JP6755778B2 - PPARα活性化剤 - Google Patents
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Description
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor、本明細書において「PPAR」という)は核内受容体の1種である。PPARは、脂肪分解に関与する細胞内小器官であるペルオキシソームを増加させる作用を仲介するタンパク質として同定されている。そして、ペルオキシソーム増殖剤により活性化を受けるレセプターという意味で、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(以下、「PPARα」という)と名付けられた。その後、PPARαと構造上類似したアイソフォーム遺伝子として、δ型PPAR(PPARδ)及びγ型PPAR(PPARγ)が同定された。現在PPARは、合計3つのサブタイプを有することが知られている。
例えば、PPARの各サブタイプは、脂肪酸のβ酸化の鍵酵素として知られるアシル-CoAオキシダーゼ(Acyl-CoA oxidase)のPPREを用いたレポーターアッセイがなされている。PPARリガンドとして知られるリノール酸は、PPARα、PPARδ、PPARγのそれぞれを介して、アシル-CoAオキシダーゼの転写活性を亢進することが報告されている(非特許文献3参照)。
アトピー性皮膚炎のモデルマウスに対し、PPARαのアゴニストを塗布したところ、角質層水分量が増加し、バリア機能の改善が認められたとの報告がある(非特許文献4及び5参照)。また、ヒトにおいても、PPARαのアゴニストとして知られるクロフィブラートや、PPARαの活性化作用を示すサンフラワーオイルをアトピー性皮膚炎患者の皮膚に塗布すると、アトピー性皮膚炎の症状が改善したとの報告がある(非特許文献6及び7参照)。
これまでに、AMP活性化プロテインキナーゼ(「AMPK」ともいう)活性化作用を有する化合物が特許文献1に記載されている。また、筋ジストロフィーの治療に有用な化合物が特許文献2に記載されている。しかし、本発明で用いる後述の化合物がPPARαを活性化させることについて、何ら記載されていない。
また本発明は、前記PPARα活性化剤の効能を生かした、その投与の手段としてのアトピー性皮膚炎の予防又は改善剤の提供を課題とする。
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
また本発明のアトピー性皮膚炎の予防又は改善剤は、前記PPARα活性化剤の効能を生かし、アトピー性皮膚炎を予防又は改善することができる。
また、本明細書において「改善」とは、疾患、症状若しくは状態の好転、疾患、症状若しくは状態の悪化の防止若しくは遅延、又は疾患、症状若しくは状態の進行の逆転、防止若しくは遅延をいう。
さらに本明細書において「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。
ここで、前記化合物の慣用名やIUPAC名等を下記に示す。
N-{5-[2-(4-メトキシフェニル)エチル]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}-1-フェニルメタンスルホンアミド(N-{5-[2-(4-methoxyphenyl)ethyl]-1,3,4-thiaziazol-2-yl}-1-phenylmethanesulfonamide)
式(2)で表される化合物
6-[[2-(3,4-ジメチル-2-オキソクロメン-7-イル)オキシアセチル]アミノ]ヘキサン酸(6-[[2-(3,4-dimethyl-2-oxochromen-7-yl)oxyacetyl]amino]hexanoic acid)
また、前述のように、PPARαのアゴニストを皮膚に塗布することで、アトピー性皮膚炎の症状が改善することが知られている。したがって、PPARαのアゴニストとして作用する式(1)及び(2)で表される化合物はそれぞれ、アトピー性皮膚炎の予防又は改善するために使用することができる。
上記化合物の使用は、治療的使用(即ち医療行為)であっても非治療的使用(非医療的な行為)であってもよい。また、上記使用の対象は、ヒト、非ヒト動物、又はそれらに由来する検体であり得る。なお、前記「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処理行為を含まない概念である。
また、前述の有効成分をPPARα活性化剤、又はアトピー性皮膚炎の予防若しくは改善剤の製造のために使用することができる。
その他の化粧料組成物に配合可能な成分としては、例えば、防腐剤、消炎剤、美白剤、各種抽出物、賦活剤、血行促進剤、抗脂漏剤、抗炎症剤及び殺菌剤等が挙げられる。
皮膚外用組成物の形態で使用する場合、前記有効成分の他に、通常の皮膚外用組成物に用いられる成分、例えば界面活性剤、油性物質、高分子化合物、防腐剤、各種の薬効成分、紛体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等を適宜配合できる。
例えば、本発明のPPARα活性化剤、並びにアトピー性皮膚炎の予防若しくは改善剤の総量中、前記有効成分の含有量は0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましい。またその上限値は、50質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。あるいは、有効成分の含有量は、0.0001〜50質量%が好ましく、0.001〜10質量%がより好ましく、0.01〜1質量%がさらに好ましい。
