JP6712401B2 - 水洗大便器 - Google Patents

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Description

本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水によりボウル部を洗浄する水洗大便器に関する。
従来から、水洗大便器として、例えば、特許文献1に示すような水洗大便器、及び図9に示すような特許文献1と類似の構造を有している水洗大便器101が、便器本体102のリム118のリム通水路120の底面にスリット開口126を備えた、いわゆるオープンリム構造のものが知られている。このようなオープンリム構造においては、リム118とボウル部108との間のスリット開口126からボウル部108に洗浄水が吐水されるようになっている。図9に示すように、リム118の内周側においてはリム内周壁部122が形成され、リム内周壁部122の下方には汚物受け面116の上部内周壁140が形成されている。
このようなオープンリム構造の便器を安価に製造するために、図9に示すように、リム118の内周側のリム内周壁部122と、汚物受け面116の上部内周壁140とを1つの抜き型103を用いて、形成することが知られている。1つの抜き型103を抜いてリム内周壁部122と上部内周壁140とを形成するため、リム内周壁部122及び上部内周壁140は、同一の直線123上に形成されている。
特許第4062731号公報
しかしながら、このような従来の水洗大便器101において、汚物受け面116上に旋回流を形成させる場合、旋回流が減速されずに旋回が持続してしまい、ボウル部108に吐水される洗浄水と、旋回流とが衝突して、便器本体102の外部、又は水洗大便器101上に座っている使用者等に向かって水跳ねが生じてしまうというおそれがある。
また、近年の節水化の要請により、洗浄水量を低減して少ない洗浄水量で洗浄しようとする場合、汚物受け面116に供給される洗浄水が、洗浄水量が減ったことによりその勢いが弱くなっており、汚物受け面116上で旋回流が減速されずに旋回が持続してしまう場合には、洗浄水が分散されて、洗浄力が低下し、ボウル部108の洗浄が不良となるおそれがある。
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、いわゆるオープンリムタイプの水洗大便器において、汚物受け面上で旋回する流れが周回してリム後方導水路の出口の下方に戻ってくる場合に、汚物受け面上に流入する洗浄水と、汚物受け面上旋回流とが衝突して水跳ねを生じることを抑制することができるとともに、洗浄水の汚物受け面から排水路に流れ込む流れを強めることができ、便器本体の洗浄性能を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
上述した目的を達成するために、本発明は、洗浄水によりボウル部を洗浄する水洗大便器において、便器本体の供給口へ洗浄水を供給する給水装置と、ボウル形状の汚物受け面と、汚物受け面の上側に設けられ且つ自身の内周側において所定の傾斜の内周壁を形成しているリム部と、リム部の全周に形成されて洗浄水を導くリム通水路と、リム部の全周に形成され且つリム通水路から汚物受け面に洗浄水を供給する開口部と、を備えたボウル部と、ボウル部の下方に接続され汚物を排出する排水路と、供給口とリム通水路との間に形成されたリム後方導水路と、を有し、汚物受け面の上部内周壁は、リム後方導水路の出口のボウル部の内方側に設けられた傾斜領域における傾斜が、リム部の内周壁の傾斜よりも緩やかになるように形成され、内周壁の傾斜よりも緩やかに形成された傾斜領域の上端はリム部の内周壁の下端よりもボウル部の内方側に設けられることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、リム後方導水路の出口から流出する洗浄水が、汚物受け面上で旋回する流れを形成し、この旋回流が汚物受け面上を周回してリム後方導水路の出口のボウル部内方側の傾斜領域に流れる場合に、この傾斜領域における汚物受け面の上部内周壁の傾斜は、リム部の内周壁の傾斜よりも緩やかに形成されているので、傾斜領域に到達した洗浄水流が、傾斜領域の上部内周壁によって減速され、且つボウル部内方側に向かう向きに流される。従って、汚物受け面上の旋回流が周回してリム後方導水路の出口の下方に戻ってくる場合に、洗浄水の汚物受け面から排水路に流れ込む流れを強めることができるとともに、リム後方導水路の出口のボウル部内方側の傾斜領域において、リム後方導水路から汚物受け面上に流入する洗浄水と、旋回流とが衝突して水跳ねを生じることを抑制することができる。さらに、リム後方導水路の出口のボウル部内方側の内周壁に到達した洗浄水の流れが、上部内周壁の傾斜によって減速され、且つボウル部内方側に向かう向きに流されるので、汚物が比較的付着しやすい汚物受け面の後方側に、集中した流れを形成させることができ、汚物受け面の洗浄性能を向上させることができる。また、この集中した流れがボウル部の下方の排水路に向かって流れ込む流れを強めていることから、汚物の排出性能を向上させ、便器本体の洗浄性能を向上させることができる。
本発明において、好ましくは、傾斜領域は、ボウル部の中心部を中心とした80度〜100度の範囲の領域である。
このように構成された本発明においては、汚傾斜領域は、ボウル部の中心部を中心とした80度〜100度の範囲の領域であるので、上部内周壁の傾斜により使用者に汚物受け面についていびつな印象を与えることなく、美観も確保することができる。
本発明において、好ましくは、汚物受け面は、その両側方領域が凸面により形成され、前方領域と後方領域が上記両側方領域より小さな曲率の凸面、又は凹面により形成されている。
このように構成された本発明においては、汚物受け面上を周回する旋回流において、洗浄水の流速に領域に応じて緩急をつけることができ、両側方領域の凸面を乗り越えた後に加速された洗浄水が、汚物が付着しやすい前方領域及び後方領域の所定の曲率の凸面、又は凹面に集中した流れを形成することができ、汚物受け面上の領域の洗浄性能を高めることができる。また、前方領域及び後方領域の所定の曲率の凸面、又は凹面からボウル部の下方の排水路に向かって流れ込む流れが形成されることから、汚物の排出性能を向上させ、便器本体の洗浄性能を向上させることができる。
本発明において、好ましくは、ボウル部の上記開口部は、リム通水路の側方を開口する開口部として形成され、開口部の上部と下部との間の距離と、開口部からリム後方導水路の出口までのリム通水路の底面の距離と、の比率は、1:2〜1:3である。
