとともに、分解及び劣化が抑制されて、貯蔵安定性に優れ、得られるポリカーボネート樹脂組成物の色相に悪影響を与えにくい。例えば、式(1)で表されるポリエーテル誘導体(B)に該当するポリセリン60DB−2000H(日油(株)製)のCPRは1.0未満である。
更に、本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)のpH(JIS K1557−5に準拠して測定される)は、5.0以上、7.5未満であることが好ましく、6.0以上、7.0未満であることがより好ましい。ポリエーテル誘導体(B)のpHが、5.0以上、7.5未満である場合、ポリエーテル誘導体(B)の分解及び劣化が抑制されて、貯蔵安定性に優れ、得られるポリカーボネート樹脂組成物の色相に悪影響を与えにくい。例えば、式(1)で表されるポリエーテル誘導体(B)に該当するポリセリン60DB−2000H(日油(株)製)のpHは6.8である。
更に、本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)の90%重量となる温度(又は重量減少率が10%となる温度)(JIS K7120に準拠する熱重量測定で測定される)は、300℃以上であることが好ましく、330℃以上であることがより好ましい。ポリエーテル誘導体(B)の90%重量となる温度が、300℃以上である場合、ポリエーテル誘導体(B)の分解及び劣化が抑制されて、貯蔵安定性に優れ、得られるポリカーボネート樹脂組成物の色相に悪影響を与えにくい。例えば、式(1)で表されるポリエーテル誘導体(B)に該当するポリセリン60DB−2000H(日油(株)製)の90%重量となる温度は400℃である。
ポリエーテル誘導体(B)の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜2.0重量部であり、0.3〜1.8重量部が好ましい。ポリエーテル誘導体(B)の量が0.1重量部未満の場合は、光線透過率及び色相の向上効果が不充分であり得る。逆にポリエーテル誘導体(B)の量が2.0重量部を超える場合は、曇化率が上昇して光線透過率が低下し得る。
式(1)で表されるポリエーテル誘導体に加えて、下記式(2)で表されるポリエーテル誘導体を更に配合しても良い。
式(2):
RO−(Xb−O)m1(Yb−O)n1−R’
(式中、RおよびR’は、各々独立して水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基を示し、Xbは、炭素数2〜4の直鎖アルキレン基又は分岐アルキレン基を、Ybは、炭素数2〜5の直鎖アルキレン基又は分岐アルキレン基を示し、XbとYbは同一であっても異なっていても良く、m1及びn1は、各々独立して、3〜60を示し、m1+n1は6〜120を示す。)
式(2)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、1000〜4000であることがより好ましい。
式(2)で表されるポリエーテル誘導体としては、以下の式(2−1)〜(2−9)で表される化合物を例示できる。
式(2−1):
HO−(CH2CH2CH2CH2O)m1(CH(CH3)CH2O)n1−H
(式中、m1及びn1は、各々独立して、3〜60を示し、m1+n1は、8〜90を示す。)
式(2−1)で表されるポリエーテル誘導体として、テトラメチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットを含む変性グリコールが好適である。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、日油(株)製、ポリセリンDCB−1000(重量平均分子量1000)、ポリセリンDCB−2000(重量平均分子量2000)、ポリセリンDCB−4000(重量平均分子量4000)等を利用できる。
式(2−1)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、1000〜4000であることがより好ましい。
式(2−2):
HO−(CH2CH2CH2CH2O)m1(CH2CH2CH(CH3)CH2O)n1−H
(式中、m1及びn1は、各々独立して、3〜60を示し、m1+n1は、8〜90を示す。)
式(2−2)で表されるポリエーテル誘導体として、テトラメチレングリコールユニットと2−メチルテトラメチレングリコールユニットを含む変性グリコールが好ましい。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、保土谷化学工業(株)製のPTG−L1000(重量平均分子量1000)、PTG−L2000(重量平均分子量2000)、又はPTG−L3000(重量平均分子量3000)等を利用できる。
式(2−2)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、1000〜4000であることがより好ましい。
式(2−3):
HO−(CH2CH2O)m1(CH(CH3)CH2O)n1−H
(式中、m1及びn1は、各々独立して、3〜60を示し、m1+n1は、8〜90を示す。)
式(2−3)で表されるポリエーテル誘導体として、エチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットを含む変性グリコールが好ましい。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、日油(株)製、ユニルーブ50DE−25(重量平均分子量1750)、ユニルーブ75DE−25(重量平均分子量1400)等を使用できる。
式(2−3)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、1000〜4000であることがより好ましい。
式(2−4):
RO−(CH2CH2CH2CH2O)m1(CH(CH3)CH2O)n1−H
(式中、Rは炭素数1〜30のアルキル基を示し、m1及びn1は、各々独立して、3〜60を示し、m1+n1は、8〜90を示す。)
式(2−4)で表されるポリエーテル誘導体として、テトラメチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットを含む、片末端ブチル基又は片末端ステアリル基の変性グリコールが好適である。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、日油(株)製、ポリセリンBC−1000(片末端ブチル基、重量平均分子量1000)、ポリセリンSC−1000(片末端ステアリル基、重量平均分子量1000)等を使用できる。
式(2−4)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、1000〜4000であることがより好ましい。
式(2−5):
RO−(CH2CH2O)m1(CH(CH3)CH2O)n1−H
(式中、Rは炭素数1〜30のアルキル基を示し、m1及びn1は、各々独立して、3〜60を示し、m1+n1は、8〜90を示す。)
