JP6727595B1 - 嚥下能力評価システム、嚥下能力評価方法及び嚥下能力評価プログラム - Google Patents

嚥下能力評価システム、嚥下能力評価方法及び嚥下能力評価プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】被験者の嚥下能力を効果的に評価することができる嚥下能力評価システム、嚥下能力評価方法及び嚥下能力評価用プログラムを提供する。【解決手段】嚥下能力評価システムは、被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データの周波数解析を行い、周波数解析データを生成する周波数解析部と、前記周波数解析データに含まれる低周波数領域データ及び高周波数領域データに基づいて、前記周波数解析データの低周波数領域に関する指標値(低周波指標値)及び高周波数領域に関する指標値(高周波指標値)を決定する指標値決定部と、前記低周波指標値と前記高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む、前記被験者の嚥下能力に関する評価データを生成する評価処理部と、前記評価データに基づき、前記被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行う出力処理部と、を含む。【選択図】図3

Description

本発明は、嚥下能力評価システム、嚥下能力評価方法及び嚥下能力評価プログラムに関する。
高齢化社会を迎え、高齢化に伴う障害が増大している。そのため、日常検診や、初期検診において、その障害の有無を簡便に検知しうる評価方法が求められている。
嚥下障害も高齢化に伴う障害の一つで、近年患者は増加の一途をたどっている。嚥下障害の患者をそのままにすると、誤嚥により気管支炎や誤嚥性肺炎を発症し、悪化すれば死に至ることもあり得る。
従来、嚥下障害の検査は喉の部分をレントゲン投影し、被験者が造影剤を嚥下する状況を観察して判断していた。しかし、レントゲンはX線を使用しており、長時間人体をX線にさらすことはよくない。また、レントゲン投影装置は高価で、特別の資格、放射線物質の管理等を必要とする。そこで、嚥下障害の分野においても、被験者の嚥下障害の有無を簡単に評価できる方法が求められていた。
例えば、特許文献1(特開2005−304890号公報)には、レントゲン投影に代えて、喉の動きを捉える加速度センサ、嚥下の音を捉えるマイクロファン、咽頭部周辺の表面筋電図測定用電極などを使用して、被験者の嚥下能力を可視化し、被験者が自身の嚥下能力を自覚・対応できるようにした嚥下障害を評価できる方法が開示されている。
しかし、この特許文献1の方法では、複数種類のセンサを人体に取り付ける必要があり、患者に負担をかけるとともに、まだまだ簡単に嚥下障害を評価できる方法であるとは言えない。そこで、例えば特許文献2(特開2009−279122号公報)には、マイクロファンのみを喉部に取り付けて喉部の振動信号を検出し、その振動信号を解析することで嚥下の状態を検出する方法が提案されている。
特許文献2には、喉部の振動信号を、喉部の嚥下運動に係る体動信号である低周波成分の信号(20Hz未満の信号)と、喉部の嚥下音に係る音声信号である高周波成分の信号(20Hz以上の信号)とに分離し、体動信号の分散値と体動信号の閾値との対比、並びに音声信号の分散値と音声信号の閾値との対比によって、被験者の嚥下の状態を検出する方法が記載されている。
特許文献2の方法では、1種類のセンサで被験者の嚥下の状態を検出できるので、患者に負担を与えずに簡便に被験者の状態を検出できるとともに、喉の振動信号を体動信号と音声信号の二つの信号から総合的に被験者の嚥下の状態を検出できるので一つの信号から判断するよりは精度よく判断できるかもしれない。
しかし、特許文献2の方法では、体動信号と音声信号により被験者の嚥下の状態を検出するため、嚥下運動と嚥下音という異なる2種類の生体情報から嚥下の状態を評価することになり精度が必ずしも良いとは言えない。また、体動信号の分散値と体動信号の閾値との対比、並びに音声信号の分散値と音声信号の閾値との対比によって、被験者の嚥下の状態を検出する方法であるので、マイクの感度やセンサの装着位置等による影響を回避することができない。
被験者から嚥下に係る振動信号を測定する場合、1種類のセンサを使用して測定するにしても、マイクの感度やセンサの装着位置等の検査条件、音響効果のある部屋での測定であるとか雑音がある部屋であるとかの検査環境が検査ごとに異なり、また被験者の年齢、性別、身体能力、生活環境等も異なっている。したがって、このような諸々の条件からの影響を回避した嚥下の状態の評価が必要である。
このような問題に対して、特許文献3(特開2018−86039号公報)には、筋電位センサを使用して測定し、先ず、被験者が液体等を「普通に飲む」意識で嚥下するときに計測された筋活動量(α)が「通常嚥下時の筋活動レベル」として設定され、次に、被験者が液体等を「強く飲む」意識で嚥下するときに計測された筋活動量(η)が「最大努力嚥下時の筋活動レベル」として設定され、「最大努力嚥下時の筋活動レベル」/「通常嚥下時の筋活動レベル」(η/α)の対比結果に基づいて被験者の嚥下能力を判定する方法が記載されている。
特許文献3では、「最大努力嚥下時の筋活動レベル」/「通常嚥下時の筋活動レベル」(η/α)の対比結果に基づいて被験者の嚥下能力を判定するので、被験者の年齢、性別、身体能力、生活環境や、検査条件、検査環境による影響を回避することはできる。しかし、嚥下能力の判定の精度を上げるために、「普通に飲む」意識で複数回に亘って嚥下するときに計測される複数の筋活動量の値を平均した値を「通常嚥下時の筋活動レベル」として設定し、「強く飲む」意識で複数回に亘って嚥下するときに計測される複数の筋活動量の値を平均した値を「最大努力嚥下時の筋活動レベル」として設定することが勧められており、嚥下能力の判定の精度を上げるためとはいえ、被験者にとっては大きな負担になる方法である。
特開2005−304890号公報 特開2009−279122号公報 特開2018−086039号公報
本発明は、1種類のセンサによる1回の測定により、被験者に負担をかけることなく、また、被験者の年齢、性別、身体能力、生活環境や、検査条件、検査環境による影響を回避して、被験者の嚥下能力を非常に高い精度で評価できる安価で簡易な嚥下能力評価システム、嚥下能力評価方法及び嚥下能力評価プログラムを提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る嚥下能力評価システムは、被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データの周波数解析を行い、周波数解析データを生成する周波数解析部と、前記周波数解析データの低周波数領域に関する指標値(低周波指標値)及び高周波数領域に関する指標値(高周波指標値)を決定する指標値決定部と、前記低周波指標値と前記高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む、前記被験者の嚥下能力に関する評価データを生成する評価処理部と、前記評価データに基づき、前記被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行う出力処理部と、を含む。本発明によれば、被験者の嚥下能力を効果的に評価することができる嚥下能力評価システムが提供される。
前記嚥下能力評価システムにおいて、前記評価データは前記低周波指標値と前記高周波指標値との対比結果に基づき決定される前記評価指標値のみであることとしてもよい。また、前記嚥下能力評価システムにおいて、前記指標値決定部は、前記低周波指標値及び前記高周波指標値として、前記周波数解析データの前記低周波数領域の代表値及び前記高周波数領域の代表値をそれぞれ決定することとしてもよい。
前記嚥下能力評価システムにおいて、前記周波数解析部は、前記嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動データに含まれる、複数の部分時間に取得された複数の部分振動データの各々について、周波数解析を行い、前記周波数解析データとして、前記複数の部分振動データに対応する複数の部分周波数解析データを生成し、前記指標値決定部は、前記複数の部分周波数解析データの各々について、前記低周波数領域の代表値及び前記高周波数領域の代表値を決定するとともに、前記低周波領域の代表値の時系列データ(低周波時系列データ)及び前記高周波領域の代表値の時系列データ(高周波時系列データ)を生成して、前記低周波指標値及び前記高周波指標値として、前記低周波時系列データの代表値及び前記高周波時系列データの代表値をそれぞれ決定することとしてもよい。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る嚥下能力評価方法は、被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データの周波数解析を行い、周波数解析データを生成することと、前記周波数解析データの低周波数領域に関する指標値(低周波指標値)及び高周波数領域に関する指標値(高周波指標値)を決定することと、前記低周波指標値と前記高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む、前記被験者の嚥下能力に関する評価データを生成することと、前記評価データに基づき、前記被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行うことと、を含む。本発明によれば、被験者の嚥下能力を効果的に評価することができる嚥下能力評価方法が提供される。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る嚥下能力評価プログラムは、コンピュータに、被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データの周波数解析を行い、周波数解析データを生成することと、前記周波数解析データの低周波数領域に関する指標値(低周波指標値)及び高周波数領域に関する指標値(高周波指標値)を決定することと、前記低周波指標値と前記高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む、前記被験者の嚥下能力に関する評価データを生成することと、前記評価データに基づき、前記被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行うことと、を実行させるためのプログラムである。本発明によれば、被験者の嚥下能力を効果的に評価するための嚥下能力評価プログラムが提供される。
