(第1の実施形態)
第1の実施形態は、電子線を用いて試料を観察する試料観察装置として、ウェハやマスクの欠陥を検査するための電子線検査装置、より詳しくは、いわゆるSEM(Scanning Electron Microscope))に関する。
1.全体構成
図1は、電子線検査装置1000Aの全体構成を示す図である。図1に示すように、電子線検査装置1000Aは、試料キャリア901Aと、ミニエンバイロメント902Aと、ロードロック903Aと、トランスファチャンバ904Aと、メインチャンバ905Aと、除振台906Aと、電子コラム907Aと、画像処理ユニット908Aと、制御ユニット909Aとを備えている。電子コラム907Aは、メインチャンバ905Aの上部に取り付けられる。
試料キャリア901Aには、検査対象となる試料が収納されている。ミニエンバイロメント902Aには、図示しない大気中の搬送ロボット、試料アライメント装置、クリーンエアー供給機構等が設けられる。試料キャリア901A内の試料は、ミニエンバイロメント902A内に搬送され、その中で、試料アライメント装置によってアライメント作業が行なわれる。試料は、大気中の搬送ロボットにより、ロードロック903Aに搬送される。
ロードロック903Aは、大気から真空状態へと、真空ポンプにより排気される。圧力が一定値(例えば1Pa)以下になると、トランスファチャンバ904Aに配置された図示しない真空中の搬送ロボットにより、メインチャンバ905Aに搬送される。このように、常に真空状態であるトランスファチャンバ904Aにロボットが配置されるので、圧力変動によるパーティクル等の発生を最小限に抑制することが可能である。
メインチャンバ905Aには、x方向、y方向、及びθ(回転)方向に移動するステージ910Aが設けられ、ステージ910Aの上に静電チャックが設置される。静電チャックには試料そのものが設置される。あるいは、試料は、パレットや治具に設置された状態で静電チャックに保持される。メインチャンバ905Aは、図示しない真空制御系により、真空状態が維持されるよう制御される。また、メインチャンバ905A、トランスファチャンバ904A及びロードロック903Aは、除振台906A上に載置され、床からの振動が伝達されないように構成されている。
また、メインチャンバ905Aには1つの電子コラム907Aが設置されている。この電子コラム907Aからの検出信号は画像処理ユニット908Aに送られて処理される。制御ユニット909Aは、画像処理ユニット908A等を制御する。画像処理ユニット908Aは、この制御により、オンタイムの信号処理及びオフタイムの信号処理の両方が可能である。オンタイムの信号処理は、検査を行なっている間に行なわれる。オフタイムの信号処理を行う場合、画像のみが取得され、後に信号処理が行われる。
画像処理ユニット908Aで処理されたデータは、ハードディスクやメモリなどの記録媒体に保存される。また、必要に応じて、コンソールのモニタにデータを表示することが可能である。表示されるデータは、例えば、観察画像、検査領域、異物数マップ、異物サイズ分布/マップ、異物分類、パッチ画像等である。
2.SEM構造
次に、電子コラム907Aについて説明する。本実施の形態の電子コラム907Aは、筒体内に電子銃および電子銃からの電子線が通過する電子線路を備え、電子線照射検出系が形成されたSEMである。図2は、電子コラム907Aの構成を示す図である。電子コラム907Aのハウジングは、筒体50Aと電子銃ハウジング60Aによって構成される。筒体50Aには、後述する各種の部品10A〜19Aが収納される。筒体50Aは、円筒形状であり、電子銃ハウジング60Aは筒体の上部開口に被せられ、上部が密閉された円筒状の部品である。なお、筒体50Aは、中空の四角柱であってもよい。
筒体50A内には、上から第1デフレクタ(アライナ)10A、接地電極11A、第2デフレクタ(アライナ)12A、アパーチャ13A、検出器14A、第3デフレクタ15A、対物レンズ16A、第4デフレクタ(アライナ)17A、第5デフレクタ(アライナ)18A、電極19Aの各部品が、それぞれの間にスペーサ20A〜28Aを介在させて、この順に積層される。第1デフレクタ10Aおよび第2デフレクタ12Aは静電偏向器である。また、接地電極11Aはデフレクタ(アライナ)であってもよいし、収束レンズであってもよい。上記の各部品は、上下方向に対応する部分に孔を有し、これらの孔によって電子線路EPが形成される。
電子銃ハウジング60A内には、電子銃30Aと、真空ポンプ40Aとが収納される。電子銃30Aは、TFE(Thermal Field Emission)電子銃(熱電界放出電子銃)やFE(Field Emission)電子銃(電界放出電子銃)であってよい。また、真空ポンプ40Aは、イオンポンプであってよく、ゲッタポンプであってもよい。
SEM907は、電子ビームを照射して試料SMの表面に導く。しかしながら、試料SMの表面に電子ビームが照射されると、照射されている領域と照射されていない領域との境界付近に、カーボンの堆積(いわゆるカーボンコンタミ)が発生したり、電子ビームが照射された領域が損傷したりする場合がある。そのため、観察時以外には試料に電子ビームが照射されないようにする必要があり、そのようにすることをブランキング処理という。
従来は、ブランキング処理を行うための専用の電極(あるいは磁極)を設け、この電極(あるいは磁極)に電圧を印加(あるいは磁場を発生)させて、電子ビームを大きく逸らすようにしていた。しかしながら、この場合、ブランキング用の電極(あるいは磁極)のためにSEM907が大型化してしまうという問題がある。
そこで、以下のようにしてSEM907の小型化を図る。
図3は、SEM907の概略構成を示す模式図である。SEM907は、電子銃30Aと、2段の静電偏向器10A,12Aと、これらに挟まれた接地電極11Aと、アパーチャ部材13Aとを有する。
電子銃30Aは、詳しくは後述するが、電子ビームを照射する。電子ビームの進路に沿って、かつ、電子銃30Aと試料SMとの間に、静電偏向器10A、接地電極11A、静電偏向器12A、アパーチャ部材13Aが順に配置されている。
静電偏向器10A,12Aは、1または複数(例えば4極)のアライメント電極を有し、電子ビームを偏向・走査する。すなわち、制御装置(不図示)からアライメント電極に印加される電圧に応じて、電子ビームを直進させたり、所望の方向に偏向したりすることができる。アライメント電極は、例えばアルミナ円盤をベースとし、四極子の形状に加工した後、各電極に相当する部分に金メッキを施し、さらに各電極への電圧印加を行うための給電端子を円盤側面に配置した構造とすることができる。
接地電極11Aは導電性材料で形成された筒状の電極であり、その内側を電子ビームが通る。接地電極11Aには接地電圧が基準電圧として供給され、対物レンズとしても作用する。
図4は、アパーチャ部材13Aの上面図である。図示のようにアパーチャ部材13Aは円環形状であり、電子ビームが通過可能な開口13Aaと、電子ビームが通過できない遮蔽部13Abとから構成される。また、開口13Aaはアパーチャ部材13Aの中央に設けられ、その直下に試料SMがある。
図5Aは、試料SMを観察する際のSEM907の電子ビームの進路を模式的に示す図である。静電偏向器10A,12Aのアライメント電極に適切な電圧を印加することで電子ビームのアライメントが行われ、図示のように、電子ビームはアパーチャ部材13Aの開口13Aaを通って、1次ビームとして試料SMに到達する。この1次ビームが試料SMに照射されることによって生じた2次ビームは、検出器14Aに到達する。
図5Bは、試料SMを観察しない際、つまりブランキング時の電子ビームの進路を模式的に示す図である。静電偏向器10A,12Aのアライメント電極に適切な電圧を印加することで電子ビームは大きく逸れ、アパーチャ部材13Aの遮蔽部13Abに当たる。よって、電子ビームは試料SMには到達しない。
このとき、図6に示すように、アライメント電極に印加する電圧を制御して、遮蔽部13Abの1か所ではなく、様々な位置に分散して電子ビームが当たるようにするのが望ましい。電子ビームによる汚染を分散させることができるためである。そのためには、静電偏向器10Aまたは10Bに少なくとも4極のアライメント電極を設け、印加される電圧を時間変調し、電子ビームが当たる位置を円環状に変化させることが考えられる。
このように、静電偏向器10A,12Aのアライメント電極はアライナ機能およびブランキング機能の両方を持っており、印加する電圧によって、電子ビームに開口13Aaを通過させて試料SMに導くか、電子ビームを遮蔽部13Abで遮蔽して試料SMに導かないかを切替制御できる。
以上説明したように、図3に示すSEM907では、アライナを行うための電極を用いてブランキング処理も行う。そのため、ブランキング処理専用の電極(あるいは磁極)を設ける必要がなく、1次光学系を小型化でき、ひいては検査装置を小型化できる。
図7は、変形例に係る電子コラム907A’の構成を示す図である。本電子コラム(SEM)907A’では、図2のものと異なり、アパーチャ部材13Aがなくてもよい。また、接地電極11Aが筒状であり、電子ビームの進行方向に沿う方向ができるだけ長いのが望ましい。
図7のSEM907A’におけるブランキング処理について説明する。
図8は、ブランキング処理を説明するために、図7に示すSEM907A’を模式的に示す図である。上述した図3のSEM907は、アパーチャ部材13Aを設けてこれに電
子ビームを導くことで、試料SMに電子ビームが照射されないようにするものであった。これに対し次に説明する図8のSEM907’は、接地電極11Aを利用してブランキング処理を行うものである。以下、図3との相違点を中心に説明する。
SEM709’は、電子銃30Aと、2段の静電偏向器10A,12Aと、これらに挟まれた接地電極11Aとを有するが、図3におけるアパーチャ部材13Aがなくてもよい。また、本実施形態の接地電極11Aは、筒状であり、電子ビームの進行方向に沿う方向ができるだけ長いのが望ましい。
図9Aは、試料SMを観察する際のSEM907’の電子ビームの進路を模式的に示す図である。静電偏向器10A,12Aのアライメント電極に適切な電圧を印加し、接地電極11Aに接地電圧を供給することで電子ビームのアライメントが行われ、図示のように、電子ビームは1次ビームとして試料SMに到達する。この1次ビームが試料SMに照射されることによって生じた2次ビームは検出器14A上に到達する。
図9Bは、試料SMを観察しない際、つまりブランキング時の電子ビームの進路を模式的に示す図である。接地電極11Aに大きな電圧、より具体的には、電子銃30Aからの電子ビームの加速電圧(例えば2kV)より絶対値が大きい(望ましくは5%以上大きい)負の電圧を印加することで、電子ビームの進行方向が変化し、静電偏向器12Aを通過しない。結果として、電子ビームは試料SMに到達しない。接地電極GNDにおける電子ビームの進行方向に沿う方向が長いほど、接地電極GNDに印加する電圧の絶対値を低くできる。
ここで、接地電極GNDによって進行方向が変えられた電子ビームがSEM907’内の静電偏向器10Aなどを汚染することも考えられる。そのため、図10に示すように、接地電極11Aを覆うフード723Aを設けてもよい。フード723Aの少なくとも一部は、接地電極11Aと電子銃30Aとの間、あるいは、接地電極11Aと静電偏向器10Aとの間にある。フード723Aを設けることで、ブランキング処理時に接地電極11Aによって進行方向が変えられた電子ビームが飛散するのを抑制できる。
このように、接地電極11Aに印加する電圧によって、電子ビームが試料SMに到達するか、その進行方向が変えられて試料SMに到達しないかを切替制御できる。
以上説明したように、図8では、接地電極11Aを用いてブランキング処理を行う。そのため、ブランキング処理専用の電極(あるいは磁極)を設ける必要がなく、SEM907’を小型化できる。
なお、図3や図8に示す静電偏向器10A,12Aや接地電極11Aの配置順や数はあくまで一例にすぎない。
以下では、図2に示すSEM907Aを前提として説明を続ける。
