JP6710823B2 - タンパク質固定化用担体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タンパク質固定化用担体及びその製造方法に関し、特にメソポーラスジルコニア粒子からなるタンパク質固定化用担体及びその製造方法に関する。
抗体と特異的に結合活性を示すタンパク質であるプロテインAや抗−抗体分子等を有機物質や無機物質に固定化した抗体分離精製用のカラムが検討されている。
カラムでは、目的抗体の結合リガンドとなるプロテインAや抗−抗体分子等のリガンドタンパク質を、カラムとなる担体上に効率的に固定化する必要がある。
これまでに抗体精製用のカラムの担体として、無機粒子では、主にシリカ多孔質粒子が利用されてきた。
例えば特許文献1のカラムでは、リガンドタンパク質をシリカ多孔質粒子に物理的に吸着されたものが開示されている。
しかしながら、このカラムでは、シリカ多孔質粒子に、リガンドタンパク質が必ずしも十分には固定化されていなかった。そのために、このカラムを用いても、抗体分子の分離・精製の効率が低い傾向にあった。
また、非特許文献1では、リガンドタンパク質であるプロテインAをシリカ粒子にスペーサーを介して結合したものが開示されている。
このものでは、スペーサーとプロテインAの結合には、アミド結合やエステル結合などの共有結合を必要としている。このような共有結合を用いると、プロテインAの高次構造が大きく変化を起こし、プロテインAと抗体分子との選択的な結合を低下させる傾向にあった。よって、非特許文献1の技術を用いても、抗体分子の分離・精製の効率が低い傾向にあった。
また、特許文献2では、有機高分子粒子を用いたカラムが開示されている。
このものでは、有機高分子粒子とプロテインAの結合には、エポキシカップリングなどの共有結合を利用している。このような共有結合を用いると、プロテインAの高次構造が大きく変化を起こし、プロテインAと抗体分子との選択的な結合を低下させる傾向にあった。よって、特許文献2の技術を用いても、抗体分子の分離・精製の効率が低い傾向にあった。
また、特許文献2の技術では、有機高分子を用いるために、機械的強度が比較的低く、溶媒安定性も比較的低く、更に、カラムの焼成による担体の再利用は困難であるなどの改善すべき課題があった。
そこで、発明者らは、上述の無機粒子および有機高分子粒子を用いた場合の課題を解決すべく、所定サイズのメソ孔を有するメソポーラスシリカ粒子(メソ孔2〜20nm)を合成し、リガンドタンパク質を物理吸着させて、詳細に検討した(非特許文献2、非特許文献3参照)。
その結果、3〜4nmのメソ孔を持つメソポーラスシリカ粒子(粒子径50〜1000nm、比表面積>1000m/g、メソ孔体積>1.0cm/g)は、リガンドタンパク質の物理吸着により、リガンドタンパク質をシリカメソ孔内に効率的に固定化可能であることを見出した。そして、固定化されたリガンドタンパク質は、IgG抗体に対して高い結合活性を示すことも確認した。
しかしながら、このメソポーラスシリカ粒子を用いたカラムは、いくつかの解決すべき課題があった。
例えば、リガンドに結合した母材(担体)を、分離回収するためには、酸性条件下で調製された溶出用溶液を用いるが、その後、カラムの再利用のためには、アルカリで洗浄する必要があった。メソポーラスシリカ粒子のシリカ骨格は、アルカリ溶液中で極めて溶解性が高いため、アルカリでの洗浄の際に、メソポーラスシリカ粒子が溶解するおそれがあった。
このように、従来の抗体分離精製用のカラムの担体用の粒子は、その特性が十分でないため、新規な担体用の粒子の開発が切望されていた。
なお、リガンドタンパク質の抗体への結合効率や分離効率を上昇させるために、別のアプローチも検討されている。
例えば、特許文献3では、リガンドタンパク質自身の構造の改変が行われている。この文献においては、プロテインAの持つ抗体酸解離特性を向上させるために、プロテインAのE.D,A,B,およびCドメインのうちで、A,B,およびCドメインのアミノ酸残基に対して、少なくとも1つのアミノ酸置換変異を導入した改変型プロテインAを作製して、抗体IgGとの結合強度を低下させている。すなわち、抗体酸解離特性を向上させたプロテインAの開発をしている。
しかしながら、リガンドタンパク質自身の遺伝子改変などは、多段階の工程を必要とする上にその作製は容易でない。
特開2012−12334号公報 特表2008−523140号公報 国際公開第2011/118699号
Yuichi Masuda, Shin-ichiKugimiya, Kazuki Murai, Akari Hayashi, Katsuya Kato, Enhancement of activityand stability of the formaldehyde dehydrogenase by immobilizing onto phenyl-functionalizedmesoporous silica, Lab Chip, 2006, 6, 1125-1139. Colloids and Surfaces B:Biointerfaces, (2013) 101 26-33. Kazuma Nakanishi, MasahiroTomita, Hitomi Nakamura and Katsuya Kato Specific binding of immunoglobulin Gto protein A-mesoporous silica composites for affinity column chromatography, J.Mater. Chem. B, (2013), 1, 6321-6328. ToruORITA, Katsuya KATO and Masahiro TOMITA, Immobilization of antibodies on mesoporous silica materials and their binding abilities to antigens,Journal of the Ceramic Society of Japan 119 [3] 238-245 2011.
