JP6722928B1 - 零相電流計測方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】V結線を使用した電力設備において、零相電流の大きさ(値)を簡易かつ正確に計測することができる零相電流計測方法を提供する。【解決手段】V結線に接続された商用周波数の三相交流電路に商用周波数よりも高い注入周波数fxの検査電圧を注入して三相交流電路の零相電流を検出する。そして、検出した零相電流から商用周波数成分の電流値と注入周波数成分の電流値とを抽出し、極性を有する直流電流に変換するとともに、注入周波数成分の電流値を零相電流から差し引く。【選択図】図14

Description

本発明は、例えばV結線の三相交流電路において、商用周波数の絶縁抵抗に起因する零相電流を計測する方法及び装置に関する。
3相のV結線や灯動共用のV結線などの動力回路では、各相の電路の配置状況や基準となる電圧相のとり方によっては、実際の有効分の漏れ電流よりも大きく測定されたり、小さく測定される場合があり、何を測っているのかわからなくなる場合がある。
そのため、従来、V結線を使用する電気設備において、動力回路側で絶縁不良が生じた場合、零相電流、特に絶縁抵抗成分の漏れ電流を正しく計測することができないとされてきた。実際、本発明者らが把握しているどの計測器メーカの製品取扱説明書においても、そのことが記載されている。特許文献1に開示されている絶縁監視装置においても、V結線を使用した電気設備の場合は、電路の絶縁不良の有無を検出するにとどまっていた。
特開2008−32633号公報
しかし、近年、電力設備にV結線を使用する場合であっても絶縁不良の有無では足りず、漏れ電流の大きさを正しく計測する需要が高まっている。特に、再生可能な電力設備が普及して集合住宅の共用部分の電力設備にV結線、たとえば異容量V結線を使用する機会が増えている。このような電力設備では、1mA以上の零相電流が流れると異常とされ、必要な措置をとることが義務づけられる運用がなされている。
そのため、V結線の三相交流電路においても絶縁不良時の零相電流の大きさを正確かつ簡易に計測する技術の開発が急務となっている。
本発明は、V結線を使用する電力設備においても零相電流の大きさを簡易かつ正確に計測することができる零相電流測定方法及び装置を提供することを主たる目的とする。
本発明の一側面によれば、V結線に接続された商用周波数の三相交流電路に前記商用周波数よりも高い注入周波数の検査電圧を注入して前記三相交流電路の零相電流を検出し、検出した前記零相電流から商用周波数成分の第1電流値と注入周波数成分の第2電流値とを抽出するとともに、前記第2電流値を前記第1電流値から差し引くことを特徴とする零相電流計測方法が得られる。
本発明の他の側面によれば、V結線に接続された商用周波数の三相交流電路に前記商用周波数と異なる注入周波数の検査電圧を注入する注入手段と、前記検査電圧が注入された前記三相交流電路の零相電流を検出する検出手段と、検出された前記零相電流から商用周波数成分の第1電流値と注入周波数成分の第2電流値とを抽出する抽出手段と、前記第1電流値を最も高い対地電圧で同期検波することにより、前記対地電圧に対して同相となる第3電流値と90度の位相差が生じる第4電流値とを出力するとともに、前記第4電流値を前記第2電流値と相殺させる制御手段とを有する零相電流計測器が得られる。
本発明によれば、V結線を使用した電力設備において、零相電流の大きさ(値)を簡易かつ正確に計測することができる。
異容量V結線の状態説明図。 (a)は異容量V結線における線間電圧、(b)は対地電圧のベクトル図。 異容量V結線における絶縁抵抗に起因する漏れ電流の説明図。 (a)、(b)は充電電流、(c)は絶縁抵抗に起因する電流のベクトル図。 (a)〜(d)は絶縁不良が生じたときの零相電流のベクトル図。 注入周波数と注入電圧からみた対地間インピーダンスの変化を示す実測図。 本実施形態のI置換法による零相電流の説明図。 各相の電路に注入電流が流れたときの零相電流の説明図。 各相の電路に注入電流が流れたときの零相電流の説明図。 各相の電路に注入電流が流れたときの零相電流の説明図。 本実施形態で用いる零相電流計測器の使用状態説明図。 注入周波数を決定する際の回路構成図。 注入周波数に対するトランスと対地間容量Cとの組み合わせ特性図。 零相電流計測器の構成図。