式(2−5)で表されるポリエーテル誘導体として、エチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットを含む、片末端ブチル基又は片末端ステアリル基の変性グリコールが好適である。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、日油(株)製、ユニルーブ50MB−11(片末端ブチル基、重量平均分子量1000)、ユニルーブ50MB−26(片末端ブチル基、重量平均分子量2000)、ユニルーブ50MB−72(片末端ブチル基、重量平均分子量3000)、ユニルーブ10MS−250KB(片末端ステアリル基、重量平均分子量2000)等を利用できる。
式(2−5)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、1000〜4000であることがより好ましい。
式(2−6):
HO−(CH2CH2CH2CH2O)m1(CH2CH2O)n1−H
(式中、m1及びn1は、各々独立して、3〜60を示し、m1+n1は、8〜90を示す。)
式(2−6)で表されるポリエーテル誘導体として、テトラメチレングリコールユニットとエチレングリコールユニットを含む変性グリコールが好ましい。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、日油(株)製、ポリセリンDC3000E(重量平均分子量3000)、ポリセリンDC1800E(重量平均分子量1800)等を使用できる。
式(2−6)で表されるポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、1000〜4000であることがより好ましい。
式(2−7):
HO−(CH2CH2CH2CH2O)p−H
(式中、pは、6〜100を示す。)
式(2−7)で表されるポリエーテル誘導体として、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、保土谷化学工業(株)製のPTG−650SN(重量平均分子量650)、PTG−850SN(重量平均分子量850)、PTG−1000SN(重量平均分子量1000)、PTG−1400SN(重量平均分子量1400)、PTG−2000SN(重量平均分子量2000)、又はPTG−2900(重量平均分子量2900)等を使用できる。
式(2−7)で表されるポリエーテル誘導体(ポリテトラメチレングリコール)の重量平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、1000〜4000であることがより好ましい。
式(2−8):
式:HO−(CH(CH3)CH2O)q−H
(式中、qは、7〜120を示す。)
式(2−8)で表されるポリエーテル誘導体として、ポリプロピレングリコールが好ましい。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、ダウケミカル製ポリグリコールP2000P(重量平均分子量2000)、日油(株)製、ユニオールD−1000(重量平均分子量1000)、ユニオールD−2000(重量平均分子量2000)、ユニオールD−4000(重量平均分子量4000)等を使用できる。
式(2−8)で表されるポリエーテル誘導体(ポリプロピレングリコール)の重量平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、1000〜4000であることがより好ましい。
式(2−9):
HO−(CH(C2H5)CH2O)r−H
(式中、rは、6〜100を示す。)
式(2−9)で表されるポリエーテル誘導体として、ポリブチレングリコールが好ましい。そのようなポリエーテル誘導体として、市販品を使用することができ、例えば、日油(株)製、ユニオールPB−500(重量平均分子量500)、ユニオールPB−100
0(重量平均分子量1000)、ユニオールPB−2000(重量平均分子量2000)等を使用できる。
式(2−9)で表されるポリエーテル誘導体(ポリブチレングリコール)の重量平均分子量は、500〜8000であることが好ましく、1000〜4000であることがより好ましい。
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、更に、リン系酸化防止剤(C)を含むことができる。芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、ポリエーテル誘導体(B)とリン系酸化防止剤(C)とを同時に含む場合、光学用成形品に求められる優れた光学特性を維持向上させつつ、特に、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の初期光学特性を劣化させず、加えて使用状況に起因する劣化やエージング劣化などの劣化を防止することが出来る。
リン系酸化防止剤は、本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得られる限り特に制限されることはないが、下記亜リン酸エステル構造を有する亜リン酸エステル化合物を含むことが好ましい。
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(C)が、下記式(3)で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(4)で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(5)で表される亜リン酸エステル化合物及び下記式(6)で表される亜リン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種以上の化合物を含むことが好ましい。
式(3):
(式中、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
式(3)において、R1は、炭素数1〜20のアルキル基であるが、更には、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
式(3)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
式(4):
(式中、R
2、R
3、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。R
4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR
7−(ここで、R
7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR
8−(ここで、R
8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
式(4)において、R2、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
R2、R3及びR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R2及びR5は、それぞれ独立して、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基又は1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、R3は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であることが更に好ましい。
