JP6714271B2 - 呼吸に関するばらつき値を得る方法、及び呼吸の安定性評価システム - Google Patents

呼吸に関するばらつき値を得る方法、及び呼吸の安定性評価システム Download PDF

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本発明は、呼吸の安定性を評価する方法に関するものである。また、本発明は、呼吸の安定性を評価するためのシステム、プログラム、装置などに関するものである。
例えば、慢性心不全に罹患している患者は、心不全の増悪と改善を繰り返し、その都度、心機能が低下していき最終的に死に至る。このため心不全の増悪を早期に発見し治療を行うことが心不全患者の予後改善に有用であると考えられる。また心不全患者では高率に睡眠呼吸障害を合併することが報告されている。心不全に特有な睡眠呼吸障害としては、夜間就寝中の中枢性睡眠時無呼吸があり(N Engl J Med 1993;328:1230−5)、典型例では呼吸の振幅が周期的に漸増漸減を繰り返すチェーンストークス呼吸を伴う。
現在、中枢性睡眠時無呼吸を定量的に評価する方法としては、無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index:AHI)が代表的であり、睡眠一時間当たりの無呼吸、低呼吸の回数で定義されている。心不全治療により肺動脈楔入圧が低下するとAHIも低下するが(Circulation 1999;99:1574−1579)、心不全の予後予測指標である運動負荷試験における最大酸素摂取量とAHIとは直接の関係がなく、換気応答の亢進がみられる(Circulation 2003;107:1998−2003)。
健常者では、安静覚醒時に周期性呼吸(規則的呼吸と呼吸停止が周期的に繰り返される呼吸)や振幅の乱れは特に認められない。一方、中枢性睡眠時無呼吸を伴う心不全患者では、半数以上に安静覚醒時にも周期性呼吸が認められると報告されており(Circulation 1999;100:2418−24)、より重症で心機能が悪く、生命予後が不良であると報告されている(Int J Cardiol.2009;137:47−53)。このような症例では、周期性呼吸に伴い、心拍数、血圧、脳血流などの血行動態指標が大きく変動し、心不全の血行動態に悪影響を及ぼしている可能性がある(J Appl Physiol 1997;83:1184−1191)。近年では、順応性自動制御換気療法(Adaptive−Servo Ventilation:ASV)という、患者の呼吸に同調して陽圧をかけ、患者の換気量により自動的に適正圧をサポートする非侵襲的陽圧呼吸療法が心不全に伴う周期性呼吸の新しい治療法となっている(Am J Respir Crit Care Med 2001;164:614−9.)。また周期性呼吸と言えない程度に呼吸が不安定な症例も認められる。
したがって、呼吸の安定性を定量的に評価できれば、呼吸情報のみで心不全の悪化や改善が推測できる可能性がある。
特許文献1には、睡眠中の被験者の呼吸波形を呼吸気流などから継続的に計測記録し、各計測時刻についてフーリエ窓変換を行って周波数スペクトルを生成し、呼吸周波数を含む帯域を抽出する技術が開示されている。睡眠中の各時刻において、被験者の呼吸周期の規則性を示す指標を算出し、この指標の睡眠中の時間推移をグラフとして表している。
国際公開第2011/019091号
呼吸の乱れには、呼吸周期の変動と呼吸振幅の変動が認められる。しかしながら、特許文献1に記載の発明や従来技術では呼吸周期のみの解析であり、呼吸振幅や周期と振幅の組み合わせによる指標は特に提案されていない。
本発明の課題は、主として、呼吸の安定性を評価するための新たな方法(呼吸の安定性を定量的に評価するための新たな指標)、呼吸の安定性を評価するための新たなシステム、それに用いうるプログラム、装置などを提供することにある。
本発明者らは、呼吸波形の周期と吸気又は呼気の振幅との比から得られる「傾き」に着目した。そして、かかる「傾き」をヒストグラムとして表し、その「ばらつき」を算出し評価することにより、上記課題を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明としては、例えば、次の態様のものを挙げることができる。
[1]下記1〜5を含む工程から得られる、呼吸に関するばらつき値を得る方法。
1)所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る工程、
2)得られた波形情報から各呼吸波形の周期と振幅を検出する工程、
2−1)計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値、又は計測期間内の一定期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値で、各吸気ピーク又は呼気ピークの振幅を除して各振幅値を正規化する工程、
3)検出された周期(t)と前記正規化された振幅(A)の比から傾き値を算出する工程であって、前記周期(t)が、呼気ピーク(x1)からその後の吸気ピーク(x2)までの時間(t1)、又は吸気ピーク(x2)からその後の呼気ピーク(x3)までの時間(t2)であり、
前記振幅(A)が、吸気ピーク(x2)の振幅(A1)、呼気ピーク(x1)の振幅(A2)、又は呼気ピーク(x3)の振幅(A2’)であり、
前記傾き値が、時間(t1,t2)と振幅(A1)の比、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)の比から算出される値である当該工程
4)算出された傾き値を用いてヒストグラムを作成する工程、
5)作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する工程。
[2]下記1〜に記載の手段を有することを特徴とする、呼吸の安定性評価システム。
1)所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る手段、
2)得られた波形情報から各呼吸波形の周期と振幅を検出する手段、
2−1)計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値、又は計測期間内の一定期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値で、各吸気ピーク又は呼気ピークの振幅を除して各振幅値を正規化する手段、
3)検出された周期(t)と前記正規化された振幅(A)の比から傾き値を算出する手段であって、前記周期(t)が、呼気ピーク(x1)からその後の吸気ピーク(x2)までの時間(t1)、又は吸気ピーク(x2)からその後の呼気ピーク(x3)までの時間(t2)であり、
前記振幅(A)が、吸気ピーク(x2)の振幅(A1)、呼気ピーク(x1)の振幅(A2)、又は呼気ピーク(x3)の振幅(A2’)であり、
前記傾き値が、時間(t1,t2)と振幅(A1)の比、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)の比から算出される値である当該手段
4)算出された傾き値を用いてヒストグラムを作成する手段、
5)作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する演算手段、
6)算出されたばらつき値、又は上記ヒストグラム若しくはそのヒストグラムデータを出力する出力手段
[3]次のAからCに記載のステップを有することを特徴とする、呼吸の安定性評価プログラム。
A:呼吸気流の波形情報から、呼吸波形データ(各時間ポイントとその各時間ポイントにおける各振幅)を取得するステップ、
B:取得された各時間ポイントとその各時間ポイントにおける各振幅を用いて、呼吸波形の周期と振幅を検出するステップ、
