JP6713664B2 - β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ及びその製造方法 - Google Patents

β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6713664B2
JP6713664B2 JP2016116553A JP2016116553A JP6713664B2 JP 6713664 B2 JP6713664 B2 JP 6713664B2 JP 2016116553 A JP2016116553 A JP 2016116553A JP 2016116553 A JP2016116553 A JP 2016116553A JP 6713664 B2 JP6713664 B2 JP 6713664B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode
film
polyvinylidene fluoride
pvdf
type
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016116553A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017220650A (ja
Inventor
隆興 佐々木
隆興 佐々木
森谷 弘二
弘二 森谷
啓太郎 原田
啓太郎 原田
道夫 庭野
道夫 庭野
良平 安部
良平 安部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
HAPPYJAPAN,INC.
Original Assignee
HAPPYJAPAN,INC.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by HAPPYJAPAN,INC. filed Critical HAPPYJAPAN,INC.
Priority to JP2016116553A priority Critical patent/JP6713664B2/ja
Publication of JP2017220650A publication Critical patent/JP2017220650A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6713664B2 publication Critical patent/JP6713664B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Transmission And Conversion Of Sensor Element Output (AREA)
  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)

Description

本発明は、β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ及びその製造方法に関する。
従来、高分子の圧電材料としてポリフッ化ビニリデンが知られている。このポリフッ化ビニリデンは、水素センサ、圧力センサ、超音波センサ、加速度センサ、振動センサ等の各種センサに圧電材料として既に用いられており、今後は、ソフトウエア等の情報処理デバイスや、アクチュエータ等の出力デバイスへの応用が期待されている。ポリフッ化ビニリデンには、α型、β型及びγ型の3種の結晶構造が存在するが、それらの中で圧電性を有するのはβ型だけである。このようなβ型の結晶構造を有するポリフッ化ビニリデン膜(以下、「β型ポリフッ化ビニリデン膜」という)は、通常、結晶構造を無極性のα型から極性を有するβ型へ転移させるために、α型の結晶構造を有するポリフッ化ビニリデンに分極処理を施さなければ製造することができない。しかしながら、分極処理を行うためには押出機や分極装置等の大掛かりな設備が必要となり、製造コストがかかるという問題がある。そこで、簡易な設備且つ簡便な方法で製造できるβ型ポリフッ化ビニリデン膜の製造方法が開発されている(例えば特許文献1参照)。
ところで、β型ポリフッ化ビニリデン膜は柔軟性を有しており、この特性を活かして医療分野への応用も期待されている。例えば、血管内カテーテルやガイドワイヤ等に、ポリフッ化ビニリデン系材料を適用した低侵襲手術用センサを搭載して、脳梗塞、動脈瘤、狭心症等の手術を行う方法が提案されている。かかる低侵襲手術用センサとしては、血流測定するための血流センサ(非特許文献1参照)の他、人間の指のような感覚で生体や患部の状況を把握するための触覚センサ等も研究開発されている。
しかしながら、β型ポリフッ化ビニリデン膜は、基材への密着性が弱いため剥離するという問題が知られている。その改善を図るために、β型ポリフッ化ビニリデン膜を形成するための塗布液について、種々の改良を加えたものが提案されている。例えば、特許文献2では、圧電性樹脂膜形成用のコーティング溶液にシラン系カップリング剤を添加し、特許文献3では、特定のオルガノシロキサン部位を有するフッ化ビニリデン系化合物を含む液状の塗料組成物を作製し、特許文献4では、ポリ塩化ビニル、ポリイミド類、ポリエーテルアミド、ナイロン類、ポリシアノアクリレイトのうちから選ばれた1種類又はそれらの混合物よりなる非強誘電性高分子を含む液状の塗料組成物を作製して、それぞれ密着性の向上を図っている。しかしながら、β型ポリフッ化ビニリデン膜における基材への密着性については、更に改善の余地がある。
特開2014−43514号公報 特開2013−188667号公報 特開2009−137842号公報 特開昭63−145353号公報
IEEE TRANSACTIONS ON BIOMEDICAL ENGINEERING, VOL.62, NO.1, JANUARY 2015, p.188−p.195
本発明は、このような事情に鑑み、密着性の問題が生じる基材を用いることなく電極により支持される、柔軟性に優れたβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明にかかる第1の態様は、β型ポリフッ化ビニリデン膜と、前記β型ポリフッ化ビニリデン膜中に、互いに離間して配設される第1電極及び第2電極とを含み、前記第1電極及び前記第2電極は、糸状に形成されたものであり、前記第1電極と前記第2電極との離間距離は、50μm以上、500μm以下であることを特徴とするβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサにある。
また、本発明にかかる第2の態様は、前記第1電極及び前記第2電極は、合成繊維に金属めっきを施した金属めっき線のモノフィラメント又は撚糸で形成されており、前記第1電極及び第2電極の直径は1デニール以上、100デニール以下であることを特徴とする第1の態様の圧電センサにある。
また、本発明にかかる第3の態様は、前記第1電極及び前記第2電極は、複数の金属ワイヤを束ねて形成されており、前記第1電極及び第2電極の直径は500μm以下であることを特徴とする第1の態様の圧電センサにある。
