以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
システムの全体構成:
図1〜図17は測定システムの全体概要を説明するための図である。図1は、実施例の光学式三次元座標測定器CMIを含む三次元座標測定システムの斜視図である。光学式三次元座標測定器CMIは製造現場で作業者でも操作可能となるように設計されている。図1を参照して、光学式三次元座標測定器CMIは本体100とプローブ200と本体操作部300とを有し、プローブ200及び本体操作部300は有線又は無線により本体100に接続される。プローブ200は、オペレータが操作して測定位置を指定するのに用いられる。光学式三次元座標測定器CMIはパーソナルコンピュータPCに接続して使用される。パーソナルコンピュータPCにプリンタを接続して、測定結果などをプリントアウトできるようにしてもよい。
パーソナルコンピュータPC及び光学式三次元座標測定器CMIで構成される三次元座標測定システムの全体構成を図2に示す。図2を参照して、パーソナルコンピュータPCは、周知のように、記憶部2と、制御部(CPU)4と、キーボード、マウスなどの操作部6を備えている。
図1に戻って、本体100は、水平部102と、水平部102の一端から起立する起立部104とを有し、水平部102の他端部には、矩形のテーブル400が変位可能に搭載されている。また、水平部102と起立部104との合流部分に表示部500が傾斜した状態で配置されている。表示部500には、測定対象物の三次元座標測定に関連した情報が表示される。
水平部102において、起立部104の近傍つまりテーブル400と起立部104との間に、図1では作図上の理由から現れていないが、制御基板(図2、図9の参照符号106)が内蔵されている。制御基板106には、図示しないA/D変換器(アナログ/デジタル変換器)およびFIFO(First In First Out)メモリが実装される。
主撮像部(定置カメラ):
起立部104の上端には主撮像ユニット600が配設されている。主撮像ユニット600は起立部104と一体であってもよいが、好ましくは起立部104に対して脱着可能であるのがよい。主撮像ユニット600を脱着構造とすることで、主撮像ユニット600を取り外した状態で搬送することができる。したがって、主撮像ユニット600の校正のために、光学式三次元座標測定器CMIの全てを搬送する必要はない。主撮像ユニット600にメモリ(図示せず)を搭載するのがよい。このメモリに校正データを記憶させることができる。
主撮像ユニット600は、例えばCCD(電荷結合素子)カメラである。電子カメラの撮像素子は、後に説明するマーカが赤外線を発光する場合には、これに対応して赤外線を検出可能なCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサで構成するのがよい。主撮像ユニット600は、予め定められた撮像空間V(後述する図3)を撮像するように一定姿勢で起立部104に固定される。具体的には、定置した主撮像ユニット600は、カメラの光軸を下方に傾斜してテーブル400に向かうように位置決めされている(図3)。
表示部500は、例えば液晶ディスプレイパネルまたは有機ELパネルなどの平面ディスプレイにより構成されるのが望ましい。表示部500には、制御基板106(図2)による制御に基づいて、パーソナルコンピュータPCが生成した画像、光学式三次元座標測定器CMIの操作手順画面つまりナビゲーション画面、または測定の結果等が表示される。
プローブ: プローブ200を拡大して図示する図4を参照して、プローブ200は略T字状の外形形状を有する。すなわち、プローブ200は、オペレータが手で把持してプローブ200を操作する把持部202と、この把持部202の一端と交差して直線状に延びるマーカ設置部204とを有し、マーカ設置部204の長手方向中央部分に把持部202の一端が合流する形状を有する。プローブ200の外形形状を更に詳しく説明すると、把持部202は第1の方向D1に延び、そして、マーカ設置部204は第1の方向D1と交差する第2の方向D2に延びる。第1の方向D1と第2の方向D2とがなす角度を、把持部202とマーカ設置部204の前部分とがなす角度φと定義すると、角度φは鋭角であるのが好ましい。
図示のプローブ200には、把持部202の下端に接続された配線206を通じて電源が供給されるが、変形例として、プローブ200の中にバッテリを内蔵させてもよい。プローブ200は、作図上の理由から図示を省いたが、メモリが内蔵されている。このメモリにプローブ200の校正データが保存される。
プローブ200は接触式であり、マーカ設置部204の一端面にスタイラス208が取り付けられている。スタイラス208は、その先端に球状の接触子208aを有する。変形例として接触子208aは針状であってもよい。勿論、プローブ200は非接触式であってもよい。
説明を分かり易くするため、前後、上下という言葉を使う。この前後、上下という言葉は、プローブ200をオペレータが把持したときの状態で定義される。スタイラス208はマーカ設置部204の前端に位置している。そして、マーカ設置部204は前後に延びている。そして、把持部202はマーカ設置部204の長手方向中央部分から下方に延びている。
マーカ設置部204の前端面には副撮像部210が設置されている。副撮像部210は、例えばCCD(電荷結合素子)カメラで構成され、その光軸が前方に差し向けられている。副撮像部(プローブカメラ)210の解像度は、主撮像ユニット(定置カメラ)600の解像度よりも低くてもよい。副撮像部210は、スタイラス208の接触子208aとの位置関係が既知となる位置に配置される。副撮像部210の各画素から受光信号が制御基板106(図2)に出力される。
マーカ設置部204は上面204aを有する。上面204aは把持部202と対抗して位置している。オペレータがプローブ200を把持して計測作業を行うときに、上面204aを主撮像ユニット(定置カメラ)600に向けることができる。
マーカ設置部204の上面204aには複数の第1マーカ212が互いに間隔を隔てて配置されている。この第1マーカ212を「プローブマーカ」と呼ぶと、複数の第1プローブマーカ212の好ましい配置態様を図4に例示的に図示してある。
引き続き図4を参照して、前後に延びる上面204aは3つのブロックに分けて合計7つのプローブマーカ212が配設されている。第1のブロック220は上面204aの前端部に位置しており、第1ブロック220には3つのプローブマーカ212が配置されている。第2ブロック222は上面204aの中央部に位置しており、第2ブロック222には2つのプローブマーカ212が配置されている。第3ブロック224は上面の後端部に位置しており、第3ブロック224には2つのプローブマーカ212が配置されている。
マーカ設置部204の長手方向軸線に関し、図4の参照符号L1、L2、L3は各ブロック220、222、224の長手方向軸線を示す。第1ブロック220での3つのプローブマーカ212は、任意であるが正三角形の3つの頂点に夫々配置され、そして、上面204aの長手方向軸線L1に線対称に配置されている。第2ブロック222での2つのプローブマーカ212は、上面204aの長手方向軸線L2上に間隔を隔てて配置されている。第3ブロック224での2つのプローブマーカ212は、上面204aの長手方向軸線L3と直交するライン上に間隔を隔てて配置されている。
また、第1ブロック220の3つのプローブマーカ212が占める第1平面PL(1)と、第2ブロック222の2つのプローブマーカ212が占める第2平面PL(2)と、第3ブロック224の2つのプローブマーカ212が占める第3平面PL(3)とは互いに平行である。そして、第1平面PL(1)と第2平面PL(2)との間には第1の高低差がある。同様に、第2平面PL(2)と第3平面PL(3)との間にも第2の高低差がある。第1の高低差と第2の高低差とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、実施例のプローブ200では、図面から良く分かるように、第2ブロック222が最も外方に突出している。
上述したように、複数のプローブマーカ212を互いに間隔を隔てて配置することにより後述するプローブ200の向きの検出精度を向上することができる。また、複数のプローブマーカ212の間に高低差を設けることによりプローブ200の向きの検出精度を一層向上することができる。更に、複数のブロック220、222、224の各ブロックに複数のプローブマーカ212を配置し、また、複数のブロック220、222、224の各々のプローブでのプローブマーカ212の配置関係を異ならせることにより、プローブ200の向きの検出精度を更に向上することができる。
プローブマーカ212は再帰反射タイプであってもよいが、好ましくは自発光タイプであるのがよい。実施例では、プローブマーカ212は、光源として赤外LEDを採用した自発光タイプのマーカで構成されている。各プローブマーカ212から間欠的に、好ましくは定期的に波長860nmの赤外線が放出される。複数のプローブマーカ212から放出された赤外線は主撮像ユニット600により撮像される。
図5〜図7は、プローブ200の内部構造を説明するための図である。プローブ200は、その外形輪郭を形成するケースの中に保持部材230を有する。保持部材230は、吸湿性が低くかつ線膨張係数が小さい材料からなる。保持部材230の線膨張係数は、30×10−6/K以下であることが好ましい。保持部材230の材料として、例えばガラス、セラミックス、金属、合金またはガラスセラミックスが用いられる。特に、軽量でかつ低コストな石英ガラスが用いられることが好ましい。石英ガラスの線膨張係数は、0.5×10−6/Kである。
保持部材230は、第1ブロック220を規定する略三角形の第1窓230aと、第2ブロック222を規定する第2の窓230bと、第3ブロック224を規定する第3の窓230cとが形成されている。
第1窓230a、第2窓230b、第3窓230cに臨んで、夫々、第1〜第3のマーカ部材232a、232b、232cが位置し、また、その下に、第1〜第3の拡散板234a、234b、234cが位置し、また、その下に、第1〜第3の発光基板236a、236b、236cが位置している。
第1〜第3のマーカ部材232a、232b、232cは基本的には同じ構成を有していることから、これを総称してマーカ部材232と呼ぶと、図6はマーカ部材232の断面図である。マーカ部材232の一面(図6の上面)には、前述したプローブマーカ212に対応する円形の光透過領域CRが形成されている。
図6を参照して、マーカ部材232の主要な材料は、平らなガラス板からなる板状部材GPである。板状部材GPは、高い透光性を有する。板状部材GPの材料として、例えば石英ガラスまたはソーダガラスが用いられる。特に、線膨張係数が小さくかつ吸湿性が低い石英ガラスが、板状部材GPの材料として用いられることが好ましい。板状部材GPは、図5を参照して説明した保持部材230と同じ材料からなることが好ましい。また、板状部材GPの線膨張係数と保持部材230(図5)の線膨張係数との差が小さいほど温度補正が容易となるため好ましい。この実施例では、保持部材230および板状部材GPは共に石英ガラスで構成されている。
