JP6664738B2 - 生体材料保護用ペプチド - Google Patents

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Description

本発明は、新規ペプチド、該ペプチドを有効成分として含んでなる生体材料保護剤および生体材料保護方法に関する。
不凍ペプチドは、生物が低温環境に適応するために獲得した生体分子であると考えられている。不凍ペプチドには、氷核と呼ばれる氷の単結晶の表面に対して強く特異的に結合して個々の氷核の表面をコートし、氷核の経時的な成長を抑制する活性(氷結晶成長抑制活性)がある(非特許文献1)。
不凍ペプチドは、Antifreeze Peptide(AFP)とも呼ばれる。ペプチドはアミノ酸がペプチド結合で2個以上連結した物質であり(研究社刊、理化学英和辞典)、タンパク質もペプチドの一種である。そのため、不凍ペプチドは、不凍タンパク質(AFP)とも呼ばれる。また、不凍ペプチドは、氷結晶結合タンパク質(IBP)または熱ヒステリシスタンパク質(THP)とも呼ばれる。さらに、糖鎖によって修飾された不凍タンパク質は、不凍糖タンパク質(AFGP)と呼ばれる。本発明では、不凍ペプチド、不凍タンパク質、氷結晶結合タンパク質、熱ヒステリシスタンパク質、不凍糖タンパク質を、「不凍ペプチド、AFP(Antifreeze Peptide)」と呼称することがある。
不凍ペプチドは、これまでに、魚類、菌類、昆虫類および植物などから、アミノ酸配列および鎖長が様々に異なる、天然物由来のペプチドとして抽出されている。また、これら各生物から抽出された不凍ペプチドには、アミノ酸配列がわずかに異なる複数のアイソフォームが含まれるものも知られている。例えば、北海道沿岸水域で捕獲されるナガガジ(Zoarces elongatus Kner、英名:Noteched-fin eelpout)という魚種は、13種類の不凍ペプチドのアイソフォームを体内で発現していることが報告されている(非特許文献2)。しかしながら、各生物から抽出された不凍ペプチドの全てが複数のアイソフォームの混合物からなるのかについての報告、および各アイソフォームの発現量の比率についての報告も少なく、不明な点が多い。
ところで、魚類から抽出された不凍ペプチドには、約4℃の非凍結状態において細胞を保護し寿命を延ばす活性があることが1990年に報告されている(特許文献1)。この不凍ペプチドの非凍結状態での生体材料保護活性は、氷核に結合するという不凍ペプチドの氷結晶成長抑制活性とは全く異なるものであり、不凍ペプチドが細胞表面を構成する脂質二重膜に吸着することによって、細胞の構造破壊を抑制すると推察されている。
現在、この魚類から抽出された不凍ペプチドの非凍結状態での生体材料保護活性を、移植医療、再生医療または畜産などの技術分野で活用されている摘出細胞、培養細胞、受精卵および精子などの細胞の保存に利用することが検討されている。細胞を凍結寸前の冷却した状態、すなわちチルド状態に保ち、数日間から10日間生存させることができれば、凍結および解凍による損傷のない健全な細胞を医療機関や畜産現場に輸送することが可能になるためである。また、危険物となるため航空機による輸送ができずドライシッパー等の専用の容器による厳重な管理を必要とする液体窒素での保存と異なり、不凍ペプチドを用いて非凍結状態で保存できると、電池式冷蔵庫や氷の中で保管できるため航空機による輸送が可能となる。2013年には、魚体から抽出した不凍ペプチドが、マウス膵島細胞の生存率を飛躍的に向上させたことが報告されている(非特許文献4)。
一方、魚体に発現する不凍ペプチドの量は、季節により大きく変動することが知られている。また、魚体由来の不凍ペプチドに複数のアイソフォームが含まれている場合には、各アイソフォームの発現量の比率も季節によって変動する可能性がある。その結果、天然物として魚体から抽出した複数のアイソフォームの混合物からなる不凍ペプチドでは、単位濃度あたりの活性も変動する可能性がある。このように、天然物、特に複数のアイソフォームの混合物からなる不凍ペプチドは、ロットごとの性質が均一ではないため、一定の活性を安定的に提供することは困難である。
複数のアイソフォームの混合物からなる不凍ペプチドでは、不凍ペプチドに含まれる複数のアイソフォーム間のアミノ酸配列の違いはわずかであることが知られている。そのため、分子量や立体構造などの物理化学的な性質は非常に類似しており、液体クロマトグラフィーなどによってそれぞれのアイソフォームを単離する、すなわち複数のアイソフォームが含まれる不凍ペプチドから特定の不凍ペプチドアイソフォームのみを単離し安定的な不凍ペプチドを取得することは困難である。一方で、複数のアイソフォーム間のアミノ酸配列のわずかな違いによって、大きな熱ヒステリシス活性の違いを生じさせ、アイソフォーム間の氷結晶抑制活性には大きな違いがあることも報告されている(非特許文献2および3)。そのため、アイソフォーム間の生体材料保護活性についても同様に性能の差異があると考えられる。
しかしながら、不凍ペプチドの全てが生体材料保護活性を有するわけではなく、さらに、それぞれのアイソフォームごとの生体材料保護活性を評価した例はない。そのため生体材料保護活性が優れたアイソフォームが、どのようなアミノ酸配列によって構成されている分子なのかは解明されていない。
市販の不凍ペプチドとして、北極魚の血液から抽出された不凍ペプチドが、25mg単位で、1994年に米国に設立されたベンチャー企業により販売されている(A/F Protein Inc.935 Main Str.Waltham,MA 02451 USA)。また、日本国内で捕獲されるカレイ、ワカサギおよびゲンゲなどの魚類の筋肉を原材料として不凍ペプチドを取得する技術が2008年に報告されている(特許文献2および3)。しかしながら、これら市販の不凍ペプチドは、各生物から抽出された天然物であり、ロットごとの性質は均一ではない。また、ベンチャー企業が販売する不凍ペプチドおよびカレイ由来不凍ペプチドのアミノ酸配列の情報は明らかにされていない。
さらに、このような天然物から抽出することによって取得した不凍ペプチドには、生体材料に対して毒性のある不純物等が含まれている可能性もある。そのため、そのままヒトや家畜に対する臨床医学や再生医療の分野で使用することは困難であった。1990年の最初の報告から20年以上が経過したにも関わらず、不凍ペプチドが有する生体材料保護活性は、発明者らが知る限り未だ実用化に至っていない。
また、再生医療の分野で生体材料の保護、特に保存を行うためには、熱安定性に優れ加熱殺菌工程に耐えられる不凍ペプチドが必要である。さらに、不凍ペプチドは、水または水溶液に溶かして利用されるものであるが、多くの不凍ペプチドは室温下における水溶性が低いという問題を有している。ゲンゲ科魚類のナカガジから見いだされた65残基のIII型不凍ペプチドの遺伝子組換え体(Nfe11)の報告がなされているが、この遺伝子組換え物の水溶性は非常に低く、さらに熱安定性の低いものであった(特許文献4)。このため、Nfe11を様々な市販の保存液に溶かして使用することは困難であった。
このように、これまでに開発された生体材料保護活性を有する不凍ペプチドの試料および製品は、(1)天然物であるためその性質(活性)は一定でない、(2)天然物であるため生体材料に対して毒性のある不純物を含む可能性がある、(3)耐熱性が低い、(4)水溶性が低い、(5)生体材料保護活性が低いといった問題点のうちの少なくとも1つを有するものであった。
西宮佳志、津田 栄:不凍タンパク質の技術開発、冷凍2011年7月号第86巻第1005号,9-14頁. Takamichi M, Nishimiya Y, Miura, A, Tsuda S. (2007) FEBS J, 274, 6469-6476. Garnham CP, Nishimiya Y, Tsuda S, Davies PL. (2012) FEBS Lett. 586 3876-3881. Kamijima T, Sakashita M, Miura, A, Nishimiya Y, Tsuda S.(2013) PLoS ONE 8 (9), e73643. Harding M.M., Ward L.G., Haymet A.D.(1999) Type I ‘antifreeze’ proteins. Eur J Biochem. 264, 653-665.