このように構成された本発明においては、スリット開口部がリム通水路の側方を開口する開口部として形成されている場合において、便器本体の使用者が開口部を見下ろしたとき、使用者は、開口部からリム後方導水路の出口が見えない状態で便器を使用することとなる。よって、使用者が、リム後方導水路の出口が見えることにより汚れを気にすること、及びリム後方導水路の出口の清掃の必要性を感じさせることを防ぐことができる。また、使用者は、通常、開口部からリム後方導水路の出口が見えない状態で便器を使用するため、使用者に対し、開口部のみが見え、洗練された美的感覚を与えることができる。
本発明の水洗大便器によれば、いわゆるオープンリムタイプの水洗大便器において、汚物受け面上で旋回する流れが周回してリム後方導水路の出口の下方に戻ってくる場合に、汚物受け面上に流入する洗浄水と、汚物受け面上旋回流とが衝突して水跳ねを生じることを抑制することができるとともに、洗浄水の汚物受け面から排水路に流れ込む流れを強めることができ、便器本体の洗浄性能を向上させることができる。
本発明の一実施形態による水洗大便器を示す側面断面図である。 本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体の平面図である。 図2のIII−III線に沿って見た水洗大便器の部分断面図である。 図2のIV−IV線に沿って見た水洗大便器の部分断面図である。 本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体の汚物受け面の上方汚物受け面の表面形状を説明する平面図である。 図5のVI−VI線に沿って見た水洗大便器の正面断面図である。 図5のVII−VII線に沿って見た水洗大便器の正面断面図である。 図5のVIII−VIII線に沿って見た水洗大便器の正面断面図である。 従来の水洗大便器のリム後方導水路近傍のリム部と汚物受け面との関係を説明する図である。
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
図1は本発明の一実施形態による水洗大便器を示す側面断面図であり、図2は本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体の平面図であり、図3は図2のIII−III線に沿って見た水洗大便器の部分断面図であり、図4は図2のIV−IV線に沿って見た水洗大便器の部分断面図である。なお、図2においては、洗浄水の流れを矢印で示している。以下、本発明の実施形態における説明において、便器本体2を前方から見て右側を右側とし、前方から見て左側を左側として説明している。
図1乃至図3に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、陶器等からなる便器本体2を有する。便器本体2は、樹脂により形成されていてもよい。また、便器本体2の後方側の上方には、洗浄水源である貯水タンク4により示す給水装置が設置されている。さらに、貯水タンク4は上水道等の給水源(図示せず)に接続されている。貯水タンク4に設けられた操作レバー(図示せず)を操作することにより洗浄操作を開始すると、貯水タンク4の排水弁(図示せず)が開き、貯水タンク4から所定の洗浄水量(例えば、6リットル)が便器本体2の中央後方側の上部に開口された供給口6に供給されるようになっている。供給口6は、便器本体の左右方向の中央に限られず、中心線Cから右側又は左側にずれて形成されていてもよい。中心線Cは、便器本体2を左右方向に二等分する中心線である。
また、本実施形態の水洗大便器1においては、貯水タンク4から供給される洗浄水量が3リットル乃至6.5リットルの範囲である節水タイプの水洗大便器、より好ましくは3.8リットル乃至6.5リットルの範囲である節水タイプの水洗大便器、さらにより好ましくは4.8リットル乃至6リットルの範囲である節水タイプの水洗大便器に使用することができる。貯水タンク4により示される給水装置は、貯水タンクの他、規定の洗浄水量を供給できるフラッシュバルブ等の他の給水装置であってもよい。
また、便器本体2の前方上部には、ボウル部8が形成され、便器本体2の後方上部には、供給口6と後述するリム通水路20との間に形成され、貯水タンク4から供給された洗浄水を供給口6からボウル部8に導水するリム後方導水路10が形成されている。
さらに、ボウル部8の下方には、溜水部12が形成され、初期水位の溜水面がW0で示されている所定量の溜水が貯留されている。また、この溜水部12の下端には、排水トラップ管路14(排水路)の入口14aが接続されており、排水トラップ管路14は、その入口14aから後方へと延び、その後端14bが床面に設置された排出管(図示せず)に接続されている。
ボウル部8は、ボウル形状に形成されている汚物受け面16と、その上縁部に形成されて汚物受け面16に洗浄水を吐水するリム部18を備えている。
リム部18は、自身の内周側において所定の傾斜を有するリム垂下壁部22(内周壁)を形成している。リム垂下壁部22は、その上面から下方へ汚物受け面16近傍まで垂れ下がるように延びてリム部18の内部(便器本体の中心から見て外側)にリム通水路20を形成する。リム垂下壁部22は、環状に形成されている。リム垂下壁部22は、その上部から下部に向かってボウル部内側に近づくように傾斜して形成されている。リム垂下壁部22は、水平面L1に対して角度θ7の傾斜を有する(水平面L2に対しても角度θ7の傾斜を有する)ように形成されている。リム垂下壁部22の下方の延長線上に、汚物受け面16の上部内周壁40の上端が位置する。リム垂下壁部22の傾斜は、上部内周壁40の傾斜領域D以外の領域の傾斜とほぼ一致するように形成されている。
また、リム部18は、リム通水路20内の洗浄水が外に飛び出さないようにリム垂下壁部22がオーバーハングした形状を形成しており、リム部18の周方向に沿って形成されたリム通水路20の内側且つ側方が全周にわたって開口されてスリット開口部26(開口部)を形成している、いわゆる、オープンリムタイプの形態であるオープンリム部となっている。
このリム通水路20の内側(内部側)における、リム通水路底面24(又は上部内周壁40)とリム垂下壁部22との間において開口するスリット形状に形成されたスリット開口部26が、洗浄水を汚物受け面16に吐水する吐水部を形成している。なお、スリット開口部26は、リム通水路20の下方側(例えば、リム通水路20の底面の一部)が全周にわたって開口されていてもよい。
