JP6740550B2 - 食用マイクロカプセル,食用マイクロカプセルの製造方法及び調味料 - Google Patents

食用マイクロカプセル,食用マイクロカプセルの製造方法及び調味料 Download PDF

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Description

本発明は、γ−アミノ酪酸(GABA)を包含した食用マイクロカプセル,食用マイクロカプセルの製造方法及びこの食用マイクロカプセルを用いた調味料に関する。
近年、γ−アミノ酪酸(GABA)は、主に抑制性の神経伝達物質として機能し、鎮静,抗痙攣,抗不安作用,リラックス効果,脳細胞の代謝活性化作用等を有している物質であることから、薬剤はもとより、種々の食品への応用も進んできている。その利用形態として、マイクロカプセル剤の形態にすることが考えられる。例えば、特許文献1(特表2005−533100号公報)には、GABA誘導体をマイクロカプセル剤の形態にして薬剤として用いる記載があり、特許文献2(特開2013−184956号公報)には、γ−アミノ酪酸をマイクロカプセル剤の形態にして食品添加剤として用いる記載がある。
特表2005−533100号公報 特開2013−184956号公報
ところで、上記の文献においては、GABA誘導体やγ−アミノ酪酸をマイクロカプセルの形態にする記述はあるものの、具体的な形態やその具体的製造方法についての提示はない。そのため、これを食品に用いる場合、特に、比較的塩分の多い食品に添加し、高浸透圧環境下におく場合、γ−アミノ酪酸の漏出を防止し、形態的変化を抑止し、常温はもとより、加熱調理条件でも安定化できるようにする技術の確立が望まれる。
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、食品に用いても、特に、高浸透圧環境下でも、γ−アミノ酪酸の漏出を防止し、形態的変化を抑止し、常温はもとより、加熱調理条件でも安定化できるようにした食用マイクロカプセル,食用マイクロカプセルの製造方法及びこの食用マイクロカプセルを用いた調味料を提供することを目的とする。
このような目的を達成するための本発明の食用マイクロカプセルは、γ−アミノ酪酸を主とする芯物質を、膜物質により被覆するとともに、該膜物質を多層に形成した構成としている。膜物質は、例えば、ハイドロコロイド等のカプセル形成物質を含有し、ゲル化,架橋結合,コアセルベーション等の手段によってカプセルを形成することができるものである。これにより、膜物質が多層になっているので、安定化させられる。そのため、食品に用いても、特に、比較的塩分の多い食品のように、高浸透圧環境下の食品に添加しても、γ−アミノ酪酸の漏出を防止し、形態的変化を抑止し、常温はもとより、加熱調理条件でも安定化できるようになる。
そして、必要に応じ、膜物質を、タンパク質で構成している。例えば、エラスチン,ケラチン,シルク,アルブミン,乳タンパク,コラーゲン等の動物性タンパク、小麦,トウモロコシ,オート麦,アーモンドタンパク等の植物性タンパクが挙げられる。食用に適する。
この場合、上記膜物質を、疎水性トウモロコシタンパクのツェインからなる内層と、該内層を被覆するアルブミンからなる外層とを備えて構成したことが有効である。この組み合わせにおいて、安定化を図ることができる。
また、必要に応じ、粒径を30μm以下にした構成としている。望ましくは、20μm以下である。より望ましくは、10μm以下である。食用マイクロカプセルの粒子が細かいことから、分散性がよく、ザラザラ感も抑制されて食感の向上が図られる。10μm以下になると、人間の食感にほとんど影響をおよぼさない。
また、上記の目的を達成するための本発明の食用マイクロカプセルは、γ−アミノ酪酸を主とする芯物質を、膜物質により被覆した食用マイクロカプセルを製造する食用マイクロカプセルの製造方法であって、
