以下、本発明の一実施形態に係る計測装置、計測システム及びコンピュータシステムについて、図面を参照して具体的に説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は下記の実施形態に限定されない。したがって、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
本実施形態では、需要家施設(customer’s facility)における電流と電圧との少なくとも一方を計測する計測装置、計測システム及びコンピュータシステムについて説明する。ここでいう「需要家施設」は、電力の需要家の施設を意味しており、電力会社等の電気事業者から電力の供給を受ける施設だけでなく、太陽光発電設備等の自家発電設備から電力の供給を受ける施設も含む。本実施形態では、自家発電設備として太陽光発電設備8(図2参照)を備える戸建住宅を需要家施設の一例として説明する。もちろん、需要家施設は戸建住宅に限らず、マンションなどの集合住宅の各住戸であってもよいし、店舗や事務所、工場などの非住宅施設であってもよい。
本実施形態の計測システム1は、図1及び図2に示すように、計測装置2と、管理システム3(コンピュータシステム)とを備えている。計測装置2と管理システム3とは、例えばインターネットなどのネットワーク4を介して接続されている。計測装置2は、需要家施設100に設置されている。
計測装置2は、需要家施設100における電流と電圧との少なくとも一方を計測するシステムであって、本実施形態では、主幹ブレーカ51における電流(第1電流I1、第2電流I2)と電圧(第1電圧V1、第2電圧V2)とを計測する。
以下、本実施形態の計測装置2、計測システム1及び管理システム3について詳細に説明する。
計測装置2は、図2に示すように、需要家施設100に設置された分電盤5のキャビネット内に配置されている。分電盤5は、スマートメータ6を介して系統電源に電気的に接続された主幹ブレーカ51と、主幹ブレーカ51の二次側に電気的に接続された複数の分岐ブレーカ52と、連系ブレーカ53とをキャビネット内に備えている。スマートメータ6と主幹ブレーカ51とは、第1電線101と第2電線102と第3電線103とを有する電力線10により電気的に接続されている。複数の分岐ブレーカ52の各々には、例えばエアコン、冷蔵庫、テレビ、照明器具などの1乃至複数の電気機器が電気的に接続されている。連系ブレーカ53には、パワーコンディショナ9を介して太陽光発電設備8が接続されている。つまり、本実施形態では、太陽光発電設備8により得られた電力が分電盤5を介して需要家施設100に供給されるように構成されている。本実施形態では、需要家施設100への配電方式が単相3線式の場合について説明するが、配電方式は単相3線式に限らず、例えば三相3線式であってもよい。
計測装置2は、図1に示すように、検出部11に電気的に接続されている。検出部11は、電流検出部111と、電圧検出部112とを有している。電流検出部111は、例えば一対の変流器(CT:Current Transformer)で構成されている。一対の変流器の一方は、第1電線101に流れる第1電流I1(図3参照)を検出し、一対の変流器の他方は、第2電線102に流れる第2電流I2(図3参照)を検出する。電圧検出部112は、例えば一対の計器用変圧器(PT:Potential Transformer)で構成されている。一対の計器用変圧器の一方は、第1電線101と第3電線103との間に印加される第1電圧V1(図3参照)を検出し、一対の計器用変圧器の他方は、第2電線102と第3電線103との間に印加される第2電圧V2(図3参照)を検出する。
計測装置2は、図1に示すように、マイクロコンピュータ21と、通信部22とを備えている。
マイクロコンピュータ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びメモリを主構成とするコンピュータであり、CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、各機能を実現するように構成されている。CPUが実行するプログラムは、ここではコンピュータのメモリ(後述の記憶部215)に予め記録されているが、メモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよいし、電気通信回線を通じて提供されてもよい。
マイクロコンピュータ21は、図1に示すように、生成部211と、変更部212と、演算部213と、処理部214と、記憶部215とを有している。
生成部211は、検出部11の検出結果であるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換機能を有している。そして、生成部211は、検出部11から入力されるアナログ信号に基づいて、所定の計測仕様に従って計測データを生成するように構成されている。ここでいう「計測仕様」には、例えばA/D変換時のサンプリング周波数や、A/D変換時の分解能、データの計測時間、計測対象などの複数のパラメータが含まれている。また、計測対象には、主幹ブレーカ51における電流と電圧とが含まれており、本実施形態では、上述の第1電流I1、第2電流I2、第1電圧V1及び第2電圧V2が計測対象である。
