JP6702539B2 - きこえの診断装置、診断方法、及びプログラム - Google Patents

きこえの診断装置、診断方法、及びプログラム Download PDF

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Description

本発明は、きこえの診断装置、診断方法、及びプログラムに関する。
従来、個人の聴覚的な認知の診断には同定能力を測定するための課題が用いられてきた(例えば、非特許文献1参照)。その診断の際には、様々な刺激音が用いられている。刺激音を整理して網羅的に選定するための方法として、カテゴリーによる分類を行い、選定する方法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
関連する環境音の認知に関する技術が知られている(例えば、非特許文献3から7参照)。
N. P. Erber, et al., "Auditory Training," in hearing deafness, Holt, Rinehart and Winston, 1978. T. Finitzo-Hieber, et al, "sound effects recognition test for the pediatric audiological evaluation." Ear and hearing, Vol. 1, No. 5, pp. 271-276, 1980. Ballas, J. A, "Common factors in the identification of an assortment of brief everyday sounds," J. Exp. Psychol. Hum. Percepe. Perform, Vol. 19, No. 2, p. 250-267, 1993. Erber, N. P. et al., "Auditory training." In H. Davis et al, editors, Hearing and Deafness Fourth Edition, pp. 358-374. Holt Rinehart and Winston, 1978. Finitzo-Hieber, T. et al., "A sound effects recognition test for the pediatric audiological evaluation," Ear and hearing, Vol. 1, No. 5, pp. 271-276, 1980. Inverso, Y. et al."Cochlear implant-mediated perception of nonlinguistic sounds," Ear and hearing, Vol. 31, No. 4, pp. 505-514, 2010. Reed, C. M et al., "Reception of environmental sounds through cochlear implants," Ear and hearing, Vol. 26, No. 1, pp. 48-61, 2005. Shafiro, V. et al., "Perception of environmental sounds by experienced cochlear implant patients." Ear and hearing, Vol. 32, No. 4, p. 511, 2011.
しかしながら、非特許文献1に記載の技術では、検知、弁別、同定、理解という聴覚的な知覚水準を考えると、同定能力は弁別能力を基礎としていて、同定課題の正解・不正解の結果のみでは、同定能力を正確に測定できるものではない。例えば、一連の同定課題の中で複数の刺激音に対して同じ解答がみられ、そのうち1音が正解であった場合を考える。一つの刺激音だけに着目すれば同定できていたということになるが、複数の刺激音に着目した場合、真に同定できていたとは言い難い。
また、非特許文献2に記載の技術では、カテゴリーに分類された刺激音を網羅的に選定可能であるとしても、刺激音の音響特徴量を網羅的に選定できない。
