以下、図を参照しつつ、ループアンテナについて説明する。最初に、ループアンテナの周波数特性に寄与する要因を明確化するために、ループアンテナと、そのループアンテナを利用して通信する通信回路の等価回路について説明する。
図1は、ループアンテナと通信回路の等価回路図である。ループアンテナは、抵抗(抵抗値R
ap)とコイル(インダクタンスL
ap)と、コンデンサ(静電容量C
int)とが並列に接続された等価回路100で表される。一方、ループアンテナと接続される通信回路は、抵抗(抵抗値R
cp(例えば、略2000Ω))とコンデンサ(静電容量C
cp(例えば、1.0pF))とが並列に接続された等価回路101で表される。無線タグでは、整合回路を介さずに、ループアンテナと通信回路が接続されることがある。そのため、所望の周波数を持つ電波に対する等価回路100のインピーダンスと等価回路101のインピーダンスとが整合していることが求められる。すなわち、所望の周波数について、ループアンテナと通信回路とが共振条件を満たすことが求められる。共振条件が満たされる場合、ループアンテナは、受信したその電波を通信回路へ渡すことが可能となる。すなわち、ループアンテナは、その所定の周波数を中心とする、所定の幅を持つ周波数帯域の電波に対して使用可能となる。共振条件は、次式で表される。
静電容量Cint及びCcpと、インダクタンスLapとが共振周波数f0において共振条件を満たし、かつ、Rap=Rcpである場合、ループアンテナで受信した電波のパワーの全てが通信回路へ供給される。
一般に、通信回路の抵抗値Rcp及び静電容量Ccpは固定である。そのため、共振周波数f0が所望の周波数となるように、例えば、共振周波数f0がRFIDシステムで利用される周波数帯域860MHz〜960MHzに含まれるように、静電容量CintまたはインダクタンスLapが調節される。
ここで、ループアンテナのループの長さ、すなわち、電流が流れる経路の長さが長くなるほど、等価回路100のコイルのインダクタンスLapが大きくなる。また、静電容量Cintは、例えば、ループアンテナに設けられるインターデジタル構造において、二つの導体間のギャップの幅などにより調節される。例えば、インターデジタル構造における二つの導体間のギャップが狭くなるほど、静電容量Cintは大きくなる。また、ループアンテナがインターデジタル構造など、静電容量を生じる構造を持たない場合、静電容量Cintは0となる。
ループアンテナが搭載される無線タグの小型化により、ループアンテナのサイズが制限されることがある。このような場合、ループアンテナのループを長くすることは、従来技術では困難であるため、インダクタンスLapを大きくすることは困難であった。そのため、共振周波数f0がRFIDシステムに割り当てられた周波数帯域に含まれるようにするためには、静電容量Cintを大きくする他なく、その結果として、ループアンテナのインターデジタル構造におけるギャップを狭くすることになる。
しかし、ギャップが狭くなるほど、そのギャップの幅に対する、ループアンテナの製造誤差によるギャップの幅の変動量の比が大きくなる。そのため、ループアンテナの製造誤差による、静電容量Cintの変動量も大きくなる。その結果として、ループアンテナの周波数特性も、ループアンテナの製造誤差により大きく変動する。このことは、ループアンテナの製造時に適用される許容公差を小さくせざるを得なくなるので好ましくない。
そこで、このループアンテナは、限られたサイズの中でループアンテナのループ長をできるだけ長くして、インダクタンスLapを大きくすることで、静電容量を生じるインターデジタル構造のギャップの幅をできるだけ広くする。そのために、長方形状の基板をその長手方向に沿って二つの導体で囲むことで形成されるループアンテナにおいて、基板の一端で折り返される一方の導体の給電点を、その一端と対向する基板の他端で折り返される他方の導体の給電点よりも他端近くに設ける。これにより、このループアンテナは、ループアンテナを流れる電流の経路を長くして、二つの導体間に形成されるギャップの幅を広げることを可能とする。
以下の実施形態または変形例において、説明の便宜上、給電点が設けられる方の基板の面を表面と呼び、基板の表面と反対側の面を背面と呼ぶ。また、基板の長手方向が水平方向となり、かつ、基板の短手方向が鉛直方向となるようにループアンテナが置かれ、かつ、表面側からループアンテナを見たときを基準として、上下方向及び左右方向を規定する。また、基板の短手方向の長さを基板の幅と呼び、基板の長手方向の長さを、単に基板の長さと呼ぶことがある。
図2(a)は、第1の実施形態によるループアンテナの概略斜視図であり、図2(b)は、第1の実施形態によるループアンテナの概略側面図である。また図3は、図2(a)及び図2(b)に示されたループアンテナの部品展開図である。
第1の実施形態によるループアンテナ1は、基板2と、第1の導体3と、第2の導体4とを有する。
基板2は、例えば、ABS樹脂、PET樹脂、ポリカーボネイト樹脂といった合成樹脂などの誘電体により、長方形の板状に形成される。
第1の導体3は、例えば、銅、あるいは金などの導電性を有する金属であり、基板2の長手方向の一方の端部(この例では、右端)にて平面がU字状に折り曲げられた形状を有する。そして第1の導体3の折り曲げられたところから一方の側は、基板2の表面に設けられる第1の表面パターン3aを形成し、その折り曲げられたところから他方の側は、基板2の背面に設けられる第1の背面パターン3bを形成する。そして第1の表面パターン3aと第1の背面パターン3bとは、基板2の右端において電気的に接続される。
基板2の表面における第1の表面パターン3aは、基板2の右端側から順に、長方形状の第1の接続部3cと、長方形状の第1の先端部3dとを有する。第1の接続部3cは、基板2の右端の近傍から基板2の長手方向の中点を所定のオフセットだけ超えるところまでに設けられ、基板2の短手方向に沿った第1の接続部3cの幅は、基板2の幅の1/2未満となる。第1の先端部3dは、第1の接続部3cの左端と、基板2の長手方向の他方の端部(この例では、左端)の間に設けられる。基板2の短手方向に沿った第1の先端部3dの幅は、基板2の幅の1/2よりも広くなる。そして第1の接続部3c及び第1の先端部3dの上側の辺は、基板2の上端と平行となる。
一方、基板2の背面における第1の背面パターン3bは、基板2の右端から、基板2の左端から所定距離の位置までの範囲全体を覆うように長方形状に形成される。
第2の導体4も、例えば、銅、あるいは金などの導電性を有する金属であり、第1の導体3と同様の形状を有し、かつ、基板2の表面の中心に対して第1の導体3と中心点対称となるように形成される。すなわち、第2の導体4は、基板2の左端にて平面がU字状に折り曲げられた形状を有する。そして第2の導体4の折り曲げられたところから一方の側は、基板2の表面に設けられる第2の表面パターン4aを形成し、その折り曲げられたところから他方の側は、基板2の背面に設けられる第2の背面パターン4bを形成する。
基板2の表面における第2の表面パターン4aは、基板2の左端側から順に、長方形状の第2の接続部4cと、長方形状の第2の先端部4dとを有する。第2の接続部4cは、基板2の左端の近傍から基板2の長手方向の中点を所定のオフセットだけ超えるところまでに設けられ、基板2の短手方向に沿った第2の接続部4cの幅は、基板2の幅の1/2未満となる。第2の先端部4dは、第2の接続部4cの右端と、基板2の長手方向の他方の端部(この例では、右端)の間に設けられる。基板2の短手方向に沿った第2の先端部4dの幅は、基板2の幅の1/2よりも広くなる。そして第2の接続部4c及び第2の先端部4dの下側の辺は、基板2の下端と平行となる。
