添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
図1は、本発明の実施形態に係る量子計算システム100の概要を示す図である。量子計算システム100は、量子コンピュータ1及び古典コンピュータ20を含む。ここで、量子コンピュータ1は、量子効果を積極的に利用した計算機であり、例えば量子断熱計算を行う計算機であってよい。なお、量子コンピュータ1は、量子計算の方法を参考とした計算機に置き換えてもよく、例えばCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)で量子計算、特に量子アニーリングに相当する計算やイジングモデルに基づく計算を行う計算機を用いてもよい。また、古典コンピュータ20は、量子効果を積極的に利用することなく、古典的な自然法則に基づいて動作する計算機であり、例えばノイマン型コンピュータであってよい。
量子コンピュータ1は、量子計算素子10を備える。量子計算素子10は、複数の量子ビットを構成する複数の超伝導線路と、2つの量子ビットを相互作用させる第1カプラと、3つ以上の量子ビットを相互作用させる第2カプラとを備える。量子計算素子10は、超伝導線路及びカプラを形成する材料の超伝導転移温度以下に冷却された状態で使用される。そのため、量子コンピュータ1は、量子計算素子10の他に、冷却機構を備える。
量子コンピュータ1は、電気信号を伝搬するケーブル(同軸ケーブル等)、LAN(Local Area Network)やインターネット等の通信ネットワークNを介して古典コンピュータ20と接続され、古典コンピュータ20による設定に従って動作する。例えば、古典コンピュータ20は、複数の量子ビットの間の相互作用の強さを設定する。量子コンピュータ1は、量子コンピュータ1とは異なるチップに形成され、そのチップ上に構成された信号源から出力される信号で制御してもよい。その際、異なるチップ及び配線は、室温におかれる場合や量子計算素子とは異なる温度環境におかれる場合がある。例えば、液体ヘリウム温度の環境(約4.2K)に置かれ、配線で10mK以下の温度に設置された量子計算素子のチップと接続する場合もある。
図2は、本実施形態に係る量子計算素子10の複数の超伝導線路、第1カプラ及び第2カプラの第1例の概要を示す図である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a、「2」と示した第2超伝導線路L2、第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1’」と示した第1超伝導線路L1b及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている第1超伝導線路L1cとを破線で囲って図示している。同図では、縦方向に4量子ビット及び横方向に4量子ビット配置された4×4の単位格子を2つ図示している。
第1超伝導線路L1a,L1b,L1c及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。第1超伝導線路L1a,L1b,L1cは、第1量子ビットを構成し、第2超伝導線路L2及び「2’」と示した超伝導線路は、第2量子ビットを構成する。同様に、「3」及び「3’」と示した超伝導線路は、第3量子ビットを構成し、「4」及び「4’」と示した超伝導線路は、第4量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。同図では、超伝導線路に接続されるQFP(Quantum Flux Parametron)や読出し超伝導量子干渉計(superconducting quantum interference device, SQUID)等の読出し回路は省略されているが、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図2において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。第1超伝導線路L1a等は、他の超伝導線路と磁気結合するためのリング部31,32と、カプラと磁気結合するためのリング部33とを含む。リング部33は、超伝導線路の一部であり、他の量子ビットと磁気結合しやすくするためリング形状となっている。
第1カプラC1a,C1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。ここで、対向するとは、量子ビットを構成する超伝導線路の一部と、第1カプラC1a,C1bを構成する超伝導線路の一部とが、平面視において重畳することを意味する。量子ビットを構成する超伝導線路の一部と、第1カプラC1a,C1bを構成する超伝導線路の一部とは、直線状の区間で重畳してもよいし、ループ状の区間で重畳してもよい。第1カプラC1aは、例えば、第1超伝導線路L1b及び第2超伝導線路L2が交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1bの一部及び第2超伝導線路L2の一部に対向するように設けられる。第1カプラC1aは、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの相互作用の強さが調整される。
第1カプラC1bは、例えば、第1超伝導線路L1a及び第1超伝導線路L1bが交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1aの一部及び第1超伝導線路L1bの一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「1」と示した第1超伝導線路L1aによって構成される量子ビットと、「1’」と示した第1超伝導線路L1bによって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。同様に、「2」と示した第2超伝導線路L2によって構成される量子ビットと、「2’」と示した超伝導線路によって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
第2カプラC2は、複数の超伝導線路のうち3つ以上の超伝導線路の一部に対向して設けられ、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、例えば、第1超伝導線路L1aの一部、「2’」と示した超伝導線路の一部、「3’」と示した超伝導線路の一部及び「4’」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第2カプラC2は、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットの相互作用の強さが調整される。
「1」から「4」までの超伝導線路及び「1’」から「4’」までの超伝導線路によって構成される量子ビットをq1〜q4と表し、第1カプラC1aによって実現される2次の相互作用をJijと表し、第2カプラC2によって実現される3次の相互作用をJijkと表し、第2カプラC2によって実現される4次の相互作用をJijklと表すとき、本例の量子計算素子10によって、数式(1)のハミルトニアンを設定することができる。ただし、Σi<jは、i=1〜4,j=1〜4について、i<jを満たす全ての組み合わせに関する和を表し、Σi<j<kは、i=1〜4,j=1〜4,k=1〜4について、i<j<kを満たす全ての組み合わせに関する和を表す。
従来、数式(1)の第3項及び第4項は、補助量子ビットを導入して2次の相互作用に分解していた。例えば、J123q1q2q3+J124q1q2q4という項を、J35q3q5+J45q4q5+λ1(q5−q1q2)という2次の相互作用の項と補助量子ビットq5に関する制約条件を表す項とに分解する。ここで、λ1はラグランジュ未定乗数である。また、J134q1q3q4+J234q2q3q4という項を、J16q1q6+J26q2q6+λ2(q6−q3q4)という2次の相互作用の項と補助量子ビットq6に関する制約条件を表す項とに分解する。ここで、λ2はラグランジュ未定乗数である。また、J1234q1q2q3q4という項は、J56q5q6という2次の項に置き換えられる。このようにして、数式(1)のハミルトニアンは、2次以下の項に分解することができる。
3次以上の項を2次以下の項に分解すると、補助量子ビットを設定しなければならず、実質的に使用可能な量子ビットの数が減ってしまうばかりでなく、補助量子ビットの制約条件が確実に満たされるように、制約条件に関する相互作用を比較的強く設定する必要があり、問題を解くために用いる他の相互作用の強さの階調が狭く制限されてしまう。また、制約条件の設定によっては、近似が生じて解の精度が制限されてしまうこともある。
一方、本実施形態に係る量子計算素子10によれば、3つ以上の量子ビットを相互作用させる第2カプラC2を備えることで、3次以上の相互作用を2次の相互作用に分解する必要がなくなり、3次以上の相互作用を含む場合であっても、相互作用の強さの階調が制限されづらくなる。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、第2カプラC2により結合される3つ以上の超伝導線路は、1つの単位格子に含まれる。隣接する2つの単位格子を形成する複数の超伝導線路は、第4カプラC4によって結合される。第4カプラC4は、例えば、第1超伝導線路L1bの一部及び第1超伝導線路L1cの一部に対向するように設けられる。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが調整されている。2つの量子ビットの量子状態が逆の電流方向を好むように相互作用の強さが調整される場合もある。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。また、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が逆となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
本例の場合、「1234」と示された4つの量子ビットを相互作用させる第2カプラC2と、「124」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラと、「134」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラと、「234」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラと、「123」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラとは、それぞれ1つの単位格子に含まれる。このようにして、単位格子を形成する3つ以上の量子ビットについて、3次以上の相互作用が実現される。