3.電子銃
上述のように、電子銃30Aには、従来のTFE電子銃やFE電子銃を用いることができるが、以下に説明する他の形態の電子銃を用いてもよい。
3−1.TFE電子銃
まず、TFE電子銃を説明する。図11は、TFE電子銃の構成を示す図である。TFE電子銃31Aは、先端が尖ったカソードチップ311Aと、ウェネルト312Aと、アノード313Aを備える。TFE電子銃31Aの幅方向のサイズは20mm程度であり、従って、2つのTFE電子銃31Aを最大限に近づけると、照射される電子線のピッチは20mm程度となる。なお、上記の構成において、カソードチップ311A、ウェネルト
312A、及びアノード313Aのほかに、ヒータ用電源314A及びウェネルト用電源316Aが、電子銃ハウジング60Aに収容される。
カソードチップ311Aには、ヒータ用電源314Aからヒータ用電圧が印加され、カソード用電源315Aから−50〜−10kV程度のカソード用電圧が印加される。また、ウェネルト312Aには、ウェネルト用電源316Aから可変電圧が印加される。
カソードチップ311Aは、ヒータ用電圧を印加されることで、温度が上昇して電子が放出され易い状態になる。カソードチップ311Aは、さらにカソード用電圧を印加されることで、その先端付近から電子を放出する。アノード313Aは、カソードチップ311Aの先端付近から放出された電子を引き出して、電子線を電子線路に導く。
3−2.他の形態の電子銃(1)
図12は、他の形態の電子銃の構成を示す図である。この電子銃32Aは、レーザダイオード321A、第1レンズ322A、磁場コイル323A、ガス封入管324A、第2レンズ325A、及び電子放出ファイバ326Aを備えており、電子放出ファイバ326Aの先端から電子を放出する。また、電子放出ファイバ326Aの先端の先には、ウェネルト327A、アノード328Aが備えられており、電子銃32Aはこれらの構成によって、電子放出ファイバ326Aの先端から放出された電子を引き出して、電子線を電子線路に導く。
レーザダイオード321Aは、レーザ光源として、レーザ光を発射する。第1レンズ322Aは、レーザダイオード321Aから発射されたレーザ光を集光する。第1レンズ322Aは、ガス封入管324A内でレーザ光を集束させるように、設計、配置される。ガス封入管324A内では、集光されたレーザ光によってプラズマ小空間(スポットプラズマ)が形成される。このとき、磁場コイル323Aが誘導磁場を形成することで、プラズマ状態ができやすくなり、また、プラズマの形状をコントロールする(例えば、丸くする等)ことができる。
ガス封入管324A内におけるプラズマ小空間の発生によって、DUV(深紫外線)、UV(紫外線)、X線等の電磁波(不可視光線)が発生し、これが第2レンズ325Aによって集光されて、電子放出ファイバ326Aの入力端(図12の左端)に入力される。
図13は、電子放出ファイバ326Aの先端部分の拡大図である。電子放出ファイバ326Aは、コア3261Aと、クラッド3262Aと、CrやCrN等のメタルコート3263Aと、光電材料3264Aからなる。電子放出ファイバ326Aとして、例えばガラス材料からなるファイバや石英ガラスからなるファイバを用いることが可能である。電子放出ファイバ326Aの先端付近は、テーパー形状になっており、先端では、コア3261Aの端部が直径0.5〜50nmの大きさに形成されている。クラッド3262Aはコア3261Aの周りに形成されている。光電材料3264Aは、この先端に設けられており、コア3261Aとクラッド3262Aの先端にコーティングされている。なお、光電材料3264Aは、コア3261Aの先端にのみコーティングされてもよい。光電材料3264Aは、Au又はRuからなり、その厚さは10〜20nmである。光電材料3264Aは、光が当たるとその光量に応じた量の電子を発生する。
メタルコート3263Aは、クラッド3262Aの外側と光電材料3264Aの周辺部(光電材料3264Aがクラッド3262Aの先端をコーティングしている部分)に形成される。メタルコート3263Aは、0〜−10kVの電源に接続される。メタルコート3263Aは、光電材料3264Aの周辺部に重なることで、光電材料3264Aとも電気的に接続される。また、メタルコート3263Aが光電材料3264Aの周辺部に重な
ることで、コア3261Aから染み出たDUVによる光電子発生部の広がりを抑えることが可能となる。メタルコート3263Aは、このような構成によって、電源と光電材料3264Aとを電気的に接続する導電線として機能し、電源の電圧を光電材料3264Aに印加する。
このような構成の電子放出ファイバ326Aの入力端からコア3261A内に入射されたDUV、UV、X線等の不可視光線は、コア3261Aとクラッド3262Aとの境界での全反射を繰り返して、出力端(図12の右端)に向かって進む。コア3261Aを伝搬してきたDUV、UV、X線等の不可視光線は、電子放出ファイバ326Aの先端部分で、光電材料3264Aに入射される。光電材料3264Aは、この入射されたDUV、UV、X線等の不可視光線の強度に応じた電子を放出する。
電子放出ファイバ326Aの先端、即ち光電材料3264Aから放出された電子は、ウェネルト327A及びアノード328Aによって引き出されて、第1デフレクタA等によって形成される電子線路に導かれる。
このような電子銃32Aの構成要素のうち、真空中、すなわち電子銃ハウジング60A内に収容しなければならないのは、電子放出ファイバ326Aの先端部分、ウェネルト327A及びアノード328Aのみであり、他の構成要素は大気中に配置することが可能である。
また、上述のTFE電子銃31Aでは、出力を上げると、カソードチップの先端だけではなく、先端の周りからも電子が放出されるようになり、電子線は余計な軌道を通り、チャージアップを引き起こすおそれがある。これに対して、電子銃32Aでは、確実に電子放出ファイバ326Aの先端のみから電子を放出することが可能であり、照射する電子線(以下、「照射ビーム」ともいう。)が望まない軌道を通ることによる観察画像のぼけを防止ないしは軽減し、TFE電子銃31Aと比較して観察画像の解像度を向上できる。
さらに、電子銃32Aから照射される電子線のエネルギー幅は0.05〜0.5eV程度と狭く、電子銃32Aは、TFE電子銃31Aと比較して、均一なエネルギーをもった電子をより多く放出できる。
3−3.他の形態の電子銃(2)
図14は、他の形態の電子銃の構成を示す図である。この電子銃33Aは、電子銃32Aと同様に、レーザダイオード331A、第1レンズ332A、磁場コイル333A、ガス封入管334A、及び第2レンズ335Aを備えている。電子銃33Aは、電子銃32Aの電子放出ファイバ326Aの代わりに、電子放出素子336Aを備えており、電子放出素子336Aの電子放出面(出力面)から電子を放出する。また、電子放出素子336Aの電子放出面の先には、ウェネルト337A、アノード338Aが備えられており、これらによって、電子放出素子336Aの電子放出面から放出された電子を引き出して、電子線を電子線路に導く。
レーザダイオード331Aは、レーザ光源として、レーザ光を発射する。第1レンズ332Aは、レーザダイオード331Aから発射されたレーザ光を集光する。第1レンズ332Aは、ガス封入管334A内でレーザ光を集束させるように、設計、配置される。ガス封入管334A内では、集光されたレーザ光によってプラズマ小空間(スポットプラズマ)が形成される。このとき、磁場コイル333Aが誘導磁場を形成することで、プラズマ状態ができやすくなり、また、プラズマの形状をコントロールする(例えば、丸くする等)ことができる。
ガス封入管334A内におけるプラズマ小空間の発生によって、DUV、UV、X線等の不可視光線が発生し、これが第2レンズ335Aによって集光されて、電子放出素子336Aの入力面(図14の左側面)に入力される。
電子放出素子336Aは、石英からなる基材3361Aと、基材3361Aの入力面側に形成されたアパーチャ3362Aと、メタルコート3363Aと、基材3361Aの出力面側に設けられた光電材料3364Aとからなる。光電材料3364Aは、Au又はRuからなり、その厚さは10〜20nmである。光電材料3264Aは、光が当たるとその光量に応じた量の電子を発生する。
メタルコート3363Aは、基材3361Aの出力面側に形成される。メタルコート3363Aは、0〜−10kVの電源に接続される。メタルコート3363Aは、光電材料3364Aの周辺部に重なることで、光電材料3364Aとも電気的に接続される。メタルコート3363Aは、このような構成によって、電源と光電材料3364Aとを電気的に接続する導電線として機能し、電源の電圧を光電材料3364Aに印加する。
このような構成の電子放出素子336Aの入力面からアパーチャ3362Aを通って基材3361A内に入射されたDUV、UV、X線等の不可視光線は、出力面(図14の右端)に向かって進む。基材3361Aを伝搬してきたDUV、UV、X線等の不可視光線は、基材3361Aの出力面側で、光電材料3364Aに入射される。光電材料3364Aは、この入射されたDUV、UV、X線等の不可視光線の強度に応じた電子を放出する。
電子放出素子336Aの出力面、即ち光電材料3364Aから放出された電子は、アノード338Aによって引き出されて、第1デフレクタA等によって形成される電子線路に導かれる。
このような電子銃33Aの構成要素のうち、真空中、すなわち電子銃ハウジング60A内に収容しなければならないのは、電子放出素子336A及びアノード338Aのみであり、他の構成要素は大気中に配置することが可能である。このため、電子銃33Aは、1つの電子コラム907Aに複数の電子線照射検出系を構成するSEM構造において、電子線同士の間隔を短くすることができ、電子コラム907A内の限られた範囲内により多くの電子線照射検出系を形成できるという点で有利である。
また、電子銃33Aでは、確実に電子放出素子336Aの光電材料3364Aのみから電子を放出することが可能であり、照射ビームが望まない軌道を通ることによる観察画像のぼけを防止ないしは軽減し、TFE電子銃31Aと比較して観察画像の解像度を向上できる。さらに、電子銃33Aから照射される電子線のエネルギー幅は0.05〜0.5eV程度と狭く、電子銃33Aは、TFE電子銃31Aと比較して、均一なエネルギーをもった電子をより多く放出できる。また、電子銃33Aは、TFE電子銃31Aと比較して、ウェネルトが不要であるという点でも有利である。また、電子銃33Aは、簡単な構造であるので、安価に製造でき、そのコストは従来のTFE電子銃の1/3〜1/5程度でよい。
さらに、電子銃33Aでは、ウェネルトを用いないことで、発生した電子線の透過率を高くできるというメリットもある。即ち、ウェネルトがあると、1stクロスオーバーのサイズ及び位置が、電子のエネルギー、ウェネルト電圧、アノード電圧により変化して、照射ビームが広がり、その結果透過率が悪くなることがある。これに対して、電子銃33Aでは、ウェネルトを用いないので、光電材料3364Aを実質的な光源として、発生した電子線の透過率を高くできる。
4.静電レンズ
接地電極11A及び対物レンズ16Aは、静電レンズである。一般的には、接地電極11A及び対物レンズ16Aを磁場レンズとすることも可能であるが、磁場レンズは、コイルの周りにヨークを巻く構成であるので、電子コラムが大型化してしまう。本実施の形態では、静電レンズを採用しているので、磁場レンズのように電子コラム907Aが大型化することはない。
なお、磁場方式に比べて、静電式では、定電圧電源であるので、安定した設定電圧がすぐに印加可能である。このような、ロスタイムの低減は、磁場方式の場合と比較して、1/50〜1/120程度になる。また、磁場方式では、電子線のエネルギーやレンズ磁場の変化に伴い、照射ビームが回転するため、偏向器による偏向方向に変化が生じるので、都度、偏向方向の補正を行う調整が必要となる。これに対して、静電方式では、照射ビームの回転がなく偏向方向の変動がなく、x、y方向に安定した偏向を行うことができる。また、上述したように、静電方式は、小型が可能であり、安定した動作ができる。