また、ボウル部8には、汚物受け面16とリム部18との間にボウル部8のほぼ全周に亘って形成された棚状のリム通水路底面24が形成されている。リム通水路底面24は、ボウル部8の上部に環状に形成された平坦面を形成し、この平坦面はボウル部8の外側方向から内側方向に向かって、ほぼ水平に形成されている。
このような構成により、リム後方導水路10から供給された洗浄水が、リム通水路20においてリム通水路底面24上を流れながらボウル部8の上部を一周するような流れを形成することができる。すなわち、本実施形態における水洗大便器は、オープンリムタイプの構造によるリム通水路20において洗浄水が左右片側から時計回り又は反時計回りに周回するような一方向の流れを形成するタイプの水洗大便器である。
次に、リム後方導水路10について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、便器本体2の後方側のリム後方導水路10の後端には、貯水タンク4の下流側端部が接続される供給口6が形成され、貯水タンク4から供給された洗浄水は、供給口6から便器本体2の後方側のリム後方導水路10に吐水され、リム後方導水路10からリム通水路20に流入するようになっている。
図2に示すように、リム後方導水路10は、便器本体2の前方から見てほぼ中央に配置された供給口6近傍から便器本体2の左右方向のうち一方側へと延びる上流側リム導水路28と、この上流側リム導水路28から左右方向のうち他方側へと延びる下流側リム導水路30とを備えている。リム後方導水路10は、中心線Cに対して左右非対称の流路を形成している。リム後方導水路10は、上流側リム導水路28と下流側リム導水路30とにより、「く」の字形状(他の例示の表現としては、ブーメラン形状、又は犬の後ろ脚のような形状)の流路を形成している。それぞれ異なる方向に延びる上流側リム導水路28と下流側リム導水路30とを接続する屈曲部32は、便器本体2の前後方向の中心線Cに対して右側領域に偏心して位置決めされている。後述するように上流側リム導水路28と下流側リム導水路30との間には、流路を屈曲させる屈曲部32が形成されている。
下流側リム導水路30は、上流からその下流側に向かって中心線C上に一端戻った後、さらに、徐々に左側領域に向かって偏心するように形成されている。従って、リム後方導水路10は、導水路全体の長さが従来よりも長くなるように形成されている。
上流側リム導水路28は、便器本体2の中心線C上の供給口6から斜めに右側方向に向かって直線的に延び、中心線Cに対して右側近傍に配置された上流側リム導水路出口部28aまで延びている。上流側リム導水路28は、その流路の両側壁が中心線Cに対して対称となる位置に配置されておらず、中心線Cに対して非対称の位置に配置されている。上流側リム導水路28は、上流から下流側に向かって中心線Cに対して徐々に右側領域に偏心するように形成されている。上流側リム導水路28の中心線A1は、中心線Cに対して前方が右側外向きに傾斜するように配置されている。
図2に示すように、供給口6の中心点C1は、便器本体2の左右方向の中心に延びる中心線C上に配置されるようになっている。本実施形態においては、上流側リム導水路28は、その中心線A1が便器本体2の中心線Cよりも右側方向に偏心して形成されている。上流側リム導水路28の中心線A1は、供給口6の中心点C1よりも便器本体2の左右方向のうち屈曲部32の配置される方向側(例えば、便器本体2の左右方向のうち片側の右方向側)に偏心して延びているようになっている。すなわち、上流側リム導水路28の中心線A1は、供給口6の中心点C1の位置における左右方向の横断面において、中心点C1より右方向側の位置a1を通っている。
上流側リム導水路28の中心線A1は、上流側リム導水路入口部28bから上流側リム導水路出口部28aまで中心線Cに対して右側に偏心して延びている。中心線A1を延長した仮想的な直線は、中心線Cと供給口6の中心点C1よりも後方側の位置a2において交わるようになっている。
上流側リム導水路28の上流側リム導水路入口部28bは、供給口6の外周の壁面29のうち、中心点C1を通る中心線Cに対して一方側(右側)にずれた位置に接続されている。すなわち、上流側リム導水路入口部28bは、供給口6の外周の壁面29のうち、上流側リム導水路28が中心線Cに対して偏心しようとする側に向かって中心からわずかにずれた部分に接続されている。別の言い方によれば、供給口6の外周の壁面29は、上流側リム導水路入口部28bとの接続開口が中心線Cに対して左右片側に偏るように形成されている。
下流側リム導水路30は、屈曲部32に接続される下流側リム導水路入口部30aから左側へと延び、リム通水路20の合流部20aに接続される下流側リム導水路出口部30bに至る流路を形成している。本実施形態においては、合流部20aは、リム通水路20の左側後部に配置されている。合流部20aにおいて、下流側リム導水路30の下流側リム導水路出口部30bから流出する洗浄水の流れと、リム通水路20を周回して戻ってきた洗浄水の流れとが合流するようになっている。
下流側リム導水路30は、下流側リム導水路入口部30aから、下流側リム導水路出口部30bまで、便器本体2の中心線Cを斜めに横切るような直線的な流路を形成している。
下流側リム導水路30は、その下流側リム導水路入口部30a(下流側リム導水路の上流部)が、中心線Cに対して右側の右側領域に配置され、さらに、その下流側リム導水路出口部30b(下流側リム導水路の下流部)が、中心線Cに対して左側の左側領域に配置されている。よって、下流側リム導水路30は、中心線Cの右側から中心線Cを超えてボウル部8の左側後部領域まで延びるような比較的長い流路を形成している。下流側リム導水路入口部30aが、中心線Cに対して右側に配置されているので、下流側リム導水路入口部30aからボウル部8の左側後部領域に位置する下流側リム導水路出口部30bまでの長さが、比較的長い長さに設定される。下流側リム導水路30は、比較的長い長さの流路を有しているので、洗浄水が下流側リム導水路30中において下流側リム導水路30の向きに良好に整流されることができ、洗浄水の指向性が高められ、下流側リム導水路出口部30bからリム通水路20上を周回しようとする向きに整った流れ且つ比較的水勢の強い状態の流れにより吐水される。
