JP6735433B1 - 僧帽弁モデル及び固定治具 - Google Patents
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Abstract
Description
心臓弁膜症の中でも、最も多いものの1つが僧帽弁閉鎖不全症である。僧帽弁閉鎖不全症とは、僧帽弁の閉鎖機能が悪くなり、左心室から大動脈に送られるはずの血液の一部が、左心房に逆流してしまう状態のことであり、僧帽弁逆流症ともいう。
特に近年では、手術支援ロボットを用いた完全内視鏡下手術や、MICS(minimally invasive cardiac surgery)と呼ばれる小切開手術が多く行われている。これらの低侵襲手術は、胸を大きく切り開く胸骨正中切開手術よりも、患者の体への負担が少ないだけではなく、患者の体の右横から僧帽弁にアプローチできるため、閉鎖不全状態を観察しやすいという利点がある。しかしながら、これらの低侵襲手術は、医師に高度の技術力や経験が求められるため、医師が多数の経験を積み、技術力を向上させることが強く望まれる。
上記特許文献1に開示された胸腔シミュレータは、少なくとも肋骨を模擬した人体骨格モデルと、人体骨格モデルを収納するケーシングとから成る装置であり、ケーシングの肋骨部分に開孔部が設けられ、横隔膜の部分が開閉でき、人体骨格モデルの肋骨内部に臓器モデルを収納できる構成となっている。これによれば、患者の右胸部の肋骨の間から僧帽弁にアプローチする手技を効果的にトレーニングすることが可能である。
しかしながら、上記特許文献2に開示された心臓模型は、実際の手術において特に必要ではない箇所についても正確に形状を再現しようとするため、十分にコストを低減できないという問題がある。
一般に、患者の右胸部の肋骨の間から僧帽弁にアプローチする手技の場合、一般に第4肋間から内視鏡を挿し込んでアクセスするが、臓器モデルの取付位置が一箇所に固定され不変であると、術者によっては、当該アクセス位置から見た術野に違和感が生じることがある。しかしながら、上記特許文献1に開示された胸腔シミュレータでは、臓器モデルの取付位置を調整する器具や機構については十分に開示されていないという問題がある。
僧帽弁部が外部から視認できず、左心房部に覆われていることにより、左心房部の左心房壁を切開した上で、弁尖の切除等を行うことができ、よりリアルな手技トレーニングが可能となる。
1)僧帽弁部に設けられた弁尖が逸脱状態。
2)僧帽弁部に設けられた弁尖と左心室部に設けられた乳頭筋の先端とを繋ぐ腱索が断裂状態。
3)僧帽弁部に設けられた弁尖と乳頭筋の先端との距離が3〜7mm。
僧帽弁形成術もしくは僧帽弁置換術の手技トレーニングを行うに当たっては、左心房壁を切開する必要があるため、硬度及び厚みを再現することで、臓器の把持や切開といったトレーニングをよりリアルに行うことができる。また、把持や切開などの手技と関連性の低い箇所については硬度又は厚みをデフォルメすることで、低コストでの作製が可能となる。
胸腔シミュレータの内部の背骨部位に係着するための係着機構としては、凸型又は凹型の係合部で、胸腔シミュレータの内部の背骨部位に設けられた、凹型又は凸型の係合部と係合することが好ましい。
僧帽弁モデルの固定については、僧帽弁モデルに設けられた取付機構を利用して取り付け、かつ、トレーニング中に固定治具から僧帽弁モデルが脱落することのないように固定し得る機構を備えることが好ましい。
実際に患者の右横からアプローチして、僧帽弁形成術もしくは僧帽弁置換術を行う際には、内視鏡で僧帽弁が見えるように、患者の心臓の位置や向きを変えて手術を行う。そのため、患者の頭部側から右側までの90°の範囲内で、僧帽弁モデルの向きを微調整し得る回転テーブル機構を備えることにより、より実際の手術に近い術野が得られることになる。
図1に示すように、僧帽弁モデル1は、左心房部2、僧帽弁部3及び左心室部4から成る。僧帽弁モデル1は、患者に人工心肺のポンプを付け、心臓から血液を抜き、さらに内視鏡下の手技でガスを入れて圧力をかけた状態で、心臓が扁平した形を再現又はデフォルメしたものであり、特に内視鏡のスコープから見た際の形状をリアルに再現している。左心房部2、僧帽弁部3及び左心室部4は、それぞれ別々に成形された後、接着されて僧帽弁モデル1となっているが、一体成形されたことでもよい。
僧帽弁部3は、外観上は見えず、左心房部2に覆われている。したがって、トレーニングにおいて左心房部2を切開することで僧帽弁部3が現れるため、よりリアルなトレーニングが可能である。
