(第1の実施形態に至る経緯・課題)
植物の葉を壊すことなく遠隔で、その水分量を求める方法として、本発明者等は、葉の表面に2種類の近赤外光を照射し、これらの反射強度比から水分を求める方法を提案している。2種類の近赤外光のうち、一方の近赤外光は、例えば905nmの波長を有するレーザ光であり、水分を透過する参照光として用いられる。他方の近赤外光は、例えば1550nmの波長を有するレーザ光であり、水分に吸収される測定光として用いられる。葉の表面に参照光と測定光とを2回照射し、これらの反射光を非可視光カメラで受光する。非可視光カメラで受光した、参照光の反射強度と測定光の反射強度との比である反射強度比Ln(I905/I1550)は、照射位置における水分量に相当する値となる。
図7(B)に示すように、葉PT3の表面より小さいスポット径(例えば20mmφ)の範囲内でレーザ光を順次走査しながら照射し、スポットsp1内における面平均の反射強度比を求める。この面平均の反射強度比から単位面積当たりの水分量を推測する。しかし、この単位面積当たりの水分量と水ポテンシャルとの相関は低いことが既に知られている(参考非特許文献)。水ポテンシャルは、植物の保水力(含水率)を表す値であり、植物の健全度(言い換えると、健康度合い)を測る指標とされている。
(参考非特許文献) 「キュウリ葉における水ストレスの非破壊計測に関する研究」―分光反射率,気孔コンダクタンス,PSII Yieldおよび形状の変化の比較― 藤野素子・遠藤亮輔・大政謙次 著, 農業情報研究11(2), pp.161−170, 2002.
単位面積当たりの水分量と水ポテンシャルとの相関が低いことの大きな要因には、葉の形状が一定しておらず、萎れ・反り・巻き等による変化があると考えられる。植物の葉は、朝・昼・夕と、日毎に或いは時間刻みに、反ったり巻いたり、開いたり閉じたりして(収縮したりして)動いていく。
近赤外光を照射して水分量を測定する場合、葉が動くことによって、光軸方向に葉の厚みが変化してしまう。例えば光軸に対して垂直方向に立っている葉PT3が反りによって手前に角度θ傾くと、光軸方向の葉の厚みは、(1/cosθ)倍に増加してしまう。厚みが増えた分、葉PT3には、水分量が実際より多く含まれた測定結果が得られることになる。また、近赤外光を葉の表面に所定のスポット径で照射して測定する際、葉の動きによって照射範囲の一部vp1から葉PT3が欠けてしまい、葉への照射面積(投影面積)が少なくなり、水分量が実際より少ない測定結果が得られることになる。
従って、スポット内で近赤外光(レーザ光)を照射し、葉の単位面積当たりの水分量を測定しても、葉の健全度がよく分からなかった。
そこで、第1の実施形態では、植物の健全度の指標となる植物に含まれる水分量を正確に測定することができるようにする。
(第1の実施形態)
以下、適宜図面を参照しながら、本発明に係る植物水分量評価装置及び植物水分量評価方法を具体的に開示した第1の実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
本実施形態の植物水分量評価装置の一例として、図1に示す植物検出カメラ1を例示して説明する。本実施形態は、植物検出カメラが行う各処理を実行する植物水分量評価方法として表現することも可能である。本実施形態の植物検出カメラ1は、植物の水分の有無の分布状態を検出できる。
ここで、本実施形態の植物検出カメラ1の観察対象は植物とし、より具体的な例を挙げるとすると果菜類を例示して説明する。例えばトマト等の果菜類の生育においては、トマトの果実の糖度を増すためには、根及び葉の水分や肥料が光合成において適量に消化された結果、十分に水分や肥料が供給された状態ではなく、水分や肥料が不足状態になることが必要であることが知られている。例えば葉に十分な水分が供給されていれば、葉は健全な状態として平坦な形状となる。一方、葉への水分が相当に不足していると、葉の形状が反る。一方、土壌への肥料が相当に不足していると、葉が黄色くなる等の症状が発生する。
以下の本実施形態では、植物検出カメラ1は、植物(例えば葉)に波長の異なる複数種類のレーザ光を照射し、葉の照射位置において反射したそれぞれの拡散反射光の強度比を基に、葉の水分を検出する例を説明する。なお、本実施形態では、植物の葉を測定対象としたが、葉に限らず、実、茎、花等の他の部位であってもよい。このことは第2の実施形態においても同様である。
(植物検出カメラの概要)
図1は、第1の実施形態における植物検出カメラ1の使用状況の一例を示す概念説明図である。植物検出カメラ1は、例えばトマト等の果菜類が植生されているビニールハウス内の定点に設置される。具体的には、植物検出カメラ1は、例えば地面から鉛直上方向に立伸している円柱状の支柱MT1を挟むように取り付けられた取付冶具ZGに固定された基台BS上に設置されている。植物検出カメラ1は、支柱MT1に取り付けられた電源スイッチPWSから電源が供給されて動作し、観察対象の植物PTに向けて波長の異なる複数種類のレーザ光である参照光LS1,測定光LS2を照射範囲RNGにわたって照射する。
植物PTは、例えばトマト等の果菜類の植物であり、土台BB上に設置された養土ポットSLPに充填された養土SLから根を生やしており、幹PT1、茎PT2、葉PT3、果実PT4、花PT5をそれぞれ有する。土台BB上には、肥料水供給装置WFが設置されている。肥料水供給装置WFは、LAN(Local Area Network)ケーブルLCB2を介して接続された無線通信システムRFSYからの指示により、例えばケーブルWLを介して水を養土ポットSLPに供給する。これにより、養土SLに水が供給されることになるので、植物PTの根が水分を吸収し、植物PT内の各部(つまり、幹PT1、茎PT2、葉PT3、果実PT4、花PT5)に水分が伝達される。
また、植物検出カメラ1は、参照光LS1,測定光LS2が照射された植物PTの照射位置において反射した拡散反射光RV1,RV2を受光し、更に、環境光RV0も受光する。後述するように、植物検出カメラ1は、通常のカメラ機能を有し、環境光RV0の入光によって既定の画角内の画像(つまり、図1に示すビニールハウス内の植物PTの画像)を撮像可能である。植物検出カメラ1は、拡散反射光RV1,RV2を基にした各種の検出結果(後述参照)や画像データを含む出力データをデータロガーDLに出力する。
データロガーDLは、植物検出カメラ1からの出力データを、LANケーブルLCB1及び無線通信システムRFSYを介して、ビニールハウスとは地理的に離れた位置にある事務所内制御室の管理PC(Personal Computer、不図示)に送信する。無線通信システムRFSYは、特に通信仕様は限定されないが、ビニールハウス内のデータロガーDLと事務所内制御室内の管理PCとの間の通信を制御し、更に、養土ポットSLPへの水や肥料の供給に関する管理PCからの指示を肥料水供給装置WFに送信する。
事務所内制御室内の管理PCにはモニタ50が接続され、管理PCは、データロガーDLから送信された植物検出カメラ1の出力データをモニタ50に表示する。図1では、モニタ50は、例えば観察対象の植物PTの全体と、植物PT全体の水分の有無に関する分布状態とを表示している。また、モニタ50は、植物PTの全体のうち特定の指定箇所(つまり、管理PCを使用する観察者のズーム操作によって、指定された指定箇所ZM)の拡大分布状態とその指定箇所に対応する画像データとを生成して対比可能に表示している。
植物検出カメラ1は、可視光カメラVSCと、非可視光センサNVSSとを含む構成である。可視光カメラVSC(取得部)は、例えば既存の監視カメラと同様に、所定の波長(例えば0.4〜0.7μm)を有する可視光に対する環境光RV0を用いて、ビニールハウス内の植物PTを撮像する。以下、可視光カメラVSCにより撮像された植物の画像データを、「可視光カメラ画像データ」という。
