以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。本明細書では、複合機10が使用可能に設置された状態を基準として上下方向7が定義され、複合機10の開口13が設けられている側を手前側(前面)として前後方向8が定義され、複合機10を手前側(前面)から見て左右方向9が定義される。
[複合機10の全体構成]
複合機10は、図1に示されるように、概ね直方体に形成されている。複合機10は、インクジェット記録方式で用紙に画像を記録するプリント機能を有している。複合機10は、図1、図2、及び図7に示されるように、給送トレイ20と、排出トレイ21と、搬送部23と、記録部24と、インクタンク100(タンクの一例)とを備えている。また、複合機10は、ファクシミリ機能及びスキャナ機能等の各種の機能を有していてもよい。複合機10は、インクジェット記録装置の一例であり、コンピュータの一例でもある。
[給送トレイ20、排出トレイ21]
給送トレイ20は、図1に示されるように、複合機10の前面で且つ左右方向9の中央部に形成された開口13を通じて前後方向8にユーザによって複合機10に対して挿抜される。給送トレイ20は、積層された複数の用紙を支持可能である。排出トレイ21は、給送トレイ20の上方に配置されており、給送トレイ20と共に挿抜される。排出トレイ21は、搬送部23によって排出された用紙を支持する。
[搬送部23、記録部24]
搬送部23は、給送トレイ20に支持された用紙を、記録部24に対面する位置を経由して排出トレイ21まで搬送する。搬送部23は、例えば、用紙に当接して回転するローラによって構成される。記録部24は、インクタンク100に貯留されたインクを吐出することによって、搬送部23によって搬送された用紙に画像を記録する。記録部24は、例えば、用紙の搬送向きと交差する方向に移動するキャリッジと、当該キャリッジに搭載されてインクを吐出する記録ヘッドとで構成される。
記録部24には、図2に示されるように、インクチューブ32と、フレキシブルフラットケーブル33とが接続されている。インクチューブ32は、インクタンク100に貯留されたインクを記録部24に供給する。より詳細には、各色(ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー)のインクが流通する4本のインクチューブ32B、32M、32C、32Y(これらを総称して、「インクチューブ32」と表記することがある。)がインクタンク100から延出され、これらが束ねられた状態で記録部24に接続されている。フレキシブルフラットケーブル33は、制御部130(図7参照)から出力される制御信号を記録部24に伝達する。
[インクタンク100]
インクタンク100は、図1に示されるように、複合機10の内部に配置されている。インクタンク100は、複合機10から容易に取り外すことができないように、当該複合機10に固定されている。インクタンク100は、前壁101と、右壁102と、左壁103と、上壁104と、下壁105とを有する。一方、開放されたインクタンク100の後面は、フィルム106によって封止される。
前壁101は、前後方向8におけるインク室111の前端を構成する。前壁101は、下壁105から概ね上下方向7に延びる基壁101Aと、基壁101Aの上端から基壁101Aに対して後方に傾斜する傾斜壁101Bとで構成されている。前壁101は、インク室111内のインクが、ユーザによってインクタンク100の外部から視認可能な程度の透光性を有している。なお、前壁101のみが透光性を有することに限定されず、全ての壁101〜105が透光性を有していてもよい。
下壁105は、上下方向7におけるインク室111の下端を構成する。下壁105は、図5に示されるように、上段壁145と、下段壁146と、接続壁147とで構成される。上段壁145は、前壁101(より詳細には、基壁101A)の内面に接する。下段壁146は、フィルム106に接する。また、下段壁146は、上段壁145より下方で且つ上段壁145より後方に位置する。接続壁147は、上端が上段壁145の後端に接続され、下端が下段壁146の前端に接続されている。
[インク室111]
インクタンク100は、図4に示されるように、インクタンク100の内部空間を区画する複数の隔壁107、108、109を有している。隔壁107、108、109は、各々が上下方向7及び前後方向8に延設されており、前壁101、上壁104、下壁105、及びフィルム106に接する。また、隔壁107〜109は、各々が左右方向9に離間して配置されている。その結果、インクタンク100の内部空間は、インクを貯留するための4つのインク室111B、111M、111C、111Yに区画される。
インク室111B、111M、111C、111Yは、各々に異なるインク色のインクが貯留される。具体的には、インク室111Bにはブラックインクが貯留され、インク室111Cにはシアンインクが貯留され、インク室111Mにはマゼンタインクが貯留され、インク室111Yにはイエローインクが貯留される。なお、各インク室111に注入されるインクは、予め定められた量がインクボトルに充填されて提供される。
但し、インクタンク100の形態は前述の例に限定されない。例えば、複合機10は、各々が異なるインク色のインクを貯留するためのインク室を有する4つのインクタンクを備えていてもよい。また、インク室111の数及びインク色は前述の例に限定されない。以下、インク室111B、111M、111C、111Yを総称して、「インク室111」と表記することがある。また、各インク室111に対応して4つ設けられた構成要素(例えば、後述する注入口112B、112M、112C、112Yや、インク流路114B、114M、114C、114Y等) には、末尾のアルファベット(B、M、C、Y)のみが異なる参照番号を付し、これらを総称する場合に当該アルファベットを省略して表記する(例えば、後述する注入口112や、インク流路114等)ことがある。
ここで、インクボトルに充填されているインク量をVmaxとし、上段壁145より後方且つ下方において下段壁146及び接続壁147に囲まれた空間(以下、「予備貯留室」と表記する。)の体積をV0とする。この場合、残量閾値が(V0−α)で表され、第1排出閾値が[Vmax−(V0−α)]で表され、第2排出閾値が(Vmax−V0)で表される。αの具体的な値は特に限定されないが、例えば、以下のように決定されてもよい。
αは、例えば、上段壁145Bの上面と開口115の上端との間における予備貯留室の容積に対応する。より詳細には、αは、当該容積と同一、或いは当該容積より僅かに小さい値に設定されてもよい。これにより、後述する画像記録処理において、インク室111内のインクの液面が開口115の上端を下回って、インク流路114、インクチューブ32、及び記録部24の記録ヘッドに空気が混入することを抑制することができる。また、α>0、α<(Vmax−V0)、α<V0を満たす。