なお前記有効成分は、1日1回〜数回に分け、又は任意の期間及び間隔で摂取・投与され得る。また、前記有効成分の投与又は摂取は、全身への投与又は摂取でもよいし、局所への投与又は摂取でもよい。
<2>PPARαを活性化することでアトピー性皮膚炎を予防又は改善する、前記<1>項に記載のアトピー性皮膚炎の予防又は改善剤。
<3>前記PPARαの活性化剤、又はアトピー性皮膚炎の予防若しくは改善剤の総量中、前記有効成分の含有量が、0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、であり、50質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下、である、前記<1>又は<2>項に記載のPPARαの活性化剤、又はアトピー性皮膚炎の予防若しくは改善剤。
<5>PPARαの活性化剤、又はアトピー性皮膚炎の予防若しくは改善剤の製造のための、式(1)で表される化合物、並びに式(2)で表される化合物若しくはその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、好ましくは式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、の使用。
<6>式(1)で表される化合物、並びに式(2)で表される化合物若しくはその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、好ましくは式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、を、PPARαの活性化剤、又はアトピー性皮膚炎の予防若しくは改善剤として使用する方法。
<7>式(1)で表される化合物、並びに式(2)で表される化合物若しくはその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、好ましくは式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、を適用する、PPARαの活性化方法、又はアトピー性皮膚炎の予防若しくは改善方法。
<8>PPARαを活性化することでアトピー性皮膚炎を予防又は改善する、前記<4>〜<7>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<9>前記化合物を、PPARαを活性化させること、又はアトピー性皮膚炎の予防若しくは改善を所望するヒトに適用する、前記<4>〜<8>のいずれか1項に記載の方法。
<10>アトピー性皮膚炎の発症が惹起された条件下で適用する、前記<4>〜<9>のいずれか1項に記載の方法。
<11>前記化合物をアトピー性皮膚炎が発症している皮膚、又はアトピー性皮膚炎が発症しやすい皮膚に適用する、前記<4>〜<10>のいずれか1項に記載の方法。
<12>前記PPARαの活性化剤、又はアトピー性皮膚炎の予防若しくは改善剤の総量中、前記化合物の含有量が、0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、であり、50質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下、である、前記<4>〜<11>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<13>前記化合物の投与又は摂取量が、1日あたり、体重1kgあたり、0.00001mg以上、好ましくは0.0001mg以上、であり、10mg以下、好ましくは1mg以下、である、前記<4>〜<12>のいずれか1項に記載の使用又は方法。
<15>PPARαの活性化薬、又はアトピー性皮膚炎の予防若しくは改善薬の製造のための、式(1)で表される化合物、並びに式(2)で表される化合物若しくはその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、好ましくは式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、の使用。
<16>PPARαの活性化、又はアトピー性皮膚炎の予防又は改善の非治療的な処置方法のために用いる、式(1)で表される化合物、並びに式(2)で表される化合物若しくはその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、好ましくは式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物、の使用。
<17>PPARαを活性化することでアトピー性皮膚炎を予防又は改善する、前記<14>〜<16>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<18>前記化合物を、PPARαを活性化させること、又はアトピー性皮膚炎の予防若しくは改善を所望するヒトに適用する、前記<14>〜<17>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<19>前記化合物をアトピー性皮膚炎の発症が惹起された条件下で適用する、前記<14>〜<18>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<20>前記化合物をアトピー性皮膚炎が発症している皮膚、又はアトピー性皮膚炎が発症しやすい皮膚に適用する、前記<14>〜<19>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<21>前記化合物を医薬組成物又は化粧料組成物の形態で適用する、前記<14>〜<20>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<22>前記化合物を皮膚外用組成物の形態で適用する、前記<21>項に記載の化合物又は使用。
