JP6715036B2 - 調圧弁および油圧ダンパ - Google Patents

調圧弁および油圧ダンパ Download PDF

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本発明は調圧弁およびこれを用いた油圧ダンパに関する。
従来、地震や風等による建築物の揺れを低減させるために、油圧ダンパが用いられていた。油圧ダンパは、油の流体抵抗を利用して、建築物の揺れに対する抵抗力(減衰力)を発生させ、建築物の揺れを吸収して耐震性、居住性を向上させる。
油圧ダンパは、作動油が充填されたシリンダと、シリンダを2つの油圧室に区分するピストンからなる。油圧ダンパは、シリンダ内のピストンがいずれの方向に移動しても減衰力が発生するように、両油圧室をつなぐ流路に調圧弁を装備している。(例えば特許文献1)
特開2006−349021号公報
図7(a)は、従来の調圧弁100を示す断面図である。調圧弁100はスプール弁であり、スリーブ115、弁体117、弁体押さえ部119、ばね123等からなる。
スリーブ115の内部には弁体117とばね123が配置される。弁体117は、ばね123によって弁体押さえ部119に押圧される。弁体117はスプール弁の形状を有し、弁体117の先端部125は、弁体押さえ部119の孔119aに嵌められる。
図7(b)は、図7(a)のX−X線断面図である。先端部125には、溝127が設けられる。溝127は、作動油の流路となる。すなわち、溝127と孔119aとの間が、流量調整部131となる。なお、溝127は、先端側から基部側に向かって徐々に深さが浅くなる。
通常時には、弁体117が弁体押さえ部119に押し付けられるため、孔119aがふさがれる。このため、作動油の移動が制限される。すなわち、弁体117と孔119aとの隙間から、作動油がスリーブ115内に漏れることがない。
図8は、この状態から弁体117が、作動油の圧力によってばね123による力に対抗して後方(図中矢印Y方向)に移動した状態を示す図である。弁体117が孔119aに沿って移動すると、作動油が溝127と孔119aの隙間を通って、スリーブ115内へ流れ込む(図中矢印Z方向)。すなわち、弁体117の移動量によって、流量調整部131において流れる作動油の流量が調整される。
ここで、弁体117の先端部125が、孔119aに挿入され、先端部125は孔119aに沿って移動する。このため、先端部125と孔119aとが、弁体117の軸方向への移動のガイドとして機能する。すなわち、先端部125と孔119aとは、弁体117のガイドとしての機能と、流量調整部131としての機能を有する。
このような調圧弁100における流量調整部131は、チョーク形絞りに近い特性を示すものであり、流量調整部131を円断面形状とした場合において、流量長が助走距離(0.065×Red(レイノルズ数))よりも十分に長い場合には、以下のPoiseuille式が適用される。
Q=(πd/128μl)・Δp
(Q:流量、d:流路径、μ:動粘度係数、l:流路長、Δp:圧力差)
一方、油圧ダンパに使用される作動油は、温度によって粘性が変化する。この場合、上式のように、流量調整部131においては、動粘度係数によって圧力差が同じの場合の流量が変化する。すなわち、調圧弁を通過する際の流体抵抗が、温度によって変化し、環境温度によって減衰特性が一定にならない。
これに対し、オリフィス形の絞りは、チョーク形の絞りに対して流路長を0に近づけたものであり、流量に対して動粘度係数の影響がない。したがって、作動油の粘性によらず、一定の減衰特性を得ることができる。
しかし、前述したように、スプール弁においては、弁体117の先端部125と孔119aとは弁体117のガイドとして機能させるためには、ある程度以上の長さの先端部125の挿入代が必要である。このため、粘性変動の影響が大きくなるという問題がある。
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、温度変化に対して減衰特性の変化が小さい調圧弁およびこれを用いた油圧ダンパを提供することを目的とする。
前述した目的を達するために第1の発明は、筒状のスリーブと、前記スリーブ内に設けられるスプール状の形状を有した弁体と、前記弁体の先端部が貫通する弁体押さえ部と、前記弁体押さえ部から突出する前記弁体の先端部が挿入される挿入部を有するガイド部と、前記弁体を前記弁体押さえ部に押し付けるばねと、を具備し、前記弁体の先端部には、切欠き状の溝が形成され、前記弁体押さえ部の孔と前記溝との間が油の流量調整部となり、前記ガイド部と前記弁体押さえ部との間に、前記溝と前記ガイド部のとの間の流路とは別の流路から油が流入する中間油室が形成され、前記流量調整部は、前記中間油室から前記スリーブ内への油の流路となることを特徴とする調圧弁である。