残量閾値は、後述する残量センサ125から出力される残量信号が変化するときのインク室111内のインク量に対応する値である。第1排出閾値は、空のインク室111にインクボトル一本分のインクが注入されてから、当該インク室111内のインク量が残量閾値となるまでに消費されるインク量に対応する。第2排出閾値は、空のインク室111にインクボトル一本分のインクが注入されてから、インク室111内の液面の高さと上段壁145の高さとが一致するまでに、消費されたインク量に対応する。第1排出閾値及び第2排出閾値(これらを総称して、「排出閾値」と表記することがある。)は、後述するカウント値と比較される値である。なお、残量閾値、第1排出閾値及び第2排出閾値は、インク室111毎に異なる値であってもよい。
[注入口112]
インクタンク100の傾斜壁101Bには、各インク室111にインクを注入するための注入口112B、112M、112C、112Yが形成されている。注入口112は、傾斜壁101Bを厚み方向に貫通して、対応するインク室111をインクタンク100の外部に連通させる。傾斜壁101Bは、その内面が各インク室111に面し、外面がインクタンク100の外部に面している。なお、注入口112は、傾斜壁101Bに代えて上壁104に形成されていてもよい。
インクタンク100は、各注入口112に対して着脱可能なキャップ113B、113M、113C、113Yを有する。図1(A)に示されるように、注入口112に取り付けられたキャップ113は、注入口112の周縁に密着して注入口112を閉塞させる。一方、図1(B)に示されるように、注入口112からキャップ113が取り外されると、注入口112が開放される。キャップ113は、後述するカバー70を露出位置に位置させた状態で、注入口112に対して着脱される。また、ユーザは、キャップ113を注入口112から取り外すことによって、インクボトル内のインクをインク室111に注入することができる。
[インク流路114]
インクタンク100には、図4〜図6に示されるように、インク流路114B、114M、114C、114Yが形成されている。インク流路114M、114C、114Yは、隔壁107、108、109の下端付近に形成された開口115M、115C、115Yを通じてインク室111M、111C、111Yに連通される。インク流路114Bは、右壁102及び下壁105の境界付近に形成された開口115Bを通じてインク室111Bに連通される。また、各開口115から延出された各インク流路114は、右壁102に形成された開口116B、116M、116C、116Yを通じて、インクタンク100の右側面に至る。
さらに、インク流路114は、開口116から右壁102の外面に沿って上方に延出されて、連結部118に接続されている。インクタンク100の上壁104に突出するように形成された各連結部118には、各色のインクに対応した4本のインクチューブ32B、32M、32C、32Y(図2参照)が連結される。すなわち、インク流路114は、対応するインク室111から流出されたインクを、対応する連結部118に連結されたインクチューブ32を通じて記録部24に導く流路である。
インクタンク100の右壁102には、図4に示されるように、複数の突壁121A〜121Iが形成されている。突壁121は、右壁102の外面(右側面)から右方に突出し、且つ右壁102の外面に沿って延設されている。また、突壁121A〜121Iの右側先端には、フィルム122が溶着されている。開口116及び連結部118の間におけるインク流路114は、隣接する突壁121A〜121Hとフィルム122とで区画される空間を指す。
[付加インク室123]
さらに、インクタンク100の右側面には、付加インク室123が形成されている。付加インク室123は、右壁102と、周方向に連続する突壁121H、121Iと、フィルム122とで画定される。付加インク室123は、右壁102を貫通する貫通孔123A、123Bによってインク室111Bに連通されている。また、付加インク室123には、付加インク室123の下端を画定する突壁121Iの一部が貫通孔123Aの前方、後方、及び下方を囲むことによって被検出部124が形成されている。
なお、本実施形態において、貫通孔123Aの下端(換言すれば、被検出部124の下端)の高さは、上段壁145Bの上面よりも下方に位置している。これにより、インク室111B内のインク量が残量閾値以上であることに応じて、貫通孔123Aを介して被検出部124にインクが進入する。一方、インク室111B内のインク量が残量閾値未満であることに応じて、被検出部124内のインクが貫通孔123Aを通じてインク室111Bに排出され、被検出部124内にインクが存在しなくなる。
[残量センサ125]
複合機10は、図3及び図4に示されるように、残量センサ125を備える。残量センサ125は、被検出部124を挟んで前後方向8に対面して配置される発光部125A及び受光部125Bを有する。発光部125Aは、突壁121Iを透過し且つブラックインクを透過しない光(例えば、可視光や赤外光)を、受光部125Bへ向けて出力する。受光部125Bは、発光部125Aから出力された光を受光したか否かに応じた残量信号を制御部130に出力する。換言すれば、残量センサ125は、インク室111Bに貯留されたインク量に応じた残量信号を制御部130に出力する。
本実施形態に係る残量センサ125は、被検出部124にインクが存在すること(換言すれば、インク室111B内のインク量が残量閾値以上であること)に対応する第1残量信号を出力する。一方で残量センサ125は、被検出部124にインクが存在しないこと(インク室111B内のインク量が残量閾値未満であること)に対応する第2残量信号を出力する。本実施形態において、第1残量信号の信号レベルは0Vであり、第2残量信号の信号レベルは3.3Vである。すなわち、「残量センサ125が残量信号を出力する」とは、信号レベルが0Vであることをも含む。但し、信号レベルの組み合わせは前述の例に限定されない。後述するカバーセンサ72の位置信号についても同様である。
すなわち、空のインク室111Bにインクボトル一本分のブラックインクが注入され、第2排出閾値に相当する量のインクが消費されると、当該インク室111Bに残留するインクの液面と上段壁145Bの上面と高さが概ね一致する。このとき、残量センサ125は、第1残量信号を出力している。さらに、インクの消費量が第1排出閾値に達すると、当該インク室111Bに残留するインクの液面は、上段壁145Bより下方に位置する。このとき、残量センサ125は、第2残量信号を出力している。
[大気連通路126]
インクタンク100には、図4に示されるように、大気連通路126B、126M、126C、126Yが形成されている。大気連通路126は、対応するインク室111を大気に連通させる。より詳細には、大気連通路126は、インク室111の上端に形成された切欠き127を通じて対応するインク室111に連通され、開口128を通じてインクタンク100の外部に連通されている。
[カバー70]
複合機10は、図1に示されるように、カバー70を有する。カバー70は、複合機10に回動可能に支持されている。カバー70は、図1(A)に示される被覆位置と、図1(B)に示される露出位置とに回動可能である。
