JP6748282B2 - 癌の治療のための抗体 - Google Patents

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Description

本発明は、癌の治療のための抗体に関する。
抗体は、癌療法における使用のために臨床に導入されて成功を収め、過去10年間にわたって腫瘍学における最も有望な治療となってきた。癌のための抗体に基づく治療法は、従来の薬剤と比較してより高い特異性とより低い副作用プロフィールの潜在的可能性を有する。その理由は、抗体による正常細胞と腫瘍細胞との正確な識別ならびにその作用機構が、補体の活性化および細胞傷害性免疫細胞の動員のような、より毒性の低い免疫学的抗腫瘍機構に基づくという事実にある。
クローディンは上皮と内皮の密着結合内に位置する内在性膜タンパク質である。クローディンは、4つの膜貫通セグメントと2つの細胞外ループ、および細胞質に位置するN末端とC末端を有すると予測される。膜貫通タンパク質のクローディン(CLDN)ファミリーは、上皮と内皮の密着結合の維持に重要な役割を果たし、また細胞骨格の維持および細胞シグナル伝達においても役割を果たし得る。腫瘍細胞と正常細胞の間でのこれらのタンパク質の区別的発現は、それらの膜局在に加えて、これらのタンパク質を癌免疫療法のための魅力的な標的にし、癌療法においてCLDNを標的とするための抗体ベースの治療の使用は高レベルの治療特異性を期待させる。
しかし、CLDNを標的とする治療の臨床適用はいくつかの障害に直面する。体内でのCLDNの遍在的発現および密着結合の維持におけるCLDNの重要な役割は、治療の特異性を最大化し、全身毒性を最小化するためにCLDN標的化治療の標的特異性を必要とする。
国際公開第2009/087978号は、抗CLDN6抗体および抗癌剤としてそれらの使用に関する。特に、AB3−1、AE1−16、AE49−11およびAE3−20と称されるモノクローナル抗体が記述されている。しかし、これらの抗体のいずれもが、実施例5のFACS分析によって示されるようにCLDN6に特異的ではなかった。抗体AE3−20はCLDN9と反応し、一方抗体AE1−16およびAE49−11はCLDN9とかなりの反応性を示し、同時にCLDN4とも反応した。抗体AB3−1のCLDN6への結合はCLDN9へのその結合と同程度に強力であった。抗体AE49−11は、マウス腫瘍モデルに投与した場合、腫瘍増殖を阻害する傾向があり、延命効果があったことが実施例7に記載されている。しかし、使用された抗体の非特異性を考慮すると、記述されている作用がCLDN6への抗体の結合によるものであるかどうかは不明確なままである。
国際公開第2009/087978号パンフレット
したがって、現在まで、CLDN6を発現する細胞の表面に選択的に結合するCLDN6特異的抗体は記述されていない。しかし、CLDN6を標的として使用する抗体ベースの治療アプローチのためにはそのような特異的抗体が必要である。
図1に示すCLDN3、CLDN4、CLDN6およびCLDN9の配列アラインメントは、他のクローディンタンパク質とのCLDN6の高度の保存が存在することを例示する。この他のクローディンタンパク質、特にCLDN9およびCLDN4とCLDN6との高い相同性、ならびに国際公開第2009/087978号がCLDN6特異的抗体を提供できなかったという事実は、CLDN6に特異的に結合する抗体を作製することが不可能であるかもしれないことを示唆する。
本明細書で開示される実験結果は、CLDN6は種々のヒト癌細胞において発現されるが、正常組織での発現は胎盤に限定されることを確認する。
さらに、本発明は、CLDN6を発現する無傷細胞の表面に結合することができるCLDN6特異的抗体の作製の成功を初めて述べる。CLDN6を発現する無傷細胞のFACS分析は、抗CLDN6抗体の特異的結合を示したが、他のクローディンタンパク質、特にCLDN3、CLDN4およびCLDN9を発現する細胞、またはこれらのCLDNタンパク質のいずれも発現しない細胞に関しては結合を認めなかった。したがって、本発明は、意外にも、CLDN6を発現する細胞の表面でCLDN6との抗原抗体反応を特異的に行うが、他の高度に相同なクローディンとは実質的に抗原抗体反応を生じない抗体を作製できることを明らかにする。
本発明は、一般に、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞に関連する疾患、例えば腫瘍関連疾患、特に癌、例えば卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱の癌、特に移行上皮癌および乳頭癌、腎癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎芽性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および精巣胎児性癌、子宮癌、奇形癌または胎生期癌などの胚細胞腫瘍、特に精巣の胚細胞腫瘍、ならびにそれらの転移形態を治療するおよび/または予防するための治療法として有用な抗体を提供する。
1つの態様では、本発明は、CLDN6を発現する細胞の表面に結合したCLDN6に結合することができる抗体に関する。好ましくは、抗体は、CLDN9を発現する細胞の表面に結合したCLDN9には実質的に結合することができない。好ましくは、抗体は、CLDN4を発現する細胞の表面に結合したCLDN4には実質的に結合することができず、および/またはCLDN3を発現する細胞の表面に結合したCLDN3には実質的に結合することができない。最も好ましくは、抗体は、前記CLDNタンパク質を発現する細胞の表面に結合したCLDN6以外のCLDNタンパク質には実質的に結合することができず、CLDN6に特異的である。好ましくは、前記CLDNタンパク質を発現する前記細胞は、無傷細胞、特に透過処理されていない細胞であり、細胞の表面に結合した前記CLDNタンパク質は、天然、すなわち非変性の立体配座を有する。好ましくは、抗体は、天然立体配座のCLDN6の1またはそれ以上のエピトープに結合することができる。
1つの実施形態では、抗体は、CLDN6の細胞外部分内に位置するエピトープに結合することができ、CLDN6の前記細胞外部分は、好ましくは、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:14および配列番号:15のいずれか1つのアミノ酸配列、好ましくは配列番号:6または配列番号:7のアミノ酸配列、より好ましくは配列番号:6のアミノ酸配列を含む。好ましくは、抗体は、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:14および配列番号:15のいずれか1つのアミノ酸配列、好ましくは配列番号:6または配列番号:7のアミノ酸配列内に位置するエピトープに結合することができる。
1つの実施形態では、抗体は、Thr33、Phe35、Gly37、Ser39、Ile40およびLeu151から成る群より選択される少なくとも1つのアミノ酸、好ましくは2以上、例えば2、3、4または5、好ましくはすべてのアミノ酸と相互作用することによって、好ましくはThr33、Phe35、Gly37、Ser39およびIle40から成る群より選択される少なくとも1つのアミノ酸、好ましくは2以上、好ましくはすべてのアミノ酸と相互作用することによって、より好ましくはPhe35、Gly37、Ser39およびIle40から成るまたはThr33、Phe35、Gly37およびSer39から成る群より選択される少なくとも1つのアミノ酸、好ましくは2以上、好ましくはすべてのアミノ酸と相互作用することによって、特に、Phe35、Gly37およびSer39から成る群より選択される少なくとも1つのアミノ酸、好ましくは2以上、好ましくはすべてのアミノ酸と相互作用することによってCLDN6に結合することができる。好ましくは、抗体は、Glu154、Ala155、Arg158およびGly161から成る群より選択される1またはそれ以上のアミノ酸、好ましくはすべてのアミノ酸と相互作用せず、ならびに好ましくはArg158およびGly161から成る群より選択される1またはそれ以上のアミノ酸、好ましくはすべてのアミノ酸と相互作用しない。
抗体とCLDN6、特にその天然立体配座のCLDN6との間の相互作用は、アミノ酸のアラニン走査突然変異誘発によって分析できる。CLDN6突然変異体を、特異的モノクローナル抗体によって結合されるそれらの能力に関して評価することができる。CLDN6突然変異体への特異的モノクローナル抗体の結合低下は、変異したアミノ酸が重要な接触残基であることを示唆する。結合は、例えばフローサイトメトリによって分析できる。
1つの実施形態では、抗体は、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:14および配列番号:15のいずれか1つのアミノ酸配列、好ましくは配列番号:6もしくは配列番号:7のアミノ酸配列を有するペプチドまたは免疫学的に等価のペプチド、または前記ペプチドを発現する核酸もしくは宿主細胞で動物を免疫化する工程を含む方法によって得られる。
別の実施形態では、抗体が結合することができるCLDN6は、配列番号:2のアミノ酸配列または配列番号:8のアミノ酸配列を有する。抗体は、配列番号:2のアミノ酸配列を有するCLDN6に結合することができ、かつ配列番号:8のアミノ酸配列を有するCLDN6に結合できることが特に好ましい。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、配列番号:34、36、38および40から選択される抗体重鎖配列またはその変異体のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべてを有する抗体重鎖を含む。CDR配列は、図25に示す上記抗体重鎖配列中の枠で表示される。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、CDR3配列Xaa1 Gly Xaa2 Val Xaa3を有する抗体重鎖を含み、ここでXaa1は任意のアミノ酸、好ましくは芳香族アミノ酸、より好ましくはPheまたはTyr、最も好ましくはTyrであり、Xaa2は任意のアミノ酸、好ましくは芳香族アミノ酸、より好ましくはPheまたはTyr、最も好ましくはTyrであり、およびXaa3は任意のアミノ酸、好ましくはLeuまたはPhe、最も好ましくはLeuである。1つの実施形態では、本発明の抗体は、CDR3配列Asp Xaa1 Gly Xaa2 Val Xaa3またはXaa1 Gly Xaa2 Val Xaa3 Aspを有する抗体重鎖を含み、ここでXaa1、Xaa2およびXaa3は上記で定義したとおりである。1つの実施形態では、本発明の抗体は、CDR3配列Asp Xaa1 Gly Xaa2 Val Xaa3 Aspを有する抗体重鎖を含み、ここでXaa1、Xaa2およびXaa3は上記で定義したとおりである。1つの実施形態では、本発明の抗体は、CDR3配列Ala Arg Asp Xaa1 Gly Xaa2 Val Xaa3 Asp Tyrを有する抗体重鎖を含み、ここでXaa1、Xaa2およびXaa3は上記で定義したとおりである。1つの実施形態では、前記実施形態による抗体は、配列番号:47に記載のCDR1配列もしくはその変異体および/または配列番号:48に記載のCDR2配列もしくはその変異体を有する抗体重鎖を含む。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、配列番号:34、36、38および40から選択される抗体重鎖配列またはその変異体を有する抗体重鎖を含む。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、配列番号:35、37、39および41から選択される抗体軽鎖配列またはその変異体のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべてを有する抗体軽鎖を含む。CDR配列は、図26に示す上記抗体軽鎖配列中の枠で表示される。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、CDR3配列Arg Xaa1 Xaa2 Xaa3 Proを有する抗体軽鎖を含み、ここでXaa1は任意のアミノ酸、好ましくはSerまたはAsn、最も好ましくはSerであり、Xaa2は任意のアミノ酸、好ましくはTyr、Ser、Ile、AsnまたはThr、より好ましくはTyr、SerまたはAsn、最も好ましくはAsnであり、およびXaa3は任意のアミノ酸、好ましくはSerまたはTyr、より好ましくはTyrである。1つの実施形態では、本発明の抗体は、CDR3配列Gln Arg Xaa1 Xaa2 Xaa3 Pro Proを有する抗体軽鎖を含み、ここでXaa1、Xaa2およびXaa3は上記で定義したとおりである。1つの実施形態では、本発明の抗体は、CDR3配列Gln Gln Arg Xaa1 Xaa2 Xaa3 Pro Pro Trp Thrを有する抗体軽鎖を含み、ここでXaa1、Xaa2およびXaa3は上記で定義したとおりである。1つの実施形態では、前記実施形態による抗体は、配列番号:52に記載のCDR1配列もしくはその変異体および/または配列番号:53に記載のCDR2配列もしくはその変異体を有する抗体軽鎖を含む。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、配列番号:35、37、39、41、54および55から選択される抗体軽鎖配列またはその変異体を有する抗体軽鎖を含む。
様々な実施形態において、本発明の抗体は、上記で論じた抗体重鎖および同じく上記で論じた抗体軽鎖を含む。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、
(i)配列番号:xの抗体重鎖配列またはその変異体のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべてを有する抗体重鎖、および
(ii)配列番号:x+1の抗体軽鎖配列またはその変異体のCDR配列の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つすべてを有する抗体軽鎖
を含み、ここでxは34、36、38および40から選択される。
CDR配列は、それぞれ図25および26に示す上記抗体重鎖配列および抗体軽鎖配列中の枠で表示される。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、
(i)Xaa1 Gly Xaa2 Val Xaa3、Asp Xaa1 Gly Xaa2 Val Xaa3、Xaa1 Gly Xaa2 Val Xaa3 Asp、Asp Xaa1 Gly Xaa2 Val Xaa3 Asp、およびAla Arg Asp Xaa1 Gly Xaa2 Val Xaa3 Asp Tyrから成る群より選択されるCDR3配列を有し、ここでXaa1は任意のアミノ酸、好ましくは芳香族アミノ酸、より好ましくはPheまたはTyr、最も好ましくはTyrであり、Xaa2は任意のアミノ酸、好ましくは芳香族アミノ酸、より好ましくはPheまたはTyr、最も好ましくはTyrであり、およびXaa3は任意のアミノ酸、好ましくはLeuまたはPhe、最も好ましくはLeuである、抗体重鎖、ならびに
(ii)Arg Xaa1 Xaa2 Xaa3 Pro、Gln Arg Xaa1 Xaa2 Xaa3 Pro Pro、Gln Gln Arg Xaa1 Xaa2 Xaa3 Pro Pro Trp Thrから成る群より選択されるCDR3配列を有し、ここでXaa1は任意のアミノ酸、好ましくはSerまたはAsn、最も好ましくはSerであり、Xaa2は任意のアミノ酸、好ましくはTyr、Ser、Ile、AsnまたはThr、より好ましくはTyr、SerまたはAsn、最も好ましくはAsnであり、およびXaa3は任意のアミノ酸、好ましくはSerまたはTyr、より好ましくはTyrである、抗体軽鎖
を含む。
1つの実施形態では、前記実施形態による抗体は、(i)配列番号:47に記載のCDR1配列もしくはその変異体および/または配列番号:48に記載のCDR2配列もしくはその変異体を有する抗体重鎖、ならびに/あるいは(ii)配列番号:52に記載のCDR1配列もしくはその変異体および/または配列番号:53に記載のCDR2配列もしくはその変異体を有する抗体軽鎖を含む。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、
(i)配列番号:34、36、38および40から選択される抗体重鎖配列またはその変異体、好ましくは配列番号:36の抗体重鎖配列またはその変異体を含む抗体重鎖、ならびに
(ii)配列番号:35、37、39、41、54および55から選択される抗体軽鎖配列またはその変異体、好ましくは配列番号:35の抗体軽鎖配列またはその変異体を含む抗体軽鎖
を含有する。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、
(i)配列番号:36の抗体重鎖配列またはその変異体を含む抗体重鎖、ならびに
(ii)配列番号:35、54および55から選択される抗体軽鎖配列またはその変異体を含む抗体軽鎖
を含有する。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、
(i)配列番号:36の抗体重鎖配列またはその変異体を含む抗体重鎖、ならびに
(ii)配列番号:54および55から選択される抗体軽鎖配列またはその変異体を含む抗体軽鎖
を含有する。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、
(i)配列番号:36の抗体重鎖配列またはその変異体を含む抗体重鎖、および
(ii)配列番号:35の抗体軽鎖配列またはその変異体を含む抗体軽鎖
を含有する。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、
(i)配列番号:xの抗体重鎖配列またはその変異体を含む抗体重鎖、ならびに
(ii)配列番号:x+1の抗体軽鎖配列またはその変異体を有する抗体軽鎖
を含み、ここでxは34、36、38および40から選択される。
好ましい実施形態では、本発明の抗体は、γ−1重鎖定常領域、好ましくは配列番号:25に示す配列のようなヒトγ−1重鎖定常領域を含む抗体重鎖を含むおよび/またはκ軽鎖定常領域、好ましくは配列番号:27に示す配列のようなヒトκ軽鎖定常領域を含む抗体軽鎖を含有する。
好ましい実施形態では、抗体は、以下の活性:(i)CLDN6を発現する細胞の死滅化、(ii)CLDN6を発現する細胞の増殖の阻害、(iii)CLDN6を発現する細胞のコロニー形成の阻害、(iv)確立された腫瘍の寛解、すなわち大きさの縮小、好ましくは完全な寛解、すなわち完全な消失を媒介すること、(v)腫瘍の形成または再形成の防止、および(vi)CLDN6を発現する細胞の転移の阻害、の1またはそれ以上を有する。したがって、抗体は、特に患者に投与する場合、前記の1またはそれ以上のために使用し得る。細胞のそのような死滅化および/または細胞の1もしくはそれ以上の活性の阻害は、本明細書で述べるように治療的に利用することができる。特に、細胞の死滅化、細胞の増殖の阻害および/または細胞のコロニー形成の阻害は、癌転移を含む、癌を治療するまたは予防するために利用できる。細胞の増殖、コロニー形成および/または転移の阻害は、特に、癌転移および癌細胞の転移拡大を治療するまたは予防するために利用できる。好ましくは、本発明の抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシス、同型接着および/または食作用を誘導することによって、好ましくはCDC媒介性溶解および/またはADCC媒介性溶解を誘導することによって細胞の死滅化を媒介する。しかし、本発明はまた、抗体が、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシス、同型接着および/または食作用を誘導することなく、細胞の死滅化ならびに/または細胞の1もしくはそれ以上の活性の阻害、例えば細胞増殖および/もしくはコロニー形成の阻害のような本明細書で述べるその活性を及ぼす実施形態も包含する。例えば、本発明の抗体はまた、単に細胞表面のCLDN6に結合することによって、したがって、例えば細胞の増殖をブロックすることによっても作用を及ぼし得る。1つの実施形態では、本発明の抗体は細胞のCDC媒介性溶解を誘導しない。
好ましくは、細胞のADCC媒介性溶解はエフェクター細胞の存在下で起こり、エフェクター細胞は、特定の実施形態では単球、単核細胞、NK細胞およびPMNから成る群より選択され、食作用はマクロファージによる。
CLDN6を発現する細胞、好ましくは癌細胞の増殖を阻害するまたは低減する活性は、ブロモデオキシウリジン(5−ブロモ−2−デオキシウリジン、BrdU)を使用したアッセイにおいてCLDN6を発現する癌細胞の増殖を定量することによってインビトロで測定できる。BrdUはチミジンの類似体である合成ヌクレオシドであり、複製中の細胞の新たに合成されたDNAに組み込まれることができ(細胞周期のS期の間に)、DNA複製の間にチミジンに置き換わる。例えばBrdUに特異的な抗体を使用して、組み込まれた化学物質を検出することにより、そのDNAを活発に複製していた細胞が示される。
CLDN6を発現する細胞、好ましくは癌細胞のコロニー形成を阻害するまたは低減する活性は、クローン原性アッセイにおいてインビトロで測定できる。クローン原性アッセイは、細胞の生存および増殖に関する特定の作用物質の有効性を検討するための微生物学技術である。この技術は、増殖中の腫瘍細胞への薬剤または放射線の効果を測定するために癌の研究所において頻繁に使用される。実験は3つの主要な工程:(i)細胞、特に癌細胞の試料に治療を適用する工程、(ii)組織培養容器中で細胞を平板培養する工程、および(iii)細胞を増殖させる工程を含む。生じたコロニーを固定し、染色して、計数する。個々の腫瘍細胞が器官に定着する場合、コロニー形成は転移の形成に関して重要である。抗体の阻害活性は、転移の形成を抑制するうえでのそれらの潜在能を示す。クローン原性アッセイにおいてコロニー形成を阻害するまたは低減する活性を有する抗体は、癌細胞、特に本明細書で言及する癌型の転移および転移拡大を治療するまたは予防するために特に有用である。
好ましい実施形態では、抗体は、CLDN6をその天然立体配座で担持する細胞に対して1またはそれ以上の免疫エフェクター機能を示し、ここで1またはそれ以上の免疫エフェクター機能は、好ましくは補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、アポトーシスの誘導、および増殖の阻害から成る群より選択され、好ましくは、エフェクター機能はADCCおよび/またはCDCである。
好ましくは、前記抗体によって示される前記1もしくはそれ以上の活性または1もしくはそれ以上の免疫エフェクター機能は、前記抗体がCLDN6に、好ましくはCLDN6の細胞外部分内に位置するエピトープに結合することによって誘導され、ここでCLDN6の前記細胞外部分は、好ましくは配列番号:6、配列番号:7、配列番号:14および配列番号:15のいずれか1つのアミノ酸配列、好ましくは配列番号:6または配列番号:7のアミノ酸配列、より好ましくは配列番号:6のアミノ酸配列を含む。
本発明によれば、CLDN6を発現する細胞は、好ましくはその細胞表面とCLDN6とが結合することを特徴とする。CLDN6を発現する細胞またはCLDN6をその天然立体配座で担持する細胞は、好ましくは腫瘍細胞、例えば癌細胞、好ましくは、卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱の癌、特に移行上皮癌および乳頭癌、腎癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎芽性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および精巣胎児性癌、子宮癌、奇形癌または胎生期癌などの胚細胞腫瘍、特に精巣の胚細胞腫瘍、ならびにそれらの転移形態から成る群より選択される癌に由来する癌細胞である。
本発明の抗体は、標的細胞傷害性、すなわち腫瘍細胞の死滅化を提供するために1またはそれ以上の治療エフェクター成分、例えば放射性標識、細胞毒、治療用酵素、アポトーシスを誘導する作用物質等に連結され得る。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、(i)CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞に結合し、および(ii)CLDN6を発現せず、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴としない細胞には結合しない。本発明の抗体は、好ましくは(i)CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の死滅化を媒介しおよび/または細胞の増殖を阻害し、ならびに(ii)CLDN6を発現せず、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴としない細胞の死滅化を媒介しないおよび/または細胞の増殖を阻害しない。
特に好ましい実施形態では、本発明の抗体は、生細胞の表面に存在するCLDN6の天然エピトープ、例えば配列番号:6または7のエピトープに結合する。さらなる好ましい実施形態では、本発明の抗体は、CLDN6を発現する癌細胞に特異的であり、CLDN6を発現しない癌細胞には結合しない。
本発明の抗体は、マウス、ラット、ウサギ、モルモットおよびヒトを含むがこれらに限定されない、様々な種に由来し得る。本発明の抗体はまた、1つの種、好ましくはヒトに由来する抗体定常領域が別の種に由来する抗原結合部位と組み合わされたキメラ分子を包含する。さらに本発明の抗体は、非ヒト種に由来する抗体の抗原結合部位がヒト起源の定常領域およびフレームワーク領域と組み合わされたヒト化分子を包含する。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含み、IgG2a(例えばIgG2a、κ、λ)、IgG2b(例えばIgG2b、κ、λ)、IgG3(例えばIgG3、κ、λ)およびIgM抗体を包含する。しかし、IgG1、IgA1、IgA2、分泌型IgA、IgD、およびIgE抗体を含む、他の抗体アイソタイプも本発明に包含される。抗体は、全長抗体または、例えばFab、F(ab')、Fv、一本鎖Fvフラグメントまたは二重特異性抗体を含む、その抗原結合フラグメントであり得る。さらに、抗原結合フラグメントは、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した結合ドメインポリペプチド(重鎖可変領域または軽鎖可変領域など)、(ii)ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、および(iii)CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質を包含する。そのような結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、さらに、米国特許出願第2003/0118592号および同第2003/0133939号に開示されている。
本発明の抗体は、好ましくはモノクローナル、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体、または抗体のフラグメントである。本発明の抗体は完全ヒト抗体を包含する。そのような抗体は、V−D−J組換えおよびアイソタイプスイッチを受けることによりCLDN6に対するヒトモノクローナル抗体の多数のアイソタイプを産生することができる非ヒトトランスジェニック動物、例えばトランスジェニックマウスにおいて作製され得る。そのようなトランスジェニック動物はまた、米国特許出願第2003/0017534号に開示されているようなポリクローナル抗体を作製するためのトランスジェニックウサギであり得る。
本発明の抗体は、好ましくは約1〜100nMまたはそれ以下の解離平衡定数(KD)でCLDN6から解離する。好ましくは、本発明の抗体は、関連する細胞表面抗原と交差反応せず、したがってそれらの機能を阻害しない。
好ましい実施形態では、本発明の抗体は、以下の特性:
a)CLDN6に対する特異性;
b)CLDN6に対する約100nMまたはそれ以下、好ましくは約5〜10nMまたはそれ以下、より好ましくは約1〜3nMまたはそれ以下の結合親和性;
c)CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞のCDCを誘導する能力;
d)CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の増殖を阻害する能力;
e)CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞のアポトーシスを誘導する能力;
f)CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の同型接着を誘導する能力;
g)エフェクター細胞の存在下で、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞のADCCを誘導する能力;
h)CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする腫瘍細胞を有する被験者の生存を延長させる能力;
i)CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞を枯渇させる能力;
j)生細胞の表面でCLDN6を凝集させる能力
の1またはそれ以上を特徴とし得る。
本明細書で述べる好ましい抗体は、DSMZ(Inhoffenstr.7B,38124 Braunschweig,Germany)に寄託された、以下の名称およびアクセッション番号の1つを有するハイブリドーマ細胞によって産生されるまたは前記ハイブリドーマ細胞から得られる抗体である:
1.GT512muMAB 59A、アクセッション番号DSM ACC3067、2010年6月21日寄託;
2.GT512muMAB 60A、アクセッション番号DSM ACC3068、2010年6月21日寄託;
3.GT512muMAB 61D、アクセッション番号DSM ACC3069、2010年6月21日寄託;
4.GT512muMAB 64A、アクセッション番号DSM ACC3070、2010年6月21日寄託;
5.GT512muMAB 65A、アクセッション番号DSM ACC3071、2010年6月21日寄託;
6.GT512muMAB 66B、アクセッション番号DSM ACC3072、2010年6月21日寄託;
7.GT512muMAB 67A、アクセッション番号DSM ACC3073、2010年6月21日寄託;
8.GT512muMAB 55A、アクセッション番号DSM ACC3089、2010年8月31日寄託;または
9.GT512muMAB 89A、アクセッション番号DSM ACC3090、2010年8月31日寄託。
本発明の抗体は、本明細書では抗体の名称に言及することによっておよび/または抗体を産生するクローン、例えばmuMAB 59Aに言及することによって指定される。
さらなる好ましい抗体は、上述したハイブリドーマによって産生されるおよび上述したハイブリドーマから得られる抗体の特異性を有する抗体、特に上述したハイブリドーマによって産生されるおよび上述したハイブリドーマから得られる抗体のものと同一または高度に相同な抗原結合部分または抗原結合部位、特に可変領域を含む抗体である。好ましい抗体は、上述したハイブリドーマによって産生されるおよび上述したハイブリドーマから得られる抗体のCDR領域と同一または高度に相同なCDR領域を有するものであることが企図される。「高度に相同な」により、1〜5、好ましくは1〜4、例えば1〜3または1もしくは2の置換が各々のCDR領域内で為され得ることが企図される。特に好ましい抗体は、上述したハイブリドーマによって産生されるおよび上述したハイブリドーマから得られる抗体のキメラおよびヒト化形態である。
したがって、本発明の抗体は、(i)アクセッション番号DSM ACC3067(GT512muMAB 59A)、DSM ACC3068(GT512muMAB 60A)、DSM ACC3069(GT512muMAB 61D)、DSM ACC3070(GT512muMAB 64A)、DSM ACC3071(GT512muMAB 65A)、DSM ACC3072(GT512muMAB 66B)、DSM ACC3073(GT512muMAB 67A)、DSM ACC3089(GT512muMAB 55A)またはDSM ACC3090(GT512muMAB 89A)の下で寄託されたクローンによって産生されるまたは前記クローンから得られる抗体、(ii)(i)の下にある抗体のキメラまたはヒト化形態である抗体、(iii)(i)の下にある抗体の特異性を有する抗体、および(iv)(i)の下にある抗体の抗原結合部分または抗原結合部位を含む抗体から成る群より選択され得る。(i)の下にある抗体の抗原結合部分または抗原結合部位は、(i)の下にある抗体の可変領域を含み得る。
本発明はまた、本明細書で述べる抗体を産生するハイブリドーマ細胞などの細胞に関する。
好ましいハイブリドーマ細胞は、DSMZ(Inhoffenstr.7B,38124 Braunschweig,Germany)に寄託された、以下の名称およびアクセッション番号の1つを有するものである:
1.GT512muMAB 59A、アクセッション番号DSM ACC3067、2010年6月21日寄託;
2.GT512muMAB 60A、アクセッション番号DSM ACC3068、2010年6月21日寄託;
3.GT512muMAB 61D、アクセッション番号DSM ACC3069、2010年6月21日寄託;
4.GT512muMAB 64A、アクセッション番号DSM ACC3070、2010年6月21日寄託;
5.GT512muMAB 65A、アクセッション番号DSM ACC3071、2010年6月21日寄託;
6.GT512muMAB 66B、アクセッション番号DSM ACC3072、2010年6月21日寄託;
7.GT512muMAB 67A、アクセッション番号DSM ACC3073、2010年6月21日寄託;
8.GT512muMAB 55A、アクセッション番号DSM ACC3089、2010年8月31日寄託;または
9.GT512muMAB 89A、アクセッション番号DSM ACC3090、2010年8月31日寄託。
本発明の抗CLDN6抗体は、他の結合特異性成分に誘導体化する、連結するまたは他の結合特異性成分と共発現させることができる。特定の実施形態では、本発明は、CLDN6に対する少なくとも1つの第一結合特異性成分(例えば抗CLDN6抗体またはそのミメティック)、およびFc受容体(例えばFcγRIなどのFcγ受容体もしくは任意の他のFc受容体)またはT細胞受容体、例えばCD3に対する結合特異性成分などの、エフェクター細胞に対する第二結合特異性成分を含む、二重特異性または多重特異性分子を提供する。
したがって、本発明は、CLDN6およびFc受容体またはT細胞受容体、例えばCD3の両方に結合する二重特異性および多重特異性分子を包含する。Fc受容体の例は、IgG受容体、Fcγ受容体(FcγR)、例えばFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)である。IgA受容体(例えばFcαRI)などの他のFc受容体も標的とすることができる。Fc受容体は、好ましくはエフェクター細胞、例えば単球、マクロファージまたは活性化単核細胞の表面に位置する。好ましい実施形態では、二重特異性および多重特異性分子は、受容体の免疫グロブリンFc(例えばIgGまたはIgA)結合部位とは異なる部位でFc受容体に結合する。そのため、二重特異性および多重特異性分子の結合は生理的レベルの免疫グロブリンによってブロックされない。
さらに別の態様では、本発明の抗CLDN6抗体を別の機能性分子、例えば別のペプチドまたはタンパク質(例えばFab'フラグメント)で誘導体化する、別の機能性分子に連結する、または別の機能性分子と共発現させる。例えば、本発明の抗体を1またはそれ以上の他の分子実体、例えば別の抗体(例えば二重特異性または多重特異性抗体を作製するため)、細胞毒、細胞リガンドまたは抗原(例えばイムノトキシンなどの免疫複合体を作製するため)などに機能的に連結することができる(例えば化学結合、遺伝子融合、非共有結合または他の方法によって)。本発明の抗体は、他の治療成分、例えば放射性同位体、低分子抗癌剤、組換えサイトカインまたはケモカインに連結することができる。したがって、本発明は、そのすべてがCLDN6を発現する細胞および/またはその細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞に結合し、ならびに他の分子をそのような細胞に標的するために使用できる、多種多様な抗体複合体、二重特異性および多重特異性分子ならびに融合タンパク質を包含する。
一般に、本発明の目的上、本明細書で述べる抗体複合体、二重特異性および多重特異性分子ならびに融合タンパク質などのすべての抗体誘導体は、「抗体」という用語に包含される。
さらなる態様では、本発明はまた、非免疫グロブリンドメインに由来するCLDN6結合タンパク質、特に一本鎖タンパク質を想定する。そのような結合タンパク質およびそれらの生産のための方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Binz et al.(2005)Nature Biotechnology 23(10):1257−1268に記載されている。免疫グロブリンまたは免疫グロブリン由来の結合分子に関して本明細書で与えられる教示は、対応して非免疫グロブリンドメインに由来する結合分子にも適用されることが了解されるべきである。特に、非免疫グロブリンドメインに由来するそのような結合分子を使用して、前記標的を発現し、その細胞表面と前記標的の結合を特徴とする細胞のCLDN6をブロックすること、したがって、本発明の抗体に関して本明細書で開示される治療効果を生じさせる、特に本明細書で開示される腫瘍細胞の1またはそれ以上の活性の阻害、例えば増殖の阻害を生じさせることが可能である。義務的ではないが、抗体のエフェクター機能を、例えば抗体のFc領域への融合によって、そのような非免疫グロブリン結合分子に付与することが可能である。
本発明は、一般に、細胞によって発現され、細胞の表面と結合したCLDN6を標的とすることによる、疾患、特に腫瘍疾患の治療および/または診断を包含する。これらの方法は、そのような細胞の選択的検出および/または根絶を提供し、それにより、CLDN6を発現せず、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴としない正常細胞への有害作用を最小限に抑える。治療または診断のための好ましい疾患は、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞が関与するもの、例えば腫瘍疾患、特に本明細書で述べるような癌疾患である。
