JP6693674B2 - 水性インクの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水性インクの製造方法、及びその水性インクを用いるインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録媒体に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録媒体として普通紙が使用可能、被印字物に対して非接触、という数多くの利点があるため、一般消費者向けの民生用印刷に留まらず、近年は、商業印刷、産業印刷分野に応用され始めている。
例えば、特許文献1には、滲みが少なく高発色で、定着性、吐出安定性に優れる水性インクとして、着色剤をポリマーで包含して水に分散可能にした分散体を含み、該ポリマー中の芳香環の量が20〜70重量%である水性インクが開示されている。
特許文献2には、印字品質、定着性、吐出安定性に優れる水性インクとして、着色剤をポリマーで包含して水に分散可能にした分散体を含み、該ポリマー中の芳香環の量が20〜70重量%であり、さらに特定のエチレンオキシ変性シリコーンを消泡剤として含有する水性インクが開示されている。
また、特許文献3には、印刷時の光学密度が増大したインクジェット用水性インクとして、水性ビヒクル、顔料及び水溶性銀塩を含むカーボンブラック水性インクが開示されている。
一方、水性インクの記録媒体としては、特許文献1〜3のように普通紙が汎用されているが、オフセットコート紙のような低吸水性のコート紙、又はポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等の非吸水性樹脂のフィルムを用いた商業印刷が広がってきている。
さらに、商業印刷や産業印刷分野では、民生用印刷に比べ高い生産性が求められるため、例えば、印刷ロール紙を走査させる高速印刷が行われている。
特開2008−069355号公報 特開2005−097597号公報 特表2012−516912号公報
インクジェット記録用水性インクは、一般に高温で保存していると、インクの粘度が低下して、印刷時に画像濃度が低下したり、インクが不安定化して色間混色の原因となるという問題があった。また、インクジェット記録方式で、ロール紙を用いて高速印刷する場合、インクの乾燥速度がロール紙の搬送速度に追いつかず、インクが乾燥不足となり、インクの重ね打ちによる色間混色を生じることがあった。
前記特許文献1〜3の水性インクでは、上記の問題点が十分に解決されておらず、粘度安定性の改善や、特に低吸水性のコート紙や非吸水性樹脂のフィルムを用いた高速印刷における画像濃度の改善、色間混色の抑制が不十分であった。
本発明は、粘度安定性に優れ、普通紙を用いる通常印刷では勿論のこと、高速印刷や低吸水性記録媒体への印刷においても、画像濃度に優れ、色間混色のない記録物を得ることができる水性インクの製造方法、及びその水性インクを用いるインクジェット記録方法を提供することを課題とする。
なお、本明細書において、「低吸水性」とは、低吸水性、非吸水性を含む概念であり、記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量が0g/m以上10g/m以下であることを意味する。
また、「記録」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「記録物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。
本発明者らは、アセチレングリコール系界面活性剤と特定量の水溶性有機溶媒を含有する顔料水分散体を熱処理して、高沸点有機溶媒の含有量が少ない水性インクとすることにより、インク保存時の粘度安定性に優れ、高速印刷や低吸水性記録媒体への印刷においても、画像濃度に優れ、色間混色のない記録物が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]下記工程1及び2を有する水性インクの製造方法。
工程1:顔料(A)をポリマー分散剤(B)で水系媒体中に分散させた顔料水分散体Xに、アセチレングリコール系界面活性剤(C)、及び水溶性有機溶媒(D)を添加し、水溶性有機溶媒(D)の含有量が15質量%以上50質量%以下、沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が15質量%以下である顔料水分散体Yを得る工程
工程2:得られた顔料水分散体Yを60℃以上で1時間以上熱処理して、水性インクを得る工程
[2]前記[1]に記載の方法で得られた水性インクを2種以上含むインクセットをインクジェット記録装置に装着し、下記工程a及びbにより記録する、インクジェット記録方法。
工程a:前記[1]に記載の方法で得られた水性インクを、記録媒体上に吐出する工程
工程b:工程aで記録媒体上に吐出された水性インクの上に、前記[1]に記載の方法で得られた他の水性インクを重ねて吐出する工程
本発明によれば、粘度安定性に優れ、普通紙を用いる通常印刷では勿論のこと、高速印刷や低吸水性記録媒体への印刷においても、画像濃度に優れ、色間混色のない記録物を得ることができる水性インクの製造方法、及びその水性インクを用いるインクジェット記録方法を提供することができる。
[水性インクの製造方法]
本発明の水性インク(以下、単に「インク」ともいう)の製造方法は、下記工程1及び2を有する。
工程1:顔料(A)をポリマー分散剤(B)で水系媒体中に分散させた顔料水分散体Xに、アセチレングリコール系界面活性剤(C)、及び水溶性有機溶媒(D)を添加し、水溶性有機溶媒(D)の含有量が15質量%以上50質量%以下、沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が15質量%以下である顔料水分散体Yを得る工程
工程2:得られた顔料水分散体Yを60℃以上で1時間以上熱処理して、水性インクを得る工程
なお、本明細書において、「水性」とは、インクに含有される媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
本発明に係る水性インクは、粘度安定性に優れ、特にインクジェット記録用水性インクとしてロール紙使用による高速印刷を行う場合でも、画像濃度に優れ、色間混色のない記録物を得ることができるという格別の効果を奏する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
通常、水性インクにはポリマー分散剤を配合するが、高温で保存しているとポリマー分散剤が熱により運動して、水性インク中で不均一に分配されるため、インクの粘度が大きく低下し、その結果、画像濃度の低下や、インクの重ね打ちによる色間混色を生じ易くなるということが判明した。
本発明に係る水性インクは、特定量の水溶性有機溶媒(D)を含有し、高沸点有機溶媒の含有量が少ないため、適度な粘度と蒸気圧を有し、粘度安定性に優れていると考えられる。
また、本発明に係る水性インクは、アセチレングリコール系界面活性剤(C)を含有するが、アセチレングリコール系界面活性剤(C)は、インク粘度の上昇を抑制しつつインクの表面張力を低下させる結果、インク間での表面張力の差を小さくして、インク同士の混色を抑制することができると考えられる。
さらに、顔料水分散体を、アセチレングリコール系界面活性剤(C)と特定量の水溶性有機溶媒(D)の存在下で、特定条件で熱処理することにより、ポリマー分散剤及び顔料粒子が安定化すると同時に、記録媒体上で均一に配向、密着するようになるため、画像濃度が向上し、記録媒体上に着弾したインク液滴(ドット)が素早く濃縮固化するため、次に着弾したインク液滴との色間混色が抑制され、滲みが抑制されると考えられる。
本発明に係る熱処理により、特にカーボンブラック顔料粒子とポリマー分散剤との安定性が大きく向上する。
<水性インク>
本発明の製造方法で得られる水性インクは、顔料(A)、ポリマー分散剤(B)、アセチレングリコール系界面活性剤(C)、水溶性有機溶媒(D)及び水を含有する。
本発明の水性インクは、非吸水性記録媒体に印刷しても、画像濃度が高く、インクの重ね打ちによる色間混色のない良好な記録物を得ることができるため、フレキソ印刷用、グラビア印刷用、又はインクジェット印刷用の水性インクとして用いることができる。
本発明の水性インクは、高速印刷においても連続吐出性が優れることから、インクジェット印刷用の水性インクとして用いることが好ましい。
<顔料(A)>
顔料(A)は、染料に比べて記録物の耐水性、耐候性の点で有利であるため、本発明においては、顔料(A)を用いる。
顔料(A)は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンから選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
前記の顔料は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。本発明で用いる顔料としては、粘度安定性の向上効果を顕著に発現する点で、カーボンブラックが好ましい。
<ポリマー分散剤(B)>
ポリマー分散剤(B)で顔料(A)を水系媒体中に分散させ、顔料水分散体Xを得る。ポリマー分散剤(B)は、顔料分散作用を発現する顔料分散剤としての機能を有する。
ポリマー分散剤(B)は、水不溶性ポリマー(b)であることが好ましい。ここで、「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であることを意味し、その溶解量は好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。水不溶性ポリマー(b)がアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。水不溶性ポリマー(b)がカチオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのカチオン性基を塩酸で100%中和した時の溶解量である。
顔料(A)は、色間混色のない良好な記録物を得る観点から、水性インク中に、顔料を含有する水不溶性ポリマー(b)の粒子(以下、「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)として含有されることが好ましい。
水不溶性ポリマー(b)としては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられる。また、市販の水不溶性ポリマー粒子の分散液を用いることもできる。
市販の水不溶性ポリマー粒子の分散液としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂等からなる粒子の分散液が挙げられるが、上記の観点から、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂からなる粒子の分散液が好ましい。その具体例としては、「Neocryl A1127」(DSM NeoResins社製、アニオン性自己架橋水系アクリル樹脂)、「ジョンクリル390」(BASFジャパン株式会社製)等のアクリル樹脂、「WBR−2018」「WBR−2000U」(大成ファインケミカル株式会社製)等のウレタン樹脂、「SR−100」、「SR102」(以上、日本エイアンドエル株式会社製)等のスチレン−ブタジエン樹脂、「ジョンクリル7100」、「ジョンクリル734」、「ジョンクリル538」(以上、BASFジャパン株式会社製)等のスチレン−アクリル樹脂及び「ビニブラン701」(日信化学工業株式会社製)等の塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
