本発明についてより明確に述べるため、以下に図面を組み合せて更に詳述する。
本発明は、深刻な気象災害を阻止する方法を提供することを解決すべき技術的課題とする。気象災害には、竜巻、台風、極めて強い雷雨、雹、ウインドシア、局地的高温、干ばつ及び深刻な大気汚染等が含まれる。
図1を参照して、本発明が提供する深刻な気象災害を阻止する方法は、従来の気象技術を利用して分厚く高密度の雲層が凝集された地域を見つけ出すステップ1と、最高密度、最大厚さ又は最高温の降雨位置を雲層内に設定するステップ2と、降雨位置に1又は複数本の長尺の降雨帯を設定して人工降雨を実施し、降雨を促された雲の温度を低下させて雨を降らせ、雲層の温度、密度、大きさを低減し、且つ雲層下方の高温の空気を放出させ、温度の下がった雲を周辺の高温の雲に流れ込ませ、続いてこれらの雲の温度を下げて雨を降らせることで、気象災害を引き起こす自然条件を消失させるステップ3と、を含む。
このうち、ステップ2における降雨位置は、雲層中央における最中央位置であり、当該雲層中央における最中央位置の直径が10〜40kmとされる。また、雲層中央を検出することで、雲層中央の頭頂部のうち、大きな円形でわずかに隆起し、やや明るいか純白で且つ高温の最中央位置を降雨位置として設定する。図1において、雲層中央30における最中央位置の降雨位置50に対して、1又は複数本の長尺の降雨帯40を直接降雨位置50内に設定すればよい。図1において、当該降雨位置では、2本の降雨帯40のみで最も効果的な降雨を実現可能である。また、当該2本の降雨帯40の降雨効果は、従来技術において具体的且つ明確な降雨には至らなかった複数本の降雨帯40よりも優れている。
従来技術と比較して、本発明が提供する深刻な気象災害を阻止する方法、以下のような有益な効果を有している。
1)本発明の新理論では、雲層が極めて幅広に分厚く凝集し、且つ雲層が極めて高密度及び高温に圧縮される複雑な過程を明らかにするとともに、降雨位置に最も効果的な長尺の降雨帯を設定することで、上述の気象災害発生前に、降雨帯において人工降雨を可能とする。降雨によって、雲層の温度、密度、大きさの低減、雲層下方の高温空気の放出、雲層上下間の気圧差の縮小、雲層下方及び地表の空気の温度低下等がもたらされる。温度の下がった雲はその周辺の高温の雲に流れ込み、続いてこれらの雲の温度を下げて雨を降らせることから、降雨領域が自ずと拡大される。これにより、上述の気象災害の発生を予め防止する方法を提供可能となり、人的及び物的被害を回避できる。
2)本発明における降雨位置は、雲層中央における最中央位置とされる。即ち、雲層中央の直径10〜40km位置での降雨が可能となる。これに対し、発明者が以前に出願した特許では、雲層中央位置において任意に広範囲の降雨を可能としていたにすぎず、具体的且つ正確な降雨位置を特定するものではなかった。両者を比較すると、本発明では最中央位置において最大面積の降雨を可能とする。本発明は、雲層中の最高密度、最大厚さ或いは最高温度となる降雨位置についての初の提言であり、これによれば、降雨位置とその付近の雲層を雨に変えられる。雲層中の最高密度、最大厚さの位置が雨となることから、雲層全体の大部分の比重を占める雲層、或いは雲層全体のうち最も高温部分の雲層が消失する。これにより、雲層の大部分を消失させ、温度を下げるとの目的が達成されるため、最も効果的に深刻な気象災害の発生を阻止することが可能となる。このほか、本発明では降雨位置を縮小及び正確にし、降雨剤の使用を大幅に減らしていることから、降雨時間が短縮されるとともに、降雨効果がより良好となる。
本実施例では、人工降雨のステップが、台風の目の壁近傍から約600〜1000mの雲層上空において、台風の目が人工的に0.5〜4km拡大するまで、目の壁を取り巻くように降雨剤を散布することを含む。目の壁周辺の雲層は最高密度及び最高温の位置であり、雲層上方は気流が穏やかであることから、降雨剤を投入する飛行機が容易に台風の目を視認して接近することができ、結果として降雨剤の投入精度が向上する。目の壁近傍から約600〜1000mの雲層上空の400m位置に最適な降雨位置が形成される。目の壁から外側約600〜1000m区間の400m位置で降雨させるのは、目の壁の雲が押圧されて台風の目が次第に拡大してゆく間も、台風の目の直径が全体で2km拡大するまでは、目の壁から600mの位置で降雨を維持せねばならないからである。なお、必要に応じて、拡大距離を2km超としてもよい。
本実施例において、降雨帯は、高温の雲層全体の温度を最も急速に低下させられる位置とされる。
本実施例では、雲層中央における最中央位置の両側に降雨帯が設定される。雲層中央における最中央位置は温度が最も高いため、降雨を促されて降温した雲は、最中央位置の熱に急速に吸引され、最中央位置の高温の雲を迅速に冷却して雨に変える。
本実施例において、深刻な気象災害を台風とした場合、雲層中央における最中央位置の直径は20〜40km、好ましくは25kmとされる。
本実施例において、深刻な気象災害を竜巻又は豪雨とした場合、雲層中央における最中央位置の直径は10〜30km、好ましくは15kmとされる。
本実施例では、人工降雨を実施するステップが、降雨帯位置の雲層上部又は頭頂部に降雨剤を投下して人工降雨を行うことを更に含む。
本実施例において、ステップ1の具体的手順としては、まず従来の気象技術で現場を測定して雲層の実情を把握するとともに、当該雲層の成長速度を分析する。これにより、当該雲層が気象災害を発生させ得るか否かを把握し、降雨が必要か否か、或いはいつ降雨させるかを特定可能とする。
本実施例において、極めて強い雷雨の形成を阻止する方法としては、雲層が雲層対流又は雲層内対流を形成して、自ら広範囲にわたる極めて強い雨を降らせる前に、当該豪雨雲層における最高温位置を見つけ出す必要がある。続いて、人工降雨法を用い、まずは最高温位置の一つにおいて人工降雨を実施する。ここでは、当該分厚く高密度の雲層を先と後に分けることで、領域と時間を分割して雨を降らせる。これにより、巨大な雲層全体がより高密度に凝集されて自ら極めて強い雷雨を形成し、同時刻に降り出すことが回避される。
地球温暖化の加速とその有害性
本発明では、地球温暖化は温室効果ガスによってだけでなく、地球上の雲量の増加や、乾燥地帯及び砂漠地帯の拡大等によっても加速されると考える。これについて、以下に詳述する。
温室効果ガスは地球を温暖化させるが、これに伴って多くの雲が蒸発する。また、地球の温度が上がることで、雲層は冷却されて雨になることが難しくなるため、その周辺の雲を更に吸引し、より幅広で分厚く、高密度に集中したのちにいっそう高温となる。結果、都市部の更なる大気汚染を含む異常気象が誘発される。
高温の雲が低温の雲を吸引するのは自然の法則である。幅広で高温の雲層は自ずとその周辺の雲を吸引し、これに応じてその周辺地域では雲が減少する。雲は多くなるほど集中し、高温になる。そして、最終的には多くの雲が集中した側に極めて強い雷雨が発生し、水害が誘発される。これに対し、雲の少ない側は高温且つ乾燥するため、自ずと降雨地域にばらつきができ、降雨の回数も減少する。そして、これにより山内部の水が不足することにもなる。
山は、平地よりも高く巨大な天然の「一時貯水器」である。この一時貯水器は泉となって麓の土地を潤し、大量の河川の水を長距離にわたって流動させる。そして、大量の河川の水が流動することで、自ずと河の水質汚染が緩和される。実際のところ、地域によっては、数十年前までは高さ100m程度の山の麓に泉があり、年中水が湧き出していた。しかし、そのような光景は今は昔である。多くの湖が干上がったり、砂漠化したり、或いは河川からの水が途絶えるといった現象もみられ、いずれも現代における降雨地域のばらつきと、年間降雨回数の減少を物語っている。
特定の地域に長時間にわたって高密度の雲層が蓄積されると、当該地域の気圧は低下し、低気圧がその周辺から雲と汚染大気を吸引するため、視界不良が発生してしまう。実際、近年では上記のような状況から、地球上の幾つかの地域で大幅な視界不良が招来されており(特に、人為的熱量の大きな低海抜地域と大都市において)、これによりPM2.5の高濃度化や、都市の水没が生じている。これらの問題は、本発明における簡単な人工降雨法により解決可能となる。
人類は、元はといえば地下に何億年も眠っていた石油や石炭、天然ガスなどをわずか200年で急速に消費し、大量の温室効果ガスや排気ガス、熱気を排出してきた。また、地下に埋蔵されている金属やセメント原料を地表に運び出し、吸熱、蓄熱及び熱反射が可能なセメントや金属を用いた建築物を増やすことで、都市部をいっそう高温化している。今のところ、気象専門家らは、大量の熱気上昇(熱汚染)による有害性をまだ重視していない。
現在、政府は地球上の四季の平均気温に基づいて地球温暖化の進行を計算しているが、これは、地球が温暖化すると雲量が増加し、雲の増加によって冬季には吹雪や極寒といった天候がより増えることを理解してないためである。しかし、現実はまさにこのようになっている。例えば、近年、冬季になると記録的な低温が発生する一方、夏季には記録的な高温が出現している。平均気温を元に計算するということは、極端な低温と極端な高温を平均化することを意味するため、地球温暖化の進行や有害性が軽微なものと捉えられる恐れがある。
本発明では、地球温暖化の程度を算出するにあたり、年間及び地球全体の平均気温を元にするだけでなく、主として最高及び最低気温を基準とした。これは、極端な高温と極端な低温が地球上の生物に極めて大きな被害をもたらしているからである。特に、極端な高温、降雨地域のばらつき、及び降雨回数の減少による干ばつは深刻である。
地球温暖化はかなり進行しているため、すでに温暖化された地球表面が太陽によって照射された場合、温度上昇と雲量の増加はいっそう加速される。これは、暖かい部屋の中で無理やりストーブを炊くようなものであり、地球の温度は自ずと更に上昇することになる。以上が、地球温暖化の進行(気候悪化の進行)が専門家らの予測よりも急速に進んでいる原因である。
自然界の高検知能力
上述した気象災害の発生要因は未だ明らかにされていないが、これは、自然界の高検知能力、高感度性及び「マイクロ動力学」等を考慮していないからである。結果として、竜巻、台風及び突発的な局地的強風等の発生要因と形成過程を正確に理解できないままでいる。
自然界がより良好な物質又は生存条件を求めようとするのは、必然的な本能であり本質である。例えば、小動物や昆虫の一部は地震を予知できるし、動物は体調のすぐれないときに何らかの食物を摂取することで自己治療する。また、樹木は枝葉を最も日光を吸収しやすい位置に伸ばすことを知っている。更に、霊性があるとされる「ガジュマルの木」の気根は、最適な位置で自然と生育し、幹を形成して自身の重量を負担し支えることができる。
空気又は雲は、気圧の高低差と温度差を検知する能力において人類よりもはるかに優れている。空気や雲は、遠方の軽微な温度差又は気圧差を検知できるため、最も高温な箇所で留まったり、異なる速度で移動したり、突然逆流したり、或いは雲層対流を形成したりといったことを随時行う(これらが、方向の定まらない一時的な微風や疾風の発生要因となる)。しかし、人類が正確に天候を予測することは難しい。
風又は旋風の発生要因、及び吸引による風の流動について
風は、低気圧の空気が高気圧の空気を吸引すること、或いは高温の空気が低温の空気を吸引することで発生する。「吹く」ことと「吸引する」ことは表面上は同じように見えるが、深く理解すればそれぞれ異なる重要な現象である。例えば、一般的な高密度の雲層が突然雨を降らせた場合、その下方の空気は急速に冷却される。そして、冷却された空気がその付近の冷却されていない空気に急速に吸引されることで、強い突風が巻き起こる。
冬の冷風は集中的且つ持続的に、極めて狭いドアの隙間(れんがの隙間)から素早く屋内に進入するが、これは、冷風が屋内の別の気流に吸引されるか、或いは、屋内の暖かい空気に吸引されるためである。冷風が吸引されるのではなく、吹く(推し出される)場合には、ドア隙間の外側で弾かれて分散するので、ドアの隙間から持続的に素早く屋内へ進入することはできない。
自然界には風の発生要因は数多く存在する。一般的な風としては、持続的で一定方向のモンスーン、高気圧領域と低気圧領域の気圧差によって発生する広範囲の風、局地的温度差により発生する方向が一定しない局地的突風又は微風、活発な低気圧領域内で発生する不安定で強い又は弱い突風、雷雨による強風、ウインドシア、強い疾風又は竜巻及び台風等に主に分けられる。
活発な低気圧領域内で不安定な風が発生するのは、低気圧領域内の気圧がその外側の気圧よりも低いことから、内側の雲と空気が比較的高温になり(以下で詳述する)、内側における気圧が低く高温の空気又は雲が、外側の空気又は雲を強力に吸引するためである。これにより、低気圧領域内とその周辺で方向が一定せず不安定な強風又は微風が発生する。
自然界の動力は円形運動する。旋回しながらの上昇は負担が軽く、旋回しながらの横方向への移動もまた容易或いは柔軟性がある。自然界では当然のごとく、負担の重いものよりも軽いものや柔軟性のあるものが選択されることから、吸引力により発生する高速の上昇気流もまた旋回することになる。例えば、竜巻や台風の目にはいずれも吸引力が存在している。台風の暴風域、台風の目、竜巻又は旋風は、いずれも円形又は旋回運動する。また、強力な換気装置により急速に吸引された煙も旋回する。
このほか、突発的で急速に横方向へ移動する気流(突風)も旋回する。実際、「旗」や「風向計」は突然方向転換することが多いが、これは強い突風が回転しながら前進するためである。旋回気流は自ずと高速になるため、突発的で大木をなぎ倒すほどの局地的強風が発生し得る。従来の理論では、こうした風の発生要因を特定できていないために、依然として異常な風というように報じている。
環境や地形が複雑である陸地の温度差は大きい。例えば、近代化された大都市中心部や大型コンテナヤード、大規模な室外駐車場或いは乾燥した砂漠地帯等では、強い日差しが照射されると急速に高温となる。よって、これらの高温箇所では地表の空気が急速に上昇し、上昇分を補うために周辺の低温の空気が直ちに吸引される。結果、突発的で一時的な強い突風が発生するが、このような横方向の強い突風の多くは高速旋回するため、これが強風や、メディアで報道されるところの「異常な風」となる。実際、大型コンテナヤード内では、コンテナが異常な風によりなぎ倒されることがよくある。突風は、高温の空気が低温の空気により急速に補填され混ざり合うと停止する。
高温空気の上昇は自然の法則だが、高温空気の自然上昇は実際のところ吸引によるものでもある。無形で希薄な空気の急速上昇や横方向移動時の旋回は人間の目には見えないが、竜巻や砂漠における塵旋風、極端な高温によって高速上昇する火炎又は山火事(火災旋風)は目にすることができる。そして、旋回は急速に吸引されるときにのみ発生する。
低海抜における高気圧、高温及び高密度の重い空気は、上昇しなければ高海抜の低気圧領域へ到達できない。そこで、正常天候下では、低海抜の重い空気はゆっくりと上昇してゆく。例えば、凧が上昇する際には横方向の風力と空気の揚力が必要であり、凧を長時間にわたって垂直に空中で停留させる場合は揚力に依存する。人間は一般的な上昇気流については感じにくいが、竜巻は地表の重い空気を強力に吸引して上昇させている。
砂は急速に吸熱及び熱反射可能な物質である。よって、砂漠の地表は強い日差しに照射されると、温度が地表上方の空気の温度を大幅に超えることになり、結果として大きな温度差が生まれる。このような状況で強めの突風が発生すると(例えば、高温の空気が急速に上昇することによる強風)、高温の空気は急速に旋回しながら容易に上昇し、横方向に移動する高速塵旋風が発生する。自然界の動力はゆっくりと加速されることから、塵旋風は旋回開始時にはやや遅く、その後旋回するに伴い加速されてゆく。
高空における空気の温度、密度及び気圧は低いため、空気に比べて重い塵旋風はさほど高くまでは上昇できず、低空で旋回するにとどまる。以上述べたように、風は気圧の差だけでなく、上昇熱気流によっても発生する。即ち、高空と地表の気圧差によって発生するのである。
雲の特性及び雲量の過多による弊害
上述の気象災害の多くは暖候期に発生する。上述の気象災害が発生する主な条件としては、まず高温の雲が活発な低気圧領域内に大量に凝集し、更に雲層対流と雲層内対流によって極めて高密度及び高温となることがあげられる。雲の特性とその極めて複雑な集結過程を確実に理解すれば、上述の気象災害の形成は容易に阻止される。よって、本明細書では雲の特性と雲の集結過程についてかなり詳細に解説する。
