JP6792156B2 - X線分析装置及び強誘電体の分極特性評価方法 - Google Patents

X線分析装置及び強誘電体の分極特性評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、X線分析装置及び強誘電体の分極特性評価方法に関するものであり、例えば、強誘電体メモリ(FRAM(登録商標))等に用いる強誘電体の分極特性と電極との化学結合状態の同時取得を可能にするX線分析装置及び強誘電体の分極特性評価方法に関する。
FRAMは、低消費電力、高速読み書き、高書き換え可能回数などの特徴により、ICカードやRFIDに加えて、ドライブレコーダ、スマートメータ、複合機のカウンタなどのようにリアルタイムで頻繁に書き換えが起こる用途に良く利用されている。また、このような特徴は、IoT(Internet of Things)市場向けにも適しているとされ、さらなる市場拡大が期待されている。
FRAMは、強誘電体層が一対の電極で挟まれた積層構造で構成され、強誘電体層の分極状態を情報として記憶する不揮発性メモリである。求められる電気特性として、大きな分極値、低電圧での分極反転、繰返し動作に伴う分極の劣化耐性などが挙げられる。このように、FRAMにおける分極特性は、最も重要な素子特性と言える。
通常、FRAMにおける分極特性は、電気的測定によって得られている。最も著名な方法が、高圧トランス、固定コンデンサ容量、オシロスコープなどで構成された、ソーヤ・タワー法(例えば、非特許文献1参照)である。
また、ソーヤ・タワー法を改良した方法は、多数報告されている。一例として、特許文献1が挙げられる。本手法は、簡単に測定できるため広く利用されている反面、本手法のような電気的測定に基づく分析手法の場合、分極特性の良否判別は可能であるが、分極特性が悪いと判別されても、何が原因でどのように改善すれば良いかが分からないことが課題となっていた。
分極特性の違いが起こる要因としては、FRAMを構成する強誘電体や電極の化学結合状態が異なることが挙げられる。そのため、分極特性と、強誘電体や電極の化学結合状態を同時に分析することで、分極特性の優劣がどのような化学結合状態の違いに起因しているか、その関係が明確になり、それを改善することで良好なFRAMの開発に繋がると考えられる。化学結合状態の分析には、一般的にX線光電子分光が利用されている。
特開昭59−157577号公報
C.B.Sawyer and C.H.Tower,Phys.Rev.35 p.269(1930)
しかし、X線光電子分光では強誘電体の分極特性に関する情報を得ることはできないという問題がある。そこで、電気的測定による分極特性評価とX線光電子分光による化学結合状態分析を別々に実施する場合、一度電気的測定を行ったサンプルは元の状態と大きく異なる場合がある。また、電気的測定による分極特性評価からX線光電子分光による化学結合状態評価までの経時変化の影響もある。さらに、電気的測定で観測している領域とX線光電子分光により分析している領域が一致していないことも問題となる。
例えば、50μmサイズのキャパシタにおいて電気的測定を行った場合、得られる分極特性は50μmサイズの平均的な特性である。一方、その後にX線光電子分光を用いて10μmのスポットサイズのX線を照射して分析を行った場合、分極特性に悪い影響を与えている領域を分析しているとは限らないという問題がある。そのため、電気的測定で得られた分極特性と、X線光電子分光で得られた化学結合状態とにおいて不一致が生じていた。結果として、従来法では、原因究明や解決方法の提示に至らない場合が多いという問題がある。
本発明は、化学結合状態の分析が可能なX線光電子分光により、強誘電体の分極特性を得ることを目的とする。
