JP6788255B2 - 新規ベクター及びこれを用いた可溶化タンパク質の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、可溶化タンパク質の製造方法に関する。具体的には、新規な発現ベクターを用いて、目的とする可溶化タンパク質の効率的な製造方法に関する。
ゲノム解析技術の進歩により、多種多様な生物のゲノム情報が蓄積され、それとともに、膨大な機能未知遺伝子の存在が明らかにされている。機能未知遺伝子の機能解析はポストゲノム解析の最重要課題であるが、その進展はゲノム解析と比較して遅れている。この最大の理由は、機能未知遺伝子がコードするタンパク質を、機能を保持した可溶性の状態で合成できないことがあるためである。
遺伝子情報を元にしてタンパク質を合成する方法として、対象とする遺伝子を導入した発現ベクターを用いて、大腸菌内でタンパク質を合成させる方法が知られている(非特許文献1)。この方法は、実験操作の容易さ、低コスト、高収量であることから、最も広く使用されているが、対象としたタンパク質が、不活性な不溶性の凝集体(封入体)として合成されることがある(非特許文献1)。これは、真核生物由来のタンパク質で多く見られる傾向にあり、原因の一つとして、大腸菌のタンパク質合成が、真核生物と比較して過度に速く、合成されるタンパク質の量も多いため、タンパク質の機能化に必要な高次構造の折り畳みが正常に行われていないことが挙げられる。
一方、低温培養した大腸菌内では、発現ベクターに導入された遺伝子情報をもとに合成されるタンパク質が、機能を保持した可溶性の状態で生成されることが知られており、これは、低温環境下にすることで、大腸菌内のタンパク質合成の速度が低下したことに起因すると考えられている(非特許文献2)。このことを受けて、ターゲットタンパク質の発現宿主の大腸菌を12から25℃の低温条件で培養することにより、合成されたタンパク質が封入体にはならず、可溶性の状態で得られる技術が報告されている(特許文献1)。
細胞内におけるタンパク質合成は、細胞内小顆粒のリボソームが、遺伝子情報に従って、アミノ酸を重合することで行われる。この反応は、GTP結合型翻訳因子(GTPase翻訳因子)が、リボソームのGTPaseセンターと呼ばれる特定の領域で相互作用し、その際に生じるGTP加水分解エネルギーによって促進されることが知られている。
GTPaseセンターは、リボソーム中でも特にタンパク質に富んだ領域であり、大腸菌リボソームのGTPaseセンター構成タンパク質の一つであるL11は、GTPase翻訳因子との相互作用に関連することが知られており、L11を欠損した大腸菌変異株(例えば、AM68株)は、生育が野生株よりも遅く、AM68株から単離したリボソームは、タンパク質合成速度が低下していることが知られている(非特許文献3及び4)。これを受けて、AM68株を発現宿主とすることで、真核生物に由来するタンパク質を可溶化状態で合成する技術が報告されている(特許文献2)
特開2004−024243号公報 特開2007−300858号公報
Baneyx, F., and Mujacic, M. (2004) Recombinant protein folding and misfolding in Escherichia coli. Nat. Biotechnol. 22, 1399-1408. Weinstock, G. M., ap Rhys, C., Berman, M. L., Hampar, B., Jackson, D., Silhavy, T. J., Weisemann, J., and Zweig, M.(1983) Open reading frame expression vectors: a general method for antigen production in Escherichia coli using protein fusions to beta-galactosidase. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80(14), 4432-4436. Sorensen, H. P., and Mortensenm K. K. (2005) Soluble expression of recombinant proteins in the cytoplasm of Escherichia coli. Microbial Cell Factories 2005, 4:1 doi:10.1186/1475-2859-4-1. Dabbs, E. R. (1979) Selection for Escherichia coli mutants with proteins missing from the ribosome. J. Bacteriol. 140, 734-737 Uchiumi, T., Honma, S., Nomura, T., Dabbs, E. R., and Hachimori, A. (2002) Translation elongation by a hybrid ribosome in which proteins at the GTPase center of the Escherichia coli ribosome are replaced with rat counterparts. J. Biol. Chem. 277, 3857-3862. Dyke, N. V., Xu, W., and Murgola, E. J. (2002) J.Mol.Biol.319, 329-339.