空気中には水分が含まれており、特に、雨の後や早朝、初春には水分含有量が増加する。海面、湖面、湿地及び緑の多い地域では上空空気の水分含有量が多いため、雲が凝集されやすい。空気は高温及び高気圧の地表からある程度の高さまで高速上昇すると(空気が高温であるほど急速且つ高く上昇する)、高空の温度と気圧が低いことから減速し、上昇を停止する。減速後、空気は高密度に凝集し合い、密度が増すと光を反射できるようになることから、視認可能な雲となる。
雲は任意に移動可能な物体であり、地球上に不可欠であるとともに、地球温暖化に伴って蒸発が進んでいる。空気と比べて恒温性である雲は、太陽や地表からの上昇熱を吸収し、蓄熱するとともに、水の性質とほぼ同様に凝集して群をなしている。雲は多いほど高温となり、高温となるほど高密度な群又は層として結集する。地球の温度が上昇すると、自ずと雲層は冷却されて雨となることが難しくなる。結果、極めて幅広で分厚く、高密度に集中した高温の雲へと凝集してゆく。これにより、強い雲層対流が発生しやすくなるため、更に幅広で分厚く、高密度且つ高温に集中した雲へと変貌し、上述のような深刻な気象災害が発生するに至る。
酷暑で青空が広がり、日差しの強いときには、低海抜に位置するが故に高温の小雲群が、その付近に分散する雲を強力に吸引する。これにより、短時間の内に高密度でより高温の大雲群へと凝集され、大雲群に凝集した雲はいっそう吸熱及び蓄熱可能となる。そして、雲群は高温で高密度であるほど容易に温度が上昇し、ますます恒温性となる。水分を含有する雲は空気に比べて熱量を互いに伝達しやすく、特に、雲群又は雲層上部の低温の雲に熱量が伝達される。
太陽は地球の表面を照射し、地表は熱を吸収及び反射する。すると、高温の空気が自然の法則に従って上昇するとともに、吸引によっても上昇する。これにより、高空の空気又は雲の温度は、地表における温度上昇の影響を受けて昇降する。これは、地表から近いほど空気又は雲の温度が高くなり、地表から高く離れるほど空気又は雲の温度が低くなることを意味する。
夏季の青空が広がる厳しい日差し下では、低空に存在する高密度の雲が、遮られることなく厳しい日差しの直射を受ける。このとき、雲層は高温となるほど高密度となり、高温の雲群における中央位置の雲がひときわ高温となることでいっそう急速に上昇する、との理論に基づき、当該雲群は柱状又はカリフラワー状となり、その輪郭又は境目も極めて鮮明となる。これは明らかに、高温の雲群がその周辺に分散する雲を全て吸引し、緊密に凝集したためである。実際、米国の広大な平原では、巨大なスーパーストーム雲層の輪郭がはっきりとみられる。一方、冬季には、低温の雲群又は雲層が分散したシート状をなす。
海水は陸地に比べて恒温性であるため、陸地は海水よりも急速に加熱又は冷却される。よって、夏季の日照時間内においては、陸地の空気は海上の空気よりも高温となり、陸地の雲層もまた加熱されることで高密度となる。また、急速に加熱及び高密度化されることに加え、陸地は温度及び気流が不安定なことから、強い雷雨や竜巻が発生しやすい。夜間になると、陸地の小雲群は急速に降温して分散するが、大雲群又は雲層はゆっくりと降温及び分散する。一方、海洋上の空気の温度は恒温性で気流も安定しており、その上方の雲層は昼夜ともに降温及び分散しにくい。よって、恒温性の海洋では長時間にわたって持続的に雲層が集結され、例えば、極めて巨大な台風雲層が集結される。
過去には、地球温暖化がそれほど進行していなかったため、雲量は少なかった。面積が大きくはない移動可能な小雲群は、強烈な日差しが地表に照射されるのを遮ると、その移動可能な陰影部分によって、日差しが遮られた部分の地表の空気を急速に降温させる。空気は非恒温性で温度に対する感度が極めて強いことから、移動可能な陰影による部分的な温度差によって、局地的で方向の定まらない微風が発生する。これがいわゆる「青い空に白い雲、風穏やかで日うらら」と称される美しい情景である。
しかし、近年、地球温暖化に伴って雲の発生量が増え、温度が上昇している。結果として、大量の小さく高温の雲群が互いに吸引し合って幅広の雲へと凝集しやすくなっている。即ち、近代の雲層は広面積のものが多い。実際、近年になって、国によっては青い空に白い雲という美しい情景が地球温暖化のために激減しており、局地的高温や干ばつといった状況が増加している。高密度な雲層は、汚染大気の正常な上昇を阻むとともに低気圧を招来するため、大気汚染の問題をいっそう深刻化させ得る。
幅広の雲層は広範囲にわたって青空を遮るため、過去の青い空に白い雲といった情景は減少する一方である。空は常に白又はグレー一色で不快な蒸し暑さをもたらすか、或いは、隣接する雲の多い地域(低気圧領域)によって雲が強く吸引される結果、広範囲にわたる青空と厳しい日差しが長期的に出現し、暑さによる死者や高温又は干ばつが発生するかのいずれかとなる。実際に、2013年の7〜8月、西太平洋で連続して複数の台風が形成され、中国・華北地域で豪雨が続いた期間、中国・華南地域の複数の省では、40日余りにもわたる稀に見る高温と干ばつが続いた。これは、華南地域の雲が前記の台風と豪雨の雲層に吸引されたことを示している。
台風の雲は膨大な量に及ぶ。地球温暖化は恒温性の海水温度を全体的に上昇させ(海氷の継続的な崩壊に証明されている)、海水温度の上昇に加えて雲量及び熱量が増えることで、台風が形成されやすくなる。台風を育成し得る極めて巨大な高温の雲層と極度の低気圧は、その周辺にある大量の雲を、元々は陸地に流れ込もうとしていた雲をも巻き込んで強く吸引する。よって、極めて幅広の雲層が持続的に大量の雲を吸引して拡大し、台風へと成長することを阻止できれば、台風領域周辺の広範な陸地における高温や干ばつを回避可能となる。実際、近年になって、大陸では雨季の後に雨量が減ってしまうのだが、これは、雲が高温の海洋にすべて吸引されてしまい、より大量で強力な台風へと成長してしまうからである。
「台風にならなければ3日間雨が続く」といわれるように、台風の成長が人為的に阻止された場合、その幅広の雲層は陸地に吸引されて大雨を降らせることしかできなくなる。一方で、形成されてしまった台風は集中的に特定の地域を襲い、深刻な風害や水害、高潮、大波をもたらすことになる。
幅広で分厚く、高密度で地表から低い位置にある雲群又は雲層ほど高温であり、その温度は雲群又は雲層下方の空気の温度よりも高くなる。こうした高温の雲は雲層下方の空気を吸引して竜巻を形成しやすい。例えば、米国のグレートプレーンズにおける雲層は地表からの高さが極めて低いため、竜巻の発生が特に多い。
雷雨又は竜巻の雲層、及び台風又は強い熱帯低気圧の雲層は、「活発な低気圧領域」の中央位置に形成及び集結される。上述の雲層は幅広で分厚いほど、中央位置における雲が高密度で分厚く高温となる。中央位置にある雲の温度が最も高くなるのは、この位置における高温の雲と雲層外側の低温空気との距離が離れているためである。また、中央位置の雲はその周辺に存在する大量の高温の雲に取り巻かれているため、円形の大都市における中央位置が最高温となるのと同じ理屈となる。
雲層の中央位置の温度が最も高くなることから、雲層内全体において、雲はこの中央位置のより高温の雲に強く吸引され(本発明ではこの状況を「雲層内対流」又は「雲層内圧縮」という)、中央位置の雲がより高密度且つ高温となる。この過程において、最終的には雲層全体の密度と温度が極めて高くなり、これが竜巻又は強い雷雨の雲層が瞬間的に黒く変貌する原因となる。「雲層内対流」という事実や、雲層が極めて高密度に圧縮され昇温するとの過程を知らなければ、上述の気象災害の形成を阻止する方法を見出すことは難しい。
夏季には陸地が高温となり、且つ陸地の環境は多様的であることから、各地域の温度にばらつきが生まれ、これに伴って気流も複雑となる。よって、陸地における幅広の高温雲層の多くは長尺となり、最も高温の位置が複数存在することになる。竜巻は最も高温の位置にのみ発生し得ることから、陸地における1つの幅広の雲層から複数の竜巻が発生し得る。一方、海洋上の気流は比較的単調なため、熱帯海洋上における幅広の高温雲層の多くは円形であり、最も高温の中央位置を1つだけ有する。例えば、台風は雲層中央位置に台風の目を1つだけ有する。
密度が高くはない一般的な「温室効果ガス」は、地表から10万mの高空に存在する。これに対し、熱を吸収及び蓄積する雲層の密度は温室効果ガスよりも高いうえ、地表からの距離はわずか数百mである。極めて高密度で高温の雲層は、冷却されて雨になることが難しい。このような雲層は空中に浮かぶ水のカーテンのようになり、地表からの高温空気が正常な速度で上昇するのを強く阻む。よって、雲層が存在する地域には一時的な「強い温室効果」が発生し、例えば人間に極度の蒸し暑さを感じさせたり、ひどい場合には呼吸困難を生じさせたりしてしまう。
温暖な季節に、幅広で分厚く、密度の高い高温雲層が、短時間の内に地表又は海面における高気圧の高温空気の正常な上昇を強く阻んだ場合、雲層下方の空気の温度と湿度がこれに伴い上昇することになる。したがって、高密度の雲層により発生する温室効果は、一般的な温室効果ガスによる温室効果の何倍も強い。こうした状況では、都市部、特に、海抜の低い大都市や大量の水蒸気が上昇する緑の多い地域において視界不良が発生する。
どのような季節にもいえるが、特に夏季においては、特定の地域に幅広で高温の雲層が長時間停留すると、強く活発な低気圧が形成される。強く活発な低気圧はその周辺地域の雲を吸引して、極度に集結されたより幅広で高温の雲層となる。一方、雲が吸引された地域は相対的に雲量が減って高気圧となるため、局地的な高温や干ばつが発生する。例えば、一方では高温や干ばつが発生し、他方では深刻な水害が発生するようになる。実際、近年の天候はまさにこうした状況となっている。以下に、高気圧又は低気圧の発生要因について詳細に解説する。
冬季か夏季かに拘わらず、大都市の温度は周辺地域の温度よりも高く、ヒートアイランドのようになっている。ヒートアイランドは周辺の雲を吸引し、その上空に停留させやすい(特に、風が少ない或いは雲の多い時季において)。そして、雲はヒートアイランドから上昇する熱を吸収するとともに、熱及び汚染大気の正常な上昇を阻むため、よりいっそう高温となる。更に高温となった雲層は、より多くの雲を吸引して分厚く密度の高い雲層となり、これにより「強い温室効果」が形成される。高温又は低気圧は、ヒートアイランド周辺における低温の汚染大気を自ずと吸引し、PM2.5の濃度と湿度を上昇させる。
上記の状況は、高温の大都市が雲層の中央位置となりやすく、これによって空気がより汚染され、降雨量が増加することを意味する。実際、近年では、高温の大都市や大きな島又は高山地域において百年に一度ともいわれる極めて強い雷雨が発生している。
雲又は雲層は、最も近距離の高温領域や低気圧領域には吸引されるが、あまりに遠い更なる高温の領域や低気圧の領域には吸引されない。これは、近距離の場合にはより大きな温度差や気圧差が形成されるためである。距離が近いほど吸引力は強くなるため、幅広で高温の雲層が自ずとその付近における幅狭の雲層を吸引したり、或いは、2つの雲層が互いに吸引し合ったりすることで雲層対流が形成される。
幅広で高温且つ高密度の雲層は、陸地又は海洋における「上下の平均気温」を上昇させる。「上下の平均気温」とは、本発明が記載の便宜上使用する用語である。計算方法しては、地表又は海面の空気の温度に、全幅数kmの分厚い雲層全体の平均温度を加えて2で割った値とする(具体的な計算方法については下記で示す)。
上述した雲層の密度増加及び昇温過程によれば、中央位置における高温の雲とその下方における高温の空気は、最終的に極限まで加熱されて、自ら高速で上方へ向かう。結果、高温の雲層とその下方における高温空気の上昇圧力が放出されることで、強い雷雨、雹、旋風、ウインドシア又は竜巻が発生する。雲層中央位置の下方で出現する局地的強風は、特定箇所で大火災が発生した場合に、火災現場における高温の空気が急速に上昇するに伴って、これを補填するように周辺の空気が強力に引き入れられることで強風が生じる状況と似ている。
雲層が極度に集中するのを阻止すれば、降雨領域を均一にし、降雨回数を増やすことができる。これによって、干ばつや高温、水害を回避又は減少させられるだけでなく、河川の水を長距離流動させて河の水質汚染問題を軽減させる等が可能になる。実際のところ、近年、特に強大な水害の多くは局地的且つ集中的に発生している。例えば、特定の大都市や山間地帯において、短時間の内に100ミリを超える雨が降っている。
地球温暖化がそれほどではなかった過去には、雲量が必然的に少なく、低温であった。よって、極めて強い雲層対流が生じて雲を極度に集中させることがなかったため、降雨回数が多く、降雨領域も均一であった。上記の説明では、地球温暖化が進むほどに天候は異常となり、平均降雨回数の減少と降雨領域のばらつきがもたらされるとしたが、現実はまさにこの通りとなっている。
地球温暖化が進むほどに、雲は多く、高温且つ集中するようになり、これに伴って吸引力も強くなる。結果、雲が吸引された地域は厳しい日差しに直接晒されることとなり、陸地の干ばつ、高温、更には砂漠化といった現象が招来される。高山における千年級の氷河が次第に消失していることが、地球温暖化を裏付けている。
北半球の晩秋から初春にかけては、恒温性である海洋の空気の温度は陸地における空気の温度よりも高くなる。よって、雲は海洋上に集結するか、或いは一部が南半球に吸引されてゆく。これにより、全体として北半球の陸地に大雨が降ることは減る。雲は地球表面の温度に影響することから、雲量が増加することで、冬季と夏季の温度差は拡大する。即ち、極寒や酷暑といった現象が発生し得るが、現実はまさにこの通りとなっている。
地球温暖化は必然的に地表と海水の温度を上昇させるが、空気が非高温性であるのに対し、地表と海水は恒温性である。寒冷期において、高密度の雲層が特定地域の日差しを遮った場合、或いは太陽がない時間帯に、当該地域における地表の空気の温度は急速に下がるが、地表自体の温度はまだ下がらない。これにより温度差が発生し、やや高温の地表が地表の冷たい空気と近距離で接触し、互いに吸引し合うことで、霧が発生する。当該地域に突然発生した冷たい空気は、近接するまだ温度の下がっていない地域、又はやや暖かい海洋上の空気に強く吸引されるため、突如として強く冷たい風が発生して温度が下がる。これは、地球上の雲量の増加によって、厳寒や強風が増加することの表れである。
降雨回数が減少することで、土壌、特に山体の土壌が水分不足となって収縮又は緩んでしまう。また、近年降る雨は、多くが非常に集中的で極めて強い雷雨であるため、緩んだ山体の土壌が大量の雨水によって重量を大幅に増すことになる。更に、雨水は緩んだ山体の土壌から山体又は地下へと容易に浸入し、土壌を流体のように変化させて押し流してしまう。これにより、地すべりや土石流、地盤沈下が発生しやすくなる。また、降雨回数の減少は、山上植物の生育を困難にし、砂漠化をもたらしてしまう。実際に、上述のような気象災害が近年多発している。
雪溶け時と降雪時の低温については異なる解釈がされている。本発明では上述のように、雲層が「強い温室効果」を発生させると解釈する。雪は、空気に比べて高温な雲から形成されて落下したものである。よって、降雪期間に極寒となることはない(強い寒風を伴う吹雪時を除く)。しかし、地表が冷却され、分厚い積雪が溶解する際には上空に雲層がなくなっていることから、雪溶け時の地表は降雪時よりも低温となる。
雲層の集結及び雲層の自動圧縮過程
水分を含んだ雲は空気よりも重い。夏季の日中、雲は厳しい日差しに照射されて高温となるため、より高くまで上昇するが、夜間又は降雨時には低温となって下降してゆく。温暖な季節では、やや直射的な太陽によって、海、湖、河川、湿地及び緑の多い地域等から大量の水分が蒸発して上昇する。これにより、まずは地表から低い位置に小雲群が大量に形成される。小雲群は、最も近傍の低気圧領域又は上下の平均温度が高い領域に吸引されて移動し、移動しながら徐々に上昇してゆく。
大量の高温雲群は、上昇及び移動の過程で互いに吸引し合い、大きく密度の高い大雲群又は小雲層へと変化する。雲群又は雲層は、別々のタイミング又は地域から上昇を始め、低気圧領域に到達する。よって、雲層は一般的に上、中、下の3層に分けられる。
太陽が雲群に斜めに差し込むと、太陽に面した雲は高温となり、太陽に面さない側は低温となる。低温の雲は高温側に吸引されて、高温側を押圧する。これが、雲群の形状が急速に変化する原因の一つである。また、雲群が自ら外側から内側へ圧縮され、雲群中央における高温の雲が急速に上昇することも形状変化の原因となる。
