図1は、画像処理システムの構成例を示した図である。画像処理システムは、画像処理装置10と、後述する事例情報を記憶するサーバ装置11とを含んで構成される。画像処理システムは、この事例情報をサーバ装置11に記憶するのではなく、画像処理装置10が備える記憶装置に記憶すれば、画像処理装置10のみで構成されていてもよい。また、事例情報は、画像処理装置10やサーバ装置11以外の機器に記憶させることもでき、この場合、画像処理システムは、画像処理装置10とその機器とを含んで構成される。
図1に示す例では、画像処理装置10およびサーバ装置11のほか、原稿等を読み取り、画像処理装置10へ画像データとして画像を入力する画像読取装置12と、被写体を撮像し、画像処理装置10へ画像データとして画像を入力する撮像装置13とを含んでいる。サーバ装置11は、上記の事例情報のほか、画像としての画像データを記憶し、画像処理装置10からの要求により画像データを読み出し、送信することができる。
図1に示す画像処理システムは、画像処理装置10と撮像装置13とがケーブル14により直接接続され、画像処理装置10と画像読取装置12とサーバ装置11とがネットワーク15を介して互いに接続されている。
画像処理システムは、画像処理装置10、サーバ装置11、画像読取装置12、撮像装置13を2台以上含んで構成されていてもよく、他の機器をさらに含んで構成されていてもよい。図1では、ケーブル14を使用して接続しているが、無線通信により接続することもできる。また、画像処理装置10と画像読取装置12およびサーバ装置11は、ネットワーク15でなくても、直接ケーブルにより接続されていてもよい。
また、ネットワーク15には、ケーブルにより接続することもできるし、無線により接続することも可能である。無線により接続する場合、アクセスポイントと呼ばれる基地局を介してネットワーク15に接続することができる。ネットワーク15は、WAN(Wide Area Network)やインターネット等を利用することができる。
画像処理装置10としては、画像の修整を行うことができるPCやタブレット端末等を使用することができる。画像処理装置10のハードウェア構成、機能、その処理内容については後述する。
サーバ装置11としては、PCやワークステーション等を使用することができる。サーバ装置11のハードウェア構成は画像処理装置10のハードウェア構成と同様のものとすることができる。このため、ここでは説明を省略する。画像処理装置10は、サーバ装置11にアクセスし、サーバ装置11に対して事例情報や画像データを要求し、サーバ装置11から要求した事例情報や画像データを取得することができる。
画像読取装置12としては、スキャナ装置やMFP(Multi Function Peripheral)等を使用することができる。画像読取装置12は、原稿を所定の位置にセットするための原稿台、その原稿に光を照射する光源、原稿からの光を所定の方向へ導くミラー、光を電気信号に変換する光電変換素子、電気信号をデジタルデータへ変換するA/Dコンバータ等を含む。画像読取装置12は、変換されたデジタルデータを画像データとして画像処理装置10へ出力する。
撮像装置13としては、デジタルカメラやビデオカメラ等を使用することができる。例えば、デジタルカメラは、レンズと絞り機構とを含む光学系と、レンズを通して入射された光を受光し、電気信号として出力する受光素子と、出力された電気信号をデジタルデータへ変換する等の処理を行う画像演算回路とを含む。また、デジタルカメラは、処理されたデジタルデータを画像データとして記録するメモリ、撮像された画像を表示するための表示装置、ストロボ、操作スイッチ、ケーブルを接続するためのインタフェース等を含む。画像処理装置10は、このメモリにアクセスし、このメモリに記録された画像データを読み出し、取得することができる。
図2を参照して、画像処理装置10のハードウェア構成について説明する。画像処理装置10は、一般のPCと同様、入力I/F20、CPU21、メモリ等の記憶装置22、HDD等の補助記憶装置23、出力I/F24、記録媒体25が挿入されるドライブ26、コントローラ27を備える。入力I/F20は、例えば、撮像装置13を画像処理装置10にケーブル14により接続する際、そのケーブル14の一端を接続する。ケーブル14の他端は、撮像装置13に接続される。
CPU21は、補助記憶装置23に記憶されたプログラムを実行し、画像処理装置10を制御し、また、所定の機能を実現する。この所定の機能の実現により、画像の修整を行う。記憶装置22は、CPU21に対して作業空間を与え、また、ブートプログラムやファームウェア、設定パラメータ等を記憶する。出力I/F24は、図示しない表示装置とケーブルにより接続する際、そのケーブルの一端を接続する。ケーブルの他端は、図示しない表示装置に接続される。
