JP6760554B1 - 成形品およびそれを用いた構造部材、ならびに成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし現在では、サイドシル等の自動車の構造部材として、衝突安全性能をより高めることができる構造部材が求められている。換言すれば、より高強度かつ三点曲げ試験における特性がより高いプレス成形品が求められている。
しかし、ホットスタンプ成形は製造コストが比較的高くなるため、ホットスタンプ成形に制限されない方法で、所望の特性を有する成形品を得たいという要望がある。
また、本発明の目的の一つは、製造コストを抑えつつ、高強度かつ三点曲げ試験における特性が高い成形品を容易且つ安定的に製造するための製造方法を提供することである。
(2)上記(1)に記載の成形品では、前記成形品の長手方向に垂直な断面において、前記挟み込み部が、前記縦壁部又は前記天板部に沿って延長されていてもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載の成形品では、前記成形品の長手方向に垂直な断面において、前記先端部の内壁面から前記挟み込み部までの距離をLとして、前記重ね合わせ部の長さをL0としたとき、下記(式1)を満たしてもよい。
0≦L≦L0 ...(式1)
(4)上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の成形品では、前記重ね合わせ部の一部と前記挟み込み部の一部とが溶接により接合されていてもよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の成形品では、前記成形品の長手方向において、前記突出部を有する突出領域と、前記突出部を有さない非突出領域とを備えてもよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の成形品では、前記先端部の内壁面から前記挟み込み部までの距離をLとして、前記挟み込み部の板厚をtaとしたとき、下記(式2)を満たしてもよい。
0≦L≦5ta ...(式2)
(7)上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の成形品では、前記突出部を構成する前記金属板の部位における最大硬さAと、前記突出部を構成する前記金属板の部位における最低硬さBとの比であるA/Bの値が1.1以上であってもよい。
(8)上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の成形品では、引張強度が780MPa以上であってもよい。
(9)本発明の第二の態様は、上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の成形品と、前記成形品に固定された金属部材とを含み、前記成形品の長手方向に垂直な断面において、前記成形品と前記金属部材とが閉断面を構成する、構造部材である。
(10)本発明の第三の態様は、上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の成形品の製造方法であって、前記挟み込み部となる挟み込み部相当部を有する素材金属板を変形させることによって、長尺形状を有し、前記挟み込み部相当部、前記縦壁部となる縦壁部相当部、前記天板部となる天板部相当部、および前記突出部となる突出部相当部、を有する変形金属板を得る第1工程と、前記変形金属板をさらに成形して前記成形品を形成する第2工程と、を含み、前記第2工程において、前記突出部相当部を重ね合わせかつ、前記突出部相当部によって前記挟み込み部相当部を挟み込み、前記突出部を形成する、成形品の製造方法である。
(11)上記(10)に記載の成形品の製造方法では、前記素材金属板の極限変形能である|εt|、前記重ね合わせ部を形成する前記金属板の板厚であるt、及び、前記挟み込み部の板厚であるtaが下記(式3)を満たし、前記重ね合わせ部を形成する前記金属板の一様伸びが5%超であってもよい。
|εt|>ln((2t+ta)/(t+ta)) ...(式3)
(12)上記(10)又は(11)に記載の成形品の製造方法では、前記第2工程が冷間プレスにより行われてもよい。