また、非特許文献3から8に記載の技術のように、刺激音を網羅的に選定するためにカテゴリーによる分類を行い、分類に基づいて選定する方法が知られていても、音響特徴量を定量的・客観的に分類し、所望の音響特徴量を選択する方法は知られていない。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、個人の聴覚的な認知の診断をより的確に実施するきこえの診断装置、診断方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、周波数情報に関してはスペクトル重心、時間情報に関しては波形のエンベロープにおける尖度を用いて定量化された刺激音の音響特徴量と音響データとを関連付けられた複数の刺激音のうちから、少なくとも前記音響特徴量による分類分けを網羅するように所望の刺激音を選定し、前記選定した刺激音に基づいて、音に関する弁別課題と同定課題とを実施させる制御部と、前記弁別課題と同定課題の実施の結果から、前記弁別課題で正解しており、前記同定課題で正解していた場合に、前記刺激音を同定可能であると判定する判定処理部とを備える診断装置である。
また、本発明の一態様は、周波数情報に関してはスペクトル重心、時間情報に関しては波形のエンベロープにおける尖度を用いて定量化された刺激音の音響特徴量と音響データとを関連付けられた複数の刺激音のうちから、少なくとも前記音響特徴量による分類分けを網羅するように所望の刺激音を選定し、前記選定した刺激音に基づいて、音に関する弁別課題と同定課題とを実施させるステップと、コンピュータが、前記弁別課題と同定課題の実施の結果から、前記弁別課題で正解しており、前記同定課題で正解していた場合に、前記刺激音を同定可能であると判定するステップとを含む診断方法である。
また、本発明の一態様は、周波数情報に関してはスペクトル重心、時間情報に関しては波形のエンベロープにおける尖度を用いて定量化された刺激音の音響特徴量と音響データとを関連付けられた複数の刺激音のうちから、少なくとも前記音響特徴量による分類分けを網羅するように所望の刺激音を選定し、前記選定した刺激音に基づいて、音に関する弁別課題と同定課題とを実施させるステップと、前記弁別課題と同定課題の実施の結果から、前記弁別課題で正解しており、前記同定課題で正解していた場合に、前記刺激音を同定可能であると判定するステップとを診断装置のコンピュータに実行させるプログラムである。
本発明では、個人の聴覚的な認知の診断をより的確に実施することが可能になる。
本実施形態の診断装置を示す構成図である。 関連する技術の一覧を示す図である。 聴覚の認知について説明するための図である。 音の認知の結果の回答パタンを示す図である。 スペクトルと、その重心について示す図である。 音の波形のエンベロープを示す図である。 刺激音の特徴を示す図である。 刺激音とカテゴリーの一覧を示す図である。 実験の手順を示す図である。 弁別課題と同定課題のそれぞれについての正答率の関係を示す図である。 弁別課題の解答と同定課題の解答の関連性を示す図である。 全実験参加者の結果をまとめた結果を示す図である。 本実施形態の診断装置の応用例を示す図である。 本実施形態の診断装置の応用例を示す図である。 本実施形態の診断装置の応用例を示す図である。 本実施形態の診断装置の応用例を示す図である。
以下、本発明を適用した実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明の診断装置は、以下に述べるように、所望の刺激音を選定し、選定した刺激音に基づいて、音に関する弁別課題と同定課題とを被験者に実施させて、弁別課題と同定課題の実施の結果に基づいて、被験者の音に対する同定可能性を判定する。
診断装置は、例えば、刺激音として環境音を用いる。この場合、「犬」と言っても様々な音(環境音)が考えられる。診断装置は、音響特徴量の定量化手法を用いることで、任意の刺激音であっても音響特徴量をそろえることを可能にする。
例えば、診断装置は、周波数情報に関してはスペクトル重心、時間情報に関しては波形のエンベロープにおける尖度を用いて定量化された刺激音の音響特徴量とする。診断装置は、音響特徴量と音響データとを関連付けられた複数の刺激音のうちから、少なくとも音響特徴量による分類分けを網羅するように所望の刺激音を選定し、選定した刺激音に基づいて、音に関する弁別課題と同定課題とを実施させる。診断装置は、弁別課題と同定課題の実施の結果から、弁別課題で正解しており、同定課題で正解していた場合に、刺激音を同定可能であると判定する。
以下、診断装置の詳細な一例について説明する。
[A.診断装置の構成]
図1は、本実施形態の診断装置を示す構成図である。