本実施形態では、タンパク質の構造解析に関し、簡単のために4塩基の構造を表現する場合を取り扱っている。この場合、4×4格子の超伝導線路を用いて、4次の相互作用まで表現することができる。5次以上の相互作用については、図9を用いて説明するレイアウトを用いて取り扱ってもよいし、制約項を用いて相互作用の次元を減らして4次以下の相互作用まででハミルトニアンを表現できるようにしてもよい。5次以上の相互作用を、制約項を用いて4次以下の相互作用に置き換える場合であっても、2次の相互作用まで次元を減らしてハミルトニアンを表現する場合よりも直接的に扱うことのできる相互作用が多いため、解の精度が向上する。また、ハミルトニアンの式変形を容易にすることができる。さらに、ハミルトニアンを実装する場合に必要となる格子数を削減することができる場合がある。また、冷凍機内に設置できるチップ面積は限られているため、3次以上の相互作用を直接的に扱うことで、同一チップ面積に搭載できる量子ビット数を増やすことができる場合がある。
図3は、本実施形態に係る量子計算素子10の4つの超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2の上面図である。第1超伝導線路L1、第2超伝導線路L2、第3超伝導線路L3及び第4超伝導線路L4は、それぞれ同一方向に延伸している。第1超伝導線路L1は、第1超伝導量子干渉計S1に電磁的に接続されており、第2超伝導線路L2、第3超伝導線路L3及び第4超伝導線路L4も、それぞれ超伝導量子干渉計に電磁的に接続されている。第1超伝導線路L1は、第1量子ビットを構成し、第2超伝導線路L2は、第2量子ビットを構成し、第3超伝導線路L3は、第3量子ビットを構成し、第4超伝導線路L4は、第4量子ビットを構成する。
第2カプラC2は、第1超伝導線路L1、第2超伝導線路L2、第3超伝導線路L3及び第4超伝導線路L4により構成される第1量子ビット、第2量子ビット、第3量子ビット及び第4量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、第2超伝導量子干渉計S2に電磁的に接続され、第2超伝導量子干渉計S2に印加される磁束の大きさに応じて、相互作用の強さが調整される。第2超伝導量子干渉計S2はジョセフソン接合が線路内に例えば2つ並列に挿入された構造となっている。2つのジョセフソン接合の面積は同一であってもよい。2つのジョセフソン接合のサイズが異なると、臨界電流値に違いが現れる。2つのジョセフソン接合の臨界電流値をIc1とIc2すると、一方がわずかに小さい設計が好ましい。例えば、臨界電流密度が1μA/μm2であり、超伝導配線層を4つ有したNb/AlOx/Nbのジョセフソン接合のプロセスを利用して、一例として二つのジョセフソン接合の面積を2.8μm角と2.9μm角の非対称とすることが挙げられる。
第2カプラC2は、第1超伝導線路L1、第2超伝導線路L2、第3超伝導線路L3及び第4超伝導線路L4とそれぞれ非接触で対向するリングを含み、電磁誘導により4つの超電導線路を相互作用させる。ここで、相互作用の強さは、第2カプラC2に印加される磁場によって制御される。当該リング及びカプラは、実線で示している最上層(第4層)の線路M4と、破線で示している第3層の線路M3と、一点鎖線で示している第2層の線路M2と、二点鎖線で示している最下層(第1層)の線路M1とで構成され、非接触で対向する構成を為し、電磁誘導により相互作用することが可能な構造となっている。
線路40は、第1超伝導線路L1、第2超伝導線路L2、第3超伝導線路L3及び第4超伝導線路L4に横磁場を印加させるための線路である。一般にΦ0/2(Φ0=h/2e=2.067×10−15Wb)程度の磁束を数十μs〜数msの時間で与えることで、アニーリングを行うことができる。線路41は、数式(1)のhiを与えるための線路であり、超伝導線路L1,L2,L3,L4の一部であるリングと対向して設けられている。
図3において模式的に示したQFP42は、超伝導量子干渉計を含む。また、模式的に示した読出し超伝導量子干渉計43は、超伝導量子干渉計を含み、対応する超伝導線路の量子状態を読み出す。線路44は、QFP42に磁束を印加するための線路である。また、線路45は、読出し超伝導量子干渉計43に磁束を印加するための線路である。線路46は、対応する読出し超伝導量子干渉計43に電圧を供給するための線路である。
なお、図3では図示していないが、第1超伝導線路L1、第2超伝導線路L2、第3超伝導線路L3及び第4超伝導線路L4の任意の2つの組み合わせについて第1カプラが設けられていてよい。
図4Aは、本実施形態に係る量子計算素子10の4つの超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2の第1例の第1層(最上層)を示す図である。同図では、第1層に形成された金属層及びビアを実線で示し、他の層に形成された金属層及びビアを破線で示している。
第2カプラC2は、超伝導線路のループと対向して、平面視において時計回り又は反時計回りに周回するカプラループCL1,CL2,CL3,CL4を含む。第1例では、カプラループCL1,CL2,CL3,CL4は、全て同じ方向に周回している。
図4Bは、本実施形態に係る量子計算素子10の4つの超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2の第1例の第2層(最上層である第1層に覆われている層)を示す図である。同図では、第2層に形成された金属層及びビアを実線で示し、他の層に形成された金属層及びビアを破線で示している。
超伝導線路L1,L2,L3,L4は、平面視において時計回り又は反時計回りに周回するループLL1,LL2,LL3,LL4をそれぞれ含む。第1例では、ループLL1,LL2,LL3,LL4は、全て同じ方向に周回している。
超伝導線路L1について、上から下に電流が流れる場合、ループLL1に時計回りの電流が流れて、紙面を下向きに貫く方向に磁束が発生する。この磁束に対して、カプラループCL1に反時計回りの電流が誘導されて、カプラループCL2,CL3,CL4に、紙面を上向きに貫く方向に磁束が発生する。このため、ループLL2,LL3,LL4に時計回りの電流が誘導されて、超伝導線路L2,L3,L4には、上から下に流れる電流が誘導される。このように、第2カプラC2によって、超伝導線路L1,L2,L3,L4に同じ方向の電流が流れるように、超伝導線路L1,L2,L3,L4により構成される4つの量子ビットを相互作用させることができる。なお、第2超伝導量子干渉計S2に印加する磁束を変えることで、相互作用の強さと極性を変えることができる。
図4Cは、本実施形態に係る量子計算素子10の4つの超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2の第1例の第3層(第2層に覆われている層)を示す図である。同図では、第3層に形成された金属層及びビアを実線で示し、他の層に形成された金属層及びビアを破線で示している。
第2カプラC2は、超伝導線路のループと対向して、平面視において時計回り又は反時計回りに周回するカプラループCL1,CL2,CL3,CL4を含む。
図4Dは、本実施形態に係る量子計算素子10の4つの超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2の第1例の第4層(最下層)を示す図である。同図では、第4層に形成された金属層及びビアを実線で示し、他の層に形成された金属層及びビアを破線で示している。
超伝導線路L1,L2,L3,L4は、平面視において時計回り又は反時計回りに周回するループLL1,LL2,LL3,LL4をそれぞれ含む。
このようにして、超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2に、それぞれ対向するループを設けることで、3つ以上の超伝導線路を効率良く相互作用させることができる。また、3つ以上のカプラループが、それぞれ同じ方向に周回することで、3つ以上の量子ビットを同じ極性で相互作用させることができる。
なお、図4A〜4Dに示した超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2のレイアウトは一例にすぎず、平面視において四角形だけでなく、リング状、円形等他のレイアウトであってもよい。
図5Aは、本実施形態に係る量子計算素子10の4つの超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2の第2例の第1層(最上層)を示す図である。同図では、第1層に形成された金属層及びビアを実線で示し、他の層に形成された金属層及びビアを破線で示している。
第2カプラC2は、超伝導線路のループと対向して、平面視において時計回り又は反時計回りに周回するカプラループCL1,CL2,CL3,CL4を含む。第2例では、カプラループCL1,CL2は同じ方向に周回し、カプラループCL3,CL4は同じ方向に周回し、カプラループCL1,CL2とカプラループCL3,CL4は、互いに逆方向に周回している。
図5Bは、本実施形態に係る量子計算素子10の4つの超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2の第2例の第2層(最上層である第1層に覆われている層)を示す図である。同図では、第2層に形成された金属層及びビアを実線で示し、他の層に形成された金属層及びビアを破線で示している。
超伝導線路L1,L2,L3,L4は、平面視において時計回り又は反時計回りに周回するループLL1,LL2,LL3,LL4をそれぞれ含む。第2例では、ループLL1,LL2,LL3,LL4は、全て同じ方向に周回している。
超伝導線路L1について、上から下に電流が流れる場合、ループLL1に時計回りの電流が流れて、紙面を下向きに貫く方向に磁束が発生する。この磁束に対して、カプラループCL1に反時計回りの電流が誘導されて、カプラループCL2に、紙面を上向きに貫く方向に磁束が発生する。また、カプラループCL3,CL4には、紙面を下向きに貫く方向に磁束が発生する。このため、ループLL2に時計回りの電流が誘導され、ループLL3,LL4に反時計周りの電流が誘導されて、超伝導線路L2には、上から下に流れる電流が誘導され、超伝導線路L3,L4には、下から上に流れる電流が誘導される。このように、第2カプラC2によって、超伝導線路L1,L2に同じ方向の電流が流れ、超伝導線路L3,L4には超伝導線路L1,L2と逆方向の電流が流れるように、超伝導線路L1,L2,L3,L4により構成される4つの量子ビットを相互作用させることができる。なお、第2超伝導量子干渉計S2に印加する磁束を変えることで、相互作用の強さと極性を変えることができる。
図5Cは、本実施形態に係る量子計算素子10の4つの超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2の第2例の第3層(第2層に覆われている層)を示す図である。同図では、第3層に形成された金属層及びビアを実線で示し、他の層に形成された金属層及びビアを破線で示している。
第2カプラC2は、超伝導線路のループと対向して、平面視において時計回り又は反時計回りに周回するカプラループCL1,CL2,CL3,CL4を含む。
図5Dは、本実施形態に係る量子計算素子10の4つの超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2の第2例の第4層(最下層)を示す図である。同図では、第4層に形成された金属層及びビアを実線で示し、他の層に形成された金属層及びビアを破線で示している。
超伝導線路L1,L2,L3,L4は、平面視において時計回り又は反時計回りに周回するループLL1,LL2,LL3,LL4をそれぞれ含む。