また、同様の理由により、第1デフレクタA、第2デフレクタ12A、第3デフレクタ15A、第4デフレクタ17A、及び第5デフレクタ18Aもそれぞれ静電デフレクタとしている。これにより、上記と同様に装置の小型化を可能となる。
5.スペーサ
上述のように、筒体50A内には、上下方向に隣接する各部品の間の距離が所定の距離となるように、各部品の間にスペーサ20A〜28Aが配設されている。スペーサ20A〜28Aは、導電性を有するセラミックで構成される。スペーサ20A〜28Aの抵抗は、109〜1012Ωcmである。好ましくは、スペーサ20A〜28Aの抵抗は、1010〜1011Ωcmである。また、筒体50Aもスペーサ20A〜28Aと同じ材料で構成される。このように、スペーサ20A〜28Aや筒体50Aをセラミックで構成することにより、熱膨張を小さく抑えることができる。また、すべてのスペーサ20A〜28Aをセラミックで構成することにより、すべてのスペーサ20A〜28Aについて熱膨張率を同じにすることができ、電子コラム907A全体として熱膨張による影響を小さくできる。また、筒体50Aや各部品10A〜19Aも同じ材料とすることで、電子コラム907A全体としての熱膨張による影響をより小さくできる。
また、セラミックは、サブミクロンレベルの高精度を実現できるので、すべてのスペーサ20A〜28Aを同一材料のセラミックで構成することで、金属の精度に影響されずに、電子コラム907Aの組み立てにおける同軸度等の精度をスペーサ20A〜28Aの精度と同レベル(サブミクロンレベル)にできる。さらに、筒体50A及び各部品10A〜19Aもスペーサ20A〜28Aと同じ材料で構成することで、電子コラム907Aの組み立て精度をより向上できる。
さらに、スペーサを上記のように高抵抗とすることで、電子コラムの小型化にも寄与する。図15は、従来のスペーサ配置構造を示す図である。図15の従来の構造において、上側部品851Aと下側部品852Aとの間には、スペーサ853Aが設けられているが、スペーサを照射ビームIBから隠す位置に配置されており、このために、電子コラムが大型化していた。これに対して、本実施の形態では、上記のように高抵抗のセラミックのスペーサを採用したことで、スペーサ20A〜28Aを照射ビームに対して露出させることができ、図2に示すように平板状の各部品の間に直接スペーサを配置させることができるので、省スペース化が可能となる。
6.配線構造
次に、電子コラム907Aにおける各部品10A〜19Aの配線構造について説明する。各部品10A〜19Aには、電源との電気的な接続をするための導電線を筒体50Aの外部に引き出す必要がある。
6−1.配線の縦断面構造
以下、接地電極11Aを例に、本実施の形態の電子コラムにおける配線の縦断面構造を説明する。
6−1−1.接地電極11Aが金属で構成されている場合
図16は、接地電極11Aの周縁部の拡大縦断面図である。図16の例は、接地電極11Aが金属で構成されている場合の配線構造を示している。筒体50Aには、その外周面に沿って外周面を覆うように、配線フィルムとしてのフレキシブルプリントケーブル(FPC)70Aが設けられている。図17は、FPC70Aの一部領域を示す図である。FPC70Aは、ポリイミド樹脂層71A、導電形成層72A、ポリイミド樹脂層73Aの3層構造を有する。導電形成層72Aには銅からなる導電線ELが形成される。
FPC70A及び筒体50Aには、接地電極11Aの端子に対応する位置に配線孔74A、51Aが設けられており、この配線孔74A、51Aに導電性のコンタクトピン80Aが挿入される。コンタクトピン80Aの軸部には、ねじ山が形成されており、筒体50Aの配線孔51Aにはねじ溝が形成されており、コンタクトピン80Aと筒体50Aとが螺合することで、コンタクトピン80Aが筒体50Aに保持される。
配線孔74Aは、ポリイミド樹脂層71Aにおいては、コンタクトピン80Aの頭部の径と同じ又はそれより大きいサイズを有し、導電形成層72A及びポリイミド樹脂層73Aにおいては、コンタクトピン80Aの軸部の径と同じ又はそれより大きい(頭部の径よりは小さい)サイズを有し、導電形成層72Aの外側表面にフランジ部741Aが形成されている。コンタクトピン80Aが筒体50Aに螺合して、コンタクトピン80Aの頭部がFPC70Aのフランジ部741Aに当接することにより、コンタクトピン80Aと導電線ELとが電気的に接続されるとともに、コンタクトピン80Aの筒体50Aの厚さ方向の位置決めがなされる。
接地電極11Aは、金属でできており、それ自体が電極とされる。接地電極11Aには、配線孔74A、51Aに対応する位置に、端子としてのコンタクト孔111Aが形成されており、その内面にはねじ溝が形成されている。コンタクトピン80Aは、配線孔51Aのねじ溝に螺合して、さらにその先でコンタクト孔111Aに螺合し、その先端がコンタクト孔111Aの底に当接することで、金属の接地電極11Aとコンタクトピン80Aとが電気的に接続する。
以上の構成により、導電線ELと接地電極11Aとがコンタクトピン80Aを介して電気的に接続される。導電線ELは、図16に示すようにFPC70A内部の導電形成層72Aに形成されており、適当な箇所で、さらに外部の配線を介して電源と接続される。即ち、導電形成層72Aに形成された導電線ELは、外部電源を、コンタクトピン80Aを介して電子コラム907Aの部品に接続する。
また、筒体50Aの表面及び/又はFPC70Aの裏面には、配線孔74A、51Aの部分を除いて、金属の接地コーティング90Aが施されている。上記の配線構造によって供給される電圧は100Vから大きい場合には1万V程度にもなるので、筒体50AとFPC70Aとの間に僅かな隙間が形成されると、そこにスパークが発生してしまい、各部品やFPC70Aに損傷をきたすことがある。この接地コーティング90Aは、筒体50AとFPC70Aとの隙間にかかる高電圧をグランドに放電することで、そのようなスパ
ークの発生を防止することができる。
6−1−2.接地電極11Aが金属めっきされている場合
図18は、接地電極11Aの周縁部の拡大縦断面図である。図18の例は、接地電極11Aが金属めっきされている場合の配線構造を示している。筒体50Aには、その外周面に沿って外周面を覆うように、図17で示した配線フィルムとしてのフレキシブルプリントケーブル(FPC)70Aが設けられている。
FPC70A及び筒体50Aには、接地電極11Aに対応する位置に配線孔74A、51Aが設けられており、この配線孔74A、51Aに導電性のコンタクトピン80Aが挿入される。コンタクトピン80Aの軸部には、ねじ山が形成されており、筒体50Aの配線孔51Aにはねじ溝が形成されており、コンタクトピン80Aと筒体50Aとが螺合することで、コンタクトピン80Aが筒体50Aに保持される。
コンタクトピン80Aが筒体50Aに螺合して、コンタクトピン80Aの頭部がFPC70Aのフランジ部741Aに当接することにより、コンタクトピン80Aと導電線ELとが電気的に接続されるとともに、コンタクトピン80Aの筒体50Aの厚さ方向の位置決めがなされる。
接地電極11Aは、絶縁体(具体的にはセラミック)の本体112Aの表面に導電線となる金属めっき113Aがされた構造を有する。接地電極11Aには、配線孔74A、51Aに対応する位置に、端子となるコンタクト孔111Aが形成されている。コンタクト孔111A内には、内周面にねじ溝が形成された筒状のメタルブッシュ114Aが圧入されている。コンタクト孔111Aの底には、金属めっき113Aに電気的に接続されるビア115Aが形成されている。ビア115Aは、本体112Aの表面に、コンタクト孔111Aに連通するビア孔を形成するとともに、そのビア孔に金属を注入することで形成される。ビア115Aは、ビア孔から注入されて、コンタクト孔111Aの底にまで達する。金属めっき113Aは、このようにビア115Aが形成された後の本体112Aの表面に形成されて、金属めっき112Aとビア115Aとが電気的に接続される。
以上の構成により、導電線ELと接地電極11Aの金属めっき113Aとがコンタクトピン80A及びビア115Aを介して電気的に接続される。導電線ELは、図17に示すようにFPC70A内部の導電形成層72Aに形成されており、適当な箇所で、さらに外部の配線を介して電源と接続される。即ち、導電形成層72Aに形成された導電線ELは、外部電源を、コンタクトピン80Aを介して電子コラム907Aの部品に接続する。
また、筒体50Aの表面及び/又はFPC70Aの裏面には、配線孔74A、51Aの部分を除いて、金属の接地コーティング90Aが施されている。上記の配線構造によって供給される電圧は100Vから大きい場合には1万V程度にもなるので、筒体50AとFPC70Aとの間に僅かな隙間が形成されると、そこにスパークが発生してしまい、各部品やFPC70Aに損傷をきたすことがある。この接地コーティング90Aは、筒体50AとFPC70Aとの隙間にかかる高電圧をグランドに放電することで、そのようなスパークの発生を防止することができる。
上記の構成によれば、接地電極11Aの本体112Aがセラミックで構成されるので、上述したように、その熱膨張による変形量は小さく、サブミクロンレベルの高精度を実現できる。また、接地電極11Aの本体112Aをセラミックで構成し、スペーサ20A〜28Aや筒体50Aもセラミックで構成することにより、それらの部品の熱膨張率を同じにすることができ、電子コラム907Aの組み立てにおける同軸度等の精度をサブミクロンレベルにできる。
6−2.配線の横断面構造
次に、電子コラム907Aにおける各部品10A〜19Aへの配線の横断面構造について説明する。
6−2−1.集束レンズ
まず、接地電極11Aの配線の横断面構造を説明する。図19は、集束レンズの配線の断面構造を示す図である。
接地電極11Aの上側及び下側にそれぞれ配置されるスペーサ20A、21Aは、筒体50Aの内周に合致する外周形状を有する。スペーサ20A、21Aには、電子線照射検出系の電子線路EPに対応して円形の孔201A、211Aが形成されている。スペーサ20A、21Aの間には、接地電極11Aが設けられる。図19の例では、接地電極11Aはセラミックからなる本体112Aに金属めっき113Aが被覆されることで構成されている。接地電極11Aの本体112Aは、筒体50Aの内周に合致する外周形状を有する。
接地電極11Aの本体112Aには、スペーサ20A、21Aの孔201A、211Aにそれぞれ対応する位置に、スペーサ20A、21Aの孔201A、211Aより大きい範囲の金属めっき113Aが被覆されている。これらの金属めっき113Aは、各接地電極11Aの電極となる。
接地電極11Aの本体112Aには、スペーサ20A、21Aの孔201A、211Aにそれぞれ対応する位置に、スペーサ20A、21Aの孔201A、211Aより小さい円形の孔116Aが形成されている。これらの孔201A、116A、211Aによって、電子線路EPが形成される。スペーサ20A、21Aに形成された孔201A、211Aからは、孔116Aが形成された接地電極11A(の金属めっき113A部分、即ち電極)が露出している。
接地電極11Aの電極は1極であり、電極への配線も各接地電極11Aにつき1本である。この電極への配線は、図19に示すように、接地電極11Aにおける筒体50Aに近い箇所から、筒体50Aの外側に引き出すことができる。なお、図19では、筒体50Aの外周に設けられるFPC70Aは図示を省略している。図19の例では、図16にて説明したように、接地電極11Aに対してコンタクトピン801Aを直接ねじ込んで、接地電極11A内にて電極とコンタクトピン801Aとの電気的接触を実現する。なお、上記の形態については、変形が可能である。
6−2−2.デフレクタ
次に、デフレクタの配線の横断面構造を説明する。
6−2−2−1.1つの電子コラムに1つの電子線照射検出系が形成される場合
まず、1つの電子コラム907Aに1つの電子線照射検出系が形成される場合のデフレクタの配線構造について説明する。
6−2−2−1−1.デフレクタが金属で構成されている場合