C:検出された周期と振幅情報から傾き値を算出する演算ステップ。
[4]下記AからCを含む手段を備えることを特徴とする、呼吸の安定性評価装置。
A:呼吸気流の波形情報から、呼吸波形データを取得する手段、
B:取得された呼吸波形データを用いて、呼吸波形の周期と振幅を検出する手段、
C:検出された呼吸波形の周期と振幅に基づき傾き値を算出する演算手段。
[5]上記[4]に記載の装置を用いること、及びその装置の出力手段から出力された情報を電気通信回線により受信することができる受信手段を備えた装置を用いることを特徴とする、被験者のモニタリングシステム。
本発明によれば、例えば、次のような効果を期待することができる。
(1)呼吸の安定性を数値で定量的に評価することができる。したがって、病気、例えば心不全の増悪度の診断や経過観察を容易に行うことができる。また、脳梗塞や肥満など、呼吸が不安定になるものに対しても応用することができる。更には、緊張度、精神的な不安定さなどの評価にも応用することができる。
(2)悪化兆候としての「呼吸不安定」を、呼吸波形情報のみで患者の負担を軽減しつつ評価することができる。
(3)在宅でも通信機能(インターネット、スマートフォン、ウェアラブル端末等)を活用し呼吸モニターを行うことにより、早期の心不全増悪を発見することができる。在宅人工呼吸器の治療適応や効果を判定することも可能である。睡眠時無呼吸症候群にも対応しうる。
(4)ペースメーカとの併用、また脈拍や血圧測定結果との併用により、診断の高精度化を図ることができる。
被験者の1分(60秒)間の呼吸波形情報を表す。横軸は時間を、縦軸は呼吸の振幅の大きさを示す。 呼吸波形情報の模式図を表す。横軸は時間を、縦軸は呼吸の振幅を示す。 左図は、呼吸の波形情報を取り出した模式図である。右図(1)〜(4)は、左図から認識される三角概念図である。 傾き値のヒストグラムを表す。横軸はtanθの傾き値を、縦軸は傾き値の頻度を、それぞれ示す。 図4のヒストグラムに四分位範囲(IQR)を示したものである。 本発明に係る、呼吸の安定性を評価するシステムのフローを表す。 本発明に係る装置のフローを表す。 本発明に係るプログラムのフローを表す。 各被験者の呼吸波形パターンとその傾き値のヒストグラムを表す。最上段の図は健常者の、2段目の図は正常に近い呼吸の心不全患者の、3段目の図は不安定呼吸を伴う心不全患者の、最下段の図はチェーンストークス呼吸を伴う心不全患者の、各呼吸パターン等を表す。 四分位範囲(IQR)を表す。左カラムは健常者の結果を、右カラムは心不全患者の結果を、それぞれ示す。 呼吸波形パターンとその傾き値のヒストグラムを表す。上段の図は、自発呼吸における呼吸波形パターンとASV装着における呼吸波形パターンを表す。下段の図は、それぞれの傾き値のヒストグラムを表す。 自発呼吸における吸気の傾き値のIQRとASV装着における吸気の傾き値のIQRを表す。 心不全患者の自発呼吸時と順応性自動制御換気療法時における各血行動態指標のグラフを表す。
1.呼吸の安定性を評価する方法
本発明に係る、呼吸の安定性評価方法(以下、「本発明評価法」という。)は、下記1〜5を含む工程から得られるばらつき値を指標として用いることを特徴とする。
1)所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る工程、
2)得られた波形情報から各呼吸波形の周期と振幅を検出する工程、
3)検出された周期(t)と振幅(A)の比から傾き値を算出する工程、
4)算出された傾き値を用いてヒストグラムを作成する工程、
5)作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する工程。
ここで、前記周期(t)の具体例としては、図3に示すように、呼気ピーク(x1)からその後の吸気ピーク(x2)までの時間(t1)、吸気ピーク(x2)からその後の呼気ピーク(x3)までの時間(t2)を挙げることができ、前記振幅(A)の具体例としては、吸気ピーク(x2)の振幅(A1)、呼気ピーク(x1)の振幅(A2)、呼気ピーク(x3)の振幅(A2’)を挙げることができる。そして、前記傾き値は、時間(t1,t2)と振幅(A1)から、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)から、下記いずれかの計算式に基づき算出することができる。
扱い易い代表値としてはA1/t1であるが、評価時に統一して用いれば上記したどの値を用いても良い。また周期として(t1+t2)を用い、傾き値としてA1/(t1+t2)やA2/(t1+t2)、(A1+A2)/(t1+t2)を用いることや呼吸波形のゼロクロス点による周期t3,t4を用いることも本発明に含まれる。また、傾きとしてθ1〜θ2’を用いる場合は0〜90°、0〜π/2radのどの表記を用いても良い。
1.1 工程1について
工程1は、所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る工程である。
計測期間は特に制限されないが、長期間に渡ると被験者の状態、被験者の姿勢が変わり呼吸の測定強度が変わったり、呼吸を検出するセンサー位置がずれたりという変動が課題となる。また、診察における患者の体力的負担や、病院内での計測装置占有率といった点からも課題である。そのため1回の計測期間として、通常、10分間〜30分間程度の範囲内が適当であり、好ましくは15分間程度連続して呼吸波形を計測することにより、本発明の呼吸安定指標である四分位範囲(IQR:Interquartile range)等のばらつき値を得られればよい。また、計測時期は、夜間就寝時のみならず、昼間の覚醒時でもよい。安静時や運動時であってもよい。しかしながら患者の症状が体調によって影響され、計測期間内に現れないこともあり得ることから、心電図計測におけるホルターセットのように長時間測定する機器を用いることにより、長時間の測定の中から、増悪時の波形を抽出するといった方法を取ることで、より患者の正確な状態を知ることができる。
呼吸気流の波形情報は、呼吸気流の変動を電気信号として取得することができる手段により得ることができる。かかる手段としては、呼吸気流の変動を電気信号として取得できれば特に制限されないが、例えば、鼻腔付近に取り付け、呼吸気流の温度とその他の外気の温度とを判別して測定検知するサーマルセンサー、短冊状部材の呼吸気流による変形に起因する抵抗変化を検知するセンサー、風車構造の気流による回転を利用したセンサー、圧電フィルムなどにより検知する圧センサー等を挙げることができる。また、呼吸気流を直接測定するのではなく、胸郭や腹部の動き、例えば、被験者の胸や腹に巻かれたバンドが呼吸動作で伸長されるテンションや、被験者の下に敷くマットで感圧を検知するセンサーも挙げることができる。更に、被験者に何らかのセンシング手段を装着して呼吸動作を検知するのではなく、電磁波を離れた位置から被験者に照射し、反射波を解析することで被験者の体動や呼吸動作を検知することや、非接触式の呼吸センサーを用いることもできる。例えば、特開2002−71825号公報や、特開2005−237569号公報、特開2005−270570号公報に開示されている手段を用いることもできる。これらの中、経鼻圧センサーを用いるのが好ましい。
センサー等により得られた呼吸気流の電気信号は、通常、増幅され、A/D変換されて、デジタル呼吸波形データとして出力される。出力された当該デジタルデータは、速やかに次の工程2に供することができるが、適当な記録媒体(CD、DVD、ブルーレイ等の光記録媒体、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、フラッシュメモリー、メモリ-カード等の半導体記録媒体等)に一旦記憶させておくこともできる。また、スマートフォン、ウェアラブル端末等からインターネット等の電気通信回線を用いて、遠隔地に当該デジタル情報を送信することもできる。そして、受信先(病院等)にて続く工程2以降を実施することもできる。