温暖な季節には、一部の雲群が、最も高温の領域又は活発な低気圧領域の中央位置に到達するとそこに停留するが、高温のために引き続き上昇することもある。高空になるほど空気は希薄となり、風速が速くなるため、高密度の雲群は高空で分散し、薄い散乱雲となる。これらの次第に上昇した分散雲は、大量に凝集されると当該地域の高層雲となり、青空を次第に青白く変化させ、続いて白からグレー等へと変化させてゆく。この雲層は当該地域に停留するだけで、凝集されるほどに幅広で分厚く、高密度、高温且つ恒温性となる。そして、その中央位置は自ずと最高密度、最大厚さ及び最高温となる。このような雲層は、冬季の雲層のようなシート状とはならない。
雲は多層になるほど、地表に対する太陽の照射を遮るため、元々は高温であった地表の空気は降温してゆく。高空の温度は地表からの上昇温度を受けたものである。よって、地表の空気の温度が下がることは、雲層の温度が同時に低下することを意味する。このとき、上層の低温の雲は温度が下がると、自ずと下降して下層の高温の雲を押圧する。同時に、地表から上昇した高温の空気も上方に向かって下層の雲を支えることから、多層の雲が「上下に圧縮」されて単一層の高密度な雲層となる。そして、この高密度の雲層が地表の空気を降温させる。単一層の高密度の雲は、更に自ら「上下に互いに圧縮し合う」とともに、全方位において外側から中央位置へ向けて極めて分厚く高密度な雲層へと圧縮されてゆく。そして、その中央位置の雲がこれに伴い更に高温となる。
この巨大で高温な高密度の雲層の周辺に別の雲層がある場合には、2つの高温の雲層が互いに吸引し合うか、或いは巨大な方が小さい方を吸引することで、2つの雲層に対流が発生する。雲層が対流すると、当該雲層は更に高密度で高温となるため、雲層の「上下の圧縮」と「外側から内側への圧縮」過程が加速される。これにより、当該雲層は地表から更に近く、分厚く、極めて高密度且つ高温となり、まるでモンゴルのゲルを大型化したような形状となる。以上は、豪雨、竜巻又は巨大台風の雲層の集結過程である。極めて強い雷雨又は竜巻が発生する直前の雲層が瞬間的に黒く変貌するのは、上記のような理由による。
1km低下する毎に温度は約6度上昇し、空気の気圧と密度も高くなることから、上記のように低い位置に押さえつけられた高密度の雲層は、温度と密度が相対的にみて急速に上昇する。これ(強い温室効果)に伴い、雲層の下方又は地表の空気の温度及び湿度も上昇するため、極めて高温多湿となる。この現象は、建築物の階層が低くなるほど暑くなるのと同じ原理である。このようにほとんど水のカーテンともいえる雲層では、特にその中央位置の雲とその下方の空気の温度が、最終的には自ずと極限まで昇温して上方へと向かうことになる。これにより、雲層の中央位置又は最高温位置の下方に極めて強い雷雨、ウインドシア、雹が発生し、その後に竜巻が発生することもある。
自然界において、高密度な雲層下方における高温多湿で高気圧の空気を放出するための最も一般的且つ穏やかな方式は雷雨による放出であり、その次が雹による放出、そしてやや激しい方式が竜巻又は台風による放出となる。もし、雲層の最も高温な位置で、人工降雨法により予め放出ができれば、上述のような気象災害の発生を回避可能となる。
複数の事実から、極限まで加熱された雲は、雲層の中央位置において急速に上方へ向かうことが証明されている。夏季の青空が広がる日差しの厳しい時期には、厳しい日差しに晒されて緩やかに移動する輪郭の鮮明な大雲群の中央位置から、雲柱が突如として急上昇する様子を肉眼で見ることができる。このような雲柱は、地表から確認可能である。また、同じタイミングで、望遠鏡で根気よく高温の大雲群における中央位置の頭頂部を観察すれば、この位置の高温の雲の上昇速度が速く、これらの雲がわずかながら上下に起伏していることを視認できる。わずかに起伏するのは、水を沸かすときに下層の高温の水が上昇して上層の水を起伏させるのとやや似た理由による。これより、雲群中央位置の雲が高温であることが証明される。飛行機に乗って、上方から高密度の雲層の頭頂部を見下ろした場合には、柱状の雲が雲層のうち最も高密度である中央位置に出現していることを視認できる。また、柱状の雲はいずれも高密度で明るい。
但し、厚みが数km以上である幅広の雲層の場合、最高温位置における頭頂部の雲は柱状とはならず、円形のわずかに隆起した形状となる。これは、巨大で分厚い雲層全体の多くが、すでに高海抜の低温領域にあるため、太陽と地表から上昇した熱によって分厚い雲層を急速に昇温させることが容易ではないためである。よって、雲層中央位置の雲とその下方の空気の温度は、多くが雲層内対流の効果及び雲と雲との熱量伝達によって、徐々に極限まで上昇してゆく。これにより、小さく高温の雲群における雲のように急速に上方へ向かうことはない。
徐々に加温された巨大な雲層自身に蓄積される熱量とその下方に凝集された高温の空気の量は、小雲群に蓄積された熱量の何倍にも及ぶ。よって、その中央位置の雲とその下方の空気の温度が最終的に徐々に極限まで上昇した際には、自ずとより広範囲でより力強く上方へと向かい、極めて巨大な熱量を放出することになる。これにより、上述の気象災害が形成される。
上述の雲層が、温度の均一な熱帯海洋上で形成された場合には、海面の空気が恒温性であり、昼夜の温度差が小さく、気流が安定していることから、雲層の温度上昇速度は陸地よりも更に緩やかとなる。これより、雲層は不安定な強い気流から衝撃を受けて先に雨を降らせることがない。熱帯海洋上では大量の高温水蒸気が上昇するため、雲量が急速且つ安定的に増加する。よって、海上の雲層(台風雲層)は、直径数千km、厚み20kmとなるまで徐々に凝集してゆく。
雲層がより幅広で分厚く高温となるほど、雲層中央位置の雲とその下方の空気は高温となる。そして、この2種類の熱が高密度の雲層周辺から大量の雲と空気を吸引する。こうして雲層外部から雲層中央位置に流入した雲と空気は、雲層全体、特に中央位置における雲を上方にのみ押し上げ、周辺には拡散させない。よって、雲層全体の厚みが大きくなり、その中央位置がより分厚くなって円形に隆起した形状となる。
上記雲層は、必然的に巨大で活発な低気圧領域の中央位置に存在する。低気圧と巨大な雲層(強い温室効果)により発生した高温多湿の空気は、自ずとその周辺部へ徐々に拡散し、広範囲の地域を蒸し暑くする。実際、台風が特定地域に到達する前には、当該地域は極めて蒸し暑くなる。このような高温の雲、特に中央位置における高温の雲とその下方における膨大な高温空気は、長時間にわたって更に昇温し続けた後、最終的に極限まで加熱されて、自ら雲層の中央位置で放出を行う。これにより、中央に目を持つ台風が形成される。
上記の巨大な雲層における中央位置の頭頂部には、大きな円形でわずかに隆起した形状が形成される。よって、衛生からは、中央位置の雲層がわずかに隆起しており、明るいか純白且つ高温であることを観察可能である。地表又は海面から観察される雲層中央の最高温位置における雲は暗くなっている。また、この位置下方の空気は温度と湿度が高く、やや薄い雲霧のようになっている。形状はV字状であるが、このV字状は極めて遠方からのみ視認可能であり、例えば海洋上や非常に広大な平原であれば確認しやすい。これは、虹が遠距離からのみ視認できることと似ている。雲層の中央又は最も高温の位置を探す場合には、衛星を用いて雲層の厚み及び密度を観察したり、計器で雲層の温度及び雲層下方における空気の湿度と温度を測定したりするほか、肉眼で遠距離から観察してもよい。
以上の説明より、竜巻又は台風が形成される前に、活発な低気圧領域区内に位置する幅広の雲層(特にその中央位置)は、各種の気象計器で観察及び検出できるだけでなく、肉眼でも雲層の上下から予め視認及び測定可能なことがわかる。実際に、衛星写真には、形成された台風の目周辺における雲層の隆起が映し出される。これは、台風の目が形成される前に、台風雲層の中央位置が隆起することを証明するものである。
活発な低気圧の発生要因
活発な低気圧とは、特定地域における同高度の気圧が「一時的に」その付近の地域の気圧よりも低くなることと定義される。空気の横方向への移動は上昇に比べ容易なため、わずかな気圧差であっても横方向の風が発生する。気象災害の発生要因とその形成過程を理解しやすくするためには、まずは活発な低気圧(以下、「低気圧圏」とも称する)の複雑な発生要因と、その形成過程を研究することが必要である。
自然界で形成された活発な低気圧は、広範囲の空間でのみ形成され、小範囲の空間に形成されることはない。例えば、高温で密閉されていない部屋内の気圧は、この部屋外部の低温空気の気圧と等しいが、密閉された機体の中では人工的に気圧を高めることができる。
地球の引力の影響により、地表から近いほど空気の密度と気圧は高くなり、地表から高く離れるほど空気の密度と気圧は低くなる。よって、海抜の高い場所と低い場所では、短い距離であっても「一定の気圧の高低差」が存在するが、通常、このような「気圧の高低差」が高速の上昇気流を発生させることはない。
従来の理論では、活発な低気圧は雲層対流の後に形成されると考えられていた。また、従来の理論では、低気圧が高温空気の膨張によりゆっくりと形成されることについては言及してこなかった。これは、従来の理論には上述したような「上下の平均温度」についての言及がなかったためである可能性が高い。地表の温度だけを基準とした場合、低気圧が高温により発生するとは考えられない。これは、地表が極度に高温となる砂漠地帯の気圧が非常に高いためである。
しかし、本発明では、一時的な「活発な低気圧」は、広範囲にわたる上下の均一な温かい又は熱い空気により形成されると考え、特に、吸熱・蓄熱が可能で恒温性の雲層が次第に膨張した後に形成されるものと考えた。即ち、雲層対流の前には徐々に形成が始まっているのである。例えば、熱帯域の経常的な気圧は寒帯域に比べ低く、高温となる午後の気圧は低温である朝よりもわずかに低い。しかし、これらは経常的或いは通常の低気圧差にすぎない。
ある地域の気圧が常にわずかに上下しているのは、当該地域における「上下の平均温度」の変化によるものと考えられる。一方で、上下の平均温度の変化は、雲量の増減や太陽の昇降、降雨の有無、低温の雲層や空気の流入の有無といった要因に影響される。例えば、気圧は一般的に雨が降った後(空気と雲層の降温及び減少の後)に上昇する。また、ある地域の気圧は、その周辺で移動する低気圧の影響によっても上下し得る。例えば、極度の低気圧である台風の影響で急降下する。
上述のように、高温で幅広の雲層は特定地域における上下の平均温度を上昇させる(寒冷域から流れ込んだばかりの低温の雲層は除く)。このことは、強く活躍な低気圧が、任意に移動可能な幅広で高温の雲層により形成されることを表している。形成された活発な低気圧(巨大な雲層)は横方向へ移動して強風を発生させる。例えば、「台風」や「熱帯低気圧」の移動は、それらの通過地点に風害をもたらすことがある。実際に、上述の気象災害はいずれも活発な低気圧領域内で発生している。
活発な低気圧の発生要因は複雑だが、主には、まず大量の雲が、上下の平均温度がやや高くなっている地域に長時間にわたって集結又は停留することによる。地球温暖化が進むほど雲は増えて集中し、いっそう高温となるため、強い活発な低気圧がより形成されやすくなる。そして、やや離れた周辺地域の雲を強く吸引し、その周辺地域に相対的な高気圧を形成するため、極端な高温や干ばつが発生することになる。
夏季には、雲量が多く高温の地域で、直径約5000kmの範囲内に複数の独立した低気圧圏が出現することがある。これは、低気圧圏が大量の雲と高温により形成されることの裏付けである。ある地域における「上下の平均温度」が上昇し、大量の雲が凝集する初期には、空中の雲層が次第に吸熱及び蓄熱することで昇温してゆく。そして、当該領域の空気をゆっくりと膨張させることで気圧が徐々に低下する。したがって、気圧は急低下することなくゆっくりと低下してゆく。低気圧が急速に形成されたり急激に低下したりする場合には、必然的に、地球表面において災害級の急激な強風が多発することになる。
特定の領域に雲層対流が発生した後には、高温の雲層における雲量と密度が急増することになる。急速に密度が増した雲層は、いっそう吸熱と蓄熱が可能となるだけでなく、地表における高温の空気が正常に上昇することを阻む。これにより、当該領域の上下の平均温度は際立って高くなるため、当該領域の気圧は明らかに低下してゆく。活発な低気圧が雲層対流の後に形成されると一部の理論で考えられているのは、上記のような結果によるものと思われる。
低気圧から正常気圧への回復もまた緩やかなものだが、気圧低下時に比べると速度は速い。これは、低気圧領域内における雲層が雨を降らせ、雲と空気の温度が急速に低下するためである。移動可能な低気圧は、域外の高気圧の空気を強力に吸引して強風を発生させる。これにより低気圧領域内の温度が下がることから、低気圧は速やかに回復してゆく。これが、極度の低気圧である「台風」又は「熱帯低気圧」が、その通過途中で強風を発生させる原因の1つである。
降雨は上下の平均温度を急速に低下させて低気圧から回復させるため、人工降雨は気圧を急速に回復させるとともに、雲量を減少させられるバランスのとれた方法である。
低気圧領域奥側における上下の平均温度は自ずと最も高くなる。即ち、気圧が最も低くなる。一方、中間と外周の気圧はそれほど低くはなく、外周よりも外側の気圧は正常となる。奥側における極めて低い低気圧と正常な気圧が、上記のように段階的に隔てられることなく短距離で接触してしまうと、地球表面には自ずと災害級の急激な強風が発生することになる。
低気圧圏が巨大であるとはいっても、地球の表面全体に比べればたいへん小さなものである。したがって、低気圧圏は全体として、地球の大気循環に伴って移動したり、或いはその周辺における上下の平均温度が高い地域に吸引されて移動したりする。そして、台風やその他の暴風雨、雷雨の雲層は、いずれも低気圧圏の奥側に存在する。
上記の理論に基づけば、それ自体が極度の低気圧である台風もまた、巨大な低気圧圏の横方向への移動に伴って移動することになる。これが、極度の低気圧である台風もまた横方向へ移動する理由である。低気圧圏が特定の地域を通過する際には、その地域の気圧が直ちに低下する。強く活躍な低気圧は海面(潮)を上昇させ、特に、気圧が極めて低い台風の目の下の潮がいっそう上昇することから、強風と高潮によって大波が発生し得る。そして、現実はまさにこのようになっている。
夏季に、特定地域の地表に局地的な高温や干ばつが発生するのは、当該地域の雲がその周辺地域の強く活躍な低気圧によって強力に吸引されるためである。実際に、近年では局地的な極度高温域(活発な高気圧領域)が多発しているが、これは、周辺地域に局地的或いは集中的な豪雨(活発な低気圧領域)が発生していることが原因となっている。以上の説明より、地球上の雲量の増加によって、局地的な極度の高温や干ばつが形成されやすくなることが証明されている。例えば、雲量が多くなると台風やスーパー台風が育成されやすくなり、台風が大量の雲を吸引してゆく。
上述したように、地球が温暖化すると、高温の雲層は冷却されて雨に変わることが難しくなる。そのため、雲層は極めて幅広で分厚く、高密度に凝集してからようやく非常に強い雷雨やその他の気象災害を発生させることになる。つまり、雲層が極めて幅広で分厚く、高密度に凝集することを人工的に予め阻止できれば、例えば台風、竜巻、局地的で深刻な水害、極度の高温、干ばつ、降雨地域のばらつき、深刻な大気汚染等の気象災害を解決可能ということになる。
低気圧圏奥側の気圧が低いことから、雲は自ずと奥側に吸引されて、より分厚く高密度且つ高温となる。よって、低気圧圏内に存在する幅広で高温の雲層が低気圧圏から流出することはない。そして、低気圧圏内でのみ上昇しつつ、極限温度に昇温するまで、より分厚く、高密度で高温且つ恒温性となるよう凝集してゆく。更に、高密度の雲層は地表からの高温の排気ガスが正常な速度で上昇することを激しく阻む。
このため、高温の雲層下方に凝集している湿った高温の空気も、極度の高温多湿となるまで昇温し続ける。そして、高温の空気は自ずと周辺から汚染大気を含む低温の空気を吸引する。これにより、PM2.5が高濃度化してゆく。地球温暖化の加速は、上記のような状況を必然的に悪化させる。
活発な低気圧形成についての更に詳細な説明
活発な低気圧の発生要因は極めて複雑である。そこで、更に詳細に説明しつつ、明らかな自然現象を提示することで本説明の理論を裏付ける。本説明でいうところの雲層の幅、厚み及び密度は一定ではなく、各季節、時間帯、その時の気候もまた一定ではないため、本説明では共通の温度データを示すことができない。なお、本説明では統一性を持たせるべく、後述する高温の雲層の厚みを4kmとする。
