JP6683301B1 - 水素環境度判定方法及び白色組織破損可能性予測方法 - Google Patents

水素環境度判定方法及び白色組織破損可能性予測方法 Download PDF

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Abstract

転動装置の運転時の水素環境度を判定する方法、及び、運転により転動装置に白色組織破損が発生する可能性を予測する方法を提供する。水素環境度判定方法は、相互に転がり接触する2つの転動部材を備え、2つの転動部材の少なくとも一方が鋼製転動部材である転動装置の運転条件のうち、水素から受ける影響の大きさを表す指標である水素環境度を判定する方法である。そして、水素環境度判定方法は、上記運転条件で運転された転動装置の鋼製転動部材のうち、転がり接触により転動疲労した部位である転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定する測定工程と、測定工程での測定結果に基づいて水素環境度を判定する判定工程と、を有する。

Description

本発明は、水素環境度判定方法及び白色組織破損可能性予測方法に関する。
転動装置の転動部材を形成する鋼中に水素が侵入すると、転がり接触によって鋼の内部に作用する剪断応力と水素との相互作用により、鋼の金属組織に変化が生じる場合がある。この金属組織の変化は、鋼の基地組織であるマルテンサイトが微細なフェライト粒に変化する現象である。エッチングを行って組織変化部を観察すると白く見えることから、水素の侵入により変化した金属組織は「白色組織」と呼ばれる。鋼に白色組織が発生すると、組織変化部と正常部(組織非変化部)の界面から疲労亀裂が生じて剥離するため、転動部材の転動疲労寿命が著しく低下するおそれがある。以下、上記のような白色組織への組織変化を伴った剥離を、「白色組織剥離」と記すこともある。また、白色組織に起因する破損(白色組織剥離を含む)を「白色組織破損」と記すこともある。
転動装置の運転時に転動部材に侵入した水素のうち常温拡散性水素の量を定量することにより、転動装置の運転時の水素環境の厳しさの度合い(以下、「水素環境度」と記すこともある。)を判定したり、白色組織剥離による寿命を予測したりすることができる(例えば特許文献1を参照)。
しかしながら、実機(例えば自動車用オルタネータ)に使用された転動装置の場合は、転動部材に含有されている常温拡散性水素の量を定量しようとしても、測定する前に常温拡散性水素が転動部材から放出される場合があるため、正確な定量は困難であった。したがって、実機において使用された際の転動装置の水素環境度を判定したり、実機で使用された場合の転動装置に白色組織剥離等の白色組織破損が発生する可能性を予測したりすることは、困難であった。
また、実機において、転動装置が運転時に置かれる雰囲気中の水素ガスの濃度や、転動装置に使用される潤滑剤の分解による水素の発生しやすさを測定することは、容易ではなかった。
日本国特許公報 第6072504号
本発明は、転動装置の運転時の水素環境度を判定する方法、及び、運転により転動装置に白色組織破損が発生する可能性を予測する方法を提供することを課題とする。
本発明の一態様に係る水素環境度判定方法は、相互に転がり接触する2つの転動部材を備え、2つの転動部材の少なくとも一方が鋼製転動部材である転動装置の運転条件のうち、水素から受ける影響の大きさを表す指標である水素環境度を判定する方法である。そして、本発明の一態様に係る水素環境度判定方法は、上記運転条件で運転された転動装置の鋼製転動部材のうち、転がり接触により転動疲労した部位である転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定する測定工程と、測定工程での測定結果に基づいて水素環境度を判定する判定工程と、を有することを要旨とする。
本発明の他の態様に係る白色組織破損可能性予測方法は、上記の一態様に係る水素環境度判定方法を利用して、転動装置の運転時に鋼製転動部材に白色組織破損が発生する可能性を予測する方法である。
本発明の他の態様に係る白色組織破損可能性予測方法においては、まず、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置と同種の転動装置をデータベース作成用転動装置として用意して、転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度及び運転時のデータベース作成用転動装置の水素環境のうち少なくとも一つが異なる複数の運転条件それぞれにおいてデータベース作成用転動装置を運転する。そして、その後に、データベース作成用転動装置の鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定して、データベース作成用転動装置の鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度を算出するとともに、データベース作成用転動装置の鋼製転動部材に白色組織破損が生じたか否かを確認して、その算出結果と確認結果とを複数の運転条件毎に分類して格納したデータベースを予め作成しておく。
次に、転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度が、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置の運転条件と全て同一である場合の算出結果と確認結果とを、データベースから取得又は推定し、取得又は推定した算出結果と確認結果とを用いて、白色組織破損が生じる臨界値となる常温非拡散性水素の量の増加速度を算出する。
そして、判定工程では、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度と、臨界値とを比較することにより、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置の運転時に鋼製転動部材に白色組織破損が発生する可能性を予測する。
本発明によれば、転動装置の運転時の水素環境度を判定することができる。また、本発明によれば、運転により転動装置に白色組織破損が発生する可能性を予測することができる。
鋼への水素チャージ量と転動疲労水素量の増加速度との関係を示すグラフである。 転動疲労寿命試験における面圧と転動疲労水素量の増加速度との関係を示すグラフである。 白色組織破損可能性予測方法を説明するグラフである。