また、生成部211は、時系列において隣り合う第1計測データと第2計測データとの差分データを生成するように構成されている。さらに、生成部211は、計測データの特徴量を抽出するように構成されている。ここでいう「特徴量」は、上述の計測データに基づいて求められる需要家施設100における消費電力、消費電力量、電流波形の歪み率、電圧波形の歪み率、電流波形の波高値及び電圧波形の波高値のうち少なくともいずれか1つであることが好ましい。なお、上記差分は、サンプリングごとに求めた第1計測データと第2計測データとの差分の合計値であってもよいし、第1計測データの絶対値の平均値と第2計測データの絶対値の平均値との差分であってもよい。
変更部212は、変更指令に応じて管理システム3との通信頻度と計測仕様との少なくとも一方を変更する変更処理を行うように構成されている。変更指令には、管理システム3との通信頻度と計測仕様との少なくとも一方に対する変更内容が含まれている。この変更指令は、ネットワーク4を介して管理システム3から送信されるか、後述の演算部213から出力される。
演算部213は、生成部211で生成された計測データに基づいて計測仕様の変更が必要か否かを判別する。そして、演算部213は、計測仕様の変更が必要であると判断した場合、変更内容を含む変更指令を変更部212に出力する。例えば、いずれかの電気機器において電気事故が発生しており、発生原因や発生箇所などを特定するために計測時間を長くする場合などが想定される。この場合、演算部213は、計測時間を長くするための変更指令を変更部212に出力する。
処理部214は、生成部211で生成された計測データに対して所定の処理を行うように構成されている。処理部214は、変更部212が変更処理を行った場合に所定の処理を行ってもよいし、変更部212が変更処理を行わない場合に所定の処理を行ってもよい。言い換えると、処理部214は、変更部212が変更処理を行うか否かに拘らず、所定の処理を行う。以下、処理部214において行われる所定の処理について具体的に説明する。
例えば、分電盤5からの給電を受けるすべての電気機器の動作状態に変動がなく、その結果、検出部11の検出結果に変動がない場合、管理システム3に対して計測データを送信するのではなく、計測結果が同じである旨を通知することが好ましい。この場合、処理部214は、所定の処理として、時系列において隣り合う第1計測データと第2計測データとを比較し、両者が一致していれば、通信部22から第2計測データを送信させないように通信部22を制御する。また、処理部214は、通信部22から第2計測データを送信させないように通信部22を制御する代わりに、通信部22から第2計測データを含まない空データを送信させるように通信部22を制御してもよい。このように、生成部211で生成される計測データに変動がない場合には、計測データを送信しないようにすることで、計測装置2からの送信データのデータ量を抑えることができる。
また、例えば、時系列において隣り合う第1計測データと第2計測データとの差分が基準値以下の場合、管理システム3に対して第2計測データを送信するのではなく、第1計測データと第2計測データとの差分データを送信することが好ましい。この場合、処理部214は、所定の処理として、第1計測データと第2計測データとの差分と基準値とを比較し、差分が基準値以下であれば、通信部22から差分データを送信させるように通信部22を制御する。一方、処理部214は、差分が基準値を超えていれば、通信部22から第2計測データを送信させるように通信部22を制御する。このように、差分が基準値以下の場合には、通信部22から差分データを送信させることにより、第2計測データを送信する場合に比べて送信データのデータ量を小さくすることができる。とくに、差分がゼロであれば、送信データを圧縮することができる。
さらに、処理部214は、所定の処理として、生成部211で抽出された計測データの特徴量を通信部22から送信させるように通信部22を制御してもよい。例えば、管理システム3に計測データを送信する場合には、送信時のデータ量が大きいため、計測装置2と管理システム3との間の通信トラフィックが増加する可能性がある。また、管理システム3に計測データを送信する場合には、管理システム3において計測データから特徴量を抽出する処理等が必要になる。以上のことから、処理部214は、所定の処理として、生成部211で抽出された計測データの特徴量を通信部22から送信させるように通信部22を制御することが好ましい。これにより、管理システム3での演算処理の負担を減らすことができる。なお、計測装置2と管理システム3との間の通信量に余裕がある場合には、計測データの特徴量と計測データとを管理システム3に送信することが好ましい。