水不溶性ポリマー(b)は、水性インクの保存安定性を向上させる観点から、ビニルモノマー(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
ビニル系ポリマーとしては、(b−1)イオン性モノマー(以下「(b−1)成分」ともいう)と、(b−2)疎水性モノマー(以下「(b−2)成分」ともいう)とを含むモノマー混合物(以下、単に「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなるビニル系ポリマーが好ましい。このビニル系ポリマーは、(b−1)成分由来の構成単位と(b−2)成分由来の構成単位を有する。中でも、更に(b−3)マクロモノマー(以下「(b−3)成分」ともいう)由来の構成単位を含有するものが好ましい。
(b−1)イオン性モノマーは、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマー(b)のモノマー成分として用いられることが好ましい。イオン性モノマーとしては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられ、アニオン性モノマーが好ましい。なお、イオン性モノマーには、酸やアミン等の中性ではイオンではないモノマーであっても、酸性やアルカリ性の条件でイオンとなるモノマーを含む。
アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
カチオン性モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド等が挙げられる。
〔(b−2)疎水性モノマー〕
(b−2)疎水性モノマーは、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマー(b)のモノマー成分として用いられることが好ましい。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリル酸エステル、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上を意味し、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる1種以上を意味する。したがって「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる1種以上を意味する。以下における「(メタ)」も同義である。
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、2−メチルスチレン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
(b−2)疎水性モノマーとしては、前記のモノマーを2種以上使用してもよく、スチレン系モノマーと芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルを併用してもよい。
〔(b−3)マクロモノマー〕
(b−3)マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物であり、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマー(b)のモノマー成分として用いられることが好ましい。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
(b−3)マクロモノマーの数平均分子量は1,000以上10,000以下が好ましい。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(b−3)マクロモノマーとしては、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、芳香族基含有モノマー系マクロモノマー及びシリコーン系マクロモノマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロモノマーがより好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロモノマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記(b−2)疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン系マクロモノマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
シリコーン系マクロモノマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
〔(b−4)ノニオン性モノマー〕
水不溶性ポリマー(b)には、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、更に、(b−4)ノニオン性モノマー(以下「(b−4)成分」ともいう)をモノマー成分として用いることが好ましい。
(b−4)成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜30)等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(n=1〜30、その中のエチレングリコール:n=1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
商業的に入手しうる(b−4)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社のNKエステルM−20G、同40G、同90G、同230G等、日油株式会社のブレンマーPE−90、同200、同350等、PME−100、同200、同400等、PP−500、同800、同1000等、AP−150、同400、同550等、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE−600B等が挙げられる。
上記(b−1)〜(b−4)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(モノマー混合物中又は水不溶性ポリマー中における各成分又は構成単位の含有量)
水不溶性ポリマー(b)製造時における、上記(b−1)及び(b−2)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又は水不溶性ポリマー中における(b−1)及び(b−2)成分に由来する構成単位の含有量は、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
(b−1)成分の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%、更に好ましくは30質量%以下である。
(b−2)成分の含有量は、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは43質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
更に(b−3)及び/又は(b−4)成分を含有する場合の水不溶性ポリマー(b)製造時における、上記(b−1)〜(b−4)成分のモノマー混合物中における含有量又は水不溶性ポリマー(b)中における(b−1)〜(b−4)成分に由来する構成単位の含有量は、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
(b−1)成分の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
(b−2)成分の含有量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
(b−3)成分を含有する場合、(b−3)成分の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
(b−4)成分を含有する場合、(b−4)成分の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
[(b−1)成分/(b−2)成分]の質量比は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.50以下である。
また、(b−3)成分を含有する場合、〔(b−1)成分/[(b−2)成分+(b−3)成分]〕の質量比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上であり、そして、好ましくは1以下、より好ましくは0.60以下、更に好ましくは0.40以下である。
(水不溶性ポリマー(b)の製造)
水不溶性ポリマー(b)は、モノマー混合物を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に制限はないが、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等の極性有機溶媒が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられ、メチルエチルケトンが好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができるが、重合開始剤としては、アゾ化合物が好ましく、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。重合連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、2−メルカプトエタノールがより好ましい。
好ましい重合条件は、重合開始剤の種類等によって異なるが、重合温度は、好ましくは50℃以上90℃以下、重合時間は好ましくは1時間以上20時間以下である。また、重合雰囲気は、好ましくは窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
水不溶性ポリマー(b)は、後述する顔料含有ポリマー粒子の水分散体の生産性を向上させる観点から、重合反応に用いた溶剤を除去せずに、含有する有機溶媒を後述する工程Iに用いる有機溶媒として用いるために、そのまま水不溶性ポリマー溶液として用いることが好ましい。
水不溶性ポリマー(b)溶液の固形分濃度は、顔料含有ポリマー粒子の水分散体の生産性を向上させる観点から、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。
本発明で用いられる水不溶性ポリマー(b)の重量平均分子量は、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点、及び色間混色のない良好な記録物を得る観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上であり、そして、好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下、更に好ましくは300,000以下、より更に好ましくは200,000以下である。
