JP6760784B2 - 神経活性化組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、神経活性化組成物に関する。
記憶や運動は、脳・神経間のネットワークを介する情報の伝達によってコントロールされている。この情報の伝達機能が低下することで記憶障害や運動機能低下が生じる。神経間ネットワークは、神経細胞同士のシナプス接続により構築されている。
シナプスとは、神経情報を出力する側と入力される側の間に発達した、情報伝達のための接触構造である。最も基本的な構造は、シナプス前細胞の軸索末端がシナプス後細胞の樹状突起に接触しているものである。シナプスには大別して化学シナプス(chemical synapse)と電気シナプス(electrical synapse)があり、化学シナプスでは、出力する側の細胞をシナプス前細胞、入力される側の細胞をシナプス後細胞という。中枢神経系の多くのシナプスを占める化学シナプスでは、活動電位の到来により、シナプス前部の電位依存性カルシウムチャネルが開口してカルシウムが流入し、シナプス顆粒の開口放出を引き起こす。その結果、シナプス顆粒に含まれている神経伝達物質がシナプス間隙に放出される。
神経伝達物質は、シナプス後部にある神経伝達物質受容体に結合し、直接膜電位を変化させるか、細胞内二次メッセンジャーを活性化することで伝達を行う。化学シナプスは興奮性シナプスと抑制性シナプスに細分される。一方、電気シナプスは接触膜上のギャップ結合を介して、膜電位変化を直接的に次の神経細胞に伝える構造である。このように受け取られたシナプス電位が細胞体まで伝わり、軸索小丘で統合され、最終的にシナプス後細胞が発火するかどうかが決まる。この影響の相互作用を神経統合と呼ぶ。またシナプス伝達の効率は必ずしも一定ではなく、入力の強度により変化する。これをシナプス可塑性と呼び、学習・記憶の細胞メカニズムであると考えられている。
化学シナプスにあっては、情報シグナルが到達すると、
(1)シナプス前細胞の軸索で活動電位(膜の脱分極)が伝わり、カルシウムイオンがシナプス前終末に流入する、
(2)カルシウムイオンの上昇による神経伝達物質のシナプス間際での放出、
(3)神経伝達物質がシナプス後部の受容体に結合することにより、電気的または化学的変化をもたらし、シグナルが伝達される。
この過程で、神経細胞中で複数の遺伝子が活性化されて、情報シグナルの下流側への伝達を担うことになる。この一群の遺伝子群は、最初期遺伝子と総称されている。最初期遺伝子は、増殖シグナルや分化シグナル等が細胞へ伝わると、既に細胞内に存在する因子のみを用いて速やかに、且つ、一過的に転写が引き起こされる。コードされているタンパク質は、転写制御因子・成長因子・細胞骨格など様々なカテゴリーを含む。神経細胞においては、シナプス活動に伴う細胞内カルシウム濃度上昇や神経調節物質によるシグナル活性化などによって最初期遺伝子の発現が誘導されることが明らかになっている。一部の最初期遺伝子は、シナプス可塑性を引き起こす電気刺激や学習・記憶課題によって特定の脳領域に特異的な発現誘導パターンを示すことから、シナプスや神経回路の長期可塑的変化への関与が示唆されている。また、最初期遺伝子の発現は、数分〜数十分前の神経活動状態をよく反映することから、最初期遺伝子のmRNAやタンパク質は神経活動の分子マーカーとして広く利用されている。
最初期遺伝子が、刺激後速やかに転写誘導されるメカニズムの詳細は、それぞれの遺伝子によって異なる。しかし、いくつかの最初期遺伝子の上流制御領域の解析により共通点が次第に明らかになりつつある。神経細胞においては、NMDA型グルタミン酸受容体や電位依存性カルシウムチャネルを介して細胞外から流入したカルシウムイオンがカルシウム・カルモジュリン依存的キナーゼ(CaMKs)やMAPキナーゼ(MAPK)などのキナーゼ経路を活性化させ、その結果、非誘導型の転写因子であるサイクリックAMP応答配列結合タンパク質(cAMP-responsive element binding protein, CREB)や血清応答因子(Serum response factor, SRF)、myocyte enhancer factor-2 (MEF2)などのリン酸化スイッチによって活性化されることで最初期遺伝子の転写が開始される。また、上記の転写因子と複合体を形成する補活性化因子(CBP、p300、ElK、CRTC、MKL等)の重要性も明らかになってきた。