(13)本発明の第四の態様は、上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の成形品の製造方法であって、上型、下型、ならびに鉛直方向および水平方向に移動可能な移動型を含むプレス装置を用いて行われ、前記下型は、パンチ型と、前記パンチ型を挟むように配置されかつ少なくとも鉛直方向に移動可能な可動プレートを含み、(Ia)前記上型および前記移動型と前記下型との間に、前記挟み込み部となる挟み込み部相当部を有する素材金属板を配置する工程と、(Ib)前記移動型を前記可動プレートと共に下降させかつ前記パンチ型に向かって移動させることによって、前記素材金属板の端部を前記パンチ型に接近させて変形金属板を得る工程と、(IIa)前記移動型を前記パンチ型に向かってさらに移動させることによって、前記変形金属板の一部を前記移動型と前記パンチ型の側面部とによって拘束する工程と、(IIb)前記上型を下降させることによって、前記変形金属板の一部を前記上型と前記パンチ型とによって拘束する工程と、を含み、前記上型と前記移動型との間で、前記変形金属板の一部を重ね合わせることによって前記挟み込み部相当部を挟み込み、前記突出部を形成する成形品の製造方法である。
(14)上記(13)に記載の成形品の製造方法では、前記素材金属板の極限変形能である|εt|、前記重ね合わせ部を形成する前記金属板の板厚であるt、及び、前記挟み込み部の板厚であるtaが下記(式3)を満たし、前記重ね合わせ部を形成する前記金属板の一様伸びが5%超であってもよい。
|εt|>ln((2t+ta)/(t+ta)) ...(式3)
(15)上記(13)又は(14)に記載の成形品の製造方法では、冷間プレスにより行われてもよい。
具体的には、高強度の金属板から形成され、2つの縦壁部と天板部とを有し、縦壁部と天板部との間に、外側を向く突出部が設けられた成形品とすることで、高強度かつ三点曲げ試験における優れた特性が得られることを見出した。
なお、以下の説明では本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明が以下に説明する例に限定されないことは自明である。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。以下の説明では、成形品を「プレス成形品」と称して説明する場合がある。
以下に、本発明の第一実施形態に係る成形品について説明する。
本実施形態に係る成形品は、鋼板で形成された、縦壁部と、突出部と、突出部を介して縦壁部に隣接する天板部と、を含む、長尺の成形品であって、突出部において、天板部から延びる鋼板の一部と縦壁部から延びる鋼板の一部とが重なり合う重ね合わせ部と、重ね合わせ部を形成する鋼板の間に挟まれた挟み込み部と、重ね合わせ部を形成する鋼板が折り曲げられた先端部と、を有する。
また、天板部側を成形品の上方と称し、フランジ部側を成形品の下方と称する場合がある。
鋼板101としては、TRIP鋼板、複合組織鋼板、ホットスタンプ用鋼板、析出強化鋼板等を用いることができる。
金属板として鋼板101を用いる場合、成形前の鋼板(ブランク)の引張強度は、590MPa以上であってもよく、780MPa以上であってもよく、980MPa以上であってもよく、または1200MPa以上であってもよい。成形品の引張強度の上限は特に限定されるものではないが、たとえば2500MPaである。
尚、後述する実施形態に係る製造方法の第2工程をホットスタンピングによって行う場合、プレス成形品の引張強度を、材料である鋼板(ブランク)の引張強度よりも高くすることができる。
尚、ビッカース硬さは、板断面を鏡面に研磨し板厚の1/4位置において1kgfの荷重で室温で5点ずつ測定し、その平均値を求めた値である。
より具体的には、突出部を構成する鋼板の部位におけるビッカース硬さの最大値は、突出部を構成する鋼板の部位におけるビッカース硬さの最低値の1.1倍以上であることが好ましい。換言すれば、突出部を構成する鋼板の部位における最大硬さAと、突出部を構成する鋼板の部位における最低硬さBとの比であるA/Bの値が1.1以上であることが衝突特性を高める観点から好ましい。
A/Bの値が1.1以上である構成は、後述する製造方法の第2工程で冷間プレスを採用する場合により得ることができる。
縦壁部111、天板部112、およびフランジ部113はそれぞれ長尺かつ平板状である。天板部112は、2つの突出部115を介して、天板部112に隣接する2つの縦壁部111を結んでいる。
成形品100の引張強度は好ましくは780MPa以上であり、より好ましくは980MPa以上である。成形品100の引張強度は、縦壁部における平坦な部位から試験片を採取し、JIS Z 2241:2011に沿って引張試験を行うことにより求められる引張強度である。
尚、成形品100は、フランジ部113が切断されることにより、フランジ部113を含まない形状とされてもよい。すなわち、天板部112と縦壁部111と突出部115から構成される成形品とされてもよい。