診断装置1は、制御装置2とスピーカ3とを備える。制御装置2は、CPUと、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)の不揮発性の記憶装置と、RAM(Random Access Memory)レジスタ等の揮発性の記憶装置と、を含むコンピュータであり、実行するプログラムにより、被験者個人の聴覚的な認知についての診断処理を実行する。聴覚的な認知についての診断処理についての詳細は後述する。制御装置2は、入力部21、表示部22、アンプ部23と、記憶部24と、操作入力認識部25と、制御部26と、音響再生部27と、判定処理部28とを備える。記憶部24は、周波数情報に関してはスペクトル重心、時間情報に関しては波形のエンベロープにおける尖度を用いて定量化された刺激音の音響特徴量と音響データとを関連付けた複数の刺激音を格納する。操作入力認識部25は、入力部21が検出した操作を、操作入力として受け付ける。制御部26は、所定の課題に応じて音響再生部27を制御するとともに、上記の課題に応じた質問画面を表示部22に表示させる。例えば、制御部26は、スペクトル重心、時間情報に関しては波形のエンベロープにおける尖度を用いて定量化された刺激音の音響特徴量と音響データとを関連付けられた複数の刺激音のうちから、少なくとも音響特徴量による分類分けを網羅するように所望の刺激音を選定し、選定した刺激音に基づいて、音に関する弁別課題と同定課題とを実施させる。弁別課題とは、例えば、2種類の音を聞き、2つの音が同じものであるか否かを問うものである。同定課題とは、例えば、1種類の刺激音を聞き、刺激音の名称を問うものである。
音響再生部27は、制御部26の制御により、記憶部24に記憶されている音響データに基づいて音響信号を生成し、アンプ部23の出力端子に接続されているスピーカ3を鳴動させる。判定処理部28は、操作入力認識部25によって受け付けた操作入力に基づいて、課題に応じた所望の判定を実施する。例えば、判定処理部28は、弁別課題と同定課題の実施の結果から、弁別課題で正解しており、同定課題で正解していた場合に、刺激音を同定可能であると判定する。
上記の制御装置2は、例えば、パーソナルコンピュータ等の端末装置として構成されていてもよい。
[B.診断処理]
1 はじめに
普段、我々は日常生活の中で様々な音を用いながら生活している。知覚した音を用いることで、音声を介して会話をする、警告音を聞いて危険を察知するといったことが可能になる。聴覚障害者の中にも同様に音を活用して生活している者は多い。
音の活用という点においては音声言語に注目されがちだが、補聴器や人工内耳といった聴覚補償機器の性能の向上により、聴覚障害者が利用できる音の幅は広がっている。そのため、活用する音は、音声言語だけでなく環境音についても注目すべきである。
音を活用している聴覚障害者を対象に、環境音のきこえや認知方略を探るため、または環境音の聴取テストを作成するために、現在に至るまでいくつかの研究が行われてきた。それらを図2に示す。図2は、関連する技術の一覧を示す図である。
図2において、音の選定方法には犬の鳴き声などを動物(「種類」)、野菜を切る音などを家の中(「聴取場面」)といったように刺激音を分類して偏りのないように選定する方法や、刺激音の周波数帯域や時間変化の周期性をもとに定性的・主観的に分類して選定する方法がある。
また、図2から、課題形式では同定課題が中心であることがわかる。同定課題とは呈示された刺激音が何の音であるか、名称を答えるものである。
Erber らによれば、聴覚的な認知は図3のような4 つの段階に分けられる。図3は、聴覚の認知について説明するための図である。理解は、音の持つ意味を判断した結果得られるものであり、同定は、音の名称を判断した結果得られるものであり、弁別は、音の名称を判断した結果得られるものであり、検知は、音の有無(ON/OFF)を判断した結果得られるものである。
図3をもとに、同定の可能・困難に着目して検知、弁別と同定の関わりをモデルとしてまとめた表を図4に示す。図4は、音の認知の結果の回答パタンを示す図である。聴覚の認知について説明するための図である。図4を見ると、同定可能なもの、不可能なものについて、音が存在していることを知る検知と、ある音と他の音の異同を判断する弁別が可能かどうかによって、3 つの場合にそれぞれ分けることができる。
すなわち、従来の研究における同定課題の正解と不正解の中には、それぞれ3 つの場合が含まれていると推測される。その中で、検知に関しては把握は容易であるが、弁別の可能・困難についてもよって、同定課題の結果を解釈する際に、弁別の可能・困難についても検討すべきであると考えた。
以下、診断装置1により、聴覚障害者を対象として、弁別課題と同定課題の2 種類の課題を行い、それぞれの課題を実施した際の正答率の差と、弁別課題と同定課題の結果の関係性について説明する。
2 刺激音の選定及び呈示方法
2.1 音響的特徴量による分類
制御装置2における環境音の認知には、主に時間情報と周波数情報が手がかりとして用いる。例えば、制御装置2は、周波数領域の特徴を評価する値としてspectral centroid、時間領域の特徴を評価する値として波形のエンベロープについてのkurtosis を用いる。