一つの態様では、X線分析装置は、5keVより高エネルギーの単色X線を照射するX線源と、前記単色X線の照射により強誘電体を含む試料から発生した光電子を検出する光電子アナライザと、前記試料を搭載するとともに前記光電子の取り出し角を制御する試料ステージと、前記試料に電圧を印加する電圧印加機構と、検出した前記光電子から前記強誘電体を構成する元素の内殻スペクトルを取得し、取得した前記内殻スペクトルから前記強誘電体の分極特性を導出する解析部を備え、前記解析部は、前記試料に印加する印加電圧を変えながら、前記内殻スペクトルの取得、前記バンド構造の前記深さ依存性の取得、及び前記バンドベンディングと前記空乏層の幅の取得を実行し、前記バンドベンディングの印加電圧依存性と前記空乏層の幅の印加電圧依存性を取得し、取得した前記バンドベンディングの印加電圧依存性と前記空乏層の幅の印加電圧依存性により前記強誘電体の分極特性の電圧依存性を特定する
他の態様では、強誘電体の分極特性評価方法は、5keVより高エネルギーの単色X線を強誘電体に照射することにより発生した光電子を少なくとも2以上の光電子取り出し角において強誘電体を構成する元素の内殻スペクトルを取得する第1の工程と、取得した前記内殻スペクトルより前記強誘電体の価電子帯のバンド構造の深さ依存性を取得する第2の工程と、取得した前記深さ依存性より前記強誘電体のバンドベンディングと空乏層の幅を取得する第3の工程と、前記強誘電体に印加する印加電圧を変えながら前記第1の工程から前記第3の工程までの一連の工程を繰り返して、前記バンドベンディングの印加電圧依存性と前記空乏層の幅の印加電圧依存性を取得する第4の工程と、取得した前記バンドベンディングの印加電圧依存性と前記空乏層の幅の印加電圧依存性より前記強誘電体の分極特性の電圧依存性を取得する第5の工程を少なくとも備えている。
一つの側面として、化学結合状態の分析が可能なX線光電子分光を用いて、強誘電体の分極特性を得ることが可能になる。
本発明の実施の形態の強誘電体の分極特性評価方法に用いるX線分析装置の概略的構成図である。 本発明の実施の形態の強誘電体の分極特性評価方法のフロー図である。 本発明の実施例1の強誘電体の分極特性評価方法に用いるX線分析装置の概略的構成図である。 本発明の実施例1の強誘電体メモリの分極特性評価方法のフロー図である。 TOA=85°で測定されたTi1sスペクトルである。 非弾性平均自由工程を考慮した光電子強度と膜厚深さの相関関係を示す図である。 11分割した光電子強度と膜厚深さの相関関係を示す図である。 11のスペクトルの和で構成されたTi1sスペクトルである。 価電子帯のバンド構造の深さ依存性を示す図である。 上部電極を設けない状態のPZTのTi1sスペクトルと価電子帯スペクトルである。 5つのTOAで測定を行ったTi1sスペクトルである。 印加電圧に対する価電子帯のバンド構造の深さ依存性を示した図である。 規格化した分極特性図である。
ここで、図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態の強誘電体の分極特性評価方法を説明する。図1は、本発明の実施の形態の強誘電体の分極特性評価方法に用いるX線分析装置の概略的構成図である。X線分析装置は、真空チャンバ11と真空チャンバ11に連結した光電子アナライザ12を備えており、真空チャンバ11内には、試料14を搭載する試料ステージ13が配置される。真空チャンバ11内にはX線源(図示は省略)からの5keV以上の単色X線15が入射される。X線源からの連続的なエネルギー分布を有する白色X線は、例えば、Si単結晶等の単色器(図示は省略)により分光されて単色X線15になる。分光された単色X線15は、一般的に良く利用されるMgKα(1.253 keV)やAlKα(1.486 keV)のような軟X線ではなく、電極と強誘電体の界面に存在する空乏層の幅δよりも膜の深い領域から光電子が脱出可能となるような高エネルギーの5keV以上の硬X線を用いる。なお、上部電極としてPt電極を用いた場合には、IrO上部電極の場合に比べて単色X線15のエネルギーを高くすることが望ましい。
試料ステージ13は回転機構を備えており、解析部18を備えた処理装置17からの指示に基づき、単色X線15に対する入射角θが制御される。この入射角θの制御により、自動的に光電子の取り出し角(TOA:Take−Off Angle)が制御される。因みに、θ+TOA=90°である。解析部18は、取得した光電子から試料14となる強誘電体を構成する元素の内殻スペクトルを取得し、取得した内殻スペクトルから強誘電体の分極特性を評価する分極特性解析プログラムを格納している。