記憶部215は、マイクロコンピュータ21の一部を構成するメモリからなる。記憶部215は、生成部211、変更部212、演算部213及び処理部214として機能するためのプログラムに加えて、生成部211で生成された計測データや差分データ、特徴量などを記録するように構成されている。
通信部22は、アンテナ及び通信回路を有しており、需要家施設100内に設けられたルータ7との間で、例えばWi−Fi(登録商標)に準拠した無線通信を行うように構成されている。ルータ7は、例えばインターネットなどのネットワーク4を介して管理システム3に接続されるブロードバンドルータである。つまり、本実施形態では、計測装置2と管理システム3とが、ネットワーク4及びルータ7を介して接続されている。
管理システム3は、本実施形態では1台のサーバ装置で構成されており、図1に示すように、マイクロコンピュータ31と、送受信部32とを備えている。
マイクロコンピュータ31は、CPU及びメモリを主構成とするコンピュータであり、CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、各機能を実現するように構成されている。CPUが実行するプログラムは、ここではコンピュータのメモリ(後述の記憶部313)に予め記録されているが、メモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよいし、電気通信回線を通じて提供されてもよい。
マイクロコンピュータ31は、図1に示すように、分離部311と、推定部312と、記憶部313とを有している。
記憶部313は、マイクロコンピュータ31の一部を構成するメモリからなる。記憶部313には、分離部311及び推定部312として機能するためのプログラムに加えて、電気機器ごとの電流波形のデータが予め記録されている。また、記憶部313には、電気機器ごとの動作状態に応じた複数の電流波形のデータも予め記録されている。例えば、電気機器がエアコンであれば、低出力運転時の電流波形のデータと、高出力運転時の電流波形のデータとが予め記録されている。上記電流波形のデータには、電気機器を特定するための情報(振幅、周波数分布など)が含まれている。なお、記憶部313は、分離部311によって特定された、需要家施設100で使用されている電気機器を、需要家施設100のID等に関連付けて記録するように構成されていることが好ましい。
分離部311は、記憶部313に記録されている電流波形のデータに基づいて、計測装置2から送信された計測データに含まれる電流波形から電気機器ごとの電流波形を分離するように構成されている。
推定部312は、分離部311により分離された電気機器ごとの電流波形と、記憶部313に予め記録されている電気機器ごとの動作状態に応じた電流波形とを比較することで、電気機器ごとの動作状態を推定するように構成されている。推定部312の推定結果は、例えばネットワーク4を介して端末装置20に送信されるように構成されていることが好ましい。これにより、利用者(住人)は、電気機器ごとの動作状態を端末装置20を介して把握することができる。
送受信部32は、ネットワーク4に接続されており、同じくネットワーク4に接続されているルータ7を介して計測装置2の通信部22との間で通信するように構成されている。また、送受信部32は、ルータ7を介してネットワーク4に接続可能な端末装置20とも通信するように構成されている。端末装置20は、例えばスマートフォンであり、ルータ7との間で、例えばWi−Fi(登録商標)に準拠した無線通信を行うように構成されている。端末装置20は、例えばタッチパネルを有しており、タッチパネルにおいて所定の操作を行うことにより、電気機器ごとの消費電力量や需要家施設100全体での消費電力量などを管理システム3から受信し、受信結果をタッチパネルに表示することができる。
図3は、主幹ブレーカ51における電流と電圧とを常時計測している場合の波形図である。第1電圧V1は、第1電線101と第3電線103との間に印加される電圧であり、第2電圧V2は、第2電線102と第3電線103との間に印加される電圧である。また、第1電流I1は、第1電線101に流れる電流であり、第2電流I2は、第2電線102に流れる電流である。配電方式が単相3線式の場合、上記4つの計測対象について常時計測することが好ましいが、膨大なデータを取得することになるため、例えば管理システム3にデータを送信できない不具合が生じたり、管理システム3にて膨大な処理が必要になる可能性がある。
そのため、上述の問題を解決するためには、上記4つの計測対象について波形全体を計測するのではなく、例えば図4Aに示すように、波形の一部を計測することが好ましい。図4Aに示す例では、計測時間が波形の1周期に設定されている。ここで、図4A中の計測期間T1の長さが1〔sec〕で、かつ系統電源の電源周波数が50〔Hz〕であれば、計測時間は20〔msec〕となる。