特許文献1に示されるような、低温培養条件による大腸菌内タンパク質合成は、低温環境を維持するための専用機器や、それらを維持するためのコストが必要となり、多くのタンパク質を合成する必要がある場合には、経済的負荷、環境負荷が大きい。これに対して、特許文献2に示されるL11欠損大腸菌変異株(AM68株)を発現宿主とした場合は、低温環境を必要としないが、生育が遅すぎるために、一連の操作に長時間を要することや、発現ベクターを大腸菌内に導入するための、形質転換効率が極めて悪いという課題があった。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、大腸菌を用いる可溶化タンパク質の製造方法において、ターゲットタンパク質の生成過程での低温環境下での培養条件を必要とせず、且つ、宿主の大腸菌の生育過程での生育時間を短縮する方法について鋭意研究を行った。AM68株は、L11発現遺伝子が欠損していることから、宿主の大腸菌の生育過程およびターゲットタンパク質の生成過程の全ての過程において生育時間が長い。そこで、本発明者は、宿主の大腸菌の生育過程においてはL11の発現を促し、ターゲットタンパク質の生成過程ではL11の発現を抑えることによって、ターゲットタンパク質の生成過程においてのみ生育時間を遅くしてターゲットタンパク質を可溶化できると考え、L11発現遺伝子の発現を誘導物質により調節できる誘導性プロモーターをL11発現遺伝子の上流に組み込んだベクターを作製し、形質転換したところ誘導物質によりL11の発現を制御できることを見出した。
さらに、ターゲットタンパク質の生成過程ではL11の発現を抑えると共にターゲットタンパク質の発現を誘発すべく、L11発現プロモーターの誘導物質とは異なる誘導物質により調節できる誘導性プロモーターをターゲットタンパク質発現遺伝子の上流に組み込んだベクターを作製し形質転換することにより、可溶化したターゲットタンパク質を効率よく生成させることができるとの知見を得て、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、低温環境を維持する培養装置を必要とせず、かつ、十分な生育速度と形質転換効率を確保することが可能な、可溶化したターゲットタンパク質の製造方法、及びこれを実現するための新規ベクターを提供することを目的とする。
(1)本発明に係るタンパク質の製造方法は、GST発現遺伝子とその下流のMCS領域にターゲットタンパク質発現遺伝子が組み込まれた系の上流にtacプロモーターを有したターゲットタンパク質遺伝子の発現誘導システムと、さらに、L11発現遺伝子とその上流にaraBADプロモーターを有したL11遺伝子の発現誘導システムとを有したベクターにより形質転換がなされたL11欠損大腸菌を用いたタンパク質の製造方法であって、0.3%以上の濃度のアラビノース(arabinose)を含む液体培地中で前記L11欠損大腸菌の生育を高速化させるプロセスと、 0.1%以下の濃度のアラビノースを含む液体培地中で前記L11欠損大腸菌の生育を低速化させるプロセスと、さらにイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)存在下でターゲットタンパク質の発現誘導を実行させるプロセスと、を含むことを特徴とするタンパク質の製造方法である。
(2)また、本発明に係るベクターは、前記タンパク質の製造方法に用いるL11欠損大腸菌を形質転換するベクターであって、配列表の配列番号1に示される塩基配列またはその配列の1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された配列で示される塩基配列を有するベクターである。
本発明に係る製造方法の概要図である。 pBAD24/Ec_L11作製の模式図である。 実施例に係る二制御系ベクター(pTAK)の作製の模式図である。 pTAK発現ベクター作製の模式図である。 ΔL11-pBAD24/Ec_L11の生育実験の結果である。 ΔL11-pTAKの生育実験の結果である。 ΔL11-pTAKにおけるL11存在状態の解析結果である。 ターゲットタンパク質の発現状態の解析結果である。
以下に、本発明に係る可溶化タンパク質の製造方法を実施するための形態について説明する。
本発明は、L11発現遺伝子の発現を誘導物質により調節できる誘導性プロモーターをL11発現遺伝子の上流に組み込むことでその発現を制御し、さらに、L11発現プロモーターの誘導物質とは異なる誘導物質により調節できる誘導性プロモーターをターゲットタンパク質発現遺伝子の上流に組み込むことにより、効率的に可溶化したターゲットタンパク質を生成させることができる大腸菌形質転換用ベクターおよび当該ベクターで形質転換した大腸菌を用いる可溶性タンパク質の製造方法を提供するものである。
図1に、本発明に係る製造方法についての概要図を示す。図中左部の前培養時では、L11を発現誘導することで生育を高速化させる。その後、図中中央左、同右の本培養時に、L11の発現を抑えることで細胞内のL11を減少させ、生育を低速化させる。その状態にてターゲットタンパク質の発現誘導(図中右)を行うことで、可溶化したターゲットタンパク質を効率的に生成させる。