試料14に照射された単色X線15により放出された光電子は、光電子アナライザ12により検出される。また、X線分析装置は、試料14に電圧を印加する電圧印加機構16を有している。
図2は、本発明の実施の形態の強誘電体の分極特性評価方法のフロー図であり、解析部18に格納された分極特性解析プログラムに基づいて各処理を行う。まず、第1工程として、5keVより高エネルギーの単色X線を強誘電体に照射することにより発生した光電子を少なくとも2以上の光電子取り出し角において強誘電体を構成する元素の内殻スペクトルを取得する。この工程において、強誘電体として最大成分がチタン酸ジルコン酸鉛である強誘電体、例えば、PbZrTiO等を用いた場合には、内殻スペクトルとして、Tiの1sスペクトルを用いることが望ましい。Tiは、PbやZrに比べて固相拡散が少なく、また、電子の波動関数である1sスペクトルは対称性を有しているので解析が容易になる。なお、Ti2pスペクトル等の他の内殻スペクトルを用いても良く、ほぼ同様な結果が得られる。さらには、他の元素の内殻スペクトルを用いても良い。
第2工程として、取得した内殻スペクトルより強誘電体の価電子帯のバンド構造の深さ依存性を取得する。この工程において、異なる光電子取り出し角で取得した夫々の内殻スペクトルについて、光電子の非弾性平均自由工程を考慮して光電子強度と強誘電体の膜厚深さとの相関関係を導出する。次いで、導出した相関関係を光電子強度が等しくなるように膜厚深さ方向に少なくとも2以上の数に分割する。分割数としては、例えば、10〜20が好適である。この時、分割した内殻スペクトルを膜厚深さ毎に異なる結合エネルギーであるとして、価電子帯のバンド構造の深さ依存性を取得する。
第3の工程として、取得した強誘電体の価電子帯のバンド構造の深さ依存性より強誘電体のバンドベンディングV(E)と空乏層の幅δ(E)を取得する。この時、価電子帯のバンド構造の深さ依存性を二次関数でフィッティングし、バンドベンディングV(E)と空乏層の幅δ(E)を取得する。
第4の工程として、強誘電体に印加する印加電圧を変えながら第1の工程から第3の工程までの一連の工程を繰り返して、バンドベンディングの印加電圧依存性V(E)と空乏層の幅の印加電圧依存性δ(E)を取得する。この場合も、二次関数でフィッティングする。この工程において、強誘電体に印加する印加電圧Eを変えながら第1の工程から第3の工程までの一連の工程を10回乃至30回繰り返すことが好適である。
この時の印加電圧の変化は等間隔でも良いが、分極特性の変化が大きい領域においては例えば、0.1V間隔で細かく変化させ、分極特性の変化が小さい領域においては例えば、0.5V間隔で大まかに変化させて非等間隔に変化させることが望ましい。
第5の工程として、取得したバンドベンディングの印加電圧依存性V(E)と空乏層の幅の印加電圧依存性δ(E)より強誘電体の分極特性の電圧依存性を取得する。この時、予め取得した強誘電体の誘電率をεεrとして、強誘電体の分極値の印加電圧依存性P(E)を、P(E)=εεr (V(E)−V(E))/δ(E)として導出する。
試料としての強誘電体は、強誘電体キャパシタの誘電体層が典型的であるが、分析対象は強誘電体メモリに限られるものではなく、他の強誘電体デバイス、例えば、コンデンサの強誘電体層も分析対象となる。また、分析対象となる強誘電体もPZTに限られるものではなく、Bi系の層状強誘電体等にも適用されるものである。
本発明の実施の形態においては、化学結合状態分析が可能なX線光電子分光を用いて、分極特性を評価しているので、分極特性評価と化学結合状態分析を同時、且つ、同一箇所で実施することが可能となる。そのため、従来では課題となっていた電気的特性評価に伴うサンプル状態の変化、別々に測定することによる経時変化、観測領域の不一致の影響なく、分極特性と化学結合状態の関係を直接的に比較することが可能となる。
さらに、従来の電気的特性評価においてはキャパシタの平均的な分極特性しか得られなかったが、本発明の実施の形態においてはキャパシタサイズよりもX線のビームサイズを小さくすることで、分極特性のキャパシタ内分布を得ることも可能となる。その結果、信頼性の高い原因究明や解決方法の提示が可能となり、良好な分極特性を有するFRAMの実現を可能にすることができる。