特公平08−009521号公報 特許第4228068号公報 特許第4332646号公報 特開2010−248160号公報
本発明者らは、今般、トウガレイから抽出した複数のアイソフォームの混合物からなる不凍ペプチドから単離した一つの新規ペプチドが、優れた生体材料保護活性を有する新規ペプチドであることを見いだした。さらにこのペプチドは、顕著に高い水溶性と熱安定性とを兼ね備えたペプチドであることを見いだした。新規ペプチドのアミノ酸配列に基づいて、大腸菌を使って人工的な単一のアイソフォームからなる不凍ペプチドの発現に成功した。さらに、人工的に製造した組換えペプチドは、単一のアイソフォームにもかかわらず、複数のアイソフォームからなる天然物としての不凍ペプチドと同レベルの凍結保護活性をも併せ持つことを見いだした。本発明はこれらの知見に基づくものである。
すなわち、本発明は、優れた生体材料保護活性を有する新規ペプチドを提供することをその目的とする。本発明はまた、高い水溶性をも兼ね備える新規ペプチドを提供することをその目的とする。
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)下記(a)〜(e)から選択される単離ペプチド;
(a)Asp-Thr-Ala-Ser-Asp-(Ala)7-Thr-(Ala)10-Thr-Ala-Lys-(Ala)3-Glu-(Ala)4-Thr-(Ala)4-Arg(配列番号1)のアミノ酸配列で表されるペプチド、
(b)配列願号1のアミノ酸配列を含んでなるペプチドであって、生体材料保護活性を有するペプチド、
(c)配列番号1のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列で表されるペプチドであって、生体材料保護活性を有するペプチド、
(d)配列番号1のアミノ酸配列と86%以上の同一性を有するアミノ酸配列で表されるペプチドであって、生体材料保護活性を有するペプチド、および
(e)下記式Iのアミノ酸配列で表されるペプチドであって、生体材料保護活性を有するペプチド:
式I:X1-[Thr-Ala-X2-X3-Ala-Ala-X4-Y]n-Thr-Y-Z (I)
(式中、X1がAspまたはGluであって、ZがArg、LysまたはHisであり、nは1〜5であり、
X2は、独立して、Ala、SerまたはLysであり、
X3は、独立して、AlaまたはAspであり、
X4は、独立して、AlaまたはGluであり、
Yは、Ala-Ala-Ala-Alaである)。
(2)合成ペプチドである、(1)に記載の単離ペプチド。
(3)C末端に位置する官能基が、アミド化されているか、または、C末端にさらにアミノ酸が付加されている、(1)または(2)に記載のペプチド。
(4)C末端にさらに付加されているアミノ酸が、グリシン(Gly)である、(3)に記載のペプチド。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含んでなる、生体材料保護剤。
(6)生体材料保護剤が、生体材料の生存率改善剤である、(5)に記載の生体材料保護剤。
(7)生体材料が、細胞、組織および臓器から選択される、(5)または(6)に記載の生体材料保護剤。
(8)(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチドを準備し、
該ペプチドと、水性媒体と、生体材料とを低温状態で共存させることを含んでなる、生体材料保護方法。
(9)生体材料の生存率を改善する、(8)に記載の生体材料保護方法。
本発明によれば、優れた生体材料保護活性を有する新規ペプチドを提供できる。また、本発明によれば、顕著に高い水溶性をも兼ね備えるペプチドを提供できる。さらに、本発明のペプチドは、アミノ酸配列の情報に基づいた人工的な作製が可能なペプチドであり、不純物を含まないペプチドを、これを含む天然物を原材料とした精製技術、化学合成技術または遺伝子工学的技術によって容易に工業生産が可能である点で有利である。
BpAFP粗精製品試料のクロマトグラム(A)、ならびにBpAFP粗精製品試料および高純度BpAFP(天然物)の電気泳動図(B)である。 BpAFP遺伝子組換え物を発現するために作製した「チオレドキシン−Hisタグ−スロンビン認識配列−BpAFP(Glyを付加したもの)」の融合タンパク質の模式図である。 発現した融合タンパク質のスロンビン分解物を示す銀染色SDS電気泳動図(A)、当該分解物のクロマトグラム(B)および当該分解物から精製したBpAFP遺伝子組換え物の電気泳動図(C)である。 高純度BpAFP(天然物)またはBpAFP遺伝子組換え物を含む細胞保存液を用いて4℃下でマウス膵島細胞を保存したときの生存率の経時変化を示す棒グラフである。 熱ヒステリシス値の測定のために用いた顕微鏡システムの一例である。 高純度BpAFP(天然物)(○)およびBpAFP遺伝子組換え物(●)の熱ヒステリシス値の濃度依存性を表すプロットである。 バイピラミダル型氷結晶を表す模式図(A)、各温度でのバイピラミダル型氷結晶の画像(B:濃度0.4mg/mL)(C:1.0mg/mL)、および各温度での加熱処理後にも立体構造を保持していることを示すCDスペクトルである(DおよびE)。95℃に加熱後もBpAFPが氷核に結合する活性を保持していることを示す。 一般的な氷核を表す模式図(A)、顕微鏡画像(B)、その融合体である氷の模式図(C)、BpAFPが氷核の融合を阻害したときの氷の構造(D)、ならびにBpAFPを含ませた寒天ゲルの凍結解凍後の画像(E1〜5)である。
発明の具体的説明
ペプチド
本発明の単離ペプチドは、下記(a)〜(e)から選択される。
(a)Asp-Thr-Ala-Ser-Asp-(Ala)7-Thr-(Ala)10-Thr-Ala-Lys-(Ala)3-Glu-(Ala)4-Thr-(Ala)4-Arg(配列番号1)のアミノ酸配列で表されるペプチド、
(b)配列願号1のアミノ酸配列を含んでなるペプチドであって、生体材料保護活性を有するペプチド、
(c)配列番号1のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列で表されるペプチドであって、生体材料保護活性を有するペプチド、
(d)配列番号1のアミノ酸配列と86%以上の同一性を有するアミノ酸配列で表されるペプチドであって、生体材料保護活性を有するペプチド、および
(e)下記式Iのアミノ酸配列で表されるペプチドであって、生体材料保護活性を有するペプチド:
式I:X1-[Thr-Ala-X2-X3-Ala-Ala-X4-Y]n-Thr-Y-Z (I)
(式中、X1がAspまたはGluであって、ZがArg、LysまたはHisであり、nは1〜5であり、
X2は、独立して、Ala、SerまたはLysであり、
X3は、独立して、AlaまたはAspであり、
X4は、独立して、AlaまたはGluであり、
Yは、Ala-Ala-Ala-Alaである)。
本発明では、上記(a)〜(e)から選択される単離ペプチドを、由来するトウガレイ魚類の一種のトウガレイLiopsetta pinnifasciata(英名:Barfin plaice)の魚種名に因み、「BpAFP」と呼称することがある。
本発明の一つの態様によれば、本発明のペプチドは、後述の実施例1に記載のとおり、新規なI型の不凍ペプチドの一種であり、北海道の沿岸水域で捕獲された魚類の一種のトウガレイから単離することができる。また、本発明のペプチドは、後述の実施例3に記載のとおり、高い生体材料保護活性を有する。
本発明の好ましい態様によれば、本発明のペプチドは、配列番号1で表される40個のアミノ酸残基から構成される直鎖状のペプチドである。また、本発明の好ましい態様によれば、本発明のペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと同等な生体材料保護活性を有するペプチドである。
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと同等な生体材料保護活性を有するペプチドとしては、上記(b)〜(e)から選択されるペプチドが挙げられる。これらのペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと機能的に同等なペプチドと呼ばれることもある。
(b)のペプチドにおいて、配列願号1のアミノ酸配列を含んでなるペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列の発現を妨げない限り、他のアミノ酸配列を含んでいてもよく、他のアミノ酸配列は当業者であれば適宜選択することができる。(b)のペプチドの長さは、少なくとも40残基以上であり、好ましくは40〜200残基、より好ましくは40〜100残基、さらに好ましくは41〜50残基である。
(c)のペプチドとしては、配列番号1のアミノ酸配列において、1若しくは数個(通常2〜5個、好ましくは2〜3個)のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列で表されるペプチドであって、かつ、生体材料保護活性を有するペプチドが挙げられる。