まず、本明細書において用いられる文言の定義について、まとめて説明する。
「白色組織剥離」とは、前述したように、白色組織への組織変化を伴って転動装置の鋼製転動部材に生じる剥離を意味する。
「白色組織破損」とは、前述したように、白色組織に起因して転動装置の鋼製転動部材に生じる破損を意味し、白色組織剥離を包含する。
「水素環境」とは、転動装置が運転時に置かれる各種環境(例えば、鋼製転動部材に作用する応力の大きさ(面圧)、鋼製転動部材に作用する応力の繰り返し数、転動装置の雰囲気、温度)のうち水素に関する環境を意味する。例えば、転動装置が運転時に置かれる雰囲気や転動装置に使用される潤滑油等の潤滑剤が、「水素環境」に包含される。潤滑油等の潤滑剤は、転動装置の運転時に分解して水素を発生させるため、「水素環境」に包含される。
「水素環境度」とは、転動装置の運転時の水素環境の厳しさの度合いを意味し、鋼製転動部材が周辺の水素から受ける影響の大きさを表す指標である。例えば、転動装置が運転時に置かれる雰囲気中の水素ガスの濃度や、転動装置に使用される潤滑剤の分解による水素の発生しやすさが、「水素環境度」に包含される。
「白色組織破損可能性」とは、転動装置の運転時に鋼製転動部材に白色組織破損が発生する可能性の大きさを意味する。白色組織破損可能性は、水素環境度(例えば、転動装置の雰囲気の水素ガス濃度、転動装置に使用される潤滑剤の種類)、鋼製転動部材に作用する応力の大きさ(面圧)、鋼製転動部材に作用する応力の繰り返し数、鋼製転動部材を形成する鋼の種類、鋼製転動部材の表面粗さ、温度等によって決まる。
「常温拡散性水素」とは、鋼中に比較的弱くトラップされており、鋼製転動部材中を比較的自由に移動し得る水素を意味する。この常温拡散性水素は、常温において時間と共に鋼製転動部材から外部に放出され得る。
「常温非拡散性水素」とは、鋼中に比較的強くトラップされており、鋼製転動部材中を自由に移動することができない水素を意味する。この常温非拡散性水素は、常温においては鋼製転動部材から外部に放出されない。
「常温」とは、JIS Z8703に規定された温度であり、具体的には5℃以上35℃以下の範囲内の温度である。
「転動装置」とは、相互に転がり接触する2つの転動部材を備える装置を意味し、例えば、転がり軸受、ボールねじ、直動案内装置(リニアガイド装置)、直動ベアリング等が包含される。
「転動部材」とは、転動装置を構成する部品であり、相互に転がり接触する部材を意味する。具体的には、転動装置が転がり軸受である場合は内輪、外輪、転動体、同じくボールねじである場合はねじ軸、ナット、転動体、同じく直動案内装置である場合は案内レール、スライダ、転動体、同じく直動ベアリングである場合は軸、外筒、転動体をそれぞれ意味する。
次に、本発明の一実施形態について説明する。本発明者らが鋭意検討した結果、鋼と水素に関して新たな知見が見出されたので、以下に詳細に説明する。
鋼の強度低下を引き起こす水素脆化の研究においては、一般的に、常温で鋼中を移動可能な常温拡散性水素が水素脆化に対して有害であり、常温で鋼中を移動しない常温非拡散性水素は水素脆化に対して無害であるとされている。よって、転動装置の水素環境度を定量化するためには、本来は、鋼製転動部材に白色組織剥離等の白色組織破損を引き起こす常温拡散性水素の量を測定することが望ましい。
しかしながら、運転中の転動装置の鋼製転動部材の温度は通常は常温よりも高いため、運転後の転動装置の鋼製転動部材から外部へ常温拡散性水素がすぐに放出してしまい、常温拡散性水素の量を正確に測定することは困難であった。
一方、転動疲労により白色組織剥離等の白色組織破損が生じた転動装置の鋼製転動部材においては、常温非拡散性水素の量が増加していることが知られている。また、未使用の転動装置の鋼製転動部材であっても、熱処理時等に侵入した常温非拡散性水素が存在することも知られている。
そこで、本発明者らは、水素環境度と相関性を有するが測定困難である常温拡散性水素に代えて、測定可能である常温非拡散性水素を用いて、転動装置が使用される水素環境度を定量化する方法を検討した。その結果、転動装置の鋼製転動部材に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度が水素環境度と相関性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。本発明者らの検討内容について、以下に詳細に説明する。
まず、白色組織剥離が発生する過程の一例を説明する。転動装置の運転中にトライボケミカル反応が起こると、潤滑油等の潤滑剤が分解して水素が発生する。発生した水素は、鋼製転動部材の軌道面から水素原子の状態で鋼中に侵入する。侵入した水素は、常温拡散性水素として鋼中を拡散していき、剪断応力が高い領域において水素脆化により金属疲労が加速して組織変化が起こり、その結果白色組織が形成され、亀裂、欠け、割れを伴い剥離に至ると推測される。
転動装置の運転を停止すると、鋼製転動部材の軌道面からの水素の侵入が停止するため、鋼製転動部材から外部への水素の放出のみとなり、比較的短時間で全ての常温拡散性水素が鋼製転動部材から放出されることとなる。そのため、運転後の転動装置の鋼製転動部材中に含有される水素の量を単純に測定しただけでは、運転中の転動装置の鋼製転動部材中に存在していた常温拡散性水素の量を定量することは困難であった。
しかし、転動疲労においては、上記の転動疲労過程中に疲労によって新しいトラップサイトが生成される。この転動疲労過程中に新たに生成したトラップサイトはトラップエネルギーが強いため、常温拡散性水素が接近すると、その一部は常温非拡散性水素となって運転後も放出されずに鋼製転動部材中に残る。この運転前後で増加した常温非拡散性水素を、以下「転動疲労水素」と記すこともある。
この転動疲労水素は常温非拡散性水素であるので、水素脆化の直接的な原因ではないと考えられる。しかしながら、本発明者らは、上述した白色組織形成の原因と推測される常温拡散性水素の量と転動疲労水素の量には何らかの関係性があると考えて、下記のような調査を実施した。
呼び番号6206の深溝玉軸受を用いて、転動寿命試験を行った。内輪及び外輪はSUJ2製であり、玉は浸炭窒化処理を施したSUJ2製である。試験条件は、動等価荷重P/基本動定格荷重Cが0.46、回転速度が3000min-1、温度が110℃である。潤滑油の種類を種々変更して転動寿命試験を行ったところ、下記の知見が得られた。