本実施形態においては、下流側リム導水路30の左右方向のうち一方側(本実施形態においては左右方向のうち右方向側)の内壁面38は、便器本体2を左右方向に二等分する中心線Cに対する左右方向のうち一方側(本実施形態においては中心線に対する左右方向のうち右方向側)から、この中心線Cよりも他方側(本実施形態においては中心線に対する左右方向のうち左方向側)まで延びている。
内壁面38は、下流側リム導水路入口部30aを形成し且つ屈曲部32の外側端部と接続される上流端部38aと、下流側リム導水路出口部30bを形成し且つ中心線Cよりも他方側(本実施形態においては中心線Cに対する左右方向のうち左方向側)に位置する下流端部38bと、を形成している。従って、内壁面38は、中心線Cの右側から左側まで中心線Cを超えて延びている。
下流側リム導水路30の内壁面38の下流端部38bは、中心線Cよりも他方側(本実施形態においては中心線Cに対する左右方向のうち左方向側)に突出する凸部を形成している。内壁面38の下流端部38bは、中心線Cよりも左側の領域において、汚物受け面16の後方側から延びるリム通水路外側壁面34と接続されている。
下流端部38bは、中心線Cよりも左側に突出する凸部を形成しているので、下流端部38bは、中心線C上において、下流側リム導水路30の流路と、リム通水路20の中央後方領域20bとを区切っている。
下流側リム導水路30の下流側リム導水路出口部30b(出口)は、中心線Cよりも左側の位置において開口されている。下流側リム導水路出口部30bは、リム通水路20と接続されており、下流側リム導水路出口部30bとリム通水路20とが接続される部分においてリム通水路20の合流部20aが形成されている。
図4に示すように、下流側リム導水路出口部30bのボウル部内方側にはリム通水路底面24が延び、リム通水路底面24のボウル部内方側には汚物受け面16の上部内周壁が接続されている。
本実施形態においては、リム後方導水路10は、供給口6とリム通水路20との間に形成され、便器本体2の前方から見てほぼ中央に配置された供給口6近傍から便器本体2の左右方向のうち一方側へと延びる上流側リム導水路28と、この上流側リム導水路28から左右方向のうち他方側へと延びる下流側リム導水路30とを備え、下流側リム導水路30からリム通水路20に向かう洗浄水の主流を形成することでき、良好にリム通水路20を旋回しようとする洗浄水の旋回流を形成することができ、汚物受け面16上を旋回しようとする旋回流を形成することができる。
このようなリム後方導水路10は、上述のような構造にとらわれない他の構造により、洗浄水を汚物受け面16上において少なくともわずかに旋回させられるリム導水路に変更されることができる。例えばこのようなリム導水路は、洗浄水を供給口からディストリビュータ等の流路を介して汚物受け面16に導く導水路であってもよい。また、例えば上述のようなリム導水路(リム後方導水路10)は、供給口とリム通水路との間に形成され、便器本体の後方の供給口から前方に向かって便器本体の中央近傍をほぼ直線状に延びるリム後方導水路であってもよい。
次に、図1乃至図8により、ボウル部8の汚物受け面16について詳細に説明する。
図5は本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体の汚物受け面の上方汚物受け面の表面形状を説明する平面図であり、図6は図5のVI−VI線に沿って見た水洗大便器の正面断面図であり、図7は図5のVII−VII線に沿って見た水洗大便器の正面断面図であり、図8は図5のVIII−VIII線に沿って見た水洗大便器の正面断面図である。
汚物受け面16は、ボウル形状の汚物受け面16の上部の内周を形成する上部内周壁40と、上部内周壁40の下部から内側に延びる比較的緩やかな傾斜面を形成している上方汚物受け面42と、上方汚物受け面42の中央側において落ち込むように形成された凹部44と、を備えている。
汚物受け面16の上部内周壁40は、汚物受け面16の上端部を形成し、且つボウル形状の内側の全周にわたる内周面を形成している。上部内周壁40は、後述する所定の傾斜の縦壁を形成している。上部内周壁40は、下流側リム導水路出口部30bの下方側且つボウル部内方側の傾斜領域Dにおけるその上部内周壁40の傾斜が、リム部18のリム垂下壁部22の傾斜よりも緩やかになるように形成されている。よって、傾斜領域Dは、緩傾斜領域を形成している。
上部内周壁40における傾斜領域Dは、下流側リム導水路出口部30bの下方側且つボウル部内方側において広がる領域である。ボウル部内方側は、ボウル部8の内側方向側であり、下流側リム導水路出口部30bに対して中心部C2の方向がボウル部8の内側方向となる。
傾斜領域Dは、下流側リム導水路出口部30bの近傍位置に設けられ、さらに、上下方向の一定幅を有し且つ汚物受け面16の湾曲面に沿った所定長さの領域である。具体的には、傾斜領域Dは、ボウル部8の中心部C2を中心とした80度〜100度の範囲の領域である。言い換えると、傾斜領域Dは、中心部C2を中心とした中心角50度(θ1により示す)の幅〜中心角130度(θ2により示す)の幅の範囲の上部内周壁40の領域である。このような傾斜領域Dは、ボウル部8の中心部C2を中心とした中心角50度(θ1)〜130度(θ2)の大きさの扇形の範囲の領域に含まれる。傾斜領域Dは、上述のように、50度〜130度の範囲の内周壁上の領域であるので、上部内周壁の傾斜により使用者に汚物受け面についていびつな印象を与えることなく、美観も確保することができる。
本実施形態においては、ボウル部8の中心部C2は、便器本体2の左右方向の幅が最も大きい部分において便器本体2を左右方向に横断する横断線Eを規定した場合に、横断線Eと中心線Cとの交点部により規定される。なお、ボウル部8の中心部C2は、汚物受け面16の凹部44の中心部、ボウル部8の中心部、汚物受け面16の中心部、汚物受け面16の左右方向の幅が最も大きい部分を左右方向に横断する横断線と中心線Cとの交点部、ボウル形状の汚物受け面16の領域を4等分する場合の中心部、又は排水トラップ管路14の入口14aの中心部等の他の基準により定めてもよい。
傾斜領域Dは、下流側リム導水路出口部30bとボウル部8の中心部C2とを結ぶ基準線Gを、中心部C2を中心として、±25度回転させる範囲内(両端の間の中心角50度(θ1)の大きさの範囲内)の領域から、±65度回転させる範囲内(両端の間の中心角130度(θ2)の大きさの範囲内)の領域までの、所定の角度範囲内に収まる領域として規定される。より好ましくは、傾斜領域Dは、基準線Gを、中心部C2を中心として、±40度回転させる範囲内(80度の大きさの範囲内)の領域から、±50度回転させる範囲内(100度の大きさの範囲内)の領域までの、所定の角度範囲内に収まる領域により規定してもよい。