本発明に係る製造方法では、ターゲットタンパク質の種類は特に限定はしないが、真核生物由来のタンパク質が好適に適用可能である。真核生物の例としては、ヒトを含む動物、植物、菌類など、細胞中に核を有する生物を意味する。なお本明細書では、可溶化したターゲットタンパク質を、便宜上可溶化タンパク質と記載することがある。
本発明においては、生育速度を制御するため、所定の誘導物質を用いて、L11の発現制御を行う。L11発現遺伝子の発現を誘導物質により調節できる誘導性プロモーターをL11発現遺伝子の上流に組み込まれたベクターで形質転換することにより、宿主の大腸菌の生育過程では、当該誘導物質によりL11を誘発させ、高い生育速度で培養することで菌体を十分増殖させる。そして、L11発現プロモーターの誘導物質とは異なる誘導物質により調節できる誘導性プロモーターをターゲットタンパク質発現遺伝子の上流に組み込まれたベクターで形質転換することにより、ターゲットタンパク質の生成過程では、L11の発現を抑制した状態でターゲットタンパク質を発現させて、可溶化タンパク質を効率的に産生させることが可能になる。
本発明のベクターのL11遺伝子の発現誘導システムとターゲットタンパク質遺伝子の発現誘導システムに導入できる誘導性プロモーターとしては、誘導物質でL11およびターゲットタンパク質の発現を制御できるプロモーターであれば特に限定されず、araBADプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、trpプロモーター、λプロモーターpLおよびphoAプロモーター等を挙げることができるが、L11遺伝子の発現誘導システムとターゲットタンパク質遺伝子の発現誘導システムの誘導性プロモーターは互いに異なるものを組み合わせることが必要であり、araBADプロモーターとtacプロモーターとの組み合わせが好ましい。
また、本発明のL11遺伝子の発現誘導システムとターゲットタンパク質遺伝子の発現誘導システムに導入する誘導性プロモーターの誘導物質としては、それぞれの誘導性プロモーターを制御できるものであれば特に制限されないが、それぞれの誘導性プロモーターの誘導物質は互いに異なるもので、相互に影響を与えないものであることが必要である。異なる誘導物質の組み合わせとしては、araBADプロモーターの誘導物質のアラビノース(arabinose)とtacプロモーターの誘導物質のイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)との組み合わせ等が挙げられる。
上記に示すように、L11の発現は、大腸菌の生育速度に影響を与える。このため、誘導物質の添加によるL11の発現を変化させることで、培養速度を制御することが可能である。即ち、宿主の大腸菌の生育過程では、L11発現遺伝子プロモーターの発現誘導物質を添加して生育速度を向上させ、ターゲットタンパク質の生成過程では当該誘導物質を添加せずに生育速度を抑えてターゲットタンパク質を可溶化させることができる。さらに、ターゲットタンパク質の生成過程では、L11発現遺伝子の発現誘導物質とは異なる、ターゲットタンパク質発現遺伝子プロモーターの誘導物質を添加してターゲットタンパク質発現遺伝子の発現を亢進させることによりターゲットタンパク質を効率的に生成させることができる。
本発明で用いるΔL11株は、当業者が知り得る既知の方法で調製可能であり、代表的な調製方法の例として、非特許文献6に記載の方法が挙げられる。
本発明において、発現誘導システムとは、所定の誘導物質の添加によって、プロモーターの下流にクローニングされた目的遺伝子を発現させる仕組みをいい、ベクターを用いて大腸菌内に組み込まれる。本発明で用いるベクターは、既知のものから任意に選択可能であるが、大腸菌内在性のプロモーターを含むものが好ましい。代表的なベクターの例としては、pUC、pBAD、pGEX等が挙げられる。
遺伝子をベクターに組み込む方法としては、既知の方法を適用することが可能であり、ターゲットタンパク質の種類、ベクターの種類等に応じて、任意に選択可能である。遺伝子をベクターに組み込む方法の例としては、In-Fusion法、制限酵素法が挙げられる。
本発明に係る製造方法によれば、遺伝子の発現制御により、生育速度を低速化等するため、低温環境を必要とせず、通常の培養環境下において、実施することが可能である。通常の培養環境とは、冷却をしない、大腸菌の培養温度環境をいい、一般的には、摂氏25度から摂氏45度までの温度環境、好ましくは摂氏30度から摂氏40度までの温度環境をいう。また本発明は、通常の培養環境下において好適に適用可能であるが、これにより温度制御下での作業の可能性を積極的に排除するものではない。
本発明で、形質転換体を培養する培地は、宿主細胞の種類、ターゲットタンパク質の種類に応じて任意に選択可能であり、代表的な例として、YM培地、Nutrient Agar培地、LB培地等が挙げられる。
以下に本発明の実施例によって、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