・転動疲労水素の量は、転動寿命試験の試験時間の増加とともに増加した。
・潤滑油の種類によって、転動疲労水素の量の増加速度や白色組織剥離が生じるまでの試験時間が異なる。
・転動疲労水素の量の増加速度が速いほど、白色組織剥離が生じるまでの試験時間(白色組織剥離寿命)が短い。
・転動疲労水素の量の増加速度が遅い場合でも、長時間試験を行うと転動疲労水素の量は多くなるが、白色組織剥離が生じない場合がある。
これらの知見から、転動疲労水素の絶対量と白色組織剥離寿命との間には相関性はないことが分かる。そのため、単純に鋼中の転動疲労水素(常温非拡散性水素)の量を測定しただけでは、運転中の水素環境の厳しさを定量化することはできなかった 。これは、転動疲労水素は常温非拡散性水素であるので、水素脆化に影響しない水素であるからだと推測される。
ただし、転動疲労水素の絶対量ではなく、転動疲労水素の増加速度と白色組織剥離寿命との間には相関性があることが分かった。鋼中に侵入して来た常温拡散性水素の量が多い状態では、転動疲労中に新たに生成したトラップサイトに常温拡散性水素がトラップされやすいので、転動疲労水素の増加速度が速くなると推測される。つまり、転動疲労水素の量の増加速度を、転動装置の運転中の常温拡散性水素の量の代替指標として用いることができる。
転動疲労水素の増加に影響を与える因子としては、主に下記の3つが考えられる。
(1)転動装置の運転時間、すなわち、転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に応力が作用した回数(応力の繰り返し数)
(2)転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ(面圧)
(3)転動装置の運転中の常温拡散性水素の量
さらに、その他の因子、例えば温度等も転動疲労水素の増加に影響を与えると考えられる。
上記(1)について検証した試験の結果を、図1のグラフに示す。この試験は、鋼製の円板状テストピースに水素チャージを行って人為的に水素を侵入させた後に、転動寿命試験を行うというものである。水素チャージは、円板状テストピースを50℃のチオシアン酸アンモニウム水溶液に24時間浸漬することにより行った。チオシアン酸アンモニウム水溶液の濃度を変化させることにより、水素チャージ量をグラフに示すような値(0〜1.8ppm)に調整した。
転動寿命試験の内容、条件は以下の通りである。呼び番号51305のスラスト玉軸受の軌道輪を回転輪、上記の円板状テストピースを固定輪とし、これら両輪の間に6個の転動体(直径3/8インチの鋼球)と鋼製の保持器とを配して、スラスト玉軸受を製造した。そして、アキシアル荷重を負荷しつつ潤滑油中でスラスト玉軸受を回転させて、スラスト型転動寿命試験を行った。使用した潤滑油は、ISO粘度グレードがISO VG68である潤滑油である。試験終了後に、円板状テストピース中に含有されている常温非拡散性水素の量を測定した。
円板状テストピースへの水素チャージ量は、転動装置の運転中の常温拡散性水素の量に相当する。また、図1のグラフの縦軸の転動疲労水素量は、試験前後で増加した常温非拡散性水素の量である。
図1のグラフに描かれた転動疲労水素量の曲線から、応力の繰り返し数が増加するに従って、円板状テストピース中に含有される転動疲労水素量が増加することが分かる。
また、図1のグラフから、水素チャージ量、すなわち転動寿命試験の初期の常温拡散性水素の量が多いほど、転動疲労水素量の増加速度(転動疲労水素量の曲線の傾き)が大きいことが分かる。転動寿命試験の初期の常温拡散性水素の量は、この試験における水素環境の厳しさの度合い(水素環境度)を示しているので、図1のグラフは、水素環境が厳しいほど転動疲労水素量の増加速度が大きくなることを表している。
次に、上記(2)について検証した試験の結果を、図2のグラフに示す。この試験は、上記(1)について検証した試験とほぼ同様の試験であるが、円板状テストピースへの水素チャージ量は0.7ppmに統一し、面圧を図2のグラフに示すような値(3.0〜4.9GPa)としたものである。
図2のグラフから、面圧が高いほど、転動疲労水素量の増加速度(転動疲労水素量の曲線の傾き)が大きいことが分かる。これは、面圧が高いほど円板状テストピースの内部の応力体積(剪断応力による疲労を受ける領域)が大きくなるため、白色組織への組織変化が発生する領域の体積が増加して、転動疲労水素の量の増加速度が上昇したためと推測される。
また、面圧が高いほど円板状テストピースの内部の剪断応力が高くなるため、疲労が加速して、白色組織への組織変化が短時間で発生すると推測される。
これらの結果から、転動疲労水素の量(試験前後での常温非拡散性水素の増加量)は、水素環境の厳しさの度合い、応力の繰り返し数、及び面圧の関数で表すことができることが見出された。換言すれば、水素環境の厳しさの度合い(水素環境度)は、転動疲労水素の量、応力の繰り返し数、及び面圧の関数で表すことができる。
以上の検討結果から、本発明者らは、相互に転がり接触する2つの転動部材を備え、2つの転動部材の少なくとも一方が鋼製転動部材である転動装置の運転条件のうち、水素から受ける影響の大きさを表す指標である水素環境度を判定する方法を見出した。すなわち、本実施形態の水素環境度判定方法は、上記運転条件で運転された転動装置の鋼製転動部材のうち、転がり接触により転動疲労した部位である転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定する測定工程と、測定工程での測定結果に基づいて水素環境度を判定する判定工程と、を有する。
判定工程では、測定工程で測定された常温非拡散性水素の量から、転動装置の運転時における、鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度を算出し、その算出結果に基づいて水素環境度を判定することができる。
前述したように、常温拡散性水素は常温で拡散してしまい正確な含有量を測定することが難しいが、その代替として「常温非拡散性水素の量の増加速度」を指標とすることによって、水素環境度(例えば雰囲気中の水素ガス濃度、潤滑油等の潤滑剤の分解による水素の発生しやすさ)を判定することができる。