神経細胞において最初期遺伝子は、シナプス活動や活動電位に伴うカルシウムイオンの流入などによって発現が誘導される活動依存的遺伝子であり、脳における代表的な最初期遺伝子としてc-fosやEgr-1などの転写制御因子をコードする遺伝子やArc、Homer1a/Vesl-1s等のシナプス関連タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。これら遺伝子のmRNAや発現産物であるタンパク質は神経活動の指標マーカーとしてすでに用いられている。
また、神経伝達物質であるグルタミン酸を培養ラット初代神経細胞に添加すると、一過性にCREBが機能更新して、最初期遺伝子であるc-fosやArcが増加する事実が知られている。これらの遺伝子の増加は、リン酸化CaMKII(pCaMKII)及びリン酸化ERK1/2(pERK1/2)の増加に引き続いて発生し、これらのタンパク質及び最初期遺伝子の発現量の増加は、神経伝達が活発に機能している指標となり得るものである。
特許文献1には、c-fos、zif268、Arc等の最初期遺伝子の発現量変化を観察することで、薬物などに対する脳細胞の感受性や反応性を評価する技術が記載されている。
特許文献2には、神経栄養因子であるワクシニアウイルス接種炎症組織抽出物の効果を評価するためにCREBのリン酸化促進作用を指標とする方法が開示されている。また、このCREBのリン酸化を、c-fosの産生を測定することで評価できることも記載されている。
特許文献3には、末梢投与で作用を示す食欲抑制ペプチドPYYが、末梢投与においては、視床下部の弓状核内におけるc-fosの増加、および、視床下部の神経ペプチドY(NPY)mRNAの低下を引き起こし、さらに、PYY3-36が、NPY神経末端のシナプス活動を阻害し、POMCニューロンを活性化することを記載している。すなわちPYYが神経において、c-fosを介して、食欲抑制神経を活性化していることを明らかにしている。
非特許文献1、2には、c-fos、Arc、ノックアウトマウスでは、神経可塑性の障害、空間恐怖記憶が障害されること、またc-fos、Arc発現細胞を光遺伝学的手法により不活性化することで、記憶障害が誘発されるというこれまでの研究成果がレビューされている。
このように、神経系の活性化には最初期遺伝子の活性化が大きな役割を果たしていることが明らかになっている。
このような神経細胞への入力シグナルに関係する遺伝子転写とその発現産物による神経活性化とは別に、神経栄養因子(ニューロトロフィン)や神経分化促進作用を有するキナーゼによって神経を活性化しようとする試みがなされている。
特許文献4には杏仁、麻黄、桂枝、人参、当帰、川きゅう、乾姜、甘草及び石膏、又はこれらの抽出物を有効成分として含有する神経栄養因子(BDNF)合成促進剤が記載されている。
特許文献5にはプラセンタ抽出物を含有する脳由来神経栄養因子(BDNF)合成促進剤が記載されている。
さらに特許文献6には、ヒトES細胞を神経細胞組織に分化誘導するに当たって、PI3K−Akt経路のキナーゼ阻害によってニューロンの分化を調整できることが記載されている。
特開2014−193118号公報 WO2011/162317国際公開公報 特開2013−047275号公報 特開平07−025777号公報 特開2012−136448号公報 特開2016−005465号公報
Neurosci Res 69(2011)175-186 Front Mol Neuro sci 8(2016)78
本発明は、新規な神経活性化作用を有する組成物を提供することを課題とする。
本願発明者らは、神経活性化因子の探索のため、神経細胞の最初期遺伝子発現誘導に関わるリン酸化ERKの変化を指標とする評価系を構築し、この評価系を用いて1000種以上の植物抽出物や天然化合物の神経活性化作用を評価した結果、神経活性化作用を有する組成物を見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の構成は以下のとおりである。
(1)キンミズヒキ抽出物を有効成分とする神経細胞の直接活性化組成物。
(2)キンミズヒキ抽出物が水及び/又はエタノール抽出物である(1)に記載の神経細胞の直接活性化組成物。
(3)キンミズヒキ抽出物を有効成分とするアセチルコリン濃度の低下を伴わない認知症の改善剤。
本発明により、活性が低下した神経細胞において神経伝達機能が改善される組成物が提供される。そして神経伝達機能の改善によって認知機能の向上がもたらされる。