R6は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の
炭素数1〜5のアルキル基であることが更に好ましい。
式(4)において、R4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、R4は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが更に好ましい。
式(4)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR7−で表される基を示す。ここで、式:−CHR7−中のR7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることが更に好ましい。
式(4)において、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR8−で表される基を示す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*−COR8−におけるR8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。R8を示す炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。R8は、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*−COR8−における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
式(4)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
式(4)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
式(5):
(式中、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)
式(5)で表される化合物としては、例えば、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンは、(株)ADEKA製のアデカスタブPEP−36(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。3,9−ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンは、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP−24G」として商業的に入手可能である。
式(6):
(式中、R
11〜R
18は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基またはアルケニル基を示す。R
11とR
12、R
13とR
14、R
15とR
16、R
17とR
18とは、互いに結合して環を形成していても良い。R
19〜R
22は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示す。d〜gは、それぞれ独立して、0〜5の整数である。X
1〜X
4は、それぞれ独立に、単結合または炭素原子を示す。X
1〜X
4が単結合である場合、R
11〜R
22のうち、当該単結合に繋がった官能基は式(6)から除外される。)
式(6)で表される化合物の具体例としては、例えばビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトが挙げられる。これは、Dover Chemical社製、商品名「Doverphos(登録商標) S−9228」、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP−45」(ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト)として商業的に入手可能である。
リン系酸化防止剤(C)の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対
して、0.5重量部までが好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
本発明の実施形態に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、エポキシ化合物(D)を更に含むことができる。芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、エポキシ化合物(D)を含む場合、光学用成形品に求められる優れた光学特性を維持向上させつつ、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の初期光学特性を劣化させず、使用状況に起因する劣化やエージング劣化などの劣化を防止することが出来る。
エポキシ化合物(D)は、少なくとも1つのエポキシ基を分子内に有し、本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得られる限り、特に制限されることはない。エポキシ化合物(D)は、例えば、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ化大豆油、ε−カプロラクトン変性 3',4'−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ基含有アクリル・スチレン系ポリマー、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン−ジグリシジルエーテル等を含むことができる。エポキシ化合物(D)は、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを含むことが好ましい。
本発明の実施形態に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、エポキシ化合物(D)を、0.001〜0.2質量部含むことが好ましく、0.002〜0.1質量部含むことがより好ましく、0.005〜0.05質量部含むことが特に好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、エポキシ化合物(D)を、0.001〜0.2質量部含む場合、光学用成形品に求められる優れた光学特性を維持向上させつつ、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の初期光学特性(例えば、積算透過率や黄色度)を向上させ、使用状況に起因する劣化やエージング劣化などの劣化を防止することができる。