このようにして、超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2に、それぞれ対向するループを設けることで、3つ以上の超伝導線路を効率良く相互作用させることができる。また、3つ以上のカプラループのうち少なくとも2つが、互いに反対方向に周回することで、3つ以上の量子ビットを異なる極性で相互作用させることができる。
図6は、本実施形態に係る量子計算素子10の4つの超伝導線路L1,L2,L3,L4及び第2カプラC2の第3例を示す図である。同図では、第1層(最上層)に形成された金属層及びビアを実線で示し、他の層に形成された金属層及びビアを破線で示している。
第2カプラC2は、超伝導線路のループと対向して、平面視において時計回り又は反時計回りに周回するカプラループCL1,CL2,CL4を含む。第3例では、カプラループCL1,CL2,CL3は同じ方向に周回している。第3例では、第1例においてカプラループCL3が設けられていた位置にループが設けられていない。第2カプラC2と超伝導線路L3の交差箇所で、第2カプラC2は第1層(最上層)に形成され、超伝導線路L3は第2層(最上層である第1層に覆われている層)に形成されて、立体交差している。
第3例において第2カプラC2によって結合される3つの超伝導線路L1,L2,L4は、同じ方向に延伸し、隣接しない、少なくとも2つの超伝導線路超伝導線路を含む。具体的には、超伝導線路L1と、超伝導線路L4は、同じ方向に延伸し、隣接しない。また、超伝導線路L2と、超伝導線路L4は、同じ方向に延伸し、隣接しない。同じ方向に延伸し、隣接しない超伝導線路は、第1カプラによって直接的に結合されることがない。このように、第2カプラC2によって、第1カプラによる2次の相互作用が設けられない2つの超伝導線路を含む、3つ以上の超伝導線路について、3次以上の相互作用が実現される。
図7は、本実施形態に係る量子計算素子10の第1超伝導量子干渉計に横磁場を印加した状態におけるエネルギー準位を示す図である。第1超伝導量子干渉計は、超伝導線路に電磁的に接続され、印加される磁束に応じて、超伝導線路のエネルギー準位を変化させる。第1超伝導量子干渉計に横磁場を印加すると、超伝導線路の基底状態のエネルギー準位が縮退し、ダブルウェル型となる。
超伝導線路は、インダクタンスパラメータβL=2π×L×IC/Φ0の値が、1〜10となるように設計されていればよく、好ましくはβLが2〜8となるように設計されていてよい。ここで、Lは超伝導線路のインダクタンスであり、ICはジョセフソン接合の閾値電流であり、Φ0は磁束量子(Φ0=h/2e=2.067×10−15Wb)である。また、ICは量子ビット作製プロセスと、ジョセフソン接合の面積で定まる量である。例えば、IC=5.3μAとなるようなジョセフソン接合と、L=260pHとなるような線路で量子ビットを作製すると、βLは4.2となる。
図7では、βL=1.6の場合の第1グラフE1、βL=3.0の場合の第2グラフE2、βL=4.8の場合の第3グラフE3、βL=6.0の場合の第4グラフE4及びβL=8.0の場合の第5グラフE5を示している。βL=1.6の場合、縮退した基底状態間のエネルギー障壁が低く、超伝導線路を流れる周回電流の向きの制御が容易となるものの、熱擾乱に弱くなるため、量子状態の安定性が低くなる。そのため、βL=2〜8が好ましい値となる。
本実施形態に係る量子計算素子10において、第2カプラC2のインダクタンスパラメータは、複数の超伝導線路のインダクタンスパラメータより小さい。より望ましくは、第2カプラC2のインダクタンスパラメータは、複数の超伝導線路のインダクタンスパラメータの1/2以下である。第2カプラC2のインダクタンスパラメータが、複数の超伝導線路のインダクタンスパラメータより小さいことで、3次以上の相互作用を含む場合であっても、相互作用の強さの階調が制限されづらくなる。また、第2カプラC2のインダクタンスパラメータが、複数の超伝導線路のインダクタンスパラメータの1/2以下であることで、3次以上の相互作用を含む場合であっても、相互作用の強さの階調がさらに制限されづらくなる。
図8は、本実施形態に係る量子計算素子10の複数の超伝導線路、第1カプラ及び第2カプラの第2例の概要を示す図である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1’」と示した第1超伝導線路L1bとを破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a,L1bは、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図8において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1a,C1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1aは、例えば、第1超伝導線路L1b及び「2」と示した超伝導線路が交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1bの一部及び「2」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第1カプラC1aは、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの相互作用の強さが調整される。
第1カプラC1bは、例えば、第1超伝導線路L1a及び第1超伝導線路L1bが交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1aの一部及び第1超伝導線路L1bの一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「1」と示した第1超伝導線路L1aによって構成される量子ビットと、「1’」と示した第1超伝導線路L1bによって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。同様に、「2」と示した第2超伝導線路L2によって構成される量子ビットと、「2’」と示した超伝導線路によって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、隣接する2つの単位格子を形成する複数の超伝導線路は、第4カプラC4によって結合される。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
第2カプラC2は、複数の超伝導線路のうち3つ以上の超伝導線路の一部に対向して設けられ、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、例えば、第1超伝導線路L1aの一部、「2’」と示した超伝導線路の一部及び「3’」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第2カプラC2は、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットの相互作用の強さが調整される。
本例の場合、「123」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラC2と、「124」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラと、「1234」と示された4つの量子ビットを相互作用させる第2カプラと、「134」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラと、「234」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラとは、それぞれ1つの単位格子に含まれる。このようにして、単位格子を形成する3つ以上の量子ビットについて、3次以上の相互作用が実現される。
図9は、本実施形態に係る量子計算素子10の複数の超伝導線路及び第2カプラの第3例の概要を示す図である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a、「2」と示した第2超伝導線路L2及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1’」と示した第1超伝導線路L1bとを破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a,L1b及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図9において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1bは、例えば、第1超伝導線路L1a及び第1超伝導線路L1bが交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1aの一部及び第1超伝導線路L1bの一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「1」と示した第1超伝導線路L1aによって構成される量子ビットと、「1’」と示した第1超伝導線路L1bによって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。同様に、「2」と示した第2超伝導線路L2によって構成される量子ビットと、「2’」と示した超伝導線路によって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、隣接する2つの単位格子を形成する複数の超伝導線路は、第4カプラC4によって結合される。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
第2カプラC2は、複数の超伝導線路のうち3つ以上の超伝導線路の一部に対向して設けられ、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、例えば、第1超伝導線路L1bの一部、第2超伝導線路L2の一部、「3」と示した超伝導線路の一部、「4」と示した超伝導線路の一部及び「5」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第2カプラC2は、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットの相互作用の強さが調整される。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、第2カプラC2によって結合される3つ以上の超伝導線路は、少なくとも2つの単位格子にまたがる。本例の場合、「12345」と示された第2カプラC2は、左側の単位格子を形成する第1超伝導線路L1b、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路と、右側の単位格子を形成する「5」と示した超伝導線路とを相互作用させ、5つの量子ビットを相互作用させる。また、「123456」と示された第2カプラC2は、「1’」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路と、右側の単位格子を形成する「5」と示した超伝導線路及び「6」と示した超伝導線路とを相互作用させ、6つの量子ビットを相互作用させる。また、「1234567」と示された第2カプラC2は、「1’」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路と、右側の単位格子を形成する「5」と示した超伝導線路、「6」と示した超伝導線路及び「7」と示した超伝導線路とを相互作用させ、7つの量子ビットを相互作用させる。さらに、「12345678」と示された第2カプラC2は、「1’」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路と、右側の単位格子を形成する「5」と示した超伝導線路、「6」と示した超伝導線路、「7」と示した超伝導線路及び「8」と示した超伝導線路とを相互作用させ、8つの量子ビットを相互作用させる。