また、図4Aに示す例では、図4Bに示すように、1周期の波形を、例えば64分割してA/D変換を行っている。言い換えると、20〔msec〕の波形を64分割してA/D変換を行っており、この場合、サンプリング周波数は3.2〔kHz〕になる。また、このときの分解能は64〔分割/周期〕になる。
図4A及び図4Bに示す例では、上述のように、各計測期間T1において1周期の波形しか計測していないため、例えばいずれかの電気機器において電気事故により電流の変動が生じても、電流の変動を検出できない可能性がある。そのため、計測時間を含む計測仕様を変更できるように構成されていることが好ましい。本実施形態の計測装置2では、サンプリング周波数、分解能、計測時間及び計測対象を含む計測仕様を変更部212により変更できるように構成されている。以下、具体的に説明する。
いずれかの電気機器において電気事故により電流の変動が生じた場合、1周期の波形では電流の変動を計測できない可能性があるため、計測時間を長くすることが好ましい。例えば、図5Aに示す例では、計測時間が波形の4周期に設定されており、その結果、電流の変動を計測することが可能になる。ただし、この場合には、計測データのデータ量も4倍になるため、例えば電流に比べて変動しにくい電圧については計測の対象外とし、かつ第1電流I1及び第2電流I2の分解能を64〔分割/周期〕から32〔分割/周期〕に下げるのが好ましい(図5B参照)。これにより、計測仕様の変更前後での計測データのデータ量をほぼ等しくしながらも、電流の変動を計測することができる。なお、図5Aでは、計測していない第1電圧V1及び第2電圧V2について、破線にて波形を示している。
また、電気機器が、例えばインバータ機器(エアコン、冷蔵庫など)やLED照明等である場合、電流波形に高調波成分が含まれているため、電流波形を分析するためには分解能を高くすることが好ましい。例えば、図6A及び図6Bに示すように、第1電流I1及び第2電流I2の分解能を64〔分割/周期〕から128〔分割/周期〕に上げることにより、高調波成分が含まれる電流波形についても分析することが可能になる。ただし、この場合には、計測データのデータ量も2倍になるため、例えば電流に比べて変動しにくい電圧については計測の対象外にするのが好ましい。これにより、計測仕様の変更前後での計測データのデータ量をほぼ等しくしながらも、高調波成分を含む電流波形についても分析が可能になる。なお、図6Aでは、計測していない第1電圧V1及び第2電圧V2について、破線にて波形を示している。
次に、管理システム3から変更指令が送信される場合の計測装置2の動作について図7A〜図7Dを参照して説明する。
第1期間TE1では、計測装置2の生成部211は、検出部11の検出結果に基づいて、第1の計測仕様に従って計測データを生成する。第1の計測仕様では、計測時間が波形の1周期(20〔msec〕)であり(図7A参照)、サンプリング周波数が3.2〔kHz〕であり、分解能が64〔分割/周期〕である(図7B参照)。このとき、第1電流I1、第2電流I2、第1電圧V1及び第2電圧V2が計測の対象であり、各計測期間T1における計測データには、第1電流I1、第2電流I2、第1電圧V1及び第2電圧V2の1周期の波形データが含まれている。計測装置2は、第1期間TE1における複数の計測データを管理システム3に送信する。
ここで、例えば電気機器として2台のエアコンが接続されている場合、1周期の電流波形からでは両者の動作状態を推定できない可能性がある。そのため、このような場合には、動作状態を推定できるように計測時間を長く設定することが好ましい。管理システム3は、第1期間TE1において取得した計測データでは動作状態を推定できないと判断した場合、計測仕様を変更する変更指令c1を計測装置2に送信する。この変更指令c1には、計測時間を波形の1周期から4周期に延ばし、第1電圧V1及び第2電圧V2を計測の対象外とし、かつ分解能を64〔分割/周期〕から32〔分割/周期〕に下げる第2の計測仕様が含まれている。計測装置2では、変更部212が、通信部22を介して受信した変更指令c1に含まれる第2の計測仕様に従って計測仕様を変更する。
第2期間TE2では、生成部211は、第2の計測仕様に従って計測データを生成する。第2の計測仕様では、計測時間が波形の4周期(80〔msec〕)であり(図7A参照)、サンプリング周波数が1.6〔kHz〕であり、分解能が32〔分割/周期〕である(図7C参照)。このとき、第1電圧V1及び第2電圧V2が計測の対象外であるため、各計測期間T1における計測データには、第1電流I1及び第2電流I2の4周期の波形データが含まれている。このように、計測時間を長くすることによって、管理システム3は、例えば2台のエアコンが接続されているような場合でも、これらのエアコンの動作状態を推定することができる。
管理システム3は、第2期間TE2での計測データに基づいて2台のエアコンを区別することができたため、第2期間TE2と第3期間TE3との間において、計測仕様を第2の計測仕様から第1の計測仕様に戻すための変更指令c2を計測装置2に送信する。計測装置2では、変更部212が、通信部22を介して受信した変更指令c2に含まれる第1の計測仕様に従って計測仕様を変更する。
