JP6733959B2 - 逆浸透複合膜 - Google Patents

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本発明は、カーボンナノチューブを用いた逆浸透複合膜に関するものである。
世界的な水不足と水の汚染に対応するため、逆浸透膜(RO膜)を用いた水処理技術が注目されている。その中でも1nm以下の孔径により塩分などのイオン成分も除去できる芳香族ポリアミドを用いた逆浸透膜が海水淡水化プラントで最も普及している。
逆浸透膜を利用した水処理は、逆浸透膜への汚れの付着によるファウリングによって透過流束が経時的に低下する。そのため、逆浸透膜を定期的に洗浄し、透過流束を回復しなければならない。
また、カーボンナノチューブを用いた逆浸透膜も提案されている(非特許文献1〜3)。しかしながら、いずれの提案も現在市販されている逆浸透膜の性能に及ぶものでは無く、耐ファウリング特性の向上も認められない。
Hee Joong Kim、外7名、「High-Performance Reverse Osmosis CNT/Polyamide Nanocomposite Membrane by Controlled Interfacial Interactions」、ACS Appl. Mater. Interfaces 2014,6,2819−2829 Hee Dae Lee、外3名、「Experimental Evidence of Rapid Water Transport through Carbon Nanotubes Embedded in Polymeric Desalination Membranes」Small,Volume 10, Issue 13, pages 2653−2660, July 9, 2014 Haiyang Zhao、外5名、「Improving the performance of polyamide reverse osmosis membrane by incorporation of modified multi-walled carbon nanotubes」Journal of Membrane Science, 450, 2014,249−256
そこで、本発明の目的は、耐ファウリング特性に優れた逆浸透複合膜を提供することにある。
[適用例1]
本適用例に係る逆浸透複合膜は、
多孔性支持体上に、架橋ポリアミドとカーボンナノチューブとを含む逆浸透膜を設けた逆浸透複合膜であって、
前記逆浸透膜は、カーボンナノチューブの含有量が15質量%以上30質量%以下であり、
クロスフローろ過方式により、温度23℃、10mMの塩化ナトリウム水溶液を操作圧力0.7MPaで、前記逆浸透複合膜に3日間以上供給し、かつ、透過流束の変化率が±5%以内に6時間にわたって維持されるまで供給したときの透過流束を初期透過流束としたとき、
前記塩化ナトリウム水溶液に1000ppmの塩化カルシウム及び100ppmの炭酸水素ナトリウムを投入したpH7.8の被処理水を、温度23℃、操作圧力0.7MPaで、さらに前記逆浸透複合膜に4日間供給したときの透過流束が前記初期透過流束の85
%以上100%以下であることを特徴とする。
[適用例2]
本適用例に係る逆浸透複合膜において、
前記逆浸透膜の算術平均高さ(Sa)が45nm以上80nm以下であることができる。
[適用例3]
本適用例に係る逆浸透複合膜において、
前記逆浸透膜の表面にはカーボンナノチューブが露出していなくてもよい。
[適用例4]
本適用例に係る逆浸透複合膜において、
前記カーボンナノチューブの平均長さが、1μm以上10μm以下であることができる。
[適用例5]
本適用例に係る逆浸透複合膜において、
前記カーボンナノチューブの平均直径が、5nm以上30nm以下であることができる。
本発明に係る逆浸透複合膜によれば、ファウリングによって低下した透過流束を回復することが可能となる。
図1は、逆浸透複合膜100を模式的に示す縦断面図である。 図2は、走査型電子顕微鏡で観察した逆浸透膜104の平滑面を模式的に示す平面図である。 図3は、カーボンナノチューブの最近接距離の分布を示すグラフである。 図4は、逆浸透膜104におけるカーボンナノチューブ110を模式的に示す図である。 図5は、実施例1〜5及び比較例1〜6のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図6は、比較例1のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図7は、比較例2のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図8は、比較例3のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図9は、比較例4のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図10は、比較例5のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図11は、比較例6のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図12は、実施例1のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図13は、実施例2のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図14は、実施例3のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図15は、実施例4のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図16は、実施例5のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図17は、比較例1のサンプルにおける耐有機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図18は、実施例1のサンプルにおける耐有機ファウリング特性を示す透過流束のグラフである。 図19は、比較例1の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(20.0k)である。 図20は、比較例1の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。 図21は、比較例2の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(20.0k)である。 図22は、比較例2の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。 図23は、比較例3の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(20.0k)である。 図24は、比較例3の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。 図25は、比較例4の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(20.0k)である。 図26は、比較例4の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。 図27は、比較例5の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(20.0k)である。 図28は、比較例5の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。 図29は、比較例6の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(20.0k)である。 図30は、比較例6の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。 図31は、実施例1の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(20.0k)である。 図32は、実施例1の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。 図33は、実施例2の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(20.0k)である。 