本発明によれば、被験者の嚥下能力を効果的に評価することができる嚥下能力評価システム、嚥下能力評価方法及び嚥下能力評価用プログラムが提供される。具体的には、例えば、一つのセンサによる1回の測定により、被験者に負担をかけることなく、また、被験者の年齢、性別、身体能力、生活環境や、検査条件、検査環境による影響を回避して、非常に精度の高い嚥下能力を評価することができる。
本発明の一実施形態において被験者の嚥下能力を評価する様子の一例を概略的に示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る嚥下能力評価システムのハードウェア構成の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る嚥下能力評価システムにより実現される機能の一例を示す機能ブロック図である。 本発明の一実施形態において取得された嚥下振動データの一例と、当該嚥下振動データに基づく周波数解析を行って生成された周波数解析データの一例とを示す説明図である。 本発明の一実施形態において取得された嚥下振動データの他の例と、当該嚥下振動データに基づく周波数解析を行って生成された周波数解析データの他の例とを示す説明図である。 本発明の一実施形態において複数の部分周波数解析データに基づき、低周波代表値の時系列データ及び高周波代表値の時系列データを生成した結果の一例を示す説明図である。 被験者の低周波代表値を比較した結果の一例を示す説明図である。 被験者の高周波代表値を比較した結果の一例を示す説明図である。 被験者の低周波代表値と高周波指標値との比を比較した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態において被験者の嚥下能力評価結果を出力した結果の一例を示す説明図である。 本発明の一実施形態において被験者の嚥下能力評価結果を出力した結果の他の例を示す説明図である。 本発明の一実施形態において被験者の嚥下能力評価結果を出力した結果のさらに他の例を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係る嚥下能力評価用プログラムに従って動作する嚥下能力評価システムにより実行される、嚥下能力評価方法における処理の一例を示すフロー図である。 本発明の一実施形態に係る嚥下能力評価用プログラムに従って動作する嚥下能力評価システムにより実行される、嚥下能力評価方法における処理の他の例を示すフロー図である。
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
図1は、本実施形態に係る嚥下能力評価システム(以下、「本システム」という。)1を用いて、本実施形態に係る嚥下能力評価方法(以下、「本方法」という。)により、被験者Sの嚥下能力を評価する様子の一例を概略的に示す説明図である。
図1に示す例においては、本システム1を実現するために、中央処理装置(CPU)(図示せず)、液晶ディスプレイ11及びキーボード12を備えたパーソナルコンピュータ(PC)10が用いられている。
PC10には、本実施形態に係る嚥下能力評価プログラム(以下、「本プログラム」という。)がインストールされている。また、PC10には、被験者Sの喉Tに装着された咽頭マイク20が接続されている。PC10は、咽頭マイク20による音測定によって取得された音データを当該咽頭マイク20から取得する。
本方法においては、本システム1を用いて、被験者Sの嚥下音及び/又は呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データに基づき、当該被験者Sの嚥下能力評価を行う。被験者Sは、嚥下能力を評価する対象となるヒトであれば、性別や年齢等は特に限られない。
なお、本システム1を実現する態様は、図1に示すようにパーソナルコンピュータを用いる態様に限られず、例えば、当該パーソナルコンピュータに代えて又は加えて、タブレット端末、スマートフォン、専用端末等、他の処理装置を用いてもよい。本システム1は、一つの処理装置によって実現されてもよいし、複数の処理装置によって実現されてもよい。
また、本システム1は、インターネット等のネットワークを介して通信可能な複数の処理装置を用いて実現されてもよい。すなわち、例えば、咽頭マイク20や電子聴診器により取得された音データを、第一の処理装置から第二の処理装置にインターネットを介して送信し、次いで、当該第二の処理装置が当該音データに基づく嚥下能力評価処理を実行し、その後、得られた嚥下能力評価結果を、当該第二の処理装置から当該第一の処理装置に、インターネットを介して送信することとしてもよい。本システム1における嚥下能力評価処理においては、いわゆるビッグデータを利用することとしてもよい。
図2は、本システム1のハードウェア構成の一例を示す説明図である。図2に示す例において、本システム1は、バスや接続ケーブル等により接続された、制御部100、記憶部200、出力部300、操作部400、及び通信部500を含む。
制御部100は、1又は複数の電子回路により実現される。具体的に、制御部100は、例えば、CPUにより実現される。制御部100は、記憶部200に格納されたプログラムに従って演算処理等の情報処理を行う。
記憶部200は、記憶装置により実現される。具体的に、記憶部200は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)等の揮発性半導体メモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ等の磁気メモリ、及び光ディスク等の光メモリからなる群より選択される1以上により実現される。
記憶部200は、本プログラム等、制御部100による情報処理に用いられるプログラムを格納する。プログラムは、例えば、通信部500を介して、又はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からインストールされ、記憶部200に格納される。記憶部200は、制御部100による情報処理に関連するデータを格納する。記憶部20は、制御部100のワークメモリとしても動作する。
出力部300は、出力装置により実現される。出力部300は、制御部100の指示に従って出力を実行する。具体的に、例えば、出力部300が液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置により実現される場合、出力部300は、制御部100の指示に従って画像を出力する。
また、例えば、出力部300がスピーカー等の音出力装置により実現される場合、出力部300は、制御部100の指示に従って音を出力する。また、例えば、出力部300がランプ等の発光装置により実現される場合、出力部300は、制御部100の指示に従って光を出力する。また、例えば、出力部300がプリンタ等の印刷装置により実現される場合、出力部300は、制御部100の指示に従って文字や画像が形成された出力媒体(例えば、紙媒体)を出力する。
入力部400は、入力装置により実現される。具体的に、入力部40は、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス、ボタン、又はスティックにより実現される。入力部400は、本システム1のユーザからの入力を受け入れる。
通信部500は、通信装置により実現される。通信部50は、例えば、有線LANや無線LANなどの通信モジュールを含む。通信部500は、インターネット等のネットワークを介して通信を行う。通信部500による通信は、有線により行われてもよいし、無線により行われてもよい。
図3は、本システム1により実現される機能の一例を示す機能ブロック図である。なお、図3に示す機能は、一つの処理装置によって実行されてもよいし、複数の処理装置によって実行されてもよい。すなわち、例えば、図3に示す機能の一部が、デスクトップ型又はラップトップ型のパーソナルコンピュータにより実行され、当該機能の他の一部が、スマートフォンやタブレット等の可搬型装置により実行されてもよい。また、図3に示す機能の一部が、インターネット上のサーバコンピュータ(例えばクラウドサーバ)により実行されてもよい。
図3に示すように、本システム1は、被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データの周波数解析を行い、周波数解析データを生成する周波数解析部110と、当該周波数解析データの低周波数領域に関する指標値(低周波指標値)及び高周波数領域に関する指標値(高周波指標値)を決定する指標値決定部120と、当該低周波指標値と当該高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む、当該被験者の嚥下能力に関する評価データ(嚥下能力評価データ)を生成する評価処理部130と、当該嚥下能力評価データに基づき、当該被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行う出力処理部140と、を含む。
本方法は、被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データの周波数解析を行い、周波数解析データを生成することと、当該周波数解析データの低周波数領域に関する指標値(低周波指標値)及び高周波数領域に関する指標値(高周波指標値)を決定することと、当該低周波指標値と当該高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む、当該被験者の嚥下能力に関する評価データ(嚥下能力評価データ)を生成することと、当該嚥下能力評価データに基づき、当該被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行うことと、を含む。
本プログラムは、コンピュータに、被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データの周波数解析を行い、周波数解析データを生成することと、当該周波数解析データの低周波数領域に関する指標値(低周波指標値)及び高周波数領域に関する指標値(高周波指標値)を決定することと、当該低周波指標値と当該高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む、当該被験者の嚥下能力に関する評価データ(嚥下能力評価データ)を生成することと、当該嚥下能力評価データに基づき、当該被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行うことと、を実行させるためのプログラムである。
周波数解析部110は、嚥下振動データの周波数解析を行う。嚥下振動データは、被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得される。嚥下振動測定においては、嚥下動作中の被験者の嚥下関連部位における、嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に関連する振動(嚥下振動)を測定する。嚥下関連部位は、被験者の体の一部であって、嚥下振動が生ずる部分であれば特に限られないが、例えば、首であることが好ましく、喉であることが特に好ましい。図1に示す例では、被験者Sの喉Tの嚥下振動を測定している。