第1の導体3の第1の接続部3cと第2の導体4の第2の先端部4dとの間には、静電容量を持つギャップ5−1が形成される。同様に、第2の導体4の第2の接続部4cと第1の導体3の第1の先端部3dとの間にも、静電容量を持つギャップ5−2が形成される。これにより、ループアンテナ1は、図1に示されたループアンテナの等価回路の静電容量Cintを0よりも大きな値とすることができる。なお、ギャップ5−1、5−2の幅は、ループアンテナ1が使用される周波数帯域及びループアンテナ1の電気長に応じたインダクタンスなどに基づいて決定される。
さらに、第1の先端部3dの基板2の右端と対向する側には、第2の接続部4cと平行な突起部3eが、その突起部3eと第2の接続部4cとの間隔がギャップ5−1と同じとなるように設けられる。同様に、第2の先端部4dの左端と対向する側には、第1の接続部3cと平行な突起部4eが、その突起部4eと第1の接続部3cとの間隔がギャップ5−2と同じとなるように設けられる。これにより、ループアンテナ1は、第1の導体3と第2の導体4間のギャップを長くすることができるので、静電容量を増加させることができる。また、突起部3eおよび突起部4eは、先端部3dと先端部4dが延長されたものなので、ループアンテナ1は、インダクタンスも増加させることができる。
さらに、第1の導体3の第1の先端部3dの基板2の右端と対向する側と、第2の導体4の第2の先端部4dの基板2の左端と対向する側との間の空間には、例えば、通信処理など、無線タグの各種処理を実行する集積回路8が配置される。そして第1の導体3の第1の先端部3dの基板2の右端と対向する側に、負極側の第1の給電点6aが設けられる。一方、第2の導体4の第2の先端部4dの基板2の左端と対向する側に、正極側の第2の給電点6bが設けられる。給電点6a及び給電点6bは、それぞれ、集積回路8と給電線9を介して接続される。
これにより、給電点6aから給電点6bまでの電流が流れる経路に、互いに行き違いとなる第1の接続部3cと第2の接続部4cとが含まれることになるので、その電流の経路の長さは、基板2の長手方向に沿った、基板2の一周の長さよりも長くなる。そのため、ループアンテナ1は、放射特性を大幅に低下させることなく、図1に示されるループアンテナの等価回路100におけるインダクタンスLapを大きくすることができる。
一方、基板2の背面において、第2の導体4の第2の背面パターン4bは、基板2の左端から、基板2の右端から所定距離の位置までの範囲全体を覆うように長方形状に形成される。そのため、基板2の背面において、第1の導体3の第1の背面パターン3bと第2の導体4の第2の背面パターン4bとは、互いに重複する重複領域を持つ。その重複領域において、第1の背面パターン3bと第2の背面パターン4bとの間には、例えば、樹脂製の絶縁体のフィルム層7が設けられる。そのため、その重複領域において、ループアンテナ1は、静電容量を持ち、第1の導体3と第2の導体4とは、ループアンテナ1が使用される周波数帯域において静電結合する。これにより、図1に示されたループアンテナの等価回路の静電容量Cintが増大する。
なお、第1の導体3は、例えば、蒸着により基板2上に形成される。また、第2の導体4は、例えば、フィルム層7上に蒸着された後に、基板2にフィルム層7ごと巻きつけることで基板2上に設けられる。あるいは、第1の導体3及び第2の導体4は、誘電体の基板上に導体のパターンを形成する他の様々な方法により、基板2またはフィルム層7上に形成されてもよい。
なお、ループアンテナ1は、非誘電体で形成されるケース内に収容されてもよい。
以下、電磁界シミュレーションにより求めた、ループアンテナ1の周波数特性について説明する。
図4(a)〜図4(c)は、それぞれ、第1の実施形態によるループアンテナの周波数特性の電磁界シミュレーションに使用した各部の寸法を示す図である。このうち、図4(a)は、ループアンテナ1を表面側から見た斜視図であり、図4(b)は、ループアンテナ1が収容されるケースを表面側から見た斜視図である。そして図4(c)は、第1の導体3及び第2の導体4を平板状に伸ばした状態を表す図である。このシミュレーションにおいて、基板2の比誘電率εr=3.2とし、基板2の誘電正接tanδ=0.001とした。また、基板2の長さを31mmとし、幅を22mmとし、基板2の厚さを1.2mmとした。
また、第1の導体3及び第2の導体4の導電率を5.8x107(S/m)とした。そして接続部及び先端部以外の部分における、基板2の短手方向に沿った第1の導体3及び第2の導体4の幅を20mmとした。一方、第1の接続部3c及び第2の接続部4cにおける、基板2の短手方向に沿った幅を5.8mmとし、基板2の長手方向に沿った長さを17.5mmとした。また、第1の先端部3d及び第2の先端部4dにおける、基板2の短手方向に沿った幅を13.2mmとし、基板2の長手方向に沿った長さを11.5mmとした。さらに、突起部3e及び突起部4eの基板2の短手方向に沿った幅を0.7mmとし、基板2の長手方向に沿った長さを4mmとした。そして第1の先端部3dと第2の先端部4d間の基板2の長手方向に沿った間隔、及び、突起部3eと突起部4e間の基板2の短手方向に沿った間隔をそれぞれ5mmとした。また、ギャップ5−1の幅及びギャップ5−2の幅をそれぞれ1mmとした。
さらに、第1の背面パターン3b及び第2の背面パターン4bの基板2の長手方向に沿った長さをそれぞれ26mmとした。すなわち、基板2の背面において、第1の背面パターン3bと第2の背面パターン4bとは、基板2の長手方向に沿って21mm、基板2の短手方向に沿って20mmの範囲で互いに重なる。そしてフィルム層7の厚さを0.1mmとし、フィルム層7の比誘電率及び誘電正接は、基板2の比誘電率及び誘電正接と同一であるとした。
また、第1の給電点6a及び第2の給電点6bに接続される給電線9の幅を0.26mmとした。さらに、第1の給電点6a及び第2の給電点6bを、基板2の短手方向の中点に設けた。
さらに、このシミュレーションでは、ループアンテナ1は、基板2の比誘電率及び誘電正接と同一の比誘電率及び誘電正接を有する誘電体のケースに収容されるものとした。そしてそのケースの長手方向の長さを35mmとし、短手方向の長さを25mmとし、厚さを2mmとした。
図5は、電磁界シミュレーションにより求めた、周波数とループアンテナ1の通信可能距離の関係を示す図である。図5において、横軸は周波数を表し、縦軸は通信可能距離を表す。グラフ500は、図4に示された各部の寸法を持つループアンテナ1の周波数と通信可能距離の関係を表す。グラフ501は、ギャップ5−1、5−2、第1の先端部3dと第2の先端部4d間の間隔、及び二つの突起部3e、4e間の間隔がそれぞれ図4(c)に示されたものよりも0.1mm広くなった場合における、ループアンテナ1の周波数と通信可能距離の関係を表す。グラフ502は、ギャップ5−1、5−2、第1の先端部3dと第2の先端部4d間の間隔、及び二つの突起部3e、4e間の間隔がそれぞれ図4(c)に示されたものよりも0.1mm狭くなった場合における、ループアンテナ1の周波数と通信可能距離の関係を表す。
グラフ500〜グラフ502に示されるように、ループアンテナ1では、ギャップ5−1、5−2等のサイズが±0.1mm変動しても、最大となる通信可能距離はほぼ一定である。また、最大となる通信可能距離に相当する周波数も、±2.3MHzしか変動しない。このように、ループアンテナ1は、各部の寸法の製造誤差による周波数特性の変化が小さいことが分かる。