呼吸気流の波形情報は市販されている装置により得ることができ、本発明ではその市販装置を用いることができる。具体的には、例えば、Type3簡易モニターであるSAS−3200(登録商標)(日本光電社製)、モルフェウス(登録商標)Rセット(帝人ファーマ社製)、スマートウォッチPMP−300(登録商標)(パシフィックメディコ社製)を挙げることができる。
1.2 工程2について
工程2は、呼吸波形の周期と振幅を検出する工程である。
呼吸波形の周期又は各呼吸ピークの時間と振幅は、呼吸波形情報のデジタル呼吸波形データから検出することができる。かかるデジタル呼吸波形データは、例えば、サンプリング周波数が50Hzで量子化ビット数が16ビットの場合、1分間では50個×60秒=3000個の時間ポイントで、振幅が2の16乗=65536段階で表現される。これを波形にすると図1のようになる。縦軸の正の値が吸気振幅に相当し負の値が呼気振幅に相当し、正の各ピークが吸気ピークであり負の各ピークが呼気ピークであるから、各ピークを捉えれば、各呼吸ピークの時間と振幅を検出することができる。ここで呼気と吸気の極性は逆であっても良い。
各ピークは、例えば、振幅が増加から減少に転じる時間ポイント、又は減少から増加に転じる時間ポイントを算出することにより捉えることができる。具体的には、例えば、隣接する2つの時間ポイントにおける振幅差を順次計算し、その振幅差が正から負又は負から正へ転じたところを算出することにより捉えることができる。
上記計算ないし処理は、コンピューターにより実行させることができる。その際、振幅が極端に小さいピークや明らかに異常なピークは事前にノイズとしてデジタル演算処置により除去しておくことが好ましい。ノイズ除去方法としては、ローパスフィルターなどを用いた高周波成分の除去や移動平均法を用いて波形のスムージング処理を施すなどが挙げられる。スムージング処理を施した波形では、図2に示す模式図に近い正弦波状の波形となり、波形の正負ピーク値やその周期、ゼロクロス点等をより正確に把握することができる。
1.3 工程3について
工程3は、呼吸周期(t)と振幅(A)の比から傾き値を算出する工程である。
例えば、工程2で検出された、吸気及び呼気のそれぞれの各ピークの時間と振幅を用いれば、容易に傾き値を求めることができる。具体的には、例えば、吸気の傾き値は、次のようにして算出することができる。
呼吸波形を模式図的に表すと、図2のようになる。この中、一呼吸分の前後の波形情報を取り出すと、図3の上図のように表すことができる。そして、例えば、図3の上図では、呼気ピークから吸気ピークまでの時間(t1)は、x2(吸気ピーク時間)からx1(呼気ピーク時間)を差し引けば得られ、図3の下図(1)の三角形の関係から、吸気ピークの振幅(A1)を時間(t1)で除すれば、tanθ1で示される吸気の傾き値を算出することができる。また、t1を、t1の二乗とA1の二乗の和の平方根で除すれば、cosθ1で示される吸気の傾き値を、A1を、t1の二乗とA1の二乗の和の平方根で除すれば、sinθ1で示される吸気の傾き値を、それぞれ算出することができる。更には、tanθ1から、下記数2で示す公式を用いてもcosθ1とsinθ1で表される吸気の傾き値を算出することができる。
また、時間(t2)と吸気ピークの振幅(A1)とを用いても同様にtanθ1’等で表される吸気の傾き値を算出することができる(図3(2)参照)。
上記では、x1を特定の吸気ピーク直前の呼気ピークの時間と考えているが、任意の呼吸の吸気ピークの時間を(n)とし、その直前の呼気ピークの時間を(n−1)として吸気の傾き値を求めることもできる。呼吸波形が消失する無呼吸状態が認められる部位では呼吸の間隔が非常に長くなるため、吸気の傾き値tanθ1は非常に小さくなる。
同様にして、吸気振幅(A1)の逆極性の関係にある呼気振幅(A2、A2’)を用いて、呼気の傾き値をtanθ2、tanθ2’、cosθ2、cosθ2’sinθ2、又はsinθ2’等として算出することができる(図3(3)(4)参照)。
なお、傾き値は、振幅によって大きく異なることから、他のデータと直接比較することが困難な場合がある。そのため、比較検討するに際しては、サンプリングした所定計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の絶対値の平均値で各振幅を除して各振幅値を「正規化」(すなわち、振幅の比とする)し、その後、各傾き値を算出することが好ましい。したがって、本発明評価法においては、計測期間すべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値で各振幅を除して各振幅値を正規化する工程を更に含み、かかる正規化した各振幅値を用いて傾き値を算出することが好ましい。
上記では正規化のための平均値を、所定計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の絶対値の平均値としたが、吸気振幅は吸気振幅の平均値、呼気振幅は呼気振幅の平均値で各呼気、吸気振幅を除して正規化しても良く、一定期間、例えば1〜5分の間の振幅平均値としても良く、また、複数波形の振幅値を比較し、大きく振幅が変化した点を、センサーずれした点として捉え、その前後の一定期間、例えば1〜5分の間の振幅平均値を用いても良い。
ここでは、代表的な計測対象点として、振幅情報を吸気ピークの振幅(A1)としたが、振幅は呼気ピーク値(A2)でもよく、呼気ピーク値と吸気ピーク値の絶対値合計(A1+A2)の値であっても良い。また、周期は吸気ピーク時間から呼気ピーク時間を引いた値(t1)を用いたが吸気ピーク前のゼロクロス点から吸気ピークまでの時間(t3)でも、吸気ピーク前のゼロクロスから次のゼロクロスまでの半周期時間(t4)でも、吸気ピーク前のゼロクロスから2個後のゼロクロスである1波長分の時間(t5)であっても、吸気ピークから次の吸気ピークまでの1波長分の時間(t6)であっても良く、対象波形の振幅情報、周期情報であれば同様の結果を得ることができる。
これらの計算は、コンピューターにより実行させることができる。そうすることで呼吸波形情報における多くの吸気又は呼気の傾き値を容易に得ることができる。得られた傾き値は、速やかに次の工程4に供することができるが、前記したように適当な記録媒体に一旦記憶させておくこともできる。また、電気通信回線を用いて、遠隔地に当該情報を送信することもできる。そして、受信先(病院等)にて続く工程4以降を実施することもできる。ここで殆どの処理をデジタル的に把握し、コンピューターで処理することとしたが、センサーの波形を増幅したり、アナログ的に波形処理を施したりすることや、ピーク値をピークホールド回路や周期を定電流充電回路で電圧に変換するといったアナログ的に計測することが可能であることは言うまでもない。
1.4 工程4について
工程4は、工程3で算出された傾き値についてヒストグラムを作成する工程である。
例えば、傾き値(tanθ)について、図4で表されるようなヒストグラムを作成することができる。この場合、横軸は適当に見やすいように定めることができる。傾き値をcosθやsinθで算出し、それを横軸にする場合は、範囲が0〜1(θ:0〜90°)となる。
本工程で作成されたヒストグラムが釣鐘型で先鋭であるほど、吸気又は呼気の傾きが一定しており、これはすなわち呼吸が安定していることを示している。そのため当該ヒストグラムによっても呼吸の安定性を視覚的、定性的に評価することができる。
1.5 工程5について
工程5は、傾き値のばらつき値を算出する工程である。