図20は、デフレクタ自体が金属からなる場合の配線構造を示す図である。図21は、デフレクタとその下のスペーサを示す分解斜視図である。この例のデフレクタ100Aは、4極の電極を有する。デフレクタ100Aは各々扇形形状を有する4つの電極101Aに分かれている。各電極101Aの外周は、筒体50Aの内周に合致する。各電極101Aが、それぞれ間隙102Aを空けて、外周を筒体50Aの内周に当接させて配置される
と、中央部には、電子線路EPとなる円形の孔が形成される。
デフレクタ100Aの下に設けられるスペーサ200Aは、下の部品とのスペースを確保するためのドーナツ状の縦方向スペーサ部分201Aと隣り合う電極同士の間のスペースを確保するために縦方向スペーサ部分201Aから起立した4つの周方向スペーサ部分202Aからなる。デフレクタ100Aの各電極101Aは、スペーサ200Aの縦方向スペーサ部分201Aを介して下の部品の上に配置されるとともに、スペーサ200Aの周方向スペーサ部分202Aを介して互いに間隙102Aを空けて配置される。
各電極101Aに対しては、筒体50Aの外部からそれぞれコンタクトピン802Aがねじ込まれて、各コンタクトピン802Aと各電極101Aとの電気的な接続が確保される。電極101Aとコンタクトピン802Aとの接続構造は、図16にて説明した通りである。なお、図20においても、FPC70Aは図示を省略している。
6−2−2−1−2.デフレクタが金属めっきされている場合
図22は、デフレクタ110Aがセラミックからなる本体103Aとその表面に形成された金属めっき106Aとからなる場合の配線構造を示す図である。この例においても、デフレクタ110Aには4極の電極が形成されている。デフレクタ110Aの本体103Aは、中央に円形の孔が明けられたドーナツ形状であり、その孔から四方に切欠き105Aが切られている。隣り合う切欠き105A同士の間が電極104Aとなる。円形の孔の周りには金属めっき106Aが被覆されている。金属めっき106Aは、切欠き105Aによって分離しており、これによって4つの電極104Aが構成されている。
デフレクタ110Aの下に配置されるスペーサ210Aは、内側にデフレクタ110Aの孔よりも大きな孔を有するドーナツ形状である。
各電極104Aに対しては、筒体50Aの外部からそれぞれコンタクトピン803Aがねじ込まれて、各コンタクトピン803Aと各電極104Aとの電気的な接続が確保される。電極104Aの金属めっき106Aとコンタクトピン803Aとの接続構造は、図18にて説明した通りである。なお、図22においても、FPC70Aは図示を省略している。
7.検出器
上述のように、電子コラム907Aは、電子線照射検出系の中に検出器14Aを備えている。電子線は、電子銃30Aから放出されて電子線路を通って試料に照射される。試料に電子線が照射されると、その部分から2次電子等が発生する。2次電子等は、引き上げ電界によって、電子線照射検出系を通って、照射ビームIBの方向とは逆方向に進む。検出器14Aは、このようにして試料から逆行してくる2次電子等を捕集して検出する。以下では、検出器の具体的構成として、2つの実施の形態を説明する。
7−1.MCP+アノード型
図23は、本実施の形態のMCP+アノード型の検出器の構成を示す図である。検出器(MCP+アノード型)141Aは、電子銃30Aからの照射ビームIBを中心として、それを取り囲むように管1414Aを有する。管1414Aは、基準電位(通常はGND電位)を維持している。検出器141Aは、さらに、絶縁性のセラミック1411A、アノード1412A、電子増幅器としてのマイクロチャンネルプレート(MCP)1413Aを備えている。
セラミック1411Aは、支持体として、管1414A、アノード1412A、及びMCP1413Aを支持する。セラミック1411Aの中央には支持孔が設けられており、
この支持孔で管1414Aの外周面を支持する。セラミック1411Aの上面には、セラミック1411Aが帯電しないように導電膜1415Aがコーティングされている。なお、導電膜1415Aのコーティングに代えて、導電材料部品が設置されてもよく、もしくは、セラミック1411Aに対してその表面層の抵抗を低下させる処理がなされてもよい。
アノード1412A及びMCP1413Aには、管1414Aを通すための孔が設けられている。アノード1412A及びMCP1413Aは、管1414Aとは接触せずに、管1414Aの周囲を取り囲んでいる。MCP1413Aはアノード1412Aの下側に設けられ、アノード1412Aはセラミック1411Aの下側に設けられる。MCP1413A及びアノード1412Aは、いずれも支持体としてのセラミック1411Aに支持される。
照射ビームIBは、管1414Aを通過した後、対物レンズ、デフレクタ等を通過して、試料SMに照射される。照射ビームIBによって試料から放出された2次電子等SEは、引き上げ電界によって、電子線路の中心付近を通過して上流方向に引き上げられ、MCP1413Aに近づくと、中心付近から外れて、MCP1413Aに入射する。その軌道は、図23に示すように、MCP1413Aの前で外側に向けて湾曲する。このような軌道を容易に形成するため、即ちMCP1413Aへの2次電子等SEの引き込み量を増加させるために、MCP1413Aの入力面には、正電圧が印加される。例えば、MCP1413Aの入力面に0〜500V程度の電圧を印加することで引き込み量を増加させることができる。
MCP1413Aには、2次電子等SEのMCP入力端(MCPin)1416AとMCP出力端(MCPout)1417Aが設けられている。MCP出力端1417Aには、通常300〜2000V程度の高い正電圧が印加されている。これにより、MCP入力端1416Aに入射した電子が、MCP1413Aの微細チューブ内で電子増幅を繰り返し、MCP出力端1417Aより放出されて、アノード1412Aに吸収される。このとき、アノード1412Aには、通常、MCP出力端1417Aよりも300〜3000V高い電圧が印加されている。よって、電子量を増幅してMCP出力端1417Aから放出された電子は、アノード1412A方向に引き出されて、アノード1412Aに衝突して吸収される。
アノード1412Aの電流値を直接測定し、又は、アノード1412Aの電流値を電圧に変換して測定することにより、試料からの2次電子等SEの放出量を測定することができる。また、照射ビームIBをデフレクタ等により走査しながら試料からの2次電子等SEの量を取得して、その時刻を区切りながら電子量の強度を2次元的に示すと検査画像としての2次電子像を得ることができる。この場合、時間区切りと場所とが対応することになる。
従来の方式では、部品自体の大きさ耐電圧のために、小型化が困難であり、また、小型化できたとしても、2次電子等の捕集率が低かった。本実施の形態によれば、静電レンズによりSEMを小型化できる。そして、捕集率を低下させないための工夫として以下の構成を有している。即ち、試料表面での走査幅が例えば1〜200μmであるときに、試料表面から走査幅の200倍以上離れた距離に検出器14Aが設置されている。試料表面から検出器14Aまでの距離が近すぎると、検出器14Aの外周部にて試料表面からの2次電子等を捕集する効率を上げることが困難になる。本実施の形態では、上記の構成としたことにより、40〜80%の捕集率を達成できる。
このように、本実施の形態は、SEMにおける小型化と高い補集効率とを両立させることができ、200〜2000MPPSのデータレートを実現できる。
7−2.シンチレータ+ライトガイド+PMT型
図24は、本実施の形態のシンチレータ+ライトガイド+PMT型の検出器の構成を示す図である。検出器148Aは、電子銃30Aからの電子ビームIBを中心として、それを取り囲むように管1414Aを有する。管1414Aは、基準電位(通常はGND電位)を維持している。検出器141Aは、さらに、絶縁性のセラミック1411A、シンチレータ1419A、ライトガイド1420A、光電子増倍管としてのフォトマルチプライヤチューブ(PMT)1421を備えている。
セラミック1411Aの中央には支持孔が設けられており、この支持孔で管1414Aの外周面を支持する。セラミック1411Aの上面には、セラミック1411Aが帯電しないように導電膜1415Aがコーティングされている。なお、導電膜1415Aのコーティングに代えて、導電材料部品が設置されてもよく、もしくは、セラミック1411Aに対してその表面層の抵抗を低下させる処理がなされてもよい。
シンチレータ1419A、ライトガイド1420A、及びPMT1421Aは、同一平面に設けられている。照射ビームIBを基準として、シンチレータ1419Aは最も内側に設けられ、その外側にライトガイド1420Aが設けられ、さらにその外側にPMT1421Aが設けられる。シンチレータ1419Aは、棒状であり、管1414Aの周囲に8本設けられる。シンチレータ1419Aは、長手方向が照射ビームIBを中心とする円の半径方向に向くように配置される。
照射ビームIBは、管1414Aを通過した後、対物レンズ、デフレクタ等を通過して、試料SMに照射される。照射ビームIBによって試料SMから放出された2次電子等SEは、引き上げ電界によって、電子線路の中心付近を通過して上流方向に引き上げられ、シンチレータ1419Aに近づくと、中心付近から外れて、シンチレータ1419Aに入射する。その軌道は、図24に示すように、シンチレータ1419Aの前で外側に向けて湾曲する。このような軌道を容易に形成するため、即ちシンチレータ1419Aへの2次電子等SEの引き込み量を増加させるために、シンチレータ1419Aの入力面には、正電圧が印加される。例えば、シンチレータ1419Aの入力面に0〜500V程度の電圧を印加することで引き込み量を増加させることができる。
シンチレータ1419Aは、入射された電子を、その電子の量に応じた強度の光に変換する。シンチレータ1419Aには、正電圧を印加可能とするとともに、電子から光に変換されたときに透過率を低減させないように、その表面(上面又は底面)に、電極として透明導電膜が被覆される。このようにして、シンチレータ1419Aに入射した電子は光に変換されて、その光はライトガイド1420Aに入射する。光はライトガイド1420Aを伝達して、PMT1421Aに入射する。PMT1421Aは、入射された光を電子に変換し、さらにその電子に対して電子増幅を行ない、電子信号として出力する。この電子信号は、PMT1421Aに入射した光の強度に対応している。
なお、シンチレータ1419Aの本数は8本に限られず、2本、4本、12本、16本、又は他の本数であってもよい。また、シンチレータ1419Aは複数本でなく、1本であってもよい。複数本のシンチレータ1419Aを用いることで、補集できる2次電子等の量を増加できる。また、複数本のシンチレータ1419Aを用いることで、検出器14Aの場所による補集率の分布を測定して、2次電子等を均等に補集できているか、2次電子等の補集位置が偏っているかを検知することができる。
そして、2次電子等の補集位置が偏っている場合には、その補正を直ちに行なうことが可能である。捕集位置が偏っていると、ダメージの進行が場所によって異なることになる
ので、位置変動が起こったときに、異なる電流量(輝度)になる。このような場合には、その都度校正を行う必要が生じるので装置としてはロスタイムが多くなる。2次電子等を均一に捕集できている場合には、状態変動時においても直ちには輝度変動がない状態で動作できるので、捕集位置の偏りの検知とその補正を直ちに行なうことにより、正常状態に戻すことができる。
また、シンチレータの中に斜ミラーを内蔵してもよい。この場合、電子がシンチレータの表面で光に変換された後、その光はミラーによってPMT1421Aに向けて反射されるので、光は効率よくPMT1421Aに伝達される。さらに、斜ミラー表面に電子/光変換膜がコーティングされてもよい。この場合には、ミラー表面で電子/光変換が行われるので、変換後直ちにPMT方向に反射されて、効率よくPMTに光を伝達できる。
8.バルブ機構