神経細胞において、キンミズヒキ抽出物がリン酸化ERKを増加させることを示すグラフである。 神経細胞において、キンミズヒキが、神経伝達に関与する最初期遺伝子c-fos遺伝子発現を促進させることを示すグラフである。 神経細胞において、キンミズヒキが、神経伝達に関与する最初期遺伝子Arc遺伝子発現を促進させることを示すグラフである。 神経細胞において、キンミズヒキが、神経分化に関与するリン酸化Aktを増加させることを示すグラフである。 神経細胞において、キンミズヒキが濃度依存性に、神経成長に関与する脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子発現を促進させることを示すグラフである。 マウスを用いる認知機能評価の試験の概要を示す模式図である。 マウスを用いる認知機能評価の試験における、キンミズヒキの認知機能増加効果を示すグラフである。
キンミズヒキ(学名:Agrimonia pilosa)は、バラ科キンミズヒキ属の多年草であり、本州、四国、九州などの林の縁、原野、路傍に生息しており、容易に入手可能である。別名、龍牙草ともいう。本発明において、キンミズヒキは、漢方生薬、民間療法薬、健康食品(ハーブティー)原料として市販されている乾燥物を使用することができる。また自生あるいは栽培されたもの、全草を採取し、これを自然乾燥又は加熱乾燥させたもので良い。これを細切し、約10倍量の水または、含水濃度0〜80%(v/v)エタノールに3〜5日間浸漬して室温で抽出するか、あるいは還流冷却器を付して50〜80℃で5〜24時間抽出し、濾過してキンミズヒキ抽出液を回収する。この抽出液は、ロータリーエバポレーターなどの減圧真空乾燥装置、又は凍結乾燥装置によって、水及びエタノールを除去してキンミズヒキ抽出物とする。
キンミズヒキ抽出物を有効成分とする神経活性化組成物は、前記抽出物をそのまま、あるいは慣用の医薬用製剤担体とともに医薬用組成物として動物及びヒトに投与することができる。医薬用組成物の剤形としては特に制限されるものではなく、必要に応じて適宜選択すればよい。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤などの経口剤や、注射剤、坐薬などの非経口剤が挙げられる。投与量は、通常成人で抽出物の重量で10〜1000mgを1日数回に分けて服用するのが適当である。
本発明において錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤などの経口剤は、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類などの賦形剤を用いて常法に従って製造される。これらの製剤中のフェルラ酸の配合量は特に限定されるものでなく、適宜設計できる。この種の製剤には本発明組成物の他に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などを適宜使用できる。
これら有効成分以外の配合成分は、結合剤としてはデンプン、デキストリン、アラビアガム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶性セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴールなどが例示できる。崩壊剤としてはデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロースなどを例として挙げることができる。界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。滑沢剤としては、タルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコールなどを例示できる。流動性促進剤としては軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどを例として挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
1.天然抽出物又は天然成分の1次スクリーニング
株式会社ファンケルが保有している天然化合物及び天然物抽出物ライブラリーの中から100%エタノール抽出物650検体、70%エタノール抽出物730検体、天然化合物380検体を試料として以下の1次スクリーニングに付した。
(1)リン酸化ERK(pERK)を指標とする一次スクリーニング
妊娠17日目のSDラット(日本エスエルシー)から調製した初代神経細胞を4×105cells/mlの濃度になるように懸濁し、ポリ-L-リジンコートの96ウエルプレート(住友ベークライト)に200μlずつ播種し、37℃、5% CO2下で7日間培養した。
ファンケル所有の天然化合物及び天然抽出物ライブラリー中の植物100%エタノール抽出物、70%エタノール抽出物または天然物化合物を添加し、20分培養した後上清を除去しPBSで細胞を洗浄した。次いで4%パラホルムアルデヒド溶液(和光純薬工業)を添加し、室温で30分間細胞固定を行った。その後PBSで洗浄し、0.1% Triton-Xを含むPBS-T(0.1% Tween-PBS(-))溶液を加え、室温で15分反応後、PBS-T溶液で洗浄し、ブロッキング溶液(25% Blocking One (Nacalai Tesque)/PBS-T)を加え1時間ブロッキングを行った。