記録媒体25は、例えば、上記の画像の修整を行うためのプログラムが記録される。このプログラムは、記録媒体25の読み書きを制御するドライブ26を介して補助記憶装置23へインストールされる。コントローラ27は、ネットワーク15に接続するネットワークI/Fとして機能し、ネットワーク15との通信を制御する。なお、上記プログラムは、独立したプログラムソフトウェアであってもよいし、プリンタドライバ内に実装されていてもよい。
画像処理装置10の具体的な機能やその機能により実行される処理について説明する前に、本発明の概要について説明しておく。指定された画像処理の手段やパラメータを用いて修整する標準型の欠点は、熟練を要し、試行錯誤を必要とする点である。標準型と手段指定型等の組み合わせや、目標として参照される画像に向けて修整する転写型と目標指定型等の組み合わせの欠点は、処理自由度が低い点である。これらの点は、相関関係があり、両方の欠点を解消することは、これまでの技術では出来なかった。
この両方の欠点を解消するために、本発明では、画像修整の粒度(単位)を、上記の標準型より大きくし、それらの登録、再利用が可能な仕組みを導入する。そして、その登録、再利用が可能な単位を、事例と定義する。事例は、熟練者が行った修整の実例であり、その事例からは、その修整の内容や使用したパラメータ、修整前後の画像等の事例情報を得ることができる。このような事例を適用すれば、熟練を要することなく、また、試行錯誤を要することなく、所望の画像に修整できる。また、多くの事例の中から所望の事例を選択して適用できれば、処理自由度も高められる。
そこで、事例を収集する必要があるが、事例の収集を効率良く行うことを考えた場合、転写型が有効である。これは、所望する画像のみを収集すればよく、入力された画像や途中の修整過程を記録する必要がないからである。しかしながら、以下の2点を考慮すると、標準型を排除することは得策ではない。すなわち、多くのプロ・レタッチャ(専門の写真編集を行う人)は、現実に標準型による修整を活用していること、転写型による修整は現時点で発展途上であることの2点である。
詳細に説明すると、標準型による画像修整は、熟練者によってのみ適切に使いこなすことができる。熟練者は、多くの知識と経験を有していて、どのような画像処理手段を、どの程度、どのような順序で適用すれば、どのような結果が得られるかを理解している。熟練者は、画像の絵柄に応じて対応可能で、修整された画像(修整画像)の品質を評価する審美眼を有しており、これらのスキルを総合的に有するが故、標準型による画像修整を可能にしている。しかしながら、このようなスキルは、極めて貴重で、簡単に外在化させることは難しい。このため、初心者やあまり経験のない者は、熟練者に教わりつつ、試行錯誤を繰り返してスキルを身に付けているのが現状である。また、熟練者といえども、言葉で明確に表現して伝達することは難しい。
したがって、このようなスキルを外在化させるための唯一の方法は、熟練者が行った画像修整の実例を蓄積し、それを活用していくことである。本発明では、事例という情報形式を導入することによって、熟練者が選んだ手法を蓄積し、利用する。そうすれば、標準型において蓄積した手法や画像を転写型において利用することが可能になる。
ここで、図3〜図5を参照して、各型による修整、事例情報について説明する。図3(a)は、標準型による修整を例示した図である。この修整では、事例において使用した修整前後の2つの画像(事例画像)と、その事例において適用した画像処理の手段であるトーンカーブとを使用している。トーンカーブは、画像を階調補正するための手段であり、2つの事例画像のうちの画像Aを、もう1つの画像Bとなるように階調補正する。このため、修整対象の画像が入力画像として入力されると、このトーンカーブにより変換され、変換後の画像が修整画像として出力される。トーンカーブは、階調変換関数で表すことができ、この関数を使用して変換することができる。図3(a)では、この修整により、背景、人物の顔の色や洋服の色等が変更されている。
図3(b)は、転写型による修整を例示した図である。この修整では、目標として参照される画像(参照画像)のみを使用する。転写型では、参照画像に向けて修整を行うため、参照画像のみがあればよいからである。この転写型では、例えば、色彩転写(http://www.thegooch.org/Publications/PDFs/ColorTransfer.pdf)等の既知の方法を用いて修整することができる。図3(b)では、この修整により、背景、人物の顔の色や洋服の色が変更されている。