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、種々の特性に優れ、抗体分離精製用のカラムの担体に好適に用いることができるタンパク質固定化用担体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、メソポーラス酸化物のうち、メソ孔を有するメソポーラスジルコニア粒子が、種々の特性に優れ、抗体分離精製用のカラムの担体に好適に用いることができるという知見を得た。
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]タンパク質を吸着固体可能なメソ孔を有するメソポーラスジルコニア粒子からなることを特徴とするタンパク質固定化用担体。
[2]前記メソポーラスジルコニア粒子の二次粒子径が、50nm〜5000nmの範囲にあることを特徴とする[1]に記載のタンパク質固定化用担体。
[3]前記タンパク質が、リガンドタンパク質であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のタンパク質固定化用担体。
[4]メソ孔にタンパク質が吸着固定されていることを特徴とするメソポーラスジルコニア粒子。
[5]前記タンパク質が、リガンドタンパク質であることを特徴とする[4]に記載のメソポーラスジルコニア粒子。
[6]抗体分離精製に用いることを特徴とする[4]又は[5]に記載のメソポーラスジルコニア粒子。
[7]水と有機化合物とを混合してミセルを形成し、ミセル含有液を調製する工程(1)と、
前記ミセル含有液にジルコニア前駆体を添加する工程(2)と、
前記ジルコニア前駆体が添加された前記ミセル含有液をゾルゲル反応させて中間体を形成する工程(3)と、
前記中間体を焼成し、メソポーラスジルコニア粒子を得る工程(4)と
を備えることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のタンパク質固定化用担体の製造方法。
[8]前記工程(1)において、前記ミセルを膨潤させる作用を有する疎水性溶剤を混合することを特徴とする[7]に記載のタンパク質固定化用担体の製造方法。
本発明のメソポーラスジルコニア粒子からなるタンパク質固定化用担体は、抗体分離精製に用いる場合に、ジルコニア結晶相が持つ、耐薬品性、高い構造強度、焼成による再生利用可能性など、従来技術にはない有利な効果を奏する。よって、抗体製品の製造プロセスの低コスト化に大きく貢献するものと期待される。抗体医薬を始めとする抗体の精製と分離に利用されるカラム製品としての応用としてのみならず、食品中アレルゲン等の特異的なタンパク質の除去への利用も考えられる。
メソポーラスジルコニア粒子上でのプロテインA固定化を示す模式図 メソポーラスジルコニア粒子上での抗−抗体固定化を示す模式図 メソポーラスジルコニア粒子の製造方法の好ましい一例を示す図 合成されたメソポーラスジルコニア粒子の電子顕微鏡(SEMおよびTEM)写真像 合成されたメソポーラスジルコニア粒子のX線回折パターン メソポーラスジルコニア粒子へのリガンドタンパク質の固定化と抗体結合方法を示す図 合成されたメソポーラスジルコニア粒子及びそのリガンドタンパク質固定化物の窒素脱着法によるメソ孔分布測定の結果を示す図 合成されたメソポーラスジルコニア粒子及びそのリガンドタンパク質固定化物の窒素脱着法によるメソ孔体積測定の結果を示す図 合成されたメソポーラスジルコニア粒子へのリガンド吸着と抗体結合効率(Binding efficiency)の測定結果を示す図 合成されたメソポーラスジルコニア粒子MPZ 4への抗−IgG抗体の吸着量と抗体結合効率(Binding efficiency)の測定結果を示す図 合成されたメソポーラスジルコニア粒子MPZ 7への抗−IgG抗体の吸着量と抗体結合効率(Binding efficiency)の測定結果を示す図 合成されたメソポーラスジルコニア粒子MPZ 4へのプロテインAの吸着量と抗体結合効率(Binding efficiency)の測定結果を示す図 合成されたメソポーラスジルコニア粒子MPZ 7へのプロテインAの吸着量と抗体結合効率(Binding efficiency)の測定結果を示す図 プロテインA固定化メソポーラスジルコニア粒子の抗体分離回収繰り返し利用の結果を示す、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動像 抗−抗体固定化メソポーラスジルコニア粒子の抗体分離回収繰り返し利用の結果を示す、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動像
図1及び図2は、本発明の1例を模式的に示す図であり、メソポーラスジルコニア粒子のメソ孔内にリガンドタンパク質(図1;プロテインA、図2;抗−抗体分子)を固定化し、さらにそのリガンド表面上に抗体分子が選択的に結合する様子を模式的に示すものである。
以下、本発明のタンパク質固定化担体及びその製造方法について詳しく説明する。
1.タンパク質固定化担体とそれに用いるメソポーラスジルコニア粒子