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、以下の式(7)で表される芳香族化合物(E)を更に含むことができる。ポリエーテル誘導体(B)と該芳香族化合物(E)とを併用することにより、光学用成形品に求められる優れた光学特性を維持しつつ、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の使用状況に起因する劣化やエージング劣化などの劣化をより効果的に防止することができる。
式(7):
具体的には、蒸気法芳香族化合物(E)を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された光学用成形品においては、LED等の光源によって長期間光照射されることによる白濁や着色等の熱劣化が効果的に防止される。光学用成形品は、炎天下等の過酷な条件下で使用された場合、及び/又は、光照射を長時間受け続けた場合、当該成形品表面の温度が上昇することがあり、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の熱劣化が少しずつ進行し得る。更に、樹脂組成物中のポリエーテル誘導体(B)が変性し得るため、通常の光学用成形品に用いられる芳香族ポリカー
ボネート樹脂組成物に期待される透明性(輝度又は光透過性)を損ない、成形品表面に白濁や着色を生じ得る。
上記の芳香族化合物(E)は、ポリエーテル誘導体(B)の変性等の劣化抑止に特に効果的であり、特定芳香族化合物(E)をポリエーテル誘導体(B)に予め添加するか、あるいは芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得るための溶融混練前に添加することにより、成形品中でのポリエーテル誘導体(B)の劣化を抑止して、白濁及び着色を低減又は緩和できる。
本発明の実施形態で使用される芳香族化合物(E)の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.0001以上0.05重量部未満であり、0.0005重量部以上0.003重量部以下が好ましい。芳香族化合物(E)の量が0.0001重量部未満の場合は、白濁又は着色の抑止効果が不充分である。逆に芳香族化合物(E)の量が0.05重量部以上の場合、光学成形体に要求される高水準の光線透過率及び色相を達成できない場合があるため望ましくない。
また、本発明の実施形態に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐候性をより向上させる成分である紫外線吸収剤を、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品の用途に応じて適宜用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物等の、ポリカーボネート樹脂に通常配合される紫外線吸収剤を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−butyl−2−hydroxy−5−methylphenyl)−5−chloro−2H−benzotriazole、2−(3,5−di−tert−pentyl−2−hydroxyphenyl)−2H−benzotriazole、2−(2H−benzotriazole−2−yl)−4−methyl−6−(3,4,5,6−tetrahydrophthalimidylmethyl)phenol、2−(2−hydroxy−4−octyloxyphenyl)−2H−benzotriazole、2−(2−hydroxy−5−tert−octylphenyl)−2H−benzotriazole、2−[2’−hydroxy−3,5−di(1,1−dimethylbenzyl)phenyl]−2H−benzotriazole、2,2’−Methylenbis[6−(2H−benzotriazol−2−yl)4−(1,1,3,3−tetramethylbutyl)phenol]などが挙げられる。なかでも、特に、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が好適であり、例えば、BASF社製のTINUVIN 329(TINUVINは登録商標)、シプロ化成(株)製のシーソーブ709、ケミプロ化成(株)製のケミソーブ79等が商業的に入手可能である。
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシフェニル−4−ヘキシルオキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール等が挙げられ、例えば、BASF社製のTINUVIN 1577等が商業的に入手可能である。
シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば、クラリアントジャパン(株)製のSan
duvor VSU等が商業的に入手可能である。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2、4−dihydroxybenzophenone、2−hydroxy−4−n−octoxybenzophenoneなどが挙げられる。
紫外線吸収剤の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0〜1.0重量部であり、0〜0.5重量部であることが好ましい。紫外線吸収剤の量が1.0重量部を超える場合は、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の初期の色相が低下するおそれがある。また、紫外線吸収剤の量が0.1重量部以上の場合は、特に、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる効果が大きく奏される。
更に、本発明の実施形態に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明における効果を損なわない範囲で、例えば、熱安定剤、他の酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤等の各種添加剤、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等が適宜配合されていてもよい。
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエーテル誘導体(B)に、必要に応じて、リン系酸化防止剤(C)、エポキシ化合物(D)、芳香族化合物(E)、各種添加剤、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等の少なくとも1種類を混合することにより製造することができる。本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる限り、その製造方法は特に制限されることはなく、各成分の種類及び量を適宜調整することができる。成分の混合方法も特に制限されることはなく、例えば、タンブラー、及びリボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法を例示できる。これらの方法により、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを容易に得ることができる。芳香族化合物(E)は、溶融混練前に混合してもよいし、予めポリエーテル誘導体(B)に添加又は混合してもよい。
