JP6732217B2 - 炭素繊維またはナノ炭素材料の分離回収方法 - Google Patents

炭素繊維またはナノ炭素材料の分離回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、疎水性物質を含む材料から微細な疎水性物質を分離回収する装置に関する。
炭素繊維またはナノ炭素を含む複合材料(例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP))を粉砕して廃棄もしくはリサイクルする際には、粉砕時に飛散するナノ炭素や短い炭素繊維のナノ・マイクロ粒子を吸入することによる作業者の健康被害が懸念される。その対策として、これらの粒子が空気中に飛散しないように、例えばCFRPから炭素繊維のリサイクルを行う際には、CFRPをウォータージェットにより斫ることで、ナノ・マイクロ粒子が空気中に飛散しないように粉砕処理され、炭素繊維は細断された状態で廃水とともに集められる。その後、この集められた廃水から、細断された炭素繊維を分離回収する必要がある。炭素繊維は、疎水性物質であり、上記廃水を静置すると細断された炭素繊維の一部は水面付近に上がってくるが、大半は水中に滞留した状態のままであり、炭素繊維と水との分離効率は良くなかった。
非特許文献1では、石炭を燃焼する際に生じる灰の一種であるフライアッシュから非燃焼炭素の除去に関してマイクロバブルを用いた研究結果が報告されている。非特許文献1では、マイクロバブル浮上カラム中で非燃焼炭素がマイクロバブルに吸着されて浮上する系が開示されている。この系では、非特許文献1のFigure3に示されるように、空気(Air)をバブル発生器(Bubble generator)に取り込んで、マイクロバブルを発生させている。また、この系の最適条件下においては、フライアッシュから非燃焼炭素を分離除去した場合、非燃焼炭素の除去率が約94%まで向上した実験結果が得られている。このように、非特許文献1には、フライアッシュから非燃焼炭素を効果的に分離して除去することができる技術が開示されている。
しかしながら、非特許文献1で開示された技術は、フライアッシュから非燃焼炭素の分離除去を行う実験系であり、例えば炭素繊維等の疎水性物質を含む複合材料等からナノカーボンや短く切断された炭素繊維(これらを微細炭素と総称する。微細炭素は、一辺が10μm以下の粒子、断片、または粒子凝集体とする。)等の微細な疎水性物質を効率的に分離して回収するために構成されたものではない。そのため、炭素繊維等の疎水性物質を含む複合材料等から微細な疎水性物質を効率的に分離回収することができる技術が求められている。
非特許文献2には、マイクロバブルの応用技術として、マイクロバブルを用いてガラス基板の表面に付着したポリマーインクを洗浄する技術が開示されている。しかし、この技術は上記の課題を解決するために作製されたものではなく、今回の発明に至るまでには装置全体の構成を検討する必要があった。
Y.J.Cao,G.S.Li,J.T.Liu,H.J.Zhang,X.Zhai:Removal of unburned carbon from fly ash using a cyclonic−static microbubble flotation column.The Journal of the Southern African Institute of Mining and Metallugy.2012,Oct.Vol.112,p.891−896 K.Matsuura,S.Ogawa,S.Kasaki,K.Koyama,M.Kodama,S.Yanase:Cleaning polymer ink from a glass substrate using microbubbles generated by a hydrogen bubble method.Separation and Purification Technology.2015,Vol.142,p.242−250
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、炭素繊維等の疎水性物質を含む材料から微細な疎水性物質を効率的に分離回収することができる疎水性物質の分離回収装置を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究し実験を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の炭素繊維またはナノ炭素材料の分離回収方法においては、
炭素繊維またはナノ炭素材料を含む材料から炭素繊維またはナノ炭素材料を分離回収する方法であって、
前記炭素繊維または前記ナノ炭素材料を含む材料の微細物を含む水を収容する容器と、
前記容器の下部に設けられ、前記容器に収容された水を電気分解することにより、前記容器内の下方から微細気泡を発生させる微細気泡発生部と、
前記微細気泡発生部に電気的に接続される直流電源部と、を備え、
直径100nm以上0.1mm以下の前記微細気泡を1cm/sec以下の上昇速度で発生させ、
前記微細気泡を、前記容器に収容された水に分散する微細な前記炭素繊維または前記ナノ炭素材料に吸着させて前記微細気泡の浮力によって前記容器に収容された水の水面近傍に集めるものである。
また、本発明の炭素繊維またはナノ炭素材料の分離回収方法においては、
前記微細気泡発生部は、水平かつ平行に配置された一対の線形状の電極を有し、
