JP6699225B2 - 光曝露量の評価方法、及び遮光性能の評価方法 - Google Patents

光曝露量の評価方法、及び遮光性能の評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、光変動物質を用いることによって、対象物の光曝露量、及び遮光容器の遮光性能を評価する方法に関する。
日光や蛍光灯等からの光は、食品・飲料類の品質を変化させて、本来の味や香りを損なわせてしまう原因の一つとされている。そのため、食品・飲料類を保存する際はできるだけ暗所に置くなどの対応が必要となるが、商品の輸送や陳列等、光に曝されることが避けられない場合もある。
従って、食品・飲料類が光にどの程度曝露されたのかを正確に把握することは、その品質を維持する上で重要な指標の一つとなる。光曝露量を評価する従来の方法としては、例えば、複数のパネラーによる官能評価や、商品の色調変化評価等が挙げられる。
また、食品・飲料類の光による品質低下を防止するために、食品・飲料類を遮光容器に入れて保存する場合がある。従ってそのような遮光容器においては、十分な遮光性能が確保されている必要がある。遮光性能を評価する従来の方法としては、例えば、分光光度計を用いて光線透過率を測定する方法が挙げられる。
尚、上述の様な従来の方法に関しては、当業者の間で広く知られているものであるため、先行技術文献を示さない。
(対象物の光曝露量の評価方法について)
パネラーによる官能評価では、品質変化の有無を確認することはできても、光の強さや曝露時間などの具体的な光曝露量を把握することは困難である。また色調変化評価では、光による褐変反応と退色反応とが同時に進行する結果、品質変化が起きているにも関わらず、色調にはほとんど変化が見られないことがある。そのため、商品の外観だけではその品質変化が光によるものか否かを特定することができず、またこの場合も具体的な光曝露量を把握することは困難であった。
(遮光容器の遮光性能の評価方法について)
分光光度計を用いる測定方法では、ある特定波長の光線透過率による評価を行うことはできても、遮光容器が実際に曝される自然光や人工光のもとでの遮光性能を評価することは困難であった。
本発明の目的は、対象物の具体的な光曝露量を容易に把握することのできる方法を提供することにある。また、本発明のさらなる別の目的は、遮光容器の実際の使用に即した遮光性能を把握することのできる方法を提供することにある。
本発明の光曝露量評価方法に係る特徴構成は、光照射前の対象物における光変動物質の含有量を測定する光照射前測定工程と、光照射後の前記対象物における前記光変動物質の含有量を測定する光照射後測定工程と、前記光照射前測定工程及び前記光照射後測定工程のそれぞれにおいて得られた測定値に基づいて前記光変動物質の変動度を算出する変動度算出工程と、前記変動度算出工程において得られた変動度と、予め作成された光曝露量と前記光変動物質の変動度との関係式から前記対象物の光曝露量を算出する光曝露量算出工程と、を包含し、前記光変動物質が、組成式C 14 20 の化学物質である点にある。
本構成によれば、光照射による光変動物質の変動度を算出することによって、対象物の具体的な光曝露量を容易に導き出すことができる。
本発明の遮光性能評価方法に係る特徴構成は、遮光容器内に所定量の光変動物質を収容する収容工程と、前記光変動物質を収容した遮光容器に光を照射する光照射工程と、前記光照射工程後の光変動物質の量を測定する測定工程と、を包含し、前記光変動物質が、組成式C 14 20 の化学物質である点にある。
本構成によれば、実際の使用に即した条件で遮光容器に光照射をして、遮光容器の遮光性能を評価することができる。
特徴構成は、前記化学物質が、LC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)の保持時間約5分に検出される物質であって、前記LC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)は、ODSカラムと、移動相としてI液の2%酢酸水溶液及びII液の0.5%酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1(v/v)を使用して、流速を0.4mL/minとして、測定開始時点における前記I液の比率が90%、前記II液の比率が10%であり、測定開始から8分後までに前記I液の比率が76%、前記II液の比率が24%となるようなグラジエント条件で測定される点にある。
