JP6722928B1 - 零相電流計測方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
Description
そのため、従来、V結線を使用する電気設備において、動力回路側で絶縁不良が生じた場合、零相電流、特に絶縁抵抗成分の漏れ電流を正しく計測することができないとされてきた。実際、本発明者らが把握しているどの計測器メーカの製品取扱説明書においても、そのことが記載されている。特許文献1に開示されている絶縁監視装置においても、V結線を使用した電気設備の場合は、電路の絶縁不良の有無を検出するにとどまっていた。
そのため、V結線の三相交流電路においても絶縁不良時の零相電流の大きさを正確かつ簡易に計測する技術の開発が急務となっている。
本発明は、V結線を使用する電力設備においても零相電流の大きさを簡易かつ正確に計測することができる零相電流測定方法及び装置を提供することを主たる目的とする。
図1は、V結線の動力電路の一例となる異容量V結線電路の状態説明図である。図中、符号「a」,「b」,「c」は、互いに120度の位相差を持つ3相の電路の端子を表す。それぞれの端子に繋がる電路を「相」(たとえばa端子に繋がる電路を「a相」)、電路間を「相間」という場合がある。端子aと端子bの中間の端子nには、B種接地線Ebが接続される。相間の電圧は線間電圧と呼ばれる。本明細書では、たとえば端子bから端子aを見た電圧を線間電圧Vabとし、この線間電圧Vabを基準の標準電圧200vとすると,端子cから端子bを見た線間電圧Vbcは120度遅れの200vとなり,端子aから端子cを見た線間電圧Vcaは240度位相が遅れた200vとなる。つまり、V結線の各線間電圧の位相は、図2(a)のベクトル図に示される通り、それぞれ120度ずつずれている。なお、標準電圧200vは、電気事業法施工規則によれば,202vを中心としてその10%の範囲を逸脱しない値に維持される必要がある。
上記の異容量V結線のうちV結線部分では,対地電圧と対地間容量に起因する零相の充電電流のベクトル関係は常に一定となる。たとえばc相の充電電流値Iocとc相の対地電圧値Vcnとの間には必ず位相のずれが生じる。本発明者らは、この現象を利用して、従来は不可能であった漏れ電流の真値Ioの測定を可能にするものである。
具体的には、商用周波数foよりも高い注入周波数fxの検査電圧を各電路に注入し、これにより各相の電路に流れる商用周波数fo成分の零相電流値Ioと注入周波数fx成分の注入電流値Ioxを計測する。検査電圧の注入周波数fxの範囲については後述する。その後、注入電流値Ioxを零相電流値Ioから差し引く。つまり、零相電流値Ioに含まれているc相の充電電流値I0c3を注入電流値Ioxで相殺する。これにより、零相電流値Ioを限りなく真値に近づけることができる。
その際、注入電流値Ioxについては整流回路で直流電流値に変換し、同期検波後の上記電流値Ioc(fo)、Ioc(fo)をそれぞれLPF(ローパスフィルタ)を通過させることで極性を持つ直流の電流値に変換するとともに、これらの各電流値の振幅を増幅器などで同一に調整する。
これにより、単純な加減算により、c相の充電電流値I0c3が完全に除去された零相電流値(真値)を得ることができる。
上述した零相電流計測方法の概要を、電流のベクトル図を用いて説明する。
図7は、絶縁が良好のときの電流のベクトル関係を示す図である。図上段は図5(a)と同じである。計測された零相電流値Ioは図中段に示される電流値(=I0c3+Ira3+I0b3)であるが、注入電流値Ioxをc相の対地電圧Vcnから90度進んだ充電電流値Ioc3と同じ位相で,ベクトルの方向が180度異なる電流ベクトルに置き換えた後,これを零相電流値Ioとベクトル的に加算することで、図下段に示される通り、ベクトル和は0となる。絶縁不良が生じていないのであるから、このベクトル和(=0)が真値の絶縁抵抗成分の漏れ電流Iorであることは明らかである。
しかし、零相電流計測方法によれば、充電電流値Ioc3が注入電流値Ioxにより相殺されるため、図下段に示される通り、真値と一致する零相電流値I0rが得られる。
しかし、零相電流計測方法によれば、充電電流値Ioc3が注入電流値Ioxにより相殺されるため、図下段に示される通り、真値(=Irb3)と一致する絶縁抵抗成分の漏れ電流値I0rが得られる。