本発明のタンパク質固定化担体に用いるメソポーラスジルコニア粒子は、タンパク質、好適には、プロテインAや抗−抗体分子等のリガンドタンパク質を吸着させるためのメソ孔を有するメソポーラスジルコニア粒子である。
(1)リガンドタンパク質
本発明において、「リガンドタンパク質」としては、抗体と特異的に結合するタンパク質であれば特に限定されない。
リガンドタンパク質としては、例えば、プロテインA、プロテインG、抗−抗体(主にIgG分子)、遺伝子改変型プロテインAやG、Affibody等が挙げられる。
プロテインAおよびプロテインGとは、抗体分子であるIgGと特異的に結合をすることができるタンパク質分子であり、分離された微生物由来の違いにより、プロテインA(黄色ブドウ球菌:Staphylococcus aureus)あるいはプロテインG(レンサ球菌:Streptococcus属)と分類される。いずれも免疫グロブリンIgGの精製、固定化、検知を行う上でしばしば使用される。
なお、IgG(immunoglobulin G,イムノグロブリンG)とは、免疫グロブリンの中では最も量の多いものである。ヒトの血清の免疫グロブリンの大部分を占め、血液中に多量に存在する。体内に侵入した抗原と結合する抗体の最も代表的なタンパク質分子である。
(2)抗−抗体分子
本発明において、「抗−抗体分子」とは、抗体IgGを抗原として生産された抗体を意味する。つまり、抗体IgGに特異的に結合するリガンドタンパク質のことである。例えば、花粉タンパク質を抗原として生産された抗体を抗−花粉分子と呼び、ダニタンパク質を抗原として生産された抗体を抗−ダニ分子と呼ぶ。
(3)吸着
本発明において、「吸着」とは物理的吸着を意味する。つまりメソポーラスジルコニア粒子メソ孔内に毛細管現象によりプロテインAや抗−抗体分子等のタンパク質が挿入され、ジルコニア表面に共有結合などの化学結合を利用しないで、吸着をしている。
(4)メソポーラスジルコニア粒子
本発明において、「メソポーラスジルコニア粒子」とは、その基本骨格にジルコニア(酸化ジルコニウム)を有し、メソ領域(2〜50nm)にメソ孔を持つ粒子のことを意味する。
メソ孔は、上述のように、2〜50nmであり、好ましくは、2〜20nmであり、さらに好ましくは、5〜10nmである。
リガンドタンパク質であるプロテインAの分子サイズが、4nm程度であり、また、抗−抗体分子の分子サイズは、8nm程度である。つまり、メソ孔が5〜10nmであるメソポーラスジルコニア粒子は、そのメソ孔がリガンドタンパク質のサイズと同程度となり、タンパク質をメソ孔に効率的に吸着できるからである。
また、メソポーラスジルコニア粒子の粒子径は特に限定されないが、一次粒子は、通常10〜100nmであり、好ましくは、10〜50nmであり、さらに好ましくは10〜30nmである。一次粒子は、凝集体を形成することで、50〜1000nmのサイズの二次粒子を形成している。一次粒子径が、この範囲内であると、メソポーラスジルコニア粒子の比表面積が大幅に上昇するため、リガンドタンパク質の吸着量が増加し、かつ、抗体分子との結合活性も高くなる。
メソポーラスジルコニア粒子のBET法による比表面積は、特に限定されないが、通常15〜1000m/gであり、好ましくは、50〜1000m/gであり、さらに好ましくは、100〜1000m/gである。
この範囲内であると、単位重量当たりのメソポーラスジルコニア粒子へのリガンドタンパク質の吸着量が大きく上昇するためである。
2.タンパク質が吸着固定化されているメソポーラスジルコニア粒子
本発明のタンパク質が吸着固定されているメソポーラスジルコニア粒子は、メソ孔に、タンパク質、好適にはプロテインA及び/又は抗−抗体分子等のリガンドタンパク質が吸着固定化されていることを特徴とする。
「メソ孔」、「プロテインA」、「抗−抗体分子」については、上記1.の説明をそのまま適用できる。
3.タンパク質固体化用担体の製造方法
本発明のタンパク質固体化用担体の製造方法は、水と有機化合物とを混合して、ミセルを形成し、ミセル含有液を調製する、ミセル含有液調製工程(1)と、前記ミセル含有液にジルコニア前駆体を添加する、ジルコニア前駆体添加工程(2)と、前記ジルコニア前駆体が添加された前記ミセル含有液をゾルゲル反応させて中間体を形成する、中間体形成工程(3)と、前記中間体を焼成する、焼成工程(4)と、を備えることを特徴とする。以下、各工程について説明する。
(1)ミセル含有液調製工程
最初に、ミセル含有液調整工程として、メソ孔形成用有機化合物を水溶液中に溶解分散させ、均一なミセルを形成させる必要がある。
メソ孔形成用有機化合物としては、水溶液中でミセルを形成しうる有機化合物であれば特に限定されないが、ポリマーが好ましい。