前記容器は、前記一対の線形状の電極の電極間距離に対する奥行き方向寸法の比が20以下であるものである。
また、本発明の炭素繊維またはナノ炭素材料の分離回収方法においては、
前記容器は、底面が長方形状である有底角筒状であるとともに、
前記一対の線形状の電極は、前記底面の長手方向に平行に配置され、前記底面の短辺寸法に対する長辺寸法の比が2以上であるものである。
また、本発明の炭素繊維またはナノ炭素材料の分離回収方法においては、
前記電極間距離は、0.1mm以上1cm以下であるものである。
本発明によれば、疎水性物質を含む材料から微細な疎水性物質を効率的に分離回収することができる。
本発明の実施例1に係る疎水性物質の分離回収装置を示す模式図。 実施例1に係る疎水性物質の分離回収装置を用いた際に観察されたMWCNTを示す写真。 容器を観察するためのマイクロスコープを備えた疎水性物質の分離回収装置を示す写真。 実施例2に係る疎水性物質の分離回収装置を用いた際に観察されたMWCNTを示す写真。 (a)は水面に存在した粒子のSEM像(倍率140倍)、(b)は底部に存在した粒子のSEM像(倍率2000倍)。 実施例3に係る疎水性物質の分離回収装置の水面近傍の写真であり、(a)は容器の斜め前方から撮影した写真、(b)は容器の側面方向から撮影した写真。 比較例に係る疎水性物質の分離回収装置において観察された気泡を示す写真。 容器の底面と電極を模式的に示す平面図。 実施例1〜3及び実験1で使用した各容器の底面の寸法と各電極幅を模式的に示す平面図。 酸化チタンをマイクロバブルにより分離させる実験を示す図であり、(a)は通電開始時を示す写真、(b)は通電10分後を示す写真。 炭化ケイ素をマイクロバブルにより分離させる実験を示す図であり、(a)は通電開始時を示す写真、(b)は通電5分後を示す写真。 酸化グラフェンをマイクロバブルにより分離させる実験を示す図であり、(a)は通電開始時を示す写真、(b)は通電10分後を示す写真。 多層カーボンナノチューブをマイクロバブルにより分離させる実験を示す図であり、(a)は通電開始時を示す写真、(b)は通電10分後を示す写真。 多層カーボンナノチューブ(プラズマ処理有り)をマイクロバブルにより分離させる実験を示す図であり、(a)は通電開始時を示す写真、(b)は通電5分後を示す写真。 疎水性カップ積層型カーボンナノチューブをマイクロバブルにより分離させる実験を示す図であり、(a)は通電開始時を示す写真、(b)は通電5分後を示す写真。 カップ積層型カーボンナノチューブをマイクロバブルにより分離させる実験を示す図であり、(a)は通電開始時を示す写真、(b)は通電10分後を示す写真。 親水性カップ積層型カーボンナノチューブをマイクロバブルにより分離させる実験を示す図であり、(a)は通電開始時を示す写真、(b)は通電10分後を示す写真。 炭素繊維をマイクロバブルにより分離させる実験を示す図であり、(a)は通電開始時を示す写真、(b)は通電10分後を示す写真。
次に、発明の実施の形態を説明する。
以下に、本発明に係る疎水性物質の分離回収装置(以下、単に分離回収装置ともいう)について実施例等を用いて具体的に説明する。
また、以下の実施例においては、所定の実験条件において疎水性物質の分離回収装置を実験的に動作させることで微細な疎水性物質を分離回収できることを具体的に説明するが、疎水性物質の分離回収装置の構成を以下の実施例に特に限定するものでない。
なお、微細な疎水性物質とは、直径100μm以下の粒子もしくは最大寸法が100μm以下の断片である。
また、最大寸法とは、形状が球形以外の他の形状である場合は、表面上の2点を結ぶ線分の距離が最大となる線分の距離である。
[分離回収装置の適用例]
本発明に係る疎水性物質の分離回収装置では、疎水性物質を含む材料が粒子状や断片状に微細化されて水に分散した水分散液の状態になる場合に、分離回収装置が適用可能となり、該水分散液から微細な疎水性物質を分離回収可能である。そのような水分散液の具体的な例としては、例えばCFRP等の炭素繊維を含む複合材料を廃棄もしくはリサイクルする場合に、ウォータージェットにより斫った際に発生する炭素繊維を含む廃水が挙げられる。
なお、疎水性物質の分離回収装置が適用可能な上記のような水分散液としては、上述したウォータージェットの廃水のように最初から疎水性物質を含む水分散液として得られるものに限らず、粒子状、粉末状や断片状に微細化されたもの、もしくは、このように微細化可能なものであって、かつ水に分散可能である疎水性物質を含む材料であればよい。このような疎水性物質を含む材料としては、例えば、機械的な粉砕手段により粉砕された疎水性物質を含む粉砕物、疎水性物質を含む粉体(自然に混合されたもの、人為的に混合(配合)されたものを含む)等が挙げられる。これらの疎水性物質を含む粉砕物、疎水性物質を含む粉体は、適量の水を加えて本発明の疎水性物質の分離回収装置に導入して装置を動作させることより疎水性物質を分離回収することができる。また、粉砕体や粉体のような乾燥したものに限らず、疎水性物質を含む水分散液やスラリー(泥漿)として存在するものについても適量(例えば、水の電気分解法により微細気泡を発生させて疎水性物質に吸着可能な程度)の水を加えて本発明の疎水性物質の分離回収装置に導入して装置を動作させるにより疎水性物質を分離回収することができる。
図1に、実施例1に係る疎水性物質の分離回収装置10を示す。