次に、図3乃至図13を参照して、本発明の実施例1の強誘電体メモリの分極特性評価方法を説明する。図3は、本発明の実施例1の強誘電体の分極特性評価方法に用いるX線分析装置の概略的構成図である。X線分析装置は、真空チャンバ21と真空チャンバ21に連結した光電子アナライザ22を備えており、真空チャンバ21内には、試料24となるIrO/PZT/Pt構造の強誘電体メモリを搭載する試料ステージ23が配置される。真空チャンバ21内にはX線源(図示は省略)からの5keV以上の単色X線25が入射される。X線源からの連続的なエネルギー分布を有する白色X線は、Si単結晶により分光されて単色X線25になる。ここでは、約8.0keVの硬X線を用いる。
試料ステージ23は回転機構を備えている。コンピュータ30からデータの読み出し/書き込みが可能な場所に設置された記憶装置31に格納したプログラムからの指示に基づき、サンプルステージ制御用ドライバ兼コントローラ29により、単色X線25に対する入射角θが制御される。この入射角θの制御により、TOA(=90°−θ)が制御される。
試料24に照射された単色X線25により放出された光電子は、光電子アナライザ22及び光電子アナライザ制御装置28により解析される。試料24にはバイアス印加機構26により任意の電圧が印加され、この印加電圧はファンクションジェネレータ27により制御される。
次に、図4乃至図13を参照して、本発明の実施例1の強誘電体メモリの分極特性評価方法を説明する。図4は、本発明の実施例1の強誘電体メモリの分極特性評価方法のフロー図である。まず、ステップS1において、強誘電体の構成元素の内殻スペクトルを取得する。ここでは、PZTを構成するTiの1sスペクトルを取得する。図5は、TOA=85°で測定されたTi1sスペクトルである。この時、取得した光電子スペクトルから同時に試料24の同一個所の化学結合状態を分析する。
次いで、ステップS2において、取得した内殻スペクトルのフィッティングにより価電子帯のバンド構造の深さ依存を取得する。まず、図6に示すように、非弾性平均自由工程を考慮して光電子強度と膜厚深さの相関関係を導出する。次いで、図6の相関関係を光電子強度が等しくなるよう、即ち、分割した領域の面積が等しくなるように膜厚深さ方向に10〜20に分割する。ここでは、図7に示すように、11分割する。この11分割した膜厚深さの其々が異なる結合エネルギーを持つとする。
次いで、図8に示すように、内殻スペクトルは、膜厚深さ毎に異なる結合エネルギーを持ち、且つ、等しい強度からなる11のスペクトルの和で構成されているとして解析を行い、図9に示す価電子帯のバンド構造の深さ依存性を得る。なお、図8における下側の低い曲線は11の各スペクトルを表している。
このような解析を行うためには、Ti1sスペクトルと価電子帯上端(VBM)のエネルギー差を知る必要がある。このエネルギー差は、電極などに依存しない材料固有の値であるため、一度だけ測定すれば良く、以降はデータベース化しておき、その値を用いることができる。まず、IrO上部電極形成前のPZTを最表面とする試料を用意し、図10(a)に示すTi1sスペクトルと図10(b)に示す価電子帯スペクトルを取得する。この時、できるだけ小さな光電子取り出し角TOAで測定を実施するのが望ましく、例えば、TOA=15°で測定する。
次に、図10(a)のTi1sスペクトルからE1を取得し、図10(b)の価電子帯スペクトルからE2を取得し、そのエネルギー差E1−E2を導出する。実施例1に用いた試料24におけるエネルギー差は、およそ4966.2eVである。一方、図8の11分割したスペクトルのうち最も高結合エネルギーのスペクトルは分割したd領域の約4967.1eVである。この4967.1eVから4966.2eVを引いた約0.9eVが、dスペクトルの価電子帯上端に換算した場合のエネルギーとなる。なお、このd1スペクトルは図7より、0nm〜0.3nmの領域(平均深さ0.15nm)に相当するスペクトルである。