spectral centroid は、スペクトルの重心であり、音色の明るさと相関のある数値である(参考:Schubert et al., Does timbral brightness scale with frequency and spectral centroid?, Acta acustica united with acustica, Vol. 92, No. 5, pp. 820-825, 2006.)。
図5は、スペクトルと、その重心について示す図である。図5に、車の走行音、救急車のサイレンのそれぞれの音の強度(パワー)をパワー(dB)で示し、それぞれのスペクトルの重心の位置をSC1とSC2で示す。
spectral centroid をfc、周波数fi のパワースペクトルをPiとすると、式(1)の関係がある。
Figure 0006702539
一方、波形のエンベロープのkurtosis(以下、kurtosisという。)は、音のテクスチャに関連する値である(参考:McDermott et al., Sound texture perception via statistics of the auditory periphery: evidence from sound synthesis, Neuron, Vol. 71, No. 5, pp. 926-940, 2011.)。
図6は、音の波形のエンベロープを示す図である。図6に、車のクラクションと車の走行音の波形のエンベロープを示す。同図に示されているように、比較的短時間で音のパワーが変化するクラクションと、変動はしているものの、その変動が平均値近傍に分布する走行音とは、互いに異なる特徴量を有することは明らかであるが、この特徴量を、式(2)によってkurtosisとして数値化する。
Figure 0006702539
上記の式(2)において、kがkurtosisの値、xバーがxiの平均値、xiがiにおける振幅、nがベクトルxの要素数、iがベクトルxの要素の識別子を示す。上記の式(2)から明らかなように、波形のエンベロープが鋭いほど値は大きくなり、鈍いほど値は小さくなる。
図7は、刺激音の特徴を示す図である。提案手法を元に、縦軸をspectral centroid、横軸をエンベロープにおけるkurtosis として、両対数軸に薄い灰色の点で散布図を作成した結果を図7に示す。対象とした刺激音は、 2.3 節で述べるデータベースに収録されていた音源のうち、566 音である。また、黒い丸と音の名称がプロットされている9 点は、実験で使用した「雷」、「風雨」、「野菜を切る音」、「タイピングの音」、「足音」、「救急車のサイレン」、「車の走行音」、「犬の鳴き声」、「小鳥のさえずり」の9 音である。
2.2 カテゴリーによる分類
実験に用いる音について、先行研究をもとに音の種類や聴取場面による分類を行い、識別困難な一部の音を除外する。例えば、中川らの知見(参考:中川., 聴覚障害学生の環境音認知, 横浜国立大学教育人間科学部紀要, Vol. I, No. 1, 1998.)を参考に分類を行った結果、566 音は、「自然の音」32 音、「家の中の音」266 音、「乗り物の音」172 音、「動物の音」73音、「町の中の音」23 音の5 つに分けられた。今回の実験では単独の環境音を対象としたため、この5 つのうち、複数の環境音が混じっている「町の中の音」は今回の実験では除外した。
2.3 刺激音の選定
刺激音には、「新効果音大全集」K30X5004〜6, 5009,「著作権フリーデジタル音素材集音・辞典」HR-AJ03,06, 08 の中のデータを用いた。日常生活で聴取する機会が多く、具体的な名称を答えやすいものであることと、spectral centroid、 エンベロープのkurtosis の値をある程度網羅し、カテゴリーについても網羅することを条件として2 秒〜30 秒の9 種類を選んだ。刺激音とカテゴリーの一覧を図8に示す。図8は、刺激音とカテゴリーの一覧を示す図である。診断装置1による聴取実験の弁別課題と同定課題では図8の9 種類の刺激音を共通で用いた。例えば、「自然の音」のカテゴリーには、刺激音としての「雷」、「風雨」が含まれる。「家の中の音」のカテゴリーには、刺激音としての「野菜を切る音」、「タイピングの音」、「足音」が含まれる。「乗り物の音」のカテゴリーには、刺激音としての「救急車のサイレン」、「車の走行音」が含まれる。「動物の音」のカテゴリーには、刺激音としての「犬の鳴き声」、「小鳥のさえずり」が含まれる。
診断装置1は、1 種類の音につき、特徴的であると考えられる2 秒間を切り取って刺激音とした。また,刺激音の音圧はITU 1770.1 のラウドネスの算出方法に従ってそろえた。
3 聴取実験
3.1 実験条件