メソ孔形成のための有機化合物としては、例えば、分子量6,000〜30,000を持つポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイド系のトリブロックコポリマー(P123、F108、F127など、アルドリッチ-シグマ社製)や、分子量1,000〜20,000を持つポリエチレングリコールモノセチルエーテル系の非イオン性界面活性剤(Brij30、Brij58など、アルドリッチ-シグマ社製)、塩化アルキルアンモニウムトリメチルや臭化アルキルアンモニウムトリメチル等のイオン性界面活性剤などが、利用可能である。有機化合物は、単独で、又は2種以上用いることができる。
これらの有機化合物の中でも、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイド系のトリブロックコポリマー(P123)が好ましい。トリブロックコポリマー(P123)は、分子量が6000程度であり、水溶液中で溶解性が高く、ミセルも形成されやすい。そのため、メソ孔が比較的均一サイズで得られることが多い。
この工程では、得られるメソポーラスジルコニア粒子のメソ孔径サイズを増大させるために、有機膨潤剤として疎水性溶剤を混合することができる。このような疎水性溶剤としては、ミセルを膨潤させる作用を有するものであれば特に限定されないが、例えば、1,2-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,4-ジメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,5-トリメチルベンゼン、1,3,4-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリイソプロピルベンゼン、1,3,5-トリプロピルベンゼンなどのアルキル置換ベンゼン系の芳香族化合物や、ヘキサン、オクタン、デカン、ヘキサデカン等のアルカン系化合物が挙げられる。疎水性溶剤は、単独で、又は2種以上用いることができる。
これらの疎水性溶剤の中でも、1,3,5-トリメチルベンゼンが好適である。1,3,5-トリメチルベンゼンは、疎水性が高く分子構造が均一であるため、上述のトリブロックコポリマー(P123)などと混合が容易であり、メソ孔径サイズの調整がしやすい。
メソ孔形成用有機化合物と疎水性溶剤との混合比率は特に限定されない。メソ孔形成用有機化合物を100重量部とした場合に、疎水性溶剤は、通常0〜500重量部であり、好ましくは、10〜100重量部であり、さらに好ましくは10〜50重量部である。混合比率をこの範囲とすると、リガンドタンパク質のサイズ(4〜10nm)と同程度のメソ孔(3〜15nm)を形成やすいからである。
(2)ジルコニア前駆体添加工程
この工程は、メソポーラスジルコニア粒子を製造するために、ミセル含有液中にジルコニア前駆体の添加を行うものである。
「ジルコニア前駆体」としては、メソポーラスジルコニア粒子の骨格原料であるジルコニウムアルコキシドを好適に用いることができる。
ジルコニウムアルコキシドとしては、特に限定されないが、ジルコニウム−エトキシド、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−iso−プロポキシド、ジルコニウム−n−ブトキシド、ジルコニウム−tert−ブトキシドなどが用いられ、好ましくは、ジルコニウム−n−プロポキシドであり、より望ましくは、ジルコニウム−iso−プロポキシドである。またジルコニウム系化合物であるオキシ塩化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウムなどが用いられ、望ましくは、オキシ塩化ジルコニウム等を挙げることができる。
ジルコニウムアルコキシドは、単独で、又は2種以上用いることができる。
ジルコニア前駆体をメソ孔形成用有機化合物に混合する直前に、ジルコニア前駆体の安定化と反応調節のために、ケトン類とアルコール類をジルコニア前駆体と混合することが好ましい。ケトン類は、特に限定されないが、例えば、ケトン類の場合は、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトンなどが用いられる。好ましくは、アセチルアセトンである。アセチルアセトンは、ジルコニア前駆体と強く結合し、前駆体の分解速度を大きく低下することができ、生成するメソポーラスジルコニア粒子の粒子サイズを調整することが可能となる。
またアルコール類としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノールなどが用いられる。好ましくは、エタノールである。エタノールは、ジルコニア前駆体を十分に溶解し、かつ、蒸留水への溶解性も高いために、ジルコニア前駆体のメソポーラスジルコニア粒子へのゾルゲル反応を均一に進行させ、高い収率で生成物を得ることができる。
メソ孔形成用有機化合物とジルコニア前駆体との混合比率は特に限定されない。メソ孔形成用有機化合物を100重量部とした場合に、ジルコニア前駆体は、通常100〜5000重量部であり、好ましくは、500〜2000重量部であり、さらに好ましくは500〜1000重量部である。混合比率をこの範囲とすると、均一なメソ孔を持つジルコニアを合成が可能となる。
ジルコニア前駆体とメソ孔形成用有機化合物と疎水性溶剤の混合順序は特に限定されない。