非可視光センサNVSSは、可視光カメラVSCと同一の植物PTに対し、複数種類の波長(後述参照)を有する非可視光(例えば赤外光)である参照光LS1,測定光LS2を投射する。非可視光センサNVSSは、参照光LS1,測定光LS2が照射された植物PTの照射位置において反射した拡散反射光RV1,RV2の強度比を用いて、観察対象である植物PTの照射位置における水分の有無を検出する。
また、植物検出カメラ1は、可視光カメラVSCが撮像した可視光カメラ画像データに、非可視光センサNVSSの水分の検出結果に相当する出力画像データ(以下、「検出結果画像データ」という)又は検出結果画像データに関する情報を合成した表示データを生成して出力する。表示データは、検出結果画像データと可視光カメラ画像データとが合成された画像データに限定されず、例えば検出結果画像データと可視光カメラ画像データとが対比可能に生成された画像データでもよい。植物検出カメラ1からの表示データの出力先は、例えばネットワーク(不図示)を介して植物検出カメラ1に接続された外部接続機器であり、データロガーDL又は通信端末MTである(図2参照)。このネットワークは、有線ネットワーク(例えばイントラネット、インターネット)でも良いし、無線ネットワーク(例えば無線LAN)でもよい。
(植物検出カメラの各部の説明)
図2は、植物検出カメラ1の内部構成の一例を詳細に示すブロック図である。図2に示す植物検出カメラ1は、非可視光センサNVSSと、可視光カメラVSCとを含む構成である。非可視光センサNVSSは、制御部11と、投射部PJと、画像判定部JGとを含む構成である。投射部PJは、第1投射光源13と、第2投射光源15と、投射光源走査用光学部17とを有する。画像判定部JGは、撮像光学部21と、受光部23と、信号加工部25と、検出処理部27と、表示処理部29とを有する。可視光カメラVSCは、撮像光学部31と、受光部33と、撮像信号処理部35と、表示制御部37とを有する。通信端末MTは、ユーザ(例えばトマト等の果菜類の植物PTの生育の観察者。以下同様。)により携帯される。
植物検出カメラ1の各部の説明では、制御部11、非可視光センサNVSS、可視光カメラVSCの順に説明する。
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)を用いて構成され、可視光カメラVSCや非可視光センサNVSSの各部の動作制御を全体的に統括するための信号処理、他の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理及びデータの記憶処理を行う。また、制御部11は、後述するタイミング制御部11aを含む(図3参照)。
制御部11は、非可視光センサNVSSの検出対象となる植物PTの検出閾値Mを後述する検出処理部27に設定する。制御部11の動作の詳細については、図4を参照して後述する。
タイミング制御部11aは、投射部PJにおける第1投射光源13及び第2投射光源15の投射タイミングを制御する。具体的には、タイミング制御部11aは、第1投射光源13及び第2投射光源15に投射光を投射させる場合に、光源走査用タイミング信号TRを第1投射光源13及び第2投射光源15に出力する。
また、タイミング制御部11aは、所定の投射周期の開始時に、光源発光信号RFを第1投射光源13又は第2投射光源15に交互に出力する。具体的には、タイミング制御部11aは、奇数番目の投射周期の開始時に光源発光信号RFを第1投射光源13に出力し、偶数番目の投射周期の開始時に光源発光信号RFを第2投射光源15に出力する。
次に、非可視光センサNVSSの各部について説明する。
第1光源の一例としての第1投射光源13は、制御部11のタイミング制御部11aから光源走査用タイミング信号TRを受けると、奇数番目の投射周期(既定値)毎に、タイミング制御部11aからの光源発光信号RFに応じて、所定の波長(例えば905nm)を有する非可視光のレーザ光である参照光LS1(例えば近赤外光)を、投射光源走査用光学部17を介して、植物PTに投射する。
なお、植物PTにおける水分の検出の有無は、所定の検出閾値Mと比較することで判断してもよい。この検出閾値Mは、予め決められた値でもよく、任意に設定された値でもよく、更に、水分が無い状態で取得された拡散反射光の強度を基にした値(例えば水が無い状態で取得された拡散反射光の強度の値に所定のマージンが加算された値)でもよい。即ち、水分の検出の有無は、水分が無い状態で取得された検出結果画像データと、その後取得された検出結果画像データとを比較することで、判断されてもよい。このように、水分が無い状態における拡散反射光の強度を取得しておくことで、水分の有無の検出閾値Mとして、植物検出カメラ1の設置された環境に適する閾値を設定することができる。
第2光源の一例としての第2投射光源15は、制御部11のタイミング制御部11aから光源走査用タイミング信号TRを受けると、偶数番目の投射周期(既定値)毎に、タイミング制御部11aからの光源発光信号RFに応じて、所定の波長(例えば1550nm)を有する非可視光のレーザ光である測定光LS2(例えば赤外光)を、投射光源走査用光学部17を介して、植物PTに投射する。本実施形態では、第2投射光源15から投射される測定光LS2は、植物PTにおける水分の検出の有無の判定に用いられる。測定光LS2の波長1550nmは、水分に吸収され易い特性を有する波長である(図6参照)。
更に、植物検出カメラ1は、植物PTの照射位置における水分を検出するための参照データとして参照光LS1の拡散反射光RV1を用い、測定光LS2が照射された植物PTの照射位置における拡散反射光RV2と、参照光LS1の拡散反射光RV1とを用いて、参照光LS1及び測定光LS2が照射された植物PTの照射位置における水分の有無を検出する。従って、植物検出カメラ1は、植物PTにおける水分の検出に異なる2種類の波長の参照光LS1,測定光LS2及びそれらの拡散反射光RV1,RV2を用いることで、植物PTの水分を高精度に検出できる。
投射光源走査用光学部17は、非可視光センサNVSSにおける検出エリアに存在する植物PTに対し、第1投射光源13から投射される参照光LS1又は第2投射光源15から投射される測定光LS2を2次元的に走査する。これにより、植物検出カメラ1は、測定光LS2が植物PTの照射位置において反射した拡散反射光RV2と上述した拡散反射光RV1とを基に、参照光LS1及び測定光LS2が照射される植物PTの照射位置における水分の有無を検出できる。
次に、画像判定部JGの内部構成について、図2及び図3を参照して詳細に説明する。図3は、植物検出カメラ1の画像判定部JGの内部構成の一例を詳細に示す図である。
撮像光学部21は、例えばレンズを用いて構成され、植物検出カメラ1の外部から入射する光(例えば拡散反射光RV1又は拡散反射光RV2)を集光し、拡散反射光RV1又は拡散反射光RV2を受光部23の所定の撮像面に結像させる。
受光部23は、参照光LS1及び測定光LS2の両方の波長に対する分光感度のピークを有するイメージセンサである。受光部23は、撮像面に結像した拡散反射光RV1又は拡散反射光RV2の光学像を電気信号に変換する。受光部23の出力は、電気信号(電流信号)として信号加工部25に入力される。なお、撮像光学部21及び受光部23は、非可視光センサNVSSにおける撮像部としての機能を有する。
信号加工部25は、I/V変換回路25aと、増幅回路25bと、コンパレータ/ピークホールド処理部25cとを有する。I/V変換回路25aは、受光部23の出力信号(アナログ信号)である電流信号を電圧信号に変換する。増幅回路25bは、I/V変換回路25aの出力信号(アナログ信号)である電圧信号のレベルを、コンパレータ/ピークホールド処理部25cにおいて処理可能なレベルまで増幅する。