転動装置の運転前後に、鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定し、転動装置の運転において増加した常温非拡散性水素の量を取得し、常温非拡散性水素の増加速度を算出する。この常温非拡散性水素の増加速度によって、転動装置の運転時の水素環境度を判定することができる。また、通常は評価が難しい実機の転動装置の運転時の水素環境度であっても、判定することができる。さらに、鋼製転動部材に白色組織や白色組織破損が発生していない段階であっても、水素環境度を判定することができる。
水素環境度の判定は、定量的に行うこともできるし、定性的に行うこともできる。水素環境度の定量的な判定としては、例えば、水素環境度を表す指数の算出が挙げられる。また、水素環境度の定性的な判定としては、例えば、水素環境の厳しさの度合いを「良否で判定」、「A、B、C、Dなどの複数レベルで判定」、「所定の基準値との比較で判定」等が挙げられる。この比較対照となる基準値としては、例えば、他のサンプルの水素環境度や、白色組織破損が生じるか否かの臨界値となる水素環境度が挙げられる。
常温非拡散性水素の量を測定する場合には、運転後の転動装置の鋼製転動部材のうち、転がり接触により転動疲労した部位である転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定する(これを「運転後の測定値」と称する)。具体例としては、鋼製転動部材のうち転がり接触する部分(例えば転動装置が転がり軸受の場合であれば、軌道輪の負荷圏の軌道面)の直下部を切り出して、常温非拡散性水素の含有量を測定する。
また、運転前の転動装置の鋼製転動部材のうち運転時に転動疲労部位となる部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定するか、又は、運転後の転動装置の鋼製転動部材のうち転動疲労していない部分(例えば、転動装置が転がり軸受の場合であれば、軌道輪の非負荷圏の軌道面)の直下部を切り出して、常温非拡散性水素の含有量を測定する(これを「運転前の測定値」と称する)。そして、運転後の測定値から運転前の測定値を差し引くことにより、運転前から鋼製転動部材に含有されていた常温非拡散性水素(例えば熱処理水素)の量を差し引いて、運転時における常温非拡散性水素の増加量を算出する。さらに、算出した常温非拡散性水素の増加量を応力の繰り返し数又は運転時間で除することにより、運転時における常温非拡散性水素の量の増加速度を算出する。そして、この算出された常温非拡散性水素の量の増加速度に基づいて、水素環境度を判定することができる。
昇温脱離分析装置等を用いれば、鋼製転動部材を昇温しながら加熱することができるので、鋼製転動部材中の常温拡散性水素と常温非拡散性水素を別々に放出させてそれぞれの量を測定することができる。常温非拡散性水素には、いくつかのピークが存在する場合があるので、ピーク分離を行い影響度の高いピークを選別するなどして、測定の精度を上げてもよい。
また、この測定工程では、運転後の測定値及び運転前の測定値のいずれの測定においても、100℃以下の温度に保持することによって鋼製転動部材から常温拡散性水素を放出させた後に、常温非拡散性水素の量を測定してもよい。そうすれば、常温拡散性水素が鋼製転動部材から確実に放出された状態となるので、常温非拡散性水素の量をより正確に測定することができる。また、前述した100℃以下の温度での鋼製転動部材の保持を行えば、昇温脱離分析装置を用いることなく容易に常温非拡散性水素のみを測定することができる。
鋼製転動部材を保持する温度は100℃以下であれば特に限定されるものではないが、常温非拡散性水素の放出を抑制して常温非拡散性水素の量をより正確に測定するためには、80℃以下であることがより好ましい。また、鋼製転動部材を保持する温度は常温よりも高温であれば特に限定されるものではないが、常温拡散性水素を確実に放出させて常温非拡散性水素の量をより正確に測定するためには、35℃以上であることがより好ましい。
さらに、この測定工程では、測定サンプルである鋼製転動部材に対して人為的に水素チャージを行った後に、上記の測定を行って、その測定値を上記「運転後の測定値」としてもよい。測定工程における常温非拡散性水素の量の測定を行う前に、測定サンプルである鋼製転動部材の温度が何らかの理由で上昇し、常温非拡散性水素の一部又は全部が放出してしまった場合であっても、測定前に水素チャージを行えば、転動疲労中に生成したトラップサイトに水素を再度トラップさせることができる。これにより、常温非拡散性水素の量をより正確に測定することができる。
このように、算出された常温非拡散性水素の量の増加速度に基づいて、水素環境度を判定することができる。そして、転動装置の運転条件(応力の大きさ、応力の繰り返し数、温度等)、転動装置の種類、及び転動装置の鋼製転動部材を形成する鋼の種類が全て同一である場合には、常温非拡散性水素の量の増加速度の数値を直接的に比較することによって、転動装置の運転時の水素環境度を判定することができる。すなわち、常温非拡散性水素の量の増加速度の数値を、水素環境度を表す指数とすることができる。
例えば、複数の転動装置の運転時の水素環境度を比較する場合には、これら複数の転動装置の運転条件、転動装置の種類、及び鋼製転動部材を形成する鋼の種類が全て同一であれば、算出された常温非拡散性水素の量の増加速度の数値を直接的に比較することによって、複数の転動装置の運転時の水素環境度の序列を決定したり、水素環境度の程度の違いを算出したりすることができる。
また、種々の運転条件(水素環境、応力の大きさ、応力の繰り返し数、温度等)で運転した転動装置における常温非拡散性水素の量の増加速度を格納したデータベースを保有していれば、水素環境度を判定すべき転動装置における常温非拡散性水素の量の増加速度とデータベースに格納された常温非拡散性水素の量の増加速度とを比較することにより、水素環境度を判定すべき転動装置の水素環境度を簡単に判定することができる。
このデータベースを用いた水素環境度判定方法について、以下に詳細に説明する。まず、水素環境度を判定すべき転動装置と同種(タイプ、形状、寸法、材質(鋼製転動部材を形成する鋼の種類)等が全て同一)の転動装置を、データベース作成用転動装置として用意する。そして、転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度及び運転時のデータベース作成用転動装置の水素環境のうち少なくとも一つが異なる複数の運転条件それぞれにおいてデータベース作成用転動装置を運転する。