(L11遺伝子発現誘導システム導入ベクターの作製)
大腸菌のL11遺伝子は、染色体上に1つしか存在せず、mRNAへの転写量は、L11遺伝子の上流に位置するプロモーター領域によって制御されていることが知られている。本実施例においては、L11の発現を任意に制御する必要があるため、アラビノースによる発現制御可能な、araBADプロモーターを持つ、pBAD-24を用いて、アラビノースによってL11の細胞内補填を行うベクター(pBAD24-Ec_L11)を作製した。pBR322/His-Ec_L11の6xHis(Hisタグ)から、L11遺伝子を含むDNA領域をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅し、制限酵素EcoRIとHindIIIを用いてpBAD24を処理し、In Fusionクローニングを行った。図2にpBAD24/Ec_L11作製の模式図を示す。
ベクターの作製に用いたプライマーを以下に示す。各プライマーは、PCR反応ではTE Buffer(10mM Tris-HCl pH 7.6,0.1 mM EDTA)を用いて10 pmol/μlに調整して使用した。
His-EcL11-in-fusion-F
5’-CAGGAGGAATTCACCATGCATCATCATCATCATCATA-3’
EcL11-in-fusion-R
5’-CAAAACAGCCAAGGCTTTTAGTCCTCCACTACCAGG-3’
(PCR法によるEc_L11遺伝子DNA断片の増幅)
大腸菌野生株(W3110株)のゲノムDNAからpBR322ベクターに6xHis(Hisタグ)がN末端に付加された状態でpBR322ベクターにクローニングしたpBR322/His-Ec_L11をテンプレートにして、以下に示す反応溶液にて、PCR反応を行った。
PCR反応は94℃、2分間の熱変性処理の後、熱変性98℃、10秒、アニーリング62℃、30秒、伸長反応68℃、15秒を20サイクル行い、その後、68℃で7分間加熱した。反応終了後、確認のためにTBE Buffer(89 mM Tris-borate pH 8.3,2 mM EDTA)を泳動Bufferとして用いた1.5%アガロースゲル電気泳動を行い、目的の大きさで、かつ単一のバンドであることを確認した。
pBAD24ベクターに対して、制限酵素EcoRIと、HindIIIによる制限酵素消化を行った。以下の反応溶液で、37℃で、1時間反応を行った。
反応終了後、フェノール処理、クロロホルム処理を行い、エタノール沈殿によってDNA断片を回収し、TE Bufferに溶解し、確認のためにTAE Buffer(40 mM Tris-acetic acid pH 8.0,1 mM EDTA)を泳動 Bufferとして用いた1.0 % アガロースゲル電気泳動を行った。
(pBAD24ベクターへのEc_L11遺伝子DNA断片の挿入)
In Fusion反応を行うために、Ec_L11遺伝子DNA断片に対し、エンハンサー処理を行った。以下に示す反応溶液を調製し、37℃で20分インキュベートを行った後、80℃で15分インキュベートを行った。
制限酵素消化を行ったpBAD24ベクターに、Ec_L11遺伝子DNA断片を導入するため、In Fusion反応を行った。以下に示す反応溶液を調製し、50℃で15分間反応を行った後、氷上静置した。
上記で作製したベクターを用いてコンピテントセルDH5αを形質転換し、抗生物質アンピシリンを含むLB選択 (LB-Ap) 寒天培地上にて、37℃で約12時間培養した。培養後、得られた菌のコロニーから、pBAD24ベクターに対してEc_L11遺伝子DNA断片が挿入されているベクターを獲得するため、アンピシリン耐性菌に対するコロニーPCRを以下に示す反応溶液にて行った。
PCR反応は、以下に示すプライマーの組み合わせで行った。
araC-center-F
5’- CGGCGACAAGCAAACATGCTGTGCGACGC -3’
EC_L11 In Fusion-R
5’-CAAAACAGCCAAGGCTTTTAGTCCTCCACTACCAGG-3’
PCR反応は94℃、2分間の熱変性処理の後、熱変性94℃、30秒、アニーリング61℃、30秒、伸長反応68℃、1分30秒を30サイクル行い、その後、72℃で10分間加熱した。反応終了後、TBE Bufferを泳動Bufferとして用いた1.5%アガロースゲル電気泳動を行い、DNA断片の挿入を確認した。
DNA断片の挿入が確認されたアンピシリン耐性菌のコロニーを1 mlのLB-Ap選択液体培地に植菌し、37℃で一晩振盪培養した後、15,000rpm、4℃、10分間遠心することで菌体を回収し、QIAprep(登録商標) Spin Miniprep Kitを使用してpBAD24/Ec_L11ベクターを取得した。
(L11遺伝子発現誘導システム・ターゲットタンパク質遺伝子発現誘導システム導入ベクターの作製)