図34は、実施例2の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。 図35は、実施例3の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(20.0k)である。 図36は、実施例3の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。 図37は、実施例4の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(20.0k)である。 図38は、実施例4の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。 図39は、実施例5の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(20.0k)である。 図40は、実施例5の逆浸透膜の表面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。 図41は、比較例1の逆浸透複合膜の割断面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。 図42は、実施例1の逆浸透複合膜の割断面の走査型電子顕微鏡による写真(50.0k)である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
A.逆浸透複合膜
本発明の一実施の形態に係る逆浸透複合膜は、多孔性支持体上に、架橋ポリアミドとカーボンナノチューブとを含む逆浸透膜を設けた逆浸透複合膜であって、前記逆浸透膜は、カーボンナノチューブの含有量が15質量%以上30質量%以下であり、クロスフローろ過方式により、温度23℃、10mMの塩化ナトリウム水溶液を操作圧力0.7MPaで、前記逆浸透複合膜に3日間以上供給し、かつ、透過流束の変化率が±5%以内に6時間にわたって維持されるまで供給したときの透過流束を初期透過流束としたとき、前記塩化ナトリウム水溶液に1000ppmの塩化カルシウム及び100ppmの炭酸水素ナトリウムを投入したpH7.8の被処理水を、温度23℃、操作圧力0.7MPaで、さらに前記逆浸透複合膜に4日間供給したときの透過流束が前記初期透過流束の85%以上100%以下であることを特徴とする。
図1は、逆浸透複合膜100を模式的に示す縦断面図である。
逆浸透複合膜100は、多孔性支持体102上に逆浸透膜104が設けられる。多孔性支持体102は、少なくとも一方の面を逆浸透膜104によって覆われる。逆浸透膜104は、架橋ポリアミド120(以下、架橋芳香族ポリアミドの例について説明するが、これに限られるものではない)とカーボンナノチューブ110とを含む。逆浸透膜104の表面(顕微鏡観察)は、全体が架橋芳香族ポリアミド120によって覆われている。
逆浸透膜104は、架橋芳香族ポリアミド120中に、解繊されたカーボンナノチューブ110を含む。架橋芳香族ポリアミド120がマトリクスとなり、隣接する解繊されたカーボンナノチューブ110の間が架橋芳香族ポリアミド120で満たされている。通常、カーボンナノチューブの原料は、分子間力により互いに接触した集合体の状態にあり凝集塊を形成しているが、この凝集塊から後述する工程によりカーボンナノチューブを解きほぐし、カーボンナノチューブ110は架橋芳香族ポリアミド120内で分散した解繊された状態にされる。架橋芳香族ポリアミド120中でカーボンナノチューブ110が解繊されていることは、逆浸透膜104におけるカーボンナノチューブ110の最近接距離の分布によって確認することができる。
カーボンナノチューブの最近接距離は、走査型電子顕微鏡観察にて、測定することができる。具体的には、逆浸透複合膜100の表面に沿ってクライオミクロトーム法により切断(例えば図1の左側に示す矢印の位置で切断)して逆浸透膜104の表面を平滑面とした薄膜状の試験片を切り出し、この試験片の平滑面(逆浸透膜104)を走査型電子顕微鏡で観察する。
図2は、走査型電子顕微鏡で観察した逆浸透膜104の平滑面を模式的に示す平面図である。図2に示すように、逆浸透膜104の平滑面を走査型電子顕微鏡で観察すると、架
橋芳香族ポリアミド120の中に点在するカーボンナノチューブ110の切断部が見える。図2では、カーボンナノチューブ110の切断部は、黒点で示した。逆浸透膜104においては、カーボンナノチューブの最近接距離は、カーボンナノチューブ表面の間隔ではなく、カーボンナノチューブの切断面の中心間の距離として測定する。
図2を用いて具体的に最近接距離の測定方法を説明する。
まず、図2のような走査型電子顕微鏡で撮影した逆浸透膜104の平滑面の画像をコンピュータに取り込む。
次に、測定者は、コンピュータの画面上にこの画像を表示し、所定面積(測定面積441平方マイクロメートル)にある図2において黒点で示される所定数(20,000)のカーボンナノチューブ110の切断部ごとに画像上の座標を取得する。
次に、近接する所定数の黒点の座標を取得したら、各黒点に最も近い距離にある他の黒点を見出し、その2点間の距離を黒点ごとに求める。例えば、図2におけるカーボンナノチューブ110aの周囲にある複数の黒点の内、カーボンナノチューブ110aの座標に最も近接する位置にある黒点はカーボンナノチューブ110bの座標となり、この2点間の距離がカーボンナノチューブ110aにおける最近接距離Lである。この2点間の距離から最近接距離Lを求める作業を黒点ごとに行う。なお、画像における黒点の座標から最も近い他の黒点の座標を見出す作業、2点間の距離を測定する作業、および最近接距離Lを求める作業は、コンピュータで自動的に解析・処理してもよい。
この測定結果からカーボンナノチューブ110の最近接距離の分布を、横軸を最近接距離(nm)、縦軸を測定点数(頻度)としてプロットしたグラフとして作成する。試験片における測定面積は441平方マイクロメートル、測定点数は20,000である。試験片における測定面積が200平方マイクロメートル以上、測定点数が10,000以上であって、近接するカーボンナノチューブ110を漏れなく測定すれば、カーボンナノチューブ110が解繊されているかを判断可能な分布を得ることができるが、測定面積が400平方マイクロメートル以上、測定点数が20,000以上あれば好適である。
本発明では、逆浸透膜104におけるカーボンナノチューブ110が解繊されているということは、逆浸透膜104におけるカーボンナノチューブ110の最近接距離の分布が逆浸透膜104の厚さの範囲内でピークを示し、そのピークの半値幅が逆浸透膜104の厚さ以下になるということである。
図3を用いてカーボンナノチューブの最近接距離の分布について説明する。図3は、カーボンナノチューブの最近接距離の分布を示すグラフであり、解繊されたカーボンナノチューブを測定した一例である。測定に用いたカーボンナノチューブが解繊した試料(解繊試料)は、後述する製造方法により作製した逆浸透膜(架橋ポリアミド中のカーボンナノチューブの含有量が15.5質量%)から切り出した試験片である。図3に示すように、解繊しているカーボンナノチューブの最近接距離の分布は三角印で示すように逆浸透膜の厚さ(例えば100nm)の範囲内でピークを有する。そして、このピークの半値幅は逆浸透膜の厚さ以下になっている。また、解繊しているカーボンナノチューブの最近接距離の分布は、正規分布である。カーボンナノチューブが十分解繊されておらず、カーボンナノチューブの凝集塊を含む場合には図3に丸印で示すように逆浸透膜の厚さの範囲内で明確なピークを有しておらず、正規分布も示さない。図3に示す例では凝集塊を含みカーボンナノチューブが未解繊の試料(未解繊試料)は、後述する比較例7の条件で作製した逆浸透膜から切り出した試験片である。なお、凝集塊(本願明細書では凝集塊の最大径が50nm以上のものをいう)の内部におけるカーボンナノチューブの間隔は測定できない。
クライオミクロトーム法により切断した場合に、凝集塊を避けて逆浸透膜104が切断されるため、平滑面上に凝集塊を確認できないからである。
図3の測定結果は、図1に示すように逆浸透膜104の表面を平滑面とした薄膜状の試験片を切り出して行ったものであるが、逆浸透膜104の膜厚方向で切断して断面を測定しても、基本的に同じような分布になる。カーボンナノチューブ110は3次元的にほぼ等方に分布しているからである。
解繊したカーボンナノチューブを含む逆浸透膜では、カーボンナノチューブが比較的高い濃度(高い配合割合)で分散しているので、カーボンナノチューブの最近接距離が逆浸透膜の厚さより大きくなることはほとんどない。カーボンナノチューブの最近接距離はほとんど逆浸透膜の膜厚以下となるため、最近接距離の分布におけるピークの半値幅は逆浸透膜の膜厚以下となり、ピークの位置も逆浸透膜の厚さの範囲内になる。