また、本発明にかかる第の態様は、ポリフッ化ビニリデンと、前記ポリフッ化ビニリデンを溶解してβ型に固定する水溶性極性溶媒と、前記水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒とを混合して塗布液を形成する工程と、得られた塗布液から形成されるβ型ポリフッ化ビニリデンからなる塗布膜中に第1電極及び第2電極が配設されるように前記塗布膜を形成する工程と、形成した塗布膜を乾燥する工程と、乾燥した塗布膜を水洗する工程とを含み、前記第1電極及び前記第2電極は、糸状に形成されたものであり、前記塗布膜を形成する工程では、前記第1電極と前記第2電極との離間距離を100μm以上、500μm以下とすることを特徴とするβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサの製造方法にある。
また、本発明にかかる第の態様は、ポリフッ化ビニリデンと、前記ポリフッ化ビニリデンを溶解してβ型に固定する水溶性極性溶媒と、前記水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒とを混合して塗布液を形成する工程と、基材上に第1電極及び第2電極を互いに離間して配設する工程と、得られた塗布液から形成されるβ型ポリフッ化ビニリデンからなる塗布膜中に前記第1電極及び前記第2電極が配設されるように前記塗布膜を形成する工程と、形成した塗布膜を乾燥する工程と、乾燥した塗布膜を水洗して前記基材から前記塗布膜を剥離する工程とを含み、前記第1電極及び前記第2電極は、糸状に形成されたものであり、前記塗布膜を形成する工程では、前記第1電極と前記第2電極との離間距離を100μm以上、500μm以下とすることを特徴とするβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサの製造方法にある。
また、本発明にかかる第の態様は、前記基材は、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネートの何れかを含むことを特徴とする第の態様のβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサの製造方法にある。
また、本発明にかかる第の態様は、前記第1電極及び前記第2電極は、合成繊維に金属めっきを施した金属めっき線のモノフィラメント又は撚糸で形成されており、前記第1電極及び第2電極の直径は1デニール以上、100デニール以下であることを特徴とする第4〜6の態様の圧電センサの製造方法にある。
また、本発明に係る第8の態様は、前記第1電極及び前記第2電極は、複数の金属ワイヤを束ねて形成されており、前記第1電極及び第2電極の直径は500μm以下であることを特徴とする第4〜6の態様の何れかの圧電センサの製造方法にある。
本発明によれば、密着性の問題が生じる基材を用いることなく電極により支持される、柔軟性に優れたβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ及びその製造方法を提供することができる。
本実施形態にかかるβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサの構造を模式的に示す斜視図である。 本実施形態にかかるβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサの製造方法を説明するための図であり、(a)は基材上に電極を配置した状態を示す正面図及びそのA−A′線断面図であり、(b)はβ型ポリフッ化ビニリデン膜中に電極を配設した状態を示す正面図及びそのB−B′線断面図であり、(c)は基材からβ型ポリフッ化ビニリデン膜を剥した状態を示す正面図及びそのC−C′線断面図である。 (a)は実施例1のPVDFセンサのタッピング試験の測定結果を示すグラフであり、(b)は実施例2のPVDFセンサを2つ重ね合わせて作製した積層センサのタッピング試験の測定結果を示すグラフである。 β型ポリフッ化ビニリデン膜及び8本の電極を具備する圧電センサの構造を模式的に示す斜視図である。 β型ポリフッ化ビニリデン膜及び織物状の電極を具備する圧電センサの構造を模式的に示す斜視図である。 β型ポリフッ化ビニリデン膜及びマトリックス状の電極を具備する圧電センサの構造を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は正面図である。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ)
図1は、本発明の実施形態にかかるβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサの構造を模式的に示す斜視図である。図示するように、β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ(以下、「PVDFセンサ1」という)は、β型ポリフッ化ビニリデン膜(以下、「PVDF膜10」という)と、互いに離間して配設される第1電極20aと第2電極20bを含むものである。PVDFセンサ1は、密着性の問題が生じる基材を用いることなく、柔軟性を有する第1電極20aと第2電極20bによりPVDF膜10が支持される構造を備えているため、PVDF膜10の特長である柔軟性を阻害することなく、センサ全体としても柔軟性に優れるものである。
PVDF膜10は、β型のポリフッ化ビニリデンが主体であり純度が高く、β型ポリフッ化ビニリデンとしての機能を発揮すれば、α型のポリフッ化ビニリデンやγ型のポリフッ化ビニリデンが混在したものも含むものである。ここで、純度が高いとは、ポリフッ化ビニリデン(以下、「PVDF」ともいう)以外の成分が殆ど含有されていない膜であることをいう。
β型ポリフッ化ビニリデンは、(−CF−CH−)の繰り返し連鎖からなり、分子鎖がオールトランスの立体配座構造からなる。このため、β型ポリフッ化ビニリデンは、自発分極の向きがフッ素原子から水素原子に、即ち、分子鎖に対して垂直方向に揃っており、圧電特性に優れた材料となる。
また、PVDF膜10は、平均粒径8μm〜9μmの粒状の結晶粒からなり、48%〜53%の体積空隙率を有する膜である。
なお、体積空隙率は、以下の式(1)により算出した。
体積空隙率(%)=((真のPVDFの質量−みかけのPVDFの質量)/真のPVDFの質量)×100 ・・・(1)
ただし、真のPVDFの質量とは、(理論密度1.78g/cm)×(作製したPVDF膜10の体積)であり、みかけのPVDFの質量とは、秤量計による実測値である。
このようなPVDF膜10は、体積空隙率が大きく、結晶粒の間に複数の空隙が存在する多孔性の膜である。これらの空隙の存在により、PVDF膜10は優れた歪特性を有する。一方、従来の延伸法で製造したβ型ポリフッ化ビニリデン膜は、表面が平坦であり、粒状の結晶粒は見られない。
よって、本実施形態にかかる粒状の結晶粒からなるPVDF膜10は、従来のβ型ポリフッ化ビニリデン膜とは区別され、例えば、圧電体膜として、圧電式センサに用いることにより、高感度で且つ安定した検知特性を有するセンサを実現することができる。
第1電極20aと第2電極20bは、互いに距離dだけ離間してPVDF膜10中に配設されている。本実施形態では、かかる距離dを200μmとしたが、PVDFセンサ1がセンサとして機能すれば特に限定されず、当該センサの用途に応じて、例えば、50μm〜500μmの範囲で距離dを設定することができる。第1電極20aと第2電極20bとの距離dを50μm未満に設定した場合には、詳細は後述するが、乾燥時におけるPVDF膜10の熱収縮により、第1電極20a及び第2電極20b同士が接触して接触不良が生じる。その一方で、かかる距離dを500μmを越えた値に設定した場合には、電気容量(キャパシタンス)が減少して電気信号が減衰する。何れの場合でも、PVDFセンサ1の機能を低下させる要因となるので好ましくない。