具体的な「ばらつき値」としては特に制限されないが、例えば、四分位範囲(IQR)、四分位偏差、標準偏差、平均偏差、尖度などを挙げることができる。この中、四分位範囲(IQR)が簡便で使いやすく好ましい。また簡易的には、ヒストグラムの縦軸数値の最大値を用いても判断できることは、図9の比較から理解される。
四分位範囲(IQR)は、データを小さい順に並べて、25%タイル値(第1四分位数:Q1)と75%タイル値(第3四分位数:Q3)を決定し、その差(Q3−Q1)の横軸値から求められる数値である(図5参照)。四分位範囲(IQR)の数値が小さいほど、呼吸が安定していると評価することができる。ヒストグラムで頻度情報に直すことにより、前記したような対象呼吸波形のどのピーク値や周期情報による傾き情報を使っても、周期変動が少ない安定した呼吸では、一定の周期の頻度が高くなり正常であることを示し、周期変動が多くなると周期のばらつきが多いことから、図9の4に示すような縦軸方向にピークを見いだしにくい形状となる。そのため、図9で例示した四分位範囲では健常者0.25に対しチェーンストークス呼吸を伴う心不全者では0.96となり、明らかな数値の違いとして評価することができる。前記したように傾き情報を得る対象ポイントは色々選べ、また頻度情報の分布の評価の仕方も色々選べるが、患者の症状評価の数値としては、測定ポイントや分布評価の方法は評価者らの間で統一して用いることが良いことはいうまでもない。
四分位範囲等の計算は、コンピューターにより容易に実行させることができる。得られたばらつき値は、前記したように適当な記録媒体に一旦記憶させておくことができる。また、電気通信回線を用いて、遠隔地に当該情報を送信することもできる。そして、受信先(病院等)にて呼吸の安定性を評価することもできる。
1.6 本発明に係るばらつき値、ヒストグラムの用途
本発明に係るばらつき値ないしヒストグラムは、呼吸が不安定となるような被験者の病気の有無や重症度、又は被験者の状態を判断する上で指標として用いることができる。さらに病気の治療経過を評価する上でも有用である。特に本発明に係るばらつき値は、定量的な指標として有用である。
評価しうる具体的な病気としては、例えば、(慢性、うっ血性)心不全等の循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患、脳血管障害を主とする中枢神経疾患、睡眠時無呼吸症候群を挙げることができる。特に心不全の増悪度の診断において好ましい。
本発明に係るばらつき値等は、持続的気道陽圧呼吸療法(CPAP)や順応性自動制御換気療法(ASV)などの非侵襲的陽圧呼吸療法の有効性を検証するために用いることもできる。
また、本発明に係るばらつき値等は、呼吸が不安定となる肥満状態の指標にも用いることができる。呼吸の安定性が重要となる、発声訓練や運動能力解析、快眠解析等を評価する指標にも用いることができる。緊張度や精神的な不安定さを評価する指標にも用いることができる。
単一データのばらつき値ないしヒストグラムにより絶対的に評価することもできるが、被験者の過去又は前後のばらつき値ないしヒストグラム、又は健常者のばらつき値ないしヒストグラムと比較することにより、相対的に評価することができる。相対的に評価する場合には、正規化した振幅値から求めたばらつき値ないしヒストグラムを用いることが好ましい。
加えて、本発明に係るばらつき値等と、脈拍、心拍数、血圧、酸素飽和度等の他の血行動態指標とを合わせれば、より確度の高い病気の診断等を行うことができる。
2.呼吸の安定性評価システム
本発明は、次の1〜6に記載の手段を有することを特徴とする、呼吸の安定性を評価するためのシステム(以下、「本発明評価システム」という。)を含む。
1)所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る手段、
2)得られた波形情報から各呼吸波形の周期と振幅を検出する手段、
3)検出された周期(t)と振幅(A)の比から傾き値を算出する演算手段、
4)算出された傾き値を用いてヒストグラムを作成する手段、
5)作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する演算手段、
6)算出されたばらつき値、又は上記ヒストグラム若しくはそのヒストグラムデータを出力する出力手段。
ここで、前記周期(t)の具体例としては、呼気ピーク(x1)からその後の吸気ピーク(x2)までの時間(t1)、吸気ピーク(x2)からその後の呼気ピーク(x3)までの時間(t2)を挙げることができ、前記振幅(A)の具体例としては、吸気ピーク(x2)の振幅(A1)、呼気ピーク(x1)の振幅(A2)、呼気ピーク(x3)の振幅(A2’)を挙げることができる(図3参照)。そして、前記傾き値は、時間(t1,t2)と振幅(A1)、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)から、前記数1に記載のいずれかの計算式に基づき算出することができる。
本発明評価システムの一態様は、図6のようなフローで表すことができる。
2.1 手段1について
手段1は、所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る手段である。
呼吸気流の波形情報は、呼吸気流の変動を電気信号として取得することができる手段により得ることができるから、当該手段としては前記と同様のものを挙げることができる。取得された電気信号は、通常、増幅され、A/D変換器によりデジタル呼吸波形データに変換される。
2.2 手段2について
手段2は、呼吸波形の周期と振幅を検出する手段である。
呼吸波形の周期又は各呼吸ピークの時間と振幅は、手段1により得られた波形情報のデジタル呼吸波形データから検出することができ、具体的には、前記1.2に記載の通り、図1に示されるデジタル呼吸波形データから各ピークを捉えることにより検出することができる。
当該デジタル呼吸波形データは、例えば、サンプリング周波数が50Hzで量子化ビット数が16ビットの場合、1分間では50個×60秒=3000個の時間ポイントで、振幅が2の16乗=65536段階で表現される。故に、各ピークは、例えば、振幅が増加から減少に転じる時間ポイント、又は減少から増加に転じる時間ポイントを算出することにより捉えることができる。具体的には、例えば、隣接する2つの時間ポイントにおける振幅差を順次計算し、その振幅差が正から負又は負から正へ転じたところを算出することにより捉えることができる。振幅を検出する他の方法としては、前記スムージング処理をした波形を用いて、対象波形のゼロクロスと次のゼロクロスの中間点の値を振幅とみなしたり、対象波形の一方の極性例えば正極性の波形の積分値をゼロクロスから次のゼロクロスまでの半周期の時間で除算したりする事で、おおよその振幅を得る方法他検出のための演算手法は各種の手法が使えるものである。
したがって、手段2に係る検出手段としては、上記計算ないし処理を行うことができるプログラム(例えば、後述する本発明プログラム)を備えたコンピューターを挙げることができる。その際、振幅が極端に小さいピークや明らかに異常なピークはノイズとしてカットできるようなプログラムを有することが好ましい。また、スムージング処理、高周波除去処理等を施すプログラムを有することが好ましい。
2.3 手段3について
手段3は、呼吸周期(t)と振幅(A)の比から傾き値を算出する演算手段である。
当該傾き値の算出は、前記1.3に記載のように求めることができる。したがって、かかる演算手段としては、そのためのプログラムを備えたコンピューターを挙げることができる。