1つの態様では、本発明は、本発明の1つの抗体または抗体の組合せを含有する組成物、例えば医薬および診断組成物/キットを提供する。本発明の医薬組成物は、医薬的に許容される担体を含有してよく、場合により1またはそれ以上の補助剤、安定剤等を含有し得る。特定の実施形態では、組成物は、異なるエピトープに結合するまたは、CDCおよび/またはADCCを誘導することならびにアポトーシスを誘導することなどの、異なる機能特徴を有する抗体の組合せを含有する。本発明のこの実施形態では、抗体は、組合せとして、例えば2またはそれ以上の抗CLDN6モノクローナル抗体を含有する医薬組成物として使用し得る。例えば、異なるが補完的な活性を有する抗CLDN6抗体を、所望治療効果を達成するために単一療法において組み合わせることができる。好ましい実施形態では、組成物は、CDCを媒介する抗CLDN6抗体を、アポトーシスを誘導する別の抗CLDN6抗体と組み合わせて含有する。別の実施形態では、組成物は、エフェクター細胞の存在下で標的細胞の極めて有効な死滅化を媒介する抗CLDN6抗体を、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の増殖を阻害する別の抗CLDN6抗体と組み合わせて含有する。
本発明はまた、本発明の2またはそれ以上の抗CLDN6抗体の同時または連続投与を含み、ここで、好ましくは前記抗体の少なくとも1つはキメラ抗CLDN6抗体であり、および少なくとも1つのさらなる抗体はヒト抗CLDN6抗体であって、それらの抗体はCLDN6の同じエピトープまたは異なるエピトープに結合する。好ましくは、本発明のキメラCLDN6抗体を最初に投与し、次いで本発明のヒト抗CLDN6抗体を投与するが、ここでヒト抗CLDN6抗体は、好ましくは長期間にわたって、すなわち維持療法として投与する。
本発明の抗体、複合体、二重特異性/多重特異性分子および組成物は、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の増殖を阻害するおよび/または細胞を死滅させるように、細胞を有効量の抗体、複合体、二重特異性/多重特異性分子または組成物と接触させることにより、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の増殖を阻害するためおよび/またはCLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞を選択的に死滅させるための様々な方法において使用することができる。1つの実施形態では、その方法は、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞を、場合によりエフェクター細胞の存在下で、例えばCDC、アポトーシス、ADCC、食作用によって、またはこれらの機構の2もしくはそれ以上の組合せによって死滅させることを含む。本発明の抗体を使用して阻害するまたは死滅させることができる、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞は、癌細胞を含む。
本発明の抗体、複合体、二重特異性/多重特異性分子および組成物は、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞が関与する様々な疾患を、そのような疾患に罹患している患者に抗体を投与することによって治療するおよび/または予防するために使用できる。治療する(例えば改善する)または予防することができる例示的な疾患には、腫瘍形成性疾患が含まれるが、これらに限定されない。治療できるおよび/または予防できる腫瘍形成性疾患の例には、癌疾患、例えば卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱の癌、特に移行上皮癌および乳頭癌、腎癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎芽性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および精巣胎児性癌、子宮癌、奇形癌または胎生期癌などの胚細胞腫瘍、特に精巣の胚細胞腫瘍、ならびにそれらの転移形態が含まれる。
さらなる態様では、本発明は、本発明の抗体、複合体、二重特異性/多重特異性分子または組成物を被験者に投与することを含む、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞が関与する疾患または障害を治療するまたは予防する方法に関する。好ましくは、疾患または障害は腫瘍関連疾患であり、特定の実施形態では、卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱の癌、特に移行上皮癌および乳頭癌、腎癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎芽性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および精巣胎児性癌、子宮癌、奇形癌または胎生期癌などの胚細胞腫瘍、特に精巣の胚細胞腫瘍、ならびにそれらの転移形態から成る群より選択される。CLDN6は、好ましくは前記細胞の表面で発現される。
本発明は、腫瘍疾患の予防的および/または治療的処置のため、すなわち腫瘍疾患を有するまたは腫瘍疾患を発症する危険性がある患者を治療するための、本明細書で述べる作用物質および組成物の使用を含み得る。1つの態様では、本発明は、本明細書で述べる作用物質および組成物の1またはそれ以上を投与することを含む、腫瘍増殖を阻害するための方法を提供する。
好ましくは、本明細書で述べる作用物質および組成物は、組織または器官が腫瘍を有さない場合にその細胞がCLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする、胎盤組織または胎盤などの組織または器官には治療活性物質が送達されないまたは実質的に送達されない方法で投与される。このために、本明細書で述べる作用物質および組成物は局所的に投与することができる。
1つの態様では、本発明は、本明細書で述べる治療の方法において使用するための本明細書で述べる抗体を提供する。1つの実施形態では、本発明は、本明細書で述べる治療の方法において使用するための本明細書で述べる医薬組成物を提供する。
本発明の特定の実施形態では、抗体を投与される被験者は、化学療法剤、放射線またはFc受容体、例えばFcγ受容体、例えばサイトカインの発現もしくは活性を調節する、例えば増強するもしくは阻害する作用物質で付加的に治療される。治療中の投与のための典型的なサイトカインには、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロンγ(IFN−γ)および腫瘍壊死因子(TNF)が含まれる。典型的な治療薬には、中でも特に、ドキソルビシン、シスプラチン、タキソテール、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、ゲムシタビンおよびシクロホスファミドなどの抗腫瘍薬が含まれる。
さらに別の態様では、本発明は、抗体を得るためにマウスなどの非ヒト動物をヒトCLDN6またはそのペプチドフラグメントで免疫化する免疫化方法に関する。免疫化のための好ましいペプチドは、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:14および配列番号:15から成る群より選択されるもの、ならびに免疫学的に等価のペプチドである。
野生型ならびにトランスジェニック非ヒト動物を、CLDN6抗原もしくはそのペプチドフラグメントならびに/またはCLDN6もしくはそのペプチドフラグメントを発現する核酸および/もしくは細胞の精製製剤または富化製剤で免疫化することができる。好ましくは、トランスジェニック非ヒト動物は、V−D−J組換えおよびアイソタイプスイッチを受けることによってCLDN6に対するヒトモノクローナル抗体(例えばIgG、IgAおよび/またはIgM)の多数のアイソタイプを産生することができる。アイソタイプスイッチは、例えば古典的または非古典的アイソタイプスイッチによって起こり得る。
したがって、さらに別の態様では、本発明は、上述した非ヒト動物からの単離されたB細胞を提供する。単離されたB細胞を、次に、不死化細胞への融合によって不死化し、本発明の抗体の供給源(例えばハイブリドーマ)を提供することができる。そのようなハイブリドーマ(すなわち本発明の抗体を産生する)も、本発明の範囲に包含される。
さらなる態様では、本発明は、本発明の抗体を使用して患者から単離された生物学的試料における、CLDN6またはCLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の検出および/またはその量の測定を含む、腫瘍疾患の診断、検出または観測のための方法に関する。生物学的試料は、腫瘍疾患を有する、腫瘍疾患を有するもしくは発症する疑いがある、または腫瘍疾患の潜在的可能性を有する患者から単離され得る。
本発明による腫瘍疾患の診断、検出または観測のための方法の1つの実施形態では、生物学的試料および/または対照/標準試料は、腫瘍疾患による罹病に関して診断、検出または観測すべき組織または器官に対応する組織または器官に由来し、例えば診断、検出または観測すべき腫瘍疾患は卵巣癌であり、生物学的試料および/または対照/標準試料は卵巣組織である。そのような組織および器官を、本明細書では、例えば種々の腫瘍疾患および癌に関連して述べる。
腫瘍疾患の診断、検出または観測のための方法の1つの実施形態では、生物学的試料は、組織または器官が腫瘍を有さない場合はその細胞がCLDN6を実質的に発現せず、その細胞表面とCLDN6の実質的な結合を特徴としない組織または器官に由来する。好ましくは、前記組織は胎盤組織以外の組織である。
典型的には、生物学的試料中の標的分子のレベルを標準レベルと比較し、ここで、前記標準レベルからの逸脱は被験者における腫瘍疾患の存在および/または病期を示す。標準レベルは、対照試料(例えば健常組織または被験者由来の)において測定されるレベルまたは健常被験者からの平均レベルであり得る。前記標準レベルからの「逸脱」とは、何らかの有意の変化、例えば少なくとも10%、20%または30%、好ましくは少なくとも40%または50%、またはさらにそれ以上の上昇または低下を表す。好ましくは、前記生物学的試料におけるCLDN6もしくはCLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の存在、または標準レベルと比較して上昇している、生物学的試料中のCLDN6もしくはCLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の量は、腫瘍疾患の存在を示す。
典型的には、本発明の方法における検出および/または量の測定は、標的分子に特異的に結合する標識抗体の使用を含む。
特定の態様では、本発明は、腫瘍疾患の検出、すなわち腫瘍疾患の位置または部位、例えば特定の組織または器官を決定するための方法であって、検出可能な標識に結合された本発明の抗体を患者に投与することを含む方法に関する。前記患者における組織または器官の標識化は、前記組織または器官における腫瘍疾患の存在または腫瘍疾患の危険性を示し得る。
本明細書で例示されるように、本発明の抗体は、抗体を発現するハイブリドーマから直接入手できるか、またはクローニングして、宿主細胞(例えばCHO細胞またはリンパ球細胞)において組換え発現させることができる。宿主細胞のさらなる例は、大腸菌(E.coli)などの微生物、および酵母などの真菌である。あるいは、本発明の抗体はトランスジェニック非ヒト動物または植物において組換え生産することができる。しかし、本発明はまた、抗体が、本明細書で開示される免疫化方法を用いた免疫化またはワクチン接種によって患者においてインサイチュで作製される実施形態を想定する。
本発明はまた、本明細書で述べる抗体またはその部分、例えば抗体鎖をコードする遺伝子または核酸配列を含む核酸に関する。核酸は、ベクター、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージまたは、例えば遺伝子工学において従来使用される別のベクター内に含まれ得る。ベクターは、適切な宿主細胞中でおよび適切な条件下でベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子などのさらなる遺伝子を含み得る。さらに、ベクターは、適切な宿主におけるコード領域の適切な発現を可能にする発現制御エレメントを含み得る。そのような制御エレメントは当業者に公知であり、プロモーター、スプライスカセットおよび翻訳開始コドンが含まれ得る。
好ましくは、本発明の核酸は、真核細胞または原核細胞における発現を可能にする上記発現制御配列に作動可能に連結される。真核細胞または原核細胞における発現を確実にする制御エレメントは当業者に周知である。
本発明による核酸分子の構築のため、上記核酸分子を含むベクターの構築のため、適切に選択された宿主細胞へのベクターの導入のため、発現を生じさせるまたは実現するための方法は、当分野において周知である。
本発明のさらなる態様は、本明細書で開示される核酸またはベクターを含む宿主細胞に関する。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
CLDN3、CLDN4、CLDN6およびCLDN9の配列アラインメント。 CLDN6特異的抗体を産生するように免疫化したマウスから得た血清の免疫蛍光分析。 (A)それぞれヒトCLDN6をコードする核酸とGFPをコードする核酸を同時トランスフェクトした固定していないCHO−K1細胞を抗CLDN6モノクローナルマウス抗体(R&D Systems、MAB3656)でプローブした。CLDN6は、トランスフェクトされた細胞の形質膜に位置し、特異的抗体によって生細胞上で標的することができる。 (B)ハイブリドーマF3−6C3−H8が産生されたことに基づき、マウスからの血清はヒトCLDN6をコードする核酸とGFPをコードする核酸を同時トランスフェクトした非固定CHO−K1細胞の表面でCLDN6に結合する抗体を含んだ。 HEK293T細胞におけるクローディンタンパク質の内因性発現を検定するためのウェスタンブロット分析。 それぞれCLDN3、CLDN4、CLDN6およびCLDN9をコードする核酸をトランスフェクトしたまたは擬似トランスフェクトしたHEK293T細胞のタンパク質溶解物を、市販の抗CLDN3(A)(Invitrogen、カタログ番号34−1700)、抗CLDN4(A)(Zymed、32−9400)、抗CLDN6(A)(ARP、01−8865)および抗CLDN9(A)(Santa Cruz、sc−17672)抗体を用いたウェスタンブロット法によって試験した。抗体は、それぞれのHEK293Tトランフェクタントにおいてのみそれらの対応する標的の発現を検出した。トランスフェクトしていないHEK293T細胞ではこれらのクローディンのいずれについても内因性発現を認めなかった。 市販の抗CLDN抗体の特異性を検定するためのフローサイトメトリ分析。 それぞれCLDN3、CLDN4、CLDN6およびCLDN9をコードする核酸をトランスフェクトしたまたはトランスフェクトしていないHEK293T細胞への市販の抗CLDN抗体の結合をフローサイトメトリによって測定した。市販の抗CLDN3抗体だけがその標的に特異的である。 本発明に従って作製した抗CLDN抗体の特異性を検定するためのフローサイトメトリ分析。 CLDN6、CLDN3、CLDN4またはCLDN9をコードするベクターと蛍光マーカーをコードするベクターを同時トランスフェクトしたHEK293T細胞への、モノクローナルハイブリドーマサブクローンからの上清中の抗体の結合をフローサイトメトリによって測定した。 (A)モノクローナルハイブリドーマサブクローンF3−6C3−H8からの上清中の抗体は、CLDN6をトランスフェクトした細胞に特異的に結合するが、それぞれCLDN3、CLDN4およびCLDN9をトランスフェクトした細胞には特異的に結合しない。これに対し、モノクローナルハイブリドーマサブクローンF4−4F7−F2からの上清中の抗体は、CLDN6またはCLDN9をトランスフェクトした細胞に結合する。モノクローナルハイブリドーマサブクローンF3−6C3−H8からの上清中の抗体も、CLDN6の(I143V)−SNP変異体をトランスフェクトした細胞に結合する。 (B)モノクローナルハイブリドーマサブクローンF3−7B3−B4からの上清中の抗体は、CLDN6、CLDN3またはCLDN9をトランスフェクトした細胞に結合する。モノクローナルハイブリドーマサブクローンF3−3F7−A5からの上清中の抗体は、CLDN6、CLDN4またはCLDN9をトランスフェクトした細胞に結合する。 抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67Aの結合特異性。 ヒトCLDN6、3、4、9およびCLDN6 SNP(一塩基多型)変異体I143Vへの抗CLDN6抗体の結合を、対応するヒトクローディンを一過性に発現するHEK293T細胞を用いたフローサイトメトリによって分析した。HEK293Tを、非トランスフェクト細胞(Q1およびQ3集団)とトランスフェクト細胞(Q2およびQ4集団)とを識別するために蛍光マーカーを同時トランスフェクトした。使用した抗体濃度は、CLDN6への結合を飽和させる濃度(25μg/ml)であった。ヒトCLDN6、3、4、9およびCLDN6−SNP(I143V)の発現を、ヒトクローディン6(R&D Systems、MAB3656)、ヒトクローディン3(R&D Systems、MAB4620)およびヒトクローディン4(R&D Systems、MAB 4219)に対する市販のモノクローナル抗体を用いて確認した。 抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67Aの相対的親和性。 相対的親和性を調べるため、HEK293細胞の表面で安定に発現されるヒトCLDN6への抗CLDN6抗体の結合をフローサイトメトリによって分析した。飽和結合実験において、抗体の濃度をFACSシグナル(蛍光強度の中央値)に対してプロットした。EC50(平衡で結合部位の半数に結合する抗体濃度)を非線形回帰によって計算した。CLDN6特異的抗体muMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67Aは、非常に低いEC50値(EC50 200〜500ng/ml)を示し、低濃度で結合の飽和が達成された。 抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67Aの補体依存性細胞傷害(CDC)活性。 抗CLDN6抗体のCDC活性を、非溶解細胞内の内因性ATPを検出するルシフェラーゼ依存性アッセイを用いて分析した。そのため、ヒトCLDN6を安定に発現するCHO−K1細胞を種々の濃度のmuMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67Aで処理した。muMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67Aは用量依存的なCDC活性を示し、低濃度でCDCを誘導した。 内因性にCLDN6を発現するNEC8およびNEC8 LVTS2 54(CLDN6ノックダウン)細胞に対する抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 65Aおよび66Bの補体依存性細胞傷害(CDC)活性。 抗CLDN6抗体muMAB 65Aおよび66Bは、NEC8細胞に対するCDCを用量依存的に誘導した。NEC8 LVTS2 54細胞(CLDN6ノックダウン)を使用することにより、muMAB 65Aおよび66Bの標的特異性が証明された。 腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した早期治療異種移植モデルにおけるmuMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67Aの治療効果。 モデルは、無胸腺Nude−Foxn1nuマウスにおいて内因性にCLDN6を発現するNEC8異種移植片を使用した。食塩水対照群と比較して、muMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67Aは、NEC8細胞を移植したマウスにおいて腫瘍増殖の阻害を示した。 抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aの結合特異性。 ヒトCLDN6、3、4および9への抗CLDN6抗体の結合を、それぞれ対応するヒトクローディンを安定に発現するHEK293細胞を用いたフローサイトメトリによって分析した。使用した抗体濃度は、結合を飽和させる濃度(25μg/ml)であった。ヒトCLDN3、4、6および9の発現を、ヒトクローディン3(R&D Systems、MAB4620)およびヒトクローディン4(R&D Systems、MAB 4219)に対する市販のモノクローナル抗体ならびにCLDN6/9反応性マウスモノクローナル抗体muMAB 5F2D2をそれぞれ使用して確認した。一次抗体を含まない同じ条件下で陰性対照を実施した。 HEK293−CLDN6細胞への抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aの相対的親和性。 相対的親和性を調べるため、HEK293細胞の表面で安定に発現されるヒトCLDN6への抗CLDN6抗体の結合をフローサイトメトリによって分析した。飽和結合実験において、抗体の濃度をFACSシグナル(蛍光強度の中央値)に対してプロットした。EC50(平衡で結合部位の半数に結合する抗体濃度)を非線形回帰によって計算した。CLDN6特異的抗体chimAB 64Aおよび89Aは非常に低いEC50値(EC50 450〜600ng/ml)を示し、低濃度で結合の飽和が達成された。chimAB 67Aおよび61Dは、それぞれ低い(EC50 1000ng/ml)および中間的な(EC50 2300ng/ml)EC50値を示した。 NEC8細胞への抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aの相対的親和性。 ヒトCLDN6を内因性に発現する腫瘍細胞への抗CLDN6抗体の結合親和性を調べるため、精巣癌細胞株NEC8への結合をフローサイトメトリによって分析した。CLDN6特異的抗体chimAB 64Aおよび89Aは非常に低いEC50値(EC50 600〜650ng/ml)を示し、低濃度で結合の飽和が達成され、一方chimAB 61Dおよび67Aは、それぞれ中間的な(EC50 1700ng/ml)および高い(EC50 6100ng/ml)EC50値を示した。 OV90細胞への抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aの相対的親和性。 ヒトCLDN6を内因性に発現する腫瘍細胞への抗CLDN6抗体の結合親和性を調べるため、卵巣癌細胞株OV90への結合をフローサイトメトリによって分析した。CLDN6特異的抗体chimAB 64Aおよび89Aは非常に低いEC50値(EC50 550〜600ng/ml)を示し、低濃度で結合の飽和が達成された。chimAB 61Dおよび67Aは中間的なEC50値(それぞれEC50 1500ng/mlおよびEC50 2300ng/ml)を示した。 NEC8野生型およびNEC8ノックダウン細胞に対する抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aの補体依存性細胞傷害(CDC)活性。 抗CLDN6抗体のCDC活性を、非溶解細胞内の内因性ATPを検出するルシフェラーゼ依存性アッセイを用いて分析した。そのため、ルシフェラーゼを異所性に発現するNEC8野生型細胞(NEC8 LVTS2 77)を種々の濃度のchimAB 61D、64A、67Aおよび89Aで処理した。NEC8細胞に対してchimAB 61D、64A、67Aおよび89Aは用量依存的にCDC活性を示したが、NEC8 CLDN6ノックダウン細胞(NEC8 LVTS2 54)に対してはこれらの抗体のいずれもが非特異的な細胞溶解を誘導しなかった。この結果は、chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aの標的特異的エフェクター機能を明らかにした。 NEC8野生型およびNEC8ノックダウン細胞に対する抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aの抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性。 抗CLDN6抗体のADCC活性を、非溶解細胞内の内因性ATPを検出するルシフェラーゼ依存性アッセイを用いて分析した。そのため、NEC8野生型細胞(NEC8 LVTS2 77)を種々の濃度のchimAB 61D、64A、67Aおよび89Aで処理した。chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aは用量依存的なADCC活性を示し、低い抗体濃度であってもADCCを誘導した。標的特異性を明らかにするため、安定なCLDN6ノックダウンを有するNEC8細胞(NEC8 LVTS2 54)を使用した。 腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した早期治療異種移植モデルにおける抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 61D、64Aおよび67Aの長期的治療効果。 モデルは、無胸腺Nude−Foxn1nuマウスにおいて内因性にCLDN6を発現するNEC8異種移植片を使用した。マウスをCLDN6特異的抗体で46日間処置した。処置後、腫瘍増殖を60日間観測した。免疫療法を停止した後でも、マウスモノクローナル抗体muMAB 61D、64Aおよび67Aで処置したマウスは腫瘍増殖を示さなかった。 腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した早期治療異種移植モデルにおける抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 89Aの治療効果。 モデルは、無胸腺Nude−Foxn1nuマウスにおいて内因性にCLDN6を発現するNEC8異種移植片を使用した。散布図は、無胸腺Nude−Foxn1nuマウスにおけるNEC8異種移植片の早期治療中の種々の時点での移植腫瘍の体積を示す。食塩水対照群と比較して、muMAB 89AはNEC8細胞を移植したマウスにおいて腫瘍増殖の阻害を示した(A)。マウスを、対照としてのPBSおよびCLDN6特異的抗体でそれぞれ47日間処置した。腫瘍増殖をさらに51日間観測した。PBS対照と比較して、muMAB 89Aで処置したマウスでは試験終了時に検出可能な腫瘍が存在しなかった(B)。 腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルにおける抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 64Aの治療効果。 散布図は、無胸腺Nude−Foxn1nuマウスにおける進行後のNEC8異種移植片の治療中の種々の時点での移植腫瘍の体積を示す。マウスモノクローナル抗CLDN6抗体muMAB 64Aによる免疫療法は、抗体および食塩水対照群の両方と比較して固形NEC8異種移植片の腫瘍増殖の阻害を示した。 腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルにおける抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 64Aの長期的治療効果。 移植の15日後に、マウスをCLDN6特異的抗体muMAB 64Aで45日間処置した。腫瘍増殖をさらに49日間観測した(A)。生存率プロットは、CLDN6特異的抗体muMAB 64Aで処置したマウスの生存延長を示した(B)。 腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルにおける抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 61D、67Aおよび89Aの治療効果。 散布図は、進行後のNEC8異種移植片の治療中の種々の時点での移植したNEC8腫瘍の体積を示す。食塩水および抗体対照群と比較して、マウスモノクローナル抗CLDN6抗体muMAB 61D、67Aおよび89Aでは腫瘍増殖の阻害が達成された。 腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルにおける抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 61D、67Aおよび89Aの長期的治療効果。 移植の17日後に、マウスをCLDN6特異的抗体muMAB 61D、67Aおよび89Aで42日間処置した。腫瘍増殖をさらに49日間観測した(A)。 生存率プロットは、CLDN6特異的抗体muMAB 61Dおよび67Aで処置したマウスの生存延長を示した(B)。 NEC8野生型および安定なCLDN6ノックダウンを有するNEC8細胞を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルにおける抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 64Aおよび89Aの治療効果。 muMAB 64Aおよび89Aは、NEC8野生型を移植したマウスにおいてのみ治療効果を示し、NEC8 CLDN6ノックダウン細胞を移植したマウスでは治療効果を示さず、インビボでの抗体の標的特異性を明らかにする。 chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aの高解像度エピトープマッピング。 アラニン突然変異体を、野生型アラニンの場合は「野生型残基番号アラニン」または「野生型残基番号グリシン」として命名し、アミノ酸を一文字表記で示す。CLDN6の1番目の細胞外ドメインのアミノ酸F35、G37、S39およびおそらくT33は、CLDN6特異的キメラ抗体chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aとの相互作用のために重要である。残基I40はchimAB 89Aの結合のために必須であり、chimAB 61Dおよび67Aの結合に寄与する。加えて、CLDN6の2番目の細胞外ドメインのL151はchimAB 67Aとの相互作用に寄与する。免疫蛍光実験はCLDN6突然変異体P28A、W30A、G49A、L50A、W51A、C54AおよびC64Aの発現を確認したが、これらは膜染色を示さなかった。この理由から、これらのアミノ酸と発明者の抗体との相互作用を排除することはできない。全体として、本明細書で同定されるエピトープは、CLDN6のEC1ドメインのDNAおよびペプチドを使用した発明者の免疫化方法と合致する。 本発明のCLDN6特異的抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列のアラインメント。 CDR配列(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)を枠によって示す。 本発明のCLDN6特異的抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列のアラインメント。 CDR配列(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を枠によって示す。 抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSの結合特異性。 抗CLDN6抗体の結合特異性を、ヒトCLDN6、3、4および9をそれぞれ一過性にトランスフェクトしたHEK293T細胞を用いたフローサイトメトリによって分析した。トランスフェクトされた細胞集団とトランスフェクトされていない細胞集団とを識別するため、細胞に蛍光マーカーをレポーターとして同時トランスフェクトした。使用した抗体濃度は結合を飽和させる濃度(100μg/ml)であった。ヒトCLDN3、4、6および9の発現を、ヒトクローディン3(R&D Systems、MAB4620)およびヒトクローディン4(R&D Systems、MAB 4219)に対する市販のモノクローナル抗体ならびにCLDN6/9反応性マウスモノクローナル抗体muMAB 5F2D2をそれぞれ使用して確認した。キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSは、それぞれCLDN3、4および9と相互作用することなくCLDN6への結合を示した。 HEK293−CLDN6細胞への抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSの相対的結合親和性。 相対的親和性を調べるため、HEK293細胞の表面で安定に発現されるヒトCLDN6への抗CLDN6抗体の結合をフローサイトメトリによって分析した。飽和結合実験において、抗体の濃度をFACSシグナル(蛍光強度の中央値)に対してプロットした。EC50(平衡で結合部位の半数に結合する抗体濃度)を非線形回帰によって計算した。CLDN6特異的抗体は類似の低いEC50値を示し、低濃度で結合の飽和が達成された。 NEC8細胞への抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSの相対的結合親和性。 ヒトCLDN6を内因性に発現する腫瘍細胞への抗CLDN6抗体の結合親和性を調べるため、精巣癌細胞株NEC8への結合をフローサイトメトリによって分析した。CLDN6特異的抗体chimAB 64A、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSと比較して、軽鎖組合せ変異体mAb206−LCCはNEC8細胞に対して3倍強い結合親和性を示した。すべての場合に、低濃度で結合の飽和が達成された。 OV90細胞への抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSの相対的結合親和性。 ヒト卵巣癌細胞株OV90への抗CLDN6抗体の結合親和性をフローサイトメトリによって分析した。CLDN6特異的抗体は類似の低いEC50値を示した。軽鎖組合せ変異体mAb206−LCCはOV90細胞への最も強い結合を示した。 NEC8野生型およびNEC8ノックダウン細胞に対する抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCCおよびmAb206−SUBGの補体依存性細胞傷害(CDC)活性。 抗CLDN6抗体のCDC活性を、非溶解細胞内の内因性ATPを検出するルシフェラーゼ依存性アッセイを用いて分析した。そのため、ルシフェラーゼを異所性に発現するNEC8野生型細胞を種々の濃度のchimAB 64A、mAb206−LCCおよびmAb206−SUBGで処理した。NEC8細胞に対して抗体は用量依存的にCDC活性を示したが、NEC8 CLDN6ノックダウン細胞に対してはこれらの抗体のいずれもが非特異的な細胞溶解を誘導しなかった。この結果は、chimAB 64A、mAb206−LCCおよびmAb206−SUBGの標的特異的エフェクター機能を明らかにした。 NEC8細胞に対する抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSの補体依存性細胞傷害(CDC)活性。 抗体は用量依存的にCDC活性を示した。chimAB 64Aと比較して、アミノ酸置換変異体mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSはNEC8細胞に対して類似のCDC活性を示した。 NEC8およびOV90細胞に対する抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSの抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性。 抗CLDN6抗体のADCC活性を、非溶解細胞内の内因性ATPを検出するルシフェラーゼ依存性アッセイを用いて分析した。そのため、NEC8およびOV90細胞を種々の濃度のCLDN6に対するキメラ抗体で処理した。すべての抗体が用量依存的なADCC活性を示し、両腫瘍細胞株において低い抗体濃度でもADCCを誘導した。 NEC8野生型およびNEC8ノックダウン細胞に対する抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCCおよびmAb206−SUBGの抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性。 標的特異性を明らかにするため、安定なCLDN6ノックダウンを有するNEC8細胞を使用した。 腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルにおける抗CLDN6キメラモノクローナル抗体mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSの治療効果。 モデルは、無胸腺Nude−Foxn1nuマウスにおいてNEC8異種移植片を使用した。移植の17日後に、マウスをCLDN6特異的抗体mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSで処置し、腫瘍増殖を観測した。散布図は、マウスにおけるNEC8異種移植片の進行後治療中の種々の時点での移植腫瘍の体積を示す。抗体対照群と比較して、キメラモノクローナル抗CLDN6抗体mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSは腫瘍増殖の阻害を示した。 腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルにおける抗CLDN6キメラモノクローナル抗体mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSの治療効果。 図33と比較して、増殖曲線は、キメラモノクローナル抗CLDN6抗体が腫瘍増殖を阻害できることをより詳細に示している(A)。 生存率プロットは、CLDN6特異的抗体で処置したマウスの生存延長を示した(B)。 chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSの高解像度エピトープマッピング。 アラニン突然変異体を「野生型残基番号アラニン」として命名し、アミノ酸を一文字表記で示す。CLDN6の1番目の細胞外ドメインのアミノ酸F35、G37およびS39ならびに潜在的にT33は、CLDN6特異的キメラ抗体との相互作用のために重要である。chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSは同じ結合パターンを示した。 腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した転移異種移植モデルにおける抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 64Aの治療効果。 転移モデルにおいてNEC8細胞を無胸腺Nude−Foxn1nuマウスの尾静脈に注射した。移植の3日後にマウスをCLDN6特異的抗体muMAB 64Aで処置した。8週間後、肺標本を調製し、腫瘍細胞量をPCRによって分析した。PBS対照群と比較して、マウスモノクローナル抗CLDN6抗体muMAB 64Aは腫瘍増殖の阻害を明確に示した。 モノクローナル抗体muMAB 64A、mAb206−LCCおよびmAb206−SUBGを使用したヒト癌組織および正常組織の免疫組織化学染色。 正常組織と異なり、卵巣癌および精巣癌からの組織切片で強い均一な染色が認められた。悪性上皮細胞集団の非常に強い膜染色が検出されたが、隣接する間質細胞および非悪性上皮細胞は染色されなかった。これらの結果は、発明者のCLDN6特異的抗体が腫瘍患者由来の悪性細胞に特異的に結合することを明らかに示す。(説明:抗体によって染色された組織の数/分析した組織の数。)