メソ孔形成用有機化合物と疎水性溶剤とを予め混合して、この混合溶液にジルコニア前駆体を更に混合してもよい。
ジルコニア前駆体とメソ孔形成用有機化合物と疎水性溶剤とを略同時に混合してもよい。
本製造方法では、メソ孔形成用有機化合物と疎水性溶剤とを予め混合して、この混合溶液にジルコニア前駆体を更に混合することが好ましい。
ジルコニア前駆体は、吸湿性および分解性も高い。そのため、最初にメソ孔形成用有機化合物と疎水性溶剤とを混合して十分に撹拌をした後、ジルコニア前駆体溶液をゆっくり滴下することが望ましい。
(3)中間体形成工程
この工程では、メソ孔形成用有機化合物とジルコニア前駆体を混合した後、ジルコニア粒子を製造するために、以下の操作を行う。
有機物−ジルコニア中間体を合成するために、以下の加熱処理を行う必要がある。まず、ジルコニウムアルコキシドなどのジルコニア前駆体を加水分解し、水酸化ジルコニアに変換する。そのためには、15〜70℃の温度条件下で、1〜48時間加熱する。好ましくは、60℃で24時間の反応条件である。この条件下で、ほぼ収率100%で、ジルコニウムアルコキシドを水酸化ジルコニウムに変換させることができる。
次に、水酸化ジルコニウムをジルコニアに変換する工程が必要である。そのためには、90〜180℃の温度条件下で、1〜48時間加熱する。好ましくは、100℃で24時間の反応条件である。この条件下で、溶液中の有機物との複合化が効率的に進行し、有機物−ジルコニア中間体が形成される。
(4)焼成工程
最後に有機物の除去とメソ孔の形成のために、焼成工程が必要である。そのためには、400〜900℃の温度条件下で、6〜12時間加熱する。好ましくは、500℃で6時間の反応条件である。この条件下で、複数の有機物を完全に分解除去し、かつ高結晶性のメソ孔を持つジルコニア粒子を製造することができる。
好ましいメソポーラスジルコニア粒子の製造方法を図3に示す。
抗体と特異的に結合するリガンドタンパク質としては、プロテインA、プロテインG、抗−抗体(主にIgG分子)等が対象となる。リン酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液、HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)、MOPS(2-Hydroxy-3-morpholino-1-propanesulfonic acid)緩衝液などの緩衝液中に溶解したリガンドタンパク質をメソポーラスジルコニア粒子と混合する。その後、4℃で一晩撹拌して、リガンドタンパク質をメソポーラスジルコニア粒子メソ孔内に物理吸着させる。リガンドタンパク室を溶解する緩衝液としては、中性付近のリン酸緩衝液やトリス緩衝液が望ましい。特にリン酸緩衝液が好適である。中性のリン酸緩衝液は、溶解させたリガンドタンパク質の活性安定性を最も長時間4℃〜室温下で維持できるからである。
その後、ブロッキング剤として、アルブミンタンパク質(シグマ−アルドリッチ社製)や界面活性剤H100,N101,N102(日油社製)、ECL Blocking Agent(GLサイエンス社製)、SuperBlockBlockingBuffer(SBBB)やProteinFreeBlockingBuffer(PFBB)(Pierce社)等を用いて、ジルコニア−リガンドタンパク質複合体と混合して、非特異的結合を低下させる。その後、分離精製の必要がある抗体溶液を混合して、リガンドタンパク質上に抗体を結合させる。この時に使用するブロッキング剤として、SBBBが好適である。SBBBをブロッキング剤として使用することで、抗体分子のメソポーラスジルコニア粒子表面への非特異的結合、つまり、リガンドタンパク質である抗−抗体分子以外の部分への抗体の結合を完全に防止することができる。
リガンドタンパク質−抗体結合の切断は以下の様に行う。
酸性条件下に調整したアルギニンやリジン、ヒスチジン等のアミノ酸を含む溶液中にジルコニア−リガンドタンパク質−抗体複合体を混合する。1〜24時間室温で撹拌することで、リガンドタンパク質−抗体結合を切断することが可能であり、切断後にジルコニア−リガンドタンパク質と分離し、目的抗体を得ることができる。使用するアミノ酸の種類は、アルギニンやリジン、ヒスチジンなどの塩基性アミノ酸が望ましい。その中では、アルギニンが好適である。アルギニンは、リガンドタンパク質−抗体複合体の切断後の抗体の回収率が最も高くなるからである。またアミノ酸溶液のpHは、通常、pH1〜5が望ましいが、pH4が好適である。それは、回収された抗体の活性度が最も高くなるからである。
回収したジルコニア−リガンドタンパク質は、上述に記載したおり、再度抗体の分離吸着剤として利用が可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1:メソポーラスジルコニア粒子の合成)