次に、本発明を異容量V結線を使用した電力設備の零相電流の計測に適用した場合の実施の形態例を説明する。ここでは、まず、異容量V結線の電力設備の特徴を説明し、その後に、本発明者らによる零相電流計測方法の実施の形態と、この零相電流計測方法の実施に適した零相電流検出器の動作について説明する。
[異容量V結線の特徴]
図1は、V結線の動力電路の一例となる異容量V結線電路の状態説明図である。図中、符号「a」,「b」,「c」は、互いに120度の位相差を持つ3相の電路の端子を表す。それぞれの端子に繋がる電路を「相」(たとえばa端子に繋がる電路を「a相」)、電路間を「相間」という場合がある。端子aと端子bの中間の端子nには、B種接地線Eが接続される。相間の電圧は線間電圧と呼ばれる。本明細書では、たとえば端子bから端子aを見た電圧を線間電圧Vabとし、この線間電圧Vabを基準の標準電圧200vとすると,端子cから端子bを見た線間電圧Vbcは120度遅れの200vとなり,端子aから端子cを見た線間電圧Vcaは240度位相が遅れた200vとなる。つまり、V結線の各線間電圧の位相は、図2(a)のベクトル図に示される通り、それぞれ120度ずつずれている。なお、標準電圧200vは、電気事業法施工規則によれば,202vを中心としてその10%の範囲を逸脱しない値に維持される必要がある。
各相の電路と大地との間の電圧は、対地電圧(あるいは対地間電圧)と呼ばれる。a相における対地電圧Vanとb相における対地電圧Vbnは、上記標準電圧の1/2の100vであり、互いの対地電圧の位相は、図2(b)のベクトル図に示される通り、180度異なっている。c相における対地電圧Vcnは、a相における対地電圧Van及びb相における対地電圧Vbnのルート3倍、すなわち約173vであり,a相における対地電圧Vanの位相に対して90度進み、b相における対地電圧Vbnの位相に対して90度遅れている。
各相の電路には、大地との間の静電容量が生じる。この静電容量を対地間容量という。a相の100v側には対地間容量Ca1、200v側には対地間容量Ca3が生じる。同様に、c相の100v側には対地間容量Cc1、200v側には対地間容量Cc3が生じる。b相については200v側だけであり、その電路には対地間容量Cb3が生じる。n端子の100v側の電路には対地間容量Con1が生じる。各電路には各対地間容量の大きさに起因する電流が充電される。このような電流を、本明細書では充電電流、その大きさ(値)を充電電流値と呼ぶ。a相に流れる充電電流値は、100v側でI0a1、200v側でI0a3となる。また、b相の200v側でI0b3となる。また、c相の100v側でI0c1、200v側でI0c3となる。n端子とB種接地線Eとの間に流れる電流が零相電流であり、その大きさ(値)がIとなる。
この状態でいずれかの電路に絶縁劣化などに起因する絶縁不良が生じると、大地に電流が流れる。この電流は、絶縁抵抗成分に起因する漏れ電流である。図3は、この漏れ電流の状態を示す図である。便宜上、a相、b相、c相のすべての電路における漏れ電流が示されているが、実際の絶縁不良は、いずれか一つ、多くても二つの相の電路において生じるのが通常である。本明細書では、a相の漏れ電流の大きさ(値)をIra3、b相の漏れ電流の大きさ(値)をIrb3、c相の漏れ電流の値をIrc3とする。V結線部分の各相の漏れ電流は、図2(a),(b)の各電圧のベクトルの状態と各相の対地間容量の大きさ及び絶縁抵抗値で決まる。
図4(a)は、設置状態時における各相における充電電流のベクトル図である。各相の対地間容量はほぼ等しいが,a相における充電電流値I0a3とb相における充電電流値I0b3とは、位相が180度異なる。そのため、a相における充電電流値I0a3とb相における充電電流値I0b3は、互いに相殺されて零となる。一方、c相における充電電流値I0c3は、充電電流値I0a3とI0b3の約1.73倍であり,位相が当該相の対地電圧(Vcn)の90度進みとなる。