被覆位置は、カバー70が全ての注入口112の一部を覆って、全てのインク室111へのインクの注入を規制する位置である。カバー70が被覆位置に位置すると、各注入口112の一部(換言すれば、各キャップ113の一部)が覆われる。すると、キャップ112を取り外そうとするユーザの操作は、各キャップ113の一部を覆うカバー70によって規制される。つまり、被覆位置に位置するカバー70によって、各キャップ113の取り外しが規制されるため、各注入口112の開放が規制される。これにより、被覆位置に位置するカバー70によって、全てのインク室111へのインクの注入が規制される。ただし、カバー70によって全ての注入口112全体が覆われるように構成してもよい。つまり、被覆位置に位置するカバー70によって、インク室111へのインクの注入を規制できるようにカバー70が構成されれば良い。露出位置は、カバー70によって全ての注入口112を複合機10の外部に露出させて、全てのインク室111へのインクの注入を許容する位置である。
すなわち、ユーザによる一連のインク注入操作は、例えば以下の通りである。まず、ユーザは、被覆位置のカバー70を露出位置に移動させ、注入しようとするインク色に対応する注入口112のキャップ113を取り外す。次に、ユーザは、インクボトルの先端を開放された注入口112に挿入し、当該インクボトル内の全てのインクをインク室111に注入する。次に、インクの注入を終えたユーザは、取り外していたキャップ113を対応する注入口112に取りつけ、カバー70を被覆位置に移動させる。
また、カバー70は、被覆位置においてインクタンク100の前壁101に対面する透過窓71を有している。これにより、ユーザは、カバー70が被覆位置であるか露出位置であるかに拘わらず、前壁101を通じてインク室111内のインクの残量を視認することができる。また、カバー70の透過窓71の下辺の高さ(上下方向7の位置)と、各上段壁145の高さとが同程度となるように、透過窓71が構成されている。このため、予備貯留室のみにインクが貯留されている場合、ユーザは、当該インクを視認することが難しくなるため、一見して各インク室111にインクが貯留されていないと感じることができる。
[カバーセンサ72]
さらに、複合機10は、カバーセンサ72(図7参照)を有する。カバーセンサ72は、例えば、カバー70が接離するスイッチ等の機械式センサであってもよいし、カバー70の位置によって光が遮断或いは透過される光学式センサであってもよい。カバーセンサ72は、カバー70の位置に応じた位置信号を制御部130に出力する。本実施形態に係るカバーセンサ72は、カバー70が被覆位置に位置することに対応する第1位置信号、或いはカバー70が露出位置に位置することに対応する第2位置信号を制御部130に出力する。本実施形態において、第1位置信号の信号レベルは0Vであり、第2位置信号の信号レベルは3.3Vである。
[表示部14]
複合機10は、図1に示されるように、表示部14を備える。表示部14は、ユーザに報知すべき情報をメッセージとして表示する。表示部14の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Displayの略)、有機ELディスプレイ(Organic Electro−Luminescence Displayの略)等を採用することができる。
本実施形態に係る表示部14は、縦8ドット×横80ドットの長方形である。すなわち、表示部14は、縦8ドット×横5ドット(縦約8mm×横約5mm程度)の文字を最大16個(スペースを含む)表示させることができる。また、16文字を超える文字列を表示部14に表示させようとする場合、当該文字列はスクロール表示される。さらに、複数行の文字列を表示部14に表示させようとする場合、各行の文字列が順番に表示される。
[操作部17]
複合機10は、図1に示されるように、操作部17を備える。操作部17は、複合機10に対する指示の入力をユーザから受け付ける入力インタフェースである。本実施形態に係る操作部17は、例えば、テンキー17A及び電源ボタン17B等の複数の押ボタンで構成されている。但し、操作部17の具体的な構成は押ボタンに限定されず、表示部14の表示画面に重畳されたタッチセンサであってもよい。
操作部17は、押下された押ボタンに対応する操作信号を制御部130に出力する。本実施形態に係る操作部17は、テンキー17Aに含まれる[1]ボタンが押下されたこと対応する第1操作信号、テンキー17Aに含まれる[2]ボタンが押下されたことに対応する第2操作信号、或いは電源ボタン17Bが押下されたことに対応する第3操作信号を制御部130に出力する。なお、第1操作信号、第2操作信号、及び第3操作信号に対応するボタンは、前述の例に限定されない。
[通信部25]
複合機10は、図7に示されるように、通信部25を備える。通信部25は、外部装置と通信を行うためのインタフェースである。すなわち、複合機10は、通信部25を通じて外部装置に各種データを出力し、通信部25を通じて外部装置から各種データを受信する。また、通信部25は、外部装置からFAXデータを受信するFAX受信部として機能してもよい。
[制御部130]
制御部130は、図7に示されるように、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、及びASIC135を備えており、これらは内部バス137によって接続されている。ROM132には、CPU131が各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
EEPROM134は、例えば、初期フラグを記憶する。初期フラグは、複合機10が初期処理を実行したか否かに対応する値である。具体的には、初期フラグは、初期処理が未だ実行されていないことに対応する第1値、或いは初期処理が既に実行されたことに対応する第2値を示す。初期処理は、インク室111から記録部24に至る流路(すなわち、インク流路114及びインクチューブ32)をインクで満たす処理である。
複合機10の出荷時において、インク室111から記録部24に至る流路は、インクで満たされていない。つまり、複合機10の出荷時において、初期フラグには第1値が設定されている。そして、制御部130が初期処理を実行することにより、インク流路114、インクチューブ32、及び記録部24の記録ヘッドがインクで満たされ、複合機10が用紙に画像を記録することが可能な状態となる。つまり、初期処理の実行後に初期フラグに第2値が設定される。なお、複合機10の出荷時においては、用紙の画像の記録には使われない出荷時専用の出荷液がインクの代わりに流路内に充填されていても良い。この場合、制御部130が初期処理を実行すると、流路内の出荷液が排出されて、流路内がインクで満たされることになる。