<用語の定義>
本発明がより容易に理解され得るために、特定の用語を最初に定義する。付加的な定義は詳細な説明全体を通して述べる。
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈上特に必要とされない限り、「含む」という語および「含むこと」などの変形は、記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含を意味するが、いかなる他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の排除も意味しないと理解される。本発明の説明に関連して(特に特許請求の範囲に関連して)使用される「1つの」および「その」という用語および同様の言及は、本明細書で特に指示されない限りまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を含むと解釈されるべきである。本明細書中の数値の範囲の列挙は、単に範囲内に属する各々別々の数値を個別に言及することの簡略化した方法であることを意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個別の数値は、本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。本明細書で述べるすべての方法は、本明細書で特に指示されない限りまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図し、特許請求される本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に必須の特許請求されない要素を指示すると解釈されるべきではない。
クローディンは密着結合の最も重要な成分であるタンパク質のファミリーであり、密着結合において上皮の細胞の間の細胞間隙中の分子の流れを制御する傍細胞バリアを確立する。クローディンは、N末端およびC末端の両方が細胞質に位置し、膜を4回横切る膜貫通タンパク質である。1番目の細胞外ループは平均53個のアミノ酸から成り、2番目の細胞外ループはおよそ24個のアミノ酸から成る。CLDN6とCLDN9はCLDNファミリーの最も類似する成員である。
本明細書で使用される「CLDN」という用語はクローディンを意味し、CLDN6、CLDN9、CLDN4およびCLDN3を包含する。好ましくは、CLDNはヒトCLDNである。
「CLDN6」という用語は、好ましくはヒトCLDN6、特に(i)配列番号:2のアミノ酸配列をコードするもしくは配列番号:8のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸、例えば配列番号:1の核酸配列を含む核酸または(ii)配列番号:2のアミノ酸配列を含むもしくは配列番号:8のアミノ酸配列を含むタンパク質に関する。CLDN6の1番目の細胞外ループは、好ましくは配列番号:2に示すアミノ酸配列または配列番号:8に示すアミノ酸配列のアミノ酸28〜80、より好ましくはアミノ酸28〜76、例えば配列番号:7に示すアミノ酸配列を含む。CLDN6の2番目の細胞外ループは、好ましくは配列番号:2に示すアミノ酸配列または配列番号:8に示すアミノ酸配列のアミノ酸138〜160、好ましくはアミノ酸141〜159、より好ましくはアミノ酸145〜157、例えば配列番号:6に示すアミノ酸配列を含む。前記1番目および2番目の細胞外ループは、好ましくはCLDN6の細胞外部分を形成する。
「CLDN9」という用語は、好ましくはヒトCLDN9、特に(i)配列番号:9のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸または(ii)配列番号:9のアミノ酸配列を含むタンパク質に関する。CLDN9の1番目の細胞外ループは、好ましくは配列番号:9に示すアミノ酸配列のアミノ酸28〜76を含む。CLDN9の2番目の細胞外ループは、好ましくは配列番号:9に示すアミノ酸配列のアミノ酸141〜159を含む。前記1番目および2番目の細胞外ループは、好ましくはCLDN9の細胞外部分を形成する。
「CLDN4」という用語は、好ましくはヒトCLDN4、特に(i)配列番号:10のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸または(ii)配列番号:10のアミノ酸配列を含むタンパク質に関する。CLDN4の1番目の細胞外ループは、好ましくは配列番号:10に示すアミノ酸配列のアミノ酸28〜76を含む。CLDN4の2番目の細胞外ループは、好ましくは配列番号:10に示すアミノ酸配列のアミノ酸141〜159を含む。前記1番目および2番目の細胞外ループは、好ましくはCLDN4の細胞外部分を形成する。
「CLDN3」という用語は、好ましくはヒトCLDN3、特に(i)配列番号:11のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸または(ii)配列番号:11のアミノ酸配列を含むタンパク質に関する。CLDN3の1番目の細胞外ループは、好ましくは配列番号:11に示すアミノ酸配列のアミノ酸27〜75を含む。CLDN3の2番目の細胞外ループは、好ましくは配列番号:11に示すアミノ酸配列のアミノ酸140〜158を含む。前記1番目および2番目の細胞外ループは、好ましくはCLDN3の細胞外部分を形成する。
上述したCLDN配列は、前記配列の任意の変異体、特に突然変異体、スプライス変異体、立体配座変異体、アイソフォーム変異体、対立遺伝子変異体、種変異体および種ホモログ、特に天然に存在するものを包含する。対立遺伝子変異体は遺伝子の正常配列中の変化に関するが、その重要性はしばしば不明である。完全な遺伝子配列解析は、しばしば所与の遺伝子について数多くの対立遺伝子変異体を同定する。種ホモログは、所与の核酸配列またはアミノ酸配列のものとは異なる種を起源とする核酸配列またはアミノ酸配列である。「CLDN」という用語は、(i)CLDNスプライス変異体、(ii)特にNグリコシル化状態などの異なるグリコシル化を有する変異体を含む、CLDN翻訳後修飾変異体、(iii)CLDN立体配座変異体、(iv)CLDN癌関連およびCLDN非癌関連変異体を包含する。好ましくは、CLDNはその天然立体配座で存在する。
CLDN6は、例えば卵巣癌、肺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、黒色腫、頭頸部癌、肉腫、胆管癌、腎細胞癌および膀胱癌において発現されることが認められている。CLDN6は、卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱の癌、特に移行上皮癌および乳頭癌、腎癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎芽性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および精巣胎児性癌、子宮癌、奇形癌または胎生期癌などの胚細胞腫瘍、特に精巣の胚細胞腫瘍、ならびにそれらの転移形態の予防および/または治療のための特に好ましい標的である。1つの実施形態では、CLDN6発現に関連する癌疾患は、卵巣癌、肺癌、転移性卵巣癌および転移性肺癌から成る群より選択される。好ましくは、卵巣癌は癌腫または腺癌である。好ましくは、肺癌は癌腫または腺癌であり、好ましくは細気管支癌腫または細気管支腺癌などの細気管支癌である。1つの実施形態では、CLDN6発現に関連する腫瘍細胞は、そのような癌の細胞である。
「部分」という用語は画分を指す。アミノ酸配列またはタンパク質などの特定の構造に関して、その「部分」という用語は、前記構造の連続または不連続画分を表し得る。好ましくは、アミノ酸配列の部分は、前記アミノ酸配列の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに一層好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%のアミノ酸を含む。好ましくは、部分が不連続画分である場合、前記不連続画分は、構造の2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上のパートで構成され、各々のパートは構造の連続するエレメントである。例えば、アミノ酸配列の不連続画分は、前記アミノ酸配列の2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上のパート、好ましくは4以下のパートで構成され得、ここで各々のパートは、好ましくはアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸、少なくとも10個の連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも20個の連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも30個の連続するアミノ酸を含む。
「パート」および「フラグメント」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、連続するエレメントを指す。例えば、アミノ酸配列またはタンパク質などの構造の1つのパートは、前記構造の1つの連続するエレメントを指す。構造の部分、パートまたはフラグメントは、好ましくは前記構造の1またはそれ以上の機能特性を含む。例えば、エピトープまたはペプチドの部分、パートまたはフラグメントは、好ましくはそれが由来するエピトープまたはペプチドと免疫学的に等価である。
本発明に関連して「CLDNの細胞外部分」という用語は、細胞外間隙に面しており、および好ましくは前記細胞の外側から、例えば細胞の外側に位置する抗体によって、アクセス可能であるCLDNのパートを指す。好ましくは、この用語は、1もしくはそれ以上の細胞外ループもしくはそのパートまたは、好ましくは前記CLDNに特異的な、CLDNの任意の他の細胞外パートを指す。好ましくは、前記パートは、少なくとも5、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50個またはそれ以上のアミノ酸を含む。
「細胞の表面に結合したCLDN」という用語は、天然CLDN、すなわちその非変性の、好ましくは天然に折りたたまれた状態のCLDNに関すると理解されるべきである。好ましくは、「細胞の表面に結合したCLDN」という用語は、CLDNが前記細胞の形質膜と結合して、形質膜に位置することを意味し、ここでCLDNの少なくとも一部、好ましくは細胞外部分は、前記細胞の細胞外間隙に面しており、および前記細胞の外側から例えば細胞の外側に位置する抗体によって、アクセス可能である。結合は直接または間接的であり得る。例えば、結合は、1もしくはそれ以上の膜貫通ドメイン、1もしくはそれ以上の脂質アンカーによって、および/または任意の他のタンパク質、脂質、サッカリドもしくは細胞の形質膜の外側リーフレットに認められ得る他の構造との相互作用によってであり得る。例えば、細胞の表面に結合したCLDNは、細胞外部分を有する膜貫通タンパク質、すなわち内在性膜タンパク質であり得るか、または膜貫通タンパク質である別のタンパク質と相互作用することによって細胞の表面と結合したタンパク質であり得る。
CLDN6は、細胞の表面に位置しており、および細胞に添加されたCLDN6特異的抗体による結合にアクセス可能である場合、前記細胞の表面と結合している。好ましい実施形態では、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞は、CLDN6を発現する細胞である。CLDN6が細胞によって発現される場合、前記細胞の表面と結合しているCLDN6は、発現されたCLDN6の一部分だけであってもよいことが理解されるべきである。
「CLDNを担持する細胞」という用語は、好ましくは前記細胞がその表面にCLDNを担持すること、すなわちCLDNが前記細胞の表面と結合していることを意味する。
「細胞表面」または「細胞の表面」は、当分野におけるその通常の意味に従って使用され、それゆえタンパク質および他の分子による結合にアクセス可能である細胞の外側部を包含する。
「細胞の表面で発現されるCLDN」という表現は、細胞によって発現されるCLDNが、前記細胞の表面と結合して見出されることを意味する。
本発明によれば、CLDN6は、発現および結合のレベルが胎盤細胞または胎盤組織における発現および結合と比較してより低い場合、細胞において実質的に発現されず、細胞表面と実質的に結合していない。好ましくは、発現および結合のレベルは、胎盤細胞または胎盤組織における発現および結合の10%未満、好ましくは5%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%もしくは0.05%未満であるかまたはさらに一層低い。好ましくは、CLDN6は、発現および結合のレベルが、胎盤組織以外の非腫瘍形成性、非癌性組織における発現および結合のレベルを2倍未満、好ましくは1.5倍だけ上回る場合、好ましくは前記非腫瘍形成性、非癌性組織における発現および結合のレベルを超えない場合、細胞において実質的に発現されず、細胞表面と実質的に結合していない。好ましくは、CLDN6は、発現もしくは結合のレベルが検出限界を下回る場合および/または発現もしくは結合のレベルが、細胞に添加されたCLDN6特異的抗体による結合を許容しないほど低い場合、細胞において実質的に発現されず、細胞表面と実質的に結合していない。
本発明によれば、CLDN6は、発現および結合のレベルが、胎盤組織以外の非腫瘍形成性、非癌性組織における発現および結合のレベルを好ましくは2倍以上、好ましくは10倍、100倍、1000倍または10000倍上回る場合、細胞において発現され、細胞表面と結合している。好ましくは、CLDN6は、発現および結合のレベルが検出限界を上回る場合ならびに/または発現および結合のレベルが、細胞に添加されたCLDN6特異的抗体による結合を可能にするのに十分なだけ高い場合、細胞において発現され、細胞表面と結合している。好ましくは、細胞において発現されるCLDN6は、前記細胞の表面で発現されるかまたは前記細胞の表面に露出されている。
「ラフト」という用語は、細胞の形質膜の外側リーフレット領域に位置するスフィンゴ脂質およびコレステロールに富む膜マイクロドメインを指す。そのようなドメイン内で結合する特定のタンパク質の能力および「集合体」または「巣状集合体」を形成するそれらの能力は、タンパク質の機能を生じさせることができる。例えば、そのような構造内へのCLDN6分子の転位は、本発明の抗体によって結合された後、形質膜において高密度のCLDN6抗原抗体複合体を形成する。そのような高密度のCLDN6抗原抗体複合体は、CDCの間の補体系の効率的な活性化を可能にし得る。
本発明によれば、「疾患」という用語は、癌、特に本明細書で述べる癌の形態を含む、何らかの病的状態を指す。
「CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞が関与する疾患」は、本発明によれば、疾患組織または器官の細胞における発現および結合が、好ましくは健常組織または器官における状態と比較して上昇していることを意味する。上昇は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%またはさらにそれ以上の増大を指す。1つの実施形態では、発現および細胞表面との結合は疾患組織においてのみ認められ、健常組織における発現は抑制されている。本発明によれば、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞が関連する疾患には、癌疾患などの腫瘍疾患が含まれる。さらに、本発明によれば、癌疾患などの腫瘍疾患は、好ましくは、腫瘍細胞または癌細胞がCLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とするものである。
本明細書で使用される、「腫瘍疾患」、「腫瘍関連疾患」または「腫瘍形成性疾患」は、腫瘍および/もしくは腫瘍転移の生成または腫瘍および/もしくは腫瘍転移を生じさせる傾向をもたらし得る、異常調節された細胞成長、増殖、分化、接着および/または移動を特徴とする疾患を包含する。「腫瘍細胞」とは、急速で制御不能の細胞増殖によって成長し、新たな成長を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける異常細胞を意味する。
「腫瘍」とは、急速で制御不能の細胞増殖によって成長し、新たな成長を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける細胞または組織の異常な群を意味する。腫瘍は、構造機構および正常組織との機能的協調の部分的または完全な欠如を示し、通常は、良性、前悪性または悪性のいずれかであり得る、明確な組織塊を形成する。
好ましくは、本発明による「腫瘍疾患」、「腫瘍関連疾患」または「腫瘍形成性疾患」は、癌疾患、すなわち悪性疾患であり、腫瘍細胞は癌細胞である。好ましくは、「腫瘍疾患」、「腫瘍関連疾患」または「腫瘍形成性疾患」は、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞によって特徴づけられ、腫瘍細胞はCLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする。
CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞は、好ましくは腫瘍細胞または癌細胞、好ましくは本明細書で述べる腫瘍および癌の腫瘍細胞または癌細胞である。好ましくは、そのような細胞は胎盤細胞以外の細胞である。
本発明による好ましい癌疾患または癌は、卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱の癌、特に移行上皮癌および乳頭癌、腎癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎芽性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および精巣胎児性癌、子宮癌、奇形癌または胎生期癌などの胚細胞腫瘍、特に精巣の胚細胞腫瘍、ならびにそれらの転移形態から成る群より選択される。
肺癌の主要な型は、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)である。非小細胞肺癌には3つの主要なサブタイプ:扁平上皮肺癌、腺癌および大細胞肺癌がある。腺癌は肺癌の約10%を占める。この癌は通常、肺の末梢部で認められ、これに対し小細胞肺癌および扁平上皮肺癌は、どちらもより中心部に位置する傾向がある。
皮膚癌は皮膚上の悪性増殖物である。最も一般的な皮膚癌は、基底細胞癌、扁平上皮癌および黒色腫である。悪性黒色腫は深刻なタイプの皮膚癌である。悪性黒色腫は、メラノサイトと呼ばれる色素細胞の制御不能の増殖に起因する。
本発明によれば、「癌腫」は、器官の内層(上皮細胞)から発生する癌である。
「細気管支癌腫」は、終末細気管支の上皮に由来すると考えられる肺の癌腫であり、終末細気管支では、腫瘍組織が肺胞壁に沿って広がり、肺胞内で小塊として成長する。ムチンが細胞の一部および肺胞内の物質中で明らかにされることがあり、これには剥離細胞も含まれる。
「腺癌」は、腺組織から発生する癌である。この組織はまた、上皮組織として知られるより大きな組織カテゴリーの一部である。上皮組織には、皮膚、腺ならびに体腔および身体器官の内側を覆う様々な他の組織が含まれる。上皮は、発生学的には外胚葉、内胚葉および中胚葉に由来する。腺癌として分類されるために、細胞は、それらが分泌特性を有する限り、必ずしも腺の一部である必要はない。この形態の癌腫は、ヒトを含む一部の高等哺乳動物において発生し得る。十分に分化された腺癌は、それらが由来する腺組織に類似する傾向があるが、十分に分化していないものはその傾向がない場合もある。生検からの細胞を染色することにより、病理学者は腫瘍が腺癌であるかまたは何らかの他の型の癌であるかを決定する。腺癌は、体内の腺の遍在性のゆえに身体の多くの組織で生じ得る。各々の腺が同じ物質を分泌しているとは限らないが、細胞への外分泌機能が存在する限り、腺とみなされ、それゆえその悪性形態は腺癌と命名される。悪性腺癌は他の組織を浸潤し、十分な時間があればしばしば転移する。卵巣腺癌は最も一般的な型の卵巣癌である。卵巣腺癌には、漿液性および粘液性腺癌、明細胞腺癌および類内膜腺癌が含まれる。
「嚢胞腺癌」は、卵巣癌の1つの型である、表層上皮性・間質性腫瘍の悪性形態である。
表層上皮性・間質性腫瘍は、卵巣表層上皮(変化した腹膜)または異所性子宮内膜もしくはファローピウス管組織に由来すると考えられる卵巣新生物のクラスである。この群の腫瘍は、すべての卵巣腫瘍の過半数を占める。
奇形癌は、胎生期癌または絨毛癌またはその両方と奇形腫の混合型である生殖細胞腫瘍を指す。絨毛癌は、通常は胎盤の、悪性の栄養芽層の侵襲性癌である。絨毛癌は肺への早期の血行性拡大を特徴とする。
肉腫は、中胚葉の増殖を生じさせる結合組織(骨、軟骨、脂肪)の癌である。これは、上皮起源である癌腫とは大きく異なる。滑膜肉腫は、通常は腕または脚の関節近傍で起こるまれな形態の癌である。滑膜肉腫は軟骨組織肉腫の1つである。
腎細胞癌または腎細胞腺癌としても知られる腎細胞癌腫は、血液をろ過し、老廃物を除去する腎臓内の非常に小さな管である、近位尿細管の内層で発生する腎癌である。腎細胞癌腫は、成人における群を抜いて最も一般的な型の腎癌であり、すべての尿生殖器腫瘍のうちで最も致死的である。腎細胞癌腫の異なるサブタイプは、明細胞腎細胞癌および乳頭状腎細胞癌である。明細胞腎細胞癌は最も一般的な形態の腎細胞癌腫である。顕微鏡下で見た場合、明細胞腎細胞癌を構成する細胞は非常に色が薄いかまたは透明に見える。乳頭状腎細胞癌は2番目に多いサブタイプである。これらの癌は、腫瘍の、大部分ではないにせよ一部では、小指様の突起(乳頭と呼ばれる)を形成する。
生殖細胞腫瘍は、生殖細胞に由来する新生物である。生殖細胞腫瘍は癌性または非癌性腫瘍であり得る。生殖細胞は通常、性腺(卵巣および精巣)の内部で生じる。性腺の外側(例えば頭部内、口腔、頸部、骨盤の内部;胎児、乳児および幼児では身体の正中線上で、特に尾骨の先端で最も多く認められる)で発生する生殖細胞腫瘍は、胚の発生の間の過誤から生じる出生時欠損であり得る。
生殖細胞腫瘍の2つの主要なクラスはセミノーマと非セミノーマであり、ここで非セミノーマには、奇形癌、胎生期癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌および分化した奇形腫が含まれる。非セミノーマからの大部分の細胞株は胎生期癌に等しく、すなわちそれらはほぼ全面的に、基本条件下では分化しない幹細胞から成るが、一部はレチノイン酸などの分化誘導物質に応答し得る。
「転移」とは、そのもとの部位から身体の別の部分への癌細胞の拡大を意味する。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発性腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスの侵襲、体腔および脈管に侵入するための内皮基底膜の貫入、ならびに次に、血液によって運ばれた後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位での新たな腫瘍の成長は血管新生に依存する。腫瘍転移はしばしば原発性腫瘍の除去後でも起こり、これは、腫瘍細胞または成分が残存し、転移能を発現し得るからである。1つの実施形態では、本発明による「転移」という用語は、原発性腫瘍および所属リンパ節系から遠く離れた転移に関連する「遠隔転移」に関する。
続発性または転移性腫瘍の細胞はもとの腫瘍における細胞に類似する。これは、例えば、卵巣癌が肝臓に転移した場合、続発性腫瘍は異常な肝細胞ではなく異常な卵巣細胞で構成される。そこで、肝臓における腫瘍は、肝癌ではなく転移性卵巣癌と呼ばれる。
「治療する」とは、被験者において腫瘍の大きさもしくは腫瘍の数を低減することを含む、疾患を予防するもしくは排除する;被験者において疾患を停止させるもしくは疾患の進行を遅らせる;被験者において新たな疾患の発症を阻害するもしくは遅らせる;現在疾患を有しているもしくは以前に疾患を有していたことがある被験者において症状および/もしくは再発の頻度もしくは重症度を低減する;ならびに/または被験者の生存期間を延長させる、すなわち増大させるために、本明細書で述べる化合物または組成物を被験者に投与することを意味する。
「疾患の治療」という用語は、疾患またはその症状を治癒する、期間を短縮する、改善する、予防する、進行もしくは悪化を遅らせるもしくは阻害する、または発症を予防するもしくは遅延させることを包含する。
「危険性がある」とは、一般集団と比較して、疾患、特に癌を発症する可能性が通常より高いと同定される被験者、すなわち患者を意味する。加えて、疾患、特に癌を有していたことがあるまたは現在有している被験者は、そのような被験者は引き続き疾患を発症する可能性があるので、疾患を発症する危険度が高い被験者である。現在癌を有しているまたは癌を有していたことがある被験者は、癌転移の危険度も高い。
「免疫療法」という用語は、特異的免疫反応を含む治療に関する。本発明に関連して、「保護する」、「予防する」、「予防的」、「防止的」または「防御的」などの用語は、個体における腫瘍の発生および/または増殖の予防または治療またはその両方に関する。本発明に関連して「免疫療法」という用語は、好ましくは能動的腫瘍免疫または腫瘍ワクチン接種を指す。免疫療法の予防的投与、例えば本発明の組成物の予防的投与は、好ましくは腫瘍増殖の発症から受容者を保護する。免疫療法の治療的投与、例えば本発明の組成物の治療的投与は、腫瘍の進行/増殖の阻害をもたらし得る。これは、好ましくは腫瘍の排除をもたらす、腫瘍の進行/増殖の減速、特に腫瘍の進行の停止を含む。免疫療法の治療的投与は、個体を、例えば既存の腫瘍の播種または転移から保護し得る。
「免疫」または「ワクチン接種」という用語は、治療的または予防的理由から免疫応答を誘導する目的で被験者に抗原を投与する工程を表す。
「被験者」、「個体」、「生物」または「患者」という用語は交換可能に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物に関する。例えば、本発明に関連する哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長動物、家畜、例えばイヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ等、実験動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット等、ならびに動物園の動物などの捕らわれている動物である。本明細書で使用される「動物」という用語はまた、ヒトを包含する。「被験者」という用語はまた、患者、すなわち動物、好ましくは疾患を有するヒト、好ましくはCLDN6の発現に関連する疾患、好ましくは癌などの腫瘍形成性疾患を有するヒトを包含し得る。
「アジュバント」という用語は、免疫応答を延長するまたは増強するまたは促進する化合物に関する。本発明の組成物は、好ましくはアジュバントの添加なしでその作用を及ぼす。それにもかかわらず、本出願の組成物は任意の公知のアジュバントを含み得る。アジュバントには、油性エマルション(例えばフロイントアジュバント)、無機化合物(ミョウバンなど)、細菌産物(百日咳菌毒素など)、リポソームおよび免疫刺激性複合体などの不均一な群の化合物が含まれる。アジュバントの例としては、モノホスホリル脂質A(MPL SmithKline Beecham)、サポニン、例えばQS21(SmithKline Beecham)、DQS21(SmithKline Beecham;国際公開第96/33739号)、QS7、QS17、QS18およびQS−L1(So et al.,1997,Mol.Cells 7:178−186)、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、ビタミンE、モンタニド、ミョウバン、CpGオリゴヌクレオチド(Krieg et al.,1995,Nature 374:546−549)、ならびにスクアレンおよび/またはトコフェロールなどの生分解性油から調製される様々な油中水型エマルションがある。
本発明によれば、試料は、本発明に従って有用な任意の試料、特に体液および/または細胞試料を含む組織試料などの生物学的試料であってよく、従来の方法で、例えばパンチ生検を含む組織生検によって、および血液、気管支吸引物、痰、尿、糞便または他の体液を採取することによって入手し得る。本発明によれば、「生物学的試料」という用語はまた、生物学的試料の画分を包含する。
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質を指し、その抗原結合部分を含む任意の分子を包含する。「抗体」という用語は、限定されることなく、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、一本鎖抗体、例えばscFv、ならびにFabおよびFab'フラグメントなどの抗原結合抗体フラグメントを含む、モノクローナル抗体およびそのフラグメントまたは誘導体を包含し、また、すべての組換え形態の抗体、例えば原核生物において発現される抗体、非グリコシル化抗体、ならびに本明細書で述べる任意の抗原結合抗体フラグメントおよび誘導体を包含する。各々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と重鎖定常領域から成る。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)と軽鎖定常領域から成る。VHおよびVL領域は、より保存された、フレームワーク領域(FR)と称される領域が間に組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができる。各々のVHとVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された、3つのCDRと4つのFRから成る:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
本発明によれば、「CDR配列の少なくとも1つ」という用語は、好ましくは少なくともCDR3配列を意味する。「抗体鎖のCDR配列」という用語は、好ましくは抗体の重鎖または軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3に関する。
本発明によれば、特定のCDR3配列などの特定のCDR配列を含む抗体鎖への言及は、前記特定CDR配列が、前記抗体鎖のCDR3領域などのCDR領域を形成する、すなわちCDR領域が前記特定CDR配列から成るか、または前記抗体鎖のCDR3領域などのCDR領域の一部を形成する、すなわちCDR領域が前記特定CDR配列を含むことを意味する。
本発明に従って特定のCDR配列を含む鎖などの、特定の抗体重鎖および/または特定の抗体軽鎖を含む抗体に言及する場合、抗体の両方の重鎖および/または両方の軽鎖が各々特定の抗体重鎖および/または特定の抗体軽鎖から成ることが好ましい。
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト種からの免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位を有する分子を指し、ここで分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく。抗原結合部位は、定常ドメインに融合した完全な可変ドメインを含み得るか、または可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域に移植された相補性決定領域(CDR)だけを含み得る。抗原結合部位は、野生型であり得るかまたは1もしくはそれ以上のアミノ酸置換によって修飾されていてもよい、例えばヒト免疫グロブリンにより密接に類似するように修飾されていてもよい。ヒト化抗体の一部の形態はすべてのCDR配列を保存する(例えばマウス抗体からの6つのCDR全部を含むヒト化マウス抗体)。また別の形態は、もとの抗体に比べて変化した1またはそれ以上のCDRを有する。
「キメラ抗体」という用語は、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列の各々の一部分が、特定の種に由来するまたは特定のクラスに属する抗体中の対応する配列に相同であり、鎖の残りのセグメントは別の抗体中の対応する配列に相同である抗体を指す。典型的には、軽鎖と重鎖の両方の可変領域が哺乳動物の1つの種に由来する抗体の可変領域を模倣し、定常領域は別の種に由来する抗体の配列に相同である。そのようなキメラ形態の1つの明らかな利点は、可変領域が、例えばヒト細胞試料に由来する定常領域と組み合わせて、容易に入手可能な非ヒト宿主生物からのB細胞またはハイブリドーマを用いて現在公知の供給源から好都合に誘導できることである。可変領域は調製の容易さという利点を有し、その特異性は供給源に影響されないが、ヒトである定常領域は、抗体を注射した場合、非ヒト供給源からの定常領域よりもヒト被験者からの免疫応答を惹起する可能性が低い。しかし、その定義はこの特定の例に限定されない。
本明細書で使用される、抗体の「抗原結合部分」(または単に「結合部分」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1またはそれ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は完全長抗体のフラグメントによって実行され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例には、(i)VL、VH、CLおよびCHドメインから成る一価フラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab')フラグメント;(iii)VHおよびCHドメインから成るFdフラグメント;(iv)抗体の1本の腕のVLおよびVHドメインから成るFvフラグメント;(v)VHドメインから成る、dAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544−546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)場合により合成リンカーによって連結されていてもよい2またはそれ以上の単離されたCDRの組合せが含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を用いて、VL領域とVH領域が対合して一価分子を形成する一本鎖タンパク質(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBird et al.(1988)Science 242:423−426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883参照)としてそれらを作製することを可能にする合成リンカーによって連結され得る。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図されている。さらなる例は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した結合ドメインポリペプチド、(ii)ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、および(iii)CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である。結合ドメインポリペプチドは、重鎖可変領域または軽鎖可変領域であり得る。結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、米国特許出願第2003/0118592号および同第2003/0133939号にさらに開示されている。これらの抗体フラグメントは当業者に公知の従来技術を用いて得られ、フラグメントは、無傷抗体と同じ方法で有用性に関してスクリーニングされる。
「エピトープ」という用語は、分子中の抗原決定基、すなわち免疫系によって認識される、例えば抗体によって認識される分子中の部分を指す。例えば、エピトープは、免疫系によって認識される、抗原上の個別の三次元部位である。本発明に関連して、エピトープは、好ましくはCLDNタンパク質に由来する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基群から成り、通常は特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープと非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合は失われるが後者への結合は失われないことによって区別される。CLDNなどのタンパク質のエピトープは、好ましくは前記タンパク質の連続または不連続部分を含み、好ましくは5〜100、好ましくは5〜50、より好ましくは8〜30、最も好ましくは10〜25アミノ酸長であり、例えば、エピトープは、好ましくは8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸長であり得る。