重ね合わせ部115dでは、天板部112から延びる部位101a(天板部112から延びる鋼板の一部)と縦壁部111から延びる部位101b(縦壁部111から延びる鋼板の一部)とが、挟み込み部116を介して重ね合わされている。突出部は、2つの境界部のそれぞれから突出させてもよく、片方の境界部から突出させてもよい。
挟み込み部116としては、樹脂、木材、金属材料、セラミック材料、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)などが採用できる。成形品の衝突特性を確保するという観点からは、挟み込み部の材料は硬い材料であることが好ましい。
あるいは、製造コストを抑制しつつ、成形品の衝突特性を確保するという観点からは、挟み込み部の材料は天板部や縦板部と同じ材料であることが好ましい。
突出部115を除いた成形品100の断面(長手方向に垂直な断面)は、略ハット状である。
図1および図2には、角度Xが180°の場合を示す。この場合、天板部112と突出部115とは平行である。角度Xが180°である場合の好ましい一例では、天板部112から延びる部位101aと天板部112との間に段差がない。
角度Xが180°でかつ天板部112の表面と突出部115の表面とが面一となることによって、天板部112側を他の部材に固定しやすくなる場合がある。また、天板部112側から荷重が加えられたときに、天板部112および突出部115の全体で荷重を支えやすくなる。
突出部が、2つの境界部のそれぞれから突出する場合、2つの突出部における角度Xは、両者の差が10°以内であることが好ましく、同じであってもよい。2つの突出部は、好ましくは、長手方向に垂直な断面におけるそれらの形状が線対称となるように形成される。
この長さDは、3mm以上であればよく、好ましくは5mm以上、10mm以上、または15mm以上である。長さDの上限に特に限定はないが、たとえば25mm以下であってもよい。
成形品が2つの突出部を含む場合、2つの突出部の長さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
なお、図3の例では、角度Xが180°であるため、天板部112と突出部115との間にコーナー部は存在しない。また、コーナー部が設けられずに、縦壁部111と部位101b、あるいは、天板部112と部位101aとが所定の角度を有して接続されていてもよい。
内壁面115tiの形状は、成形品100の長手方向に垂直な断面において、半円形状、半楕円形状、三角形状など、種々の態様をとることができる。
すなわち、この点から、所定の位置までの距離を距離L又は長さL0として定義する。
内壁面115tiの形状は、成形品100の長手方向に垂直な断面において、半円形上、半楕円形状、三角形状など、種々の態様をとることができる。
角度Yは、90°以下であってもよい。2つの角度Yは、異なっていてもよいが、ほぼ同じ(両者の差が10°以内)であることが好ましく、同じであってもよい。
たとえば、角度Xが180°より小さい場合、突出部115の部位101aと天板部112との境界のコーナー部が曲面であってもよい。
挟み込み部116が縦壁部111に沿って延長されていることで、天板部112の板面に略垂直な方向から衝撃が加わったとき、縦壁部111の成形品100の内側方向への変形を抑制して、自動車の構造部材として用いたときの衝突安全性能をより向上させることができる。
挟み込み部116が天板部112に沿って延長されていることで、天板部112の板面に平行な面の剛性を高めることができ、自動車の構造部材として用いたときの衝突安全性能をより向上させることができる。
たとえば、成形品100の長手方向の中央位置にのみ挟み込み部116が設けられていてもよく、成形品100の長手方向の両端部近傍にのみ挟み込み部116が設けられていてもよい。
重ね合わせ部を形成する鋼板の板厚tは、重ね合わせ部115dの長さL0の中間位置における5点平均の測定板厚である。挟み込み部の板厚taは、重ね合わせ部に挟まれた挟み込み部における5点平均の測定板厚である。
0≦L≦L0 ...(式1)
0≦L≦5ta ...(式2)
なお、挟み込み部の端部は、その形状が加工され、成形品の長手方向に垂直な断面において、半円形上、半楕円形状、三角形状など、種々の態様をとることができ、これにより距離Lを0とすることができる。
挟み込み部116と重ね合わせ部115dとは、全面が密着していることが好ましいが、上述のような接合手段により固定されていない部分については、挟み込み部と重ね合わせ部との間に空間があってもよい。