第3期間TE3では、生成部211は、第1の計測仕様に従って計測データを生成する。第1の計測仕様では、計測時間が波形の1周期(20〔msec〕)であり(図7A参照)、第1電圧V1及び第2電圧V2が計測対象に追加され、かつ分解能は64〔分割/周期〕である(図7D参照)。このとき、第1電圧V1及び第2電圧V2が計測対象に追加されており、各計測期間T1における計測データには、第1電流I1、第2電流I2、第1電圧V1及び第2電圧V2の1周期の波形データが含まれている。
このように、本実施形態の計測装置2によれば、管理システム3から送信される変更指令に応じて変更部212にて計測仕様を変更するので、管理システム3において必要とされる計測データを管理システム3に送信することができる。
以下、本実施形態の変形例について説明する。
上述の実施形態では、生成部211で生成される計測データの計測仕様を変更指令に応じて変更する場合について説明したが、例えば計測仕様の代わりに、計測装置2と管理システム3との通信頻度を変更してもよい。また、変更指令に応じて通信頻度と計測仕様との両方を変更してもよい。以下、具体的に説明する。
まず、計測装置2と管理システム3との通信頻度のみを変更する場合であって、通信頻度を上げる場合について説明する。異常が発生していない通常の状態において、計測装置2と管理システム3とが、例えば1分ごとに通信を行っていると仮定する。管理システム3は、計測装置2からの計測データに基づいて異常電流が発生していると判断した場合、異常箇所を特定する処理を行う。ここで、異常電流が、例えば定格電流の2倍程度の過電流である場合、1〜2分程度で主幹ブレーカ51が遮断するため、異常箇所を速やかに特定する必要がある。また、異常電流が、例えばトラッキングなどの電気事故による漏洩電流である場合にも、速やかに異常箇所を特定する必要がある。したがって、この場合、管理システム3は、計測装置2との通信頻度を上げることを指示する変更指令を計測装置2に送信することが好ましい。計測装置2は、管理システム3からの変更指令に従って、管理システム3との通信頻度を、例えば1分から10秒に変更する。このように、計測装置2と管理システム3との通信頻度を上げることにより、管理システム3において異常箇所を速やかに特定することができ、その結果、利用者(住人)に対して管理システム3の判断結果を速やかに知らせることができる。とくに、異常電流が過電流である場合には、主幹ブレーカ51が遮断する前に、利用者に対して異常箇所を知らせることができる。また、分電盤5がHEMS(Home Energy Management System)に対応している場合には、異常箇所に対応する分岐ブレーカ52を自動的に遮断することもできる。
上述のように対応した結果、異常電流が消失している場合、管理システム3は、計測装置2との通信頻度を10秒から1分に戻すように構成されていることが好ましい。また、異常電流が過電流であって、計測装置2での計測値が過電流領域から通常領域に下がった場合、管理システム3は、計測装置2との通信頻度を10秒から1分に戻すように構成されていることが好ましい。
次に、計測装置2と管理システム3との通信頻度のみを変更する場合であって、通信頻度を下げる場合について説明する。異常が発生していない通常の状態において、計測装置2と管理システム3とが、例えば1分ごとに通信を行っていると仮定する。計測装置2と管理システム3とが通信を行っている状況において、例えば送信データの増加などによって通信トラフィックが一時的に集中することが想定される。この場合、管理システム3は、通信トラフィックを低減するために、計測装置2との通信頻度を下げることを指示する変更指令を計測装置2に送信することが好ましい。計測装置2は、管理システム3からの変更指令に従って、管理システム3との通信頻度を、例えば1分から3分に変更する。これにより、計測装置2と管理システムとの間の通信トラフィックを低減することができるだけでなく、管理システム3への負荷を低減することもできる。ただし、この場合には、通信頻度を下げることによって、計測装置2において一時的に蓄積するデータ量が増加するため、データ量の増加にも対応できる程度の容量を記憶部215が有している必要がある。