コンパレータ/ピークホールド処理部25cは、増幅回路25bの出力信号(アナログ信号)と所定の閾値との比較結果に応じて、増幅回路25bの出力信号を2値化して閾値設定/水分指数検出処理部27aに出力する。また、コンパレータ/ピークホールド処理部25cは、ADC(Analog Digital Converter)を含み、増幅回路25bの出力信号(アナログ信号)のAD(Analog Digital)変換結果のピークを検出して保持し、更に、ピークの情報を閾値設定/水分指数検出処理部27aに出力する。
検出処理部27は、閾値設定/水分指数検出処理部27aと、メモリ27bと、検出結果フィルタ処理部27cとを有する。閾値設定/水分指数検出処理部27a(閾値保持部)は、予め度数分布データ(図14参照)を作成して登録する。度数分布データは、1フレーム画像の全画素における反射強度比(水分指数)の度数分布を示す。閾値設定/水分指数検出処理部27a(閾値算出部)は、後述するように、この度数分布データを用いて、葉の形状を識別するための反射強度比の閾値Shを算出して設定する。
また、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、参照光LS1の拡散反射光RV1におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(ピークの情報)と、測定光LS2の拡散反射光RV2におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(ピークの情報)とを基に、植物PTの参照光LS1及び測定光LS2の照射位置における水分の有無を検出する。
具体的には、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、例えば参照光LS1の拡散反射光RV1におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(ピークの情報)をメモリ27bに一時的に保存し、次に、測定光LS2の拡散反射光RV2におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(ピークの情報)が得られるまで待機する。閾値設定/水分指数検出処理部27aは、測定光LS2の拡散反射光RV2におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(ピークの情報)が得られた後、メモリ27bを参照して、画角内に含まれる植物PTの同一ラインにおける参照光LS1の拡散反射光RV1におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(ピークの情報)と、測定光LS2の拡散反射光RV2におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(ピークの情報)との比を算出する。
例えば水分が存在する照射位置では、測定光LS2の一部が吸収され易いので、拡散反射光RV2の強度(つまり、振幅)が減衰する。従って、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、画角内に含まれる植物PTのライン毎の算出結果(例えば拡散反射光RV1と拡散反射光RV2の各強度の差分(振幅の差分ΔV)の算出結果、又は拡散反射光RV1と拡散反射光RV2の強度比)を基に、参照光LS1及び測定光LS2の照射位置における水分の有無を検出することができる。
なお、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、参照光LS1の拡散反射光RV1の振幅VAと、測定光LS2の拡散反射光RV2の振幅VBとの振幅差分(VA−VB)と振幅VAとの比RTと所定の検出閾値Mとの大小の比較に応じて、植物PTの参照光LS1及び測定光LS2の照射位置における水分の有無を検出しても良い(図5参照)。
更に、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、拡散反射光RV1と拡散反射光RV2の強度比、つまり反射強度比(測定値ともいう)Ln(I905/I1550)を算出し、この反射強度比Ln(I905/I1550)の総和から葉に含まれる水分量に相当する水分指数を得る。反射強度比Ln(I905/I1550)は、可視光カメラVSCで撮像されるフレーム画像における全画素において、例えば所定の画素数(4×4画素)毎に算出され、所定の画素数毎に反射強度比W1〜Wkとして表現される。
メモリ27bは、例えばRAM(RANDOM ACCESS MEMORY)を用いて構成され、参照光LS1の拡散反射光RV1におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(ピークの情報)を一時的に保存する。
検出結果フィルタ処理部27cは、閾値設定/水分指数検出処理部27aの出力を基に、植物検出カメラ1からの水分の検出結果に関する情報をフィルタリングして抽出する。検出結果フィルタ処理部27cは、抽出結果に関する情報を表示処理部29に出力する。例えば検出結果フィルタ処理部27cは、植物PTの参照光LS1及び測定光LS2の照射位置における水分の検出結果に関する情報を表示処理部29に出力する。
表示処理部29は、検出結果フィルタ処理部27cの出力を用いて、照射位置における水分に関する情報の一例として、植物検出カメラ1からの距離毎の照射位置における水分の位置を示す検出結果画像データを生成する。表示処理部29は、植物検出カメラ1から照射位置までの距離の情報を含む検出結果画像データを可視光カメラVSCの表示制御部37に出力する。
次に、可視光カメラVSCの各部について説明する。撮像光学部31は、例えばレンズを用いて構成され、植物検出カメラ1の画角内からの環境光RV0を集光し、環境光RV0を受光部33の所定の撮像面に結像させる。
受光部33は、可視光の波長(例えば0.4μm〜0.7μm)に対する分光感度のピークを有するイメージセンサである。受光部33は、撮像面に結像した光学像を電気信号に変換する。受光部33の出力は、電気信号として撮像信号処理部35に入力される。なお、撮像光学部31及び受光部33は、可視光カメラVSCにおける撮像部としての機能を有する。
撮像信号処理部35は、受光部33の出力である電気信号を用いて、人が認識可能なRGB(Red Green Blue)又はYUV(輝度・色差)等により規定される可視光画像データを生成する。これにより、可視光カメラVSCにより撮像された可視光画像データが形成される。撮像信号処理部35は、可視光画像データを表示制御部37に出力する。
表示制御部37は、撮像信号処理部35から出力された可視光画像データと、表示処理部29から出力された検出結果画像データとを用いて、水分が可視光画像データのいずれかの位置で検出された場合に、水分に関する情報の一例として、可視光画像データと検出結果画像データとを合成した表示データ、又は可視光画像データと検出結果画像データとを対比可能に表した表示データを生成する。表示制御部37(出力部)は、表示データを、例えばネットワークを介して接続されたデータロガーDL又は通信端末MTに送信して表示を促す。
データロガーDLは、表示制御部37から出力された表示データを通信端末MT又は1つ以上の外部接続機器(不図示)に送信し、通信端末MT又は1つ以上の外部接続機器(例えば図1に示す事務所内制御室内のモニタ50)の表示画面における表示データの表示を促す。
通信端末MTは、例えばユーザ個人が用いる携帯用の通信用端末であり、ネットワーク(不図示)を介して、表示制御部37から送信された表示データを受信し、通信端末MTの表示画面(不図示)に表示データを表示させる。
(非可視光センサの制御部における初期動作の一例の説明)