上述のように、電子銃ハウジング60A内は、真空ポンプ40Aによって真空状態にされる。電子線検出装置100には定期的なメンテナンスが必要とされるが、メンテナンスの際に、電子銃ハウジング60Aの真空状態を保持するために、バルブ構造が用いられる。すなわち、電子銃ハウジング60Aをバルブによって密閉空間とすることで、メンテナンスの際にも電子銃ハウジング60Aを真空状態に保つことができる。
図25は、本実施の形態のバルブ構造を示す図である。上述のように、電子銃ハウジング60A内には、電子銃30Aが備えられており、真空ポンプ40Aによって真空状態とされている。メンテナンスの際には、この電子銃ハウジング60Aを含む電子コラム907Aが大気中に晒されることになるが、この場合に、バルブ61Aを閉めて電子銃ハウジング60Aを密閉する。
電子銃ハウジング60Aには、照射ビームIBを通過させる位置にハウジング孔62Aが設けられている。電子銃ハウジング60Aの下方にはバルブ61Aが設けられる。バルブ61Aには、電子銃ハウジング60Aに対応する位置にバルブ孔612Aが設けられる。そして、バルブ61Aにおける電子銃ハウジング60Aに対向する面(上面)には、Oリング613Aが設けられる。
電子線検査装置1000Aの使用時には、バルブ61Aは、B位置に位置する。B位置では、バルブ61Aのバルブ孔612Aと電子銃ハウジング60Aのハウジング孔62Aとが一致する。A位置では、Oリング613Aがそれぞれ電子銃ハウジング60Aのハウジング孔62Aを囲う。メンテナンスの際に電子銃ハウジング60Aを閉じる際には、バルブ61Aは、B位置からA位置に移動して、A位置からさらに上方に移動することで、Oリング613Aによって、電子銃ハウジング60Aのハウジング孔62Aを閉じて、電子銃ハウジング60Aを密閉状態とする。なお、バルブ61AのB位置からA位置への移動、及びA位置からB位置への移動において、横方向の移動と縦方向の移動を任意に組み合わせてよく、斜めに移動してもよい。
このように、本実施の形態においては、バルブ61Aに照射ビームIBを通過させるバルブ孔612Aと電子銃ハウジング60Aを密閉するためのOリング613Aとを形成し、バルブ61Aを横方向にずらすことで、バルブ61Aのハウジング孔62Aが電子銃ハウジング60Aのハウジング孔62Aと一致させたり、Oリング613Aが電子銃ハウジング60Aのハウジング孔62Aを囲ったりできるので、簡単な操作で電子銃ハウジング60Aからの照射ビームIBを通過させたり、電子銃ハウジング60Aを密閉したりできる。
図26は、本実施の形態のバルブ機構の他の例を示す図である。上述のようなバルブ機
構は、図26に示すように、筒体50Aの下端部に設けてもよい。筒体50Aの下端部には、照射ビームIBを通過させる位置に筒体孔52が設けられている。電子線検査装置1000Aの使用時には、バルブ61Aは、B位置に位置する。B位置では、筒体50Aの筒体孔52とバルブ61Aのバルブ孔612Aとが一致する。A位置では、Oリング613Aがそれぞれ筒体50Aの筒体孔52を囲う。
メンテナンスの際に電子銃ハウジング60A及び筒体50Aを閉じる際には、バルブ61Aは、B位置からA位置に移動して、A位置からさらに上方に移動することで、Oリング613Aによって、筒体50Aの筒体孔52を閉じて、電子銃ハウジング60A及び筒体51で構成される空間を密閉状態とする。なお、バルブ61AのB位置からA位置への移動、及びA位置からB位置への移動において、横方向の移動と縦方向の移動を任意に組み合わせてよく、斜めに移動してもよい。
この実施の形態においても、バルブ61Aに、照射ビームIBを通過させるバルブ孔612Aと電子銃ハウジング60A及び筒体50Aで構成される空間を密閉するためのOリング613Aとを形成し、バルブ61A横方向にずらすことで、バルブ61Aのバルブ孔612Aを筒体50Aの筒体孔52と一致させたり、Oリング613Aが筒体50Aの筒体孔52を囲ったりできるので、簡単な操作で電子銃ハウジング60Aからの照射ビームIBを通過させたり、電子銃ハウジング60A及び筒体50Aで構成される空間を密閉したりできる。
9.デフレクタ
デフレクタは、電子銃30Aから照射される照射ビームIBを走査のために偏向する。図27は、従来のデフレクタの構成を示す図である。デフレクタ170Aは、単一の板材の電極からなり、電子線路に孔が形成されている。デフレクタ170Aの孔を通過する照射ビームIBは、電圧の大きさに応じた角度だけ変更される。デフレクタ170Aには、±60Vの交流電圧が印加される。デフレクタ170Aに交流電圧を印加することにより、その電圧振幅に従って照射ビームIBが偏向されて、照射ビームIBによる試料の走査が行われる。この従来の構成によれば、デフレクタ170Aに印加する±60Vの交流電圧の周波数を上げようとしても限界があり、それによって照射ビームIBの走査の周波数も制限されることになる。
図28は、本実施の形態のデフレクタの構成を示す図である。本実施の形態のデフレクタ180Aは、2枚の板状の電極181A及び182Aからなる。両電極181A及び182Aには、それぞれ、電子線路に孔が形成されている。この孔を通過した照射ビームIBは、各電極181A及び182Aに印加された電圧に応じた角度だけ偏向する。本実施の形態では、上側電極181には±55Vの交流電圧を印加し、下側電極182Aには、±5Vの交流電圧を印加する。
デフレクタ180Aでは、上記の構成によって、上側電極181Aに印加する交流電圧を用いてマクロ走査を行い、下側電極182Aに印加する交流電圧を用いてミクロ走査を行なう。マクロ走査を行なうために上側電極181Aに印加される交流電圧の周波数は、ミクロ走査を行なうために下側電極182Aに印加される交流電圧の周波数よりも大きい。上側電極181Aによってある基準方向に偏向されている照射ビームIBに対して、下側電極182Aに印加された電圧を振幅させることで、当該基準方向を基準とする小さな範囲で照射ビームIBがさらに偏向されて、試料を走査する(ミクロ走査)。この範囲内で可能な主走査及び副走査を行うと、上側電極181Aに印加される電圧が変更されて、基準方向が偏向される(マクロ走査)。
そして、新たな基準方向を基準として、下側電極182Aに印加された電圧を振幅させ
ることで、当該基準方向を基準とする小さな範囲で照射ビームIBがさらに偏向されて、試料を走査する(ミクロ走査)。このように、マクロ走査とミクロ走査を繰り返すことで、マクロ走査によって偏向可能な範囲内の走査が終了すると、ステージが移動して、次の新たな領域について、上記と同様のミクロ走査及びマクロ走査が行われる。
ミクロ走査では、±5Vという低電圧で照射ビームIBを偏向するので、周波数の高い電源を使用することができ、これにより、走査速度を速くして、試料の検査時間を短縮できる。
なお、第3の実施形態では、いわゆるシングルSEMについて説明したが、電子銃ハウジング60A内に複数の電子銃30を設けたいわゆるマルチSEMとしてもよい。
第2の実施形態は、表面にパターンが形成された基板すなわちウエハや、露光マスクなどを検査対象として検査する検査装置を説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の検査装置及び検査方法の例であって、これらに限定されるわけではなく、その他の任意の試料に適用可能である。
図29及び図30Aにおいて、本実施形態の半導体検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
本実施形態の半導体検査装置1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、真空ハウジングに取り付けられた電子光学装置70と、光学顕微鏡3000と、走査型電子顕微鏡(SEM)3002を備え、それらは図29及び図30Aに示されるような位置関係で配置されている。半導体検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構83と、電子ビームキャリブレーション機構85と、ステージ装置上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。電子光学装置70は、鏡筒71及び光源筒7000を有している。電子光学装置70の内部構造については、後述する。
<カセットホルダ>
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テール11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図30Aで鎖線図示の状態で自動的にセット可能になっていて、セット後、図30Aで実線図示の状態に自動的に回転されてミニエンバイロメント装置内の第1の搬送ユニットの回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は図29で鎖線図示の状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダはいずれも公知の構造のものを適宜使用すれば良いので、その構造及び機能の詳細な説明は省略する。
別の実施の態様では、図30Bに示すように、複数の300mm基板を箱本体501の内側に固定した溝型ポケット(記載せず)に収納した状態で収容し、搬送、保管等を行うものである。この基板搬送箱24は、角筒状の箱本体501と基板搬出入ドア自動開閉装置に連絡されて箱本体501の側面の開口部を機械により開閉可能な基板搬出入ドア502と、開口部と反対側に位置し、フィルタ類およびファンモータの着脱を行うための開口部を覆う蓋体503と、基板Wを保持するための溝型ポケット(図示せず)、ULPAフィルタ505、ケミカルフィルタ506、ファンモータ507とから構成されている。この実施の態様では、ローダー60のロボット式の第1の搬送ユニット612により、基板を出し入れする。
なお、カセットc内に収納される基板すなわちウエハは、検査を受けるウエハであり、そのような検査は、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けた基板すなわちウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、カセット内に収納される。カセットc内に収容されるウエハは多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置のウエハと後述する第1の搬送ユニットで保持できるように、第1の搬送ユニットのアームを上下移動できるようになっている。
<ミニエンバイロメント装置>
図29ないし図31において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて検査対象としての基板すなわちウエハを粗位置決めするプリアライナ25とを備えている。
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有し、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮蔽する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図31に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施形態では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された後述する第1の搬送ユニットによる搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃がウエハに付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225が形
成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。ウエハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3ないし0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間内でなくその外側に設けてもよい。