嚥下動作は、被験者が飲食物を飲み込む動作である。被験者が飲み込む飲食物の種類は、被験者が飲み込むことのできるものであれば特に限られず、液体であっても固体であってもよいが、水、飲料、被験者の唾液等の液体や、ゼリー状、ペースト状の飲食物等、流動性のある飲食物であることが好ましい。被験者が飲み込む飲食物の量は、被験者が一度に飲み込むことのできる範囲内であれば特に限られない。
嚥下振動測定は、振動センサを用いて好ましく測定される。振動センサは、被験者の嚥下動作に伴って発生する振動(嚥下振動)を測定できるものであれば特に限られないが、例えば、嚥下関連部位で発生する嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音を測定するセンサ(例えば、マイク(咽頭マイクや電子聴診器)等の音センサ)、嚥下関連部位における嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音の発生に関連する筋肉の振動(嚥下関連部位において嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音を発生させる運動のための筋肉の振動)を測定するセンサ(例えば、加速度センサ、筋電センサ)、又は嚥下関連部位における嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音の発生に関連する皮膚表面の振動(嚥下関連部位において嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音を発生させる運動に伴う皮膚表面の振動)を測定するセンサ(例えば、深度カメラ)であることが好ましい。振動センサは、接触式であってもよいし、非接触式であってもよい。図1に示す例では、被験者Sの喉Tに設置した咽頭マイク20を用いて嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音の測定を行っている。
なお、本発明に係る嚥下振動測定においては、複数種類の振動センサを使用する必要はない。すなわち、1種類の振動センサによって嚥下振動測定を行うこととしてもよい。この場合、周波数解析部110は、1種類の振動センサを用いた嚥下振動測定により取得された嚥下振動データの周波数解析を行う。図1に示す例では、咽頭マイク20という1種類の振動センサのみを用いて嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音の測定を行っている。
嚥下振動測定は、まず被験者に飲み込む飲食物を渡し(ただし、飲み込む飲食物が唾液の場合は除く。)、次いで、被験者に当該飲食物の飲み込みを始めるよう合図し、その後、被験者が当該飲食物を飲み込む嚥下動作を行う、という工程を含む。嚥下振動測定においては、被験者の嚥下動作に伴い発生する嚥下振動の全部又は一部を測定する。
嚥下動作は、咽頭蓋の閉塞、食道における飲食物の通過、及び咽頭蓋の開口という3つの部分動作を含む。嚥下振動測定では、上記3つの部分動作のうち1以上、好ましくは2以上、特に好ましくは当該3つの部分動作の全部における嚥下振動を測定する。
嚥下動作が呼吸を伴う場合、嚥下振動測定では、当該嚥下動作に伴う呼吸音に関連する振動を測定することとしてもよい。この場合、嚥下振動測定では、嚥下動作に伴う呼吸音に関連する振動と、上記3つの部分動作の1以上、好ましくは2以上、特に好ましくは3つに関連する振動と、を測定することが好ましい。
嚥下振動測定により取得される嚥下振動データは、嚥下振動の大きさ(嚥下振動量)の経時変化を示すデータである。嚥下振動量は、例えば、咽頭マイクで測定される音の大きさであってもよく、筋電センサで測定される筋肉の振動の大きさであってもよく、深度カメラで測定される皮膚表面の振動の大きさであってもよい。
嚥下振動データは、嚥下振動測定を開始してから経過した時間と、当該経過時間に対応付けられた嚥下振動量とを含む。すなわち、例えば、嚥下音の経時変化を示す嚥下振動データは、嚥下振動測定における経過時間と、当該経過時間に対応付けられた嚥下音の大きさ(例えば、嚥下音の振幅)とを含む。
嚥下振動データの取得においては、必要に応じて、振動センサで測定された信号に対して、周波数ごとに重み付け演算処理、及び/又は、フィルター処理(例えば、ハイパスフィルター及び/又はローパスフィルター)を施してもよい。この場合、個々の振動センサの増幅器(アンプ)の性能(例えば、増幅率)のバラつきの影響を効果的に低減することができる。
周波数解析部110は、取得された嚥下振動データの一部又は全部について、周波数解析を行う。すなわち、周波数解析部110は、嚥下振動の測定時間(嚥下測定時間)の一部(部分時間)に取得された、嚥下振動データの一部(部分振動データ)について周波数解析を行ってもよいし、当該嚥下測定時間の全部で取得された、嚥下振動データの全部について周波数解析を行ってもよい。
なお、嚥下測定時間は、嚥下振動測定において、被験者に飲食物の飲み込みを始めるよう合図した時点(嚥下振動測定の開始時点)から、当該被験者が当該飲食物を飲み込み終えた時点(嚥下振動測定の終了時点)までの時間である。嚥下振動測定においては、この嚥下測定時間内の嚥下振動を測定する。
嚥下測定時間の長さは、本発明による嚥下能力評価を行うことができる範囲であれば特に限られないが、例えば、1秒以上であることが好ましく、2秒以上であることが特に好ましい。嚥下測定時間の長さの上限値は特に限られないが、当該嚥下測定時間は、例えば、15秒以下であることが好ましく、10秒以下であることが特に好ましい。嚥下測定時間の長さの範囲は、上記いずれかの下限値と、上記いずれかの上限値とを任意に組み合わせて特定されてもよい。
部分時間は、嚥下振動測定の開始時間から第一の時間が経過した時点(始点)から、当該第一の時間後の第二の時間が経過した時点(終点)までの時間として特定される。
部分時間の長さ(始点から終点までの時間)は、周波数解析に適した範囲内であれば特に限られず、用いる振動センサのサンプリングレートや目的に応じて、適宜変更することが好ましい。例えば、周波数解析データに基づく周波数分布のグラフをより正確に把握したい場合は、部分時間を長く設定する方が好ましく、時系列信号をより正確に把握したい場合は、部分時間を短く設定する方が好ましい。
具体的に、例えば、サンプリングレートが44.1kHzの場合、部分時間は、0.0058秒以上であることが好ましく、0.09秒以上であることが特に好ましい。部分時間の長さの上限値は特に限られないが、当該部分時間は、例えば、0.38秒以下であることが好ましく、0.19秒以下であることが特に好ましい。部分時間の長さの範囲は、上記いずれかの下限値と、上記いずれかの上限値とを任意に組み合わせて特定されてもよい。
図4Aには、本システム1を用いた本方法において取得された嚥下振動データの一例と、当該嚥下振動データの周波数解析を行って生成された周波数解析データの一例と、を示す。
図4Aに示す例において、嚥下振動データは、嚥下音の振幅の経時変化を示している。この嚥下振動データは、図1に示すように被験者Sの喉Tに設置された咽頭マイク20を用いた嚥下振動測定により取得されたものである。
図4Aに示す例において、周波数解析部110は、嚥下測定時間の一部(部分時間)に取得された、嚥下振動データの一部(部分振動データ)の周波数解析を行って、当該1つの部分振動データに対応する1つの周波数解析データを生成している。
周波数解析部110は、嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動データに含まれる、複数の部分時間に取得された複数の部分振動データの各々について、周波数解析を行い、周波数解析データとして、当該複数の部分振動データに対応する複数の部分周波数解析データを生成することとしてもよい。
この場合、周波数解析部110が周波数解析を行う各部分振動データは、嚥下振動データが測定された嚥下測定時間の一部である部分時間に取得された、当該嚥下振動データの一部である。すなわち、各部分振動データは、対応する部分時間内における嚥下振動量の経時変化を示すデータである。
図4Bには、本システム1を用いた本方法において取得された嚥下振動データの他の例と、当該嚥下振動データに基づく周波数解析を行って生成された部分周波数解析データの他の例と、を示す。
図4Bに示す例において、嚥下振動データは、嚥下音の振幅の経時変化を示している。この嚥下振動データは、図1に示すように被験者Sの喉Tに設置された咽頭マイク20を用いた嚥下振動測定により取得されたものである。
周波数解析部110は、複数の部分時間に取得された複数の部分振動データの各々について、周波数解析を行う。図4Bに示す例において、周波数解析部110は、4つの部分時間(1)〜(4)に取得された4つの部分振動データ(1)〜(4)の各々の周波数解析を行って、当該4つの部分振動データに対応する4つの部分周波数解析データ(1)〜(4)を生成している。
複数の部分時間の長さは、その一部の部分時間又は全部の部分時間が異なっていてもよいが、全部の部分時間の長さが同一であることが好ましい。図4Bに示す例において、部分時間(1)〜(4)の長さは同一であり、0.09秒である。
複数の部分時間は、始点及び終点が互いに異なるように設定される。例えば、図4Bに示す例において、部分時間(1)の始点は4.60秒、終点は4.69秒であり、部分時間(2)の始点は4.62秒、終点は4.71秒であり、部分時間(3)の始点は4.64秒、終点は4.73秒であり、部分時間(4)の始点は4.66秒、終点は4.75秒である。すなわち、部分時間(1)〜(4)の始点及び終点は互いに異なっている。
周波数解析の対象となる部分時間の数(換言すれば、当該部分時間に対応する複数の部分振動データの数)は、2以上であれば特に限られず、嚥下測定時間全体の長さや、各部分時間の長さ等の条件に応じて適宜決定されるが、例えば、4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、6以上であることがより一層好ましく、7以上であることが特に好ましい。図4Bには、始点及び終点が互いに異なり、長さが一定(0.09秒)である4つの部分時間(1)〜(4)が示されている。
複数の部分時間のうち、隣接して設定された2つの部分時間は、重複する期間を含むこととしてもよいし、重複する期間を含まないこととしてもよいが、重複する期間を含むことが好ましい。
隣接して設定された2つの部分時間が重複する時間を含む場合、一方の部分時間の終点が、他方の部分時間の始点より遅い時間となるように、当該2つの部分時間が設定される。隣接する2つの部分時間が重複する期間を含むように複数の部分時間を設定することにより、嚥下振動データに含まれるノイズの影響を効果的に低減することができる。