(d)のペプチドとしては、配列番号1のアミノ酸配列と86%以上、好ましくは88%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上の同一性を有するアミノ酸配列で表されるペプチドであって、かつ、生体材料保護活性を有するペプチドが挙げられる。
(e)のペプチドとしては、好ましくは、式Iのアミノ酸配列で表されるペプチドであって、式中、X1がAspであって、ZがArgであり、nは1〜5(好ましくは1〜4、より好ましくは2〜4、より好ましくは2または3、さらに好ましくは3)であり、X2は、独立して、Ala、SerまたはLysであり、X3は、独立して、AlaまたはAspであり、X4は、独立して、AlaまたはGluであり、Yは、Ala-Ala-Ala-Alaであり、かつ、生体材料保護活性を有するペプチドである。
本発明の一つの態様によれば、本発明のペプチドには、該ペプチドの塩も包含される。本発明のペプチドの塩は、薬学的に許容できる塩であれば特に限定されないが、例えば、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸等の無機酸との塩、酢酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸またはクエン酸等の有機酸との塩が挙げられる。また、塩基付加塩としては、例えば、ナトリウムまたはカリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウムまたはマグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウムまたはトリエチルアミン等のアミン類との塩が挙げられる。ここで、塩は、大気中に放置したり又は再結晶をすることにより、水分を吸収し、吸着水が付いたり、水和物となったりする場合があり、本発明には、そのような各種の水和物、溶媒和物及び結晶多形も包含される。
本発明の一つの態様によれば、本発明のペプチドは、後述の実施例1に記載のように、カレイ類、例えばトウガレイ、ツノガレイ、冬ヒラメの魚体から抽出し精製、必要に応じて修飾することによって得ることができる。また、通常の遺伝子組換え手段またはペプチド合成法を用いることによっても容易に製造できる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明のペプチドは、合成ペプチドとして提供される。合成ペプチドは、試薬とした場合に天然物由来の不純物および/または夾雑物を含まず、かつ、天然物と異なり一定の活性を有する点で好ましい。合成ペプチドの具体的な例としては、遺伝子組換え手段またはペプチド合成法を用いることにより製造されたペプチド等が挙げられる。より具体的には、上記合成ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなる。かかる合成ペプチドは、天然由来ペプチドと比較して優れた生体材料保護活性を発揮する点で特に有利である。
遺伝子組換え手段としては、例えば、本発明のペプチドをコードするDNAを、DNA合成機等を用いて常法により合成し、この合成されたDNAを適当なベクターに導入し、得られた組み換えベクターを用いて、大腸菌等の宿主で形質転換し、該形質転換体を培養し、上記合成DNAに対応する本発明のペプチドを得ることが挙げられる。
ペプチド合成法は、液相合成法および固相合成法のいずれであってもよい。固相合成法の場合、ペプチド合成装置を使用して合成することもできる。ペプチド合成法は、好ましくは固相合成法と液相合成法とを組み合わせて用いる方法である。例えば、本発明のポリペプチドを構成するアミノ酸を、該アミノ酸の側鎖をベンジルオキシカルボニル基(Z基)またはt-ブチル基等の保護基で保護して、酸無水物法の1種であるBOP法(Benzotriazole-l-yl-oxy-tns-pyrrolidino-phosphonium hexafluorophosphate法)を用いて、固相合成により順次反応させ、配列番号1のペプチドに対応し、かつアミノ酸側鎖が保護基で保護された鎖状のポリペプチドを、レジンに結合した状態で得て、次いで、トリフルオロ酢酸等を用いて鎖状のポリペプチドとレジンを切断することにより、本発明のペプチドを得ることができる。また、該ペプチドは、全ての保護基を除去した後、逆相系のカラムを用いたHPLC等による通常の方法で精製してもよい。ペプチド合成法では、各アミノ酸のL体およびD体を用いることにより、L−アミノ酸およびD−アミノ酸を含むペプチドを合成することができ、好ましくは、各アミノ酸のL体を用いることにより全てのアミノ酸がL−アミノ酸からなるペプチドを合成する方法である。
本発明の好ましい態様によれば、本発明のペプチドは、C末端に位置する官能基が、アミド化されているか、またはC末端にさらにアミノ酸が付加されているペプチドである。
C末端に位置する官能基をアミド化する方法としては、本発明のペプチドの生体材料保護活性が得られる限り、通常のアミド化方法を用いることができ、例えば、C末端アミド化酵素を作用させる方法(例えば、ペプチジルグリシンモノオキシゲナーゼ(Nature, 298, 686-688 (1982)参照)とペプチジルアミドグリコール酸リアーゼ(Biochemistry, 29,6115-6120 (1990)参照)とを作用させる方法、またはカルボキシペプチダーゼYを作用させる方法(Protein Science 19, 2356-2365 (2010)参照)やペプチド固相合成法(J. Am. Chem. Soc. 85, 2149-2154 (1963)参照)を用いることができる。
C末端にさらに付加するアミノ酸は、通常の遺伝子組換え手段またはペプチド合成法により、付加されたアミノ酸がC末端にアミドを構成できれば特に限定されず、例えば、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、バリンが挙げられ、好ましくは生体材料保護活性が高い点でGly(グリシン)である。付加するアミノ酸の個数は、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個である。従来、単なるアミド基と異なり、他のアミノ酸のペプチドへの導入は、台座となるペプチドが元来有していた電荷(等電点)、疎水性、水溶性などの性質を変更してしまう可能性が高いと考えられていたところ、驚くべきことに、C末端にさらにアミノ酸を付加しても、本発明のペプチドは、元来有していた性質が変更されることなく、かつ、生体材料保護活性も維持されていた。
本発明の好ましい態様では、C末端に位置する官能基をアミド化する方法は、本発明の上記(a)〜(e)のペプチドのC末端にさらにアミノ酸を付加し、通常の遺伝子組換え手段により、付加されたアミノ酸がC末端にアミド配列を構成する方法である。この方法によれば、通常のアミド化方法において可能性がある本発明のペプチドのC末端以外のAsp、Gluなどの側鎖のCOOH基の全部または一部のアミド化を生じさせることなく、C末端のCOOH基のみをアミド化できる点で有利である。
本発明のペプチドは、室温下において、高い優れた水溶性を有するため試薬として使用する際に大変有利である。本発明のペプチドは、疎水性メチル基を側鎖とするアミノ酸であるAlaのアミノ酸配列全体での含有率が、他のI型不凍ペプチドと比較して高いにもかかわらず、室温下において、他の不凍ペプチドではこれまでに報告されていない高い程度での水溶性を示す(後述する実施例4(1)参照)。本発明のペプチドの有する高い水溶性を人工的に設計することは極めて困難であるため、このような知見は、本発明のペプチドに限定的な驚くべき性質である。
また、本発明のペプチドは、高い熱安定性(耐熱性)を有するため試薬として使用する際に大変有利である(後述する実施例5参照)。本発明のペプチドは、具体的には、95℃で熱処理してもその活性を維持することができるため、適宜加熱することによって本発明のペプチドに不純物および/または夾雑物が含まれる場合であってもこれらの毒性を失活させることができ、試料の安全性を確保することができる。
また、本発明のペプチドは、約650mg/mL−1の濃度で溶解している水溶液の熱ヒステリシス値は約3℃であり、一般的な熱ヒステリシス値である0.7℃を大きく上回っている(後述する実施例4(2)参照)。本発明のペプチドがこのような高い熱ヒステリシス活性を有することは、誰にも予測が不可能であり、驚くべき事実である。
生体材料保護剤
本発明の生体材料保護剤は、本発明のペプチドを有効成分として含んでなる。ここで「有効成分」とは生体材料保護効果を奏する上で必要とされる成分のことを意味する。
「生体材料保護活性」とは、生体材料の生存を維持する活性(機能)を意味し、例えば、生体材料保護活性には、生体材料保存活性、生存率改善活性および細胞膜保護活性も包含される。生体材料保存活性とは、生体材料をその性質を変化させることなく維持する活性を意味する。また、生存率改善活性とは、生体材料を保存し、かつ、生存率を改善する活性を意味する。さらに細胞膜保護活性とは、細胞膜の主要な構成物質である脂質二重層の相転移や構造変化にともなう膜機能の消失を防ぐ活性を意味する。ここで、脂質二重層からなる細胞膜は、細胞内のイオンやタンパク質などの濃度を制御することで細胞の生命活動を維持する活性をもつ。従って、本発明の一つの態様によれば、本発明の生体材料保護剤が提供され、好ましくは、生体材料保存剤、生存率改善剤または細胞膜保護剤が提供される。