図1に示すように、疎水性物質の分離回収装置10(以下、分離回収装置10ともいう)は、疎水性物質を含む材料から疎水性物質を分離回収する装置である。具体的には、分離回収装置10は、水の電気分解法によって微細気泡であるマイクロバブル(Microbubble:MB)を発生させるマイクロバブル発生装置である。水の電気分解法とは、具体的には、水素気泡法とも呼ばれる。水素気泡法は、水を電気分解すると陽極から酸素が、陰極から2倍の容積の水素が発生することを利用して気泡を得る方法である。マイクロバブルとは、液体(主に水)の中の、微小気泡の総称であり、本実施形態では直径100nm以上0.1mm以下の気泡のことをいう。
分離回収装置10は、底面が略長方形状であり、上端が開放された有底角筒状で縦長の容器1と、容器1の下部に配置される微細気泡発生部2と、直流電源部3とを主に備える。
容器1は、疎水性物質を含む材料の微細物を含む水(以下、単に疎水性物質を含む水分散液ともいう)を収容するための容器である。容器1は、透明な樹脂製(本実施例では、アクリル製)の容器である。容器1は、略長方形状の平坦な底面部1aと、該底面部1aの外周縁から上方に延出される角筒状の角筒部1bとを有する。本実施例における容器1は、平面視おいて長方形状であって、短手方向の寸法(奥行き方向寸法)が10mm、長手方向の寸法が200mmであり、高さ寸法が約200mmである。容器1の内形は、平面視において容器1の長手方向に細長いスリット状に形成されている。容器1は、透明であるため目視により容器1内における疎水性物質と水との分離状態を確認することができる。
ここで、微細物とは、粒子、粉末、断片、シート片等の微細な状態のものを意味し、特に形状を限定するものではない。
なお、容器1の平面視において、長方形状の底面部1aの短辺部分に平行な方向を短手方向と呼び、底面部1aの長辺部分に平行な方向を長手方向と呼ぶ。
微細気泡発生部2は、容器1の角筒部1bの下部に設けられ、容器1に収容された水を電気分解することにより、容器1内の下方から微細気泡であるマイクロバブルを発生させる部分である。微細気泡発生部2は、水平かつ平行に配置された線形状の一対の電極を有する。微細気泡発生部2は、直流電源部3に電気的に接続される金属製の一対の電線である陽極2a及び陰極2bを有する。陽極2a及び陰極2bは、各両端が角筒部1bの短手方向の中心を挟んで配置される。陽極2a及び陰極2bは、底面部1aの長手方向に平行に配置される。また、陽極2a及び陰極2bは、容器1内において底面部1aの上面近傍に配置され、角筒部1bの長手方向の両端間に亘って同一高さ位置に水平に支持されている。陽極2a及び陰極2bは、短手方向に所定の電極間距離(以下、電極幅Dという。本実施例では、2mm)を有して平行に配置されている。本実施例における微細気泡発生部2では、陰極2bに直径60μmのタングステン線、陽極2aに直径1mmのステンレス線を用いている。微細気泡発生部2は、容器1内に疎水性物質を含む水分散液が収容された場合、水中に一対の電線である陽極2a及び陰極2bが水平に張られた状態に保持される。
直流電源部3は、微細気泡発生部2が有する陽極2a及び陰極2bに電気的に接続され、陽極2aと陰極2bとの間に所定の電圧を印加するための直流電源を有する。直流電源部3は、図示しない電圧調整手段を有し、該電圧調整手段により陽極2aと陰極2bとの電極間に印加する電圧を所定の範囲で調整可能である。
以上のように構成された実施例1に係る疎水性物質の分離回収装置10を用いて疎水性物質を含む材料から疎水性物質を分離回収できることを確認するために、模擬的に微細な疎水性物質を含む分離回収試験用水分散液を調製した。本実施例における分離回収試験用水分散液は、1wt%の多層カーボンナノチューブ(MWCNT:Multi Wall Carbon Nanotube、Shenzhen Nanotech Port Co.Ltd製)のDMF分散液8mLと、TOYO PEARL:DEAE−650(東ソー社製)のエタノール分散液8mLとを1.6Lの水道水に混合して調製した。本実施例における分離回収試験用水分散液は、疎水性物質を含む材料として、微細炭素であるMWCNTを含む複合材料を想定し、この複合材料を粉砕した際に発生する粉砕物(微細物)が水に分散した状態を模擬的に調製したもので、微細な疎水性物質をMWCNT、複合材料を粉末状の親水性材料であるTOYO PEARL:DEAE−650としたものある。その後、この分離回収試験用水分散液を容器1に収容した状態で、陽極2aと陰極2bとの電極間に30Vの直流電圧を印加した。陽極2aと陰極2bとの電極間に所定の電圧を印加した場合、水の電気分解により陰極2bからは水素マイクロバブル、陽極2aからは酸素マイクロバブルが発生する。この電圧印加を10分間行うことによって、陽極2a及び陰極2bで発生したマイクロバブルは、浮力により上昇しながら、水に分散する微細な疎水性物質であるMWCNTに吸着し、マイクロバブルの浮力によりMWCNTが水面近傍に到達した。こうして、マイクロバブルによりMWCNTが容器1に収容された水分散液の水面近傍に集められる。分離回収装置10では、容器1の長手方向の両端の部分のみに対流が少し発生する程度であったため電圧印加の10分後に図2の四角枠部分に示すように水面近傍に凝集するMWCNTが観察された。こうして、水面近傍に凝集したMWCNTは、容易に回収可能となる。
また、本実施例における水素及び酸素のマイクロバブルの直径は、その直径の中心値が50μmであり、直径の分布が10−100μmであることをマイクロスコープ(図3参照)を用いた観察により確認した。図3に示すように、分離回収装置10の容器1に対向してマイクロスコープ4を配置することにより、マイクロスコープ4を用いてマイクロバブルのサイズやマイクロバブルが疎水性物質に吸着した様子を確認することができる。