データベース作成用転動装置の運転が終了したら、データベース作成用転動装置の鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定して、データベース作成用転動装置の鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度を算出する。そして、その算出結果を複数の運転条件毎に分類して格納したデータベースを作成する。
このデータベースには、可能な限り多くの算出結果が格納されていることが好ましいので、一種の転動装置について多くの運転条件で運転して多くの算出結果を得ることは勿論のこと、できるだけ多種の転動装置について算出結果を得て、データベースを作成することが好ましい。すなわち、タイプ、形状、寸法、材質(鋼製転動部材を形成する鋼の種類)のうち少なくとも一つが異なる多種の転動装置について多くの運転条件で運転を行って、多くの算出結果を得て、その算出結果をこれらの条件毎に分類して格納したデータベースを作成することが好ましい。
次に、水素環境度を判定すべき転動装置について、運転後に、鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定し、常温非拡散性水素の量の増加速度を算出する。また、水素環境度を判定すべき転動装置の運転条件を確認する。すなわち、転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度を確認する。
そして、予め作成しておいたデータベースを検索して、転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度が、水素環境度を判定すべき転動装置の運転条件と全て同一である場合のデータ(以下「運転条件が全て同一である場合のデータ」と記す)を抽出する。すなわち、鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果を取得する。
データベースを検索した結果、「運転条件が全て同一である場合のデータ」が存在しなかった場合には、データベースから任意の複数のデータを抽出して、それら抽出したデータから線形補間等の手法によって、上記「運転条件が全て同一である場合のデータ」を推定する。
データベースから抽出する複数のデータは、例えば、転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度が、水素環境度を判定すべき転動装置の運転条件と一部が同一で他部が異なる場合のデータや、水素環境度を判定すべき転動装置の運転条件に全て近い場合のデータとすることができる。以下、データベースから取得又は推定した常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果を、「データベース値」と記すこともある。
データベースには、水素環境が種々異なる複数の算出結果が格納されているので、それら複数の算出結果を取得する。そして、データベースから取得したこれら複数の算出結果と、水素環境度を判定すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果とを対比する。
対比した結果、複数のデータベース値の中に、水素環境度を判定すべき転動装置についての算出結果と数値が一致するものが存在した場合には、データベースを検索して、その一致したデータベース値が算出されたデータベース作成用転動装置の水素環境を確認する。例えば、一致したデータベース値が算出されたデータベース作成用転動装置の雰囲気中の水素ガス濃度やデータベース作成用転動装置に使用された潤滑剤の種類を確認する。
そして、一致したデータベース値が算出されたデータベース作成用転動装置の水素環境に基づいて、水素環境度を判定すべき転動装置の水素環境度を判定する。例えば、水素環境度を判定すべき転動装置の水素環境度は、一致したデータベース値が算出されたデータベース作成用転動装置の水素環境度と同一であると判断できるので、転動装置の雰囲気中の水素ガス濃度や転動装置に使用された潤滑剤の種類も、同一であると判断できる。よって、一致したデータベース値が算出されたデータベース作成用転動装置の雰囲気中の水素ガス濃度や使用された潤滑剤の種類を、水素環境度を判定すべき転動装置の水素環境度と判定することができる。
なお、複数のデータベース値の中に、水素環境度を判定すべき転動装置についての算出結果と数値が一致するものが存在しなかった場合には、上記の複数のデータベース値を用いて線形補間を行う等の方法により、水素環境度を判定すべき転動装置の水素環境度を判定することができる。
以上説明したように、本実施形態の水素環境度判定方法を用いれば、例えば、実機で使用された転動装置の運転時の水素環境度が不明であったとしても、上記データベースを用いて容易に水素環境度を判定することができる。また、本実施形態の水素環境度判定方法は、潤滑剤の分解による水素の発生しやすさの程度を評価することに利用することもできる。
このように、転動装置の運転条件(応力の大きさ、応力の繰り返し数、温度等)、転動装置の種類、及び転動装置の鋼製転動部材を形成する鋼の種類が全て同一である場合には、常温非拡散性水素の量の増加速度の数値を直接的に比較することによって、転動装置の運転時の水素環境度を判定することができる。
ただし、転動装置の運転条件、転動装置の種類、及び転動装置の鋼製転動部材を形成する鋼の種類のうち1つでも異なる場合は、常温非拡散性水素の量の増加速度を直接的に比較することはできない。よって、転動装置の運転条件のうち少なくとも1つが異なる場合は、下記の数式を用いて水素環境度を算出するとよい。
下記の数式を用いて算出した水素環境度は、転動装置の種類及び転動装置の鋼製転動部材を形成する鋼の種類が同一であるならば、転動装置の運転条件が異なる場合であっても、算出した水素環境度の数値を直接的に比較することができる。すなわち、下記の数式は、常温非拡散性水素の量の増加速度を、応力の大きさと応力の繰り返し数の条件によって補正して定量化する式である。
数式について以下に説明する。前述したように、水素環境度は、転動疲労水素の量、応力の繰り返し数、及び面圧の関数で表すことができるので、例えば、下記の数式で表すことができる。
[水素環境度]=A×[応力の大きさ(面圧)]α+B×[応力の繰り返し数]β+C×[転動疲労水素量(常温非拡散性水素の増加量)]γ
[転動疲労水素量(常温非拡散性水素の増加量)]=(D×[水素環境度]+E×[応力の大きさ(面圧など)])×[応力の繰り返し数]+F