図6(a)及び図6(b)は、それぞれ、比較例によるループアンテナ600の周波数特性の電磁界シミュレーションに使用した各部の寸法を示す図である。このうち、図6(a)は、ループアンテナ600が収容されるケースを表面側から見た透過斜視図である。図6(b)は、ループアンテナ600を形成する二つの導体を平板状に伸ばした状態を表す図である。この比較例でも、第1の実施形態によるループアンテナ1の基板2と同じサイズ、及び同じ物理特性(比誘電率εr=3.2、誘電正接tanδ=0.01)を持つ基板601の長手方向に沿って導体で囲むことでループアンテナ600が形成される。ただし、この比較例では、基板601の短手方向に沿って、正極側の給電点602が設けられる導体610と負極側の給電点603が設けられる導体611の間に、静電容量を持たせるためのギャップ612が形成される。
この比較例では、基板601の短手方向に沿った導体610及び導体611の幅を20mmとした。そして導体610には、ギャップ612の近傍に、基板601の長手方向に沿って4.78mm、基板601の短手方向に沿って5mmのサイズを持つ、ループアンテナ600に給電するための回路を設置するための空間613が形成される。そしてこの空間613において、幅0.2mmの給電線を介して給電点602及び給電点603に給電される。また、空間613とギャップ612を隔てるために、導体610のギャップ612側の端部には、基板601の短手方向に沿った二つの突起部614、615が形成される。二つの突起部614、615の幅0.2mmであり、また、突起部614の先端と突起部615の先端間の間隔は0.208mmである。そしてこの間隔に、給電点603に給電するための給電線が通される。
さらに、ループアンテナ1において通信可能距離が最大となる周波数においてループアンテナ600の通信可能距離を最大とするために、ギャップ612の幅を0.04mmとした。
さらに、基板601の背面側に位置する部分についての導体610及び導体611の基板601の長手方向に沿った長さをそれぞれ26mmとした。すなわち、基板601の背面において、導体610と導体611とは、基板601の長手方向に沿って21mm、基板601の短手方向に沿って20mmの範囲で互いに重なる。そして導体610と導体611とが重なる範囲において、導体610と導体611の間に設けられるフィルム層(図示せず)の厚さを0.1mmとし、フィルム層の比誘電率及び誘電正接は、基板601の比誘電率及び誘電正接と同一であるとした。
さらに、このシミュレーションでは、ループアンテナ600は、基板601の比誘電率及び誘電正接と同一の比誘電率及び誘電正接を有する誘電体のケースに収容されるものとした。そしてそのケースの長手方向の長さを35mmとし、短手方向の長さを25mmとし、厚さを2mmとした。
図7は、電磁界シミュレーションにより求めた、周波数とループアンテナ600の通信可能距離の関係を示す図である。図7において、横軸は周波数を表し、縦軸は通信可能距離を表す。グラフ700は、図6に示された各部の寸法を持つループアンテナ600の周波数と通信可能距離の関係を表す。また、グラフ701は、ギャップ612の間隔が図6に示されたものよりも0.1mmだけ広くなった場合における、ループアンテナ600の周波数と通信可能距離の関係を表す。
グラフ700及びグラフ701に示されるように、ループアンテナ600では、ギャップ612のサイズが0.1mm変動するだけで、最大となる通信可能距離が大幅に減少し、かつ、最大となる通信可能距離に相当する周波数の変動幅も、100MHz以上と非常に大きい。このように、ループアンテナ600では、各部の寸法の製造ばらつきによる周波数特性の変化が、ループアンテナ1に対して非常に大きいことが分かる。
以上に説明してきたように、このループアンテナでは、基板の長手方向に沿って、基板を囲むように形成される二つの導体のうちの一方の導体の先端部が、他方の導体の先端部と行き違いになるように二つの導体が形成され、それら先端部のそれぞれに給電される。すなわち、一方の導体の給電点が、他方の導体の給電点よりも、他方の導体が折り返される端部の近くに設けられる。そのため、このループアンテナでは、二つの給電点間の電流の経路上に、行き違いとなる先端部が含まれるので、ループアンテナを流れる電流の経路が長くなる。したがって、ループアンテナのインダクタンスLapが大きくなり、必要な静電容量Cintが低減される。その結果として、このループアンテナは、静電容量を生じさせる二つの導体間のギャップを広げることが可能となるので、製造誤差に起因するギャップ幅の変動等による周波数特性の変動を抑制できる。
図8は、第2の実施形態によるループアンテナを表面側から見た概略斜視図である。図8において、図2(a)及び図2(b)に示されたループアンテナ1の各要素に対応する構成要素には、同じ参照番号を付した。第2の実施形態によるループアンテナ11は、第1の実施形態によるループアンテナ1と比較して、各導体3、4の先端部3d、4dにおける突起部が省略されている。そのため、第2の実施形態によるループアンテナ11では、二つの導体間のギャップ5−1、5−2の長さが、ループアンテナ1と比較してその突起部に相当する長さだけ短くなっている。そのため、ループアンテナ1が有する静電容量と同じ静電容量、また、ループアンテナ1が有するインダクタンスと同じインダクタンスをループアンテナ11が有するためには、例えば、ループアンテナ1よりも、ギャップ5−1、5−2の幅を狭くすることになる。あるいは、突起部に相当するインダクタンスを増加させるために、接続部3c、4cの幅を狭くした分、先端部3d、4dを延長することになる。しかし、ループアンテナ11では、微細な突起部が省略されているので、ループアンテナ1よりも製造が容易となる。
また他の実施形態によれば、二つの導体間のギャップが蛇行形状となるように、二つの導体の表面パターンが形成されてもよい。
図9(a)及び図9(b)は、それぞれ、二つの導体間のギャップが蛇行形状となるように各導体の表面パターンが形成された、第3及び第4の実施形態によるループアンテナを表面側から見た概略斜視図である。図9(a)及び図9(b)において、図8に示されたループアンテナ11の各要素に対応する構成要素には、同じ参照番号を付した。
図9(a)に示された第3の実施形態によるループアンテナ21では、図8に示されたループアンテナ11と比較して、第1の先端部3dの上側の辺が、第1の接続部3cの上側の辺よりも基板2の中心側に位置するように、第1の先端部3dの幅が狭くなっている。そして第1の先端部3dの上側の辺に沿って、第2の導体4が基板2の右端側へ延伸されている。同様に、第2の導体4の第2の先端部4dの下側の辺が、第2の接続部4cの下側の辺よりも基板2の中心側に位置するように、第2の先端部4dの幅が狭くなっている。そして第2の先端部4dの下側の辺に沿って、第1の導体3が基板2の左端側へ延伸されている。そのため、ギャップ5−1及びギャップ5−2が蛇行形状となり、ループアンテナ11と比較して、ギャップ5−1及びギャップ5−2が長くなっている。
また、図9(b)に示された第4の実施形態によるループアンテナ31では、第1の先端部3d及び第2の先端部4dだけでなく、第1の接続部3cの上側の辺の一部及び第2の接続部4cの下側の辺の一部も基板2の上端、下端よりも基板2の中心側に位置する。これにより、ループアンテナ31では、ギャップ5−1、5−2の長さが、ループアンテナ21よりもさらに長くなっている。
このように、図9(a)及び図9(b)に示される実施形態では、二つの導体間のギャップ5−1、5−2が、上記の各実施形態によるループアンテナと比較して長い。そのため、第3及び第4の実施形態によるループアンテナは、ギャップの幅をより広くすることができる。その結果として、第3及び第4の実施形態によるループアンテナは、製造誤差による周波数特性の変動をより低下させることができる。