上述した光透過領域CRは、これを囲むようにして板状部材GPの一面に遮光性のマスクMKを印刷することにより形成されている。すなわち、光透過領域CRは遮光マスクMKによって規定されている。遮光マスクMKは、スパッタ法または蒸着法によって形成してもよい。マスクMKの材料として、ガラスに対する吸着性が高い(付着力が強い)金属材料を用いるのがよい。具体例として例えばクロムを挙げることができる。マスクMKを単一の遮光膜で構成してもよいし、複数の遮光膜を積層してマスクMKを形成してもよい。複数の遮光膜は同じ遮光材料で構成してもよいが、異なる遮光材料で構成するのがよい。すなわち、ガラスと吸着し易い第1の金属材料の遮光膜上に、さらに他の金属材料の遮光膜を積層することにより、膜強度が高い積層膜からなるマスクMKを形成するのが好ましい。また、エマルジョンインクまたは他の有機インク等を用いてマスクMKが形成されてもよい。
赤外光を透過する光透過領域CRの輪郭は上述した円形に限定されない。光透過領域CRの輪郭形状は任意である。光透過領域CRは例えば矢印の輪郭を有していてもよい。方向性を備えた形状を採用することで光透過領域CRの数を少なくすることができる。
板状部材GPの材料として平らなガラス板を採用した例を上述したが、領域CRが半球状の凸形状を有していてもよい。領域CRを半球状の凸形状にすることで、マーカの位置を特定する精度を高めることができる。
引き続き図6を参照して、前述した第1〜第3の拡散板234a、234b、234cは基本的には同じ構成を有していることから、これを総称して拡散板234と呼ぶ。図7は、保持部材230の部分断面図である。図7を参照して、拡散板234は板状部材GP(マーカ部材232)の下に配置される。拡散板234は光を拡散させつつ透過する機能を有し、例えば樹脂材料から作れている。拡散板234はマーカ部材232よりも大きな面積を有するのがよく、また、第1窓230a、第2窓230b、第3窓230cよりも大きな面積を有するのがよい。
上述した第1〜第3の発光基板236a、236b、236cは基本的には同じ構成を有していることから、これを総称して発光基板236と呼ぶ。発光基板236の上面には、複数の発光素子Lが実装される。拡散板234とオーバーラップして配置される発光基板236には、その全体に、複数の発光素子Lが略均一に配置される。この実施例では、各発光素子Lは赤外LED(発光ダイオード)で構成されている。発光素子Lの変形例として、他の波長の光を発するLEDが用いられてもよく、またはフィラメントであってもよい。
引き続き図7を参照して、発光基板236と拡散板234とは互いに離間して配置するのが好ましい。そして、この隙間Sの周囲壁を拡散反射シートRSで構成するのがよい。拡散反射シートRSは、光を拡散させつつ反射する機能を有する。拡散反射シートRSは接着剤により保持部材230に固着すればよい。変形例として、拡散反射シートRSの代わりに、ミラーシートであってもよい。
ステージユニット: テーブル400について図8〜図14を参照して詳しく説明する。テーブル400はステージ基台402によって支持されている。ステージ基台402は、本体100の水平部102の一部を構成する。ステージ基台402は、水平部102と一体構造であってもよいが、この実施例では、ステージ基台402は、水平部102の残部に対して脱着可能である。
テーブル400は、典型的には光学定盤で構成される。テーブル400上に、ワークピースつまり測定対象物WPが載置される。本例においては、テーブル400は略正方形状を有する。テーブル400には、互いに直交する2方向に等間隔で並ぶように複数のねじ穴Thが形成されている。これにより、上クランプ部材および固定ねじによりワークピースWPをテーブル400に固定することができる。
テーブル400にワークピースWPを固定する機構として、磁力、粘着などの方式を採用してもよい。すなわち、テーブル400を磁性体で構成してもよいし、テーブル400の上面に粘着性を付与してもよい。例えば、粘着性を有するプレートやシートをテーブル400の上に固定してもよい。
テーブル400は第2マーカ410を有する。テーブル400に第2マーカ410を組み込む構造を採用してもよいが、好ましくは、この実施例のように、単一のステージマーカユニット412で第2マーカ410を構成し、このステージマーカユニット412をテーブル400に対して脱着可能にするのがよい。以下、第2マーカ410を「ステージマーカ」と呼ぶ。
図8は、ステージ基台402と、これに組み付けたテーブル400とで構成されるステージユニットSYを示す。ステージ基台402は、この状態で、本体100の水平部102に連結される。図9を参照して、テーブル400にはステージマーカユニット412が脱着可能に取り付けられる。テーブル400には複数の位置決めピン414を有し、この複数の位置決めピン414に案内されてステージマーカユニット412が位置決めされ、そして、固定ネジ416を使ってテーブル400の所定位置に固定される。ステージマーカユニット412には、本体100を通じて電源が供給される。変形例として、ステージマーカユニット412を駆動するためのバッテリをマーカーユニット412に内蔵させてもよい。
図9を参照して、ステージマーカユニット412の個数及び配置位置は任意である。ステージマーカユニット412を複数、テーブル400に配置してもよいが、この実施例では、単一のステージマーカユニット412がテーブル400に脱着可能に設けられている。単一のステージマーカユニット412の配置に関し、最も好ましくは、矩形のテーブル400の最も主撮像ユニット600に近い部分にステージマーカユニット412を配置するのがよい。テーブル400は、主撮像ユニット600に近い第1の側縁400aと、遠い第2の側縁400bとを有している。単一のステージマーカユニット412は、テーブル400の第1の側縁400aの中央部分に配置するのが好ましい。
図示の光学式三次元座標測定器CMIは、オペレータが主撮像ユニット600と対抗する位置からアクセスするように設計されている。すなわち、オペレータは、本体100の起立部104と対抗して且つテーブル400の第2の側縁400bの側から光学式三次元座標測定器CMIにアクセスする。
ステージマーカユニットの詳細: 図10〜図13はステージマーカユニット412を示す。図10は、ステージマーカユニット412の斜視図である。図11は、ステージマーカユニット412の平面図である。図12は、ステージマーカユニット412の分解斜視図である。図13は、図11のXIIIーXIII線に沿った断面図である。
図11を参照して、ステージマーカユニット412は直線状に延びる細長い形状を有し、複数のステージマーカ410を有する。この複数のステージマーカ410の間に高低差を設けるのがよい。ステージマーカユニット412は、3つのブロック422a、422b、422cを有する。第1ブロック422aはステージマーカユニット412の一端部分に位置している。第2ブロック422bはステージマーカユニット412の中央部分に位置している。第3ブロック422cはステージマーカユニット412の他端部分に位置している。第1ブロック422a及び第3ブロック422cと第2ブロック422bとの間に高低差があるのがよい。
実施例では、中央部分に位置する第2ブロック422bが高く、第1、第3ブロック422a、422cが低い。勿論、これとは別に、中央部分に位置する第2ブロック422bが低く、第1、第3ブロック422a、422cが高くてもよい。好ましくは、第1、第3ブロック422a、422cは同じ高さを有するのがよいが、異なった高さを有していてもよい。。また、第1ブロック422aと第2ブロック422bとの間の第1距離と、第2ブロック422bと第2ブロック422cとの間の第2距離とは同じであるのがよい。これによりテーブル400を任意の方向に変位させたとしても、マーカ検出精度を一定に維持することができる。
第1〜第3ブロック422a、422b、422cは、夫々、単一のステージマーカ410を有していてもよいが、好ましくは、複数のステージマーカ410を有するのがよい。実施例では、第1〜第3ブロック422a、422b、422cは、夫々、2つのステージマーカ410を有しているが、第1〜第3ブロック422a、422b、422cが異なる数のステージマーカ410を有していてもよい。例えば、第1〜第3ブロック422a、422bが2つのステージマーカ410を有し、中央の第2ブロック422bが3つのステージマーカ410を有していてもよい。また、各ブロック422a、422b、422cに所属する複数のステージマーカ410は互いに同じ間隔で離間しているのがよい。
図11を参照して、第2ブロック422bの2つのステージマーカ410は、ステージマーカユニット412の長手方向軸線L0上に第1の間隔を隔てて配置されている。第1ブロック422aの2つのステージマーカ410は長手方向軸線L0と交差する軸線L4上に第2の間隔を隔てて配置されている。また、第3ブロック422cの2つのステージマーカ410は長手方向軸線L3と交差する軸線L5上に第3の間隔を隔てて配置されている。隣接する2つのブロック422a、422b又は422b、422cにおいて、一方のブロック422a又は422cのステージマーカ410の第1の配列方向と、他方のブロック422bのステージマーカ410の第2の配列方向とが異なっている。好ましくは、第1〜第3の間隔は等しい。また、図11を見たときに、ステージマーカ410は左右非対称であるのが好ましい。
上述したように、第1ブロック422a及び第3ブロック422cと第2ブロック422bとの間に高低差があるのがよい。すなわち、図11を参照して、第1ブロック422aに属する2つのステージマーカ410が占める第1平面PL(4)と、第2ブロック422bに属する2つのステージマーカ410が占める第2平面PL(5)と、第3ブロック422cに属する2つのステージマーカ410が占める第3平面PL(6)とは互いに平行である。そして、第1平面PL(4)と第2平面PL(5)との間には第1の高低差がある。同様に、第2平面PL(5)と第3平面PL(6)との間にも第2の高低差がある。第1の高低差と第2の高低差とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ステージマーカ410は、前述したプローブマーカ212と同様に、再帰反射タイプであってもよいが、好ましくは自発光タイプであるのがよい。実施例では、ステージマーカ410は、光源として赤外LEDを採用した自発光タイプのマーカで構成されている。各ステージマーカ410から定期的に波長860nmの赤外線が放出される。ステージマーカユニット412をテーブル400に組み込むことにより、各ステージマーカ410は主撮像ユニット600に指向される。複数のステージマーカ410から放出された赤外線は主撮像ユニット600により撮像される。
ステージマーカユニット412のケースCAは、前述したプローブ200の保持部材230(図5)と基本設計は共通である。また、ステージマーカユニット412の内部構造(図5〜図7)は、プローブ200の保持部材230の内部構造と基本設計は共通である。したがって、プローブ200と共通する要素には同じ符号を使ってステージマーカユニット412を説明する。