蒸留水(26 mL)中にポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイド系のトリブロックコポリマーP123(シグマ−アルドリッチ製)を1時間程度かけて十分に溶解させた。次に、アンモニア水溶液を0.75g添加することで、溶液内を塩基性として、室温で1時間撹拌した。その後、ジルコニウム−iso−プロポキシド(13.1g)、アセチルアセトン(1.702g)、エタノール(7.82g)の混合溶液を3分間程度かけて投入した。室温で3時間撹拌した後、60℃に反応液を移し、一晩撹拌して十分にゾルゲル反応を進行させた。さらに密封したテフロン(登録商標)ビーカーに反応液を移し、100℃で24時間水熱反応を行った。生成したジルコニア−ポリマー複合体は、蒸留水、エタノールおよびアセトンで洗浄し、乾燥させた。最後に複合体のポリマーを除去するために、500℃で6時間焼成して、メソポーラスジルコニア粒子を合成した。
得られた粒子の平均細孔径について、窒素吸着実験からBET法により算出したところ(後述の図7参照)、4nmであった。以下、実施例1で得られたメソポーラスジルコニア粒子を、「MPZ 4」とする。
(実施例2:メソポーラスジルコニア粒子の合成)
蒸留水(26 mL)中にポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイド系のトリブロックコポリマーP123(シグマ−アルドリッチ製)を1時間程度かけて十分に溶解させる。その後、メソ孔調整のために、有機膨潤剤として1,3,5-トリメチルベンゼン0.5gを加え、室温で一晩混合させた。その後、上述の実施例1と同様な処理を行い、メソポーラスジルコニア粒子を合成した。
同様に、得られた粒子の平均細孔径について算出したところ、7nmであった。以下、実施例2で得られたメソポーラスジルコニア粒子を、「MPZ 7」とする。
図4に、合成したメソポーラスジルコニア粒子(MPZ 4及びMPZ 7)の電子顕微鏡(SEM:日立S-3000およびTEM:JEOL,JEM 2010)写真像を示す。
SEM像より、50nm以下サイズを持つ粒子が一次粒子として存在し、それが凝集体を形成することで、500nm〜1000nmのサイズの二次粒子を形成していることが判明した。
また、TEM観察によりその詳細な像を解析したところ、両ジルコニア粒子ともに、10〜20nmのナノジルコニア一次粒子が、粒子間メソ孔を形成しながら凝集していることがわかる。その粒子間メソ孔のサイズは、有機膨潤剤を用いずに合成したメソポーラスジルコニア粒子MPZ4の場合は、2〜5nm程度であり、有機膨潤剤を用いて合成したメソポーラスジルコニア粒子MPZ7の場合では、5nm〜20nm程度であることがわかる。
図5に、合成した2種類のメソポーラスジルコニア粒子のX線回折を行った結果を示す。その結果、二種類ともに同程度の高い結晶性を持つ正方晶のジルコニア粒子であることが同定された。
(実施例3:メソポーラスジルコニア粒子へのリガンドタンパク質の固定化と抗体の結合)
図6に、メソポーラスジルコニア粒子メソ孔へのリガンドタンパク質(プロテインAあるいは抗−抗体)の固定化と、そのリガンドへの抗体結合方法を記載する。
メソポーラスジルコニア粒子あるいはコントロールとなるメソポーラスシリカ粒子(MCMおよびSBA)を3mgずつ400μLの10mMリン酸緩衝液pH7.0に十分に分散させる。その後、40μg/100μL同緩衝液に調整したリガンドタンパク質(プロテインAあるいは抗−抗体)を添加し、4℃で一晩撹拌して固定化させる。その後、12,000回転10分間遠心することで、メソポーラスジルコニア粒子又はメソポーラシリカ粒子を沈殿分離させ、上澄み溶液に残存する未吸着リガンドタンパク質の量を、紫外可視分光高度計(日本分光製,V-560)を用い測定した。沈殿したメソポーラスジルコニア粒子又はメソポーラスシリカ粒子は、抗体の非特異的吸着を低下させるため、ブロッキング溶液(PFBB;Pierce社製)を500μLを加え、4℃で一晩撹拌してブロッキングした。再度、12,000回転10分間遠心し、余剰なブロッキング剤を除去して、FITC-IgG(20μg/800μL)溶液を添加し、遮光下、室温で3時間撹拌した。その後、12,000回転10分間遠心しメソポーラスジルコニア粒子又はメソポーラスシリカ粒子を沈殿分離させ、上澄み溶液に残存する未結合なFITC-IgG量を蛍光分光高度計(RF-5300PC,島津製作所製)により定量した。
窒素吸着法により、合成したメソポーラスジルコニア粒子(MPZ4)及びそのリガンドタンパク質固定化物のメソ孔構造について検討した。
図7及び図8に、窒素吸着法によりメソ孔分布の測定及びメソ孔体積の測定を行った結果を示す。
MPZ4にリガンドタンパク質を固定化させる前のメソ孔体積は、0.277cm/gであったのに対して、抗−抗体およびプロテインA固定化後のMPZ4のメソ孔体積は、0.113cm/gおよび0.116cm/gとなり、約50%低下していることになる。この結果は、リガンドタンパク質であるプロテインAや抗−抗体タンパク質自体が、MPZ 4のメソ孔径内部に固定化させていることを意味する。つまり、空の抗内にリガンドタンパク質が効果的に埋め込まれていることが明らかである。