特徴構成は、前記化学物質が、LC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)の保持時間約7分に検出される物質であって、前記LC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)は、ODSカラムと、移動相としてI液の2%酢酸水溶液及びII液の0.5%酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1(v/v)を使用して、流速を0.4mL/minとして、測定開始時点における前記I液の比率が90%、前記II液の比率が10%であり、測定開始から8分後までに前記I液の比率が76%、前記II液の比率が24%となるようなグラジエント条件で測定される点にある。
特徴構成は、前記化学物質が、フェルロイルプトレシン(Feruloylputrescine)である点にある。
オレンジ果汁飲料のLC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)を示す図である。 オレンジ果汁飲料に含まれる光変動物質(成分A及び成分B)の濃度と保存期間との関係を示すグラフである。 試料DのLC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)を示す図である。 フェルロイルプトレシン標準品のLC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)を示す図である。 試料Dとフェルロイルプトレシン標準品との混合物のLC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)を示す図である。 試料DのLC−MS/MSプロダクトイオンスキャンスペクトルを示す図である。 フェルロイルプトレシン標準品のLC−MS/MSプロダクトイオンスキャンスペクトルを示す図である。 光照射前のフェルロイルプトレシン溶液のLC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)を示す図である。 光照射1週間のフェルロイルプトレシン溶液のLC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)を示す図である。 光照射2週間のフェルロイルプトレシン溶液のLC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)を示す図である。 試料LW4における成分AのLC−MS/MSプロダクトイオンスキャンスペクトルを示す図である。 試料LW4における成分BのLC−MS/MSプロダクトイオンスキャンスペクトルを示す図である。 フェルロイルプトレシン標準品のLC−MS/MSプロダクトイオンスキャンスペクトルを示す図である。 フェルロイルプトレシン標準品(成分B)の13C−NMRスペクトルを示す図である。 単離した成分Aの13C−NMRスペクトルを示す図である。 フェルロイルプトレシンの炭素原子、酸素原子、水素原子のそれぞれに番号を付した図である。 成分A及び成分Bのそれぞれの13C−NMRスペクトルにおける化学シフトを示す図である。 フェルロイルプトレシン標準品(成分B)のH−NMRスペクトルを示す図である。 単離した成分AのH−NMRスペクトルを示す図である。 成分A及び成分BのそれぞれのH−NMRスペクトルにおける化学シフトを示す図である。 成分B(トランス体)が光によって成分A(シス体)に変換される様子を示す図である。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の光曝露量評価方法に関する実施の形態について説明する。
(光の種類)
本発明に適用可能な光としては、自然光及び人工光のいずれでも良く、特に限定されるものではない。自然光としては例えば、太陽光が挙げられる。また人工光としては、例えば、白熱灯、蛍光灯、LED等が挙げられる。
(対象物)