その後ブロッキング溶液で1/3000倍に希釈した抗phospho-p44/42 MAPK (Erk1/2)(Thr202/Tyr204) (197G2)抗体(Cell Signaling Technology)を加え、室温で1時間反応させた。
PBS-T溶液で3回洗浄後、ブロッキング溶液で1/1000倍に希釈したRabbit IgG, HRP-linked F(ab')2 Fragment (GE Healthcare)を加え1時間反応させた。その後、PBS-T溶液で3回洗浄し、TMB Microwell Peroxidase Substrate System (KPL)を100μl加え室温で10分間反応させたのち、等量の1N HClを加え反応を停止させ、450nmの吸光度を測定した。なお試験試料N=1で試験した。
試験サンプル無添加の試験に対してpERKが1.5倍以上に上昇した試料を陽性と評価した。この検体を、再度N=3で試験を行い、活性の再現性確認を行った。さらに再現性の得られた試料をラット初代神経培養細胞(DIV10)に添加し、20分経過後のpERKの上昇を、抗pERK抗体を用いたウエスタンブロッティングにより確認した。
(2)神経活性作用確認試験
スクリーニングで陽性となった検体からキンミズヒキを選択し、試験を行った。
1)植物エキスの抽出操作及び試験試料の調製
乾燥した生薬原料である植物体の乾燥キンミズヒキは親和物産株式会社より購入した。
乾燥キンミズヒキをミキサーで粉砕した後、10倍量の100%エタノールを加え3日間撹拌し、ろ過した抽出液からエバポレーターを用いて植物抽出物を得た。得られた抽出物は、DMSOで溶解した。
2)pERKの増加作用確認試験(ウエスタンブロット試験)
妊娠17日目のSDラット(日本エスエルシー)から胎仔を取り出し、大脳皮質と海馬を単離した後、神経細胞分散液キット(住友ベークライト)を用いて添付の説明書に従い、初代神経細胞を調製した。調製したラット初代神経細胞を2% B27(Gibco)、0.5mM L-グルタミン(Gibco)、1% ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma Aldrich)を含むニューロベイサル培地(Gibco)で4×105 cells/mlの濃度になるように懸濁し、ポリ-L-リジンコートの48ウエルプレート(住友ベークライト)に350μlずつ播種し、37℃、5% CO2下で培養した。
培養11日目に100%エタノール抽出物をDMSOに溶解させたキンミズヒキを添加し、20分培養後に上清を除去し、PBS(Gibco)で細胞を洗浄後、プロテアーゼ阻害剤、フォスファターゼ阻害剤(Roche Diagnostics)を加えたRIPA溶液(50mM Tris-HCl (pH8.0)、150mM NaCl、0.1% SDS、0.5% DOC、1% NP-40)150μlを加え細胞抽出液を調製した。BCA assay kit(Pierce Chemical)でタンパク質定量を行った後、調製した細胞抽出液に4倍希釈 Laemmli sample溶液(Bio-rad)、終濃度50mMになるようDTT(和光純薬工業)を加え95℃、5分加熱し、電気泳動用のサンプルを調製した。1レーンあたり1μgのタンパク質量のサンプルをMini PROTEAN TGX Gels(4-20%:15レーン、Bio-rad)にロードし、電気泳動を行った後、トランスブロットTurboミディPVDF転写パック(Bio-rad)を用いて2.5A、25V、7分の条件で転写反応を行った。
転写させたメンブレンをBlocking One(Nacalai Tesque)に浸し、室温で1時間振盪させながらブロッキングした後、10% Blocking One -TBS-T(0.1% Tweenを含むTBS溶液)溶液で1/5000倍に希釈した抗phospho-p44/42 MAPK (Erk1/2)(Thr202/Tyr204) (197G2)抗体(Cell Signaling Technology)に浸し、室温で1時間振盪させながら反応させた。TBS-T溶液で3回洗浄後、10% Blocking One -TBS-T溶液で1/10000倍に希釈したHRP標識抗ラビットIgG抗体(Invitrogen)で浸し、室温で振盪させながら1時間反応させた。TBS-T溶液で3回洗浄した後、ECL Prime Western Blotting Detection Reagent(GE Healthcare)で5分反応させ発光量をLAS-4000(富士フィルム)を用いて測定した。