例えば、本実施形態における傾斜領域Dは、基準線Gを、中心部C2を中心として、±45度回転させる範囲内(両端の間の中心角90度(θ0)の大きさの範囲内)に収まる領域により規定されている。
傾斜領域Dの下流側端部D1は、基準線Gを、中心部C2を中心として、−45度回転させた位置(基準線Gを旋回流の下流側に向かって45度の大きさ回転させた位置)に設けられる。なお、基準線Gの位置が0度の位置である。また、傾斜領域Dの上流側端部D2は、基準線Gを、中心部C2を中心として、+45度回転させた位置(基準線を旋回流の上流側に向かって45度の大きさ回転させた位置)に設けられる。このようにして、下流側端部D1と、上流側端部D2との間の上部内周壁40の傾斜領域Dが規定される。
なお、本実施形態においては、傾斜領域Dは、基準線Gに対して左右対称になるように中心部C2を中心とした中心角80度〜100度の範囲の領域として形成されているが、傾斜領域Dは、基準線Gに対して左右非対称になるように中心部C2を中心とした中心角80度〜100度の範囲の領域として形成されていてもよい。例えば、傾斜領域Dは、中心線Cに対して左右対称になるように中心部C2を中心とした中心角90度の範囲の扇形の領域に含まれる上部内周壁40部分として形成されていてもよい。この場合においても、下流側リム導水路出口部30bの下方側且つボウル部内方側の傾斜領域Dの傾斜が、リム垂下壁部22の傾斜よりも緩やかになるように形成されることができる。
図4に示すように、上部内周壁40の傾斜領域Dは、上下方向においては、リム通水路底面24と上方汚物受け面42との間に配置されている。上部内周壁40は、下流側リム導水路出口部30bと中心部C2とを結ぶ基準線G上における傾斜領域Dにおいて、リム部18のリム垂下壁部22に対する角度が、最大の角度θ3の傾斜を有するように形成されている。上部内周壁40は、傾斜領域Dにおいて、基準線G上から左右方向に離れるにつれて、リム部18のリム垂下壁部22に対する角度が小さくなるように形成されている。上部内周壁40は、基準線G上における傾斜領域Dにおいて、上部内周壁40は、最も前方まで突出している頂部41を形成している。
より具体的には、図4に示すように、基準線G上において、上部内周壁40は、リム垂下壁部22に対して10度〜30度の範囲の角度θ3の傾斜を有するようになっている。従って、上部内周壁40の傾斜が、リム垂下壁部22の傾斜よりも緩やかになるように形成されている。
また、図3に示すように、傾斜領域Dにおいて、例えば下流側リム導水路出口部30bから所定距離離れた中心線C上において、上部内周壁40は、リム垂下壁部22に対して角度θ3より小さい角度θ4の傾斜を有するようになっている。従って、角度θ4は、0°<θ4<θ3の大きさの関係に設定されている。また、傾斜領域Dの両端の下流側端部D1及び上流側端部D2においては、上部内周壁40は、リム垂下壁部22と一致する角度を有するようになっている。なお、上部内周壁40は、傾斜領域D以外の領域においては、上部内周壁40の傾斜が、リム垂下壁部22の傾斜と一致するようになっている。従って、傾斜領域Dの領域においては、傾斜領域D以外の領域におけるよりも、上部内周壁40の傾斜が、緩やかに形成されている。
また、上部内周壁40は、基準線G上における傾斜領域Dにおいて、水平面L2に対する角度が、最小の角度θ5の傾斜を有するように形成されている。すなわち、上部内周壁40は、傾斜領域Dにおいて、基準線G上から左右方向に離れるにつれて、水平面L2に対する角度が大きくなるように形成されている。具体的には、図4に示すように、上部内周壁40は、基準線G上において、水平面L2に対して50度〜70度の範囲の角度θ5の傾斜を有するようになっている。
また、図3に示すように、傾斜領域Dにおいて、例えば下流側リム導水路出口部30bから所定距離離れた中心線C上において、上部内周壁40は、水平面L2に対して角度θ5より大きな角度θ6の傾斜を有するようになっている。従って、角度θ6は、θ5<θ6<90°の大きさの関係に設定されている。また、上述のように、上部内周壁40は、傾斜領域Dの両端の下流側端部D1及び上流側端部D2においては、水平面L2に対する角度が、上部内周壁40と、リム垂下壁部22とで一致するように形成されている。
図3及び図4に示すように、傾斜領域Dにおいて、上部内周壁40は、リム垂下壁部22に対して所定範囲の角度θ3の傾斜を有するようになっているので、上部内周壁40の傾斜が、リム垂下壁部22の傾斜よりも緩やかになるように形成されている。他の言い方によれば、上部内周壁40の傾斜が、リム垂下壁部22の傾斜よりも寝かされた状態とされている。
図3及び図4に示すように、傾斜領域Dにおいて、水平面L2に対する上部内周壁40の傾斜の角度θ5は、水平面L2に対するリム垂下壁部22の傾斜の角度θ7よりも小さくなるように形成されているので、上部内周壁40の傾斜が、リム垂下壁部22の傾斜よりも緩やかになるように形成されている。
次に、図4により、下流側リム導水路出口部30b近傍のスリット開口部26について説明する。
本実施形態においては、ボウル部8のスリット開口部26は、リム通水路20の側方を開口する開口部として形成されている。図4に示すように、スリット開口部26の上部26aと下部26bとの間の上下方向の距離l1と、スリット開口部26から下流側リム導水路出口部30bまでのリム通水路底面24の距離l2と、の比率は、1:2〜1:3の比率の範囲である。
このように構成することにより、スリット開口部26がリム通水路20の側方を開口する開口部として形成されている場合に、用便をする目的で便器本体を使用する通常の使用者が、スリット開口部26を見下ろしたとき、図4に示すように、視線V(図4において点線により使用者の視線Vを示す)がリム通水路底面24に当たることとなる。従って、使用者は、通常の用便の使用態様においては、スリット開口部26の奥にはリム通水路底面24が見えることとなり、スリット開口部26から下流側リム導水路出口部30bが見えない状態で便器を使用することとなる。
よって、便器本体2を使用する使用者が、下流側リム導水路出口部30bが見えることにより下流側リム導水路出口部30bの汚れを気にすること、及びこの使用者に下流側リム導水路出口部30bの清掃の必要性を感じさせることを防ぐことができる。また、スリット開口部26の奥に下流側リム導水路出口部30bが見えにくい状態で配置されることにより、使用者は、通常、開口部からリム後方導水路の出口が見えない状態で便器を使用するため、使用者に対し、スリット開口部26のみが見え、すっきりと洗練されたような美的感覚を与えることができる。