実験参加者実験参加者は19 歳から27 歳の大学生・大学院生15 名(男性6 名、女性9 名、平均年齢22.2歳)である。全員が先天性の感音難聴者であり、補聴器を装用していた。なお、実験参加者の裸耳(補聴器を装用していない状態)における平均聴力レベルは88 dBHL〜109 dBHL であった。また、この実験は筑波大学図書館情報メディア系研究倫理審査委員会の承認を得ている。
実験環境実験は筑波大学春日キャンパスの簡易防音室で行われた。実験室の暗騒音は概ね35.3〜35.8dBSPL であった。
3.2 実験方法
図9を参照して、実験の手順について説明する。図9は、実験の手順を示す図である。
なお、下記する手順の他に、実験に先立ち、実験参加者に対し事前のアンケート(事前アンケート)と、実験終了後にインタビューを実施した。
(音量の調整)
診断装置1は、制御装置2に接続されたスピーカ3から、刺激音を被験者に呈示する。例えば、制御装置2は、Apple 社製,MacBook Proであり、スピーカ3は、GENELEC 社製,8020CPMである。スピーカ3は、中心が床から0.95 mの高さで、実験参加者の耳から約1.2m の位置になるよう設置した。刺激音の呈示音圧は、実験開始前に、実験参加者である被験者によって、被験者ごとに適した音量になるように自由に調節してもらった。
調節の結果、実験参加者の耳元での音圧レベルは実験参加者によって異なり、概ね52〜72 dBSPL(A 特性)であった。実験中は、音圧が大きすぎて不快であるといった場合を除き、変更をしないよう伝えた。実験中、音圧の調節を行った実験参加者はいなかった。
制御装置2により上記の音量の調整を終えた後、診断装置1は、弁別課題と同定課題とに基づいた診断処理をそれぞれ実施する。
(弁別課題)
診断装置1は、弁別課題の2 秒の刺激音を2 回再生する。弁別課題実験参加者は、2 秒の刺激音を2 回きいた後、両者が同じであるかどうかを制御装置2の入力部21であるキーボードを用いて回答した。制御装置2は、その回答の結果を受け付けて記憶する。
同じもの同士を含む2 種類の音の組み合わせは45通りであり、診断装置1は、1 つの組み合わせを3 回ずつ行った。そのため、2 種類の音をきいて回答することを1 試行とした時、診断装置1は、全体で135 試行実施した。また、45 試行おきに2 分程度の休憩をとった。なお、課題の開始前に、選定した刺激音とは別の環境音を用いて練習を8 試行実施した。
(同定課題)
診断装置1は、同定課題の2 秒の刺激音を1 回再生する。同定課題実験参加者は2 秒の刺激音を1 回だけきき、音の名称もしくは擬音語を自由記述により解答することとした。同定課題実験参加者は、刺激音が検知できなかった場合は、「聞こえない」と解答した。
3.3 実験結果と分析
診断装置1は、分析において、45 通りの刺激音の組み合わせを3回行った弁別課題に関しては、3 回中2 回以上誤ったものを誤答として扱った。また、診断装置1は、「聞こえない」と解答があったものについては、分析の対象から除外した。
診断装置1は、弁別課題と同定課題のそれぞれの結果の統計処理により、弁別課題と同定課題のそれぞれについての正答率を算出し、その結果を箱ひげ図として図10に示した。図10は、弁別課題と同定課題のそれぞれについての正答率の関係を示す図である。弁別課題の中央値は97.22%であり、同定課題の正答率は33.33%であった。2 種類の課題における正答率の有意差を統計的に検討するため、有意水準0.1%のwilcoxon の順位和検定を行った結果、有意差が認められた(p < 0:001)。
診断装置1は、弁別課題と同定課題の結果から、結果を(A)〜(G)までの7 通りに場合分けして集計し、割合を算出したものを図11に示した。図11は、弁別課題の解答と同定課題の解答の関連性を示す図である。弁別課題において互いに異なる2 つの刺激音を決定して、決定した刺激音の組をαとβとする。αとβの2 つの刺激音を同時に出力して、これらの刺激音を弁別できたもの、できなかったものについて、同定課題で2 つとも正解した場合は2 音正解、αもしくはβのみ正解した場合は1 音正解、2 つとも不正解だった場合は正解なしとした。また、診断装置1は、「聞こえない」と解答のあったものは、検知困難に分類した。なお、αとβの組み合わせは、刺激音の候補のうちから選択した任意の2 種類の刺激音の組み合わせである。
(音響特徴量と結果の関連性の評価(鮮明度の評価))
診断装置1は、前節で述べた音響特徴量をもとに刺激音をプロットし、弁別課題の正答率が低いものほど太い点線で結び、同定課題の正答率を灰色で表した円グラフで示し、その結果を図12に示す。
4 考察
4.1 各課題における正答率の比較
図10に示したように、弁別課題と同定課題の正答率の比較から、弁別課題の正答率が有意に高いと認められた。すなわち、聴覚障害者においては、弁別の能力と同定の能力には差があることが分かる。