また、EEPROM134は、記録部24から排出されたインク量を示すカウント値をインク色毎に記憶する。EEPROM134に記憶されたカウント値は、後述するステップS26、S49において初期化(すなわち0が設定)され、後述するステップS69においてカウントアップされる。当該カウント値は、第1排出閾値及び第2排出閾値と比較される。なお、カウント値の更新方法は上記の例に限定されず、例えば、ステップS26、S49においてインクボトルに充填されているインク量Vmaxに対応する値が設定され、ステップS69においてカウントダウンされてもよい。なお、カウントダウンされるカウント値は、対応する残量閾値と比較される。
また、EEPROM134は、カウント値に加えて、第2カウント値をインク色毎に記憶する。第2カウント値は、カバーセンサ72によりカバー70が被覆位置に移動されたことに対応する第1位置信号が出力された後、カバーセンサ72によりカバー70が露出位置に移動されたことに対応する第2位置信号が出力されるまでの間に、記録部24から排出されたインク量を示す値である。第2カウント値は、後述するステップS14の実行後に初期化(すなわち0が設定)され、ステップS69においてカウントアップされる。なお、第2カウント値の更新方法は、カウント値と同様に、上記の例に限定されない。
ASIC135には、搬送部23、記録部24、表示部14、通信部25、操作部17、カバーセンサ72、及び残量センサ125が接続されている。制御部130は、搬送部23に用紙を搬送させ、記録部24にインクを吐出させ、表示部14に情報を表示させ、通信部25に外部装置と通信させる。また、制御部130は、操作部17から操作信号を取得し、カバーセンサ72から位置信号を取得し、残量センサ125から残量信号を取得する。制御部130は、例えば、カバーセンサ72から出力される位置信号、及び残量センサ125から出力される残量信号を、所定の時間間隔(例えば、50msec)毎に読み取る。
[複合機10の動作]
図8〜図12を参照して、本実施形態に係る複合機10の動作を説明する。図8〜図12に示される各処理は、制御部130のCPU131によって実行される。なお、以下の各処理は、ROM132に記憶されているプログラムをCPU131が読み出して実行してもよいし、制御部130に搭載されたハードウェア回路によって実現されてもよい。
[カバーOPEN時の処理]
まず、制御部130は、カバーセンサ72から第2位置信号が出力されていることに応じて、図8に示される処理を実行する。当該処理は、例えば、複合機10が待機状態(後述する画像記録処理が実行されていない状態)のときに、カバー70が被覆位置から露出位置に移動されたこと応じて実行される。当該処理は、インク室111へのインクの注入をユーザに促し、且つ各インク室111にインクを注入したか否かをユーザに確認する処理である。
まず、制御部130は、注入報知画面を表示部14に表示させる(S11)。制御部130は、この注入報知画面として、初期フラグに第1値が設定されている場合のステップS11において、「FILL ALL INK」の文字列、及び「THEN CLOSE INK COVER」の文字列を、交互に表示部14に表示させる。
一方、制御部130は、初期フラグに第2値が設定されている場合のステップS11において、EEPROM134に記憶されたカウント値に応じて、表示部14に表示させる文字列を変化させる。具体的には、制御部130は、全てのインク色のカウント値が第2排出閾値以上である場合、「REFILL M/C/Y/BK」の文字列、及び「THEN CLOSE INK COVER」の文字列を、交互に表示部14に表示させる。また、カウント値が第2排出閾値未満のインク色がある場合、上記の文字列から対応するインク色を表す文字(すなわち、“M”、“C”、“Y”、“BK”のいずれか)が省略される。さらに、制御部130は、全てのインク色のカウント値が第2排出閾値未満である場合、「CLOSE INK COVER」の文字列を表示部14に表示させる。
以下、カウント値が第2排出閾値以上のインク色を「ニアエンプティ色」と表記することがある。また、カウント値が第1排出閾値以上のインク色を「エンプティ色」と表記することがある。すなわち、初期フラグとして第2値が設定されている場合のステップS11は、ニアエンプティ色及びエンプティ色のインクを注入することを表示部14を通じて報知する処理である。
ステップS11の処理は、インク室111へインクを注入することを表示部14を通じて報知する報知処理の一例である。なお、報知処理は、後述するステップS13でカバーセンサ72から第1位置信号が出力されるまで、すなわち、カバー70が被覆位置に位置することが検出されるまで継続される。また、報知処理において、複合機10の状態に応じて異なる文字列が表示部14に表示されることは、許容される。後述するステップS24、S31、S33、S41、S45、S71、S73についても同様である。
また、制御部130は、記録部24によるインクの吐出を規制する(S12)。すなわち、制御部130は、ステップS12〜S19の間で後述する記録指示を取得したとしても、図11に示される画像記録処理を開始しない。ステップS12の処理は、規制処理の一例である。
注入報知画面を見たユーザは、注入口112からキャップ113を取り外して、インク室111にインクを注入することができる。そして、インクを注入したユーザは、注入口112をキャップ113で閉塞し、カバー70を被覆位置に移動させることができる。ここで、ユーザは、注入報知画面で報知されたインク色のインクのみを注入するかもしれない。または、ユーザは、全ての色のインクを注入するかもしれないし、いずれの色のインクも注入しないかもしれない。しかしながら、制御部130は、どのインク色のインクが注入されたかを検出することができない。
次に、制御部130は、カバーセンサ72から第1位置信号が出力されていることに応じて(S13:Yes)、推定処理を実行する(S14)。推定処理は、インク室111にインクが注入されたか否かを推定する処理である。
本実施形態において、制御部130は、第2カウント値が予め設定された閾値以下であるときに、インク室111にインクが注入されていないと推定する。当該閾値は、一本のインクボトルに充填されるインク量Vmaxに比べて極めて少量に設定される。例えば、当該閾値は、不図示のインク受け部へ向けて記録部24にインクを排出させる所謂フラッシング処理の1回の実行に必要な値程度に設定される。
一方、制御部130は、第2カウント値が上記閾値より大きいときに、インク室111にインクが注入されたと推定する。
つまり、カバー70が被覆位置に移動されてから露出位置に移動されるまでの間に消費されたインク量が少ないとき、制御部130は、インク室111にインクが注入されていないと推定する。一方、カバー70が被覆位置に移動されてから露出位置に移動されるまでの間に消費されたインク量が多いとき、制御部130は、インク室111にインクが注入されたと推定する。
なお、制御部130は、ステップS14の処理において推定処理を実行した後、次のステップを実行する前に、第2カウント値の初期化を実行する。
制御部130は、ステップS14の処理において、インク室111にインクが注入されたと推定されたことに応じて(S14:Yes)、ステップS15以降の処理を実行する。