第1電極20a及び第2電極20bは、上述の通り、PVDF膜10の特長である柔軟性を阻害せずにPVDF膜10を支持し、且つ電極として機能するものである。第1電極20a及び第2電極20bとしては、導電性と柔軟性を兼ね備えていれば特に限定されず、例えば、糸状又は布状に形成されたものが挙げられる。これらは、センサの用途に応じて選択し適用することができる。
糸状の電極(糸状体)としては、例えば、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維に、金属めっきを施した金属めっき線等の柔軟性に優れる材料や細い金属ワイヤ等を挙げることができる。金属めっき線としてはモノフィラメント及び撚糸の何れでもよいが、強度を考慮すると撚糸が好ましい。めっき処理で用いる金属の素材は特に限定されないが、例えば、銀(Ag)、金(Au)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、或いはこれらの合金等の一般的な電極材料を適用することができ、用途に応じて適宜選択することができる。また、糸状体(第1電極20a及び第2電極20b)の太さdは、用途に応じて適宜選択され得るものであり特に限定されないが、1デニール〜100デニールのものを用いることができる。なお、1デニールは、9000mの糸の質量をグラム単位で表したものである。また、糸状体として複数の金属ワイヤを束ねたものを用いた場合、その径(上述の糸状体の太さdに相当)は、用途に応じて適宜選択され得るものであり特に限定されないが、PVDFセンサ1の柔軟性を考慮すると、複数の金属ワイヤを束ねた場合でも、その径を500μmΦ以下に設定すればよく、概ね10μmΦ〜100μmΦ程度であることが望ましい。
布状の電極(布状体)としては、例えば、撚糸を織った織物、撚糸を編んだ編物、若しくは撚糸を粗くメッシュ状に織ったもの(メッシュ状体)等を挙げることができ、これらの中では、織物又はメッシュ状体としたものが好ましい。なお、上述の織物、編物及びメッシュ状体に用いる撚糸の本数は限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。
また、第1電極20a及び第2電極20bは用途に応じて使い分けることができ、これらに、同一の電極形態を適用してもよいし、それぞれ異なる電極形態を適用してもよい。例えば、第1電極20a及び第2電極20bに、それぞれ糸状体を適用してもよいし、或いは、一方の電極に布状体を適用し、他方の電極に糸状体を適用する構成にしてもよい。後者の場合、布状体は、1つの電極(共通電極)として機能する。また、第1電極20a及び第2電極20bに、それぞれ複数の糸状体を適用して、マトリックス構造を有する電極としてもよい。即ち、かかる第1電極20a及び第2電極20bは、相互に間隔をあけて配設された複数の第1電極20a(第1電極群)と、相互に間隔をあけて配設され且つ複数の第1電極20aと交差して設けられた複数の第2電極20b(第2電極群)とを有するワイヤメッシュ電極である。このような構成により、ワイヤメッシュ電極は、第1電極群及び第2電極群がそれぞれ共通電極として機能することが可能となり、或いは、各第1電極20a及び各第2電極20b間で個別にセンシングが可能となる。
本実施形態では、第1電極20a及び第2電極20bとして、太さdを有する同一の糸材を適用した。即ち、ポリエステル系の糸材に銀めっき処理を施した、50μmΦのAgめっき糸を使用した。なお、このような2本の電極を用いる以外に、必要に応じて電極の数を増やしてもよい。本実施形態以外の他の電極を用いた例については、後述する。
本実施形態にかかるPVDFセンサ1は、優れた歪特性を有するPVDF膜10を具備するので、従来の延伸法で形成したβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧力センサと比較すると、例えば、出力電圧は、安定した電位変化を示し、検知感度は数倍優れていることがわかっている(特許文献1参照)。これにより、高感度で且つ安定した検知特性を有し、信頼性の高い圧力センサを実現できる。また、PVDFセンサ1は、密着性の問題が生じる基材を用いることなく、柔軟性を有する第1電極20a及び第2電極20bにより支持される構造を備えているため、PVDF膜10本来の特性である柔軟性が阻害されず、柔軟性に優れた圧力センサを実現できる。
また、このような優れた歪特性を有するPVDF膜10は、圧力センサの他にも圧電式水素センサ、超音波センサ、加速度センサ、振動センサ及び衝撃センサ等の各種圧電式センサや、血流センサ、触角センサ等の低侵襲手術用センサ等の生体センサに広く用いることができる。
(β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサの製造方法)
図2は、β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサの製造方法を説明するための図であり、(a)は基材上に電極を配置した状態を示す正面図及びそのA−A′線断面図であり、(b)はβ型ポリフッ化ビニリデン膜中に電極を配設した状態を示す正面図及びそのB−B′線断面図であり、(c)は基材からβ型ポリフッ化ビニリデン膜を剥した状態を示す正面図及びそのC−C′線断面図である。なお、各断面図において、後述する1対の台座40a,40bは省略してある。
図示するように、PVDFセンサ1の製造方法は、大がかりな設備を必要とせず、溶液塗布法による簡便な方法により、圧電特性に優れ且つ純度が高く柔軟性に優れたPVDFセンサ1を製造するものである。
このような優れた特性を有するPVDFセンサ1の製造方法は、ポリフッ化ビニリデンを溶解してβ型に固定する水溶性極性溶媒と、水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒とを混合して塗布液を形成する工程と、基材30上に第1電極20a及び第2電極20bを互いに離間して配設する工程と、得られた塗布液から形成されるβ型ポリフッ化ビニリデンからなる塗布膜中に第1電極20a及び第2電極20bが配設されるように塗布膜を形成する工程と、形成した塗布膜を乾燥する工程と、乾燥した塗布膜を水洗して基材30から塗布膜を剥離する工程とからなる。
かかるPVDFセンサ1の製造方法は、ポリフッ化ビニリデンを、ポリフッ化ビニリデンを溶解してβ型に固定する水溶性極性溶媒と、水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒とに溶解して塗布液とし、これを基材30上に第1電極20a及び第2電極20bが内部に配設されるように膜形成した後、かかる有機溶媒を除去して多孔性膜とし、これを水洗して水溶性極性溶媒を除去すると共に、基材30から剥離することにより、純度の高いPVDF膜10を具備したPVDFセンサ1を製造するものである。
以下、各工程について説明する。