また、カーボンナノチューブが解繊していない場合は、凝集塊が生じているので、凝集塊がない箇所ではカーボンナノチューブの濃度は低くカーボンナノチューブは広く分散している。このため、最近接距離が逆浸透膜の膜厚以上のものもたくさん存在し、図3の未解繊試料のような広がった分布となり、最近接距離が逆浸透膜の膜厚以下になる測定点の数も少ない。
逆浸透膜におけるカーボンナノチューブの最近接距離の分布は、図3のような正規分布であることができる。逆浸透膜におけるカーボンナノチューブが解繊されていると、最近接距離の分布のばらつきが小さくなり、カーボンナノチューブの最近接距離の分布が正規分布を示すからである。ここで正規分布とは、正規分布に近似した分布も含むものとする。また、逆浸透膜におけるカーボンナノチューブの最近接距離の分布は、ポアソン分布またはローレンツ分布であってもよい。
実施例のサンプルを測定した経験から、カーボンナノチューブが解繊したサンプルは最近接距離が平均20nm以上80nm以下、標準偏差σが20nm以上75nm以下で正規分布を示すことがわかっている。
図3に示すようなカーボンナノチューブの最近接距離の分布を示すグラフは、逆浸透膜におけるカーボンナノチューブの濃度が高いとピークがより左側に現れ、逆にカーボンナノチューブの濃度が低いとピークがより右側に現れる。
次に、三次元構造について説明する。図1に示すように、逆浸透膜104中では、解繊されたカーボンナノチューブ110が架橋芳香族ポリアミドを介して三次元構造を形成することができる。三次元構造とは、逆浸透膜104の架橋芳香族ポリアミドの中で、分散したカーボンナノチューブ110が互いに交差する部分で架橋芳香族ポリアミドを介して接続されて三次元に連続する構造をいう。つまり、三次元構造は、カーボンナノチューブ110が三次元的に広がる網状に形成された構造であると言うこともできる。三次元構造におけるカーボンナノチューブ110の表面には架橋芳香族ポリアミドが付着しており、カーボンナノチューブ110同士が接続する部分では、カーボンナノチューブ110同士が自身に付着した架橋芳香族ポリアミドの厚さ分だけ離れて近接している。この三次元構造は、解繊された多数のカーボンナノチューブ110が逆浸透膜104の全体に分散することで、膜の全体に立体的な連続構造を形成する。
次に、分子配向について説明する。図4は、逆浸透膜104におけるカーボンナノチューブ110を模式的に示す図である。逆浸透膜104におけるカーボンナノチューブ110は、その表面を覆う分子配向した架橋芳香族ポリアミド層112を含むことができる。
解繊したカーボンナノチューブ110に接触しまたは近接した架橋芳香族ポリアミドが分子配向すると考えられる。分子配向した架橋芳香族ポリアミド層112がカーボンナノチューブ110を覆うように形成されることで、架橋芳香族ポリアミド層112がカーボンナノチューブ110によって力学的に補強され、カーボンナノチューブ110に対する架橋芳香族ポリアミド層112の剥離強度も向上する。さらに、カーボンナノチューブ110の含有量が多くなれば、カーボンナノチューブ110に接触しまたは近接し分子配向した架橋芳香族ポリアミド層112は、互いに接近しまたは重なり合う。そして、分子配向した架橋芳香族ポリアミド層112の逆浸透膜104全体の中で占める体積が増加し、その結果、逆浸透膜104における力学的強度および耐薬品性が向上する。その結果として、逆浸透複合膜100(図1)が高い脱塩性能を有しながら剥離耐性および耐酸化性を増強することができる。ここで、剥離耐性とは、カーボンナノチューブ110から架橋芳香族ポリアミド層112が剥がれにくいということであり、耐酸化性とは、酸化性塩素によって劣化しにくいということであって耐塩素性のことである。架橋芳香族ポリアミド層112が逆浸透膜104中でカーボンナノチューブと必ず隣接した状態となるためには、例えば平均直径が5nm以上30nm以下のカーボンナノチューブ110であれば10質量%以上の含有量が望ましい。
カーボンナノチューブが、このような含有量の下であれば、逆浸透膜104中において、隣接する架橋芳香族ポリアミド層112の間にある分子配向していない架橋芳香族ポリアミドがわずかに残っていたとしても、分子配向していない部分と、分子配向している架橋芳香族ポリアミド層112とは、一体化しているので力学的に補強されており、膜全体として比較的高い耐塩素性を備えることができると考えられる。
架橋芳香族ポリアミド層112の分子配向は、逆浸透膜104を透過型電子顕微鏡で電子線回析分析することで確認できる。後述する製造方法により作製した逆浸透膜(架橋ポリアミド中のカーボンナノチューブの含有量が15.5質量%)から切り出した試験片で分析したところ、架橋芳香族ポリアミド層112の分子配向が確認できた。
以上の説明から明らかなように、カーボンナノチューブ110の最近接距離Lが逆浸透膜104の厚さの範囲内でピークを有する(図3)ということは、逆浸透膜104のいずれの場所でもカーボンナノチューブ110同士が近接して配置されているということである。近接して配置されたカーボンナノチューブ110同士は分子配向した架橋芳香族ポリアミド層112(図4)によって連結されて逆浸透膜104中に高い力学的強度を有する三次元構造を形成する。カーボンナノチューブ110の周囲を覆う架橋芳香族ポリアミド層112は、カーボンナノチューブ110に対し高い剥離耐性を有していると考えられる。そして、カーボンナノチューブ110と共に分子配向した架橋芳香族ポリアミド層112が逆浸透膜104のほぼ全体に存在するため、架橋芳香族ポリアミドによる脱塩性能を有したまま、耐酸化性(耐塩素性)が増強される。
逆浸透膜104は、カーボンナノチューブ110の凝集塊をほとんど含まないことが望ましい。逆浸透膜104中に凝集塊があると、凝集塊の部分が構造上の欠陥となって膜の強度を損なうことになる。また、多数の凝集塊を有する逆浸透膜104では、凝集塊と隣接する凝集塊との間にはカーボンナノチューブ110が存在しない架橋芳香族ポリアミドだけの領域、特に分子配向していない架橋芳香族ポリアミドの領域が広く存在するため、酸化性塩素による洗浄で劣化しやすい。さらに、多数の凝集塊を有する逆浸透膜104では、凝集塊の内部に架橋芳香族ポリアミドが入り込まないため、脱塩性能が損なわれる。
図1に示す逆浸透膜104は、カーボンナノチューブ110の含有量が15質量%以上30質量%以下であることができる。後述するように、逆浸透膜104におけるカーボンナノチューブ110の含有量が15質量%以上であることで、逆浸透膜104の表面の凹
凸を減らし膜表面の平滑性を向上できる。これにより、逆浸透膜104への汚れの付着が抑制され、また時間経過とともに剥がれ易くなり、逆浸透膜104がファウリングによって低下した透過流束を回復させることができる。透過流束を測定しながら逆浸透膜104の状態を顕微鏡観察(ビデオに録画して観察)することでファウラントが剥がれる様子を観測できる。また、逆浸透膜104におけるカーボンナノチューブ110の含有量が30質量%を超えると、芳香族ポリアミドの含有量が少ないため、支持膜からの逆浸透膜104の剥離が局所的に生じ透水性能や脱塩性能の低下が起きるが、逆浸透膜104におけるカーボンナノチューブ110の含有量が30質量%以下であれば、カーボンナノチューブ110を芳香族ポリアミドで覆うことができ、膜の剥離を抑制し、透水性能、脱塩性能の低下を防ぐことができる。
逆浸透膜104の厚みは、50nm以上1000nm以下であることができ、さらに100nm以上500nm以下であることができる。逆浸透膜104の厚さが50nmであればカーボンナノチューブ110の三次元構造を形成することができ、1000nm以下であれば実用的な透過流束が得られると推測される。
逆浸透複合膜100は、カーボンナノチューブ110の三次元構造による補強効果により耐圧性に優れるため、比較的高い操作圧力でも使用することができる。操作圧力を高くできることは透過流束を高くすることに貢献する。
逆浸透複合膜100は、逆浸透膜104の算術平均高さ(Sa)が45nm以上80nm以下であることができる。さらに、同測定法による逆浸透膜104の算術平均高さ(Sa)が50nm以上75nm以下であることができ、特に55nm以上70nm以下であることができる。逆浸透膜104の算術平均高さ(Sa)が80nm以下であると、例えば無機ファウラントが膜表面から剥がれやすくなり、ファウリングによって低下した透過流束が回復する。逆浸透膜104の算術平均高さ(Sa)が45nm以上であれば、所定量以上のカーボンナノチューブ110を配合することで製造可能である。逆浸透膜104の算術平均高さ(Sa)は、カーボンナノチューブ110を15質量%以上含むことで耐ファウリング特性に影響を与える程度に平滑になる。