<23>前記化合物を食品、飲料、又は飼料の形態で適用する、前記<14>〜<20>のいずれか1項に記載の化合物又は使用。
<24>前記化合物の含有量が、0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、であり、50質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下、である、前記<14>〜<23>のいずれか1項に記載の使用。
<25>前記化合物の投与又は摂取量が、1日あたり、体重1kgあたり、0.00001mg以上、好ましくは0.0001mg以上、であり、10mg以下、好ましくは1mg以下、である、前記<14>〜<24>のいずれか1項に記載の使用。
<27>PPARαを活性化することでアトピー性皮膚炎を予防又は改善する、前記<26>項に記載の方法。
<28>前記化合物を、PPARαを活性化させること、又はアトピー性皮膚炎の予防若しくは改善を所望するヒトに適用する、前記<26>又は<27>項に記載の方法。
<29>アトピー性皮膚炎の発症が惹起された条件下で適用する、前記<26>〜<28>のいずれか1項に記載の方法。
<30>前記化合物をアトピー性皮膚炎が発症している皮膚、又はアトピー性皮膚炎が発症しやすい皮膚に適用する、前記<26>〜<29>のいずれか1項に記載の方法。
<31>前記化合物の有効量が、1日あたり、体重1kgあたり、0.00001mg以上、好ましくは0.0001mg以上、であり、10mg以下、好ましくは1mg以下、である、前記<26>〜<30>のいずれか1項に記載の方法。
測定キットとして、EnBio RCAS for PPARα(商品名、藤倉化成社より入手)を使用した。
下記に示すように、各種試薬の調製を行った。
・Wash buffer
前記キットに含まれる10×Wash bufferを水で10倍希釈することにより調製した。
・CBP(+)溶液
前記キットに含まれるAssay bufferに、Assay bufferの1/100量のCBPを添加し調製した。
・CBP(−)溶液
前記キットに含まれるAssay bufferに、Assay bufferの1/100量のDMSOを添加し調製した。
・レセプター溶液の調製
前記キットに含まれるレセプターに、Assay bufferを添加し、キット中に記載の倍率に希釈し調製した。
・抗体溶液の調製
Wash bufferに1/100量の100×Detection Antibodyを添加し調製した。
・TMB基質の調製
前記キットに含まれるTMB substrateをそのまま使用した。
・反応停止液の調製
前記キットに含まれるStop solutionをそのまま使用した。
・最大反応測定溶液の調製
前記キットに含まれる陽性物質溶液をそのまま使用した。
下記に示す手順により、PPARα受容体に対する選択性評価試験を行った。
(1)各ウェルをWash buffer 300μLで3回洗浄した。
(2)CBP固相化ウェルにはCBP(+)溶液を、CBP非固相化ウェルにはCBP(−)溶液をそれぞれ100μL添加した。
(3)振とうしながらインキュベートした(25℃、1時間)。
(4)各ウェルをWash buffer300μLで3回洗浄した。
(5)レセプター溶液95μLを添加した。
(6)バックグラウンドウェルにはバックグラウンド溶液5μLを、100%結合ウェルには最大反応測定溶液5μLを、その他のウェルには被検物質溶液又は陽性物質溶液5μLを添加した。
(7)振とうしながらインキュベートした(25℃、1時間)。
(8)各ウェルをWash buffer 300μLで3回洗浄した。
(9)抗体溶液100μLを添加した。
(10)振とうしながらインキュベートした(25℃、30分間)。
(11)各ウェルをWash buffer 300μLで3回洗浄した。
(12)TMB基質100μLを添加した。
(13)静置したままインキュベートした(25℃、20分間)。
(14)反応停止液100μLを添加した。
(15)プレートリーダーで測定した(測定波長450nm)。
結合率=[(ΔODS-ΔODBG)/(ΔOD100-ΔODBG)]×100(%)
ΔODS:結合率測定ウェルの吸光度差
ΔOD100:100%結合ウェルの吸光度差
ΔODBG:バックグラウンドウェルの吸光度差
前記各ΔOD値は、CBP固相化ウェル(サンプルウェル)の吸光度からCBP非固相化ウェル(ブランクウェル)の吸光度を引いた値を使用した。
その結果を表1に示す。
クロフィブリン酸は、高脂血症薬として使用されている、公知のPPARαのアゴニストであるクロフィブラート(Clofibrate)が生体内での代謝により変換される化合物である。クロフィブラートの化学式も下記に示す。
生体内の反応においてPPARαは、そのアゴニストと結合すると、さらにコアクチベーターと結合可能になり転写を促す。前記キットの各ウェル内には、コアクチベーター(CBP)が固定化されている。そのため、被検物質がPPARαのアゴニストである場合、レセプターとリガンドの複合体がコアクチベーターに結合する。そこで、ウェル中に固定化されたPPARαを検出することで結合率を算出し、算出した結合率からPPARαのアゴニストとしての活性を評価することができる。
前述のように、式(1)及び(2)で表される化合物は、PPARαの公知アゴニスト(クロフィブラート)の代謝産物と同等又はそれ以上の結合率を有する。そのため、式(1)及び(2)で表される化合物は、公知のアゴニストと同等又はそれ以上の、PPARαのアゴニストとしての活性も有すると考えられる。
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