制御部130は、初期フラグとして第1値が設定されていることに応じて(S15:第1値)、問合せ処理Aを実行する(S16)。すなわち、問合せ処理Aは、初期処理が実行されていない複合機10において、カバー70が露出位置から被覆位置に移動されたことに応じて実行される。図9を参照して、問合せ処理Aの詳細を説明する。
[初期処理前の問合せ処理]
まず、制御部130は、各インク色に対応する問合せフラグを“OFF”にする(S21)。問合せフラグは、例えば、問合せ処理Aが開始される際にRAM133に一時的に記憶されるものである。次に、制御部130は、残量センサ125から第1残量信号が出力されていることに応じて(S22:Yes)、4つのインク色それぞれに対して問合せ処理(S23〜S25、S29)を実行する。ステップS22で出力されている第1残量信号は、ブラックインクがインク室111Bに注入されたことに対応する。すなわち、問合せ処理Aでは、少なくともブラックインクの注入が確認されたことに応じて、各色に対応する問合せ処理が実行される。
ステップS13における第1位置信号は、インクの注入が終了したことを推定可能な終了信号の一例である。但し、終了信号の具体例はこれに限定されず、例えば、インクの注入が終了したことに対応するユーザ操作を受け付けた操作部17が出力する操作信号であってもよい。また、ステップS22の処理は、少なくともブラックインクが注入されたか否かを確認する事前確認処理の一例である。但し、ブラックインクが注入されたか否かを確認する方法は残量信号に限定されず、ブラックインクを注入したことに対応するユーザ操作を受け付けた操作部17が出力する操作信号であってもよい。
問合せ処理Aにおいて、順番に実行される複数の問合せ処理(S23〜S25、S29)のうち、先に実行される問合せ処理は第1問合せ処理の一例であり、後に実行される問合せ処理は第2問合せ処理の一例である。本実施形態では、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの順に問合せ処理が実行される例を説明するが、実行順序はこれに限定されない。後述する問合せ処理Bの問合せ処理(S45〜S48)についても同様である。
制御部130は、マゼンタに対応する問合せフラグに“OFF”が設定されていることに応じて(S23:Yes)、マゼンタに対する問合せ画面を表示部14に表示させる(S24)。問合せ画面は、対応するインク色のインクを注入したか否かを問い合わせる問合せ情報を含む。マゼンタに対応する問合せ情報は、例えば、「DID YOU FILL」の文字列と、「[M]? 1.YES 2.NO」の文字列とを含む。また、本実施形態に係る制御部130は、上記2つの文字列を、交互に表示部14に表示させる。
次に、制御部130は、操作部17からいずれかの操作信号が出力されるまで待機する(S25:No&S29:No)。ステップS25において、テンキー17Aに含まれる[1]ボタンを押下するユーザ操作は、インクを注入したことに対応する第1操作の一例である。また、ステップS29において、テンキー17Aに含まれる[2]ボタンを押下するユーザ操作は、インクを注入していないことに対応する第2操作の一例である。但し、第1操作及び第2操作は前述の例に限定されず、例えば、操作部17が[↑][↓]ボタンを有している場合に、[↑]ボタンの押下を第1操作とし、[↓]ボタンの押下を第2操作としてもよい。
さらに、電源ボタン17Bを押下するユーザ操作は、複合機10への電力の供給を停止させる停止処理の実行を指示する第3操作の一例である。但し、制御部130は、問合せ処理Aにおいて、操作部17から第3操作信号が出力されたとしても(S25:No&S29:No)、第3操作信号に対応する停止処理を実行することなく、問合せ処理を継続する。なお、第3操作の具体例はこれに限定されず、第1操作及び第2操作と異なる操作であればよい。第3操作の他の例としては、例えば、テンキー17Aに含まれる[4]〜[9]ボタンの押下、[コピー]ボタンの押下、或いは[スキャン]ボタンの押下等が挙げられる。制御部130は、問合せ処理Aにおいてこれらボタンが押下されても、押下されたボタンに対応する操作信号を無視して問合せ処理Aを継続する。
そして、制御部130は、操作部17から第1操作信号が出力されたことに応じて(S25:Yes)、マゼンタに対応するカウント値を初期化すると共に、マゼンタに対応する問合せフラグを“ON”にする(S26)。ステップS26でカウント値を初期化する処理は、初期化処理の一例である。
次に、制御部130は、全てのインク色に対する問合せ処理が実行されていないことに応じて(S27:No)、次のインク色に対する問合せ処理を実行する(S28→S23〜S25、S29)。そして、制御部130は、全てのインク色に対する問合せ処理が実行されたことに応じて(S27:Yes)、問合せ処理Aを終了する。
一方、制御部130は、ステップS22で残量センサ125から第2残量信号が出力されていることに応じて(S22:No)、図10に示される再注入報知処理を実行する(S30)。同様に、制御部130は、ステップS25において操作部17から第1操作信号が出力されず(S25:No)、ステップS29において第2操作信号が出力されたことに応じて(S29:Yes)、実行中の問合せ処理を中断して再注入報知処理を実行する(S30)。再注入報知処理は、カバー70を露出位置に移動させてインクを注入することを促す処理である。
制御部130は、図10に示される再注入報知処理において、再注入報知画面を表示部14に表示させる(S31)。再注入報知画面は、例えば、「FILL INK」の文字列と、「OPEN INK COVER」の文字列とを含む。また、本実施形態に係る制御部130は、上記2つの文字列を、交互に表示部14に表示させる。再注入報知画面を表示させる処理は、カバー70を露出位置に移動させて対応するインクを注入することを、表示部14を通じて報知する再報知処理の一例である。
次に、制御部130は、カバー70が露出位置に移動されるまで、換言すれば、カバーセンサ72から第2位置信号が出力されるまで待機する(S32:No)。また同時に、制御部130は、再注入報知画面の表示を継続する(S31)。なお、ステップS32で第2位置信号が出力された場合、図8に示される処理ではなく、ステップS33以降の処理が実行される。そして、制御部130は、カバーセンサ72から第2位置信号が出力されていることに応じて(S32:Yes)、ステップS11と同様に注入報知画面を表示部14に表示させる(S33)。次に、制御部130は、カバー70が被覆位置に移動されるまで、換言すれば、カバーセンサ72から第1位置信号が出力されるまで待機する(S34:No)。また同時に、制御部130は、注入報知画面の表示を継続する(S33)。そして、制御部130は、カバーセンサ72から第1位置信号が出力されていることに応じて(S34:Yes)、再注入報知処理を終了し、ステップS22以降の処理を再び実行する。