活発な低気圧は高温の空気が一時的に膨張した後に形成される。しかし、晴天下の厳しい日差しにより地表が高温となった地域は活発な高気圧領域となり、逆に、高温でなければ形成されない低気圧は、高密度の雲が存在し且つ地表が低温の地域に発生する。このような逆現象は、活発な低気圧を形成する温度が地表の温度からのみ計算されるのではなく、地表と高空の「上下の平均温度」から計算されるためである。
上下の平均温度が高い地域は自ずと大量の雲を吸引する。そして、当該地域に例えば直径数百kmともなる分厚く高温の雲層が凝集すると、当該地域の上空(対流圏)は高温となる。停留或いはゆっくりと移動する幅広で高温な雲層がこの地域に凝集されると、恒温性である高温の雲層は、雲層が存在する4km厚の空間を昇温させる。そして、この高温の空間に強い温室効果が加わって、当該地域における地表の空気が昼夜を問わず高温となる。このような状況で、当該地域では長時間にわたって上下の平均温度の高い空気がゆっくりと膨張し、徐々に活発な低気圧を形成する。
実際に、高密度な雲層が存在する夜間は、高密度の雲層がない夜間に比べて高温となる。これは、米国の気象関係者により公開された事実である。当時、彼らが記録を精査する中で発見したところによれば、ニューヨーク市では、911事件に伴うテロ対策のため全面的な飛行禁止を実施して以降、航空機から大量の雲が発生することがなくなった。雲層は一時的な温室効果を発生させることから、ニューヨーク市の夜間の温度は、飛行禁止が実施されていない頃に比べて低下したという。
以上より、昼夜の温度差が大きい砂漠地帯や乾燥地帯では、日中は暑いものの夜間になると低温となる。更に、砂漠地帯や乾燥地帯では上昇する雲量が少ないことから、その周辺の雲も少なく、上下の平均温度を長時間にわたり高温に保てるだけの十分な量の雲が集結しにくいため、温室効果が生じない。よって、活発な低気圧による豪雨は生じにくくなる。以上は、活発な低気圧が形成される条件として、上下の平均温度を長時間にわたって高温に保つだけの十分な雲量が必要とされることを示している。
活発な低気圧は、一部地域の広範囲にわたる空間において、高温又は温暖な空気がゆっくりと膨張することで形成される。広範囲にわたる空間には、高密度の雲を有する直径数百kmにわたる領域面積、地表から雲層までの空間、及び直径数百kmにわたる分厚く密度の高い雲層(4km厚)に占められた高さ4kmの空間が含まれる。
上記の広範囲にわたる空間は上下の平均温度が高温であり、これに低気圧効果及び高湿度(即ち、強い温室効果により生じた高温多湿)が加わることから、一部の昆虫が地底から這い出してくる。これは、高密度の雲層により形成された「強い温室効果」によって、地球表面の広範囲にわたる空間が高温多湿となったことの表れである。これに対し、晴天で日差しの強い地域では、地表が高温なだけで湿度は上がらないため、上空はかえって低温となる。
夏季には、高気圧領域内の空は「高層雲」がないため濃いブルーとなる。空が青いほど太陽は遮られることなく地表を照射し、これに伴って地表の空気はますます高温となる。しかし、その広範囲にわたる上空は、幅広で高温の雲層が存在しないことから逆に低温である。これより、高気圧領域における「上下の平均温度」は低気圧領域よりも低くなるといえる。
活発な低気圧の形成過程、及び高気圧領域と低気圧領域の位置が度々入れ替わる原因をより理解しやすくするために、本明細書では後述のデータを引用する。なお、これらのデータは温度の高低を区分するためにのみ供される。
一例として、特定の領域に直径数百km、地表から1kmの高温の雲層が存在するとする。この高温の雲層自体の厚みは4kmであることから、当該雲層の頭頂部は地表から5km離れていることになる。雲層は地表に対する太陽の熱照射を遮るため、雲層が存在する領域の地表は低温である。しかし、この4km厚の雲層自体は高温となっている。
雲層が存在しない領域の地表には太陽が遮られることなく照射されるため、地表の温度は雲層が存在する領域よりも高くなる。しかし、その上空の温度は雲層が存在する領域よりも低い。後述する算出方法で得た結果によれば、雲層が存在する領域の上下の平均温度は雲層が存在しない領域よりも高くなるため、雲層が存在する領域の気圧は低い。
活発な高気圧領域又は低気圧領域が度々入れ替わるのは、次のような原因による。例えば、A領域が幅広の雲層が存在しない高気圧領域(ただし、小雲群は存在)であり、空の色が必然的に濃いブルーであるとする。雲層が存在しない場合、日光は遮られることなく地表を照射するため、A領域の地表の空気の温度は、例えば爽やかに乾燥した34度にまで上昇する。
自然界の法則によれば、高度が1km上がる毎に気温は約6度下がることから、A領域地表の高温空気は5km上空まで上昇すると、温度が34−(5×6)=4度まで低下することになる。そして、A領域の地表と高空の「上下の平均温度」は、34+4を2で割って得られる19度となる。
また、A領域周辺のB領域が、4km厚の高温の雲層が存在する活発な低気圧領域であり、高温の雲層が地表から1km地点にあるとする。即ち、4km厚の雲層の頭頂部は地表から5km地点ということになる。B領域では、4km厚の雲層によって太陽からの直射が遮られるため、地表は低温となる。しかし、B領域には「強い温室効果」との要因が存在することから、B領域の地表温度はA領域の34度に比べてやや低く、例えば高温多湿の30度となる。
温度は高度が1km上がる毎に必然的に約6度低下するが、B領域の上空には高温の雲層と「強い温室効果」との要因が存在している。よって、B領域の上空の温度は自ずとA領域よりも高くなる。したがって、理論上は、高温の雲層があるB領域の上空1km地点では、温度は6度ではなく約4度しか低下しない。即ち、30度から4度低下する。これは、B領域上空の「1km地点」の雲層の温度が「26」度となることを意味する。
雲層は、太陽熱を吸収及び蓄積する。B領域の上空1km地点で26度である高温の雲は、必然的にその上方の雲に熱量を伝達する。結果、上部の雲の温度は大幅に上昇することになる。26度の雲は熱量を伝達する過程で降温するが、4km厚の雲層自体はすでに高温となっている。水分を含有した高密度の雲は水のように一体に連なっているため、熱量を上方へ伝達しやすい。よって、B領域上空の4km厚である密度の高い雲層は温度が比較的均一であり、乾燥した空気のように高度が1km上がる毎に温度が6度低下するわけではない。以上の理論によれば、B領域上空の4km厚である雲層の「全体平均温度」は約18度となるはずである。これより、B領域の地表と高空との上下の平均温度は30+18を2で割った「24」度となる。一方で、地表が高温であるA領域の上下の平均温度はわずか「19」度であり、上下の平均温度が高いB領域のほうが低気圧領域となる。
A領域の上空に雲群又は小雲層が存在する場合、これらは自ずとB領域上空における高温の雲層と低気圧とに強く吸引される。これにより、B領域の雲層はますます凝集して分厚くなり、災害級の天候を発生させてしまう。反対に、B領域地表の低温空気は、A領域における高温の地表の空気によって吸引される。特に、B領域に雨が降って地表の空気が急速に降温した場合にはそうなる。これが、低気圧領域周辺と低気圧領域内において、上下の気流が多くの場合に逆方向へ流動する理由である。実際、低気圧内の天候と風向は非常に不安定である。例えば、竜巻が垂直とならない場合があるのは、雲層の流動方向と地表の空気の流動方向とが逆になるためである。
本説明で引用した雲層の厚みは比較的小さいものだが、B領域の雲層がより幅広で分厚く、高密度の場合には、その上下の平均温度もより高くなり、活発な気圧もより低いものとなる。実際に、気圧が極度に低い台風や雷雨の雲層が特定の地域に接近すると、その地域の上空では、大量の雲が高速で台風又は雷雨の雲層に向かって流動してゆく。
低気圧であるB領域は、最終的には大雨や極めて強い雷雨等を発生させる。雨が降ることで雲層及びその下方の空気は急速に冷やされるため、強風が生じることになる。また、これらの風と雨とが高温の雲層と地表の空気温度を下げ、雲量が降雨によって減少する結果、元は極度に低かった気圧が次第に回復してゆく。逆に、当初は雲が存在しなかった(高気圧の)A領域の地表は、長時間にわたって太陽に照射されることで自ずと高温になっている。そして、この高温に加え、地表から蒸発して上昇した高温の雲が、A領域における低めの上下の平均温度を、降雨したB領域よりも高くなるまでゆっくりと上昇させてゆく。
雲は、水分を含有した気体であって液体ではない。よって、密度が不足する場合には、全てがB領域に停留して雨となり、降下するということはない。B領域の雲と空気は雨によって温度が低下しているため、上空に残った低温の雲は、自ずとその付近における上下の平均温度が高いA領域に吸引されてゆく。結果、B領域は晴天領域へと変化し、次第に正常な気圧領域となる。いわゆる「雨のち晴れ」とはこのことである。
軽量である高温の空気は、非常に高空へと上昇した後に消失する。しかし、重量のある雲は一定の高さまでしか上昇せず、そこに停留してA領域の高層雲となる。結果、A領域の元は濃いブルーであった空の色は、青白、白又はグレーとなり、次第に低気圧領域に変化してゆく。実際、近年では、ある地域に深刻な局地的水害が発生した場合、その付近の地域は逆に日差しの厳しい晴天となり、極度に高温となるとの現象が多発しているが、このような状況は上述の説明と一致するものである。
小さな砂粒や乾燥地帯は恒温性に劣る。よって、砂漠地帯と乾燥地帯では、日中は高温であっても夜間には低温となる。夜間になると、乾燥地帯における低温の雲は急速に分散するか、付近の高温且つ恒温性の地域に吸引されてゆく。このことは、ますます乾燥して活発な低気圧が形成されにくい地域がある一方で、雲の多い臨海地域や昼夜ともに恒温性である暖かい海洋では低気圧が形成されやすいことを表している。もし、雲の多いA領域において、低温である夜間の上下の平均温度を周辺地域よりも高く保てれば、A領域には低気圧を維持することが可能となる。
通常の場合であれば、活発な高気圧領域又は低気圧領域は短期的に互いに入れ替わってゆく。しかし、地球温暖化の進行によって雲量が非常に多くなる温暖な雨季には、高温の雲が、降雨中で且つ高温多湿の空気が大量に上昇している低気圧領域へと大量に流れ込んでゆく。このとき、当該領域の雲量は急速に補填されることから、当該低気圧は持続的且つ長期的に豪雨を降らせ続け、深刻な水害を招来する。
実際に、雨季の多くは温暖な季節にあり、海洋に近い省では低気圧が容易に形成されたり、長期的に維持されたりする。以上の説明から、活発な低気圧が主として雲から発生することが明らかである。雨季に、中国の南方や臨海地帯の一部で、雲が多い地域に長期的豪雨による深刻な水害が発生しているのは、以上のような理由による。
雲は、「上下の平均温度」が高い地域に吸引される。気象関係者が地表の温度のみを用いて上下の平均温度を用いた計算を行わない限り、天候を正確に予測することは不可能である。
北半球の嵐のほとんどが反時計回りに旋回する原因
従来の理論では、嵐が反時計回り又は時計回りに旋回するのは、地球の「コリオリ」や地球の「磁界」、又は何らかの効果によるものと考えられてきた。しかし、このような説明は十分に論理的且つ詳細であるとはいえず、確実ではないことが自認されてもいる。上述のような自然界の現象は確かに複雑である。よって、本発明における各種の発見、特に自然界の高検知能力について理解していなければ、こうした現象を説明することは難しい。
本発明では、独自に次のような説明をする。即ち、低気圧圏内に停留したままの巨大で高温の雲層と高温の空気は、その周辺の雲と空気を強く吸引する。これは、当該雲層の周辺各方面から低温の雲と低温の空気が急速に流れ込んで、雲層に強い衝撃を与えることに等しい。結果、当該雲層は移動を余儀なくされる。高温の雲は低気圧圏から流出し得ないにも拘わらず移動を余儀なくされるため、低気圧圏内でのみゆっくりとした速度で大きく旋回するよう移動する。実際に衛星画像を見ると、低気圧圏内の巨大な雲層は、大きな環状を描きつつゆっくりと旋回している。
ある領域の空気が最高温度となるのは、太陽の直射を受けた1〜2時間後である。即ち、午後又はその時の太陽が当該領域の西方に位置した後となる。雲や空気は温度と気圧を検知する能力に優れ、必ず最も近距離にある最高温度の空気に吸引されて前進する。
北半球では、前記雲層の雲が大きな環状を描いてゆっくりと旋回を開始するとき、まずは太陽の直射を受けている高温の空気に吸引されて西方へと移動する。当該雲層は大きな環状をなして旋回するのであって、直線的にゆっくりと移動するわけではない。よって、西方に吸引されて移動を始めた雲は、続いて、まずは基本的に気圧の低い赤道方向(南方)へと吸引されて移動する。これら2つの最初の移動又は旋回方向は反時計回りとなる。南半球における時計回りの旋回についても、原理は上記の説明と同じである。
巨大な雲層は一旦特定の方向にゆっくりと旋回を始めると、この方向を変えることなく同一方向を維持して旋回する。必然的に、巨大で高密度の雲層内に発生する各種の嵐は、いずれも上記の大旋回方向にしたがって移動することになる。以上の説明より、北半球の嵐のほとんどが反時計回りに旋回するのに対し、南半球の嵐のほとんどが時計回りに旋回することの謎が解明された。
赤道領域の気圧が基本的に低いのは、上述のように、気圧が長時間且つ持続的な高温空気の膨張によって形成されるからである。赤道上の地表と海面は経常的に高温となっており、高温空気が高速上昇して上空を常に高温としている。よって、赤道の上下の平均温度は常に高く、結果として経常気圧が低くなっている。
赤道以北における高緯度の内陸部(広大な砂漠地帯を含む)の一部では、夏季の一時期に日中地表温度が50度にも達するが、その高空は雲が少ないために上下の平均温度は高くはない。加えて、昼夜の温度差が大きいため、このような環境では分厚く高密度の雲層が凝集されにくい。よって、気圧が高くなり、総体的に赤道領域よりも経常気圧が高くなる。
雹の発生要因と形成過程
雹は、極めて分厚く高密度な雲層から落下する固体状の降水である。通常、直径は約0.2〜0.6mmであるが、大きいものになると8mmにも達する。雲層中央位置から降下する雹ほどサイズは大きく、農作物や家畜、人間に大きな被害をもたらす。雲層の密度が高く厚みが増すほど、地表から上昇する熱気流は多く強くなり、形成される雹の体積も大きくなる。雹は、雲層下方及び地表の空気を急速に冷却する。
雹形成の基本原理は、竜巻や台風、雷雨等とほぼ同じであり、主として、高密度の雲層により強い温室効果が形成された後に、雲層中央位置における高温の雲とその下方の高温の空気とが極限にまで加熱され、急速に上昇することで発生する。
雹は、急速に上昇する熱気流や高温且つ高密度の雲から衝撃を受けるとともに、これらによって下方から支えられている。また、高密度の雲内部で大きく旋回しつつ上下に転動していることから、雹の降下速度は比較的緩やかであり、長時間にわたって高密度の雲内部の水分を吸収し、増大してゆく。雹が降る範囲が狭いのは、雹が雲層中央位置でのみ発生するからである。また、雹が降る過程が短いのは、雹が熱気流の上昇期間にのみ発生し、この過程が一般的には長時間でないことによる。
雹は透明な水や一般的な人工氷よりも密度が低いため、透明度或いは透光度に劣る。一方で、光に対する反射度は高く、加えて雲層内で転動していたことから、雹は白色の丸形状となっている。なお、白色というのは日光の色にすぎず、これは日光に照射された雪や雲等がいずれも白色であることと同じ原理による。彩雲や虹、波、滝の色は、実際にはいずれも光の色である。
竜巻の発生要因と形成過程
竜巻は陸上竜巻と水上竜巻に分けられ、水上竜巻は海洋又は内陸の大規模な湖上空で発生する。竜巻は、季節に拘わらず発生し得る。本発明では、竜巻を長命と短命、暖候期と寒候期に分け、それぞれの発生要因と形成過程について述べる。
竜巻の下部直径は最小でわずか数mであり、通常は約100m〜1kmである。また、漏斗状の上部直径は一般的に1kmであり、最大で10kmに達することもある。竜巻の気圧はたいへん低いため、旋回風速は非常に高速となる。雲層が分厚く高密度且つ高温となるほど、発生する気圧は低くなり、風速も速くなる。竜巻の風速は、最強の場合で時速約500キロにも達し、人間や自動車、家屋等を吹き飛ばすほどの極めて強い破壊力がある。竜巻の活動時間は台風の長さには遠く及ばず、通常は数分程度である。しかし、極めて少数ではあるものの、約100分続くものも発生し得る。