このように構成することで、プレス成形品を他の部材と組み合わせて構造部材とした場合に、他の部材が形状の制約を受けることなく、かつ所望の衝突安全性能を得ることができる。
尚、成形品には、縦壁部および天板部に凹部や凸部が形成されていてもよい。一例として、図8に示す成形品では、天板部に凹部が形成されている。
ここで、鋼板部材とは、鋼板で形成された部材である。以下の実施形態で説明する構造部材は、上述した実施形態のプレス成形品を含む。なお、以下で説明する自動車用の構造部材は、自動車以外の製品の構造部材として用いることが可能である。
すなわち、上記実施形態に記載の成形品と、成形品に固定された鋼板部材とを含み、成形品の長手方向に垂直な面を断面視した場合、成形品と鋼板部材とが閉断面を構成する構造部材としてもよい。
以下、本発明の第二実施形態に係る成形品の製造方法について説明する。本実施形態に係る成形品の製造方法は、上述した第1実施形態の成形品を製造するための方法であって、第1工程および第2工程を異なる装置または金型によって実施する成形品の製造方法である。
上述した第1実施形態の成形品について説明した事項は以下に説明する製造方法に適用できるため、重複する説明を省略する場合がある。また、以下の製造方法について説明した事項は、上述した第1実施形態の成形品に適用できることも自明である。
第2工程は、変形鋼板をプレス成形することによって、プレス成形品を形成する工程である。第2工程において、突出部相当部の少なくとも一部を、挟み込み部となる挟み込み部相当部を挟んで重ね合わせることによって突出部を形成する。
変形鋼板は、荷重を除いたときに変形が解消される弾性変形の状態にあってもよいし、荷重を除いても変形が解消されない塑性変形の状態にあってもよい。すなわち、変形鋼板は、塑性変形の状態または弾性変形の状態にあってもよい。塑性変形の状態にある変形鋼板を、以下では「予備成形品」と称する場合がある。
第2工程によって得られた(またはその後の後処理によって得られた)成形品は、そのまま用いられてもよいし、他の部材と組み合わせて用いられてもよい。
ブランクの厚さおよび物性は、プレス成形品に求められる特性に応じて選択される。
たとえば、プレス成形品が自動車用の構造部材である場合には、それに応じたブランクが選択される。ブランクの厚さは、たとえば0.4mmから4.0mmの範囲にあってもよく、0.8mmから2.0mmの範囲にあってもよい。上述の実施形態の成形品の肉厚は、ブランクの厚さと加工工程とによって決まり、ここで例示したブランクの厚さの範囲にあってもよい。
|εt|>ln((2t+ta)/(t+ta)) ...(式3)
この(式3)は、密着曲げ部の曲げ外表層のひずみを低減させることに着目して見いだされた式であり、これを満たすことにより、密着曲げ部のひずみを低減させることができる。
ここで、理想状態で、曲げ部垂直断面をU字状の二重半円形状とみなした場合、その半円の外周部の長さは、π(t+ta/2)で表せる。またその二重半円の板厚中心部の長さは、その曲げ部となる曲げる前の素材長さとみなすことができ、その長さは、π(t/2+ta/2)と表せる。すると、それらの比が密着曲げ部のひずみと考えることができ、真ひずみとして(式3)が得られる。(式3)は、理想状態での式であるが、現実に生じるひずみ状態はこの式で近似できる。
|εt|=ln(t1/t0) ...(式A)
すなわち、図9Aに示したように、素材から板厚はそのままで、縦2:横1の矩形材料(例えば、縦200mm:横100mm)を採取し、中央部に曲率半径が横幅と同じである切り欠き(cutout)を横幅の10%(横100mmの場合、10mm)まで入れる。試験片寸法精度は±0.05mmとする。この切り欠きを両側に付与した形状の材料を試験片1000として用いる。
また、図9Bに示すように、ダイ3001、ホルダ3002、及び球頭パンチ3003を備える球頭張出し試験金型3000を準備する。球頭パンチ3003は、その直径が試験片1000の前記横幅の長さと同一(±0.05mm)である球頭パンチを用いる。ダイ3001及びホルダ3002と、パンチ3003との間のクリアランスは2mmとする。
材料が流入しない程度に大きいしわ押さえ力を付与するようにダイ3001とホルダ3002とにより試験片1000の一部を挟み込み、球頭張出し試験(ISO 12004−2:2008)によって破断させる。尚、試験片1000とパンチ3003との間には、厚さ0.1mmのテフロン(登録商標)シート2000を配置して試験片1000と−パンチ3003との間の摩擦係数を極力低減させる。ISO 12004−2:2008における平面ひずみ条件で試験することを優先させるが、成形品からISO 12004−2:2008に準拠した試験片1000を採取できない場合には、平面ひずみ状態において破断させる方法として、ISO 12004−2:2008における平面ひずみ条件に対して、板厚を除く形状を相似形で縮小した寸法の球頭パンチと試験片で試験を実施してもよい。本試験後の、破断部の板厚を球頭マイクロメータで5箇所測定し平均値を求める。