図4Bに示す例において、4つの部分時間(1)〜(4)は、隣接する2つの部分時間が重複する期間を含むように設定されている。すなわち、例えば、部分時間(1)と、これに隣接して設定される部分時間(2)とは、嚥下測定時間4.62秒〜4.69秒の期間(長さ0.07秒)を、重複する期間として含んでいる。
複数の部分時間のうち、隣接して設定された2つの部分時間が重複する期間を含む場合、複数の部分振動データのうち、隣接して取得された2つの部分振動データは、重複する嚥下振動データを含む。
図4Bに示す例において、4つの部分振動データ(1)〜(4)は、隣接する2つの部分振動データが重複する嚥下振動データを含むように設定されている。すなわち、例えば、部分振動データ(1)と、これに隣接して取得された部分振動データ(2)とは、嚥下測定時間4.62秒〜4.69秒の期間に取得された、重複する嚥下振動データ(部分時間が重複する期間(長さ0.07秒)に取得された嚥下振動データ)を含んでいる。
なお、図4Bに示す例において、4つの部分振動データ(1)〜(4)の全てが、互いに重複する期間(4.66秒〜4.69秒)を含んでいるが、複数の部分振動データのうち、隣接する2つ又は連続する3以上が重複する期間を含んでいれば、当該複数の部分振動データの全てが共通の重複期間を含んでいなくてもよい。
周波数解析部110が周波数解析を行う嚥下振動データ(例えば、取得された嚥下振動データの全部、又は、当該嚥下振動データに含まれる1又は複数の部分振動データ)は、嚥下動作に含まれる上記3つの部分動作のうち1以上、好ましくは2以上、特に好ましくは当該3つの部分動作の全てにおいて取得された嚥下振動データを含む。
周波数解析の対象となる嚥下振動データは、少なくとも食道における飲食物の通過に係る部分動作において取得された嚥下振動データを含むことが好ましい。上記3つの部分動作により発生する嚥下振動のうち、食道を飲食物が通過する際に発生する嚥下振動において、被験者の嚥下能力の特徴が最も表れやすい。このため、食道における飲食物の通過に係る部分動作に係る部分振動データを用いることにより、例えば、被験者の嚥下をするための筋力が衰えているかどうかを効果的に評価することができる。
周波数解析の対象となる嚥下振動データは、食道における飲食物の通過に係る部分動作の嚥下振動データに加えて、咽頭蓋の閉塞に係る部分動作、及び/又は咽頭蓋の開口に係る部分動作において取得された嚥下振動データをさらに含むことがより好ましい。
咽頭蓋の閉塞に係る嚥下振動データ、及び/又は咽頭蓋の開口に係る嚥下振動データを用いることにより、嚥下時に飲食物とともに空気も一緒に飲み込んでしまうという高齢者によくみられる異常な嚥下動作の特徴を効果的に評価することができる。また、評価された嚥下能力に基づき、被験者の既往歴をより効果的に推定できるようになることも期待される。
周波数解析の対象となる嚥下振動データは、上記3つの部分動作の全てにおいて取得された嚥下振動データを含むことが特に好ましい。この場合、被験者の嚥下能力を高い精度で評価することができる。
周波数解析部110が周波数解析を行う嚥下振動データは、嚥下動作に伴う呼吸において取得された嚥下振動データ(嚥下動作中の被験者の呼吸音に関連する振動に係る嚥下振動データ)を含んでいてもよい。この場合、周波数解析部110が周波数解析を行う嚥下振動データは、嚥下動作に伴う呼吸において取得された嚥下振動データと、当該嚥下動作に含まれる上記3つの部分動作のうち1以上、好ましくは2以上、特に好ましくは当該3つの部分動作の全てにおいて取得された嚥下振動データと、を含んでもよい。
被験者の嚥下動作に伴う呼吸音に関連する嚥下振動データを用いることにより、当該被験者の嚥下能力に加えて、その認知能力や、当該嚥下能力及び/又は認知能力と既往歴との関係性をより効果的に評価できることが期待される。
なお、本発明においては、上記3つの部分動作を区別する必要はない。すなわち、本発明においては、上記3つの部分動作を区別することなく、上記3つの部分動作のうち2つ以上、又は3つ以上の部分動作において取得された部分振動データを用いることが好ましい。
また、本発明においては、上記3つの部分動作と呼吸とを区別する必要はない。すなわち、本発明においては、上記3つの部分動作及び呼吸を区別することなく、嚥下動作に伴う呼吸において取得された嚥下振動データと、上記3つの部分動作及び呼吸のうち1つ以上、2つ以上、又は3つ以上において取得された嚥下振動データと、を用いることが好ましい。
周波数解析部110が嚥下振動データの周波数解析を行う方法は、特に限られないが、当該周波数解析部110は、例えば、フーリエ変換、及び/又はウェーブレット変換により周波数解析を行うことが好ましく、フーリエ変換により周波数解析を行うことが特に好ましい。
フーリエ変換は、特に限られないが、例えば、高速フーリエ変換(FFT)、短時間フーリエ変換(STFT)、及び離散フーリエ変換(DFT)からなる群より選択される1以上が好ましく用いられ、FFTが特に好ましく用いられる。
周波数解析部110は、周波数解析を行って、当該周波数解析の対象となった嚥下振動データに対応する周波数解析データを生成する。すなわち、周波数解析部110は、複数の経過時間と、当該複数の経過時間の各々における嚥下振動量とを関連付けて含む嚥下振動データの周波数解析を行って、複数の周波数と、当該複数の周波数の各々における、当該嚥下振動量に対応する振動量とを関連付けて含む周波数解析データを生成する。
具体的に、周波数解析部110は、例えば、嚥下音の経時変化を示す嚥下振動データの周波数解析を行って、複数の周波数と、当該複数の周波数の各々における、当該嚥下音の大きさに対応する振幅とを関連付けて含む周波数解析データを生成する。
図4Aに示す例においては、経過時間が4.62秒から4.71秒までの部分時間内に取得された部分振動データの周波数解析を行い、当該部分振動データに対応する周波数解析データを生成している。具体的に、図4Aに示す例において、周波数解析データは、複数の周波数と、当該複数の周波数の各々における嚥下音の振幅とを関連付けて含んでいる。
周波数解析部110は、複数の部分振動データの周波数解析を行って、当該複数の部分振動データに対応する複数の部分周波数解析データを生成することとしてもよい。すなわち、周波数解析部110は、複数の経過時間と、当該複数の経過時間の各々における嚥下振動量とを関連付けて含む各部分振動データの周波数解析を行って、複数の周波数と、当該複数の周波数の各々における、当該嚥下振動量に対応する振動量とを関連付けて含む各部分周波数解析データを生成する。
具体的に、周波数解析部110は、例えば、嚥下音の経時変化を示す各部分振動データの周波数解析を行って、複数の周波数と、当該複数の周波数の各々における、当該嚥下音の大きさに対応する振幅とを関連付けて含む各部分周波数解析データを生成する。
図4Bに示す例においては、4つの部分振動データ(1)〜(4)の各々について周波数解析を行い、当該4つの部分振動データ(1)〜(4)に対応する、4つの部分周波数解析データ(1)〜(4)を生成している。具体的に、図4Bに示す例において、各部分周波数解析データは、0Hz〜800Hzまでの複数の周波数と、当該複数の周波数の各々における嚥下音の振幅とを関連付けて含んでいる。
指標値決定部120は、周波数解析部110により生成された周波数解析データの低周波数領域に関する指標値(低周波指標値)及び高周波数領域に関する指標値(高周波指標値)を決定する。
すなわち、指標値決定部120は、まず、周波数解析データについて、低周波数領域及び高周波数領域を決定する。低周波数領域は、周波数解析データに含まれる全周波数範囲のうち比較的低い周波数範囲であり、高周波数領域は、当該低周波数領域に含まれる周波数より高い周波数を含む比較的高い周波数範囲である。
低周波数領域及び高周波数領域は、それぞれ下限周波数及び上限周波数により特定される。低周波数領域の下限周波数は、高周波数領域の下限周波数より低く、当該高周波数領域の上限周波数は、当該低周波数領域の上限周波数より高い。
低周波数領域の下限周波数は、特に限られないが、当該低周波数領域は、例えば、嚥下振動データが咽頭マイク等の音センサを用いて取得された場合、25Hz以上であることが好ましく、200Hz以上であることが特に好ましい。
図4Aに示す例において、低周波数領域は、下限周波数200Hz、上限周波数300Hzの周波数範囲として決定され、高周波数領域は、下限周波数500Hz、上限周波数600Hzの周波数範囲として決定されている。
低周波数領域と高周波数領域とは、重複する周波数又は周波数範囲を含んでもよいし、互いに重複しない周波数範囲であってもよい。低周波数領域と高周波数領域とが重複する周波数又は周波数範囲を含む場合、当該低周波数領域の上限周波数は、当該高周波数領域の下限周波数以上である。低周波数領域と高周波数領域とが互いに重複しない場合、当該低周波数領域の上限周波数は、当該高周波数領域の下限周波数未満である。
図4Aに示す例において、低周波数領域の上限周波数300Hzは、高周波数領域の下限周波数500Hz未満であり、当該低周波数領域と当該高周波数領域とは重複していない。
指標値決定部120による低周波数領域及び高周波数領域の決定は、例えば、予め記憶部200に記憶された当該低周波数領域及び高周波数領域の各々の下限周波数及び上限周波数を読み出してもよいし、当該下限周波数及び上限周波数を入力部400を介してユーザから受け入れてもよいし、当該下限周波数及び上限周波数をインターネット等のネットワークを介して通信部500から受け入れてもよい。
指標値決定部120は、次いで、周波数解析データのうち低周波数領域のデータに基づいて低周波指標値を決定するとともに、当該周波数解析データのうち高周波数領域のデータに基づいて高周波指標値を決定する。低周波指標値及び高周波指標値は、それぞれ低周波数領域のデータの特徴及び高周波数領域のデータの特徴を反映した指標値であれば特に限られない。
すなわち、例えば、指標値決定部120は、低周波指標値及び高周波指標値として、周波数解析データの低周波数領域の代表値及び高周波数領域の代表値をそれぞれ決定することとしてもよい。
具体的に、この場合、低周波指標値は、例えば、周波数解析データの低周波数領域における振動量の最大値、平均値、中央値、最小値、積分値、微分値、対数、指数、総和、及び標準偏差からなる群より選択される1以上である。同様に、高周波指標値は、例えば、周波数解析データの高周波数領域における振動量の最大値、平均値、中央値、最小値、積分値、微分値、対数、指数、総和、及び標準偏差からなる群より選択される1以上である。指標値決定部120は、1つの周波数解析データから、低周波代表値及び高周波代表値をそれぞれ1つ決定することとしてもよいし、それぞれ複数決定することとしてもよい。