したがって、図9において、dスペクトルは、Y軸が0.9eVとX軸が0.15nmの座標位置にプロットされる。同様にして、11分割された各スペクトルにより、図8には11個の点がプロットされる。これらの点を二次関数でフィッティングすることにより、図9の曲線を得ることができる。なお、図9においては、価電子帯のバンド構造の深さ依存性を示すために上述の手順で解析を行っているが、分極Pだけを導出したい場合には、バンドベンディングVbと空乏層の幅δだけを求めれば良い。
ここで、図8のようにTOAが1つだけの場合、解析条件を満たす解は複数存在する場合があり、図8で行った解析は一義的に決まらないことが多い。そこで、ステップS3において、光電子の取り出し角TOAの数が十分か否かの判定が行われる。この判定は、必要とするバンドベンディングの精度と空乏層の幅の精度により決定される。
十分でないと判別された場合、ステップS4において、光電子の取り出し角TOAの変更が実施され、再びステップS1からステップS3の工程が繰り返される。ここでは、TOA=85°,50°,30°,15°,8°の計5つのTOAで測定を行った。図11は、測定結果の説明図であり、TOAが小さいほどスムースな曲線にはならないが、十分な強度を得るために測定時間を長くするとスムースな曲線になる。ここで、TOA=85°の場合と同様に、各TOAで得られたTi1sスペクトルを11分割することにより、44個の点が図9にプロットされ、TOA=85°の11個と合せて合計55個の点がプロットされることになる。この55個の点よって価電子帯のバンド構造の深さ依存性が得られ、このバンドが曲がっている領域を二次関数でフィッティングすることによってその曲がり量に相当するバンドベンディングが導出される。電圧印加前に得られたバンドベンディングは、V(E)として記憶装置32に記憶する。また、バンドベンディングが発生している領域を空乏層として、電圧印加前に得られた空乏層の幅をδ(E)として記憶装置32に記憶する。
次いで、ステップS6において、ファンクションジェネレータ27及びバイアス印加機構26により、試料24への電圧印加が実施される。ステップS7からステップS10では、各印加電圧の下でステップS1からステップS4と同様の処理が実施される。これにより、様々な印加電圧に対する価電子帯のバンド構造の深さ依存性が得られる。
図12は、印加電圧に対する価電子帯のバンド構造の深さ依存性を示した図であり電圧印加前の結果に加えて、下向きバイアスと上向きバイアスの結果を併せて示したものである。次いで、ステップS11では、バンドベンディングの印加電圧依存性V(E)と空乏層の幅の印加電圧依存性δ(E)が導出される。
次いで、ステップS12において、印加電圧に依存しない物性値として、強誘電体PZTの誘電率εεをデータベースより取得する。次いで、ステップS13においては、分極値の印加電圧依存性P(E)を
P(E)=εε(V(E)−V(E))/δ(E)
として導出する。
次いで、ステップS14において、印加電圧の数が十分と判断されるまでステップS6からステップS13までを繰り返し実施する。以上のようにして得た印加電圧と分極値の関係が図13である。但し、図13は、規格化してあり、誘電率εεのデータは使用していない。
この場合の繰り返し回数は、得られる分極特性の精度により決定され、通常は10回〜30回の繰り返しが行われる。この場合の印加電圧の変化は、分極特性が大きく変化する領域では、0.1V間隔、変化の小さい領域では0.5V間隔とすることが望ましい。
本発明の実施例1では、強誘電体や電極の化学結合状態分析が可能なX線光電子分光を用いて強誘電体メモリの分極特性を得ているので、強誘電体メモリの同じ個所における化学結合状態と分極特性を同時に取得することができる。したがって、所期の分極特性が得られていない場合には、化学結合状態を分析することで不良原因の究明が可能になる。
ここで、実施例1を含む本発明の実施の形態に関して、以下の付記を付す。
(付記1)5keVより高エネルギーの単色X線を照射するX線源と、前記単色X線の照射により強誘電体を含む試料から発生した光電子を検出する光電子アナライザと、前記試料を搭載するとともに前記光電子の取り出し角を制御する試料ステージと、前記試料に電圧を印加する電圧印加機構と、検出した前記光電子から前記強誘電体を構成する元素の内殻スペクトルを取得し、取得した前記内殻スペクトルから前記強誘電体の分極特性を導出する解析部を備えたX線分析装置。