上記芯物質の芯物質溶液を生成する芯物質溶液生成工程と、上記膜物質を溶媒に溶解した膜物質溶液を生成する膜物質溶液生成工程と、上記芯物質溶液生成工程で生成された芯物質溶液と上記膜物質溶液生成工程で生成された膜物質溶液とを混合した混合液を生成する混合液生成工程と、上記混合液生成工程で生成された混合液を分散溶液に混合して撹拌しマイクロカプセルを生成するマイクロカプセル生成工程と、該マイクロカプセル生成工程で生成されたマイクロカプセルを分散溶液から分離してマイクロカプセルを抽出する分離抽出工程とを備え、上記マイクロカプセル生成工程において、上記混合液生成工程で生成された混合液を分散溶液に混合して撹拌した後、所定時間放置し、その後、分散溶液に、アルブミンを添加し、アルブミンを膜物質として外層に付着させた構成としている。
これにより、抽出された食用マイクロカプセルは、膜物質が多層になっており、外層にアルブミンが付着しているので、クッション機能を奏し、安定化させられる。そのため、食品に用いても、特に、比較的塩分の多い食品のように、高浸透圧環境下の食品に添加しても、γ−アミノ酪酸の漏出を防止し、形態的変化を抑止し、常温はもとより、加熱調理条件でも安定化できるようになる。また、マイクロカプセル生成工程において、アルブミンを添加すると、粒子同士の凝集が抑止され、粒子の分散性が良くなる。
そして、必要に応じ、上記芯物質溶液生成工程において、γ−アミノ酪酸を55W%〜75W%のエタノールに溶解し、その濃度を0.3mol/L〜0.7mol/Lにし、上記膜物質としてツェインを用い、上記膜物質溶液生成工程において、ツェインを55W%〜75W%のエタノールに溶解し、その濃度を0.1%(W/V)〜1.0%(W/V)にした構成としている。
膜物質としてツェインを使用し、この条件により、粒子径10μm以下のマイクロカプセルを作成できるようになる。ツェインの濃度が1.0%(W/V)を超えると、膜物質を不溶化する過程で、未反応のツェインの残渣が大量に生じやすくなり好ましくない。この範囲で、残渣が生じにくく、使用したツェインのほぼ全てをカプセル化させることができる。望ましくは、γ−アミノ酪酸を65±5W%のエタノールに溶解し、その濃度を0.5±0.1mol/Lにし、ツェインを65±5W%のエタノールに溶解し、その濃度を0.2±0.05%(W/V)にする。
また、必要に応じ、上記マイクロカプセル生成工程において、分散溶液として、相分離誘起剤を添加した食塩水を用い、食塩の濃度0.5%(W/V)〜5.0%(W/V)にした構成としている。
食塩の濃度が5.0%(W/V)を越えると、芯物質のγ−アミノ酪酸は、水溶性であることから、例えばアマニ油等の非疎水材料を使用した場合に比較して、食塩溶液がその浸透圧により芯物質にも浸透し、マイクロカプセルが球状になりにくくなり、扇型に亀裂が入った形状のものが生じ易くなり、好ましくない。望ましくは、1.0±0.2%(W/V)である。
更に、必要に応じ、上記マイクロカプセル生成工程において、相分離誘起剤として、リン酸緩衝液を用い、分散液のpHを、pH=5.5〜6.5にした構成としている。粒子の分散性が良くなる。
更にまた、必要に応じ、上記マイクロカプセル生成工程において、アルブミンを、分散溶液における濃度が0.2W%以上になるように添加した構成としている。上限は2.5W%程度が望ましい。分散性を保持することができるとともに、外層にアルブミンを確実に付着させることができる。
また、本発明は、塩分を含む調味料であって、上記の食用マイクロカプセルを混合した調味料にある。調味料としては、例えば、塩系,醤油系,味噌系,油系,ソース系,だし系等これらの一種若しくは二種以上を混合したペースト状のもの,粘性のある液状のものが選択される。
塩系としては、岩塩,海塩等の自然塩,精製塩等が挙げられる。醤油系としては、濃口醤油,薄口醤油,減塩醤油,たまり醤油などの各種醤油,ひしお,魚醤(しょっつる,いしる,ニョクマム,ナンプラー)等が挙げられる。味噌系としては、白味噌,赤味噌,赤だし味噌,八丁味噌などの各種味噌,コチュジャン,醤(ジャン),豆板醤,XO醤,芝麻醤,豆鼓醤,甜面醤,腐乳等が挙げられる。ソース系としては、とんかつソース,ウスターソース,トマトソース,オイスターソース,ケチャップ,トマトピューレ,タバスコ,サルサソース,サンバルソース,チリソース,マヨネーズ,サラダドレッシング等が挙げられる。だし系としては、鶏がらや豚骨等の各種だし,スープストック,ブイヨン,コンソメ,昆布だし,麺つゆなどが挙げられる。