零相電流値Iは、200v側の充電電流値の合成値(=I0a3+I0b3+I0c3)であり、各充電電流の位相が図4(a)のようなベクトル関係となるため、c相におけるベクトルがそのまま零相電流値Iとして残る。この状態を示したのが図4(b)である。
図4(c)は、各相の絶縁抵抗成分に起因して流れる漏れ電流のベクトル図である。大地から見た当該相の電圧と漏れ電流の位相は同じであるが、c相における漏れ電流値Irc3は、a相における漏れ電流値Ira3よりも90度位相が進み、b相における漏れ電流値Irb3よりも90度位相が遅れている。また、c相における漏れ電流値Irc3は、他相の漏れ電流値Ira3,Irb3の約1.73倍となる。
図5(a)は各相における電路の絶縁が良好の場合の零相電流の状態を示すベクトル図であり、設置時の状態である図4(a),(b)と等価となる。すなわち、a相とb相の電路の充電電流の大きさは等しく、位相だけが180度異なるので、ベクトル和は零となり、c相の電路の充電電流のみが零相電流値Iとして残る。しかし、各電路の絶縁が良好の場合、漏れ電流は本来的に流れないはずなので、この状態で計測される零相電流値Iが真値でないことは明らかである。
図5(b)は、a相の電路で絶縁不良が起きたときの電流のベクトル関係を示した図である。零相電流値Iは、a相の絶縁不良による漏れ電流値Ira3とc相の充電電流値I0c3とのベクトル和となる。そのため、零相電流値Iはc相の充電電流値I0c3に大きく影響を受け(c相の充電電流値I0c3に相殺され)、真値とはならない。図5(c)はb相で絶縁不良が生じたときの電流のベクトル関係、図5(d)はc相で絶縁不良が生じたときの電流のベクトル関係を示す。いずれの場合も、当該相で絶縁不良が生じたときはc相の充電電流値I0c3に大きく影響を受け、漏れ電流値Iの真値が求まらない。
[零相電流計測方法]
上記の異容量V結線のうちV結線部分では,対地電圧と対地間容量に起因する零相の充電電流のベクトル関係は常に一定となる。たとえばc相の充電電流値Iocとc相の対地電圧値Vcnとの間には必ず位相のずれが生じる。本発明者らは、この現象を利用して、従来は不可能であった漏れ電流の真値Iの測定を可能にするものである。
具体的には、商用周波数fよりも高い注入周波数fの検査電圧を各電路に注入し、これにより各相の電路に流れる商用周波数f成分の零相電流値Iと注入周波数f成分の注入電流値Ioxを計測する。検査電圧の注入周波数fの範囲については後述する。その後、注入電流値Ioxを零相電流値Iから差し引く。つまり、零相電流値Iに含まれているc相の充電電流値I0c3を注入電流値Ioxで相殺する。これにより、零相電流値Iを限りなく真値に近づけることができる。
好ましくは、検出した零相電流値Iを、3相のうち最も高い対地電圧となり且つ零相電流値Iに最も大きな影響を与えるc相の対地電圧で同期検波(位相分別)する。すなわち、c相の対地電圧値Vcnに対して同相分の電流値Ifo)と90度の位相差が生じる電流値Iocfo)とを出力するとともに、電流値Iocfo)を注入電流値Ioxで相殺する。
その際、注入電流値Ioxについては整流回路で直流電流値に変換し、同期検波後の上記電流値Iocfo)、Iocfo)をそれぞれLPF(ローパスフィルタ)を通過させることで極性を持つ直流の電流値に変換するとともに、これらの各電流値の振幅を増幅器などで同一に調整する。
これにより、単純な加減算により、c相の充電電流値I0c3が完全に除去された零相電流値(真値)を得ることができる。
次に、最適な注入周波数fの範囲について説明する。注入周波数fは、できるだけ低いことが望ましい。なぜならば、異容量V結線の電力設備を構成するトランスには漏れリアクタンスや接続線路のインダクタンスがあり、これが大きかったり、逆に零(並列共振)であると計測結果に影響を与えるためである。しかしながら、逆に低すぎると注入電流値Ioxに抵抗分の電流が付加されてしまい、誤差が生じてしまう。そのため、注入周波数fには、最適な範囲がある。