なお、重量平均分子量の測定は実施例に記載の方法により行うことができる。
水不溶性ポリマー(b)の顔料水分散体X中での存在形態は、水不溶性ポリマー(b)が顔料(A)を内包(カプセル化)した粒子形態、水不溶性ポリマー中に顔料(A)が均一に分散された粒子形態、水不溶性ポリマー(b)の粒子表面から顔料(A)が露出した粒子形態、水不溶性ポリマー(b)が顔料(A)に吸着している形態、及び水不溶性ポリマー(b)が顔料(A)に吸着していない形態等が含まれ、これらが混合した形態も含まれる。顔料の分散安定性の観点から、本発明においては顔料含有ポリマー粒子の形態が好ましく、水不溶性ポリマー(b)が顔料(A)を含有している顔料内包形態がより好ましい。
〔顔料(A)を含有する水不溶性ポリマー(b)の粒子(顔料含有ポリマー粒子)〕
<顔料含有ポリマー粒子の製造>
本発明の水性インクは、顔料(A)を含有する水不溶性ポリマー(b)の粒子(顔料含有ポリマー粒子)を含有することができる。
顔料含有ポリマー粒子は、水分散体として下記の工程I及び工程IIを有する方法により、効率的に製造することができる。
工程I:水不溶性ポリマー(b)、有機溶媒、顔料(A)、及び水を含有する混合物(以下、「顔料混合物」ともいう)を分散処理して、顔料含有ポリマー粒子の分散体を得る工程
工程II:工程Iで得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(以下、「顔料水分散体」ともいう)を得る工程
また、任意の工程であるが、更に工程IIIを行ってもよい。
工程III:工程IIで得られた水分散体と架橋剤を混合し、架橋処理して水分散体を得る工程
本発明における顔料水分散体Xは、工程IIIを行った場合は工程IIIで得られる水分散体であり、工程IIIを行わない場合は工程IIで得られる水分散体である。
(工程I)
工程Iでは、まず、水不溶性ポリマー(b)を有機溶媒に溶解させ、次に顔料(A)、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。水不溶性ポリマー(b)の有機溶媒溶液に加える順序に制限はないが、水、中和剤、顔料(A)の順に加えることが好ましい。
水不溶性ポリマー(b)を溶解させる有機溶媒に制限はないが、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等が好ましく、顔料(A)への濡れ性、水不溶性ポリマー(b)の溶解性、及び水不溶性ポリマー(b)の顔料(A)への吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。
水不溶性ポリマーを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
(中和)
水不溶性ポリマー(b)がアニオン性ポリマーの場合、中和剤を用いて水不溶性ポリマー中のアニオン性基を中和してもよい。中和剤を用いる場合、pHが7以上11以下になるように中和することが好ましい。
中和剤としては、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムが挙げられるが、水酸化ナトリウムが好ましい。有機アミンとしては、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
中和剤は、インクの連続吐出性及び保存安定性を向上させる観点から、アルカリ金属の水酸化物、アンモニアが好ましく、水酸化ナトリウムとアンモニアを併用することがより好ましい。また、該水不溶性ポリマー(b)を予め中和しておいてもよい。
中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、中和剤水溶液として用いることが好ましい。中和剤水溶液の濃度は、上記の観点から、3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、また、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
水不溶性ポリマー(b)のアニオン性基の中和度は、顔料含有ポリマー粒子の顔料水分散体及びインク中における分散安定性及び保存安定性を向上させる観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、また、好ましくは300モル%以下、より好ましくは200モル%以下、更に好ましくは150モル%以下である。
ここで中和度とは、中和剤のモル当量を水不溶性ポリマー(b)のアニオン性基のモル量で除したものである。
(顔料混合物中の各成分の含有量)
工程Iにおける顔料(A)の顔料混合物中の含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点、及び画像濃度の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは14質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
水不溶性ポリマー(b)の顔料混合物中の含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点、及び色間混色のない良好な記録物を得る観点から、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
有機溶媒の顔料混合物中の含有量は、顔料(A)への濡れ性及び水不溶性ポリマーの顔料への吸着性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
水の顔料混合物中の含有量は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点、及び生産性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
水不溶性ポリマー(b)に対する顔料(A)の顔料混合物中の質量比〔(A)/(B)〕は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点、及び色間混色のない良好な記録物を得る観点から、好ましくは30/70以上、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは75/25以下である。
(顔料混合物の分散処理)
工程Iにおいては、前記顔料混合物を分散処理して、顔料含有ポリマー粒子の分散体を得る。分散体を得る分散方法に特に制限はない。本分散だけで顔料粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは顔料混合物を予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
工程Iの予備分散における温度は、好ましくは0℃以上であり、また、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下であり、分散時間は好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、また、好ましくは30時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
顔料混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができるが、中でも高速撹拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidic社製)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製)等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて本分散を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、また、好ましくは200MPa以下、より好ましくは180MPa以下である。
また、パス回数は、好ましくは3以上、より好ましくは10以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
(工程II)
工程IIでは、工程Iで得られた分散体から、公知の方法で有機溶媒を除去することで、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(顔料水分散体)を得ることができる。得られた顔料水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
また必要に応じて、有機溶媒を留去する前に分散体を加熱撹拌処理することもできる。
得られた顔料水分散体は、顔料(A)を含有する固体の水不溶性ポリマー(b)粒子が水を主媒体とする媒体中に分散しているものである。ここで、顔料含有ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも顔料(A)と水不溶性ポリマー(b)により粒子が形成されていればよいが、前記のとおり、顔料(A)を含有している顔料内包状態がより好ましい。
(工程III)
工程IIIは、任意の工程であるが、工程IIで得られた水分散体と架橋剤を混合し、架橋処理して水分散体を得る工程である。工程IIIを行うことが、顔料水分散体及びインクの保存安定性の観点から好ましい。
ここで、架橋剤は、水不溶性ポリマー(b)がアニオン性基を有するアニオン性水不溶性ポリマーである場合において、該アニオン性基と反応する官能基を有する化合物が好ましく、該官能基を分子中に2以上、好ましくは2〜6有する化合物がより好ましい。
架橋剤の好適例としては、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物、分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物、分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられ、これらの中では、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルがより好ましい。
得られた顔料水分散体Xの不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点及び水性インクの調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
なお、顔料水分散体の固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料水分散体X中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水性インクの連続吐出性を向上させる観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは80nm以上、より更に好ましくは85nm以上であり、また、好ましくは150nm以下、より好ましくは130nm以下、更に好ましくは125nm以下である。
なお、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
また、水性インク中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、顔料水分散体X中の平均粒径と同じであり、好ましい平均粒径の態様は、顔料水分散体X中の平均粒径の好ましい態様と同じである。