図4(a)は、標準型の事例情報の例を、図4(b)は、転写型の事例情報の例を示した図である。事例情報は、修整の内容を特定するために参照される修整時参照情報と、その修整の内容に従って修整を行った事例を識別可能な事例識別情報とを含む。図4には、修整時参照情報として、画像処理オペレータと、画像処理パラメータとが示されている。
画像処理オペレータは、画像処理の手段を表すもので、図4(a)ではオペレータ名「Lトーンカーブ」が、図4(b)では「転写オペレータ」が示されている。画像処理パラメータは、その手段に使用されるパラメータで、図4(a)ではトーンカーブを作成するのに使用される制御点情報が、図4(b)ではパラメータはないので、NULLが示されている。なお、図4(b)では、NULLに続いてかっこ書きで「画像Bを参照」と記述され、画像Bを参照画像として使用することが示されている。
事例識別情報は、その事例を他の事例と識別することができる情報であれば、いかなる情報であってもよい。図4では、修整の型であるタイプ、事例識別子(事例ID)、撮影位置、撮影日時、画像ファイル名、色調情報、撮影シーンのシーン名、撮影対象の対象物名、画像の印象を表す印象表現、画像内の領域を選択する場合の選択領域情報が示されている。したがって、上記の修整時参照情報も、他の事例と識別することができれば、事例識別情報に含めることができる。
図4(a)は、標準型であるから、タイプは標準型とされ、画像の撮影位置として緯度、経度の情報が、対象物名として画像内の人物の氏名が、印象情報としてその人物の印象が示されている。また、標準型の場合、事例画像として2つの画像を必要とするため、画像A、画像Bのファイル名、色調情報が登録されている。
図4(b)は、転写型であるから、タイプは転写型とされ、それ以外は図4(a)と同様とされる。ただし、転写型の場合、参照画像のみがあればよいことから、参照画像である画像Bのみのファイル名、色調情報が登録されている。このため、もう1つのファイル名、色調情報の欄は、情報がないことを示す「NULL」が入力される。
ここでは、事例情報がテーブル形式で表現されているが、実際には、XML(eXtensible Markup Language)等の記述方法に従って実現することができる。これは一例であるので、他の記述方法を採用してもよい。
標準型による事例で収集された2つの事例画像は、2つの転写型の参照画像として使用することが可能である。図5(a)に示す標準型の事例情報は、図4(a)と同様であるが、この中の画像Aの情報、画像Bの情報を参照情報とし、図5(b)、(c)に示すような事例情報を作成することができる。図5では、図5(a)をルートノードとし、そのルートノードに接続される子ノードを図5(b)、(c)として、事例情報を階層化して保持することができる。このようにすることで、標準型と転写型の両方の修整を行える枠組みを提供することができる。なお、図5(b)、(c)中の矢印は、図5(a)中の対応する項目の内容と同じであることを意味する。
次に、直観的で簡単な使い勝手を実現するためには、事例を何らかの形で視覚的に表示し、ユーザに選択の余地を与えることが好適である。事例の数が少ない場合、事例情報をそのまま並べて表示することができる。
ところが、事例の収集や登録が進むにつれて、上記のように並べて表示しても、一度に表示できる数には限界があるため、全部の事例を一度に表示することはできなくなってしまう。図6に示すように、一度に表示することができる事例としての事例画像や参照画像は数枚から数十枚であるから、スクロールバー等により画面をスクロールさせて表示しなければならない。表示に制約がなくランダムに並べられている場合、好適な事例情報を探し出すのが非常に困難である。
そこで、事例情報に事例識別情報を含ませ、ランダムに並べるのではなく、事例識別情報に基づき(例えば、型や色調情報に従って並ぶように)、表示装置である表示部上に事例情報を適切に配置して表示させることができるようにする。これにより、好適な事例情報を探し出すのが困難という問題を解消することができる。
図7を参照して、顔画像の肌色を例にとり、具体的に説明する。事例識別情報には、顔領域といった特定の領域を選択するための選択領域情報と、その選択領域情報により選択された領域の色調情報が含まれている。色調情報は、例えば、平均Lab値である。Lは、明度を示す次元、a、bは、色次元であり、図4や図5にも例示したように(80,10,10)のようなLab色空間における座標値で表される。この色調情報は、登録時に計算して登録しておいてもよいし、必要になったときに計算してもよい。