次に、本実施形態の植物検出カメラ1の非可視光センサNVSSの制御部11における初期動作の一例について、図4を参照して説明する。図4は、植物検出カメラ1の制御部11における初期設定動作の一例を示すフローチャートである。
制御部11が、閾値設定/水分指数検出処理部27aに対し、葉の形状を識別するための反射強度比の閾値Shの設定を指示すると、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、閾値Shを算出して設定する(S1)。この閾値Shを設定する処理の詳細については後述する。なお、閾値Shが固定値である場合、ステップS1の処理は省略可能である。
また、制御部11は、非可視光センサNVSSの検出処理部27における水分の検出閾値Mを閾値設定/水分指数検出処理部27aに設定する(S2)。検出閾値Mは、検出対象となる特定の物質に応じて適宜設けられることが好ましい。
ステップS2の処理後、制御部11は、撮像処理を開始させるための制御信号を可視光カメラVSCの各部に出力し(S3−1)、更に、第1投射光源13又は第2投射光源15に参照光LS1又は測定光LS2の投射を開始させるための光源走査用タイミング信号TRを非可視光センサNVSSの第1投射光源13及び第2投射光源15に出力する(S3−2)。なお、ステップS3−1の動作とステップS3−2の動作との実行タイミングはどちらが先でもよく、同時でもよい。
図5は、非可視光センサNVSSにおける水分の検出の原理説明図である。閾値設定/水分指数検出処理部27aは、例えばRT>Mであれば水分を検出したと判定し、RT≦Mであれば水分を検出しないと判定してもよい。このように、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、振幅差分(VA−VB)と振幅VAとの比RTと検出閾値Mとの比較結果に応じて、水分の有無を検出することで、ノイズ(例えば外乱光)の影響を排除でき、水分の有無を高精度に検出することができる。
図6は、水(H2O)に対する近赤外光の分光特性を示すグラフである。図6の横軸は波長(nm)であり、図6の縦軸は透過率(%)を示す。図6に示すように、波長905nmの参照光LS1は、水(H2O)の透過率がほぼ100%に近いため、水分に吸収され難い特性を有することがわかる。同様に、波長1550nmの測定光LS2は、水(H2O)の透過率が10%に近いため、水分に吸収され易い特性を有することがわかる。そこで、本実施形態では、第1投射光源13から投射される参照光LS1の波長を905nm、第2投射光源15から投射される測定光LS2の波長を1550nmとしている。
図7(A)は、葉全体の反射強度比を測定する動作の概要を説明する図である。近赤外光の照射範囲は、葉の表面全体を含むような範囲に設定される。葉の厚み方向の深さ約数十μまでに存在する水による、近赤外光(測定光)の光吸収量が反射強度比に反映される。
葉が萎れることで近赤外光の投影範囲が減少する場合、葉が反れたり巻いたりすることで葉の厚みが増す場合でも、本実施形態では、葉の全画素における反射強度比の総和(以下、水分指数と称する)を水分量の指標とする。従って、水分指数は、ΣLn(I905/I1550)で表され、水ポテンシャルと相関を有する。
図7(B)は。スポットが一定の面積である反射強度比を測定する動作の概要を説明する図である。前述したように、葉の表面より小さな範囲内で近赤外光を順次走査しながら照射して単位面積当たりの水分量を求めても、この単位面積当たりの水分量と水ポテンシャルとの相関は低い。
(非可視光センサの水分やうねりの検出に関する詳細な動作の説明)
次に、植物検出カメラ1の非可視光センサNVSSにおける水分の検出に関する詳細な動作手順について、図8を参照して説明する。図8は、非可視光センサNVSSにおける植物PTの葉PT3に含まれる水分の検出に関する詳細な動作手順を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートの説明の前提として、タイミング制御部11aは、光源走査用タイミング信号TRを第1投射光源13及び第2投射光源15に出力しており、植物検出カメラ1から参照光LS1及び測定光LS2が植物PTの葉PT3に向けて照射されるとする。
図8において、制御部11は、奇数番目の投射周期における光源発光信号RFがタイミング制御部11aから出力されたか否かを判別する(S12)。奇数番目の投射周期における光源発光信号RFがタイミング制御部11aから出力された場合には(S12、YES)、第1投射光源13は、タイミング制御部11aからの光源発光信号RFに応じて、参照光LS1を投射する(S13)。投射光源走査用光学部17は、植物検出カメラ1の画角内に含まれる植物PTのX方向のライン上に参照光LS1を1次元的に走査する(S15)。参照光LS1が照射されたX方向のライン上のそれぞれの照射位置において、参照光LS1が拡散反射したことで生じた拡散反射光RV1が撮像光学部21を介して受光部23により受光される(S16)。
信号加工部25では、拡散反射光RV1の受光部23における出力(電気信号)が電圧信号に変換され、この電圧信号のレベルがコンパレータ/ピークホールド処理部25cにおいて処理可能なレベルまで増幅される(S17)。コンパレータ/ピークホールド処理部25cは、増幅回路25bの出力信号と所定の閾値との比較結果に応じて、増幅回路25bの出力信号を2値化して閾値設定/水分指数検出処理部27aに出力する。コンパレータ/ピークホールド処理部25cは、増幅回路25bの出力信号のピークの情報を閾値設定/水分指数検出処理部27aに出力する。
閾値設定/水分指数検出処理部27aは、参照光LS1の拡散反射光RV1に対するコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(ピークの情報)をメモリ27bに一時的に保存する(S18−2)。また、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、メモリ27bに保存された前回のフレーム(投射周期)における参照光LS1又は測定光LS2に対する拡散反射光RV1又は拡散反射光RV2における同一ラインに関するコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力をメモリ27bから読み出す(S18−3)。
閾値設定/水分指数検出処理部27aは、同一ラインにおける参照光LS1の拡散反射光RV1におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(ピークの情報)と、測定光LS2の拡散反射光RV2におけるコンパレータ/ピークホールド処理部25cの出力(ピークの情報)と、所定の検出閾値Mとを基に、同ライン上における水分の有無を検出する(S18−4)。
閾値設定/水分指数検出処理部27aは、反射強度比の総和ΣLn(I905/I1550)である水分指数を算出する(S18−5)。この水分指数の算出の詳細については後述する。
表示処理部29は、検出結果フィルタ処理部27cの出力を用いて、水分の検出位置を示す検出結果画像データを生成する。表示制御部37は、表示処理部29で生成された検出結果画像データ、及び可視光カメラVSCで撮像された可視光画像の可視光カメラ画像データを出力する(S19)。ステップS15、S16、S17、S18−2〜S18−5、S19の各動作は、1回のフレーム(投射周期)の検出エリア内のライン毎に実行される。
つまり、1つのX方向のラインに対するステップS15、S16、S17、S18−2〜S18−5、S19の各動作が終了すると、次のX方向のラインに対するステップS15、S16、S17、S18−2〜S18−5、S19の各動作が行われ(S20、NO)、以降、1フレーム分のステップS15、S16、S17、S18−2〜S18−5、S19の各動作が終了するまで、図7の拡大図EPGに示すY方向の走査に関してステップS15、S16、S17、S18−2〜S18−5、S19の各動作が繰り返される。