塗布液の形成工程は、ポリフッ化ビニリデンと、ポリフッ化ビニリデンを溶解してβ型に固定する水溶性極性溶媒と、水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒とを混合して塗布液を形成する工程である。具体的には、所定の水溶性極性溶媒と所定の有機溶媒に、ポリフッ化ビニリデン粉を溶解して、ポリフッ化ビニリデンを含む塗布液を調製する。
ここで、本実施形態で用いるポリフッ化ビニリデンとは、β型ポリフッ化ビニリデン膜となって圧電特性を示すものであれば、フッ化ビニリデン単独の重合体だけでなく、フッ化ビニリデンのモノマーと、フッ素を含有する他のモノマーとの共重合体であってもよい。本実施形態では、これらを総称して単にポリフッ化ビニリデンという。このようなポリフッ化ビニリデンは、溶媒に溶解して用いるので、好適には粉状のものを用いるが、フレーク状や塊状等であってもよい。
また、本実施形態で用いる所定の水溶性極性溶媒は、ポリフッ化ビニリデンを溶解して該ポリフッ化ビニリデンをβ型に固定化する機能を有するものであり、例えば、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)等のリン酸アミド化合物、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。また、リン酸アミド化合物は、ヘキサアルキルリン酸トリアミド等のトリアミドだけでなく、モノアミド、ジアミド又はこれらの混合物を含むものである。これらの中でも、特にヘキサメチルリン酸トリアミドが好ましく、本実施形態では、ヘキサメチルリン酸トリアミドを用いた。
ここで、水溶性極性溶媒がポリフッ化ビニリデンをβ型に固定化する機能を有するとは、ポリフッ化ビニリデンと相溶した状態でポリフッ化ビニリデンをβ型の結晶構造に転移して固定化することをいう。また、β型に固定化するとは、完全にβ型に固定化するものの他、α型よりβ型が優位なように固定するものを包含するものであり、結果的に成膜されたポリフッ化ビニリデンが所望の圧電性を有するものとなるように固定化するものであればよい。
また、水溶性極性溶媒の水溶性とは、後述する水洗剥離工程により塗布膜から溶媒を除去できる程度の水溶性を意味する。
水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒とは、後述の乾燥温度における飽和蒸気圧が、水溶性極性溶媒よりも高く、蒸発速度が速いものをいう。このため、後述する塗布膜の乾燥工程において、かかる有機溶媒の沸点温度程度に加熱することにより、水溶性極性溶媒を塗布膜に残存させたまま、有機溶媒のみを蒸発させることができ、これにより多孔性の膜とすることができる。このような有機溶媒は、ポリフッ化ビニリデン及び水溶性極性溶媒と相溶するものであり、使用する水溶性極性溶媒の種類に応じて、適宜選択すればよい。
水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ジメチルブチルアミド及びN−メチルピロリドン等又はこれらの混合溶媒を挙げることができる。これらの中でも、アセトン及びジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。本実施形態では、蒸発のし易さに鑑みて、アセトンを用いた。
本実施形態では、上述したポリフッ化ビニリデンと、ポリフッ化ビニリデンを溶解してβ型に固定する水溶性極性溶媒と、水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒とを混合して塗布液を形成するが、水溶性極性溶媒と、水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒の体積比は、上述したように乾燥後に多孔性の形状を保持できる塗布膜を形成できる範囲であれば、特に限定されず、有機溶媒を10容量%〜80容量%含有させればよい。10容量%より有機溶媒が少ないと有機溶媒を除去した際に多孔性の膜とはならず、また、80容量%より多いと膜の形状が保持できないからである。好適には、水溶性極性溶媒と有機溶媒の体積比が1:3〜3:1の範囲にあるのが望ましい。
また、ポリフッ化ビニリデンの含有量は、水溶性極性溶媒の総質量に対して、例えば、3.5質量%以上の範囲にあるのが好ましく、より好ましいのは、5質量%〜6.5質量%の範囲である。
更に好ましいのは、水溶性極性溶媒としてヘキサメチルリン酸トリアミドを用いた場合、ヘキサメチルリン酸トリアミドとアセトンの体積比が1:1であり且つポリフッ化ビニリデンの含有量が、ヘキサメチルリン酸トリアミドの総質量に対して、6.5質量%である。
次に、第1電極20a及び第2電極20bの配設工程について説明する。第1電極20a及び第2電極20bの配設工程は、基材30上に第1電極20a及び第2電極20bを互いに離間して配設する工程である。図2(a)に示すように、まず、1対の台座40a,40bを準備し、これらの間隔が1cm〜10cmとなるように基材30上に配置する。次に、この台座40a,40b上に第1電極20a及び第2電極20bを、互いに100μm〜500μmの間隔をあけて載置し張架する。このときの第1電極20a及び第2電極20bの張力は5g重〜100g重である。
本実施形態では、第1電極20a及び第2電極20bとして、上述のAgめっき糸を使用し、第1電極20a及び第2電極20bの離間距離(距離d)を500μmとし、張架時の張力を10g重とした。
次に、塗布膜の形成工程について説明する。この形成工程は、第1電極20a及び第2電極20bの配設工程で基材30上に配設した第1電極20a及び第2電極20bを内部に含むように、塗布液の形成工程で得られた塗布液を用いて塗布膜を形成する工程である。図2(b)に示すように、本実施形態では、得られた塗布液を基材30上に配設した第1電極20a及び第2電極20bに、これらが塗布液中に埋没する程度の量を滴下した。これにより、後述する乾燥工程及び水洗剥離工程を経て得られる塗布膜中に第1電極20a及び第2電極20bを配設することができる。
塗布膜の形成方法は、第1電極20a及び第2電極20bを塗布膜中に配設して膜形成できるものであれば特に限定されないが、例えば、後述する実施例1のように、基材30を用いずに膜形成する方法でもよいし、第1電極20a及び第2電極20bを塗布液中に浸漬して膜形成する方法であってもよい。適用する第1電極20a及び第2電極20bの数や形態に応じて、適宜選択することができる。
基材30は、後述する水洗剥離工程で、内部に第1電極20a及び第2電極20bを含んだ塗布膜と密着せずに、水洗により容易に剥離することができるものであれば特に限定されない。そのような基材30としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。本実施形態では、基材30としてポリエチレンテレフタラートを用いた。
本実施形態では、乾燥工程において、形成した塗布膜を乾燥する。この工程は、基材30上に形成された第1電極20a及び第2電極20bを内部に含む塗布膜を乾燥して多孔性の膜とする工程である。
具体的には、基材30上に滴下されたポリフッ化ビニリデンを含有する塗布液からなる塗布膜から、水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒のみを除去し、多孔性の乾燥膜を形成する工程である。
本実施形態では、かかる有機溶媒としてアセトンを用い、基材30としてポリエチレンテレフタラートを適用しているため、例えば、塗布膜をアセトンの沸点(約56℃)よりも数十℃高い70℃程度に加熱して、塗布膜からアセトンのみを蒸発させて、上述の乾燥膜を形成している。なお、後述する実施例1のように、基材30を用いずに膜形成する方法の場合には、乾燥温度を90℃程度にして加熱してもよい。