顔料水分散体Xの20℃における静的表面張力は、水性インクの吐出性を向上させる観点から、好ましくは22mN/m以上、より好ましくは24mN/m以上、更に好ましくは25mN/m以上であり、そして、好ましくは45mN/m以下、より好ましくは43mN/m以下である。
顔料水分散体Xの32℃の粘度は、水性インクの吐出性を向上させる観点から、好ましくは2.0mPa・s以上であり、より好ましくは2.5mPa・s以上であり、更に好ましくは3.0mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下であり、より好ましくは7.0mPa・s以下であり、更に好ましくは5.0mPa・s以下である。
<顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子>
本発明においては、水性インクの保存安定性を向上させ、特にインクジェット記録媒体(紙面)上での乾燥性を早め、色間混色のない良好な記録物を得る観点から、工程2の熱処理後の水性インクに水不溶性ポリマー粒子を添加、混合することができる(工程3)。
ここで、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、水不溶性ポリマーである限り、顔料(A)を含有する水不溶性ポリマー(b)粒子の水不溶性ポリマーと同一でも異なっていてもよい。その形態としては、水不溶性ポリマー粒子を連続相としての水中に分散した分散液が挙げられ、必要に応じて界面活性剤のような分散剤を含有していてもよい。水不溶性ポリマー粒子は、インク液滴を記録媒体に定着させ、画像濃度、光沢度、耐擦過性等を向上させるための、定着エマルジョンとしても作用する。
顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は、水性インクの生産性を向上させる観点から、工程3において、該水不溶性ポリマー粒子を含む分散液として用いることが好ましい。
顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の水性インク中の含有量は、上記と同様の観点から、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.2質量%以上が更に好ましく、そして、10質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
また、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の水性インク中の平均粒径は、上記と同様の観点から、10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、50nm以上が更に好ましく、また、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましい。なお、水不溶性ポリマー粒子の平均粒径は、水不溶性ポリマー(b)粒子の平均粒径と同様の方法により測定される。
<アセチレングリコール系界面活性剤(C)>
アセチレングリコール系界面活性剤(C)は、水性インクの表面張力やプリンター部材との界面張力を適正に保つことができ、起泡性が殆どなく、また水性インクを記録媒体上に濡れ広がり易くする等の特性を有し、さらに、水性インクの高温下における保存安定性をより向上させることができるという特性を有する。
アセチレングリコール系界面活性剤(C)としては、下記一般式(1)で表されるアセチレングリコール化合物が挙げられる。
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜16のアルキル基を示し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を示し、Rは、炭素数2〜6のアルキレン基を示し、mは、ROの平均付加モル数を示し、0〜40である。Xは水素原子、又は下記一般式(2)で表される基を示す。前記アルキル基及びフェニル基はその一部が置換基で置換されていてよい。)
式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜16のアルキル基を示し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を示し、Rは前記と同じであり、nは、ROの平均付加モル数を示し、0〜40である。前記アルキル基及びフェニル基はその一部が置換基で置換されていてよい。
一般式(1)及び(2)において、R〜Rの置換基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
、R、R及びRは、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は炭素数3〜8の環状のアルキル基である。
及びRは、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
Rは、好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基、より好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基、更に好ましくはエチレン基である。
一般式(1)において、m=0のときRは水素原子であり、n=0のときRは水素原子である。また、Xが水素原子のとき、mは1〜50であり、好ましくは1〜40、より好ましくは1〜30である。
一般式(1)で表される化合物の中では、下記一般式(3)で表される化合物がより好ましい。
一般式(3)中、R、R、R、R、R、m及びnは、一般式(1)及び(2)におけるR、R、R、R、R、m及びnとそれぞれ同義であり、その好ましい範囲も同じである。
アルキレンオキシド(RO)の平均付加モル数の和(m+n)は、好ましくは1以上、より好ましくは1.1以上であり、そして、好ましくは45以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは20以下、より更に好ましくは15以下である。m+nが上記範囲であれば、親水性と疎水性のバランスが良好に保たれるため、インクの濡れ性が良好となり、インクの吐出安定性が向上する。
一般式(3)において、R、R、R及びRは、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜16のアルキル基、より好ましくは、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は炭素数3〜8の環状のアルキル基である。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
及びRが直鎖状又は分岐状のアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4、更に好ましくは1〜3であり、特に好ましくはメチル基である。
及びRは、好ましくは炭素数3〜6のアルキル基、より好ましくは炭素数4〜5のアルキル基、更に好ましくはイソブチル基である。
すなわち、一般式(3)で表される化合物の中では、下記一般式(4)で表される化合物がより好ましい。
一般式(4)において、R、R、R、R、m及びnは、一般式(3)におけるR、R、R、R、m及びnとそれぞれ同義であり、その好ましい範囲も同じである。
m+nも、前記のとおり、好ましくは1以上、より好ましくは1.1以上であり、そして、好ましくは45以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは20以下、より更に好ましくは15以下である。
一般式(1)、(3)又は(4)で表される化合物は、公知の方法を用いて合成することが可能であり、例えば藤本武彦著 全訂版「新・界面活性剤入門」(1992年)94頁〜107頁等に記載の方法で得ることができる。
本発明で用いられるアセチレングリコール系界面活性剤(C)としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール等のアセチレン系ジオール、及びそれらのエチレンオキシド付加物、即ち、一般式(3)又は(4)で表される付加物が挙げられる。
それらの市販品例としては、日信化学工業株式会社及びAir Products & Chemicals社製のサーフィノール104、同420、同440、同465、同485、同504、同TG、オルフィンE1004、E1010、E1020、STG、Y;川研ファインケミカル株式会社製のアセチレノールE40、E100、E200等が挙げられる。
これらの中でも、m+nが好ましくは0〜30、より好ましくは0〜10である化合物が好ましい。このような化合物としては、日信化学工業株式会社製のサーフィノール420(m+n=1.3)、サーフィノール440(m+n=3.5)、サーフィノール465(m+n=10.0)、サーフィノール485(m+n=30.0)、オルフィンE1010、アセチレノールE100、E200、川研ファインケミカル製のアセチレノールE40(m+n=4)、アセチレノールE60(m+n=6)、アセチレノールE81(m+n=8)、アセチレノールE100(m+n=10)等が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤(C)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
<その他の界面活性剤>
本発明で用いられる水性インクは、インク粘度の上昇を抑制し、連続吐出性を向上させ、かつ色間混色のない良好な記録物を得る観点から、アセチレングリコール系界面活性剤(C)以外のその他の界面活性剤を含有することができる。その他の界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
(シリコーン系界面活性剤)
シリコーン系界面活性剤は適宜選択することができるが、上記の観点から、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の好適例としては、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を示し、Rは炭素数2〜5のアルカンジイル基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を示し、POはプロピレンオキシ基、EOはエチレンオキシ基を示す。a、b、p及びqは、各ユニットの平均付加モル数を示し、aは0〜10、bは1〜50、pは1〜500、及びqは1〜50である。複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
一般式(5)において、Rは、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましく、Rは、炭素数3又は4のアルカンジイル基が好ましく、トリメチレン基がより好ましく、Rは、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(5)において、aは、好ましくは0〜5、より好ましくは0〜3であり、bは、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜20であり、pは、好ましくは3〜400、より好ましくは5〜300であり、qは好ましくは1〜40、より好ましくは1〜30である。a個、b個、p個又はq個の各ユニットは同じでも異なっていてもよい。