また、周波数解析部110が上述のように複数の部分周波数解析データを生成する場合、指標値決定部120は、当該複数の部分周波数解析データの各々について、低周波数領域の代表値及び高周波数領域の代表値を決定するとともに、当該低周波領域の代表値の時系列データ(低周波時系列データ)及び当該高周波領域の代表値の時系列データ(高周波時系列データ)を生成して、低周波指標値及び高周波指標値として、当該低周波時系列データの代表値及び当該高周波時系列データの代表値を決定することとしてもよい。
この場合、指標値決定部120は、まず、複数の部分解析データについて共通の低周波数領域及び高周波数領域を決定する。図5には、本システムを用いた本方法において、複数の部分周波数解析データに基づき、低周波時系列データ及び高周波時系列データを生成した結果の一例を示す。
図5に示す例では、3つの部分解析データ(A)〜(C)を含む複数の部分周波数解析データについて、200Hz〜300Hzの低周波領域と、500Hz〜600Hzの高周波領域とが共通に設定されている。
指標値決定部120は、次いで、各部分周波数解析データについて、低周波代表値及び高周波代表値を決定する。低周波代表値は、低周波数領域に含まれる複数の周波数における複数の振動量の代表値である。高周波代表値は、高周波数領域に含まれる複数の周波数における複数の振動量の代表値である。
具体的に、各部分周波数解析データの低周波数代表値は、例えば、当該各部分周波数解析データの低周波数領域における振動量の最大値、平均値、中央値、最小値、積分値、微分値、対数、指数、総和、及び標準偏差からなる群より選択される1以上である。同様に、各部分周波数解析データの高周波数代表値は、例えば、当該各部分解析データの高周波数領域における振動量の最大値、平均値、中央値、最小値、積分値、微分値、対数、指数、総和、及び標準偏差からなる群より選択される1以上である。
指標値決定部120は、各部分周波数解析データについて、低周波代表値及び高周波代表値をそれぞれ1つ決定することとしてもよいし、それぞれ複数決定することとしてもよい。
図5に示す例では、複数の部分周波数解析データの各々について、低周波代表値及び高周波代表値を1つずつ決定している。すなわち、部分周波数解析データ(A)については一対の低周波代表値(A)及び高周波代表値(A)を決定し、部分周波数解析データ(B)については一対の低周波代表値(B)及び高周波代表値(B)を決定し、部分周波数解析データ(C)については一対の低周波代表値(C)及び高周波代表値(C)を決定している。
具体的に、図5に示す例において、指標値決定部120は、複数の部分解析データの各々について、低周波数領域の振幅の平均値、及び高周波数領域の振幅の平均値を、それぞれ低周波代表値、及び高周波代表値として決定している。
さらに、指標値決定部120は、複数の部分周波数解析データの各々について、低周波代表値の時系列データ(低周波時系列データ)及び高周波代表値の時系列データ(高周波時系列データ)を生成する。
低周波時系列データ及び高周波時系列データは、周波数解析部110による周波数解析の対象となった複数の部分振動データの複数の部分時間の範囲内における、低周波代表値の経時変化及び高周波代表値の経時変化をそれぞれ示すデータである。
すなわち、低周波時系列データは、複数の部分解析データの低周波代表値と、当該複数の部分解析データの生成に用いられた複数の部分振動データに対応する複数の部分時間とを関連付けて含み、高周波時系列データは、当該複数の部分解析データの高周波代表値と、当該複数の部分解析データの生成に用いられた複数の部分振動データに対応する複数の部分時間とを関連付けて含む。
図5の例において、低周波時系列データ(黒の背景に描画された白線の波形)は、低周波代表値の経時変化を示し、高周波時系列データ(白の背景に描画された黒線の波形)は、高周波代表値の経時変化を示している。
なお、図5の例において、各部分周波数解析データの低周波代表値及び高周波代表値は、低周波時系列データ及び高周波時系列データにおける、当該各部分周波数解析データに対応する部分時間の上限値の位置にそれぞれプロットされている。
具体的に、例えば、経過時間1.74秒から1.83秒までの部分時間に対応する部分周波数解析データ(A)の低周波代表値及び高周波代表値は、低周波時系列データ及び高周波時系列データにおける1.83秒の位置にそれぞれプロットされている。
ただし、低周波時系列データ及び高周波時系列データにおいて、低周波代表値及び高周波代表値を対応付ける時間は、部分周波数解析データに対応する部分時間の上限値に限られず、例えば、部分時間の下限値であってもよいし、当該部分時間の下限値と上限値との算術平均値であってもよい。
次いで、指標値決定部120は、低周波指標値及び高周波指標値として、低周波時系列データの代表値及び高周波時系列データの代表値をそれぞれ決定する。すなわち、この場合、低周波指標値は、低周波時系列データに含まれる複数の低周波代表値の代表値であり、高周波代表値は、高周波時系列データに含まれる複数の高周波代表値の代表値である。
具体的に、低周波指標値は、例えば、低周波時系列データに含まれる低周波代表値の最大値、平均値、中央値、最小値、積分値、微分値、対数、指数、総和、及び標準偏差からなる群より選択される1以上である。同様に、高周波指標値は、例えば、高周波時系列データに含まれる高周波代表値の最大値、平均値、中央値、最小値、積分値、微分値、対数、指数、総和、及び標準偏差からなる群より選択される1以上である。
評価処理部130は、低周波指標値と高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む、嚥下能力評価データを生成する。嚥下能力評価データは、被験者の嚥下能力を示す評価指標値を少なくとも含み、出力処理部140による出力処理に供されるデータであれば特に限られない。嚥下能力評価データは、評価指標値のみであってもよいし、当該評価指標値に加えて、被験者の嚥下能力に関する他のデータ(例えば、後述する低周波代表値の経時変化を示す画像を出力するための画像データ、及び、高周波代表値の経時変化を示す画像を出力するための画像データ)をさらに含んでもよい。
出力処理部140は、嚥下能力評価データに基づき、被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行う。出力処理部140は、嚥下能力評価データに基づき、被験者の嚥下能力評価結果を出力部300に出力させる。
すなわち、例えば、出力部300が液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置により実現される場合、出力処理部140は、被験者の嚥下能力評価結果を示す画像(例えば、嚥下能力の高さを示す画像)を当該出力部300に出力させる。
また、例えば、出力部300がスピーカーにより実現される場合、出力処理部140は、被験者の嚥下能力評価結果を示す音(例えば、嚥下能力の高さに応じた音)を当該出力部300に出力させる。
また、例えば、出力部300がランプにより実現される場合、出力処理部140は、被験者の嚥下能力評価結果を示す光(例えば、嚥下能力の高さに応じた光)を当該出力部300に出力させる。
また、例えば、出力部300がプリンタにより実現される場合、出力処理部140は、被験者の嚥下能力評価結果を示す文字や画像が形成された出力媒体(例えば、紙媒体)を当該出力部300に出力させる。
なお、被験者となる高齢者は、測定結果による嚥下能力を確認したい時に、視力が衰えて目が見えにくい、聴力が衰えて音が聞こえにくい、といった様々な身体機能の低下を伴っている場合があるため、各被験者の身体状況に合わせて嚥下能力評価結果を出力することが好ましい。
低周波指標値と高周波指標値との対比結果は、当該低周波指標値と当該高周波指標値とを比較した結果であれば特に限られないが、例えば、低周波指標値と高周波指標値との比を算出してもよいし、低周波指標値と高周波指標値との差分値を算出してもよいし、当該対比結果を対数や指数を用いて算出してもよい。
具体的に、低周波指標値と高周波指標値との対比結果が低周波指標値と高周波指標値との比である場合、評価処理部130は、まず当該低周波指標値と高周波指標値との比を算出し、次いで、当該比に基づき、評価指標値を決定する。
低周波指標値と高周波指標値との比は、低周波指標値に対する高周波指標値の比(高周波指標値を低周波指標値で除して算出される比、又は、高周波指標値を、当該高周波指標値と低周波指標値との合計で除して算出される比)であってもよいし、高周波指標値に対する低周波指標値の比(低周波指標値を高周波指標値で除して算出される比、又は、低周波指標値を、当該低周波指標値と高周波指標値との合計で除して算出される比)であってもよい。
低周波指標値と高周波指標値との対比結果は、例えば、低周波指標値と高周波指標値との大小関係の判定結果であることとしてもよい。この場合、評価処理部130は、まず低周波指標値と高周波指標値との大小関係を判定し、次いで、その判定した結果に基づき、評価指標値を決定する。
大小関係の判定結果は、特に限られないが、例えば、低周波指標値に比べて高周波指標値の方が大きいという判定結果、高周波指標値に比べて低周波指標値の方が大きいという判定結果、又は、低周波指標値と高周波指標値とが同一であるという判定結果であってもよい。また、大小関係の判定結果は、例えば、低周波指標値と高周波指標値との差分であってもよいし、当該差分と予め定められた閾値との比較結果であってもよい。
指標値決定部120が、低周波指標値及び高周波指標値として、周波数解析データの低周波代表値及び高周波代表値をそれぞれ決定する場合、評価処理部130は、当該低周波代表値と高周波代表値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む嚥下能力評価データを生成する。
指標値決定部120が、低周波指標値及び前記高周波指標値として、低周波時系列データの代表値及び高周波時系列データの代表値をそれぞれ決定する場合、評価処理部130は、当該低周波時系列データの代表値と高周波時系列データの代表値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む嚥下能力評価データを生成する。
低周波指標値と高周波指標値との対比結果を用いることにより、例えば、嚥下振動測定における測定誤差(例えば、咽頭マイクの感度や咽頭マイクの装着の仕方の違い等の測定条件に起因する測定誤差、又は、嚥下能力以外の被験者の身体的特徴に起因する測定誤差)による影響を効果的に低減することができる。
なお、評価処理部130が、低周波指標値と高周波指標値との対比処理を行う際に、低周波指標値及び/又は高周波指標値に重み付け処理を行う(例えば、低周波指標値及び/又は高周波指標値に所定の重み付け係数を乗じる)こととしてもよい。