塗布膜から有機溶媒のみを除去するため、得られる乾燥膜は所定の水溶性極性溶媒とポリフッ化ビニリデンから構成され、複数の空隙が存在する多孔性の膜、即ち、ポーラスの膜となる。また、上述の乾燥膜中では、所定の水溶性極性溶媒の存在により、ポリフッ化ビニリデン膜の自発分極の向きは一定の方向に揃えられ、この膜の結晶構造はβ型に保持されている。赤外分光法による吸収スペクトルの結果からも、上述の乾燥膜中に含まれるポリフッ化ビニリデン膜の結晶構造は、β型であることが確認されている(例えば特許文献1参照)。
なお、乾燥工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置やホットプレート等を挙げることができる。本実施形態では、ホットプレートを用いた。
図2(c)に示すように、本実施形態では、水洗剥離工程において、乾燥して形成した多孔性の膜(乾燥膜)を水洗し、基材30からこの膜を剥離する。かかる水洗剥離工程は、乾燥した膜を水洗して、水溶性極性溶媒を除去すると共に、基材30からこの膜を剥離する工程である。水洗は、流水、又は水中への浸漬等により行えばよい。本実施形態では、乾燥して得られた多孔性の膜を形成した基材30を純水で約1分間、水洗し、この膜中のヘキサメチルリン酸トリアミド等の水溶性極性溶媒を除去し、基材30から剥離してPVDF膜10を得た。
乾燥膜は、アセトンの蒸発により多孔性の膜となっているため、水溶性極性溶媒、例えば、ヘキサメチルリン酸トリアミドは水洗により乾燥膜から除去されると考えられる。また、乾燥膜から水洗によりポリフッ化ビニリデンをβ型に固定化しているヘキサメチルリン酸トリアミド等の水溶性極性溶媒を除去しても、ポリフッ化ビニリデンの自発分極の方向は維持されることが確認されている(特許文献1参照)。よって、水洗により、圧電特性に優れ且つ純度が高く柔軟性に優れた膜を形成し、基材30から剥離してPVDF膜10を得ることができる。一般に、β型ポリフッ化ビニリデンからなる塗布膜は、ポリエチレンテレフタラート等の基材30への密着性が低く剥がれ易いことから、水洗により容易に基材30からの剥離を実現することができる。また、基材30からの剥離の際には、膜中に配設した第1電極20a及び第2電極20bが脱離することがない。なお、形成された塗布膜の膜厚は約70μm〜300μmである。
また、所定の水溶性極性溶媒の脱離により、更に体積空隙率が大きい多孔性の膜を形成することができる。多孔性を有することにより、この膜は優れた歪特性を有する。
本実施形態では、純度が高く且つ多孔性に優れた膜を形成するために、塗布液に水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒を混合している。そして、乾燥工程において、塗布膜に水溶性極性溶媒を残存させたまま、かかる有機溶媒を先に蒸発させることで、残存膜を、多孔性を有する乾燥膜とし、続く水洗剥離工程において、かかる乾燥膜から、更に水溶性極性溶媒を脱離させて、より多孔性を有する膜とする。このような乾燥工程と水洗剥離工程の2つの工程により、純度が高く且つ多孔性に優れたPVDF膜10を形成することができる。
更に、本実施形態の製造方法によれば、塗布液に混合する、水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒の混合比率を変えることにより、膜の多孔性、即ち、体積空隙率を制御することが可能である。具体的には、かかる有機溶媒の混合比率を増やすことにより、乾燥工程で蒸発する有機溶媒を増大させ、PVDF膜10の多孔性を高め、体積空隙率を大きくすることができる。
このように、本実施形態にかかるPVDFセンサ1の製造方法によれば、大掛かりな設備を必要とせず、塗布液の形成工程、第1電極20a及び第2電極20bの配設工程、内部に第1電極20a及び第2電極20bが配設された塗布膜の形成工程及び乾燥工程、乾燥した塗布膜の水洗剥離工程のみからなる簡便な方法により、圧電特性に優れ且つ純度が高く柔軟性に優れたPVDF膜10を具備するPVDFセンサ1を製造することができる。また、このようなPVDFセンサ1の製造は、製造工程が少ないため、環境負荷が小さく、製造コストの低減を図ることができる。このような圧電特性に優れ且つ純度の高い膜を圧電体膜として各種センサに搭載することにより、検知特性の優れたセンサを実現することができる。更に、柔軟性に優れたPVDFセンサ1を製造できるため、かかるセンサの固定対象に応じて変形することが可能な生体センサ等に適用することができる。
以下、実施例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1では、上述したPVDFセンサ1とは異なる製法で、2本の電極を内部に配設したPVDF膜を具備するPVDFセンサを作製した。まず、ヘキサメチルリン酸トリアミド(以下「HMPA」という)とアセトン(純度>99.5%)からなる混合溶液(HMPA:アセトン=3:4)に、β型ポリフッ化ビニリデン(以下「PVDF」という)の原料であるα型のPVDF粉末(Polysciences社製)を、混合溶液の総質量に対して、14wt%となるように加え、PVDF粉末が溶解するまで、40℃で60分間撹拌を行い、均一なPVDFを含有する塗布液(14wt%PVDF液)を得た。
次に、第1電極及び第2電極として、2本のAg金属ワイヤ(50μmΦ)を用意し、加えて、一定の間隔をあけて配置した1組の台座を用意した(図2参照)。次に、その1組の台座上に2本のAg金属ワイヤを互いに200μmの間隔をあけて載置し、これらを10g重の張力で架張し、この状態を保持した。
次に、2本のAg金属ワイヤに対して、得られた塗布液100μLを刷毛で塗布し、これらのAg金属ワイヤを内部に含んだ状態のPVDF含有膜を得た。そして、このPVDF含有膜を90℃のヒーター上で1時間乾燥し、乾燥膜を得た。得られた乾燥膜を、その内部に含んだ2本のAg金属ワイヤごと純水で2分間水洗し、厚さ140μmのPVDF膜を得た。また、得られたPVDF膜から2本のAg金属ワイヤが脱離しないことを確認した。これにより、PVDF膜を具備するPVDFセンサを得た。なお、PVDF膜は熱収縮しているため、2本のAg金属ワイヤ間の距離は、130μmであった。
(実施例2)
実施例2では、上述したPVDFセンサ1の電極を3本(第1電極〜第3電極)にしたPVDFセンサを作製した。まず、実施例1と同様にして、HMPAとアセトンからなる混合溶液(体積%比50:50)に、PVDFの原料であるα型のPVDF粉末を、混合溶液の総質量に対して、10wt%となるように加え、PVDF粉末が溶解するまで、混練器で30分撹拌を行い、均一なPVDFを含有する塗布液(10wt%PVDF液)を得た。
次に、基材としてPETフィルム、及び第1電極〜第3電極として3本のAgめっき糸を用意し、PETフィルム上に、一定の間隔をあけて配置した1組の台座を用意した(図2参照)。次に、1組の台座の上に、3本のAgめっき糸を互いに500μmの間隔をあけて載置し、これらを20g重の張力で架張し、この状態を保持した。