転写型においては、事例画像である画像Bにおける顔画像の色調情報を用いて修整が行われる。このため、標準型に対して、この色調情報を用いるというルールを設けるか、ユーザに選択させるようにすることで、事例の型によらず、両者を二次元に配置することができる。なお、表示は、アイコンやサムネイル等の画像形式であってもよいし、事例IDや撮影位置等の言語形式であってもよい。ちなみに、図7では、画像形式により事例情報の一覧が表示されている。
表示は、図7に示すような事例情報の一覧表示のほか、図8に示すようにLab空間のab平面(二次元)をマップ化し、各点を各事例として表示することができる。任意の点にカーソルを移動させ、その点上で停止させたとき、事例情報をアイコン等で表示させることができるようにされていてもよい。また、現状の入力画像を点と区別可能な形、図8では星形で示し、目標をどのように選択するかを、より直観的に行うことができるようにされていてもよい。この例では、顔画像の肌色を例に挙げたが、それ以外のシーン名や対象物名等であってもよい。
すべての事例情報を一覧表示すると、その数だけ表示しなければならないが、多くの場合は、同一カテゴリの中で事例情報を選択するので、一覧表示の対象をそのカテゴリに限定することで、表示する事例情報の数を減少させることができる。例えば、事例識別情報の中のシーン名や対象物名といった項目を、カテゴリとして選択できるようにすることで、表示する事例情報の数を減少させることができる。図8では、「空」、「芝」、「花」等をタブによって選択することができるようになっている。
そのほか、タイプを選択すると、図9(a)に示すように、標準型は各事例情報につき2つの事例画像を表示させなければならないが、転写型は1つの参照画像のみで済むため、一度により多くの事例情報を表示することが可能となる。また、目標指定も可能となる。標準型については、図9(b)に示すように、2つの事例画像を並べて表示させるのではなく、一定時間間隔で交互に表示させることができる。これにより、転写型の場合と同様、一度により多くの事例情報を表示することが可能となる。
表示する画像は、標準型については2つの事例画像、転写型については1つの参照画像のみであってもよいが、図9(c)に示すように、その事例における修整の内容に従って修整した後の修整画像も表示させることができる。これにより、結果指定が可能となる。この場合においても、標準型については、その修整画像を含め、3つの画像を交互に表示させることができる。また、転写型についても、その修整画像を含め、2つの画像を交互に表示させることができる。これにより、一度により多くの事例情報を表示することが可能となる。
これまで概略について説明してきたが、以下、上記の修整を実現するための機能構成、各機能部が行う処理について詳細に説明する。図10は、画像処理装置10の第1実施形態を示した機能ブロック図である。画像処理装置10は、機能部として、制御部30と、画像取得部31と、事例取得部32と、情報記憶部33と、事例選択部34と、事例適用部35と、画像出力部36とを含んで構成される。事例適用部35は、第一形式補正部37と、第二形式補正部38とを含んで構成される。
制御部30は、画像処理装置10全体の制御を行う。画像取得部31は、図1に示した画像読取装置12、撮像装置13やサーバ装置11等から画像の入力を受け付け、その画像を取得する。ここでは、画像を取得するとしているが、実際にはその画像の画像データを取得している。画像の取得は、撮像装置13等から入力される画像データを取得してもよいし、制御部30がユーザからの指示を受けてサーバ装置11へ要求し、読み出した画像データを取得することもできる。
事例取得部32は、画像取得部31が画像を取得したことを受けて、情報記憶部33に記憶された複数の事例情報を取得し、事例選択部34へ渡す。事例取得部32は、情報記憶部33に記憶された全ての事例情報を取得することもできるし、ユーザが上記のカテゴリを選択した場合は、そのカテゴリの事例情報のみを取得することができる。例えば、ユーザがタイプとして転写型を選択した場合、事例識別情報に転写型を含むもののみを取得することができる。
事例選択部34は、事例取得部32から受け取った複数の事例情報を、各事例情報に含まれる事例識別情報に基づき表示部上に配置して表示させる。そして、事例選択部34は、ユーザからの事例情報の選択を受け付ける。事例適用部35は、ユーザにより選択された事例情報に含まれる事例識別情報から事例における修整の型、すなわちタイプを特定する。タイプが標準型であれば、第一形式補正部37に修整を依頼し、タイプが転写型であれば、第二形式補正部38に修整を依頼する。
第一形式補正部37では、依頼を受けると、ユーザにより選択された事例情報に含まれる修整時参照情報により特定された修整の内容に従って、画像取得部31が取得した画像に対して標準型による修整を行う。第二形式補正部38では、依頼を受けると、ユーザにより選択された事例情報に含まれる修整時参照情報により特定された修整の内容に従って、画像取得部31が取得した画像に対して転写型による修整を行う。