排出装置24は、前記搬送ユニットのウエハ搬送面より下側の位置で搬送ユニットの下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、搬送ユニットの周囲を流れ下り搬送ユニットにより発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたアライナ25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウエハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウエハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナは請求項に記載された発明の検査対象の座標を決める機構の一部を構成し、検査対象の粗位置決めを担当する。このプリアライナ自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
なお、図示しないが、プリアライナの下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナから排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
<主ハウジング>
図29及び図30Aにおいて、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮蔽装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置されるステージ装置等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施形態において、ハウジング本体及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁にはウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
なお、防振装置は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
<ローダハウジング>
図29、図30A及び図32において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備え
ている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間でウエハのやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけば良い。
第1のローディングチャンバ41内には、複数(本実施形態では2枚)のウエハを上下に隔てて水平の状態で支持するウエハラック47が配設されている。ウエハラック47は、図33に示されるように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上にウエハWの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間からウエハに接近させてアームによりウエハを把持するようになっている。
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10-5〜10-6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ内に収容されていて次に欠陥検査されるウエハをワーキングチャンバ内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバを採用することによって、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、それぞれ真空排気配管と不活性
ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
<ステージ装置>
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図29において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図29において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55のウエハ載置面551上にウエハを解放可能に保持する。ホルダは、ウエハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持されたウエハを電子光学装置から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図29において上下方向)に、更にウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウエハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御したりする。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている公知の構造のもので良いので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記レーザ干渉測距装置も公知の構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
電子ビームに対するウエハの回転位置やX、Y位置を予め後述する信号検出系或いは画像処理系に入力することで得られる信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウエハチャック機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、ウエハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランクピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
なお、この実施形態では図30Aで左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
<ローダー>
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使
用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、には公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハを把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダに保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容されたウエハを1枚アームの上に載せ或いはアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後アームが縮み(図30Aに示すような状態)、アームがプリアライナ25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアームが再び伸びてアームに保持されたウエハをプリアライナ25に載せる。プリアライナから前記と逆にしてウエハを受け取った後は、アームは更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のウエハ受け47にウエハを受け渡す。なお、機械的にウエハを把持する場合にはウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これはウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニットと構造が基本的に同じであり、ウエハの搬送をウエハラック47とステージ装置の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダに保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、ウエハのカセットからの取り出し及びそれへの挿入、ウエハのウエハラックへの載置及びそこからの取り出し及びウエハのステージ装置への載置及びそこからの取り出しのときだけである。したがって、大型のウエハ、例えば直径30cmのウエハの移動もスムースに行うことができる。
<ウエハの搬送>
次にカセットホルダに支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送について、順を追って説明する。
カセットホルダ10は、上述したように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
カセットが出入り口225に整合されると、カセットに設けられたカバー(図示せず)が開きまたカセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセット内及びミニエンバイロメント空間内を外部から遮蔽する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合
にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
一方、第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM1の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウエハのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきウエハとの上下方向の位置調整は、この実施形態では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダの昇降テーブルの上下動行っても或いはその両者で行ってもよい。
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、アームは縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アームは伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナ25の上に載せ、そのプリアライナによってウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると搬送ユニット61はアームの先端にプリアライナ25からウエハを受け取ったのちアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
上記第1の搬送ユニットによるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置のハウジングの上に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジングの底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47内に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバの真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口434を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハ受け47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット61のアームはワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置