次に、得られた塗布液200μLを3本のAgめっき糸に滴下し、これらのめっき糸を内部に含んだ状態のPVDF含有膜を得た。このPVDF含有膜は、PETフィルムと接している。そして、このPVDF含有膜を70℃のホットプレート上で5時間乾燥し、乾燥膜を得た。得られた乾燥膜を、その内部に含んだ3本のAgめっき糸及びPETフィルムごと純水で2分間水洗し、PVDF含有膜が剥離したことを確認した。これにより、厚さ200μmのPVDF膜を形成し、PVDFセンサを得た。
(試験例1)
実施例1のPVDFセンサ及び実施例2のPVDFセンサの積層体(積層センサ)について、タッピング試験を行った。具体的には、各PVDFセンサをビニル袋に入れ、その上から指で軽くタッピングしたときの電気信号の受信の有無を確認した。ここで、積層センサは、実施例2で得られたPVDFセンサを2つ用意し、これらを重ね合わせて圧着することで得られたPVDFセンサの積層体である。かかる積層センサは、上段のPVDF膜内に配設された3本のAgめっき糸を一方の共通電極とし、下段のPVDF膜内に配設された3本のAgめっき糸を他方の共通電極とした。
また、上述の積層センサは、上段下段それぞれの電極を個別に接続して使用することもできる。この場合、圧力信号の強弱を適切に処理することにより位置情報を得ることが可能である。例えば、上段側及び下段側のAgめっき糸からなる各電極に、それぞれ番号(電極番号)を付して区別できるようにしておき、最も強い信号が得られる下段の電極番号と最も強い上段の電極番号を位置情報として記録し、時間経過を逐次記録することにより、測定対象の移動方向を特定できる。このような使用方法では、それぞれの電極本数は面積に応じて調整され、また、信号処理にもある程度高速な処理を要するためプロセッサが必要である。
図3(a)は実施例1のPVDFセンサのタッピング試験の測定結果を示すグラフであり、(b)は実施例2のPVDFセンサを2つ重ね合わせて作製した積層センサのタッピング試験の測定結果を示すグラフである。図示するように、実施例1のPVDFセンサ及び上述の積層センサを共に軽く指でタッピングしたときの電気信号が得られているが、上述の積層センサは、当該センサの面積が増えることで電気容量が増大した効果から、電気信号がより大きく観測された。
以上のことから、PVDF膜を具備するPVDFセンサは、PVDFセンサを単独で用いた場合、或いは、複数のPVDFセンサからなるPVDFセンサ積層体を用いた場合であっても、高感度で且つ安定した電位変化を示す信頼性の高い圧力センサとして使用可能である。試験例1では、電極として2本のAg金属ワイヤ及び6本のAgめっき糸を用いたが、何れもセンサとして機能することから、上述した糸状の電極(糸状体)であれば、それらを積層した構造であっても形態を問わず適用できることが確認できた。例えば、位置センシングにおいて、布状電極(布状体)と圧電素子(PVDF膜)の構造体の上に、1本或いは2本程度の金属ワイヤ(糸状体)を所定の場所に貼り合わせることで、その位置に圧力が加わったことを示す信号を発するセンサが実現できる。また、電極(糸状体及び/又は布状体)を含んだ圧電素子を3重4重に重ねることで、様々な用途に適合する機能を持つ素子も実現可能である。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、β型ポリフッ化ビニリデン膜を圧電体膜として圧力センサに適用したが、圧力センサ以外でも、圧電式水素センサ、超音波センサ、加速度センサ、振動センサ及び衝撃センサ等の各種センサに広く適用することができる。また、回路及びソフトウエア等の情報処理デバイスや、アクチュエータ及びトランスデューサ等の出力デバイス等にも用いることができる。更に、血流センサ、触角センサ等の低侵襲手術用センサ等の各種生体センサ等にも用いることができる。
また、本実施形態では、電極の形態としてAg金属ワイヤ及びAgめっき糸を用いた糸状の電極(糸状体)を例に挙げて説明したが、電極の形態はこれに限定されず、必要に応じて適宜形態を変更することができる。例えば、後述するような形態の電極を用いてもよい。
図4は、β型ポリフッ化ビニリデン膜及び8本の電極を具備する圧電センサの構造を模式的に示す斜視図である。図4に示すPVDFセンサ2のように、PVDF膜11の内部において、当該PVDF膜11の上方面側に4本のAgめっき糸からなる第1電極21a〜21dを配設し、当該PVDF膜11の下方面側に4本のAgめっき糸からなる4本の第2電極22a〜22dを配設してもよい。このような構成により、第1電極21a〜21dを1つの電極(共通電極)とし、同様に第2電極22a〜22dを共通電極として使用することもできる。或いは、第1電極21a〜21dのうち、第1電極21a,21b及び第1電極21c,21dをそれぞれ共通電極とし、同様に第2電極22a〜22dのうち、第2電極22a,22b及び第2電極22c,22dをそれぞれ共通電極として使用することで、上下の共通電極間でそれぞれセンシングが可能となる。
図5は、β型ポリフッ化ビニリデン膜及び織物状の電極を具備する圧電センサの構造を模式的に示す斜視図である。図5に示すPVDFセンサ3のように、PVDF膜12の内部において、当該PVDF膜12の上方面側に複数のAgめっき糸からなる撚糸を織った織物を第1電極23aとして配設し、当該PVDF膜12の下方面側に複数のAgめっき糸からなる撚糸を織った織物を第2電極23bとして配設してもよい。このような構成により、センサの用途の幅を広げることができる。なお、第1電極23a及び第2電極23bは、編物状の電極であっても構わない。
図6は、β型ポリフッ化ビニリデン膜及びマトリックス状の電極を具備する圧電センサの構造を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は正面図である。図6に示すPVDFセンサ4のように、2つの電極に、それぞれ複数のAgめっき糸からなる撚糸を適用して、マトリックス構造を有する電極としてもよい。即ち、かかる2つの電極は、それぞれPVDF膜13の内部において、相互に間隔をあけて配設された第1電極24a〜24dからなる第1電極群と、相互に間隔をあけて配設され且つ第1電極24a〜24dと交差して設けられた第2電極25a〜25dからなる第2電極群とを有するワイヤメッシュ電極である。このような構成により、ワイヤメッシュ電極は、上述の第1電極群及び第2電極群をそれぞれ共通電極として機能することが可能となり、或いは、第1電極24a〜24d及び第2電極25a〜25d間で個別にセンシングが可能となる。
また、本実施形態では、図面において示す構成要素、即ち基材、膜、電極等の厚さ、幅、相対的な位置関係等は、本発明を説明する上で、誇張して示されている場合がある。また、本明細書の「上」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」であることを限定するものではない。例えば、「基材上の第1電極」という表現は、基材の上方に第1電極が配設されている場合も含むものである。また、「基材上の第1電極」や「基材上のPVDF膜」という表現は、基材と第1電極との間や、基材とPVDF膜との間に、他の構成要素を含むものを除外しない。
本発明は、β型ポリフッ化ビニリデン膜の圧電特性を利用した各種センサ、情報処理デバイス及び出力デバイス等の産業分野の他、各種生体センサ等の医療分野で利用することができる。
1,2,3,4 PVDFセンサ
10,11,12,13 PVDF膜
20a,21a〜21d,23a,24a〜24d 第1電極
20b,22a〜22d,23b,25a〜25d 第2電極
30 基材
40a,40b 台座