平均付加モル数a、b、p及びqは、下記式(6)を満たすことが好ましい。
[a+b]/[p/q]=0.5〜8.0 (6)
前記[a+b]/[p/q]は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.63以上、更に好ましくは0.7以上であり、そして、好ましくは7以下、好ましくは6以下、更に好ましくは5以下である。
また、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の25℃における動粘度は、上記と同様の観点から、好ましくは40mm/s以上、より好ましくは50mm/s以上であり、そして、好ましくは1000mm/s以下、より好ましくは950mm/s以下である。なお、動粘度はウベローデ型粘度計で求めることができる。
また、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤のHLB(親水性親油性バランス)値は、水性インクへの溶解性の観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは3.0以上である。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製のKFシリーズ;KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF640、KF−642、KF643、KF−644、KF6020等、日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAG005、株式会社NUC製のFZ−2191、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK−348等が挙げられる。これらの中では、KF−353、KF−355A、KF−642等、日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAG005、株式会社NUC製のFZ−2191、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK−348等が好ましい。
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、(1)炭素数8〜22の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の高級アルコール、多価アルコール、又は芳香族アルコールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド(以下総称して、「アルキレンオキシド」という)を付加したポリオキシアルキレンのアルキルエーテル、アルケニルエーテル、アルキニルエーテル又はアリールエーテル、(2)炭素数8〜22の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する高級アルコールと多価脂肪酸とのエステル、(3)炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖の、アルキル基又はアルケニル基を有する、ポリオキシアルキレン脂肪族アミン、(4)炭素数8〜22の高級脂肪酸と、多価アルコールのエステル化合物又はそれにアルキレンオキシドを付加した化合物等が挙げられる。
<水溶性有機溶媒(D)>
水溶性有機溶媒(D)は、水性インクの乾燥性を高め、粘度安定性を向上し、色間混色を抑制する観点から、沸点が90℃以上250℃未満のアルコール、該アルコールのアルキルエーテル、グリコールエーテル、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等が挙げられる。これらの中では、沸点が90℃以上250℃未満の多価アルコール及びグリコールエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、多価アルコールを少なくとも含むことがより好ましい。
水溶性有機溶媒(D)の沸点は、上記と同様の観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上、更に好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは240℃以下、好ましくは230℃以下、好ましくは225℃以下である。
(多価アルコール)
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール(沸点197℃)、プロピレングリコール(沸点187℃)、1,2−ブタンジオール(沸点193℃)、1,2−ペンタンジオール(沸点206)、1,2−ヘキサンジオール(沸点223℃)等の1,2−アルカンジオール、ジエチレングリコール(沸点245℃)、ジプロピレングリコール(沸点232℃)、1,3−プロパンジオール(沸点210℃)、1,3−ブタンジオール(沸点208℃)、1,4−ブタンジオール(沸点230℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(沸点203℃)、1,5−ペンタンジオール(沸点242℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(沸点196℃)、1,2,6−ヘキサントリオール(沸点178℃)、1,2,4−ブタントリオール(沸点190℃)、1,2,3−ブタントリオール(沸点175℃)、ペトリオール(沸点216℃)等が挙げられる。
また、1,6−ヘキサンジオール(沸点250℃)、トリエチレングリコール(沸点285℃)、トリプロピレングリコール(沸点273℃)、ポリプロピレングリコール(沸点250℃以上)、グリセリン(沸点290℃)等を沸点が250℃未満の化合物と組み合わせて用いることができる。
これらの中では、水性インクの粘度安定性を向上し、色間混色を抑制する観点から、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール等の炭素数2以上6以下のアルカンジオールから選ばれる1種以上が好ましく、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数3以上4以下のアルカンジオールから選ばれる1種以上がより好ましく、プロピレングリコール(沸点187℃)が更に好ましい。
(グリコールエーテル)
グリコールエーテルの具体例としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられるが、アルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。アルキレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。アルキレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基は、直鎖及び分岐鎖が挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルの具体例としては、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、及びジエチレングリコールブチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル(iPDG;沸点207℃)、ジエチレングリコールイソブチルエーテル(沸点220℃)、及びジエチレングリコールブチルエーテル(沸点231℃)から選ばれる1種以上がより好ましい。
上記の水溶性有機溶媒(D)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
<水性インクの製造方法>
本発明の水性インクの製造方法は、下記工程1及び2を有し、好ましくはさらに工程3を有する。
工程1:顔料(A)をポリマー分散剤(B)で水系媒体中に分散させた顔料水分散体Xに、アセチレングリコール系界面活性剤(C)、及び水溶性有機溶媒(D)を添加し、水溶性有機溶媒(D)の含有量が15質量%以上50質量%以下、沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が15質量%以下である顔料水分散体Yを得る工程
工程2:得られた顔料水分散体Yを60℃以上で1時間以上熱処理して、水性インクを得る工程
工程3:工程2の熱処理後の水性インクに顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子を添加する工程
(工程1)
工程1で使用する顔料(A)、ポリマー分散剤(B)アセチレングリコール系界面活性剤(C)、及び水溶性有機溶媒(D)は前記のとおりであり、「水系媒体」とは、顔料を分散させる媒体中で、水が最大割合を占めている媒体を意味する。
「顔料水分散体X」は、前記〔顔料含有ポリマー粒子の製造〕の工程II又は工程IIIにおける顔料含有ポリマー粒子の水分散体(顔料水分散体)と実質的に同じである。
水溶性有機溶媒(D)は、顔料水分散体Xに、アセチレングリコール系界面活性剤(C)と水溶性有機溶媒(D)を添加して得られる顔料水分散体Yに対して、15質量%以上50質量%以下となる量で用いられる。
顔料水分散体Y中のアセチレングリコール系界面活性剤(C)の合計量は、水性インクの保存安定性を向上させ、色間混色のない良好な記録物を得る観点から、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2.5質量%以下である。
顔料水分散体Y中の水溶性有機溶媒(D)の含有量は、水性インクの粘度安定性を向上し、色間混色を抑制する観点から、15質量%以上であり、好ましくは16質量%以上、より好ましくは18質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは23質量%以上、より更に好ましくは28質量%以上であり、そして、50質量%以下であり、好ましくは49質量%以下、より好ましくは48質量%以下、更に好ましくは48質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下である。
顔料水分散体Y中の沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量は、水性インクの粘度安定性を向上し、色間混色を抑制する観点から、15質量%以下であり、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である。
(工程2)
工程2は、工程1で得られた顔料水分散体Yを60℃以上で1時間以上熱処理して、水性インクを得る工程である。
この熱処理により、ポリマー分散剤及び顔料粒子が安定化すると同時に、記録媒体上で均一に配向、密着するようになるため、画像濃度が向上し、記録媒体上に着弾したインク液滴(ドット)が素早く濃縮固化するため、次に着弾したインク液滴との色間混色を抑制することができると考えられる。
熱処理の温度は、好ましくは62℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは98℃以下、更に好ましくは95℃以下、より更に好ましくは92℃以下である。