しかし、零相電流計測方法によれば、充電電流値Ioc3が注入電流値Ioxにより相殺されるため、図下段に示される通り、真値(=Irc3)と一致する絶縁抵抗成分の漏れ電流値I0rが得られる。
図7〜図10のベクトル関係を数式を用いて説明する。ここでは、注入周波数fx(Hz)の検査電圧を、断面積S(m2)の変流器(Current Transformer:CT)を用いてV結線の動力電路に注入するものとする。これにより電路に誘起される電圧値(誘起電圧値)をVx,電圧発生時の磁束密度をB(T),動力電路の1相当たりの対地間容量値をC(F)とすると、誘起電圧値Vxは、(1)式で表される。
商用周波数における零相電流値が5.4mAで,その電流がすべて絶縁抵抗に起因する電流の場合,例えば4651Hzで検査電圧が0.62Vのときに流れる電流は,c相の電路が絶縁不良のときで0.01935mA,a相又はb相の電路が絶縁不良のときで0.03348mAであった。これらの値は,上記の5.4mAに比べて1%以下(0.36%又は0.62%)と十分小さく,計算上無視できる程度である。
上述した零相電流計測方法は、携帯可能な小型の零相電流計測器を用いて実施することができる。図11は、零相電流計測器の使用形態を示す図である。この零相電流計測器10は、ケースから露出するCT20及び二つのクリップ30,31を有する。CT20は、活線状態の異容量V結線の動力電路にセットする。二つのプローブの一方30はc相の任意の場所にクリップし、他方のプローブ31をアースに接続した後、注入電圧をCT20を介して電路に注入するとともに、これにより計測される零相電流Ioと注入電流Ioxの演算を行うだけで、真値に限りなく近い絶縁抵抗成分の漏れ電流Iorを計測することができる。
なお、図14では、整流回路104から出力される注入電流値が「−Iox」と表現される一方、LPF106から出力される電流値が「Ioc」と表現されているが、時間の経過とともに、これらの極性は逆転する。
なお、図14では、注入CT20aと検出CT20bとを別々のCTで構成した場合の例が示されているが、一つのCTを使い分けることもできる。
Claims (6)
- V結線に接続された商用周波数の三相交流電路に前記商用周波数よりも高い注入周波数の検査電圧を注入して前記三相交流電路の零相電流を検出し、
検出した前記零相電流から商用周波数成分の第1電流値と注入周波数成分の第2電流値とを抽出するとともに、
前記第2電流値を前記第1電流値から差し引くことを特徴とする、
零相電流計測方法。 - 前記第1電流値を最も高い対地電圧で同期検波することにより、前記対地電圧に対して同相分の第3電流値と90度の位相差が生じる第4電流値とを出力するとともに、前記第4電流値を前記第2電流値で相殺することを特徴とする、
請求項1に記載の零相電流計測方法。 - 前記第2電流値及び前記第4電流値を各々直流電圧に変換した後、変換された前記第2電流値と前記第1電流値とを極性を含めて加算することを特徴とする、
請求項2に記載の零相電流計測方法。 - 前記注入周波数が1kHz以上10kHz以下の周波数であることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の零相電流計測方法。 - 前記三相交流電路が異容量V結線構成された電路であることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の零相電流計測方法。 - V結線に接続された商用周波数の三相交流電路に前記商用周波数と異なる注入周波数の検査電圧を注入する注入手段と、
前記検査電圧が注入された前記三相交流電路の零相電流を検出する検出手段と、
検出された前記零相電流から商用周波数成分の第1電流値と注入周波数成分の第2電流値とを抽出する抽出手段と、
前記第1電流値を最も高い対地電圧で同期検波することにより、前記対地電圧に対して同相となる第3電流値と90度の位相差が生じる第4電流値とを出力するとともに、前記第4電流値を前記第2電流値と相殺させる制御手段と、
を有することを特徴とする零相電流計測器。
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