本実施例においては、L11の発現誘導物質にアラビノースを採用したため、ターゲットタンパク質の発現誘導には、これとは異なる誘導物質を用いる必要がある。本実施例では、IPTGによる発現制御が可能な、Tacプロモーターを持つ、pGEX-6P-1ベクターを用いて、目的となるタンパク質とL11との2つの発現制御が可能な二制御系ベクター(pTAK)を構築した。
pBAD24/Ec_L11のaraCから、Ec_L11を含み、ターミネーター領域までのDNAを、PCR増幅し、制限酵素BsaAIと、AatIIIを用いて、pGEX-6P-1を処理後、In Fusionクローニングを行った。図3に、本実施例に係る二制御系ベクター(pTAK)の作製の模式図を示す。
ベクターの作製に使用したプライマーを以下に示す。各プライマーは、PCR反応ではTE Bufferを用いて10 pmol/μlに調整して使用した。
pGEX-6P-1-araC-F
5’- CCATGACCCAGTCACATTGTCTGATTCGTTACCAATT -3’
rrnB-T2-ter-AatII-R
5’- GAAAAGTGCCACCTGAAAAGGCCATCCGTCAGGAT -3’
(PCR法によるaraC-Ec_L11DNA領域の増幅)
作製したpBAD24/EC_L11をテンプレートにして、PCRを以下の反応溶液を用いて行った。
PCR反応は、94℃、2分間の熱変性処理の後、熱変性98℃、10秒、アニーリング58℃、30秒、伸長反応68℃、90秒を20サイクル行い、その後、68℃で7分間加熱した。反応終了後、確認のためにTAE Buffer(40 mM Tris-acetic acid pH 8.0,1 mM EDTA)を泳動Bufferとして用いた1.0%アガロースゲル電気泳動を行った。In Fusion反応のために、このPCR産物10 μlに対して、4 μlのCloning enhancerを加え、37℃で20分間インキュベートした後、さらに80℃で15分間インキュベートを行った。
(pGEX-6P-1ベクターの制限酵素消化)
pGEX-6P-1ベクターに対してBsaAIによる制限酵素消化を行った後にAatIIによる制限酵素消化を行った。以下に示す反応溶液を調製し、37℃にて1時間反応を行った。
(BsaAI処理)
(AatII処理)
反応終了後、フェノール処理、クロロホルム処理を行い、エタノール沈殿によって制限酵素消化したpGEX-6P-1ベクターを回収し、TE Bufferに溶解し、確認のためにTAE Bufferを泳動 Bufferとして用いた1.0 % アガロースゲル電気泳動を行った。
(pGEX-6P-1ベクターへのaraC-Ec_L11DNA領域の挿入)
制限酵素消化を行ったpGEX-6P-1ベクターに、araC-Ec_L11遺伝子DNA断片を導入するためIn Fusion反応を行った。以下に示す反応溶液を調製し、50℃で15分インキュベートを行った。
この反応液を用いて、コンピテントセルDH5αを形質転換し、抗生物質のアンピシリンを含むLB-Ap寒天培地上にて37℃で約12時間培養した。培養により得られたアンピシリン耐性菌のコロニーからpGEX-6P-1ベクターに対してaraC-Ec_L11遺伝子DNA断片が挿入されているベクターを獲得するため、アンピシリン耐性菌に対するコロニーPCRを以下に示す反応溶液にて行った。
PCR反応は、以下に示すプライマーの組み合わせで行った。
pGEX-6P-1-BsaAI-92-F
5’- CGGTCACAGCTTGTCTGTAAGCGGATGCCG -3’
pGEX-6P-1-AatII-68-R
5’- GGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACAT -3’
PCR反応は94℃、2分間の熱変性処理の後、熱変性94℃、30秒、アニーリング56℃、30秒、伸長反応68℃、2分30秒を25サイクル行った。反応終了後、TAE Bufferを泳動Bufferとして用いた1.0%アガロースゲル電気泳動を行い、DNA断片の挿入を確認した。その後、DNA断片の挿入が確認されたアンピシリン耐性菌のコロニーを1 mlのLB-Ap選択液体培地に植菌し、37℃で一晩振盪培養した後、15,000rpm、4℃、10分間遠心することで菌体を回収し、QIAprep Spin Miniprep Kitを使用してpTAKベクターを取得した。
(ターゲットタンパク質発現ベクターの作製)
本実施例においては、ターゲットタンパク質として、ホタルのルシフェラーゼ(Luc)を採用した。具体的には、pSP-luc+NFベクターのLuc遺伝子を含むDNA領域を、PCR増幅し、制限酵素XhoIと、SmaIを用いて、pTAKを処理後、In Fusionクローニングを行った。図4に、pTAK/Lucベクター作製の模式図を示す。
ベクターの作製、および塩基配列解析(ABI PRISM BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequence Kitを用いたシークエンス反応)に用いたプライマーを以下に示す。各プライマーは、TE Bufferを用いて10 pmol/μlに調整して使用した。
Luc-In-Fusion-F