なお、前記1.3に記載の通り、傾き値は振幅によって大きく異なり、他のデータと直接比較することが困難な場合がある。それ故、サンプリングした所定計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の絶対値の平均値で各振幅を除して各振幅値を「正規化」して後、その正規化した振幅値で各傾き値を算出することが好ましい。したがって、本発明評価システムにおいては、かかる正規化する手段を含むことが好ましい。すなわち、かかる平均値を算出する演算手段、及びかかる演算手段により算出された平均値で各吸気ピーク又は呼気ピークの振幅を除して各振幅値を正規化する手段を更に含むことが好ましい。この場合、傾き値を算出するための各振幅値は、前記正規化手段により正規化されたものとなる。かかる正規化手段としては、そのためのプログラムを備えたコンピューターを挙げることができる。
2.4 手段4について
手段4は、傾き値のヒストグラムを作成する手段である。
当該ヒストグラムは、手段3により算出された傾き値とその頻度から容易に作成でき、かかる作成手段としては、そのためのプログラムを備えたコンピューターを挙げることができる。
2.5 手段5について
手段5は、傾き値のばらつき値を算出する演算手段である。
当該ばらつき値は、手段4により作成されたヒストグラムに基づき、例えば、四分位範囲(IQR)、四分位偏差、標準偏差、平均偏差、尖度などとして容易に算出される。この中、四分位範囲(IQR)として算出されることが好ましい。かかる演算手段としては、そのためのプログラムを備えたコンピューターを挙げることができる。ヒストグラムのグループ分けは任意に取ることができる。図4、5では図3におけるtanθを傾きの値として利用している事から0.1ずつのグループ分けと押したが、0.01、0.05といったより精度上げて視覚化することも有効である。また傾きの値としてsinθを取る場合には無呼吸時に0に近づき、cosθを取る場合には無呼吸時に1に近づくため、横軸を0〜1とし。0.01から0.1の幅でグループ分けすることができる。また、傾きの値として角度を用いる場合は0〜90°あるいは、0〜π/2radとすることができるが、世界的に診断の共通指標として用いる場合は統一することが望ましい。
2.6 手段6について
手段6は、ばらつき値等を出力する出力手段である。
上記出力は、表示画面やプリンターへの出力の他、前記したように記録媒体へ電子情報として出力してもよく、電気通信回線を用いて、遠隔地の受信端末に出力することもできる。したがって、手段6は、それを可能とする出力手段によればよい。
2.7 本発明評価システムの用途
本発明評価システムは、被験者の病気の有無又は被験者の状態を判断するために用いることができ、治療経過を評価する場合にも用いることができる。
上記病気の具体例としては、(慢性、うっ血性)心不全等の循環器疾患、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患、脳血管障害を主とする中枢神経疾患、睡眠時無呼吸症候群を挙げることができる。特に心不全の増悪度の診断において好ましい。
本発明評価システムは、持続的気道陽圧呼吸療法(CPAP)や順応性自動制御換気療法(ASV)などの非侵襲的陽圧呼吸療法の有効性を検証するために用いることもできる。
また、本発明評価システムは、呼吸が不安定となる肥満状態を評価する場合にも用いることができる。呼吸の安定性が重要となる、発声訓練や運動能力解析、快眠解析等を評価する場合においても用いることができる。緊張度や精神的な不安定さを評価する場合にも用いることができる。
加えて、本発明評価システムと、脈拍、心拍数、血圧、酸素飽和度等の他の血行動態指標に係るシステムとを合わせれば、より確度の高い病気の診断等を行うことができる。
3.プログラム
本発明は、次のAからCに記載のステップを有することを特徴とする、呼吸の安定性評価プログラム(以下、「本発明プログラム」という。)を含む。
A:呼吸気流の波形情報から、呼吸波形データ(各時間ポイントとその各時間ポイントにおける各振幅)を取得するステップ、
B:取得された各時間ポイントとその各時間ポイントにおける各振幅を用いて、呼吸波形の周期と振幅を検出するステップ、
C:検出された周期と振幅情報から傾き値を算出する演算ステップ。
本発明プログラムの一態様は、図7のようなフローで表すことができる。本発明プログラムは、本発明評価法や本発明評価システムを実施する上で用いることができる。また、後述する本発明装置のソフトウエアとして用いることができる。
3.1 ステップAについて
ステップAは、呼吸気流の波形情報から、呼吸波形データを取得するステップである。
呼吸気流の波形情報は、前記の通り、呼吸気流の変動を電気信号として取得することができる手段により得られ、取得された電気信号は、通常、増幅され、A/D変換器によりデジタル呼吸波形データに変換される。
当該デジタル呼吸波形データは、例えば、サンプリング周波数が50Hzで量子化ビット数が16ビットの場合、1分間では50個×60秒=3000個の時間ポイントで、振幅が2の16乗=65536段階で表現される。その各時間ポイントとその各時間ポイントにおける各振幅がステップAにおいて取得される。
3.2 ステップBについて
ステップBは、呼吸波形の周期と振幅を検出するステップである。
前記1.2に記載の通り、図1に示されるような各ピークを捉えれば、各呼吸ピークの時間と振幅を検出することができる。各ピークは、例えば、振幅が増加から減少に転じる時間ポイント、又は減少から増加に転じる時間ポイントを算出することにより捉えることができる。具体的には、例えば、隣接する2つの時間ポイントにおける振幅差を順次計算し、その振幅差が正から負又は負から正へ転じたところを算出することにより捉えることができる。
本発明プログラムは、各呼吸ピークの時間と振幅を検出するに際して、振幅が極端に小さいピークや明らかに異常なピークは事前にノイズとしてデジタル演算処理により除去できるようなプログラムを有することが好ましい。ノイズ除去方法として、ローパスフィルターなどを用いた高周波成分の除去や移動平均法を用いて波形のスムージング処理を施すプログラムを有することが好ましい。
3.3 ステップCについて
ステップCは、呼吸波形の周期と振幅情報から傾き値を算出する演算ステップである。
具体的な周期情報としては、例えば、呼気ピーク(x1)からその後の吸気ピーク(x2)までの時間(t1)、吸気ピーク(x2)からその後の呼気ピーク(x3)までの時間(t2)を挙げることができ、具体的な振幅情報としては、例えば、吸気ピーク(x2)の振幅(A1)、呼気ピーク(x1)の振幅(A2)、呼気ピーク(x3)の振幅(A2’)を挙げることができる(図3参照)。そして、当該傾き値は、時間(t1,t2)と振幅(A1)、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)から、前記数1に記載のいずれかの計算式に基づき算出することができる。
具体的には、例えば、図3(1)(吸気の傾き値)に基づき説明すると、呼気ピークから吸気ピークまでの時間(t1)は、x2(吸気ピーク時間)からx1(呼気ピーク時間)を差し引けば得られ、右図の三角形の関係から、吸気の振幅(A1)を時間(t1)で除すれば、tanθ1で示される吸気の傾き値を算出することができる。また、t1を、t1の二乗とA1の二乗の和の平方根で除すれば、cosθ1で示される吸気の傾き値を、A1を、t1の二乗とA1の二乗の和の平方根で除すれば、cosθ1で示される吸気の傾き値を、それぞれ算出することができる。更には、前記数2に記載の公式を用いてもcosθ1とsinθ1で示される吸気の傾き値を算出することができる。
また、時間(t2)と吸気ピークの振幅(A1)とを用いても同様にtanθ1’等で表される吸気の傾き値を算出することができる(図3(2)参照)。
上記では、x1を特定の吸気ピーク直前の呼気ピークの時間と考えているが、任意の呼吸の吸気ピークの時間を(n)とし、その直前の呼気ピークの時間を(n−1)として吸気の傾き値を求めることもできる。呼吸波形が消失する無呼吸状態が認められる部位では呼吸の間隔が非常に長くなるため、吸気の傾き値tanθ1は非常に小さくなる。