さらに他の実施形態によれば、各導体の先端部がU字状に形成されてもよい。
図10は、各導体の先端部がU字状となるように各導体が形成された、第5の実施形態によるループアンテナを表面側から見た概略斜視図である。図10において、図8に示されたループアンテナ11の各要素に対応する構成要素には、同じ参照番号を付した。
第5の実施形態によるループアンテナ41では、第1の先端部3dの基板2の右端と対向する側の辺から基板2の左端側へ向けて延伸されるスリット3fが、給電点6aと第1の接続部3cとの間に形成されている。そのため、第1の先端部3dがU字状となっている。同様に、第2の先端部4dの基板2の左端と対向する側の辺から基板2の右端側へ向けて延伸されるスリット4fが、給電点6bと第2の接続部4cとの間に形成されている。そのため、第2の先端部4dがU字状となっている。そのため、ループアンテナ41では、上記の各実施形態によるループアンテナと比較して、電流が流れる経路がより長くなり、かつ、電流が流れる経路の幅が各先端部で狭くなるので、インダクタンスLapが大きくなり、必要な静電容量Cintをより低減できる。その結果として、ループアンテナ41では、ギャップ5−1、5−2の幅をより広くして、製造誤差による周波数特性の変動をより低下させることができる。またこのように、電流を流れる経路を長くすることで、ループアンテナ41は、共振周波数f0を低周波数側へシフトさせることができる。
なお、スリット3f、4fの延伸方向は、長手方向に限定されるものではなく、電流が流れる経路が長くなるか、あるいは、各導体の幅が狭くなる、すなわち、電流の経路と交差する何れの方向に向けて形成されてもよい。例えば、スリット3fは、図10に示される、第1の先端部3dと第1の接続部3cの境界付近から上方へ向けて形成されてもよい。同様に、スリット4fは、第2の先端部4dと第2の接続部4cの境界付近から下方へ向けて形成されてもよい。この場合も、各導体の幅が狭くなるので、インダクタンスLapが大きくなる。
また、電流の経路における各導体の幅を狭くしてインダクタンスを増加させるため、第2の導体4のギャップ5−1に面する辺の何れかから、第2の導体4に対してスリットが形成されてもよい。例えば、ギャップ5−1のうちの短手方向と平行な部分の何れか(例えば、スリット4fより上側または下側)において、左端へ向かうようにスリットが形成されてもよい。同様に、第1の導体3のギャップ5−2に面する辺の何れかから、第1の導体3に対してスリットが形成されてもよい。例えば、ギャップ5−2のうちの短手方向と平行な部分の何れか(例えば、スリット3fより上側または下側)において、右端へ向かうようにスリットが形成されてもよい。ただし、これらのスリットは、長手方向と平行でなくてもよく、長手方向に対して、例えば、0°〜45°の角度をなすように形成されてもよい。
また、電流の経路における各導体の幅を狭くしてインダクタンスを増加させるため、第1の接続部3cのギャップ5−1と対向する上端から下方へ向かうスリットがさらに形成されてもよい。同様に、第2の接続部4cのギャップ5−2と対向する下端から上方へ向かうスリットがさらに形成されてもよい。ただしこれらのスリットは、短手方向と平行でなくてもよく、短手方向に対して、例えば、0°〜45°の角度をなすように形成されてもよい。さらに、ギャップ5−1と右端に挟まれた部分において、第1の導体3の上端から下方へ向けてスリットが形成されてもよい。また、ギャップ5−2と左端に挟まれた部分において、第2の導体4の下端から上方へ向けてスリットが形成されてもよい。
さらに、第1の導体3に形成されるスリットの数は1本に限られず、複数でもよい。同様に、第2の導体4に形成されるスリットの数は1本に限られず、複数でもよい。この場合には、例えば、第1の導体3及び第2の導体4のそれぞれについて、上記のスリットのうちの何れか2本以上が形成されればよい。さらに、各スリットは直線状のスリットに限られず、L字状、円弧状、あるいは蛇行形状などに形成されてもよい。さらにまた、第1の導体3と第2の導体4のうち、何れか一方についてのみ、上記のスリットの何れかが1本以上形成されてもよい。
さらに、ループアンテナ41において、ギャップ5−1、5−2をより長くするために、各先端部の両端に、基板の長手方向に沿って延伸される突起部がそれぞれ形成されてもよい。
図11は、図10に示されたループアンテナ41において、先端部に突起部が形成された第6の実施形態によるループアンテナを表面側から見た概略斜視図である。図11において、図10に示されたループアンテナ41の各要素に対応する構成要素には、同じ参照番号を付した。
第6の実施形態によるループアンテナ51では、第1の先端部3dの先端の上端及び下端のそれぞれから、基板2の長手方向に沿って右側へ向けて延伸される2本の突起部3g、3hが形成される。同様に、第2の先端部4dの先端の上端及び下端のそれぞれから、基板2の長手方向に沿って左側へ向けて延伸される2本の突起部4g、4hが形成される。これにより、ループアンテナ51では、ループアンテナ41よりもギャップ5−1、5−2が長くり、かつ、先端部3d、4dも長くなるので、ギャップの幅をより広くすることができる。その結果として、ループアンテナ51は、製造誤差による周波数特性の変動をより低下させることができる。あるいは、ギャップ5−1、5−2の幅をループアンテナ41のギャップ5−1、5−2の幅と同一とすることで、共振周波数f0が低周波数側へシフトされる。なお、各突起部は、蛇行形状に形成されてもよく、あるいは、L字状となるように、突起部の途中から先端側が短手方向に沿って延伸されてもよい。
さらに、ループアンテナ41において、電流が流れる経路をより長くするために、折り返された二つの先端部同士が、互いに行き違いとなるように各導体が形成されてもよい。
図12は、図10に示されたループアンテナ41において、折り返された二つの先端部同士が、互いに行き違いとなるように各導体が形成された第7の実施形態によるループアンテナを表面側から見た概略斜視図である。また、図12に示される第7の実施形態によるループアンテナは、図2(a)に示されたループアンテナの各導体の先端部3d、4d、または図8に示されたループアンテナの各導体の突起部3e、4eを延長してRewound Spiral状とした構造を有する。図12において、図10に示されたループアンテナ41の各要素に対応する構成要素には、同じ参照番号を付した。
第7の実施形態によるループアンテナ61では、基板2の右端側から延伸される第1の導体3の第1の表面パターン3aにおいて、U字状に形成された第1の先端部3dの先端が、第2の先端部4dの先端よりも基板2の右端近くに位置している。逆に、基板2の左端側から延伸される第2の導体4の第2の表面パターン4aにおいて、U字状に形成された第2の先端部4dの先端が、第1の先端部3dの先端よりも基板2の左端近くに位置している。そのため、第1の先端部3dと第2の先端部4dとが行き違いとなっている。そして給電点6aと給電点6bとを結ぶ方向が、基板2の短手方向と略平行となるように、給電点6a及び給電点6bが設けられる。
さらに、第1の表面パターン3aは、第1の背面パターンと、基板2の下端側で接続される。同様に、第2の表面パターン4aは、第2の背面パターンと、基板2の上端側で接続される。これにより、電流が流れる経路がより長くなる。