算術平均高さ(Sa)は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて測定することができる。算術平均高さ(Sa)は、国際規格(ISO25178)の三次元表面性状パラメータ(表面粗さパラメータ)の1種であり、粗さ(二次元)パラメータである算術平均粗さRaを三次元に拡張したパラメータである。算術平均粗さRaは、JIS B0601−2013に準拠する。
逆浸透膜104の表面にはカーボンナノチューブ110が露出していなくてもよい。カーボンナノチューブは、逆浸透膜104の表面に沿った方向に膜面内で配向し、逆浸透膜104の表面から突出しないことが望ましい。ファウリングによって低下した透過流束を回復させるためである。後述する製造方法のように、アミン成分と解繊されたカーボンナノチューブ110を含む水溶液を用いて逆浸透膜104を製造するため、カーボンナノチューブ110はポリアミドに覆われており、したがってカーボンナノチューブ110は露出していない。また、後述する製造方法のように、多孔性支持体120を、第3水溶液からディップコーター等を用いて膜面が鉛直になるようにゆっくりと引き上げるため、カーボンナノチューブ110が多孔性支持体120の表面に沿って横になった状態になり、逆浸透膜104の面内に配向して存在することになる。すなわち、逆浸透膜104の表面と直交する方向にカーボンナノチューブ110が配向していない。
逆浸透複合膜100によって分離する溶液の種類としては、例えば、高濃度かん水、海水、濃縮海水(淡水化)などがある。
逆浸透複合膜は、例えば、スパイラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームのモジュールに組み込んで、また中空糸は束ねた上でモジュールに組み込んで使用することができる。
逆浸透複合膜100についての、ファウリングによって低下した透過流束の回復については後述する。
A−1.カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは、平均直径(繊維径)が5nm以上30nm以下であることができる。市販されている逆浸透複合膜の厚さが100nm以上500nm以下であるため、カーボンナノチューブは30nm以下の細いものが好ましく、後述する解繊の工程における取り扱いやすさからカーボンナノチューブは5nm以上のものが好ましい。カーボンナノチューブは、平均長さが1μm以上10μm以下であることができる。カーボンナノチューブが短すぎると逆浸透膜の表面から突出する可能性があるからである。10μm以下の長さのカーボンナノチューブであれば、市販されているものを用いることができる。
なお、本発明の詳細な説明においてカーボンナノチューブの平均直径及び平均長さは、電子顕微鏡による例えば5,000倍の撮像(カーボンナノチューブのサイズによって適宜倍率は変更できる)から200箇所以上の直径及び長さを計測し、その算術平均値として計算して得ることができる。
カーボンナノチューブは、その表面における液体との反応性を向上させるために、例えば酸化処理することもできる。
カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面(グラフェンシート)を巻いて筒状にした形状を有するいわゆるカーボンナノチューブであることができ、多層カーボンナノチューブ(MWCNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)であることができる。
平均直径が5nm以上30nm以下のカーボンナノチューブとしては、例えばナノシル(Nanocyl)社のNC−7000などを挙げることができる。
また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブ、気相成長炭素繊維といった名称で称されることもある。
カーボンナノチューブは、気相成長法によって得ることができる。気相成長法は、触媒気相合成法(Catalytic Chemical Vapor Deposition:CCVD)とも呼ばれ、炭化水素等のガスを金属系触媒の存在下で気相熱分解させてカーボンナノチューブを製造する方法である。より詳細に気相成長法を説明すると、例えば、ベンゼン、トルエン等の有機化合物を原料とし、フェロセン、ニッケルセン等の有機遷移金属化合物を金属系触媒として用い、これらをキャリアーガスとともに高温例えば400℃以上1000℃以下の反応温度に設定された反応炉に導入し、浮遊状態あるいは反応炉壁にカーボンナノチューブを生成させる浮遊流動反応法(Floating Reaction Method)や、あらかじめアルミナ、酸化マグネシウム等のセラミックス上に担持された金属含有粒子を炭素含有化合物と高温で接触させてカーボンナノチューブを基板上に生成させる触媒担持反応法(Substrate Reaction Method)等を用いることができる。
平均直径が5nm以上30nm以下のカーボンナノチューブは触媒担持反応法によって
得ることができ、平均直径が30nmを超え110nm以下のカーボンナノチューブは浮遊流動反応法によって得ることができる。
カーボンナノチューブの直径は、例えば金属含有粒子の大きさや反応時間などで調節することができる。平均直径が5nm以上30nm以下のカーボンナノチューブは、窒素吸着比表面積が10m2/g以上500m2/g以下であることができ、さらに100m2/g以上350m2/g以下であることができ、特に、150m2/g以上300m2/g以下であることができる。
A−2.ポリアミド
ポリアミドは、芳香族系のポリアミドであることができる。逆浸透膜におけるポリアミドは、架橋体である。
芳香族系ポリアミドは、芳香族アミン成分を含む。芳香族系ポリアミドは、全芳香族系ポリアミドであることができる。芳香族アミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノアニソール、アミドール、キシリレンジアミン、N−メチル−m−フェニレンジアミンおよびN−メチル−p−フェニレンジアミンからなる群から選択される少なくとも一つの芳香族多官能アミンが好ましく、これらは単独で用いてもよく若しくは2種類以上併用してもよい。
架橋芳香族ポリアミドは、COO、NH4 、及びCOOHからなる群から選択される官能基を有することができる。
逆浸透膜は、カーボンナノチューブを覆う分子配向した架橋芳香族ポリアミドを含むことができる。架橋芳香族ポリアミドは、図4に示すように、カーボンナノチューブ110の表面を覆う架橋芳香族ポリアミド層112を形成する。少なくともカーボンナノチューブ110の表面に隣接する架橋芳香族ポリアミド層112は、その層内で分子配向する。分子配向は、架橋芳香族ポリアミドの微結晶あるいは高分子鎖が一定方向に配列することであり、本明細書では分子配向の傾向を示すものをも含む。分子配向は、例えば、透過型電子顕微鏡における電子線回析法によって確認することができる。電子線回析法によってハローパターンが現れると分子配向しておらず、分子配向がある場合にはハローパターンが分離し環状でないパターンとなり、分子配向が顕著な場合にはスポットが現れる。本明細書では電子線回析法によって分離して環状でないパターンが現れるものも分子配向しているとする。
図4において、カーボンナノチューブ110の直径はD1であり、架橋芳香族ポリアミド層112の厚さがD2である。分子配向している架橋芳香族ポリアミド層112は、カーボンナノチューブ110の表面に1nm以上50nm以下の厚さD2を有することができる。架橋芳香族ポリアミド層112は、カーボンナノチューブ110のπ電子と架橋芳香族ポリアミドのπ電子間のπ−π相互作用に起因して分子配向すると考えられる。カーボンナノチューブ110の周囲に付着した架橋芳香族ポリアミド層112は、酸化性塩素を含む水溶液による洗浄に対して高い耐性を備える。
A−3.多孔性支持体
図1に示す多孔性支持体102は、逆浸透膜104に力学的強度を与えるために設けられる。多孔性支持体102は、実質的には分離性能を有さなくてもよい。
多孔性支持体102は、表面から裏面にわたって微細な孔を有する。多孔性支持体102としては、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、
ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどを用いることができる。ポリスルホンは化学的、機械的、熱的に安定性の高いため、多孔性支持体102に好適である。