本明細書で使用される「不連続エピトープ」という用語は、タンパク質の一次配列内の少なくとも2つの別々の領域から形成されるタンパク質抗原上の立体配座エピトープを意味する。
「二重特異性分子」という用語は、2つの異なる結合特異性を有する任意の物質、例えばタンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド複合体を包含することが意図されている。例えば、前記分子は、(a)細胞表面抗原および(b)エフェクター細胞の表面のFc受容体に結合し得るまたはそれらと相互作用し得る。「多重特異性分子」または「ヘテロ特異性分子」という用語は、2以上の異なる結合特異性を有する任意の物質、例えばタンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド複合体を包含することが意図されている。例えば、前記分子は、(a)細胞表面抗原、(b)エフェクター細胞の表面のFc受容体および(c)少なくとも1つの他の成分に結合し得るまたはそれらと相互作用し得る。したがって、本発明は、CLDN6に対する、およびエフェクター細胞上のFc受容体などの他の標的に対する、二重特異性、三重特異性、四重特異性および他の多重特異性分子を包含するが、これらに限定されない。「二重特異性抗体」という用語はまた、ダイアボディも包含する。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが1本のポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を許容するには短すぎるリンカーを使用し、それによりそれらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させて、2つの抗原結合部位を作製する、二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1121−1123参照)。
本明細書で使用される、「ヘテロ抗体」という用語は、そのうちの少なくとも2つが異なる特異性を有する、共に連結された2またはそれ以上の抗体、その誘導体または抗原結合領域を指す。これらの異なる特異性には、エフェクター細胞上のFc受容体に対する結合特異性、および標的細胞、例えば腫瘍細胞上の抗原またはエピトープに対する結合特異性が含まれる。
本明細書で述べる抗体はヒト抗体であり得る。「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を包含することが意図されている。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えばインビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発によってまたはインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、特定のエピトープに対する単一結合特異性および親和性を示す。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、不死化細胞に融合した、非ヒト動物、例えばマウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
「組換え抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、(a)免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマルである動物(例えばマウス)またはそれから作製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離された抗体、および(d)免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって作製された、発現された、創製されたまたは単離された抗体などの、組換え手段によって作製される、発現される、創製されるまたは単離されるすべての抗体を包含する。
「トランスフェクトーマ」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体を発現する組換え真核生物宿主細胞、例えばCHO細胞、NS/0細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、植物細胞、または酵母細胞を含む真菌などを包含する。
本明細書で使用される、「異種抗体」は、そのような抗体を産生するトランスジェニック生物に関して定義される。この用語は、トランスジェニック生物で構成されず、および一般にトランスジェニック生物以外の種に由来する生物において認められるものに対応するアミノ酸配列またはコード核酸配列を有する抗体を指す。
本明細書で使用される、「ヘテロハイブリッド抗体」は、異なる生物起源の軽鎖と重鎖を有する抗体を指す。例えば、マウス軽鎖と結合したヒト重鎖を有する抗体はヘテロハイブリッド抗体である。
本発明は、本発明の目的上「抗体」の用語に包含される、本明細書で述べるすべての抗体および抗体の誘導体を包含する。「抗体誘導体」という用語は、任意の修飾形態の抗体、例えば抗体と別の物質もしくは抗体との複合体、または抗体フラグメントを指す。
本明細書で述べる抗体は、好ましくは単離されている。本明細書で使用される「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図されている(例えば、CLDN6に特異的に結合する単離された抗体は、CLDN6以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。ヒトCLDN6のエピトープ、アイソフォームまたは変異体に特異的に結合する単離された抗体は、しかし、他の関連抗原、例えば他の種からの関連抗原(例えばCLDN6種ホモログ)に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、実質的に他の細胞物質および/または化学物質不含であり得る。本発明の1つの実施形態では、「単離された」モノクローナル抗体の組合せは、異なる特異性を有し、十分に定義された組成で組み合わされた抗体に関する。
本発明によれば、抗体が、本明細書で述べるアッセイなどの標準的なアッセイにおいて所定の標的に有意の親和性を有し、所定の標的に結合する場合、前記抗体は前記所定の標的に結合することができる。好ましくは、抗体が、無傷細胞の表面で発現される標的への抗体の結合を測定するフローサイトメトリ分析(FACS分析)において標的に検出可能に結合する場合、前記抗体は前記標的に結合することができる。好ましくは、抗体は、10μg/mlもしくはそれ以下、5μg/mlもしくはそれ以下、または2μg/mlもしくはそれ以下の濃度で存在する場合、前記標的に検出可能に結合する。好ましくは、抗体は、50nMもしくはそれ以下、30nMもしくはそれ以下、または15nMもしくはそれ以下の濃度で存在する場合、前記標的に検出可能に結合する。「親和性」または「結合親和性」は、しばしば平衡解離定数(K)によって測定される。好ましくは、「有意の親和性」という用語は、10−5Mもしくはそれ以下、10−6Mもしくはそれ以下、10−7Mもしくはそれ以下、10−8Mもしくはそれ以下、10−9Mもしくはそれ以下、10−10Mもしくはそれ以下、10−11Mもしくはそれ以下、または10−12Mもしくはそれ以下の解離定数(K)で所定の標的に結合することを指す。本発明の抗体は、好ましくはCLDN6への結合に関して6500ng/mlもしくはそれ以下、3000ng/mlもしくはそれ以下、2500ng/mlもしくはそれ以下、2000ng/mlもしくはそれ以下、1500ng/mlもしくはそれ以下、1000ng/mlもしくはそれ以下、500ng/mlもしくはそれ以下、400ng/mlもしくはそれ以下、300ng/mlもしくはそれ以下、200ng/mlもしくはそれ以下、または100ng/mlもしくはそれ以下のEC50値を有する。
抗体が標準的なアッセイにおいて標的に有意の親和性を有さず、標的に有意に結合しない場合、前記抗体は前記標的に(実質的に)結合することができない。好ましくは、抗体が、無傷細胞の表面で発現される標的への抗体の結合を測定するフローサイトメトリ分析(FACS分析)において標的に検出可能に結合しない場合、前記抗体は前記標的に(実質的に)結合することができない。好ましくは、抗体は、2μg/mlまで、好ましくは5μg/mlまで、好ましくは10μg/mlまで、好ましくは20μg/mlまで、より好ましくは50μg/mlまで、特に100μg/mlまで、または150μg/mlまで、200μg/mlまでまたはそれ以上の濃度で存在する場合、前記標的に検出可能に結合しない。好ましくは、抗体は、15nMまで、好ましくは30nMまで、好ましくは50nMまで、好ましくは100nMまで、好ましくは150nMまで、または170nMまで、300mMまで、600nMまで、1000nMまで、1300nMまでまたはそれ以上の濃度で存在する場合、前記標的に検出可能に結合しない。好ましくは、抗体は、その抗体が結合する標的、すなわちCLDN6への結合を飽和させる濃度で存在する場合、前記標的に検出可能に結合しない。好ましくは、抗体が、その抗体が結合することができる所定の標的への結合に関するKよりも少なくとも10倍、100倍、10倍、10倍、10倍または10倍高いKで標的に結合する場合、前記抗体は前記標的に有意の親和性を有さない。例えば、抗体が結合することができる標的への抗体の結合に関するKが10−7Mである場合、抗体が有意の親和性を有さない標的への結合に関するKは、少なくとも10−6M、10−5M、10−4M、10−3M、10−2Mまたは10−1Mである。
抗体が、所定の標的に結合することができるが、他の標的には結合することができない、すなわち標準的なアッセイにおいて他の標的には有意の親和性を有さず、他の標的に有意に結合しない場合、前記抗体は前記所定の標的に特異的である。本発明によれば、抗体が、CLDN6に結合することができるが、他の標的、特にCLDN9、CLDN4、CLDN3およびCLDN1などのCLDN6以外のクローディンタンパク質には結合することができない場合、前記抗体はCLDN6に特異的である。好ましくは、CLDN9、CLDN4、CLDN3およびCLDN1などのCLDN6以外のクローディンタンパク質に対する親和性および結合が、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ヒト血清アルブミン(HSA)などのクローディンに無関係なタンパク質またはMHC分子もしくはトランスフェリン受容体などの非クローディン膜貫通タンパク質または何らかの他の特定のポリペプチドに対する親和性または結合を有意に上回らない場合、前記抗体はCLDN6に特異的である。好ましくは、抗体が、その抗体が特異的でない標的への結合に関するKよりも少なくとも10倍、100倍、10倍、10倍、10倍または10倍低いKで所定の標的に結合する場合、前記抗体は前記所定の標的に特異的である。例えば、抗体が特異的である標的への結合に関するKが10−7Mである場合、その抗体が特異的でない標的への結合に関するKは、少なくとも10−6M、10−5M、10−4M、10−3M、10−2Mまたは10−1Mである。
標的への抗体の結合は、任意の適切な方法:例えば、Berzofsky et al.,"Antibody−Antigen Interactions"In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press New York,NY(1984)、Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company New York,NY(1992)参照、および本明細書で述べる方法を使用して実験的に測定することができる。親和性は、従来の技術を用いて、例えば平衡透析によって;製造者によって概説される一般的手順を用いて、BIAcore 2000装置を使用することによって;放射性標識標的抗原を用いた放射性免疫検定法によって;または当業者に公知の別の方法によって、容易に測定し得る。親和性データは、例えばScatchard et al.,Ann N.Y.Acad.ScL.51:660(1949)の方法によって解析し得る。特定の抗体抗原相互作用の測定される親和性は、異なる条件、例えば塩濃度、pHの下で測定された場合は異なり得る。したがって、親和性および他の抗原結合パラメータ、例えばK、IC50の測定は、好ましくは抗体および抗原の標準化溶液ならびに標準化緩衝液を用いて行われる。
本発明の抗体の固有の特徴は、細胞表面のクローディン6に結合する能力である。これは、クローディン6を発現する細胞のフローサイトメトリ分析によって明らかにされる。
クローディンを発現する生細胞へのモノクローナル抗体の結合を試験するために、フローサイトメトリを使用することができる。簡単に述べると、膜結合クローディンを発現する細胞株(標準的な増殖条件下で増殖させた)を、2%熱不活性化FCSおよび0.1%NaNを含むPBS中で様々な濃度の抗体と4℃で30分間混合する。洗浄後、細胞を一次抗体染色と同じ条件下で蛍光標識二次抗体と反応させる。単一細胞をゲートする側方光散乱特性を利用して試料をFACSによって分析することができ、標識抗体の結合が測定される。
本発明による「結合」という用語は、好ましくは本明細書で定義される特異的結合に関する。
本明細書で使用される、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えばIgMまたはIgG1)を指す。
本明細書で使用される、「アイソタイプスイッチ」は、それによって抗体のクラスまたはアイソタイプがある1つのIgクラスからその他のIgクラスの1つに変化する現象を指す。
物体に適用される場合の、本明細書で使用される「天然に生じる」という用語は、物体が自然界で認められ得るという事実を指す。例えば、自然界で供給源から単離することができる生物(ウイルスを含む)中に存在し、実験室においてヒトによって意図的に改変されていないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に生じる。
本明細書で使用される「再編成された」という用語は、基本的にそれぞれ完全なVHまたはVLドメインをコードする立体配座においてVセグメントがD−JまたはJセグメントに直接隣接して位置する、重鎖または軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の立体配置を指す。再編成された免疫グロブリン(抗体)遺伝子座は、生殖細胞系DNAとの比較によって同定することができる;再編成された遺伝子座は、少なくとも1つの組み換えられた7量体/9量体相同性エレメントを有する。
Vセグメントに関して本明細書で使用される「再編成されていない」または「生殖細胞系立体配置」という用語は、Vセグメントが、DまたはJセグメントに直接隣接するように組み換えられていない立体配置を指す。
「核酸分子」という用語は、本明細書で使用される場合、DNA分子およびRNA分子を包含することが意図されている。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってよいが、好ましくは二本鎖DNAである。核酸分子は、例えばDNA鋳型からのインビトロ転写によって作製され得るRNAの形態で、細胞への導入、すなわち細胞のトランスフェクションのために使用できる。RNAは、適用の前に配列の安定化、キャップ形成およびポリアデニル化によってさらに修飾することができる。
本発明に従って述べる核酸は、好ましくは単離されている。「単離された核酸」という用語は、本発明によれば、核酸が、(i)インビトロで、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅された、(ii)クローニングによって組換え生産された、(iii)例えば切断とゲル電気泳動分画によって精製された、または(vi)例えば化学合成によって合成されたことを意味する。単離された核酸は、組換えDNA技術による操作のために使用可能な核酸である。
核酸は、本発明によれば、単独でまたは、相同もしくは異種であり得る他の核酸と組み合わせて存在し得る。好ましい実施形態では、核酸は、前記核酸に関して相同または異種であり得る発現制御配列に機能的に連結されており、ここで「相同」という用語は、核酸が天然でも発現制御配列に機能的に連結されていることを意味し、「異種」という用語は、核酸が天然では発現制御配列に機能的に連結されていないことを意味する。
核酸、例えばRNAおよび/またはタンパク質もしくはペプチドを発現する核酸と発現制御配列は、それらが、前記核酸の発現または転写が前記発現制御配列の制御下または影響下にあるように互いに共有結合で連結されている場合、互いに「機能的に」連結されている。核酸が、その後、コード配列に機能的に連結された発現制御配列により機能的タンパク質へと翻訳されるはずである場合、前記発現制御配列の誘導は、コード配列内のフレームシフトを引き起こさずにまたは前記コード配列が所望タンパク質もしくはペプチドへと翻訳されることを不可能にすることなく、前記核酸の転写を生じさせる。
「発現制御配列」という用語は、本発明によれば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子の転写またはmRNAの翻訳を調節する他の制御エレメントを含む。本発明の特定の実施形態では、発現制御配列を調節することができる。発現制御配列の正確な構造は種または細胞型に応じて異なり得るが、一般に、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5'非転写配列ならびに5'および3'非翻訳配列、例えばTATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等を含む。より具体的には、5'非転写発現制御配列は、機能的に連結された核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含有するプロモーター領域を含む。発現制御配列はまた、エンハンサー配列または上流活性化配列も含み得る。
本発明によれば「プロモーター」または「プロモーター領域」という用語は、発現される核酸配列に対して上流(5'側)に位置し、RNAポリメラーゼのための認識および結合部位を提供することによって配列の発現を制御する核酸配列に関する。「プロモーター領域」は、遺伝子の転写の調節に関与するさらなる因子のための認識および結合部位をさらに含み得る。プロモーターは、原核生物または真核生物遺伝子の転写を制御し得る。さらに、プロモーターは「誘導的」であり得、誘導物質に応答して転写を開始させ得るか、または転写が誘導物質によって制御されない場合は「構成的」であり得る。誘導的プロモーターの制御下にある遺伝子は、誘導物質が存在しない場合は発現されないかまたはわずかだけ発現される。誘導物質の存在下では、遺伝子のスイッチが入って作動するかまたは転写のレベルが上昇する。これは、一般に特定の転写因子の結合によって媒介される。
本発明による好ましいプロモーターには、SP6、T3およびT7ポリメラーゼのためのプロモーター、ヒトU6 RNAプロモーター、CMVプロモーター、ならびにある部分または複数の部分が、例えばヒトGAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)などの他の細胞タンパク質の遺伝子のプロモーターのある部分または複数の部分に融合しており、付加的なイントロンを含むかまたは含まない、それらの人工ハイブリッドプロモーター(例えばCMV)が含まれる。
本発明によれば、「発現」という用語はその最も一般的な意味で使用され、RNAの産生またはRNAとタンパク質/ペプチドの産生を含む。この用語はまた、核酸の部分的発現も包含する。さらに、発現は一過性にまたは安定に実施され得る。本発明によれば、発現という用語はまた、「異所性発現」または「異常発現」も包含する。
「異所性発現」または「異常発現」は、本発明によれば、標準と比較して、好ましくは非腫瘍形成性正常細胞または健常個体における状態と比較して、発現が変化している、好ましくは上昇していることを意味する。発現の上昇は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%の上昇を指す。1つの実施形態では、発現は疾患組織においてのみ認められ、健常組織における発現は抑制されている。
好ましい実施形態では、核酸分子は、本発明によれば、適切な場合はプロモーターと共に、核酸の発現を制御するベクター内に存在する。「ベクター」という用語は、本明細書ではその最も一般的な意味で使用され、核酸が、例えば原核細胞および/または真核細胞に導入され、適切な場合は、ゲノム内に組み込まれることを可能にする、前記核酸のための中間媒体を含む。この種のベクターは、好ましくは細胞において複製および/または発現される。ベクターは、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージまたはウイルスゲノムを包含する。本明細書で使用される「プラスミド」という用語は、一般に、染色体DNAとは独立して複製することができる、染色体外遺伝物質の構築物、通常は環状DNA二本鎖に関する。
抗体の発現のためのベクターとして、抗体重鎖と軽鎖が異なるベクター内に存在するベクター型または重鎖と軽鎖が同じベクター内に存在するベクター型のいずれかが使用できる。
特定の核酸およびアミノ酸配列、例えば配列表に示すものに関して本明細書で与えられる教示は、前記特定配列と機能的に等価である配列、例えば特定アミノ酸配列の特性と同一または類似の特性を示すアミノ酸配列および特定核酸配列によってコードされるアミノ酸配列の特性と同一または類似の特性を示すアミノ酸配列をコードする核酸配列を生じさせる、前記特定配列の修飾型、すなわち変異体にも関連するように解釈されるべきである。1つの重要な特性は、その標的への抗体の結合を保持することまたはCDCおよび/もしくはADCCなどの抗体のエフェクター機能を維持することである。好ましくは、特定の配列に関して修飾された配列は、それが抗体中のその特定配列を置換する場合、前記抗体の標的への結合および好ましくは本明細書で述べる前記抗体の機能を保持する。
同様に、特定の抗体または特定の抗体を産生するハイブリドーマに関して本明細書で与えられる教示は、前記特定抗体のアミノ酸配列および/または核酸配列と比較して修飾されているが、機能的に等価であるアミノ酸配列および/または核酸配列を特徴とする抗体にも関連するように解釈されるべきである。1つの重要な性質は、その標的への抗体の結合を保持することまたは抗体のエフェクター機能を維持することである。好ましくは、特定の配列に関して修飾された配列は、それが抗体中のその特定配列を置換する場合、前記抗体の標的への結合および好ましくは本明細書で述べる前記抗体の機能、例えばCDC媒介性溶解またはADCC媒介性溶解の機能を保持する。
特にCDR、超可変および可変領域の配列は、標的に結合する能力を失わずに修飾され得ることが当業者に認識される。例えば、CDR領域は、本明細書で特定する抗体の領域に同一または高度に相同である。「高度に相同」により、1〜5、好ましくは1〜4、例えば1〜3または1もしくは2個の置換がCDR内で為されていてもよいことが企図される。加えて、超可変および可変領域は、本明細書で特定して開示される抗体の領域と実質的な相同性を示すように修飾され得る。
本明細書で述べる特定の核酸はまた、特定の宿主細胞または生物におけるコドン使用頻度を最適化するために修飾された核酸を包含することが理解されるべきである。生物間でのコドン使用頻度の相違は、異種遺伝子発現に関する様々な問題を引き起こし得る。もとの配列の1またはそれ以上のヌクレオチドを変化させることによるコドン最適化は、核酸が発現される同種または異種宿主における前記核酸の発現の最適化、特に翻訳効率の最適化をもたらすことができる。
本発明によれば、核酸配列、アミノ酸配列またはペプチドの変異体、誘導体、修飾形態またはフラグメントは、好ましくは、それぞれ、それが由来する核酸配列、アミノ酸配列またはペプチドの機能的特性を有する。そのような機能的特性は、他の分子との相互作用または他の分子への結合を含む。1つの実施形態では、核酸配列、アミノ酸配列またはペプチドの変異体、誘導体、修飾形態またはフラグメントは、それぞれ、それが由来する核酸配列、アミノ酸配列またはペプチドと免疫学的に等価である。
好ましくは、特定の核酸配列と、前記特定核酸配列に関して修飾されたまたは前記特定核酸配列の変異体である核酸配列との間の同一性の程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらに一層好ましくは少なくとも90%、または最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%である。CLDN6核酸変異体に関して、同一性の程度は、好ましくは少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約450、少なくとも約500、少なくとも約550、少なくとも約600または少なくとも約630ヌクレオチドの領域に対して与えられる。好ましい実施形態では、同一性の程度は、配列表に示す核酸配列などの参照核酸配列の全長に対して与えられる。好ましくは、2つの配列は、互いにハイブリダイズして、安定な二本鎖を形成することができ、ハイブリダイゼーションは、好ましくはポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件(ストリンジェントな条件)下で実施される。ストリンジェントな条件は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook et al.,Editors,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York,1989またはCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,Editors,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkに記載されており、例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液(3.5×SSC、0.02%フィコール、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mM NaHPO(pH7)、0.5%SDS、2mM EDTA)中65℃でのハイブリダイゼーションを指す。SSCは、0.15M塩化ナトリウム/0.15Mクエン酸ナトリウム、pH7である。ハイブリダイゼーション後、DNAが導入された膜を、例えば2×SSC中室温で、次に0.1〜0.5×SSC/0.1×SDS中68℃までの温度で洗浄する。
本発明による「変異体」という用語はまた、突然変異体、スプライス変異体、立体配座変異体、アイソフォーム変異体、対立遺伝子変異体、種変異体および種ホモログ、特に天然に存在するものを包含する。対立遺伝子変異体は、遺伝子の正常配列中の変化に関するが、その重要性はしばしば不明である。完全な遺伝子配列解析は、しばしば所与の遺伝子について数多くの対立遺伝子変異体を同定する。種ホモログは、所与の核酸配列またはアミノ酸配列のものとは異なる種を起源とする核酸配列またはアミノ酸配列である。
本発明の目的上、アミノ酸配列の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を包含する。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列内に1または2またはそれ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1またはそれ以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列内の特定の部位に挿入されるが、生じる産物の適切なスクリーニングを伴うランダムな挿入も可能である。
アミノ酸付加変異体は、1またはそれ以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合を含む。
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1またはそれ以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失はタンパク質の任意の位置であり得る。
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。相同なタンパク質もしくはペプチドの間で保存されていないアミノ酸配列内の位置に修飾が存在することおよび/またはアミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸で置換されることが好ましい。好ましくは、タンパク質変異体内のアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち類似の荷電または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、それらの側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換を含む。天然に生じるアミノ酸は一般に4つのファミリーに分けられる:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、時として芳香族アミノ酸として一緒に分類される。
配列番号:37に従うアミノ酸配列に関して変異体という用語は、特に46位のシステインが上記で挙げたアミノ酸、好ましくはグリシン、アラニン、セリン、トレオニン、バリンまたはロイシンなどの、システイン以外の別のアミノ酸によって置換されている配列に関する。
好ましくは、特定のアミノ酸配列と、前記特定アミノ酸配列に関して修飾されたまたは前記特定アミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の、例えば実質的な相同性を示すアミノ酸配列の間の類似性の程度、好ましくは同一性の程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、さらに一層好ましくは少なくとも90%、または最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%であるアミノ酸領域に対して与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200アミノ酸から成る場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180または少なくとも約200アミノ酸の、好ましくは連続するアミノ酸に対して与えられる。CLDN6ポリペプチド変異体に関して、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、少なくとも約200または少なくとも約210アミノ酸の領域に対して与えられる。好ましい実施形態では、類似性または同一性の程度は、配列表に示すアミノ酸配列などの参照アミノ酸配列の全長に対して与えられる。配列類似性、好ましく配列同一性を決定するためのアラインメントは、当分野で公知のツールを用いて、好ましくは最良の配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::ニードル、マトリックス:Blosum62、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5を用いて実施することができる。
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換を示すアミノ酸のパーセントを指示する。2つのポリペプチドまたは核酸配列の間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸またはヌクレオチドのパーセントを指示する。
「同一性パーセント」は、最良のアラインメント後に得られ、このパーセントは純粋に統計的であって、2つの配列の間の相違はランダムにおよびそれらの全長にわたって分布する。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の配列比較は、従来これらの配列を最適に整列した後で比較することによって実施され、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定し、比較するためにセグメントごとにまたは「比較ウィンドウ」ごとに実施される。比較のための配列の最適アラインメントは、手操作による以外に、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって作成され得る。
同一性パーセントは、比較する2つの配列の間で同一の位置の数を決定し、これら2つの配列間の同一性パーセントを得るためにこの数を比較する位置の数で除して、得られた結果に100を乗じることによって計算される。
「保存的置換」は、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の類似度に基づいて行われ得る。例えば:(a)非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれる;(b)極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが含まれる;(c)正に荷電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが含まれる;ならびに(d)負に荷電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。置換は、典型的には(a)〜(d)の群の中で行われ得る。加えて、グリシンとプロリンは、αへリックスを破壊するそれらの能力に基づいて互いに置換され得る。一部の好ましい置換は、以下の群の間で行われ得る:(i)SとT;(ii)PとG;ならびに(iii)A、V、LおよびI。公知の遺伝暗号ならびに組換えおよび合成DNA技術を考慮して、当業者は、保存的アミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築することができる。
本発明は、抗体の機能的および薬物動態学的特性を変化させるためにFc領域内で変更が為された抗体を包含する。そのような変更は、C1q結合とCDCまたはFcγR結合とADCCの低下または上昇を生じさせ得る。置換は、例えば、重鎖定常領域のアミノ酸残基の1またはそれ以上において行うことができ、それにより、修飾された抗体と比較して抗原に結合する能力を保持しながらエフェクター機能の変化を生じさせ得る。米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号参照。
抗体のインビボ半減期は、分子が無傷CH2ドメインまたは無傷Ig Fc領域を含まないようにIg定常ドメインまたはIg様定常ドメインのサルベージ受容体エピトープを修飾することによって改善できる。米国特許第6,121,022号および同第6,194,551号参照。インビボ半減期は、Fc領域内に突然変異を作製することによって、例えば252位のロイシンをトレオニンに置換することによって、254位のセリンをトレオニンに置換することによって、または256位のフェニルアラニンをトレオニンに置換することによってさらに延長させることができる。米国特許第6,277,375号参照。
さらに、抗体のエフェクター機能を変化させるために抗体のグリコシル化パターンを改変することができる。例えば、Fc受容体に対するFc領域の親和性を高め、次にそれによりNK細胞の存在下での抗体のADCCの増大を生じさせるために、通常はFc領域の297位でAsnに結合しているフコース単位を付加しないトランスフェクトーマにおいて抗体を発現させることができる。Shield et al.(2002)JBC,277:26733参照。さらに、CDCを改変するためにガラクトシル化の修飾を行うことができる。
あるいは、別の実施形態では、飽和突然変異誘発などにより、抗CLDN6抗体コード配列の全部または一部に沿ってランダムに突然変異を導入することができ、生じる改変された抗CLDN6抗体を結合活性に関してスクリーニングすることができる。
本発明によれば、「細胞」または「宿主細胞」という用語は、好ましくは無傷細胞、すなわち酵素、小器官または遺伝物質などの通常の細胞内成分を放出していない無傷膜を有する細胞に関する。無傷細胞は、好ましくは生存可能な細胞、すなわちその正常な代謝機能を実施することができる生細胞である。好ましくは、前記用語は、本発明によれば、外因性核酸で形質転換またはトランスフェクトすることができる任意の細胞に関する。「細胞」という用語は、本発明によれば、原核細胞(例えば大腸菌)または真核細胞(例えば樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、HEK293細胞、HELA細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を包含する。外因性核酸は、(i)それ自体で自由に分散して、(ii)組換えベクターに組み込まれて、または(iii)宿主細胞ゲノムもしくはミトコンドリアDNAに組み入れられて、細胞の内部で認められ得る。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギおよび霊長動物からの細胞などの、哺乳動物細胞が特に好ましい。細胞は多数の組織型に由来してよく、一次細胞および細胞株を包含する。具体的な例には、ケラチノサイト、末梢血白血球、骨髄幹細胞および胚性幹細胞が含まれる。さらなる実施形態では、細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球またはマクロファージである。「宿主細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、好ましくは組換え発現ベクターが導入された細胞を指すことが意図されている。
核酸分子を含む細胞は、好ましくは前記核酸によってコードされるペプチドまたはタンパク質を発現する。
「トランスジェニック動物」という用語は、1またはそれ以上の導入遺伝子、好ましくは重鎖および/もしくは軽鎖導入遺伝子、または導入染色体(動物の天然ゲノムDNAに組み込まれたもしくは組み込まれていない)を含むゲノムを有し、好ましくは導入遺伝子を発現することができる動物を指す。例えば、トランスジェニックマウスは、マウスが、CLDN6抗原および/またはCLDN6を発現する細胞で免疫化された場合ヒト抗CLDN6抗体を産生するように、ヒト軽鎖導入遺伝子と、ヒト重鎖導入遺伝子またはヒト重鎖導入染色体のいずれかを有し得る。ヒト重鎖導入遺伝子は、HCo7もしくはHCol2マウスなどのトランスジェニックマウス、例えばHuMAbマウスの場合のように、マウスの染色体DNAに組み込まれ得るか、またはヒト重鎖導入遺伝子は、国際公開第02/43478号に記載されているトランスクロモソーマル(例えばKM)マウスの場合のように、染色体外に維持され得る。そのようなトランスジェニックおよびトランスクロモソーマルマウスは、V−D−J組換えおよびアイソタイプスイッチを受けることによりCLDN6に対するヒトモノクローナル抗体の多数のアイソタイプ(例えばIgG、IgAおよび/またはIgE)を産生することができると考えられる。