さらに、計測装置2と管理システム3との通信頻度と、計測データの計測仕様との両方を変更する場合について説明する。異常が発生していない通常の状態において、計測装置2と管理システム3とが、例えば1分ごとに通信を行っていると仮定する。またこのとき、計測データの計測仕様は、計測時間が波形の1周期に設定された上述の第1の計測仕様であると仮定する。管理システム3は、計測装置2からの計測データに基づいて異常電流が発生していると判断した場合、この異常電流が、例えば過電流なのか突入電流なのかを判別する。異常電流が突入電流である場合、電流値が瞬間的に大きくなるため、管理システム3は、例えば1周期の電流を計測するだけで突入電流を検出できる場合がある。これに対して、異常電流が過電流である場合、管理システム3は、例えば数周期〜数十秒間の電流を計測する必要があり、第1の計測仕様では、突入電流と過電流とを判別できない可能性がある。したがって、この場合、管理システム3は、計測データの計測仕様を、第1の計測仕様から第2の計測仕様に変更する変更指令を計測装置2に送信することが好ましい。計測装置2は、管理システム3からの変更指令に従って、計測データの計測仕様を、第1の計測仕様から第2の計測仕様に変更する。第2の計測仕様では、上述のように、計測時間が波形の4周期に設定されているため、管理システム3は、計測装置2から送られてくる計測データに基づいて、上記異常電流が過電流なのか突入電流なのかを判別することができる。
管理システム3は、上記異常電流が突入電流ではなく、過電流であると判断した場合、過電流が発生している異常箇所を特定する処理を行う。この場合、管理システム3は、通信頻度を上げることを指示する変更指令を計測装置2に送信する。計測装置2は、管理システム3からの変更指令に従って、管理システム3との通信頻度を、例えば1分から10秒に変更する。このように、計測装置2と管理システム3との通信頻度を上げることにより、管理システム3において異常箇所を速やかに特定することができ、その結果、利用者(住人)に対して管理システム3の判断結果を速やかに知らせることができる。また、分電盤5がHEMSに対応している場合には、異常箇所に対応する分岐ブレーカ52を自動的に遮断することもできる。
上述のように対応した結果、過電流が消失している場合、管理システム3は、計測装置2との通信頻度を、10秒から1分に戻すように構成されていることが好ましい。また、計測仕様については、過電流が消失しているため、第2の計測仕様から第1の計測仕様に戻してもよいが、第2の計測仕様のままであってもよい。
また、上述の実施形態では、サンプリング周波数、分解能、データの計測時間及び計測対象が計測仕様に含まれている場合について説明したが、少なくともサンプリング周波数と計測時間とが計測仕様に含まれていればよい。この場合、サンプリング周波数を下げる場合には、計測時間を長くすることが好ましい。また、サンプリング周波数を上げる場合には、計測時間を短くすることが好ましい。その結果、計測データのデータ量の増加を抑えながらも計測仕様を変更することができる。また、計測仕様に含まれるパラメータは、上記のパラメータに限らず、計測内容を変更できるようになっていれば、他のパラメータであってもよい。
また、上述の実施形態では、計測データのデータ量が増加しないように計測仕様を変更する場合について説明したが、例えば管理システム3のメモリ容量が十分確保されている場合には、計測データのデータ量が増加するように計測仕様を変更してもよい。
さらに、上述の実施形態では、第1電圧V1と第2電圧V2とが計測データに含まれないように計測対象を変更したが、第1電流I1と第2電流I2と第1電圧V1と第2電圧V2との少なくとも1つが計測データに含まれないように計測対象を変更すればよい。
また、上述の実施形態では、主幹ブレーカ51における電流と電圧とを計測対象としたが、分岐ブレーカ52における電流と電圧とを計測対象としてもよい。分岐ブレーカ52にて計測される電流は、主幹ブレーカ51にて計測される電流に比べて、重畳される電流波形の数が少ないため、管理システム3における分離精度および推定精度を向上させることができる。
さらに、上述の実施形態では、計測仕様を変更するための変更指令が管理システム3から送信される場合について説明したが、変更指令は演算部213から出力されるように構成されていてもよい。このように、同じ計測装置2内の演算部213から変更指令を出力するように構成することで、管理システム3から変更指令を送信する場合に比べて、計測データに対する判断時間を短くすることができる。例えば、いずれかの電気機器が過負荷状態であったり、いずれかの配線において短絡事故などが発生する場合のように、異常状態を速やかに判断する必要がある場合に有効である。また、この場合には、管理システム3での判断が不要である。
また、上述の実施形態では、電気機器を判別しやすいように計測時間を長くする場合について説明したが、計測時間を長くする場合に限らず、例えばサンプリング周波数を上げることで判別精度を向上させてもよい。
さらに、上述の実施形態では、時間軸方向の分解能としてのサンプリング周波数を変更する場合について説明したが、振幅軸方向の分解能としての量子化単位(LSB:Least Significant Bit)を変更するように構成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、端末装置20がスマートフォンの場合について説明したが、端末装置20はスマートフォンに限らず、例えばパーソナルコンピュータであってもよい。