図6は、注入周波数(横軸)と電路の対地間インピーダンス(縦軸)の関係を示した実測図である。注入周波数fが1Hz〜10kHzを少し超えた範囲では、対地間インピーダンスの変化線61は、注入周波数fが高くなるにつれて小さくなる。つまり、周波数に反比例して対地間インピーダンスが変化する。周波数が高くなるにつれて、電路のインダクタンスに影響されて直列共振回路に近づき,やがて並列共振を起こして対地間インピーダンスが零になり、計測結果が不安定になる。注入周波数fが並列共振周波数を超えるようになると対地間インピーダンスの変化線62は周波数に比例して大きくなってしまう。そのため、最適な注入周波数fは、計測結果が安定し、かつ、計測結果の誤差を無視できる1kHz〜10Hzの範囲が望ましいことがわかる。
[ベクトル図による説明]
上述した零相電流計測方法の概要を、電流のベクトル図を用いて説明する。
図7は、絶縁が良好のときの電流のベクトル関係を示す図である。図上段は図5(a)と同じである。計測された零相電流値Iは図中段に示される電流値(=I0c3+Ira3+I0b3)であるが、注入電流値Ioxをc相の対地電圧Vcnから90度進んだ充電電流値Ioc3と同じ位相で,ベクトルの方向が180度異なる電流ベクトルに置き換えた後,これを零相電流値Iとベクトル的に加算することで、図下段に示される通り、ベクトル和は0となる。絶縁不良が生じていないのであるから、このベクトル和(=0)が真値の絶縁抵抗成分の漏れ電流Iorであることは明らかである。
図8は、a相の電路が絶縁不良の状態を示す。この状態では、図上段に示される通り絶縁抵抗成分の漏れ電流値Ira3が流れるが、実際に計測された零相電流値Iは、図中段に示される通り、c相における充電電流値Ioc3に影響を受けて真値(=Ira3)よりも小さくなってしまう。
しかし、零相電流計測方法によれば、充電電流値Ioc3が注入電流値Ioxにより相殺されるため、図下段に示される通り、真値と一致する零相電流値I0rが得られる。
図9は、b相の電路が絶縁不良の状態を示す。この状態では、図上段に示される通り漏れ電流値Irb3が流れるが、計測された零相電流値Iは、図中段に示される通り、c相における充電電流値Ioc3に影響を受けて真値(=Irb3)よりも大きくなってしまう。
しかし、零相電流計測方法によれば、充電電流値Ioc3が注入電流値Ioxにより相殺されるため、図下段に示される通り、真値(=Irb3)と一致する絶縁抵抗成分の漏れ電流値I0rが得られる。
図10はc相の電路が絶縁不良の状態を示す。この状態では、図上段左に示される通り漏れ電流値Irc3が流れるが、計測された零相電流値Iは、図中段右に示される通り、c相における充電電流値Ioc3に影響を受けて真値(=Ioc3)よりも大きく且つ位相が異なるものとなってしまう。
しかし、零相電流計測方法によれば、充電電流値Ioc3が注入電流値Ioxにより相殺されるため、図下段に示される通り、真値(=Irc3)と一致する絶縁抵抗成分の漏れ電流値I0rが得られる。
[数式による説明]
図7〜図10のベクトル関係を数式を用いて説明する。ここでは、注入周波数f(Hz)の検査電圧を、断面積S(m)の変流器(Current Transformer:CT)を用いてV結線の動力電路に注入するものとする。これにより電路に誘起される電圧値(誘起電圧値)をV,電圧発生時の磁束密度をB(T),動力電路の1相当たりの対地間容量値をC(F)とすると、誘起電圧値Vは、(1)式で表される。
Figure 0006722928
注入周波数fにおける対地間のリアクタンスXcfは、(2)式で表される。ただしωは2πfである。
Figure 0006722928
検査電圧の電路への注入により流れる注入電流値Io(fx)は、(3)式で表される。
Figure 0006722928
商用周波数fにおける零相電流値Iは(4)式で表される。Vcnはc相の対地電圧である。
Figure 0006722928
(1)〜(4)式より大地に流れる注入電流Io(fx)の絶対値は(5)式で表される。
Figure 0006722928
電路のインピーダンス(あるいはリアクタンス)が対地間容量のみの場合,商用周波数fによる零相電流値Iと注入周波数fによる零相電流値I(f)の振幅を等しくさせた場合,(6)式が成り立つ。この(6)式に(4)式と(5)式を代入すると,(7)式が得られる。注入周波数fは(8)式で求めることができる。