図6(2)又は図7(2)に示すように、左心室部4は左心室壁4aで周囲を覆われ、内部は中空となっており、乳頭筋(41a,41b)が設けられている。乳頭筋(41a,41b)の先端には腱索は設けられておらず、腱索が断裂した状態が再現されている。図7(2)に示す僧帽弁部3と乳頭筋41aの間隔Pは、5mmとなっている。かかる距離は、実際に手術を行う際の僧帽弁と乳頭筋の距離をリアルに再現したものである。また、乳頭筋(41a,41b)の先端は、丸く形成されており、かかる点でも実際の乳頭筋の形状がリアルに再現されている。
図7(2)に示すように、左心房部2の内部空間は広く設けられており、手技トレーニングにおいて、左心房壁2aを切開した後に、弁輪3cに糸かけが行われた状態と同じ状態を再現可能としている。
したがって、左心室部4については、左心室壁4aを含む左心室部全体がポリビニルアルコール樹脂で形成されているが、左心房部2の左心房壁2aは、ポリビニルアルコール樹脂に微細気泡(図示せず)が含まれた材質で形成されている。そのため、左心房壁2aの材質は、左心室壁4aの材質よりも滑り難く、かつ柔軟性が高いため鉗子で摘み易く、実際の左心房壁に類似した質感となっている。
また、僧帽弁部3は、左心室壁4a及び左心房壁2aとは異なり、ポリビニルアルコール樹脂に繊維が含まれた材質で形成され、切離面を引き延ばして縫合することが可能な強度となっている。なお、僧帽弁モデル1の材質としては、ポリビニルアルコール樹脂に限られず、柔軟性、伸縮性等を備えたその他の樹脂素材を用いてもよい。
図8(1)及び(2)に示すように僧帽弁モデル固定治具5は、台座部6及び固定部7から成る。台座部6は、後述する胸腔シミュレータ8に僧帽弁モデル固定治具5を取り付けるための背骨係着機構を備える。具体的には、図10(2)に示す凹部61、図8及び図9に示す凹型係合部62、及び図10(2)に示す凸型係合部63が設けられている。
支持部71とスライド部72は、矢印(9a,9b)に示す方向に25mmずつ摺動自在に固定されている。スライド部72には、ボタン72aが設けられており、支持部71とスライド部72の固定状態を解除することが可能である。すなわち、通常は支持部71とスライド部72は固定されているが、ボタン72aを押下しながら、スライド部72をスライドさせることで、スライド部72の位置を矢印(9a,9b)に示す方向に25mmずつの範囲で自在に変化させることができる。位置調整が完了した状態で、ボタン72aの押下状態を解除すると、支持部71とスライド部72は再度固定される。
図13に示すように、スライド部72とクリップ部73は、ヒンジ部75を介して接続されており、ストッパー74を操作することで、矢印(9c,9d)に示すように、スライド部72からクリップ部73を開閉可能である。また、図12(1)及び(2)に示すように、クリップ部73にはプレート状の凸部73aが設けられており、僧帽弁モデル1を取り付けることが可能な構造となっている。
図14(1)及び(2)に示すように、クリップ部73を開いた状態で、矢印9eに示す方向に、僧帽弁モデル1の貫通孔42を凸部73aに嵌め込むことにより簡単に取り付けることが可能である。
図17に示すように、矢印9fに示す方向に、クリップ部73を閉じて、ストッパー74を留めることで、クリップ部73とスライド部72で僧帽弁モデル1の貫通孔42の下部を挟持できるため、僧帽弁モデル1を安定的に固定できる。また、図16(1)又は図17に示すように、スライド部72には、壁部76が設けられているため、クリップ部73がストッパー74により固定されると、例えば、鉗子等で僧帽弁モデル1を引っ張ったとしても、僧帽弁モデル1が凸部73aから抜け落ちることのない構造となっている。
次に、図18に示すように、胸腔シミュレータ8の下端部82に設けられた貫通孔86から、矢印9gに示す方向に、僧帽弁モデル1が取り付けられた僧帽弁モデル固定治具5を挿入し、背骨部84に僧帽弁モデル固定治具5を取り付ける(ステップS04)。背骨部84の上端部81側には凸型係合部(図示せず)が設けられ、台座部6に設けられた凹型係合部62と係合する構造である。また、背骨部84の下端部82側には凹型係合部(図示せず)が設けられ、台座部6に設けられた凸型係合部63と係合する構造である。
次に、後尖3bにおいて逸脱状態にある箇所を切除する(ステップS12)。切離面を引き延ばして縫合する(ステップS13)。腱索の断裂状態については、乳頭筋及び弁尖に人工腱索(図示せず)を縫い付ける(ステップS14)。弁輪には、人工弁輪(図示せず)を縫い付ける(ステップS15)。