同様にして、吸気振幅(A1)の逆極性の関係にある呼気振幅(A2、A2’)を用いて、呼気の傾き値をtanθ2、tanθ2’、cosθ2、cosθ2’、sinθ2、又はsinθ2’等として算出することができる(図3(3)(4)参照)。
なお、前記1.3に記載の通り、傾き値は振幅によって大きく異なり、他のデータと直接比較することが困難な場合がある。それ故、サンプリングした所定計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の絶対値の平均値で各振幅を除して各振幅値を「正規化」して後、その正規化した振幅値で各傾き値を算出することが好ましい。したがって、本発明プログラムにおいては、かかる正規化するステップを含むことが好ましい。すなわち、本発明プログラムは、かかる平均値を算出する演算ステップ、及びかかる演算ステップにより算出された平均値で各吸気ピーク又は呼気ピークの振幅を除して各振幅値を正規化するステップを更に含むことが好ましい。この場合、傾き値を算出するための各振幅値は、前記正規化ステップにより正規化されたものとなる。
3.4 その他のステップ
本発明プログラムは、次のDに記載のステップ、次のD及びEに記載のステップ、又は次のD〜Fに記載のステップを更に有することができる。
D:算出された傾き値のヒストグラムを作成するステップ、
E:作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する演算ステップ、
F:算出されたばらつき値、又は上記ヒストグラム若しくはそのヒストグラムデータを出力するステップ。
3.4.1 ステップDについて
ステップDは、傾き値のヒストグラムを作成するステップである。
当該ヒストグラムは、ステップCにより算出された傾き値とその頻度から、常法のプログラムに基づき容易に作成される。
3.4.2 ステップEについて
ステップEは、傾き値のばらつき値を算出する演算ステップである。
当該ばらつき値は、ステップDにより作成されたヒストグラムに基づき、例えば、四分位範囲(IQR)、四分位偏差、標準偏差、平均偏差、尖度などとして、その計算が可能な常法のプログラムにより容易に算出される。この中、四分位範囲(IQR)により算出されることが好ましい。
3.4.3 ステップFについて
ステップFは、ばらつき値等を出力するステップである。それが可能な常法の出力プログラムを用いることができる。
上記出力は、表示画面やプリンターへの出力の他、前記した記録媒体へ電子情報として出力してもよく、電気通信回線を用いて、遠隔地の受信端末に出力することもできる。
4.装置
本発明は、次のAからCに記載の手段を備えることを特徴とする呼吸の安定性評価装置(以下、「本発明装置」という。)を含む。
A:呼吸気流の波形情報から、呼吸波形データを取得する手段、
B:取得された呼吸波形データを用いて、呼吸波形の周期と振幅を検出する手段、
C:検出された呼吸波形の周期と振幅に基づき傾き値を算出する演算手段。
本発明装置の一態様は、図8のようなフローで表すことができる。本発明装置は、本発明評価法や本発明評価システムを実施する上で用いることができる。また、本発明プログラムを有することができる。
4.1 手段Aについて
手段Aは、呼吸気流の波形情報から呼吸波形データを取得する手段である。
呼吸気流の波形情報は、前記したような、呼吸気流の変動を電気信号として取得することができる手段により得られ、取得された電気信号は、通常、増幅され、A/D変換器によりデジタル呼吸波形データに変換される。本発明装置は、かかるデジタル呼吸波形データを取得する手段を備えていればよい。また、手段Aは、外部手段により変換されたデジタル呼吸波形データを単に取得する手段でもよいし、本発明装置の内部でデジタル呼吸波形データに変換しそれを取得する手段でもよい。
当該デジタル呼吸波形データは、例えば、サンプリング周波数が50Hzで量子化ビット数が16ビットの場合、1分間では50個×60秒=3000個の時間ポイントで、振幅が2の16乗=65536段階で表現される。その各時間ポイントとその各時間ポイントにおける各振幅が手段Aにおいて取得される。
4.2 手段Bについて
手段Bは、各呼吸ピークの時間と振幅を検出する手段である。
手段Aにより取得されたデジタル呼吸波形データから各呼吸ピークの時間と振幅は、前記1.2に記載の通り、図1に示されるような各ピークを捉えれば検出することができる。したがって、かかる手段としては、その検出が可能な手段であれば特に制限はなく、その検出が可能なプログラム(例、本発明プログラム)を有するコンピューターなどを挙げることができる。
本発明装置は、各呼吸ピークの時間と振幅を検出するに際して、振幅が極端に小さいピークや明らかに異常なピークは事前にノイズとしてデジタル演算処理により除去できるようなプログラムを有することが好ましい。ノイズ除去方法として、ローパスフィルターなどを用いた高周波成分の除去や移動平均法を用いて波形のスムージング処理を施すプログラムを有することが好ましい。
4.3 手段Cについて
手段Cは、呼吸波形の周期と振幅に基づき傾き値を算出する演算ステップである。
具体的な周期としては、例えば、呼気ピーク(x1)からその後の吸気ピーク(x2)までの時間(t1)、吸気ピーク(x2)からその後の呼気ピーク(x3)までの時間(t2)を挙げることができ(図3参照)、具体的な振幅としては、例えば、吸気ピーク(x2)の振幅(A1)、呼気ピーク(x1)の振幅(A2)、呼気ピーク(x3)の振幅(A2’)を挙げることができる。そして、当該傾き値は、時間(t1,t2)と振幅(A1)、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)から、前記数1に記載のいずれかの計算式に基づき算出することができる。
当該傾き値は、前記1.3に記載のように求めることができ、かかる演算手段は、それが可能な手段であれば特に制限はなく、その演算のためのプログラムを有するコンピューターなどを挙げることができる。
手段Cにより算出された傾き値を出力する場合、かかる出力手段としては、それが可能な常法の出力プログラムを有するコンピューターなどを挙げることができる。
上記出力は、表示画面やプリンターへの出力の他、前記したように記録媒体へ電子情報として出力してもよく、電気通信回線を用いて、遠隔地の受信端末に出力することもできる。
なお、前記1.3に記載の通り、傾き値は振幅によって大きく異なり、他のデータと直接比較することが困難な場合がある。それ故、サンプリングした所定計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の絶対値の平均値で各振幅を除して各振幅値を「正規化」して後、その正規化した振幅値で各傾き値を算出することが好ましい。したがって、本発明装置においては、かかる正規化する手段を含むことが好ましい。すなわち、本発明装置は、かかる平均値を算出する演算手段、及びかかる演算手段により算出された平均値で各吸気ピーク又は呼気ピークの振幅を除して各振幅値を正規化する手段を更に含むことが好ましい。この場合、傾き値を算出するための各振幅値は、前記正規化手段により正規化されたものとなる。
4.4 その他の手段
本発明装置は、次のDに記載の手段、次のD及びEに記載の手段、又は次のD〜Fに記載の手段を更に備えることができる。
D:算出された傾き値のヒストグラムを作成する手段、
E:作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する演算手段、
F:算出されたばらつき値、又は上記ヒストグラム若しくはそのヒストグラムデータを出力する手段。
4.4.1 手段Dについて