またMPZ 4の持つ平均メソ孔径は、約4nmと固定化前後で変化が見られず、タンパク質の固定化によりメソ孔構造の崩壊はないと考えられる。
合成したメソポーラスジルコニア粒子(MPZ4及びMPZ7)へのリガンド吸着と抗体結合効率(Binding efficiency)測定を行った。
まず、合成したメソポーラスジルコニア粒子(MPZ4及びMPZ7)及びコントロールとして用いたメソポーラスシリカ粒子(MCM及びSBA)のそれぞれ3mgに対するリガンドタンパク質の吸着量の測定を行った。この結果からは、シリカには投入量全量の40μg/3mgが吸着したが、MPZ4及びMPZ7の両ジルコニアには、それぞれ、20.7μg/3mg、24.6μg/3mgの吸着量であり、シリカと比較して若干低下することがわかった。これは、前項[0048]に示したように、シリカと比較してジルコニアの比表面積やメソ孔体積が低下していることから、吸着固定化されるリガンドタンパク質の量が低下していると考えられる。
次に、リガンドタンパク質への抗体結合効果(Binding efficiency)について検討した。その結果を図9に示す。Binding efficiencyは、次の計算式で算出している。
Binding efficiency=結合抗体分子数/リガンドタンパク質1分子
つまり、担体に吸着したリガンドタンパク質1分子に対して1分子の抗体が結合した場合には、Binding efficiency=1となる。
図9に示すとおり、メソポーラスジルコニア粒子(プロテインA;0.21〜0.25、抗−抗体;0.34〜0.37)は、メソポーラスシリカ粒子(プロテインA;0.06〜0.12、抗−抗体;0.16〜0.20)と比較して、高いBinding efficiencyを示すことが明らかとなった。
溶液状態およびメソポーラスジルコニア粒子(MPZ7)表面上に固定化されたリガンドタンパク質(プロテインA)の高次(二次)構造の変化を、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光製,JASCO MFT-2000 FT-IR spectrophotometer)を用いて検討した。
得られたFT-IR分析スペクトルのピーク分離を行い、構造変化について詳細に検討するために、タンパク質の二次構造であるαヘリックス、βシートおよびランダムコイルの含有割合をピーク分離法により算出した。結果を、表1に示す。
その結果、メソポーラスジルコニア粒子に固定化したプロテインA内は、溶液中と比較して大きく変化が見られなかった。また、図8に示したように、メソポーラスジルコニア粒子上に固定化されたプロテインAは、高い抗体結合活性を持つことから、ジルコニアへの吸着は、プロテインAの抗体結合活性に影響を及ぼすことはないと結論づけることができる。
図10及び図11に、MPZ4及びMPZ7に対する、抗−抗体の吸着量の測定結果を示す。また、抗−抗体吸着量anti-IgG(μg)/MPZ(3mg)における抗体結合効果(Binding efficiency)の値を、グラフ内の各吸着量に記載した括弧内に示す。さらに、以下の表2に、図10、11から算出した吸着様式を示す。
なお、表2において、「Langmuir」及び「Freundlich」は、それぞれ、メソポーラスジルコニア粒子表面へのリガンドタンパク質の吸着様式が、単層吸着タイプであるか、あるいは、それ以外の吸着タイプであるかを示しており、R値が、1.0000に近い値を示すほど、どちらかの吸着タイプに近いことが判断できる。
両MPZ4およびMPZ7ともに抗−抗体は、40(μg)/MPZ(3mg)程度吸着し、その際のBinding efficiencyは、0.40〜0.50程度であった。つまり、MPZに吸着した抗−抗体1分子に、約0.5分子の抗体IgGが結合することがわかった。またMPZへの抗−抗体の吸着様式は、単層吸着様式であるLangmuir型により適合することが明らかとなった。
同様に、図12及び図13に、MPZ4およびMPZ7に対する、プロテインAの吸着量の測定結果を示す。また、プロテインA吸着量(μg)/MPZ(3mg)における抗体結合活性(Binding efficiency)の値を、グラフ内の各吸着量に記載した括弧内に示す。さらに、以下の表3に、図12、13から算出した吸着様式を示す。
両MPZの場合ともに、40(μg)/MPZ(3mg)程度のプロテインA分子が吸着し、メソ孔のサイズには大きく影響されなかった。しかし、抗体結合活性(Binding efficiency)は、0.7〜0.8程度となり、前項[0056]と比較して大きく上昇した。これは、抗−抗体と比較して、プロテインAの分子サイズが小さいこと、かつ、プロテインA分子内に四カ所の抗体IgGとの結合部位を持つことに起因すると考えられる。
前述(表2)のとおり、抗−抗体は、MPZへ単層吸着様式であるLangmuirタイプ吸着であると判断できるが、プロテインAの場合は、表3に示したとおり、Langmuirタイプ吸着およびFreundlichタイプ吸着で算出したR2値がほぼ同等の値となっている。つまり、プロテインAは、MPZに対して、単層吸着のみではなく、多層吸着の部分もある複雑な吸着様式を示すことが分かった。