ブランクの引張強度の上限に限定はなく、一例では2500MPa以下である。
引張強度が590MPa未満のブランクを用いる場合でも、第2工程をホットスタンピングによって行ってもよい。ホットスタンピングを行う場合、それに適した公知の組成を有するブランクを用いてもよい。
成形後の鋼板の引張強度が1200MPa未満となる場合でも、第2工程をホットスタンピングによって行ってもよい。
また、焼き入れ後の引張強度1500MPa以上となるブランクの代表的な化学組成は、特に限定されないが、C:0.19〜0.23質量%、Si:0.18〜0.22質量%、Mn:1.1〜1.5質量%、Al:0.02〜0.04質量%、Ti:0.015〜0.030質量%、B:0.0010〜0.0020質量%であることが好ましく、例えば、C:0.20質量%、Si:0.20質量%、Mn:1.3質量%、Al:0.03質量%、Ti:0.020質量%、B:0.0015質量%である。
被加工物の急冷は、金型を冷却したり、金型から被加工物に向けて水を噴出させたりすることによって実施できる。プレス装置によって被加工物を急冷するときの冷却速度は、たとえば、30℃/s以上が好ましい。
第2工程においては、(a)天板部相当部を上型と下型によってプレスする工程と、(b)2つの縦壁部相当部を、下型と2つのカム型とによってプレスする工程と、を含む。
工程(a)および工程(b)の完了のタイミングが異なる第1から第3の例について以下に説明する。
なお、工程(a)が完了した後に工程(b)を完了させる限り、工程(a)が完了する前に工程(b)におけるカム型の移動を開始してもよい。
なお、工程(b)が完了した後に工程(a)を完了させる限り、工程(b)が完了する前に工程(a)におけるプレス型の移動を開始してもよい。
図11に示すように、素材鋼板600は、挟み込み部相当部602、縦壁部相当部603、天板部相当部604、突出部相当部605を有する。
図12に示すように、予備成形品610は、U字状部611aと、フランジ部113となる平坦部611b(フランジ部相当部)とを含む。U字状部611aは、2つの縦壁部相当部603および天板部相当部604を含み、さらに、突出部相当部605を含む。
予備成形品610では、天板部相当部604に対して2つの縦壁部相当部603が同じ方向に曲がっている状態にある。すなわち、2つの縦壁部相当部603は共に、天板部相当部604の一方の主面側に曲がっている。
予備成形品610の断面は、略ハット状である。また、U字状部611aの断面は、略U字状である。予備成形品610は塑性変形しており、荷重が加わっていない状態において、図12の形状を維持する。
U字状部611aの長さ(断面長さ)をLuとする。さらに、成形品において、縦壁部の高さをHbとし、2つの縦壁部間の幅をWbとする。U字状部611aは、縦壁部相当部603および天板部相当部604に加えて、第2工程によって突出部115となる突出部相当部605を含む。そのため、長さLu、幅Wb、および高さHbは、Wb+2Hb<Luの関係を満たす。
さらに、U字状部611aの幅をWaとし高さをHaとする。通常、Wb≦Waの関係とWb+2Hb<Wa+2Haの関係とが満たされる。
なお、図12に示す予備成形品610のU字状部611aでは、突出部相当部605と他の部分との間には明確な境界がない。
予備成形品610の平坦部611bの端部は下方(天板部112から離れる方向)に下がっていてもよい。
図17から図20に示すように、平坦部611bの端部が下がっている予備成形品610でも同様に成形が可能である。
次に、予備成形品610をプレス装置40aによってプレス加工する。プレス加工に用いられるプレス型の構成の一例を図13等に示す。プレス装置40aは、プレス型10、プレート13、伸縮機構14、カム押圧型15、およびカム型(スライド型)21を含む。
カム押圧型15およびカム型21はそれぞれ、カム機構として働く傾斜面15aおよび21aを有する。カム押圧型15は、伸縮可能な伸縮機構14を介してプレート13に固定されている。伸縮機構には、バネおよび油圧シリンダ等の公知の伸縮機構を用いることができる。
よく知られているように、カム型21の移動のタイミングは、傾斜面15aおよび21aの位置および形状を変化させることによって調整できる。すなわち、それらの調整によって、上述した工程(a)の完了および工程(b)の完了のタイミングを調整できる。