手段Dは、傾き値のヒストグラムを作成する手段である。
当該ヒストグラムは、手段Cにより算出された傾き値とその頻度から、常法の作図プログラムにより容易に作成される。それ故、かかる手段としては、その作成が可能なプログラムを有するコンピューターなどを挙げることができる。
4.4.2 手段Eについて
手段Dは、傾き値のばらつき値を算出する演算手段である。
当該ばらつき値は、手段Dにより作成されたヒストグラムに基づき、例えば、四分位範囲(IQR)、四分位偏差、標準偏差、平均偏差、尖度として容易に算出される。この中で、四分位範囲(IQR)により算出されることが好ましい。したがって、かかる演算手段としては、その演算が可能なプログラムを有するコンピューターなどを挙げることができる。
4.4.3 手段Fについて
手段Eは、ばらつき値等を出力する手段である。かかる手段としては、それが可能な常法の出力プログラムを有するコンピューターなどを挙げることができる。
上記出力は、表示画面やプリンターへの出力の他、前記したように記録媒体へ電子情報として出力してもよく、電気通信回線を用いて、遠隔地の受信端末に出力することもできる。
5 その他(被験者のモニタリングシステム)
本発明装置から出力された情報(各呼吸ピークの時間と振幅、傾き値、ヒストグラム、ばらつき値)については、スマートフォン、ウェアラブル端末等からインターネット等の電気通信回線を用いて、遠隔地にある病院等に送信することができる。そして、送信先の受信端末で当該送信情報を受信し、ばらつき値を取得することにより、離れた場所において、被験者の呼吸の安定性を評価したり、診断したりといった被験者のモニタリングを行うことができる。
送信情報が、ばらつき値を算出するための前情報(各呼吸ピークの時間と振幅、傾き値、ヒストグラム)である場合には、受信地において、当該前情報からばらつき値を適当な演算手段により算出することになる。
本発明は、そのようなモニタリングシステムを含む。具体的には、本発明は、本発明装置を用いること、及び本発明装置の出力手段から出力された情報を電気通信回線により受信することができる受信手段を備えた装置を用いることを特徴とする、被験者のモニタリングシステムを含む。
以下、実施例を掲げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
[実施例1]各種呼吸波形パターンとそこから得られたヒストグラムとIQR
健常者(男性、31歳)、正常に近い呼吸の心不全患者(男性、56歳)、不安定呼吸を伴う心不全患者(男性、84歳)、及びチェーンストークス呼吸を伴う心不全患者(男性、50歳)について昼間安静時おける15分間の自発呼吸信号をType3簡易モニターSAS3200(登録商標、日本光電社製、以下同じ)にて収集し解析し、各被験者の呼吸波形パターンを得た。その情報から、経鼻圧センサー信号を抽出し、ローパスフィルターを用いたデジタル演算処理により1ヘルツ以上の高周波成分をノイズとして除去した。
次に、振幅が増加から減少に転じる時間ポイントを吸気振幅のピーク値として、さらに振幅が減少から増加に転じる時間ポイントを呼気振幅のピーク値として算出し、15分間の全ての呼吸について吸気、呼気がそれぞれ入れ替わることを確認して、呼吸波形のピーク値として捉えた。
続いて、計測したすべての吸気振幅の平均値で求めた各吸気振幅を除して各振幅値を「正規化」した。正規化された各吸気振幅と、吸気ピークからそれぞれ直前の呼気ピークとの時間を算出し、そのデータを基に吸気毎の傾き値(tanθ1=(正規化された吸気振幅)÷(吸気ピークから直前の呼気ピークまでの時間))を算出した。
最後に当該傾き値のヒストグラムを作成すると共に、そのばらつき値(IQR)を求めた。
その結果を図9に示す。図9の結果から、健常者の当該IQRは0.25と最も小さく、正常に近い呼吸の心不全患者の当該IQRが0.31、不安定呼吸を伴う心不全患者の当該IQRが0.63、チェーンストークス呼吸を伴う心不全患者の当該IQRが0.96と、呼吸が不安定な心不全患者ほど当該IQRは大きかった。即ち、呼吸の安定性と当該IQRとは相関していると考えられる。したがって、本発明評価法で得られるIQRは、呼吸の安定性を評価できることが明らかである。
[実施例2]心不全患者と健常者におけるIQRの比較
心不全患者と健常者の呼吸波形情報から得られた吸気の傾き値のIQRを比較検討した。
心不全患者(年齢66±17歳)16名と健常者(年齢36±3歳)5名について、実施例1と同様にして当該IQRを求めた。
その結果を図10に示す。図10の結果から、心不全患者と健常者とでは、当該IQRに顕著な差が認められた。したがって、本発明評価法に係るIQRが心不全患者の診断を定量的に行う指標となり得ることが明らかである。
[実施例3]ASVの効果の評価
チェーンストークス呼吸の治療機器である順応性自動制御換気療法(ASV)の効果を吸気の傾き値のIQRで評価した。
実施例2の心不全患者16名について、実施例2における15分間の自発呼吸の後にASV装置(オートセットCS(登録商標)、帝人ファーマ社製)を装着し、実施例1と同様にして、吸気の傾き値(tanθ1)のヒストグラムと当該IQRを求めた。
その結果を図11と図12に示す。図11及び図12の結果から、自発呼吸における当該IQRよりASV装着における当該IQRの方が小さくなっており、ASV装着による呼吸安定化の効果が当該IQRで示されていると考えられる。したがって、本発明評価法におけるIQRがASV装着による呼吸安定化に対する効果を定量的に判断する指標となり得ることが明らかである。
本発明による呼吸の安定性評価用いて、被験者の疾病に合わせて更に精度良く評価する方法について説明する。
図13は、チェーンストークス呼吸を伴う心不全患者(男性、69歳、心房細動を有する)に対し、自発呼吸(SR)時と順応性自動制御換気療法(ASV)時における体内の各血行動態指標を同時に測定し、グラフ化したものである。図13中、Resp.は経鼻圧センサー、Chestは胸郭運動の伸縮センサー、Abd.は腹部運動の伸縮センサー、SpO2は酸素飽和度、ASVによる補助圧力を示しており、以上はType3簡易モニターSAS3200を用いて計測した。HRは心拍数、MBPは平均血圧、SVIは一回拍出係数(一回拍出量を体表面積で除した値)、TPRIは総末梢血管抵抗係数(総末梢血管抵抗を体表面積で除した値:平均血圧と一回拍出係数から算出)を示しており、以上は、タスクフォースモニター(登録商標、日本光電社製)を用いて計測した。本症例では、周期的な漸増漸減パターンの無呼吸を呈しており典型的なチェーンストークス呼吸を呈しており、酸素飽和度が無呼吸の周期に連動して増減するのは当然の結果であるが、平均血圧や総末梢血管抵抗係数も、チェーンストークス呼吸とある一定の位相で連動しており、故意に一定期間呼吸を止めた場合との差別化には有用であることが推定される。図13はASVによって、上記した体内の各血行動態指標の数値も安定することを測定したものであるが、上記したような各波形の変動と、ヒストグラムやヒストグラムのばらつき値を併用することで、より精度の高い診断が可能となり、また、診断以外にも前記したような運動能力解析や精神的な不安定さを評価する場合にも用いることができる。
ここで、心拍数や呼吸波形検出ができる心臓ペースメーカや総末梢血管抵抗係数に代えて、胸部インピーダンスのモリタリング機能付きの心臓ペースメーカも市販されてきていることから、上記評価はこれらの心臓ペースメーカから取り出した信号を使うこともできる。