竜巻は、高密度の雲層から地表に向かって延伸する1本の中空の雲柱であるが、雲柱内部では反対に、高速且つ持続的に地表の空気を吸い上げている。今のところ、専門家はこの奇妙な反対現象を解明できていないが、本発明ではこの現象を研究した。専門家によっては、砂漠で形成される小型の塵旋風の発生要因と竜巻の発生要因とを同列に論じているが、これは誤りである。これらの専門家は塵旋風と竜巻の発生要因を同じと考えることで、竜巻の発生要因をより複雑にとらえてしまっている。
竜巻は、従来の理論でいわれてきたような、2つの雲層が対流して衝突した際の「気流の旋回」によって形成されるのでもなければ、「熱気流の持続的な上昇」によって活動能力(寿命)が維持されるのでもない。もしこれらが真実ならば、北半球の竜巻は必ずしも反時計回りに自転しないし、南半球の竜巻も時計回りにのみ自転するとは限らない。理論的にいって、2つの雲層が衝突した後に、単一方向への旋回のみが固定されることはあり得ない。
人々は、上述した従来の竜巻形成理論に基づいて、竜巻が短時間で消失するのは熱気流が消失するためだという誤った理解をしている。実際には、竜巻の寿命は、低気圧の空気が高気圧の空気をエネルギー源として吸引することで保たれるにすぎない。そして、このようなエネルギー源が永久に存在し続けることはない。大部分の雲柱は屈曲により分断されたり、雲柱の密度が十分ではないために数分間で消失したりしてしまう。しかし、屈曲しなかった雲柱(竜巻)は約100分もの間活動可能なことがあり、従来の理論が正しくないことを裏付けている。
以下に述べるのは、いずれも自然界の法則及び竜巻形成の自然条件である。即ち、海抜が高いほど気圧は低くなり、海抜が低いほど気圧は高くなる。低気圧の空気は高気圧の空気を吸引し、高温の空気又は高温の雲は低温の空気又は低温の雲を吸引する。また、空気よりも恒温性である雲は、太陽熱及び地表からの上昇熱を吸収及び蓄積する。雲層は幅広で分厚く且つ高密度であるほど高温となり、その中央位置が自ずといっそうの高温となる。また、地表から低い高密度の雲層は高温であり、その温度は雲層下方又は地表の空気よりも高くなる。また、急速に吸引されて上昇する空気が旋回するのは、旋回しながら上昇するほうが容易なためである。
竜巻発生の条件としては更に、巨大で極めて分厚く、高密度で地表から低い高温の雲層が必要とされる。例えば、2つの雲層が対流すると、雲層は急速に密度を増して昇温する。急速に密度を増した雲層は、続いて更に高密度で地面から低く、且つ高温となるまで「自ら圧縮」してゆく。これにより、当該雲層は短時間のうちに昼間を暗い夜のように変貌させる。雲層がより高密度となることで太陽がいっそう遮られるため、地表の空気は急速に温度を下げる。よって、高温の雲層は高度が低いほど、地表で降温した空気と近距離で接触するようになり、地表の空気と近距離での温度差が形成されて、「温度差による吸引力」が生まれる。
自らの圧縮により、雲層の温度は極度の高温にまで上昇する。その後、高温の雲は雲層の中央位置又は最高温位置において上昇し、雹又は雷雨を発生させる。すると、地表の空気は短時間のうちに雹又は大雨によって再び大きく温度を下げる。このとき、高温の雲層と、地表において温度の下がった空気との間により大きな温度差が生まれる。この温度差が突如拡大した状況で、雲層の中央位置又は最高温位置における高温の雲は、高空における低気圧の空気とともに地表の低温及び高気圧の空気を強く吸引する。結果、雲層下方と地表に高速旋回する上昇気流、強風、ウインドシアが発生し、これに続いて竜巻が生まれることもある。滑走路から近い位置で下降中の飛行機がこのようなウインドシアに遭遇した場合、突然墜落する恐れもある。
通常、海洋上の雲層には最も高温の中央位置が1つだけ存在している。例えば、台風には中心となる台風の目が1つだけある。これに対し、陸地の雲層には1つよりも多くの最高温位置が存在し得る。竜巻の故郷ともいわれる米国では、巨大な雲層が同時に複数の竜巻を発生させることがある。これは、米国を南北に貫通する広大な平原の海抜が低く、高い山がないために、地表から非常に低く且つ平坦で極めて幅広の高密度な雲層が形成されやすいことによる。海抜が低いほど雲層は高密度且つ高温となる。米国では、特に地球温暖化により雲量が増えた近年、冬季にも竜巻が発生するようになっている。
まず、冬季に竜巻が発生する要因について述べる。冬季に竜巻が発生する条件としては、まず、地表から近く幅広で分厚い高密度の雲層が必要となる。当該雲層が密度を増すと、自ずと太陽をいっそう遮ることになり、地表の温度が更に低下する。同時に、すでに低温である地表に強い冷風が発生する。
低気圧と高温は自ずと高気圧と低温を吸引するという自然界の法則より、雲層の温度が雲層下方の空気の温度より高く、且つ雲層が地表から非常に低いほか、両者の温度差が近距離で接触するとともに強い冷風を伴う場合には、高空における低気圧の空気と高温の雲層が、地表における高気圧及び低温の空気を強く吸引することになり、結果として竜巻が誘発される。実際に、ある地域に分厚く高密度の雲層が存在するとき、地表における高気圧の空気の上昇速度は高速となる。例えば、高密度の雲と風があるときには、紙くずが自然と高空まで上昇していく様子が度々目撃される。
また、日差しの厳しい晴天下では、砂漠の塵旋風が高温の雲群によって吸引され、竜巻又は水上竜巻に似た形状となることがある。例えば、インターネット上によく写真で掲載されるような奇怪な塵旋風が発生する。こうした塵旋風の発生要因を説明できる理論が今のところ存在しないことから、これらが日差しの厳しい晴天下で出現する竜巻だと誤った理解をしている人々もいる。本発明では、塵旋風の多くは高熱又は乾燥した砂漠で形成されると説明する。上述したように、砂漠の地表温度はその上方の空気の温度よりもはるかに高いため、突発的な強い突風が発生すると、このような強い突風は旋回することから塵旋風を形成する。当該塵旋風の上方に、高温で地表から近い大きな雲群が存在する場合、塵旋風の多くは高温の雲群によって吸引されて、水上竜巻のような塵柱を形成する。
竜巻の発生要因とその形成過程は極めて複雑であり、寒候期と暖候期で形成過程がやや異なる。そこで、以下では一般的且つ強い暖候期の竜巻発生要因とその形成過程についてのみ詳細に説明する。
竜巻は、高速旋回する中空の雲柱であり、極めて高密度な雲層の中央位置又は最も高温の位置から、旋回しつつ地表へ降下する。自然界では活動の加速が緩やかなため、竜巻の旋回速度も徐々に極度の高速へと加速されてゆく。
米国の低海抜地点における広大な平原では、最長寿命且つ最強の竜巻が最も多発している。これは、当該地域の東西南北すべてに海又は大規模な湖があることから、各方面、特に南側と北側より、地面からの高度が非常に低い雲を大量に吸引するためである。広大な平原の地形はそれほど複雑ではなく、例えば高い山がない(高山地域は気流が不安定なため、雲層が平坦に凝集して竜巻が発生するという条件が整わない)。南北から流れ込んだ雲は、これを遮る高い山がないことから、高所まで上昇して移動する必要がない。よって、米国では、幅広で地表からの高度が低く、高温且つ平坦な高密度の雲層が凝集されやすい。そして、これら南北から流れ込んだ雲層が必然的に雲層対流を形成し、竜巻の多くが雲層対流の後に発生する。
ある地域の海抜が低いということは、その上空の雲層の海抜もまた低いということである。このような雲層は自ら圧縮した後に、地表からわずか約200m又はより低い位置まで低下してくる。雲層自らの圧縮に関する上述の説明によれば、2つの高温の雲層が対流した後に、雲層密度はほぼ倍増することになる。加えて、「雲層内対流」の後に更に密度が増すことから、雲層中央位置はより高密度且つ高温となる。結果、昼間が短時間のうちに暗い夜へと変貌し得る。実際に、竜巻形成前の雲層は黒色となる。
太陽熱はより高密度な雲層によって急速に遮られるため、雲層下方、特に雲層中央位置下方の地表の空気温度が急激に低下する。これにより、旋風又は乱流が発生する。そして、温度が低下した地表の空気と高温の雲層とに大きな温度差が形成されたところへ旋風又は乱流が加わると、地表の高気圧で低温の空気は、高温の雲層中央位置へと急速に吸い上げられてゆく。これにより、直ちに竜巻が形成される。こうした地表から非常に低い雲層により誘発された竜巻は、形成前に雹又は雷雨を降らせるとは限らない。そのため、雲層は温度及び大きさを急速に下げることなく、長寿命且つ強力なものとなる。
短命である竜巻の多くは、特に広大ではない低海抜の平原に形成され、その雲層は地表から高所に位置する。こうした竜巻の多くは、強い雷雨又は雹を降らせた後に発生する。短命の竜巻が形成される前には、まずは極限まで加熱された雲が雲層の最高温位置から上昇してゆく。そして、雲層下方に凝集している高気圧で高温の空気が、高温の雲に伴われて速やかに上昇することで、雲層下方の高気圧且つ高温の空気の上昇圧力が放出される。
当該位置における高温の雲と、その下方の高温空気が急速に上昇する際、地表には局地的な強風、ウインドシア、雷雨又は雹が発生する。極めて厚い雲層の上部の雲は極度に低温の高空に存在しているため、このような雷雨による雨滴は自ずと大粒で冷たいものとなる。こうした大きく冷たい雨滴は、ほぼ雹のように雲層の中央位置下方の空気を突如として降温させて、強風又は旋風を発生させる。
雲層対流は、急速に雲層の密度と温度を倍増させる。また、密度が増した雲層はいっそう太陽を遮断して地表の空気の温度を低下させる。そして、突如として雷雨又は雹を降らせることで、地表の空気の温度を更に下げ、強風を発生させる。これら3つの要因は、いずれも雲層と地表の空気との間に大きな温度差を突然形成する。そのため、地表の高気圧で低温の空気は、高空における高温の雲に強く吸引されて、ウインドシア、旋風又は竜巻を発生させる。実際に、短命である竜巻の多くは、雹又は強い雷雨のあと短時間のうちに発生している。
検知能力と柔軟性に優れる自然界では、負担の重いものよりも軽いものが選択される。気流は旋回しつつ上昇するほうが軽負担であるため、急速に吸引される気流は必然的に高速旋回する。これに対し、押し上げられたり噴出したりする気流は旋回しない。例えば、高熱の火山灰は噴出し、爆発による粉塵は高速に押し上げられる。よって、これらが旋回することはない。
上述の吸引過程の開始直後には、吸引による上昇気流がゆっくりと加速しながら旋回することで「遠心力」が生まれる。遠心力は中空の雲柱を形成するが、旋回速度が徐々に加速されると、持続的な高速旋回が「求心力」発生させる。これにより、中空の雲柱は小さくなるが、雲柱本体はより密になる。遠心力と求心力についていえば、浴槽から水を抜く際に、水が吸い込まれ始めた当初はゆっくりと旋回することで大きな渦が発生するが、渦の旋回速度が加速されるほど、渦が小さくなるのと同様である。竜巻の直径が細いのは、竜巻が雲層における最も高温である中心点でのみ形成され、極めて高速に旋回するためである。
上記の竜巻形成の初期段階では、地表の高気圧の空気が吸引される速度は徐々に加速する。これにより、まずは雲層内部において、雲層の上部と雲層の下部が連通した高速旋回する中空の雲柱が形成される。雲柱の密度は高く、極めて高密度の雲から形成された中空のストローのようになっている。極めて高密度の柱体からなる雲柱の上下端には、非常に大きい高度差(通常は数km以上)ができる。よって、高空における極度の低気圧は、雲柱(中空のストロー)のみを経由して雲層下方の高気圧の空気を強力に吸引する。吸引力が強いほど雲柱の旋回速度は高速となり、高速となるほど、雲柱の柱体密度は高くなる。これらは正比例する。
雲柱のほとんどの部分は、極めて高密度で分厚い雲層内部に隠されている。人間の目に見える雲柱は、雲柱全体のごく一部にすぎない(約200m又はより小さい)。地表から近いほど気圧は高くなるため、地表の気圧が最も高いということになる。低気圧の空気が必然的に高気圧の空気を吸引するという自然の法則より、低気圧の空気が可能な限り「最も高気圧の空気」を吸引することもまた自然界の性質である。
雲柱は、高密度の雲が高速旋回することで形成されたものにすぎないため、多少の伸長や縮小は任意に可能である。また、検知能力に極めて優れた自然界は気圧差に強く反応するほか、旋回効果と吸引効果も加わって、雲柱の多少の伸長は容易となっている。よって、高空における極度に低気圧の空気は、容易に伸長可能な雲柱を介して、地表における最も高気圧の空気を吸引することになる。
雲層により発生した吸引力や旋回力がそれほど強くない場合には、雲層下方にゆっくり旋回しながら宙に浮く漏斗雲が伸びるにとどまる(実際に、こうした漏斗雲は雷雨をもたらす高密度雲層の下に出現する)。一方、より高温且つ高密度の雲層から発生した吸引力と旋回力が極めて強い場合には、その旋回動作によって、容易に伸長可能な雲柱が急速に地表へと向かう。これは、地表における最も高気圧の空気を吸引するためである。この動きは、敏捷な人間、動物或いは植物が、自然且つ容易に手や頭、根、枝をできるだけ伸ばしてより好ましい食物を捕獲したり、より好適な生存条件を得たりするのと同じ道理による。実際に、先進的な教育に依存せず、視覚や聴覚も持たない自然界の繊細な検知能力は人類よりも優れている。
上記の状況は、上方への吸引力を内部に備えた雲柱が反対に上から下へと伸長するとともに、地表に触れたとたんに伸張をやめる理由を説明するものである。雲柱の密度が低減することで吸引力と旋回速度が弱まると、雲柱は雲層内に返ってゆく。これは、従来の理論では説明が最も難しい現象であるため、竜巻の謎と捉えられることがある。
吸引動作では、ストローを吸入前方へと移動させる(吹き出す側とは逆)ため、雲柱の最下端は自ら吸入前方へと移動することになる。竜巻の雲層と地表の空気の移動方向は同じとは限らない。よって、雲柱によっては、逆方向へ流動する気流によって急速に斜めに引っ張られたり、引き伸ばされたり、或いは過度に屈曲されることで分断又は消失したりする。
中空の雲柱は、上端が雲層上部における極度の低気圧の空気に連なっており、下端が地表の高気圧の空気に連なっている。そのため、雲柱下端内の気圧は、雲柱上端の極度の低気圧の空気と同化して低下している。近年、竜巻追跡に熱心な科学者が竜巻を計器で測定したところ、雲柱下端の気圧がたいへん低いとの事実が発見された。これは本発明の理論に合致するものである。
竜巻形成前に、高温の雲層は、まず雲層下方と地表の空気の湿度を上げて高温多湿とするが、竜巻形成時又は竜巻活動時には地表の空気は低温となる(通常26度又はそれ以下となる)。これは、竜巻が主として低気圧の空気によって高気圧の空気を吸い上げることでその寿命を維持しているのであって、熱気流によるものではないことを裏付けている。実際に、熱気流は度々発生するものではないが、気圧の高低差による吸引力は恒常的に存在する。
竜巻の破壊力は、高速旋回する気流に強大な吸引力も加わって生じる。その吸引力は中型の貨車を地表から十数m吸い上げ得るし、高速旋回する気流は大木を腰部から断ち切り得るほどであるため、地表には深刻な被害が生じる。雲柱は液体や固体ではなく気体から形成されているため、吸引されたやや重量のある物体は、旋回の遠心力によって雲柱外へと投げ出されてしまう。一方、水上竜巻は液体であることから、吸引された魚類が水柱外に放り出されることはない。
「水上竜巻」は夏から秋にかけての期間に発生することが多いが、これは、恒温性である水がこの時期に高温となるためである。夏も半ばを過ぎると竜巻の発生は減少するが、強い台風が多発するようになる。これは、この期間の雲の多くが熱帯海洋上に集結するためである。
「水上竜巻」の発生要因としては、まず中空の雲柱が水面まで下降し、水を吸い上げることで中空の水柱へと変貌する。その後、雲柱は直ちに雲層内へと戻ってゆく。水柱の密度は雲柱よりも高いため、雲柱以上に高密度で吸引力が強大なストローが形成される。よって、魚を極めて高空へと吸い上げた後に、風に吹かれることで遠距離の陸地へ落下させるといったことが起こり得る。実際に、空から魚が降ってきたとのニュースが度々報じられている。
水柱が魚を極めて高空へと吸い上げるには、十分な高さ(長さ)、密度及び吸引力が必要である。これは、水柱の大部分が雲柱と同様に雲層内部に存在することの裏付けである。上記が十分でない場合、魚を極めて高空へと吸い上げることはできない。水柱の成分は水であり、雲柱のように上から下へ延伸するのではなく、下から上へ吸い上げられることで形成される。よって、水柱は長尺状であって漏斗状ではない。また、水柱は容易に引き延ばされたり、屈曲して分断されたり、消失したりする。
理論上は、雲柱の直径が全長にわたって均等(1本のストロー状)となることで、強大な吸引力が生み出される。しかし、人間が目にする雲柱の外観は漏斗のようである。これは、雲柱の上端が高空に位置するため、雲柱の外側周辺に付着する雲があり、上端にいくほど付着が増えるために、漏斗のような形状をなすのである。高速旋回の効果によって、雲柱の最上端はしっかりとした円形を保ちつつ開通される。しっかりとした円形となり開通するのは、高速旋回の効果によって雲の旋回がいっそう牽引され、旋回により発生した遠心力又は求心力が、雲柱内部の全体にわたって雲を辺縁へと押しやるためである。これにより、雲柱は全体として中空となる。