事例適用部35は、修整が終了し、修整画像を得ると、画像出力部36に渡す。画像出力部36は、修整画像を表示部に表示し、また、修整画像を印刷して出力し、さらには、修整画像を情報記憶部33に記憶させる。これらの出力は、予め設定された内容に応じて実行することができる。
これらの機能部は、図2に示したCPU21が、補助記憶装置23に記憶された画像修整を行うプログラムを、記憶装置22に読み出し実行することにより実現される。なお、情報記憶部33は、サーバ装置11が備える記憶装置とすることができるが、画像処理装置10が備える補助記憶装置23や、ケーブルあるいはネットワーク15に接続された外部記憶装置等の他の機器とすることも可能である。
図11に示すフローチャートを参照して、図10に示す画像処理装置10が実行する画像を修整する処理について詳細に説明する。ステップ1100において、撮像装置13等から画像の入力を、画像取得部31が受け付けることにより開始する。ステップ1105では、画像取得部31は、その入力された画像を取得する。ステップ1110では、事例取得部32が、画像取得部31が画像を取得したことを受けて、情報記憶部33から複数の事例情報を取得する。ここでは、情報記憶部33に記憶されている全ての事例情報を取得するものとして説明する。
ステップ1115では、事例選択部34が、事例取得部32が取得した事例情報を、各事例情報に含まれる事例識別情報に基づき表示部上に配置して表示させる。最も単純な配置例は、事例IDの順に事例情報を並べるという配置である。事例IDは、数値やアルファベット等から構成されるので、数字の1から順に、あるいはアルファベット順に並べることができる。これ以外に、撮影位置や撮影日時の順に並べることもできる。
事例選択部34は、ユーザ・インタラクション、すなわちユーザとの対話により項目を指定し、その項目の順に並べることもできるし、予め定めた項目、例えば色調情報に従って配置を求め、そこに配置することもできる。
事例情報の表示方法については、修整の型の違いを踏まえて適切に行う必要があり、標準型の場合、修整前後の2つの画像(事例画像)を並べて、または交互に表示させる。転写型の場合は、目標として参照される参照画像のみを表示させる。これにより、目標指定が可能となる。
また、事例情報の表示方法については、画像取得部31により取得された画像(入力画像)に対する修整画像も含めて表示することができ、標準型の場合、2つの事例画像に修整画像を含めた3つの画像を並べて、または交互に表示させる。転写型の場合は、参照画像に修整画像を含めた2つの画像を並べて、または交互に表示させる。これにより、結果指定が可能となる。
ステップ1115では、ユーザが、このように表示された事例情報の中から好適な事例情報を選択し、事例選択部34は、ユーザが選択した事例情報を受け付ける。ステップ1120では、事例情報が選択されたことを受けて、事例適用部35が、入力画像に対して事例情報を適用するために、まず、事例識別情報の中のタイプを参照し、型の識別を行う。型が標準型であれば、ステップ1125へ進み、転写型であれば、ステップ1130へ進む。
ステップ1125では、第一形式補正部37が、標準型による修整を行い、ステップ1130では、第二形式補正部38が、転写型による修整を行う。修整は、事例情報に含まれる修整時参照情報の中の画像処理オペレータおよび画像処理パラメータを取り出し、これを適用することにより行われる。画像処理オペレータには、トーンカーブ、シャープネス、エッジ強調等が指定され、画像処理パラメータには、それらに使用される制御点情報等が指定されている。第一形式補正部37は、トーンカーブが指定されていれば、トーンカーブ変換を行い、シャープネスが指定されていれば、シャープネス変換を行う。これらの変換については、既に公知であるので、その内容については説明を省略する。なお、画像処理オペレータは、1つに限定されるものではなく、2つ以上であってもよい。
上記のトーンカーブ等は、標準型に対して指定されるもので、転写型に対しては、転写オペレータが指定される。このとき、画像処理パラメータには、参照画像が指定される。転写型による修整については、上記の色彩転写等の既知の方法を用いて行うことができる。第一形式補正部37または第二形式補正部38は、画像の修整が終ると、事例適用部35に修整結果としての修整画像を渡す。
ステップ1135では、画像出力部36が、事例適用部35から修整画像を受け取り、表示部に表示する等して、修整画像をユーザに提示する。ステップ1140では、その提示された修整画像でよいかどうかを判断する。例えば、OKボタンとやり直しボタンを表示させ、ユーザがOKボタンを押下した場合は、その修整画像でよいと判断し、やり直しボタンを押下した場合は、その修整画像ではダメと判断することができる。