また、分離回収装置10では、容器1の奥行き方向である短手方向の寸法が容器1の長手方向の寸法よりも小さい形状であり、扁平な形状に形成されている。このように奥行き方向寸法が狭くなるように構成された扁平な容器1の場合には、水の電気分解法によるマイクロバブルの存在しない側(容器1の長手方向の両端近傍側)では疎水性物質の分離を阻害するような速度の大きい対流が起こりにくく、マイクロバブルによって浮上してきたMWCNTが水面近傍に安定して留まり易くなる。なお、水の対流と容器形状との関連性については後述する。
図4に、実施例2に係る疎水性物質の分離回収装置20を示す。
図4に示すように、疎水性物質の分離回収装置20(以下、分離回収装置20ともいう)は、疎水性物質を含む材料から疎水性物質を分離回収する装置である。具体的には、分離回収装置20は、水の電気分解法によってマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置である。
分離回収装置20は、上端が開放された有底略円筒状の容器21と、容器21の下部に配置される微細気泡発生部22と、直流電源部3とを主に備える。
なお、実施例2に係る分離回収装置20においては、容器の形状、大きさ、電極幅Dが実施例1と異なるのみであり、分離回収装置20が備える微細気泡発生部22は、実施例1の分離回収装置10が備える微細気泡発生部2と同じ機能を有するものである。直流電源部3は、図4に図示していないが、実施例1と同じものである。
容器21は、疎水性物質を含む水分散液を収容するための容器である。容器21は、透明な樹脂製(本実施例では、PET(ポリエチレンテレフタレート)製)の容器である。容器1は、飲料用ペットボトル(500ml)の上部を取り除いて作製したものであり、ペタロイド形状の底部21aと、該底部21aの上端縁から上方に延出される円筒状の円筒部21bとを有する。本実施例における容器21は、平面視において円形状であって、円筒部21bの直径が60mmであり、高さ寸法が約120mmである。容器21は、透明であるため目視により容器21内における疎水性物質と水との分離状態を確認することができる。
微細気泡発生部22は、容器21の下部(容器21の底部21aの上端近傍)に設けられ、容器21に収容された水を電気分解することにより、容器21内の下方から微細気泡であるマイクロバブルを発生させる部分である。微細気泡発生部22は、水平かつ平行に配置された線形状の一対の電極を有する。微細気泡発生部22は、直流電源部3に電気的に接続される金属製の一対の電線である陽極22a及び陰極22bを有する(図9(b)参照)。陽極22a及び陰極22bは、容器21内において底部21aの上端近傍に配置され、円筒部21bの直径方向の両端間に亘って同一高さ位置に水平に支持されている。陽極22a及び陰極22bは、所定の電極間距離(電極幅D=3mm)を有して平行に配置されている。本実施例における微細気泡発生部22では、実施例1と同様に、陰極22bに直径60μmのタングステン線、陽極22aに直径1mmのステンレス線を用いている。微細気泡発生部22は、容器21内に疎水性物質を含む水分散液が収容された場合、水中に一対の電線である陽極22a及び陰極22bが水平に張られた状態に保持される。
直流電源部3は、微細気泡発生部22が有する陽極22a及び陰極22bに電気的に接続され、陽極22aと陰極22bとの間に所定の電圧を印加するための直流電源を有する。直流電源部3は、図示しない電圧調整手段を有し、該電圧調整手段により陽極22aと陰極22bとの電極間に印加する電圧を所定の範囲で調整可能である。
以上のように構成された実施例2に係る疎水性物質の分離回収装置20を用いて疎水性物質を含む材料から疎水性物質を分離回収できることを確認するために、模擬的に微細な疎水性物質を含む分離回収試験用水分散液を調製した。本実施例における分離回収試験用水分散液は、5mm以下の直径を有するシリカ粒子(トクヤマ製、エクセリカ:UF−320)0.2gと、1wt%MWCNTのDMF分散液2mLと、及びTOYO PEARL:DEAE−650(東ソー社製)のエタノール分散液2mLとを0.2Lの水道水に混合して調製した。本実施例における分離回収試験用水分散液は、疎水性物質を含む材料として、微細炭素であるMWCNTを含む複合材料を想定し、この複合材料を粉砕した際に発生する粉砕物(微細物)が水に分散した状態を模擬的に調製したもので、微細な疎水性物質をMWCNT、複合材料を粉末状の親水性材料である上記シリカ粒子及びTOYO PEARL:DEAE−650としたものある。その後、この分離回収試験用水分散液を容器21に収容した状態で、陽極22aと陰極22bとの電極間に30Vの直流電圧を印加した。陽極22aと陰極22bとの電極間に所定の電圧を印加した場合、水の電気分解により陰極22bからは水素マイクロバブル、陽極22aからは酸素マイクロバブルが発生する。この電圧印加を10分間行うことによって、陽極22a及び陰極22bで発生したマイクロバブルは、浮力により上昇しながら、水に分散する微細な疎水性物質であるMWCNTに吸着し、マイクロバブルの浮力によりMWCNTの大半が水面近傍や液の上層部に到達した(図4の四角枠部分を参照)。こうして、マイクロバブルによりMWCNTが容器21に収容された水分散液の水面近傍に集められる。また、図4に示すように、水分散液の中層部は、茶色に混濁した混濁液の状態となり、水分散液の下層部にはシリカ粒子の大半が沈降していた。具体的には、本実施例では、微細炭素であるMWCNTは水分散液の上方に移動するが、直径0.1mm程度の親水性材料であるシリカ粒子は沈降した(図4に矢印で示す混濁液部分)。図4における水面と底部に存在した粒子のSEM像を図5(a)、(b)にそれぞれ示す。こうして、水面近傍に集まったMWCNTは、容易に回収可能となる。