このようにして、第2カプラC2によって、2つの単位格子にまたがる3つ以上の量子ビットについて、3次以上の相互作用が実現される。なお、第2カプラC2によって、2つの単位格子にまたがる3つ以上の超伝導線路を結合させる場合、第2カプラC2のインダクタンスが比較的大きくなるが、第2カプラC2のインダクタンスパラメータを、複数の超伝導線路のインダクタンスパラメータより小さくすることで、相互作用の強さの階調が制限されづらくなる。
図10は、本実施形態に係る量子計算素子10の複数の超伝導線路、第1カプラ及び第2カプラの第4例の概要を示す図である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a、「2」と示した第2超伝導線路L2及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1’」と示した第1超伝導線路L1bとを破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a,L1b及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図10において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1a,C1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1aは、例えば、第1超伝導線路L1b及び第2超伝導線路L2が交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1bの一部及び第2超伝導線路L2の一部に対向するように設けられる。第1カプラC1aは、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの相互作用の強さが調整される。
第1カプラC1bは、例えば、第1超伝導線路L1a及び第1超伝導線路L1bが交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1aの一部及び第1超伝導線路L1bの一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「1」と示した第1超伝導線路L1aによって構成される量子ビットと、「1’」と示した第1超伝導線路L1bによって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。同様に、「2」と示した第2超伝導線路L2によって構成される量子ビットと、「2’」と示した超伝導線路によって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、隣接する2つの単位格子を形成する複数の超伝導線路は、第4カプラC4によって結合される。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
第2カプラC2は、複数の超伝導線路のうち3つ以上の超伝導線路の一部に対向して設けられ、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、例えば、第1超伝導線路L1aの一部、「2’」と示した超伝導線路の一部及び「3’」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第2カプラC2は、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットの相互作用の強さが調整される。
本例の場合、「124」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラC2と、「123」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラと、「1234」と示された4つの量子ビットを相互作用させる第2カプラと、「134」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラと、「234」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラとは、それぞれ1つの単位格子に含まれる。このようにして、単位格子を形成する3つ以上の量子ビットについて、3次以上の相互作用が実現される。
本例では、「134」と示された3つの量子ビットを相互作用させる第2カプラと、「1234」と示された4つの量子ビットを相互作用させる第2カプラとが、交差箇所Pにおいて立体交差している。立体交差は、図6を用いて説明したように、2つの層に設けられる線路によって形成される。
第4例のレイアウトによって、数式(1)のハミルトニアンを13量子ビットで実現することができる。なお、図2に示す第1例及び図8に示す第2例の場合、数式(1)のハミルトニアンを15量子ビットで実現することができる。いずれも単位格子が2つで実現できている。
図11は、従来例の複数の超伝導線路及び第1カプラの概要を示す図である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a、「2」と示した第2超伝導線路L2及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1’」と示した第1超伝導線路L1bとを破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a,L1b及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図11において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1a,C1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1aは、例えば、第1超伝導線路L1b及び第2超伝導線路L2が交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1bの一部及び第2超伝導線路L2の一部に対向するように設けられる。第1カプラC1aは、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの相互作用の強さが調整される。
第1カプラC1bは、例えば、第1超伝導線路L1a及び第1超伝導線路L1bが交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1aの一部及び第1超伝導線路L1bの一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「1」と示した第1超伝導線路L1aによって構成される量子ビットと、「1’」と示した第1超伝導線路L1bによって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。同様に、「2」と示した第2超伝導線路L2によって構成される量子ビットと、「2’」と示した超伝導線路によって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、隣接する2つの単位格子を形成する複数の超伝導線路は、第4カプラC4によって結合される。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
従来例のレイアウトによって、数式(1)のハミルトニアンを3つの単位格子、17量子ビットで実現することができる。本実施形態に係る量子計算素子10によれば、第1例及び第2例のレイアウトであれば2つの単位格子、15量子ビットで数式(1)のハミルトニアンを実現することができ、第4例のレイアウトであれば2つの単位格子、13量子ビットで数式(1)のハミルトニアンを実現することができ、従来例のレイアウトよりも少ない量子ビット数で同じハミルトニアンを表すことができる。また、本実施形態に係る量子計算素子10によれば、拘束条件を加えずに3次以上の相互作用を直接表すことができるため、拘束条件を満たすように一部の相互作用を強くする必要がなく、相互作用の強さの階調が制限されづらくなる。また、本実施形態に係る量子計算素子10により、単位格子の数を減らすことができることが、同一面積で実装できる量子ビット数を増やすことができることを意味している。冷凍機内に設置することができるチップ面積は限られるため、本実施形態に係る量子計算素子10を利用することで実装できる量子ビット数を増やすことができる場合がある。
以下では、5塩基のタンパク質の構造を解析する場合について説明する。この場合、5次の相互作用を取り扱う必要がある。5つの量子ビットをq1〜q5と表し、2次の相互作用をJijと表し、3次の相互作用をJijkと表し、4次の相互作用をJijklと表し、5次の相互作用をJ12345と表すとき、ハミルトニアンは、一般に以下の数式(2)で表される。ただし、Σi<jは、i=1〜5,j=1〜5について、i<jを満たす全ての組み合わせに関する和を表し、Σi<j<kは、i=1〜5,j=1〜5,k=1〜5について、i<j<kを満たす全ての組み合わせに関する和を表し、Σi<j<k<lは、i=1〜5,j=1〜5,k=1〜5,l=1〜5について、i<j<k<lを満たす全ての組み合わせに関する和を表す。
従来、数式(2)の第3項、第4項及び第5項は、補助量子ビットを導入して2次の相互作用に分解していた。例えば、q1q2をq6に置き換え、q3q4をq7に置き換え、q3q5をq8に置き換え、q4q5をq9に置き換え、q5q7をq10に置き換えることで、全ての相互作用を2次までの相互作用で表現することができる。