ステップ1140で判断した結果が、修整画像でよい場合、ステップ1145へ進み、画像出力部36は、その修整画像を情報記憶部33に記憶させ、ステップ1150でこの処理を終了する。これに対し、修整画像ではダメである場合、ステップ1115へ戻り、再びユーザが事例情報の選択を行い、事例選択部34がその選択を受け付ける。
以上に説明した実施形態では、2つの型による修整を可能にしているが、一方の型に限定し、その型のみの修整を行うことも可能である。この場合、事例識別情報は、タイプという項目を含んでいなくてもよく、事例適用部35は、タイプを特定する判断を行う必要がなく、いずれか一方の補正部のみを保持していればよい。
次に、画像処理装置10の別の機能構成、各機能部が行う処理について説明する。図12は、画像処理装置10の第2実施形態を示した機能ブロック図である。図10に示した画像処理装置10と同様、制御部30と、画像取得部31と、事例取得部32と、情報記憶部33と、事例選択部34と、事例適用部35と、画像出力部36とを含んで構成される。事例適用部35は、第一形式補正部37と、第二形式補正部38とを含んで構成される。この図12に示す実施形態では、さらに、領域選択部40を備えている。上記の制御部30等の同じ機能部については既に説明したので、ここでは領域選択部40についてのみ説明する。
領域選択部40も、CPU21がプログラムを実行することにより実現され、修整対象の領域の選択を行う。この領域選択部40は、入力画像における修整対象の領域を限定するものである。
画像全体について事例情報に基づき修整を行うことは、標準型、転写型の両方において可能である。標準型は、例えば、色調を明るく、鮮やかにといった簡単な修整に対して好適で、転写型は、シーンとして画像全体が類似しているものに対して好適である。画像全体を対象とする修整では、このような好適な場合がある反面、必ずしも意図する画像に修整することができない場合がある。例えば、顔だけを少し明るくしたい場合や、青味成分だけを少し抑えたい場合や、高周波数成分だけを強調したい場合等である。
このような特定の領域のみを修整したい場合に、領域選択部40によりその修整したい領域を選択し、事例適用部35によりその選択された領域を修整することができる。領域の選択は、既に知られた、色相で選択する方法、領域境界をユーザがなぞる方法、ブラシにより領域面をなぞる方法、顔領域抽出、高速フーリエ変換(FFT)等を用いて行うことができる。
図13を参照して、具体的に説明すると、図13には、入力画像41が表示され、その向かって左側にツールボックス42が表示されている。ツールボックス42内には、様々なツールがアイコン表示されていて、ここでは、自動選択ツール43が選択されている。自動選択ツール43は、マウスによりクリックした位置にある画素およびそれに隣接する近似色の画素を自動的に選択するツールである。
図13では、顔の肌を表示している画素がクリックされたため、それに隣接する肌色の画素すべてを抽出し、抽出されたすべての画素により形成される領域が選択され、それが破線により表示されている。
領域選択部40が選択する領域は、画像空間(平面)における領域に限定されるものではない。カラー画像の特定のチャネル、例えば赤、青、緑で示される画像信号のチャネル領域を選択してもよいし、周波数空間における特定の帯域をもつ画像信号の周波数領域を選択してもよい。領域選択部40は、これら3つの領域のうちの1つを選択することに限られるものではなく、これら3つの領域のうちの2つ以上を組み合わせた領域を選択してもよい。
図14に示すフローチャートを参照して、この実施形態の画像処理装置10が実行する画像を修整する処理について説明する。ステップ1400からこの処理を開始する。この場合も、図11と同様、撮像装置13等から画像の入力を、画像取得部31が受け付けることにより開始する。ステップ1405、ステップ1415〜ステップ1455は、図11に示すステップ1105〜ステップ1150と同様であるため、ここではその説明を省略する。
ステップ1410では、領域選択部40が、ユーザから領域の指定を受け付け、その指定された領域を選択する。この選択された領域の情報は、事例適用部35へ送られ、修整する領域を特定し、その領域につき修整が行われる。