熱処理の時間は、上記と同様の観点から、好ましくは1.5時間以上、より好ましくは2時間以上、更に好ましくは2.5時間以上、より更に好ましくは4時間以上であり、そして、インクの生産性の観点から、好ましくは30時間以下、より好ましくは25時間以下、更に好ましくは15時間以下、より更に好ましくは10時間以下である。
(工程3)
本発明の水性インクの製造方法は、好ましくはさらに工程3を有する。工程3は、工程2の熱処理後の水性インクに顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子を添加する工程である。工程3を行うことにより、顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子が熱処理されることによる水性インクの粘度安定性の低下を回避して、定着性に優れた良好な記録物を得ることができる。
工程3で使用する顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子は前記のとおりであり、水不溶性ポリマー粒子を含む分散液として用いることもできる。
<水性インクの各成分の含有量、インク物性>
本発明の方法により得られる水性インク、特にインクジェット記録用水性インクの各成分の含有量、インク物性は以下のとおりである。
(顔料(A)の含有量)
水性インク中の顔料(A)の含有量は、水性インクの画像濃度を向上させる観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上である。また、色間混色のない良好な記録物を得る観点から、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましく8.0質量%以下、より更に好ましくは7.0質量%以下である。
(ポリマー分散剤(B)の含有量)
水性インク中のポリマー分散剤(B)の含有量は、水性インクの保存安定性を向上させ、色間混色のない良好な記録物を得る観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、そして、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、より更に好ましくは2.5質量%以下である。
(顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の含有量)
顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、より更に好ましくは2.0質量%以下である。
(アセチレングリコール系界面活性剤(C)の含有量)
水性インク中のアセチレングリコール系界面活性剤(C)の合計量は、水性インクの保存安定性を向上させ、色間混色のない良好な記録物を得る観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは1.0質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2.5質量%以下である。
なお、(C)の含有量は、工程1及び2、更に必要に応じて工程3を経て得られた水性インク中の含有量を意味し、2種以上のアセチレングリコール系界面活性剤を含む場合は、その合計量で前記の範囲を満たすことが好ましい。
水性インク中のシリコーン系界面活性剤等のその他の活性剤、特にポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上、より更に好ましくは0.03質量%以上であり、そして、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、より更に好ましくは0.2質量%以下である。
(水溶性有機溶媒(D)の含有量)
水性インク中の水溶性有機溶媒(D)の含有量は、水性インクの保存安定性を向上させ、色間混色のない良好な記録物を得る観点から、前記した顔料水分散体Y中の水溶性有機溶媒(D)の含有量と同じである。すなわち、その含有量は、水性インク中好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは16質量%以上、更に好ましくは18質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは23質量%以上、より更に好ましくは28質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは49質量%以下、更に好ましくは48質量%以下、より更に好ましくは48質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下である。
水性インク中の多価アルコール、好ましくは沸点が90℃以上250℃未満の多価アルコール、より好ましくは炭素数2以上6以下のアルカンジオール、更に好ましくはプロピレングリコール及びジエチレングリコールイソプロピルエーテル、より更に好ましくはプロピレングリコールである。その含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは14質量%以上、更に好ましくは18質量%以上、より更に好ましくは22質量%以上、より更に好ましくは22質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは42質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは38質量%以下、より更に好ましくは38質量%以下である。
水性インク中の沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量は、高速印刷において適度な乾燥性を付与し、水性インクの粘度安定性を向上し、色間混色のない良好な記録物を得る観点から、前記した顔料水分散体Y中の含有量と実質的に同じである。すなわち、その含有量は、水性インク中15質量%以下であり、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
(水の含有量)
水性インク中の水の含有量は、水性インクの保存安定性を向上させ、色間混色のない良好な記録物を得る観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、そして、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。
(その他の成分)
本発明の水性インクには、上記成分の他に、通常用いられる保湿剤、湿潤剤、浸透剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を添加することができる。
(水性インク物性)
水性インクのpHは、水性インクの保存安定性を向上させ、色間混色のない良好な記録物を得る観点から、好ましくは7.0以上であり、より好ましくは8.0以上であり、更に好ましくは8.5以上であり、より更に好ましくは9.0以上である。また、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、pHは、好ましくは11.0以下であり、より好ましくは10.0以下である。
なお、pHは、実施例に記載の方法により測定される。
水性インクの20℃における静的表面張力は、水性インクの吐出性を向上させる観点から、好ましくは22mN/m以上、より好ましくは24mN/m以上、更に好ましくは25mN/m以上であり、そして、好ましくは45mN/m以下、より好ましくは40mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下である。
水性インクの32℃の粘度は、水性インクの吐出性を向上させる観点から、好ましくは2.0mPa・s以上であり、より好ましくは2.5mPa・s以上であり、更に好ましくは3.0mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下であり、より好ましくは8.0mPa・s以下であり、更に好ましくは6.0mPa・s以下である。
<インクジェット記録用インクセット>
本発明の方法で得られる水性インクを用いるインクジェット記録用インクセットは、該水性インクを2種以上含むインクセットである。本発明に係るインクセットを用いれば、2種以上のインクの重ね打ちによる色間混色のない良好な記録物を得ることができる。
本発明においては、インクジェット記録装置の各色用インクカートリッジに、本発明の水性インクを2種以上含むインクセットを装着し、各インクカートリッジに対応する各吐出ノズルからインク液滴をそれぞれ吐出させて、ロール紙等の記録媒体に記録させることができる。
本発明のインクセットは、黒色と、有彩色から選ばれる1色以上の着色インクを含むことが好ましく、2色インクセット、3色インクセット、4色インクセット、5色インクセット、6色インクセット、7色インクセット以上のいずれであってもよく、色間混色の効果を発揮する観点から、3色以上を含むインクセットとして使用することが好ましい。
本発明のインクセットは、更に、クリアインクとの組み合わせを含むこともできる。
[インクジェット記録方法]
本発明のインクジェット記録方法は、本発明の方法で得られた水性インクを2種以上含むインクセットをインクジェット記録装置に装着し、下記工程a及びbにより記録する、インクジェット記録方法である。
工程a:本発明の方法で得られた水性インクを、記録媒体上に吐出する工程
工程b:工程aで記録媒体上に吐出された水性インクの上に、本発明の方法で得られた他の水性インクを重ねて吐出する工程
本発明のインクジェット記録方法においては、シリアヘッド方式及びラインヘッド方式等を用いることができるが、ラインヘッド方式の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置を用いることが好ましい。
記録媒体としては、普通紙、上質紙等の吸水性記録媒体、アート紙、コート紙等の低吸水性記録媒体、合成樹脂フィルム等の非吸水性記録媒体等が挙げられる。記録媒体は、記録媒体の搬送速度をさせる観点から、ロール紙であることが好ましい。
低吸水性記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量は、0g/m以上10g/m以下であり、色間混色の抑制効果を発揮する観点から、好ましくは7g/m以下である。
アート紙としては、OKウルトラアクアサテン、OK金藤、SA金藤、サテン金藤(以上、王子製紙株式会社製);ハイパーピレーヌ、シルバーダイア(以上、日本製紙株式会社製);グリーンユトリロ(大王製紙株式会社製);パールコート、ニューVマット(以上、三菱製紙株式会社製)等が挙げられる。
コート紙としては、例えば、「OKトップコートプラス」(王子製紙株式会社製、接触時間100m秒における吸水量(以下の吸水量は同じ)4.9g/m)、多色フォームグロス紙(王子製紙株式会社製、吸水量5.2g/m)、UPM Finesse Gloss(UPM社製、吸水量3.1g/m)、UPM Finesse Matt(UPM社製、吸水量4.4g/m)、TerraPress Silk(Stora Enso社製、吸水量4.1g/m)、LumiArt(Stora Enso社製)等が挙げられる。
合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。これらフィルムは必要に応じてコロナ処理等の表面処理を行っていてもよい。