5’- ATCCCCGGAATTCCCCATGGTCACCGACGCCAA -3’
Luc-In-Fusion-R
5’- GATGCGGCCGCTCGATTACACGGCGATCTTTCCG -3’
(PCR法によるターゲットタンパク質 DNA領域の増幅)
Luc遺伝子DNA領域のPCRを以下に示す反応溶液にて行った。
PCR反応は94℃、2分間の熱変性処理の後、熱変性98℃、10秒、アニーリング、60℃伸長反応68℃、60秒、を15サイクル行い、その後、68℃で7分間加熱した。このPCR産物1 μlをテンプレートにして、さらにPCR増幅を以下に示す反応溶液にて行った。
PCRサイクルは一回目と同様の方法で行い、反応終了後、確認のためにTAE Bufferを泳動 Bufferとして用いた1.0 % アガロースゲル電気泳動を行った。In Fusion反応のために、このPCR産物10 μlに対して、4 μlのCloning enhancerを加え、37℃で20分間インキュベートした後、さらに80℃で15分間インキュベートを行った。
(pTAKベクターの制限酵素消化)
pTAKベクターに対してXhoIによる制限酵素消化を行った後にSmaIによる制限酵素消化を行った。以下に示す反応溶液を調製し、37℃にて3時間反応を行った。
反応終了後、フェノール処理、クロロホルム処理を行い、エタノール沈殿によって制限酵素消化したpTAKベクターを回収し、TE Bufferに溶解し、確認のためにTAE Bufferを泳動 Bufferとして用いた1.0 % アガロースゲル電気泳動を行った。
(pTAKベクターへのLuc遺伝子DNA領域の挿入)
制限酵素消化を行ったpTAKベクターに、Luc遺伝子DNA 断片を導入するためIn Fusion反応を行った。以下に示す反応溶液を調製し、50℃で15分間反応を行った後、氷上静置した。
この反応液を用いて、コンピテントセルDH5αを形質転換し、抗生物質のアンピシリンを含むLB-Ap寒天培地上にて37℃で約12時間培養した。培養により得られたアンピシリン耐性菌のコロニーからpGEX-6P-1ベクターに対してaraC-Ec_L11遺伝子DNA断片が挿入されているベクターを獲得するため、アンピシリン耐性菌に対するコロニーPCRを以下に示す反応溶液にて行った。
PCR反応は94℃、2分間の熱変性処理の後、熱変性94℃、30秒、アニーリング56℃、30秒、伸長反応68℃、2分30秒を25サイクル行った。反応終了後、TAE Bufferを泳動Bufferとして用いた1.0%アガロースゲル電気泳動を行い、DNA断片の挿入を確認した。その後、DNA断片の挿入が確認されたアンピシリン耐性菌のコロニーを1 mlのLB-Ap選択液体培地に植菌し、37℃で一晩振盪培養した後、15,000rpm、4℃、10分間遠心することで菌体を回収し、QIAprep Spin Miniprep Kitを使用してpTAK/Lucベクターを取得した。
(形質転換体の取得)
作製したpBAD24/Ec_L11、pTAK、pTAK/Lucベクターを用いて、ΔL11株を形質転換し、抗生物質アンピシリンとアラビノースを含むLB寒天培地(LB-Ap-Ara寒天培地)で培養することで、本実施例に係る形質転換体(ΔL11-pBAD24/Ec_L11、ΔL11-pTAK、ΔL11-pTAK/Lucを作製した。なお、アラビノース非存在条件でも、形質転換体は得られたが、存在条件下よりも取得に長時間を必要とした。
(pBAD24/Ec_L11ベクターによる生育制御の解析)
形質転換体であるΔL11-pBAD24/Ec_L11の生育に及ぼすアラビノースの影響を解析するため、アラビノース存在、非存在条件にて静置培養を行った。ΔL11-pBAD24/Ec_L11をLB-Ap-Ara選択液体培地にてOD600nmが0.4まで37℃にて震盪培養し、その培養液をLB-Ap(左)、LB-Ap-Ara(右)選択寒天培地に画線して、37℃にて64時間静置培養を行った。培養結果の写真を図5Aに示す。
細胞内におけるL11の存在状態を解析するため、ウエスタンブロットによるL11(Hisタグ)の検出を行った。ΔL11-pBAD24/Ec_L11をLB-Ap選択液体培地にてOD600nmが0.5まで37℃にて震盪培養し、アラビノースを添加、0、1、3、5、時間後のL11の存在状態をHis-Probeを用いたウエスタンブロットにて解析した。結果を図5Bに示す。図中左は、アラビノースを添加しない条件での結果であり、図中右はアラビノースを添加した条件で実験した結果である。
静置培養の結果、アラビノース存在条件では、形質転換体の生育が確認されたが、非存在条件では、生育の著しい遅延が認められた。また、液体培養において、L11タンパク質は、アラビノース存在条件でのみ検出され、非存在では検出されなかった。これらの結果より、ΔL11株の生育を回復するための、L11の細胞内補填が、araBADプロモーターによる、アラビノース誘導によって制御可能であることが判明した。
(pTAKベクターによる生育制御の解析)