この実施形態では、上型11とカム押圧型15とがプレート13を介してプレス機の同じスライドに取り付けられている一例について例示している。しかし、上型11とカム押圧型15とをプレス機の別々のスライドに取り付け、それらを個別に動作させてもよい。
また、この実施形態では、カム押圧型15が押し当てられることによってカム型21が移動する一例について例示している。しかし、カム型21に直接取り付けた駆動装置によって、カム型21を独立して移動させてもよい。
プレス型10およびカム型21は、冷却機能を有してもよい。たとえば、ホットスタンプ成形を採用する場合、プレス型10およびカム型21は、それらの内部を冷却水が循環するように構成されてもよい。冷却された金型を用いてプレスを行うことによって、加熱された予備成形品610が成形および冷却される。その結果、プレス成形と焼入れとが行われる。
なお、金型から水を噴出させることによって冷却を行ってもよい。
ここで、第2工程をホットスタンピングによって行う場合、上型11と下型12との間に予備成形品610を配置する際に、変形鋼板610のU字状部611a(挟み込み部相当部602、縦壁部相当部603、天板部相当部604、突出部相当部605を含む領域)、が下型12の凸部12aと接した状態であると、変形鋼板610において下型12の凸部12aと接している個所は下型12によって冷却される。
この場合、プレス成形時に、ホットプレスに必要な鋼板温度を維持できなくなる。このため、プレス成形品に割れやしわが生じる虞があり、所望の強度を得ることができなくなる。また、焼入れに必要な冷却速度を得ることができず。所望の強度を得ることができなくなる。特に、変形鋼板610の突出部115となる部分(突出部相当部605)とその近傍においては、割れやしわが生じやすいため、下型12の凸部12aと接しない状態で、変形鋼板610を配置することが重要である。
以上のようにして、プレス成形が完了する。突出部相当部605は、上型11とカム型21との間で折り重ねられて、重ね合わせ部115dを有する突出部115となる。そして、重ね合わせ部115dの間には、挟み込み部116が挟まれる。このようにして、成形品100が得られる。
一方、突出部では、鋼板の片面(プレス成形品の外側)からしか冷却されないため、冷却速度が低下して所望の引張強度が得られない場合がある。そのため、プレス成形品の突出部の角度Xが135°から180°の範囲にある場合には、カム型21で縦壁部を成形した後に上型11で天板部を成形することが好ましい。
図13から図16に示すように、平坦部611bの端部が下方に曲がっていなくてもよい。すなわち、本実施形態の製造方法において、予備成形品のうちフランジ部となる部分の端部が、下方に曲がっていてもよいし、曲がっていなくてもよい。フランジ部となる部分の端部が下方に曲がっている場合、それに対応する凹部が下型に形成されていてもよい。
以上のようにしてプレス成形が完了し、成形品100が得られる。
第2工程で得られた成形品100は、必要に応じて後処理がなされる。得られた成形品は、必要に応じて他の部品と組み合わされて用いられる。
以下、本発明の第三実施形態に係る成形品の製造方法について説明する。本実施形態に係る成形品の製造方法は、上述した第一実施形態に係る成形品を製造するための方法であって、1つの装置によって第1工程および第2工程を実施することが可能である点で上述の第二実施形態に係る製造方法と異なる。
当該下型は、パンチ型と、パンチ型を挟むように配置されかつ少なくとも鉛直方向に移動可能な2つの可動プレートを含む。そして、第1工程は、以下の工程(Ia)および工程(Ib)をこの順に含み、第2工程は、以下の工程(IIa)および工程(IIb)をこの順に含む。
ここで、移動型の移動可能な方向として、鉛直方向および水平方向とは、単なる鉛直方向の一方向および単なる水平方向の一方向のみならず、鉛直方向および水平方向の両方向が重なった斜めの方向を含んでもよい。
素材鋼板としては、図10又は図11に示す素材鋼板600を用いる。図10又は図11に示す素材鋼板600を変形させることで、上述の第1実施形態の成形品を得ることができる。
なお、ホットスタンプ成形を採用する場合には、第1工程の前に素材鋼板を加熱する工程を含み、工程(Ia)では、上型および2つの移動型と、下型との間に、パンチ型と素材鋼板が接しない状態で、素材鋼板を配置する。
あるいは、工程(Ib)は、2つの移動型を2つの可動プレートと共に下降させかつ、2つの移動型をパンチ型に向かって移動させることによって、素材鋼板の端部をパンチ型に接近させて変形鋼板を得る工程である。