図12を参照して、ステージマーカユニット412のケースCAは、プローブ200の保持部材230(図5)と同様に、吸湿性が低くかつ線膨張係数が小さい材料からなるのがよい。したがって、ステージマーカユニット412のケースCAに関して、前述した保持部材230の説明を参照されたい。勿論、ケースCAの材料は、例えばガラス、セラミックス、金属、合金またはガラスセラミックスであってもよい。実施例では、ステージマーカユニット412のケースCAは石英ガラスが用いられる。
ケースCAには、第1ブロック422aを規定する長円状の第1窓430aと、第2ブロック422bを規定する長円状の第2窓430bと、第3ブロック422cを規定する第3窓430cとが形成されている。
第1窓430a、第2窓430b、第3窓430cに臨んで、夫々、第1〜第3のマーカ部材432a、432b、432cが位置し、また、その下に、第1〜第3の拡散板434a、434b、434cが位置し、また、その下に、第1〜第3の発光基板436a、436b、436cが位置している。
第1〜第3のマーカ部材432a、432b、432cの一面(図13の上面)には、ステージマーカ410に対応する円形の光透過領域CRが形成されている。第1〜第3のマーカ部材432a、432b、432cは基本的には同じ構成を有していることから、これを総称してマーカ部材432と呼ぶ。
図13を参照して、マーカ部材432は、プローブ200のマーカ部材232(図6)と同じであり、主要な材料は、平らなガラス板からなる板状部材GPである。したがって、ステージマーカ410のマーカ部材432は、プローブ200のマーカ部材232(図6)と同じ構成を有していると理解されたい。具体的には、板状部材GPは高い透光性を有する。板状部材GPの材料として、例えば石英ガラスまたはソーダガラスが用いられる実施例では、線膨張係数が小さくかつ吸湿性が低い石英ガラスが採用されている。板状部材GPは、また、ケースCAと同じ材料からなることが好ましい。実施例では、ケースCAおよび板状部材GPは共に石英ガラスで構成されている。
上述した光透過領域CRは、これを囲むようにして板状部材GPの一面に遮光性のマスクMKを印刷することにより形成されている。遮光マスクMKについても、プローブ200のマーカ部材232(図6)と同じであると理解されたい。マスクMKの材料として、ガラスに対する吸着性が高い(付着力が強い)金属材料を用いるのがよい。具体例として例えばクロムを挙げることができる。マスクMKを単一の遮光膜で構成してもよいし、複数の遮光膜を積層してマスクMKを形成してもよい。また、エマルジョンインクまたは他の有機インク等を用いてマスクMKが形成されてもよい。
赤外光を透過する光透過領域CRの輪郭は円形に限定されない。光透過領域CRの輪郭形状は任意である。光透過領域CRは例えば矢印の輪郭を有していてもよい。方向性を備えた形状を採用することで光透過領域CRの数を少なくすることができる。
板状部材GPの材料として平らなガラス板を採用した例を上述したが、領域CRが半球状の凸形状を有していてもよい。領域CRを半球状の凸形状にすることで、ステージマーカ410の位置を特定する精度を高めることができる。
図12、図13を参照して、第1〜第3の拡散板434a、434b、434cは基本的には同じ構成を有していることから、これを総称して拡散板434と呼ぶ。この拡散板434についても、プローブ200の拡散板234(図7)と同じである。つまり、拡散板434は光を拡散させつつ透過する機能を有し、例えば樹脂材料から作れている。拡散板434はマーカ部材432よりも大きな面積を有するのがよく、また、第1窓430a、第2窓430b、第3窓430cよりも大きな面積を有するのがよい。
図12、図13を参照して、上述した第1〜第3の発光基板436a、436b、436cは基本的には同じ構成を有していることから、これを総称して発光基板436と呼ぶ。ステージマーカ410の発光基板436の上面には、複数の発光素子Lが実装される。拡散板434とオーバーラップして配置される発光基板436には、その全体に、複数の発光素子Lが略均一に配置される。この実施例では、各発光素子Lは赤外LED(発光ダイオード)で構成されている。発光素子Lの変形例として、他の波長の光を発するLEDが用いられてもよく、またはフィラメントであってもよい。
図10〜図12に見られる参照符号440a、440b、440cは遮光シートを示す。各窓430a、430b、430cの周囲から光が外部に漏出するのを阻止するために、各窓430a、430b、430cの周囲に遮光シート440a、440b、440cのような光漏出防止手段を設けるのがよい。
テーブルの変位: テーブル400は好ましくは変位可能である。図1、図9は、テーブル400が原位置で固定されている状態を示す。図14は、原位置(図9)からテーブル400を変位させた状態を示す。テーブル400の原位置からの変位の説明を分かり易くするため、図9にX軸、Y軸、Z軸を図示してある。
前述したように、光学式三次元座標測定器CMIは、起立部104に立て掛けた状態で斜め上方に向けられた表示部500に対抗して且つテーブル400の第2の側縁400bの側からオペレータがアクセスするように設計されている。オペレータから見たときに、X軸は、撮像空間Vを横断する方向つまり左右方向に延びており、Y軸とは撮像空間Vを縦断する方向つまり前後方向に延びており、Z軸は上下方向に延びている。
実施例では、テーブル400はX軸の方向つまり撮像空間Vを横断する方向に並進移動可能である。また、テーブル400はZ軸を中心に時計方向及び反時計方向に回転可能である。テーブル400の原位置からの変位は、X軸方向、Z軸を中心にした回転方向に限定されず、任意である。例えば、矩形のテーブル400の任意の例えば一側を中心にして、この一側と対抗する他側が上下に変位する、いわゆるチルト変位を含んでいてもよい。
また、テーブル400は、Y軸の方向つまり前後方向に変位可能であってもよい。ただし、前後方向(Y軸方向)はステージマーカ410の読み取り精度を阻害する可能性があるため、これを補完することができるようにテーブル400に複数のステージマーカユニット412を配置するのがよい。
また、テーブル400は、Z軸の方向つまり上下方向に変位可能であってもよい。これに代えて、主撮像ユニット600をZ軸方向に変位可能に設計してもよい。
システムの動作: 図1、図2を参照して、主撮像ユニット600と、プローブ200の副撮像部210(図4)とから出力される受光信号は、制御基板106のA/D変換器により一定のサンプリング周期でサンプリングされるとともにデジタル信号に変換される。A/D変換器から出力されるデジタル信号は、FIFOメモリに順次蓄積される。FIFOメモリに蓄積されたデジタル信号は画素データとして順次、パーソナルコンピュータPCに転送される。
実施例では、プローブマーカ212及びステージマーカ410の発光のタイミングと主撮像ユニット600の撮像のタイミングとが同期される。複数のマーカ212、410の発光期間に蓄積された画素データが、次のマーカ212の消光期間に制御基板180からパーソナルコンピュータPCに転送される。
プローブマーカ212の発光タイミングとステージマーカ410の発光のタイミングとは前述したように同時発光であることにより、プローブマーカ212とステージマーカ410との区別が容易になる。また、交互発光と同時発光とを組み合わせてもよい。すなわち、交互発光により、プローブマーカ212とステージマーカ410の位置情報を求め、次の同時発光によりプローブマーカ212とステージマーカ410の正確な位置情報及びプローブマーカ212とステージマーカ410の相対位置情報を求めるようにしてもよい。
パーソナルコンピュータPCの記憶部2は、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)およびハードディスクを含む。記憶部2には、システムプログラムが記憶される。また、記憶部2は、種々のデータの処理および光学式三次元座標測定器CMIから与えられる画素データ等の種々のデータを保存するために用いられる。
パーソナルコンピュータPCは、三次元座標測定器CMIから与えられる画素データに基づいて画像データを生成する。画像データは複数の画素データの集合である。パーソナルコンピュータPCは、生成された画像データに基づいて、プローブ200のスタイラス208の接触子208aの相対位置を算出した後に、計測ポイントの絶対座標を算出する。
図1、図2に図示の操作部300は、三次元座標測定器CMIの各種の設定、表示部500の表示内容の変更などのためにオペレータによってマニュアル操作される。
校正: 主撮像ユニット600、プローブ200、ステージマーカユニット412は校正のために校正施設に搬送される。校正情報は、主撮像ユニット600、プローブ200、ステージマーカユニット412には、その各々にメモリが搭載されている。
主撮像ユニット600の校正情報は、当該主撮像ユニット600に内蔵されているメモリに保存される。主撮像ユニット600の特性として、画角(視野角)、撮像素子と複数のレンズとの位置関係、および複数のレンズの収差等を含む。プローブ200の校正情報は、当該プローブ200に内蔵されているメモリに保存される。プローブ200の校正情報は、プローブ200の個体差による測定精度の低下を防止するための情報であり、複数のプローブマーカ212の相対的な位置関係等を含む。ステージマーカユニット412の校正情報は、当該ステージマーカユニット412に内蔵されているメモリに保存される。ステージマーカユニット412の校正情報は、ステージマーカユニット412の個体差による測定精度の低下を防止するための情報であり、複数のステージマーカ410の相対的な位置関係等を含む。
主撮像ユニット600、ス
テージマーカユニット412を三次元座標測定器CMIに組み付けたとき、主撮像ユニット600、プローブ200、ステージマーカユニット412の校正情報が制御基板106に供給され、またパーソナルコンピュータPCに供給される。パーソナルコンピュータPCは、これらの校正情報に基づいてワークピースWPの測定ポイントの座標測定を行う。
主撮像ユニットによる検出: 図15は、主撮像ユニットによる検出を説明するための図である。主撮像ユニット600は、プローブ200の複数のプローブマーカ212及びステージマーカユニット412の複数のステージマーカ410から放出される赤外線を検出する。プローブマーカ212及びステージマーカ410の位置を特定する原理を図15に基づいて説明する。図15は、主撮像ユニット600とプローブマーカ212との関係を図示してあるが、主撮像ユニット600とステージマーカ410との関係についても同様である。
図15を参照して、理解を容易にするため、ピンホールカメラモデルと同様の作用を有する光学的に単純化されたモデルを用いて説明する。図15の参照符号602は、主撮像ユニット600に含まれる撮像素子基板を示す。また、図15には、主撮像ユニット600に含まれる複数のレンズうち1つのレンズ604が図示されている。レンズ604の主点604aを通るように撮像素子(撮像素子基板602)に光が導かれる。
主撮像ユニット600は一定の画角(視野角)θを有する。主撮像ユニット600の画角θの範囲内に、撮像空間Vが含まれる。撮像空間V内に複数のプローブマーカ212がそれぞれ位置する場合、それらのプローブマーカ212から放出される赤外線がレンズ604の主点604aを通って撮像素子(撮像素子基板602)に入射する。