[転動疲労水素量(常温非拡散性水素の増加量)]=G×[応力の繰り返し数]^(H×[水素環境度]+I×[応力の大きさ(面圧など)])
多数のデータを蓄積し、それらのデータから回帰式を作成することにより、上記数式中の係数A〜I、α、β、γを得れば、上記数式を完成させることができる。そうすれば、常温非拡散性水素の増加量の測定値と、転動装置の運転条件である応力の大きさ及び繰り返し数とを上記数式に代入することにより、水素環境度を表す指数を算出することができる。そして、この指数によって転動装置の運転時の水素環境度を評価することができるし、転動装置の運転条件が異なる場合であっても、複数の転動装置について指数を直接的に比較することにより、各転動装置の運転時の水素環境度を比較することができる。
次に、転動装置の運転時に鋼製転動部材に白色組織破損が発生する可能性を予測する白色組織破損可能性予測方法について説明する。本実施形態の水素環境度判定方法を利用すれば、転動装置の白色組織破損可能性を容易に且つ定量的に予測することができる。
まず、水素環境度を判定するために用いる上記データベースと同様のデータベースを作成する。ただし、水素環境度を判定するために用いる上記データベースは、鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果を、複数の運転条件毎に分類して格納したものであったが、白色組織破損可能性を予測するために用いるデータベースは、鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果と、鋼製転動部材に白色組織破損が生じたか否かを確認した確認結果とを、複数の運転条件毎に分類して格納したものである。
すなわち、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置と同種(タイプ、形状、寸法、材質(鋼製転動部材を形成する鋼の種類)等が全て同一)の転動装置を、データベース作成用転動装置として用意する。そして、転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度及び運転時のデータベース作成用転動装置の水素環境のうち少なくとも一つが異なる複数の運転条件それぞれにおいてデータベース作成用転動装置を運転する。
データベース作成用転動装置の運転が終了したら、データベース作成用転動装置の鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定して、データベース作成用転動装置の鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度を算出する。また、データベース作成用転動装置の鋼製転動部材に白色組織破損が生じたか否かを確認する。そして、その算出結果と確認結果とを複数の運転条件毎に分類して格納したデータベースを作成する。
このデータベースには、可能な限り多くの算出結果が格納されていることが好ましいので、一種の転動装置について多くの運転条件で運転して多くの算出結果及び確認結果を得ることは勿論のこと、できるだけ多種の転動装置について算出結果及び確認結果を得て、データベースを作成することが好ましい。すなわち、タイプ、形状、寸法、材質(鋼製転動部材を形成する鋼の種類)のうち少なくとも一つが異なる多種の転動装置について多くの運転条件で運転を行って、多くの算出結果及び確認結果を得て、その算出結果及び確認結果をこれらの条件毎に分類して格納したデータベースを作成することが好ましい。
次に、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置について、運転後に、鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定し、常温非拡散性水素の量の増加速度を算出する。白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置の鋼製転動部材に白色組織破損が生じたか否かは、確認してもよいし確認しなくてもよい。また、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置の運転条件を確認する。すなわち、転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度を確認する。
そして、予め作成しておいたデータベースを検索して、転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度が、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置の運転条件と全て同一である場合のデータ(以下「運転条件が全て同一である場合のデータ」と記す)を抽出する。すなわち、鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果、及び、鋼製転動部材に白色組織破損が生じたか否かの確認結果を取得する。
データベースを検索した結果、「運転条件が全て同一である場合のデータ」が存在しなかった場合には、前述した水素環境度判定方法の場合と同様に、データベースから任意の複数のデータを抽出して、それら抽出したデータから線形補間等の手法によって、上記「運転条件が全て同一である場合のデータ」を推定する。
データベースには、水素環境が種々異なる複数の算出結果及び確認結果が格納されているので、それら複数の算出結果及び確認結果を取得する。
データベースから算出結果及び確認結果を取得したら、取得した算出結果及び確認結果を用いて、白色組織破損が生じる臨界値となる常温非拡散性水素の量の増加速度を算出する。そして、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果と、上記の臨界値とを比較する。その比較結果によって、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置の運転時に鋼製転動部材に白色組織破損が発生する可能性を予測することができる。
例えば、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果が、臨界値よりも大きい場合は、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置は、白色組織破損が発生する可能性が高いと予測することができる。