Figure 0006722928
たとえば、S=10.10mm,B=0.3T,Vcn=173v,f0=50Hzである場合,注入周波数fは、以下の(9)式より得られ、誘起電圧値Vは(10)式より得られる。
Figure 0006722928
一例として,1相当たりの対地間容量Cが0.1μFのとき,商用周波数による零相電流値I0(f0)は、(3)式に数値を代入すると5.4mAとなる。また、注入周波数fの検査電圧の注入より流れる電流値I0(fx)は、(4)式に数値を代入すると、やはり5.4mAとなる。つまり、両者は一致する。
商用周波数における零相電流値が5.4mAで,その電流がすべて絶縁抵抗に起因する電流の場合,例えば4651Hzで検査電圧が0.62Vのときに流れる電流は,c相の電路が絶縁不良のときで0.01935mA,a相又はb相の電路が絶縁不良のときで0.03348mAであった。これらの値は,上記の5.4mAに比べて1%以下(0.36%又は0.62%)と十分小さく,計算上無視できる程度である。
求めたい絶縁抵抗の漏れ電流値Iorは、値の絶対値をc相の対地電圧Vcnから90度進んだ商用周波数の電流値に置き換えてからベクトル減算させることで得られる。式で表すと以下の(11)式のようになる。Iの上のドッド1つはc相と同じ位相を表す。
Figure 0006722928
電路の絶縁が良好であったとき(つまり真値が判明している場合)の零相電流計測方法による誤差は,注入周波数fが4.65kHzで0.6%,2.325kHzで1.24%で2.48%である。これは実用上無視できる程度の誤差である。
[零相電流計測器]
上述した零相電流計測方法は、携帯可能な小型の零相電流計測器を用いて実施することができる。図11は、零相電流計測器の使用形態を示す図である。この零相電流計測器10は、ケースから露出するCT20及び二つのクリップ30,31を有する。CT20は、活線状態の異容量V結線の動力電路にセットする。二つのプローブの一方30はc相の任意の場所にクリップし、他方のプローブ31をアースに接続した後、注入電圧をCT20を介して電路に注入するとともに、これにより計測される零相電流Iと注入電流Ioxの演算を行うだけで、真値に限りなく近い絶縁抵抗成分の漏れ電流Iorを計測することができる。
検査対象となる電力設備によっては、上述した理由で各相の電路に繋がるトランスの漏れリアクタンスなどが無視できなくなるので、適切な注入周波数fを決定するための予備検査を行う。図12は、予備検査回路であり、一次側スイッチ1202と二次側スイッチ1203を有するトランス1201と、約0.1μFのコンデンサCと、約10Ωの抵抗Rにより、実際の電路とほぼ等価の電気回路を実現している。二次側スイッチ203の一方端には周波数可変の電源Vが接続され、他方端はコンデンサCと抵抗Rを介して接地されている。
この予備検査回路において、トランス1201の二次側スイッチ1203をON(ショート)にすると、一次側スイッチ1202の状態に関わらず、電源VとコンデンサC及び抵抗Rの直列回路になる。一方、一次側スイッチをON(ショート)にすると、トランス1201は、二次側スイッチ1203の状態に関わらず、インダクタとして機能する。実際の各相の電路は、一次側スイッチ1202をONにして,二次側スイッチ1203をOFF(オープン)にした状態となる。このような実験回路を用いて、電源Vの周波数(注入周波数)を変化させたときのトランスとコンデンサCの組み合わせ特性の実験結果を図13に示す。図13の横軸は注入周波数(Hz)、縦軸は抵抗Rの両端電圧(mV)である。図13から両端電圧の変化量が小さいのは、注入周波数が1kHz〜10kHzであり、上述した通り、この範囲の周波数が最適の注入周波数範囲であることがわかる。
零相電流計測器10の内部の構成例を図14に示す。零相電流計測器10は、注入CT20aと検出CT20bとを有する。注入CT20aは発振器101から出力される注入周波数fの検査電圧を注入する。検出CT20bは、検査電圧が注入された電路の零相電流Iを検出する。フィルタ回路102は、検出された零相電流Iから注入周波数成分の電流値Ioxを抽出する。もう一つのフィルタ回路103は、検出された零相電流Iから商用周波数成分の電流値Io(fo)を抽出する。整流回路104は、注入周波数成分の電流値Ioxを直流電流値IoxにAC/DC変換する。