合成樹脂フィルムの市販品としては、例えば、ルミラーT60(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、厚み125μm、吸水量2.3g/m)、PVC80B P(リンテック株式会社製、塩化ビニル、吸水量1.4g/m)、カイナスKEE70CA(リンテック株式会社製、ポリエチレン)、ユポSG90 PAT1(リンテック株式会社製、ポリプロピレン)、ボニールRX(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製、ナイロン)等が挙げられる。
記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量は、自動走査吸液計を用いて、実施例に記載の方法により測定することができる。
記録媒体の搬送速度は、好ましく20m/min以上、より好ましくは50m/min以上、更に好ましくは70m/min以上である。記録媒体の搬送速度とは、記録媒体が記録の際に移動する方向に対して移動する速度のことである。
インク液滴の吐出方式はピエゾ方式、サーマル方式のいずれも採用しうるが、ピエゾ方式がより好ましい。
記録ヘッドの印加電圧は、高速印刷の効率性等の観点から、好ましくは5V以上、より好ましくは10V以上、更に好ましくは15V以上であり、そして、好ましくは40V以下、より好ましくは35V以下、更に好ましくは30V以下である。 駆動周波数は、高速印刷の効率性等の観点から、好ましくは10kHz以上、より好ましくは20kHz以上、更に好ましくは25kHz以上であり、そして、好ましくは90kHz以下、より好ましくは75kHz以下、更に好ましくは60kHz以下である。
インクの吐出液滴量は、インク液滴の着弾位置の精度を維持する観点及び画質向上の観点から、1滴あたり好ましくは0.5pL以上、より好ましくは1pL以上、更に好ましくは2pL以上、より更に好ましくは3pL以上であり、そして、好ましくは30pL以下、より好ましくは20pL以下、更に好ましくは10pL以下である。
記録解像度は、好ましくは300dpi以上、より好ましくは400dpi以上、更に好ましくは500dpi以上である。例えば、ラインヘッドに配置されるノズル孔のノズル列の長さあたりの個数が600dpi(ドット/インチ)である場合、記録媒体を移動させながらインク液滴を吐出すると、記録媒体上にはノズル列の方向に沿ってドットが600dpiの記録解像度で形成される。
記録時のヘッド内、好ましくはラインヘッド内の温度は、吐出性の観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは38℃以下である。
水性インクの記録媒体上の付着量は、記録物の画質向上及び記録速度の観点から、固形分として、好ましくは0.1g/m以上であり、そして、好ましくは25g/m以下、より好ましくは20g/m以下である。
本発明のインクジェット記録方法においては、インク液滴を記録媒体上に吐出して記録した後、記録媒体上に着弾したインク液滴を乾燥する工程を設けることができる。
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
(1)水不溶性ポリマーの重量平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いて測定した。
(2)顔料含有ポリマー粒子及び水不溶性ポリマー粒子の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELS−8000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度は、5×10−3質量%(固形分濃度換算)で行った。
(3)水分散体の固形分濃度の測定
30mlのポリプロピレン製容器(φ:40mm、高さ:30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で更に15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
(4)水分散体及び水性インクのpHの測定
pH電極「6337−10D」(株式会社堀場製作所製)を使用した卓上型pH計「F−71」(株式会社堀場製作所製)を用いて、25℃におけるpHを測定した。
(5)水分散体及び水性インクの粘度
E型粘度計「TV−25」(東機産業株式会社製、標準コーンロータ1°34’×R24使用、回転数50rpm)を用いて、32℃にて粘度を測定した。
(6)水分散体及び水性インクの静的表面張力
表面張力計(協和界面科学株式会社製、商品名:CBVP−Z)を用いて、白金プレートを5gの水性インクの入った円柱ポリエチレン製容器(直径3.6cm×深さ1.2cm)に浸漬させ、20℃にて静的表面張力を測定した。
(7)記録媒体の吸水量
記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量は、自動走査吸液計(熊谷理機工業株式会社製、KM500win)を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下で、純水の接触時間100msにおける転移量を該吸水量として測定した。測定条件を以下に示す。
「Spiral Method」
Contact Time : 0.010〜1.0(sec)
Pitch (mm) : 7
Length Per Sampling (degree) : 86.29
Start Radius (mm) : 20
End Radius (mm) : 60
Min Contact Time (ms) : 10
Max Contact Time (ms) : 1000
Sampling Pattern (1 - 50) : 50
Number of Sampling Points (> 0) : 19
「Square Head」
Slit Span (mm) : 1
Slit Width (mm) : 5
製造例1(ブラック顔料含有ポリマー粒子の水分散体1の製造)
(1)水不溶性ポリマーの合成
メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製)16部、スチレン(和光純薬工業株式会社製)44部、スチレンマクロモノマー「AS−6S」(東亞合成株式会社製、数平均分子量6,000、固形分濃度50%)30部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート「ブレンマーPME−200」(日油株式会社)25部を混合し、モノマー混合液115部を調製した。
反応容器内に、メチルエチルケトン18部及び連鎖移動剤である2−メルカプトエタノール0.03部、及び前記モノマー混合液の10%(11.5部)を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、モノマー混合液の残りの90%(103.5部)と前記連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン42部及び重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)「V−65」(和光純薬工業株式会社製)3部を混合した混合液を滴下ロートに入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了から75℃で2時間経過後、前記重合開始剤3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、更にメチルエチルケトン50部を加え、水不溶性ポリマー(重量平均分子量:50,000)の溶液を得た。水不溶性ポリマー溶液の固形分濃度は45質量%であった。
(2)ブラック顔料含有ポリマー粒子の水分散体1の製造
前記(1)で得られた水不溶性ポリマー溶液95.2部をメチルエチルケトン53.9部に溶かし、その中に中和剤として5N水酸化ナトリウム水溶液15.0部と25%アンモニア水0.5部、及びイオン交換水341.3部を加え、更にカーボンブラック顔料としてC.I.ピグメント・ブラック7(P.B.7、キャボット社製)100部を加え、顔料混合液を得た。中和度は78.8モル%であった。顔料混合液をディスパー翼を用いて7000rpm、20℃の条件下で1時間混合した。得られた分散液をマイクロフルイダイザー「高圧ホモジナイザーM-140K」(Microfluidics社製)を用いて、180MPaの圧力で15パス分散処理した。
得られた顔料含有ポリマー粒子の分散液を、減圧下60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、遠心分離し、液層部分をフィルター「ミニザルトシリンジフィルター」(ザルトリウス社製、孔径:5μm、材質:酢酸セルロース)でろ過して粗大粒子を除き、固形分濃度25質量%の顔料含有ポリマー粒子の水分散体を得た。
得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体にイオン交換水を加え、固形分濃度22質量%のブラック顔料含有ポリマー粒子の水分散体を得た。このブラック顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は100nmであった。
製造例2(ブラック顔料含有ポリマー粒子の水分散体2の製造)
製造例1(2)で得られた固形分濃度22%の顔料含有ポリマー粒子の水分散体から水分を蒸発させ、固形分濃度26%のブラック顔料含有ポリマー粒子の水分散体2を得た。
製造例3〜5(有彩色顔料含有ポリマー粒子の水分散体の製造)
製造例1(2)において、表1に記載の条件で、カーボンブラック顔料をそれぞれイエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料に変えた以外は製造例1(2)と同様にして、固形分濃度25質量%の水分散体を製造し、さらに架橋剤を用いてポリマーの架橋処理を行った。
具体的には、製造例1(2)と同様にして得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体100部に対して、デナコールEX321L(ナガセケムテックス株式会社製)を0.54部とイオン交換水15.55部を加え、撹拌しながら70℃、3時間の加熱処理を行った(固形分濃度22質量%)。室温まで冷却後、液層部分をフィルター「ミニザルトシリンジフィルター」(ザルトリウス社製、孔径:5μm、材質:酢酸セルロース)でろ過して粗大粒子を除き、イエロー顔料、マゼンタ顔料、又はシアン顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得た。結果を表1に示す。
表1に示す顔料(A)の詳細は、以下のとおりである。
<顔料(A)>
・B:カーボンブラック顔料「P.B.7」(キャボット社製)
・Y:イエロー顔料「P.Y.74」(大日精化工業株式会社製)
・M:マゼンタ顔料「P.R.122」(大日精化工業株式会社製)
・C:シアン顔料「P.B.15:3」(DIC株式会社社製)
製造例6(顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の水分散体の製造)
1000mLセパラブルフラスコ中にメチルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)145部、2−エチルヘキシルアクリレート(和光純薬工業株式会社製)50部、メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製)5部、ラテムルE118B(花王株式会社製、乳化剤、有効分26%)18.5部、イオン交換水96部、過硫酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)0.32部を仕込み、撹拌羽根で撹拌を行い(300rpm)モノマー乳化液を得た。