すなわち、評価処理部130は、例えば、嚥下障害を判定する上において、低周波指標値が重要になるので、低周波指標値に重み付け係数を乗じる重み付け処理を行い、その後対比処理や差分を算出することとしてもよい。
より具体的に、評価処理部130は、例えば、嚥下障害を有する可能性が高い被験者の指標値と健常者の指標値との違いが最大化するように、機械学習などによって求めた重み付け係数を低周波指標値に乗じることが好ましい。
ここで、図6A、図6B、及び図6Cには、本システムを用いた本方法によって、9名の被験者について、それぞれ低周波指標値のみ、高周波指標値のみ、及び低周波指標値に対する高周波指標値の比(高周波/低周波指標値比)を評価した結果の一例を示す。
本システムとしては、本プログラムがインストールされ、咽頭マイクが接続されたパーソナルコンピュータを用いた(図1参照)。そして、周波数解析データの低周波数領域における振幅の最大値及び高周波数領域における振幅の最大値を、低周波指標値及び高周波指標値としてそれぞれ決定した。
図6A〜図6Cにおいて、横軸の被験者番号1〜9は、非高齢者3名(被験者番号1〜3)、嚥下障害を有しない又は有する可能性が高くない高齢者(非リスク高齢者)3名(被験者番号4〜6)、及び嚥下障害を有する又は有する可能性が高い高齢者(具体的には、逆流性食道炎、肺炎等の既往歴を有する高齢者)(リスク高齢者)3名(被験者番号7〜9)をそれぞれ示す。また、図6Aの縦軸は、各被験者の低周波指標値を示し、図6Bの縦軸は、各被験者の高周波指標値を示し、図6Cの縦軸は、各被験者の高周波/低周波指標値比を示す。
まず低周波指標値については、図6Aに示すように、被験者番号1〜3の非高齢者の低周波指標値は、被験者番号4〜9の高齢者のそれより顕著に小さかった。しかしながら、被験者番号5,6の非リスク高齢者の低周波指標値は、被験者番号7〜9のリスク高齢者のそれより大きい一方で、被験者番号4の非リスク高齢者の低周波指標値は、被験者番号7のリスク高齢者のそれより小さかった。すなわち、低周波指標値のみでは、非リスク高齢者とリスク高齢者とを区別することができなかった。
また、高周波指標値については、図6Bに示すように、被験者番号2の非高齢者の高周波指標値は、被験者番号4の非リスク高齢者や被験者番号7〜9のリスク高齢者のそれより大きい一方で、被験者番号7,8のリスク高齢者の高周波指標値は、被験者番号1,3の非高齢者のそれより小さかった。すなわち、高周波指標値のみでは、非高齢者、非リスク高齢者、及びリスク高齢者を区別することができなかった。
これに対し、図6Cに示すように、非高齢者の高周波/低周波指標値比は、非リスク高齢者及びリスク高齢者のそれより大きく、被験者番号5,6の非リスク高齢者の高周波/低周波指標値比は、リスク高齢者のそれより大きかった。すなわち、高周波/低周波指標値比によれば、非高齢者、非リスク高齢者、及びリスク高齢者を区別することができた。
また、被験者番号4の被験者は、本評価を実施する前は上述のとおり「非リスク高齢者」に該当すると判断されていたが、図6Cに示すように、その高周波/低周波指標値比は、被験者番号8の「リスク高齢者」よりも小さかったことから、実際には「リスク高齢者」に該当すると判断されるべきであることが判明した。したがって、低周波指標値と高周波指標値との対比結果(高周波/低周波指標値比)に基づき嚥下能力を評価することにより、従来は見逃されていた高齢者のリスクを早期に発見することができる可能性がある。
このように、図6A〜図6Cに示す例において、低周波指標値のみ又は高周波指標値のみでは、非高齢者、非リスク高齢者、及びリスク高齢者を区別することができなかったのに対し、低周波指標値と高周波指標値との対比結果である高周波/低周波指標値比によれば、非高齢者、非リスク高齢者、及びリスク高齢者を区別することができた。
低周波指標値と高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値は、被験者の嚥下能力を表し得る指標値であれば特に限られないが、例えば、当該低周波指標値と当該高周波指標値との対比結果(例えば、当該低周波指標値と当該高周波指標値との比)に基づき決定される、被験者の嚥下能力を示す得点(例えば、嚥下能力が高いほど値が大きくなる得点)であってもよい。
この場合、出力処理部140は、嚥下能力評価結果の少なくとも一部として、被験者の嚥下能力を示す得点を出力部300に出力させる。すなわち、出力処理部140は、例えば、被験者の嚥下能力を示す得点を含む画像を液晶ディスプレイに表示させる。
図7には、本システムを用いた本方法において、評価処理部130が、低周波指標値としての低周波代表値(具体的には、低周波数領域の最大値)と、高周波指標値としての高周波代表値(具体的には、高周波数領域の最大値)との対比結果(具体的には、低周波数領域の最大値と高周波数領域の最大値との比)に基づいて、評価指標値としての得点を決定し、出力処理部140が、当該得点を含む嚥下能力評価結果を出力部300に出力させた結果の一例を示す。
すなわち、図7には、上記9人の被験者(被験者番号1〜9(Sub.1〜Sub.9))の各々について、評価指標値として、低周波指標値と高周波指標値との比に基づき、被験者の嚥下能力を示す得点を決定し、当該得点を含む画像を出力した結果を並べて示している。なお、図7には、9人の被験者全員の画像を示しているが、出力処理部140は、少なくとも1人の被験者について、嚥下能力評価結果を出力部300に出力させればよい。すなわち、出力処理部140は、例えば、1人の被験者の嚥下能力評価結果のみを出力部300に出力させてもよい。
この場合、評価処理部130は、まず、各被験者について、高周波指標値を低周波指標値で除することにより、又は、高周波指標値を、当該高周波指標値と低周波指標値との合計で除することにより、低周波指標値に対する高周波指標値の比(指標値比p)を算出する。
一方、評価処理部130は、指標値比pに基づき得点を決定するための基準値として、最小基準値p Min及び最大基準値p Maxを決定する。最小基準値p Min及び最大基準値p Maxの決定は、例えば、予め記憶部200に記憶された当該最小基準値p Min及び最大基準値p Maxを読み出してもよいし、当該最小基準値p Min及び最大基準値p Maxを入力部400を介してユーザから受け入れてもよいし、当該最小基準値p Min及び最大基準値p Maxをインターネット等のネットワークを介して通信部500から受け入れてもよいし、評価処理部130が演算処理によって当該最小基準値p Min及び最大基準値p Maxを算出してもよい。
そして、評価処理部130は、各被験者について、その嚥下能力を示す得点Sを下記式(I)により算出する。
すなわち、この場合、評価処理部130は、指標値比pが最大基準値p Max以上である場合には、得点Sを100と決定し、指標値比pが最小基準値p Min以下である場合には、得点Sを0(ゼロ)と決定し、指標値比pが最小基準値p Min超、最大基準値p Max未満である場合には、得点Sを下記式(II)により算出する。
上記式(I)及び式(II)において、最小基準値p Min及び最大基準値p Maxは、例えば、非高齢者及び/又は非リスク高齢者と、リスク高齢者とを区別できるように、統計的に及び/又は試行錯誤的に決定される。その結果、本実施形態においては、最小基準値p Minは「0.5」と決定され、最大基準値p Maxは「3.0」と決定される。上記式(I)(II)によれば、嚥下能力が高いほど、得点Sは大きくなる。
そして、図7に示す例では、被験者番号1(Sub.1)の非高齢者(27歳、男性)の得点Sは「99」、被験者番号2(Sub.2)の非高齢者(28歳、男性)の得点Sは「37」、被験者番号3(Sub.3)の非高齢者(30歳、男性)の得点Sは「71」、被験者番号4(Sub.4)の非リスク高齢者(87歳、女性)の得点Sは「10」、被験者5(Sub.5)の非リスク高齢者(83歳、女性)の得点Sは「42」、被験者6(Sub.6)の非リスク高齢者(90歳、男性)の得点Sは「68」、被験者番号7(Sub.7)のリスク高齢者(89歳、女性)の得点Sは「0」、被験者番号8(Sub.8)のリスク高齢者(71歳、女性)の得点Sは「0」、被験者番号9(Sub.9)のリスク高齢者(88歳、女性)の得点Sは「0」とそれぞれ決定された。
すなわち、図7に示す例においては、低周波代表値と高周波代表値との対比結果に基づいて決定された評価指標値によって、リスク高齢者(被験者番号7〜9(Sub.7〜9))と、非高齢者及び非リスク高齢者(被験者番号1〜6(Sub.1〜6))とを区別することができた。
また、図8には、本システムを用いた本方法において、低周波時系列データの代表値(具体的には、低周波時系列データに含まれる低周波代表値の最大値)と、高周波時系列データの代表値(具体的には、高周波時系列データに含まれる高周波代表値の最大値)との対比結果(具体的には、低周波時系列データに含まれる低周波代表値最大値と、高周波時系列データに含まれる高周波代表値の最大値との比)に基づいて、評価指標値としての得点を決定し、出力処理部140が、当該得点を含む嚥下能力評価結果を出力部300に出力させた結果の一例を示す。
すなわち、図8には、上記9人の被験者(被験者番号1〜9(Sub.1〜Sub.9))の各々について、上述した図7の例と同様、上記式(I)及び式(II)により、評価指標値として、低周波指標値と高周波指標値との比に基づき、被験者の嚥下能力を示す得点を決定し、当該得点を含む画像を出力した結果を並べて示している。なお、図8には、9人の被験者全員の画像を示しているが、出力処理部140は、少なくとも1人の被験者について、嚥下能力評価結果を出力部300に出力させればよい。すなわち、出力処理部140は、例えば、1人の被験者の嚥下能力評価結果のみを出力部300に出力させてもよい。
そして、図8に示す例では、被験者番号1(Sub.1)の非高齢者(27歳、男性)の得点Sは「100」、被験者番号2(Sub.2)の非高齢者(28歳、男性)の得点Sは「100」、被験者番号3(Sub.3)の非高齢者(30歳、男性)の得点Sは「100」、被験者番号4(Sub.4)の非リスク高齢者(87歳、女性)の得点Sは「7」、被験者5(Sub.5)の非リスク高齢者(83歳、女性)の得点Sは「44」、被験者6(Sub.6)の非リスク高齢者(90歳、男性)の得点Sは「65」、被験者番号7(Sub.7)のリスク高齢者(89歳、女性)の得点Sは「0」、被験者番号8(Sub.8)のリスク高齢者(71歳、女性)の得点Sは「6」、被験者番号9(Sub.9)のリスク高齢者(88歳、女性)の得点Sは「0」とそれぞれ決定された。
すなわち、図8示す例においては、低周波時系列データの代表値と高周波時系列データの代表値との対比結果に基づいて決定された評価指標値によって、リスク高齢者(被験者番号7〜9(Sub.7〜9))と、非高齢者及び非リスク高齢者(被験者番号1〜6(Sub.1〜6))とを区別することができた。