ループアンテナ61では、ループアンテナ41と比較して、電流が流れる経路がより長くなるので、インダクタンスLapがより大きくなり、必要な静電容量Cintをより低減できる。さらに、ギャップ5−1、5−2もより長くなる。その結果として、ループアンテナ61では、ギャップ5−1、5−2の幅をより広くして、製造誤差による周波数特性の変動をより低下させることができる。また、ループアンテナ61は、ループアンテナ41と比較して、共振周波数f0を低周波数側へシフトさせることができる。
さらに、ループアンテナ41において、電流が流れる経路をより長くするために、各導体の背面パターンの形状が、各導体の表面パターンの形状と略等しくなるように、各導体が形成されてもよい。
図13は、図10に示されたループアンテナ41において、各導体の背面パターンの形状が、各導体の表面パターンの形状と略等しくなるように各導体が形成された第8の実施形態によるループアンテナの導体の形状を表す透過斜視図である。図13において、図10に示されたループアンテナ41の各要素に対応する構成要素には、同じ参照番号を付した。
第8の実施形態によるループアンテナ71では、第1の表面パターン3aと第2の表面パターン4aとを合わせた形状と、第1の背面パターン3bと第2の背面パターン4bとを合わせた形状が、表面側から見て何れも逆S字状となっている。すなわち、基板2の表面に対して垂直な方向から見たときに、ギャップ5−1、5−2と重なる位置において、第1の背面パターン3bと第2の背面パターン4bとにスリットが形成されている。なお、スリットの幅は、ギャップ5−1、5−2の幅と等しくてもよく、あるいは、ギャップ5−1、5−2の幅と異なっていてもよい。そして第1の表面パターン3aは、右端側で第1の背面パターン3bと電気的に接続されている。一方、第2の表面パターン4aは、左端側で第2の背面パターン4bと電気的に接続されている。また、第1の表面パターン3aは、基板2の左端側では第1の背面パターン3bとは接続されていない。同様に、第2の表面パターン4aは、基板2の右端側では第2の背面パターン4bとは接続されていない。そして第1の背面パターン3bと第2の背面パターン4bとは、第1の先端部3d及び第2の先端部4dとが対向する位置において互いに重なって、静電結合可能なように形成されている。
そのため、ループアンテナ71では、ループアンテナ41と比較して、電流が流れる経路がより長くなるので、インダクタンスLapが大きくなり、必要な静電容量Cintをより低減できる。その結果として、ループアンテナ71では、ギャップ5−1、5−2の幅をより広くして、製造誤差による周波数特性の変動をより低下させることができる。
また、第1の導体3と第2の導体4間のギャップは、基板2の長手方向及び短手方向の何れとも平行でなくてもよい。
図14は、二つの導体間のギャップが基板の対角方向に沿って延伸されるように各導体が形成された第9の実施形態によるループアンテナの概略斜視図である。図14において、図8に示されたループアンテナ11の各要素に対応する構成要素には、同じ参照番号を付した。
第9の実施形態によるループアンテナ81では、基板2の表面において、第1の表面パターン3aは、給電点6aが設けられる部分を除いて、基板2の左端に近づくにつれて幅が狭くなり、かつ、第1の表面パターン3aの下端が上端に近づくように形成されている。同様に、第2の表面パターン4aは、給電点6bが設けられる部分を除いて、基板2の右端に近づくにつれて幅が狭くなり、かつ、第2の表面パターン4aの上端が下端に近づくように形成されている。そのため、ギャップ5−1とギャップ5−2が基板2の対角線に沿って形成されている。ただし、基板2の略中央部において、第1の表面パターン3aの下辺に突起が形成されるとともに、第2の表面パターン4aの上辺に突起に形成される。そしてそれらの突起に、給電点6aと給電点6bとが、基板2の長手方向に沿って互いに対向するように設けられる。これにより、ループアンテナ81でも、基板2の長手方向に沿った基板2の一周の長さよりも、電流が流れる経路が長くなり、インダクタンスLapを大きくすることができる。そのため、ループアンテナ81も、必要な静電容量Cintを抑制できるので、ギャップ5−1、5−2の幅を広くして、製造誤差による周波数特性の変動を抑制できる。
上記の各実施形態によるループアンテナにおいて、基板の背面側で二つの導体は、直接接触するように形成されてもよい。あるいは、二つの導体は、一つの導体として形成されてもよい。この場合には、基板の背面側で静電結合される部分が無くなるので、ループアンテナの静電容量が減少する。その静電容量の減少分は、例えば、基板の表面側の導体間のギャップを狭くすることで補償される。
また、上記の各実施形態によるループアンテナでは、各導体または給電線における、電流が流れる経路に相当する部分の幅が、エッチングなどの工程における製造誤差により変動すると、インダクタンスLapも変動する。その結果、共振周波数f0も変動する。特に、電流が流れる経路上で幅が狭い部分ほど、その部分の幅に対する、ループアンテナの製造誤差によるその部分の幅の変動量の比が大きくなるので、インダクタンスLapの変動に与える影響も大きくなる。例えば、図8に示されたループアンテナ11では、ギャップ5−1を挟んで第2の導体4の先端部4dと対向し、ギャップ5−1とループアンテナ11の上端との間に挟まれている第1の導体3の接続部3cの幅の変動が、インダクタンスLapの変動に影響する。同様に、ギャップ5−2を挟んで第1の導体3の先端部3dと対向し、かつ、ギャップ5−2とループアンテナ11の下端との間に挟まれている第2の導体4の接続部4cの幅の変動が、インダクタンスLapの変動に影響する。
共振周波数f0が変動すると、ループアンテナの性能も劣化することになるので、このような共振周波数f0の変動は好ましくない。例えば、共振周波数f0の変動量は、各実施形態によるループアンテナのアンテナ特性、例えば、通信可能距離の許容変動量(例えば、設計周波数における通信可能距離の10%〜20%)以下に抑制されることが好ましい。
ここで、(1)式を参照すると、L
ap(C
int+C
cp)が一定であれば、共振周波数f0も一定となる。すなわち、製造誤差によるインダクタンスL
apの変動に応じた共振周波数f0の変動を抑制するように、静電容量C
intまたはC
cpが変動すればよい。このことは、次式で表される。
ここで、ΔL
apは、製造誤差によるインダクタンスL
apの変動量を表す。同様に、ΔC
int及びΔC
cpは、それぞれ、製造誤差による静電容量C
int、C
cpの変動量を表す。(2)式から明らかなように、共振周波数f0を一定に保つためには、インダクタンスL
apが増加する場合(すなわち、ΔL
ap>0)には、静電容量C
intまたは静電容量C
cpの少なくとも一方が減少することが求められる(すなわち、ΔC
int<0またはΔC
cp<0)。逆に、インダクタンスL
apが減少する場合(すなわち、ΔL
ap<0)には、静電容量C
intまたは静電容量C
cpの少なくとも一方が増加することが求められる(すなわち、ΔC
int>0またはΔC
cp>0)。
ここで、再度図8を参照すると、インダクタンスLapの変動に主として影響する接続部3c、4cは、静電容量Cintを与えるギャップ5−1、5−2に隣接している。したがって、接続部3c、4cの幅が変われば、ギャップ5−1、5−2の幅も変動する。
図15(a)及び図15(b)は、それぞれ、ループアンテナ11における、製造誤差による各導体の幅及びギャップの幅の変化の一例を示す図である。図15(a)に示されるように、エッチングが過剰に行われると、設計値で定められる各導体3、4のサイズに対して、点線で示されるように、実際の各導体3’、4’のサイズは小さくなる。そのため、電流が流れる経路上での第1の導体3’の幅及び第2の導体4’の幅は、第1の導体3の幅及び第2の導体4の幅よりも狭くなる。そして電流が流れる経路上での第1の導体3’の幅及び第2の導体4’の幅が狭くなることにより、これらの導体により主として生じるインダクタンスLapは増加する。すなわち、ΔLap>0となる。一方、実際の各導体3’、4’のサイズが小さくなることで、ギャップ5−1及びギャップ5−2の幅は広くなる。したがって、これらのギャップにより主として生じる静電容量Cintは減少する。すなわち、ΔCint<0となる。