本発明においては、調味料を、味噌にすることができる。味噌の高浸透圧環境下において、味噌中の酵素等によりγ−アミノ酪酸が分解されることを抑止し、味噌の官能を損なうことなく、機能性を向上させることができる。
本発明によれば、膜物質が多層になっているので、安定化させられる。そのため、食品に用いても、特に、比較的塩分の多い食品のように、高浸透圧環境下の食品に添加しても、γ−アミノ酪酸の漏出を防止し、形態的変化を抑止し、常温はもとより、加熱調理条件でも安定化できるようになる。
本発明の実施の形態に係る食用マイクロカプセルを示す図である。 本発明の実施の形態に係る食用マイクロカプセルの製造方法を示す工程図である。 実施例に係る食用マイクロカプセルの顕微鏡写真である。 実施例に係る食用マイクロカプセルのアミノ酸分析結果を示すクロマトグラムである。 試験例1に係り、アルブミンのマイクロカプセルの分散性についての試験結果を示す表図である。 試験例2に係り、実施例に係るマイクロカプセルを所定条件下で生味噌浸出液に混合したときの粒子の変化を観察した結果を示す表図である。 試験例3に係り、実施例に係るマイクロカプセルを所定条件下で生味噌浸出液に混合したときの粒子の状態を示す顕微鏡写真である。 試験例4に係り、実施例に係るマイクロカプセルを混合した生味噌についての官能試験結果を示す表図である。
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る食用マイクロカプセル,食用マイクロカプセルの製造方法及び調味料について詳細に説明する。
図1に示すように、実施の形態に係る食用マイクロカプセルは、γ−アミノ酪酸を主とする芯物質が膜物質により被覆されるとともに、膜物質が多層に形成されている。膜物質は、タンパク質で構成され、例えば、エラスチン,ケラチン,シルク,アルブミン,乳タンパク,コラーゲン等の動物性タンパク、小麦,トウモロコシ,オート麦,アーモンドタンパク等の植物性タンパクが挙げられる。実施の形態では、膜物質は、疎水性トウモロコシタンパクのツェインからなる内層と、内層を被覆するアルブミンからなる外層とを備えて構成されている。また、食用マイクロカプセルの粒径は、30μm以下、望ましくは、20μm以下、より望ましくは、10μm以下である。実施の形態では、10μm以下に設定されている。
次に、本発明の実施の形態に係る食用マイクロカプセルの製造方法について詳細に説明する。本製造方法は、図2に示すように、基本的に、芯物質の芯物質溶液を生成する芯物質溶液生成工程(1)と、膜物質を溶媒に溶解した膜物質溶液を生成する膜物質溶液生成工程(2)と、芯物質溶液生成工程で生成された芯物質溶液と膜物質溶液生成工程で生成された膜物質溶液とを混合した混合液を生成する混合液生成工程(3)と、混合液生成工程で生成された混合液を分散溶液に混合して撹拌しマイクロカプセルを生成するマイクロカプセル生成工程(4)と、マイクロカプセル生成工程で生成されたマイクロカプセルを分散溶液から分離してマイクロカプセルを抽出する分離抽出工程(5)とを備えている。以下、各工程について説明する。
(1)芯物質溶液生成工程
芯物質の芯物質溶液を生成する。ここでは、γ−アミノ酪酸を55W%〜75W%のエタノールに溶解し、その濃度を0.3mol/L〜0.7mol/Lにする。望ましくは、γ−アミノ酪酸を65±5W%のエタノールに溶解し、その濃度を0.5±0.1mol/Lにする。
(2)膜物質溶液生成工程
膜物質として、疎水性トウモロコシタンパクであるツェインを用いている。ツェインを55W%〜75W%のエタノールに溶解し、その濃度を0.1%(W/V)〜1.0%(W/V)にする。ツェインの濃度が1.0%(W/V)を超えると、膜物質を不溶化する過程で、未反応のツェインの残渣が大量に生じやすくなり好ましくない。望ましくは、ツェインを65±5W%のエタノールに溶解し、その濃度を0.2±0.05%(W/V)にする。
(3)混合液生成工程
芯物質溶液生成工程で生成された芯物質溶液と膜物質溶液生成工程で生成された膜物質溶液とを混合した混合液を生成する。
(4)マイクロカプセル生成工程