本明細書で使用される「低減する」または「阻害する」は、レベル、例えば細胞の増殖のレベルの、好ましくは5%またはそれ以上、10%またはそれ以上、20%またはそれ以上、より好ましくは50%またはそれ以上、最も好ましくは75%またはそれ以上の全体的な低下を生じさせる能力を意味する。「阻害する」という用語または同様の語句は、完全な阻害または基本的に完全な阻害、すなわちゼロまでまたは基本的にゼロまで低減することを包含する。
「上昇させること」または「増強すること」などの用語は、好ましくは、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらに一層好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも100%の上昇または増強に関する。これらの用語はまた、ゼロ時点で特定の化合物または状態について検出可能なシグナルが存在せず、およびゼロ時点より後の特定の時点で特定の化合物または状態について検出可能なシグナルが存在する状況にも関し得る。
「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価のアミノ酸配列などの免疫学的に等価の分子が、同じかもしくは基本的に同じ免疫学的特性を示すおよび/または、例えば免疫学的作用の種類に関して、例えば体液性および/もしくは細胞性免疫応答の誘導、誘導される免疫反応の強さおよび/もしくは期間または誘導される免疫反応の特異性などに関して、同じかもしくは基本的に同じ免疫学的作用を及ぼすことを意味する。本発明に関連して、「免疫学的に等価」という用語は、好ましくは免疫化のために使用されるペプチドまたはペプチド変異体の免疫学的作用または特性に関して使用される。特定の免疫学的特性は、抗体に結合する能力および、適切な場合は、好ましくは抗体の生成を刺激することにより、免疫応答を生じさせる能力である。例えば、アミノ酸配列が、被験者の免疫系に暴露されたとき、CLDN6の一部を形成する参照アミノ酸配列などの参照アミノ酸配列と反応する特異性を有する免疫反応、好ましくは抗体を誘導する場合、前記アミノ酸配列は参照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。
本発明に関連して「免疫エフェクター機能」という用語は、腫瘍の播種および転移の阻害を含む、腫瘍増殖の阻害および/または腫瘍発生の阻害を生じさせる免疫系の成分によって媒介される任意の機能を包含する。好ましくは、免疫エフェクター機能は腫瘍細胞の死滅を生じさせる。好ましくは、本発明に関連する免疫エフェクター機能は、抗体媒介性エフェクター機能である。そのような機能には、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、例えば表面抗原への抗体の結合による、腫瘍関連抗原を担持する細胞におけるアポトーシスの誘導、および/または腫瘍関連抗原を担持する細胞の増殖の阻害、好ましくはADCCおよび/またはCDCが含まれる。したがって、1またはそれ以上の免疫エフェクター機能を媒介することができる抗体は、好ましくは、CDC媒介性溶解、ADCC媒介性溶解、アポトーシス、同型接着および/または食作用を誘導することにより、好ましくはCDC媒介性溶解および/またはADCC媒介性溶解を誘導することにより、細胞の死滅化を媒介することができる。抗体はまた、単に腫瘍細胞の表面の腫瘍関連抗原に結合することによっても作用を及ぼし得る。例えば、抗体は、腫瘍関連抗原の機能をブロックし得るかまたは単に腫瘍細胞の表面の腫瘍関連抗原に結合することによってアポトーシスを誘導し得る。
<発明の詳細な説明>
mAb作用の機構
以下は、本発明の抗体の治療効果の基礎となる機構についての考察を提供するが、これはいかなる意味においても本発明への限定とみなされるべきではない。
本明細書で述べる抗体は、好ましくはADCCまたはCDCを介して、免疫系の成分と相互作用し得る。本発明の抗体はまた、ペイロード(例えば放射性同位体、薬剤もしくは毒素)を標的して腫瘍細胞を直接死滅させるためにも使用でき、または伝統的な化学療法剤と相乗作用的に使用して、Tリンパ球への化学療法剤の細胞傷害性副作用のために損なわれた可能性がある抗腫瘍免疫応答を含み得る補完的作用機構を介して腫瘍を攻撃することもできる。しかし、本発明の抗体はまた、単に細胞表面上のCLDN6に結合することによって、したがって、例えば細胞の増殖をブロックすることによっても作用を及ぼし得る。
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害
ADCCは、本明細書で述べるエフェクター細胞、特にリンパ球の細胞死滅化能力を表わし、これは、好ましくは標的細胞が抗体によって印づけられることを必要とする。
ADCCは、好ましくは、抗体が腫瘍細胞上の抗原に結合し、抗体Fcドメインが免疫エフェクター細胞の表面のFc受容体(FcR)と係合した場合に起こる。Fc受容体のいくつかのファミリーが同定されており、特定細胞集団は、規定されたFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、抗原提示および腫瘍に対するT細胞応答の誘導を導く様々な程度の即時腫瘍破壊を直接誘導する機構とみなすことができる。好ましくは、ADCCのインビボでの誘導は、抗腫瘍T細胞応答および宿主由来の抗体応答をもたらす。
補体依存性細胞傷害
CDCは、抗体によって指令され得るもう1つの細胞死滅化方法である。IgMは補体活性化のために最も有効なアイソタイプである。IgG1およびIgG3も、古典的補体活性化経路によってCDCを指令するうえでどちらも非常に有効である。好ましくは、このカスケードにおいて、抗原抗体複合体の形成は、IgG分子などの関与する抗体分子のC2ドメイン上のごく近接する多数のC1q結合部位の露出を生じさせる(C1qは補体C1の3つのサブ成分の1つである)。好ましくは、これらの露出されたC1q結合部位は、それまでの低親和性C1q−IgG相互作用を高いアビディティの相互作用へと変換し、それが、一連の他の補体タンパク質を含む事象のカスケードを開始させ、エフェクター細胞化学走性/活性化物質C3aおよびC5aのタンパク質分解性放出を導く。好ましくは、補体カスケードは、細胞内および細胞外への水と溶質の自由な通過を促進する細胞膜の細孔を作り出す、膜傷害性複合体の形成で終了する。
抗体の作製
本発明の抗体は、従来のモノクローナル抗体法、例えばKohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む、様々な技術によって作製することができる。体細胞ハイブリダイゼーション手順が原則として好ましいが、モノクローナル抗体を作製するための他の技術、例えばBリンパ球のウイルス形質転換もしくは発癌性形質転換または抗体遺伝子のライブラリを使用したファージディスプレイ技術も使用できる。
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製するための好ましい動物系は、マウスの系である。マウスにおけるハイブリドーマの作製は極めて広く確立された手順である。免疫化プロトコールおよび融合のための免疫脾細胞を単離するための技術は当分野において公知である。融合パートナー(例えばマウス骨髄腫細胞)および融合手順も公知である。
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製するための他の好ましい動物系は、ラットおよびウサギの系である(例えばSpieker−Polet et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:9348(1995)に記載されている;また、Rossi et al.,Am.J.Clin.Pathol.124:295(2005)も参照のこと)。
さらに別の好ましい実施形態では、CLDN6に対するヒトモノクローナル抗体は、マウスの系ではなくヒト免疫系の部分を担持するトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルマウスを使用して作製できる。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソーマルマウスは、それぞれHuMAbマウスおよびKMマウスとして知られるマウスを包含し、本明細書では集合的に「トランスジェニックマウス」と称する。そのようなトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体の生産は、国際公開第2004/035607号の中でCD20に関して詳述されているように実施することができる。
モノクローナル抗体を作製するためのさらに別の方法は、定義された方法の抗体を産生するリンパ球から抗体をコードする遺伝子を直接単離することであり、例えばBabcock et al.,1996;A novel strategy for generating monoclonal antibodies from single,isolated lymphocytes producing antibodies of defined strategy参照。組換え抗体工学の詳細についは、Welschof and Kraus,Recombinant antibodes for cancer therapy ISBN−0−89603−918−8およびBenny K.C.Lo Antibody Engineering ISBN 1−58829−092−1も参照のこと。
免疫化
CLDN6に対する抗体を作製するため、上述したように、CLDN6配列に由来する担体結合ペプチド、組換え発現されたCLDN6抗原もしくはそのフラグメントの富化製剤および/またはCLDN6もしくはそのフラグメントを発現する細胞でマウスを免疫化することができる。あるいは、完全長ヒトCLDN6またはそのフラグメントをコードするDNAでマウスを免疫化することができる。CLDN6抗原の精製製剤または富化製剤を使用した免疫化が抗体を生じない場合は、免疫応答を促進するためにCLDN6を発現する細胞、例えば細胞株でマウスを免疫化することもできる。
免疫応答は、尾静脈または眼窩後採血によって得られる血漿および血清試料で免疫化プロトコールの経過を観測することができる。十分な力価の抗CLDN6免疫グロブリンを有するマウスを融合のために使用できる。特異的抗体を分泌するハイブリドーマの割合を高めるため、犠死および脾切除の3〜5日前にCLDN6発現細胞を用いて腹腔内または静脈内経路でマウスを追加免疫することができる。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製
CLDN6に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製するため、免疫化マウスから得たリンパ節または脾臓由来の細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株などの適切な不死化細胞株に融合することができる。次に、生じたハイブリドーマを抗原特異的抗体の産生に関してスクリーニングすることができる。その後、個々のウェルを、抗体を分泌するハイブリドーマに関してELISAによってスクリーニングすることができる。CLDN6発現細胞を使用した免疫蛍光法およびFACS分析により、CLDN6に対して特異性を有する抗体を同定できる。抗体を分泌するハイブリドーマを再度平板培養し、再びスクリーニングして、抗CLDN6モノクローナル抗体に関してまだ陽性である場合は限界希釈によってサブクローニングすることができる。その後、安定なサブクローンをインビトロで培養して、特徴づけのために組織培養培地中で抗体を作製することができる。
モノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの作製
本発明の抗体はまた、例えば当分野で周知の組換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション法の組合せを用いて(Morrison,S.(1985)Science 229:1202)、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて作製することもできる。
例えば、1つの実施形態では、対象とする遺伝子、例えば抗体遺伝子を、国際公開第87/04462号、同国際公開第89/01036号および欧州特許第338 841号に開示されているGS遺伝子発現系または当分野で周知の他の発現系によって使用されるような真核生物発現プラスミドなどの発現ベクターに連結することができる。クローニングした抗体遺伝子を含む精製プラスミドを、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293T細胞またはHEK293細胞などの真核生物宿主細胞、あるいは植物由来細胞、真菌または酵母細胞のような他の真核細胞に導入することができる。これらの遺伝子を導入するために使用される方法は、電気穿孔、リポフェクチン、リポフェクタミンその他のような当分野で記述されている方法であり得る。宿主細胞へのこれらの抗体遺伝子の導入後、抗体を発現する細胞を同定し、選択することができる。これらの細胞は、その後発現レベルに関して増幅し、抗体を生産するためにスケールアップすることができるトランスフェクトーマである。これらの培養上清および/または細胞から組換え抗体を単離し、精製することができる。
あるいは、クローニングした抗体遺伝子を、微生物、例えば大腸菌などの原核細胞を含む、他の発現系において発現させることができる。さらに、抗体は、トランスジェニック非ヒト動物において、例えばヒツジおよびウサギからの乳もしくは雌ニワトリからの卵において、またはトランスジェニック植物において生産することができる;例えば、Verma,R.,et al.(1998)J.Immunol.Meth.216:165−181;Pollock,et al.(1999)J.Immunol.Meth.231:147−157;およびFischer,R.,et al.(1999)Biol.Chem.380:825−839参照。
無傷抗体を発現する部分抗体配列の使用(すなわちヒト化およびキメラ化)
a)キメラ化
マウスモノクローナル抗体は、毒素または放射性同位体で標識した場合、ヒトにおいて治療用抗体として使用することができる。非標識マウス抗体は、反復適用した場合ヒトにおいて高度に免疫原性であり、治療効果の低下をもたらす。主たる免疫原性は重鎖定常領域によって媒介される。ヒトにおけるマウス抗体の免疫原性は、それぞれの抗体をキメラ化またはヒト化した場合低減するまたは完全に回避することができる。キメラ抗体は、マウス抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域を有するもののような、その異なる部分が異なる動物種に由来する抗体である。抗体のキメラ化は、マウス抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をヒト重鎖および軽鎖の定常領域と連結することによって達成される(例えばKraus et al.,in Methods in Molecular Biology series,Recombinant antibodies for cancer therapy ISBN−0−89603−918−8によって述べられている)。好ましい実施形態では、キメラ抗体は、ヒトκ軽鎖定常領域をマウス軽鎖可変領域に連結することによって作製される。同じく好ましい実施形態では、キメラ抗体は、ヒトλ軽鎖定常領域をマウス軽鎖可変領域に連結することによって作製できる。キメラ抗体の作製のための好ましい重鎖定常領域は、IgG1、IgG3およびIgG4である。キメラ抗体の作製のための他の好ましい重鎖定常領域は、IgG2、IgA、IgDおよびIgMである。
b)ヒト化
抗体は、主として、6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)内に位置するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列はCDRの外側の配列よりも個々の抗体間でより多様である。CDR配列は大部分の抗体−抗原相互作用に関与するので、異なる性質を有する異なる抗体からのフレームワーク配列に移植された、特定の天然に生じる抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然に生じる抗体の性質を模倣する組換え抗体を発現することが可能である(例えばRiechmann,L.et al.(1998)Nature 332:323−327;Jones,P.et al.(1986)Nature 321:522−525;およびQueen,C.et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:10029−10033参照)。そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む公的DNAデータベースから入手できる。これらの生殖細胞系配列は、B細胞の成熟の間にV(D)J連結によって形成される、完全に構築された可変遺伝子を含まないので、成熟抗体遺伝子配列とは異なる。生殖細胞系遺伝子配列はまた、高親和性二次レパートリー抗体の配列とも、可変領域全体にわたって均一に個々に異なる。例えば、体細胞突然変異は、フレームワーク領域1のアミノ末端部分およびフレームワーク領域4のカルボキシ末端部分では比較的頻度が低い。さらに、多くの体細胞突然変異は抗体の結合特性を有意に変化させない。この理由から、もとの抗体と類似の結合特性を有する無傷組換え抗体を再現するために特定の抗体のDNA配列全体を得る必要はない(国際公開第99/45962号参照)。CDR領域にわたる部分的重鎖および軽鎖配列は、典型的にはこの目的に十分である。部分配列は、いずれの生殖細胞系可変および連結遺伝子セグメントが組み換えられた抗体可変遺伝子に寄与したかを判定するために使用される。生殖細胞系配列は、次に、可変領域の欠けている部分を埋めるために使用される。重鎖および軽鎖リーダー配列はタンパク質成熟の間に切断され、最終的な抗体の性質には寄与しない。欠けている配列を加えるために、クローニングしたcDNA配列を連結またはPCR増幅によって合成オリゴヌクレオチドと組み合わせることができる。あるいは、可変領域全体を、短いオーバーラップするオリゴヌクレオチドのセットとして合成し、PCR増幅によって組み合わせて、完全な合成可変領域クローンを作製することができる。この工程は、特定の制限部位の排除もしくは組込み、または特定のコドンの最適化などのある種の利点を有する。
ハイブリドーマからの重鎖および軽鎖転写産物のヌクレオチド配列を使用して、天然配列と同じアミノ酸コード能力を備えた合成V配列を生成するための合成オリゴヌクレオチドのオーバーラップするセットを設計する。合成重鎖およびκ鎖配列は3つの点で天然配列と異なり得る:反復ヌクレオチド塩基の鎖がオリゴヌクレオチド合成およびPCR増幅を容易にするために中断される;最適翻訳開始部位がコザック規則(Kozak,1991,J.Biol.Chem.266:19867−19870)に従って組み込まれる;ならびにHindIII部位が翻訳開始部位の上流に作られる。
重鎖および軽鎖可変領域の両方に関して、最適化コード鎖および対応する非コード鎖配列を、対応する非コードオリゴヌクレオチドのほぼ中間点で30〜50ヌクレオチドに切断する。したがって、各々の鎖について、オリゴヌクレオチドを、150〜400ヌクレオチドのセグメントにわたるオーバーラップ二本鎖セットに構築することができる。次にこのプールを鋳型として使用して、150〜400ヌクレオチドのPCR増幅産物を生成する。典型的には、1つの可変領域オリゴヌクレオチドセットを2つのプールに分解し、それらを別々に増幅して2つのオーバーラップするPCR産物を生成する。その後これらのオーバーラップ産物をPCR増幅によって組み合わせて、完全な可変領域を形成する。また、発現ベクター構築物に容易にクローニングすることができるフラグメントを生成するために重鎖または軽鎖定常領域のオーバーラップするフラグメントをPCR増幅に含めることも望ましいと考えられる。
再構築されたキメラまたはヒト化重鎖および軽鎖可変領域を、次に、クローニングしたプロモーター、リーダー、翻訳開始、定常領域、3'非翻訳、ポリアデニル化および転写終結配列と組み合わせて、発現ベクター構築物を形成する。重鎖および軽鎖発現構築物を、単一ベクター中に組み合わせる、宿主細胞に同時トランスフェクトする、連続的にトランスフェクトするまたは別々にトランスフェクトすることができ、その後それらを融合して、両方の鎖を発現する宿主細胞を形成する。ヒトIgGκについての発現ベクターの構築において使用するためのプラスミドを以下で述べる。PCR増幅したV重鎖およびVκ軽鎖cDNA配列を、完全な重鎖および軽鎖ミニ遺伝子を再構築するために使用できるようにプラスミドを構築することができる。これらのプラスミドは、完全なヒト抗体、またはキメラIgG1κもしくはIgG4κ抗体を発現するために使用できる。他の重鎖アイソタイプの発現のためまたはλ軽鎖を含む抗体の発現のために同様のプラスミドを構築することができる。
したがって、本発明の別の態様では、本発明の抗CLDN6抗体の構造特徴を利用して、CLDN6への結合などの本発明の抗体の少なくとも1つの機能特性を保持する、構造的に関連するヒト化抗CLDN6抗体を作製する。より具体的には、マウスモノクローナル抗体の1またはそれ以上のCDR領域を、組換えによって公知のヒトフレームワーク領域およびCDRと組み合わせて、付加的な、組換えによって操作された本発明のヒト化抗CLDN6抗体を作製することができる。
抗原を発現する細胞への結合
CLDN6に結合する抗体の能力は、実施例で述べるような標準的な結合アッセイ(例えばELISA、ウェスタンブロット法、免疫蛍光法およびフローサイトメトリ分析)を用いて測定することができる。
抗体の単離および特徴づけ
抗CLDN6抗体を精製するため、選択したハイブリドーマをモノクローナル抗体精製用の2リットルスピナーフラスコ中で増殖させることができる。あるいは、抗CLDN6抗体を透析バイオリアクターにおいて生産することができる。上清をろ過し、必要に応じて濃縮した後、プロテインG−セファロースまたはプロテインA−セファロースによるアフィニティクロマトグラフィに供することができる。溶出したIgGを、純度を保証するためにゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィによって検査することができる。緩衝液をPBSに交換し、1.43の吸光係数を使用してOD280によって濃度を測定できる。モノクローナル抗体をアリコートに分け、−80℃で保存することができる。
選択した抗CLDN6モノクローナル抗体がユニークなエピトープに結合するかどうかを判定するために、部位指定または多部位指定突然変異誘発が使用できる。
アイソタイプの決定
精製抗体のアイソタイプを決定するため、様々な市販のキット(例えばZymed、Roche Diagnostics)によるアイソタイプELISAを実施することができる。マイクロタイタープレートのウェルを抗マウスIgで被覆できる。ブロックした後、プレートを周囲温度で2時間、モノクローナル抗体または精製アイソタイプ対照と反応させる。次に、ウェルをマウスIgG1、IgG2a、IgG2bもしくはIgG3、IgAまたはマウスIgM特異的ペルオキシダーゼ結合プローブのいずれかと反応させることができる。洗浄後、プレートをABTS基質(1mg/ml)で展開し、405〜650のODで分析することができる。あるいは、IsoStrip Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit(Roche、カタログ番号1493027)を、製造者によって述べられているように使用し得る。
フローサイトメトリ分析
免疫化したマウスの血清中の抗CLDN6抗体の存在またはCLDN6を発現する生細胞へのモノクローナル抗体の結合を明らかにするため、フローサイトメトリを用いることができる。天然にまたはトランスフェクション後にCLDN6を発現する細胞株とCLDN6発現を欠く陰性対照(標準的な増殖条件下で増殖させた)を、ハイブリドーマ上清中または1%FBSを含むPBS中で様々な濃度のモノクローナル抗体と混合し、4℃で30分間インキュベートすることができる。洗浄後、APC標識またはAlexa647標識IgG抗体を、一次抗体染色と同じ条件下でCLDN6結合モノクローナル抗体に結合することができる。単一生細胞をゲートする側方光散乱特性を利用したFACS装置でのフローサイトメトリによって試料を分析できる。単一測定でCLDN6特異的モノクローナル抗体を非特異的結合抗体から区別するため、同時トランスフェクションの方法が使用できる。CLDN6と蛍光マーカーをコードするプラスミドを一過性にトランスフェクトした細胞を上述したように染色することができる。トランスフェクトされた細胞は、抗体染色細胞とは異なる蛍光チャネルで検出できる。トランスフェクト細胞の大部分は両方の導入遺伝子を発現するので、CLDN6特異的モノクローナル抗体は蛍光マーカー発現細胞に選択的に結合し、一方非特異的抗体は同等の比率で非トランスフェクト細胞に結合する。蛍光顕微鏡検査を用いる選択的なアッセイをフローサイトメトリアッセイに加えてまたはその代わりに使用し得る。細胞を上述したように正確に染色し、蛍光顕微鏡によって検査することができる。
免疫蛍光顕微鏡検査
免疫化したマウスの血清中の抗CLDN6抗体の存在またはCLDN6を発現する生細胞へのモノクローナル抗体の結合を明らかにするため、免疫蛍光顕微鏡分析を用いることができる。例えば、自然にまたはトランスフェクション後にCLDN6を発現する細胞株とCLDN6発現を欠く陰性対照を、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mM L−グルタミン、100IU/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを添加したDMEM/F12培地中、標準的な増殖条件下にチャンバースライド中で増殖させる。次に、細胞をメタノールまたはパラホルムアルデヒドで固定するかまたは未処理のまま放置できる。その後、細胞をCLDN6に対するモノクローナル抗体と25℃で30分間反応させることができる。洗浄後、細胞を同じ条件下でAlexa555標識抗マウスIgG二次抗体(Molecular Probes)と反応させることができる。その後蛍光顕微鏡によって細胞を検査することができる。
細胞中の総CLDN6レベルは、細胞をメタノール固定またはパラホルムアルデヒド固定し、Triton X−100で透過処理した場合に観察することができる。生細胞および透過処理していないパラホルムアルデヒド固定細胞においてCLDN6の表面局在化を検査できる。加えて、密着結合へのCLDN6のターゲティングを、ZO−1などの密着結合マーカーでの共染色によって分析できる。さらに、抗体結合の影響および細胞膜内のCLDN6局在化が検査できる。
ウェスタンブロット法
抗CLDN6 IgGは、ウェスタンブロット法によってCLDN6抗原との反応性に関してさらに試験できる。簡単に述べると、CLDN6を発現する細胞からの細胞抽出物と適切な陰性対照を調製し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供することができる。電気泳動後、分離された抗原をニトロセルロース膜に転写し、ブロックして、試験するモノクローナル抗体でプローブする。抗マウスIgGペルオキシダーゼを用いてIgG結合を検出し、ECL基質で展開することができる。
免疫組織化学
抗CLDN6マウスIgGは、当業者に周知の方法で免疫組織化学によって、例えば、通常の外科手術の間に患者から得た、または自然にもしくはトランスフェクション後にCLDN6を発現する細胞株を接種した異種移植腫瘍を担持するマウスから得た非癌組織または癌組織試料からの、パラホルムアルデヒドまたはアセトンで固定した凍結切片またはパラホルムアルデヒドで固定したパラフィン包埋組織切片を使用して、CLDN6抗原との反応性をさらに試験することができる。免疫染色のために、CLDN6に対して反応性の抗体をインキュベートし、次いで供給者の指示に従ってホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスまたはヤギ抗ウサギ抗体(DAKO)と共にインキュベートすることができる。
インビトロでの抗体の食作用および細胞死滅化活性
CLDN6に特異的に結合することに加えて、抗CLDN6抗体は、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の食作用および死滅化を媒介するその能力に関して試験することができる。インビトロでのモノクローナル抗体活性の試験は、インビボモデルにおける試験に先立つ初期スクリーニングを提供する。
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC):
簡単に述べると、健常ドナーからの多形核細胞(PMN)、NK細胞、単球、単核細胞または他のエフェクター細胞をFicoll Hypaque密度勾配遠心分離、次いで夾雑赤血球の溶解によって精製することができる。洗浄したエフェクター細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清または5%熱不活性化ヒト血清を添加したRPMIに懸濁し、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする51Cr標識標的細胞と、エフェクター細胞対標的細胞の様々な比率で混合することができる。あるいは、標的細胞を蛍光増強リガンド(BATDA)で標識してもよい。死細胞から放出される増強リガンドを有するユウロピウムの高度蛍光キレートを蛍光光度計によって測定することができる。もう1つの選択的な手法は、ルシフェラーゼによる標的細胞のトランスフェクションを利用し得る。添加されたルシファーイエローは、その後、生細胞によってのみ酸化され得る。次に精製抗CLDN6 IgGを様々な濃度で添加することができる。無関係なヒトIgGを陰性対照として使用できる。アッセイは、使用するエフェクター細胞型に依存して37℃で4〜20時間実施できる。培養上清中の51Cr放出またはEuTDAキレートの存在を測定することにより、試料を細胞溶解に関して検定できる。あるいは、ルシファーイエローの酸化から生じる発光は生細胞の評価基準であり得る。
抗CLDN6モノクローナル抗体はまた、細胞溶解が複数のモノクローナル抗体で増強されるかどうかを判定するために様々な組合せで試験することもできる。
補体依存性細胞傷害(CDC):
モノクローナル抗CLDN6抗体は、様々な公知の技術を用いてCDCを媒介する能力に関して試験することができる。例えば、補体のための血清は、当業者に公知の方法で血液から入手できる。mAbのCDC活性を測定するために、種々の方法が使用できる。例えば、51Cr放出を測定する、またはヨウ化プロピジウム(PI)排除アッセイを用いて膜透過性上昇を評価することができる。簡単に述べると、標的細胞を洗浄し、5×10/mlを様々な濃度のmAbと共に室温または37℃で10〜30分間インキュベートすることができる。次に血清または血漿を20%(v/v)の最終濃度まで添加し、細胞を37℃で20〜30分間インキュベートすることができる。各々の試料からのすべての細胞をFACSチューブ中のPI溶液に添加できる。その後、FACSArrayを用いたフローサイトメトリ分析によって混合物をただちに分析することができる。
選択的なアッセイでは、CDCの誘導を接着細胞で測定することができる。このアッセイの1つの実施形態では、細胞を、アッセイの24時間前に組織培養平底マイクロタイタープレートに3×10/ウェルの密度で接種する。その翌日、増殖培地を取り出し、細胞を抗体と共に3組重複してインキュベートする。対照細胞を、それぞれバックグラウンド溶解および最大溶解の測定のために増殖培地または0.2%サポニンを含む増殖培地と共にインキュベートする。室温で20分間のインキュベーション後、上清を取り、DMEM中の20%(v/v)ヒト血漿または血清(あらかじめ37℃に温めておく)を細胞に添加して、37℃でさらに20分間インキュベートする。各々の試料からのすべての細胞をヨウ化プロピジウム溶液(10μg/ml)に添加する。次に、上清を、2.5μg/ml臭化エチジウムを含むPBSに交換し、Tecan Safireを用いて520nmでの励起後の蛍光放出を600nmで測定する。特異的溶解のパーセントを以下のように計算する:特異的溶解%=(試料蛍光−バックグラウンド蛍光)/(最大溶解蛍光−バックグラウンド蛍光)×100。
モノクローナル抗体による細胞増殖の阻害:
アポトーシスを開始させる能力に関して試験するため、モノクローナル抗CLDN6抗体を、例えばCLDN6陽性腫瘍細胞またはCLDN6トランスフェクト腫瘍細胞と共に37℃で約20時間インキュベートすることができる。細胞を採取し、Annexin−V結合緩衝液(BD biosciences)中で洗浄して、FITCまたはAPCと結合したAnnexin−V(BD biosciences)と共に暗所で15分間インキュベートすることができる。各々の試料からのすべての細胞をFACSチューブ中のPI溶液(PBS中10μg/ml)に添加し、ただちにフローサイトメトリによって評価することができる(上記のように)。あるいは、モノクローナル抗体による細胞増殖の一般的な阻害は市販のキットで検出できる。DELFIA Cell Proliferation Kit(Perkin−Elmer、カタログ番号AD0200)は、マイクロプレートにおける増殖中の細胞のDNA合成の間の5−ブロモ−2'−デオキシウリジン(BrdU)の組込みの測定に基づく非同位体免疫検定法である。組み込まれたBrdUを、ユウロピウム標識モノクローナル抗体を使用して検出する。抗体検出を可能にするため、Fix液を用いて細胞を固定し、DNA変性する。非結合抗体を洗い流し、DELFIA誘導剤を添加して標識抗体からユウロピウムイオンを溶液中に解離し、溶液中で前記イオンはDELFIA誘導剤の成分と高度蛍光性キレートを形成する。検出において時間分解蛍光光度法を使用して測定した蛍光は、各々のウェルの細胞におけるDNA合成に比例する。
前臨床試験
CLDN6に結合するモノクローナル抗体はまた、CLDN6を発現する腫瘍細胞の増殖を制御するうえでのそれらの効果を測定するためにインビボモデルにおいて(例えば、場合によりトランスフェクション後に、CLDN6を発現する細胞株を接種した異種移植腫瘍を担持する免疫不全マウスにおいて)試験することができる。
CLDN6を発現する腫瘍細胞を免疫無防備状態マウスまたは他の動物に異種移植した後のインビボ試験を、本発明の抗体を使用して実施できる。腫瘍を有さないマウスに抗体を投与し、次いで腫瘍の形成または腫瘍関連症状を予防する抗体の作用を測定するために腫瘍細胞を注射することができる。腫瘍の成長、転移または腫瘍関連症状を低減するそれぞれの抗体の治療効果を測定するために腫瘍担持マウスに抗体を投与することができる。抗体の適用は、併用の相乗効果および潜在的毒性を調べるために細胞増殖抑制薬、増殖因子阻害剤、細胞周期ブロッカー、血管新生阻害剤または他の抗体などの他の物質の適用と組み合わせることができる。本発明の抗体によって媒介される毒性副作用を分析するため、動物に抗体または対照試薬を接種し、CLDN6抗体治療に関連する可能性がある症状に関して十分に検討することができる。CLDN6抗体のインビボ適用の起こり得る副作用には、特に、胎盤を含むCLDN6発現組織における毒性が含まれる。ヒトおよび他の種、例えばマウスにおいてCLDN6を認識する抗体は、ヒトにおけるモノクローナルCLDN6抗体の適用によって媒介される潜在的副作用を予測するために特に有用である。
エピトープマッピング
本発明の抗体によって認識されるエピトープのマッピングは、Glenn E.Morris ISBN−089603−375−9による"Epitope Mapping Protocols(Methods in Molecular Biology)"およびOlwyn M.R.Westwood,Frank C.Hayによる"Epitope Mapping:A Practical Approach"Practical Approach Series,248の中で詳細に述べられているように実施できる。
I.CLDN6に結合する二重特異性/多重特異性分子
本発明のさらに別の実施形態では、CLDN6に対する抗体は、複数の結合部位または標的エピトープに結合する二重特異性または多重特異性分子を生成するために別の機能的分子、例えば別のペプチドまたはタンパク質(例えばFab'フラグメント)に誘導体化するまたは連結することができる。例えば、本発明の抗体は、別の抗体、ペプチドまたは結合ミメティックなどの1またはそれ以上の他の結合分子に機能的に連結することができる(例えば化学結合、遺伝子融合、非共有結合その他によって)。
したがって、本発明は、CLDN6に対する少なくとも1つの第一結合特異性と2番目の標的エピトープに対する第二結合特異性を含む二重特異性および多重特異性分子を包含する。本発明の特定の実施形態では、2番目の標的エピトープは、Fc受容体、例えばヒトFcγRI(CD64)もしくはヒトFcα受容体(CD89)、またはT細胞受容体、例えばCD3である。それゆえ、本発明は、FcγR、FcαRまたはFcεRを発現するエフェクター細胞(例えば単球、マクロファージまたは多形核細胞(PMN))、およびCLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする標的細胞の両方に結合することができる二重特異性および多重特異性分子を包含する。これらの二重特異性および多重特異性分子は、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞をエフェクター細胞に標的し、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の食作用、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、サイトカイン放出、またはスーパーオキシドアニオンの生成などの、Fc受容体を介したエフェクター細胞活性を始動させ得る。