次に、図2及び図5により、ボウル部8の汚物受け面16の上方汚物受け面42の表面形状について詳細に説明する。図5は本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体の汚物受け面の上方汚物受け面の表面形状を説明する平面図であり、図6は図5のVI−VI線に沿って見た水洗大便器の正面断面図であり、図7は図5のVII−VII線に沿って見た水洗大便器の正面断面図であり、図8は図5のVIII−VIII線に沿って見た水洗大便器の正面断面図である。図5に示すように、ボウル部8の上方汚物受け面42は、平面視で、左側方領域H1、前方領域H2、右側方領域H3、及び後方領域H4を有する。なお、図5においては、洗浄水の流れを矢印で示している。
左側方領域H1は全体として上方汚物受け面42上でゆるやかな勾配で隆起している凸面を形成している。前方領域H2は、全体として上方汚物受け面42上でゆるやかな勾配でくぼんでいる凹面を形成している。右側方領域H3は全体として上方汚物受け面42上でゆるやかな勾配で隆起している凸面を形成している。さらに、後方領域H4は、全体として上方汚物受け面42上でゆるやかな勾配でくぼんでいる凹面を形成している。前方領域H2及び後方領域H4は、右側方領域H3及び左側方領域H1の凸面よりも小さな曲率の凸面により形成されていてもよい。
従って、下流側リム導水路出口部30bからリム通水路20に流入され、リム通水路20から汚物受け面16に流下して汚物受け面16上に旋回流を生じさせる洗浄水は、例えば、左側方領域H1の凸面、前方領域H2の凹面、右側方領域H3の凸面、後方領域H4の凹面の順に各領域を通過することとなる。このように、上方汚物受け面42においては、左側方領域H1の凸面、前方領域H2の凹面、右側方領域H3の凸面、後方領域H4の凹面、再び左側方領域H1の凸面のように、領域が変わるごとに凸面と凹面(又は比較的小さな凸面)とが変化している。
上方汚物受け面42の右側方領域H3及び左側方領域H1は、横方向(便器本体2の前後方向に直交する方向)に沿って同じ曲率の凸面により形成され(図7参照)、前後方向に沿ってもそれぞれ同じ曲率の凸面により形成されている。前方領域H2は前後方向に沿って凹面により形成され(図1参照)、横方向に沿って凹面により形成されている(図6参照)。後方領域H4は、横方向に沿って凹面により形成され(図8参照)、前後方向に沿って右側方領域H3及び左側方領域H1の凸面よりも小さな曲率の凸面により形成されている(図1参照)。
ここで、前方領域H2は、後方領域H4と同様に、前後方向に沿って右側方領域H3及び左側方領域H1の凸面よりも小さな曲率の凸面により形成されてもよい。また、後方領域H4は、前方領域H2と同様に、前後方向に沿って凹面により形成されてもよい。
さらに、洗浄水の旋回方向の左側方領域H1が旋回方向の上流側である場合に、左側方領域H1が右側方領域H3よりも横方向に沿って大きな曲率の凸面により形成されてもよい。逆に、洗浄水の旋回方向の右側方領域H3が旋回方向の上流側である場合には、右側方領域H3が左側方領域H1よりも横方向に沿って大きな曲率の凸面により形成されてもよい。
ボウル部8の汚物受け面16の上方汚物受け面42の表面形状を上述したように形成することにより、詳細は後述するが、上方汚物受け面42上を旋回する洗浄水の一部が左側方領域H1の凸面により減速された後、前方領域H2の凹面から凹部44に流入する主流F10を形成し、さらに、上方汚物受け面42上を旋回する洗浄水の一部が右側方領域H3の凸面により減速された後、後方領域H4の凹面から凹部44に流入する主流F11を形成する(図5参照)。
本発明の一実施形態による水洗大便器1の左右非対称のリム後方導水路10及びこれを備えた水洗大便器1に関し、左右逆転した形状の流路構成を採用していてもよい。より具体的には、左右逆転した形状の流路の一例としては、便器本体の左右方向のうち左側へと延びる上流側リム導水路から方向を変えて下流側リム導水路が右向きに延びるように形成され、洗浄水が、下流側リム導水路に沿って、左右方向のうち右側へと比較的長い長さにわたって導かれ、下流側リム導水路から流出する洗浄水がリム通水路において時計回りに周回するような一方向の流れを形成するように水洗大便器が構成されていてもよい。
つぎに、図1〜図7により、本発明の一実施形態による水洗大便器の作用(動作)を説明する。
最初に、便器洗浄のための操作レバー(図示せず)を操作すると、貯水タンク4に設けられた排水弁(図示せず)が開き、貯水タンク4から所定の洗浄水量(例えば、6.0リットル)が便器本体2の後方側の供給口6からリム後方導水路10に供給される。
貯水タンク4から供給口6に供給された洗浄水は、矢印F1に示すように、左右方向において上流側リム導水路28が偏心している側から上流側リム導水路28に流入する。上流側リム導水路28に流入した洗浄水は、上流側リム導水路28内を便器本体2の左右方向のうち右側へと徐々に偏心するように流れる。すなわち、洗浄水は、中心線Cから遠ざかるように右側側方に向かって流れる。洗浄水が上流側リム導水路出口部28aに到達すると、洗浄水が屈曲部32において向きを変える。洗浄水は、屈曲部32において便器本体2の右側向きの流れから左側向きの流れに方向が転換される。
このように、洗浄水は、矢印F2に示すように、直線的に延びる下流側リム導水路30に沿って下流側リム導水路入口部30aから下流側リム導水路出口部30bに向かって直線的な流れを形成する。下流側リム導水路30は、従来よりも比較的長く形成されており、洗浄水は、下流側リム導水路入口部30aから中心線Cを越えて直線的に流れ、水勢を維持しながら流れの方向が比較的均一に整えられる。従って、洗浄水は、下流側リム導水路出口部30bから左右に拡がることが抑制され、直線的な流れとして流出する。
また、屈曲部32の外側から連続する内壁面38に導かれる洗浄水は、下流側リム導水路30の左右方向のうち一方側の内壁面38に沿って流れる。内壁面38に沿って流れる洗浄水は、便器本体2を左右方向に二等分する中心線Cよりも左側(他方側)に位置する下流端部38bまでこの内壁面38に沿って流れることができる。従って、この内壁面38の下流端部38b近傍から流出する洗浄水は、矢印F3に示すように、下流側リム導水路30から内壁面38の延長線上のリム通水路20に向かう洗浄水の主流を直線的に形成することできる。