一方、1フレームの全てのラインに対してステップS15、S16、S17、S18−2〜S18−5、S19の各動作の実行が終了した場合には(S20、YES)、投射光の走査が継続する場合には(S21、YES)、非可視光センサNVSSの動作はステップS12に戻る。一方、参照光LS1及び測定光LS2の走査が継続しない場合には(S21、NO)、非可視光センサNVSSの動作は終了する。
図9は、ステップS18−5における水分指数の算出手順を示すフローチャートである。閾値設定/水分指数検出処理部27aは、フレーム画像から全画素における反射強度比Ln(I905/I1550)を算出する(S31)。ここで、各画素の反射強度比Ln(I905/I1550)の測定値を反射強度比W1〜Wkで表す。例えば近赤外光の画像が76,800(=320×240)画素から構成される場合、Wkの添え字kは1〜76,800を表す変数である。
閾値設定/水分指数検出処理部27aは、画素毎の反射強度比Wkが葉PT3を識別するための閾値Shより大きいか否かを判別する(S32)。閾値Shの初期値は、経験値として閾値設定/水分指数検出処理部27aにあらかじめ登録されている。経験値は、植物水分量評価装置の仕様(照射レーザ光の強度、受光素子の感度等)、測定対象の葉の含水率(90%前後)、葉の厚み(例えば200μm)、屋内/屋外等によって決定される。特に、屋外の場合、太陽光の当たり方や葉群としての茂り具合によって変化し、その都度変更される。
例えば経験値として、撮影距離1mの場合、屋内撮影時の閾値Shは約0.3に設定される。屋外撮影時の閾値Shは、約0.9に設定される。また、撮影距離3mの場合、屋内撮影時の閾値Shは約0.05に設定される。これらの閾値Shを初期値として設定し、実際の葉の形状と照らし合わせて、最適であるか否かを判断し、最適でない場合、閾値Shを変更することが好ましい。また、後述するように、閾値Shの算出処理を行い、算出された閾値Shを初期値として登録しておくことも可能である。
ステップS32で、反射強度比Wkが閾値Sh未満である場合、この画素は、葉以外の背景を表す画素であるとして、表示処理部29は、この画素を単色で表示するための単色表示データを生成する(S36)。
一方、ステップS32で反射強度比Wkが閾値Sh以上(閾値以上)である場合、表示処理部29は、この画素を、反射強度比Ln(I905/I1550)に対応する階調色で表示する(S33)。ここでは、反射強度比Ln(I905/I1550)に対応する階調色をn階調で表示可能である。nは任意の正数である。図10は、反射強度比に対応する階調色を示すテーブルである。このテーブルTbには、反射強度比Ln(I905/I1550)及び強度比換算値(905nmの反射光/1550nmの反射光)が階調色毎に区分けされている。
具体的に、反射強度比Ln(I905/I1550)が0.3未満である場合、つまり、葉の閾値Sh以下である場合、その画素は、例えば白色(単色)で表示される。一方、反射強度比Ln(I905/I1550)が0.3以上0.4未満である場合、その画素は例えば深緑色で表示される。同様に、0.4以上0.5未満である場合、その画素は緑色で表示される。0.5以上0.55未満である場合、その画素は黄色で表示される。0.55以上0.6未満である場合、その画素はオレンジ色で表示される。0.6以上0.75未満である場合、その画素は赤色で表示される。0.75以上である場合、その画素は紫色で表示される。このように、葉に属する画素の色は、6諧調のいずれかに設定される。
なお、実際の葉の形状と照らし合わせて、葉が占有している画素空間が適切でない場合、ユーザが閾値Shを所定刻み(例えば0.01)毎にアップ又はダウンするように設定してもよい。或いは、ユーザが後述する閾値Shを自動設定する処理(図13参照)を起動させて適切な閾値Shを設定してもよい。
閾値設定/水分指数検出処理部27aは、葉が占有している画素空間として任意のエリアを特定する(S34)。図11は、葉が占有している画素空間を含むフレーム画像の一部における反射強度比を示すテーブルである。このテーブルでは、フレーム画像の一部として、21画素×9画素分の反射強度比Ln(I905/I1550)が示されている。背景が緑色(ドット表示)である画素は葉の画素に相当する。前述したように、葉の画素は、反射強度比Ln(I905/I1550)が閾値Sh(ここでは、0.3)を超える画素である。また、葉の画素を囲むように、矩形(A×B)のエリアAREが特定される。このエリアAREは、葉の大きさを判断する値として用いられる。なお、葉の大きさは、閾値Shを超える画素数で表してもよい。
閾値設定/水分指数検出処理部27a(水分量算出部)は、エリアARE内で、測定値(反射強度比Ln(I905/I1550))が閾値Shよりも大きい、反射強度比Ln(I905/I1550)の総和である水分指数ΣLn(I905/I1550)を計算する(S35)。この水分指数ΣLn(I905/I1550)が得られることで、葉全体に含まれる水分量が分かる。
更に、ステップS35では、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、エリアARE内で、測定値(反射強度比Ln(I905/I1550))が閾値Shよりも大きい画素の数を計算し、この計算された画素の数で反射強度比の総和ΣLn(I905/I1550)を除して平均値を算出することができる。この平均値は、閾値Shによって葉の外形が決定された葉の面積で反射強度比の総和が除された値であり、スポットの一定面積でスポット内の反射強度比の総和が除された値や、可視画像における葉の外形で囲まれた面積で反射強度比の総和が除された値とは異なる。この後、水分指数の算出動作が終了する。
このように、本実施形態では、照射位置毎の反射強度比を求めるのでなく、フレーム画像における画素毎の反射強度比を求め、画素毎の反射強度比の総和から、水分指数を正確に算出できる。従って、葉、即ち植物の健全度を正確に判断することができる。
ここでは、前述したように、葉の閾値Shは、初期値として次のような値に設定されている。屋内に植物検出カメラ1を設置し、屋内で葉PT3を撮像する場合、経験的に撮影距離が1mである場合、閾値Shは約0.3に設定される。撮影距離が3mである場合、閾値Shは約0.05に設定される。一方、屋外で撮像する場合、太陽光の条件が変動するので、経験的に閾値Shは約0.9に設定される。図12は葉の占有範囲を示す図である。図12(A)は、トマトの茎葉を撮像したフレーム画像である。葉間距離は約1cmである。図12(B)は、図12(A)の可視光画像に対し、撮影距離3m、閾値Shを0.05に設定した場合に求められた葉の占有空間を示す。この場合、葉が一部重なっており、閾値Sh(=0.05)は不適切に設定された値であることが分かる。図12(C)は、図12(A)の可視光画像に対し、撮影距離1m、閾値Shを0.3に設定した場合に求められた葉の占有空間を示す。この場合、葉の外形は他の葉と重なり合うことなく、また、葉の占有空間は可視光画像の葉の外形と大まかに同じである。この場合、閾値Sh(=0.3)は正しく設定された値であることが分かる。
また、葉の閾値Shは、次のような処理を行い、図9に示す水分指数の算出処理を実行する前に登録されてもよい。図13は、閾値設定手順を示すフローチャートである。
閾値設定/水分指数検出処理部27aは、可視光カメラVSCで撮像されたフレーム画像(例えば図12(A)参照)に対し、葉の色と判断される緑色(G)の画素が占有する出現割合(G画素数/全画素数)を求める(S41)。