A−4.耐無機ファウリング特性
逆浸透複合膜の耐ファウリング特性は、無機ファウラントを用いて透過流束が初期透過流束に比べてどの程度変化したかで判定することができる。逆浸透複合膜の透過流束は、市販の膜テスト装置を用いて測定することができる。膜テスト装置としては、メンブレン・ソルティック社の卓上平膜テストユニットFTU−1等を用いることができる。
まず、初期透過流束(m/m/day)を求める。ファウリングによって透過流束がどの程度低下したかを比較するための基準とするためである。φ25mm(有効面積2.27cm)の逆浸透複合膜のテストセルを膜テスト装置に装着し、クロスフローろ過方式により、温度23℃、10mMの塩化ナトリウム水溶液を操作圧力0.7MPa、流量500mL/minで、逆浸透複合膜に3日間以上供給する。通常、逆浸透複合膜の透過流束は水溶液を供給すると急激に低下し、3日を超えると透過流束が安定する。そして、この透過流束が安定したとき、具体的には透過流束の変化率が±5%以内で6時間にわたって維持されるまで供給したときの透過流束を初期透過流束とする。サンプルによって透過流束が安定するまでの時間に差があるからである。クロスフローろ過方式は、水溶液を逆浸透膜の表面に対し平行に流しながらろ過する方式である。
透過流束の変化率は、透過流束(m/m/day)を1時間ごとに計測し、水溶液を供給したある計測時間の透過流束(JV)と、その計測時間の直後の計測時間における透過流束(JV)との変化率(100・(JV−JV)/JV)である。例えば、初期透過流束を設定したのが水溶液を供給してから4日後(96回計測した時)であれば、第91回目の計測時間〜第96回目の計測時間における透過流束の変化率が±5%以内であったことになる。例えば第95回目と第96回目について説明すると、第95回目の計測時間における透過流束(JV=0.38(m/m/day))と、その計測時間の直後の第96回目の計測時間における透過流束(JV=0.39(m/m/day))との変化率(2.63%)が±5%以内ということである。
次に、初期透過流束を求めた後の逆浸透複合膜に対して、初期透過流束の測定に用いた塩化ナトリウム水溶液に1000ppmの塩化カルシウム及び100ppmの炭酸水素ナトリウムを投入したpH7.8の被処理水を、温度23℃、操作圧力0.7MPa、流量500mL/minで、少なくとも4日間供給する。塩化カルシウムと炭酸水素ナトリウムを海水中の無機ファウラントと擬制するためである。また、上記構成の被処理水はpH7.8である。水素イオン指数(pH)は透過流束に影響するため、所定値に設定することが望ましい。
無機ファウラントを含む被処理水を供給すると、透過流束は著しく低下する。市販の逆浸透複合膜では低下した状態の透過流束を維持することになるが、本実施の形態に係る逆浸透複合膜は3日間〜4日間かけて透過流束が初期透過流束に近づくように回復する。被処理水を4日間供給したときの逆浸透複合膜の透過流束は、初期透過流束の85%以上100%以下である。このように、逆浸透複合膜は透過流束が回復することで、ファウリングによる透過流束の低下を抑制することができる。すなわち、逆浸透複合膜は耐無機ファウリング特性に優れる。
A−5.耐有機ファウリング特性
上記A−4と同様に、初期透過流束を求め、上記A−4における被処理水に代えて、初期透過流束の測定に用いた塩化ナトリウム水溶液に100ppmのウシ血清アルブミン(
BSA)を投入したpH7.5の被処理水を、温度23℃、操作圧力0.7MPa、流量500mL/minで、少なくとも12時間供給する。この間の逆浸透複合膜の透過流束は、初期透過流束の90%以上110%以下である。このように、逆浸透複合膜は透過流束が回復することで、ファウリングによる透過流束の低下を抑制することができる。すなわち、逆浸透複合膜は耐有機ファウリング特性にも優れる。
B.逆浸透複合膜の製造方法
本発明の一実施の形態に係る逆浸透複合膜の製造方法は、カーボンナノチューブ、水およびアミン成分を含む混合液を多孔性支持体に接触させた後、前記多孔性支持体に付着した前記混合液中のアミン成分を架橋反応させることによって逆浸透複合膜を製造する方法において、前記カーボンナノチューブ、水およびアミン成分を含む前記混合液を、前記カーボンナノチューブを含む水溶液を流動させながら加圧し減圧することによって前記カーボンナノチューブを混合する工程を経て作製することを特徴とする。
混合液を得る工程は、例えば、アミン成分を含む第1水溶液と解繊されたカーボンナノチューブを含む第2水溶液とを混合して、アミン成分とカーボンナノチューブとを含む第3水溶液を得る工程を含むことができる。
B−1.第3水溶液を得る工程
第1水溶液は、水とアミン成分を含む。アミン成分としては、上記A−2で説明した芳香族アミンから少なくとも1種を選択できる。
第2水溶液は、水とカーボンナノチューブを含む。第2水溶液は、カーボンナノチューブが解繊された状態で水溶液の全体に均一に分散して存在することができる。第2水溶液は、第1混合工程と第2混合工程とから得られる。
第1混合工程は、容器内に入れた所定量の水とカーボンナノチューブとを手作業で撹拌し、あるいは公知の攪拌機で撹拌することができる。第1混合工程で得られた水溶液は、水中にカーボンナノチューブが粒子状に単独で分布した状態である。従来の逆浸透膜に用いているカーボンナノチューブは、超音波攪拌機などで撹拌されてものであるため、水溶液中に凝集塊が細分化された凝集塊として存在しており、解繊されていない。第1混合工程後、水溶液に対して次の第2混合工程を実施する。
第2混合工程は、第1混合工程で得られたカーボンナノチューブを含む水溶液を流動しながら加圧して水溶液を圧縮した後、水溶液の圧力を解放または減圧して水溶液を元の体積に復元させる工程を含む。第2混合工程は、複数回繰り返し行われる。第2混合工程は、例えば3本ロールを用いることができる。各ロールのロール間隔(ニップ)は0.001mm以上0.01mm以下とすることができる。ここでは3本ロールを用いているが、ロールの数は特に限定されるものでは無く、複数本のロール、例えば、2本ロールを用いてもよく、その場合には、同様のロール間隔で混練することができる。
第2混合工程は、ロールの回転比が1.2以上9.0以下であることができ、さらに3.0以上9.0未満であることができる。ロールの回転比が大きければ、水溶液に剪断力が大きくなり、カーボンナノチューブ同士を引き離す力として作用するからである。ここでいうロールの回転比は、隣り合うロールの回転比である。
第2混合工程は、ロールの周速が0.1m/s以上2.0m/s以下であることができ、さらに0.1m/s以上1.5m/s以下であることができる。ロールの周速が大きければ水溶液であっても弾性を利用した混練が可能となるからである。ここでいうロールの周速は、ロールの表面の速度である。
ロールに供給された水溶液は、ロール間の非常に狭いニップに入り込み、ロールの回転比によって流動しながら加圧され、所定体積が順次ニップに供給され、ニップで圧縮されて体積が減少する。その後、水溶液は、ニップを抜けると、圧力が解放または減圧されて元の体積に復元される。そして、この体積の復元に伴って、カーボンナノチューブは大きく流動し、凝集したカーボンナノチューブがほぐれる。この一連の工程を複数回繰り返し行うことにより、水溶液中のカーボンナノチューブの解繊は進み、第2水溶液を得ることができる。第2混合工程は、例えば、3分間以上10分間以下行うことができる。第2混合工程は、例えば、一連の工程を1回としたとき、10回以上30回以下行うことができる。
また、第2混合工程は、第1混合工程で得られた水溶液の温度を0℃以上60℃以下の範囲で行うことができ、さらに、第2混合工程は、第1混合工程で得られた水溶液の温度を15℃以上50℃以下の範囲で行うことができる。第2混合工程は、水の有する体積弾性率を利用して行うものであるため、なるべく低温で行う方が好ましい。体積弾性率は、ヤング率と比例関係にあり、圧縮率の逆数である。ヤング率は温度の上昇とともに減少し、圧縮率は温度上昇に伴い増加する為、体積弾性率も温度の上昇に伴い減少するからである。したがって、水溶液の温度は、60℃以下とすることができ、さらに50℃以下とすることができる。水溶液の温度は、生産性の観点から、0℃以上とすることができ、さらに15℃以上であることができる。ロールの温度が低いと、例えば、ロールにおける結露の問題が発生するからである。
第2混合工程は、3本ロールなどのロールによる混練に限らず、水溶液の体積を圧縮させた後に復元させることができる混練方法であれば、他の方法を採用することができる。例えば、水溶液を加圧して流動させながら圧縮し、キャビテーションや乱流を発生させた後、急激に減圧する分散装置を用いることが出来る。