得られたウエスタンブロッティングのバンドの発光強度をMulti Gaugeソフトを使用して測定した。測定結果を図1に示す。
図1に示すように、キンミズヒキの100%エタノール抽出物の添加により、リン酸化ERK(pERK)の増強作用が認められた。
3)最初期遺伝子発現増強作用(c-fos、Arc活性化増強作用)
上記「2)pERKの増加作用確認試験」に記載の方法により、ラット初代神経細胞を調製し、11日間培養した。キンミズヒキの100%エタノール抽出液を添加し1時間培養した後、RNeasy Mini kit(QIAGEN)を用い添付の説明書に従ってRNAを調製した。調製した200ngのRNAを用いて、PrimeScript RT reagent kit(Takara Bio)を使用し、添付の説明書に従いcDNAを作製した。最初期遺伝子であるc-fos及び Arc発現量は、2μl cDNA、ラットc-fos、またはArc taq man probe(TaqMan Gene expression assays: Applied Biosystems)とLightCycler 480 Probe Master(Roche Diagnostics)を混合し、LightCycler 480 II(Roche Diagnostics)を用いて、95℃、5分、(95℃、10秒→60℃、30秒)×45サイクル、50℃、30秒の反応条件で測定を行った。内部標準としてGAPDHの発現量をRodent GAPDH control Reagent(Thermo Fisher Scientific)を使用し、上記と同様な反応で測定した。測定により得られたCp値からGAPDHを内部標準としてΔΔCt法により、各サンプルの相対的遺伝子発現量を求めた。
試験結果を図2、3に示す。図2、3に示すようにラット初代神経細胞において、キンミズヒキの100%エタノール抽出物の添加により、最初期遺伝子であるc-fos、Arcの発現増加作用が認められた。
4)リン酸化Akt増強作用(Akt活性化増強作用)
上記「2)pERKの増加作用確認試験」に記載の方法により、ラット初代神経細胞を調製し、11日間培養した。100%エタノール抽出物溶液を各濃度になるように添加し、20分培養後に上清を除去し、2)に記載した同様の方法でサンプルを調製し、電気泳動、トランスファーを行った。
転写させたメンブレンをBlocking One(Nacalai Tesque)に浸し、室温で1時間振盪させながらブロッキングした後、10% Blocking One -TBS-T溶液で1/1000倍に希釈した抗phospho-Akt (Ser473)抗体(Cell Signaling Technology)に浸し、室温で1時間振盪させながら反応させた。TBS-T溶液で3回洗浄後、10% Blocking One -TBS-T溶液で1/10000倍に希釈したHRP標識抗ラビットIgG抗体(Invitrogen)で浸し、室温で振盪させながら1時間反応させた。TBS-T溶液で3回洗浄した後、ECL Prime Western Blotting Detection Reagent(GE Healthcare)で5分反応させ発光量をLAS-4000(富士フィルム)を用いて測定した。測定したメンブレンは、リプローブ溶液(62.5mM Tris-HCl (pH6.7)、2% SDS、100mM 3-メルカプト-1,2-プロパンジオール)で50℃、30分反応後、TBS-T溶液で洗浄した。
その後、上記と同様な方法でBlocking Oneでブロッキング後、抗Akt抗体(1/1000希釈、Cell Signaling Technology)、HRP標識抗ラビットIgG抗体(1/10000希釈:Invitrogen)で反応後、ECL Prime Western Blotting Detection Reagent(GE Healthcare)で5分反応させ発光量をLAS-4000(富士フィルム)を用いて測定した。得られたウエスタンブロッティングのバンドの発光強度をMulti Gaugeソフトを使用して測定し、リン酸化Aktタンパク質の発光強度を総Aktタンパク質の発光強度で補正した。キンミズヒキにAktの増強作用が認められた。結果を図4に示す。測定結果は、コントロールを1としたときの相対値で示した。
5)脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子発現増強作用