4.2 弁別課題の解答と同定課題の解答の関連
図11に示したように、まず同定課題で正解なしであったが、弁別課題で正解していたものが43.11%を占めていた(E)。この場合は2 つの音の違いは理解できていると考えられるため、学習することで音と名称が一致すれば同定できるようになる可能性が高いと言えよう。同様に、同定課題で1 音正解し、弁別課題で正解していた場合(C)においても、音と名称を学習することで同定が可能になる可能性を有していることが分かる。
同定課題で正解なしの場合、弁別課題が不正解のものもみられた(F)が、(E)の場合よりも少なく、弁別ができなかったために同定ができなかったという場合はあまりみられなかった。
一方、図3の聴覚認知の段階に反して、弁別課題で不正解であるにも関わらず同定課題で1 音正解している結果も存在した(D)。その例として、弁別課題における呈示刺激をα、βとし、αが「車の走行音」、βが「風雨」であった場合、αを「道路の音」、βを「道路の上の車の音」と解答する例がみられた。
上記と類似した解答が他2 名にみられた。同定課題において1 音正解している場合には、複数の刺激音に対して同じ解答をしている。このことから、聴覚障害者は環境音を知覚する際、主要な音響特徴量を用いて同定をしているのではないかと推測される。そのため、主要な音響特徴量が類似している場合は、異なる名称の音であっても同じ名称の音であると同定する可能性がある。
その他の場合について、同定課題で2 音とも正解していた場合については、弁別課題も正解している(A)。一方、今回の実験では、同定課題で2 音とも正解していた場合は、弁別課題で不正解はみられなかった(B)。この結果は、図3からも明らかである。
以上のように、比較例として示す従来の研究では同定課題の結果を正解と不正解の2 つに分けて検討しているものが中心であったが、本実施形態の診断装置1は、弁別課題を同定課題と同時に行うことで、上記のように同定課題の結果をより詳細に検討することが可能になる。
4.3 音響特徴量と結果の関係
弁別課題において正答率の低かったものは「風雨-車の走行音」、「雷-車の走行音」の組み合わせであった。図12を見ると風雨と車の走行音はkurtosis の値が近く、時間変化の少ない音であるために誤り、車の走行音と雷の音はspectral centroid の値が近く、音色が似ていたために誤ったと推測される。
図12は全実験参加者の結果をまとめたものであるが、診断装置1が実験参加者毎に個別に同様な図を作成することによって個人のきこえを概観するための一助となることが期待される。
以上に説明したように、本実施形態の診断装置1は、聴覚障害者を被験者として環境音の聴取実験を行い、環境音の弁別と同定の正答率に差があることを明らかにした。また、診断装置1は、各課題の結果を図4に示すモデルに当てはめて場合分けすることによって、より詳細な聴取結果の診断を可能にする。
上記のとおり、診断装置1の結果により、同定課題の不正解が名称を答えらなかったのか、音の聴き分けができていなかったのかを判断することが可能になる。それにより、個人のきこえに沿った診断ができ、効果的な聴覚トレーニングによる教育を行うことができる。特に聴覚障害者の幼児・児童に対してきこえの詳細が早期発見できることにつながる。
診断装置1が呈示する刺激音には、環境音や楽器音などが考えられる。環境音や楽器音は重度の聴覚障害者にとって、音声よりも理解可能な場合が多く、音声を用いた検査では測れないレベルであっても、診断が可能になることが期待される。また、環境音や楽器音であれば複雑な言語能力を必要としないため、小児や失語症患者を対象にしたテストの作成も期待される。
(実施形態の変形例)
実施形態の変形例について説明する。上記の実施形態では、弁別課題の難易度は、各被験者に共通のものとして実施した。本変形例では、弁別課題の難易度を被験者毎に設定可能とする。例えば、聴覚障害者の障害の程度により聴力などに個人差がみられる。診断奏し1は、被験者の聴力などの個人差に応じた難易度の課題を設定する。例えば、上記のように異なる難易度の課題は、聴力などの個人差に応じて刺激音の組み合わせ(セット)を変える、あるいは試行回数を変えるなどの課題の設定と試験の実施条件とを調整して決定されるようにしてもよい。
上記のとおり、変形例の診断装置1は、実施形態の診断装置1と同様の効果を奏することに加えて、被験者の個人差に応じた弁別課題の難易度に基づいた試験を実施することができる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本発明が活かされる用途としては、下記の用途が挙げられる。
(1)聾学校や特別支援学級、教育現場における生徒のきこえの統一的な診断