(付記2)前記解析部が、前記5keVより高エネルギーの単色X線を前記強誘電体に照射することにより発生した前記光電子を少なくとも2以上の光電子取り出し角において前記強誘電体を構成する元素の内殻スペクトルを取得する第1の工程と、取得した前記内殻スペクトルより前記強誘電体の価電子帯のバンド構造の深さ依存性を取得する第2の工程と、取得した前記深さ依存性より前記強誘電体のバンドベンディングと空乏層の幅を取得する第3の工程と、前記強誘電体に印加する印加電圧を変えながら前記第1の工程から前記第3の工程までの一連の工程を繰り返して、前記バンドベンディングの印加電圧依存性と前記空乏層の幅の印加電圧依存性を取得する第4の工程と、取得した前記バンドベンディングの印加電圧依存性と前記空乏層の幅の印加電圧依存性より前記強誘電体の分極特性の電圧依存性を取得する第5の工程を処理装置に実行させる分極特性評価プログラムを備えている付記1に記載のX線分析装置。
(付記3)5keVより高エネルギーの単色X線を強誘電体に照射することにより発生した光電子を少なくとも2以上の光電子取り出し角において強誘電体を構成する元素の内殻スペクトルを取得する第1の工程と、取得した前記内殻スペクトルより前記強誘電体の価電子帯のバンド構造の深さ依存性を取得する第2の工程と、取得した前記深さ依存性より前記強誘電体のバンドベンディングと空乏層の幅を取得する第3の工程と、前記強誘電体に印加する印加電圧を変えながら前記第1の工程から前記第3の工程までの一連の工程を繰り返して、前記バンドベンディングの印加電圧依存性と前記空乏層の幅の印加電圧依存性を取得する第4の工程と、取得した前記バンドベンディングの印加電圧依存性と前記空乏層の幅の印加電圧依存性より前記強誘電体の分極特性の電圧依存性を取得する第5の工程を少なくとも備えている強誘電体の分極特性評価方法。
(付記4)前記第1の工程において、強誘電体の最大成分がチタン酸ジルコン酸鉛であり、前記内殻スペクトルがTiの1sスペクトルである付記3に記載の強誘電体の分極特性評価方法。
(付記5)前記第2の工程において、前記異なる光電子取り出し角で取得した夫々の前記内殻スペクトルについて、前記光電子の非弾性平均自由工程を考慮して光電子強度と前記強誘電体の膜厚深さとの相関関係を導出し、導出した前記相関関係を前記光電子強度が等しくなるように膜厚深さ方向に少なくとも2以上の数に分割し、前記内殻スペクトルを膜厚深さ毎に異なる結合エネルギーであるとして、前記価電子帯のバンド構造の深さ依存性を取得する付記3または付記4に記載の強誘電体の分極特性評価方法。
(付記6)前記第3の工程において、前記価電子帯のバンド構造の深さ依存性を二次関数でフィッティングし、前記バンドベンディングと前記空乏層の幅を導出する付記3乃至付記5のいずれか1に記載の強誘電体の分極特性評価方法。
(付記7)前記第4の工程において、前記強誘電体に印加する印加電圧を変えながら前記第1の工程から前記第3の工程までの一連の工程を10回乃至30回繰り返す付記3乃至付記6のいずれか1に記載の強誘電体の分極特性評価方法。
(付記8)前記第4の工程において、前記強誘電体に印加する印加電圧を前記分極特性の変化が大きい領域においては細かく変化させ、前記分極特性の変化が大きい領域においては大まかに変化させて非等間隔に変化させる付記7に記載の強誘電体の分極特性評価方法。
(付記9)前記第5の工程において、前記印加電圧の印加前の前記バンドベンディングをV(E)とし、前記バンドベンディングの印加電圧依性をV(E)とし、前記空乏層の幅の印加電圧依をδ(E)とし、予め取得した前記強誘電体の誘電率をεεrとして、前記誘電体の分極値の印加電圧依存性P(E)を
P(E)=εεr (V(E)−V(E))/δ(E)
として導出する付記3乃至付記8のいずれか1に記載の強誘電体の分極特性評価方法。
(付記10)前記強誘電体が、強誘電体キャパシタの誘電体層である付記3乃至付記9のいずれか1に記載の強誘電体の分極特性評価方法。