撮像素子基板602の受光位置Pに基づいて、レンズ604の主点604aから各プローブマーカ212へ向かう方向が特定される。図15の例では、一点鎖線で示すように、各受光位置Pおよびレンズ604の主点604aを通る各直線上に各プローブマーカ212が位置する。上記のように、複数のプローブマーカ212の相対的な位置関係は、プローブ200の校正情報としてプローブ200から制御部220に与えられる。
レンズ604の主点604aから各プローブマーカ212へ向かう方向および複数のプローブマーカ212の位置関係に基づいて、各プローブマーカ212の中心の位置が一義的に定まる。また、本実施の形態では、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸がそれぞれ定義され、撮像空間V内の絶対位置が3次元座標で表される。パーソナルコンピュータPCは、撮像素子(撮像素子基板602)の受光位置P、および予め記憶された複数のプローブマーカ212の位置関係に基づいて、各プローブマーカ212の中心の座標を算出する。
算出された各プローブマーカ212の中心の座標に基づいて、プローブ200の接触子208a(図4)とワークピースWPとの接触位置の座標がパーソナルコンピュータPCにより算出される。
例えば、各プローブマーカ212の中心と接触子208a(図4)の中心との位置関係が、パーソナルコンピュータPCの記憶部2に予め記憶される。算出された各プローブマーカ212の中心の座標、および予め記憶された各プローブマーカ212の中心と接触子208aの中心との位置関係に基づいて、接触子208aの中心の座標が特定される。
また、各プローブマーカ212の中心の座標に基づいて、プローブ200の姿勢が特定される。これにより、スタイラス208の向きが特定される。また、各プローブマーカ212の中心の座標の変化に基づいて、接触子208aの移動方向が特定される。通常、接触子208aは、ワークピースWPの面に対して垂直に近づけられる。そのため、特定されたスタイラス208の向きおよび接触子208aの移動方向に基づいて、接触子208aの中心と接触位置との相対的な位置関係が推定される。推定された位置関係に基づいて、接触子208aの中心の座標から接触子208aとワークピースWPとの接触ポイントの座標が算出される。
なお、ワークピースWPから接触子208aに加わる力の方向を検出するセンサがプローブ200に設けられもよい。その場合、センサの検出結果に基づいて、接触子208aとワークピースWPとの接触位置の座標を算出することができる。
図16はテーブル400を原位置から変位させた状態で計測操作を行った状態変化を模式的に説明するための図である。ワークピースWPを固定したテーブル400を例えばX軸(図9)つまりオペレータから見て左右方向に変位させると、テーブル400と一緒にステージマーカ410が変位する。したがって、ステージマーカ410の受光位置つまり撮像素子基板602(図15)の受光位置が変位する。そして、この変位した受光位置との関係でプローブマーカ212の受光位置が特定される。
したがって、主撮像ユニット(定置カメラ)600の撮像画像には、プローブ200の位置及び姿勢の第1情報と、テーブル400の位置及び姿勢の第2情報とが含まれる。そして、この撮像画像を画像処理することにより、プローブ200の接触子208a(図4)の位置情報を得ることができる(図16、図17)。
光学式三次元座標測定機CMIは複数の三次元座標系を有しており、これら複数の三次元座標系を適宜使い分けて測定又は表示が行われる。複数の三次元座標系は、少なくとも固定的な座標系を含む。これを「絶対座標系」又は「絶対位置座標」と呼ぶと、「絶対座標系」又は「絶対位置座標」とは、オペーレーターからワークピースWPを見たときの座標系である。テーブル400を変位させたとしても、この座標系は変化しない固定的な座標系である。言い換えれば、定置した主撮像部600からワークピースWPを見たときの座標系である。
複数の三次元座標系は、また、テーブル400の変位と共に移動する座標系を含む。これを「相対座標系」又は「相対位置座標」と呼ぶと、「相対座標系」又は「相対位置座標」は、テーブル400の変位つまりワークピースWPの変位に関連して、ワークピースWPの変位と一緒に変位するが、ワークピースWPから見ると固定的であり変位しない。
図17を参照して、定置した主撮像ユニット600の撮像空間が絶対座標系に相当する。主撮像ユニット600は複数の画素を内蔵しており、一般的に呼ばれている「カメラ座標系」の用語を使って説明すると、実施例では、撮像素子基板602(図15)の面が、カメラ座標系つまり絶対座標系のXY座標を構成する。
他方、相対座標系は、例えばテーブル400の表面つまりワークピース載置面にXY座標軸が設定される。これをテーブル座標系と呼ぶ。相対座標系は、テーブル座標系に限定されない。例えば、ワークピースWPの一部分の測定において、一定高さレベルで複数の測定点を測定する場合、この高さレベルの基準となる面にXY座標軸を設定してもよい。具体的に説明すると、ワークピースWPが幾何要素である円筒状の突起を備えている場合、この円筒部の所定の高さレベルでの円周上に複数の測定点を設定した場合、円筒状突起の基端が位置する面が基準面として設定し、この基準面にXY座標軸を設定するのがよい。
実施例では、画像処理に基づいて、プローブ200の位置及び姿勢、テーブル400の位置及び姿勢は絶対座標系で算出される。すなわち、原位置からのテーブル400の変位量、変位方向などのパラメータを、実施例では、主撮像ユニット600が光学的に取り込んだ画像に基づいて実質的に検出することができる。
相対座標系は、ワークピースWPに含まれる幾何要素、つまり例えば点、直線、平面、円筒、球等の抽出などに用いられる。テーブル400を移動して、長尺のワークピースWPの長さ寸法を測定する場合、相対座標系から絶対座標系へ変換して、ワークピースWPの長さ寸法を求めればよい。勿論、局所的な測定(例えば、ワークピースーWPに含まれる開口部の内径、凸部や凹部の直径の測定など)の測定に相対座標系の相対位置座標を用いることができる。
相対座標系は、ワークピースWPの複数の相対位置座標と、予め設定された幾何要素(点、直線、平面、円筒、球など)とに基づいて、この幾何要素の相対位置を決定するのに用いられる。
表示部500の表示に関し、絶対座標系に変換して画像を作成するのがよい。例えば、長尺のWPの長さ寸法を測定する場合、ワークピースWPの一端面を表す第1平面と他端面を表す第2平面とを画像表示する場合、絶対座標系で表示することにより、オペレータが見ているのと同じ状態で第1、第2の平面を表示部500に表示することができる。
テーブル400を変位させるという簡単な操作だけで、撮像空間Vよりも大きなワークピースWP(例えば横長のワーク)を計測することができる。また、撮像空間Vに収まるワークピースWPであったとしても、主撮像ユニット600から見たときにプローブ200の位置が捉え難い場合に、テーブル400を回転させるという簡単な操作だけで、測定精度の低下を防止できる。また、テーブル400を変位させてワークピースWPの計測したい面を主撮像ユニット600に接近させることで測定精度を高めることができる。
光学式三次元座標測定器CMIによれば、テーブル400を変位させたとしても、主撮像ユニット600で撮像する、その瞬間だけ、ステージマーカユニット412、プローブ200、主撮像ユニット600の三者の相対位置関係が維持できればよい。したがって、主撮像ユニット600とステージマーカユニット412とは常に一定の固定的な相対位置関係を維持し続ける必要はない。つまり、光学式三次元座標測定器CMIの測定精度はハード構成に依存しない。例えば、テーブル400に固定されるステージマーカユニット412の取り付け位置が多少ズレていても、光学式三次元座標測定器CMIの測定精度に影響を及ぼすことはない。
なお、実施例では、光学式三次元座標測定器CMIの主撮像ユニット600は単一であるが、図18に図示するように、光学式三次元座標測定器CMIは例えば2つの主撮像ユニット600(1)、600(2)を備えていてもよい。このように複数の主撮像ユニット600を光学式三次元座標測定器CMIが有する場合、複数の主撮像ユニット600で同じ撮像空間Vをステレオ視するのがよい。
光学式三次元座標測定器CMIによれば、測定精度をハード構成に依存しないで、光学的な原理を使って、一定の測定精度及びポータビリティを確保することができる。そして、撮像画像を電子的に内部処理することで三次元位置座標を求めるだけでなく、適切なGUIを提供することで、作業現場のコンピュータの操作に不慣れな作業者でも簡便な操作性を提供することができる。
また、テーブル400を変位させたとしても、オペレータに負担を掛けることなく、パーソナルコンピュータPCの内部処理により撮像画像を使って演算することで測定位置座標を求めることができる。また、三次元座標測定器に不慣れな現場作業者に対して、表示部500を使って、測定操作に関するナビゲーション情報を提供し、また、測定結果を視覚的に表示することができる。更に、プローブ200の先端部に設けた副撮像部210の撮像画像を含む測定に関連するデータを保存することで、ワークピースWPのどの部位をどのように計測したかというトレーサビリティを確立することができる。勿論、光学式三次元座標測定器CMI及びパーソナルコンピュータPCが作成した種々の情報をプリンタを使って印刷することで作業の管理を徹底や工場(製造現場)での品質管理の利便性を向上できる。
テーブルの変位機構:
図19〜図30はステージユニットを説明するための図である。図19は、前述したテーブル400及びステージ基台402を含むステージユニットSYを示す。ステージユニットSYは本体100に対して脱着可能である。図9、図19を参照して、実施例では、テーブル400はX軸方向(左右方向)に移動可能であり、また、テーブル400の中心軸Cを中心にして回転可能である。なお、図19は、ステージマーカユニット412(図9、図10)が取り外された状態で図示してある。
図20は、テーブル400のX軸方向の移動機構を説明するための図である。ステージ基台402はX軸方向に延び且つ互いに平行な一対のリニアシャフト702を有し、この一対のリニアシャフト702はステージ基台402に固定されている。テーブル400はXベース704に組み付けられている。Xベース704はX軸方向に延びる一対の長孔704aを有し、各長孔704aの中に各リニアシャフト702が挿入されている。好ましくは、Xベース704の長孔704aとリニアシャフト702の間に摩擦擦動要素としてのゴムスリーブ706を介装するのがよい。この一対のゴムスリーブ706によって、テーブル400のX軸方向の移動を抵抗する第1の抵抗機構を構成することができる。すなわち、オペレータがX軸方向に一定以上の力をテーブル400に加えない限りテーブル400はX軸方向に移動しない。
テーブル400はクロスローラベアリング708を介してXベース704に載置されている。テーブル400は、その底面に円形凹所404を有し、この円形凹所404の中にクロスローラベアリング708が受け入れられる。これによりテーブル400をXベース704に載置するだけで、テーブル400は中心軸線Cを中心として回転可能である。円形凹所404及びクロスローラベアリング708の組み合わせにより、テーブル400の回転機構を単純化できる。また、Xベース704とテーブル400とを上下方向に接近した構造が実現できるため、テーブル400の高さ位置を低くすることができる。これにより、一般的に重量物であるワークピースWPをテーブル400に載せる又は取り外すときの作業性を高めることができる。また、ステージユニットSYの重心を下げることができる。