閾値設定/水分指数検出処理部27aは、水分指数の度数分布データを元に、出現割合に対応する水分指数を求める(S42)。図14は、全画素における反射強度比の度数分布を示すグラフである。度数分布データは、閾値設定/水分指数検出処理部27aに登録されている。この度数分布データを用いると、例えば出現割合が52%である場合、水分指数は約0.3である。
閾値設定/水分指数検出処理部27aは、ステップS42で求められた水分指数を閾値Shに設定する(S43)。この後、閾値設定/水分指数検出処理部27aは本処理を終了する。
このように、可視光カメラVSCで撮像された可視光画像を利用することで、葉の緑色(特定色)の占有画素数と、同じ画素数になるように測定値であるLn(I905/I1550)の累積度数に対応する閾値Shを求めることで、つまり、葉に含まれていると判断される画素毎の水分量の閾値を変更することによって、葉の外形を正しく決定することができる。従って、葉の外形が正しく判断されることで、画素単位の平均値を正確に算出できる。これに対し、スポットの一定面積や可視光画像の外形を用いる場合、葉の外形が正しく捉えられないと、画素単位の平均値に大きな誤差が生じてしまう。
図15(A)は、測定に際して様々な姿勢で固定された葉を示す図である。葉の水分測定では、平らな面を有する板材として、白色背景板bdを用意し、この板材の面に葉PT3の裏面が重なるように、両面テープで葉PT3を貼り付ける。第1の水分測定では、植物検出カメラ1の光軸に対して垂直な平面になるように板材がセットされる。第2の水分測定では、植物検出カメラ1の光軸に対してチルト角45°に倒すように、板材がセットされる。第3の水分測定では、植物検出カメラ1の光軸に対してパン角45°に傾くように、板材がセットされる。
図15(B)は、葉の反射強度比を表す画像を示す図である。第1の水分測定では、反射強度比が閾値Shを超える領域は、正面から視た葉の外形に近くなっている。また、葉の中央部の反射強度比が最も高く、葉の内側から外側に向かっていく程、反射強度比が徐々に下がっていることが分かる。第2の水分測定では、反射強度比が閾値Shを超える領域は、葉をチルト方向に倒すように視た葉の外形に近くなっている。また、葉の内側の広範囲に亘って、反射強度比が高くなっている。これは、葉を光軸に対して倒したことで、光軸方向の葉の厚みが増し、見かけ上、葉の水分量が多くなったことによると考えられる。第3の水分測定では、反射強度比が閾値Shを超える領域は、葉をパン方向に傾けるように視た葉の外形に近くなっている。また、葉の内側の広範囲に亘って、反射強度比が高くなっている。これは、葉を光軸に対して傾けたことで、第2の水分測定の場合と同様、光軸方向の葉の厚みが増し、見かけ上、葉の水分量が多くなったことによると考えられる。
図16は、平均含有率に対する反射強度比を示すグラフである。このグラフによると、第1、第2、第3の水分測定でそれぞれ得られた反射強度比の総和(水分指数)は、葉の平均含水率が大きい程、大きな値となっており、平均含水率に対して高い相関を有する。第1の測定では、相関係数の二乗(R2)は、0.9943である。第2の水分測定では、相関係数の二乗(R2)は、0.9973である。第3の水分測定では、相関係数の二乗(R2)は、0.963である。このように、いずれの水分測定の場合でも、水分指数は、平均含水率に対して高い相関を有する。
次に、トマトの苗を用いて、灌水を停止した(断水)後の萎凋過程及び根吸水(復活)過程を示す。図17(A)は、植物の萎凋過程を示すグラフである。縦軸は葉1枚の水分指数(=ΣLn(I905/I1550)を示し、横軸は断水を始めてからの経過時間を示す。曲線Lf11は、1日につき朝・夕の2度、灌水を行った場合の参照としての葉の水分指数を示す。曲線Lf12は、灌水を停止した(断水した)場合で、萎凋点に達した後も、再灌水を行わない場合を示す。また、図17(A)において、曲線Lf11や曲線Lf12の各種マークは、そのマークの始まりが午前9時頃で、そのマークの終わりが午後17時頃を示し、各種マークの数個の塊が1日の午前9時頃から午後17時頃までの範囲を示す。
葉の平均含水率は、断水時間の時間の経過とともに、86%から徐々に低下し、断水時間が330時間を経過すると、含水率50%以下の萎凋点に達する。断水をせず、定期的に朝・夕の2度、毎日灌水を行った場合の葉では、曲線Lf11に示すように、葉の平均含水率は測定初期とほぼ同じ値(水分指数:値110)に維持される。一方、断水を継続した葉では、見かけ上、茎葉が萎れる萎凋点後も葉の平均含水率は下がり続け、断水時間が350時間になると、水分指数は値20にまで下がる。
図17(B)は、復活過程を示すグラフである。葉の水分指数が値20まで下がった後、再灌水を行うと、再灌水後の時間の経過とともに、葉の平均含水率は徐々に上昇する。経過時間が280分に達すると、断水していた葉の平均含水率は、断水が行われる前の葉の平均含水率に近い値(水分指数:100)にまで達する。
図18は、図17(B)の復活過程のグラフをプロットする際に用いた、実際の測定データで(フレーム画像の反射強度比テーブルを階調表示した図)、萎凋を迎えた葉の含水量が徐々に増加する過程を示している。再灌水から経過時間が0分である場合、反射強度比Ln(I905/I1550)が閾値Shを超える葉の領域は小さいが、60分を経過すると、やや増加し、300分を経過すると、更に増加する。そして断水していない(朝・夕に定期的に灌水を施した(曲線Lf11に相当する図中左)と同等レベルまで葉の含水量が復活していることが分かる。
このように、葉に含まれる水分量を測定することで、萎凋過程及び根吸水(復活)過程を視覚的に捉えることが可能である。
(比較例)
図19は、比較例の測定方法を説明する図である。ビニル袋fkで密封包装された大葉の葉PT3を取り出し、ホワイトボードwbに葉PT3が動かないように固定する。葉PT3ががっしりと固定されたホワイトボードwbを重量計gmに載せ、その重さを計る。このとき、ホワイトボードwbの重さは、あらかじめ測定され、0点調整されているので、重量計gmのメータには、葉の重さが表示される。葉の蒸散による重量の変化を、時間の経過とともに測定する。全ての測定を完了した後、葉を完全に枯らし、その重量を求める。測定時の葉の重量から枯渇時の葉の重量を差し引くことで、測定時における葉の平均含水量を求める。図20(A)は、蒸散による葉の重量の時間変化、つまり葉の平均含水率の時間変化を示すグラフである。葉の平均含水率は、時間の経過とともに徐々に下がっていく。
また、葉PT3が固定されたホワイトボードwbを立てた状態で置く。この状態で、可視光カメラVSC1は葉を撮像する。更に、非可視光カメラNVSS1は、葉中の12箇所に対し、905nmの波長及び1550nmの波長を有する近赤外光をそれぞれ照射し、これらの反射強度比Ln(I905/I1550)を測定する。葉中の12箇所は、葉全体に亘って設定されたエリアであり、4×4画素の大きさを有する。図20(B)は、葉中の12箇所で測定された反射強度比Ln(I905/I1550)の時間変化を示すグラフである。
図20(C)は、図20(A)及び図20(B)の測定データを元に得られる、反射強度比Ln(I905/I1550)と平均含水率との対応関係を示すグラフである。葉中の12箇所のいずれにおいても、反射強度比Ln(I905/I1550)と平均含水率とは比例関係を有する。従って、葉が動かないように、がっしりと固定された場合では、反射強度比Ln(I905/I1550)を測定することで、葉中の平均含水率が分かる。