また、図15(b)に示されるように、エッチングが過少であると、設計値で定められる各導体3、4のサイズに対して、点線で示されるように、実際の各導体3”、4”のサイズは大きくなる。そのため、電流が流れる経路上での第1の導体3”の幅及び第2の導体4”の幅は、第1の導体3の幅及び第2の導体4の幅よりも広くなる。その結果として、これらの導体により主として生じるインダクタンスLapは減少する。すなわち、ΔLap<0となる。一方、実際の導体3”、4”のサイズが大きくなることで、ギャップ5−1及びギャップ5−2の幅は狭くなる。したがって、これらのギャップにより主として生じる静電容量Cintは増加する。すなわち、ΔCint>0となる。
他の実施形態によるループアンテナについても、各導体の電流が流れる部分の幅が製造誤差により狭くなれば、静電容量を生じる各導体間のギャップの幅は広くなり、逆に、各導体の電流が流れる部分の幅が製造誤差により広くなれば、そのギャップの幅は狭くなる。
このように、上記の各実施形態によるループアンテナでは、製造誤差による導体の幅の変動によりインダクタンスLapが増加すれば静電容量Cintは減少し、逆にインダクタンスLapが減少すれば静電容量Cintは増加する。そのため、ギャップの幅と導体の幅とを適切に設定すれば、(2)式が成立し、製造誤差によって導体の幅が変動しても、共振周波数f0が一定に保たれることが分かる。
さらに、製造誤差による共振周波数f0の変動を小さくするためには、導体の幅の変化に対する(2)式の右辺の値の関係において、製造誤差が無い場合に(2)式の右辺の値が極値となるように、各導体の幅が設定されることが好ましい。すなわち、製造誤差により各導体の幅が狭くなっても、逆に広くなっても、(2)式の右辺の値が、製造誤差が無い場合における(2)式の右辺の値よりも小さくなる(あるいは大きくなる)ことが好ましい。これにより、導体の幅の変化に対する、(2)式の右辺の値の変化が緩やかとなるので、製造誤差による共振周波数f0の変動が抑制される。
例えば、ループアンテナ11では、接続部3c、4cの幅は、相対的に狭いので、その幅に対する製造誤差による幅の変化量の比も大きくなる。したがって、接続部3cの幅及び接続部4cの幅の変動がΔLapに与える影響も相対的に大きい。このことから、接続部3cの幅及び接続部4cの幅と、ギャップ5−1及びギャップ5−2の幅の比を適切に調節することで、製造誤差による共振周波数f0の変動が抑制される。
図16は、参考として、製造誤差によるインダクタンスLapの変動による共振周波数f0の変動の抑制が不十分な場合における、ループアンテナ11についての製造誤差と共振周波数f0の関係の一例を示す電磁界シミューレション結果を示す図である。このシミュレーションでは、基板2の比誘電率εr=3.2とし、基板2の誘電正接tanδ=0.001とした。また、基板2の長手方向の長さを31mmとし、短手方向の長さを7mmとし、基板2の厚さを1.2mmとした。そしてギャップ5−1及びギャップ5−2の幅Gを1.0mmとした。
また、第1の導体3及び第2の導体4の導電率を5.8x107(S/m)とした。そして基板2の短手方向に沿った第1の導体3の先端部3d及び第2の導体4の先端部4dの幅DW1を4.4mmとし、基板2の短手方向に沿った第1の導体3の接続部3c及び第2の導体4の接続部4cの幅DW2を1.6mmとした。すなわち、G/DW2=0.625とした。さらに、基板2の長手方向に沿った第1の導体3の先端部3d及び第2の導体4の先端部4dの幅DL1を11.5mmとした。また、集積回路8が設けられる領域の基板2の長手方向に沿った長さ及び基板2の短手方向に沿った長さを、それぞれ5mmとした。そして第1の導体3と第2の導体4とは、基板2の背面側にて、基板2の長手方向に沿って5.1mm、基板2の短手方向に沿って7mmの範囲で互いに重なるようにした。
図16において、横軸は周波数を表し、縦軸は通信可能距離を表す。そしてグラフ1600は、製造誤差が無い場合における、ループアンテナ11の周波数特性を表す。また、グラフ1610は、図15(a)に示されるように、第1の導体3及び第2の導体4のそれぞれが、その外周に沿って0.05mmだけ小さくなった場合における、ループアンテナ11の周波数特性を表す。すなわち、この例では、DW2=1.5mmとなり、G=1.1mmとなる。一方、グラフ1620は、図15(b)に示されるように、第1の導体3及び第2の導体4のそれぞれが、その外周に沿って0.05mmだけ大きくなった場合における、ループアンテナ11の周波数特性を表す。すなわち、この例では、DW2=1.7mmとなり、G=0.9mmとなる。
グラフ1600〜1620に示されるように、第1の導体3及び第2の導体4の各部のサイズが変動することにより、通信可能距離が最長となる周波数、すなわち共振周波数f0が変動していることが分かる。
図17は、製造誤差によるインダクタンスLapの変動による共振周波数f0の変動を適切に抑制した場合における、ループアンテナ11についての製造誤差と共振周波数f0の関係の一例を示す電磁界シミューレション結果を示す図である。このシミュレーションでは、ギャップ5−1及びギャップ5−2の幅Gを0.3mmとした。そして基板2の短手方向に沿った第1の導体3の先端部3d及び第2の導体4の先端部4dの幅DW1を4.2mmとし、基板2の短手方向に沿った第1の導体3の接続部3c及び第2の導体4の接続部4cの幅DW2を2.5mmとした。すなわち、G/DW2=0.12とした。さらに、図16に示した電磁界シミュレーションにおける共振周波数とほぼ同じ共振周波数が得られるように、基板2の長手方向に沿った第1の導体3の先端部3d及び第2の導体4の先端部4dの幅DL1を10.65mmとした。この他、基板2のサイズ及び物理特性などにいては、図16に示した電磁界シミュレーションで用いたものと同一とした。
図17において、横軸は周波数を表し、縦軸は通信可能距離を表す。そしてグラフ1700は、製造誤差が無い場合における、ループアンテナ11の周波数特性を表す。また、グラフ1710は、図15(a)に示されるように、第1の導体3及び第2の導体4のそれぞれが、その外周に沿って0.05mmだけ小さくなった場合における、ループアンテナ11の周波数特性を表す。すなわち、この例では、DW2=2.4mmとなり、G=0.4mmとなる。一方、グラフ1720は、図15(b)に示されるように、第1の導体3及び第2の導体4のそれぞれが、その外周に沿って0.05mmだけ大きくなった場合における、ループアンテナ11の周波数特性を表す。すなわち、この例では、DW2=2.6mmとなり、G=0.1mmとなる。
グラフ1700〜1720に示されるように、第1の導体3及び第2の導体4の各部のサイズが変動しても、通信可能距離が最長となる周波数、すなわち共振周波数f0はほぼ変動していないことが分かる。またこの例では、グラフ1700に示される、製造誤差が無い場合の共振周波数f0が、グラフ1710及びグラフ1720に示される、製造誤差によって各導体の幅が大きくなった場合及び小さなった場合の共振周波数f0よりも高い。すなわち、製造誤差が無い場合に(2)式の右辺の値が極値となるように、各導体の幅が設定されることが分かる。