テーブル変位抵抗機構:
図23は、テーブル400を取り外した状態でステージユニットSYを図示してある。ステージユニットSYは、テーブル400がX軸方向及び中心軸線Cを中心とする回転方向に変位することに関連したメイン抵抗機構部品710を有する。図23において、X軸方向に関するメイン抵抗機構部品と、回転方向に関するメイン抵抗機構部品とを識別するために、X軸方向メイン抵抗機構部品に符号Xを付記し、回転方向メイン抵抗機構部品に符号Cを付記してある。実施例では、X軸方向メイン抵抗機構部品710(X)と、回転方向メイン抵抗機構部品710(C)とは同じ構成を有している。勿論、X軸方向メイン抵抗機構710(X)と、回転方向メイン抵抗機構部品710(C)とが異なる構成を有していてもよいし、少なくともいずれか一方をオイルダンパ、電磁流体を用いた抵抗機構で構成してもよい。
図24〜図26を参照してメイン抵抗機構部品710を説明する。メイン抵抗機構部品710は、ケース712と、外部に露出した歯車714を有している。歯車714は、ケース712を貫通するシャフト716の一端に固定されている。シャフト716は長手方向中間部分に円周フランジ718を有する(図26)。ケース712は円周フランジ718を収容する円形凹所720を有し、この凹所720は蓋部材722によって密閉される。
円形凹所720には、円周フランジ718を挟んで配置された第1、第2のOーリング724、726及びグリース(grease)728が収容されている。また、ケース712と蓋部材722とシャフト716との間にはベアリング730が介装されている。
蓋部材722を複数のボルト732を使ってケース712に固定することで、第1、第2のOーリング724、726は円周フランジ718に圧接した状態となる。これにより、シャフト716つまり歯車714の回転に対して抵抗することができる。
図26を参照して、第1、第2のOーリング724、726の押し潰し状態つまり円周フランジ718に対する第1、第2のOーリング724、726の圧接力の調整は、蓋部材722とケース712との間にスペーサーシート734を介装し、スペーサーシート734の厚み又はスペーサーシート734の枚数によって行えばよい。これによりテーブル400の回転及びX方向の変位に必要とされる力の最小値を調整することができる。
図23に示す参照符号740はラック部材を示す。ラック部材740はステージ基台402に固定され、そして、X軸方向に直線状に延びている。ラック部材740には、X軸方向メイン抵抗機構部品710(X)の歯車714が噛み合っている(図27)。この構成により、X軸方向の外力がテーブル400に加わったときに、X軸方向メイン抵抗機構部品710(X)や他の抵抗機構によって一定の抵抗力が生成される。
図28、図29は、テーブル400の回転に関連した回転方向メイン抵抗機構部品710(C)に関連した部位を示す。回転方向メイン抵抗機構部品710(C)の歯車714は、大径の内歯歯車742の一部に噛み合っている。テーブル400に対してテーブル400を中心軸線Cを中心に回転させる方向に外力が加わったとき、回転方向メイン抵抗機構部品710(C)や他の抵抗機構によって一定の抵抗力が生成される。
上記の構成により、ワークピースWPをボルト止めしたテーブル400に対して又はワークピースWPに対して外力が加わったときに、この外力が一定以上の力でない限りテーブル400が変位するのを阻止することができる。すなわち、テーブル400の回転方向に外力が加わったときに、テーブル400は一定の抵抗力を持つ。
外力に対するテーブル400の抵抗力について検討すると、プローブ200の接触子208aをワークピースWPに接触させるときに、オペレータが強く接触子208aをワークピースWPに当てたときの荷重は100gf程度である。接触子208aをワークピースWPに当接させる適度な荷重は約50gfである。オペレータが接触子208aをワークピースWPに当てる作業を行っている最中にテーブル400が変位してしまうのは望ましくない。オペレータが意図した力をテーブル400又はワークピースWPに加えたときだけテーブル400が変位し、力を緩めると同時にテーブル400が停止するのが良い。しかし、テーブル400を変位させるのに大きな力を必要とするのは作業性を悪化させる。このことを念頭において、メイン抵抗機構部品710の抵抗力を設定又は調整するのがよい。メイン抵抗機構部品710が動作を開始する外力として500〜800gfを念頭に置いてメイン抵抗機構部品710の抵抗力を設定するのがよい。勿論、これを実現できる機構であれば、任意の機構を採用してもよい。
テーブル400を変位させるために、オペレータがテーブル400に力を加えたときに、オペレータの操作力のX軸方向の分力又はテーブル400が回転可能な方向の分力が上記の所定値を上回ったときに、テーブル400はX軸方向に並進移動及び/又は回転する。そして、この分力が所定値を下回った、その瞬間にテーブル400は停止する。
以上、テーブル400をX軸方向及び中心軸線Cを中心とした回転方向に変位する例を説明した。変形例として、テーブル400は、X軸方向、回転方向に加えてY軸方向(前後方向:図9)に移動可能であってもよい。図30は、テーブル400がX軸方向、回転方向、Y軸方向に変位可能な構成を説明するための図である。図30を参照して、変形例のステージユニット750は、前述した一対のリニアシャフト702を支持する一対のYベース752と、各Yベース752を案内するガイドレール754とを更に有する。一対のガイドレール754はステージ基台402に固定されており、また、Y軸方向(前後方向:図9)に延びている。これにより、Xベース704つまりテーブル400は、ガイドレール754に案内されてY軸方向に移動することができる。図示を省略したが、Yベース750とガイドレール754との間には、好ましくは、上述したメイン抵抗機構部品710が介装される。
テーブルロック:
図31〜図39はテーブル400のロック機構に関する図面である。テーブル400は、前述したように原位置から変位可能である。テーブル400は、任意であるが、原位置(図1、図9)で固定可能であるのが好ましい。テーブル400を非固定の状態で主撮像ユニット600により撮像した場合に比べて、テーブル400をロック状態で主撮像ユニット600により撮像した方が精度が良い。ステージユニットSYはテーブル400を原位置で固定するためのテーブルロック機構760を有する。図31、図32を参照して、ステージ基台402はその一側に操作レバー762を有し、操作レバー762の突片762aをオペレータが操作することにより、原位置に位置しているテーブル400をロック又はアンロックすることができる。
図31はアンロック状態を示し、操作レバー762の突片762aが水平位置にある。図32はロック状態を示し、操作レバー762の突片762aが起立位置にある。図33は、テーブル400の下面の角隅部を下方から見た図である。テーブル400は下方に向けて開放したロック穴764を有し、ロック穴764は開放端部つまり下端部分にテーパー面764aで構成されている。ステージ基台402は、ロック穴764に向けて出没可能なロックピン766を有し(図34)、このロックピン766は、原位置のテーブル400のロック穴764に対応する位置に配置されている。
図35、図36は、操作レバー762及びロックピン766を抽出した図である。図35は操作レバー762がアンロック位置に位置決めされたときの状態を示す。図36は操作レバー762がロック位置に位置決めされたときの状態を示す。図35、図36を参照して、ステージ基台402には、操作レバー762の状態つまりテーブル400のロック状態を検出するロック検出機構770が内蔵されている。ロック検出機構770は、投受光素子772と、この投受光素子772を遮光するプレート774とで構成されている。遮光プレート774は、操作レバー762と機械的に連係されている。操作レバー774がアンロック位置にあるときには遮光プレート774が投受光素子772から離れた状態にある(図35)。操作レバー774がロック位置にあるときには遮光プレート774が投受光素子772の中に侵入して遮光する状態にある(図36)。ロック検出機構770が検出したロック及び/又はアンロック状態は例えばインジケータ(図示せず)の点灯・消灯によってオペレータ、特に現場作業者に認知させることができる。
図37は、操作レバー762がアンロック位置(図31)にあるときのロックピン766の状態を説明するための図である。図38は、操作レバー762をロック位置(図32)に位置決めした直後のロックピン766の状態を説明するための図である。図39は、操作レバー762がロック位置(図32)に位置決めされ、テーブル400がロックピン766によって固定され続けているときの状態を説明するための図である。
図37〜図39の(I)は、ロックピン766を上方から見た平面図であり、(II)はロックピン766の断面図である。ロックピン766は、スリーブ780(図35、図36)によって包囲されたピンヘッド782を有する。なお、図37〜図39ではスリーブ780の図示を省略してある。ピンヘッド782は、その上端縁部分782aが面取りした形状を有する。ピンヘッド782は下方に延びる軸部782bを有している。軸部782bはベース部材784のガイド穴784aに受け入れられて、軸部782bの軸線に沿って上下動可能である。
ピンヘッド782はスプリング786によって上方に付勢されている。ベース部材784はベースプレート788に固定されており、このベースプレート788は操作レバー762に機械的に連結されている。操作レバー762がアンロック位置にあるときにはベースプレート788は下方位置に位置決めされる(図37)。ベースプレート788は、操作レバー762を操作してロック位置を取ると、上方に変位した上方位置に位置決めされる(図38、図39)。
図37に示す参照符号790はステージ基台402に定置された第1軸を示す。第1軸790には揺動リンク792の一端部が軸支されている。揺動リンク792の他端部には第2軸794が軸支されている。第2軸794は操作レバー762に機械的に連係されている。図37を参照して、前述したように操作レバー762がアンロック位置にあるときには(図35)、第2軸794が下方位置に位置決めされ、これに伴ってベースプレート788は下方位置に位置決めされる。これにより、ベース部材784及びピンヘッド782は下方位置に位置決めされる。すなわち、ピンヘッド782は、テーブル400の下面から離間したアンロック位置に位置決めされる。したがって、テーブル400はピンヘッド782から解放されていることからX軸方向などに変位可能である。
図38を参照して、操作レバー762をロック方向に操作すると、第2軸794が持ち上げられて、ベースプレート788は上昇する。これにより、ベース部材784及びピンヘッド782が上昇し、そしてピンヘッド782は、テーブル400のロック穴764の中に進入する。ピンヘッド782の面取りした先端縁部分782aが面取りした形状を有し、また、ロック穴764がテーパー面764aを有することから、このテーパー面764aに案内されてピンヘッド782はロック穴764に進入することができる。
