JP6714271B2 - 呼吸に関するばらつき値を得る方法、及び呼吸の安定性評価システム - Google Patents
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現在、中枢性睡眠時無呼吸を定量的に評価する方法としては、無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index:AHI)が代表的であり、睡眠一時間当たりの無呼吸、低呼吸の回数で定義されている。心不全治療により肺動脈楔入圧が低下するとAHIも低下するが(Circulation 1999;99:1574−1579)、心不全の予後予測指標である運動負荷試験における最大酸素摂取量とAHIとは直接の関係がなく、換気応答の亢進がみられる(Circulation 2003;107:1998−2003)。
本発明の課題は、主として、呼吸の安定性を評価するための新たな方法(呼吸の安定性を定量的に評価するための新たな指標)、呼吸の安定性を評価するための新たなシステム、それに用いうるプログラム、装置などを提供することにある。
[1]下記1〜5を含む工程から得られる、呼吸に関するばらつき値を得る方法。
1)所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る工程、
2)得られた波形情報から各呼吸波形の周期と振幅を検出する工程、
2−1)計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値、又は計測期間内の一定期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値で、各吸気ピーク又は呼気ピークの振幅を除して各振幅値を正規化する工程、
3)検出された周期(t)と前記正規化された振幅(A)の比から傾き値を算出する工程であって、前記周期(t)が、呼気ピーク(x1)からその後の吸気ピーク(x2)までの時間(t1)、又は吸気ピーク(x2)からその後の呼気ピーク(x3)までの時間(t2)であり、
前記振幅(A)が、吸気ピーク(x2)の振幅(A1)、呼気ピーク(x1)の振幅(A2)、又は呼気ピーク(x3)の振幅(A2’)であり、
前記傾き値が、時間(t1,t2)と振幅(A1)の比、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)の比から算出される値である当該工程、
4)算出された傾き値を用いてヒストグラムを作成する工程、
5)作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する工程。
1)所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る手段、
2)得られた波形情報から各呼吸波形の周期と振幅を検出する手段、
2−1)計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値、又は計測期間内の一定期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値で、各吸気ピーク又は呼気ピークの振幅を除して各振幅値を正規化する手段、
3)検出された周期(t)と前記正規化された振幅(A)の比から傾き値を算出する手段であって、前記周期(t)が、呼気ピーク(x1)からその後の吸気ピーク(x2)までの時間(t1)、又は吸気ピーク(x2)からその後の呼気ピーク(x3)までの時間(t2)であり、
前記振幅(A)が、吸気ピーク(x2)の振幅(A1)、呼気ピーク(x1)の振幅(A2)、又は呼気ピーク(x3)の振幅(A2’)であり、
前記傾き値が、時間(t1,t2)と振幅(A1)の比、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)の比から算出される値である当該手段、
4)算出された傾き値を用いてヒストグラムを作成する手段、
5)作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する演算手段、
6)算出されたばらつき値、又は上記ヒストグラム若しくはそのヒストグラムデータを出力する出力手段。
A:呼吸気流の波形情報から、呼吸波形データ(各時間ポイントとその各時間ポイントにおける各振幅)を取得するステップ、
B:取得された各時間ポイントとその各時間ポイントにおける各振幅を用いて、呼吸波形の周期と振幅を検出するステップ、
C:検出された周期と振幅情報から傾き値を算出する演算ステップ。
A:呼吸気流の波形情報から、呼吸波形データを取得する手段、
B:取得された呼吸波形データを用いて、呼吸波形の周期と振幅を検出する手段、
C:検出された呼吸波形の周期と振幅に基づき傾き値を算出する演算手段。
(1)呼吸の安定性を数値で定量的に評価することができる。したがって、病気、例えば心不全の増悪度の診断や経過観察を容易に行うことができる。また、脳梗塞や肥満など、呼吸が不安定になるものに対しても応用することができる。更には、緊張度、精神的な不安定さなどの評価にも応用することができる。