なお、図10に示されるループアンテナ41のように、電流が流れる経路上で各導体の幅が最も狭くなる部分が、一方のギャップの先端と他方のギャップに挟まれた部分であることがある。このようなループアンテナでは、ギャップの幅と、各導体における、一方のギャップの先端と他方のギャップに挟まれた部分の幅の比を適切に調節することで、上記と同様に、製造誤差によるインダクタンスLapの変動による共振周波数f0の変動が抑制される。
図18は、製造誤差によるインダクタンスLapの変動による共振周波数f0の変動を適切に抑制されるように設計したループアンテナ41の各部の寸法を示す図である。このシミュレーションでは、基板2の比誘電率εr=3.2とし、基板2の誘電正接tanδ=0.001とした。また、基板2の長手方向の長さを31mmとし、短手方向の長さを7mmとし、基板2の厚さを1.2mmとした。そしてギャップ5−1及びギャップ5−2の幅Gを0.45mmとした。
また、第1の導体3及び第2の導体4の導電率を5.8x107(S/m)とした。そして第1の導体3の先端部3d及び第2の導体4の先端部4dのうちの集積回路8側へ向けて折り返される折り返し部分の基板2の短手方向に沿った幅を1.40mmとした。また、先端部3d及び先端部4dのうちの折り返し部分を除いた部分の基板2の短手方向に沿った幅を2.35mmとした。さらに、基板2の長手方向に沿った先端部3d及び先端部4dの長さを9.00mmとした。そして先端部3d及び先端部4dの折り返し部分と他の部分との接続部の幅DW3、すなわち、ギャップ5−1の先端とギャップ5−2に挟まれた部分、あるいは、ギャップ5−2の先端とギャップ5−1に挟まれた部分の幅を0.20mmとした。すなわち、G/DW3=2.25とした。
また、基板2の長手方向に沿った第1の導体3の接続部3c及び第2の導体4の接続部4cの長さを18mmとした。また、集積回路8が設けられる領域の基板2の長手方向に沿った長さ及び基板2の短手方向に沿った長さを、それぞれ5mmとした。そして第1の導体3と第2の導体4とは、基板2の背面側にて、基板2の長手方向に沿って5.1mm、基板2の短手方向に沿って7mmの範囲で互いに重なるようにした。また、給電線9の幅を0.26mmとした。
図19は、製造誤差によるインダクタンスLapの変動による共振周波数f0の変動を適切に抑制されるように設計した場合における、ループアンテナ41についての製造誤差と共振周波数f0の関係の一例を示す電磁界シミューレション結果を示す図である。
図19において、横軸は周波数を表し、縦軸は通信可能距離を表す。そしてグラフ1900は、製造誤差が無い場合における、ループアンテナ41の周波数特性を表す。また、グラフ1910は、第1の導体3及び第2の導体4のそれぞれが、その外周に沿って0.05mmだけ小さくなった場合における、ループアンテナ41の周波数特性を表す。すなわち、この例では、DW3=0.1mmとなり、G=0.55mmとなる。一方、グラフ1920は、第1の導体3及び第2の導体4のそれぞれが、その外周に沿って0.05mmだけ大きくなった場合における、ループアンテナ11の周波数特性を表す。すなわち、この例では、DW3=0.3mmとなり、G=0.35mmとなる。
グラフ1900〜1920に示されるように、第1の導体3及び第2の導体4の各部のサイズが変動しても、通信可能距離が最長となる周波数、すなわち共振周波数f0はほぼ変動していないことが分かる。またこの例でも、グラフ1900に示される、製造誤差が無い場合の共振周波数f0が、グラフ1910及びグラフ1920に示される、製造誤差によって各導体の幅が大きくなった場合及び小さなった場合の共振周波数f0よりも高い。すなわち、製造誤差が無い場合に(2)式の右辺の値が極値となるように、各導体の幅が設定されることが分かる。
また、(2)式を再度参照すると、製造誤差によるインダクタンスLapの変動による共振周波数f0の変動を抑制するためには、インダクタンスLapの変動を相殺するように、静電容量Ccpが変動してもよいことが分かる。あるいは、静電容量Ccpの変動による共振周波数f0の変動を抑制するために、静電容量Ccpの変動を相殺するように、インダクタンスLapが変動してもよい。
図20は、第2の実施形態によるループアンテナ11における、集積回路8付近の概略側面図である。静電容量Ccpは、各導体と接続される給電線の先端部に設けられる、集積回路8と接続するための取り付けパターン9aと集積回路8間のギャップで生じる成分Cpadを含む。この成分Cpadは、給電線9の先端に設けられる取り付けパターン9aの面積、及び、取り付けパターン9aと集積回路8間のギャップの幅に応じて変動する。そして取り付けパターン9aは、各導体と同様に、例えば、基板2上のパターンとして形成されるため、各導体と同様に、エッチングなどの工程における製造誤差によりその面積が変動する。すなわち、エッチングが過剰に行われる場合、各導体の幅が狭くなるのと同様に、取り付けパターン9aの面積も減少する。その結果、取り付けパターン9aにおいて、集積回路8と対向する部分の面積も減少するので、成分Cpadは減少する。逆に、エッチングが過少である場合には、各導体の幅が広くなるのと同様に、取り付けパターン9aの面積も増大する。その結果、取り付けパターン9aにおいて、集積回路8と対向する部分の面積も増大するので、成分Cpadは増加する。
したがって、上記の各実施形態によるループアンテナでは、製造誤差による導体の幅の変動によりインダクタンスLapが増加すれば静電容量Cpadは減少し、逆にインダクタンスLapが減少すれば静電容量Cpadは増加する。そのため、各導体の幅と取り付けパターンのサイズとを適切に調整すれば、(2)式が成立し、製造誤差によって導体の幅が変動しても、共振周波数f0が一定に保たれることが分かる。
なお、(2)式から明らかなように、インダクタンスLapの変動による共振周波数f0の変動は、静電容量Cintの変動と静電容量Ccpに含まれるCpadの変動の両方によって抑制されてもよい。したがって、各導体の幅と、各導体間のギャップの幅及び取り付けパターンのサイズとを適切に調整することでも、製造誤差によるインダクタンスLapの変動による共振周波数f0の変動が抑制される。
また、上記の各実施形態によるループアンテナにおいて、各導体に給電する集積回路は、基板の中心以外に位置してもよい。例えば、その集積回路は、基板の長手方向に沿って、中心よりも左側、あるいは右側に位置してもよい。この場合には、集積回路の位置に応じて、各導体の給電点が設けられる側の長手方向に沿った長さも調整される。さらに、各実施形態によるループアンテナにおいて、各導体は、基板の短手方向に沿って基板を囲むように形成されてもよい。さらに、各実施形態によるループアンテナにおいて、各導体が基板を囲む方向と直交する方向に沿った、基板の表面における導体が設けられる部分の幅と基板の背面側における導体が設けられる部分の幅とは異なっていてもよい。
また、上記の各実施形態によるループアンテナに含まれる各導体が、例えば、ループアンテナが収容されるケースにより支持される場合、基板は省略されてもよい。
図21は、上記の各実施形態またはその変形例の何れかによるループアンテナを有する無線タグのブロック図である。この例では、無線タグ150は、パッシブ型のRFIDタグであり、ループアンテナ151と、駆動電圧生成部152と、メモリ153と、制御部154とを有する。このうち、駆動電圧生成部152、メモリ153及び制御部154は、ループアンテナ151を介して無線信号を放射または受信する通信処理回路の一例であり、例えば、図2(a)に示された集積回路8に対応する。駆動電圧生成部152、メモリ153及び制御部154は、一つの集積回路の異なる部分として形成されてもよく、あるいは、互いに異なる回路として形成されてもよい。