図2において矢印F3及びF4に示すように、下流側リム導水路出口部30bから流出する洗浄水は、リム通水路20上を周回しようとする洗浄水の流線に沿って、リム通水路20を流れる主流を形成する。中央後方領域20bから汚物受け面16の中心線C近傍の領域に流下される洗浄水の量が低減されるため、この洗浄水の旋回方向に向かう単位時間当たりの流量が増大されている。多くの洗浄水は、リム通水路20におけるリム通水路底面24上を、左側後方領域から、左側領域、前側領域、右側領域、右側後方領域、後方領域の順に通過して、再び左側後方領域に戻るような、旋回流れの主流を形成する。
リム通水路20からスリット開口部26を通って流下する洗浄水は、汚物受け面16の上部内周壁40を旋回する旋回流を形成する。図4に示すように、上部内周壁40を旋回する旋回流F5は、傾斜領域Dにおいて、上部内周壁40の傾斜が、リム部18のリム垂下壁部22の傾斜よりも緩やかになるように形成されているので、洗浄水が傾斜領域Dの前方に向けて突出した頂部41に至るまでに、洗浄水の流速が減速されるとともに洗浄水の流線方向がボウル部内側方向に変化される。よって、下流側リム導水路出口部30bのボウル部内方側の汚物受け面16において、汚物受け面16上で旋回する流れが周回して下流側リム導水路出口部30bの下方に戻ってくる場合に、上部内周壁40の傾斜領域Dから排水路に流れ込むような内側向きの流れを強めることができる。よって、上部内周壁40の傾斜領域D上に流入する旋回流の洗浄水が、やや内側に向かって逃がされるように流下されるため、下流側リム導水路出口部30bからボウル部内方側に向かって流下する洗浄水と、上部内周壁40の傾斜領域D上に流入する旋回流とが、衝突して水跳ねを生じさせることを抑制することができる。
傾斜領域Dは、基準線Gに対して左右対称になるように中心部C2を中心とした所定の中心角度の範囲の領域として形成されているので、上部内周壁40上から傾斜領域Dに流入した洗浄水は、傾斜領域Dにおいて、洗浄水の流速が徐々に減速されるとともに洗浄水一部の流線方向がボウル部内側方向に変化されることができる。従って、より効率的に上部内周壁40の傾斜領域Dから排水路に流れ込むような内側向きの流れを強めることができる。
上述のように、リム通水路20からスリット開口部26を通って流下する洗浄水は、汚物受け面16の上部内周壁40を旋回する旋回流を形成し、さらに、上部内周壁40を流下する洗浄水が上方汚物受け面42上に旋回流を形成する。このとき、汚物受け面16上の旋回流は、例えば、左側方領域H1の凸面、前方領域H2の凹面、右側方領域H3の凸面、後方領域H4の凹面の順に各領域を通過することとなる。
この上方汚物受け面42上の旋回流において、左側方領域H1においては、凸面形状により、矢印F6に示すように、洗浄水が減速される。以下、矢印F6乃至F9については、矢印の長さにより流速の大きさの大小を示す。前方領域H2においては、凹面形状により、矢印F7に示すように、洗浄水が加速される。右側方領域H3においては、凸面形状により、矢印F7に示すように、洗浄水が減速される。後方領域H4においては、凹面形状により、矢印F7に示すように、洗浄水が加速される。
よって、上方汚物受け面42上を周回する旋回流において、洗浄水の流速に領域に応じて緩急をつける(流速差をつける)ことができる。両側方領域の凸面を乗り越えた後に加速された洗浄水が、矢印F10及びF11に示すように、汚物が付着しやすい汚物受け面16の前方領域H2及び後方領域H4に集中した流れを形成することができ、汚物受け面16上の領域の洗浄性能を高めることができる。また、リム部18からの洗浄水の溢れや水跳ねが生じやすい左側方領域H1及び右側方領域H3においては、凸面により洗浄水を減速させ、洗浄水の溢れや水跳ねを抑制することができる。前方領域H2及び後方領域H4の所定の曲率の凸面、又は凹面からボウル部8の下方の排水トラップ管路14に向かって流れ込む流れが形成されることから、汚物の排出性能を向上させ、便器本体2の洗浄性能を向上させることができる。
また、上方汚物受け面42上の旋回流において、左側方領域H1の凸面で減速された洗浄水が、前方領域H2の凹面に流入し且つ集められることで、前方領域H2の凹面から凹部44に流入する洗浄水の主流F10が形成される。さらに、右側方領域H3の凸面で減速された洗浄水が、後方領域H4の凹面に流入し且つ集められることで、後方領域H4の凹面から凹部44に流入する洗浄水の主流F11が形成される。このように、上方汚物受け面42上に旋回流の流速を低減させる領域を形成し、前方領域H2の凹面及び後方領域H4の凹面から洗浄水をまとめて凹部44に流下させることができ、排水トラップ管路14内への流れ込みを強く作ることによって、汚物の排出効率を高めることができる。
また、本実施形態による水洗大便器1においては、ボウル部8の汚物受け面16の上方汚物受け面42は、その右側方領域H3及び左側方領域H1が横方向に沿って凸面により形成され、その前方領域H2と後方領域H4が前後方向に沿って両側方領域より小さな曲率の凸面又は凹面により形成されているので、ジェット吐水口を設けなくても、さらに、洗浄水を吐水するリム吐水口を設けていない場合であっても、ボウル部8の凹部44の前方から及び後方からそれぞれ凹部44に流入する主流F10、F11を形成することができる。具体的には、凹部44の前方から流入する洗浄水の主流F10が、排水トラップ管路14内への押し込み流(縦方向の旋回流)を発生させ、凹部44の後方から流入する洗浄水の主流F11が、横方向(水平方向)の旋回流を発生させる。その結果、ボウル部8の凹部44内で汚物を含む洗浄水を効率的に攪拌でき、汚物の排出効率を高めることができる。
このような旋回流れを形成しながら、洗浄水が、リム通水路底面24の内側に形成されたスリット開口部26から、徐々に流下し、ボウル部8の汚物受け面16の全体を均一に洗浄することとなる。ボウル部8を流下した洗浄水は、汚物とともに排水トラップ管路14から排出されて、便器本体2の一連の洗浄動作が終了する。