一方、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果が、臨界値よりも小さい場合は、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置は、白色組織破損が発生する可能性が低いと予測することができる。
また、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果が、臨界値よりも大きく且つその差が大きいほど、白色組織破損が発生する可能性がより高いと予測することができるし、臨界値よりも小さく且つその差が大きいほど、白色組織破損が発生する可能性がより低いと予測することができる。
さらに、データベースから取得した複数のデータベース値の中に、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果と数値が一致するものが存在した場合には、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置の白色組織破損可能性は、その一致したデータベース値が算出されたデータベース作成用転動装置と同等であると予測することができる。よって、その一致したデータベース値が算出されたデータベース作成用転動装置の寿命に基づいて、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置の白色組織破損による寿命も予測することができる。
臨界値の算出方法の一例を、図3を用いて説明する。図3の例では、データベース作成用転動装置に使用する潤滑油の種類を種々変更することによって、異なる水素環境を設定している。
まず、図3のグラフを作成するために行った転動寿命試験(データベース作成用転動装置の運転に相当する)について説明する。内輪及び外輪がSUJ2製であり、玉が浸炭窒化処理を施したSUJ2製である呼び番号6206の深溝玉軸受(データベース作成用転動装置に相当する)に、6種類の潤滑油A〜Fをそれぞれ使用して転動寿命試験を行った。試験条件は、動等価荷重P/基本動定格荷重Cが0.46、回転速度が3000min-1、温度が110℃である。
転動寿命試験を所定の時間行ったら、軌道輪(内輪又は外輪)の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定して、転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度を算出するとともに、軌道輪の転動疲労部位に白色組織破損が生じたか否かを確認した。そして、その算出結果及び確認結果を用いて、図3のグラフを作成した(データベースの作成に相当する)。
なお、転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000Sを用いて軌道輪を真空中で加熱して常温非拡散性水素を脱離させ、脱離した水素を四重極質量分析計で検出することにより測定した。転動寿命試験後の軌道輪の常温非拡散性水素の量と、未使用の軌道輪の常温非拡散性水素の量とを測定して、運転時における常温非拡散性水素の増加量を算出した。また、白色組織破損が生じたか否かは、軌道輪の軌道面の直下部の断面組織観察を行うことによって判断した。
図3に示すグラフは、試験時間を横軸とし常温非拡散性水素の増加量を縦軸とするグラフに、各試験時間における常温非拡散性水素の増加量をプロットした上、水素環境が同一条件のプロットについては最小二乗法等によって回帰直線を算出して描画したものである。この回帰直線が、常温非拡散性水素の量の増加速度に相当する。常温非拡散性水素の増加量は、データベースに格納されている常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果と試験時間(応力の繰り返し数)とから、白色組織破損が発生する可能性を予測する都度算出してもよいし、予めデータベースに格納しておいてもよい。
この算出結果をプロットしたグラフに、白色組織破損が生じたか否かの確認結果(データベースから取得した確認結果に相当する)を当てはめると、白色組織剥離が発生した深溝玉軸受(データベース作成用転動装置)のプロットを有する回帰直線が配された領域と、白色組織剥離が発生しなかった深溝玉軸受(データベース作成用転動装置)のプロットのみを有する回帰直線が配された領域とに二分できる。そして、図3に示すように、2つの領域の境界に直線を引くことができる(白色組織破損が生じる臨界値の算出に相当する)。この直線の傾きによって表される常温非拡散性水素の量の増加速度が、白色組織破損が生じるか否かの臨界値となる。
次に、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果と、上記の臨界値とを比較する。その比較結果によって、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置の運転時に鋼製転動部材に白色組織破損が発生する可能性を予測することができる。
例えば、図3のグラフにおいて、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果が、臨界値よりも上方の領域、すなわち、白色組織剥離が発生した深溝玉軸受のプロットを有する回帰直線が配された領域の上に位置する場合は、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置は、白色組織破損が発生する可能性が高いと予測することができる。
一方、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果が、臨界値よりも下方の領域、すなわち、白色組織剥離が発生しなかった深溝玉軸受のプロットのみを有する回帰直線が配された領域の上に位置する場合は、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置は、白色組織破損が発生する可能性が低いと予測することができる。
また、白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果が、臨界値から上方に離れるほど、白色組織破損が発生する可能性がより高いと予測することができるし、臨界値から下方に離れるほど、白色組織破損が発生する可能性がより低いと予測することができる。