図39を参照して、前述したように操作レバー762がロック位置をとると(図36)、第2軸794によってベースプレート788は上方位置に位置決めされる。これにより、ベース部材784及びピンヘッド782は上方位置に位置決めされ、これに押し上げられてピンヘッド782はテーブル400のロック穴764の中に進入し、そして位置決めされる。ピンヘッド782の面取りした先端縁部分782aが面取りした形状を有し、また、ロック穴764がテーパー面764aを有することから、ロック穴764のテーパー面764aによってピンヘッド782が位置決めされる。この状態では、スプリング786は圧縮した状態にある。これにより、テーブル400はピンヘッド782によって原位置に固定され続ける。
光学式三次元座標測定器の操作:
図40、図41を参照して、図示のワークピースWPは直方体の形状を有する。ワークピースWPの一端面Saと、これに対抗する他端面Sbとの間の距離を測定器CMIを使って測定する場合を例に光学式三次元座標測定器CMIの操作を説明する。
(1)図40を参照して、オペレータは、プローブ200を把持して接触子208aをワークピースWPの一端面Saに接触させ、そして、本体操作部300(図1)を操作することで主撮像ユニット600でプローブマーカ212を撮像すると共に、その画像に基づいて接触子208aの接触点の座標が算出される。この一端面Saの第1の接触点を符号M1aで図示してある(図40(b))。
(2)プローブ200の接触子208aの接触点を順次変更して、ワークピースWPの一端面Saにおける各接触点毎に上記第1の接触点M1aの時と同じ要領で操作することにより、少なくとも2つの接触点、例えば第2接触点M2a、第3接触点M3a、第4接触点M4aの3つの接触点の座標が算出される。
(3)上記4つの接触点M1a〜M4aの接触点(図40(b))と幾何要素の平面とに基づいて、ワークピースWPの一端面Saに対応した第1の測定平面ML1として設定される。
(4)図41を参照して、次に、オペレータは、ワークピースWPの他端面Sbに対して接触子208aを接触させ、そして、本体操作部300(図1)を操作して主撮像ユニット600でプローブマーカ212を撮像することで、この撮像画像に基づいて接触子208aの接触点の座標が算出される。この他端面Sbの第1の接触点を符号M1bで図示してある。
(5)プローブ200の接触子208aの接触点を順次変更して、ワークピースWPの他端面Sbにおける各接触点毎に上記第1の接触点M1bの時と同じ要領で操作することにより、少なくとも2つの接触点、例えば第2接触点M2b、第3接触点M3b、第4接触点M4bの3つの接触点の座標が算出される。
(6)上記4つの接触点M1b〜M4bの接触点幾何要素の平面とに基づいて、ワークピースWPの他端面Sbに対応した第2の測定平面ML2として設定される(図41(b))。
続いて、オペレータが本体操作部300(図1)又はパーソナルコンピュータPCの操作部6(図2)を操作することで、第1測定平面ML1と第2測定平面ML2との間の距離が測定される。すなわち、第1、第2の幾何要素の相対位置に基づいて、第1測定平面ML1と第2測定平面ML2との間の距離が測定される。
前述したようにテーブル400は変位可能である。第1測定平面ML1を求める第1工程と、第2測定平面ML2を求める第2工程との間で、テーブル400を例えば並進移動させたときには、上記第1相対位置座標と、上記第2相対位置座標と、予め設定された平面、つまり上記第1測定平面ML1及び第2測定平面ML2とに基づいて、これら第1測定平面ML1と第2測定平面ML2と第2測定平面ML2との間の距離が測定される。
上記の測定作業の過程において、作業者が必要に応じて、プローブ200の先端部に配置した副撮像部210(図4)を使うことができる。副撮像部210は、プローブ200の前後に延びるマーカ設置部204の前端面に設置されているため、プローブ200の前方領域を撮影することができる。これによりワークピースWPの一端面Sa、他端面Sbの全景を入手することができる。
また、上記の測定作業の過程に応じて、テーブル400を変位させることができる。例えばワークピースWPが長尺物であれば、X軸方向にテーブル400を移動させることで、プローブマーカ212を主撮像ユニット600の視野の中に入れることができる。つまり、比較的コンパクトな光学式三次元座標測定器CMIでありながら、大きなワークピースWPの測定が可能になる。また、ワークピースWPの例えば凹所などの局部を測定するときに、主撮像ユニット600で良好な画像が入手できるようにテーブル400を変位させることができる。これにより画像処理が容易な撮像画像を入手できる。そして、このことを通じて測定精度の向上に貢献できる。
テーブル400の原位置からの変位は、前述したように、テーブル400に搭載したステージマーカユニット412のステージマーカ410を主撮像ユニット600で撮像し、その撮像画像に基づいてテーブル400の変位方向、変位量を実質的に検出することができる。変形例として、エンコーダなどのセンサ800(図2)を使ってテーブル400の変位量や姿勢を検出してもよい。当業者であれば、テーブル400を原位置から変位させることに関する上記の考え方を、従来の多関節アームの先端にプローブを備えたアームタイプの三次元座標測定装置などに適用可能であることは容易に理解できる。
実施例の光学式三次元座標測定器CMIによれば、テーブル400が可動であり、また、テーブル400がステージマーカ410を有する。また、図2を参照して、光学式三次元座標測定器CMIプローブマーカ212を撮像する主撮像部600を有し、更に、プローブ200の先端部に副撮像部210を有する。この副撮像部210を使って取得した画像を使って作業者に様々な情報を提供できる。また、これを保存又は出力することで、適切に計測作業が行われたことを証明する情報を提供できる。
GUI:
光学式三次元座標測定器CMIは、表示部500(図1)を更に有する。この表示部500を使って作業者に様々な情報を提供できる。光学式三次元座標測定器CMIは、生産ラインの現場に設置して使用することを企図している。
光学式三次元座標測定器CMIは製造現場で作業者でも操作可能となるように設計されていることから、光学式三次元座標測定器CMIにアクセスするオペレータは、光学式三次元座標測定器CMIの使い方を熟知した人に限られない。製造現場の作業者でも使用できるように表示部500(図1)を使ったGUIの表示を行うことが望まれる。
光学式三次元座標測定器CMIにおいて、表示部500を使ったGUIは、光学式三次元座標測定器CMIの使い方を熟知した人つまり管理者に対する第1表示モード(「管理者モード」)と、現場作業者に対して測定作業の操作を誘導するナビゲーション画面を含み、測定を行うときに使用する第2表示モード(「測定表示モード」)とを有する。例えば表示部500に表示されるボタン(図示せず)を使って管理者モードと測定表示モードとを切り替えることができる。
管理者モードを使うことで、現場作業者が容易に測定作業の操作を実行できるように測定作業を誘導する種々の設定(「ナビゲーション設定」)を行うことができる。例えば、副撮像部210が撮影した撮像画像(「ナビ画像」)を表示部500に表示すると共に、作業者が測定すべきポイント、接触子208aを接触させるべきポイントをナビ画像に重畳表示する。作業者は、表示部500を見ることで、次に接触子208aを接触させるべきポイントを知ることができる。また、副撮像部210が撮影した撮像画像の表示を作業者の操作に従って移動させる機能を付与することで、テーブル400をどの方向にどの程度変位させるのが適切かの情報を作業者に提供できる。
測定作業中の表示の一例を図42を参照して説明する。図42は、ワークピースWPの一端面Saに対応した前記第1測定平面ML1を求めた時に表示される画像である。図42において、参照符号VIは、表示部500に表示される測定領域仮想画像を示す。測定領域仮想画像VIは、主撮像部600の視野領域を仮想的に表す画像である。この測定領域仮想画像VIにおいて、絶対座標系の原点、X軸、Y軸およびZ軸がそれぞれ定義される。すなわち、原位置のテーブル400の上面に平行でかつ互いに直交するようにX軸およびY軸が設定され、テーブル400の上面に対して垂直にZ軸が設定される。また、原位置のテーブル400の中心が原点Oに設定される。そして、測定領域仮想画像VIに、ワークピースWPの一端面Saに対応した前記第1測定平面ML1が重畳表示される。
図43は、ワークピースWPの他端面Sbに対応した前記第2測定平面ML2を求めた時に表示される画像である。図43を参照して、測定領域仮想画像VIに、ワークピースWPの一端面Saに対応した前記第1測定平面ML1と共に、他端面Sbに対応した前記第2測定平面ML2は、絶対座標系に基づいて作成され、そして、表示部500に重畳表示される。
図44は、第1測定平面ML1と第2測定平面ML2との間の距離を求めた後に表示される画像を示す。図44から分かるように、第1測定平面ML1及び第2測定平面ML2の表示と共に、第1測定平面ML1と第2測定平面ML2との間の距離を意味する数値「201mm」が矢印と共に重畳表示される。勿論、この距離「201mm」が適正であるか否かは、ワークピースWPの設計図面に基づいて判断される。
図45を参照して、ワークピースWPに含まれる2つの円筒部分902、904を測定し、その軸間距離つまり第1の円筒部分902の第1軸線と第2の円筒部分904の第2軸線との間の距離(図中、矢印906)を測定する場合を例にナビゲーション設定モードでの手順を説明すると次の通りである。
(1)ワークピースWPをテーブル400に固定する。
(2)ワークピースWPの測定基準面に基づく相対座標系を設定する。この相対座標系の設定については後に説明する。
(3)測定要素つまり円(円筒)を設定する。
(4)ナビ画像つまり副撮像部210を使って局部的な撮像画像を取得する。
(5)上記の(2)、(3)及び場合によっては(4)を繰り返して、測定要素つまり2つの円筒部分を測定して、軸間距離という測定項目を設定することにより距離要素を作成する。
(6)上記の一連の設定作業が完了し終わったら、ナビゲーション設定ファイルをパーソナルコンピュータPCの記憶部2(図2)に保存する。
上記(2)の第2ステップの測定基準面は任意の平面を指定することができる。
上記(3)乃至上記(6)の一連のステップを図47のフローチャート及び図48乃至図54を参照して説明する。図47及び図48を参照して、表示部500に表示されている測定条件設定画面SC2の対象部分形状選択欄506つまり作成要素ボタンをクリックすることで要素作成処理を開始することができる(S1)。測定要素は円筒であることから円筒ボタン506e(図48)を押すと、円筒ファイル550が開かれて表示部500に表示される。円筒ファイル550には、撮影開始ボタン552が用意されている(図49)。任意であるが、必要な時に撮影開始ボタン552を押し下げることにより副撮像部210(図4)によって撮影することができる(S2)。副撮像部210で取り込んだ画像は、表示部500に表示される(S3)。また、撮影した時のプローブ200の位置及び姿勢の情報つまり測定位置座標と共に記憶部2(図2)に保存される。円筒ファイル550は、図49に参照符号557で示す手順ガイドを含むのがよい。オペレータは、手順ガイド557を参照することで操作の手順を知り、そして、測定条件設定画面SC2を見ることで推奨される測定点の位置及び数を認識することができる。