このように、第1の実施形態における植物水分量評価装置では、植物検出カメラ1の第1投射光源13は、光学走査により、水分に吸収され難い特性を有する第1波長(905nm)の近赤外光(参照光)を植物PTの葉PT3に向けて照射する。植物検出カメラ1の第2投射光源15は、光学走査により、水分に吸収され易い特性を有する第2波長(1550nm)の近赤外光(測定光)を植物PTの葉PT3に向けて照射する。閾値設定/水分指数検出処理部27aは、葉PT3の全照射位置において反射した905nmの反射光と葉PT3の全照射位置において反射した1550nmの反射光とを元に、反射強度比の総和ΣLn(I905/I1550)である葉1枚の水分指数を算出する。これにより、植物の健全度の指標となる植物に含まれる水分量を正確に測定することができる。
また、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、水分量を示しかつ単一の植物の形状を識別する閾値Shを保持し、閾値Sh以上となる少なくとも1つの照射位置における水分量を加算する。これにより、閾値Shによって植物の水分量を適切に算出できる。
また、可視光カメラVSCは、植物の可視光画像を取得し、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、取得された植物の可視光画像を用いて、閾値Shを算出する。これにより、植物の形状を正しく識別できる閾値Shを設定することができる。
また、表示制御部37は、植物の葉、実、茎及び花のうちいずれか1つの非可視光画像を出力する。これにより、出力された非可視光画像によって植物の形状が正しいか否かを確認できる。
また、閾値設定/水分指数検出処理部27aは、照射位置毎に水分量を算出するとともに、算出した水分量を加算して植物の全照射位置における水分量を算出する。表示制御部37は、非可視光画像を、照射位置毎に算出される水分量に応じて、段階的に識別可能に表示する。これにより、植物全体の水分量の他、植物に含まれる水分量の分布を視認することができる。
また、各々の照射位置は、非可視光画像における所定数の画素に対応する。これにより、植物の位置と非可視光画像の位置とを対応付けることができる。
(第2の実施形態に至る経緯・課題)
植物である葉の表面に2種類の近赤外光を照射し、これらの反射強度比から水分を求める場合、次のような課題があった。近赤外光を照射して測定する時、測定対象の葉に近赤外光(例えばパルス光)を照射し、葉の表面であらゆる方向に拡散反射する光の一部を、照射したタイミングと少しずらして(例えばμSECオーダーずらして)近赤外光用の検出器にて受光して計測する。また、ここで照射する光はレーザ光であるがゆえに波長が単波長で905nm、1550nmのみで波長幅は狭い。更に、近赤外光用の検出器は、単波長用ではなく(905nm,1550nmのみを通すフィルタなどは付いておらず)、広い範囲の近赤外域の光を電流に変える光電変換器(フォトセンサ)である。
ここで、近赤外光の検出器における受光時に問題となるのが、外光である太陽光である。太陽光は、上記レーザ光とは異なって、幅広い波長領域を有し、近赤外光領域においてもあらゆる波長を有しています。これらの太陽光は、図22の(A)に示されているように太陽光が測定対象の葉にあたってその一部が直接戻ってくる光と、周囲の葉との間で多重散乱を行って戻ってくる光とに分けられます。そして、この両者は、タイミング的には905nmの近赤外光の照射時も1550nmの近赤外光の照射時も同じように、水が吸収する波長が散乱によりさらに吸収されて減少した図6に示したスペクトルとして戻ってきて、その905nm/1550nmの反射強度比を著しく上昇させます。ここで、バックグラウンドとしては905nmの近赤外光の照射時と1550nmの近赤外光の照射時とでは、同じようなスペクトルで戻ってくるので共通であるといえるが、バックグラウンドの著しい上昇があると、測定対象の葉と周辺の葉との個体を区別することが難しくなる。
また、圃場の苗では、葉が生い茂り、葉群となっている。葉群では、複数枚の葉がそれぞれの向きに重なり合っており、例えば風が吹くと、これらの葉は相対的に動くことになる。例えば図21(A)に示すように、測定対象の葉PT3tに向かって、近赤外光を照射した場合、照射された近赤外光は、測定対象の葉PTtの周囲にある葉PT3oによっても吸収・散乱される。例えば照射された近赤外光は、矢印b1に示すように、測定対象の葉PT3tで吸収される他、矢印b2に示すように、左側の葉PT3oにも照射され、一部が吸収される。左側の葉PT3oに照射され、左側の葉PT3oで散乱された近赤外光は測定対象の葉PT3tに拡散される。また、矢印b3に示すように、右側の葉PT3r1に照射され、右側の葉PT3r1で散乱された拡散光は更に別の葉PT3r2に拡散して測定対象の葉PT3tに拡散されるという、多重散乱も起こる。対象の葉PT3tの水分量は、周辺の葉で吸収された水分量を含め、実際より多く測定されることになる。また、図21(B)に示すように、複数枚の葉が重なったり、離れたりして、葉の面積が変わる。
従って、水分量の有無を測定しても、対象の葉と周辺の葉との個体を区別することが難しかった。
そこで、多数の葉が生い茂った葉群の中にあっても、周辺の葉からの散乱光(例えば太陽光等の外光の散乱)による影響を排除し、測定対象の葉の水分量を正確に測定することができるようにする。
(第2の実施形態)
第2の実施形態の植物水分量評価装置の構成は前記第1の実施形態とほぼ同一の構成を有する。前記第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を用いることで、その説明を省略する。
測定対象となる植物の葉、例えばビニールハウス内で、温度、湿度、照度、風通し、CO2濃度が異なる場所において、代表する植物の葉である。
図21(A)は、第2の実施形態における植物水分量評価装置の動作の概要を説明する図である。図21(B)は、葉の重なりを示す図である。この植物水分量評価装置では、測定対象の葉の背面(裏側)を覆うように、背景物が配置される。
背景物の材質としては、水分を含まず、農薬・散水・CO2噴霧で変形しないもの、例えばプラスチック、コート紙、アルミ箔(板)等のシート、板、或いはブロックが挙げられる。また、背景物の大きさは、測定対象の葉を覆うような大きな面を有し、測定対象の葉の投影面積の2倍以内であり、他の葉の光合成を妨げない大きさであることが望ましい。また、背景物の厚みは、自己支持性でカールしない厚さ50μm〜1mmであり、特に50〜200μmであることが好ましい。また、背景物の重量は、葉の茎で支持される場合、葉が萎れない程度の重さであることが好ましい。また、背景物の色は、可視光及び近赤外光の反射率が高い白色や銀色であることが好ましい。
本実施形態では、背景物として、白色背景板が用いられる場合を示す。なお、白色背景板は、白色プラスチック板、アルミ板、標準白色板、白色紙等が挙げられる。
図22(A)は、屋外において葉に向かって近赤外光を照射した際、近赤外光の波長に対する反射光の強度を示すグラフである。縦軸は非可視光センサNVSSで検知される近赤外光の強度を示し、横軸は近赤外領域の波長を示す。非可視光センサNVSSで検知される近赤外光の強度には、太陽光による光の強度の他、周辺の葉で散乱された光の強度が含まれる。つまり、検知される近赤外光の強度には、太陽光が周辺の葉で多重散乱されたことによるバックグランドの上昇分が含まれる。また、周辺の葉によって1550nmの波長を有する近赤外光が吸収されることで、非可視光センサNVSSで検知される光の強度は小さくなる。従って、反射強度比Ln(I905/I1550)の値は大きくなる。このため、屋外で葉の水分量を測定する場合、反射強度比Ln(I905/I1550)と比較される閾値Shの値を大きく設定する必要がある。