なお、ホットスタンプ成形を採用する場合には、工程(IIa)では、パンチ型の上面部と変形鋼板が接しない状態を維持したままで、2つの縦壁部相当部を2つの移動型とパンチ型の側面部とによって拘束する。
プレス型の他方には、ピンが通る貫通孔が形成される。貫通孔は、一般的にブランクの段階で形成されるが、第2工程の前の他の段階で形成されてもよい。なお、第1工程においても、ピンを貫通孔に通すことによってブランクの移動を抑制してもよい。
ホットスタンピングによってプレス成形を行う場合には、第1工程の前に素材鋼板(ブランク)を加熱しておく必要がある。
素材鋼板B1は、中央に天板部相当部(図示せず)を有し、その両側に順に、突出部相当部(図示せず)、縦壁部相当部(図示せず)、およびフランジ部相当部(図示せず)を含む。また、素材鋼板B1は、挟み込み部相当部602を有する。
素材鋼板B1としては、図10又は図11に示す素材鋼板600を用いることができる。図10又は図11に示す素材鋼板600を変形させることで、上述の第1実施形態の成形品を得ることができる。
このとき、2つの移動型51と可動プレート64との間に2つのフランジ部相当部を挟み込んだ状態である。
第2工程の一例を以下に説明する。
このとき、移動型51の移動に伴って、2つのフランジ部相当部(フランジ部)は、可動プレート64上からパンチ型61上に移動する。
図25に示すように、パンチ型61は、フランジ部に対応する形状を有する部分(段差部)を含む。工程(IIa)の際には、当該部分と可動プレート64とを、ほぼ面一とする。工程(IIa)において、フランジ部相当部は、移動型51と可動プレート64との間に配置された状態から、移動型51とパンチ型61との間に配置された状態に移行する。
フランジ部相当部を挟む両者の間の間隔は、フランジ部相当部の板厚に0.1から0.3mm程度プラスした長さであることが好ましい。このような構成によれば、水平方向へのなめらかな移動が可能になる。
これに対し、2つの移動型51を下降させて2つの移動型51と可動プレート64との間に2つのフランジ部相当部を挟み込み、その後に、2つの移動型51を斜めの方向に移動させることによって、2つの縦壁部相当部を2つの移動型51とパンチ型61とによって拘束してもよい(図25参照)。
本発明について、次の実施例によって、より詳細に説明する。
図33では、挟み板及び補強板の記載は省略している。
・角度Y:90°
・突出部の長さD:15mm
・縦壁部の高さHb1:60mm
・2つの突出部の先端部間の幅Wt1:80mm
・2つの縦壁部間の距離(天板部の幅)Wb1:50mm(80−2D)
・裏板の幅Wp1:90mm(120−2D)
・コーナー部RaおよびRbにおける曲率半径:5mm
・鋼板の板厚:1.4mm
・先端部を構成する鋼板の内壁面から挟み込み部までの距離:1mm
・挟み板の幅:10mm
・長手方向の長さ:1000mm
挟み板を設けた成形品Aと、補強板を設けた成形品Cは、長手方向における単位長さあたりの質量が同じになるように設計した。また、挟み板及び補強板は、40mmのピッチでスポット溶接して固定したと仮定した。
また、成形品Bの長手方向における単位長さあたりの質量は、成形品Aから挟み板を除いた場合の長手方向における単位長さあたりの質量と同じになるように設計した。
成形品A〜Cの材質は、挟み板及び補強板の材質も含め、いずれも同一であると仮定した。
更に、成形品Cでは、挟み板が両側から挟み込まれていることによる、挟み板が面外に座屈することが抑制される効果、更には、重ね合わせ部の先端部のRが大きいことによる変形抵抗の向上効果が相俟って、優れた最大荷重を発揮できたものと推察される。
100:プレス成形品
101:鋼板
101a、101b:鋼板の部位
111:縦壁部
112:天板部
114:境界部
114p:境界点
115:突出部
115d:重ね合わせ部
116:挟み込み部
Claims (15)
- 金属板で形成された、縦壁部と、突出部と、前記突出部を介して前記縦壁部に隣接する天板部と、
を含む、長尺の成形品であって、
前記突出部において、
前記天板部から延びる前記金属板の一部と前記縦壁部から延びる前記金属板の一部とが重なり合う重ね合わせ部と、
前記重ね合わせ部を形成する前記金属板の間に挟まれた挟み込み部と、
前記重ね合わせ部を形成する前記金属板が折り曲げられた先端部と、
を有し、前記重ね合わせ部を形成する前記金属板の板厚tが0.6mm以上4.5mm以下であり、且つ、前記挟み込み部の板厚taが0.6mm以上4.5mm以下である成形品。 - 前記成形品の長手方向に垂直な断面において、前記挟み込み部が、前記縦壁部又は前記天板部に沿って延長されている、