「生体材料」とは、生体に由来する材料であれば特に限定されず、例えば、細胞ならびに細胞によって構成されている組織および臓器が挙げられ、生物自体、例えば、胚、全動物、植物の種子および全植物も包含される。ここで、細胞は、天然由来であっても、人工的にシート状などに組織化されたものであってもよい。細胞は、動物に由来するものでもあっても、植物に由来するものでもよく、好ましくは動物由来細胞である。動物としては、例えば、哺乳動物(例えば、ヒトおよびサルなどの霊長類、ブタ、ウシおよびウマなどの家畜、イヌおよびネコなどの愛玩動物、ならびにウサギ、マウスおよびラットなどの齧歯類)、および鳥類(例えば、シチメンチョウおよびニワトリなどの家禽)が挙げられる。
細胞の種類としては、臓器由来の細胞(例えば、膵実質細胞、膵管細胞、腎臓細胞、肝細胞、心筋細胞)、表皮細胞、血液細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞、赤血球、白血球、卵子、精子など動物由来の細胞、細菌由来の細胞、植物由来の細胞、ならびにこれらの細胞から株化された培養細胞などが挙げられる。
組織の種類としては、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織、皮膚組織、骨髄組織、角膜組織などが挙げられる。
臓器としては、皮膚、血管、角膜、腎臓、心臓、肝臓、さい帯、腸、神経、肺、胎盤、膵臓、脳、四肢末梢、網膜などが挙げられる。
生体材料保護活性は、生体材料を、被検物質の存在下でインキュベートし、その後の生体材料の経過を、被検物質を含まない対照と比較観察することにより評価することができる。好ましくは、生体材料保護活性は、後述の実施例3に記載の方法により評価できる。評価に用いる生体材料は、実際に生体から取り出したものであってもよいし、比較的簡易な施設で培養可能であり、かつ、様々な臓器由来の細胞株について細胞バンク等によって管理された品質を有しているため再現性を容易に確認できる点で、既に樹立されている様々な臓器由来の特定の細胞株であってもよい。
生体材料保護活性の評価に細胞を用いる場合、細胞保護活性は、細胞が保護されているかどうか、すなわち、細胞が生存しているかどうかを、細胞の生存率を測定することにより評価することができ、好ましくは、後述の実施例3に記載の染色法による生存率の測定方法により評価できる。染色法による生存率の測定方法は、当技術分野で公知の方法も用いることができ、例えば、トリパンブルー(シグマアルドリッチ製)によって死細胞を特異的に染色した後に、血球計算盤によって生細胞数を計測することができる(Current Protocols in Immunology, Appendix 3, Appendix 3B (2003) 参照)。ここで、トリパンブルーは青色の色素であり、死細胞を特異的に染色する。トリパンブルーを細胞や臓器など生体材料を含む試料溶液に混合することによって、死細胞と生細胞を顕微鏡下で区別することができる。試料中の細胞の数は、血球計算盤(ヘモサイトメーター)を用いて計測することができる。また、例えば、生細胞染色蛍光色素(例えばCalcein-AM)と死細胞染色用蛍光色素(例えば、Propidium Iodide)とを組み合わせて細胞の生存率を測定することができる(DeClerck et al., Jounal of Immunological Methods, 172(1994)115, Nicoletti et al., Jounal of Immunological Methods, 139 (1991)271参照)。さらに、例えば、Calcein-AMとPropidium Iodideとを用いるセルステイン細胞二重染色キット(株式会社同仁科学研究所製)では、生細胞が黄緑色に染色され、死細胞が赤色に染色されるため、細胞の生存率を測定することができる。ここで、細胞染色色素であるCalcein-AMは、蛍光分子であるCalcein(最大吸収波長490nm、最大蛍光波長515nm)の4つのカルボキシル基をアセトキシメチルエステル化(AM化)したものである。AM化されたCalceinはほとんど蛍光を示さないが、AM化により脂溶性が高まり、細胞膜を透過して細胞内のエステラーゼにより加水分解される。加水分解により生じるCalceinは強い蛍光を示し、細胞膜を透過しないため生細胞が染色される。死細胞染色色素であるPropidium iodide(PI、最大吸収波長530nm、最大蛍光波長620nm)は、核酸に結合することで蛍光を示す分子である。細胞膜を透過しないため、細胞膜に大きなダメージを受けている細胞に取り込まれ、細胞核が染色される。
細胞保護活性の評価方法として、染色法による生存率の測定方法以外に、細胞障害、すなわち細胞膜の障害を定量する方法により、細胞の生存率を測定することもできる(T. Decker and M. L. L. Matthes, Jounal of Immunological Methods, 115 (1988)61参照)。
また、細胞保護活性の評価方法として、MTT法により生細胞数を測定し生存率を測定することもできる。MTT法は、テトラゾリウム塩化合物であるMTTが脱水素酵素の基質となる性質を利用している。細胞膜透過性のMTTは透過後、ミトコンドリア内脱水素酵素により青色の色素(ホルマザン)に還元され、生成したホルマザン量は生細胞数に対応する。MTT法は、ほとんどの動物細胞に適用可能である点で好ましい。テトラゾリウム塩としては、水溶性のホルマザンを生成するWST−1およびWST−8を用いてもよい(T. Mosmann, Jounal of Immunological Methods, 65 (1983)55参照)。
細胞保存活性、生存率改善活性および細胞膜保護活性は、上述した細胞保護活性の評価方法に準じて、測定および評価することができる。
本発明の生体材料保護剤は、有効成分である本発明のペプチドの分子量が小さく、また、優れた水溶性を有することから、生体材料のすみずみにまで浸透することができ、優れた生体材料保護活性を発揮することができる。ここで水溶性は、後述する実施例4に記載の方法により評価することができる。
また本発明の生体材料保護剤は、有効成分である本発明のペプチドが熱安定性を有することから、動物由来の天然タンパク質試料に含まれる不純物や夾雑物の毒性を失活させるために熱処理による殺菌を行うことができ、安全性を確保することができる。ここで、熱安定性の温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは70〜100℃、最も好ましくは十分な殺菌性が得られる点で95〜100℃である。熱安定性は、後述する実施例5に記載の方法により評価することができる。
さらに、本発明の生体材料保護剤は、有効成分である本発明のペプチドが単純な構造であり容易に化学合成することができ、かつ、化学合成したペプチドは免疫学的な毒性が低いため、安全性に優れ、量産可能であるため実用的な低価格生産が可能である。
本発明の生体材料保護剤は、さらに、含水物の氷結晶成長抑制活性をも有する。ここで、氷結晶成長抑制活性には、凍結保護活性(凍結保存活性)が包含される。氷結晶成長抑制活性とは、含水物の氷核の経時的な成長を抑制し、凍結物の内部の構造、品質や生理活性を保持したまま凍結できる活性を意味する。氷結晶成長抑制活性は、バイピラミダル型氷結晶の形成や熱ヒステリシス活性の測定により評価することができ、好ましくは後述する実施例1(1)および実施例4(2)の方法により評価することができる。
「含水物」とは、水分子と水分子以外の分子とを含む物質を意味し、生体材料は含水物であってもよい。含水物には、例えば、溶質と溶媒からなる水溶液、水に溶解しない物質と水との混合液、穀類、麺類、卵、野菜、果実、肉類、魚介類、パン生地、氷菓子および加工食品などの食品、医療品、診断薬、試薬、化粧品、化粧水、血液、血清、血小板、精子、卵子、単細胞、多細胞、生体組織、心臓、膵臓、肝臓および腎臓などの臓器ならびにこれらの保存液、融雪剤、霜害防止剤等が含まれる。本発明の生体材料保護剤に含まれる本発明のペプチドが、凍結状態にあるこれら含水物の内部に生成する氷核の成長を阻止して微小なサイズに留め、それら微小な氷核同士の結びつきを阻止する結果として、当該含水物の食感、状態、活性、品質などを高く保持することができる。
本発明の生体材料保護剤は、その効果が奏される限り、いかなる形態もとることができ、例えば、液状、ゲル状、糊状、ペースト状、固体状(例えば、粉末状、顆粒状、カプセル状、ブロック状)などの形態が挙げられる。本発明の生体材料保護剤は、生体材料への浸透が良好な点で、好ましくは、液状である。本発明の生体材料保護剤は、水分を含んでいても、耐熱性を有しているため、十分に加熱殺菌することができ、例えば、冷蔵状態および常温で長期間の保存期限を設定することができる。