11 真空チャンバ
12 光電子アナライザ
13 試料ステージ
14 試料
15 単色X線
16 電圧印加機構
17 処理装置
18 解析部
21 真空チャンバ
22 光電子アナライザ
23 試料ステージ
24 試料
25 単色X線
26 バイアス印加機構
27 ファンクションジェネレータ
28 光電子アナライザ制御装置
29 サンプルステージ制御用ドライバ兼コントローラ
30 コンピュータ
31 記憶装置

Claims (6)

  1. 5keVより高エネルギーの単色X線を照射するX線源と、
    前記単色X線の照射により強誘電体を含む試料から発生した光電子を検出する光電子アナライザと、
    前記試料を搭載するとともに前記光電子の取り出し角を制御する試料ステージと、
    前記試料に電圧を印加する電圧印加機構と、
    検出した前記光電子から前記強誘電体を構成する元素の内殻スペクトルを取得し、取得した前記内殻スペクトルより前記強誘電体の価電子帯のバンド構造の深さ依存性を取得し、 取得した前記深さ依存性より前記強誘電体のバンドベンディングと空乏層の幅を取得する解析部を備え、
    前記解析部は、
    前記試料に印加する印加電圧を変えながら、前記内殻スペクトルの取得、前記バンド構造の前記深さ依存性の取得、及び前記バンドベンディングと前記空乏層の幅の取得を実行し、前記バンドベンディングの印加電圧依存性と前記空乏層の幅の印加電圧依存性を取得し、
    取得した前記バンドベンディングの印加電圧依存性と前記空乏層の幅の印加電圧依存性により前記強誘電体の分極特性の電圧依存性を特定する
    ことを特徴とするX線分析装置。
  2. 前記試料に印加する印加電圧を段階的に変化させることを特徴とする請求項1に記載のX線分析装置。
  3. 5keVより高エネルギーの単色X線を強誘電体に照射することにより発生した光電子を少なくとも2以上の光電子取り出し角において強誘電体を構成する元素の内殻スペクトルを取得する第1の工程と、
    取得した前記内殻スペクトルより前記強誘電体の価電子帯のバンド構造の深さ依存性を取得する第2の工程と、
    取得した前記深さ依存性より前記強誘電体のバンドベンディングと空乏層の幅を取得する第3の工程と、
    前記強誘電体に印加する印加電圧を変えながら前記第1の工程から前記第3の工程までの一連の工程を繰り返して、前記バンドベンディングの印加電圧依存性と前記空乏層の幅の印加電圧依存性を取得する第4の工程と、
    取得した前記バンドベンディングの印加電圧依存性と前記空乏層の幅の印加電圧依存性より前記強誘電体の分極特性の電圧依存性を取得する第5の工程を少なくとも備えている強誘電体の分極特性評価方法。
  4. 前記第1の工程において、強誘電体の最大成分がチタン酸ジルコン酸鉛であり、前記内殻スペクトルがTiの1sスペクトルである請求項に記載の強誘電体の分極特性評価方法。
  5. 前記第2の工程において、前記異なる光電子取り出し角で取得した夫々の前記内殻スペクトルについて、前記光電子の非弾性平均自由工程を考慮して光電子強度と前記強誘電体の膜厚深さとの相関関係を導出し、導出した前記相関関係を前記光電子強度が等しくなるように膜厚深さ方向に少なくとも2以上の数に分割し、前記内殻スペクトルを膜厚深さ毎に異なる結合エネルギーであるとして、前記価電子帯のバンド構造の深さ依存性を取得する請求項または請求項に記載の強誘電体の分極特性評価方法。
  6. 前記第5の工程において、前記印加電圧の印加前の前記バンドベンディングをV(E)とし、前記バンドベンディングの印加電圧依性をV(E)とし、前記空乏層の幅の印加電圧依をδ(E)とし、予め取得した前記強誘電体の誘電率をεεrとして、前記誘電体の分極値の印加電圧依存性P(E)を
    P(E)=εεr (V(E)−V(E))/δ(E)
    として導出する請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の強誘電体の分極特性評価方法。
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