この工程において、分散溶液として、相分離誘起剤を添加した食塩水を用い、食塩の濃度0.5%(W/V)〜5.0%(W/V)にする。望ましくは、1.0±0.2%(W/V)である。また、相分離誘起剤として、リン酸緩衝液を用い、分散液のpHを、pH=5.5〜6.5にしている。
まず、混合液生成工程で生成された混合液を分散溶液に混合して撹拌しマイクロカプセルを生成する。これにより、芯物質溶液と膜物質溶液とを混合した混合液が、分散液に混合すると、膜物質が不溶化し、マイクロカプセルが生成され、特に、上記の条件により、粒子径10μm以下のマイクロカプセルが生成されていく。また、この場合、ツェインの残渣が生じにくく、使用したツェインのほぼ全てをカプセル化させることができる。また、粒子の分散性が良く、球状のマイクロカプセルが生成されていく。食塩の濃度が5.0%(W/V)を越えると、芯物質のγ−アミノ酪酸は、水溶性であることから、例えばアマニ油等の非疎水材料を使用した場合に比較して、食塩溶液がその浸透圧により芯物質にも浸透し、マイクロカプセルが球状になりにくくなり、扇型に亀裂が入った形状のものが生じ易くなり、好ましくない。
次に、この工程においては、混合液生成工程で生成された混合液を分散溶液に混合して撹拌した後、所定時間、例えば一昼夜放置し、その後、分散溶液に、アルブミンを添加し、アルブミンを膜物質として外層に付着させる。アルブミンは、分散溶液における濃度が0.2W%以上になるように添加する。望ましくは、0.25W%以上、より望ましくは、0.5W%以上である。上限は2.5W%程度が望ましい。これにより、アルブミンの作用により、粒子同士の凝集が抑止され、粒子の分散性を向上させこれを保持することができるとともに、外層にアルブミンが付着していく。
(5)分離抽出工程
マイクロカプセル生成工程で生成されたマイクロカプセルを分散溶液から分離する。この分離抽出工程において、例えば、分散溶液から大きい所定の粒径以上の粒径の大径マイクロカプセルや残渣を除去し、その後、遠心分離機により、抽出する。
次に、本発明の実施の形態に係る調味料について詳細に説明する。実施の形態においては、塩分を含む調味料であって、上記の食用マイクロカプセルを混合した調味料にある。調味料としては、例えば、塩系,醤油系,味噌系,油系,ソース系,だし系等これらの一種若しくは二種以上を混合したペースト状のもの,粘性のある液状のものが選択される。実施の形態では、調味料は、味噌で構成され、上記の食用マイクロカプセルが混合されている。これにより、味噌の官能を損なうことなく、味噌の機能性を向上させることができる。この味噌においては、γ−アミノ酪酸が食用マイクロカプセルに包容されているので、味噌の高浸透圧環境下において、味噌中の酵素等によりγ−アミノ酪酸が分解されることが抑止される。
即ち、実施の形態に係る食用マイクロカプセルは、膜物質が、疎水性トウモロコシタンパクのツェインからなる内層と、内層を被覆するアルブミンからなる外層とを備えて構成されるので、膜物質が多層になっており、外層のアルブミンにより、クッション機能を奏し、安定化させられる。そのため、比較的塩分の多い調味料の場合、食用マイクロカプセルは、高浸透圧環境下にあるが、膜物質が多層になっているので、γ−アミノ酪酸の漏出が防止され、形態的変化が抑止され、常温はもとより、加熱調理条件でも安定化させられる。また、食用マイクロカプセルの粒子が細かいことから、分散性がよく、ザラザラ感も抑制されて食感の向上が図られる。10μm以下になると、人間の食感にほとんど影響をおよぼさない。
次に、実施例について説明する。芯物質溶液は、γ−アミノ酪酸を65W%のエタノールに溶解し、その濃度を0.5mol/Lにした。また、膜物質溶液は、ツェインを65W%のエタノールに溶解し、その濃度を0.2%(W/V)にした。芯物質溶液と膜物質溶液とを混合した混合液を生成し、マイクロカプセルを生成した。マイクロカプセルの生成において、分散溶液として、濃度1%(W/V)の食塩を含み、20mMリン酸緩衝液(pH6.0)を用いた。この分散溶液に、芯物質溶液と膜物質溶液との混合液を混合し、一昼夜放置し、その後、この分散溶液に、アルブミンを、分散溶液における濃度が0.25W%になるように添加した。そして、1%(W/V)食塩を含む20mMのリン酸緩衝液(pH6.0)で3回洗浄し、3,000rpm、15min遠心分離して、食用マイクロカプセルを得た。