リガンドタンパク質(抗−抗体およびプロテインA)固定化MPZの抗体IgG吸着と回収の繰り返し利用について検討を加えた。
MPZ4あるいはMPZ7(18mg)にメソポーラスジルコニア粒子を2400μLの10mMリン酸緩衝液pH7.0に十分に分散させる。その後、240μg/600μL同緩衝液に調整したリガンドタンパク質(プロテインAあるいは抗−抗体)を添加し、4℃で一晩撹拌して固定化させる。その後、6,000回転20分間遠心することで、ジルコニアを沈殿分離させ、上澄み溶液を除去した。沈殿したジルコニアは、ブロッキング溶液(SBBB;Pierce社製)を3000μLを加え、4℃で一晩撹拌してブロッキングした。再度、6,000回転20分間遠心し、余剰なブロッキング剤を除去して、IgG(300μg/2500μL)溶液を添加し、遮光下、4℃で一晩撹拌した。その後、6,000回転20分間遠心しジルコニアを沈殿分離させ、上澄み溶液を除去した。
残存したIgG吸着−リガンドタンパク質−MPZに、IgG−リガンドタンパク質結合切断液として、500mMアルギニン液pH4.0(200μL)を添加して、3時間室温で撹拌した。再度、遠心分離を行い、上澄み液を回収した。次に担体の洗浄として、50mMTris-HCl緩衝液pH8.0(4000μL)を添加して手で分散し、次に、10mMリン酸緩衝液pH7.0(4000μL)を加え、pHをほぼ中性に戻した。その後、上述の通り、IgG(300μg/2500μL)溶液を加え、再度、リガンドタンパク質−MPZにIgGを吸着させた。その後、同様にIgGの回収操作を行った。以上の操作を5回繰り返した。
吸着・回収した抗体IgGの存在とその分子量について、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により確認した。10%泳動用ポリアクリルアミドプレキャストゲル(ATTO社)を利用した。ゲルローディングバッファーに回収したIgG液を混合し、100℃、3分間煮沸した。泳動ゲルにローディングさせ、0.5mMTris-HCl緩衝液pH6.8を泳動バッファーとして、10.5mA、70分泳動した。その後、OrioleTM Fluorescent Gel Stain(バイオラッド)でタンパク質を染色し泳動像を観察した。
吸着・回収したIgGのSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動像を図14及び図15に示す。図14が、プロテインAリガンド−MPZ7であり、図15が抗−抗体リガンド−MPZ7である。
図14のレーン1、2、3、4、5は、それぞれ分離・回収・再生の回数を示し、レーン6およびレーン7は、抗−抗体(IgG)およびプロテインA標準品(ProteinA)である。またそれぞれの図右横には、分子量マーカータンパク質(114.0 Kda,84.7 kDa,47.3 kDa,31.3 kDa,25.7 kDa,17.4 kDa)の6種類混合物を、上述[0061]と同条件で電気泳動を行った場合に検出されるバント位置(分子量サイズ)を示す。
図15のレーン1、2、3、4、5には、回収物である抗−抗体のバンドが強く表示されており、この結果は、プロテインAリガンド−MPZ7担体が、5回の繰り返し利用において、有効に抗体IgGの吸着と回収を行うことができたことを示している。
また、図15にあるように、抗−抗体リガンド−MPZ7でも上述と同様に、少なくとも5回の繰り返しカラム利用は可能であることが証明できた。

Claims (4)

  1. リガンドタンパク質を吸着固定可能なメソ孔を有するメソポーラスジルコニア粒子からなり、前記メソポーラスジルコニア粒子は、500nm〜1000nmのサイズの二次粒子であり、且つ前記メソ孔が2〜20nmの範囲にあることを特徴とするリガンドタンパク質固定化用担体。
  2. 500nm〜1000nmのサイズの二次粒子であり、且つ2〜20nmの範囲にあるメソ孔を有するメソポーラスジルコニア粒子であって、前記メソ孔にリガンドタンパク質が吸着固定されていることを特徴とする抗体分離精製用メソポーラスジルコニア粒子。
  3. 水と有機化合物とを混合してミセルを形成し、ミセル含有液を調製する工程(1)と、
    前記ミセル含有液に、ジルコニア前駆体、ケトン類及びアルコール類の混合溶液を添加する工程(2)と、
    前記ジルコニア前駆体が添加された前記ミセル含有液をゾルゲル反応させて中間体を形成する工程(3)と、
    前記中間体を焼成し、メソポーラスジルコニア粒子を得る工程(4)と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載のリガンドタンパク質固定化用担体の製造方法。
  4. 前記工程(1)において、前記ミセルを膨潤させる作用を有する疎水性溶剤を混合することを特徴とする請求項に記載のリガンドタンパク質固定化用担体の製造方法。
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