さらに、図8示す例においては、非高齢者(被験者番号1〜3(Sub.1〜3))と、非リスク高齢者(被験者番号4〜6(Sub.4〜6))とを区別することもできた。すなわち、低周波指標値及び高周波指標値として、低周波時系列データの代表値及び高周波時系列データの代表値を用いることにより、より精度の高い嚥下能力評価結果を得ることができた。
なお、図8に示す例において、出力処理部140は、評価指標値(得点)に加えて、低周波代表値の経時変化を示す画像(黒の背景に描画された白線の波形)、及び高周波代表値の経時変化を示す画像(白の背景に描画された黒線の波形)も出力している(図5も参照)。すなわち、この場合、評価処理部130は、評価指標値(得点)と、低周波代表値の経時変化を示す画像データと、高周波代表値の経時変化を示す画像データとを含む評価データを生成し、出力処理部140は、当該評価データに基づき、当該評価指標値(得点)、当該低周波代表値の経時変化を示す画像、及び当該高周波代表値の経時変化を示す画像の出力処理を行っている。図8において、低周波代表値の経時変化を示す画像、及び高周波代表値の経時変化を示す画像のそれぞれにおいて、横軸は嚥下測定時間(秒)を示し、縦軸は低周波代表値又は高周波代表値の大きさを示す。
図8に示すように、非高齢者(被験者Sub.1〜3)の低周波代表値は、他の被験者のそれに比べて小さい値となっており、明確な波形はほとんど表れなかった。一方、高周波代表値については、1つの鋭いピークを含む波形が表れた。
これに対し、非リスク群高齢者(被験者Sub.4〜6)及びリスク群高齢者(被験者Sub.7〜9)については、低周波代表値についても明確な波形が表れた。また、リスク高齢者では、高周波代表値に対する低周波代表値の相対的な大きさが、非リスク高齢者に比べて増加していた。さらに、リスク高齢者の波形には、嚥下前後の呼吸や残留音などの音による複数のピークが存在し、非高齢者の1つの鋭いピークのみをもつ高周波代表値の波形とは大きく異なる傾向が示された。
また、図9には、本システムを用いた本方法において、低周波時系列データの代表値(具体的には、低周波時系列データに含まれる低周波代表値の最大値)と、高周波時系列データの代表値(具体的には、高周波時系列データに含まれる高周波代表値の最大値)との対比結果(具体的には、低周波時系列データに含まれる低周波代表値最大値と、高周波時系列データに含まれる高周波代表値の最大値との比)に基づいて、評価指標値としての得点を決定し、出力処理部140が、当該得点を含む嚥下能力評価結果を出力部300に出力させた結果の他の例を示す。
すなわち、図9には、上記9人の被験者のうち3人の被験者(具体的には、被験者番号1の非高齢者、被験者番号6の非リスク高齢者、及び被験者番号9のリスク高齢者)の各々について、上述した図7及び図8の例と同様、被験者の嚥下能力を示す得点、低周波代表値の経時変化を示す画像(黒の背景に描画された白線の波形)、及び高周波代表値の経時変化を示す画像(白の背景に描画された黒線の波形)が出力されるとともに、さらに、嚥下能力のレベルを示すイラスト画像、及び、嚥下障害を有するリスクに関する情報も出力された結果を並べて示している。なお、図9には、3人の被験者全員の画像を示しているが、出力処理部140は、少なくとも1人の被験者について、嚥下能力評価結果を出力部300に出力させればよい。すなわち、出力処理部140は、例えば、1人の被験者の嚥下能力評価結果のみを出力部300に出力させてもよい。
具体的に、図9において、被験者番号1の非高齢者については、嚥下能力を示す得点「100点」に加えて、嚥下能力に問題がないことを示す笑顔のイラスト画像、及び、嚥下障害を有するリスクがないことを示す「OK」との文字が出力されている。
また、図9において、被験者番号6の非リスク高齢者については、嚥下能力を示す得点「65点」に加えて、嚥下能力に問題がある可能性を示す無表情のイラスト画像、及び、嚥下障害を有するリスクがあることを示す「要注意」との文字が出力されている。
また、図9において、被験者番号9のリスク高齢者については、嚥下能力を示す得点「0点」に加えて、嚥下能力に問題があることを示す苦しい表情のイラスト画像、及び、嚥下障害を有するリスクが高いことを示す「危険」との文字が出力されている。
図7、図8及び図9に示すように、低周波指標値と高周波指標値との対比結果(具体的には、低周波指標値と高周波指標値との比)を用いることにより、被験者間の測定音(測定された嚥下音)の音量(振幅の大きさ)や周波数特性の違いの影響を低減して嚥下能力を評価することができた。このため、例えば、マイクの感度やマイクの装着条件(マイクの押し付け圧やマイクの固定位置)の違いによる音量の誤差や増幅器の感度調整に基づく誤差などの影響を低減することができた。
図8及び図9に示すように、出力処理部140は、嚥下能力評価結果の少なくとも一部として、低周波代表値の経時変化を示す画像、及び高周波代表値の経時変化を示す画像を出力部300に出力させることとしてもよい。
この場合、評価処理部130が、低周波代表値及び高周波代表値の経時変化を示す画像データを含む評価データを生成し、出力処理部140は、当該画像データを含む評価データに基づき、当該低周波代表値及び当該高周波代表値の経時変化を示す画像を出力部300に出力させることとしてもよい。
指標値比pに基づき決定される得点Sは、上述の例に限られず、例えば、嚥下能力が高いほど当該得点Sが小さくなるように決定する等、他の方法により決定することとしてもよい。
また、上述した指標値比p以外のパラメータをさらに用いて得点Sを決定することとしてもよい。また、評価指標値は、被験者の嚥下能力を示す得点に限られず、例えば、嚥下障害である確率、将来嚥下障害となり得る確率、要介護度のレベル、又は推定年齢であってもよい。
評価処理部130は、被験者の低周波指標値と高周波指標値との対比結果と、健常者の低周波指標値と高周波指標値との対比結果との対比結果に基づき、評価データを生成してもよい。
図10は、本プログラムに従って動作する本システムにより実行される、本方法における処理の一例を示すフロー図である。
図10に示すように、まず、周波数解析部110は、被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データの周波数解析を行い、周波数解析データを生成する(S11)。
すなわち、図1に示すように咽頭マイク20を用いて被験者の嚥下音を測定する場合には、例えば、図4Aに示すような、当該嚥下音の振幅の経時変化を示す嚥下振動データが取得される。図4Aに示す例において、周波数解析部110は、1つの部分時間に取得された、1つの部分振動データについて周波数解析を行い、1つの周波数解析データを生成している。
次いで、指標値決定部120は、周波数解析データの低周波指標値及び高周波指標値を決定する(S12)。すなわち、例えば、図4Aに示す例において、指標値決定部120は、周波数解析データにおける低周波代表値(具体的には、200Hz〜300Hzの低周波数領域における振幅の平均値)を低周波指標値として決定するとともに、当該周波数解析データにおける高周波代表値(具体的には、500Hz〜600Hzの高周波数領域における振幅の平均値)を高周波指標値として決定する。
さらに、評価処理部130は、低周波指標値と高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む嚥下能力評価データを生成する(S13)。すなわち、例えば、上述のように指標値決定部120が、低周波代表値及び高周波代表値をそれぞれ低周波指標値及び高周波指標値として決定する場合、評価処理部130は、当該低周波代表値と当該高周波代表値との対比結果に基づき評価指標値を決定する。
具体的に、例えば、評価処理部130は、まず、低周波代表値に対する高周波代表値の比である指標値比pを算出する。次いで、評価処理部130は、指標値比pに基づき、上述の式(I)及び式(II)により、被験者の嚥下能力を示す得点Sを評価指標値として決定する。
そして、出力処理部140は、評価処理部130が生成した、評価指標値を含む嚥下能力評価データに基づき、被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行う(S14)。すなわち、上述のように評価処理部130が被験者の嚥下能力を示す得点Sを含む嚥下能力評価データを生成した場合、出力処理部140は、当該得点Sを含む嚥下能力評価結果を出力部300に出力させる。
具体的に、出力処理部140は、例えば、図7に示すように、被験者の嚥下能力を示す得点Sを含む画像を液晶ディスプレイに表示させる。また、図7に示す例では、出力処理部140は、周波数解析結果を示す画像(具体的には、周波数と振幅との関係を示す画像、より具体的には、低周波領域及び高周波領域が図示された当該画像)をさらに液晶ディスプレイに表示させている。
図11は、本プログラムに従って動作する本システムにより実行される、本方法における処理の他の例を示すフロー図である。
図11に示すように、まず、周波数解析部110は、被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データに含まれる、複数の部分時間に取得された複数の部分振動データの各々について、周波数解析を行い、当該複数の部分振動データに対応する複数の部分周波数解析データを生成する(S21)。
すなわち、図1に示すように咽頭マイク20を用いて被験者の嚥下音を測定する場合には、例えば、図4Bに示すような、当該嚥下音の振幅の経時変化を示す嚥下振動データが取得される。
図4Bに示す例において、周波数解析部110は、4つの部分時間(1)〜(4)を含む複数の部分時間に取得された、4つの部分振動データ(1)〜(4)を含む複数の部分振動データの各々について周波数解析を行い、4つの部分周波数解析データ(1)〜(4)を含む複数の部分周波数解析データを生成している。
次いで、指標値決定部120は、複数の部分周波数解析データの各々について、低周波代表値及び高周波代表値を決定するとともに、当該低周波代表値の時系列データ(低周波時系列データ)及び当該高周波代表値の時系列データ(高周波時系列データ)を生成して、低周波指標値及び高周波指標値として、当該低周波時系列データの代表値及び当該高周波時系列データの代表値を決定する(S22)。
すなわち、例えば、図5に示す例において、指標値決定部120は、まず、3つの部分周波数解析データ(A)〜(C)を含む複数の部分周波数解析データの各々について、低周波代表値及び高周波代表値として、200Hz〜300Hzの低周波数領域における振幅の平均値及び500Hz〜600Hzの高周波数領域における振幅の平均値を決定する。次いで、指標値決定部120は、低周波代表値の経時変化を示す低周波時系列データと、高周波代表値の経時変化を示す高周波時系列データとを生成する。さらに、指標値決定部120は、低周波時系列データの最大値、及び高周波時系列データの最大値を、それぞれ低周波指標値、及び高周波指標値として決定する。