本発明の二重特異性および多重特異性分子は、抗Fc結合特異性および抗CLDN6結合特異性に加えて、第三の結合特異性をさらに含み得る。1つの実施形態では、第三結合特異性は、抗増強因子(EF)部分、例えば細胞傷害活性に関与する表面タンパク質に結合し、それによって標的細胞に対する免疫応答を上昇させる分子である。「抗増強因子部分」は、所与の分子、例えば抗原または受容体に結合し、それによってFc受容体または標的細胞抗原の結合決定基の作用の増強を生じさせる抗体、機能的抗体フラグメントまたはリガンドであり得る。「抗増強因子部分」は、Fc受容体または標的細胞抗原に結合することができる。あるいは、抗増強因子部分は、第一および第二結合特異性部分が結合する実体とは異なる実体に結合できる。例えば、抗増強因子部分は細胞傷害性T細胞に結合することができる(例えばCD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、ICAM−1または標的細胞に対する免疫応答上昇を生じさせる他の免疫細胞を通して)。
1つの実施形態では、本発明の二重特異性および多重特異性分子は、結合特異性部分として、例えばFab、Fab'、F(ab')、Fvまたは一本鎖Fvを包含する、少なくとも1つの抗体を含む。抗体はまた、軽鎖もしくは重鎖二量体、またはFvもしくはLadner et al.,米国特許第4,946,778号に記載されている一本鎖構築物などのその任意の最小フラグメントであり得る。抗体はまた、米国特許出願公開第2003/0118592号および同第2003/0133939号に開示されている結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質であり得る。
1つの実施形態では、本発明の二重特異性および多重特異性分子は、エフェクター細胞の表面に存在するFcγRまたはFcαRに対する結合特異性、および標的細胞抗原、例えばCLDN6に対する第二結合特異性を含む。
1つの実施形態では、Fc受容体に対する結合特異性は、その結合がヒト免疫グロブリンG(IgG)によってブロックされないモノクローナル抗体によって提供される。本明細書で使用される、「IgG受容体」という用語は、第1番染色体上に位置する8個のγ鎖遺伝子のいずれかを指す。これらの遺伝子は合計12の膜貫通型または可溶性受容体アイソフォームをコードし、それらは3つのFcγ受容体クラス:FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)に分類される。1つの好ましい実施形態では、Fcγ受容体はヒト高親和性FcγRIである。
さらなる他の好ましい実施形態では、Fc受容体に対する結合特異性は、その結合が好ましくはヒト免疫グロブリンA(IgA)によってブロックされない、ヒトIgA受容体、例えばFcα受容体(FcαRI(CD89))に結合する抗体によって提供される。「IgA受容体」という用語は、第19番染色体上に位置する1個のα遺伝子(FcαRI)の遺伝子産物を包含することが意図されている。この遺伝子は、55〜110kDaの数個の選択的にスプライシングされる膜貫通型アイソフォームをコードすることが公知である。FcαRI(CD89)は、単球/マクロファージ、好酸性および好中性顆粒球上で構成的に発現されるが、非エフェクター細胞集団では発現されない。FcαRIは、IgA1およびIgA2の両方に対して中等度の親和性を有し、前記親和性はG−CSFまたはGM−CSFなどのサイトカインへの暴露後に上昇する(Morton,H.C.et al.(1996)Critical Reviews in Immunology 16:423−440)。IgAリガンド結合ドメインの外側でFcαRIに結合する、A3、A59、A62およびA77と同定された4つのFcαRI特異的モノクローナル抗体が記述されている(Monteiro,R.C.et al.(1992)J.Immunol.148:1764)。
別の実施形態では、二重特異性分子は、例えば一方の抗体が主としてCDCを誘導することによって働き、他方の抗体が主としてアポトーシスを誘導することによって働くような、補完的な機能活性を有する、本発明に従う2つのモノクローナル抗体から成る。
本明細書で使用される「エフェクター細胞特異的抗体」は、エフェクター細胞のFc受容体に結合する抗体または機能的抗体フラグメントを指す。本発明における使用のための好ましい抗体は、内因性免疫グロブリンによって結合されない部位でエフェクター細胞のFc受容体に結合する。
本明細書で使用される、「エフェクター細胞」という用語は、免疫応答の認識相および活性化相ではなく、免疫応答のエフェクター相に関与する免疫細胞を指す。例示的な免疫細胞には、骨髄系またはリンパ系起源の細胞、例えばリンパ球(例えばB細胞および細胞溶解性T細胞(CTL)を含むT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多形核細胞、顆粒球、マスト細胞ならびに好塩基球が含まれる。一部のエフェクター細胞は特異的Fc受容体を発現し、特異的免疫機能を実行する。好ましい実施形態では、エフェクター細胞は抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導することができ、例えば好中球はADCCを誘導することができる。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージは、標的細胞の特異的死滅化および免疫系の他の成分への抗原の提示、または抗原を提示する細胞への結合に関与する。他の実施形態では、エフェクター細胞は、標的抗原、標的細胞または微生物を貪食することができる。エフェクター細胞上での特定のFcRの発現は、サイトカインなどの体液性因子によって調節され得る。例えば、FcγRIの発現はインターフェロンγ(IFN−γ)によって上方調節されることが認められている。この発現増強は、標的に対するFcγRI担持細胞の細胞傷害活性を上昇させる。エフェクター細胞は、標的抗原または標的細胞を貪食するまたは溶解することができる。
「標的細胞」は、本発明の抗体によって標的とされ得る、被験者(例えばヒトまたは動物)における何らかの望ましくない細胞を意味する。好ましい実施形態では、標的細胞は、CLDN6を発現または過剰発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞である。CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞には、典型的には腫瘍細胞が含まれる。
II.免疫複合体
別の態様では、本発明は、細胞毒、薬剤(例えば免疫抑制剤)または放射性同位体などの治療成分または物質に結合した抗CLDN6抗体を特徴とする。そのような複合体を本明細書では「免疫複合体」と称する。1またはそれ以上の細胞毒を含有する免疫複合体を「免疫毒素」と称する。細胞毒または細胞傷害性物質は、細胞に有害であり、特に細胞を死滅させるあらゆる物質を包含する。例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド類、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシンならびにそれらの類似体またはホモログが含まれる。
本発明の免疫複合体を形成するための適切な治療薬には、代謝拮抗物質(例えばメトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂薬(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、治療薬は細胞傷害性物質または放射性毒性物質である。別の実施形態では、治療薬は免疫抑制剤である。さらに別の実施形態では、治療薬はGM−CSFである。好ましい実施形態では、治療薬は、ドキソルビシン、シスプラチン、硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミドまたはリシンAである。
本発明の抗体はまた、放射性同位体、例えばヨウ素131、イットリウム90またはインジウム111に結合して、癌などのCLDN6関連疾患を治療するための細胞傷害性放射性医薬品を生成することもできる。本発明の抗体複合体は所与の生物学的応答を調節するために使用でき、薬剤成分は古典的化学療法剤に限定されると解釈されるべきではない。例えば、薬剤成分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。そのようなタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素もしくはジフテリア毒素などの酵素的に活性な毒素もしくはその活性フラグメント;腫瘍壊死因子もしくはインターフェロンγなどのタンパク質;または、例えばリンホカイン、インターロイキン1(「IL−1」)、インターロイキン2(「IL−2」)、インターロイキン6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)もしくは他の増殖因子などの生物学的応答調節剤が含まれ得る。
そのような治療成分を抗体に結合するための技術は周知であり、例えば、Arnon et al.,"Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy",in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstrom et al.,"Antibodies For Drug Delivery",in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623−53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,"Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review",in Monoclonal Antibodies '84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475−506(1985);"Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy",in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),pp.303−16(Academic Press 1985)、およびThorpe et al.,"The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates",Immunol.Rev.,62:119−58(1982)参照。
さらなる実施形態では、本発明による抗体を、抗体を放射性同位体に結合することを可能にする、リンカーキレート化剤、例えばチウキセタンに結合する。
III.医薬組成物
別の態様では、本発明は、本発明の抗体の1つまたは抗体の組合せを含有する組成物、例えば医薬組成物を提供する。医薬組成物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995に開示されているような従来技術に従って医薬的に許容される担体または希釈剤ならびに任意の他の公知のアジュバントおよび賦形剤と共に製剤し得る。1つの実施形態では、組成物は、異なる機構によって作用する本発明の複数の(例えば2またはそれ以上の)単離された抗体の組合せ、例えば、主としてCDCを誘導することによって作用する1つの抗体と主としてアポトーシスを誘導することによって作用する別の抗体の組合せを包含する。
本発明の医薬組成物はまた、併用療法において、すなわち他の作用物質と組み合わせて投与することもできる。例えば、併用療法は、少なくとも1つの抗炎症薬または少なくとも1つの免疫抑制剤と本発明の組成物を含み得る。1つの実施形態では、そのような治療薬は、ステロイド系薬剤またはNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)などの1またはそれ以上の抗炎症薬を含む。好ましい薬剤には、例えば、アスピリンおよび他のサリチル酸塩、Cox−2阻害剤、例えばロフェコキシブ(Vioxx)およびセレコキシブ(Celebrex)、NSAID、例えばイブプロフェン(Motrin、Advil)、フェノプロフェン(Nalfon)、ナプロキセン(Naprosyn)、スリンダク(Clinoril)、ジクロフェナク(Voltaren)、ピロキシカム(Feldene)、ケトプロフェン(Orudis)、ジフルニサル(Dolobid)、ナブメトン(Relafen)、エトドラク(Lodine)、オキサプロジン(Daypro)およびインドメタシン(Indocin)が含まれる。
別の実施形態では、そのような治療薬には、低用量シクロホスファミド、抗CTLA4抗体、抗IL2または抗IL2受容体抗体のような、調節性T細胞の枯渇または機能的不活性化を導く作用物質が含まれる。
さらに別の実施形態では、そのような治療薬には、1またはそれ以上の化学療法剤、例えばタキソール誘導体、タキソテール、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン(Adriamycin)、シスプラチン(Platinol)、シクロホスファミド(Cytoxan、Procytox、Neosar)が含まれる。別の実施形態では、本発明の抗体を、好ましくは癌、例えば本明細書で述べる癌型に罹患している患者において治療効果を示す化学療法剤と組み合わせて投与し得る。
さらに別の実施形態では、本発明の抗体を放射線治療および/または自己末梢幹細胞または骨髄移植と組み合わせて投与し得る。
本明細書で使用される、「医薬的に許容される担体」は、生理的に適合性であるあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を包含する。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば注射または注入による)に適する。投与経路に依存して、活性化合物、例えば抗体、二重特異性および多重特異性分子を、酸の作用および化合物を不活性化し得る他の自然条件の作用から化合物を保護するために物質内に被覆し得る。
「医薬的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、いかなる望ましくない毒性作用も及ぼさない塩を指す(例えばBerge,S.M.et al.(1977)J.Pharm.Sci.66:1−19参照)。
そのような塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、非毒性の無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等から誘導されるもの、ならびに非毒性の有機酸、例えば脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸等から誘導されるものが含まれる。塩基付加塩には、アルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等から誘導されるもの、ならびに非毒性の有機アミン、例えばN,N'−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等から誘導されるものが含まれる。
本発明の組成物は、当分野で公知の様々な方法によって投与することができる。当業者に認識されるように、投与の経路および/または方式は所望結果に依存して異なる。活性化合物は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤のような、迅速な放出に対して化合物を保護する担体と共に調製され得る。生分解性の生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などが使用できる。そのような製剤の調製のための方法は一般に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978参照。
特定の投与経路によって本発明の化合物を投与するために、化合物の不活性化を防ぐ物質で化合物を被覆するか、または前記物質と化合物を同時投与する必要があり得る。例えば、化合物は、適切な担体、例えばリポソーム、または希釈剤中で被験者に投与され得る。医薬的に許容される希釈剤には、生理食塩水および水性緩衝液が含まれる。リポソームは、水中油中水型CGFエマルションならびに従来のリポソームを包含する(Strejan et al.(1984)J.Neuroimmunol.7:27)。
医薬的に許容される担体は、滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末を包含する。医薬活性物質のためのそのような媒質および物質の使用は当分野において公知である。従来の媒質または物質が活性化合物と不適合性である場合を除き、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が企図される。補助的な活性化合物も組成物に組み込むことができる。
治療組成物は、典型的には製造および保存条件下で無菌および安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬剤濃度に適する他の秩序構造物として製剤することができる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、ならびにそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤の使用によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持できる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖類、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含めることにより、注射用組成物の長時間吸収をもたらすことができる。
滅菌注射用溶液は、上記に列挙した成分の1つまたは成分の組合せと共に適切な溶媒中に必要量の活性化合物を組み込み、その後必要に応じて滅菌精密ろ過することによって調製できる。
一般に、分散液は、基本分散媒および上記に列挙したものから必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の製造のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、あらかじめ滅菌ろ過したその溶液から有効成分プラス任意の付加的な所望成分の粉末を生成する真空乾燥および凍結乾燥(lyophilization)である。
投薬レジメンは、最適所望応答(例えば治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスを投与し得るか、数回の分割用量を経時的に投与してもよく、または治療状況の緊急性によって指示されるのに比例して用量を減少または増加してもよい。投与の容易さおよび投薬量の均一性のために非経口組成物を投与単位形態で製剤することは特に好都合である。本明細書で使用される投与単位形態は、単一投薬量として治療される被験者に適した物理的に個別の単位を指す;各々の単位は、必要とされる医薬担体と共に所望治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性化合物を含有する。
医薬的に許容される抗酸化剤の例には:(1)水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;(2)油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール等;および(3)金属キレート化剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等が含まれる。
治療組成物に関して、本発明の製剤は、経口、経鼻、局所(口腔および舌下を含む)、経直腸、経膣および/または非経口投与に適するものを包含する。製剤は、好都合には単位投与形態で提供され得、薬学の技術分野において公知の任意の方法によって調製され得る。単一投与形態を生産するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される被験者および特定の投与方式に応じて異なる。単一投与形態を生産するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に治療効果を生じさせる組成物の量である。
経膣投与に適する本発明の製剤には、適切であることが当分野で公知である担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡またはスプレー製剤も含まれる。本発明の組成物の局所または経皮投与用の剤形には、散剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤が含まれる。活性化合物を、無菌条件下で医薬的に許容される担体および必要とされ得る任意の防腐剤、緩衝剤または噴射剤と混合し得る。
本明細書で使用される「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、通常は注射による、経腸的投与および局所投与以外の投与方式を意味し、限定されることなく、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入を包含する。
本発明の医薬組成物において使用し得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えばレシチンなどの被覆材料の使用によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持できる。
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤を含有し得る。微生物の存在の防止は、滅菌手順、ならびに様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の含有の両方によって確保され得る。また、糖類、塩化ナトリウム等のような等張剤を組成物に含めることも望ましいと考えられる。加えて、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる物質を含めることによって注射用剤形の長時間吸収を生じさせ得る。
選択される投与経路に関わらず、適切な水和形態で使用され得る本発明の化合物および/または本発明の医薬組成物は、当業者に公知の従来の方法によって医薬的に許容される剤形に製剤される。
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の用量レベルは、患者への毒性を伴わずに、特定の患者、組成物および投与方式について所望治療応答を達成するために有効な有効成分の量が得られるように変化させ得る。選択される用量レベルは、様々な薬物動態因子、例えば使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与の時間、使用される特定の化合物の排泄速度、治療の期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的健康および過去の病歴、ならびに医学技術分野において周知の同様の因子に依存する。
当分野における通常技術を有する医師または獣医は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医は、医薬組成物中で使用される本発明の化合物の用量を、所望治療効果を達成するために必要とされるよりも低いレベルで開始し、所望効果が達成されるまで徐々に投与量を増加することができる。一般に、本発明の組成物の適切な1日用量は、治療効果を生じさせるために有効な最も低い用量である、化合物の量である。そのような有効用量は、一般に上述した因子に依存する。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下投与であることが好ましく、好ましくは標的部位の近位に投与される。所望する場合は、治療組成物の有効1日用量を、場合により単位投与形態で、1日を通して適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6またはそれ以上の分割用量として投与してもよい。本発明の化合物は単独で投与することが可能であるが、医薬製剤(組成物)として本発明の化合物を投与することが好ましい。
1つの実施形態では、本発明の抗体は、毒性副作用を低減するために、注入によって、好ましくは24時間以上のような長期間にわたる緩徐な持続注入によって投与し得る。投与はまた、2〜24時間、例えば2〜12時間にわたる持続注入によっても実施し得る。そのようなレジメンを、必要に応じて1回またはそれ以上、例えば6ヶ月後または12ヶ月後に反復し得る。投与量は、抗CLDN6抗体を標的とする抗イディオタイプ抗体を使用することにより、生物学的試料中の、投与後の循環モノクローナル抗CLDN6抗体の量を測定することによって決定または調整することができる。
さらに別の実施形態では、本発明の抗体は維持療法によって、例えば週に1回、6ヶ月またはそれ以上の期間にわたって投与される。
さらに別の実施形態では、本発明による抗体は、CLDN6に対する抗体の1回の注入、次いで放射性同位体に結合したCLDN6に対する抗体の注入を含むレジメンによって投与し得る。前記レジメンは、例えば7〜9日後に反復し得る。
本発明の1つの実施形態では、本発明の治療化合物はリポソーム中に製剤される。より好ましい実施形態では、リポソームは標的化成分を含む。最も好ましい実施形態では、リポソーム中の治療化合物は、所望領域に近位の部位、例えば腫瘍の部位にボーラス注射によって送達される。組成物は、容易に注射可能である程度に流動性でなければならない。組成物は、製造および保存条件下で安定でなければならず、また細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。
さらなる実施形態では、本発明の抗体は、胎盤を横切る輸送を防止するまたは低減するように製剤され得る。これは、当分野で公知の方法によって、例えば抗体のPEG化によってまたはF(ab')フラグメントの使用によって実施され得る。さらに、"Cunningham−Rundles C,Zhuo Z,Griffith B,Keenan J.(1992)Biological activities of polyethylene−glycol immunoglobulin conjugates.Resistance to enzymatic degradation.J.Immunol.Methods,152:177−190;および"Landor M.(1995)Maternal−fetal transfer of immunoglobulins,Ann.Allergy Asthma Immunol.74:279−283が参照できる。
腫瘍治療のための「治療有効用量」は、完全または部分的のいずれかであり得る客観的腫瘍応答によって測定することができる。完全な応答(CR)は、疾患の臨床的、放射線医学的または他の証拠がないことと定義される。部分的応答(PR)は、凝集体腫瘍径の50%以上の減少から生じる。進行までの平均時間は、客観的腫瘍応答の持続性を特徴づける評価基準である。
腫瘍治療のための「治療有効用量」はまた、疾患の進行を安定化するその能力によっても測定できる。癌を抑制する化合物の能力は、ヒト腫瘍における効果を予測する動物モデル系で評価することができる。あるいは、組成物のこの特性は、当業者に公知のインビトロアッセイにより、細胞増殖またはアポトーシスを阻害する化合物の能力を検討することによって評価できる。治療化合物の治療有効量は、被験者において腫瘍径を縮小するまたはさもなければ症状を改善することができる。当業者は、被験者の大きさ、被験者の症状の重症度、および選択される特定の組成物または投与経路などの因子に基づいてそのような量を決定することができる。
組成物は無菌でなければならず、また組成物が注射器によって送達可能である程度に流動性でなければならない。水に加えて、担体は、等張緩衝塩類溶液、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、ならびにそれらの適切な混合物であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤の使用によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖類、多価アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール、ならびに塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。注射用組成物の長時間吸収は、吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
上述したように、活性化合物が適切に保護されている場合、化合物は、例えば不活性希釈剤または同化性可食担体と共に、経口的に投与され得る。
IV.本発明の用途および方法
本発明の抗体(本明細書で述べる免疫複合体、二重特異性/多重特異性分子、組成物および他の誘導体を含む)は、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞が関与する疾患の治療を含む数多くの治療上の有用性を有する。例えば、抗体は、本明細書で述べるような様々な疾患を治療するまたは予防するために、例えばインビトロもしくはエクスビボで培養下の細胞に、または例えばインビボでヒト被験者に投与することができる。好ましい被験者には、疾患細胞、特に正常細胞と比較してCLDN6の変化した発現パターンおよび/またはその細胞表面とCLDN6の変化した結合パターンを特徴とする細胞を死滅させることによって矯正または改善できる疾患を有するヒト患者が含まれる。
例えば、1つの実施形態では、本発明の抗体は、腫瘍形成性疾患、例えば、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする腫瘍細胞の存在によって特徴づけられる疾患を有する被験者を治療するために使用できる。治療および/または予防できる腫瘍形成性疾患の例には、本明細書で述べるものを含む、CLDN6を発現するすべての癌および腫瘍実体が含まれる。
本発明に従って述べる医薬組成物および治療方法はまた、本明細書で述べる疾患を予防するための免疫またはワクチン接種にも使用し得る。
別の実施形態では、本発明の抗体は、CLDN6もしくは特定形態のCLDN6のレベル、またはその膜表面にCLDN6を含む細胞のレベルを検出するために使用でき、その後、それらのレベルを上述したような特定の疾患または疾患症状に結び付けることができる。あるいは、抗体は、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の機能を枯渇させるかまたは前記機能と相互作用させて、それによりこれらの細胞を疾患の重要なメディエータとして関係づけるために使用できる。これは、抗体とCLDN6との間で複合体の形成を可能にする条件下で試料および対照試料を抗CLDN6抗体と接触させることによって達成できる。抗体とCLDN6との間で形成される複合体を試料および対照試料、すなわち標準試料において検出し、比較する。
本発明の抗体は、最初に、インビトロでの治療または診断用途に関連するそれらの結合活性に関して試験することができる。例えば、本明細書で述べるフローサイトメトリアッセイを用いて抗体を試験することができる。
本発明の抗体は、インビボまたはインビトロで以下の生物学的活性の1またはそれ以上を誘発するために使用できる:CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の増殖および/もしくは分化を阻害すること;CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞を死滅させること;エフェクター細胞の存在下でCLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の食作用またはADCCを媒介すること;補体の存在下でCLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞のCDCを媒介すること;CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞のアポトーシスを媒介すること;同型接着を誘導すること;ならびに/またはCLDN6に結合したとき脂質ラフトへの移行を誘導すること。
特定の実施形態では、抗体は、様々なCLDN6関連疾患を治療する、予防するまたは診断するためにインビボまたはインビトロで使用される。CLDN6関連疾患の例には、中でも特に、本明細書で述べるような癌が含まれる。
上述したように、本発明の抗CLDN6抗体は、1またはそれ以上の他の治療薬、例えば細胞傷害性物質、放射性毒性物質、抗血管新生薬および/または本発明の抗体に対する免疫応答の誘導を低減させる免疫抑制剤と同時投与することができる。抗体は、治療薬に結合し得るか(免疫複合体として)または治療薬とは別途に投与できる。後者(別途投与)の場合、抗体は、治療薬の前、後もしくは治療薬と同時に投与できるか、または他の公知の治療、例えば抗癌治療、例えば放射線と同時投与できる。そのような治療薬には、中でも特に、上記で列挙したような抗腫瘍薬が含まれる。化学療法剤と本発明の抗CLDN6抗体の同時投与は、腫瘍細胞に細胞傷害作用を生じさせる異なる機構によって働く2つの抗癌剤を提供する。そのような同時投与は、薬剤に対する耐性の発現または腫瘍細胞を抗体と非反応性にする腫瘍細胞の抗原性の変化に起因する問題を解決することができる。
補体結合部位、例えば補体に結合するIgG1、IgG2もしくはIgG3またはIgMからの部分を有する本発明の組成物(例えば抗体、多重特異性および二重特異性分子ならびに免疫複合体)も、補体の存在下で使用することができる。1つの実施形態では、本発明の結合物質と適切なエフェクター細胞による、標的細胞を含む細胞の集団のエクスビボ治療は、補体または補体を含む血清の添加によって補足され得る。本発明の結合物質で被覆された標的細胞の食作用は、補体タンパク質の結合によって改善され得る。別の実施形態では、本発明の組成物で被覆された標的細胞はまた、補体によっても溶解され得る。さらに別の実施形態では、本発明の組成物は補体を活性化しない。
本発明の組成物はまた、補体と共に投与することもできる。したがって、抗体、多重特異性または二重特異性分子および血清または補体を含有する組成物は本発明の範囲内である。これらの組成物は、補体が抗体、多重特異性または二重特異性分子にごく近接して位置するという点で有利である。
あるいは、本発明の抗体、多重特異性または二重特異性分子と補体または血清を別々に投与することができる。標的細胞への本発明の組成物の結合は、細胞膜の脂質ラフトへのCLDN6抗原抗体複合体の移行を生じさせ得る。そのような移行は、CDCを効率的に活性化し得るおよび/または増強し得る高密度の抗原抗体複合体を生成する。
本発明の抗体組成物(例えば抗体および免疫複合体)および使用のための指示書を含むキットも本発明の範囲内である。キットは、免疫抑制試薬、細胞傷害性物質もしくは放射性毒性物質などの1もしくはそれ以上の付加的な試薬、または1もしくはそれ以上の付加的な本発明の抗体(例えば補完的活性を有する抗体)をさらに含み得る。
したがって、本発明の抗体組成物で治療される患者に、本発明の抗体の治療効果を増強するまたは増大させる、細胞傷害性物質または放射性毒性物質などの別の治療薬を付加的に投与し得る(本発明の抗体の投与前に、抗体の投与と同時にまたは抗体の投与後に)。
他の実施形態では、例えば被験者をサイトカインで治療することにより、FcγまたはFcα受容体の発現または活性を調節する、例えば増強するまたは阻害する物質で被験者を付加的に治療することができる。好ましいサイトカインには、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロンγ(IFN−γ)および腫瘍壊死因子(TNF)が含まれる。本明細書で述べる抗体および医薬組成物の治療効果を高めるための他の重要な物質は、分枝グルコース残基のホモ多糖であって、様々な植物および微生物、例えば細菌、藻類、真菌、酵母および穀物によって産生されるβ−グルカンである。生物によって産生されるβ−グルカンのフラグメントも使用し得る。好ましくは、β−グルカンは、骨格グルコース単位の少なくとも一部、例えば骨格グルコース単位の3〜6%がβ(1,6)分枝などの分枝を有する、β(1,3)グルコースのポリマーである。
特定の実施形態では、本発明は、試料中のCLDN6抗原の存在を検出するまたはCLDN6抗原の量を測定するための方法であって、試験試料と対照試料をCLDN6に特異的に結合する抗体と、抗体またはその部分とCLDN6との間で複合体の形成を可能にする条件下で接触させることを含む方法を提供する。その後、複合体の形成を検出し、対照試料と比較した試験試料との間での複合体形成の差が試験試料中のCLDN6抗原の存在を指示する。
さらに別の実施形態では、本発明は、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の存在をインビボまたはインビトロで検出するまたは前記細胞の量を測定するための方法を提供する。その方法は、(i)検出マーカーに結合した本発明の組成物を被験者に投与すること;および(ii)CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞を含む領域を同定するために、被験者を、前記検出マーカーを検出するための手段に暴露することを含む。
上述した方法は、特に、癌疾患などのCLDN6関連疾患を診断するためおよび/またはCLDN6関連疾患の局在化のために有用である。好ましくは、対照試料中のCLDN6の量を上回る試験試料中のCLDN6の量は、試験試料が由来する被験者、特にヒトにおけるCLDN6関連疾患の存在を示す。
上述した方法において使用される場合、本明細書で述べる抗体は、(i)検出可能なシグナルを提供する;(ii)第二標識と相互作用して、第一もしくは第二標識によって提供される検出可能なシグナルを変化させる、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移);(iii)電荷、疎水性、形状もしくは他の物理的パラメータによって移動度、例えば電気泳動移動度に影響を及ぼす;または(iv)捕捉部分、例えば親和性、抗体/抗原もしくはイオン錯体形成を提供するように機能する標識と共に提供され得る。標識として適切であるのは、蛍光標識、発光標識、発色団標識、放射性同位体標識、同位体標識、好ましくは安定な同位体標識、同重体標識、酵素標識、粒子標識、特に金属粒子標識、磁性粒子標識、ポリマー粒子標識、ビオチンなどの有機低分子、細胞接着タンパク質またはレクチンなどの受容体のリガンドまたは結合分子、結合物質の使用によって検出できる核酸および/またはアミノ酸残基を含む標識配列等のような構造体である。標識には、非限定的に、硫酸バリウム、イオセタム酸、イオパノ酸、イポダートカルシウム、ジアトリゾ酸ナトリウム、ジアトリゾ酸メグルミン、メトリザミド、チロパノ酸ナトリウム、ならびにフッ素18および炭素11などの陽電子放射体、ヨウ素123、テクネチウム99m、ヨウ素131およびインジウム111などのγ放射体、フッ素およびガドリニウムなどの核磁気共鳴のための核種を含む放射性診断物質が含まれる。
