JP6761566B2 - 研磨パッド - Google Patents
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Description
ここで、温度変化に対する安定性が高い研磨パッドとして、30℃〜90℃における貯蔵弾性率の比(E’30/E’90)を相対的に小さな1〜3.6の範囲となるようにした研磨パッドが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、30℃〜90℃の範囲に亘って大きな貯蔵弾性率が維持されると、研磨層と被研磨物との間に研磨くずが介在された際には、該研磨くずが硬い研磨層によって被研磨物に強く押圧されるようになるので、該被研磨物の表面にスクラッチが生じ易くなっていた。
本発明は上述した事情に鑑み、ディッシングが生じにくく、かつスクラッチが生じにくく、さらに研磨レートに優れた研磨パッドを提供するものである。
上記研磨層は、TDI、DEG、PTMGを配合したプレポリマーとポリアミン硬化剤により形成されたものであって、
上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’30と90℃における貯蔵弾性率E’90との比(E’30/E’90)が8.5以上であり、
上記研磨層に対して歪0.001、測定周波数10rad/secとし、温度を−50から150℃(5℃/min)に変化させる加熱・冷却工程を行った場合における、上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’30−1と、歪0.001、測定周波数10rad/secとし、温度を−50から150℃(5℃/min)に変化させる加熱・冷却工程を1回以上経た、上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’30−2との比(E’30−2/E’30−1)、および上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’90−1と1回以上の上記加熱・冷却工程を経た上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率E’90−2との比(E’90−2/E’90−1)が、いずれも1.15〜1.22の範囲内であることを特徴とするものである。
その理由は次の通りであると考えられる。
すなわち、被研磨物の研磨は、上述したように一般的には40℃前後の温度で行われるが、研磨パッドと被研磨物との間に研磨くずが介在されると、その研磨くずによって研磨パッドが局部的に高温になる。研磨パッドが高温になっても大きな貯蔵弾性率を有する場合には、上述したように研磨パッドは相対的に硬い状態を維持するので、上記研磨くずが被研磨物にスクラッチを生じさせるようになる。
これに対し本発明においては、90℃における貯蔵弾性率は30℃の貯蔵弾性率に比較して1/5以下の小さな貯蔵弾性率となるので、局部的に高温になった部分は相対的に柔らかくなり、効果的に研磨くずを研磨パッドに埋収することができるようになる。したがって、これによって被研磨物に研磨くずが強く押圧されるのを防止してスクラッチが生じるのを抑制することが可能となる。
また、30℃における貯蔵弾性率E’30は90℃における貯蔵弾性率E’90よりも5倍以上大きいので、被研磨物を研磨する際の一般的な温度である40℃前後では大きな貯蔵弾性率(100MPa以上)となり、これによりディッシングを効果的に抑制することができる。
そこで本発明においては、上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’30−1と1回以上の加熱・冷却工程を経た上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’30−2との比(E’30−2/E’30−1)、および上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’90−1と1回以上の加熱・冷却工程を経た上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率E’90−2との比(E’90−2/E’90−1)が、いずれも0.75〜1.25の範囲内となるようにしてある。
研磨層を90℃に加熱した後に冷却してその後の状態における上述の比が0.75〜1.25の範囲内となっていれば、当該研磨パッドは概ね最初の状態に回復されることになり、したがって上述したディッシング抑制効果とスクラッチ抑制効果とを期待することができる。
上記研磨装置2は、下方に設けられて研磨パッド1を支持する研磨定盤4と、上方に設けられて半導体基板3を支持する支持定盤5と、スラリーを供給するスラリー供給手段6とを備えている。
上記研磨パッド1および半導体基板3はそれぞれ略円盤状を有しており、本実施例では研磨パッド1の直径は半導体基板3の直径よりも大径となっている。また研磨パッド1は両面テープ等によって研磨定盤4に固定され、半導体基板3は支持定盤5に真空吸着されている。
また上記研磨定盤4および支持定盤5は図示しない駆動手段によって相対的に回転するとともに、上記支持定盤5は研磨定盤4の中心位置から半径方向に往復動可能に設けられ、これにより上記研磨パッド1と半導体基板3とが相対的に回転しながら摺動するようになっている。
上記スラリー供給手段6は、所要の薬品中に砥粒の混合されたスラリーを上記研磨パッド1の上面に形成された研磨面1a供給し、これにより当該スラリーが研磨面1aと半導体基板3との間に入り込むことで、半導体基板3の研磨が行われるようになっている。