Claims (8)

  1. β型ポリフッ化ビニリデン膜と、
    前記β型ポリフッ化ビニリデン膜中に、互いに離間して配設される第1電極及び第2電極と
    を含み、
    前記第1電極及び前記第2電極は、糸状に形成されたものであり、
    前記第1電極と前記第2電極との離間距離は、50μm以上、500μm以下である
    とを特徴とするβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ。
  2. 前記第1電極及び前記第2電極は、
    合成繊維に金属めっきを施した金属めっき線のモノフィラメント又は撚糸で形成されており、前記第1電極及び第2電極の直径は1デニール以上、100デニール以下であることを特徴とする請求項1記載の圧電センサ。
  3. 前記第1電極及び前記第2電極は、複数の金属ワイヤを束ねて形成されており、前記第1電極及び第2電極の直径は500μm以下であることを特徴とする請求項1記載の圧電センサ。
  4. ポリフッ化ビニリデンと、前記ポリフッ化ビニリデンを溶解してβ型に固定する水溶性極性溶媒と、前記水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒とを混合して塗布液を形成する工程と、
    得られた塗布液から形成されるβ型ポリフッ化ビニリデンからなる塗布膜中に第1電極及び第2電極が配設されるように前記塗布膜を形成する工程と、
    形成した塗布膜を乾燥する工程と、
    乾燥した塗布膜を水洗する工程と
    を含み、
    前記第1電極及び前記第2電極は、糸状に形成されたものであり、
    前記塗布膜を形成する工程では、前記第1電極と前記第2電極との離間距離を100μm以上、500μm以下とする
    ことを特徴とするβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサの製造方法。
  5. ポリフッ化ビニリデンと、前記ポリフッ化ビニリデンを溶解してβ型に固定する水溶性極性溶媒と、前記水溶性極性溶媒よりも沸点が低い有機溶媒とを混合して塗布液を形成する工程と、
    基材上に第1電極及び第2電極を互いに離間して配設する工程と、
    得られた塗布液から形成されるβ型ポリフッ化ビニリデンからなる塗布膜中に前記第1電極及び前記第2電極が配設されるように前記塗布膜を形成する工程と、
    形成した塗布膜を乾燥する工程と、
    乾燥した塗布膜を水洗して前記基材から前記塗布膜を剥離する工程と
    を含み、
    前記第1電極及び前記第2電極は、糸状に形成されたものであり、
    前記塗布膜を形成する工程では、前記第1電極と前記第2電極との離間距離を100μm以上、500μm以下とする
    ことを特徴とするβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサの製造方法。
  6. 前記基材は、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネートの何れかを含むことを特徴とする請求項に記載のβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサの製造方法。
  7. 前記第1電極及び前記第2電極は、
    合成繊維に金属めっきを施した金属めっき線のモノフィラメント又は撚糸で形成されており、前記第1電極及び第2電極の直径は1デニール以上、100デニール以下であることを特徴とする請求項4〜6の何れか一項に記載の圧電センサの製造方法。
  8. 前記第1電極及び前記第2電極は、複数の金属ワイヤを束ねて形成されており、前記第1電極及び第2電極の直径は500μm以下であることを特徴とする請求項4〜6の何れか一項に記載の圧電センサの製造方法。
JP2016116553A 2016-06-10 2016-06-10 β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ及びその製造方法 Active JP6713664B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016116553A JP6713664B2 (ja) 2016-06-10 2016-06-10 β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016116553A JP6713664B2 (ja) 2016-06-10 2016-06-10 β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017220650A JP2017220650A (ja) 2017-12-14
JP6713664B2 true JP6713664B2 (ja) 2020-06-24