さらに別の実施形態では、本発明の免疫複合体は、化合物(例えば治療薬、標識、細胞毒、放射性毒素、免疫抑制剤等)を抗体に連結することにより、CLDN6がその表面と結合している細胞にそのような化合物を標的するために使用できる。したがって、本発明はまた、循環腫瘍細胞などの、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞をエクスビボまたはインビトロで局在化するための方法も提供する。
以下、実施形態の例を付記する。
1. (i)配列番号:34、36、38および40から選択される抗体重鎖配列またはその変異体、好ましくは配列番号:36の抗体重鎖配列またはその変異体を含む抗体重鎖、ならびに
(ii)配列番号:35、37、39、41、54および55から選択される抗体軽鎖配列またはその変異体、好ましくは配列番号:35の抗体軽鎖配列またはその変異体を含む抗体軽鎖
を含有する抗体。
2. (i)配列番号:36の抗体重鎖配列またはその変異体を含む抗体重鎖、ならびに
(ii)配列番号:35、54および55から選択される抗体軽鎖配列またはその変異体を含む抗体軽鎖
を含有する、1.に記載の抗体。
3. (i)配列番号:36の抗体重鎖配列またはその変異体を含む抗体重鎖、ならびに
(ii)配列番号:54および55から選択される抗体軽鎖配列またはその変異体を含む抗体軽鎖
を含有する、1.に記載の抗体。
4. (i)配列番号:36の抗体重鎖配列またはその変異体を含む抗体重鎖、ならびに
(ii)配列番号:35の抗体軽鎖配列またはその変異体を含む抗体軽鎖
を含有する、1.に記載の抗体。
5. CLDN6を発現する細胞の表面に結合したCLDN6に結合することができ、およびCLDN9を発現する細胞の表面に結合したCLDN9には実質的に結合することができない、1.から4.のいずれかに記載の抗体。
6. CLDN4を発現する細胞の表面に結合したCLDN4に実質的に結合することができないおよび/またはCLDN3を発現する細胞の表面に結合したCLDN3に実質的に結合することができない、1.から5.のいずれかに記載の抗体。
7. CLDN6に特異的である、1.から6.のいずれかに記載の抗体。
8. 前記細胞が無傷細胞、特に透過処理されていない細胞である、1.から7.のいずれかに記載の抗体。
9. CLDN6の細胞外部分内に位置するエピトープに結合することができる、1.から8.のいずれかに記載の抗体。
10. CLDN6が配列番号:2のアミノ酸配列または配列番号:8のアミノ酸配列を有する、1.から9.のいずれかに記載の抗体。
10. 以下の活性:
(i)CLDN6を発現する細胞の死滅化、
(ii)CLDN6を発現する細胞の増殖の阻害、
(iii)CLDN6を発現する細胞のコロニー形成の阻害、
(iv)確立された腫瘍の寛解を媒介すること、
(v)腫瘍の形成または再形成を防止すること、および
(vi)CLDN6を発現する細胞の転移の阻害
の1またはそれ以上を有する、1.から10.のいずれかに記載の抗体。
12. CLDN6をその天然立体配座で担持する細胞に対して1またはそれ以上の免疫エフェクター機能を示す、1.から11.のいずれかに記載の抗体。
13. 1またはそれ以上の免疫エフェクター機能が、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、アポトーシスの誘導および増殖の阻害から成る群より選択され、好ましくはエフェクター機能がADCCおよび/またはCDCである、12.に記載の抗体。
14. 前記1もしくはそれ以上の活性または1もしくはそれ以上の免疫エフェクター機能が、CLDN6の細胞外部分内に位置するエピトープへの前記抗体の結合によって誘導される、11.から13.のいずれかに記載の抗体。
15. CLDN6を発現する前記細胞またはCLDN6をその天然立体配座で担持する細胞が腫瘍細胞である、1.から14.のいずれかに記載の抗体。
16. CLDN6を発現する前記細胞またはCLDN6をその天然立体配座で担持する細胞が癌細胞である、1.から15.のいずれかに記載の抗体。
17. 前記癌細胞が、卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱の癌、特に移行上皮癌および乳頭癌、腎癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎芽性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および精巣胎児性癌、子宮癌、奇形癌または胎生期癌などの胚細胞腫瘍、特に精巣の胚細胞腫瘍、ならびにそれらの転移形態から成る群より選択される癌に由来する、16.に記載の抗体。
18. モノクローナル、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体、または抗体のフラグメントである、1.から17.のいずれかに記載の抗体。
19. 天然立体配座のCLDN6の1またはそれ以上のエピトープに結合することができる、1.から18.のいずれかに記載の抗体。
20. 治療薬に連結された1.から19.のいずれかに記載の抗体を含む複合体。
21. 前記治療薬が、毒素、放射性同位体、薬剤または細胞傷害性物質である、20.に記載の複合体。
22. 1.から19.のいずれかに記載の抗体および/または20.もしくは21.に記載の複合体、ならびに医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
23. CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の増殖を阻害する方法であって、細胞を1.から19.のいずれかに記載の抗体および/または20.もしくは21.に記載の複合体と接触させることを含む方法。
24. CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞を死滅させる方法であって、細胞を1.から19.のいずれかに記載の抗体および/または20.もしくは21.に記載の複合体と接触させることを含む方法。
25. 被験者において、CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞が関与する疾患または障害を治療するまたは予防する方法であって、1.から19.のいずれかに記載の抗体、20.もしくは21.に記載の複合体または22.に記載の医薬組成物を前記被験者に投与することを含む方法。
26. 前記疾患または障害が腫瘍関連疾患である、25.に記載の方法。
27. 前記腫瘍関連疾患が癌である、26.に記載の方法。
28. 前記癌が、卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱の癌、特に移行上皮癌および乳頭癌、腎癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎芽性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および精巣胎児性癌、子宮癌、奇形癌または胎生期癌などの胚細胞腫瘍、特に精巣の胚細胞腫瘍、ならびにそれらの転移形態から成る群より選択される、27.に記載の方法。
29 CLDN6を発現し、その細胞表面とCLDN6の結合を特徴とする細胞の転移拡大を阻害する方法であって、前記細胞を1.から19.のいずれかに記載の抗体および/または20.もしくは21.に記載の複合体と接触させることを含む方法。
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
[実施例]
本明細書で使用される技術および方法は、本明細書で説明されるかまたはそれ自体が公知の方法でおよび、例えばSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に記載されているように実施される。キットおよび試薬の使用を含むすべての方法は、特に指示されない限り製造者の情報に従って実施される。
[実施例1]
リアルタイムRT−PCRを用いた正常組織、癌組織および癌細胞株におけるCLDN6発現の定量化。
製造者の指示に従って、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用して凍結組織標本および癌細胞株から全細胞RNAを抽出し、dT18オリゴヌクレオチドでプライミングして、Superscript II(GIBCO/Lifetech)で逆転写した。得られたcDNAの完全性を30サイクルのPCRにおいてp53転写産物の増幅によって試験した。HPRTに基準化した後、ΔΔCT計算を用いてCLDN6の発現を定量化した。
3名の個人からの組織を各々の正常組織型に関して試験した。40サイクルのRT−PCR後、微量のCLDN6転写産物だけが正常組織で検出できた。発現カットオフ値をわずかに超える唯一の正常組織は胎盤であった。
正常組織と異なり、卵巣癌(腺癌)、肺癌(NSCLC、腺癌において最も高い頻度と発現レベル)、胃癌、乳癌、肝癌、膵癌、皮膚癌(基底細胞癌および扁平上皮癌)、悪性黒色腫、頭頸部癌(悪性多形腺腫)、肉腫(滑膜肉腫および癌肉腫)、胆管癌、腎細胞癌(明細胞癌および乳頭状癌)、子宮癌および癌細胞株A2780(卵巣癌)、NIH−OVCAR3(卵巣癌)、HCT−116(結腸癌)、EFO−27(卵巣癌)、CPC−N(SCLC)、NCI−H552(NSCLC)、SNU−1(胃癌)、KATOIII(胃癌)、YAPC(膵癌)、AGS(胃癌)、FU97(胃癌)、MKN7(胃癌)からの試料ではCLDN6の高発現を認めた。
[実施例2]
ウェスタンブロット分析を用いた正常組織、癌組織および癌細胞株におけるCLDN6発現の定量化
ウェスタンブロット分析のために、レムリ溶解緩衝液で溶解した細胞から抽出した全タンパク質20μgを使用した。抽出物を還元試料緩衝液(Roth)に希釈し、SDS−PAGEに供して、その後PVDF膜(Pall)に電気転写した。CLDN6(ARP)およびβ−アクチン(Abcam)に対して反応性のポリクローナル抗体を用いて免疫染色を実施し、次いでホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスおよびヤギ抗ウサギ二次抗体(Dako)を用いて一次抗体を検出した。
5名までの個人からの組織溶解物を各々の正常組織型に関して試験した。分析した正常組織のいずれにおいてもCLDN6タンパク質発現は検出されなかった。正常組織と異なり、卵巣癌および肺癌からの試料ではCLDN6タンパク質の高発現が検出された。CLDN6発現は、NIH−OVCAR3(卵巣癌)、MKN7(胃癌)、AGS(胃癌)、CPC−N(SCLC)、HCT−116(結腸癌)、FU97(胃癌)、NEC8(精巣胎生期癌)、JAR(胎盤絨毛癌)、JEG3(胎盤絨毛癌)、BEWO(胎盤絨毛癌)およびPA−1(卵巣奇形癌)において検出された。
[実施例3]
正常組織および癌組織におけるCLDN6発現の免疫組織化学(IHC)分析
パラフィン包埋した組織切片(4μm)を加熱プレート(HI 1220、Leica)上にて58℃で1時間インキュベートした。スライドガラスをRoticlear(Roth)において室温で2×10分間インキュベートすることによって切片からパラフィンを除去した。その後切片を段階的なアルコール(99%、2×96%、80%および70%、各々5分間)中で再水和した。スライドガラスを10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)+0.05%Tween−20中120℃(15psi)で15分間煮沸することにより、抗原賦活化を実施した。煮沸の直後にスライドガラスをPBS中で5分間インキュベートした。内因性ペルオキシダーゼ活性を室温で15分間、MeOH中の0.3%過酸化水素でブロックした。非特異的結合を避けるため、スライドガラスを室温で30分間、PBS中の10%ヤギ血清でブロックした。その後、スライドガラスをCLDN6特異的ポリクローナル抗体(1μg/ml)(ARP)と共に4℃で一晩インキュベートした。その翌日、スライドガラスを室温にてPBSで洗浄し(3×5分間)、二次抗体(PowerVision poly HRP−Anti−Rabbit IgG ready−to−use(ImmunoLogic))100μlと共に室温で1時間インキュベートした。その後、スライドガラスを室温にてPBSで洗浄した(3×5分間)。Vector Laboratories(Burlingame)からのVECTOR NovaRED Substrate Kit SK−4800を使用することにより最終染色を実施した。切片を室温で90秒間、ヘマトキシリンで対比染色した。段階的なアルコール(70%、80%、2×96%および99%、各々5分間)で脱水し、キシロール中で10分間インキュベートした後、スライドガラスにX−tra Kit(Medite Histotechnic)を取り付けた。
肺、卵巣、胃、結腸、膵臓、肝臓、十二指腸または腎臓からの正常組織では、CLDN6タンパク質発現は検出不能であった。正常組織と異なり、強いまたは少なくとも有意の染色が、卵巣癌、肺癌、皮膚癌、膵癌、胃癌、乳癌、膀胱癌(移行上皮癌)、子宮頸癌、精巣癌(セミノーマ)および子宮癌からの組織切片で認められた。染色は、悪性上皮細胞集団の形質膜において明らかに際立っており、一方隣接する間質細胞および非悪性上皮細胞は陰性であった。これらの結果は、CLDN6タンパク質が悪性細胞の形質膜に局在することを示す。
[実施例4]
CLDN6に対するマウス抗体の作製
a.完全長CLDN6およびCLDN6フラグメントをコードする発現ベクターの作製
完全長CLDN6(NCBIアクセッション番号NP_067018.2、配列番号:2)をコードする非天然のコドン最適化DNA配列(配列番号:3)を化学合成によって作製し(GENEART AG,Germany)、pcDNA3.1/myc−Hisベクター(Invitrogen,USA)にクローニングして、ベクターp3953を生成した。終結コドンの挿入により、ベクターがコードするmyc−Hisタグに融合せずにCLDN6タンパク質を発現することが可能であった。CLDN6の発現を、市販の抗CLDN6抗体(ARP、01−8865;R&D Systems、MAB3656)を使用してウェスタンブロット法、フローサイトメトリおよび免疫蛍光分析によって試験した。
加えて、CLDN6の推定上の細胞外ドメイン2(EC2)フラグメント(配列番号:6)をコードするコドン最適化DNA配列(配列番号:4)を、N末端Igκリーダー由来のシグナルペプチド、次いで正しいシグナルペプチダーゼ切断部位を確実にするための4個の付加的なアミノ酸との融合物(配列番号:5)として作製し、pcDNA3.1/myc−Hisベクターにクローニングして、ベクターp3974を生成した。免疫化の前に、EC2フラグメントの発現を、市販の抗myc抗体(Cell Signaling、MAB 2276)を使用して一過性にトランスフェクトし、パラホルムアルデヒド(PFA)固定したCHO−K1細胞に関する免疫蛍光顕微鏡検査によって確認した。
b.CLDN6を安定に発現する細胞株の作製
CLDN6を安定に発現するHEK293およびP3X63Ag8U.1細胞株を、ベクターp3953を使用して標準的な技術によって生成した。
c.免疫化
Balb/cマウスを、0、16および36日目に腹腔内注射によってp3974プラスミドDNA 25μgとPEI−マンノース(PEI−Man;PolyPlus Transfectionからのインビボ−jetPEI(商標)−Man)4μl(5%グルコースを含むHO中150mM PEI−Man)で免疫化した。48および62日目に、CLDN6を安定に発現するためにp3953ベクターをトランスフェクトしたP3X63Ag8U.1骨髄腫細胞を用いて腹腔内注射によってマウスを免疫化した。62日目に投与した細胞は、注射の前に3000radで照射しておいた。マウスの血清中のCLDN6に対する抗体の存在を、CLDN6およびGFPをコードする核酸を同時トランスフェクトしたCHO−K1細胞を使用して20日目から70日目まで免疫蛍光顕微鏡検査によって観測した。このために、トランスフェクションの24時間後、PFA固定したまたは固定していない細胞を室温(RT)で45分間、免疫化マウスからの1:100希釈の血清と共にインキュベートした。細胞を洗浄し、Alexa555標識抗マウスIg抗体(Molecular Probes)と共にインキュベートして、蛍光顕微鏡検査に供した。
抗CLDN6特異的抗体を、ハイブリドーマF3−6C3−H8が産生されることに基づき、マウスから得た血清試料中で検出した;図2参照。
モノクローナル抗体の作製のため、検出可能な抗CLDN6免疫応答を有するマウスを、p3953ベクターを安定にトランスフェクトした2×10HEK293細胞の腹腔内注射によって脾摘出の4日前に追加免疫した。
d.CLDN6に対するマウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製
免疫化マウスから単離した6×10脾細胞を、PEG 1500(Roche,CRL 10783641001)を使用してマウス骨髄腫細胞株P3X63Ag8.653(ATCC,CRL 1580)の3×10細胞と融合した。細胞を平底マイクロタイタープレートに約5×10細胞/ウェルで接種し、10%熱不活性化ウシ胎仔血清、1%ハイブリドーマ融合およびクローニング添加物(HFCS,Roche,CRL 11363735)、10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、4.5%グルコース、0.1mM 2−メルカプトエタノール、1×ペニシリン/ストレプトマイシンならびに1×HAT添加物(Invitrogen,CRL 21060)を含むRPMI選択培地で約2週間培養した。10〜14日後、個々のウェルをフローサイトメトリによって抗CLDN6モノクローナル抗体に関してスクリーニングした。抗体を分泌するハイブリドーマを限界希釈によってサブクローニングし、再び抗CLDN6モノクローナル抗体に関して試験した。安定なサブクローンを培養し、特徴づけのために組織培養培地中で少量の抗体を生成した。親細胞の反応性を保持する(フローサイトメトリによって試験した)各々のハイブリドーマから少なくとも1つのクローンを選択した。9バイアルの細胞バンクを各クローンについて作製し、液体窒素中で保存した。
[実施例5]
ハイブリドーマ上清およびモノクローナル抗体の結合特徴
a.(i)ウェスタンブロット分析および(ii)フローサイトメトリ分析による、一過性にトランスフェクトしたHEK293T細胞の品質管理
(i)HEK293T細胞に、CLDN3、CLDN4、CLDN6およびCLDN9をコードする核酸をそれぞれトランスフェクトするか、または擬似トランスフェクトした。HEK293T細胞におけるCLDN3、CLDN4、CLDN6またはCLDN9の発現をウェスタンブロット法によって測定した。このために、トランスフェクションの24時間後に細胞を採取し、溶解に供した。溶解物をSDS−PAGEに供し、ニトロセルロース膜に転写して、変性条件下で対応するクローディンのC末端に特異的に結合する抗CLDN3(A)(Invitrogen、34−1700)、抗CLDN4(A)(Zymed、32−9400)、抗CLDN6(A)(ARP、01−8865)または抗CLDN9(A)(Santa Cruz、sc−17672)抗体で染色した。ペルオキシダーゼ標識二次抗体と共にインキュベートし、ECL試薬で展開した後、LAS−3000撮像装置(Fuji)を視覚化のために使用した。それぞれCLDN3、CLDN4、CLDN6およびCLDN9の予想分子量のバンドがトランスフェクトした細胞においてのみ認められ、対照細胞では認められず(図3)、HEK293T細胞は検討したクローディンのいずれも内因性に発現せず、したがってCLDN6抗体の交差反応性を測定するための適切なツールであることを明らかにした。
(ii)(i)のHEK293T細胞を、天然エピトープを認識する抗CLDN抗体(マウス抗CLDN3 IgG2a(R&D、MAB4620)、マウス抗CLDN4 IgG2a(R&D、MAB4219)、マウス抗CLDN6 IgG2b(R&D、MAB3656))を使用したフローサイトメトリによってさらに分析した。製品番号M9144およびM8894の下でSigmaから入手できる抗体をアイソタイプ対照として使用した。これらの抗CLDN抗体の特異性を、CLDN3、CLDN4、CLDN6およびCLDN9をコードする核酸をそれぞれ一過性にトランスフェクトしたHEK293T細胞を使用して分析した。抗CLDN6抗体はCLDN3、CLDN4およびCLDN9と交差反応性を示す。抗CLDN4抗体はCLDN3、CLDN6およびCLDN9と交差反応性を示す。抗CLDN3抗体はCLDN3に特異的に結合する(図4)。
b.フローサイトメトリを使用した、本発明に従って生成されるモノクローナル抗体の特異性の測定
HEK293T細胞に、種々のCLDNタンパク質をコードするベクターおよび蛍光マーカーをコードするベクターを同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に0.05%トリプシン/EDTA溶液を用いて細胞を採取し、FACS緩衝液(2%FCSおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS)で洗浄した。細胞を2×10細胞/ウェルでU底マイクロタイタープレートに移し、ハイブリドーマ上清と共に4℃で60分間インキュベートした。FACS緩衝液で3回洗浄した後、細胞をアロフィコシアニン(APC)結合抗マウスIgG 1+2a+2b+3特異的二次抗体(Dianova、115−135−164)と共にインキュベートした。その後、細胞を2回洗浄し、BD FACSArrayを使用したフローサイトメトリによって結合を評価した(図5)。蛍光マーカーの発現を横軸に、抗体結合を縦軸にプロットしている。市販のマウス抗CLDN6 IgG2b抗体(R&D、MAB3656)を陽性対照とし、製品番号M8894の下でSigmaから入手できる抗体をアイソタイプ対照として使用した。
すべてがハイブリドーマF3−6C3に由来する、モノクローナルハイブリドーマサブクローンF3−6C3−H2、F3−6C3−H8、F3−6C3−H9、F3−6C3−D8およびF3−6C3−G4からの上清中の抗体はCLDN6に特異的であり、CLDN9、CLDN3およびCLDN4には結合しなかった。図5Aは、モノクローナルハイブリドーマサブクローンF3−6C3−H8についての結果を例示的に示す。モノクローナルハイブリドーマサブクローンF3−6C3−H8からの上清中の抗体は、CLDN6の(I143V)−SNP変異体をトランスフェクトした細胞にも結合する。モノクローナルハイブリドーマサブクローンF4−4F7−F2からの上清中の抗体は、CLDN6およびCLDN9の両方に結合する(図5A)。モノクローナルハイブリドーマサブクローンF3−7B3−B4からの上清中の抗体は、CLDN6、CLDN3およびCLDN9に結合する(図5B)。モノクローナルハイブリドーマサブクローンF3−3F7−A5からの上清中の抗体は、CLDN6、CLDN4およびCLDN9に結合する(図5B)。
[実施例6]
CLDN6に対するモノクローナル抗体の作製および試験
a.CLDN6の細胞外ドメイン1をコードする発現ベクターの作製
CLDN6の推定上の細胞外ドメイン1(EC1)フラグメント(配列番号:7)をコードするコドン最適化DNA配列(配列番号:12)を、N末端Igκリーダー由来のシグナルペプチド、次いで正しいシグナルペプチダーゼ切断部位を確実にするための4個の付加的なアミノ酸との融合物(配列番号:13)として作製し、pcDNA3.1/myc−Hisベクターにクローニングして、ベクターp3973を生成した。免疫化の前に、EC1フラグメントの発現を、市販の抗myc抗体(Cell Signaling、MAB 2276)を使用して一過性にトランスフェクトし、パラホルムアルデヒド(PFA)固定したCHO−K1細胞に関する免疫蛍光顕微鏡検査によって確認した。
b.免疫
Balb/cマウスを、0および14日目に腹腔内注射によってp3973プラスミドDNA 25μgとPEI−マンノース(PEI−Man;PolyPlus Transfectionからのインビボ−jetPEI(商標)−Man)4μl(HO中150mM PEI−Manと5%グルコース)で免疫化した。28および44日目に、KLH結合ペプチド、配列番号:14および配列番号:15(PBS中各々100μg、JPT Peptide Technologies GmbH,Germany)とHPLC精製したPTO−CpG−ODN(PBS中25μg;5'−TCCATGACGTTCCTGACGTT;Eurofins MWG Operon,Germany)でマウスを皮下的に免疫化した。64、77および97日目に、CLDN6を安定に発現するためにp3953ベクターをトランスフェクトした2×10 P3X63Ag8U.1骨髄腫細胞で腹腔内注射によってマウスを免疫化した。投与の前に、細胞をマイトマイシンC(2.5μg/ml、Sigma−Aldrich、M4287)で処理した。64および97日目に細胞をHPLC精製したPTO−CpG−ODN(PBS中50μg)と共に投与し、77日目には不完全フロイントアジュバントと共に投与した。
モノクローナル抗体の作製のために、検出可能な抗CLDN6免疫応答を有するマウスを、p3953ベクターを安定にトランスフェクトした2×10HEK293細胞の腹腔内注射によって脾摘出の4日前に追加免疫した。
c.CLDN6に対するモノクローナル抗体の試験
フローサイトメトリ
CLDN6およびそのホモログへのモノクローナル抗体の結合を試験するため、HEK293T細胞に、対応するクローディンをコードするプラスミドを一過性にトランスフェクトし、フローサイトメトリによって発現を分析した。トランスフェクトした細胞とトランスフェクトしていない細胞を区別するため、HEK293T細胞にレポーターとして蛍光マーカーを同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を0.05%トリプシン/EDTAで採取し、FACS緩衝液(2%FCSおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS)で洗浄して、2×10細胞/mlの濃度でFACS緩衝液に再懸濁した。細胞懸濁液100μlを指示濃度の適切な抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。交差反応性抗体を使用してCLDN6およびCLDN9発現を検出した。市販のマウス抗クローディン抗体、抗CLDN3(R&D、MAB4620)および抗CLDN4(R&D、MAB4219)を陽性対照として使用し、マウスIgG2a(Sigma、M9144)およびIgG2b(Sigma、M8894)をそれぞれアイソタイプ対照として使用した。細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、APC結合抗マウスIgG 1+2a+2b+3a特異的二次抗体(Dianova、115−135−164)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。BD FACSArrayを用いたフローサイトメトリによって結合を分析した。蛍光マーカーの発現を横軸に、抗体結合を縦軸にプロットした。
CDC
補体依存性細胞傷害(CDC)を、抗CLDN6抗体と共にインキュベートした標的細胞にヒト補体を添加した後、非溶解細胞中の細胞内ATPの含量を測定することによって判定した。ATPを測定するため、非常に感度の高い分析方法としてルシフェラーゼの発光反応を使用した。
CLDN6を安定にトランスフェクトしたCHO−K1細胞(CHO−K1−CLDN6)を0.05%トリプシン/EDTAで採取し、X−Vivo 15培地(Lonza、BE04−418Q)で2回洗浄して、1×10細胞/mlの濃度でX−Vivo 15培地に懸濁した。細胞懸濁液250μlを0.4cm電気穿孔キュベットに移し、ルシフェラーゼをコードするインビトロ転写したRNA(ルシフェラーゼIVT RNA)7μgと混合した。Gene Pulser Xcell(Bio Rad)を用いて200Vおよび300μFで細胞を電気穿孔した。電気穿孔後、あらかじめ温めておいたD−MEM/F12(1:1)2.4mlならびに10%(v/v)FCS、1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシンおよび1.5mg/ml G418を含むGlutaMax−I培地(Invitrogen、31331−093)中に細胞を懸濁した。細胞懸濁液50μl/ウェルを白色96穴PPプレートに接種し、37℃および7.5%COでインキュベートした。電気穿孔の24時間後、60%RPMI(20mM HEPESを含む)および40%ヒト血清(6名の健常ドナーから得た血清プール)中のモノクローナルマウス抗CLDN6抗体50μlを指示濃度で細胞に添加した。PBS中8%(v/v)Triton X−100 10μl/ウェルを「全溶解物」対照に添加し、PBS 10μl/ウェルを「最大生細胞」対照および実際の試料に添加した。37℃および7.5%COで80分間インキュベートした後、各ウェルにつきルシフェリン混合物(ddHO中3.84mg/ml D−ルシフェリン、0.64U/ml ATPアーゼおよび160mM HEPES)50μlを添加した。プレートを暗所にて室温で45分間インキュベートした。ルミノメータ(Infinite M200、TECAN)を使用して発光を測定した。結果を集積デジタル相対発光量(RLU)として示す。
NEC8細胞を200Vおよび400μFで電気穿孔し、RPMI 1640および10%(v/v)FCSを含むGlutaMAX−I培地(Invitrogen、61870)中で培養した。
特異的溶解を以下のように算定する:
早期治療
早期抗体治療のためにPBS 200μl中の2×10NEC8細胞を無胸腺Nude−Foxn1nuマウスの側腹部に皮下的に接種した。各々の実験群は10匹の6〜8週齢の雌性マウスから成った。接種の3日後、精製マウスモノクローナル抗体muMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67A 200μgを週に2回、静脈内注射と腹腔内注射を交互に実施することによって46日間適用した。PBSで処置した実験群を陰性対照として使用した。腫瘍体積(TV=(長さ×幅)/2)を週に2回観測した。TVをmmで表して、経時的な腫瘍増殖曲線を作成する。腫瘍が1500mm以上の体積に達したとき、マウスを犠死させた。
d.結果
マウスモノクローナル抗体muMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67Aは、ヒトCLDN6およびCLDN6 SNP(一塩基多型)変異体I143Vへの強力な結合を示し、一方CLDN3、4および9への結合は認められなかった(図6)。
muMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67Aは非常に低いEC50値(EC50 200〜500ng/ml)を示し、低濃度で結合の飽和が達成された(図7)。
muMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67Aは用量依存的なCDC活性を示し、低濃度でCDCを誘導した(図8)。抗CLDN6抗体muMAB 65Aおよび66Bは用量依存的にNEC8細胞に対するCDCを誘導した(図9)。muMAB 65Aおよび66Bの標的特異性は、NEC8 LVTS2 54細胞(CLDN6ノックダウン)を使用することによって証明された。
さらに、muMAB 59A、60A、61D、64A、65A、66Bおよび67Aは、NEC8細胞を移植したマウスにおいて腫瘍増殖の阻害を示した(図10)。
[実施例7]
CLDN6に対するキメラモノクローナル抗体の作製および試験
a.マウス/ヒトキメラモノクローナル抗体の作製
キメラ化のために、リーダー配列を含むマウス重鎖および軽鎖可変領域を、以下の表に列挙するプライマーを使用してPCRによって増幅した。マウス重鎖を、ApaI制限部位(5'−GGGCCC−3')により、発現ベクターによってコードされるヒトFcγ1鎖のN末端部分に融合した。リーダー配列を含むマウスκ鎖の可変ドメインを、BsiWI制限部位を使用して定常領域の前にクローニングした。ベクター内の定常領域の正しい方向、すなわちベクターの先行するプロモーターに適した方向を配列決定によって確認した。ApaI制限部位の位置のゆえに、このためのリーダー配列を含む可変領域の増幅は、ApaI部位の配列に加えてヒトγ1定常領域の配列の最初の11ヌクレオチドを含まねばならない。ヒトγ1重鎖定常領域のヌクレオチド配列を配列番号:24として列挙し、このようにして発現されたヒトγ1定常領域のアミノ酸配列を配列番号:25として列挙する。κ軽鎖の定常部分をコードするヌクレオチド配列を配列番号:26として列挙し、それぞれのアミノ酸配列を配列番号:27として列挙する。
マウス対応物に合わせて、キメラモノクローナル抗体は「chim」の接頭辞を付して、例えばchimAB 64Aと命名した。
リーダー配列を含む軽鎖および重鎖のマウス可変領域の増幅を、Matz et al.(Nucleic Acids Research,1999,Vol.27,No.6)に記載されている「ステップアウトPCR」に従って実施した。このために、当業者に公知の標準的な方法によって、例えばRNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用して、モノクローナルハイブリドーマ細胞株(表1参照)から全RNAを調製した。一本鎖cDNAを、同じくMatz et al.(Nucleic Acids Research,1999,Vol.27,No.6,1558)に記載されている「鋳型切り替え」法に従って調製した。(dT)30オリゴマー(配列番号:28)に加えて、一本鎖cDNAは、cDNA鎖の重合の間の鋳型切り替えのための5'アダプターとして働くDNA/RNAハイブリッドオリゴマー(配列番号:29)を含んだ。このアダプターオリゴマーでは、最後の3個のヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドではなくリボヌクレオチドであった。その後の「ステップアウトPCR」は、マウスκ鎖の定常領域またはγ鎖の2aサブクラスの定常領域(それぞれ配列番号:30および31)を標的とするアンチセンスオリゴマーを使用した。ハイブリドーマ細胞株によって産生されるマウスモノクローナル抗体のIgGサブクラスを事前にIsoStrip(Roche)で免疫学的に分析し、それに従って適切なアンチセンスオリゴマーを選択した(表1参照)。配列番号:32および33に列挙する2つのオリゴマーを含む、プライマー混合物を「ステップアウトPCR」におけるセンスオリゴマーとして使用した。
リーダー配列を含む同定されたマウス可変領域を、次に、5'UTRおよび3'マウス定常領域を除くPCRによって増幅し、ヒト定常領域を担持する作製された発現ベクターへのサブクローニングを可能にする制限部位を末端に付加した。加えて、センスオリゴマーはコンセンサスコザック配列(5'−GCCGCCACC−3')を提供し、重鎖可変領域のためのアンチセンスオリゴマーは、ApaI制限部位に加えてヒトγ1定常領域の最初の11ヌクレオチドを含んだ(表1参照、配列番号:17〜23)。リーダー配列を含むκ軽鎖可変領域を、HindIIIおよびBsiWI制限酵素を使用してクローニングし、γ重鎖可変領域はHindIIIおよびApaI制限酵素を必要とした。
リーダー配列を含む軽鎖および重鎖のさらなるマウス可変領域を増幅し、CLDN6に対するさらなるキメラモノクローナル抗体を上記で開示したプロトコールに従って作製した。
b.キメラモノクローナル抗CLDN6抗体の作製
キメラモノクローナル抗体を、対応する抗体の軽鎖および重鎖をコードするプラスミドDNAをトランスフェクトしたHEK293T細胞(ATCC CRL−11268)において一過性に発現させた。トランスフェクションの24時間前に、8×10細胞を145mm細胞培養プレートに接種し、HEK293T培地(DMEM/F12+GlutaMAX−I、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)25ml中で培養した。プラスミドDNA20μgを細胞培養プレートにつき5mlの、添加物を含まないHEK293T培地に溶解した。直鎖状ポリエチレンイミン(PEI)75μl(1mg/ml)(Polyscience、23966)を添加した後、(DNA:PEI)混合物を室温で15分間インキュベートした。その後、トランスフェクション混合物を細胞に滴下した。トランスフェクションの24時間後、HEK293T培地を、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むPro293a培地(Lonza、BE12−764Q)と交換した。最適発現のために、トランスフェクトした細胞を37℃、7.5%COでさらに96〜120時間培養した。上清を採取し、プロテインAカラムを使用したFPLCによってキメラ抗体を精製した。抗体の濃度を測定し、SDS−PAGEによって品質を検査した。
c.CLDN6に対するキメラモノクローナル抗体の試験
フローサイトメトリ
CLDN6特異的キメラモノクローナル抗体の特異性と親和性を試験するため、CLDN3、4、6または9をそれぞれ安定にトランスフェクトしたHEK293細胞およびCLDN6を内因性に発現する腫瘍細胞株への結合をフローサイトメトリによって分析した。そのため、細胞を0.05%トリプシン/EDTAで採取し、FACS緩衝液(2%FCSおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS)で洗浄して、2×10細胞/mlの濃度でFACS緩衝液に再懸濁した。細胞懸濁液100μlを指示濃度の適切な抗体と共に4℃で60分間インキュベートした。キメラ交差反応性抗体(chimAB 5F2D2)を使用してCLDN6およびCLDN9発現を検出した。市販のマウス抗クローディン抗体、抗CLDN3(R&D、MAB4620)および抗CLDN4(R&D、MAB4219)を陽性対照として使用し、ヒトIgG1κ(Sigma、I5154)を陰性対照として使用した。細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、APC結合ヤギ抗ヒトIgG Fcγ(Dianova、109−136−170)またはAPC結合抗マウスIgG 1+2a+2b+3a(Dianova、115−135−164)特異的二次抗体と共にそれぞれ4℃で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。BD FACSArrayを用いたフローサイトメトリによって結合を分析した。
CDC