図3に、走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す。粒子径1〜10μmの球状のマイクロカプセルの形成が確認された。また、得られたマイクロカプセルを乳鉢で摩砕し、上記と同様のリン酸緩衝液で抽出後、5%(W/V)のトリクロロ酢酸で除タンパクし、遠心分離で得られた上清をpH2.2に調整し、0.22μmのメンブランフィルタでろ過してアミノ酸分析を実施した。その結果、マイクロカプセル1gあたり10.1mgのγ−アミノ酪酸が含まれることを確認した。また、図4に、クロマトグラムを示す。γ−アミノ酪酸が包含されていることが分かる。
実施例に係る食用マイクロカプセルを用いて、実施例に係る味噌を作成した。添加量は生味噌300gあたり、マイクロカプセル懸濁液7gを添加した。スパーテルを用いて混練を実施した。
試験例
<試験例1>アルブミンのマイクロカプセルに対する分散性に及ぼす影響
アルブミンのマイクロカプセルに対する分散性に及ぼす影響について、比較例(食塩,塩化マグネシウム,ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween20))とともに試験した。試験は、食塩濃度1%(W/V)の分散溶液において、アルブミン及び各比較例について、種々の濃度(W%)のものを作成し、これらについて、マイクロカプセルの分散性を見た。結果を図5に示す。アルブミンは良好な分散性を奏することが分かる。
<試験例2>生味噌環境下における高浸透圧耐性(1)
生味噌環境下での耐性を評価するために、生味噌の浸出液中における保存試験を実施した。生味噌の水抽出物を食塩10%に調製してマイクロカプセル懸濁液を添加し、30℃に保持して、添加前(0日)、添加後30日目、添加後59日目に、光学顕微鏡により、マイクロカプセルの円形度,粒径及び色彩についてその変化を観察した。結果を図6に示す。形態的にあきらかな変化は観察されなかった。
<試験例3>生味噌環境下における高浸透圧耐性(2)
生味噌環境下での耐性を評価するために、生味噌の浸出液中における保存試験を実施した。生味噌浸出液の調製は、生味噌に等量の水を加えて撹拌し、3,000rpm、15min遠心分離することにより、固液分離した。得られた浸出液の食塩濃度が味噌と同様に10%(W/V)になるように食塩を加え、生味噌浸出液とした。この生味噌浸出液には、生味噌中に存在する酵素,食塩が含まれ、また希釈されてはいるものの酸度,アルコール濃度も生味噌類似の環境にあると仮定した。この生味噌浸出液に、実施例に係るマイクロカプセル懸濁液を添加して30℃で7日間保持し、経時的に形態観察を実施した。
マイクロカプセル添加直後のものと、7日間経過後のものについて、浸出液のマイクロカプセルを撮像し、その変化を見た。結果を図7に示す。形態的にあきらかな変化は観察されなかった。
また、7日間保持した後、マイクロカプセルの損傷によりγ−アミノ酪酸が漏出していないかを見るために、上記と同様に除タンパクを行い、pHを調整し、0.22μmのフィルタでろ過し、アミノ酸分析を行った。このアミノ酸分析の結果、7日間放置したもののγ−アミノ酪酸は0.28mg/ml(W/V)であり、生味噌浸出液自体のγ−アミノ酪酸含有量は0.31mg/ml(W/V)とほぼ同等で、生味噌浸出液の酵素や浸透圧の影響で、マイクロカプセル内部のγ−アミノ酪酸の漏出はみられなかった。
<試験例4>官能評価
官能評価には、味噌に対して1%(W/W)のマイクロカプセル懸濁液をスパーテルで混練し、対照にはマイクロカプセル懸濁液と同量の1%(W/W)食塩を含む20mMのリン酸緩衝液(pH6.0)を生味噌に添加し、同様にスパーテルで混練したものを試料として供した。官能評価の方法は、バイアスが生じないように記号を付し、どちらが好ましいかを回答する二点嗜好法により実施した。パネラーは7名で、試料は「マイクロカプセル添加生味噌」と「対照」を組み合わせたもの3セットを供した。結果については、n=21の二項分布表により両側検定を行った。結果を図8に示す。結果は危険率5%で有意差はなく、したがってマイクロカプセルの添加が、生味噌の嗜好に影響をおよぼさないことがあきらかとなった。