図12は、本実施形態に係る量子計算素子10の複数の超伝導線路、第1カプラ及び第2カプラの第5例の概要を示す図である。第5例は、数式(2)のハミルトニアンを、3次までの相互作用によって表現する例であり、q1q2をq6に置き換え、q3q4をq7に置き換えることで、全ての相互作用を3次までの相互作用で表現する例である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a、「2」と示した第2超伝導線路L2及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1」と示した第1超伝導線路L1bとを破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a,L1b及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図12において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1bは、例えば、第1超伝導線路L1a及び第1超伝導線路L1bが交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1aの一部及び第1超伝導線路L1bの一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「1」と示した縦方向に延伸する第1超伝導線路L1aによって構成される量子ビットと、「1」と示した横方向に延伸する第1超伝導線路L1bによって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。同様に、「2」と示した縦方向に延伸する第2超伝導線路L2によって構成される量子ビットと、「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路によって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、隣接する2つの単位格子を形成する複数の超伝導線路は、第4カプラC4によって結合される。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
第2カプラC2は、複数の超伝導線路のうち3つ以上の超伝導線路の一部に対向して設けられ、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、例えば、第1超伝導線路L1aの一部、「3」と示した超伝導線路の一部及び「5」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第2カプラC2は、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットの相互作用の強さが調整される。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、第2カプラC2によって結合される3つ以上の超伝導線路は、1つの単位格子に含まれる。本例の場合、「1,5,7」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「5」と示した超伝導線路及び「7」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。また、「2,4,5」と示された第2カプラC2は、「2」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「2,3,5」と示された第2カプラC2は、「2」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「1,3,5」と示された第2カプラC2は、第1超伝導線路L1a、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「1,4,5」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「4,5,6」と示された第2カプラC2は、「4」と示した超伝導線路、「5」と示した超伝導線路及び「6」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「3,5,6」と示された第2カプラC2は、「3」と示した超伝導線路、「5」と示した超伝導線路及び「6」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「5,6,7」と示された第2カプラC2は、「5」と示した超伝導線路、「6」と示した超伝導線路及び「6」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「2,5,7」と示された第2カプラC2は、「2」と示した超伝導線路、「5」と示した超伝導線路及び「7」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。
このようにして、第2カプラC2によって、4次及び5次の相互作用を含むハミルトニアンを3次以下の相互作用で表現することができる。4次及び5次の相互作用を、制約項を用いて3次以下の相互作用に置き換えることで、2次の相互作用まで次元を減らしてハミルトニアンを表現する場合よりも直接的に扱うことのできる相互作用を多くして、解の精度を向上させることができる。また、ハミルトニアンの式変形を容易にすることができ、ハミルトニアンを実装する場合に必要となる格子数を削減することができる場合がある。また、冷凍機内に設置できるチップ面積は限られているため、3次の相互作用を直接的に扱うことで、同一チップ面積に搭載できる量子ビット数を増やすことができる場合がある。
図13は、本実施形態に係る量子計算素子10の複数の超伝導線路、第1カプラ及び第2カプラの第6例の概要を示す図である。第6例は、数式(2)のハミルトニアンを、4次までの相互作用によって表現する例であり、q1q2をq6に置き換えることで、全ての相互作用を4次までの相互作用で表現する例である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a、「2」と示した第2超伝導線路L2及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1」と示した第1超伝導線路L1bとを破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a,L1b及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図13において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1bは、例えば、第1超伝導線路L1a及び第1超伝導線路L1bが交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1aの一部及び第1超伝導線路L1bの一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「1」と示した縦方向に延伸する第1超伝導線路L1aによって構成される量子ビットと、「1」と示した横方向に延伸する第1超伝導線路L1bによって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。同様に、「2」と示した縦方向に延伸する第2超伝導線路L2によって構成される量子ビットと、「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路によって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、隣接する2つの単位格子を形成する複数の超伝導線路は、第4カプラC4によって結合される。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
第2カプラC2は、複数の超伝導線路のうち3つ以上の超伝導線路の一部に対向して設けられ、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、例えば、「1」と示した超伝導線路の一部、「4」と示した超伝導線路の一部及び「5」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第2カプラC2は、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットの相互作用の強さが調整される。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、第2カプラC2によって結合される3つ以上の超伝導線路は、1つの単位格子に含まれる。本例の場合、「1,4,5」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。また、「3,4,5」と示された第2カプラC2は、「3」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「1,3,4,5」と示された第2カプラC2は、第1超伝導線路L1a、「3」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。「1,3,4」と示された第2カプラC2は、第1超伝導線路L1b、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「2,4,5」と示された第2カプラC2は、第2超伝導線路L2、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「1,3,5」と示された第2カプラC2は、第1超伝導線路L1b、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「2,3,5」と示された第2カプラC2は、「2」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「2,3,4,5」と示された第2カプラC2は、「2」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。「3,4,6」と示された第2カプラC2は、「3」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「6」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「2,3,4」と示された第2カプラC2は、「2」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「3,4,5,6」と示された第2カプラC2は、「3」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路、「5」と示した超伝導線路及び「6」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。「3,5,6」と示された第2カプラC2は、「3」と示した超伝導線路、「5」と示した超伝導線路及び「6」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「4,5,6」と示された第2カプラC2は、「4」と示した超伝導線路、「5」と示した超伝導線路及び「6」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。
このようにして、第2カプラC2によって、5次の相互作用を含むハミルトニアンを4次以下の相互作用で表現することができる。5次の相互作用を、制約項を用いて4次以下の相互作用に置き換えることで、2次の相互作用まで次元を減らしてハミルトニアンを表現する場合よりも直接的に扱うことのできる相互作用を多くして、解の精度を向上させることができる。また、ハミルトニアンの式変形を容易にすることができ、ハミルトニアンを実装する場合に必要となる格子数を削減することができる場合がある。また、冷凍機内に設置できるチップ面積は限られているため、3次及び4次の相互作用を直接的に扱うことで、同一チップ面積に搭載できる量子ビット数を増やすことができる場合がある。