請求項1に記載の成形品。 - 前記成形品の長手方向に垂直な断面において、前記先端部の内壁面から前記挟み込み部までの距離をLとして、前記重ね合わせ部の長さをL0としたとき、下記(式1)を満たす、
請求項1又は2に記載の成形品。
0≦L≦L0 ...(式1) - 前記重ね合わせ部の一部と前記挟み込み部の一部とが溶接により接合されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の成形品。 - 前記成形品の長手方向において、前記突出部を有する突出領域と、前記突出部を有さない非突出領域とを備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の成形品。 - 前記先端部の内壁面から前記挟み込み部までの距離をLとして、前記挟み込み部の板厚をtaとしたとき、下記(式2)を満たす、
請求項1から5のいずれか一項に記載の成形品。
0≦L≦5ta ...(式2) - 前記突出部を構成する前記金属板の部位における最大硬さAと、前記突出部を構成する前記金属板の部位における最低硬さBとの比であるA/Bの値が1.1以上である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の成形品。 - 引張強度が780MPa以上である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の成形品。 - 請求項1から8のいずれか一項に記載の成形品と、前記成形品に固定された金属部材とを含み、
前記成形品の長手方向に垂直な断面において、前記成形品と前記金属部材とが閉断面を構成する、
構造部材。 - 請求項1から8のいずれか一項に記載の成形品の製造方法であって、
前記挟み込み部となる挟み込み部相当部を有する素材金属板を変形させることによって、
長尺形状を有し、
前記挟み込み部相当部、
前記縦壁部となる縦壁部相当部、
前記天板部となる天板部相当部、および
前記突出部となる突出部相当部、
を有する変形金属板を得る第1工程と、
前記変形金属板をさらに成形して前記成形品を形成する第2工程と、
を含み、
前記第2工程において、前記突出部相当部を重ね合わせかつ、前記突出部相当部によって前記挟み込み部相当部を挟み込み、前記突出部を形成する、
成形品の製造方法。 - 前記素材金属板の極限変形能である|εt|、前記重ね合わせ部を形成する前記金属板の板厚であるt、及び、前記挟み込み部の板厚であるtaが下記(式3)を満たし、
前記重ね合わせ部を形成する前記金属板の一様伸びが5%超である、
請求項10に記載の成形品の製造方法。
|εt|>ln((2t+ta)/(t+ta)) ...(式3) - 前記第2工程が冷間プレスにより行われる
請求項10又は11に記載の成形品の製造方法。 - 請求項1から8のいずれか一項に記載の成形品の製造方法であって、
上型、下型、ならびに鉛直方向および水平方向に移動可能な移動型を含むプレス装置を用いて行われ、
前記下型は、パンチ型と、前記パンチ型を挟むように配置されかつ少なくとも鉛直方向に移動可能な可動プレートを含み、
(Ia)前記上型および前記移動型と前記下型との間に、前記挟み込み部となる挟み込み部相当部を有する素材金属板を配置する工程と、
(Ib)前記移動型を前記可動プレートと共に下降させかつ前記パンチ型に向かって移動させることによって、前記素材金属板の端部を前記パンチ型に接近させて変形金属板を得る工程と、
(IIa)前記移動型を前記パンチ型に向かってさらに移動させることによって、前記変形金属板の一部を前記移動型と前記パンチ型の側面部とによって拘束する工程と、
(IIb)前記上型を下降させることによって、前記変形金属板の一部を前記上型と前記パンチ型とによって拘束する工程と、
を含み、
前記上型と前記移動型との間で、前記変形金属板の一部を重ね合わせることによって前記挟み込み部相当部を挟み込み、前記突出部を形成する
成形品の製造方法。 - 前記素材金属板の極限変形能である|εt|、前記重ね合わせ部を形成する前記金属板の板厚であるt、及び、前記挟み込み部の板厚であるtaが下記(式3)を満たし、
前記重ね合わせ部を形成する前記金属板の一様伸びが5%超である
請求項13に記載の成形品の製造方法。
|εt|>ln((2t+ta)/(t+ta)) ...(式3) - 冷間プレスにより行われる
請求項13又は14に記載の成形品の製造方法。
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