以上説明したように、本実施形態の白色組織破損可能性予測方法を用いれば、例えば、実機で使用された転動装置の運転時の水素環境度が不明であったとしても、上記データベースを用いて容易に且つ定量的に白色組織破損可能性を予測することができる。また、本実施形態の白色組織破損可能性予測方法は、潤滑剤の分解による水素の発生しやすさの程度を評価することに利用することもできる。
このように、転動装置の運転条件(応力の大きさ、応力の繰り返し数、温度等)、転動装置の種類、及び転動装置の鋼製転動部材を形成する鋼の種類が全て同一である場合には、常温非拡散性水素の量の増加速度の数値を直接的に比較することによって、転動装置の運転時の白色組織破損可能性を予測することができる。
なお、以上説明した実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。さらに、本発明は、転動装置に関する水素環境度判定方法及び白色組織破損可能性予測方法であるが、転動装置に限らず、相互に転がり接触する2つの転動部材に対して適用可能である。

Claims (5)

  1. 相互に転がり接触する2つの転動部材を備え、前記2つの転動部材の少なくとも一方が鋼製転動部材である転動装置の運転条件のうち、水素から受ける影響の大きさを表す指標である水素環境度を判定する方法であって、
    前記運転条件で運転された前記転動装置の前記鋼製転動部材のうち、前記転がり接触により転動疲労した部位である転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定する測定工程と、
    前記測定工程での測定結果に基づいて前記水素環境度を判定する判定工程と、
    を有する水素環境度判定方法。
  2. 前記判定工程では、前記測定工程で測定された前記常温非拡散性水素の量から、前記転動装置の運転時における、前記鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度を算出し、その算出結果に基づいて前記水素環境度を判定する請求項1に記載の水素環境度判定方法。
  3. 水素環境度を判定すべき転動装置と同種の転動装置をデータベース作成用転動装置として用意して、転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度及び運転時の前記データベース作成用転動装置の水素環境のうち少なくとも一つが異なる複数の運転条件それぞれにおいて前記データベース作成用転動装置を運転した後に、前記データベース作成用転動装置の鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定して、前記データベース作成用転動装置の鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度を算出して、その算出結果を前記複数の運転条件毎に分類して格納したデータベースを予め作成しておき、
    転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度が、前記水素環境度を判定すべき転動装置の運転条件と全て同一である場合の前記算出結果を、前記データベースから取得又は推定し、
    前記判定工程では、前記水素環境度を判定すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度の算出結果を、前記データベースから取得又は推定した前記算出結果と対比して、
    算出結果が、前記水素環境度を判定すべき転動装置についての算出結果と一致したデータベース作成用転動装置の水素環境に基づいて、前記水素環境度を判定すべき転動装置の水素環境度を判定する請求項2に記載の水素環境度判定方法。
  4. 前記測定工程では、100℃以下の温度に保持することにより前記鋼製転動部材から常温拡散性水素を放出させた後に、前記転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定する請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素環境度判定方法。
  5. 請求項2に記載の水素環境度判定方法を利用して、転動装置の運転時に前記鋼製転動部材に白色組織破損が発生する可能性を予測する白色組織破損可能性予測方法であって、
    白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置と同種の転動装置をデータベース作成用転動装置として用意して、転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度及び運転時の前記データベース作成用転動装置の水素環境のうち少なくとも一つが異なる複数の運転条件それぞれにおいて前記データベース作成用転動装置を運転した後に、前記データベース作成用転動装置の鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量を測定して、前記データベース作成用転動装置の鋼製転動部材の転動疲労部位に含有される常温非拡散性水素の量の増加速度を算出するとともに、前記データベース作成用転動装置の鋼製転動部材に白色組織破損が生じたか否かを確認して、その算出結果と確認結果とを前記複数の運転条件毎に分類して格納したデータベースを予め作成しておき、
    転がり接触により鋼製転動部材の転動疲労部位に作用する応力の大きさ及び繰り返し数、並びに、運転時の温度が、前記白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置の運転条件と全て同一である場合の前記算出結果と前記確認結果とを、前記データベースから取得又は推定し、取得又は推定した前記算出結果と前記確認結果とを用いて、前記白色組織破損が生じる臨界値となる常温非拡散性水素の量の増加速度を算出し、
    前記判定工程では、前記白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置について算出した常温非拡散性水素の量の増加速度と、前記臨界値とを比較することにより、前記白色組織破損が発生する可能性を予測すべき転動装置の運転時に前記鋼製転動部材に白色組織破損が発生する可能性を予測する白色組織破損可能性予測方法。
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