図14は、従来例の複数の超伝導線路及び第1カプラの概要を示す図である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1及び「2」と示した第2超伝導線路L2を破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図14において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1a,C1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1aは、例えば、「4」と示した縦方向に延伸する超伝導線路及び「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路が交差する箇所に設けられ、「4」と示した縦方向に延伸する超伝導線路の一部及び「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第1カプラC1aは、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの相互作用の強さが調整される。
第1カプラC1bは、例えば、第2超伝導線路L2及び「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路が交差する箇所に設けられ、第2超伝導線路L2の一部及び「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「2」と示した縦方向に延伸する第2超伝導線路L2によって構成される量子ビットと、「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路によって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、隣接する2つの単位格子を形成する複数の超伝導線路は、第4カプラC4によって結合される。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
従来例のレイアウトによって、数式(2)のハミルトニアンを6つの単位格子、33量子ビットで実現することができる。本実施形態に係る量子計算素子10によれば、第5例及び第6例のレイアウトであれば4つの単位格子、32量子ビットで数式(2)のハミルトニアンを実現することができ、従来例のレイアウトよりも少ない量子ビット数で同じハミルトニアンを表すことができる。また、本実施形態に係る量子計算素子10によれば、拘束条件を加えずに3次以上の相互作用を直接表すことができるため、拘束条件を満たすように一部の相互作用を強くする必要がなく、相互作用の強さの階調が制限されづらくなる。
図15は、本実施形態に係る量子計算素子10の複数の超伝導線路、第1カプラ及び第2カプラの第7例の概要を示す図である。第7例は、数式(2)のハミルトニアンを、5×5単位格子の超伝導線路を用いて表現する例であり、5次までの相互作用を含む例である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a、「2」と示した第2超伝導線路L2及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1」と示した第1超伝導線路L1bとを破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a,L1b及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図15において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1bは、例えば、「5」と示した縦方向に延伸する超伝導線路及び「5」と示した横方向に延伸する超伝導線路が交差する箇所に設けられ、「5」と示した縦方向に延伸する超伝導線路の一部及び「5」と示した横方向に延伸する超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「5」と示した縦方向に延伸する超伝導線路によって構成される量子ビットと、「5」と示した横方向に延伸する超伝導線路によって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。同様に、「2」と示した縦方向に延伸する第2超伝導線路L2によって構成される量子ビットと、「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路によって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、隣接する2つの単位格子を形成する複数の超伝導線路は、第4カプラC4によって結合される。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
第2カプラC2は、複数の超伝導線路のうち3つ以上の超伝導線路の一部に対向して設けられ、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、例えば、第1超伝導線路L1aの一部、「2」と示した超伝導線路の一部、「3」と示した超伝導線路の一部、「4」と示した超伝導線路の一部及び「5」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第2カプラC2は、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットの相互作用の強さが調整される。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、第2カプラC2によって結合される3つ以上の超伝導線路は、1つの単位格子に含まれる。本例の場合、「12345」と示された第2カプラC2は、第1超伝導線路L1a、「2」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、5つの量子ビットを相互作用させる。また、「2345」と示された第2カプラC2は、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。「234」と示された第2カプラC2は、「2」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「345」と示された第2カプラC2は、「3」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「235」と示された第2カプラC2は、「2」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「245」と示された第2カプラC2は、「2」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「1234」と示された第2カプラC2は、第1超伝導線路L1b、「2」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。「1235」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。「1245」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「2」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。「1345」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。「124」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「2」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「135」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「123」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「2」と示した超伝導線路及び「3」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「125」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「2」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。「134」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路を相互作用させ、3つの量子ビットを相互作用させる。
このようにして、第2カプラC2によって、3次、4次及び5次の相互作用を含むハミルトニアンを直接表現することができる。3次、4次及び5次の相互作用を直接表現することで、2次の相互作用まで次元を減らしてハミルトニアンを表現する場合よりも解の精度を向上させることができる。また、ハミルトニアンの式変形を容易にすることができ、ハミルトニアンを実装する場合に必要となる格子数を削減することができる場合がある。また、冷凍機内に設置できるチップ面積は限られているため、3次の相互作用を直接的に扱うことで、同一チップ面積に搭載できる量子ビット数を増やすことができる場合がある。
図16は、従来例の複数の超伝導線路及び第1カプラの概要を示す図である。本例は、数式(2)のハミルトニアンを、5×5単位格子の超伝導線路を用いて、2次の相互作用まで次元を減らして表現する例である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a、「2」と示した第2超伝導線路L2及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1」と示した第1超伝導線路L1bを破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a,L1b及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図16において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1a,C1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1aは、例えば、第1超伝導線路L1a及び「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路が交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1aの一部及び「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第1カプラC1aは、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの相互作用の強さが調整される。