本発明に適用可能な対象物としては、光変動物質を含むものであれば特に限定されるものではないが、食品・飲料類を適用することが望ましい。そのような食品・飲料類としては、例えば、果実、果実の搾汁、果実飲料、野菜、野菜の搾汁、野菜飲料、果実・野菜混合飲料等が挙げられる。果実としては、例えば、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、パインアップル、クランベリー等を挙げることができるが、特にオレンジやグレープフルーツ等の柑橘類が好ましい。野菜としては、例えば、トマトが挙げられる。尚、対象物の包装形態としては、例えば、ボトル、カップ、パウチなどの形状で、材質はガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、紙、多層容器などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
(光変動物質)
本発明における光変動物質とは、光が照射されたことによって対象物中の含有量が変化する物質を意味する。従って、光変動物質としては、光照射によって含有量が増加する光増量物質、及び光照射によって含有量が減少する光減量物質が挙げられる。
光照射によって含有量が変化するメカニズムとしては、例えば光分解反応や光異性化反応等が挙げられる。光分解反応の場合、光照射前の対象物中に含まれる光変動物質が光減量物質であり、光変動物質の光分解物が光増量物質となる。また光異性化反応の場合、光照射前の対象物中に含まれる光変動物質が例えばトランス体であるとき、このトランス体が光減量物質であり、光を受けて異性化したシス体が光増量物質となる。
光異性化反応を起こす光変動物質としては、例えば、フェルロイルプトレシン(Feruloylputrescine)が挙げられる。フェルロイルプトレシンは光を受けると、以下の化学構造式1に示されるトランス体から、化学構造式2に示されるシス体に変換される。即ち、フェルロイルプトレシンのトランス体(化学構造式1)が光減量物質であり、フェルロイルプトレシンのシス体(化学構造式2)が光増量物質である。
[化学構造式1]
Figure 0006699225
[化学構造式2]
Figure 0006699225
光変動物質としては、光が照射されたことによって対象物中の含有量が変化する物質であれば特に限定されるものではないが、食品・飲料類、特に果実又は野菜に含まれる成分であることが望ましい。そのような果実又は野菜としては、例えば、果実、果実の搾汁、果実飲料、野菜、野菜の搾汁、野菜飲料、果実・野菜混合飲料等が挙げられる。果実としては、例えば、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、パインアップル、クランベリー等を挙げることができるが、特にオレンジやグレープフルーツ等の柑橘類が好ましい。野菜としては、例えば、トマトが挙げられる。
また、後述の光曝露量評価方法では、光増量物質又は光減量物質のいずれかを使用して評価しても良いし、あるいは光増量物質及び光減量物質の両方を使用して評価しても良い。
(光曝露量評価方法)
本発明の光曝露量評価方法は、以下の(1)光照射前測定工程、(2)光照射後測定工程、(3)変動度算出工程、(4)光曝露量算出工程を包含する。
(1)光照射前測定工程
この工程では、光照射前の対象物における光変動物質の含有量を測定する。例えば、対象物を果実飲料とした場合、光が照射される前の果実飲料中の光変動物質の濃度を測定する。測定方法としては、例えば、液体クロマトグラフ質量分析法等が挙げられる。
(2)光照射後測定工程
次いで、光照射後の対象物における光変動物質の含有量を測定する。例えば、対象物を果実飲料とした場合、光が照射された果実飲料中の光変動物質の濃度を測定する。測定方法としては、例えば、液体クロマトグラフ質量分析法等が挙げられる。
(3)変動度算出工程
次いで、前述の光照射前測定工程及び光照射後測定工程のそれぞれにおいて得られた測定値に基づいて光変動物質の変動度を算出する。例えば、光変動物質が光増量物質である場合は変動度として増加率(%)を算出し、光変動物質が光減量物質である場合は変動度として残存率(%)を算出する。
(4)光曝露量算出工程
次いで、前述の変動度算出工程において得られた変動度と、予め作成された光曝露量と光変動物質の変動度との関係式から対象物の光曝露量を算出する。
関係式としては、例えば、多点検量線を用いて良く、場合によっては一点検量線を用いても良い。
多点検量線は、例えば、所定の温度(例えば室温)、湿度、及び光条件(例えば、蛍光灯4000lx等)を設定し、その条件下で、対象物を所定期間(例えば、1週間毎4週間等)曝露させ、所定期間経過毎に対象物中の光変動物質の濃度を測定して変動度を算出し、各所定期間と変動度との関係をプロットすることによって作成する。