前記別の流路は、前記ガイド部に形成され、前記弁体の先端部が挿通される孔とは別の孔であってもよい。
また、前記弁体の先端部の挿入方向における、前記弁体押さえ部の長さが前記ガイド部の長さよりも短くてもよい。
また、前記弁体押さえ部の孔は、前記弁体の先端部の貫通長さが短くなるように、開口側に拡径するテーパ部を具備してもよい。
第1の発明によれば、ガイド部と弁体押さえ部とが別々の位置に形成される。このため、作動油が、ガイド部以外の部位から流量調整部へ流入する。この結果、流量調整部の流路長を、ガイド部の全長よりも短くすることができるため、前述したように、作動油の粘性変化の影響を抑制することができる。また、この際、弁体の先端部がガイド部に挿入されるため、弁体の傾きなどを防止することができる。
この場合、ガイド部に、弁体の先端部が挿入される孔とは別の孔を形成することで、簡易な構造で中間油室への流路を形成することができる。
また、弁体押さえ部の孔に、開口側に拡径するテーパ部を形成することで、前述した流路長をさらに短くしたのと同様の効果を得ることができる。このため、作動油の粘性変化の影響を抑制することができる。
第2の発明は、第1の発明に係る調圧弁と、シリンダと、前記シリンダを各油圧室に区分し、前記シリンダ内に移動可能に設けられたピストンと、を具備し、前記調圧弁は、前記各油圧室をつなぐ流路に設けられ、開度が変化することを特徴とする油圧ダンパである。
第2の発明によれば、環境温度の変化による減衰特性の変化の少ない油圧ダンパを得ることができる。
本発明によれば、温度変化に対して減衰特性の変化が小さい調圧弁およびこれを用いた油圧ダンパを提供することができる。
油圧ダンパ1の構造を示す図。 (a)は、調圧弁11を示す断面図、(b)は(a)のG−G線断面。 調圧弁11が動作した状態を示す図。 調圧弁11aを示す断面図。 調圧弁11aが動作した状態を示す図。 流量調整部31の他の実施形態を示す図。 (a)は、調圧弁100を示す断面図、(b)は(a)のX−X線断面。 調圧弁100が動作した状態を示す図。
以下、図面を参照しながら、本発明の油圧ダンパについて詳細に説明する。図1は、油圧ダンパ1の構造を示す図である。油圧ダンパ1は、主に、シリンダ3、ピストンロッド5a、5b、ピストン7、調圧弁11a、11b等から構成される。なお、油圧ダンパの構造は、図示した例には限られない。また、アキュムレータ等の構造は図示を省略する。
円筒状のシリンダ3内には、ピストン7が移動可能に設けられる。ピストン7の両側には、円柱状のピストンロッド5a、5bが設けられる。シリンダ3にはジョイント13aが連結される。また、ピストンロッド5bにはジョイント13bが連結される。ジョイント13a、13bは、建築物のブレースや基台に固定される。
シリンダ3内は、油圧室9aと油圧室9bとに区分される。油圧室9aと、油圧室9bには作動油が充填される。ピストン7には、油圧室9aと油圧室9bとをつなぐ流路に設けられる調圧弁11(11a、11b)が配置される。各油圧室の圧力差に応じて、調圧弁の11の開度が変化する。なお、調圧弁11の構造については、詳細を後述する。
次に、図1を用いて、油圧ダンパ1の動作について詳細に説明する。図1は、建築物に地震・風などの力が働き、ピストン7に外力が働く場合を示す。ピストン7がA方向に移動すると、油圧室9aに充填された作動油が圧縮される。油圧室9aで圧縮された作動油は、調圧弁11aに流入する(図中矢印C)。
所定圧力以上の作動油が調圧弁11aに流入すると、調圧弁11aが開き、作動油は調圧弁11aを介して油圧室9bへ流入する(図中矢印D)。このように、ピストン7が、A方向に移動する速度に対し、調圧弁11aに設けられるばね等を調整することで、ピストン7にはA方向の力を打ち消す方向に、減衰力が発生する。
次に、建築物に働く地震や風などの力の方向が、反転した場合について説明する。ピストン7がB方向に移動すると、油圧室9bに充填された作動油が圧縮される。油圧室9bで圧縮された作動油は、調圧弁11bに流入する(図中矢印E)。
所定圧力以上の作動油が調圧弁11bに流入すると、調圧弁11bが開き、作動油は調圧弁11bを介して油圧室9aへ流入する(図中矢印F)。このように、ピストン7が、B方向に移動する速度に対し、調圧弁11bに設けられるばね等を調整することで、ピストン7にはB方向の力を打ち消す方向に、減衰力が発生する。