従って、本発明の一つの態様によれば、本発明のペプチドと、水性媒体とを含んでなる生体材料保護液が提供される。ここで、生体材料保護液には、生体材料保存液も含まれる。本発明の保護液を用いることができる対象となる生体材料については、上述のとおりである。
本発明の生体材料保護液は、例えば、細胞保存液、細胞シート保存液、臓器保存液、組織保存液および細菌保存液として使用できる。本発明のペプチドを溶解する水性媒体としては、本発明の生体材料保護液の用途に応じて適宜選択でき、例えば、イーグルスMEM等の各種培養液、PBS(−)等のリン酸緩衝液、トリス緩衝液、生理食塩水ならびにユーロコリンズ液(Euro-Collins液、Squifflet, J.P. et al., Transplant Proc., 13693, 1981)、UW液(University of Wisconsin, Wahlberg, J. A. et al., Transplantation, 43, 5-8, 1987)など臓器保存液が挙げられる。ここで、臓器保存液は、冷却保存に際し破壊される細胞膜のナトリウム−カリウムポンプを考慮した高カリウム/低ナトリウムの細胞内液と同様の組成のもの(例えば、J Nippon Med Sch, (2001)68, 288参照)、また、低温環境に置かれた細胞の膨潤傾向を緩和するために不浸透性の基質(不浸透剤)を110〜140ミリモル(mmol)(110〜140ミリオスモル(mOsm)/kgの浸透圧)を添加したもの、細胞内酸性分解を防止したもの(特公平7−68082号公報)が有効である。
従って、本発明の生体材料保護液が、本発明のペプチド以外に、用途に応じて、抗酸化剤、安定化剤等の添加剤を適宜含んでいてもよい。このような成分としては、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;抗酸化剤(例えば、SOD、ビタミンEまたはグルタチオン);低分子量ポリペプチド;親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);単糖類、二糖類、および多糖類の化合物(グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、ポリオキシエチレン・ソルビタンエステル(Tween(商標))、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体(プルロニック(pluronic(商標))またはポリエチレングリコール);血栓溶解剤;血管拡張剤;組織賦活化剤;カテコラミン;PDEII阻害剤;カルシウム拮抗剤;βブロッカー;ステロイド剤;脂肪酸エステル;抗炎症剤;抗アレルギー剤;抗ヒスタミン剤などが挙げられる。
本発明の生体材料保護液における本発明のペプチドの濃度は、例えばユーロコリンズ液に溶解した場合、1〜50mg/mLであり、好ましくは優れた生体材料保護活性が得られる点で、5〜30mg/mLである。
生体材料保護方法
本発明は、本発明のペプチドを準備し、該ペプチドと、水性媒体と、生体材料とを低温状態で共存させることを含んでなる。ここで、生体材料保護方法には、生体材料保存方法および生体材料の生存率改善方法が包含され、好ましくは生体材料の生存率改善方法である。
水性媒体は、ペプチドを溶解する液であれば特に限定されない。水性媒体は、上述の生体材料保護液を参照することができる。
低温状態とは、好ましくは臨床的に生体材料の保存に用いられている非凍結状態、好ましくはチルド状態を意味し、好ましくは、代謝を停止させることなく、低温での保存において細胞が生存するために必要な細胞内酵素による主要な細胞成分の分解速度を低下させ、反応速度及び細胞の死亡を遅くできる点で、例えば−1〜10℃、好ましくは−1〜4℃である。
共存させる方法としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、本発明のペプチドと、水性媒体と、生体材料とを同時または別々に混合してもよく、本発明のペプチドを含む液状の生体材料保護剤に、生体材料を浸漬することが好ましい。
本発明のペプチドを溶解させる水性媒体には、当該ペプチドを、好ましくは1〜50mg/mL、より好ましくは5〜200mg/mL、さらに好ましくは10〜50mg/mLの濃度となるように溶解させることが望ましい。
本発明の生体材料保護方法で、保護可能な期間は、例えば0〜240時間、好ましくは0〜120時間である。例えば、マウス膵島細胞では、4℃で天然物のBpAFpを用いて保存させると、120時間保存後で生存率が約60%であり(非特許文献4等参照)、240時間保存後で生存率が20%であった。
本発明の生体材料保護方法によれば、生体材料の生存率を有利に改善することができる。生存率の改善とは、本発明のペプチドを含む液状の本発明の生体材料保護剤を用いなかった場合(対照)と比較して、生体材料の生存率が高いことを意味する。本発明の生体材料保護方法によれば、本発明の保護方法を用いなかった場合と比較して、好ましくは20%、より好ましくは50%、さらに好ましくは70%生存率を改善することができ、あるいは、生体材料の種類により適宜変更されるが、好ましくは20%、より好ましくは50%、さらに好ましくは70%の生存率を維持することができる。生存率の測定は、上述の生体材料保護活性の評価方法に準じて行うことができ、好ましくは、後述する実施例3に記載の方法により測定できる。
本発明の別の態様によれば、生体材料保護のための、本発明のペプチドの使用が提供される。また、本発明の一つの態様によれば、生体材料保護剤の製造のための、本発明のペプチドの使用が提供される。さらに、本発明の一つの態様によれば、生体材料の保護のための、本発明のペプチドが提供される。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は特にこれにより限定されるものではない。
実施例1:BpAFP天然物試料の作製
(1)BpAFP粗精製品試料の調製
本発明者らは、北海道沿岸で捕獲されたる魚類の一種のトウガレイLiopsetta pinnifasciata(英名:Barfin plaice)の鮮魚を材料に、日本国特許第4228068号公報の実施例2にまたは同第4332646号公報の実施例2に記載されている方法に従って、試料(以下、BpAFP粗精製品試料とする)を得た。具体的には、すり身状にしたトウガレイの魚肉180gに等量(v/w)の水を加え、魚肉懸濁液を調製した。この懸濁液に対して6,000rpmで30分間の遠心分離を行い、不凍タンパク質を含有する約80gの上澄み液を得た。この上澄み液を98℃で10分間加熱し、魚体およびすり身特有の臭いを減少させるとともに、不凍タンパク質以外の夾雑タンパク質を熱変性および沈殿させた。熱処理後の液に対して、6,000rpmで30分間の遠心分離を行い、沈殿した夾雑タンパク質を取り除いた。これにより、10〜50%のBpAFPを含有する液(BpAFP含有液)を約70g得た。上記のBpAFP含有液の調製操作を繰り返し、より多くのBpAFP含有液を得た。得られたBpAFP含有液を1つにまとめて凍結乾燥し、BpAFP粗精製品試料とした。
「バイピラミダル型氷結晶」とは、不凍ペプチドが表面に結合した氷核が変化した特別な形状であり、2個の六角錐が底面で張り合わされた形状である。不凍ペプチドが存在しない時には、氷核は等方的に成長して円盤状になるため、水溶液中に存在するBpAFPが不凍活性を有し氷核に結合するかどうかを、顕微鏡下でバイピラミダル型氷結晶を視認することにより容易に判定できる。また、不凍ペプチドの氷結晶への結合の強さは、水溶液の凝固点と融点の差である熱ヒステリシスを測定することによって評価される。水溶液の凝固点と融点は、水溶液の温度を上下させ、その凍結融解過程を顕微鏡下に観察することで容易に評価できる。
含水物の凍結時には、その内部には図8のAのイラストまたはBの顕微鏡画像で示されるような円盤型を基本とする氷核が無数に発生する。これらの氷核は、含水物が含んでいる水分子を吸着して結晶成長し、互いに無数に結びついて融合することにより、図8Cのイラストで表される様な氷の多結晶体を形成する。これが、我々が日常的に目にする氷である。さらに個々の氷核のうち、時間の経過とともに粒径の小さな氷核は次第に小さくなり、粒径の大きな氷核はさらに成長する。この現象は「氷の再結晶化」(Ice Recrystallization)あるいはオストワルト成長と呼ばれる。その結果、冷凍された含水物の周囲は無数の大きな氷核によって覆われる。そのため、含水物の内部構造が破壊されてしまう。一方、不凍ペプチドを含んだ水を凍結した場合には、不凍ペプチドが氷核の表面に無数に吸着してコートする結果として、互いに融合しない氷核の集合体が含水物の内部に生成する(図8D)。これらの成長が抑制された微小な氷核の集合体は、時間が経過しても含水物の内部構造を破壊しない。このような作用は「氷の再結晶化阻害」(Ice Recrystallization Inhibition、IRI)性能と呼ばれる。IRI性能はAFPが有している性質の一つである。寒天や豆腐などのゲル状物質は、凍結によって内部構造が破壊し、融解しても凍結前の状態には戻らない。AFPのもつIRI性能は、このようなゲル状物質にAFPを添加して凍結融解処理をしたものと、AFPを添加しないで同様な処理をしたものの形状やテクスチャー、内部構造を比較することによって簡便に評価することができる。