Family

ID=60658217

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016116553A Active JP6713664B2 (ja) 2016-06-10 2016-06-10 β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6713664B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6693619B2 (ja) * 2016-07-04 2020-05-13 株式会社ハッピージャパン β型ポリフッ化ビニリデン膜付基材及びその製造方法、並びにβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ及びその製造方法
US11990851B2 (en) * 2020-03-27 2024-05-21 Morgan State University Manufacturing of a flexible piezoelectric film-based power source
CN112223879A (zh) * 2020-08-19 2021-01-15 西安工程大学 一种可自诊断的压电pvdf纤维膜增强复合材料的制备方法
CN112701213A (zh) * 2020-12-22 2021-04-23 杭州华新机电工程有限公司 一种pvdf压电感应薄膜的制备方法和压电传感器及其在起重机啃轨中的应用

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2458909B1 (ja) * 1979-06-13 1982-12-31 Thomson Csf
JP6048870B2 (ja) * 2012-08-27 2016-12-21 独立行政法人国立高等専門学校機構 β型ポリフッ化ビニリデン膜の製造方法、β型ポリフッ化ビニリデン膜、β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電式センサ及び圧電式センサの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017220650A (ja) 2017-12-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6713664B2 (ja) β型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ及びその製造方法
Chatterjee et al. Electrically conductive coatings for fiber-based e-textiles
Fu et al. Controlled assembly of MXene nanosheets as an electrode and active layer for high‐performance electronic skin
Gao et al. Winding-locked carbon nanotubes/polymer nanofibers helical yarn for ultrastretchable conductor and strain sensor
Kim et al. High durability and waterproofing rGO/SWCNT-fabric-based multifunctional sensors for human-motion detection
Cai et al. Flexible temperature sensors constructed with fiber materials
Chen et al. Polymer‐enhanced highly stretchable conductive fiber strain sensor used for electronic data gloves
CN111118889B (zh) 一种多功能柔性传感纤维膜及其制备方法和应用
CN109431460B (zh) 一种柔性高伸缩的具有褶皱结构的纳米纤维包芯纱应力传感器及其制备方法
CN110864828A (zh) 一种银纳米线/MXene柔性应力传感器的制备方法
Dong et al. Highly permeable and ultrastretchable E-textiles with EGaIn-superlyophilicity for on-skin health monitoring, joule heating, and electromagnetic shielding
KR20180082499A (ko) 압전 기재, 압전 직물, 압전 편물, 압전 디바이스, 힘 센서, 액추에이터 및 생체 정보 취득 디바이스
CN107782475B (zh) 电阻式压力传感器及制备方法
CN102954848A (zh) 新型柔性力学传感器及其制备方法
Wan et al. A review on PVDF nanofibers in textiles for flexible piezoelectric sensors
Lu et al. Coupling piezoelectric and piezoresistive effects in flexible pressure sensors for human motion detection from zero to high frequency
JP6693619B2 (ja) β型ポリフッ化ビニリデン膜付基材及びその製造方法、並びにβ型ポリフッ化ビニリデン膜を具備する圧電センサ及びその製造方法
KR101926371B1 (ko) 고민감도 스트레인 센서의 제조 방법, 스트레인 센서 및 이를 포함하는 웨어러블 디바이스
McKnight et al. Fiber-based sensors: enabling next-generation ubiquitous textile systems
Zhang et al. A strong and flexible electronic vessel for real-time monitoring of temperature, motions and flow
Kim et al. High‐performance piezoelectric yarns for artificial intelligence‐enabled wearable sensing and classification
Liu et al. Highly flexible and multifunctional CNTs/TPU fiber strain sensor formed in one-step via wet spinning
WO2020251474A1 (en) Conducting silk-based electrodes
Lv et al. Synchronous construction of piezoelectric elements and nanoresistance networks for pressure sensing based on the wheatstone bridge principle
Luo et al. Highly sensitive piezoresistive and thermally responsive fibrous networks from the in situ growth of PEDOT on MWCNT-decorated electrospun PU fibers for pressure and temperature sensing

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190404

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200221

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200304

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200415

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200520

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200521

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6713664

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250