図6に、実施例3に係る疎水性物質の分離回収装置30を示す。
図6に示すように、疎水性物質の分離回収装置30(以下、分離回収装置30ともいう)は、疎水性物質を含む材料から疎水性物質を分離回収する装置である。具体的には、分離回収装置30は、水の電気分解法によってマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生装置である。
分離回収装置30は、上端が開放された有底角筒状の容器31と、容器31の下部に配置される微細気泡発生部22と、直流電源部3とを主に備える。容器31は、底面の一辺の長さが125mm四方の略正方形状である(図9(c)参照)。直流電源部3は、図6に図示していないが、実施例1と同じものである。
なお、実施例3に係る分離回収装置30はにおいては、容器の形状や大きさが実施例2と異なるのみであり、分離回収装置30の容器31の形状及びその容器サイズに対応して微細気泡発生部22の陽極22a(直径1mmのステンレス線)の長さ、及び陰極22b(直径60μmのタングステン線)の長さを変更したものであり、その他の構成は実施例2に係る分離回収装置20と同じであるため同じ符号を付して、その説明を省略する。
以上のように構成された実施例3に係る疎水性物質の分離回収装置30を用いて疎水性物質を含む材料から疎水性物質を分離回収できることを確認するために、摸擬的に微細な疎水性物質を含む分離回収試験用水分散液を調製した。本実施例における分離回収試験用水分散液は、1wt%の多層カーボンナノチューブ(MWCNT:Multi Wall Carbon Nanotube、Shenzhen Nanotech Port Co.Ltd製)のDMF分散液8mLと、TOYO PEARL:DEAE−650(東ソー社製)のエタノール分散液8mLとを1.6Lの水道水に混合して調製した。本実施例における分離回収試験用水分散液は、実施例1における分離回収試験用水分散液と同じものである。その後、この分離回収試験用水分散液を容器31に収容した状態で、陽極22aと陰極22bとの電極間に30Vの直流電圧を印加した。陽極22aと陰極22bとの電極間に所定の電圧を印加した場合、水の電気分解により陰極22bからは水素マイクロバブル、陽極22aからは酸素マイクロバブルが発生する。この電圧印加を10分間行っても、容器31内の液中で対流が起こり、液の上層部ではMWCNTだけでなくビーズ状のTOYO PEARL:DEAE−650も混在していることが観察された(図6(b)の四角枠部分を参照)。分離回収装置30の容器31の形状では、対流の影響が大きくなり、疎水性物質であるMWCNTのみを分離することができなかった。なお、水の対流と容器形状との関連性については後述する。
比較例
(エアーポンプを用いた実験例)
次に、比較例として、水の電気分解によるマイクロバブルの代わりに市販のエアーポンプによる気泡を用いる疎水性物質の分離回収装置を作製し、上記各実施例の水の電気分解によるマイクロバブルを用いた疎水性物質の分離回収装置との違いを検証した。
図7に、比較例に係る疎水性物質の分離回収装置40を示す。
図7に示すように、疎水性物質の分離回収装置40(以下、分離回収装置40ともいう)は、エアーポンプによって水中に空気を送りこむことで気泡を発生される気泡発生装置である。
分離回収装置40は、上端が開放された有底円筒状の透明な容器41と、市販のエアーポンプ42とを備える。分離回収装置40は、容器41に水分散液を収容した状態で、容器41内の下方に配置されたエアーポンプ42が有するエアー供給部から空気を水中に供給して直径数mm程度の気泡を発生させることができる。具体的には、分離回収装置40は、図7に示すように直径1〜2mm程度の気泡を発生させ、上昇速度1cm/sec程度で上昇させることができる。
以上のように構成された比較例に係る疎水性物質の分離回収装置40を用いて疎水性物質を含む材料から疎水性物質を分離回収できるかを確認するために、摸擬的に微細な疎水性物質を含む分離回収試験用水分散液を調製した。本比較例における分離回収試験用水分散液は、実施例1と同じものを調製して用いた。その後、容器41に収容した分離回収試験用水分散液に対して、エアーポンプ42により空気を供給して直径数mmの気泡を発生させた。その際には、気泡がMWCNTに吸着せずに水中で対流が起こり、水面にMWCNTが浮かび上がることは無かった。このことから、MWCNT等の微細な疎水性物質に対しては、上述したような気泡のサイズと上昇速度ではうまく疎水性物質に気泡を吸着させることができないことが確認できた。この結果から、疎水性物質に気泡を吸着させて浮上させるためには、直径1mm以下の気泡を1cm/sec以下の上昇速度で発生させることが必須な条件であると考えられる。この点から考えると、上述した水素気泡法で作られたマイクロバブルは、この条件を満たすものである。