(2)高純度BpAFP試料の調製
得られたBpAFP粗精製品試料の粉末6gを20mLの緩衝液A:20mMトリス緩衝液(pH=8.5)+0.2M NaClに溶解した。この試料を11,000×gで20分間遠心して沈殿物を除去し、ゲル濾過クロマトグラフィーにアプライした。緩衝液B:20mMトリス緩衝液(pH=8.5)を用いて流速8mL/分試料を溶出し、クロマトグラムの最初に現れるピーク部分を回収した。クロマトグラムの取得には、芳香環アミノ酸を有しないBpAFPを検出するために波長214nmの紫外吸光度計を用いた。得られたピーク分画(約150ml)を、陰イオン交換クロマトグラフィーにアプライし、緩衝液Bを用いて流速3mL/分の流速で流した。色の附着した夾雑物は陰イオン交換樹脂に吸着され、同樹脂に吸着されずに素通りした約200mLの溶液を回収した。得られた溶液を蒸留水に透析し、緩衝液成分を除去した後凍結乾燥器にセットし、約1gの分子量約3.3kDaのペプチド混合物の試料(粉末)を得た。
この試料を更に逆相クロマトグラフィー(Cosmosil Protein−Rカラム(ナカライテスク)4.6mm×25cm)によって分画した。使用した溶液はすべて6ml/分の流速で流した。0.1%TFAを含むMilli−Q(A液)でカラムを平衡化した後に、4.5mlのサンプルを添加した。サンプル添加後、A液を20分間流した。その後、10分間に、A液と0.1%TFAを含むアセトニトリル(B液)の体積比率を100:0から75:25まで変化させて流した。その後50分間に、A液とB液の体積比率を75:25から60:50まで直線的に変化させながら流した。その後、5分間でA液とB液の体積比率を0:100まで上昇させ、そのまま15分間流した。これらの操作の間にカラムから溶出される成分を、波長214nmの吸光度を測定することでモニタリングした。
測定されたクロマトグラムを図1Aに示す。この逆相クロマトグラフィーの結果、数本の氷核結合活性を示すピークを含むクロマトグラムが得られた。この中の最大ピーク分画を、高純度BpAFP試料とした。最大ピーク分画(高純度BpAFP試料)は、バイピラミダル型氷結晶を顕微鏡下で視認することによりBpAFPであることを確認した。
上記で得られたBpAFP粗精製品試料および高純度BpAFP試料について15%トリシンSDS電気泳動を行った。電気泳動にはWako SuperSep AceTM 15−20% 13 Wellキット(no.198−15301)を使用した。結果を図1Bに示す。CrudeAおよびBの列は、BpAFP粗精製品の電気泳動結果を示し、SampleAおよびBの列はCrudeAを原材料として精製した高純度品、SampleCの列はCrudeBを原材料とした同高純度品の電気泳動結果である。分子量マーカー3.5kDa付近に現れるバンドは、BpAFPおよびBpAFPを含むI型AFPの混合物である。
(3)BpAFPのアミノ酸配列の決定
得られた高純度BpAFP試料をトリプシンで消化し、消化物を逆相クロマトグラフィーによって2種類のペプチド断片として回収した。それぞれのペプチド断片についてエドマン分解法を用いたアミノ酸配列解析装置によってアミノ酸配列を決定した。2種類のペプチド断片のアミノ酸配列に基づき、下記式(A)(配列番号1)で示されるBpAFPのアミノ酸配列を決定した。トウガレイが、式A(配列番号1)のアミノ酸配列で表されるペプチド含む複数のI型AFPアイソフォームの混合物を体内に発現していることは、本発明者らが今般初めて見いだしたことである。
[式A]
Asp-Thr-Ala-Ser-Asp-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-(1st - 12th)
-Thr-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-(13th -23th)
-Thr-Ala-Lys-Ala-Ala-Ala-Glu-Ala-Ala-Ala-Ala-(24th -34th)
-Thr-Ala-Ala-Ala-Ala-Arg (BpAFP, 40残基) (35th -40th) (A)
得られたアミノ酸配列を3種類の代表的なI型不凍ペプチドであるHPLC6、HPLC8およびAPのアミノ酸配列(下記の式(B)〜(D))と比較した。HPLC6(B)(配列番号3)とHPLC8(C)(配列番号4)は、冬ヒラメPseudopleuronectes americanus (英名:Winter flounder)由来のI型不凍ペプチドであり、AP(D)(配列番号5)は、ツノガレイPleuronectes quadrituberculatus (英名:Alaskan plaice)由来のI型不凍ペプチドである(非特許文献5)。
[式B]
Asp-Thr-Ala-Ser-Asp-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Leu-(1st - 12th)
-Thr-Ala-Ala-Asn-Ala-Lys-Ala-Ala-Ala-Glu-Leu-(13th -23th)
-Thr-Ala-Ala-Asn-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-(24th -34th)
-Thr-Ala-Arg (HPLC6, 37残基) (35th -37th) (B)
[式C]
Asp-Thr-Ala-Ser-Asp-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Leu-(1st - 12th)
-Thr-Ala-Ala-Asn-Ala-Lys-Ala-Ala-Ala-Lys-Leu-(13th -23th)
-Thr-Ala-Asp-Asn-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-(24th -34th)
-Thr-Ala-Arg (HPLC8, 37残基) (35th -37th) (C)
[式D]
Asp-Thr-Ala-Ser-Asp-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-(1st - 12th)
-Thr-Ala-Ala-Ala-Lys-Ala-Ala-Ala-Ala-Glu-Lys-(13th -23th)
-Thr-Ala-Arg-Asp-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-Ala-(24th -34th)
-Thr-Ala-Ala-Ala-Ala-Arg (AP, 40残基) (35th -40th) (D)
比較の結果、式(A)(配列番号1)は、式(B)、(C)または(D)と類似しており、具体的には、式(A)〜(D)のアミノ酸配列は、いずれもThr残基からはじまる11残基の相同性の高いアミノ酸配列の繰り返し単位(2−12番目の配列、13−23番目の配列、24−34番目の配列)を3回連続して有していることがわかった。このような類似性は、式(A)で表される、本発明のトウガレイ由来のペプチドがI型不凍ペプチドの一種であることを示している。
また、式(B)および(C)で表される冬ヒラメ由来のI型不凍ペプチドは、1行目と2行目の11残基の繰り返し単位の末尾がLeuであり、式(D)で表されるツノガレイ由来のI型不凍ペプチドは、2行目の11残基の繰り返し単位が2つのLysを含むが、式(A)はこれらの特徴を有しないことが分かった。よって、式(A)で表される本発明のペプチド(BpAFP)のアミノ酸配列は、新規なものであり、式(A)の配列番号1から計算されるBpAFPの分子量は約3.3kDaであった。
また、式(A)のBpAFPのN末端には化学修飾がされておらず、式(A)のC末端は他のI型AFPで公知となっていることと同様にアミド化の修飾を受けていることが明らかとなった。
実施例2:BpAFP遺伝子組換え物(合成ペプチド)の作製
BpAFPは40残基からなるペプチドである。大腸菌を宿主とした遺伝子組換え発現系ではC末端へのアミド化を含む化学修飾は起こらないため、アミド化を代替するために、BpAFPの41番目にGly(グリシン)を新たに付加した。