なお、他のインク色に対応する問合せ処理(S23〜S25、S29)も同様に実行される。例えば、他のインク色に対応する問合せ情報は、当該インク色に対応する文字(すなわち、“C”、“Y”、“BK”)が前述の[M]の位置に配置される。また、制御部130は、他のインク色に対応する問合せ処理で操作部17から第1操作信号が出力されたことに応じて(S25:Yes)、当該インク色に対応するカウント値を初期化すると共に、当該インク色に対応する問合せフラグを“ON”にする(S26)。
また、制御部130は、ステップS23で問合せフラグが“ON”であることに応じて(S23:No)、ステップS24〜S26、S29を実行することなく、ステップS27以降の処理を実行する。例えば、マゼンタに対する問合せ処理で[1]ボタンが押下され且つシアンに対する問合せ処理で[2]ボタンが押下された場合、制御部130は、再注入報知処理の実行後に、マゼンタに対する問合せ処理を実行することなく、シアンに対する問合せ処理を実行する。
さらに、図示は省略するが、制御部130は、問合せ処理の実行中(より詳細には、第1操作或いは第2操作の受け付け待機中)にカバーセンサ72から第2位置信号が出力されたことに応じて、当該問合せ処理を中断して注入報知画面を表示部14に再び表示させてもよい。そして、制御部130は、カバーセンサ72から第1位置信号が出力されたことに応じて、中断した問合せ処理を再開してもよい。
次に図8に戻って、制御部130は、初期処理を実行する(S17)。具体的には、制御部130は、インク室111から記録部24に至る流路内の空気及びインクを、不図示のポンプに吸引させる。また、制御部130は、初期フラグを第2値に設定する。そして、制御部130は、記録部24によるインク吐出の規制を解除する(S19)。すなわち、制御部130は、これ以降に記録指示を取得したことに応じて、図12に示される画像記録処理を実行することができる。ステップS19の処理は、問合せ処理(S16、S18)が終了したことに応じて実行される。ステップS19の処理は、規制処理による規制を解除する解除処理の一例である。
一方、制御部130は、カバーセンサ72から第1位置信号が出力され且つ初期フラグに第2値が設定されていることに応じて(S13:Yes&S15:第2値)、問合せ処理Bを実行する(S18)。すなわち、問合せ処理Bは、初期処理が既に実行された複合機10において、カバー70が露出位置から被覆位置に移動されたことに応じて実行される。図11を参照して、問合せ処理Bの詳細を説明する。なお、問合せ処理Aとの共通点の詳しい説明は省略し、相違点を中心に説明する。
[初期処理後の問合せ処理]
まず、制御部130は、事前問合せ画面を表示部14に表示させる(S41)。事前問合せ画面は、例えば、「DID YOU REFILL」の文字列と、「INK? 1.YES 2.NO」の文字列とを含む。また、本実施形態では、制御部130は、上記2つの文字列を、交互に表示部14に表示させる。さらに、制御部130は、ステップS41において、閾値時間を監視するタイマをスタートさせる。
次に、制御部130は、当該タイマがタイムアウトするまでの間(S42:No)、操作部17からいずれかの操作信号が出力されるまで待機する(S43:No&S44:No)。そして、制御部130は、タイムアウト、すなわち、タイマがスタートされてからの経過時間が閾値時間に達したことに応じて(S42:Yes)、またはタイマがタイムアウトする前に操作部17から第2操作信号が出力されたことに応じて(S43:Yes)、問合せ処理Bを終了する。
また、制御部130は、タイマがタイムアウトする前に(S42:No)、操作部17から第2操作信号が出力されず(S43:No)、第1操作信号が出力されたことに応じて(S44:Yes)、ステップS45以降の処理を行う。なお、制御部130は、操作部17から第1操作信号及び第2操作信号のいずれかが出力されたことに応じて(S43:Yes、S44:Yes)、ステップS41でスタートしたタイマを解除する。
次に、制御部130は、マゼンタに対する問合せ画面を表示部14に表示させる(S45)。ステップS45の処理は、ステップS24の処理とほぼ共通である。ステップS24との相違点は、ステップS45における問合せ画面に、「DID YOU FILL」の文字列に代えて、「DID YOU REFILL」の文字列が含まれることのみである。また、制御部130は、ステップS45において、閾値時間を監視するタイマをスタートさせる。そして、制御部130は、ステップS43〜S44と同様に、タイマがタイムアウトするまでの間(S46:No)、操作部17からいずれかの操作信号が出力されるまで待機する(S47:No&S48:No)。なお、ステップS42、S46でタイマ監視する閾値時間は、同一の時間でもよいし、異なる時間でもよい。
制御部130は、タイマがタイムアウトするまでの間に(S46:No)、操作部17から第2操作信号ではなく(S47:No)、第1操作信号が出力されたことに応じて(S48:Yes)、マゼンタに対応するカウント値を初期化する(S49)。ステップS49の処理は、初期化処理の一例である。一方、制御部130は、タイマがタイムアウト、すなわち、タイマがスタートされてからの経過時間が閾値時間に達したことに応じて(S46:Yes)、またはタイマがタイムアウトする前に操作部17から第2操作信号が出力されたことに応じて(S47:Yes)ステップS49の処理を実行することなく、ステップS50以降の処理を実行する。なお、制御部130は、操作部17から第1操作信号及び第2操作信号のいずれかが出力されたことに応じて(S47:Yes、S48:Yes)、ステップS46でスタートしたタイマを解除する。
そして、制御部130は、全てのインク色に対する問合せ処理が実行されていないことに応じて(S50:No)、次のインク色に対する問合せ処理を実行する(S51→S45〜S48)。一方、制御部130は、全てのインク色に対する問合せ処理が実行されたことに応じて(S50:Yes)、問合せ処理Bを終了する。さらに、制御部130は、記録部24によるインク吐出の規制を解除する(S19)。
一方、制御部130は、ステップS14の処理において、インク室111にインクが注入されていないと推定すると(S14:No)、ステップS15〜S18の処理を実行することなく、ステップS19の処理を実行する。
なお、問合せ処理Aとは異なり、問合せ処理Bにおいて電源ボタン17Bが押下された、つまり操作部17から第3操作信号が出力されたことに応じて、制御部130は、問合せ処理Bを終了し、上述した停止処理を実行する。一方で、問合せ処理Aと同様に、問合せ処理Bにおいてテンキー17Aに含まれる[4]〜[9]ボタン、[コピー]ボタン、或いは[スキャン]ボタンが押下されても、制御部130は、押下されたボタンに対応する操作信号を無視して問合せ処理Bを継続する。
[画像記録処理]
次に、制御部130は、複合機10に記録指示が入力されたことに応じて、図12に示される画像記録処理を実行する。但し、制御部130は、初期フラグに第1値が設定されている状態或いは問合せ処理Bの実行中に記録指示を取得したとしても、画像記録処理を実行しない。そして、当該記録指示に基づく画像記録処理は、初期フラグに第2値が設定されたこと、或いは問合せ処理Bが終了したことに応じて実行される。