さらに、上述の実施形態では、コンピュータシステム(管理システム3)が1台のサーバ装置で構成されている場合について説明したが、コンピュータシステムは、複数の装置で構成されていてもよいし、クラウドコンピューティングで構成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、計測装置2とルータ7とが無線通信を行う場合について説明したが、計測装置2とルータ7とが有線通信を行うように構成されていてもよい。
以上述べた実施形態から明らかなように、本発明に係る第1の態様の計測装置2は、生成部211と、通信部22と、変更部212とを備える。生成部211は、需要家施設100における電流(第1電流I1、第2電流I2)と電圧(第1電圧V1、第2電圧V2)との少なくとも一方を検出する検出部11の検出結果に基づいて、計測仕様に従って計測データを生成する。通信部22は、生成部211で生成された計測データに基づく送信データを管理システム3に送信する。変更部212は、変更指令に応じて管理システム3との通信頻度と計測仕様との少なくとも一方を変更する変更処理を行う。
第1の態様によれば、生成部211は、変更部212によって変更された計測仕様に従って計測データを生成するので、計測仕様を適宜変更することにより計測仕様に応じた計測データを生成することができる。例えば、管理システムからの要求に応じて計測仕様を変更した場合には、生成部211は、管理システム3からの要求に応じた計測データを生成するので、管理システム3に対して管理システム3で必要とされる計測データを送信することができる。
本発明に係る第2の態様の計測装置2は、第1の態様において、変更部212に対して変更指令を出力する演算部213をさらに備える。
第2の態様によれば、変更部212に対する変更指令を同じ計測装置2に設けられた演算部213が行うので、計測仕様の変更を速やかに行うことができる。ただし、この構成は計測装置2の必須の構成ではなく、演算部213は省略されていてもよい。
本発明に係る第3の態様の計測装置2では、第1の態様において、通信部22は、管理システム3から送信される変更指令を受信するように構成されている。
第3の態様によれば、管理システム3からの変更指令に応じて変更部212が計測仕様を変更するので、管理システム3で必要とされる計測データを管理システム3に送信することができる。ただし、この構成は計測装置2の必須の構成ではなく、管理システム3から送信される変更指令を通信部22が受信するように構成されていなくてもよい。
本発明に係る第4の態様の計測装置2では、第1〜第3の態様のうちいずれかの態様において、第1電線101と第2電線102と第3電線103とを有する電力線10を介して需要家施設100に電力が供給されるように構成されている。検出部11は、少なくとも第1電流I1と、第2電流I2と、第1電圧V1と、第2電圧V2とを検出するように構成されている。第1電流I1は、第1電線101に流れる電流である。第2電流I2は、第2電線102に流れる電流である。第1電圧V1は、第1電線101と第3電線103との間に印加される電圧である。第2電圧V2は、第2電線102と第3電線103との間に印加される電圧である。変更部212は、変更処理において、第1電流I1と第2電流I2と第1電圧V1と第2電圧V2との少なくとも1つが計測データに含まれないように計測対象を変更するように構成されている。
第4の態様によれば、計測対象を減らすことによって、データ量の増加を抑えながらも計測対象の計測時間を長くしたり、A/D変換時の分解能を高くしたりすることができる。ただし、この構成は計測装置2の必須の構成ではなく、変更部212は、変更処理において、計測対象を変更するように構成されていなくてもよい。
本発明に係る第5の態様の計測装置2では、第1〜第4の態様のうちいずれかの態様において、送信データのデータ量が規定範囲内に入るように変更指令が決定される。
第5の態様によれば、送信データのデータ量の増加を抑えながらも計測データの計測仕様を変更することができる。ただし、この構成は計測装置2の必須の構成ではなく、送信データのデータ量が規定範囲内に入るように変更指令が決定されなくてもよい。言い換えると、送信データのデータ量が規定範囲外となるように変更指令が決定されてもよい。
本発明に係る第6の態様の計測装置2では、第1〜第5の態様のうちいずれかの態様において、計測仕様には、サンプリング周波数と計測時間とが含まれている。変更部212は、変更処理において、サンプリング周波数を下げる場合には計測時間を長くし、サンプリング周波数を上げる場合には計測時間を短くするように構成されている。
第6の態様によれば、送信データのデータ量の増加を抑えながらも計測仕様(サンプリング周波数、計測時間)を変更することができる。ただし、この構成は計測装置2の必須の構成ではなく、計測仕様にサンプリング周波数と計測時間とが含まれていなくてもよい。
本発明に係る第7の態様の計測装置2は、第1〜第6の態様のうちいずれかの態様において、変更部212が変更処理を行った場合に計測データに対する所定の処理を行う処理部214をさらに備える。通信部22は、処理部214が所定の処理を行った後のデータを送信データとして管理システム3に送信するように構成されている。