第1カプラC1bは、例えば、第2超伝導線路L2及び「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路が交差する箇所に設けられ、第2超伝導線路L2の一部及び「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「2」と示した縦方向に延伸する第2超伝導線路L2によって構成される量子ビットと、「2」と示した横方向に延伸する超伝導線路によって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、隣接する2つの単位格子を形成する複数の超伝導線路は、第4カプラC4によって結合される。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
従来例のレイアウトによって、数式(2)のハミルトニアンを4つの格子、25量子ビットで実現することができる。本実施形態に係る量子計算素子10によれば、第7例のレイアウトであれば3つの格子、29量子ビットで数式(2)のハミルトニアンを実現することができ、従来例のレイアウトよりも少ない量子ビット数で同じハミルトニアンを表すことができる。また、本実施形態に係る量子計算素子10によれば、拘束条件を加えずに3次以上の相互作用を直接表すことができるため、拘束条件を満たすように一部の相互作用を強くする必要がなく、相互作用の強さの階調が制限されづらくなる。
図17は、本実施形態に係る量子計算素子10の複数の超伝導線路、第1カプラ及び第2カプラの第1変形例の概要を示す図である。本変形例は、4次及び5次の相互作用を表現する専用配置の例である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a、「2」と示した第2超伝導線路L2及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1」と示した第1超伝導線路L1bとを破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a,L1b及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図17において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1bは、例えば、第1超伝導線路L1a及び第1超伝導線路L1bが交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1aの一部及び第1超伝導線路L1bの一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「1」と示した縦方向に延伸する第1超伝導線路L1aによって構成される量子ビットと、「1」と示した横方向に延伸する第1超伝導線路L1bによって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
本変形例の第4カプラC4aは、左側の単位格子に含まれる「1」と示した横方向に延伸する超伝導線路と、右側の単位格子に含まれる第1超伝導線路L1bとを結合する。第4カプラC4aは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4aは、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
第2カプラC2は、複数の超伝導線路のうち3つ以上の超伝導線路の一部に対向して設けられ、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、例えば、「1」と示した超伝導線路の一部、第2超伝導線路L2の一部、「3」と示した超伝導線路の一部、「4」と示した超伝導線路の一部及び「5」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第2カプラC2は、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットの相互作用の強さが調整される。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、第2カプラC2によって結合される3つ以上の超伝導線路は、1つの単位格子に含まれる。本例の場合、「1234」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。また、「1235」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。「1345」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。さらに、「12345」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、5つの量子ビットを相互作用させる。
このようにして、第4カプラC4aによって単位格子内の複数の超伝導線路を結合することで、第2カプラC2により表現される4次及び5次の相互作用をより少ない単位格子で実現することができる。これにより、ハミルトニアンを実装する場合に必要となる格子数を削減することができる場合がある。また、冷凍機内に設置できるチップ面積は限られているため、4次及び5次の相互作用を直接的に扱うことで、同一チップ面積に搭載できる量子ビット数を増やすことができる場合がある。
図18は、本実施形態に係る量子計算素子10の複数の超伝導線路、第1カプラ及び第2カプラの第2変形例の概要を示す図である。本変形例は、4次及び5次の相互作用を表現する専用配置の例である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a、「2」と示した第2超伝導線路L2及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1」と示した第1超伝導線路L1bとを破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a,L1b及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図18において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1bは、例えば、第1超伝導線路L1a及び第1超伝導線路L1bが交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1aの一部及び第1超伝導線路L1bの一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「1」と示した縦方向に延伸する第1超伝導線路L1aによって構成される量子ビットと、「1」と示した横方向に延伸する第1超伝導線路L1bによって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
本変形例の第4カプラC4bは、左側の単位格子に含まれる複数の「1」と示した横方向に延伸する超伝導線路と、右側の単位格子に含まれる第1超伝導線路L1bとを結合する。第4カプラC4bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4bは、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
第2カプラC2は、複数の超伝導線路のうち3つ以上の超伝導線路の一部に対向して設けられ、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、例えば、「1」と示した超伝導線路の一部、第2超伝導線路L2の一部、「3」と示した超伝導線路の一部、「4」と示した超伝導線路の一部及び「5」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第2カプラC2は、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットの相互作用の強さが調整される。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、第2カプラC2によって結合される3つ以上の超伝導線路は、1つの単位格子に含まれる。本例の場合、「1234」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。また、「1235」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。「1345」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。さらに、「12345」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、5つの量子ビットを相互作用させる。
このようにして、第4カプラC4bによって隣接する単位格子内の複数の超伝導線路を結合することで、第2カプラC2により表現される4次及び5次の相互作用をより少ない単位格子で実現することができる。これにより、ハミルトニアンを実装する場合に必要となる格子数を削減することができる場合がある。また、冷凍機内に設置できるチップ面積は限られているため、4次及び5次の相互作用を直接的に扱うことで、同一チップ面積に搭載できる量子ビット数を増やすことができる場合がある。
図19は、本実施形態に係る量子計算素子10の複数の超伝導線路、第1カプラ及び第2カプラの第3変形例の概要を示す図である。本変形例は、4次及び5次の相互作用を表現する専用配置の例である。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a、「2」と示した第2超伝導線路L2及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1」と示した第1超伝導線路L1bとを破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a,L1b及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図19において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
本変形例の第4カプラC4cは、左下の単位格子に含まれる「1」と示した横方向に延伸する第1超伝導線路L1bと、右上の単位格子に含まれる「1」と示した縦方向に延伸する第1超伝導線路L1aとを結合する。第4カプラC4cは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4cは、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。なお、本変形例においても、第1変形例の第4カプラC4aのように、左下の単位格子に含まれる横方向に延伸する3つの超伝導線路を第1超伝導線路L1bに結合する構成としたり、第2変形例の第4カプラC4bのように、左下の単位格子に含まれる横方向に延伸する3つの超伝導線路を第1超伝導線路L1aに結合する構成としたりしてもよい。