記録指示は、画像データで示される画像を用紙に記録する画像記録処理を複合機10に実行させるための指示である。記録指示の取得先は特に限定されないが、例えば、操作部17を通じてユーザから取得してもよいし、通信部25を通じて外部装置から取得してもよい。また、記録指示は、FAXデータで示される画像を用紙に記録することを指示するものであってもよい。
まず、制御部130は、4つのインク色それぞれに対応するカウント値のうち、第1排出閾値以上のカウント値が存在することに応じて(S61:Yes)、エンプティ処理を実行する(S62)。エンプティ処理は、残量の少ない色のインクをユーザに補充させるための処理である。図13を参照して、エンプティ処理の詳細を説明する。
まず、制御部130は、エンプティ報知画面を表示部14に表示させる(S71)。ステップS71の処理は、エンプティ色のインクが少ないことを表示部14を通じて報知する処理の一例である。換言すると、ステップS51の処理は、EEPROM134のカウント値が予め設定された閾値(第1排出閾値)に到達したことに応じて、インク室111へのインクの注入が必要なことを表示部14を通じて報知する報知処理の一例である。エンプティ報知画面は、「CANNOT PRINT」の文字列と、「REFILL [BK] INK」の文字列、「REFILL [Y] INK」の文字列、「REFILL [C] INK」の文字列、及び「REFILL [M] INK」の文字列のうち、エンプティ色に対応する文字列とを含む。本実施形態において、制御部130は、エンプティ報知画面として、「CANNOT PRINT」の文字列と、「REFILL [BK] INK」の文字列、「REFILL [Y] INK」の文字列、「REFILL [C] INK」の文字列、及び「REFILL [M] INK」の文字列のうちのエンプティ色に対応する文字列と、を交互に表示部14に表示させる。
例えば、マゼンタ及びブラックに対応するカウント値が第1排出閾値以上であり、シアン及びイエローに対応するカウント値が第1排出閾値未満である場合、制御部130は、ステップS51において、「CANNOT PRINT」の文字列と、「REFILL [M] INK」の文字列と、「REFILL [BK] INK」の文字列とを順番に表示部14に表示させる。エンプティ報知画面を見たユーザは、インクタンク100にインクを注入するために、カバー70を露出位置に移動させることができる。
次に、制御部130は、カバー70が露出位置に移動されるまで、換言すれば、カバーセンサ72から第2位置信号が出力されるまで待機する(S72:No)。また同時に、制御部130は、エンプティ報知画面の表示を継続する(S71)。なお、ステップS72で第2位置信号が出力された場合、図8に示される処理ではなく、ステップS73以降の処理が実行される。そして、制御部130は、カバーセンサ72から第2位置信号が出力されていることに応じて(S72:Yes)、エンプティ色及びニアエンプティ色の注入報知画面を表示部14に表示させる(S73)。ステップS73の処理は、ステップS11の処理と共通する。ステップS73の処理は、ニアエンプティ色及びエンプティ色のインクを注入することを表示部14を通じて報知する処理の一例である。
前述の例において、イエローに対応するカウント値が第2排出閾値以上であり且つシアンに対応するカウント値が第2排出閾値未満である場合、制御部130は、「REFILL M/C/BK」の文字列、及び「THEN CLOSE INK COVER」の文字列を、交互に表示部14に表示させる。注入報知画面を見たユーザは、インク室111にインクを注入し、カバー70を被覆位置に移動させることができる。
次に、制御部130は、カバー70が被覆位置に移動されるまで、換言すれば、カバーセンサ72から第1位置信号が出力されるまで待機する(S74:No)。また同時に、制御部130は、注入報知画面の表示を継続する(S73)。そして、制御部130は、カバーセンサ72から第1位置信号が出力されていることに応じて(S74:Yes)、図11に示される問合せ処理B(S75)を実行して、エンプティ処理を終了する。すなわち、問合せ処理Bは、カバー70が露出位置から被覆位置に移動されたことに応じて実行される。問合せ処理Bによって、第1操作がなされたインク色に対応するカウント値が初期化される。なお、問合せ処理Bは、図11を用いて既に説明したので、再度の説明は省略する。
次に図12に戻って、制御部130は、エンプティ処理を実行しても第1排出閾値以上のカウント値が存在することに応じて(S61:Yes)、エンプティ処理を再び実行する(S62)。一方、制御部130は、全てのカウント値が第1排出閾値未満であることに応じて(S61:No)、頭出し処理を実行する(S63)。頭出し処理は、最初に画像が記録される領域が記録部24に対面する位置まで、用紙を搬送部23に搬送させる処理である。
次に、制御部130は、記録処理を実行する(S64)。記録処理は、記録部24に対面された用紙に向けて、記録部24にインクを吐出させる処理である。また、制御部130は、記録処理において記録部24から吐出されるインク量を、インク色毎にカウントして、対応するカウント値を一時的にRAM133に記憶させる(S65)。ステップS64、S65は並行して実行されてもよい。なお、RAM133に一時的に記憶されるカウント値及び第2カウント値は、EEPROM134に記憶されるカウント値と異なるものである。
次に、制御部130は、当該用紙に対する画像記録が未だ終了していないことに応じて(S66:No)、搬送処理を実行する(S67)。搬送処理は、予め定められた所定の改行幅だけ用紙を搬送部23に搬送させる処理である。そして、制御部130は、用紙に対する画像記録が終了するまで(S66:Yes)、ステップS64〜S67の処理を繰り返し実行する。
次に、制御部130は、用紙に対する画像記録が終了したことに応じて(S66:Yes)、排出処理を実行する(S68)。排出処理は、画像が記録された用紙を排出トレイ21に排出する処理である。その後制御部130は、RAM133に一時的に記憶していたカウント値を用いて、EEPROM134に記憶されたカウント値及び第2カウント値を更新する(S69)。ステップS69の処理は、カウント処理の一例である。なお、EEPROM134のカウント値及び第2カウント値の更新はステップS45のタイミングに限定されない。例えば、記録部24のメンテナンスのために、不図示のインク受け部へ向けて記録部24にインクを排出させる所謂フラッシング処理、或いは記録部24内のインクを不図示のポンプに吸引させる所謂パージ処理において、各処理で記録部24から排出されたインク量を、対応するEEPROM134に記憶されたカウント値及び第2カウント値に加算してもよい。
次に、制御部130は、記録指示で示される全ての画像を用紙に記録するまで(S70:No)、ステップS61〜S69の処理を繰り返し実行する。そして、制御部130は、記録指示で示される全ての画像を用紙に記録したことに応じて(S70:Yes)、画像記録処理を終了する。