上記したように、呼吸気流の波形情報から、各呼吸波形の周期と振幅を検出し、検出された周期(t)と振幅(A)の比から傾き値を得た後、傾き値のヒストグラムを作成し、ヒストグラム上での傾き値のばらつき値を示すという方法により、呼吸の安定性を評価する指標を扱い易い数値で提供できると共に、ヒストグラムによって従来の方法より、視覚的に優れた呼吸安定性に関し評価情報を提供できるものである。さらに上記したように、呼吸気流の波形を得る手段は、上記した説明に限定されず、振幅もピーク値に限定されずピーク値近傍の値であれば良く、周期の値も呼気ピーク値、吸気ピーク値間の時間に限定されず、一定のルールに基づいて、得られた呼吸波形から、各波形の振幅情報、周期情報を得て傾き情報を算出すれば良い。
また無呼吸状態の振幅はゼロまたはノイズのみの振幅となるため、エラーを生じやすいことから、上記した呼気又は吸気の振幅最大値の1/10〜1/20以下の振幅等、一定比率以下の振幅時を振幅ゼロとして扱うことなどで、ノイズの影響を減らし、安定な計測を実施することができる。
上記の各説明において、正規化のための平均値を、所定計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の絶対値の平均値としたが、吸気振幅は吸気振幅の平均値、呼気振幅は呼気振幅の平均値で各呼気、吸気振幅を除して正規化しても良く、一定期間、例えば1〜5分の間の振幅平均値としても良く、また、複数波形の振幅値を比較し、大きく振幅が変化した点を、センサーずれした点として捉え、その前後の一定期間、例えば1〜5分の間の振幅平均値を用いても良い。
また、代表的な計測対象点として、図3を用いて振幅情報を吸気ピークの振幅(A1)としたが、振幅は呼気ピーク値(A2)でもよく、呼気ピーク値と吸気ピーク値の絶対値合計(A1+A2)の値であっても良い。また、周期は吸気ピーク時間から呼気ピーク時間を引いた値(t1)を用いたが吸気ピーク前のゼロクロス点から吸気ピークまでの時間(t3)でも、吸気ピーク前のゼロクロスから次のゼロクロスまでの半周期時間(t4)でも、吸気ピーク前のゼロクロスから2個後のゼロクロスである1波長分の時間(t5)であっても、吸気ピークから次の吸気ピークまでの1波長分の時間(t6)であっても良く、対象波形の振幅情報、周期情報であれば同様の結果を得ることができる。ここで扱う対象の数値が異なると結果が比較しにくいため、同じ評価対象では揃えることや、学会や標準化団体、測定装置メーカ間で統一して用いることが望ましい。
上記システムや装置の説明においては、「呼吸気流の波形情報を得る工程」「呼吸気流の波形情報を取得する手段」として説明したが、遠隔地からの情報を得る場合も含み、その場合は受信する工程、手段を有すれば良く、本発明のシステムまたは装置においては、呼吸波形の検出手段や発信受信全体を有さなくても本発明の範囲である。
本発明は、例えば、心不全や呼吸器疾患、またその増悪度の診断に有用であり、呼吸が不安定な患者(肥満者も含む)等に対しても有用であり、それらの在宅診療も可能とする。また、呼吸が不安定でない者に対しても、呼吸の安定性が重要となる、発声訓練や運動能力解析、また快眠解析において有用である。

Claims (9)

  1. 下記1〜5を含む工程から得られる、呼吸に関するばらつき値を得る方法。
    1)所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る工程、
    2)得られた波形情報から各呼吸波形の周期と振幅を検出する工程、
    2−1)計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値、又は計測期間内の一定期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値で、各吸気ピーク又は呼気ピークの振幅を除して各振幅値を正規化する工程、
    3)検出された周期(t)と前記正規化された振幅(A)の比から傾き値を算出する工程であって、前記周期(t)が、呼気ピーク(x1)からその後の吸気ピーク(x2)までの時間(t1)、又は吸気ピーク(x2)からその後の呼気ピーク(x3)までの時間(t2)であり、
    前記振幅(A)が、吸気ピーク(x2)の振幅(A1)、呼気ピーク(x1)の振幅(A2)、又は呼気ピーク(x3)の振幅(A2’)であり、
    前記傾き値が、時間(t1,t2)と振幅(A1)の比、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)の比から算出される値である当該工程、
    4)算出された傾き値を用いてヒストグラムを作成する工程、
    5)作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する工程。
  2. 前記時間(t1,t2)と振幅(A1)の比、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)の比から算出される前記傾き値が、下記のいずれかの計算式に基づき算出される値である、請求項1に記載の呼吸に関するばらつき値を得る方法。
  3. 前記ばらつき値が、四分位範囲(IQR)又は四分位偏差である、請求項1又は2に記載の呼吸に関するばらつき値を得る方法。
  4. 呼吸気流の波形情報が、被験者の呼吸気流の変動を検知して測定される呼吸気流の波形情報、又は被験者の体動や呼吸動作を検知して測定される呼吸気流の波形情報である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の呼吸に関するばらつき値を得る方法。
  5. 下記1〜に記載の手段を有することを特徴とする、呼吸の安定性評価システム。
    1)所定計測期間における呼吸気流の波形情報を得る手段、
    2)得られた波形情報から各呼吸波形の周期と振幅を検出する手段、
    2−1)計測期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値、又は計測期間内の一定期間におけるすべての吸気ピーク又は呼気ピークの振幅の平均値で、各吸気ピーク又は呼気ピークの振幅を除して各振幅値を正規化する手段、
    3)検出された周期(t)と前記正規化された振幅(A)の比から傾き値を算出する手段であって、前記周期(t)が、呼気ピーク(x1)からその後の吸気ピーク(x2)までの時間(t1)、又は吸気ピーク(x2)からその後の呼気ピーク(x3)までの時間(t2)であり、
    前記振幅(A)が、吸気ピーク(x2)の振幅(A1)、呼気ピーク(x1)の振幅(A2)、又は呼気ピーク(x3)の振幅(A2’)であり、
    前記傾き値が、時間(t1,t2)と振幅(A1)の比、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)の比から算出される値である当該手段
    4)算出された傾き値を用いてヒストグラムを作成する手段、
    5)作成されたヒストグラムに基づき、傾き値のばらつき値を算出する演算手段、
    6)算出されたばらつき値、又は上記ヒストグラム若しくはそのヒストグラムデータを出力する出力手段
  6. 前記時間(t1,t2)と振幅(A1)の比、又は時間(t1,t2)と対応する振幅(A2、A2’)の比から算出される前記傾き値が、下記いずれかの計算式に基づき算出される値である、請求項5に記載の呼吸の安定性評価システム。
  7. ばらつき値が、四分位範囲(IQR)又は四分位偏差である、請求項5又は6に記載の呼吸の安定性評価システム。
  8. 呼吸気流の波形情報が、被験者の呼吸気流の変動を検知して測定される呼吸気流の波形情報、又は被験者の体動や呼吸動作を検知して測定される呼吸気流の波形情報である、請求項5〜のいずれか一項に記載の呼吸の安定性評価システム。
  9. 電気通信回線により送信された呼吸気流の波形情報を受信するための受信手段を更に備える、請求項5〜のいずれか一項に記載の呼吸の安定性評価システム。
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