画像処理装置10のさらに別の機能構成、各機能部が行う処理について説明する。図15は、画像処理装置10の第3実施形態を示した機能ブロック図である。図10に示した画像処理装置10と同様、制御部30と、画像取得部31と、事例取得部32と、情報記憶部33と、事例選択部34と、事例適用部35と、画像出力部36とを含んで構成される。事例適用部35は、第一形式補正部37と、第二形式補正部38とを含んで構成される。この図15に示す実施形態では、さらに、事例登録部50を備えている。上記の制御部30等の同じ機能部については既に説明したので、ここでは事例登録部50についてのみ説明する。なお、画像処理装置10は、事例登録部50と上記の領域選択部40の両方を備えていてもよい。
事例登録部50は、CPU21がプログラムを実行することにより実現され、画像修整により得られた修整画像に付加情報を加えて新しい事例情報として情報記憶部33に記憶させ、登録する。事例登録部50は、図4に示した表現形式に従って、各項目に対応する内容を特定し、1つの事例情報として登録する。したがって、修整画像を除く、各項目に対応する内容が付加情報とされる。タイプは、修整を行ったときに特定されたタイプがそのまま継承される。
タイプが標準型である場合、修整時参照情報には、修整の際に参照された画像処理オペレータ、画像処理パラメータをそのまま指定する。事例識別情報には、図4に示した画像A、画像Bの内容として、入力画像、修整画像の内容が指定される。すなわち、入力画像および修整画像のファイル名、色調情報が指定される。その他の情報は、修整の際に参照した事例情報内の各情報がデフォルト値として指定される。このため、修正が必要であれば、ユーザ・インタラクションを介して修正したい箇所の情報を修正することができる。
タイプが転写型である場合も、修整時参照情報には、修整の際に参照された画像処理オペレータ、画像処理パラメータをそのまま指定する。そして、事例識別情報には、画像Bの内容として、修整画像の内容が指定される。その他の情報については、標準型と同様である。
このようにして新しい1つの事例情報として作成し、それを追加することで、その事例情報を再利用することが可能となる。なお、標準型の場合、図5に示したように、2つの事例画像を含むため、2つの事例画像の各々を参照画像とし、2つの転写型の事例情報として登録することも可能である。これにより、標準型の事例情報のほか、転写型の事例情報も追加することができる。また、事例情報の追加により、より所望する修整画像を得ることが可能となる。
図16に示すフローチャートを参照して、この実施形態の画像処理装置10が実行する画像を修整する処理について説明する。ステップ1600からこの処理を開始する。この場合も、図11と同様、撮像装置13等から画像の入力を、画像取得部31が受け付けることにより開始する。ステップ1605〜ステップ1645、ステップ1655は、図11に示すステップ1105〜ステップ1150と同様であるため、ここではその説明を省略する。
ステップ1650では、事例登録部50が、入力画像に対して行った修整を追加の事例とし、その事例において得られた事例情報を、情報記憶部33に追加の事例情報として記憶させ、登録する。この登録された事例情報は、次の画像修整において、ユーザに提示され、選択可能にされる。
画像処理装置10のさらに別の機能構成、各機能部が行う処理について説明する。図17は、画像処理装置10の第4実施形態を示した機能ブロック図である。図10に示した画像処理装置10と同様、制御部30と、画像取得部31と、事例取得部32と、情報記憶部33と、事例選択部34と、事例適用部35と、画像出力部36とを含んで構成される。事例適用部35は、第一形式補正部37と、第二形式補正部38とを含んで構成される。この図17に示す実施形態では、さらに、画像評価部60を備えている。上記の制御部30等の同じ機能部については既に説明したので、ここでは画像評価部60についてのみ説明する。なお、画像処理装置10は、画像評価部60と、上記領域選択部40および上記事例登録部50のいずれか1つもしくはその両方を備えていてもよい。
画像評価部60は、CPU21がプログラムを実行することにより実現され、修整画像の品質を評価するための指標を表示部に表示させる。熟練者でない場合、鑑識眼が十分ではないため、修整画像を見ただけでは、所望の画像が得られたかどうかを判断することは難しい。このため、画像評価部60を設け、ユーザが客観的に評価を行うことができる評価指標を表示させることが望ましい。
画像評価部60は、評価指標を提供するため、画像対評価と単一評価の少なくとも一方を利用する。図18を参照して、画像評価部60が表示させる評価指標について説明する。図18に示す画像は、向かって左側から、入力画像、修整画像、Ch差分(明度L)画像で、Ch差分画像が画像対評価により得られる評価指標の例である。Ch差分画像の下側には、ΔE(色差)が数値として示されている。このΔEも、画像対評価により得られる評価指標の例である。要するに、単一評価と画像対評価の違いは、評価指標を画像一枚から得るか、2つの画像から得るかの違いである。