図22(B)は、屋内及び屋外において白色背景板bdが設置された葉に向かって近赤外光を照射した際、近赤外光の波長に対する反射光の強度を示すグラフである。縦軸は非可視光センサNVSSで検知される近赤外光の強度を示し、横軸は近赤外領域の波長を示す。白色背景板bdが測定対象の葉PT3tの背面(裏側)を覆うように配置されたことで、周辺の葉PT3oからの多重散乱が起きなくなる。従って、1550nmの波長を有する近赤外光の強度が低下することは起きない。また、屋内の場合、バックグランドの上昇も生じない。なお、屋外で測定する場合、閾値Shは約0.5に設定される。また、屋内で測定する場合、閾値Shは約0.3に設定される。
測定対象の葉PT3tの背面に白色背景板bdを配置する場合、葉を固定することなく配置してもよいし、白色背景板bdに葉PT3tを取り付けて固定してもよい。ここでは、白色背景板bdに葉PT3tを取り付ける場合を示す。
図23は、白色背景板bdへの葉PT3tの取り付け方を説明する図である。白色背景板bdは、縦長の長方形を有する白色プラスチック板である。白色背景板bdの中央部には、矩形状にくり抜かれた開口部bd1が形成されている。また、白色背景板bdの上部には、円形の孔部bd2が形成されている。孔部bd2には、上端面にまで達するスリットbd21が形成されている。また、白色背景板bdに形成された開口部bd1の下側及び両側には、それぞれ3本のスリットbd3,bd4,bd5が形成されている。
葉PT3tを白色背景板bdに取り付ける場合、葉PT3tの先端を3本のスリットbd3の1本に挿し込み、スリットbd21を中心に左右の白色背景板bdを前後方向にずらして空隙を作り、その内側に葉の茎PT2を通して、孔部bd2に茎PT2を固定する。
図24は、測定対象の葉PT3tの背面を覆うように配置される白色背景板bdの各種設置方法を示す図である。図中、左側の植物PTでは、白色背景板bdは、土台BBの上に立てられた棒材p1の先端に取り付けられ、立札として設置される。また、中央の植物PTでは、白色背景板bdは、誘引線rp1から誘引紐rp2によって吊り下げられた状態で保持される。また、図中、右側の植物PTでは、白色背景板bdは、円形の孔部bd2に通された茎PT2によって保持される。
図25(A)は、屋外で水分量の測定対象となる葉PT3tを示す写真である。ここでは、白色背景板bdは立札として設置されている。また、白色背景板bdの孔部bd2から突出する茎PT2には、複数枚の葉PT3が突出しており、そのうちの1枚の葉(図中、枠eで囲まれた葉)PT3tを測定対象とする。また、比較例として、白色背景板が背面に配置されていない葉(図中、枠fで囲まれた葉)PT3hを測定対象とする。
図25(B)は、葉PT3tの反射強度比Ln(I905/I1550)を示す図である。図25(C)は葉PT3hの反射強度比Ln(I905/I1550)を示す図である。葉PT3hでは、白色背景板bdが存在しないので、太陽光による周囲の葉の散乱光によって葉PT3hの反射強度比は大きくなっている。
図26(A)は、白色背景板bdで背面が覆われた葉PT3tが占有している画素空間を含むフレーム画像の一部における反射強度比を示すテーブルである。葉PT3tの反射強度比Ln(I905/I1550)が閾値Sh(=0.3)を超える領域ARE1は、葉PT3tの形状に近く、葉の外形を表現していると考えられる。一方、図26(B)は、白色背景板bdで背面が覆われていない葉PT3hが占有している画素空間を含むフレーム画像の一部における反射強度比を示すテーブルである。葉PT3hの反射強度比Ln(I905/I1550)は、周辺の葉PT3oからの散乱光によって大きくなっており、誤差を含むと考えられる。また、葉PT3hの反射強度比Ln(I905/I1550)が閾値Sh(=0.9)を超える領域ARE2は、やや縦長の形状をした葉PT3hの外形と似ておらず、葉PT3hの外形を表現していないと考えられる。
図27は、屋外で水分量の半減の測定対象となる葉を示す写真である。第1の半減測定では、枠g1で囲まれた、高所にある葉PT3tが測定対象であり、その背面には、白色背景板bdが配置される。第2の半減測定では、枠g2で囲まれた、低所にある葉PT3i1が測定対象であり、その背面には、白色背景板bdが配置される。第3の半減測定では、枠g3で囲まれた、数枚の葉PT3i2が測定対象であり、その背面には、何も配置されていない。第4の半減測定では、大きな枠g4で囲まれた、多数生い茂った葉群PT3i3が測定対象であり、その背面には、何も配置されていない。
図28(A)は、第1の半減測定における葉PT3t及び第2の半減測定における葉PT3i1の水分指数の時間変化を示すグラフである。縦軸は反射強度比Ln(I905/I1550)で表される水分指数であり、横軸は時間(単位:分)である。また、半減の有無は、植物に供給される液肥を絶ってから(破線h1参照)、水分指数が1/2にまで半減したか否かによって判定される。これらのことは、図28(B)、(C)においても同様である。
白色背景板bdが背面に配置された、高所の葉PT3t及び低所の葉PT3i1のいずれも、液肥の供給を絶ってから約1200分が経過すると、水分指数の半減が確認された。
図28(B)は、第3の半減測定における葉PT3i2の水分指数の時間変化を示すグラフである。背部に白色背景板bdが配置されていない、葉PT3i2では、周辺の葉からの乱反射によって反射強度比Ln(I905/I1550)のバッグランドは、葉PT3t,PT3i1と比べて多少大きくなるものの、液肥の供給を絶ってから約1200分が経過すると、水分指数の半減が確認された。
図28(C)は、第4の半減測定における葉群PT3i3の水分指数の時間変化を示すグラフである。背面に白色背景板bdが配置されていない、葉群PT3i3では、周辺の葉からの乱反射(外光散乱)によって反射強度比Ln(I905/I1550)のバックグランドが著しく大きくなり、液肥の供給を絶ってから約1200分が経過しても、水分指数の半減が確認できなかった。従って、葉群では、重なり葉(図21(B)参照)が出現したり、消失したりして、反射強度比Ln(I905/I1550)を測定しても、その誤差は大きいことが分かる。
このように、第2の実施形態における植物水分量評価装置では、植物の水分量を評価する際、植物PTの葉PT3の背面を覆うように、白色背景板bd(背景物)を配置しておく。第1投射光源13が、光学走査により、水分に吸収され難い特性を有する波長905nmの近赤外光(参照光)を葉PT3に向けて照射する。第2投射光源15が、光学走査により、水分に吸収され易い特性を有する波長1550nmの近赤外光(測定光)を葉PT3に向けて照射する。閾値設定/水分指数検出処理部27aは、葉PT3の全照射位置において反射した参照光の反射光と葉PT3の全照射位置において反射した測定光の反射光とを基に、葉PT3の全照射位置における反射強度比の総和ΣLn(I905/I1550)である葉1枚の水分指数を算出する。これにより、多数の葉が生い茂った葉群の中にあっても、周辺の葉から散乱光(外光散乱)による影響を排除し、重なり等の影響を除外することで測定対象の葉の水分量を正確に測定することができる。
また、白色背景板bdは、植物の葉PT3の前に立てられた立札である。これにより、植物と独立に設置した状態で白色背景板bdを配置することができ、しっかりと固定できる。従って、風や雨等の外力や芽かき、葉がき作業時の人為的外力がある程度加わっても、白色背景板bdの姿勢を維持できる。
また、白色背景板bdは、誘引紐rp2によって植物の上方から吊り下げられる。これにより、植物の葉PT3と切り離した状態で白色背景板bdを配置することができ、また、白色背景板bdの取り付けが簡単で茎の成長(トマト苗の成長速度は約1cm/日)にもある程度追随できる。
また、白色背景板bdは、植物の茎PT2に支持される。これにより、他の支持部材を用いることなく、白色背景板bdを簡単に葉の裏側に配置でき、茎の成長(トマト苗の成長速度は約1cm/日)にもある程度追随できる。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。