<試験例5>加熱調理条件による耐性の検討
実施例に係るマイクロカプセルを約0.1g精秤し、味噌汁の食塩濃度を想定し、1.5%(W/V)食塩を含む20mMのリン酸緩衝液(pH6.0)10mlに懸濁したものを2つ作成した。これらを、加温して70℃に達した後5min保持したものと、沸騰させた後5min保持したものとを用意した。対照は、同じ緩衝液中に懸濁し、加温せずに室温に放置したものとした。それらを上記と同様に除タンパク、pH調整、ろ過をした後、アミノ酸分析を行った。その結果、室温放置、70℃、5min保持ではいずれもγ−アミノ酪酸は検出されず、沸騰、5min保持では、マイクロカプセル中のγ−アミノ酪酸の0.71%(W/W)が緩衝液中に漏出したことがあきらかとなった。
尚、上記実施の形態において、調味料は味噌としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、他の調味料でも良いことは勿論である。また、上記実施の形態に係る食用マイクロカプセルは、調味料に限らずどのような食品に用いても良いことは勿論である。
(1)芯物質溶液生成工程
(2)膜物質溶液生成工程
(3)混合液生成工程
(4)マイクロカプセル生成工程
(5)分離抽出工程
(6)添加工程

Claims (8)

  1. γ−アミノ酪酸を主とする芯物質を、膜物質により被覆するとともに、該膜物質を多層に形成し、
    上記膜物質を、タンパク質で構成し、該膜物質を、ツェインからなる内層と、該内層を被覆するアルブミンからなる外層とを備えて構成したことを特徴とする食用マイクロカプセル。
  2. 粒径を30μm以下にしたことを特徴とする請求項1記載の食用マイクロカプセル。
  3. γ−アミノ酪酸を主とする芯物質を、膜物質により被覆した食用マイクロカプセルを製造する食用マイクロカプセルの製造方法であって、
    上記芯物質の芯物質溶液を生成する芯物質溶液生成工程と、上記膜物質を溶媒に溶解した膜物質溶液を生成する膜物質溶液生成工程と、上記芯物質溶液生成工程で生成された芯物質溶液と上記膜物質溶液生成工程で生成された膜物質溶液とを混合した混合液を生成する混合液生成工程と、上記混合液生成工程で生成された混合液を分散溶液に混合して撹拌しマイクロカプセルを生成するマイクロカプセル生成工程と、該マイクロカプセル生成工程で生成されたマイクロカプセルを分散溶液から分離してマイクロカプセルを抽出する分離抽出工程とを備え、
    上記芯物質溶液生成工程において、γ−アミノ酪酸を55W%〜75W%のエタノールに溶解し、その濃度を0.3mol/L〜0.7mol/Lにし、上記膜物質としてツェインを用い、上記膜物質溶液生成工程において、ツェインを55W%〜75W%のエタノールに溶解し、その濃度を0.1%(W/V)〜1.0%(W/V)にし、
    記マイクロカプセル生成工程において、上記混合液生成工程で生成された混合液を分散溶液に混合して撹拌した後、所定時間放置し、その後、分散溶液に、アルブミンを添加し、アルブミンを膜物質として外層に付着させたことを特徴とする食用マイクロカプセルの製造方法。
  4. 上記マイクロカプセル生成工程において、分散溶液として、相分離誘起剤を添加した食塩水を用い、食塩の濃度0.5%(W/V)〜5.0%(W/V)にしたことを特徴とする請求項3記載の食用マイクロカプセルの製造方法。
  5. 上記マイクロカプセル生成工程において、相分離誘起剤として、リン酸緩衝液を用い、分散液のpHを、pH=5.5〜6.5にしたことを特徴とする請求項4記載の食用マイクロカプセルの製造方法。
  6. 上記マイクロカプセル生成工程において、アルブミンを、分散溶液における濃度が0.2W%以上になるように添加したことを特徴とする請求項5記載の食用マイクロカプセルの製造方法。
  7. 塩分を含む調味料であって、上記請求項1または2記載の食用マイクロカプセルを混合したことを特徴とする調味料。
  8. 味噌であることを特徴とする請求項7記載の調味料。
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