第2混合工程において得られた剪断力により、水に高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノチューブがロールに繰り返し通されることによって徐々に相互に分離し、解繊され、水溶液中に分散され、カーボンナノチューブの分散性および分散安定性(カーボンナノチューブが再凝集しにくいこと)に優れる。
また、第2水溶液は、カーボンナノチューブの解繊した状態を維持するために、さらに界面活性剤を含むことができる。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤が挙げられる。例えば、イオン性のアニオン界面活性剤としては、硫酸エステル型、リン酸エステル型、スルホン酸型等が挙げられ、カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型等が挙げられる。また、両性界面活性剤として、アルキルベタイン型、アミドベタイン型、アミンオキサイド型等が挙げられる。さらに、非イオン性界面活性剤として、脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
第3水溶液は、第1水溶液と解繊されたカーボンナノチューブを含む第2水溶液とを混合して得ることができる。第3水溶液は、芳香族アミンが1.0質量%以上3.0質量%以下でカーボンナノチューブが0.11質量%以上1.3質量%以下に調整される。第3水溶液における芳香族アミンが1.0質量%未満であると架橋密度が十分でなく脱塩率が得られにくくなり、3.0質量%を超えると未反応の残留アミンが増え膜から溶出の懸念が高まるため、この範囲にすることが好ましい。また、第3水溶液におけるカーボンナノチューブが0.11質量%未満であるとポリアミド全体に三次元構造が形成されないため耐塩素性が得られにくくなり、1.3質量%を超えると支持膜から架橋芳香族ポリアミド膜の剥離を生じやすくなるため、この範囲にすることが好ましい。
B−2.逆浸透複合膜を得る工程
逆浸透複合膜を得る工程は、上記のようにして得られた第3水溶液を多孔性支持体に接触させた後、多孔性支持体に付着した第3水溶液中の芳香族アミンを架橋反応させる。
第3水溶液は、多孔性支持体に塗布し、含浸させることで接触させる。そののち架橋剤を含む溶液を第3水溶液の上にさらに塗布し、加熱処理して両者の界面で重縮合反応を起こさせて架橋して逆浸透膜を形成する。こうして、上記「A.逆浸透複合膜」で説明した逆浸透複合膜を作成できる。
架橋剤としては、例えば、トリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ビフェニルジカルボン酸クロライドなどの酸クロライド成分を含む有機溶媒溶液を用いることができる。
逆浸透複合膜の用途は、逆浸透膜が優れた耐塩素性を有するので、例えば、海水、灌水脱塩の前処理、食品洗浄水滅菌処理工程、工業用水、家庭用水の前処理滅菌工程などがある。また、逆浸透複合膜の用途は、逆浸透膜が耐汚染性に優れるため、例えば、食品工業排水処理、産業プロセス排水処理、活性汚泥処理水のRO前処理などがある。
本発明は、本願に記載の特徴や効果を有する範囲で一部の構成を省略したり、各実施形態や変形例を組み合わせたりしてもよい。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)実施例1のサンプルの作製(CNT15質量%)
(1−1)多孔性支持体の作製
ポリスルホン13質量%のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(以下「A液」)と、ポリスルホン20質量%のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(以下「B液」)と、を各溶媒および溶質の混合物を攪拌しながら90℃で2時間加熱保持することで調製した。
調製した各液はそれぞれ室温まで冷却し、別々の押出機に供給して高精度濾過した。その後、濾過した各液は二重スリットダイを介し、ポリエチレンテレフタレート繊維からなる長繊維不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1.3cc/cm2/sec)上にA液を110μmの厚みで、B液を90μmの厚みで同時にキャストし、2.8秒後に純水中に浸漬して5分間洗浄することによって多孔性支持体を得た。
(1−2)第3水溶液の作製
m−フェニレンジアミン10gに蒸留水478gを加え、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合して得た第1水溶液488gと、解繊されたカーボンナノチューブを含む第2水溶液12gとを、マグネティックスターラーを用いて撹拌して混合し、m−フェニレンジアミンが2.0質量%でカーボンナノチューブが0.4質量%の第3水溶液500gを得た。
ここで、第2水溶液は、カーボンナノチューブを含む水溶液を流動しながら加圧し減圧することによってカーボンナノチューブを均一に混合する工程を経て作製する。具体的には、第2水溶液は、蒸留水10gに、純水に対して、2gの多層カーボンナノチューブ(ナノシル社製Nanocyl−7000、平均直径10nm(平均直径は、走査型電子顕微鏡の撮像を用いて200か所以上の測定値を算術平均した値))を手作業で撹拌(第1混合工程)した後、ロール直径が50mmの3本ロール(株式会社長瀬スクリーン印刷研究所製EXAKT M−50 I)(ロール温度25以上40℃以下)に投入して、3分間以上10分間以下混練(第2混合工程)して得た。ロール間隔は0.001mm以上0.01mm未満、ロール速度比はV1=1、V2=1.8、V3=3.3、ロール速度V3は周速1.2m/sであった。
(1−3)逆浸透複合膜の作製
30cm多孔性支持体を、第3水溶液中に2分間〜3時間浸漬した後、株式会社アイデン社製ディップコーターDC4300を用いて引上げ速度0.1mm/min〜10mm/minで膜面が鉛直になるようにゆっくりと引き上げた。多孔性支持体の第3水溶液中への浸漬時間が2分間未満であるとカーボンナノチューブが多孔性支持体に十分に取込まれず耐ファウリング特性が得られにくくなり、3時間を超えるとアミンの酸化劣化の懸念が高まる傾向がある。ディップコーターの引上げ速度が0.1mm/min未満であると多孔性支持膜の第3溶液からの引上げに時間がかかり、アミンが酸化劣化する傾向がある。引上げ速度が10mm/minを超えると多孔性支持体から架橋芳香族ポリアミド膜の剥離を生じやすくなる傾向がある。多孔性支持体表面から余分な水溶液がなくなるまで大気中で乾燥した後、トリメシン酸クロリド0.1質量%を含む25℃のn−ヘキサン溶液5mlを膜表面が完全に濡れるように塗布した。1分間静置した後、膜から余分な溶液を除去するために膜面を1分間鉛直に保持して液切りした。その後、45℃の水で2分間洗浄することで、実施例1の逆浸透膜複合膜を得た。
(1−4)カーボンナノチューブ含有量の測定
逆浸透膜内のカーボンナノチューブ含有量の測定には、SII EXSTAR 6000熱分析装置TG/DTA6200を用いた。アルミナパンに逆浸透複合膜をサンプリングし、昇温速度10℃/min、空気雰囲気下でポリアミドとカーボンナノチューブの熱分解開始温度の違いを利用し、カーボンナノチューブ含有量を評価した。実施例1の逆浸透膜には、カーボンナノチューブが15.0質量%含まれていた。
(2)実施例2のサンプルの作製(CNT17質量%)
上記(1−2)の第3水溶液の作製工程以外は実施例1と同様にして実施例2のサンプルを作製した。実施例2では、m−フェニレンジアミン10gに蒸留水476.5gを加え、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合して得た第1水溶液486.5gと、解繊されたカーボンナノチューブを含む第2水溶液(第2水溶液は実施例1と同じ)13.5gとを、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合し、m−フェニレンジアミンが2.0質量%でカーボンナノチューブが0.45質量%の第3水溶液500gを得た。
上記(1−4)と同様に実施例2のサンプルのカーボンナノチューブ含有量の測定を行った。実施例2の逆浸透膜には、カーボンナノチューブが17.0質量%含まれていた。
(3)実施例3のサンプルの作製(CNT20質量%)