さらに、評価処理部130は、低周波指標値と前記高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む嚥下能力評価データを生成する(S23)。すなわち、例えば、上述のように指標値決定部120が、低周波時系列データの代表値及び高周波時系列データの代表値をそれぞれ低周波指標値及び高周波指標値として決定する場合、評価処理部130は、当該低周波時系列データの代表値と当該高周波時系列データの代表値との対比結果に基づき評価指標値を決定する。
具体的に、例えば、評価処理部130は、まず、低周波指標値に対する高周波指標値の比である指標値比pを算出する。次いで、評価処理部130は、指標値比pに基づき、上述の式(I)及び式(II)により、被験者の嚥下能力を示す得点Sを評価指標値として決定する。
そして、出力処理部140は、評価処理部130が生成した、評価指標値を含む嚥下能力評価データに基づき、被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行う(S24)。すなわち、上述のように評価処理部130が被験者の嚥下能力を示す得点Sを含む評価データを生成した場合、出力処理部140は、当該得点Sを含む嚥下能力評価結果を出力部300に出力させる。
具体的に、出力処理部140は、例えば、図8及び図9に示すように、被験者の嚥下能力を示す得点Sを含む画像を液晶ディスプレイに表示させる。また、図8及び図9に示す例では、出力処理部140は、低周波代表値の経時変化を示す画像、及び高周波代表値の経時変化を示す画像をさらに液晶ディスプレイに表示させている。また、図9では、被験者の嚥下能力のレベルを示すイラスト画像、及び、被験者が嚥下障害を有するリスクに関する情報をさらに液晶ディスプレイに表示させている。
なお、上述した図4A、図4B、図5、図6A、図6B、図6C、図7、図8及び図9に示す例の嚥下振動測定においては、まず、咽頭マイクを喉に装着した被験者(図1参照)に水3mLを収容した容器を渡し、次いで、当該被験者に当該水の飲み込みを始めるよう合図し、その後、当該被験者の当該水を飲み込む嚥下動作中の嚥下音を当該咽頭マイクにより測定し、嚥下振動データをパーソナルコンピュータに保存した。この嚥下振動測定における嚥下測定時間は、およそ10秒であった。嚥下振動測定において各被験者には、普段、日常生活において、水を飲む際と可能な限り同じ感覚で、3mLの水を一度で飲み込んでもらうように口頭で指示を与えた。
また、低周波指標値及び高周波指標値として、周波数解析データの低周波代表値及び高周波代表値をそれぞれ用いた図4A及び図7の例においては、経過時間がおよそ3秒〜10秒の間に取得された嚥下振動データ(図4A参照)のうち、振幅が最大となる時間(具体的には、嚥下測定時間4.666秒の時点)の0.045秒前から、当該時間の0.045秒後までの部分時間(長さ0.090秒)に取得された部分振動データについて周波数解析を行い、当該部分振動データに対応する周波数解析データを生成した。
また、低周波指標値及び高周波指標値として、低周波時系列データの代表値及び高周波時系列データの代表値をそれぞれ用いた図4B,図5及び図8の例においては、嚥下測定時間がおよそ3秒〜10秒の間に取得された嚥下振動データ(図4B参照)のうち、各々の長さが0.09秒であって互いに0.07秒重複する複数の部分時間に取得された複数の部分振動データ(例えば、4.60秒〜4.69秒に取得された部分振動データ(1)、4.62秒〜4.71秒に取得された部分振動データ(2)、及び4.64秒〜4.73秒に取得された部分振動データ(3)等)の各々について、周波数解析を行い、当該複数の部分振動データに対応する複数の部分周波数解析データを生成した。
本システム1は、機能的に、被験者の嚥下振動データを取得する嚥下振動測定部をさらに含んでもよい。この場合、本システム1は、ハードウェア構成の一部として、被験者の嚥下振動を測定する装置(例えば、咽頭マイク等の振動センサ)をさらに含む。そして、嚥下振動測定部は、例えば、嚥下動作中の被験者に設置された振動センサから嚥下振動データを取得する。
本方法においては、被験者の嚥下振動測定を行うことをさらに含んでもよい。本プログラムは、コンピュータに、評価データに基づき、被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行うことをさらに実行させるプログラムであることとしてもよい。
本発明によれば、被験者の嚥下能力を効果的に評価することができる。すなわち、本発明においては、特に、低周波指標値と高周波指標値との対比結果を用いることにより、例えば、嚥下振動測定における測定誤差(例えば、マイクの感度やマイクの装着の仕方の違い等の測定条件に起因する測定誤差、又は、嚥下能力以外の被験者の身体的特徴に起因する測定誤差)による影響を効果的に低減しつつ、被験者の嚥下能力を評価することができる。
また、低周波指標値と高周波指標値との対比結果を用いることにより、被験者の嚥下に必要な筋力の状態を評価することができる。すなわち、嚥下能力が低い被験者においては、嚥下を行うための筋力が衰えて咽頭腔を狭める力が弱まり、咽頭腔の径が健常者より大きくなる結果、健常者よりも低い音が発生しやすくなる。
そこで、本発明においては、高周波数領域の嚥下振動(例えば、高い嚥下音)と、低周波数領域の嚥下振動(例えば、低い嚥下音)とのバランスに着目して、嚥下の筋力が低下している被験者と、健常者との違いをより際立たせて抽出することで、嚥下能力をより正確に評価できる。すなわち、嚥下振動の高周波数領域の振動量の大きさと、低周波数領域の振動量の大きさとを抽出して評価することで、嚥下能力の衰えや誤嚥のリスクといった、嚥下能力に関する被験者の状態を把握できる。
本発明においては、嚥下振動測定において、被験者に特別な飲み込み方を強いる必要がないため、被験者の負担は小さくて済む。すなわち、本発明においては、被験者による通常の嚥下動作により取得された嚥下振動データを用いて、当該被験者の嚥下能力を効果的に評価することができる。
本発明によれば、嚥下能力を適切に評価することができるため、例えば、嚥下障害のリスクを早期に発見することができ、その結果、早期のリハビリ介入による嚥下障害の予防等の対策を講じることができる。
すなわち、本発明によれば、被験者に対して、将来、嚥下能力の低下が生じる可能性があることを的確に示唆し得るため、それに応じて被験者が早い段階から所定のトレーニングや治療を行うことによって、嚥下障害を減少させたり、被験者の嚥下能力の低下を抑えることができ、ひいては個人の生活レベルの向上、社会の医療介護費負担の軽減を実現することが可能となる。
1 嚥下能力評価システム、10 パーソナルコンピュータ、11 液晶ディスプレイ、12 キーボード、20 咽頭マイク、100 制御部、110 周波数解析部、120 指標値決定部、130 評価処理部、140 出力処理部、200 記憶部、300 出力部、400 入力部、500 通信部、S 被験者、T 喉。

Claims (6)

  1. 被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データの周波数解析を行い、周波数解析データを生成する周波数解析部と、
    前記周波数解析データの25Hz以上の低周波数領域に関する指標値(低周波指標値及び高周波数領域に関する指標値(高周波指標値)を決定する指標値決定部と、
    前記低周波指標値と前記高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む、前記被験者の嚥下能力に関する評価データを生成する評価処理部と、
    前記評価データに基づき、前記被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行う出力処理部と、
    を含む、嚥下能力評価システム。
  2. 前記評価データは前記低周波指標値と前記高周波指標値との対比結果に基づき決定される前記評価指標値のみである、
    請求項1に記載の嚥下能力評価システム。
  3. 前記指標値決定部は、前記低周波指標値及び前記高周波指標値として、前記周波数解析データの前記低周波数領域に含まれる複数の周波数における複数の振動量の代表値及び前記高周波数領域に含まれる複数の周波数における複数の振動量の代表値をそれぞれ決定する、
    請求項1又は2に記載の嚥下能力評価システム。
  4. 前記周波数解析部は、前記嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動データに含まれる、複数の部分時間に取得された複数の部分振動データの各々について、周波数解析を行い、前記周波数解析データとして、前記複数の部分振動データに対応する複数の部分周波数解析データを生成し、
    前記指標値決定部は、前記複数の部分周波数解析データの各々について、前記低周波数領域の代表値及び前記高周波数領域の代表値を決定するとともに、前記低周波領域の代表値の時系列データ(低周波時系列データ)及び前記高周波領域の代表値の時系列データ(高周波時系列データ)を生成して、前記低周波指標値及び前記高周波指標値として、前記低周波時系列データの代表値及び前記高周波時系列データの代表値をそれぞれ決定する、
    請求項1又は2に記載の嚥下能力評価システム。
  5. 被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データの周波数解析を行い、周波数解析データを生成することと、
    前記周波数解析データの25Hz以上の低周波数領域に関する指標値(低周波指標値)及び高周波数領域に関する指標値(高周波指標値)を決定することと、
    前記低周波指標値と前記高周波指標値との対比結果に基づき処理装置が決定する評価指標値を含む、前記被験者の嚥下能力に関する評価データを生成することと、
    前記評価データに基づき、前記被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行うことと、
    を含む、嚥下能力評価方法。
  6. コンピュータに、
    被験者の嚥下音及び/又は嚥下動作に伴う呼吸音に係る嚥下振動測定により取得された嚥下振動データの周波数解析を行い、周波数解析データを生成することと、
    前記周波数解析データの25Hz以上の低周波数領域に関する指標値(低周波指標値)及び高周波数領域に関する指標値(高周波指標値)を決定することと、
    前記低周波指標値と前記高周波指標値との対比結果に基づき決定される評価指標値を含む、前記被験者の嚥下能力に関する評価データを生成することと、
    前記評価データに基づき、前記被験者の嚥下能力評価結果の出力処理を行うことと、
    を実行させる嚥下能力評価プログラム。
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