次に、調圧弁11について詳細に説明する。図2(a)は、調圧弁11の構造を示す断面図であり、図2(b)は、図2(a)のG−G線断面図である。調圧弁11は、スリーブ15と、弁体17と、ガイド部21と、中間油室33等から構成される。
弁体17はスプール弁の形状を有し、弁体17の先端部25aは弁体押さえ部19の孔19aに挿通される。また、弁体押さえ部19から突出する先端部25aの先端側が、ガイド部21の挿入部35に挿通される。なお、弁体17の後端部25bは、ばね23の中心部に配置される。
なお、弁体17の先端部25aと後端部25bとの間には、スリーブ15の内面と接触するようなフランジ部は形成されない。すなわち、先端部25aの先端側が挿通されるガイド部21によって、弁体17の傾きが防止される。
先端部25aには、切欠き状の溝27が設けられる。溝27は、作動油の流路となる。すなわち、溝27と孔19aとの間(先端部25aの基部側)が、流量調整部31となる。なお、溝27は、先端側から基部側に向かって徐々に深さが浅くなる。
通常時においては、弁体17は、ばね23によって弁体押さえ部19方向に押し付けられて、孔19aを塞ぐ。すなわち、溝27と孔19aとの隙間から、作動油がスリーブ15内へ流入することがない。
弁体押さえ部19とガイド部21の間には、中間油室33が設けられる。また、ガイド部21には、先端部25aが挿通される挿入部35とは別に、挿入部35よりも十分に流路面積が大きな孔29が設けられる。すなわち、中間油室33は、高圧側油室と同一の圧力の作動油が充填される。
図3は、弁体17が、作動油の圧力によってばね23による力に対抗して後方(図中矢印H方向)に移動した状態を示す図である。弁体17が孔19aに沿って移動すると、作動油が溝27と孔19aの隙間(流量調整部31)を通って、スリーブ15内へ流れ込む(図中矢印I方向)。すなわち、弁体17の移動量によって、流量調整部31において流れる作動油の流量が調整される
ここで、作動油は、中間油室33から流量調整部31へ流入する。すなわち、高圧側油室から中間油室33へ作動油が流入する際には、十分な流路面積を有するため、粘性の変化の影響が小さい。また、流量調整部31の流路長を、弁体押さえ部19の厚み分のみとすることができる。
ここで、弁体押さえ部19の厚みは、強度的に必要な最低限の厚みでよいため、従来と比較して、流量調整部31における流路長をきわめて短くすることができる。このため、従来と比較して、粘性の影響を小さくすることができる。この際、先端部25aがガイド部21の挿入部35に挿入されているため、弁体17の傾きが防止される。すなわち、ガイド機能と流量調整部31とが異なる位置に形成される。
以上のように、本実施形態によれば、流量調整部31の流路長を短くすることができる。また、中間油室33への流路面積は十分に大きい。このため、環境温度による作動油の粘性の変化の影響を抑制することができる。また、先端部25aの先端側がガイド部21の挿入部35に挿入されているため、弁体17のガイド機能を有する。
なお、高圧側油室から中間油室33への流路としては、ガイド部21の孔29としたが、ガイド部21とは別の流路を形成してもよい。この際には、中間油室33への流路の流路面積が、挿入部35と溝27とで形成される流路の流路面積よりも十分に大きくすることで、中間油室33への作動油の流入時の粘性の影響を小さくすることができる。
次に、第2の実施形態について説明する。図4は、調圧弁11aの断面図である。なお、以下の説明において、調圧弁11と同一の機能を奏する構成については、図2と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
調圧弁11aは調圧弁11とほぼ同様の構成であるが、弁体17のガイド機構が異なる。先端部25aは、弁体押さえ部19の孔19aにのみ挿入されて、ガイド部21には挿入されない。この際、流量調整部31(弁体押さえ部19)の前方は、高圧側油室33a(高圧側油室33aと接続される流路を含む)となる。
また、スリーブ15の内部には、ガイド部21aが設けられる。ガイド部21aの挿入部35aには後端部25bが挿入される。
図5は、この状態から弁体17が、作動油の圧力によってばね23による力に対抗して後方(図中矢印J方向)に移動した状態を示す図である。弁体17が孔19aに沿って移動すると、作動油が溝27と孔19aの隙間(流量調整部31)を通って、スリーブ15内へ流れ込む(図中矢印K方向)。すなわち、弁体17の移動量によって、流量調整部31において流れる作動油の流量が調整される