測定すべき円筒部分つまり第1円筒902(図46)であれば、ステップS5に進んで、測定開始ボタン556(図49)を押し下げる(S5)。円筒ファイル550は、測定開始ボタン556として中空円筒の内周面の測定を開始する第1ボタン556aと、円筒の外周面の測定を開始する第2ボタン556bとを有する。いま、中空円筒の内周面を測定するのであれば、第1ボタン556aを押し下げることになる。
本体操作部300(図1)の測定ボタンを押し下げると、その時のテーブル400の位置及び姿勢及びプローブ200の位置及び姿勢のデータが取り込まれる(S6)。勿論、これらのデータは、プローブマーカ212、ステージマーカ410を主撮像部600(図1)で撮像した撮像画像に基づいて作成される。測定条件設定画面SC2は、円筒の3Dモデルを表示する操作ガイド表示欄558(図50)を含んでいる。表示の3Dモデル560(図50)を見ながら、複数の測定点Pを測定して円筒つまり各測定点を算出する(S7)。この複数の測定点Pの座標は相対座標系に基づく。
3Dモデル560を見ながら、第1円筒902に関する例えば6点以上の全ての測定点Pを設定したら、ステップS9において、第1円筒902の位置、向き、寸法などが測定点Pの相対位置座標に基づいて算出される。
また、第1円筒902に関する例えば6点以上の全ての測定点Pを設定したら、この時点で副撮像部210(図4)によって撮影してもよい。
必要に応じて、各要素のパラメータを変更及び/又は公差を設定する(図47のS10)。副撮像部210で撮影した撮像画像つまりナビ画像は、測定条件設定画面SC2のナビゲーション画像表示欄562に表示され(図51)、ナビゲーション画像表示欄562では、ナビ画像の上に、設定した測定点Pが重畳表示される(図47のS11)。
次に、同じ要領で第2円筒904(図45)の複数の測定点Pを設定する(図52)。そして、第2円筒904の全ての測定点Pの設定が終わったら、図53に図示のように、第1円筒902の軸線902aと、第2円筒904の軸線904との間の距離要素を作成する。
図54は、全ての設定が完了したときの測定条件設定画面SC2の表示状態を示す。OKボタン570を押し下げる(図47,S12)ことにより要素作成処理が完了する(S13)。これによりナビゲーション設定ファイルの作成が完了する。
次に、上記ナビゲーション設定ファイルを使って作業者がワークピースWPを測定する手順を図55〜図59を参照して説明する。作業者が測定作業を実行するときには、表示部500の表示を測定表示モードに切り替える。
作業者は、先ず、ワークピースWPをテーブル400に固定する。そして、表示部500の表示に関し、ナビゲーション設定ファイルを選択すると、図56に図示の実測定画面SC4が表示される。実測定画面SC4は、主撮像部(定置カメラ)600(図1)が撮像した画像に基づいて、測定対象物つまり2つの円筒902、904を抽出して表示する測定対象物表示欄580を有し、この測定対象物表示欄580には好ましくはコンピュータグラフィック(CG)の3Dモデル582を表示するのがよい。実測定画面SC4は、また、副撮像部(プローブカメラ)210(図4)が撮像したナビ画像を表示するナビ画像表示欄584と共に、テーブルナビ情報表示欄(ステージガイド欄)540を有する。
図55のフローチャートを参照して、ナビゲーション設定ファイルを選択すると、実測定画面SC4には副撮像部(プローブカメラ)210(図4)が撮像したナビ画像が表示される。仮にナビ画像が無ければナビ画像表示欄584には、コンピュータグラフィック(CG)が表示される(S20)。
ナビ画像から測定すべき要素があれば、ステップS21からS22に進んで、管理者が設定作業を行ったときの座標系及び測定点の位置座標と、現在の座標系つまりテーブル400及びワークピースWPの位置から、設定測定位置を算出する。また、現在のプローブ200の位置及び姿勢を取得する。現在のワークピースWPの位置は、勿論、主撮像部600(図1)が撮像した画像から取得することができる。そして、これらの情報が実測定画面SC4に表示される(S23)。
次のステップS24では、プローブ200の位置及び姿勢、テーブル400の位置及び姿勢が取り込まれ、そして、今現在のプローブ200の位置及び姿勢及びテーブル400の位置及び姿勢が実測定画面SC4に表示される(S25)。ステップS24は常時、更新し続けられる。したがって、実測定画面SC4には、プローブ200及びテーブル400の位置及び姿勢がリアルタイムに表示される。
作業者が、実測定画面SC4の測定開始ボタン586(図56)を押し下げると(S26)、ナビ画像表示欄584には、ナビ画像の上に測定点Pが表示される(図57)。これを見て、作業者は、ナビ画像表示欄584に表示の測定点Pに向けてプローブ200をアクセスすることになる。
次のステップS27(図55)では、テーブル400及びプローブ200の現在の位置及び姿勢が取り込まれ、そして、今の座標系において、接触子208aを当接させた測定位置Pの相対座標が算出される。第1、第2の円筒902、904の各測定位置Pの測定が完了すると、ステップS29からステップS30に進んで、計測した複数の測定位置Pの相対位置座標や、テーブル400及びプローブ200の現在の位置及び姿勢に基づいて、必要であれば、座標系の変換が行われ、第1、第2の円筒902、904の向き、測定要素の距離などが相対位置座標又は絶対位置座標に基づいて算出される(図55のS30)。そして、その結果が、結果表示欄590に表示される(図55のS31、図58)。したがって、作業者は撮像画像(ナビ画像)SIの上に重畳表示される測定位置Pに対してプローブ200をアクセスさせ、そして接触子208aを指定された測定位置Pに当接させる作業を反復するだけで、事実上、管理者が行ったと同じ測定を完了することができる。
ステップS31において、測定結果を例えばプリンタなどで出力してもよい。その際、各測定位置Pでどのような姿勢でプローブ200をワークピースWPに当接させたか、実際に測定した位置と設定されている測定位置Pとが同じか否かなどを知るのに、各測定位置Pを測定したときの写真を副撮像部210で撮影して、これをプローブ200の位置情報と一緒に保存しておくのがよい。そして、プリンタで出力するときには、この撮像画像を例えば各測定位置Pの測定位置座標と一緒に掲載するのがよい。
図57を参照すると直ちに分かるように、撮像部600(図1)が撮像した画像(測定対象物表示欄580)では、第2円筒904が左隅に現れているだけであり、第1円筒902は表示されていない。作業者にテーブル400の変位に関する情報がテーブルナビ情報表示欄540に表示される。作業者は、テーブルナビ情報表示欄540の表示情報に従ってテーブル400を変位させることで第1、第2の円筒902、904を管理者が推奨する位置及び向きに位置決めすることができる(図59)。
実測定画面SC4での表示に関し、図60、図61、図62の表示を加えてもよい。図60は、管理者が設定した測定位置Pとは異なる位置を測定した場合、測定位置が異なる旨の注意表示592を行うようにしてもよい。図60の例では、「測定位置が異なります。測定位置を確認して再度測定して下さい。」が注意表示592として表示される。
管理者がステージロック機構760を使ってテーブル400をロックすることを作業者に強要したいときには、これを簡易に設定できる設定項目を用意すればよい。設定ファイル576を使ってロック状態での測定を設定したときには、図61に図示のように、作業者がテーブル400をロックしないで測定したときには、実測定画面SC4において、ロックしていない旨の警告表示594が行われる。図61の例では、「ナビゲーション設定で指定したロック状態が異なります。ロック状態を変更して再度測定して下さい。」が警告表示594として表示される。
可動テーブル400の変位に関し、実測定画面SC4に、好ましくは、テーブルナビ情報表示欄540が表示される。この表示に誘導されて、作業者がテーブルナビ情報表示欄540に従ってテーブル400を動かすことで、測定対象物を適正な位置に位置決めすることができる。このテーブルナビ情報表示欄540に、図62で実線554で図示した例えば四角の枠で、テーブル400を動かしても良い範囲を指し示すのが好ましい。具体的には、測定可能なテーブル400の移動範囲を視認し易い表示、例えば四角の枠554で表示するのがよい。
上述した説明から、当業者であれば、実施例の光学式三次元座標測定器CMIが優れた利点を備えていることが直ちに認識できるであろう。特に、可動テーブル400を備えているため、大きなサイズの測定対象物つまりワークピースWPに対しても適用できる。また、プローブ200の位置及び姿勢は、定置した主撮像部600がプローブマーカ212を撮像した画像に基づいて検出される。このことから、測定している時のプローブマーカ212が主撮像部600で適正に撮像できる視野範囲に存在していることが、一定の測定精度を維持する上で望ましい。この観点から、必要に応じてテーブル400を原位置から変位させることができる。メイン抵抗機構部品710(図23)によって、所定以上の力を加えないとテーブル400を変位させることができない。したがって、作業員や管理者がテーブル400を変位させ、テーブル400が所望の位置又は姿勢に達した瞬間に力を抜くことでテーブル400は直ちに停止することになる。また、プローブ200の接触子208aをワークピースWPに当接させたとしても、これによる力によって不用意にテーブル400が変位することはない。
測定精度を維持するために、テーブル400の可動性を利用して測定するのが好適な測定対象物つまりワークピースWPを図63を参照して例示的に説明する。図63の画像は、ワークピースWPの一端面側から撮影されている。ワークピースWPは、長手方向に延びる断面円形の貫通穴10を有している。貫通穴10は、ワークピースWPの一端面と他端面に夫々、開放した開口部10aを有している。
一端側及び他端側の開口部10aの同軸度を測定する場合を例に説明する。同軸度とは、測定対象物となる軸が、基準となる軸から変位している、その大きさを意味する。
同軸度を測定するためには、先ず、一端側と他端側の開口部10aの夫々の円筒形状を測定する必要がある。この測定に際し、前述した通り、測定条件設定画面SC2の対象部分形状選択欄506(図48)から作成要素ボタンつまり幾何要素である「円筒」を選択し、そして、最小で6点、好ましくは12点以上の点の座標を測定し、測定した点の座標を用いて円筒を推定し、推定した円筒の直径、半径、中心座標、軸方向ベクトル、円筒度等を算出することになる。