本発明の実施形態に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットの形状及び大きさには特に限定がなく、一般的な樹脂ペレットが有する形状及び大きさであればよい。例えば、ペレットの形状としては、楕円柱状、円柱状等が挙げられる。ペレットの大きさとしては、長さが2〜8mm程度であることが好適であり、楕円柱状の場合、断面楕円の長径が2〜8mm程度、短径が1〜4mm程度であることが好適であり、円柱状の場合、断面円の直径が1〜6mm程度であることが好適である。なお、得られたペレット1つずつがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体を形成する全てのペレットがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体の平均値がこのような大きさであってもよく、特に限定はない。
本発明の実施形態の光学用成形品は、上記の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得ることができる。
本発明が目的とする光学用成形品を得ることができる限り、光学用成形品の製造方法は特に限定されることはなく、例えば、公知の射出成形法、圧縮成形法等により芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
本発明に係る光学用成形品は、例えば、導光板、面発光体材料、導光フィルム、車両用ライトガイド、銘板等として好適である。
以上のように、本発明の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明に
おける技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
原料として以下のものを使用した。
1.芳香族ポリカーボネート樹脂(A):
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
粘度平均分子量:15000、住化ポリカーボネート(株)製のSDポリカ 200−80(商品名)、「SDポリカ」は住化ポリカーボネート(株)の登録商標、表1において「A1」とも記載する。
2.ポリエーテル誘導体(B):
以下の式で表され、テトラメチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットを有する変性グリコール(ランダム共重合)
重量平均分子量:2000、pH6.8(JIS K1557−5)、日油(株)製のポリセリン60DB−2000H、表1において「B1」と記載する。
3.リン系酸化防止剤(C):
3−1.以下の式で表される、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
BASF社製のイルガフォス168(商品名)、表1において「C1」と記載する。
4−2.以下の式で表される、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(IUPAC名:3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン)
ADEKA製のアデカスタブPEP−36(商品名)、表1において「C2」と記載する。
4.芳香族化合物(E):
3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン
和光純薬工業(株)製、表1において「E1」と記載する。
上記の各原料を、表1に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α)を用いて、溶融温度220℃にて溶融混練し、実施例1〜3の各々の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例で得られたペレットはいずれも、ほぼ楕円柱状であり、ランダムに選択したペレット100個からなる集合体において、各々長さの平均値が約5.1mm〜約5.4mm、断面楕円の長径の平均値が約4.1mm〜約4.3mm、短径の平均値が約2.2mm〜約2.3mmであった。
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって、各評価用試験片を作製して評価に供した。その結果を表1に示す。
(試験片の作製方法)
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100A)を用い、成形温度360℃、金型温度80℃にて、JIS K 7139「プラスチック−試験片」にて規定の多目的試験片A型(全長168mm×厚さ4mm)を作製した。この試験片の端面を切削し、切削端面について、樹脂板端面鏡面機(メガロテクニカ(株)製、プラビューティーPB−500)を用いて鏡面加工した。
(積算透過率の評価方法)
分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用いて、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の、試験片各々の分光透過率を、試験片の全長方向について測定した。測定した分光透過率を積算し、十の位を四捨五入することにより、各々の積算透過率を求めた。なお、積算透過率が31000以上を良好(表中、◎で示す)、31000未満25000以上を使用可(表中、○で示す)、25000未満を不良(表中、×で示す)とした。
(黄色度の評価方法)
積算透過率の評価方法において測定した分光透過率に基づき、標準光源D65を用い、10度視野にて各々の黄色度(以下、YI)を求めた。なお、YIが15以下を良好(表中、◎で示す)、15を超え、30以下を使用可(表中、○で示す)、30を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(成形品の加熱試験評価)
上記で作製した試験片をエスペック社製イナートオーブンIPHH−201Mの中に設置し、200℃、72時間、加熱試験を行った。次に、各試験片の表面を目視で観察した。以下の基準により、加熱試験後の状態を評価した。
◎:無色透明である。
○:透明であり、使用可であるが、わずかに着色がある。
×:不透明である又は濃い着色がある。
表1に、各実施例の原料及び配合割合、評価結果を併せて示す。
実施例1〜3に係るポリカーボネート樹脂組成物は、上記式(1)で表される特定のポリエーテル誘導体を含有することにより、積算透過率及び黄色度のいずれも良好であった。また、実施例1〜3のいずれにおいても、加熱試験後の劣化(着色)は、実用可能なレベルに抑えられていた。
以上のように本発明における技術の例示として実施の形態を説明した。そのために詳細な説明を提供した。
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。