ここで、作動油は、高圧側油室33aから流量調整部31へ流入する。また、流量調整部31の流路長を、弁体押さえ部19の厚み分のみとすることができる。このため、粘性の変化の影響が小さい。また、後端部25bは挿入部35aに沿って移動する。このため、弁体17のガイド機能として機能する。
第2の実施形態の調圧弁11aによれば、調圧弁11と同一の効果を得ることができる。このように、流量調整部31の流路長を弁体押さえ部19の最低限の厚みとし、流量調整部31とは別の部位に、弁体17のガイド機能を設けることで、減衰特性の安定性と弁体17のガイドとを両立することができる。
次に、第3の実施形態について説明する。図6は、調圧弁11、11aの軸方向における流量調整部31の拡大断面図である。本実施形態では、弁体押さえ部19の孔19aの断面形状が異なる。弁体押さえ部19の孔19aは、開口側(中間油室33または高圧側油室33a側)に拡径するテーパ部37を具備する。
このようにすることで、弁体17の先端部25aの貫通長さ(流路長)が短くなる。この結果、前述したように、粘性の変化の影響をさらに抑制することができる。
なお、テーパ部37の方向は、逆向きであってもよく、弁体押さえ部19の両面側に向けて拡径するテーパ部37を設けてもよい。
第3の実施の形態によれば、流量調整部31の流路長をさらに短くすることができる。このため、前述したオリフィス形絞りに近い形とすることができる。この結果、粘性の変化の影響を抑制することができる。
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る油圧ダンパ等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1……油圧ダンパ
3………シリンダ
5a、5b………ピストンロッド
7………ピストン
9a、9b………油圧室
11、11a、11b………調圧弁
13a、13b………ジョイント
15………スリーブ
17………弁体
19………弁体押さえ部
19a………孔
21、21a………ガイド部
23………ばね
25a………先端部
25b………後端部
27………溝
29………孔
31………流量調整部
33………中間油室
33a………高圧側油室
35、35a………挿入部
37………テーパ部
100………調圧弁
115………スリーブ
117………弁体
119………弁体押さえ部
119a………孔
123………ばね
125………先端部
127………溝
131………流量調整部

Claims (5)

  1. 筒状のスリーブと、
    前記スリーブ内に設けられるスプール状の形状を有した弁体と、
    前記弁体の先端部が貫通する弁体押さえ部と、
    前記弁体押さえ部から突出する前記弁体の先端部が挿入される挿入部を有するガイド部と、
    前記弁体を前記弁体押さえ部に押し付けるばねと、
    を具備し、
    前記弁体の先端部には、切欠き状の溝が形成され、前記弁体押さえ部の孔と前記溝との間が油の流量調整部となり、
    前記ガイド部と前記弁体押さえ部との間に、前記溝と前記ガイド部との間の流路とは別の流路から油が流入する中間油室が形成され、前記流量調整部は、前記中間油室から前記スリーブ内への油の流路となることを特徴とする調圧弁。
  2. 前記別の流路は、前記ガイド部に形成され、前記弁体の先端部が挿通される孔とは別の孔であることを特徴とする請求項1記載の調圧弁。
  3. 前記弁体の先端部の挿入方向における、前記弁体押さえ部の長さが前記ガイド部の長さよりも短いことを特徴とする請求項1または請求項2記載の調圧弁。
  4. 前記弁体押さえ部の孔は、前記弁体の先端部の貫通長さが短くなるように、開口側に拡径するテーパ部を具備することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の調圧弁。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載の調圧弁と、
    シリンダと、
    前記シリンダを各油圧室に区分し、前記シリンダ内に移動可能に設けられたピストンと、
    を具備し、
    前記調圧弁は、前記各油圧室をつなぐ流路に設けられ、開度が変化することを特徴とする油圧ダンパ。
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