一点検量線は、例えば、所定の温度(例えば室温)、湿度、及び光条件(例えば、蛍光灯4000lx等)を設定し、その条件下で、対象物を所定期間(例えば、2週間)曝露させた後、対象物中の光変動物質の濃度を測定して変動度を算出することにより求める。
次いで、先の(3)変動度算出工程において得られた変動度と、作成した検量線に基づいて、光照射された対象物が、検量線を作成したときの所定の光条件下で、どのくらいの期間曝露されたものに相当するか、即ち対象物の光曝露量が導き出される。
〔第2実施形態〕
以下、本発明の遮光性能評価方法に関する実施の形態について説明する。尚、光の種類と光変動物質については、上述の第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
(遮光容器)
本発明に適用可能な遮光容器としては、食品・飲料類に限らず、試薬や医薬品等も収容可能な公知の遮光容器を使用することができ、特に限定されるものではない。
(遮光性能評価方法)
本発明の遮光性能評価方法は、以下の(1)収容工程、(2)光照射工程、(3)測定工程を包含する。
(1)収容工程
この工程では、遮光容器内に所定量の光変動物質を収容する。即ち、所定量の光変動物質を含む物品、又は所定量の光変動物質そのものを遮光容器に収容する。例えば、光変動物質の濃度が予め測定されている果実飲料等の所定量を遮光容器に封入する。
(2)光照射工程
次いで、光変動物質を収容した遮光容器に光を照射する。例えば、果実飲料を遮光容器に入れて保存する場合、果実飲料の保存条件に即した所定条件下で光を照射する。設定条件としては、温度、湿度、光の種類とその強さ、保存期間等が挙げられ、例えば、室温、蛍光灯4000Lux下で4週間などと設定する。
(3)測定工程
次いで、光照射工程後の光変動物質の量を測定する。例えば、先の(2)光照射工程において所定条件下で光照射した果実飲料入り遮光容器から、果実飲料の一部をサンプリングして光変動物質の濃度を測定する。そして、光を照射する前の果実飲料中の光変動物質の濃度と比較し、もし濃度に変化が無ければ、少なくとも先の所定条件下において、当該遮光容器は十分な遮光性能を有していることが確認される。
(光変動物質の確認試験)
光変動物質の確認試験を行うため、市販のオレンジ果汁100%入りペットボトル飲料を、以下の条件下で所定期間保存した。
Figure 0006699225
上記各試料について、LC−MS(液体クロマトグラフ質量分析計)を用いて、以下の条件に従って分析した。
LC装置として、1260Infinity Seriies(アジレントテクノロジー社製)を使用した。
LC条件は、カラムとしてSynergi Hydro−RP−100A(100mm×3mm、φ2.5μm、Phenomenex社製)を使用した。また移動相は、I液として2%酢酸水溶液、II液として0.5%酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1(v/v)を使用して、流速:0.4mL/minとして、以下の表2のグラジエント条件で流した。
Figure 0006699225
MS装置として、アジレントLCMS6430(アジレントテクノロジー社製)を使用した。
MS条件は、フラグメンター電圧を100V、乾燥窒素ガス(350℃)を毎分12L、ネブライザー圧を60psi(0.4138MPa)、キャピラリー電圧を3500Vとした。カラムオーブン温度は40℃とした。イオン化はESI法(Positiveモード)で検出した。
図1のLC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)に示すように、保持時間約5分に検出されたピーク(成分A)は、暗所保存ではほとんど検出されなかったのに対して(試料D参照)、光照射された場合はその期間が長くなるほどピーク面積が増加した(試料LW1、LW2、LW4参照)。
また、保持時間約7分に検出されたピーク(成分B)は、暗所保存では、1週間、2週間、4週間と経過しても、そのピーク面積がほとんど変化しなかったのに対して(試料D参照)、光照射された場合はその期間が長くなるほどピーク面積が減少した(試料LW1、LW2、LW4参照)。
以上より、成分A及び成分Bはいずれも光変動物質であり、特に成分Aは光照射によって含有量が増加する光増量物質であり、成分Bは光照射によって含有量が減少する光減量物質であることが確認された。また分析の結果、上記成分A及び成分Bのいずれについても[M+H]=265が検出された。
(光変動物質の組成式の推定)
上記成分A及び成分Bのそれぞれについて、以下の装置を用いて組成式の分析試験を行った。