反応容器内に、ラテムルE118B 4.6部、イオン交換水186部、過硫酸カリウム0.08部を入れ窒素ガス置換を十分行った。窒素雰囲気下、撹拌羽根で攪拌(200rpm)しながら80℃まで昇温し、上記モノマー乳化液を滴下ロート中に仕込み、このモノマー乳液を3時間かけて滴下、反応させた。この反応液にイオン交換水を加え有効分を20%とすることで不溶性ポリマー粒子の水分散体(固形分濃度は20質量%)を得た。この不溶性ポリマー粒子の平均粒径は100nmであった。
実施例1(水性インクセット1の製造)
(1)黒色水性インクの製造
(工程1)
製造例1(2)で得られたブラック顔料含有ポリマー粒子の水分散体1(固形分濃度22質量%)32.47部(顔料5.0部、水不溶性ポリマー2.14部)、プロピレングリコール(PG)31.0部、アセチレングリコール系界面活性剤として、日信化学工業株式会社製、サーフィノール465(S−465)[2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール;アセチレングリコールのエチレンオキシド10.0モル付加物]1.00部、サーフィノール420(S−420)[2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール−ジ(ポリオキシエチレン)エーテル;アセチレングリコールのエチレンオキシド1.3モル付加物)0.65部、シリコーン系界面活性剤(信越化学工業株式会社製、KF−642)0.05部、イオン交換水25.08部を加えて混合し、顔料水分散体を得た(水溶性有機溶媒含有量:34%)。
(工程2)
得られた水性インクを撹拌しながら昇温し、90℃にて5時間加熱撹拌して熱処理を行った。
(工程3)
その後常温まで冷却し、中和剤(1N−NaOH)0.5部、製造例6で得られた水不溶性ポリマー粒子の水分散体(固形分濃度20重量%)9.25部(水不溶性ポリマー1.85%)を添加、混合した。得られた混合液をフィルター「ミニザルトシリンジフィルター」(ザルトリウス社製、孔径:1.2μm、材質:酢酸セルロース)で濾過し、pHが9.5の水性インクを得た。
(2)有彩色水性インクの製造
製造例3〜5で得られた有彩色顔料含有ポリマー粒子の水分散体(固形分濃度22質量%)を用いて、有彩色の水性インクを製造した。
イエロー及びシアンについては、顔料含有ポリマー粒子の水分散体26.54部、プロピレングリコール35.0部、イオン交換水27.01部とした以外は、実施例1と同様にして水系インクを製造した。
マゼンタについては、顔料含有ポリマー粒子の水分散体33.29部、イオン交換水24.26部とした以外は、実施例1と同様にして水系インクを製造し、水性インクセット1を得た。結果を表2に示す。
なお、有彩色の水性インクについては、工程2の熱処理を行わなかった。
実施例2(水性インクセット2の製造)
実施例1において、添加したプロピレングリコール(PG)31.0部のうち5.0部をジエチレングリコールイソプロピルエーテル(iPDG)に変更した以外は、実施例1と同様にして水性インク、及び水性インクセット2を製造した。結果を表2に示す。
実施例3(水性インクセット3の製造)
実施例1(2)において、イエロー、マゼンタ、シアン顔料含有ポリマー粒子の水分散体も、実施例1の工程2と同様に90℃5時間の熱処理を行った以外は、実施例1と同様にして水性インク、及び水性インクセット3を製造した。結果を表2に示す。
実施例4、参考例5、参考例6、実施例7〜10、比較例1〜6(水性インクセット4〜16の製造)
実施例1において、表2に示した条件に変えて、水性インク、及び水性インクセット4〜16を製造した。結果を表2に示す。
[水性インク、インクセットの評価]
上記で得られた水性インクの粘度安定性を下記の方法で評価した。なお、比較例5のインクは、工程2が終了した時点で粒子径が増大しインクとして使用困難な状態であったため、水性インク、インクセットの評価は行わなかった。
また、上記で得られたインクセットを用いて、下記に示すように、インクジェット印刷物を調製し、画像濃度、及び色間混色を以下の方法で評価した。結果を表2に示す。
(1)粘度安定性の評価
黒色インク100mlをポリプロピレン製の容器(アイボーイ広口びん100ml)に封入、密栓し、槽内温度70℃に設定した恒温槽内で4週間静置した後の保存前と保存後の粘度の変化を測定した。表2に〔(保存後の粘度)/(保存前の粘度)〕×100%に示した。値が100%に近いほど保存安定性が優れる。
<インクジェット印刷物の調製>
25℃±1℃、相対湿度25℃±5%の環境下で、インクジェット記録ラインヘッド「KJ4B−HD06MHG−STDV、」(京セラ株式会社製)を装備したロール紙印刷テスト装置(京セラ株式会社製、ピエゾ式)に製造例で得られた水性インクからなるインクセットを装着して印刷を行った。
ロール紙は基材幅を150mmにカッティングしたコート紙(王子製紙株式会社製、OKトップコートプラス、坪量104.7g/m、原紙と純水との接触時間100m秒における原紙の吸水量4.9g/m)を用い、下記の印刷条件で印刷評価を行った。
本印刷装置は、印刷直後に加熱乾燥機を設置しており、下記の加熱乾燥条件で印刷表面の乾燥を行った。
(印刷条件)
搬送機構:ロールtoロール
ラインヘッド温度:32℃
記録ヘッド解像度:600dpi
吐出ヘッド数:4ヘッド(各色1ヘッド装着)
吐出液滴量:7pL
駆動周波数:30kHz 印加電圧:26V
負圧:−4.0kPa ヘッド間隔:350mm
搬送速度:76m/min
(2)画像濃度の評価
上記印刷条件の下、上記のコート紙に、黒色インク100%dutyでベタ画像を印刷し、1日放置後、光学濃度計SpectroEye(グレタグマクベス社製)を用いて任意の10箇所を測定し、平均値を求めた。値が高いほど画像濃度が良いことを示す。
(3)色間混色の評価
黒色インクで文字「a」を記録した後1秒以内にシアンインク100%Dutyでベタ印刷(1C)した後1秒以内に、このシアンインクが記録された部位にマゼンタインク100%Dutyでベタ印刷(2C、計200%Duty)した後1秒以内に記録した際、文字「a」が鮮明に確認できるか否かを、下記の基準で評価した。シアンインクとマゼンタインクの代わりに、シアンインクとイエローインク、マゼンタインクとイエローインクの各2色の組み合わせで同様に評価し、これらの3つの評価結果の最も劣る値を評価値とした。
(評価基準)
5:2Cベタ印刷部の200%Duty部分において、黒色インクの滲みがなく、文字を認識できる。
4:2Cベタ印刷部の200%Duty部分において、黒色インクが若干滲むが、文字を認識できる。
3:2Cベタ印刷部の200%Duty部分において、黒色インクが滲み、文字品位の低下がみられるが、文字を認識できる。
2:2Cベタ印刷部の200%Duty部分において、黒色インクが滲み、顕著な文字品位の低下がみられるが、文字を認識できる。
1:2Cベタ印刷部の200%Duty部分において、黒色インクが滲み、文字を認識できない。
表2から、実施例1〜10のインクセットは、比較例1〜6のインクセットに比べて、粘度安定性、画像濃度が優れており、また、色間混色も実用上支障がなく、記録性能が優れていることが分かる。

Claims (11)

  1. 下記工程1及び2を有する水性インクの製造方法。
    工程1:顔料(A)をポリマー分散剤(B)で水系媒体中に分散させた顔料水分散体Xに、アセチレングリコール系界面活性剤(C)、及び水溶性有機溶媒(D)を添加し、
    アセチレングリコール系界面活性剤(C)の含有量が0.5質量%以上4質量%以下、
    水溶性有機溶媒(D)の含有量が28質量%以上50質量%以下、
    沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が質量%以下である顔料水分散体Yを得る工程
    工程2:得られた顔料水分散体Yを60℃以上で1時間以上熱処理して、水性インクを得る工程
  2. 水溶性有機溶媒(D)が、沸点が90℃以上250℃未満の多価アルコール及びグリコールエーテルから選ばれる1種以上を含む、請求項に記載の水性インクの製造方法。
  3. 多価アルコールが、炭素数2以上6以下のアルカンジオールである、請求項に記載の水性インクの製造方法。
  4. 多価アルコールがプロピレングリコールである、請求項3に記載の水性インクの製造方法。
  5. アセチレングリコール系界面活性剤(C)が、下記一般式(3)で表される化合物である、請求項1〜のいずれかに記載の水性インクの製造方法。

    (式(3)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜16のアルキル基を示し、Rは、炭素数2〜6のアルキレン基を示し、m及びnは、ROの平均付加モル数を示し、0〜40である。)
  6. 工程1において、さらに、シリコーン系界面活性剤を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の水性インクの製造方法。
  7. シリコーン系界面活性剤が、下記一般式(5)で表されるポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤である、請求項6に記載の水性インクの製造方法。

    (式中、R は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を示し、R は炭素数2〜5のアルカンジイル基を示し、R は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を示し、POはプロピレンオキシ基、EOはエチレンオキシ基を示す。a、b、p及びqは、各ユニットの平均付加モル数を示し、aは0〜10、bは1〜50、pは1〜500、及びqは1〜50である。複数のR は同一でも異なっていてもよい。)
  8. シリコーン系界面活性剤の含有量が、0.005質量%以上0.5質量%以下である、請求項6又は7に記載の水性インクの製造方法。
  9. 水性インク中の顔料(A)の含有量が、1.0質量%以上10.0質量%以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の水性インクの製造方法。
  10. さらに、下記工程3を有する、請求項1〜のいずれかに記載の水性インクの製造方法。
    工程3:工程2の熱処理後の水性インクに顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子を添加する工程
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の方法で得られた水性インクを2種以上含むインクセットをインクジェット記録装置に装着し、下記工程a及びbにより記録する、インクジェット記録方法。
    工程a:請求項1〜6のいずれかに記載の方法で得られた水性インクを、記録媒体上に吐出する工程
    工程b:工程aで記録媒体上に吐出された水性インクの上に、請求項1〜6のいずれかに記載の方法で得られた他の水性インクを重ねて吐出する工程
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