第2カプラC2は、複数の超伝導線路のうち3つ以上の超伝導線路の一部に対向して設けられ、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、例えば、第1超伝導線路L1bの一部、第2超伝導線路L2の一部、「3」と示した超伝導線路の一部、「4」と示した超伝導線路の一部及び「5」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第2カプラC2は、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットの相互作用の強さが調整される。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、第2カプラC2によって結合される3つ以上の超伝導線路は、1つの単位格子に含まれる。本例の場合、「1234」と示された第2カプラC2は、第1超伝導線路L1b、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。また、「1235」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。「1345」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路、「4」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。さらに、「12345」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、5つの量子ビットを相互作用させる。
このようにして、第4カプラC4cによって2つの単位格子内の超伝導線路を結合することで、第2カプラC2により表現される4次及び5次の相互作用をより少ない単位格子で実現することができる。本変形例の場合、右上の単位格子と左下の単位格子とを結合させ、右下の単位格子を用いずに4次及び5次の相互作用を表現することができる。これにより、ハミルトニアンを実装する場合に必要となる格子数を削減することができる場合がある。また、冷凍機内に設置できるチップ面積は限られているため、4次及び5次の相互作用を直接的に扱うことで、同一チップ面積に搭載できる量子ビット数を増やすことができる場合がある。
図20は、本実施形態に係る量子計算素子10の複数の超伝導線路、第1カプラ及び第2カプラの第4変形例の概要を示す図である。本変形例は、4次及び5次の相互作用を表現する例であり、本実施形態と同様の配置の例である。本変形例に係る量子計算素子10は、横の長さがL1、縦の長さがL2であり、面積L1×L2の領域に配置される。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a、「2」と示した第2超伝導線路L2及び第1超伝導線路L1aと同じ量子状態となるように結合されている「1」と示した第1超伝導線路L1bとを破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a,L1b及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図20において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1bは、例えば、第1超伝導線路L1a及び第1超伝導線路L1bが交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1aの一部及び第1超伝導線路L1bの一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「1」と示した縦方向に延伸する第1超伝導線路L1aによって構成される量子ビットと、「1」と示した横方向に延伸する第1超伝導線路L1bによって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、隣接する2つの単位格子を形成する複数の超伝導線路は、第4カプラC4によって結合される。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4は、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
第2カプラC2は、複数の超伝導線路のうち3つ以上の超伝導線路の一部に対向して設けられ、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、例えば、「1」と示した超伝導線路の一部、第2超伝導線路L2の一部、「3」と示した超伝導線路の一部、「4」と示した超伝導線路の一部及び「5」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第2カプラC2は、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットの相互作用の強さが調整される。
複数の超伝導線路は、平面視において少なくとも2つの単位格子を形成するように配置され、第2カプラC2によって結合される3つ以上の超伝導線路は、1つの単位格子に含まれる。本例の場合、「1234」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「2」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。また、「1235」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、「2」と示した超伝導線路、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。
図21は、本実施形態に係る量子計算素子10の複数の超伝導線路、第1カプラ及び第2カプラの第5変形例の概要を示す図である。本変形例は、4次及び5次の相互作用を表現する例であり、第4変形例に比べて設置面積を削減した専用配置の例である。本変形例に係る量子計算素子10は、横の長さがL1−ΔL1、縦の長さがL2であり、面積(L1−ΔL1)×L2の領域に配置される。よって、本変形例に係る量子計算素子10の設置面積は、第4変形例に比べてΔL1×L2だけ小さい。同図では、「1」と示した第1超伝導線路L1a及び「2」と示した第2超伝導線路L2を破線で囲って図示している。
第1超伝導線路L1a及び第2超伝導線路L2は、それぞれ電磁的状態によって量子ビットを構成する。具体的には、量子ビットの量子状態は、超伝導線路を流れる電流の周回方向によって表される。ここで、超伝導線路を流れる電流の周回方向は、図21において超伝導線路の端部に設けられている超伝導量子干渉計から出発して超伝導量子干渉計に戻る経路を流れる電流の方向で定義される。
第1カプラC1bは、複数の超伝導線路のうち2つの超伝導線路の一部に対向して設けられ、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットを相互作用させる。第1カプラC1bは、例えば、第1超伝導線路L1a及び「1」と示した横方向に延伸する超伝導線路が交差する箇所に設けられ、第1超伝導線路L1aの一部及び「1」と示した横方向に延伸する超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第1カプラC1bは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。すなわち、「1」と示した縦方向に延伸する第1超伝導線路L1aによって構成される量子ビットと、「1」と示した横方向に延伸する超伝導線路によって構成される量子ビットとは、互いに同じ量子状態となっている。
本変形例では、左側に2×4格子の超伝導線路が配置され、右側に4×4格子の超伝導線路が配置されている。そして、左側の格子のうち縦方向に延伸する2つの超伝導線路と、右側の格子のうち「1」と示した横方向に延伸する超伝導線路とは、第4カプラC4dによって結合される。第4カプラC4dは、超伝導量子干渉計に接続され、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されている。第4カプラC4dは、超伝導量子干渉計に接続されなくてもよく、2つの超伝導線路によって構成される2つの量子ビットの量子状態が同一となるように、相互作用の強さが固定されていてもよい。
第2カプラC2は、複数の超伝導線路のうち3つ以上の超伝導線路の一部に対向して設けられ、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットを相互作用させる。第2カプラC2は、例えば、「1」と示した超伝導線路の一部、第2超伝導線路L2の一部、「3」と示した超伝導線路の一部、「4」と示した超伝導線路の一部及び「5」と示した超伝導線路の一部に対向するように設けられる。第2カプラC2は、超伝導量子干渉計に接続され、超伝導量子干渉計に印加される磁束の大きさに応じて、3つ以上の超伝導線路によって構成される3つ以上の量子ビットの相互作用の強さが調整される。
第2カプラC2によって結合される3つ以上の超伝導線路は、1つの単位格子に含まれる。本例の場合、「1234」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「4」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。また、「1235」と示された第2カプラC2は、「1」と示した超伝導線路、第2超伝導線路L2、「3」と示した超伝導線路及び「5」と示した超伝導線路を相互作用させ、4つの量子ビットを相互作用させる。
このようにして、一部の格子の面積を小さくし、第4カプラC4dによって2つの格子内の超伝導線路を結合することで、第2カプラC2により表現される4次の相互作用をより小さい面積で実現することができる。これにより、同一チップ面積に搭載できる量子ビット数を増やすことができる場合がある。
本発明の適用範囲は、たんぱく質の構造解析に限らない。本発明は、遺伝子の構造解析やHLA(Human Leukocyte Antigen)の解析などにも適用することができる。また、本発明は、化合物の構造の解析にも適用することができる。また、本発明を、量子アニーリング方式が適する最適化問題一般に適用できることは、発明が属する技術分野の通常の知識を有する者であれば容易に理解できる。例えば、本発明は、金融や交通渋滞の解析などにも適用することができる。また、本発明のハミルトニアンを3次以上の項で実装する考えは、同分野の通常の知識を有する者であれば、CMOS回路やFPGA等でハミルトニアンを実装する際にも適用できることは容易に理解することができ、その場合は本発明の適用範囲に含まれることは自明である。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
本実施形態では、4×4の超伝導線路によって1つの単位格子が形成される場合について説明したが、単位格子の大きさはこれに限られない。例えば、5×5の超伝導線路によって1つの単位格子が形成されてもよいし、6×6の超伝導線路によって1つの単位格子が形成されてもよい。