LC装置:LC20A−DXR(島津製作所社製)
MS装置:micrOTOF Q II(Bruker社製)
解析ソフト:Data Analysis(Bruker社製)
測定の結果、成分A及び成分Bのそれぞれの組成式[M]はいずれも、C1420(分子量:264.15)と推定された。
(光変動物質の定量試験)
上記成分A及び成分Bのそれぞれについて、内部標準法による定量操作を行った。
定量操作は、成分A及び成分Bに保持時間が近く、質量も目的成分と同程度のカテキン(組成式:C1514)を内標準物質とする内標準分析法で定量した。標準原液として0.5%カテキンのエタノール溶液を調製し、それを超純水で50倍希釈し100ppmの標準溶液を調製した。100ppmカテキン標準溶液5mLと、上記表1の各試料(D、LW1、LW2、LW4)5mLとを混合し、超純水で50mL定容とした。これにより、LC/MS測定時のカテキン濃度を10ppm、各試料を10倍希釈とした。これをLC/MSで測定し、カテキンの[M+H]=291の測定結果から、各試料における成分A及び成分Bのそれぞれの濃度をカテキン濃度(ppm)として換算した。
図2に示されるように、成分A及び成分Bのいずれも、内部標準法による定量を行うことが可能であり、従って、これらのグラフを多点検量線として使用できることも明らかとなった。また、蛍光灯、約4000lxという光条件下において、成分Aは2週間で38%増加という変動度を示し、成分Bは4週間で52%減少という変動度を示すことが、図2から読み取れることから、これらの変動度を一点検量線として使用することも可能であると考えられた。
(官能評価)
合計18名(男性11名、女性7名)のパネラーが、上記試料D(4週間保存)及び試料LW4について、3点識別法により官能評価を行った。その結果、18名中11名が、試料Dと試料LW4との差異を識別することができ(5%有意)、品質変化が生じていることが確認された。
(他の果実・野菜における光変動物質の確認)
オレンジ以外のその他の果実、及び野菜について、光変動物質(成分A及び成分B)が含まれているかどうか確認した。果実として、グレープフルーツ、レモン、ミカン、ブルーベリー、ユズ、パインアップル、クランベリーを使用した。野菜として、トマトを使用した。これらの果実及び野菜のそれぞれの果汁について上述の光変動物質の確認試験と同様の試験を実施した。
その結果、グレープフルーツとトマトには、成分A及び成分Bの両方が含まれていることが確認された。ユズ、パインアップル、クランベリーには、成分Bのみが含まれていることが確認された。ミカン、レモン、ブルーベリーには成分A及び成分Bのいずれも含まれていないことが確認された。
(光変動物質の精密質量測定)
上記成分A及び成分Bのそれぞれについて、四重極−飛行時間型質量分析計(LC−qTOFMS)による精密質量測定を2回行った。
LC装置として、LC20A(島津製作所社製)を使用した。
LC条件は、カラムとしてSenergi Hydro−RP−100A(100mm×3mm、φ2.5μm、Phenomenex社製)を使用した。試料注入量を5μLとした。また移動相は、I液として2%酢酸水溶液、II液として0.5%酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1(v/v)を使用して、流速:0.4mL/minとして、以下の表3のグラジエント条件で流した。
Figure 0006699225
MS装置として、micrOTOF−QII(ブルカーダルトニクス社製)を使用した。
MS条件は、乾燥窒素ガス(200℃)を毎分8L、ネブライザー圧を1.6bar、キャピラリー電圧を−4500V、カラムオーブン温度を40℃とした。イオン化はESI法(Positiveモード)で検出した。自動MS/MS測定を行った。
上記四重極−飛行時間型質量分析計(LC−qTOFMS)によって得られた質量スペクトルについて、解析ソフト(Data Analysis(Bruker社製))を使用して解析した。成分A及び成分Bのそれぞれのプロトン付加分子質量[M+H](m/z)の精密質量測定結果を以下の表4に示す。
Figure 0006699225
以上より、成分A及び成分Bのそれぞれの組成式[M]はいずれも、C1420(分子量:264.15)であることが確認された。
(成分Bの同定)