(2)悪化兆候としての「呼吸不安定」を、呼吸波形情報のみで患者の負担を軽減しつつ評価することができる。
(4)ペースメーカとの併用、また脈拍や血圧測定結果との併用により、診断の高精度化を図ることができる。
本発明に係る、呼吸の安定性評価方法(以下、「本発明評価法」という。)は、下記1〜5を含む工程から得られるばらつき値を指標として用いることを特徴とする。
1)所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る工程、
2)得られた波形情報から各呼吸波形の周期と振幅を検出する工程、
3)検出された周期(t)と振幅(A)の比から傾き値を算出する工程、
4)算出された傾き値を用いてヒストグラムを作成する工程、
5)作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する工程。
工程1は、所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る工程である。
工程2は、呼吸波形の周期と振幅を検出する工程である。
工程3は、呼吸周期(t)と振幅(A)の比から傾き値を算出する工程である。
工程4は、工程3で算出された傾き値についてヒストグラムを作成する工程である。
工程5は、傾き値のばらつき値を算出する工程である。
本発明に係るばらつき値ないしヒストグラムは、呼吸が不安定となるような被験者の病気の有無や重症度、又は被験者の状態を判断する上で指標として用いることができる。さらに病気の治療経過を評価する上でも有用である。特に本発明に係るばらつき値は、定量的な指標として有用である。
また、本発明に係るばらつき値等は、呼吸が不安定となる肥満状態の指標にも用いることができる。呼吸の安定性が重要となる、発声訓練や運動能力解析、快眠解析等を評価する指標にも用いることができる。緊張度や精神的な不安定さを評価する指標にも用いることができる。
加えて、本発明に係るばらつき値等と、脈拍、心拍数、血圧、酸素飽和度等の他の血行動態指標とを合わせれば、より確度の高い病気の診断等を行うことができる。
本発明は、次の1〜6に記載の手段を有することを特徴とする、呼吸の安定性を評価するためのシステム(以下、「本発明評価システム」という。)を含む。
2)得られた波形情報から各呼吸波形の周期と振幅を検出する手段、
3)検出された周期(t)と振幅(A)の比から傾き値を算出する演算手段、
4)算出された傾き値を用いてヒストグラムを作成する手段、
5)作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する演算手段、
6)算出されたばらつき値、又は上記ヒストグラム若しくはそのヒストグラムデータを出力する出力手段。
手段1は、所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る手段である。
手段2は、呼吸波形の周期と振幅を検出する手段である。
手段3は、呼吸周期(t)と振幅(A)の比から傾き値を算出する演算手段である。
手段4は、傾き値のヒストグラムを作成する手段である。
手段5は、傾き値のばらつき値を算出する演算手段である。
手段6は、ばらつき値等を出力する出力手段である。
本発明評価システムは、被験者の病気の有無又は被験者の状態を判断するために用いることができ、治療経過を評価する場合にも用いることができる。
本発明評価システムは、持続的気道陽圧呼吸療法(CPAP)や順応性自動制御換気療法(ASV)などの非侵襲的陽圧呼吸療法の有効性を検証するために用いることもできる。
加えて、本発明評価システムと、脈拍、心拍数、血圧、酸素飽和度等の他の血行動態指標に係るシステムとを合わせれば、より確度の高い病気の診断等を行うことができる。
本発明は、次のAからCに記載のステップを有することを特徴とする、呼吸の安定性評価プログラム(以下、「本発明プログラム」という。)を含む。
B:取得された各時間ポイントとその各時間ポイントにおける各振幅を用いて、呼吸波形の周期と振幅を検出するステップ、
C:検出された周期と振幅情報から傾き値を算出する演算ステップ。
ステップAは、呼吸気流の波形情報から、呼吸波形データを取得するステップである。
ステップBは、呼吸波形の周期と振幅を検出するステップである。
ステップCは、呼吸波形の周期と振幅情報から傾き値を算出する演算ステップである。
本発明プログラムは、次のDに記載のステップ、次のD及びEに記載のステップ、又は次のD〜Fに記載のステップを更に有することができる。
D:算出された傾き値のヒストグラムを作成するステップ、
E:作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する演算ステップ、
F:算出されたばらつき値、又は上記ヒストグラム若しくはそのヒストグラムデータを出力するステップ。
ステップDは、傾き値のヒストグラムを作成するステップである。
ステップEは、傾き値のばらつき値を算出する演算ステップである。