例えば、診断装置1は、聾学校の教育指導現場の統一的な診断を支援する。図13と図14は、本実施形態の診断装置の応用例を示す図である。図13に示すように、診断装置1は、被験者である生徒S自らの操作に代えて教師T等の操作により、制御装置2内に予め用意された刺激音のセットを用いて、簡易的な診断を行ってもよい。図14に示すように、診断装置1は、制御装置2に代えて、スマートフォンなどの携帯型端末装置2Aを用いて構成してもよい。診断装置1は、被験者である生徒S自らの操作により、携帯型端末装置2A内に予め用意された刺激音のセットを用いて、簡易的な診断を行ってもよい。なお、教師T等は、必要に応じて携帯型端末装置2Aの操作や課題についての対応を指導してもよい。上記の診断の結果は、聴覚活用の指導等に利用されることにより、より的確な指導を実施することができる。
(2)耳鼻科や小児科におけるきこえの診断
例えば、診断装置1は、耳鼻科や小児科におけるきこえの診断で利用されてもよい。図15は、本実施形態の診断装置の応用例を示す図である。図15に示すように、医者Dは重度の聴覚障害者や小児等の患者Cに向けたきこえの診断に診断装置1を利用することにより、診断装置1は、その診断を支援することができる。診断装置1は、オージオグラムと合わせて用いられることでより詳細な診断の実施を支援することができる。
(3)個人利用向けの簡易聴覚診断装置としての利用
例えば、図16に示すように、診断装置1を、制御装置2に代えて、スマートフォンなどの携帯型端末装置2Aを用いて構成してもよい。図16は、本実施形態の診断装置の応用例を示す図である。携帯型端末装置2Aのアプリケーションプログラムの実行によって、本実施形態に示す処理を実施可能とすることにより、携帯型端末装置2Aの音声発生手段から発した音響のきこえ具合を、携帯型端末装置2Aの利用者自らが携帯型端末装置2Aに登録することが可能になる。このように診断装置1として携帯型端末装置2Aを用いることで、携帯型端末装置2Aの利用者自らが、自身のきこえ具合(聴覚の状態)を簡易的に、かつ客観的に判断することが可能にする。
なお、図14から図16に示す応用例では、スピーカ3に代えて、イヤホン(ヘッドホン)3Aを利用する構成を例示するが、これに制限されるものではなく、前述のしたようにスピーカ3を利用してもよく、携帯型端末装置2Aに内蔵されるスピーカ(不図示)を利用してもよい。
1…診断装置、2…制御装置、2A…携帯型端末装置、3…スピーカ、3A…イヤホン

Claims (4)

  1. 周波数情報に関してはスペクトル重心、時間情報に関しては波形のエンベロープにおける尖度を用いて定量化された刺激音の音響特徴量と音響データとを関連付けられた複数の刺激音のうちから、少なくとも前記音響特徴量による分類分けを網羅するように所望の刺激音を選定し、前記選定した刺激音に基づいて、音に関する弁別課題と同定課題とを実施させる制御部と、
    前記弁別課題と同定課題の実施の結果から、前記弁別課題で正解しており、前記同定課題で正解していた場合に、前記刺激音を同定可能であると判定する判定処理部と
    を備える診断装置。
  2. 前記制御部は、
    前記音響特徴量と前記刺激音のカテゴリとに基づいて、前記刺激音を分類分けして、前記分類分けを網羅するように所望の刺激音を選定する
    請求項1記載の診断装置。
  3. 周波数情報に関してはスペクトル重心、時間情報に関しては波形のエンベロープにおける尖度を用いて定量化された刺激音の音響特徴量と音響データとを関連付けられた複数の刺激音のうちから、少なくとも前記音響特徴量による分類分けを網羅するように所望の刺激音を選定し、前記選定した刺激音に基づいて、音に関する弁別課題と同定課題とを実施させるステップと、
    コンピュータが、前記弁別課題と同定課題の実施の結果から、前記弁別課題で正解しており、前記同定課題で正解していた場合に、前記刺激音を同定可能であると判定するステップと
    を含む診断方法。
  4. 周波数情報に関してはスペクトル重心、時間情報に関しては波形のエンベロープにおける尖度を用いて定量化された刺激音の音響特徴量と音響データとを関連付けられた複数の刺激音のうちから、少なくとも前記音響特徴量による分類分けを網羅するように所望の刺激音を選定し、前記選定した刺激音に基づいて、音に関する弁別課題と同定課題とを実施させるステップと、
    前記弁別課題と同定課題の実施の結果から、前記弁別課題で正解しており、前記同定課題で正解していた場合に、前記刺激音を同定可能であると判定するステップと
    を診断装置のコンピュータに実行させるプログラム。
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