これらの結果から考えると、速度の大きい対流を抑制するにあたっては、電極幅Dと電極の断面方向の寸法である容器の奥行き方向寸法Wとの比、及び各容器サイズ(幅方向寸法L、奥行き方向寸法W)が本発明の要件を満たすために重要なファクターとなると考えられる(図8参照)。図9(a)〜(c)に実施例1〜3で用いた各容器の電極部分と容器底面図(図9(b)は、容器21の円筒部21bの底面図)を示す。電極幅(陽極と陰極との電極間距離)Dに対する容器の奥行き方向寸法Wの比を調べると、図9に示すように、実施例1ではW/D=10/2=5、実施例2ではW/D=60(奥行き方向最大寸法)/3=20、実施例3ではW/D=125/3=41.6となる。このように算出した比と上述した各実施例の結果から、電極幅Dに対する容器の奥行き方向寸法の比が20以下の容器を用いた際には、対流の影響を抑えることができ、実施例1、2の結果が示すようにMWCNT等の微細な疎水性物質が水面に留まり易くなる。従って、電極幅Dに対する容器の奥行き方向寸法Wの比(W/D)は、20以下が好ましい。
[容器の形状について]
実施例3の結果が示すように、容器の底面形状が正方形状であると、対流の影響が大きくなり、マイクロバブルによって水面に浮上した疎水性物質が再び水中へ沈むことになる。そのため、対流の影響を少なくするために、容器の形状は、底面が略長方形状であるとともに当該底面の長手方向に平行に電極が配置されるとともに、該底面の短辺寸法に対して長辺寸法の比が2以上であることが好ましい。すなわち、容器の底面形状は、図8に示すように、容器の幅方向寸法をL、奥行き方向寸法をWとすると、L/W≧2であることが好ましい。
なお、容器形状については、長方形状に限らず、楕円状やオーバル状であってもよい。
[電極幅(陽極と陰極との電極間距離)Dについて]
電極幅Dは、0.1mm以上1cm以下であることが好ましい。電極幅Dが0.1mm未満になると、電極同士が接して短絡し、マイクロバブルが発生しない場合がある。電極幅Dが1cmよりも大きくなると印加電圧が大きくなり、消費電力が増えてしまい好ましくない。
なお、水道水を用いる場合、水道水の低い導電性でも容易に通電可能となるように電極幅Dは、0.5mm以上0.5cm以下であることが好ましい。
[電極の直径]
陰極や陽極の直径を変えることにより、マイクロバブルの直径を変えることも可能である。
例えば、陰極の直径は、水素マイクロバブルの発生し易さを考慮して、タングステン線を用いる場合、0.05mm以上0.2mm以下が好ましく、より好ましくは、0.059mm以上0.11mm以下である。
例えば、陽極の直径は、酸素マイクロバブルの発生のし易さを考慮して、ステンレス線を用いる場合、0.5mm以上1.5mm以下が好ましく、より好ましくは、0.9mm以上1.1mm以下である。
また、本実施形態では、水の一例として水道水を用いているが特に限定するものではない。容器に収容される水分散液を構成する水としては、導電性を有する水であればよく、井戸水、海水、河川水などの自然界の水や所定の導電性を有するように電解質を添加した水等、広く適用可能である。
[実験1:マイクロバブルを用いた物質サンプルの分離上昇実験]
本実験では、マイクロバブル(Microbubble:MB)を用いて水に所定の物質を分散させた水分散液から当該物質を分離する際、この物質が有する表面物性の違いによって物質の浮上分離特性の違いを見出すことを目指した。浮上分離特性が良好な物質は、本発明に係る疎水性物質の分離回収装置により分離回収可能となるものである。
図10に、本実験で用いた疎水性物質の分離回収装置50を示す。
図10に示すように、疎水性物質の分離回収装置50(以下、分離回収装置50ともいう)は、疎水性物質を含む材料から疎水性物質を分離回収する装置である。具体的には、分離回収装置10は、水の電気分解法によってマイクロバブル(Microbubble:MB)を発生させる簡易型のマイクロバブル発生装置である。
分離回収装置50は、上端が開放された有底角筒状で縦長の容器51と、容器51の下方に配置される微細気泡発生部52と、直流電源部3とを主に備える。
なお、本実験で用いた分離回収装置50においては、容器の形状、大きさが実施例1と異なるのみであり、分離回収装置50が備える微細気泡発生部52は、実施例1の分離回収装置10が備える微細気泡発生部2と同じ機能を有するものである。直流電源部3は、図10〜18に図示しないが、実施例1と同じものである。
容器51は、疎水性物質を含む水分散液を収容するための容器である。容器51は、透明な樹脂製(本実施例では、アクリル製)の容器である。容器51は、長方形状の平坦な底面部51aと、該底面部51aの外周縁から上方に延出される角筒状の角筒部51bとを有する。本実験における容器51は、平面視おいて長方形状であって、短手方向の寸法(奥行き方向寸法)が10mm、長手方向の寸法が30mmであり、高さ寸法が約200mmである。容器51の内形は、平面視において容器51の長手方向に細長いスリット状に形成されている。容器51は、透明であるため目視により容器51内における物質と水との分離状態を確認することができる。
なお、容器51の平面視において、長方形状の底面部51aの短辺部分に平行な方向を短手方向と呼び、底面部51aの長辺部分に平行な方向を長手方向と呼ぶ。