図2に示す「チオレドキシン−ヒスチジン(His)タグ−スロンビン認識配列−BpAFP(Glyを付加したもの)」の融合蛋白質をコードする合成DNAを、pET−32a(+)プラスミド(ノバジェン社製)に組み入れてベクターを作製し、同ベクターを大腸菌BL21(DE3)(Novagen)に形質転換した。その後、これをLB寒天培地に播種し24時間培養した。生育の見られたコロニーを2mLのLB培地に植菌し、24時間培養し、菌体を増殖させた後、さらに1000mLのLB培地に植え継ぎ、28℃で振盪培養を行った。菌体の濁度を測定しO.D.600≧0.5となった時点で、最終濃度が0.5mMになるようにIPTGを添加した。24時間振盪培養した後に、6,000×gで15分間の遠心分離操作により菌体を回収し、50mMトリス緩衝液(pH=8.5)を添加して懸濁液を得た後に、これを超音波破砕器にかけた。破砕液の上清を11,000×g、15分間の遠心分離により回収し、Ni−NTA親和性クロマトフラフィーにアプライした。50mMトリス緩衝液(pH=8.5)を用いて平衡化した10mLのNi Sepharose High Performance(GE Healthcare)を充填したクロマトカラムに、BpAFPの融合蛋白質を吸着させた後、500mMイミダゾールおよび0.5M NaClを含む50mMトリス緩衝液(pH=8.5)を使って同融合蛋白質を溶出させた。
この試料に対して、スロンビン(GE Healthcare)溶液を添加し、22℃で16時間インキュベートすることにより、図2のスロンビン認識配列においてチオレドキシン−His−Tagの部分とBpAFPの部分を切断した。図3Aに、Ni−NTA親和性クロマトフラフィーの溶出物にスロンビン処理を行った試料の銀染色SDS電気泳動の結果を示す。ELUTED PROTEINと記した列の電気泳動バンドがBpAFP融合蛋白質のスロンビン分解物を示しており、高濃度のBpAFP遺伝子組換え物が得られていることがわかる。
切断処理後の試料を再度Ni−NTA親和性クロマトフラフィーにアプライし、クロマトカラムに吸着しない切断後のBpAFPを含む溶液を回収した。
得られた溶液を凍結乾燥した後、逆相クロマトグラフィー(TSK−GEL ODS−80Tsカラム(TOSOH) 21.5mm×30cm)を用いてBpAFPを分画した。使用した溶液はすべて6ml/分の流速で使用した。0.1% TFAを含むMilli−Q(A液)でカラムを平衡化した後に、4.5mlのサンプルを添加した。サンプル添加後、A液を10分間流した。その後、100分の間にA液と0.1% TFAを含むアセトニトリルの体積比率を100:0から0:100まで直線的に変化させながら流すことによって、カラムに結合した成分を溶出した。カラムからの溶出される成分は、波長214nmの吸光度を測定することでモニタリングした。バイピラミダル型氷結晶の生成の確認により不凍活性を示す溶出ピークを回収し、凍結乾燥によりBpAFP遺伝子組換え物(合成ペプチド)を得た。
クロマトグラムの結果および回収したBpAFPを含む分画のSDS電気泳動の結果を図3Bおよび図3Cに示す。ELUTED PROTEINの列にはBpAFP遺伝子組換え物の高純度品に相当するバンドが現れている。以上の取得法により、18.5mgのBpAFP遺伝子組換え物が1Lの培養液から得られることが分かった。さらに、その後の実験により、菌体を高密度培養装置を用いて培養した時には、得られるBpAFP遺伝子組換え物の収量は培地1Lあたり37.5mgに増加することが判明した。
実施例3:BpAFPの生体材料保護活性の評価
BpAFPの生体材料保護活性を評価する為に、実施例1および2の方法を用いて取得した高純度BpAFP粉末試料(天然物)およびBpAFP遺伝子組換え物(粉末試料)をそれぞれ添加した細胞保存液を用いて、マウス膵島細胞RIN−5Fを4℃のチルド状態で保存したときの、細胞の生存率を調べた。ここで、細胞の生存率は、全細胞数(死細胞数+生細胞数)に占める生細胞数の割合とBpAFP濃度および保存時間との関係から調べた。高純度BpAFP粉末試料(天然物)を添加した細胞保存液の濃度は、それぞれ、10mg/mL、25mg/mL、50mg/mL、100mg/mL、200mg/mLであり、BpAFP遺伝子組換え物(粉末試料)を添加した細胞保存液の濃度は、10mg/mLであった。
マウス膵島細胞RIN−5F(CRL−2058)はATCC(http://www.atcc.org/)から購入した。BpAFPを溶解する細胞保存液の母液には、ユーロコリンズ液(Euro−Collins液;EC液)(アイロム社製)を用いた。EC液を、99.3mM KCl、15.1mM KHPO、9.0mM NaHCO、および194mMグルコースを含み、pH=7.4となるように調製した。
RIN−5F細胞は、37℃下でCOインキュベーターを用いて培養し、約10個/mLになるまで増殖させた。次に、同細胞を含む培養液を96穴プレートの中に約10個/ウェルになるように分注した。各ウェルから、細胞に触れないように注意しながら培養液だけを除去した後に、それぞれのBpAFPを含む保存液を分注した。このようにしてBpAFP液に浸った状態の細胞を用意し、プレートを4℃の冷蔵庫内に静置してRIN−5F細胞の非凍結保存実験を開始した。保存実験の開始時の生細胞数を100%として、24、72、120、168、240時間の保存後の生細胞数の割合(生存率)(%)を、トリパンブルー染色法を用いて測定した。具体的には、0.4%トリパンブルー溶液(シグマアルドリッチ製)を、保存実験開始直後および各保存期間経過後の各プレートから採集した細胞懸濁液に対して、終濃度0.04%になるように添加して混合し、死細胞を特異的に染色した。血球計算盤(ヘモサイトメーター)を用いて、生細胞数を計測し、下記式:
生細胞率(生存率)(%)=保存実験後の生細胞数/保存実験の開始時の生細胞数×100
を用いて、生存率を算出した。結果を図4に示す。
図4に示されるように、25mg/mLの高純度BpAFP試料(天然物)を含有するEC液を用いて4℃保存した場合、RIN−5Fの生存率が最も高くなることが判明した。また、10mg/mLのBpAFPの遺伝子組換え物を用いた場合、24時間低温保存後の生存率は約70%であった。さらに驚くべきことに、高純度BpAFP試料(天然物)を用いた場合、240時間(10日間)チルド保存後であっても、約20%のRIN−5F細胞が生存していることが判明した。また、25mg/mL中で240時間低温保存後のRIN−5F細胞のインスリン産生能を測定した結果、低温保存前の約15%が保持されていたことがわかった。同条件に低温保存した場合のセルカウントによる生存率がインスリン生産能と同程度の約20%であることから、240時間低温保存後に生存している殆どのRIN−5F細胞はインスリン生産能力を保持していると推察された。
実施例4:BpAFPの溶解性(水溶性)および熱ヒステリシス活性の評価
実施例1および2の方法を用いて取得した高純度BpAFP粉末試料(天然物)およびBpAFP遺伝子組換え物の粉末試料について、AFPの氷核結合能力の指標となる熱ヒステリシス値を測定した。この実験には、図5に示す冷却ステージ付き光学顕微鏡(DMLB 100:Leica,Germany)、温度制御装置(THMS600:Linkam,U.K.)、CCDカメラ(COLOR VIDEO 3CCD:SONY,Japan)およびパソコンから構成される実験システム(非特許文献2)を用いた。高純度BpAFP粉末試料(天然物)およびBpAFP遺伝子組換え物は、AFPの熱ヒステリシス活性測定に通常用いられる25mM重炭酸アンモニウム水溶液(pH=7.9)に溶解して使用した。
(1)溶解性(水溶性)の評価
BpAFPは、通常の蛋白質には見いだされない優れた水溶性を有していた。式(A)で表される本発明のペプチド(配列番号1)は、式(B)、(C)、および(D)よりも、Alaの含める割合がさらに高い。通常Alaは、疎水性のメチル基を側鎖とするアミノ酸であるため、本発明のペプチドは疎水性の高い性質を有し、単独では水に難溶であることが予想されていた。蒸留水および25mM重炭酸アンモニウム水溶液(pH7.9)を用いて既知の不凍ペプチドおよび一般的な蛋白質を溶解したときの限界濃度は通常0.1〜10mg/mLの範囲にある。これに対し、本発明のペプチドは約650mg/mLもの高い溶解度を有していることが明らかになった。
具体的には、本発明者らは、高純度BpAFP粉末試料(天然物)約700mgを1mLの25mM重炭酸アンモニウム水溶液(pH7.9)に溶解した。そして、同水溶液中に僅かに発生した沈殿を11,000×gで5分間遠心除去し、実質的に同溶液に溶解しているBpAFPの濃度を測定したところ、約650mg/mLという高い値であった。BpAFP遺伝子組換え物も天然物と同様に高い水溶性を示した。BpAFPの高い水溶性は既知のAFPの中で比類の無い優れたものであり、式(A)で表されるBpAFPのアミノ酸配列に限定的な性質であると言える。この性質は、様々な含水物や細胞保存液にBpAFPの粉末試料を溶解する上で極めて重要である。
(2)熱ヒステリシス活性の評価
熱ヒステリシス活性の測定においては、様々な濃度のBpAFPサンプルを用いて行った。測定に供するBpAFPの溶液を図5B左側に示す内径1mm長さ17mmのガラスキャピラリーの中央部に0.8μL装填した。このときキャピラリーからの溶媒の蒸発とこれに伴う試料濃度の変化を防ぐためにキャピラリーの両端にミネラルオイルを充填した。このとき両者の間に空気を挟むことでBpAFP試料液とミネラルオイルの接触を防いだ。この状態のキャピラリーを図5B右側に示す銅製ホルダーの孔の中に挿入し、BpAFPサンプル液の部分がホルダー中央に空けた孔の位置に来るようにセットした。この状態のホルダーを図5A右側に示す冷却ステージの中に設置し、顕微鏡の視野の中にBpAFP液が映り込むようにした。冷却ステージの蓋を閉じ、冷却速度55℃/分でステージの温度を降下させてBpAFP液を全面凍結させた。