では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図30Aで上方に移動し、また、Xテーブル53は図30Aで最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバがワーキングチャンバの真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アームが伸びてウエハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上にウエハを載置する。ウエハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
以上は、カセットc内のウエハをステージ装置上に搬送するまでの動作に付いて説明したが、ステージ装置に載せられて処理が完了したウエハをステージ装置からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行って戻す。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しておくため、第2の搬送ユニットでウエハラックとステージ装置との間でウエハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニットでカセットとウエハラックとの間でウエハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
具体的には、第2の搬送ユニットのウエハラック47に、既に処理済のウエハAと未処理のウエハBがある場合、
(1)まず、ステージ装置50に未処理のウエハBを移動し、処理を開始する。(2)この処理中に、処理済ウエハAを、アームによりステージ装置50からウエハラック47に移動し、未処理のウエハCを同じくアームによりウエハラックから抜き出し、プリアライナで位置決めした後、ローディングチャンバ41のウエハラック47に移動する。
このようにすることで、ウエハラック47の中は、ウエハBを処理中に、処理済のウエハAが未処理のウエハCに置き換えることができる。
また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、それぞれの装置に一つのウエハラック47からウエハを移動することで、複数枚のウエハを同じ処理することもできる。
図34において、主ハウジングの支持方法の変形例が示されている。図34に示された変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その鋼板の上にハウジング本体32aが載せられている。したがって、ハウジング本体32aの底壁321aは、前記実施形態の底壁に比較して薄い構造になっている。図35に示された変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊り下げて状態で支持するようになっている。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持するようになっている。そして防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40もフレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。ハウジング本体32bのこの図35に示された変形例では、吊り下げ式に支えるので主ハウジング及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。上記変形例を含めた主ハウジング及びローダハウジングの支持方法では主ハウジング及びローダハウジングに床からの振動が伝わらないようになっている。
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本外のみがハウジング支持装置によって下から支えられ、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。
上記の実施形態によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(A)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(B)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(C)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを、一体的に振動防止装置を介して支持したので、外部の環境に影響されずにステージ装置への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
<電子検査装置>
図36は、本発明を適用した電子線検査装置の構成を示した図である。ここでは、異物検査方法を実行するのに適用される異物検査装置について説明する。従って、異物検査方法は、下記の異物検査装置に適用することができる。
電子線検査装置の検査対象は試料20である。試料20は、シリコンウエハ、ガラスマスク、半導体基板、半導体パターン基板、又は、金属膜を有する基板等である。本実施の形態に係る電子線検査装置は、これらの基板からなる試料20の表面上の異物10の存在を検出する。異物10は、絶縁物、導電物、半導体材料、又はこれらの複合体等である。異物10の種類は、パーティクル、洗浄残物(有機物)、表面での反応生成物等である。電子線検査装置は、SEM方式装置でもよく、写像投影式装置でもよい。この例では、写像投影式検査装置に本発明が適用される。
写像投影方式の電子線検査装置は、電子ビームを生成する1次光学系40と、試料20と、試料を設置するステージ30と、試料からの2次放出電子又はミラー電子の拡大像を結像させる2次光学系60と、それらの電子を検出する検出器(検出ユニット)70と、検出器70からの信号を処理する画像処理装置90(画像処理系)と、位置合わせ用の光学顕微鏡110と、レビュー用のSEM120とを備える。検出器70は、本発明では2次光学系60に含まれてよい。また、画像処理装置90は本発明の画像処理部に含まれてよい。
1次光学系40は、電子ビームを生成し、試料20に向けて照射する構成である。1次光学系40は、電子銃41と、レンズ42、45と、アパーチャ43、44と、E×Bフィルタ46と、レンズ47、49、50と、アパーチャ48とを有する。電子銃41により電子ビームが生成される。レンズ42、45及びアパーチャ43、44は、電子ビームを整形するとともに、電子ビームの方向を制御する。そして、E×Bフィルタ46にて、電子ビームは、磁界と電界によるローレンツ力の影響を受ける。電子ビームは、斜め方向からE×Bフィルタ46に入射して、鉛直下方向に偏向され、試料20の方に向かう。レンズ47、49、50は、電子ビームの方向を制御するとともに、適切な減速を行って、ランディングエネルギーLEを調整する。
1次光学系40は、電子ビームを試料20へ照射する。前述したように、1次光学系40は、プレチャージの帯電用電子ビームと撮像電子ビームの双方の照射を行う。実験結果では、プレチャージのランディングエネルギーLE1と、撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2との差異は、好適には5〜20〔eV〕である。
この点に関し、異物10と周囲との電位差があるときに、プレチャージのランディングエネルギーLE1を負帯電領域で照射したとする。LE1の値に応じて、チャージアップ電圧は異なる。LE1とLE2の相対比が変わるからである(LE2は上記のように撮像
電子ビームのランディングエネルギーである)。LE1が大きいとチャージアップ電圧が高くなり、これにより、異物10の上方の位置(検出器70により近い位置)で反射ポイントが形成される。この反射ポイントの位置に応じて、ミラー電子の軌道と透過率が変化する。したがって、反射ポイントに応じて、最適なチャージアップ電圧条件が決まる。また、LE1が低すぎると、ミラー電子形成の効率が低下する。本発明は、このLE1とLE2との差異が望ましくは5〜20〔eV〕であることを見い出した。また、LE1の値は、好ましくは0〜40〔eV〕であり、更に好ましくは5〜20〔eV〕である。
また、写像投影光学系の1次光学系40では、E×Bフィルタ46が特に重要である。E×Bフィルタ46の電界と磁界の条件を調整することにより、1次電子ビーム角度を定めることができる。例えば、1次系の照射電子ビームと、2次系の電子ビームとが、試料20に対して、ほぼ垂直に入射するように、E×Bフィルタ46の条件を設定可能である。更に感度を増大するためには、例えば、試料20に対する1次系の電子ビームの入射角度を傾けることが効果的である。適当な傾き角は、0.05〜10度であり、好ましくは0.1〜3度程度である。
このように、異物10に対して所定の角度θの傾きを持って電子ビームを照射させることにより、異物10からの信号を強くすることができる。これにより、ミラー電子の軌道が2次系光軸中心から外れない条件を形成することができ、したがって、ミラー電子の透過率を高めることができる。したがって、異物10をチャージアップさせて、ミラー電子を導くときに、傾いた電子ビームが大変有利に用いられる。
ステージ30は、試料20を載置する手段であり、x−yの水平方向及びθ方向に移動可能である。また、ステージ30は、必要に応じてz方向に移動可能であってもよい。ステージ30の表面には、静電チャック等の試料固定機構が備えられていてもよい。
ステージ30上には試料20があり、試料20の上に異物10がある。1次系光学系40は、ランディングエネルギーLE−5〜−10〔eV〕で試料表面21に電子ビームを照射する。異物10がチャージアップされ、1次光学系40の入射電子が異物10に接触せずに跳ね返される。これにより、ミラー電子が2次光学系60により検出器70に導かれる。このとき、二次放出電子は、試料表面21から広がった方向に放出される。そのため、2次放出電子の透過率は、低い値であり、例えば、0.5〜4.0%程度である。これに対し、ミラー電子の方向は散乱しないので、ミラー電子は、ほぼ100%の高い透過率を達成できる。ミラー電子は異物10で形成される。したがって、異物10の信号だけが、高い輝度(電子数が多い状態)を生じさせることができる。周囲の二次放出電子との輝度の差異・割合が大きくなり、高いコントラストを得ることが可能である。
また、ミラー電子の像は、前述したように、光学倍率よりも大きい倍率で拡大される。拡大率は5〜50倍に及ぶ。典型的な条件では、拡大率が20〜30倍であることが多い。このとき、ピクセルサイズが異物サイズの3倍以上であっても、異物を検出可能である。したがって、高速・高スループットで実現できる。
例えば、異物10のサイズが直径20〔nm〕である場合に、ピクセルサイズが60〔nm〕、100〔nm〕、500〔nm〕等でよい。この例ように、異物の3倍以上のピクセルサイズを用いて異物の撮像及び検査を行うことが可能となる。このことは、SEM方式等に比べて、高スループット化のために著しく優位な特徴である。
2次光学系60は、試料20から反射した電子を、検出器70に導く手段である。2次光学系60は、レンズ61、63と、NAアパーチャ62と、アライナ64と、検出器70とを有する。電子は、試料20から反射して、対物レンズ50、レンズ49、アパーチ
ャ48、レンズ47及びE×Bフィルタ46を再度通過する。そして、電子は2次光学系60に導かれる。2次光学系60においては、レンズ61、NAアパーチャ62、レンズ63を通過して電子が集められる。電子はアライナ64で整えられて、検出器70に検出される。
NAアパーチャ62は、2次系の透過率・収差を規定する役目を持っている。異物10からの信号(ミラー電子等)と周囲(正常部)の信号の差異が大きくなるようにNAアパーチャ62のサイズ及び位置が選択される。あるいは、周囲の信号に対する異物10からの信号の割合が大きくなるように、NAアパーチャ62のサイズ及び位置が選択される。これにより、S/Nを高くすることができる。