上記(1−2)の第3水溶液の作製工程以外は実施例1と同様にして実施例3のサンプルを作製した。実施例4では、m−フェニレンジアミン10gに蒸留水475gを加え、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合して得た第1水溶液485gと、解繊されたカーボンナノチューブを含む第2水溶液(第2水溶液は実施例1と同じ)15gとを、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合し、m−フェニレンジアミンが2.0質量%で
カーボンナノチューブが0.5質量%の第3水溶液500gを得た。
上記(1−4)と同様に実施例3のサンプルのカーボンナノチューブ含有量の測定を行った。実施例3の逆浸透膜には、カーボンナノチューブが20.0質量%含まれていた。
(4)実施例4のサンプルの作製(CNT22質量%)
上記(1−2)の第3水溶液の作製工程以外は実施例1と同様にして実施例4のサンプルを作製した。実施例4では、m−フェニレンジアミン10gに蒸留水472gを加え、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合して得た第1水溶液482gと、解繊されたカーボンナノチューブを含む第2水溶液(第2水溶液は実施例1と同じ)18gとを、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合し、m−フェニレンジアミンが2.0質量%でカーボンナノチューブが0.6質量%の第3水溶液500gを得た。
上記(1−4)と同様に実施例4のサンプルのカーボンナノチューブ含有量の測定を行った。実施例4の逆浸透膜には、カーボンナノチューブが22.0質量%含まれていた。
(5)実施例5のサンプルの作製(CNT25質量%)
上記(1−2)の第3水溶液の作製工程以外は実施例1と同様にして実施例5のサンプルを作製した。実施例5では、m−フェニレンジアミン10gに蒸留水464.5gを加え、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合して得た第1水溶液474.5gと、解繊されたカーボンナノチューブを含む第2水溶液(第2水溶液は実施例1と同じ)25.5gとを、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合し、m−フェニレンジアミンが2.0質量%でカーボンナノチューブが0.75質量%の第3水溶液500gを得た。
上記(1−4)と同様に実施例5のサンプルのカーボンナノチューブ含有量の測定を行った。実施例5の逆浸透膜には、カーボンナノチューブが25.0質量%含まれていた。
(6)比較例1のサンプルの作製(CNT0質量%)
比較例1として、上記第3水溶液と同じポリアミド濃度(カーボンナノチューブを含まない)で製作したポリアミド単体の比較例1のサンプルを得た。
(7)比較例2のサンプルの作製(CNT5質量%)
上記(1−2)の第3水溶液の作製工程以外は実施例1と同様にして比較例2のサンプルを作製した。比較例2では、m−フェニレンジアミン10gに蒸留水486.7gを加え、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合して得た第1水溶液496.7gと、解繊されたカーボンナノチューブを含む第2水溶液(第2水溶液は実施例1と同じ)3.3gとを、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合し、m−フェニレンジアミンが2.0質量%でカーボンナノチューブが0.11質量%の第3水溶液500gを得た。
上記(1−4)と同様に比較例2のサンプルのカーボンナノチューブ含有量の測定を行った。比較例2の逆浸透膜には、カーボンナノチューブが5.0質量%含まれていた。
(8)比較例3のサンプルの作製(CNT9質量%)
上記(1−2)の第3水溶液の作製工程以外は実施例1と同様にして比較例3のサンプルを作製した。比較例3では、m−フェニレンジアミン10gに蒸留水484gを加え、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合して得た第1水溶液494gと、解繊されたカーボンナノチューブを含む第2水溶液(第2水溶液は実施例1と同じ)6gとを、マグネティックスターラーを24用いて撹拌混合し、m−フェニレンジアミンが2.0質量%でカーボンナノチューブが0.2質量%の第3水溶液500gを得た。
上記(1−4)と同様に比較例3のサンプルのカーボンナノチューブ含有量の測定を行った。比較例3の逆浸透膜には、カーボンナノチューブが9.0質量%含まれていた。
(9)比較例4のサンプルの作製(CNT11.5質量%)
上記(1−2)の第3水溶液の作製工程以外は実施例1と同様にして比較例4のサンプルを作製した。比較例4では、m−フェニレンジアミン10gに蒸留水481gを加え、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合して得た第1水溶液491gと、解繊されたカーボンナノチューブを含む第2水溶液(第2水溶液は実施例1と同じ)9gとを、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合し、m−フェニレンジアミンが2.0質量%でカーボンナノチューブが0.3質量%の第3水溶液500gを得た。
上記(1−4)と同様に比較例4のサンプルのカーボンナノチューブ含有量の測定を行った。比較例4の逆浸透膜には、カーボンナノチューブが12.5質量%含まれていた。
(10)比較例5のサンプルの作製(CNT13.0質量%)
上記(1−2)の第3水溶液の作製工程以外は実施例1と同様にして比較例5のサンプルを作製した。比較例5では、m−フェニレンジアミン10gに蒸留水481gを加え、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合して得た第1水溶液491gと、解繊されたカーボンナノチューブを含む第2水溶液(第2水溶液は実施例1と同じ)10.5gとを、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合し、m−フェニレンジアミンが2.0質量%でカーボンナノチューブが0.35質量%の第3水溶液500gを得た。
上記(1−4)と同様に比較例5のサンプルのカーボンナノチューブ含有量の測定を行った。比較例5の逆浸透膜には、カーボンナノチューブが12.5質量%含まれていた。
(11)比較例6のサンプル(CNT0質量%)
比較例6のサンプルは、市販品の日東電工社製RO膜SWC5(製品名)とした。市販品のSWC5は架橋芳香族ポリアミド膜であり、カーボンナノチューブが含まれていなかった。
(12)比較例7のサンプル
比較例7では、カーボンナノチューブ2.0gに蒸留水477.6g、界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.4gを加え、マグネティックスターラーを用いて30分間混合撹拌した。この溶液を超音波処理浴で6時間超音波処理を行って第2水溶液を得た。超音波処理後の第2水溶液に、m−フェニレンジアミン10gを加え、マグネティックスターラーを用いて撹拌混合し、m−フェニレンジアミンが2.0質量%、カーボンナノチューブが0.4質量%、界面活性剤0.08質量%の第3水溶液500gを得た。第3水溶液の作製工程以外は実施例1と同様にして比較例7の逆浸透複合膜のサンプルを作製した。
比較例7のサンプルは、カーボンナノチューブの凝集塊が目視で確認でき、透過流束が12.87m/(m・day)、NaCl阻止率は25%であったことから、逆浸透膜としての機能が実質的に得られていなかったため、後述する耐無機ファウリング特性の測定及び耐有機ファウリング特性の測定は行わなかった。比較例7の逆浸透複合膜は、カーボンナノチューブの凝集塊の部分がNaClを阻止することなく水溶液を通すため、透過流速が高くなり、NaCl阻止率が低下したと考えられる。凝集塊の部分にはほとんど架橋ポリアミドの膜が形成されていないと考えられる。したがって、カーボンナノチューブが解繊されていなければ逆浸透膜として機能し得ないことがわかった。なお、比較例7の透過流束及びNaCl阻止率の測定は、pH7、温度23℃、濃度2,000ppmのNaCl水溶液をクロスフローテストセル装置(TOSC Co.,Ltd., SEP
A CFII)を用いて操作圧力1.55MPaで比較例7の逆浸透膜複合膜に供給し、4時間に渡ってろ過処理を行って測定したものであった。
(13)耐無機ファウリング特性の測定