微細気泡発生部52は、容器51の角筒部51bの下部に設けられ、容器51に収容された水を電気分解することにより、容器51内の下方から微細気泡を発生させる部分である。微細気泡発生部52は、直流電源部3に電気的に接続される金属製の一対の電線である陽極52a及び陰極52bを有する(図9(d)参照)。陽極52a及び陰極52bは、各両端が角筒部51bの短手方向の中心を挟んで配置される。また、陽極2a及び陰極2bは、容器1内において底面部51aの上面近傍に配置され、角筒部51bの長手方向の両端間に亘って同一高さ位置に水平に支持されている。陽極52a及び陰極52bは、短手方向に所定間隔(電極幅D=2mm)離間して平行に配置されている。本実験における微細気泡発生部52では、陰極52bに直径100μmのタングステン線、陽極52aに直径1mmのステンレス線を用いている。微細気泡発生部52は、容器51内に物質サンプルを含む水分散液が収容された場合、水中に一対の電線である陽極52a及び陰極52bが水平に張られた状態に保持される。
以上のように構成された疎水性物質の分離回収装置50を用いて各種の粉体状または液体状の物質を分離浮上できるかどうかを確認するために、各種物質の分離浮上試験用水分散液を調製した。その後、各分離浮上試験用水分散液を容器51に収容した状態で、陽極52aと陰極52bとの電極間に20Vの直流電圧を印加した。陽極52aと陰極52bとの電極間に電圧を印加した場合、水の電気分解により陰極52bからは水素マイクロバブル、陽極2aからは酸素マイクロバブルを発生させた。その後、所定時間において各種物質の分離浮上の様子を観察した。実験条件の詳細については、以下に記載する。
なお、以下の各物質サンプルは、各物質の粉体を水やアルコール等の分散液の状態に作製したものである。
実験条件:
物質サンプル)
分散液1:酸化チタン
分散液2:炭化ケイ素
分散液3:酸化グラフェン
分散液4:多層カーボンナノチューブ(MWCNT、プラズマ処理無し)
分散液5:多層カーボンナノチューブ(プラズマ処理有り)
分散液6:疎水性カップ積層型カーボンナノチューブ(疎水性CS−CNT)
分散液7:カップ積層型カーボンナノチューブ(CS−CNT)
分散液8:親水性カップ積層型カーボンナノチューブ(親水性CS−CNT)
分散液9:炭素繊維
上記各分散液3mLに水道水27mLを加えて計30mLの液とし、この液から3mL採取し、この採取した3mLの液に浄水27mLを加えて水分散液を調製した。容器51に各物質サンプルを含む水分散液を0.3mLを収容し、マイクロバブルを発生させて様子を観察した。観察時間については、物質の浮上速度が速いサンプルは5分、それ以外は10分とした。
[実験1の結果]
図10〜18に、各物質サンプルについて通電開始時及び通電後を観察した写真を示す。
酸化チタン:通電10分後、分離上昇は見られなかった(図10参照)。
炭化ケイ素:通電5分後、分離上昇が観察された(図11参照)。
酸化グラフェン:通電10分後、全く分離が見られなかった(図12参照)。
多層カーボンナノチューブ(プラズマ処理無し):通電10分後、分離上昇が観察された(図13参照)。
多層カーボンナノチューブ(プラズマ処理有り):通電5分後、分離上昇が観察されたけれども、プラズマ処理してない多層カーボンナノチューブと比較すると反応は遅かった(図14参照)。
疎水性カップ積層型カーボンナノチューブ:通電5分以内に分離上昇が観察された(図15参照)。
カップ積層型カーボンナノチューブ:通電5分後、分離上昇は現れたが、疎水性カップ積層型カーボンナノチューブと比較すると反応は遅かった(図16参照)。
親水性カップ積層型カーボンナノチューブ:上記の二つのカップ積層型カーボンナノチューブと比較すると反応が最も遅かったが、通電10分後、分離上昇が観察された(図17参照)。
炭素繊維:通電3分以内に分離上昇が観察された(図18参照)。
以上の各物質サンプルにおける上昇の有無と水に対する分散性のまとめを表1に示す。
上記実験1の結果と各物質の水に対する分散性を示した表1より、水に対する分散性を考慮すると、水に対する分散性が低いほど分離上昇しやすい可能性があると思われる。マイクロスコープによる直接観察の結果としては、水に対する分散性が低い物質は、マイクロバブルの吸着によって浮上するとともに、分離回収装置50の容器51の中で発生した対流によっても浮上してくることが確認できた。
[実験2:樹脂の違いによるマイクロバブルの吸着と浮上について]
実施例1に係る疎水性物質の分離回収装置10(図1参照)を用いて、種々の樹脂シート片を水道水に入れて、かき混ぜて容器1内に入れる樹脂シートの水分散液として調製した。本実験では、以下の各樹脂からなるシート片を用いて各樹脂シート片が分散する水分散液を容器1に収容した状態で、陽極2aと陰極2bとの電極間に15Vの直流電圧を印加した。陽極2aと陰極2bとの電極間に15Vの電圧を印加し、水の電気分解により陰極2bからは水素マイクロバブル、陽極2aからは酸素マイクロバブルを発生させて、樹脂シート片に対してマイクロバブルの吸着及び浮上が起こるかを確認した。すなわち、マイクロバブルによって樹脂シート片が分離可能であるかどうかの確認を行った。以下に、実験に用いた樹脂とそのサイズ及び形状を示す。
ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂:厚さ0.1mm、直径2mmの円形状
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂:厚さ0.1mm、直径1mmの円形状
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂:厚さ0.1mm、幅1mm、長さ5mmの短冊状
[実験2の結果]