中空の雲柱が形成される理論は、熱気流が高速旋回しながら上昇することで形成される台風の目の形成理論と同じである。極めて高速の気流が旋回しながら上昇しているとき、台風の目は極めて丸く、中空或いは開口される。そして、上昇気流がそれほど高速でない場合、台風の目は非円形又は閉じられる。
巨大な台風の目もまた、竜巻のように吸引されて旋回上昇する気流を有する。しかし、台風の目は巨大であるため、その旋回速度は当然ながら、小さく猛烈な竜巻の高速旋回には及ばない。よって、台風の目から旋回上昇する気流はやや少なく、近距離からの視認は難しい。しかし、海洋上であれば数十km先から、台風の目下方の巨大で薄い雲柱を視認することができる。
自然界における低気圧の空気の吸引力は必然的にゆっくりと加速されるが、仮にポンプのように加速された場合には、地球上に災害級の突発的強風が発生することになる。高温の砂漠における希薄な塵旋風は、旋回を開始した当初は旋回速度が緩やかで直径も大きいが、旋回が加速されるほど直径は細長く変化してゆく。これは、緩やかな加速と求心力の一例である。本発明では、塵旋風に関して上記のようにわずかな説明しかしていないが、塵旋風と竜巻の主な形成原理と形成過程は異なるものである。
豪雨をもたらす竜巻の寿命が短いのは、雲層が雨になって減少すると竜巻が消失してしまうからである。また、大規模な雷雨が始まって短時間の後に形成される一時的で軽微な竜巻は、色が大雨期間の空のグレーと同じ色であることに加え、気流の旋回速度がそれほど速くなく密度が低いため、肉眼でその希薄な旋回気流を確認することは難しい。
雲層対流はいかなるときにも発生し得る。よって、特に高温の低海抜地域では、深夜に竜巻が発生することもある。これら地域の高温で高密度の雲層は、日中には冷却されて雨となることが難しいため、高密度雲層の高温が深夜まで蓄積されることになる。当該雲層の上部の雲は太陽からの照射がなくなると、自ずと温度が低下して雲層下部の雲を押さえつけ、極めて高密度で高温の単一雲層へと結合してゆく。そして、この単一層で高密度の雲は地表に近いほど高温となる。雲層対流の出現に「雲層内対流」効果が加わると、高温の雲層は更に加温され、こうした状況において、竜巻が発生しやすくなる。
台風の発生要因と形成過程
国際分類によると、最大風力が8より小さい場合には「熱帯低気圧」、風力8と9を「トロピカル・ストーム」、風力10と11を「シビア・トロピカル・ストーム」という。また、最大風力が12に達するものは「タイフーン」、「台風」又は「ハリケーン」と呼ばれる。台風を形成するには極めて大量の雲が必要とされるが、これは、気圧が極めて低くなって周辺の雲を大量に吸引することを意味する。
台風の目部分は気圧がたいへん低いため、最も強い風を発生させるだけでなく、低気圧による高潮も招来される。台風によって発生した巨大な波は船を転覆させ、交通の安全を阻害し、海岸施設を破壊する。また、豪雨による水害や山津波、土石流等も引き起こされる。結果、農作物が被害を受け、家屋が倒壊し、人命が脅かされ、広範囲にわたって莫大な経済的・物的損失が生じる。
台風による破壊面積は竜巻よりも大きいが、発生する強風は、竜巻のように狭い範囲で集中的且つ猛烈に旋回するわけではない。台風の目部分の気圧が低くなる原因は、竜巻の雲柱下端の気圧が極めて低くなる原因と基本的には同じである。竜巻は台風に比べて小さくはあるが、雲層は高密度且つ高温である(陸地の雲層が高温なため高密度となる)。また、旋回風速が猛烈で、雲柱の体積がコンパクトに集中していることから、破壊力が極めて強い。
本発明では、台風と竜巻は同一系統であると考える。これは、自然界で発生する旋回を伴う嵐のほとんどが同じ形態であることによる。巨大な台風の形成過程と小さな竜巻とには、双方ともに雲層中央位置の雲が極限まで加熱された後に上方へ向かうことで発生するとの共通点がある。したがって、本章では高温の雲の上昇過程については再度記載しない。
本発明の主な目的及び技術は、台風又はハリケーン、竜巻、深刻な水害及び深刻な都市部の大気汚染等の形成を阻止することである。しかし、すでに形成された台風又はハリケーンを弱める方法についても研究したため、本章では、台風又はハリケーンの雲層が集結及び形成される過程だけでなく、その運動過程についても記載する。
現在までに、台風の目中央の気流が穏やかであることの原因は明らかにされていない。よって、この現象もまた今のところ「自然界の奇妙な現象」とされている。本発明では、台風の風は目の部分に強く吸い上げられたものであり、台風の目中心の気流が穏やかなのは、気流が回転しながら台風の目によって吸引され、上昇するためであると考える。旋回気流は台風の目の壁際に密着しながら上昇するため、台風の目中心の気流は穏やかとなるのである。
過去の報道によれば、台風の目の前部が某地域を通り過ぎた後、直径約40kmの台風の目中心は気流が穏やかなことから、当該地域では戸外活動を始めた人がいた。しかし、続いて台風の目後部が到達すると、この人物は極めて強い上昇気流によって数m上空へと吸い上げられると同時に、強風により十数メートルも外側へ吹き飛ばされてしまったという。これは、上記の説明を裏付ける事実である。
気象関係者らが観察したところ、台風形成開始時には、台風雲層の中央位置下方で海水が回転し、大量の旋回しながら上昇する水蒸気を帯びるようになるという。この状況は、本発明ですでに述べた「台風の発生要因と竜巻の発生要因は類似している」との理論に合致するものである。即ち、台風の目の下方に強力な旋回風力と吸引力が備わるのだ。前記の旋回上昇する水蒸気は竜巻の雲柱に比べれば希薄であり、加えて台風の目が巨大なことから、非常に遠方からでなければ視認することはできない。
台風のエネルギー源は、膨大な量の高温の雲とその下方に凝集する大量の高温空気である。巨大な低気圧圏内には膨大な量の高温の雲と高温の空気が凝集している。特に、雲層における最も中央位置の雲とその下方の空気は更に高温となっている。そして、この更に高温の雲と空気は、急速に各方面から雲と空気を吸引し、これによって雲層の中央位置とその下方の温度はより高温且つ高密度となる。自然界で台風が発生するのは、巨大な台風の雲層を降温させ、その下方にある膨大な量の高温空気の上昇圧力を放出させるためである。
上述したように、台風の形成前には、活発な低気圧領域内に位置する極めて巨大な台風雲層がゆっくりと旋回している。雲層は、幅広で分厚く高密度であるほど高温となる。したがって、その中央位置の雲は自ずと更に高温となり、いっそう急速な「雲層内対流」を発生させる。これにより、中央位置の雲の旋回速度は中央位置以外よりも高速となる。最中央位置にある雲は極限まで加熱されると、必然的に旋回しながら上昇を始める。高温雲層の上昇により、雲層下方の高気圧で高温の空気は、必然的に高速な旋回速度で雲層における極度の低気圧の空気によって強く吸引される。強力な吸引速度は次第に加速されて遠心力を生じ、遠心力が雲層内部に1本の巨大な円形の通路(台風の目)を開口させる。
各種嵐の雲層は、いずれも巨大で活発な低気圧圏内に存在する。「台風」、「シビア・トロピカル・ストーム」又は「熱帯低気圧」は、実際には同類又は同じ雲層であり、単にそれぞれの強弱が異なるにすぎない。「熱帯低気圧」又は「シビア・トロピカル・ストーム」が大幅に増強されると、台風の目が発生して台風となる。台風が弱まると台風の目は消失して「熱帯低気圧」に変貌し、熱帯低気圧が陸地に大量の雨を降らせる。以上の説明より、本発明は台風の目を台風の「心臓」とみなす。
海水は陸地に比べて恒温性であるため、陸地の空気のほうが急速に昇降する。この理論に基づけば、海面から上昇する空気や雲は比較的恒温性である。陸地の環境は複雑であり、各所の温度差がたいへん大きい。例えば、陸地には高原や高山、砂漠、湖、河川、渓谷、高温の大都市等が存在し、それぞれ熱を吸収及び反射する度合が異なるほか、空気の温度や上昇速度も異なる。よって、陸地上空の雲の高さ、温度、流動方向及び流速は一定しておらず、不安定である。また、高温の陸地の雲層は急速に極めて高密度及び高温となるため、先に豪雨又は激しい竜巻が誘発されやすい。よって、陸地の低気圧圏内は、極めて幅広で分厚い台風又はハリケーンの雲層を育成し得る安定した環境ではない。
熱帯海洋上の海水が最も高温となるのは、直射日光が照射されて約30日後の期間である。北半球の夏季には、太陽が北回帰線に到達して戻ってくる際、この往復両行程によって太陽が回帰線付近に停留する時間が長くなる(太陽が赤道を一度経由する場合よりも長い)。日中が長く夜間が短いうえに、海水が恒温性であるとの要因も加わって、回帰線の北緯10〜25度付近の海洋は、仲夏〜中秋にかけて最も高温となる。そして、この期間に形成される台風又はハリケーンは最も強力である。
「赤道」は太陽から最も近い地域であるが、前記の回帰線に対する往復両行程といった要因は存在しない。加えて、赤道地域には独特な強い熱気流の上昇という要因があるため、赤道地域は巨大な台風又はハリケーンの雲層が育つには適さない。
高緯度の北大西洋は狭く、海水が北極海の冷たい海水とつながっているため、海水及びその上方の空気の温度が高温ではない。また、北大西洋は両側にある大陸との距離が近く、且つ同一緯度であるが、海と陸地があまりに近いと近距離での大きな温度差が生まれ、空気と雲層の流速が最速となる。よって、北大西洋では常に大風と高波が発生しており、風速が速いためにハリケーンの雲層が育ちにくい。なお、温度差が大きいことで、両岸には強い風害(ハリケーンではない)が発生し得る。実際、北大西洋の両岸では風速100キロ以上の強風が度々発生している。
以上の説明より、地球上で台風を形成可能な海洋領域は多くない。例えば、狭すぎる、大陸からあまりに近い、大陸と同一緯度である、緯度があまりに高い又は低いといった海洋領域では、いずれも台風は育ちにくい。上述したように、小さな島の上空には雲層が集結しやすいため、海洋上の群島領域には巨大な台風の雲層が育ちやすい。実際に、大部分の台風又はハリケーンは海洋上の小さな島の上空で形成されている。小さな島の上空で台風の雲層が育ちやすいとの事実は、本明細書で上述した「山頂又は高温の島に雲層が集結しやすい」との理論と一致している。
中部大西洋や太平洋は広大であり、高温の大陸と同一緯度でもないことから、近距離での大きな温度差が形成されることはない。実際に、これら海洋上の気流は、通常の場合北大西洋に比べて穏やかである。北西太平洋には群島が多いため、当該地域では巨大台風の雲層が育ちやすい。
急速に移動する雲層の場合は、強い台風が育ちにくい。例えば、春の終わり〜仲夏にかけては、恒温性でない大陸の空気が急速に加熱されるのに対し、恒温性である低温の海洋上の空気はゆっくりと加熱されてゆくため、両者の温度差が大きくなる。これにより、大陸の高温の空気は急速に海洋における低温の雲を吸引する。そして、このように急速移動する非円形の雲層は、陸地に大量の雨を降らせるか、「熱帯低気圧」を形成することしかできず、強い台風を形成することは極めて少ない。一方、仲夏〜中秋にかけては、恒温性の海水はすでに日光によって加熱されており、大陸との温度差は小さい。よって、海洋上の雲が大陸に急速に吸引されることはなくなる。
非恒温性の大陸では昼夜の温度差が大きいが、海洋では小さい。大陸から離れた熱帯海洋領域では気流が安定しているため、当該海洋領域には極めて幅広で分厚く、高密度且つ高温の台風雲層が育ちやすい。そして、このような雲層下方では、大量の高温空気が持続的且つ安定的に発生し、蓄積されてゆく。また、極めて幅広の雲層は「雲層内対流」が強烈なため、円形となる。そして、円形の雲層の中央位置は自ずと高温となることから、中央に台風の目を持つ台風が形成される。実際に、上述の期間、海洋上に形成される極めて幅広の雲層の多くは円形である。
日中が長く夜間が短い夏季には、恒温性の熱帯の海洋で日中と夜間に大量の雲が蒸発し、極めて幅広の雲層が形成される。日中・夜間ともに高温である海水は、雲層とその下方の空気の温度を長期間にわたり恒温性且つ高温に維持する。仲夏〜中秋にかけて、熱帯の太平洋と中部大西洋の海水温度は摂氏約27度又はそれ以上にも達し、この温度の海水が60m深さにまで達している。且つ、この海水は恒温性であることから、日中と夜間に高温の水蒸気が安定的に発生し、上昇して雲となる。
海洋上空の雲層は海面との距離が近い(海抜が低い)。これは、雲層とその下方にある膨大な空気が相対的に高温、高気圧且つ高密度となることを意味する。海抜が低いが故に高温の雲は、海抜が高く低温の雲への熱量伝達速度が安定的且つ均一であるため、突然の雨は発生しにくい。よって、海洋環境は、より長時間にわたって雲層をいっそう幅広且つ分厚く凝集するので、幅直径は1000km、厚みは20km或いはそれ以上にまで到達し得る。いうまでもなく、この種の巨大な雲層は自ずとより高密度且つ高温となるまで自ら圧縮してゆき、気圧をいっそう低下させる。実際に、強い台風の気圧は極端に低い。
巨大な台風雲層は必ず低気圧圏の奥側に存在し、その下方には膨大な量の高温空気が蓄積されている。そして、これら高温空気と低気圧は次第に低気圧圏の外周へと拡散してゆく。低気圧圏は巨大なため、その外周は低気圧圏の奥側から離れており、強風が発生することはない。よって、外周部分の多くは無風による高温多湿となっている。実際に、台風の形成前や到達前には、低気圧圏外周の多くで無風且つ高温多湿となる。
夏から秋にかけて形成される台風の多くは、北西又は北側の高温の大陸に吸引される。一方、秋の終わり以降の台風の多くは海洋上にあるか西側へ移動し、北側の大陸に上陸することは少ない。これは、非恒温性の北側の大陸では、中秋以降に冷たい雨や寒波が発生するため気圧が上がり、台風を吸引し得なくなるからである。例えば、2013年11月初旬に発生したスーパー台風「Haiyan」は、西側(フィリピン)に偏って移動した。この年の台風の数が前年に比べて6つ増えていること、及びHaiyanの発生から、地球温暖化と雲量の増加によっていっそう多くの深刻な気象災害が発生するという本発明の理論は裏付けられている。
形成された台風(低気圧圏)は、最も近距離で上下の平均温度が高い、或いは気圧が低い前線によって吸引され、方向を定めずに少しずつ移動する。よって、台風の進路は定まらない。台風の季節には、一般的に大陸沿海地域の上下の平均温度が海上の上下の平均温度よりも高くなるため、低気圧圏全体が大陸に吸引されて移動することになる。低気圧圏奥側に位置する台風は、巨大な低気圧圏全体に付随して受動的に移動するにすぎない。以上は、気圧の極めて低い台風が、なぜ極度の低気圧育成領域に停留することなく、横方向へ移動するのかを説明している。
上述の要因により、通常の台風又はハリケーンのほとんどは、西側の海洋又は島国、北西又は北側における高温の大陸へと移動してゆき、海洋の東岸へ移動することはない。しかし、2つの台風が発生した場合、双方(2つの巨大な低気圧圏)の距離が近いときには、一方の台風が「低気間の相互の吸引効果」によって一時的に東へ移動することがある。台風は大陸における突発的な寒波又は高気圧に遭遇すると方向を変え、恒温性で高温の海域又は付近の東側に位置する高温の島国に向かって移動する。
海洋で形成された台風がいずれも北西に吸引されるということは、大陸における海に面した東南部で雨量が増えることを意味する。よって、大陸東部に砂漠が形成されることはない。しかし、大陸西部及び海岸から遠い低海抜の内陸では、雨量が少なく高温のために砂漠が形成されることになる。そして、現実はまさにこの通りとなっている。
台風の雲層は、昼間に太陽及び海面からの上昇熱を吸収するだけでなく、夜間にも、恒温性である高温の海水から高温且つ大量の水分を供給されて、台風の熱量と雲量を補充してゆく。これにより、台風にとって安定的且つ良好な生存環境が形成される。海洋上には安定的で十分な量の雲と熱があるため、長期間にわたって台風のエネルギー源を補充可能である。よって、台風は長期的に低気圧と高温を維持でき、持続的に周辺の雲と空気を吸引するとともに、台風の目を経由して旋回上昇する十分な熱気流が長期間存在するため、台風の目の円形が維持される。これにより、持続的に雨を降らせる台風は、海洋上で長時間棲息することになる。
台風雲層下方の気流が高温になるほど、気流が台風の目から旋回上昇する速度も加速される。これにより、台風の目はより丸く、小さくなって開口される。一方で、竜巻の寿命が数分にすぎないのは、竜巻が極めて高密度な旋回雲柱にすぎず、雲柱の密度が不足するか、或いは逆向きの気流によって屈曲させられて断裂したとたんに消失してしまうからである。