このような構成を有する研摩装置自体は従来公知であり、これ以上の詳細な説明については省略する。なお上記構成を有する研磨装置2の他、例えば支持定盤5には駆動がなく、研磨定盤4の回転により支持定盤5が連れ回るようにした研磨装置2など、その他の構成を有した研磨装置2も使用可能である。
以下、準備工程、混合工程、成形体成形工程、研磨層形成工程に分けて、それぞれ説明する。
上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物としては、市販されているものを用いてもよく、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて合成したものを用いてもよい。上記反応に特に制限はなく、ポリウレタン樹脂の製造において公知の方法および条件を用いて付加重合反応すればよい。
例えば、40℃に加温したポリオール化合物に、窒素雰囲気にて撹拌しながら50℃に加温したポリイソシアネート化合物を添加し、30分後に80℃まで昇温させ更に80℃にて60分間反応させるといった方法で製造することが出来る。
例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。
さらにポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物が好ましく、中でも2,4−TDI、2,6−TDI、MDIがより好ましく、2,4−TDI、2,6−TDIが特に好ましい。
これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の合成に用いられるポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール等のジオール化合物、トリオール化合物等;ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(又はポリテトラメチレンエーテルグリコール)(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物;エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物;ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物等を挙げることができる。
また、エチレンオキサイドを付加した3官能性プロピレングリコールを用いることもできる。これらの中でも、PTMG、又はPTMGとDEGの組み合わせが好ましい。
上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
具体的に上記プレポリマーのNCO当量は以下のようにして求めることができる。
プレポリマーのNCO当量=(ポリイソシアネート化合物の質量部+ポリオール化合物の質量部)/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量部/ポリイソシアネート化合物の分子量)−(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量部/ポリオール化合物の分子量)]
ポリアミン化合物とは、分子内に2つ以上のアミノ基を有する化合物を意味し、脂肪族や芳香族のポリアミン化合物、特にはジアミン化合物を使用することができる。
例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス−o−クロロアニリン)(以下、MOCAと略記する。)、MOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物等を挙げることができる。
また、ポリアミン化合物が水酸基を有していてもよく、このようなアミン系化合物として、例えば、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を挙げることができる。
ポリアミン化合物としては、ジアミン化合物が好ましく、MOCA、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンがより好ましく、MOCAが特に好ましい。
ポリアミン化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリアミン化合物を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミン化合物は、他の成分と混合し易くするためおよび/又は後の成形体形成工程における気泡径の均一性を向上させるために、必要により加熱した状態で減圧下脱泡することが好ましい。減圧下での脱泡方法としては、ポリウレタンの製造において公知の方法を用いればよく、例えば、真空ポンプを用いて0.1MPa以下の真空度で脱泡することができる。
硬化剤(鎖伸長剤)として固体の化合物を用いる場合は、加熱により溶融させつつ、減圧下脱泡することができる。
具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの低分子量ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの高分子量のポリオール化合物などが挙げられる。
上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリマー殻としては、特開昭57−137323号公報等に開示されているように、例えば、アクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体などの熱可塑性樹脂を用いることができる。同様に、ポリマー殻に内包される低沸点炭化水素としては、例えば、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、石油エーテル等を用いることができる。