実験2の結果として、PET樹脂の場合は、マイクロバブルの吸着が観察されなかった。PMMA樹脂の場合は、マイクロバブルの浮力で上昇したが、マイクロバブルの吸着が観察されなかった。短冊状のPEEK樹脂においては、マイクロバブルの吸着と浮上が観察された。本実験で用いたPEEK樹脂の水に対する接触角を計測したところ、70度であった。従って、水に対する接触角が70度以上の樹脂ではマイクロバブルの吸着とその吸着に伴う浮上が可能であり、本発明に係る疎水性物質の分離回収装置により分離回収可能であると考えられる。
また、本発明における疎水性物質とは、疎水性の表面を有する物質のことであり、具体的には、水に対する接触角が70度以上の物質をいう。水に対する接触角が70度以上の物質としては無機材料(無機物質)、有機材料において多種挙げられるが、例えば、無機材料では、炭素繊維、カーボンナノチューブ(接触角140度程度)等が挙げられる。一方、有機材料では上記PEEKの他、ポリエチレン、ポリプロピレン、種々のフッ素樹脂等が挙げられる。また、疎水性物質は、その表面が疎水性を有していれば、疎水性物質の基材自体は疎水性でなくても構わない。無機材料や有機材料において、水に対する接触角が70度以上の物質であれば、マイクロバブルが吸着し易く、本発明に係る疎水性物質の分離回収装置により分離回収可能であると考えられる。
以上のように、本実施形態の疎水性物質の分離回収装置では、容器の下部に電気分解法による微細気泡発生部を配置し、この微細気泡発生部から発生させた微細気泡であるマイクロバブルに疎水性物質(例えば、ナノ炭素または開繊した微細炭素繊維)を吸着させることによって、そのマイクロバブルの浮力で疎水性物質が水面に到達する。こうして、効率よく水面や水面近傍に疎水性物質を集めて回収することができる。従って、疎水性物質を含む材料から微細な疎水性物質を効率的に分離回収することができる。
また、本実施形態の疎水性物質の分離回収装置によれば、直径100nm以上0.1mm以下の微細な気泡を発生させることができるため、最大寸法が100μm以下のサイズの微細な疎水性物質であっても、微細気泡が吸着して、その気泡の浮力で疎水性物質を水面近傍に到達させることができる。これにより、微細な疎水性物質を効率的に回収することができる。
例えば、本発明の疎水性物質の分離回収装置を用いて、ウォータージェットを用いて微細炭素を含む複合材料を斫って粉砕処理され、微細炭素を含む複合材料が細断された状態で含まれる廃水から微細炭素を分離回収する場合、マイクロバブルにより微細炭素を廃水液の上方に移動させて水面近傍で凝集させるとともに、斫ったサイズの大きい樹脂の細片が容器の底に沈降させ、微細炭素と直径1mm程度以上の樹脂の細片を分離できると考えられる。
また、例えば、CFRPから炭素繊維のリサイクルを行う際に、ウォータージェット等で樹脂を斫った後の廃水には、ナノカーボンや無機ナノフィラーを混合した樹脂も含まれる場合もあり、その中には短く切断された炭素繊維も含めて生体安全性に関するリスクが存在する。本発明の疎水性物質の分離回収装置により廃水から微細炭素を除くことで、生体安全性に関するリスクの高い疎水性の微細炭素量を減らすことができる。また、微細炭素の割合を下げることで、生分解性ポリマーや樹脂を分解する際の効率が上がる可能性もある。
また、本発明の疎水性物質の分離回収装置は、製造が容易であり、テーブルトップスケールでの実験が可能であることが利点である。
本発明は、炭素繊維やカーボンナノチューブ等の疎水性物質を含む複合材料から疎水性物質を回収する際に利用可能である。
1 容器
2 微細気泡発生部
2a 陽極
2b 陰極
3 直流電源部
10 分離回収装置
D 電極幅(電極間距離)
W 奥行き方向寸法

Claims (4)

  1. 炭素繊維またはナノ炭素材料を含む材料から炭素繊維またはナノ炭素材料を分離回収する方法であって、
    前記炭素繊維または前記ナノ炭素材料を含む材料の微細物を含む水を収容する容器と、
    前記容器の下部に設けられ、前記容器に収容された水を電気分解することにより、前記容器内の下方から微細気泡を発生させる微細気泡発生部と、
    前記微細気泡発生部に電気的に接続される直流電源部と、を備え、
    直径100nm以上0.1mm以下の前記微細気泡を1cm/sec以下の上昇速度で発生させ、
    前記微細気泡を、前記容器に収容された水に分散する微細な前記炭素繊維または前記ナノ炭素材料に吸着させて前記微細気泡の浮力によって前記容器に収容された水の水面近傍に集めることを特徴とする炭素繊維またはナノ炭素材料の分離回収方法
  2. 前記微細気泡発生部は、水平かつ平行に配置された一対の線形状の電極を有し、
    前記容器は、前記一対の線形状の電極の電極間距離に対する奥行き方向寸法の比が20以下であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維またはナノ炭素材料の分離回収方法
  3. 前記容器は、底面が長方形状である有底角筒状であるとともに、
    前記一対の線形状の電極は、前記底面の長手方向に平行に配置され、前記底面の短辺寸法に対する長辺寸法の比が2以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炭素繊維またはナノ炭素材料の分離回収方法
  4. 前記電極間距離は、0.1mm以上1cm以下であることを請求項2に記載の炭素繊維またはナノ炭素材料の分離回収方法
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