上記2)に記載の方法により、ラット初代神経細胞を調製し、11日間培養した。キンミズヒキ100%エタノール抽出液を添加し1時間培養した後、RNeasy Mini kit(QIAGEN)を用い添付の説明書に従ってRNAを調製した。調製した200ngのRNAを用いて、PrimeScript RT reagent kit(Takara Bio)を使用し、添付の説明書に従いcDNAを作製した。BDNF発現量は、2μl cDNA、ラットBDNF taq man probe(TaqMan Gene expression assays: Applied Biosystems)とLightCycler 480 Probe Master(Roche Diagnostics)を混合し、LightCycler 480 II(Roche Diagnostics)を用いて、95℃、5分、(95℃、10秒→60℃、30秒)×45サイクル、50℃、30秒の反応条件で測定を行った。内部標準としてGAPDHの発現量をRodent GAPDH control Reagent(Thermo Fisher Scientific)を使用し、上記と同様な反応で測定した。測定により得られたCp値からGAPDHを内部標準としてΔΔCt法により、各サンプルの相対的遺伝子発現量を求めた。
その結果を図5に示す。キンミズヒキの100%エタノール抽出物に、BDNFの発現量増加作用が認められた。
6)植物抽出物による新奇物体認識試験による認知機能増強作用の確認
マウスは、本来新奇物体を新奇と認識すると接近し、形状の確認、匂いを嗅ぐなどの探索行動を行う。このとき、記憶している物体に対しては探索行動をとらないか、新奇物体に比べて短い時間しか探索しない。この性質を利用するのが新奇物体認識試験である。
図6に実験の概要を示す。以下に図6に沿って試験の概要を説明する。
6週齢ICRマウス雄(日本エスエルシー)1群8匹を1週間飼育部屋で順化の後、試験を行った。試験前日に試験用のボックス(40cm×40cm×40cm)でマウスに60分の順化(Habituation)を行った。
この容器の隣り合った角から一定距離ずつ中央へ離れた場所に2つの同じ形をした同じ大きさの積み木Object 1及びObject 2を設置した。
試験当日開始1時間前に、vehicle (コーン油:和光純薬工業)、キンミズヒキの100%エタノール抽出液(コーン油で懸濁)を200mg/10mL/kgで経口投与した。
投与60分後にマウスをこの容器に入れて、5分間自由探索を行わせ、object1,2に対する探索時間を測定した。終了後は飼育ケージへ戻した。これを獲得試行とした。この獲得試行により記憶が形成される。
48時間後に片方の物体を新奇の物体Novel (Object 1')に変えたボックスにマウスを戻し、5分間自由探索を行わせて2つの物体への接触時間を各々測定した。これをテスト試行とする。両物体Object 1'及びObject 2への探索行動の時間の長さの違いから、記憶の保持を評価した。
新奇物体への接触時間を測定した。なおObject 2は設置した当初のままである。これをFamiliarとする。
この試験において、マウスは獲得試行とテスト試行の間隔が短い場合、新奇性のある物体(本試験におけるNovel)に、より長い時間探索行動を示し、その嗜好性は獲得試行とテスト試行の間隔の拡大に伴って減弱する。そのため、新奇性に対する行動変化は「獲得試行時の物体の形状の記憶」を反映していると一般的に考えられている。
テスト試行時の新奇物体(novel Object 1')、非新奇物体(familiar Object 2)に対する個別探索時間を計測し、グラフにした。このグラフを図7に示す。
キンミズヒキの投与によって、新奇物体(novel)に対する探索時間が増加していることが明らかである。
図7に示すようにキンミズヒキ抽出物投与群において、新奇物体への探索時間の有意な増加が見られた。このことから、この新奇性に対する行動変化は「獲得試行時の物体の形状または位置の記憶」を反映していると考えられる。本試験系では、獲得試行において報酬や罰といった強化因子を用いないことから、情動レベルの低い条件で形成される記憶の増加を意味している。したがって、キンミズヒキは神経を活性化し、その結果記憶を増強していることが明らかとなった。

Claims (2)

  1. 70%以上のエタノールによるキンミズヒキ抽出物を有効成分とするアセチルコリン濃度の低下を伴わない認知症の改善剤。
  2. 100%エタノールによるキンミズヒキ抽出物を有効成分とする請求項1記載のアセチルコリン濃度の低下を伴わない認知症の改善剤。
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