熱気流が台風の目に吸い上げられて発生した旋回力は、台風の目周辺の雲を強力に動かし、徐々に高速旋回させる。旋回力は、当該直径100km又は1000km規模の巨大な雲層を次第に牽引し、旋回する円形の雲圏(以下、暴風域と略称)とする。
暴風域中央位置の雲層が高密度且つ高温であること、及び台風の目が極度の低気圧であること、そして高速旋回により発生する遠心力といった要因によって、当該箇所の雲は凝集力と吸引力が極めて強い。したがって、暴風域の雲は分散しないだけでなく、大量の雲を強く吸引してゆく。結果、暴風域中央位置の雲は常に堅固な状態を維持している。地球温暖化により海水温度が高温化し、雲量が増加している現代、暴風域中央位置の雲は必然的に分厚く、堅固で高温となる。結果、台風はより強くなっている、或いは強くなりやすいといえる。
台風雲層下方の高温空気は、集中的に台風の目を経由して高空における極度の低気圧に強く吸い上げられ、雲層上方へと至る。したがって、台風の目は雲層下方の高温空気を排出する通路又は頚部に等しい。実際に、高空の際限ない吸引力は極めて強大であり、強く吸引された上昇気流は頚部を通過する際にいっそう高速且つ集中する。また、急速に吸引された上昇気流は直ちに補充されるため、台風の目が通過する箇所には持続的で極めて強力な風が出現する。
以上は、広大で極度の低気圧の空が、台風の雲層下方に集積された膨大な高温空気の排出場所であることを説明している。台風雲層下方の熱気流が台風の目を経由して吸引され、上昇することは、特定地域の東側に位置する台風の目が当該地域に到達する前に、当該地域の強風が東側へ吹くことによっても裏付けられる。そして、台風の目が当該地域を通過して当該地域の西側へ位置すると、当該地域の強風は直ちに西側に吹く向きを変える。これより、風が台風の目によって吸い上げられた結果だということが裏付けられる。実際に、台風の強さを表す等級は、主として台風の目と特定地域との距離の遠近に基づいて決定される。
台風雲層は幅広で分厚く、高密度且つ高温となるほど気圧が低くなり、その下方にある高温の空気もまた多量になるほど高温となる。気圧が低いほど風速は速くなり、吸引される熱気流は自ずと更なる高速で台風の目を通過する。空気が高速に吸引される際には必ず高速旋回が伴い、これによって求心力が発生する。そして、求心力は台風の目を小さく且つ極めて丸く変化させる。旋回しつつ上昇する気流が高速になるほど、台風の目内部の雲が旋回力によって牽引される力はより強くなる。これにより、台風の目はより開通するが、この開通は、台風の目内部に分散雲が存在しなくなる(即ち、台風の目が開口する)ことを意味する。実際に、台風の目が小さく且つ極めて丸く開口している間、台風の風速はより強くなる。
台風の目の直径は、通常は幅約40km、高さ20kmに達する。台風の目が「求心力」によって細く変化する際には、吸引による上昇気流は頚部が細いことからここを急速に通過してゆく。これは、河川が狭い谷間を通過する際に、従来の膨大な流量を保つために流速が加速されるのと同じ原理である。
「熱帯低気圧」には高速に自転する丸い暴風域や台風の目がない。「熱帯低気圧」によって発生する風は、台風のように鮮明で小さな目を通過することで急速且つ集中的に吸引されるものではないが、各種嵐はいずれも横方向に移動する低気圧であることから、その通過箇所にはやはり強風が発生する。
また、台風の目を持たない「シビア・トロピカル・ストーム」、「熱帯低気圧」及び豪雨の雲層から発生した強風は、その下方の熱気流が雲層の最も高温である中央位置を経由して高空に吸い上げられることで生じる。地球温暖化が進む現代、「シビア・トロピカル・ストーム」又は「熱帯低気圧」は高温の海洋上で長時間高温にさらされると、台風の目を持つ台風へと増強し得る。
台風の強弱は上昇熱気流の温度及び速度の高低によって決定される。台風から自然降下する雨量ぐらいでは、台風雲層下方における膨大な恒温性の海水や上昇する高温水蒸気の温度が容易に低下することはない。したがって、台風雲層の温度や密度の低下、雲量の減少は容易でない(ただし、人工的に降雨量を増加させた場合は容易となる)。よって、海上で活動する台風の一部は十分なエネルギー源を維持したまま上陸するが、一部の台風は活動途中で弱まったり消失したりする。地球温暖化が進む現代では、大部分の台風が十分なエネルギーを蓄えたまま上陸する。
台風は上陸すると、陸地における昼夜の温度差が大きいこと、雲量が少ないこと及び陸地環境の変化が大きいことから、急速に弱まるか、「熱帯低気圧」へと変化する。しかし、熱帯低気圧は陸地に大量の雨をもたらす。
台風の高速自転は、低気圧圏自身が元々行っていたゆっくりとした旋回を動力源とするわけではない。もしそうならば、台風の目はしっかりとした円形とはならないはずである。持続的に急速旋回する気流が台風の目を通過することで、はじめて台風の目はしっかりとした円形に維持されるのである。上記の理論は、急速に旋回する台風が、台風の目から急速に旋回上昇してきた熱気流によってその旋回を促されることを証明している。
凝集力の強い雲層中央に長時間にわたって巨大で円形の台風の目を開口するには、高速で強い旋回気流が持続的に通過しつつ、台風の目の壁際の雲を圧迫し続けねばならない。そして、これにより遠心力又は求心力が発生する。したがって、台風の目の壁際の雲は外側への押圧力と牽引力を強く受けるため、この箇所の雲層は常に極めて高密度な状態を維持することになる。
台風が形成されると、台風はすでに存在している自身の自転速度を長時間にわたって維持及び利用しながら、安定的に海上を運動せねばならない。そのために、台風は自然形成された台風の目の幅又は円形を常に維持する必要がある。しかし、高密度の雲層でなければ、より強い牽引力又は動員力を提供することはできない。また、牽引力は非固形の高密度の雲に起因しているにすぎないため、台風の目の壁とその周辺の雲は、十分な密度を有していなければ台風の目のしっかりとした円形を維持できない。台風のエネルギー源が不足すると、旋回上昇気流の速度は自ずと弱まり、「遠心力」又は「求心力」も失われる。即ち、台風の目が消失する。これにより、台風は弱まって「熱帯低気圧」に変化する。これが即ち、台風が自身で弱まる又は消失する原因である。
台風の目が消失すると、雲層上方の極度の低気圧に連通する頚部(通路)がなくなる。これにより、高気圧の高温空気が集中的且つ高速に台風の目から上昇することがなくなるため、超高速の風速が消失する。したがって、人工的に台風の目を拡大、変形又は消失させられれば、台風の風速を低下させたり、台風を消滅させたりすることが可能になる。実際に、某大国ではかつてハリケーンを弱める方法が試験運用された。これについて、以下に詳述する。
一部の台風又はその他の嵐は、やや弱まった後に再び強くなることがある。再び強まるための条件としては、活動途中に台風の増強に有利な環境に遭遇する必要がある。例えば、途中で長時間にわって高温且つ雲の多い海面を通過したり、最も高温の地域に停留したりし、その後、当該箇所で次第にエネルギーを蓄えることで増強するのである。例えば、高温の海水としては北米の「メキシコ湾」やアジアの南シナ海がある。
「メキシコ湾」は、北米大陸における高温の南部に位置し、ほとんどが陸地に包囲されている。よって、高温の海水が流出しにくく、低温の海水の流入も難しいため高温となっている。同一緯度の「南シナ海」の地理的環境もほぼ同様である。よって、これら2箇所では海水が高温で雲量が多い。実際に、かつて多くの台風又はハリケーンが、これら2箇所で停留したのちに再び増強したり後退したりしている。台風が後退するのは、台風後方の海面が進行方向の大陸に比べ、上下の平均温度が高かったり、気圧が低かったりするためである。
人工降雨の効果及び作用
上述の気象災害を形成する雲層は、いずれも極めて高温且つ高密度である。人工降雨では、まず雲を雨滴に変化させる。雨滴は高空における低温の雲から降下させるため、雲層が分厚い又は高所にあるほど、雨滴は低温となる。低温の雨滴は降下途中に中低空にある雲を吸収し、より大きな雨滴に変化する。大きく低温の雨滴は、降雨領域(雲層の中央又は最も高温の位置)における高温で高密度の雲の温度を低下させる。
前記位置にある高温の雲は人工的に温度を下げられると、その近傍のまだ温度が低下していない雲に吸引されて周辺に拡散してゆく。そして、低温の雲と高温の雲が互いに接触し、凝縮されて雨となることで降雨領域は自然と拡大してゆく。実際に、幅広な「雷雨高密度雲層」における中央位置又は最高温位置が降雨を開始すると、その近傍の雲も続いて降雨を開始する。そして、降雨によって雲の密度は下がるため、雲層下方における高温多湿の空気は、密度が低下した箇所を経由して正常に上昇し、排出される。
夏季に降る雨の場合、まずは高温の地表において高温多湿の空気上昇が発生し、上昇した高温の空気が高密度の雲を凝集させることで、自然と降雨が誘発される。また、高温多湿の空気が急速に上昇すると雷が発生し、雷鳴が高密度の雲を震動させることで、降雨領域が自然と大雨を降らせる。
大雨が降ると、地表及び地表の空気の温度が急速に低下する。高空の温度は地表からの上昇空気により提供されるため、地表の温度低下は高空における雲層の温度低下に等しく、雲層はこれによって更に冷却されて雨となる。高空において雲層の温度が低下すると、雲層上部の低温の雲は下側に向けて雲層下部の雲を圧縮するため、雲層は密度を増して引き続き雨を降らせる。一般的な雷雨雲層では雨を降らせた後、豪雨領域に残った低温の雲が低温の豪雨領域から急速に流出するため、この領域には青空が出現する。これがいわゆる「雨のち晴れ」であり、高温多湿の状況も消失する。以上の効果により、雲層は上述の気象災害を発生させるための条件を失うことになる。
上述の気象災害の形成を阻止する方法
本発明の目的は、竜巻、台風、強い雷雨、ウインドシア及び深刻な都市大気汚染等の形成を予め阻止する方法を提供することである。本方法は、簡便な人工降雨法である。
上述の各気象災害の発生要因と形成過程、雲の特性及び集結の規則、活発な低気圧の発生要因と形成過程、雲層の密度増加と雲層自らの圧縮過程、雲層中央又は最高温位置の確認方法、竜巻又は台風を形成し得る雲層の特徴、地理的位置と環境、台風の目の特性及びその作用、海上における台風の活動過程等については上記で詳細に説明した。上記より、上述の気象災害を阻止するには、衛星や計器による測定のほか、人工的な分析も必要とされる。
現代の気象学や気象衛星等では科学技術が先進化されており、気象関係者は、特定地域の気圧、地表及び雲層下方の空気の温度及び湿度の昇降、雲層の幅、厚み、密度、温度、流動方向、停留集積位置、雲層が最大厚さ及び最高密度となる位置、強い雲層対流の出現有無等を測定可能であり、記録も残っている。
上述の気象災害はいずれも極めて密度の高い高温の雲層から発生するため、適切な降雨位置を設定し、適当な人工降雨法で雲層対流又は雲層内対流を阻止できさえすれば、雲層が極端に高密度で分厚く、高温となることを防止できる。そして、これにより上述の気象災害の形成は阻止可能となる。
雲層集結過程の緩急及び雲層温度の高低等は、その時の季節、地理的環境、気温、時間帯、気圧の高低及び雲量の多寡等をみなければならないため、一致したデータを確立することは難しい。
雨季又は非雨季、例えば強いモンスーン時季には、低海抜にある例えば中国の北京のような近代的大都市は周辺地域よりも温度が高くなるため、高密度の雲層が局地的に集結しやすい。雲層を予め或いは適切に雨に変化させれば、雲層及びその下方の空気を冷却できるため、雲層の密度を下げられるだけでなく、都市上空に集結する雲層を都市部から流出させることができる。この方法によれば、PM2.5や都市の水没といった課題も解決可能となる。
雲層の中央位置又は最高温位置は特に大きく規定する必要はない。上記の各種理論に基づき、本発明では、巨大且つ多くが円形である台風の雲層中央位置の直径を20〜40kmとし、好ましくは25kmとする。また、多くが長尺状である陸上竜巻又は豪雨の雲層における最高温位置の直径を10〜30kmとし、好ましくは15kmとする。これにより、中央位置又は最高温位置において一時的に人工降雨を行えば、上述の気象災害の形成を阻止可能となる。
上述の気象災害の形成を阻止する方法では、主として、上述の気象災害を誘発し得る雲層が、「雲層内対流」によって相当の密度、厚み及び温度に達する、或いは、当該雲層が近傍の別の雲層を吸引する(即ち、雲層対流)ことで次第に成長又は育成される前に、人工降雨法を用いて当該雲層の雲量減少、雲層の温度及び密度の低減等を実行する。また、この方法は容易且つ安全である。
以上の目的は、下記の技術方案によって達成可能である。即ち、本技術方案は後述するようなステップを含む。
本発明は、上述の各種気象災害が形成されやすい地理的位置、発生要因及び形成過程等について研究した。経験豊富な気象関係者であれば、本発明の理論、説明、方法及び図面等を十分に理解したうえで、まずは従来の設備及び技術を用いて現場を測定することで、特定雲層の実状を把握できる。そして、当該雲層の成長速度を分析することにより、当該雲層が上述の気象災害を発生させ得るか否かを把握し、降雨が必要か否か、又はいつ降雨が必要かを特定可能となる。
台風や竜巻、極めて強い雷雨等が発生しやすい季節及び地域においては、特定の雲層が上述の気象災害を形成する条件を備えているかを特定可能となる。例えば、地表又は海面から低い幅広で分厚く高密度の雲層は、上述の気象災害を発生させやすい。雲層が次第に成長し(雲層対流及び雲層内対流を含む)、より幅広で高密度且つ高温となり、上述の気象災害を自然発生させる前に、即ち、雲層中央位置の雲及びその下方の空気の温度及び湿度が急速に上昇し、急速に自然上昇する前に、降雨帯3全域の雲層上部又は頭頂部に降雨剤を投入して人工降雨を行う。
降雨剤は、高密度の雲層頭頂部に投下することで良好な効果が得られる。例えば、頭頂部の雲は、降雨及び降温後に下降して下方を圧迫するため、雲層の密度が更に増し、持続的な降雨が促される。上述したように、台風の雲層は多くが熱帯海洋における小さな島の上空で育成される。よって、小さな島の上方に降雨拠点を設ければよい。
本発明をより明瞭且つ理解しやすくするために、以下に図面を用いて更に詳細に説明する。
図2は、本発明の第1実施例に基づく略円形の台風雲層1を示す図である。図中には、大きな最中央位置11が1つと、小さな非中央位置12が2つ描かれている。図3及び図4は、それぞれ図1の最中央位置11と非中央位置12の拡大図である。図5は、本発明の第2実施例に基づく長尺状の竜巻又は豪雨の雲層2を示す図であり、最高温位置21を2つ描いている。図6は、図4の最高温位置21の拡大図である。図3、図4、図6に示される最中央位置11、非中央位置12、最高温位置21はいずれも降雨領域であり、降雨領域には、向き、大きさ及び長さがそれぞれ異なる降雨帯3が設けられている。
自然界は円を描くように活動する。長尺状の降雨帯3の目的の一つは、高温の雲及びその下方にある高温空気の旋回上昇を防止し、高速旋回する上昇気流又は乱流の発生を回避することである。降雨帯3の向き、長さ又は大きさは理論に基づき設定されるが、実際に必要な長さ又は大きさは、雲層の大きさに応じて増減すればよい。降雨帯3が空港又は航空路に近づいた場合には、降雨帯3の向き又は位置を変更して、空港又は航空路から少なくとも5km離れさせればよい。
台風雲層1の降雨帯3が南北を向く必要があるのは、一般的に、大陸から離れた海洋上の気流又は雲層の多くが、まず西側の高温空気に吸引されて前進するためである。また、西側への進行速度は高速であるため、南北を向く降雨帯3の雲は冷却された後に、広面積が西側に移動又は拡散するため、広面積の雲が冷却されて雨となる。いうまでもなく、降雨帯内の低温の雲は四方へも拡散する。
降雨帯3を最中央位置11の中心点両側に設けるのは、前記「雲層内対流の原理」に基づくものである。最中央位置11の中心点は最も高温であるため、人工降雨によって温度の下がった雲は中心点に向かって急速に吸引される。結果、中心点の高温の雲はより急速に冷却されることになる。
強い台風が発生する季節には、海洋上に集結する雲層が増える。幅が最大であり最も高温の雲層は、「熱帯低気圧」又は「台風」の「主雲層」へと次第に成長する前に、自ずとその近傍の雲層を強く吸引してより幅広で高密度且つ高温となる。そして、低気圧圏内において、初期集結段階で非円形だったものが、次第に上述の「ゆっくりとした旋回」の影響を受けるとともに、「雲層内対流」による圧縮によって円形へと成長してゆく。そして、「ゆっくりとした旋回」の速度も少しずつ加速される。