上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、リム後方導水路10の下流側リム導水路出口部30bから流出する洗浄水が、汚物受け面16上で旋回する流れを形成し、この旋回流が汚物受け面16上を周回して下流側リム導水路出口部30bのボウル部内方側の傾斜領域Dに流れる場合に、この傾斜領域Dにおける汚物受け面16の上部内周壁40の傾斜は、リム部18のリム垂下壁部22の傾斜よりも緩やかに形成されているので、傾斜領域Dに到達した洗浄水流が、傾斜領域Dの上部内周壁40によって減速され、且つボウル部内方側に向かう向きに流される。従って、汚物受け面16上の旋回流が周回してリム後方導水路10の下流側リム導水路出口部30bの下方に戻ってくる場合に、洗浄水の汚物受け面16から排水路に流れ込む流れを強めることができるとともに、下流側リム導水路出口部30bのボウル部内方側の傾斜領域Dにおいて、リム後方導水路10から汚物受け面16上に流入する洗浄水と、旋回流とが衝突して水跳ねを生じることを抑制することができる。さらに、下流側リム導水路出口部30bのボウル部内方側の上部内周壁40に到達した洗浄水の流れが、上部内周壁40の傾斜によって減速され、且つボウル部内方側に向かう向きに流されるので、汚物が比較的付着しやすい汚物受け面16の後方側に、集中した流れを形成させることができ、汚物受け面16の洗浄性能を向上させることができる。また、この集中した流れがボウル部8の下方の排水トラップ管路14に向かって流れ込む流れを強めていることから、汚物の排出性能を向上させ、便器本体2の洗浄性能を向上させることができる。
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、汚物受け面16の上部内周壁40における下流側リム導水路出口部30bのボウル部内方側に設けられた傾斜領域Dは、ボウル部8の中心部C2を中心とした80度〜100度の範囲の領域であるので、上部内周壁40の傾斜により使用者に汚物受け面16についていびつな印象を与えることなく、美観も確保することができる。
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、汚物受け面16上を周回する旋回流において、洗浄水の流速に領域に応じて緩急をつけることができ、両側方領域(左側方領域H1及び右側方領域H3)の凸面を乗り越えた後に加速された洗浄水が、汚物が付着しやすい前方領域H2及び後方領域H4の所定の曲率の凸面、又は凹面に集中した流れを形成することができ、汚物受け面16上の領域の洗浄性能を高めることができる。また、前方領域H2及び後方領域H4の所定の曲率の凸面、又は凹面からボウル部8の下方の排水路に向かって流れ込む流れが形成されることから、汚物の排出性能を向上させ、便器本体2の洗浄性能を向上させることができる。
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、スリット開口部26がリム通水路20の側方を開口する開口部として形成されている場合において、例えば便器本体2の前に立つ使用者がスリット開口部26を見下ろしたとき、使用者は、スリット開口部26からリム後方導水路10の下流側リム導水路出口部30bが見えない状態で便器を使用することとなる。よって、使用者が、下流側リム導水路出口部30bが見えることにより汚れを気にすること、及び使用者自身が行う下流側リム導水路出口部30bの清掃の必要性を感じさせることを防ぐことができる。また、使用者は、通常、スリット開口部26から下流側リム導水路出口部30bが見えない状態で便器を使用するため、使用者に対し、スリット開口部26のみが見え、洗練された美的感覚を与えることができる。
1 水洗大便器
2 便器本体
4 貯水タンク(給水装置)
6 供給口
8 ボウル部
10 リム後方導水路
12 溜水部
14 排水トラップ管路(排水路)
14a 入口
14b 後端
16 汚物受け面
18 リム部
20 リム通水路
20a 合流部
20b 中央後方領域
22 リム垂下壁部(内周壁)
24 リム通水路底面
26 スリット開口部
26a 上部
26b 下部
28 上流側リム導水路
28a 上流側リム導水路出口部
28b 上流側リム導水路入口部
29 壁面
30 下流側リム導水路
30a 下流側リム導水路入口部
30b 下流側リム導水路出口部
32 屈曲部
32a 屈曲部
34 リム通水路外側壁面
38 内壁面
38a 上流端部
38b 下流端部
40 上部内周壁
41 頂部
42 上方汚物受け面
44 凹部
101 水洗大便器
102 便器本体
103 抜き型
108 ボウル部
116 汚物受け面
118 リム
120 リム通水路
122 リム内周壁部
123 直線
126 スリット開口
140 上部内周壁
a1 位置
a2 位置
A1 中心線
C 中心線
C1 中心点
C2 中心部
D 傾斜領域
D1 下流側端部
D2 上流側端部
E 横断線
G 基準線
H1 左側方領域
H2 前方領域
H3 右側方領域
H4 後方領域
L1 水平面
L2 水平面
l1 距離
l2 距離
V 視線

Claims (4)

  1. 洗浄水によりボウル部を洗浄する水洗大便器において、
    便器本体の供給口へ洗浄水を供給する給水装置と、
    ボウル形状の汚物受け面と、上記汚物受け面の上側に設けられ且つ自身の内周側において所定の傾斜の内周壁を形成しているリム部と、上記リム部の全周に形成されて洗浄水を導くリム通水路と、上記リム部の全周に形成され且つ上記リム通水路から上記汚物受け面に洗浄水を供給する開口部と、を備えた上記ボウル部と、
    上記ボウル部の下方に接続され汚物を排出する排水路と、
    上記供給口と上記リム通水路との間に形成されたリム後方導水路と、を有し、
    上記汚物受け面の上部内周壁は、上記リム後方導水路の出口の上記ボウル部の内方側に設けられた傾斜領域における傾斜が、上記リム部の上記内周壁の傾斜よりも緩やかになるように形成され
    上記内周壁の傾斜よりも緩やかに形成された上記傾斜領域の上端は上記リム部の上記内周壁の下端よりも上記ボウル部の内方側に設けられることを特徴とする水洗大便器。
  2. 上記傾斜領域は、上記ボウル部の中心部を中心とした80度〜100度の範囲の領域である請求項1記載の水洗大便器。
  3. 上記汚物受け面は、その両側方領域が凸面により形成され、前方領域と後方領域が上記両側方領域より小さな曲率の凸面、又は凹面により形成された請求項1又は2に記載の水洗大便器。
  4. 上記ボウル部の上記開口部は、上記リム通水路の側方を開口する開口部として形成され、上記開口部の上部と下部との間の距離と、上記開口部から上記リム後方導水路の上記出口までの上記リム通水路の底面の距離と、の比率は、1:2〜1:3である請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
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