ステップFは、ばらつき値等を出力するステップである。それが可能な常法の出力プログラムを用いることができる。
上記出力は、表示画面やプリンターへの出力の他、前記した記録媒体へ電子情報として出力してもよく、電気通信回線を用いて、遠隔地の受信端末に出力することもできる。
本発明は、次のAからCに記載の手段を備えることを特徴とする呼吸の安定性評価装置(以下、「本発明装置」という。)を含む。
A:呼吸気流の波形情報から、呼吸波形データを取得する手段、
B:取得された呼吸波形データを用いて、呼吸波形の周期と振幅を検出する手段、
C:検出された呼吸波形の周期と振幅に基づき傾き値を算出する演算手段。
手段Aは、呼吸気流の波形情報から呼吸波形データを取得する手段である。
手段Bは、各呼吸ピークの時間と振幅を検出する手段である。
手段Cは、呼吸波形の周期と振幅に基づき傾き値を算出する演算ステップである。
上記出力は、表示画面やプリンターへの出力の他、前記したように記録媒体へ電子情報として出力してもよく、電気通信回線を用いて、遠隔地の受信端末に出力することもできる。
本発明装置は、次のDに記載の手段、次のD及びEに記載の手段、又は次のD〜Fに記載の手段を更に備えることができる。
D:算出された傾き値のヒストグラムを作成する手段、
E:作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する演算手段、
F:算出されたばらつき値、又は上記ヒストグラム若しくはそのヒストグラムデータを出力する手段。
手段Dは、傾き値のヒストグラムを作成する手段である。
手段Dは、傾き値のばらつき値を算出する演算手段である。
手段Eは、ばらつき値等を出力する手段である。かかる手段としては、それが可能な常法の出力プログラムを有するコンピューターなどを挙げることができる。
上記出力は、表示画面やプリンターへの出力の他、前記したように記録媒体へ電子情報として出力してもよく、電気通信回線を用いて、遠隔地の受信端末に出力することもできる。
本発明装置から出力された情報(各呼吸ピークの時間と振幅、傾き値、ヒストグラム、ばらつき値)については、スマートフォン、ウェアラブル端末等からインターネット等の電気通信回線を用いて、遠隔地にある病院等に送信することができる。そして、送信先の受信端末で当該送信情報を受信し、ばらつき値を取得することにより、離れた場所において、被験者の呼吸の安定性を評価したり、診断したりといった被験者のモニタリングを行うことができる。
送信情報が、ばらつき値を算出するための前情報(各呼吸ピークの時間と振幅、傾き値、ヒストグラム)である場合には、受信地において、当該前情報からばらつき値を適当な演算手段により算出することになる。
健常者(男性、31歳)、正常に近い呼吸の心不全患者(男性、56歳)、不安定呼吸を伴う心不全患者(男性、84歳)、及びチェーンストークス呼吸を伴う心不全患者(男性、50歳)について昼間安静時おける15分間の自発呼吸信号をType3簡易モニターSAS3200(登録商標、日本光電社製、以下同じ)にて収集し解析し、各被験者の呼吸波形パターンを得た。その情報から、経鼻圧センサー信号を抽出し、ローパスフィルターを用いたデジタル演算処理により1ヘルツ以上の高周波成分をノイズとして除去した。
続いて、計測したすべての吸気振幅の平均値で求めた各吸気振幅を除して各振幅値を「正規化」した。正規化された各吸気振幅と、吸気ピークからそれぞれ直前の呼気ピークとの時間を算出し、そのデータを基に吸気毎の傾き値(tanθ1=(正規化された吸気振幅)÷(吸気ピークから直前の呼気ピークまでの時間))を算出した。
最後に当該傾き値のヒストグラムを作成すると共に、そのばらつき値(IQR)を求めた。
心不全患者と健常者の呼吸波形情報から得られた吸気の傾き値のIQRを比較検討した。
心不全患者(年齢66±17歳)16名と健常者(年齢36±3歳)5名について、実施例1と同様にして当該IQRを求めた。
チェーンストークス呼吸の治療機器である順応性自動制御換気療法(ASV)の効果を吸気の傾き値のIQRで評価した。
実施例2の心不全患者16名について、実施例2における15分間の自発呼吸の後にASV装置(オートセットCS(登録商標)、帝人ファーマ社製)を装着し、実施例1と同様にして、吸気の傾き値(tanθ1)のヒストグラムと当該IQRを求めた。
本発明による呼吸の安定性評価用いて、被験者の疾病に合わせて更に精度良く評価する方法について説明する。
上記の各説明において、正規化のための平均値を、所定計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の絶対値の平均値としたが、吸気振幅は吸気振幅の平均値、呼気振幅は呼気振幅の平均値で各呼気、吸気振幅を除して正規化しても良く、一定期間、例えば1〜5分の間の振幅平均値としても良く、また、複数波形の振幅値を比較し、大きく振幅が変化した点を、センサーずれした点として捉え、その前後の一定期間、例えば1〜5分の間の振幅平均値を用いても良い。
Claims (9)