例えば、φ50〜φ3000〔μm〕の範囲で、NAアパーチャ62が選択可能であるとする。検出される電子には、ミラー電子と二次放出電子が混在しているとする。このような状況でミラー電子像のS/Nを向上するために、アパーチャサイズの選択が有利である。この場合、二次放出電子の透過率を低下させて、ミラー電子の透過率を維持できるようにNAアパーチャ62のサイズを選択することが好適である。
例えば、1次電子ビームの入射角度が3°であるとき、ミラー電子の反射角度がほぼ3°である。この場合、ミラー電子の軌道が通過できる程度のNAアパーチャ62のサイズを選択することが好適である。例えば、適当なサイズはφ250〔μm〕である。NAアパーチャ(径φ250〔μm〕)に制限されるために、2次放出電子の透過率は低下する。したがって、ミラー電子像のS/Nを向上することが可能となる。例えば、アパーチャ径をφ2000からφ250〔μm〕にすると、バックグランド階調(ノイズレベル)を1/2以下に低減できる。
検出器70は、2次光学系60により導かれた電子を検出する手段である。検出器70は、その表面に複数のピクセルを有する。検出器70には、種々の二次元型センサを適用することができる。例えば、検出器70には、CCD(Charge CoupledDevice)及びTDI(Time Delay Integration)−CCDが適用されてよい。これらは、電子を光に変換してから信号検出を行うセンサである。そのため、光電変換等の手段が必要である。よって、光電変換やシンチレータを用いて、電子が光に変換される。光の像情報は、光を検知するTDIに伝達される。こうして電子が検出される。
ここでは、検出器70にEB−TDIを適用した例について説明する。EB−TDIは、光電変換機構・光伝達機構を必要としない。電子がEB−TDIセンサ面に直接に入射する。したがって、分解能の劣化が無く、高いMTF(Modulation Transfer Function)及びコントラストを得ることが可能となる。従来は、小さい異物10の検出が不安定であった。これに対して、EB−TDIを用いると、小さい異物10の弱い信号のS/Nを上げることが可能である。したがって、より高い感度を得ることができる。S/Nの向上は1.2〜2倍に達する。
図37は、本発明が適用された電子線検査装置を示す。ここでは、全体的なシステム構成の例について説明する。
図37において、異物検査装置は、試料キャリア(ロードポート)190と、ミニエンバイロメント180と、ロードロック162と、トランスファーチャンバ161と、メインチャンバ160と、電子線コラム系(電子光学系)100と、画像処理装置90を有する。ミニエンバイロメント180には、大気中の搬送ロボット、試料アライメント装置、クリーンエアー供給機構等が設けられる。トランスファーチャンバ161には、真空中の搬送ロボットが設けられる。常に真空状態のトランスファーチャンバ161にロボットが
配置されるので、圧力変動によるパーティクル等の発生を最小限に抑制することが可能である。
メインチャンバ160には、x方向、y方向及びθ(回転)方向に移動するステージ30が設けられ、ステージ30の上に静電チャックが設置されている。静電チャックには試料20そのものが設置される。または、試料20は、パレットや冶具に設置された状態で静電チャックに保持される。
メインチャンバ160は、真空制御系150により、チャンバ内を真空状態が保たれるように制御される。また、メインチャンバ160、トランスファーチャンバ161及びロードロック162は、除振台170上に載置され、床からの振動が伝達されないように構成されている。
また、メインチャンバ160には電子コラム100が設置されている。この電子コラム100は、1次光学系40及び2次光学系60のコラムと、試料20からの2次放出電子またはミラー電子等を検出する検出器70を備えている。検出器70からの信号は、画像処理装置90に送られて処理される。オンタイムの信号処理及びオフタイムの信号処理の両方が可能である。オンタイムの信号処理は、検査を行っている間に行われる。オフタイムの信号処理を行う場合、画像のみが取得され、後で信号処理が行われる。画像処理装置90で処理されたデータは、ハードディスクやメモリなどの記録媒体に保存される。また、必要に応じて、コンソールのモニタにデータを表示することが可能である。表示されるデータは、例えば、検査領域、異物数マップ、異物サイズ分布/マップ、異物分類、パッチ画像等である。このような信号処理を行うため、システムソフト140が備えられている。また、電子コラム系に電源を供給すべく、電子光学系制御電源130が備えられている。また、メインチャンバ160には、光学顕微鏡110や、SEM式検査装置120が備えられていてもよい。
以上説明した検査装置の1次光学系40について詳しく説明する。1次光学系40は、電子ビームを照射して試料20の表面に導く。しかしながら、試料20の表面に電子ビームが照射されると、照射されている領域と照射されていない領域との境界付近に、カーボンの堆積(いわゆるカーボンコンタミ)が発生したり、電子ビームが照射された領域が損傷したりする場合がある。そのため、観察時以外には試料に電子ビームが照射されないようにする必要があり、そのようにすることをブランキング処理という。
従来は、ブランキング処理を行うための専用の電極(あるいは磁極)を設け、この電極(あるいは磁極)に電圧を印加(あるいは磁場を発生)させて、電子ビームを大きく逸らすようにしていた。しかしながら、この場合、ブランキング用の電極(あるいは磁極)のために1次光学系40が大型化してしまうという問題がある。
そこで、以下のようにして1次光学系40の小型化を図る。
図38は、第1の実施形態に係る1次光学系40の概略構成を示す模式図である。1次光学系40は、電子銃41と、2段の静電偏向器GA1,GA2と、これらに挟まれた接地電極GNDと、アパーチャ部材43とを有する。なお、静電偏向器GA1,GA2および接地電極GNDは、図36におけるレンズ42とアパーチャ43との間に設けられ得る。
電子銃41は、例えばレーザ光を照射する光源およびレーザ光を電子ビームに変換する光電変換面などから構成され、電子ビームを照射する。電子ビームの進路に沿って、かつ、電子銃41と試料20との間に、静電偏向器GA1、接地電極GND、静電偏向器GA2、アパーチャ部材43が順に配置されている。
静電偏向器GA1,GA2は、1または複数(例えば4極)のアライメント電極を有し、電子ビームを偏向・走査する。すなわち、制御装置(不図示)からアライメント電極に印加される電圧に応じて、電子ビームを直進させたり、所望の方向に偏向したりすることができる。アライメント電極は、例えばアルミナ円盤をベースとし、四極子の形状に加工した後、各電極に相当する部分に金メッキを施し、さらに各電極への電圧印加を行うための給電端子を円盤側面に配置した構造とすることができる。
接地電極GNDは導電性材料で形成された筒状の電極であり、その内側を電子ビームが通る。接地電極GNDには接地電圧が基準電圧として供給され、対物レンズとしても作用する。
図39は、アパーチャ部材43の上面図である。図示のようにアパーチャ部材43は円環形状であり、電子ビームが通過可能な開口43aと、電子ビームが通過できない遮蔽部43bとから構成される。また、開口43aはアパーチャ部材43の中央に設けられ、その直下に試料20がある。
図40Aは、試料20を観察する際の1次光学系40の電子ビームの進路を模式的に示す図である。静電偏向器GA1,GA2のアライメント電極に適切な電圧を印加することで電子ビームのアライメントが行われ、図示のように、電子ビームはアパーチャ部材43の開口43aを通って、1次ビームとして試料20に到達する。この1次ビームが試料20に照射されることによって生じた2次ビームは、2次光学系60を介して検出器76上に結像する(図36参照)。
図40Bは、試料20を観察しない際、つまりブランキング時の電子ビームの進路を模式的に示す図である。静電偏向器GA1,GA2のアライメント電極に適切な電圧を印加することで電子ビームは大きく逸れ、アパーチャ部材43の遮蔽部43bに当たる。よって、電子ビームは試料20には到達しない。
このとき、図41に示すように、アライメント電極に印加する電圧を制御して、遮蔽部43bの1か所ではなく、様々な位置に分散して電子ビームが当たるようにするのが望ましい。電子ビームによる汚染を分散させることができるためである。そのためには、静電偏向器GA1またはGA2に少なくとも4極のアライメント電極を設け、印加される電圧を時間変調し、電子ビームが当たる位置を円環状に変化させることが考えられる。
このように、静電偏向器GA1,GA2のアライメント電極はアライナ機能およびブランキング機能の両方を持っており、印加する電圧によって、電子ビームに開口43aを通過させて試料20に導くか、電子ビームを遮蔽部43bで遮蔽して試料20に導かないかを切替制御できる。
以上説明したように、第2の実施形態では、アライナを行うための電極を用いてブランキング処理も行う。そのため、ブランキング処理専用の電極(あるいは磁極)を設ける必要がなく、1次光学系を小型化でき、ひいては検査装置を小型化できる。
上述した第2の実施形態における図38は、アパーチャ部材43を設けてこれに電子ビームを導くことで、試料20に電子ビームが照射されないようにするものであった。これに対し次に説明する変形例は、接地電極GNDを利用してブランキング処理を行うものである。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
図42は、変形例に係る1次光学系40’の概略構成を示す模式図である。1次光学系
40’は、電子銃41と、2段の静電偏向器GA1,GA2と、これらに挟まれた接地電極GNDとを有するが、図38におけるアパーチャ部材43がなくてもよい。また、本実施形態の接地電極GNDは、筒状であり、電子ビームの進行方向に沿う方向ができるだけ長いのが望ましい。
図43Aは、試料20を観察する際の1次光学系40’の電子ビームの進路を模式的に示す図である。静電偏向器GA1,GA2のアライメント電極に適切な電圧を印加し、接地電極GNDに接地電圧を供給することで電子ビームのアライメントが行われ、図示のように、電子ビームは1次ビームとして試料20に到達する。この1次ビームが試料20に照射されることによって生じた2次ビームは、2次光学系60を介して検出器76上に結像する。
図43Bは、試料20を観察しない際、つまりブランキング時の電子ビームの進路を模式的に示す図である。接地電極GNDに大きな電圧、より具体的には、電子銃41からの電子ビームの加速電圧(例えば2kV)より絶対値が大きい(望ましくは5%以上大きい)負の電圧を印加することで、電子ビームの進行方向が変化し、静電偏向器GA2を通過しない。結果として、電子ビームは試料20に到達しない。接地電極GNDにおける電子ビームの進行方向に沿う方向が長いほど、接地電極GNDに印加する電圧の絶対値を低くできる。
ここで、接地電極GNDによって進行方向が変えられた電子ビームが1次光学系41内の静電偏向器GA1などを汚染することも考えられる。そのため、図44に示すように、接地電極GNDを覆うフード723を設けてもよい。フード723の少なくとも一部は、接地電極GNDと電子銃41との間、あるいは、接地電極GNDと静電偏向器GA1との間にある。フード723を設けることで、ブランキング処理時に接地電極GNDによって進行方向が変えられた電子ビームが飛散するのを抑制できる。
このように、接地電極GNDに印加する電圧によって、電子ビームが試料20に到達するか、その進行方向が変えられて試料20に到達しないかを切替制御できる。
以上説明したように、本変形例では、接地電極GNDを用いてブランキング処理を行う。そのため、ブランキング処理専用の電極(あるいは磁極)を設ける必要がなく、1次光学系を小型化できる。
なお、図38や図42に示す静電偏向器GA1,GA2や接地電極GNDの配置順や数はあくまで一例にすぎない。