一端側の開口部10aを測定するのに、先ず、テーブル400を変位させるために、オペレータがテーブル400に力を加えたときに、オペレータの操作力のX軸方向の分力が上記の所定値を上回ったときに、テーブル400はX軸方向に移動する。つまり、オペレータが意図的にテーブル400に力(そのX軸方向の分力が所定値よりも大きい)を加えることでテーブル400をX軸方向に移動させることができる。そして、操作力を弱めた、その瞬間にテーブル400は停止する。テーブル400を右方向(X軸方向のプラス側)に移動させることで(図64)、プローブ200を主撮像部600の視野範囲に入れればよい。次に、他端側の開口部10aを測定するのに、テーブル400を左方向(X軸方向のマイナス側)に移動させることで(図65)、プローブ200を主撮像部600の視野範囲に入れればよい。このように、例えばサイズの大きな測定対象物つまりワークピースWPに対しても容易に対応できる。
図66を参照して、一端側の開口部10aを測定した後に、測定した一端側の幾何要素である第1円筒形状12aを測定領域仮想画像VIに重畳表示するのが良い。また、その後に、他端側の開口部10aを測定したら、他端側の幾何要素である測定した第2円筒形状12bを測定領域仮想画像VIに重畳表示するのが良い。一端側及び他端側の円筒形状12a、12bは、絶対座標系に基づいて作成される。変形例として、一端側及び他端側の開口部10aに夫々対応した第1、第2の幾何要素である円筒形状12a、12bだけを表示するようにしてもよい。
次いで、図66に図示の測定条件設定画面SC2の測定項目選択欄504及び対象部分形状選択欄506は基本測定のタブが付けられている。複数のタブのうち、幾何公差のタブを選択すると、測定項目選択欄504及び対象部分形状選択欄506は図67の表示に切り替わる。図67の表示に含まれる同軸度ボタン516をクリックすることで同軸度測定モードを設定できる。
次に、(1)第1円筒形状12aを基準に第2円筒形状12bの同軸度を測定する、(2)同軸度の公差上限値を入力して、これを設定する等、同軸度の測定をする上で必要なパラメータを設定する。これにより、第1円筒形状12aと第2円筒形状12bとの同軸度を測定することができる。勿論、同軸度に関連して求めることのできる第1、第2の開口部10a、10bの直径が設計通りであるか否か(公差範囲内となっているか否か)を確認したり、第1開口部10aが開口する一端面と、第2開口部10bが開口する他端面との間の距離が設計通りであるか否かを確認することができる。
すなわち、例えば、各穴の直径、複数の穴同士の同軸度、穴が形成された各面の面間距離それぞれに対して公差を設定するというように、複数の確認内容(複数の検査内容)をまとめて検査設定として予め設定しておくことで、全ての検査内容が公差範囲内であれば、総合判定としてOK表示を、いずれかが公差範囲外となるようであれば、総合判定としてNG表示をすることができる。
実施例の光学式三次元座標測定器CMIによれば、プローブ200の接触点208aが接する測定位置の座標を相対座標系で特定し、そして、点又は幾何形状の推定により、寸法や幾何的特徴量を測定することができる。そして、光学式三次元座標測定器CMIの一つの使い方として、予め設定した公差と、測定された寸法や幾何的特徴量とを比較することで、測定対象物つまりワークピースWPを検査することができる。
また、実施例の光学式三次元座標測定器CMIに含まれる可動テーブル400が回転可能であることから、テーブル400を回転させることで、定置した主撮像部600に対してプローブマーカ212を正対させることができる。図68はテーブル400を反時計方向に回転させた例を示す。図69はテーブル400を時計方向に回転させた例を示す。
同一高さレベルでの測定及びGUI:
ユーザが測定したい項目の中には、例えば円筒の任意の高さレベルでの外径がある。例えば成形型から製品を取り出すために必要とされる抜き勾配を備えた突起又は凹部を含む製品の場合、突起又は凹部の寸法や幾何的特徴量が適正であるかを抜き勾配を考慮して測定したいという要請がある。
例えば円筒形状の突起を含む製品を実際に測定する場合、円筒の所定レベルの幾つかの点の座標を求める必要がある。このためには、プローブ200の接触子208aを円筒の同じ高さレベルで規定される特定面での複数箇所に当接させる必要があるが、この作業は熟練が必要であるという問題がある。
図70以降の図面を参照して、この問題を解決するためのGUIを説明する。所望の高さレベルを定義するときに、その基準となる平面を特定する必要がある。したがって、先ず、基準とすべき平面に属する複数の点に接触子208aを当接させて、この複数の測定位置の座標に基づいて測定基準面を登録する。測定基準面は、水平面であっても傾斜面であってもよく、単一又は複数の任意の面を測定基準面として設定することができる。
図70は、円筒の外周面又は内周面に関する測定を行う場合に表示部500に表示可能な設定画面20を示す。この設定画面20は、接触子208aを当接させるのが円筒の外周面22aか内周面22bかの測定対象物を選択する表示項目22を含んでいる。設定画面20は、また、上述した測定基準面を設定する基準面設定項目24を含んでいる。予め登録した測定基準面が複数ある場合には、ドロップダウンリストから所望の測定基準面を指定することができる。図示の例では「平面001」で登録した平面が指定されている。
設定画面20は、測定高さ、つまり実質的に特定面を設定する高さレベル設定項目26を含む。「測定高さ」とは基準面の法線方向の寸法を意味する。測定基準面よりも上方であれば「プラス」、下方であれば「マイナス」と定義されている。高さレベル設定項目26のブランク窓26aの数値をアップダウンさせて所望の数値を選択することで、測定基準面からの高さを設定することができる。
設定画面20は、また、設定した高さレベルを挟んで上下の許容位置範囲を設定する位置範囲項目28を含んでいるのがよい。位置範囲項目28を含む代わりに、予め設定された上下の許容位置範囲をメモリに記憶するようにしてもよい。この許容誤差の範囲を設定することで、作業者が、設定した許容位置範囲から上下に逸脱した点を測定した場合に、これを測定データとして取得する否か等を判定することができる。すなわち、設定した許容位置範囲内であることを前提として接触子208aの測定位置の座標が取得される。
同一高さレベルの測定に関する所定のパラメータを上記の設定画面20(図70)を使うことで簡単に設定することができる。また、図71に図示の高さレベルガイド欄30を測定条件設定画面SC2や実測定画面SC4(図72)に加えるのが好ましい。
図71を参照して、高さレベルガイド欄30は、設定した基準高さレベルを示す横ラインと、今現在の接触子208aの高さレベルを少なくとも表示する。また、好ましくは、図示のように、高さレベルガイド欄30に今現在の接触子208aの高さレベルを意味する数値又は、図示のように、設定したレベルからの今現在の接触子208aのオフセット量を意味する数値を表示するのが好ましい。
測定条件設定画面SC2に高さレベルガイド欄30の表示を加えることで、管理者は、高さレベルガイド欄30の表示を見ながら設定作業を進めることができる。また、実測定画面SC4に高さレベルガイド欄30の表示を加えることで、作業者は、高さレベルガイド欄30の表示を見ながら接触子208aをワークピースWPに当接させることができる。
また、設定画面20(図70)を使った所定項目の設定の前に、対象部分形状選択欄506(図48)を使って、測定したい部位の幾何形状を選択するのがよい。図73に再度、対象部分形状選択欄506を図示すると、図示の例では、円506dを選択されている。
測定条件設定画面SC2を使った設定手順は、図47のフローチャートに基づいて前述した通りである。図74は、図49を参照して説明した操作ガイド表示欄558の表示を示す。管理者は、操作ガイド表示欄558の表示に従って、同一高さレベルに複数の測定位置を設定することになる。この設定が終わったときの操作ガイド表示欄558の表示を図75に示す。図75に図示のように高さレベルの測定の基準面となる面32を重畳表示するの好ましい。
作業者が同一高さレベルの測定作業を行うときには、図56に例示した実測定画面SC4の表示に切り替える。同一高さレベルの測定作業の手順を図76のフローチャートに基づいて説明する。
図76を参照して、作業者は、実測定画面SC4の測定ボタンを押し下げると(S40)、「高さ」を指定しているかの判定が行われる(S41)。ここに、「高さ」の指定とは、図70を参照して説明した高さ設定項目26にチェックを入れることにより、同一高さレベルの測定モードに入ることができる。
高さ設定項目26(図70)で高さ指定されていないときには、作業者がプローブ200の接触子208aをワークピースWPに当接させた測定点の座標が取得される(S42)。
高さ設定項目26(図70)で高さ指定されているときには、作業者がプローブ200の接触子208aをワークピースWPに当接させた測定点の相対位置座標が取得される(S43)。そして、この測定点の相対位置座標に基づいて測定基準面からの高さが算出され(S44)、実測定画面SC4に高さレベルガイド欄30(図71)が表示される。図77は、高さレベルガイド欄30が重畳的に表示された実測定画面SC4を示す。高さレベルガイド欄30は、作業者がプローブ200を操作している間、実測定画面SC4にリアルタイムに表示するのが好ましい。作業者は、実測定画面SC4に表示されている設定測定位置Pを見ながら、この設定測定位置Pに接触子208aを適合させる操作が容易になる。
そして、測定した測定点Pの高さが指定された高さでない場合には、ステップS46からS47に進んで、作業者が再度、測定を実行するまで待機する。もし、所定時間、作業者が測定を実行しないときは、ステップS48に進んで実測定画面SC4に「測定できませんでした」の警告を表示する(図78)。
警告表示の変形例として、測定した測定点Pの高さが指定された高さでない場合、測定の実行を拒否する手段を講じても良い。例えば、測定作業中に表示部500に表示される画面に測定開始ボタンを含んでいる場合には、この測定開始ボタンをグレーアウト(無効化)してもよい。
作業者は、管理者が設定した全ての測定点Pを実測定画面SC4のナビ画像を見ながら接触子208aをワークピースWPに当接させるだけで、同一高さレベルの測定を完了することができる。勿論、ノギスのようなツールを必要としない。また、同一高さレベルの測定において、その測定精度は作業者の習熟度に左右されない。この同一高さレベル測定に関するGUI及び具体的な測定方法などは、光学式三次元測定器や門型測定機など一般的に汎用することができるのは勿論である。
この同一高さレベルの測定において、テーブルナビ情報表示欄540(ステージガイド欄、例えば図62)を実測定画面SC4に重畳表示してもよいのは勿論である。また、作業者の一連の操作の過程で、前述したように、要所要所で、ナビ画像つまり副撮像部(プローブカメラ)210を使って局部的な撮像画像を取得するのが好ましい。勿論、ナビ画像を取得したときには、その時点でのプローブ200の位置、姿勢もナビ画像と一緒に保存するのがよい。
図79は、高さ測定の検査結果をプリンタに出力した例を示す。図79の単品成績表には、総合判定結果及び測定結果等の必要項目が記載されているが、これに加えて、副撮像部(プローブカメラ)210で撮影したナビ画像が添付されている。ナビ画像を添付することで、測定作業が適正に行われたことを証明することができる。
以上、本発明の実施例を光学式三次元座標測定器CMIに基づいて説明したが、本発明は光学式三次元座標測定器CMIに限定されない。本発明は、門型、アーム型などの機械式三次元座標測定器にも好適に適用可能である。