- 下記1〜5を含む工程から得られる、呼吸に関するばらつき値を得る方法。
1)所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る工程、
2)得られた波形情報から各呼吸波形の周期と振幅を検出する工程、
2−1)計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値、又は計測期間内の一定期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値で、各吸気ピーク又は呼気ピークの振幅を除して各振幅値を正規化する工程、
3)検出された周期(t)と前記正規化された振幅(A)の比から傾き値を算出する工程であって、前記周期(t)が、呼気ピーク(x1)からその後の吸気ピーク(x2)までの時間(t1)、又は吸気ピーク(x2)からその後の呼気ピーク(x3)までの時間(t2)であり、
前記振幅(A)が、吸気ピーク(x2)の振幅(A1)、呼気ピーク(x1)の振幅(A2)、又は呼気ピーク(x3)の振幅(A2’)であり、
前記傾き値が、時間(t1,t2)と振幅(A1)の比、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)の比から算出される値である当該工程、
4)算出された傾き値を用いてヒストグラムを作成する工程、
5)作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する工程。 - 前記時間(t1,t2)と振幅(A1)の比、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)の比から算出される前記傾き値が、下記のいずれかの計算式に基づき算出される値である、請求項1に記載の呼吸に関するばらつき値を得る方法。
- 前記ばらつき値が、四分位範囲(IQR)又は四分位偏差である、請求項1又は2に記載の呼吸に関するばらつき値を得る方法。
- 呼吸気流の波形情報が、被験者の呼吸気流の変動を検知して測定される呼吸気流の波形情報、又は被験者の体動や呼吸動作を検知して測定される呼吸気流の波形情報である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の呼吸に関するばらつき値を得る方法。
- 下記1〜6に記載の手段を有することを特徴とする、呼吸の安定性評価システム。
1)所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る手段、
2)得られた波形情報から各呼吸波形の周期と振幅を検出する手段、
2−1)計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値、又は計測期間内の一定期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値で、各吸気ピーク又は呼気ピークの振幅を除して各振幅値を正規化する手段、
3)検出された周期(t)と前記正規化された振幅(A)の比から傾き値を算出する手段であって、前記周期(t)が、呼気ピーク(x1)からその後の吸気ピーク(x2)までの時間(t1)、又は吸気ピーク(x2)からその後の呼気ピーク(x3)までの時間(t2)であり、
前記振幅(A)が、吸気ピーク(x2)の振幅(A1)、呼気ピーク(x1)の振幅(A2)、又は呼気ピーク(x3)の振幅(A2’)であり、
前記傾き値が、時間(t1,t2)と振幅(A1)の比、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)の比から算出される値である当該手段、
4)算出された傾き値を用いてヒストグラムを作成する手段、
5)作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する演算手段、
6)算出されたばらつき値、又は上記ヒストグラム若しくはそのヒストグラムデータを出力する出力手段。 - 前記時間(t1,t2)と振幅(A1)の比、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)の比から算出される前記傾き値が、下記いずれかの計算式に基づき算出される値である、請求項5に記載の呼吸の安定性評価システム。
- ばらつき値が、四分位範囲(IQR)又は四分位偏差である、請求項5又は6に記載の呼吸の安定性評価システム。
- 呼吸気流の波形情報が、被験者の呼吸気流の変動を検知して測定される呼吸気流の波形情報、又は被験者の体動や呼吸動作を検知して測定される呼吸気流の波形情報である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の呼吸の安定性評価システム。
- 電気通信回線により送信された呼吸気流の波形情報を受信するための受信手段を更に備える、請求項5〜8のいずれか一項に記載の呼吸の安定性評価システム。
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