上述の光変動物質の組成式の推定及び精密質量測定の結果から、成分Bの候補物質の一つとして、フェルロイルプトレシン(Feruloylputrescine)が挙げられた。そこで、三連四重極型液体クロマトグラフ質量分析計により、フェルロイルプトレシンと成分Bとの照合分析試験を行った。
LC/MS装置として、アジレントLCMS6430(アジレントテクノロジー社製)を使用した。
LC条件は、カラムとしてSenergi Hydro−RP−100A(100mm×3mm、φ2.5μm、Phenomenex社製)を使用した。試料注入量を5μLとした。また移動相は、I液として2%酢酸水溶液、II液として0.5%酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1(v/v)を使用して、流速:0.4mL/minとして、以下の表5のグラジエント条件で流した。
Figure 0006699225
MS条件は、乾燥窒素ガス(350℃)を毎分12L、ネブライザー圧を60psi、キャピラリー電圧を−3500V、フラグメンター電圧を100V、カラムオーブン温度を40℃とした。イオン化はESI法(Positiveモード)で検出した。
測定試料として、上記試料D(光条件:暗室)、市販のフェルロイルプトレシン標準品、及び試料Dとフェルロイルプトレシン標準品との混合物の3種類を用意し、それぞれの試料について液体クロマトグラフ質量分析を行った。結果を図3〜図5に示す。
図3〜図5に示されるように、成分Bの保持時間は、フェルロイルプトレシンの保持時間と略一致した。
また、上記三連四重極型液体クロマトグラフ質量分析計を用いて、試料D及びフェルロイルプトレシン標準品のそれぞれについてプロダクトイオンスキャン測定を行った。尚、LC条件及びMS条件は上記と同様であり、プロダクトイオンスキャン測定は、プリカーサーイオン:m/z265、コリジョンエネルギー:5eVとした。結果を図6及び図7に示す。
図6及び図7に示されるように、成分Bの質量スペクトルは、フェルロイルプトレシンの質量スペクトルと略一致した。
次いで、フェルロイルプトレシン標準品に光を照射して、成分Aが生成されるか否かを確認した。測定試料として、50mgのフェルロイルプトレシン標準品を30mLの70%エタノール溶液(v/v)に溶かして調製した。そのフェルロイルプトレシン溶液を室温25℃において蛍光灯6000lx下で1週間及び2週間保存した。
光照射前のフェルロイルプトレシン溶液、光照射1週間のフェルロイルプトレシン溶液、及び光照射2週間のフェルロイルプトレシン溶液のそれぞれについて、上記三連四重極型液体クロマトグラフ質量分析計を使用して同様の液体クロマトグラフ質量分析を行った。結果を図8〜図10に示す。
図8〜図10に示されるように、フェルロイルプトレシン標準品への光照射によって成分Aの生成が確認された。
以上より、液体クロマトグラフ質量分析における成分Bとフェルロイルプトレシンの保持時間が略一致し、さらに成分Bとフェルロイルプトレシンの質量スペクトルが略一致し、また、フェルロイルプトレシン標準品の光照射によって成分Aが生成されたことから、成分Bをフェルロイルプトレシンと同定した。
(成分Aの同定)
上記三連四重極型液体クロマトグラフ質量分析計を用いて、試料LW4及びフェルロイルプトレシン標準品のそれぞれについてプロダクトイオンスキャン測定を行った。尚、LC条件及びMS条件は上記と同様であり、プロダクトイオンスキャン測定は、プリカーサーイオン:m/z265、コリジョンエネルギー:5eV、10eV、15eV、20eVの4段階とした。結果を図11〜図13に示す。
図11〜図13に示されるように、成分Aと成分Bとは組成式が同じであり、且つその基本骨格も同じである可能性が高いと考えられた。
次に、成分Aの単離・精製作業を行った。50mgのフェルロイルプトレシン標準品を30mLの70%エタノール溶液に溶かし、そのフェルロイルプトレシン溶液を室温25℃において蛍光灯6000lx下で2週間保存した。そして、当該光照射したフェルロイルプトレシン溶液を分取精製クロマトグラフィーにかけて、成分Aを分取した。
次に、フェルロイルプトレシン標準品及び単離した成分Aについて、13C−NMR及びH−NMRを行った。13C−NMRの結果を図14〜図17に示し、H−NMRの結果を図18〜図20に示す。尚、図16における各番号は、図17及び図20における番号(No.)に対応する。
図14〜図17に示されるように、二重結合由来のC10及びC11のピークが移動していた。さらに、図18〜図20に示されるように、二重結合由来のプロトンであるH10及びH11のピークも大きく移動していた。また、フェルロイルプトレシン標準品におけるH10−H11のJ値は、15.9Hzであり、単離した成分AにおけるH10−H11のJ値は、12.4Hzであった。