[本実施形態の作用効果]
上記の実施形態によれば、推定処理においてインク室111にインクが注入されたと推定されると(S14:Yes)、カバー70が被覆位置にされたときに問合せ情報が表示される。そして、問合せ処理(S16、S18)が終了すると、解除処理によって規制処理(S12)による規制が解除される(S19)。他方、推定処理においてインク室にインクが注入されていないと推定されると(S14:No)、問合せ処理が行われることなく、解除処理によって規制処理(S12)による規制が解除される(S19)。
また、上記の実施形態によれば、カバー70が被覆位置に移動されてから露出位置に移動されるまでに記録部24がインクを吐出した量(EEPROM134に記憶された第2カウント値)に応じて、インクが注入されたか否かが推定される。
また、上記の実施形態によれば、制御部130が報知処理(S71、S73)を実行する。そのため、ユーザは、表示部14を視認することにより、インク室111のインク残量が少ないことを認識できる。
また、上記の実施形態によれば、制御部130が報知処理(S11)を実行する。そのため、カバー70が露出位置である間も、ユーザは、表示部14を視認することにより、インク室のインク残量が少ないことを認識できる。
[変形例1]
上記の実施形態において、制御部130は、EEPROM134に記憶された第2カウント値が閾値より大きいか否かによって、インク室111にインクが注入されているか否かを推定したが、推定の手段は第2カウント値の閾値に対する大小に限らない。
例えば、制御部130は、EEPROM134に記憶されたカウント値が初期値であるか否かによって、インク室111にインクが注入されているか否かを推定してもよい。この場合、図8〜図12で説明した複合機10の動作が、上記の実施形態とは若干異なる。以下、変形例1における複合機10の動作のうち、上記の実施形態と異なる動作が説明される。一方、上記の実施形態と同様の動作については、その説明が省略される。
制御部130は、カバーセンサ72から第2位置信号が出力されていることに応じて、注入報知画面を表示部14に表示させるとともに(S11)、第2位置信号の出力時点においてEEPROM13に記憶されているカウント値をRAM133に記憶する。
制御部130は、推定処理(S14)において、ステップS11の処理においてRAM133に記憶されたカウント値が初期値であるときに、インク室111にインクが注入されていないと推定する。初期値は、EEPROM134に記憶されたカウント値がステップS26、S49において初期化されたときの値である。変形例1において、初期値は、上記の実施形態と同様に0である。一方、制御部130は、ステップS11の処理においてRAM133に記憶されたカウント値が初期値でないときに、インク室111にインクが注入されたと推定する。
インクの注入は、ステップS11の処理とステップS13の処理の間において実行される。一方、EEPROM134に記憶されたカウント値の初期化は、ステップS14の処理の後に実行されるステップS26、S49の処理において実行される。
つまり、ステップS14の処理の実行時点でEEPROM134に記憶されたカウント値が初期値でない場合、ステップS11の処理とステップS13の処理の間においてインクが注入された可能性がある。よって、制御部130は、EEPROM134に記憶されたカウント値が初期値でないとき、インク室111にインクが注入されたと推定する。
一方、ステップS14の処理の実行時点でEEPROM134に記憶されたカウント値が初期値である場合、前回(今回のステップS11の処理の実行以前)のインクの注入以降にインクが消費されていない。よって、ステップS11の処理とステップS13の処理の間においてインクが注入された可能性はない。よって、制御部130は、EEPROM134に記憶されたカウント値が初期値であるとき、インク室111にインクが注入されていないと推定する。
以上より、制御部130は、推定処理(S14)において、カバーセンサ72によりカバー70が露出位置に移動されたことに対応する第2位置信号が出力されたときにEEPROM134に記憶されたカウント値が初期値であるときに、インク室111にインクが注入されていないと推定し、初期値でないときに、インク室111にインクが注入されたと推定する。
[変形例2]
上記の実施形態において、制御部130は、EEPROM134に記憶された第2カウント値が閾値より大きいか否かによって、インク室111にインクが注入されているか否かを推定したが、推定の手段は第2カウント値の閾値に対する大小に限らない。
例えば、制御部130は、カバー70が露出位置に移動されてから被覆位置に移動されるまでの時間に応じて、インク室111にインクが注入されているか否かを推定してもよい。この場合、図8〜図12で説明した複合機10の動作が、上記の実施形態とは若干異なる。以下、変形例2における複合機10の動作のうち、上記の実施形態と異なる動作が説明される。一方、上記の実施形態と同様の動作については、その説明が省略される。
変形例2において、制御部130は、時間のカウントを行うタイマを備えている。なお、タイマは、ROM132に記憶されているプログラムをCPU131が読み出して実行することで実現されてもよいし、制御部130に搭載されたハードウェア回路によって実現されてもよい。
制御部130は、カバーセンサ72から第2位置信号が出力されたこと(S11)をトリガとして、タイマによる時間のカウントをスタートさせる。また、制御部130は、カバーセンサ72から第1位置信号が出力されたこと(S13)をトリガとして、タイマによる時間のカウントをストップさせる。制御部130は、カウントのストップ時点での時間の値をRAM133に記憶する。制御部130が時間をカウントしてRAM133に記憶する一連の処理は、時間カウント処理の一例である。
制御部130は、推定処理(S14)において、RAM13に記憶された時間の値が予め設定された閾値以下であるときに、インク室111にインクが注入されていないと推定する。当該閾値は、カバー70を露出位置にしてからインク室111へのインクの注入が完了するまでに要する時間よりも短い時間の値に設定される。例えば、ユーザが、キャップ113を注入口112から取り外し、インクボトルに充填されるインクをインク室111に注入して、その後キャップ113を注入口112に取付ける一連の動作が例えば、10秒程度かかると仮定する。この場合閾値は、この10秒よりも短い時間(例えば、1〜5秒程度)の値に設定される。
一方、制御部130は、RAM13に記憶された時間の値が上記閾値より大きいときに、インク室111にインクが注入されたと推定する。
なお、制御部130は、上記の実施形態、変形例1、及び変形例2における動作を組み合わせて実行してもよい。例えば、制御部130は、推定処理(S14)において、第2カウント値が閾値以下であるか否かを判定するとともに、RAM13に記憶された時間の値が閾値以下であるか否かを判定してもよい。