形質転換体であるΔL11-pTAKの生育に及ぼすアラビノースの影響を解析するため、アラビノース存在、非存在条件にて静置培養を行った。ΔL11-pTAKをLB-Ap-Ara選択液体培地にてOD600nmが0.4まで37℃にて震盪培養し、その培養液をLB-Ap(左)、LB-Ap-Ara(右)選択寒天培地に画線して、37℃にて64時間静置培養を行った。培養結果の写真を図6Aに示す。
ΔL11-pTAKをアラビノース濃度の異なる条件下で震盪培養を行い、経時測定にて得られた生育曲線から倍加時間(Dubling Time)を算出した。ΔL11-pTAKを2 mlのLB-Ap-Ara選択液体培地にてOD600nmが0.5になるまで37℃にて震盪培養し、その培養液12.5μlを5mlのLB-Ap-Ara(0%、0.1%、0.3%、0.4%、0.5%、0.8%、1.0%)液体培地に添加、37℃にて震盪培養し、10分ごとにOD600nmを測定した。生育曲線を図6Cに示す。震盪培養時におけるOD600nmの変化から倍加時間 (Doubling Time) を算出した。算出結果を図6Dに示す。
OD600nmの測定はTaitec社製OD Senser-Tにてangle 45°、振幅50nm、150rpm、インターバル10分の設定で測定した。OD600nmの自然対数を縦軸、時間を横軸としたグラフを生育曲線として描き、OD600nm の自然対数が直線状となる範囲 (対数増殖期) の近似直線式の傾きから下記の式を用いて倍加時間 (Doubling Time) を算出した。なお、比較対象として大腸菌野生株W3110をpTAKベクターで形質転換したWT-pTAKにおいてもアラビノース濃度0%にて同様の実験を行った。
Doubling Time = (ln 2 /傾き) × 60 min
細胞内におけるL11の存在状態を解析するため、ウエスタンブロットによるL11(Hisタグ)の検出を行った。ΔL11-pTAKをLB-Ap選択液体培地にてOD600nmが0.5まで37℃にて震盪培養し、アラビノースを添加、0、1、3、5、時間後のL11の存在状態をHis-Probeを用いたウエスタンブロットにて解析した。結果を図6Bに示す。図中左は、アラビノースを添加しない条件での結果であり、図中右はアラビノースを添加した条件で実験した結果である。
静置培養の結果、アラビノース存在条件では、形質転換体の生育が確認されたが、非存在条件では、生育の著しい遅延が認められた。液体培地での振盪培養において、ΔL11-pTAKは、アラビノース濃度が0%での倍加時間は、約149分と極めて遅く、野生株を宿主とした場合の約5倍であったが、0.1%では約54分まで回復し、0.3%以上では野生株と同程度まで回復することが認められた。また、L11タンパク質の発現は、アラビノース添加後、1時間で認められ、5時間は継続して発現した。一方、アラビノース非存在条件ではL11は検出されなかった。これらの結果より、pTAKベクター中のaraBADプロモーターによる、L11のアラビノース誘導が有効に作用しており、アラビノースの添加濃度によってΔL11株の生育速度が制御可能であることが判明した。
(pTAKベクターによるL11とターゲットタンパク質の発現制御)
pTAKベクターには、Tacプロモーター制御下にGlutathione S-transferase(GST)遺伝子が存在しており(図3右)、IPTGによるGSTの発現誘導が可能である。一般的に、IPTGによる発現誘導は、大腸菌の対数増殖期(OD600nmが0.2から1.0)で行われるため、この培養期間内における、ΔL11-pTAKの細胞内におけるL11のアラビノースの有無による発現制御について解析した。ΔL11-pTAKをLB-Ap-Ara(0%、0.4%)選択液体培地にて、37℃条件下で震盪培養し、OD600nmを継時的に測定しつつ、各地点の培養液を回収した。結果を図7A上部に示す。また、OD600nmが0.04相当分の各サンプルを用いてHis-Probeによるウエスタンブロットを行うことでL11の存在状態を解析した。結果を図7A下部に示す。
GSTのIPTG発現誘導におけるアラビノースの影響、およびL11の発現制御におけるITPGの影響を解析した。ΔL11-pTAKをLB-Ap-Ara(0%、0.4%)選択液体培地にて、37℃条件下でOD600nmが0.5になるまで震盪培養した後、終濃度が1 mMとなるようにIPTGを添加して、0、1、2、3、5時間後に培養液を200 μlずつ回収し、OD600nmが0.04相当分の各サンプルを用いてSDS-PAGEを行い、クマシー染色を行った。結果を図7B上部に示す。また、同様のサンプルを用いてHis-Probeによるウエスタンブロットを行うことでL11の存在状態を解析した。結果を図7B下部に示す。
実験の結果、アラビノース存在条件における液体培養中では、L11が常に検出されたが、非存在条件では、との地点でも検出されなかった。IPTG存在条件でも、同様の結果が得られたことから、pTKAベクターによる、ΔL11株の細胞内のL11の発現抑制は、アラビノース非存在条件で厳密に行われており、IPTGによる影響は無いことが判明した。また、IPTGによって誘導されるGSTの発現は、アラビノース存在条件よりも、合成量は僅かに低下しているが、非存在条件でも認められ、生育抑制し、タンパク質合成を低速化したΔL11株の細胞内でも、IPTGによるターゲットタンパク質(GST)の発現誘導が可能であることが判明した。