次に、加熱速度55℃/分によりステージの温度を0℃近くまで上昇させた。このとき凍結サンプルは徐々に融解する。加熱速度を5〜10℃/分の間で調整することで、凍結サンプルの中の過冷却水の中に氷結晶が1個だけ存在する状態を作製した。次に、非常に小さい値の加熱温度によってサンプルの温度を上昇させると、氷結晶が融解を開始する。この温度を同サンプル液の融点とした。完全に氷結晶が融解する前に冷却速度0.1℃/分にて用いてサンプルの温度を降下させることにより、氷結晶の成長開始温度すなわち凝固点を測定した。これら2つの温度の差を、定義に従って、熱ヒステリシス値とした。測定は0〜200mMの濃度範囲において実施し、任意の濃度について複数回定値の平均値を見積もった。
図6に高純度BpAFP(天然物)(○)とBpAFP遺伝子組換え物(●)の熱ヒステリシス値の濃度依存性を示す。いずれの試料も熱ヒステリシスの値は濃度が高くなるにつれて上昇した。また、その濃度依存性は非直線的な傾向を示した。同様な結果は式(B)、(C)および(D)で示すI型不凍ペプチドについても見いだされている。驚くべきことに、BpAFP天然物が濃度200mg/mLのときに、約3.0℃という極めて高い熱ヒステリシス値を示した。
これに対し、式(B)、(C)および(D)で表わされるAFPの溶解限界濃度における熱ヒステリシス値は約0.7℃に過ぎない。BpAFPが示す約3.0℃という極めて高い熱ヒステリシス値は、超高活性型と呼ばれる昆虫由来のAFPの熱ヒステリシス値にも匹敵するものであり、BpAFPが水に対して高濃度に溶けることによって、氷核の結晶成長を極めて強く抑制することを示している。なお、昆虫由来の不凍ペプチドは生体材料保護活性を有しておらず、大量生産技術も開発できていない。このような比類の無い優れた不凍活性は、本明細書に記載の式(A)で表されるBpAFPのアミノ酸配列に限定的な性質であると言える。この性質は、氷核成長抑制活性を活用した含水物の凍結保存にとって極めて有利である。
実施例5:BpAFPの熱安定性の評価
水溶液中に存在するBpAFPが不凍活性を有し氷核に結合するかどうかを、水溶液の凍結時に発生した氷結晶の形状を観察することによって評価した。AFPが存在するときには、氷結晶が図7Aのイラストならびに写真で示す様なバイピラミダル型と呼ばれる特徴的な形状に変形する。一方、AFPが存在しない時や不凍活性を失った場合には、氷結晶は円盤状になる(図7A、B)。この評価法を、熱処理を行ったBpAFPに適用し、BpAFPの熱安定性を評価した結果を図7に示す。
BpAFPの試料として実施例1で取得した高純度BpAFP粉末試料(天然物)を用いた。はじめに濃度0.4mg/mLのBpAFPの水溶液0.5mLをマイクロチューブに分注し、それをアルミブロックヒーターによって特定の温度において2分間加熱した。加熱後の試料液の中にバイピラミダル型氷結晶が生成するかどうかを図5の顕微鏡システムを用いて解析した。
この実験の処理温度を4、25、35、45、55、75、95℃に設定して行ったときの結果を図7Bに示す。また、より濃厚なBpAFP水溶液(濃度1.0mg/mL)0.5mLを同様に2分間加熱処理したときの結果を図7Cに示す。このように、4〜95℃のいずれの温度に加熱した後の水溶液にもバイピラミダル型氷結晶が観察された。これらの結果は、BpAFPが95℃に加熱処理を行っても不凍活性を失わない高い耐熱性を備えていることを示している。
また、BpAFPの立体構造の熱安定性を、円二色性(CD)スペクトルを測定することによって評価した。タンパク質のCDスペクトルは、その立体構造中に存在しているα−ヘリックスやβ−シートなどの二次構造を反映したものであり、それらの含有量に関する知見を与える。
図7Dは様々な温度におけるCDスペクトルを示している。室温において、BpAFPのCDスペクトルは207nmと222付近に2つの負の極大値を示した。これらの特徴は、タンパク質がα−ヘリックス構造を有する時に現れる典型的なものである。このことからBpAFPの立体構造はα−ヘリックス構造によって構成されていることがわかる。また、この特徴はおよそ50℃まで持続した。このことはBpAFPは50℃の熱処理を行ってもその立体構造を維持していることを示している。さらに、温度が60℃以上になるとこの負の極小は消滅した。このことからBpAFPは約60℃で変性することがわかる。また、90℃の熱処理を行った後に再び20℃まで戻したBpAFPのCDスペクトルは、処理前の20℃におけるスペクトルとほぼ同一であった(図7E)。以上の結果は熱処理後のBpAFPの立体構造は容易に回復することを示している。このことからもBpAFPが高い耐熱性を備えていることがわかる。
実施例6:BpAFPの氷の再結晶化を阻害する活性の評価
濃度が5mg/mLの寒天ゲルをプリンカップにより作製した後に、一般的な冷凍冷蔵庫の冷凍室の中に静置した。一昼夜をかけて凍結させた後に、それらの凍結した寒天ゲルを冷凍庫から取り出し、室温で解凍した後に撮影した画像を図8のE1〜E5に示す。ここではE1〜E5を便宜的に凍結解凍品と呼ぶことにする。すなわちE1は、実施例1で得られた高純度BpAFP粉末試料(天然物)を添加していない寒天ゲルの凍結解凍品である。このように、高純度BpAFP粉末試料(天然物)を含まない寒天ゲルの内部には図8Cで示されるような水の凍結すなわち氷核の融合が起こるため、それが高分子鎖ネットワークを物理的に圧迫して破壊してしまう。その結果、寒天ゲルの形状は保持されず、保水能力も失われることがE1で示される。
一方、E2〜E5はそれぞれ0.03、0.06、0.09、0.12mg/mLの高純度BpAFP粉末試料(天然物)を含む寒天ゲルの凍結解凍体である。このように、寒天ゲル中に含ませる高純度BpAFPの量が多いほど、寒天ゲルの形状がより良く保持されることが示された。すなわち、約1mg/mL以上の濃度のBpAFPを含む5mg/mL濃度の寒天ゲルの内部では、図8Dのイラストで示されるように氷核が互いに融合しないバラバラの分散状態になり、ゲル構造を破壊しないと考えられる。このような微量の濃度のBpAFPによって、寒天ゲルの凍結保存が可能になることが実証された。

Claims (9)

  1. 下記(a)〜(e)から選択される単離ペプチド;
    (a)Asp-Thr-Ala-Ser-Asp-(Ala)7-Thr-(Ala)10-Thr-Ala-Lys-(Ala)3-Glu-(Ala)4-Thr-(Ala)4-Arg(配列番号1)のアミノ酸配列で表されるペプチド、
    (b)配列願号1のアミノ酸配列を含んでなるペプチドであって、生体材料保護活性を有するペプチド、
    (c)配列番号1のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入または置換されたアミノ酸配列で表されるペプチドであって、生体材料保護活性を有するペプチド、
    (d)配列番号1のアミノ酸配列と86%以上の同一性を有するアミノ酸配列で表されるペプチドであって、生体材料保護活性を有するペプチド、および
    (e)下記式Iのアミノ酸配列で表されるペプチドであって、生体材料保護活性を有するペプチド:
    式I:X1-[Thr-Ala-X2-X3-Ala-Ala-X4-Y]n-Thr-Y-Z (I)
    (式中、X1がAspまたはGluであって、ZがArg、LysまたはHisであり、nは1〜5であり、
    X2は、独立して、Ala、SerまたはLysであり、
    X3は、独立して、AlaまたはAspであり、
    X4は、独立して、AlaまたはGluであり、
    Yは、Ala-Ala-Ala-Alaである)。
  2. 合成ペプチドである、請求項1に記載の単離ペプチド。
  3. C末端に位置する官能基が、アミド化されているか、または、C末端にさらにアミノ酸が付加されている、請求項1または2に記載のペプチド。
  4. C末端にさらに付加されているアミノ酸が、グリシン(Gly)である、請求項3に記載のペプチド。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のペプチドを有効成分として含んでなる、生体材料保護剤。
  6. 生体材料保護剤が、生体材料の生存率改善剤である、請求項5に記載の生体材料保護剤。
  7. 生体材料が、細胞、組織および臓器から選択される、請求項5または6に記載の生体材料保護剤。
  8. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のペプチドを準備し、
    該ペプチドと、水性媒体と、生体材料とを低温状態で共存させることを含んでなる、生体材料保護方法。
  9. 生体材料の生存率を改善する、請求項8に記載の生体材料保護方法。
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