上述の台風雲層は徐々に大きく、分厚く、高密度且つ高温となり、その下方の空気も徐々に加温され、湿度が増してゆく。台風の発生過程は竜巻の発生過程に比べて遅いが、人工降雨はこの段階で実施される。前記巨大な雲層は人工降雨の後に、陸地に吸引されて大量の雨を降らせる。
降雨帯3の長さ及び大きさは雲層の幅に応じて決定すればよい。例えば、直径約700kmの台風雲層1の最中央位置11には、長さ25km、幅1.2kmの降雨帯3を2本設ける。雲層の直径が約1000kmの場合、降雨帯3は長さ30km、幅1.5kmまで延長可能である。雲層がより巨大な場合には、最中央位置11境界の東方約30km地点における2つの小さな非中央位置12にも、それぞれ長さ約8km、幅約0.5kmの降雨帯3を別途設け、降雨帯3上方で簡便に降雨剤を投下すればよい。降雨剤の量と投入時間は、実際の状況に応じて決定する必要がある。
夏季には、陸地の雲層の温度は海洋の雲層に比べて高くなり、且つ、陸地では地理的環境の違いが大きいことから気候の差が拡大し、気流も不安定且つ高速となる。よって、雲層対流が容易に発生する結果、竜巻又は豪雨の雲層が集結する過程が加速され、急激となる。
陸上竜巻又は豪雨の雲層2は、複数の最高温位置21を持ち得る。各最高温位置21の雲層ではいずれも「雲層内対流」が発生し、ますます凝集されて高密度且つ高温となる。そして、温度が極限まで上がると、竜巻又は極めて強い雷雨が発生する(竜巻を発生させ得る雲層は地表から低い位置にある)。実際に、上述した極めて広い平原では、巨大な雲層から複数の竜巻が発生することがある。
竜巻又は極めて強い雷雨は、雲層対流が約15〜30分続いた後に急速に形成される。また、雲層対流は常時発生し得るため、2つの雲層が対流する前に、最大且つ最高温の雲層2における最高温位置21に対して簡便な人工降雨を実施し、雲層2の温度を下げることで別の雲層を吸引できないようにすることが最適である。予め降雨させれば、雲層、雲層下方及び地表の空気の温度を予め下げることができ、地表の温度低下によって雲層の温度も下げることができる。雲層内の最高温位置21に長さ15km、幅0.8kmの降雨帯3を2本設定して、その上方から簡便に降雨剤を投入する。
陸地の雲層は流動方向が一定ではないため、降雨帯3の向きは雲層の流動方向に応じて設定する必要がある。例えば、雲層が南又は北へ流動する場合、降雨帯3は東西を向く必要があり、それ以外の場合には南北或いは他の方向を向く必要がある。降雨法としては、飛行機による降雨剤の投下又は散布、ロケットによる雲層への降雨弾の発射、或いはレーザー照射等の方法を適用可能である。
雲層の最中央位置11、非中央位置12又は最高温位置21に降雨帯を設けるのは、雲層中に人工的な排出通路を設けることと同義であって、これによって、雲層下方における大量の高温空気を放出させるとともに降温させ、雲量、雲の密度及び温度を低減させる等を目的としている。これにより、台風、竜巻、雷雨又は強い雲層対流等を形成する自然条件を消失させ、温度の低下した雲層を付近の高温地域や乾燥地帯に流動させられる。
形成済みの台風を本発明により弱体化又は破壊する方法
本発明は、主として台風又はハリケーンの形成を阻止するものである。しかし、もし上述の簡便な人工降雨法で阻止できない場合には、以下に述べる方法で台風又はハリケーンを弱体化させることができる。本発明は、台風の確かな発生要因及び全活動過程を研究済みであることから、すでに形成された台風を弱体化又は破壊し、台風の進路を変更したり、上陸を阻止したりすることも理論上可能と考える。ただし、これには大きな代償を伴うため、まずは台風が特定の重要地域を襲うであろうことを特定する必要がある。例えば、重要な都市又は特定の地域で重要なスポーツイベントや政治活動、軍事演習等が行われる場合にのみ実行してもよい。
かつて、某大国では専門家らが核爆弾を用いてハリケーンの目を破壊しようとの提案をしたが、当然ながら核爆弾には重大な副作用が伴う。当該国では、これまでに台風の目の壁際に的を絞って大量のヨウ化銀(降雨剤)を投下するとの方法が用いられたが、これは本発明の降雨位置や方法とは異なる。前記ヨウ化銀の投下行動は、すでに形成された台風の弱体化が必要とされており、且つ経済効果を伴うものであることの表れである。
図7は、本発明の第3実施例に基づいた台風を示す図であり、図8は図7の部分拡大図である。図7及び図8に示すように、この場合、すでに形成された台風4の雲層は急速に旋回して円形となっており、台風の目41が形成されている。
上記で説明したように、台風の目41の壁際には急速旋回する上昇気流が存在する。また、台風の目には沈下してゆく分散雲又は重い気流があるほか、ハリケーンの横向き移動等の要因も存在するため、これらが人工降雨効果に影響するとともに、降雨剤を投下する飛行機の安全にも危険を及ぼし得る。よって、台風の目の壁際というのは、長時間にわたって大量のヨウ化銀を投下する位置としては適切でも効果的でもない。
大量のヨウ化銀を投入した後には、ハリケーンの威力がわずかではあるが確実に軽減されたという。しかし、当該ハリケーンは突然向きを変え、予防措置を講じていなかった地域を襲った結果、より大きな被害が生じたとも報告されている。よって、ヨウ化銀を投下する方法も、ハリケーンの動きを弱体化させる行為自体も、それ以降頓挫してしまった。
台風が突然向きを変える真の原因については上記で詳細に説明済みである。前記のハリケーンが突然向きを変えたのも、極めて偶発的な出来事だった可能性がある。理論及び事実からいえば、台風はそれ自身で随時方向を変化させ得る。台風は直径1000kmに及ぶ低気圧圏に付随して移動するにすぎない。よって、突然の方向変換の原因は、直径約40kmの台風の目に的を絞って投下された大量のヨウ化銀とは無関係のはずである。
また、自然と弱体化する台風もある。すでに形成された台風を弱体化又は破壊する方法としては、まず宇宙衛星を利用して台風の進路を追跡及び観察し、進路途中の環境がこの台風を自然に弱体化させ得るか否かを分析する。台風が自然に弱体化することなく、重要地域に移動し得る場合には、本方法を用いて台風を弱体化又は消滅させればよい。
自然に形成された台風の目41の大きさは、台風にとって重要である。高気圧の高温空気が膨大に台風の目から急速旋回しつつ上昇することで発生する旋回効果、遠心力又は求心力は、台風の目の壁及びその近傍の雲を圧迫することで、台風の目の円形を維持する。このように強大且つ自然な圧迫力は台風に不可欠である。なぜなら、高速旋回する上昇気流が存在しなければ、台風の目41が自然に形成した幅及びしっかりとした円形形状を維持するだけの強大な圧迫力を得られなくなるからである。
高速旋回する上昇気流が台風の目を通過して安定的な「遠心力」又は「求心力」を発生させると、台風の目の壁近傍における高密度の雲は、必然的に強大な「外側への押圧力と牽引力」を受けることになる。そして、台風の目41周りの雲層は最高密度又は最も堅固な雲層となってゆく。
理論上、自然に形成された押圧力と牽引力は、台風にとって必要且つ重要である。この箇所の雲の密度、温度及び大きさが人工降雨法によって急速又は突然に低減されれば、外側への押圧力は密度が低減した雲を容易に外側へと押しやり、台風の目を拡大することになる。そして、人工的に台風の目を急速に拡大又は変形させることは、台風の生存を極めて不利とする。例えば、台風の目が「台湾」最高峰の山に突然衝突して変形した場合、台風の強度は低下すると思われる。
台風雲層は厚みと密度が高く、台風の目41の直径が大きいことに加え、台風自体は雨を降らせるものである。よって、海上で降雨量を増加させて温度を下げたいのであれば、最も適切な降雨位置で長時間にわたり強力な降雨剤を投下する必要がある。
本降雨法では、できるだけ台風雲層が低温である間に、台風の目の壁から外側約600〜1000m区間の400m以内の全空間において、図7及び図8に示すように、台風の目の壁の雲が上記の押圧力によって次第に外側へと押圧され、台風の目の直径が0.5〜4km拡大するまで、好ましくは2km拡大するまで、台風の目41を取り巻くようにして持続的且つ集中的に大量の降雨剤を投下して、降雨量を増加させる。
目の壁から外側約600〜1000m区間の400m位置で降雨させるのは、目の壁の雲が押圧されて台風の目が次第に拡大してゆく間も、台風の目の直径が全体で2km拡大するまでは、目の壁から600mの位置で降雨を維持せねばならないからである。なお、必要に応じて、拡大距離を2km超としてもよい。
2km拡大するのは、例えば台風の目41の直径が40kmの場合、人工的に台風の目の壁を外側へ1km拡大(押圧)すると、1kmに2辺が乗じられて、台風の目の直径は全体で42kmまで拡大するからである。2km四方というのは広大な空間であるため、周辺が2km拡大するということは、単に20分の1の増加というにとどまらない。
台風の目(頚部)が人工的に拡大されれば、旋回上昇の風速は減速する。これは、ドライヤーの細い吹出口を大きめの吹出口に交換した場合に、吹き出される空気の速度が直ちに減速するのと同じ原理である。風速の低下は、遠心力又は求心力の低減を意味する。これにより、台風の目は小さくしっかりとした円形を維持することができなくなり、続いて台風の目は徐々に変形して消失する。
上述した降雨法及び降雨位置は、台風の目を拡大可能なだけでなく、以下の重要な作用も有する。前記位置の降雨量を増加させると、より密集した低温の大きな雨滴が、当該位置の極めて高密度の雲層を急速に降温及び収縮させるため、当該位置の雲層密度と雲量を低減させることができる。結果、雲層下方における高温空気の一部がまずは当該位置を経由して上昇する(放出される)ため、高温空気が一気に台風の目に集中して上昇することが回避される。これは、台風の目を経由した上昇空気の量が減少し、台風の目によって旋回上昇する気流の速度が減速されることを意味する。よって、台風の目の自然構造を破壊することができる。上述の某国が設定した降雨位置には、こうした重要な作用はない。
雲は軟質の物質であり、大量に存在するほか、直ちに破壊可能な堅固な物質でもない。加えて、台風にはゆっくりと増強し、且つゆっくりと弱まるとの要因があることから、長時間の降雨時間をかけなければ台風の目41を拡大することはできない(例えば、1〜2時間又はそれ以上を必要とする)。理論上は、上述の行動は効果的で安全であり、且つ容易に操作可能である。また、強力で大規模なレーザー照射によって、前記位置の雲を急速に除去してもよい。台風の目の拡大幅はそれほど正確である必要はなく、現代の先進レーザー照射測定技術によって測定すればよい。台風の目41の拡大幅又は降雨時間の長さは、台風の実際の状況に応じて加減すればよい。
本降雨位置及び方法は、より直接的、集中的且つ徹底的に台風の目の壁近傍の雲層の温度や密度を低減させ、台風の目の壁近傍における雲量及び台風の目を経由して上昇する空気量を減少させることが可能なほか、気流の旋回上昇速度を減速させることができる。よって、台風の目の人工的な拡大が可能となる。台風の目が自然発生した遠心力を喪失して変形又は消失すると、台風は目を持たない嵐に変化する。このことは、形成された台風を弱体化又は破壊可能なことを意味する。
以上の降雨法及び降雨位置は、一般的な強い台風を十分に弱体化させる。スーパー台風の雲層は極めて巨大で分厚く、その下方の高温空気は更に多量且つ高温である(実際に、スーパー台風によっては偶発的に台風の目が2つ出現することがあり、雲層下方の更に大量で高温の空気の排出が加速される)。スーパー台風を弱体化させたいのであれば、図8に示すように、台風の目の壁から東側約5km地点に、長さ10〜15km、幅約500mの降雨帯(排気通路)42を別途設け、その上方で持続的且つ集中的に強力な降雨剤を投下することで、膨大な高温空気を排出させればよい。また、強力なレーザーによって「排気通路」の雲を除去し、雲層下方及びその付近の高温空気の一部を先に「排気通路」から上昇させてもよい。
本発明により台風の進路を変更又は上陸を阻止する方法
台風は前方へ移動する雲層又は気体にすぎず、近距離における上下の平均温度が高いか気圧の低い前線によって吸引されて、方向を定めずに少しずつ前進する。よって、台風は自動車のように任意に90度曲がったり、停止したり、後退したりすることはできない。台風が通過した海域の空気は、台風の雨量によってやや温度が下がっているため、台風が進路を後退して行くことはほぼない。しかし、極めて少数の台風では、少し停留した後に角度を変更したり後退したりすることがある。これは、その時に位置する海域(例えば、メキシコ湾や南シナ海)が高温であり、前方に位置する大陸のほうが台風の位置する海域よりも低温又は高気圧であることによる。また、台風が角度を変えたり後退したりする他の原因としては、台風が別の近距離にある強い低気圧圏、例えば2つの台風に吸引されることがある。
もし台風の近距離前方にある大陸の気圧が大雨の影響で上昇している、或いは、前方の上下の平均温度が冷風流入により急激に低下している場合には、台風は向きを変え、上陸することはない。実際に、前方の大陸に突如として寒気が発生したために、上陸できなくなる台風もある。
台風が、重要なスポーツや政治、又は軍事活動のエリアに向かっている場合には、台風の進路を変えるか、台風の上陸を阻止せねばならない。上記の説明に基づき、理論と技術を用いれば、これら重要地域に幅広で分厚く、密度の高い雲層がすでに集積している場合、人工降雨法を用いて当該地域に大雨を降らせることで、当該地域の広範囲における上下の平均温度を予め下げれば、台風の進路を変更させることが可能となる。
台風の移動速度を時速12キロとして計算すると、理論上、予め降雨させる時間は、台風が存在する低気圧圏が当該地域に到達する前の約30時間ということになる。台風の移動速度は随時変動するため、時間と距離は台風のその時の移動速度に応じて決定する必要がある。
豪雨、強い雷電、ウインドシア及び深刻な大気汚染の形成を本発明により阻止する方法
高密度の雲層は、「強い温室効果」を形成するとともに活発な低気圧を形成するため、強い雲層対流と強い雲層内対流が発生しやすい。高温及び低気圧は周辺から雲と汚染大気を吸引し、雲層を更に分厚く高密度とするため、雨滴が非常に大きく極度に集中した、落雷を伴う局地的豪雨が形成される。また、高密度の雲は汚染大気の正常な上昇を妨げる。
上述した太陽の回帰線往復に関する説明及びその他の説明に基づけば、北半球では、回帰線以南の地域で5〜6月に高温且つ大量の雲が凝集するようになり、雷を伴う豪雨が多発する。一方、7〜9月の豪雨地域の多くは回帰線及びその以北の高緯度地域に集中する。また、高い山や高温の大都市などは上空に雲が凝集しやすく、雲層の中央位置又は最高温位置となりやすい。よって、雲層がより分厚く高密度且つ高温となるため、極めて強い雷雨が発生しやすくなる。
上記のような状況を阻止したいのであれば、雲層が雲層対流又は雲層内対流を形成して、自ら広範囲にわたる極めて強い雨を降らせる前に、当該豪雨雲層における最高温位置を見つけ出す必要がある。続いて、人工降雨法を用い、まずは最高温位置の一つにおいて人工降雨を実施する。ここでは、当該分厚く高密度の雲層を先と後に分けることで、領域と時間を分割して雨を降らせる。これにより、巨大な雲層全体がより高密度に凝集されて自ら極めて強い雷雨を形成し、同時刻に降り出すことが回避される。
いわゆる「雨のち晴れ」は、降雨によって高温の雲が分散或いは消失し、空気の温度が低下するだけでなく、気圧が上昇して汚染大気が消失するために起こる。また、夜間には雲層の温度が下がることから、冷却されて雨となりやすいため、人工降雨を選択的に夜間に実施してもよい。これにより、人々の日常生活への影響も回避できる。
地球上の一部地域では、毎年のように上述のような気象災害が発生し、無数の生命が失われているほか、100億元とも1000億元ともいわれる物的被害が生じており、経済成長に著しく影響している。「強い温室効果」による高温空気の上昇圧力を人工的に予め放出することが、深刻な災害を伴わざるを得ない自然放出に勝ることはいうまでもない。現代の科学技術と生産能力をもってすれば、環境にやさしい降雨剤やその他の化学剤を大量且つ安価に生産し、飛行機に積載して降雨剤として散布することは、決して困難でも莫大な費用のかかることでもない。これらは、気象災害による経済的及び人命の損失に比べれば、数百倍から数千倍も安いものである。最重要課題は、人命の死傷防止に他ならない。
以上の開示は、本発明の具体的実施例にすぎない。本発明はこれらに限定されず、当業者が想起し得る変形は、いずれも本発明の保護の範囲に包含されるものとする。