(ターゲットタンパク質の発現状態の解析)
ΔL11-pTAK、およびpTAKベクターを用いて形質転換した大腸菌野生株(WT-pTAK)の細胞内にて発現させたGSTの存在状態を解析した。ΔL11-pTAK、WT-pTAKをLB-Ap液体選択培地にてOD600nmが0.5になるまで37℃条件下で振盪培養を行い、終濃度が1 mMとなるようにIPTGを添加して、3時間後に培養液を回収した。その後、凍結融解、さらに、終濃度が4 μg/mlとなるようにリゾチームを加え、再度凍結融解し、一部をTotal(T)画分として回収し、Supernatat(S)画分とPrecipitate(P)画分に分離した。OD600nmが0.03相当分の各サンプルを用いてSDS-PAGEを行い、クマシー染色を行った。結果を図8A上部に示す。また、検出されたGSTのバンド強度を、ソフトウェアImageJにて数値化してグラフ化した。結果を図8A下部に示す。
ΔL11-pTAK/Luc、およびpTAK/Lucベクターを用いて形質転換した大腸菌野生株(WT-pTAK/Luc)の細胞内にて発現させたルシフェラーゼの酵素機能の状態を解析した。ΔL11-pTAK/Luc、WT-pTAK/LucをLB-Ap液体選択培地にてOD600nmが0.5になるまで37℃条件下で振盪培養を行い、一部を回収した後(前)、終濃度が1 mMとなるようにIPTGを添加して、3時間後に培養液を回収した(後)。OD600nmが0.03相当分の菌液を用いてSDS-PAGEを行い、クマシー染色を行なった。結果を図8B上部に示す。また、同様のOD600nmが0.03相当分の菌液を用い、ピッカジーン(東洋ビーネット社製)(登録商標)と反応させ、そのときの光量子数をArvo x2により測定した(ルシフェラーゼアッセイ)。SDS-PAGEにて検出されたルシフェラーゼのバンド強度を、ソフトウェアImageJにて数値化し、その値でルシフェラーゼアッセイにて得られた光量子数を割ることで、発現したルシフェラーゼの中で、酵素機能を保持する割合を、ルシフェラーゼ活性として算出した。WT-pTAK/Lucのルシフェラーゼ活性を100%としたときの相対量としてグラフ化した。結果を図8B下部に示す。
GSTは可溶性の高いタンパク質であり、野生株を宿主とした場合、全発現量の約7割が可溶性のタンパク質として発現した。ΔL11を宿主とした場合、野生株よりもさらに可溶性となる量が多くなり(全発現量の約9割)、可溶化率は2割程度高いことが判明した。この結果は、可溶性の高いタンパク質であっても、ΔL11-pTAKのタンパク質合成系が、タンパク質の可溶化発現に有用であることを示している。また、真核生物由来のタンパク質である、ホタルのルシフェラーゼをターゲットタンパク質とした場合、ΔL11を宿主として発現させたルシフェラーゼの酵素活性は、野生型よりも約2.5倍高いという結果となった。このことは、不溶性、不活性のタンパク質として発現する傾向がある、真核生物由来のタンパク質の可溶化、機能化発現に、ΔL11-pTAKのタンパク質合成系が優位に働くことを示している。
本発明に係る製造方法は、低温環境を維持する培養装置を必要とせず、且つ、可溶化したターゲットタンパク質を効率的に製造する方法であり、様々なタンパク質に対応できる可能性が高く、広い研究分野で有効に活用され、プロテオーム研究の発展に貢献できる極めて有用なものである。

Claims (2)

  1. GST発現遺伝子とその下流のMCS領域にターゲットタンパク質発現遺伝子が組み込まれた系の上流にtacプロモーターを有したターゲットタンパク質遺伝子の発現誘導システムを有し、さらに、L11発現遺伝子とその上流にaraBADプロモーターが組み込まれたL11遺伝子の発現誘導システムが非MCS領域に導入されたベクターにより、形質転換がなされたL11欠損大腸菌を用いたタンパク質の製造方法であって、
    0.3%以上の濃度のアラビノース(arabinose)を含む液体培地中で前記L11欠損大腸菌の生育を高速化させるプロセスと、
    0.1%以下の濃度のアラビノースを含む液体培地中で前記L11欠損大腸菌の生育を低速化させるプロセスと、
    さらにイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)存在下でターゲットタンパク質の発現誘導を実行させるプロセスと、を含むことを特徴とするタンパク質の製造方法。
  2. 請求項1に記載のタンパク質の製造方法に用いるL11欠損大腸菌を形質転換するベクターであって、配列表の配列番号1に示される塩基配列またはその配列の1もしくは複数の塩基が欠失、置換もしくは付加された配列で示される塩基配列を有するベクター。
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