第7の態様によれば、生成部211により生成された生データではなく、処理部214により所定の処理が行われた後のデータを送信データとすることで、生データを送信データとする場合に比べて送信データのデータ量を小さくすることが可能になる。ただし、この構成は計測装置2の必須の構成ではなく、処理部214は省略されていてもよい。
本発明に係る第8の態様の計測装置2は、第1〜第6の態様のうちいずれかの態様において、変更部212が変更処理を行わない場合に計測データに対する所定の処理を行う処理部214をさらに備える。通信部22は、処理部214が所定の処理を行った後のデータを送信データとして管理システム3に送信するように構成されている。
第8の態様によれば、生成部211により生成された生データではなく、処理部214により所定の処理が行われた後のデータを送信データとすることで、生データを送信データとする場合に比べて送信データのデータ量を小さくすることが可能になる。ただし、この構成は計測装置2の必須の構成ではなく、処理部214は省略されていてもよい。
本発明に係る第9の態様の計測装置2では、第7または第8の態様において、処理部214は、所定の処理として、規定条件を満たしている場合に第1処理または第2処理を行うように構成されている。規定条件とは、時系列において隣り合う2つの計測データである第1計測データと第2計測データとを比較した結果、第1計測データと第2計測データとが一致することである。第1処理は、通信部22から第2計測データを送信させない処理である。第2処理は、通信部22から第2計測データを含まない空データを送信させる処理である。
第9の態様によれば、時系列において隣り合う第1計測データと第2計測データとが一致する場合には、第2計測データ(生データ)を管理システム3に送信しないように構成されており、管理システム3に送信する送信データのデータ量を抑えることができる。ただし、この構成は計測装置2の必須の構成ではなく、例えば第1計測データと第2計測データとが一致する場合でも、第2計測データを管理システム3に送信するように構成されていてもよい。
本発明に係る第10の態様の計測装置2では、第7または第8の態様において、生成部211は、さらに、時系列において隣り合う2つの計測データの差分に基づく差分データを生成するように構成されている。処理部214は、所定の処理として、差分が基準値以下の場合に、通信部22から差分データを送信させるように構成されている。
第10の態様によれば、時系列において隣り合う2つの計測データの差分の合計値が基準値以下の場合、すなわち2つの計測データ間の変動が小さい場合には、2つの計測データに基づく差分データのみを管理システム3に送信するように構成されている。そのため、計測データそのものを送信する場合に比べて、送信データのデータ量を小さくすることができる。ただし、この構成は計測装置2の必須の構成ではなく、管理システム3に対して差分データではなく、計測データそのものを送信するように構成されていてもよい。
本発明に係る第11の態様の計測装置2では、第7または第8の態様において、生成部211は、さらに、計測データに基づいて計測データの特徴量を抽出するように構成されている。処理部214は、所定の処理として、通信部22から特徴量を送信させるように構成されている。
第11の態様によれば、管理システム3に対して計測データ(生データ)ではなく、計測データの特徴量を送信するように構成されているので、送信データのデータ量を抑制することができるとともに、管理システム3での演算処理の負担を減らすことができる。ただし、この構成は計測装置2の必須の構成ではなく、管理システム3に対して特徴量ではなく、計測データそのものを送信するように構成されていてもよい。
本発明に係る第12の態様の計測装置2では、第11の態様において、特徴量は、需要家施設100における消費電力、消費電力量、電流波形の歪み率、電圧波形の歪み率、電流波形の波高値及び電圧波形の波高値のうち少なくともいずれか1つである。
第12の態様によれば、管理システム3において特徴量に応じた演算処理を行うことができる。ただし、この構成は計測装置2の必須の構成ではなく、特徴量は、需要家施設100における消費電力、消費電力量、電流波形の歪み率、電圧波形の歪み率、電流波形の波高値及び電圧波形の波高値以外であってもよい。
本発明に係る第13の態様の計測システム1は、計測装置2と、計測装置2との間で通信を行う管理システム3とを備える。
第13の態様によれば、上述の計測装置2を用いることによって、管理システム3(コンピュータシステム)で必要とされる計測データを管理システム3に送信可能な計測システム1を提供することができる。
本発明に係る第14の態様のコンピュータシステムは、計測システム1において管理システム3として用いられる。
第14の態様によれば、必要とする計測データを計測装置2から取得可能な管理システム3を提供することができる。