画像対評価により得られる評価指標の例としては、S/N(信号対ノイズ比)、MSE(平均二乗誤差)、ΔE等が知られている。これらの評価指標により、信号レベルでどれほどの変化があるかを客観的に理解することができる。そのほか、S/NやMSEよりも主観との合致度が高いとされるSSIMと呼ばれる評価指標を導入することもできる。
単一評価により得られる評価指標の例としては、明度あるいは色チャネル毎のヒストグラムが知られている。このヒストグラムは、例えば、画像を構成するR、G、Bの各画素値が何個使用されているかを棒グラフで表したものである。このため、このヒストグラムを見ることで、ユーザは、画像全体の調子を客観的に理解することができ、適切な判断を行うことが可能になる。画質を評価する要因としては、明度等のほか、コントラスト、シャープネス、鮮鋭性、粒状性等を挙げることができ、これらについての評価指標を導入することもできる。
単一評価により得られる指標の例としては、そのほか、Saliency Map(誘目性マップ)を挙げることができる。これは、人の視覚特性に照らして目立ち度合いを、画素値を流用し、画像的に表現する方法である。このマップによれば、どの当たりに注目して評価すべきかの指針を得ることができる。これらの例は、一例であり、これ以外の評価指標を加えてもよい。
評価する対象の画像あるいは画像対としては、修整画像、修整画像と入力画像もしくは参照画像もしくは事例画像を挙げることができる。評価する対象の画像あるいは画像対は、その他の入力画像、参照画像、入力画像と参照画像等であってもよい。このうち、入力画像と参照画像または事例画像の画像対評価は、将来的に、より適した事例情報を配置するという目的に拡張するための基盤となる。修整画像の評価は、得られた結果を判断するための客観的な情報として活用される。この評価により、ユーザは安心して評価を下すことができ、同時に、画像修整に必要なスキル・レベルの向上を図ることが可能となる。
図19に示すフローチャートを参照して、この実施形態の画像処理装置10が実行する画像を修整する処理について説明する。ステップ1900からこの処理を開始する。この場合も、図11と同様、撮像装置13等から画像の入力を、画像取得部31が受け付けることにより開始する。ステップ1905〜ステップ1935、ステップ1945〜ステップ1655は、図11に示すステップ1105〜ステップ1150と同様であるため、ここではその説明を省略する。
ステップ1940では、画像評価部60が、ユーザに修整画像の品質を評価させるため、評価指標を表示させる。画像評価部60は、修整画像の品質を、修整画像の情報、例えばRGBの画素値を用いて上記のヒストグラムという指標を生成し、そのヒストグラムをユーザに提示するため、表示部に表示させる。また、画像評価部60は、修整画像と、入力画像もしくは参照画像もしくは事例画像の情報とを用いて、上記のS/N等を求め、その数値を指標としてユーザに提示するため、表示部に表示させる。
以上のように、事例識別情報に基づき事例情報を配置して表示させることにより、直観的で簡単な使い勝手をもち、より少ない工数で所望の結果に到達することができ、また、多くの事例から選択できるようにすることで、処理自由度を高めることができる。また、事例識別情報が色調情報やシーン名等を含み、それに基づいて適切に配置するので、直観的な目標指定が可能となる。型によらない事例表示が可能となり、これによっても直観的な目標指定が可能となる。
修整画像も含めて表示することで、直観的な結果指定が可能となる。そして、領域を選択することで、処理対象を限定し、画像修整の効果を高めることができる。また、追加の事例として登録することができるようにすることで、処理自由度をさらに高めることができる。また、標準型で一定の事例の登録がなされれば、その情報から転写型の事例として使用することができるので、これによって転写型の事例収集、蓄積を加速させることができる。
画像評価のための評価指標を表示させることで、客観的な判断材料を提供できるので、ユーザはより安心して評価を下すことができ、画像修整に必要なスキル・レベルの向上を図ることができる。
これまで本発明の画像処理装置、画像処理方法およびプログラムにより実行される処理について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。したがって、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。よって、本発明では、画像処理装置を含む画像処理システムや、コンピュータに実行させるための上記プログラムが記録された記録媒体も提供することができるものである。