pH7、温度23℃、濃度10mMのNaCl水溶液をメンブラン・ソルテック製平膜テストユニットFTU−1およびφ25mm(有効面積2.27cm)の評価セルを用いて、クロスフローろ過方式により、操作圧力0.7MPa、流量500mL/minで逆浸透膜複合膜に供給し、1時間ごとの透過水量(g)を測定した。3日間以上ろ過処理を行った。このろ過処理は透過流速の変化率が±5%以内が6時間以上に渡って続くまで行った。このろ過処理により得られた透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)に換算し、初期透過流束(m/(m・day))として求めた。初期透過流束を表1に示した。
また、透過流束の測定とともに初期透過流束を測定したときのNaCl阻止率(脱塩率)も測定した。NaCl阻止率は、供給水及び透過水の電気伝導度を堀場社製電気伝導率計(ES−71)で測定して実用塩分を得て、この実用塩分を換算して得られるNaCl濃度から、次の式によりNaCl阻止率(%)を求めた。
NaCl阻止率(%)=100×{1−(透過水中のNaCl濃度/供給水中のNaCl濃度)}。
同機(FTU−1)を用いて、前記NaCl水溶液に1000ppmの塩化カルシウム及び100ppmの炭酸水素ナトリウムを投入したpH7.8の被処理水を、温度23℃、操作圧力0.7MPa、流量500mL/minで逆浸透膜複合膜に供給し、1時間ごとの透過水量(g)を測定した。この透過水量を、膜面1平方メートルあたり、1日あた
りの透水量(立方メートル)に換算し、透過流束(m/(m・day))として求めた。
耐無機ファウリング特性の測定結果に基づいて、図5に実施例1〜5及び比較例1〜6のサンプルにおける耐無機ファウリング特性を示す透過流束のグラフをまとめて示し、図6〜図16に比較例1〜比較例6及び実施例1〜実施例5のサンプルにおける耐無機ファウリング特性をそれぞれ示す透過流束のグラフを示した。図5では、縦軸を1日当たりに換算した透過流束(初期透過流束とした時点であって被処理水を供給し始めた日を「0日」)とし、被処理水を供給した日数を横軸に示した。図6〜図16では、縦軸が初期透過流束を1.0(100%)としたときの無機ファウラントを含む被処理水を供給後の透過流束の比を示し、横軸は被処理水を供給した日数を示した。
図5に示すように、比較例1〜6のサンプルは、無機ファウラントを含む被処理水を供給直後に初期透過流束から急速に透過流束が低下し、その後も透過流束はその低下した状態のままほとんど変化しなかった。これに対して、実施例1〜5のサンプルは、無機ファウラントを含む被処理水を供給直後に一旦透過流束が低下するが、3日〜4日後には透過流束が初期透過流束の85%(図5では0.85)以上に回復し、特に、実施例1,3においては100%(図5では1.00)となることもあった。これは、無機ファウラントを含む被処理水を供給直後に逆浸透膜の表面に付着していた無機ファウラントが数日間の時間経過とともに、表面から剥がれ落ち流れていったため透過流束が回復したものである。逆浸透膜の表面から無機ファウラントが剥がれ落ち流れる様子は、試験中のサンプルを顕微鏡で観察することで確認できた。
(14)耐有機ファウリング特性の測定
1000ppmの塩化カルシウム及び100ppmの炭酸水素ナトリウムを100ppmウシ血清アルブミン(有機ファウラントとして用いた)に変更した以外は同様に測定した。耐有機ファウリング特性の測定結果に基づいて、図17に比較例1のサンプルにおける耐有機ファウリング特性を示す透過流束のグラフを示した。図18に実施例1のサンプルにおける耐有機ファウリング特性を示す透過流束のグラフを示した。図17及び図18では、測定開始時点(0h)の初期透過流束を1.0(100%)として、有機ファウラントを含む被処理水を供給した経過時間における透過流束の変化の状態を示した。
図17に示すように比較例1のサンプルは初期透過流束の90%前後の透過流束を示したが、図18に示すように実施例1のサンプルは初期透過流束の100%まで回復していた。これは、有機ファウラントを含む被処理水を供給直後に逆浸透膜の表面に付着していた有機ファウラントが時間経過とともに、表面から剥がれ落ち流れていったため透過流束が回復したものである。
(15)電子顕微鏡観察
図19〜図30は、比較例1〜比較例6のサンプルの逆浸透複合膜(逆浸透膜)の表面の走査型電子顕微鏡による写真である。図31〜図40のサンプルの逆浸透複合膜(逆浸透膜)の表面の走査型電子顕微鏡による写真である。いずれのサンプルも逆浸透複合膜の表面を逆浸透膜が覆っていた。図21〜図28及び図31〜図40のサンプルではカーボンナノチューブの凝集塊は確認されず、逆浸透膜の表面にカーボンナノチューブも露出していなかった。図19〜40によれば、比較例1〜比較例6のサンプルの表面よりも実施例1〜5のサンプルの表面の方が凹凸が少なく、比較的平滑な表面を有していた。
図41は、比較例1の逆浸透複合膜100aの凍結割断面の走査型電子顕微鏡による写真である。図42は、実施例1の逆浸透複合膜100の凍結割断面の走査型電子顕微鏡による写真である。図41に示すように、多孔性支持体102の表面は逆浸透膜104aに
よって覆われており、逆浸透膜104aの表面に多数の凹凸が確認できた。図42に示すように、多孔性支持体102の表面は逆浸透膜104によって覆われており、逆浸透膜104の表面には凹凸が少なく、比較的平滑な表面を有していた。
(16)算術平均高さ(Sa)の測定
比較例1〜比較例6及び実施例1〜実施例5のサンプルの逆浸透膜の表面を、原子間力顕微鏡5500AFM/SPM(Agilent Technologies, Inc./東陽テクニカ社製)を用いて、JIS B0601−2013に準拠する算術平均粗さRa(二次元)を三次元表面性状パラメータに拡張したISO25178に準拠した算術平均高さ(Sa)を測定した。測定条件は、探針がSiNカンチレバー(製品名「SI−DF20」、SIIナノテクノロジ社製、材質:SiN、探針の長さ:12.5μm、先端半径:10nm)、走査モードがコンタクトモード、走査範囲が5μm×5μm四方であった。なお、比較例7は、カーボンナノチューブの凝集塊が点在するため、凝集塊の無い部分を走査範囲に設定して測定した。測定結果を表2に示した。
表2に示すように、カーボンナノチューブの含有量が13重量%以下の比較例1〜比較例5のサンプルの逆浸透膜の表面は、算術平均高さ(Sa)が95nm〜120nmと大きく凹凸があって荒れていたのに対し、カーボンナノチューブの含有量が15重量%以上の実施例1〜実施例5のサンプルの逆浸透膜の表面は、55nm(実施例4)〜70nm(実施例1)であって、逆浸透膜の表面は平滑になっていた。この平滑性の改善により、
カーボンナノチューブの含有量が15重量%以上であるときは、逆浸透膜に付着したファウラントが剥がれ易くなり、逆浸透膜のファウリングによって低下していた透過流束が時間経過とともに回復したものである。
100,100a…逆浸透複合膜、102…多孔性支持体、104,104a…逆浸透膜、110…カーボンナノチューブ、112…架橋芳香族ポリアミド層、120…架橋芳香族ポリアミド

Claims (5)

  1. 多孔性支持体上に、架橋ポリアミドとカーボンナノチューブとを含む逆浸透膜を設けた逆浸透複合膜であって、
    前記逆浸透膜は、カーボンナノチューブの含有量が15質量%以上30質量%以下であり、
    クロスフローろ過方式により、温度23℃、10mMの塩化ナトリウム水溶液を操作圧力0.7MPaで、前記逆浸透複合膜に3日間以上供給し、かつ、透過流束の変化率が±5%以内に6時間にわたって維持されるまで供給したときの透過流束を初期透過流束としたとき、
    前記塩化ナトリウム水溶液に1000ppmの塩化カルシウム及び100ppmの炭酸水素ナトリウムを投入したpH7.8の被処理水を、温度23℃、操作圧力0.7MPaで、さらに前記逆浸透複合膜に4日間供給したときの透過流束が前記初期透過流束の85%以上100%以下である、逆浸透複合膜。
  2. 請求項1において、
    前記逆浸透膜の算術平均高さ(Sa)が45nm以上80nm以下である、逆浸透複合膜。
  3. 請求項1または2において、
    前記逆浸透膜の表面にはカーボンナノチューブが露出していない、逆浸透複合膜。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、
    前記カーボンナノチューブの平均長さが、1μm以上10μm以下である、逆浸透複合膜。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において、
    前記カーボンナノチューブの平均直径が、5nm以上30nm以下である、逆浸透複合膜。
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