上述の光変動物質の精密質量測定の結果から成分A及び成分Bのそれぞれの組成式[M]はいずれも、C1420(分子量:264.15)であることが確認されたこと、そして、上述のプロダクトイオンスキャン測定の結果から成分Aと成分Bとはその基本骨格が同じである可能性が高いこと、さらに上述の13C−NMR及びH−NMRの測定結果を踏まえると、成分A及び成分Bは、図21に示すように、二重結合のシス−トランス異性の関係にあると結論付けられた。
以上より、成分Bは、オレンジ果汁に元々含まれており、以下の化学構造式1に示されるフェルロイルプトレシン(CAS番号:501−13−3、分子式:C1420、化学名:N−(4−アミノブチル)−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロペンアミド、英語化学名:Feruloylputrescine)のトランス体であることが判明した。
[化学構造式1]
Figure 0006699225
そして、成分Aは、光照射によって生成される、以下の化学構造式2に示されるフェルロイルプトレシンのシス体であることが判明した。
[化学構造式2]
Figure 0006699225
本発明は、例えば食品・飲料類、試薬、医薬品等の光曝露量評価や、これらを収容するための遮光容器の遮光性能評価に適用することができる。

Claims (5)

  1. 光照射前の対象物における光変動物質の含有量を測定する光照射前測定工程と、
    光照射後の前記対象物における前記光変動物質の含有量を測定する光照射後測定工程と、
    前記光照射前測定工程及び前記光照射後測定工程のそれぞれにおいて得られた測定値に基づいて前記光変動物質の変動度を算出する変動度算出工程と、
    前記変動度算出工程において得られた変動度と、予め作成された光曝露量と前記光変動物質の変動度との関係式から前記対象物の光曝露量を算出する光曝露量算出工程と、を包含し、
    前記光変動物質が、組成式C 14 20 の化学物質である、光曝露量の評価方法。
  2. 遮光容器内に所定量の光変動物質を収容する収容工程と、
    前記光変動物質を収容した遮光容器に光を照射する光照射工程と、
    前記光照射工程後の光変動物質の量を測定する測定工程と、を包含し、
    前記光変動物質が、組成式C 14 20 の化学物質である、遮光性能の評価方法。
  3. 前記化学物質が、LC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)の保持時間約5分に検出される物質であって、
    前記LC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)は、ODSカラムと、移動相としてI液の2%酢酸水溶液及びII液の0.5%酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1(v/v)を使用して、流速を0.4mL/minとして、測定開始時点における前記I液の比率が90%、前記II液の比率が10%であり、測定開始から8分後までに前記I液の比率が76%、前記II液の比率が24%となるようなグラジエント条件で測定される請求項1又は2に記載の評価方法。
  4. 前記化学物質が、LC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)の保持時間約7分に検出される物質であって、
    前記LC−MS抽出イオンクロマトグラム(m/z265)は、ODSカラムと、移動相としてI液の2%酢酸水溶液及びII液の0.5%酢酸水溶液:アセトニトリル=1:1(v/v)を使用して、流速を0.4mL/minとして、測定開始時点における前記I液の比率が90%、前記II液の比率が10%であり、測定開始から8分後までに前記I液の比率が76%、前記II液の比率が24%となるようなグラジエント条件で測定される請求項1又は2に記載の評価方法。
  5. 前記化学物質が、フェルロイルプトレシン(Feruloylputrescine)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の評価方法。
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