位相分別回路105は、商用周波数成分の電流値Io(fo)の同期検波(位相分別)を行う。そのために、一方のプローブ30を、図示の例では対地電圧が最も高くなるc相の電路にクリップし、他方のプローブ31をB種接地線Eにクリップする。そして、c相の対地電圧Vcnに対して同相となる電流値と90度の位相差が生じる充電電流値を出力する。LPF106は、位相分別回路105を経て直流化された充電電流値(c相の対地電圧Vcnに対して90度の位相差が生じ、これによりプラスまたはマイナスの極性を有する直流電流値)Iocを出力する。もう一つのLPF107は、位相分別回路105を経て直流化された零相電流値(c相の対地電圧Vcnに対して同相となる直流電流値)Iorを出力する。演算回路は、各電流値Ioc、Iox、Iorを加算することで電流値Iorを出力する。この電流値Iorは、絶縁抵抗成分の漏れ電流値の真値である。
なお、図14では、整流回路104から出力される注入電流値が「−Iox」と表現される一方、LPF106から出力される電流値が「Ioc」と表現されているが、時間の経過とともに、これらの極性は逆転する。
このように、本実施形態によれば、従来は不可能とされていた、V結線を使用した電力設備における零相電流の大きさ(値)を簡易かつ正確に計測することができる。
なお、図14では、注入CT20aと検出CT20bとを別々のCTで構成した場合の例が示されているが、一つのCTを使い分けることもできる。
10・・・零相電流計測器、20・・・CT、20a・・・注入CT、20b・・・検出CT、101・・・発振器、102,103・・・フィルタ回路、104・・・整流回路、105・・・位相分別回路、106,107・・・LPF、108・・・演算回路。

Claims (6)

  1. V結線に接続された商用周波数の三相交流電路に前記商用周波数よりも高い注入周波数の検査電圧を注入して前記三相交流電路の零相電流を検出し、
    検出した前記零相電流から商用周波数成分の第1電流値と注入周波数成分の第2電流値とを抽出するとともに、
    前記第2電流値を前記第1電流値から差し引くことを特徴とする、
    零相電流計測方法。
  2. 前記第1電流値を最も高い対地電圧で同期検波することにより、前記対地電圧に対して同相分の第3電流値と90度の位相差が生じる第4電流値とを出力するとともに、前記第4電流値を前記第2電流値で相殺することを特徴とする、
    請求項1に記載の零相電流計測方法。
  3. 前記第2電流値及び前記第4電流値を各々直流電圧に変換した後、変換された前記第2電流値と前記第1電流値とを極性を含めて加算することを特徴とする、
    請求項2に記載の零相電流計測方法。
  4. 前記注入周波数が1kHz以上10kHz以下の周波数であることを特徴とする、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の零相電流計測方法。
  5. 前記三相交流電路が異容量V結線構成された電路であることを特徴とする、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の零相電流計測方法。
  6. V結線に接続された商用周波数の三相交流電路に前記商用周波数と異なる注入周波数の検査電圧を注入する注入手段と、
    前記検査電圧が注入された前記三相交流電路の零相電流を検出する検出手段と、
    検出された前記零相電流から商用周波数成分の第1電流値と注入周波数成分の第2電流値とを抽出する抽出手段と、
    前記第1電流値を最も高い対地電圧で同期検波することにより、前記対地電圧に対して同相となる第3電流値と90度の位相差が生じる第4電流値とを出力するとともに、前記第4電流値を前記第2電流値と相殺させる制御手段と、
    を有することを特徴とする零相電流計測器。
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