ループアンテナ151は、上記の各実施形態またはその変形例の何れかによるループアンテナである。そしてループアンテナ151は、例えば、リーダライタ(図示せず)から放射された、プリアンブルを含む質問信号が重畳された電波を受信して、その電波を電気信号に変換して、給電点に接続された駆動電圧生成部152及び制御部154へ渡す。
駆動電圧生成部152は、ループアンテナ151から受信した電気信号から、例えば、その電気信号に含まれるプリアンブル部分を利用して、メモリ153及び制御部154を駆動するための電圧を生成し、その電圧を、メモリ153及び制御部154へ供給する。なお、無線タグで利用される、電気信号から電圧への変換を行う様々な素子の何れかが、駆動電圧生成部152として利用可能である。
メモリ153は、不揮発性の半導体メモリ回路を有する。そしてメモリ153は、無線タグ150を他の無線タグと識別するためのIDコードを保持する。
制御部154は、ループアンテナ151から受信した電気信号を復調して、その電気信号により搬送された質問信号を取り出す。そして制御部154は、その質問信号に応じた応答信号を生成する。その際、制御部154は、メモリ153からIDコードを読み込み、そのIDコードを応答信号に含める。そして制御部154は、その応答信号をループアンテナ151から放射する周波数を持つ電気信号に重畳する。そして制御部154は、その電気信号をループアンテナ151へ出力し、ループアンテナ151に、その電気信号を電波として放射させる。
ここに挙げられた全ての例及び特定の用語は、読者が、本発明及び当該技術の促進に対する本発明者により寄与された概念を理解することを助ける、教示的な目的において意図されたものであり、本発明の優位性及び劣等性を示すことに関する、本明細書の如何なる例の構成、そのような特定の挙げられた例及び条件に限定しないように解釈されるべきものである。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
以上説明した実施形態及びその変形例に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
導電性を有し、かつ、第1の面に沿って設けられるとともに第1の給電点を有する第1のパターンと、前記第1の面の第1の端部で前記第1のパターンと接続され、前記第1のパターンと対向するように設けられた第2のパターンとを有する第1の導体と、
導電性を有し、かつ、前記第1の面において、前記第1のパターンとの間に静電容量を生じるギャップを隔てて設けられるとともに第2の給電点を有する第3のパターンと、前記第1の端部と対向する前記第1の面の第2の端部で前記第3のパターンと接続され、前記第2のパターンと静電結合するように重なるか、または前記第2のパターンと接続される第4のパターンとを有する第2の導体と、
を有し、
前記第1のパターンの少なくとも一部が前記第3のパターンの少なくとも一部よりも前記第2の端部の近くに位置するともに、前記第1の給電点から前記第2の給電点までの電流の経路に前記第1のパターンの前記少なくとも一部が含まれるように、前記第1の給電点及び前記第2の給電点が設けられる、
ループアンテナ。
(付記2)
前記第1の給電点は、前記第2の給電点よりも前記第2の端部の近くに設けられる、付記1に記載のループアンテナ。
(付記3)
前記第1の給電点は、前記第3のパターンの前記少なくとも一部と対向する側の前記第1のパターンの前記少なくとも一部の辺に設けられ、前記第2の給電点は、前記第1のパターンの前記少なくとも一部と対向する側の前記第3のパターンの前記少なくとも一部の辺に設けられる、付記2に記載のループアンテナ。
(付記4)
前記第1のパターンは、前記第1のパターンの前記少なくとも一部の前記辺から前記第3のパターンに沿って前記第1の端部へ向けて延伸される突起部をさらに有し、
前記第3のパターンは、前記第3のパターンの前記少なくとも一部の前記辺から前記第1のパターンに沿って前記第2の端部へ向けて延伸される突起部をさらに有する、付記3に記載のループアンテナ。
(付記5)
前記第1のパターンの前記少なくとも一部と前記第1の端部とを結ぶ接続部と前記第1の給電点との間において、前記第1のパターンの前記少なくとも一部の前記辺から前記第2の端部へ向かう方向へ第1のスリットが形成される、付記3または4に記載のループアンテナ。
(付記6)
前記第1のパターンに、前記第1の給電点と前記第2の給電点間を前記第1の導体3及び前記第2の導体4を通って流れる電流の経路と交差する方向に第1のスリットが形成される、付記3または4に記載のループアンテナ。
(付記7)
前記第2のパターンと前記第4のパターンに、前記第1の面の垂直方向から見て前記ギャップと重なる位置にスリットが形成される、付記5に記載のループアンテナ。
(付記8)
前記第1のパターンの前記第2の端部と対向する側の第1の辺が蛇行形状となるように前記第1のパターンが形成されるとともに、前記第3のパターンの前記第1の端部と対向する側の第2の辺が前記第1の辺に沿って蛇行形状となり、かつ、前記第1の辺と前記第2の辺の間に前記ギャップが形成されるように前記第3のパターンが形成される、付記1または2に記載のループアンテナ。
(付記9)
前記第1の面を有する誘電体の基板をさらに有し、
前記第2のパターン及び前記第4のパターンは、前記基板の前記第1の面と対向する面に設けられる、付記1〜8の何れかに記載のループアンテナ。
(付記10)
前記ギャップの幅と、前記第1のパターン及び前記第3のパターンのうち、前記ギャップの幅の変動に応じてサイズが変動する部分のサイズとが、当該部分のサイズの変動による前記ループアンテナの共振周波数の変動が前記ギャップの幅の変動にて抑制されるように設定される、付記1〜9の何れかに記載のループアンテナ。
(付記11)
前記ループアンテナと接続される回路を前記ループアンテナに取り付けるための導電性を有する取り付けパターンの面積と、前記第1のパターン及び前記第3のパターンの前記部分のサイズとが、当該部分のサイズの変動による前記ループアンテナの共振周波数の変動が当該部分のサイズの変動に応じた前記取り付けパターンの面積の変動にて抑制されるように設定される、付記10に記載のループアンテナ。
(付記12)
第1の給電点と第2の給電点とを持つループアンテナと、
前記第1の給電点及び前記第2の給電点へ給電する給電線で前記ループアンテナと接続され、前記ループアンテナを介して無線信号を放射または受信する通信処理回路とを有し、
前記ループアンテナは、
導電性を有し、かつ、第1の面に沿って設けられるとともに前記第1の給電点を有する第1のパターンと、前記第1の面の第1の端部で前記第1のパターンと接続され、前記第1のパターンと対向するように設けられた第2のパターンとを有する第1の導体と、
導電性を有し、かつ、前記第1の面において、前記第1のパターンとの間に静電容量を生じるギャップを隔てて設けられるとともに前記第2の給電点を有する第3のパターンと、前記第1の端部と対向する前記第1の面の第2の端部で前記第3のパターンと接続され、前記第2のパターンと静電結合するように重なるか、または前記第2のパターンと接続される第4のパターンとを有する第2の導体と、
を有し、
前記第1のパターンの少なくとも一部が前記第3のパターンの少なくとも一部よりも前記第2の端部の近くに位置するともに、前記第1の給電点から前記第2の給電点までの電流の経路に前記第1のパターンの前記少なくとも一部が含まれるように、前記第1の給電点及び前記第2の給電点が設けられる、
無線タグ。