補体依存性細胞傷害(CDC)を、抗CLDN6抗体と共にインキュベートした標的細胞にヒト補体を添加した後、非溶解細胞中の細胞内ATPの含量を測定することによって判定した。ATPを測定するため、非常に感度の高い分析方法としてルシフェラーゼの生物発光反応を使用する。
このアッセイでは、どちらもルシフェラーゼ発現構築物で安定に形質導入した、NEC8野生型細胞(CLDN6陽性)およびNEC8 CLDN6ノックダウン細胞(CLDN6陰性)を使用した。細胞を0.05%トリプシン/EDTAで採取し、RPMIおよび10%(v/v)FCSを含むGlutaMax−I培地(Invitrogen、61870−010)中で2×10細胞/mlの濃度に調整した。1×10細胞を白色96穴PPプレートに接種し、37℃および5%COで24時間インキュベートした。インキュベーション後、60%RPMI(20mM HEPESを含む)および40%ヒト血清(6名の健常ドナーから得た血清プール)中のモノクローナルキメラ抗CLDN6抗体50μlを指示濃度で細胞に添加した。PBS中8%(v/v)Triton X−100 10μl/ウェルを「全溶解物」対照に添加し、PBS 10μl/ウェルを「最大生細胞」対照および実際の試料に添加した。37℃および5%COで80分間さらにインキュベートした後、各ウェルにつきルシフェリン混合物(ddHO中3.84mg/ml D−ルシフェリン、0.64U/ml ATPアーゼおよび160mM HEPES)50μlを添加した。プレートを暗所にて室温で45分間インキュベートした。ルミノメータ(Infinite M200、TECAN)を使用して生物発光を測定した。結果を集積デジタル相対発光量(RLU)として示す。
特異的溶解を以下のように算定する:
ADCC
抗体依存性細胞傷害(ADCC)を、抗CLDN6抗体と共にインキュベートした標的細胞にヒトPBMCを添加した後、非溶解細胞中の細胞内ATPの含量を測定することによって判定した。ATPを測定するため、非常に感度の高い分析方法としてルシフェラーゼの生物発光反応を使用する。
このアッセイでは、どちらもルシフェラーゼ発現構築物で安定に形質導入した、NEC8野生型細胞(CLDN6陽性)およびNEC8 CLDN6ノックダウン細胞(CLDN6陰性)を使用した。細胞を0.05%トリプシン/EDTAで採取し、RPMIならびに10%(v/v)FCSおよび20mM Hepesを含むGlutaMax−I培地(Invitrogen、61870−010)中で2×10細胞/mlの濃度に調整した。1×10細胞を白色96穴PPプレートに接種し、37℃および5%COで4時間インキュベートした。
PBMCを、Ficoll Hypaque(GE Healthcare、17144003)を使用して密度勾配遠心分離によってヒトドナー血液試料から単離した。間期を含むPMBCを単離し、細胞をPBS/EDTA(2mM)で2回洗浄した。1×10PBMCを、5%熱不活性化ヒト血清(Lonza、US14−402E)を含むX−Vivo 15培地(Lonza、BE04−418Q)50mlに接種し、37℃および5%COで2時間インキュベートした。
標的細胞(NEC8)の接種の4時間後に、PBS中のモノクローナルキメラ抗CLDN6抗体25μlを指示濃度で細胞に添加した。2時間のインキュベーションのうちに接着単球から分離した非接着PBMCを採取し、X−Vivo 15培地中で8×10細胞/mlに調整した。この細胞懸濁液25μlを標的細胞およびモノクローナルキメラ抗CLDN6抗体に添加した。プレートを37℃および5%COで24時間インキュベートした。
24時間のインキュベーション後、PBS中8%(v/v)Triton X−100 10μl/ウェルを「全溶解物」対照に添加し、PBS 10μl/ウェルを「最大生細胞」対照および実際の試料に添加した。各ウェルにつきルシフェリン混合物(ddHO中3.84mg/ml D−ルシフェリン、0.64U/ml ATPアーゼおよび160mM HEPES)50μlを添加した。プレートを暗所にて室温で30分間インキュベートした。ルミノメータ(Infinite M200、TECAN)を使用して生物発光を測定した。結果を集積デジタル相対発光量(RLU)として示す。
特異的溶解を以下のように算定する:
d.結果
抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 61D、64A、67Aおよび89AはヒトCLDN6への強力な結合を示し、一方CLDN3、4および9への結合は認めなかった(図11)。
HEK293細胞の表面で安定に発現されるヒトCLDN6への結合に関して、抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64Aおよび89Aは非常に低いEC50値(EC50 450〜600ng/ml)を示し、低濃度で結合の飽和が達成された。chimAB 67Aおよび61Dは、それぞれ低い(EC50 1000ng/ml)および中間的な(EC50 2300ng/ml)EC50値を示した(図12)。
NEC8細胞において内因性に発現されるCLDN6への結合に関して、抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64Aおよび89Aは非常に低いEC50値(EC50 600〜650ng/ml)を示し、低濃度で結合の飽和が達成され、一方chimAB 61Dおよび67Aは、それぞれ中間的(EC50 1700ng/ml)および高い(EC50 6100ng/ml)EC50値を示した。(図13)。
OV90細胞において内因性に発現されるCLDN6への結合に関して、抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64Aおよび89Aは非常に低いEC50値(EC50 550〜600ng/ml)を示し、低濃度で結合の飽和が達成された。chimAB 61Dおよび67Aは中間的なEC50値(それぞれEC50 1500ng/mlおよびEC50 2300ng/ml)を示した(図14)。
抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aは、NEC8細胞に対して用量依存的にCDC活性を示した(図15)。
抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aは、NEC8細胞に対して用量依存的なADCC活性を示し、低い抗体濃度でもADCCを誘導した(図16)。
これらの結果は、CLDN6に対するこれらのキメラモノクローナル抗体の特異性を示す。
[実施例8]
CLDN6に対するモノクローナル抗体を使用した治療
早期治療
早期抗体治療のために、RPMI培地(Gibco)200μl中の2×10NEC8細胞を無胸腺Nude−Foxn1nuマウスの側腹部に皮下的に接種した。各々の実験群は10匹の6〜8週齢雌性マウスから成った。腫瘍細胞の接種の3日後、精製マウスモノクローナル抗体muMAB 89A 200μgを、週に2回静脈内注射と腹腔内注射を交互に実施することによって7週間適用した。PBSで処置した実験群を陰性対照として使用した。腫瘍体積(TV=(長さ×幅)/2)を週に2回観測した。TVをmmで表して、経時的な腫瘍増殖曲線を作成する。腫瘍が1500mm以上の体積に達したとき、マウスを犠死させた。
進行後の治療
進行した異種移植腫瘍の抗体治療のために、RPMI培地(Gibco)200μl中の2×10NEC8細胞を6〜8週齢の雌性無胸腺Nude−Foxn1nuマウスの側腹部に皮下的に接種した。腫瘍体積(TV=(長さ×幅)/2)を週に2回観測した。TVをmmで表して、経時的な腫瘍増殖曲線を作成する。腫瘍細胞の接種の15〜17日後、マウスを80mm以上の均一な腫瘍サイズを有する、コホート当たり8匹の動物の処置群に分けた。精製マウスモノクローナル抗体muMAB 61D、64A、67Aおよび89A 200μgを、週に2回静脈内注射と腹腔内注射を交互に実施することによって5週間適用した。PBSおよび非特異的抗体で処置した実験群を陰性対照として使用した。腫瘍が1500mm以上の体積に達したとき、マウスを犠死させた。
腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した早期治療異種移植モデルにおいて、マウスモノクローナル抗体muMAB 61D、64Aおよび67Aで処置したマウスは、免疫療法を停止した後も腫瘍増殖を示さなかった(図17)。
腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した早期治療異種移植モデルにおいて、muMAB 89Aは腫瘍増殖の阻害を示し、muMAB 89Aで処置したマウスでは試験の終了時に腫瘍は検出できなかった(図18)。
腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルにおいて、muMAB 64Aは腫瘍増殖の阻害を示した(図19)。
腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルにおいて、muMAB 64Aで処置したマウスは生存期間の延長を示した(図20)。
腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルにおいて、マウスモノクローナル抗CLDN6抗体muMAB 61D、67Aおよび89Aにより、腫瘍増殖の阻害が達成された(図21)。
腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルにおいて、CLDN6特異的抗体muMAB 61Dまたは67Aで処置したマウスは生存期間の延長を示した(図22A、図22B)。
NEC8野生型細胞および安定なCLDN6ノックダウンを有するNEC8細胞を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルにおいて、muMAB 64Aおよび89Aは、NEC8野生型細胞を移植したマウスでのみ治療効果を示すが、NEC8 CLDN6ノックダウン細胞を移植したマウスでは治療効果を示さず、インビボでの抗体のCLDN6特異性を明らかにする(図23)。
[実施例9]
CLDN6に対するモノクローナル抗体の高解像度エピトープマッピング
CLDN6特異的モノクローナル抗体は、ELISAエピトープマッピング試験において線状ペプチドへの(あるとしても)非常に低い結合だけを示し、それらのエピトープが立体配座であることを示唆する。本明細書で述べる抗体と天然立体配座のCLDN6の間の相互作用を分析するため、哺乳動物細胞培養物における部位指定突然変異誘発をエピトープマッピング手法として使用した。それぞれ1番目および2番目の細胞外ドメイン内のアミノ酸27〜81および137〜161のアラニン走査突然変異誘発を実施した。HEK293T細胞における一過性発現後、CLDN6突然変異体を、特異的モノクローナル抗体によって結合されるそれらの能力に関して評価した。CLDN6突然変異体への特異的モノクローナル抗体の結合低下は、変異したアミノ酸が重要な接触および/または立体配座残基であることを示唆する。結合をフローサイトメトリによって分析した。トランスフェクトされた細胞集団とトランスフェクトされていない細胞集団を識別するため、細胞に蛍光マーカーを同時トランスフェクトした。
CLDN6特異的キメラ抗体との相互作用のために重要なCLDN6のアミノ酸残基をアラニン走査によって体系的に同定した。アラニンおよびグリシン突然変異を部位指定突然変異誘発(GENEART AG,Germany)によって生成した。野生型CLDN6およびその突然変異体へのモノクローナルキメラ抗体の結合を試験するため、HEK293T細胞に、対応するクローディンをコードするプラスミドを一過性にトランスフェクトし、フローサイトメトリによって発現を分析した。トランスフェクトされた細胞とトランスフェクトされていない細胞を識別するため、HEK293T細胞にレポーターとして蛍光マーカーを同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を0.05%トリプシン/EDTAで採取し、FACS緩衝液(2%FCSおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS)で洗浄して、2×10細胞/mlの濃度でFACS緩衝液に再懸濁した。細胞懸濁液100μlを10μg/mlの抗体と共に4℃で45分間インキュベートした。市販のマウス抗CLDN6(R&D、MAB3656)を、CLDN6突然変異体の細胞表面発現を検出するための対照として使用した。細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、APC結合ヤギ抗ヒトIgG Fcγ(Dianova、109−136−170)またはAPC結合抗マウスIgG 1+2a+2b+3a特異的二次抗体(Dianova、115−135−164)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。トランスフェクトされた細胞集団内の結合を、BD FACSArrayを用いたフローサイトメトリによって分析した。そこで、蛍光マーカーの発現を横軸に、抗体結合を縦軸にプロットした。突然変異型CLDN6に結合したモノクローナルキメラCLDN6特異的抗体の平均シグナル強度を野生型結合のパーセントとして表した。結合のために必須のアミノ酸は、突然変異した後結合を示さず、一方結合を支持するだけのアミノ酸は、野生型と比較して結合低下を示した。
高解像度エピトープマッピングは、CLDN6の1番目の細胞外ドメインのアミノ酸F35、G37、S39およびおそらくT33が、CLDN6特異的キメラ抗体chimAB 61D、64A、67Aおよび89Aとの相互作用のために重要であることを明らかにした。残基I40はchimAB 89Aの結合に必須であり、chimAB 61Dおよび67Aの結合に寄与する。加えて、CLDN6の2番目の細胞外ドメインのL151はchimAB 67Aとの相互作用のために重要である(図24)。
[実施例10]
CLDN6に対する改善されたモノクローナル抗体の作製および試験
抗体64Aは、CLDN6への結合に関するその特性および腫瘍治療に関する効果において卓越しているが、軽鎖の46位に遊離システイン残基を有することが判明し、この遊離システイン残基は溶解度、安定性および凝集体形成についてのその特性を潜在的に損なうことが認められた。そのような遊離システインはまた、規制上の規定などの他の理由からも望ましくないと考えられる。そこで発明人は、46位の遊離システイン残基を回避しつつその所望特性を維持する、64Aに基づく抗体を作製することを試みた。
キメラモノクローナル抗体mAb206−LCCを、chimAB 64Aの重鎖をchimAB 61Dの軽鎖と組み合わせることによって作製した。MAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSをアミノ酸置換によって構築した。このために、chimAB 64Aの軽鎖内の46位のシステインをそれぞれグリシンおよびセリンに置き換えた。
HEK293Tにおけるキメラモノクローナル抗CLDN6抗体の作製
キメラモノクローナル抗体を、実施例7のb項で開示したように対応する抗体の軽鎖および重鎖をコードするプラスミドDNAをトランスフェクトしたHEK293T細胞(ATCC CRL−11268)において一過性に発現させた。
懸濁液適合性CHO細胞におけるキメラモノクローナル抗CLDN6抗体の作製
懸濁液適合性CHO細胞を加湿CO振とう器中の無血清培地で継代培養した。トランスフェクションの1日前に、細胞を振とうフラスコ中の無血清培地に接種した。トランスフェクションの当日に細胞を遠心分離し(200×gで5分間)、振とうフラスコ中の新鮮DMEM培地(Invitrogen、41965−039)に再懸濁した。DNAおよびトランスフェクション試薬を細胞に添加し、振とうすることによって静かに混合した。COインキュベータでの静的インキュベーション後、細胞を無血清増殖培地で希釈し、インキュベーション振とう器において発現のためにさらに培養した。0、2、4および6日目に細胞にCHO CD EfficientFeed(商標)AおよびB(Invitrogen、A1023401およびA1024001)をそれぞれ与えた。細胞の生存能が90%以下に低下した後、キメラ抗体を採取した。抗体を、プロテインAカラムを使用したFPLCによって精製した。抗体濃度を280nmの吸光度によって測定し、純度をSDS−PAGEによって分析した。
フローサイトメトリ
標的を発現する細胞へのCLDN6特異的キメラモノクローナル抗体の結合をフローサイトメトリによって分析した。そのため、細胞を0.05%トリプシン/EDTAで採取し、FACS緩衝液(2%FCSおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS)で洗浄して、2×10細胞/mlの濃度でFACS緩衝液に再懸濁した。細胞懸濁液100μlを指示濃度の適切な抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。chimAB 5F2D2を使用してCLDN6およびCLDN9発現を検出した。市販のマウス抗クローディン抗体、抗CLDN3(R&D、MAB4620)および抗CLDN4(R&D、MAB4219)を陽性対照として使用し、ヒトIgG1κ(Sigma、I5154)を陰性対照として使用した。細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、APC結合ヤギ抗ヒトIgG Fcγ(Dianova、109−136−170)またはAPC結合抗マウスIgG 1+2a+2b+3a(Dianova、115−135−164)特異的二次抗体と共にそれぞれ4℃で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。BD FACSArrayを用いたフローサイトメトリによって結合を分析した。
CDC
補体依存性細胞傷害(CDC)を、実施例7のc項で開示したように抗CLDN6抗体と共にインキュベートした標的細胞にヒト補体を添加した後、非溶解細胞中の細胞内ATPの含量を測定することによって判定した。
ADCC
抗体依存性細胞傷害(ADCC)を、抗CLDN6抗体と共にインキュベートした標的細胞にヒトPBMCを添加した後、非溶解細胞中の細胞内ATPの含量を測定することによって判定した。ATPを測定するため、非常に感度の高い分析方法としてルシフェラーゼの生物発光反応を使用する。
このアッセイでは、どちらもルシフェラーゼRNAで安定に形質導入した、NEC8野生型細胞(CLDN6陽性)およびNEC8 CLDN6ノックダウン細胞(CLDN6陰性)を使用し、一方OV90細胞にはルシフェラーゼをコードするIVT−RNAを一過性にトランスフェクトした。細胞を0.05%トリプシン/EDTAで採取し、20mM Hepesを付加的に含むそれぞれの増殖培地中で2×10細胞/ml(NEC8野生型およびCLDN6ノックダウン)または1×10細胞/ml(OV90)の濃度に調整した。1×10または5×10細胞をそれぞれ白色96穴PPプレートに接種し、37℃および5%COでインキュベートした。
PBMCを、Ficoll Hypaque(GE Healthcare、17144003)を使用して密度勾配遠心分離によってヒトドナー血液試料から単離した。間期を含むPMBCを単離し、細胞をPBS/EDTA(2mM)で2回洗浄した。1×10PBMCを、5%ヒト血清(6名の健常ドナーから得た血清プール)を含むX−Vivo 15培地(Lonza、BE04−418Q)50mlに接種し、37℃および5%COで2時間インキュベートした。
標的細胞の接種の4時間後に、PBS中のモノクローナルキメラ抗CLDN6抗体25μlを指示濃度で細胞に添加した。2時間のインキュベーションのうちに接着単球から分離した非接着PBMCを採取し、X−Vivo 15培地中で1.6×10細胞/ml(NEC8野生型もしくはCLDN6ノックダウン実験用)または4×10細胞/ml(OV90実験用)に調整した。この細胞懸濁液25μlを標的細胞およびモノクローナルキメラ抗CLDN6抗体に添加した。プレートを37℃および5%COで24時間インキュベートした。
24時間のインキュベーション後、PBS中8%(v/v)Triton X−100 10μl/ウェルを「全溶解物」対照に添加し、PBS 10μl/ウェルを「最大生細胞」対照および実際の試料に添加した。各ウェルにつきルシフェリン混合物(ddHO中3.84mg/ml D−ルシフェリン、0.64U/ml ATPアーゼおよび160mM HEPES)50μlを添加した。プレートを暗所にて室温で30分間インキュベートした。ルミノメータ(Infinite M200、TECAN)を使用して生物発光を測定した。結果を集積デジタル相対発光量(RLU)として示す。
特異的溶解を以下のように算定する:
進行後治療
進行した異種移植腫瘍の抗体治療のために、RPMI培地(Gibco)200μl中の2×10NEC8細胞を6〜8週齢の雌性無胸腺Nude−Foxn1nuマウスの側腹部に皮下的に接種した。腫瘍体積(TV=(長さ×幅)/2)を週に2回観測した。TVをmmで表して、経時的な腫瘍増殖曲線を作成する。腫瘍細胞接種の17日後、マウスを80mm以上の均一な腫瘍サイズを有する、コホート当たり8匹の動物の処置群に分けた。精製キメラモノクローナル抗体200μgを、週に2回静脈内注射と腹腔内注射を交互に実施することによって5週間適用した。非特異的抗体で処置した実験群を陰性対照として使用した。腫瘍が1500mm以上の体積に達したとき、マウスを犠死させた。
転移アッセイ
転移アッセイのためにNEC8細胞を採取し、70μmセルストレーナーでろ過して大きな細胞凝集体を除去した。4×10NEC8細胞を6週齢の雌性無胸腺Nude−Foxn1nuマウスの尾静脈に注射した。細胞注射の3日後に、PBS中の精製マウスモノクローナル抗体muMAB 64Aまたは抗体なしのPBS 200μgを、週に2回静脈内注射と腹腔内注射を交互に実施することによって適用した。8週間後にマウスを犠死させ、肺標本を調製して、液体窒素中で瞬間凍結した。
ゲノムDNAを、"Blood & Cell Culture DNA Midi Kit"(Qiagen、13343)の指示に従って凍結組織から単離した。Ultra Torax T8.10(IKA−Werke)を用いて肺組織をホモジナイズした。ヒトゲノムDNAによる汚染を回避するため、ゲノム肺DNAの定量的PCR(qPCR)を無菌条件下で調製した。マウス肺組織試料中のヒトNEC8細胞の腫瘍細胞量を評価するため、規定量のヒトNEC8ゲノムDNAおよびマウス肺ゲノムDNAを使用して標準曲線を作成した。そのため、以下の希釈系列を使用した(NEC8 DNA/マウス肺DNA):200/0、40/160、8/192、1.6/198.4、0.32/199.68、0.064/199.94、0.013/200および0/200ng。QPCRのため、総容積50μl中のゲノムDNA 200ng、2×SYBR Green(Qiagen、204145)、センスプライマー(GGGATAATTTCAGCTGACTAAACAG、Eurofins)16nmolおよびアンチセンスプライマー(TTCCGTTTAGTTAGGTGCAGTTATC、Eurofins)16nmolを、Applied Biosystemsからの7300 Real Time PCR−Systemを用いて分析した。陰性対照として、DNAの代わりに水を使用した。qPCRを以下の条件下で実施した:95℃、15分(1回反復)、95℃、30秒/62℃、30秒/72℃、30秒(40回反復)、95℃、15秒/60℃、30秒/95℃、15秒(1回反復)。すべてのqPCR反応を三重に実施した。各々の肺組織試料の腫瘍細胞量を、7300 Systemソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して標準曲線に相関させて定量化した。
高解像度エピトープマッピング
発明者の抗体と天然立体配座のCLDN6との間の相互作用を分析するため、哺乳動物細胞培養物における部位指定突然変異誘発をエピトープマッピング手法として使用した。そのため、それぞれCLDN6の1番目および2番目の細胞外ドメイン内のアミノ酸27〜81および137〜161のアラニン走査突然変異誘発を実施した。アラニン突然変異は部位指定突然変異誘発(GENEART AG,Germany)によって生成した。HEK293T細胞における一過性発現後、CLDN6突然変異体を、特異的モノクローナル抗体によって結合されるそれらの能力に関して評価した。CLDN6突然変異体への特異的モノクローナル抗体の結合低下は、変異したアミノ酸が重要な接触および/または立体配座残基であることを示唆する。結合をフローサイトメトリによって分析した。トランスフェクトされた細胞集団とトランスフェクトされていない細胞集団を識別するため、細胞に蛍光マーカーをレポーターとして同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を0.05%トリプシン/EDTAで採取し、FACS緩衝液(2%FCSおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS)で洗浄して、2×10細胞/mlの濃度でFACS緩衝液に再懸濁した。細胞懸濁液100μlを10μg/mlの抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。市販のマウス抗CLDN6(R&D、MAB3656)を、CLDN6突然変異体の細胞表面発現を検出するための対照として使用した。細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、APC結合ヤギ抗ヒトIgG Fcγ(Dianova、109−136−170)またはAPC結合抗マウスIgG 1+2a+2b+3a特異的二次抗体(Dianova、115−135−164)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。トランスフェクトされた細胞集団内の結合を、BD FACSArrayを用いたフローサイトメトリによって分析した。そのため、蛍光マーカーの発現を横軸に、抗体結合を縦軸にプロットした。突然変異型CLDN6に結合したモノクローナルキメラCLDN6特異的抗体の平均シグナル強度を野生型結合のパーセントとして表した。結合のために必須のアミノ酸は、突然変異した後結合を示さず、一方結合を支持するアミノ酸は、野生型と比較して明確な結合低下を示した。
免疫組織化学
凍結組織切片(4μm)を、切片化後ただちに−20℃にてアセトンで10分間固定した。その後切片を室温で10分間乾燥し、−80℃で保存した。使用の前に切片を解凍し(室温で10分間)、PBS中で5分間再水和した。内因性ペルオキシダーゼ活性を室温で15分間、PBS中の0.3%過酸化水素でブロックした。非特異的結合を避けるため、スライドガラスを室温で30分間、PBS中の10%ヤギ血清でブロックした。その後、スライドガラスをCLDN6特異的マウスモノクローナル抗体muMAB 64A(10%ヤギ血清/PBSに希釈して0.2μg/ml)と共に4℃で一晩インキュベートした。その翌日、スライドガラスを室温にてPBSで洗浄し(3×5分間)、二次抗体(PowerVision poly HRP−Anti−mouse IgG ready−to−use(ImmunoLogic))100μlと共に室温で1時間インキュベートした。その後、スライドガラスを室温にてPBSで洗浄した(3×5分間)。Vector Laboratories(Burlingame)からのVECTOR NovaRED Substrate Kit SK−4800を使用することにより、最終染色を1分30秒間実施した。切片を室温で90秒間、ヘマトキシリンで対比染色した。段階的なアルコール(70%、80%、2×96%および99%、各々5分間)で脱水し、キシロール中で10分間インキュベートした後、スライドガラスにX−tra Kit(Medite Histotechnic)を取り付けた。
ヒト組織でキメラモノクローナル抗体mAb206−LCCおよびmAb206−SUBGを使用するため、それらをFITC(Squarix GmbH,Germany)で標識した。凍結切片を調製し、固定、内因性ペルオキシダーゼのブロッキングおよび非特異的結合部位のブロッキングに関して上述したように処理した。その後、スライドガラスを抗体mAb206−LCC−FITCおよびmAb206−SUBG−FITC(10%ヤギ血清/PBS中1μg/ml)と共に暗チャンバーにおいて室温で1時間インキュベートした。その後スライドガラスを室温にてPBSで洗浄し(3×5分間)、ウサギ抗FITC−HRP抗体(AbD Serotec、10%ヤギ血清/PBSに1:300希釈)200μlと共に室温で30分間インキュベートした。室温にてPBSで洗浄した(3×5分間)後、Vector Laboratories(Burlingame)からのVECTOR NovaRED Substrate Kit SK−4800を使用することにより、基質反応を2分30秒間実施した。対比染色、脱水および取り付けを上述したように実施した。
ヒトCLDN6、3、4および9をそれぞれ一過性にトランスフェクトしたHEK293T細胞を用いたフローサイトメトリによる抗CLDN6キメラモノクローナル抗体の結合特異性の分析は、キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSが、それぞれCLDN3、4および9と相互作用することなくCLDN6への結合を示すことを明らかにした(図27)。
HEK293細胞の表面で安定に発現されるヒトCLDN6への結合に関して、抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSは類似の低いEC50値を示し、低濃度で結合の飽和が達成された(図28)。
ヒトCLDN6を内因性に発現する腫瘍細胞への抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSの結合親和性を、精巣癌細胞株NEC8への結合をフローサイトメトリによって分析することにより評価した。CLDN6特異的抗体chimAB 64A、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSと比較して、軽鎖組合せ変異体mAb206−LCCはNEC8細胞に対して3倍強い結合親和性を示した。すべての場合に、低濃度で結合の飽和が達成された(図29)。
フローサイトメトリによるヒト卵巣癌細胞株OV90への抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSの結合親和性の分析は、CLDN6特異的抗体が類似の低いEC50値を示すことを明らかにした。軽鎖組合せ変異体mAb206−LCCはOV90細胞への最も強い結合を示した(図30)。
NEC8細胞に対して抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCCおよびmAb206−SUBGは用量依存的にCDC活性を示したが、NEC8 CLDN6ノックダウン細胞に対してはこれらの抗体のいずれもが非特異的な細胞溶解を誘導しなかった。この結果は、chimAB 64A、mAb206−LCCおよびmAb206−SUBGの標的特異的エフェクター機能を実証した(図31a)。
抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSは、NEC8細胞に対して用量依存的にCDC活性を示した。chimAB 64Aと比較して、アミノ酸置換変異体mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSはNEC8細胞に対して類似のCDC活性を示した(図31b)。
抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSは、NEC8およびOV90腫瘍細胞株において用量依存的なADCC活性を示し、低い抗体濃度でもADCCを誘導した(図32a)。
図32bは、NEC8野生型およびNEC8ノックダウン細胞に対する抗CLDN6キメラモノクローナル抗体chimAB 64A、mAb206−LCCおよびmAb206−SUBGの抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を示す。標的特異性を明らかにするため、安定なCLDN6ノックダウンを有するNEC8細胞を使用した。
腫瘍細胞株NEC8を移植したマウスを使用した進行後治療異種移植モデルは、抗体対照群と比較してCLDN6特異的抗体mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSが腫瘍増殖を阻害することを示した(図33)。
図34aにおける増殖曲線は、抗CLDN6キメラモノクローナル抗体mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSが腫瘍増殖を阻害できることを明らかにする。図34bにおける生存率プロットは、CLDN6特異的抗体で処置したマウスの生存延長を示す。
chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSの高解像度エピトープマッピングは、CLDN6の1番目の細胞外ドメインのアミノ酸F35、G37およびS39ならびに潜在的にT33がCLDN6特異的キメラ抗体との相互作用のために重要であることを実証した。chimAB 64A、mAb206−LCC、mAb206−SUBGおよびmAb206−SUBSは同じ結合パターンを示した(図35)。
転移異種移植モデルにおける抗CLDN6マウスモノクローナル抗体muMAB 64Aの治療効果を試験するため、NEC8細胞を無胸腺Nude−Foxn1nuマウスの尾静脈に注射した。移植の3日後にマウスをCLDN6特異的抗体muMAB 64Aで処置した。8週間後、肺標本を調製し、腫瘍細胞量をPCRによって分析した。PBS対照群と比較して、マウスモノクローナル抗CLDN6抗体muMAB 64Aは腫瘍増殖の阻害を明確に示した(図36)。
モノクローナル抗体muMAB 64A、mAb206−LCCおよびmAb206−SUBGを使用したヒト癌組織および正常組織の免疫組織化学染色は、正常組織と異なり、卵巣癌および精巣癌からの組織切片で強い均一な染色が認められることを明らかにした。悪性上皮細胞集団の非常に強い膜染色が検出されたが、隣接する間質細胞および非悪性上皮細胞は染色されなかった(図37)。これらの結果は、発明者のCLDN6特異的抗体が腫瘍患者由来の悪性細胞に特異的に結合することを明らかに示す。(説明:抗体によって染色された組織の数/分析した組織の数。)

Claims (18)

  1. (a)配列番号:36の26〜33位、51〜58位、および97〜106位のアミノ酸配列でそれぞれ示される、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖;および
    (b)配列番号:35の27〜31位、49〜51位、および88〜97位のアミノ酸配列でそれぞれ示される、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖、または配列番号:37の27〜31位、49〜51位、および88〜97位のアミノ酸配列でそれぞれ示される軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖、
    を含む抗CLDN6抗体。
  2. CLDN6を発現する細胞の表面に結合したCLDN6に結合することができ、CLDN9を発現する細胞の表面に結合したCLDN9に実質的に結合することができない、請求項1に記載の抗CLDN6抗体。
  3. CLDN4を発現する細胞の表面に結合したCLDN4に実質的に結合することができず、および/またはCLDN3を発現する細胞の表面に結合したCLDN3に実質的に結合することができない、請求項1に記載の抗CLDN6抗体。
  4. 以下の活性:
    (i)CLDN6を発現する細胞の死滅化、
    (ii)CLDN6を発現する細胞の増殖の阻害、
    (iii)CLDN6を発現する細胞のコロニー形成の阻害、
    (iv)確立された腫瘍の寛解を媒介すること、
    (v)腫瘍の形成または再形成を防止すること、および
    (vi)CLDN6を発現する細胞の転移の阻害
    の1またはそれ以上を有する、請求項1に記載の抗CLDN6抗体。
  5. CLDN6をその天然立体配座で担持する細胞に対して1またはそれ以上の免疫エフェクター機能を示し、1またはそれ以上の前記免疫エフェクター機能が、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、アポトーシスの誘導および増殖の阻害から成る群より選択される、請求項1に記載の抗CLDN6抗体。
  6. 前記重鎖および前記軽鎖は、互いに共有結合で連結している、請求項1に記載の抗CLDN6抗体。
  7. モノクローナル、キメラ、またはヒト化抗体である、請求項1に記載の抗CLDN6抗体。
  8. 治療薬に連結された請求項1に記載の抗CLDN6抗体を含む複合体。
  9. 前記治療薬が、毒素、放射性同位体、薬剤および細胞傷害性物質からなる群より選択される、請求項8に記載の複合体。
  10. 請求項1に記載の抗CLDN6抗体、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
  11. 一本鎖Fv(scFv)抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、および多重特異性抗体からなる群より選択される、請求項1に記載の抗CLDN6抗体。
  12. 二重特異性または多重特異性であり、エフェクター細胞に対する第二結合特異性を含む、請求項11に記載の抗CLDN6抗体。
  13. 二重特異性または多重特異性であり、Fc受容体またはT細胞受容体に対する第二結合特異性を含む、請求項11に記載の抗CLDN6抗体。
  14. 食作用、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、サイトカイン放出、およびはスーパーオキシドアニオンの生成から選択されるFc受容体を介したエフェクター細胞活性を始動させる、請求項12に記載の抗CLDN6抗体。
  15. 前記第二結合特異性が、IgG受容体、IgA受容体、CD3、CD16、CD32、CD64、およびCD89からなる群より選択される、請求項12に記載の抗CLDN6抗体。
  16. 増強因子に対する第三結合特異性をさらに含む、請求項12に記載の抗CLDN6抗体。
  17. 前記第三結合特異性が、細胞傷害性T細胞、または免疫応答を上昇させる免疫細胞に結合する、請求項16に記載の抗CLDN6抗体。
  18. 前記第三結合特異性が、CD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、およびICAM−1からなる群より選択される、請求項17に記載の抗CLDN6抗体。
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