(1)前尖3aと乳頭筋(41a,41b)を人工腱索で繋ぐ手技トレーニング用として、僧帽弁部3の前尖3aに病変が形成された構成としてもよい。かかる場合には、乳頭筋(41a,41b)の素材や左心室部4全体の素材を、繊維が含まれる素材とし、強度を高めてもよい。
(2)僧帽弁モデル固定治具5について、胸腔シミュレータ8に取り付けた状態で、固定部7を水平方向でかつ頭部側に回転可能とし、取り付けた僧帽弁モデル1の向きを調整可能としてもよい。
2 左心房部
2a 左心房壁
3 僧帽弁部
3a 前尖
3b 後尖
3c 弁輪
4 左心室部
4a 左心室壁
5 僧帽弁モデル固定治具
6 台座部
7 固定部
8 胸腔シミュレータ
9a〜9h 矢印
21 左心耳
41a,41b 乳頭筋
42,86 貫通孔
61 凹部
62 凹型係合部
63 凸型係合部
71 支持部
72 スライド部
72a ボタン
73 クリップ部
73a 凸部
74 ストッパー
75 ヒンジ部
76 壁部
81 上端部
82 下端部
83 胸骨部
84 背骨部
85 肋骨部
85a 第1肋間
85b 第2肋間
85c 第3肋間
85d 第4肋間
85e 第5肋間
P 間隔
Claims (8)
- 僧帽弁形成術もしくは僧帽弁置換術の内視鏡下手技のトレーニング用の僧帽弁モデルであって、
前記僧帽弁モデルは、心臓の臓器の質感を再現又はデフォルメしたもので、左心房部、僧帽弁部、左心室部から成り、前記僧帽弁部が外部から視認できず、前記左心房部に覆われており、前記左心房部の形状は、現実の内視鏡下手技におけるスコープ映像に基づきデフォルメされた略球欠形状であることを特徴とする僧帽弁モデル。 - 前記モデルにおいて、前記左心房部と前記左心室部は、共に中空で、下記1)〜3)の少なくとも何れかの状態とされることを特徴とする請求項1に記載の僧帽弁モデル:
1)前記僧帽弁部に設けられた弁尖が逸脱状態、
2)前記僧帽弁部に設けられた弁尖と前記左心室部に設けられた乳頭筋の先端とを繋ぐ腱索が断裂状態、
3)前記僧帽弁部に設けられた弁尖と前記乳頭筋の先端との距離が3〜7mm。 - 前記モデルにおいて、前記左心房部の表層は、心臓の臓器の硬度及び厚みを再現又はデフォルメしたもので、前記手技で用いる器具によって把持及び切開し得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の僧帽弁モデル。
- 前記モデルにおいて、前記質感の再現とは、
前記左心房部を構成する素材に微細気泡が含まれることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の僧帽弁モデル。 - 前記モデルにおいて、前記質感のデフォルメとは、
前記左心室部を構成する素材に微細気泡及び繊維が含まれないことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の僧帽弁モデル。 - 前記モデルにおいて、前記左心室部の下側に、胸腔シミュレータに臓器を固定するための固定治具に取付けるための取付機構が設けられたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の僧帽弁モデル。
- 僧帽弁形成術もしくは僧帽弁置換術の内視鏡下手技のトレーニング用の僧帽弁モデルを取り付け、固定するための固定治具であって、
前記僧帽弁モデルは、心臓の臓器の質感を再現又はデフォルメしたもので、左心房部、僧帽弁部、左心室部から成り、前記僧帽弁部が外部から視認できず、前記左心房部に覆われており、前記左心室部の下側に、胸腔シミュレータに臓器を固定するための固定治具に取付けるための取付機構が設けられ、
前記固定治具は、
前記胸腔シミュレータの内部の背骨部位に係着するための係着機構を備えた台座部と、
前記僧帽弁モデルを固定するための固定部を備え、
前記固定部は、前記僧帽弁モデルを取り付け固定した状態で、前記台座部を前記背骨部位上にスライドさせて固定させた位置から、前記背骨部位の長手方向にスライドさせて更に位置を微調整し得る機構を備えることを特徴とする僧帽弁モデル固定治具。 - 前記固定治具において、
前記固定部は、前記僧帽弁モデルの前記左心房部の正面の外向き方向を、前記背骨部位の長手方向であって頭部へ向かう方向と、その直交方向であって前記胸腔シミュレータの中心から右手側の方向との間で、微調整し得る回転テーブル機構を備えることを特徴とする請求項7に記載の僧帽弁モデル固定治具。
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