混合順序に特に制限はないが、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物と中空体とを混合した混合液と、硬化剤および必要に応じて他の成分を混合した混合液とを用意し、両混合液を混合器内に供給して混合撹拌することが好ましい。このようにして、成形体成形用の混合液が調製される。
このとき、プレポリマー、硬化剤が反応してポリウレタンポリウレア樹脂を形成することにより該混合液は硬化する。
さらに、必要に応じて研磨面1aに相当する面に格子状の溝等を形成したり、上記研磨面1aとは反対側の面にクッション層等を貼り合わせて、研磨パッド1を複層にすることもできる。
貯蔵弾性率E’とは、正弦的に変化する応力を発泡体に加えた場合における、1周期あたりに貯蔵され完全に回復するエネルギーの尺度であり、該貯蔵弾性率E’は、JIS K7244−4に準じ、引張モードで、初期荷重800gから500g、300g、200gと変化させた変動荷重にて測定した。また、歪0.001、測定周波数10rad/secとし、温度は−50から150℃(5℃/min)に変化させて測定した。
表1において、初回の1回目の30℃における貯蔵弾性率をE’30−1と表記し、同様に1回目の90℃における貯蔵弾性率をE’90−1、2回目の30℃における貯蔵弾性率をE’30−2、2回目の90℃における貯蔵弾性率をE’90−2とそれぞれ表記してある。
(研磨レート)
研磨試験の条件は下記の通りである。
・使用研磨機:荏原製作所社製、F−REX300
・Disk:3M A188(#60)
・回転数:(定盤)70rpm、(トップリング)71rpm
・研磨圧力:3.5psi
・研磨剤:キャボット社製、品番:SS25(SS25原液:純水=1:1の混合液を使用)
・研磨剤温度:20℃
・研磨剤吐出量:200ml/min
・使用ワーク(被研磨物):12インチφシリコンウエハ上にテトラエトキシシランを PE−CVDで絶縁膜1μmの厚さになるように形成した基板
(スクラッチ)
スクラッチ等のディフェクトの評価は、25枚の基板を研磨し、研磨加工後の21〜25枚目の基板5枚について、ウエハ表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP1DLS)の高感度測定モードにて測定し、基板表面におけるスクラッチ等のディフェクトの個数を評価した。スクラッチ等のディフェクトの評価では、12インチ(300mmφ)ウエハに0.16μm以上のディフェクトが200個未満を○、200個以上を×とした。
(ディッシング)
ディッシングは、銅配線パターン付ウエハ(セマテック社製754wafer)を用い、100μm/100μmのディッシングをKLAテンコール社製 段差・表面あらさ・微細形状測定装置 P-16+で評価し、1000Å未満のディッシングを○として、1000Å以上のディッシングを×とした。
また中空体としてはエクスパンセル社製のExpancel 551DE40 d42を1.8%、松本油脂製薬社製のマツモトマイクロスフェアー F−80DEを0.45%それぞれ使用した。硬化剤としてはMOCA(4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン))を用い、その場合のR値は0.90であった。
比較例2の研磨パッドは、上記製造方法に基づき、プレポリマーとして、TDI、DEG、PTMG650を配合したものを用い、NCO当量は400であった。
また中空体としては551DE40 d42を1.8%、F−80DEを0.45%それぞれ使用した。硬化剤としてはMOCAおよびPTMG650を3:1の割合で用い、その場合のR値は0.90であった。
2 研磨装置 3 被研磨物
4 研磨定盤 5 支持定盤
6 スラリー供給手段
Claims (3)
- 硬質ウレタンからなる研磨層を有した研磨パッドにおいて、
上記研磨層は、TDI、DEG、PTMGを配合したプレポリマーとポリアミン硬化剤により形成されたものであって、
上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’30と90℃における貯蔵弾性率E’90との比(E’30/E’90)が8.5以上であり、
上記研磨層に対して歪0.001、測定周波数10rad/secとし、温度を−50から150℃(5℃/min)に変化させる加熱・冷却工程を行った場合における、上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’30−1と、歪0.001、測定周波数10rad/secとし、温度を−50から150℃(5℃/min)に変化させる加熱・冷却工程を1回以上経た、上記研磨層の30℃における貯蔵弾性率E’30−2との比(E’30−2/E’30−1)、および上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率の初回測定値E’90−1と1回以上の上記加熱・冷却工程を経た上記研磨層の90℃における貯蔵弾性率E’90−2との比(E’90−2/E’90−1)が、いずれも1.15〜1.22の範囲内であることを特徴とする研磨パッド。 - 上記研磨層の40℃における貯蔵弾性率E’ 40が100MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
- 上記研磨層はポリウレタンポリウレア樹脂からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨パッド。
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